炎症および自己免疫疾患を治療するための組成物および方法
個体における炎症反応を減少、阻害、又は軽減するために有効な量の可溶性B7−H4(sH4)アンタゴニストを含む組成物と、炎症性障害及び自己免疫性疾患又は障害の治療又は予防の方法が、提供される。可溶性H4は、T細胞性免疫の阻害剤としてのB7−H4の活性を含む、B7−H4活性を妨げることが分かっている。したがって、sH4生物活性の干渉は、B7−H4活性を回復する有効な方法であり、したがって自己免疫性疾患又は障害を含む炎症性疾患又は障害の治療に有効な方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願への相互参照
本願は、2006年12月27日に出願された米国特許出願第60/877,319号および2007年7月13日に出願された米国特許出願第60/949,742号の利益と米国特許出願第60/877,319号および米国特許出願第60/949,742号に対する優先権を主張する。米国特許出願第60/877,319号および米国特許出願第60/949,742号の両方は、その許される全体が参考として援用される。
【0002】
政府の支援
本発明は、国立衛生研究所により与えられた補助金番号第R01 CA98731のもと、政府の支援でなされた。政府は、本発明における一定の権利を有す。
【0003】
本発明は、一般に、炎症反応を調節する組成物及び方法に関し、特に、自己免疫性障害に関係する炎症反応を治療又は阻害するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
免疫応答を調節することは、多くの疾患及び障害の処置において重要である。例えば、癌又は感染症に罹患している患者の免疫応答を増強することは有益であると考えられる。あるいは、炎症状態を患う患者における免疫反応を阻害又は減少することが、有益である。
【0005】
慢性的及び持続的炎症は、関節リウマチ(RA:rheumatoid arthritis)及び全身性エリテマトーデス(SLE:systemic lupus erythematosus)等の全身性自己免疫疾患の発病及び進行の主な原因である。RAは、関節破壊、変形及び機能喪失につながることの多い、炎症性の高い多発性関節炎である。末梢関節の付加的な対称性の腫れが、病気の特徴である。関節外特徴及び全身症状が一般に生じ得、関節症状の開始に先立ちうる。慢性的痛み、能力障害及び超過死亡率が、残念な後遺症である。RAの進行の間には、滑膜過形成及びCD4+T細胞、B細胞、CD8+T細胞、マクロファージ、樹状細胞及び好中球による滑膜間質への浸潤の結果、炎症関節の滑膜表層が厚みを増す(非特許文献1;非特許文献2)。SLEにおいては、自己抗体の産生が、糸球体、皮膚、肺及び滑膜を含む多くの組織及び臓器における免疫複合体の蓄積をもたらし、これにより特徴的な慢性炎症及び組織損傷を伴うリウマチ性病変を生成する。
【0006】
いくつかの関節炎モデルにおいては、好中球の枯渇が、関節炎の重症度の低下をもたらした。最も一般的なRAの動物モデルは、ニワトリコラーゲンII型(CII)による曝露によりDBA/1jマウスの全主要関節における持続的な慢性炎症が誘導される、コラーゲン誘導性関節炎(CIA:collagen−induced arthritis)である(非特許文献3)。CD4+T細胞は、RAの病因において中心的役割を果たすと長いあいだ考えられていたが、RAの開始、進行及び維持における好中球の重要な役割の検討への新たな関心がある。損傷における好中球の大量の浸潤により、TNF−α、IL−1及びIL−6を含む炎症誘発性サイトカインが放出され、これが好中球及び他の炎症細胞の機能に影響を与えうる。
【0007】
広範囲に研究されるSLEのネズミモデルは、Fasアポトーシス遺伝子の突然変異が、ヒトSLEに類似した自発的自己免疫性障害をもたらすlpr系統である。この系統における研究は、ヒトSLE症状の多くの面を反復する。例えば、lprマウスは、全免疫グロブリンの多クローン性の増加だけでなく、抗クロマチン、抗DNA、及び抗IgG血清自己抗体を産生する。病気の重症度は、遺伝的背景に強く依存する。例えば、MRL−lpr/lprマウスは、DNAに対する高レベルのIgG自己抗体を産生し、免疫複合体の蓄積による重度の糸球体腎炎を発症し、他方でC57BL/6(B6)−lpr/lprマウスは、はるかに軽度の免疫病理を伴って、低レベルの自己抗体を産出する。
【0008】
共刺激及び共阻害機能を有するものを含む補助シグナル分子は、有効な免疫反応の誘導、及び不要な自己免疫の防止のために重要である。B7−CD28ファミリーを通じたシグナルが、このバランスの主なレギュレータであり、自己免疫の制御において重要な役割を果たすことが明らかになっている。全身性自己免疫疾患における炎症反応の持続は、共阻害機能の障害又は共刺激機能の増強によるバランスの喪失を意味する。この点に関しては、その受容体PD−1に結合後の主な共阻害分子B7−H1に対する自己抗体が、RA患者の有意な割合において見られ、自己抗体の存在がRA症状の進行に関与していることが、特に興味深い。
【0009】
B7−CD28ファミリー分子の可溶性形態も、リウマチ様疾患の進行に関与している。最近の研究は、可溶性PD−1がRA患者において検出でき、可溶性PD−1のレベルが滑液のTNF−アルファ濃度と相関づけられることを示す。B7−H4は、より最近B7ファミリーメンバーに加えられた。B7−H4は、推定受容体に結合することにより、T細胞に対して強力な阻害作用を有する。その表面発現は、IL−10及びIL−6を含む炎症性サイトカインにより、マクロファージ及び腫瘍細胞において上方制御されうると考えられるが、細胞表面B7−H4は正常組織において通常は検出されない。B7−H4が、抗原刺激の存在下でT細胞反応を抑制しうることが報告されている。可溶性B7−H4(sH4)は、可能性のあるバイオマーカーとして卵巣癌患者においても検出されているが、sH4の産生及び機能の機序は知られない。B7−H4欠損マウスは、Leishmaniaの主な感染に対するTヘルパー1型T細胞反応がやや増強されることが分かった。独立して産生されたB7−H4ノックアウトマウスを用いて、Listeria monocytogenes菌感染に対する抵抗につながるB7−H4の欠如は、好中球前駆体の増殖の直接制御により生じることが示された。まとめると、B7−H4が免疫、特に自己免疫及び感染に対する抵抗に関与することは明らかだが、機序は不明である。
【0010】
したがって、自己免疫性障害の治療のための組成物及び方法を提供することが、本発明の目的である。
【0011】
炎症反応の治療のための組成物及び方法を提供することが、本発明の別の目的である。
【0012】
可溶性B7−H4の生物活性を阻害、減少、又は遮断するための組成物及び方法を提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Feldmann,M.ほか、Cell,85:307−10(1996)
【非特許文献2】Moreland,L.W.ほか、N Engl J Med,337:141−7(1997)
【非特許文献3】Williams,R.O,ほか、Proc Natl Acad Sci USA,91:2762−6(1994)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
個体における炎症反応を減少、阻害、又は軽減するために有効な量の可溶性B7−H4(sH4)アンタゴニストを含む組成物、及び、炎症性障害及び自己免疫性疾患又は障害の治療又は予防の方法が開発されている。T細胞性免疫のB7−H4阻害を含めて、可溶性H4(「sH4」)がB7−H4活性を妨げることが発見されている。したがって、sH4生物活性の干渉は、B7−H4活性を回復する有効な方法であり、したがって、自己免疫性疾患又は障害を含む炎症性疾患又は障害を治療するための有効な方法を提供すると考えられる。
【0015】
好適なsH4アンタゴニストには、sH4結合剤、例えばsH4の抗体及び天然リガンド、sH4アンタゴニストをコードする核酸、プロテアーゼ阻害剤、B7−H4ポリペプチド、B7−H4融合蛋白質、及び核酸をコードするsH4に特異的な阻害核酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。炎症性反応又は自己免疫性疾患又は障害を治療する別の方法は、sH4の発現を下方制御又は阻害する薬剤、インビボでsH4を不活性化する薬剤、インビボでsH4の天然リガンドと競合する薬剤、又はその組み合わせを、必要な個体に投与することによる。
【0016】
ある実施態様では、好中球媒介性炎症が減少又は阻害される。一つ以上の症状を減少、阻害、又は軽減するために、sH4アンタゴニストの一つ以上で治療できる代表的な炎症性疾患又は障害には、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円形脱毛症、強直性脊椎炎(anklosing spondylitis)、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫内耳疾患、自己免疫リンパ球増殖性症候群(ALPS:autoimmune lymphoproliferative syndrome)、自己免疫血小板減少性紫斑病(ATP:autoimmune thrombocytopenic purpura)、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、脂肪便症−皮膚炎、慢性疲労症候群免疫不全症候群(CFIDS:chronic fatigue syndrome immune deficiency syndrome)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、良性粘膜類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、ドゴー病、皮膚筋炎、皮膚筋炎−若年性、円板状ループス、混合型クリオグロブリン血症、線維症−繊維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP:idiopathic thrombocytopenia purpura)、Iga腎症、インシュリン依存性糖尿病(I型)、若年性関節炎、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群(polyglancular syndromes)、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆管萎縮症、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、全身強直性症候群、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、脈管炎、白斑、及びヴェーゲナー肉芽腫症を含む自己免疫性疾患又は障害が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
炎症反応又は自己免疫性疾患又は障害を治療するさらに別の方法は、個体の血液又は血漿からsH4を選択的に除去することによる。血液又は血漿からsH4を選択的に除去するために、血液又は血漿が、sH4に特異的な結合剤によりエクスビボで処置されうる。処置された血液又は血漿が、個体に戻されうる。
【0018】
炎症反応又は自己免疫性疾患又は障害の重症度は、個体の生体試料におけるsH4のレベルを測定し、試料中のsH4のレベルを、病気又は障害の進行における様々な時点で個体から得たsH4の所定の量に相関させることにより評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】B7−H4遺伝子の破壊を示す概略図である。マウスB7−H4遺伝子のIgV及びIgCドメインをコードするエクソンを含有する4.7kb DNA断片がネオマイシン耐性(Neo)遺伝子をコードする1.7kb断片によって置換されている。閉四角形はB7−H4をコードするエクソンを表す。エクソン間の線はイントロン配列を表す。開四角は非翻訳エクソンを表す。Neoは斜線を施した四角により表されている。
【図2a】野生型マウス(◆)又はB7−H4KOマウス(□)におけるListeria monocytogenes(LM)感染後日数に対する生残百分率を示す折れ線グラフである。
【図2b】LMを感染させた野生型マウス(○)又はB7−H4KOマウス(▲)の2又は3日目における脾臓1g当たりのCFU(×108)を示すグラフである。
【図2c】LMを感染させた野生型マウス(◆)又はB7−H4KOマウス(□)におけるLM感染後日数に対する脾臓顆粒球百分率を示す折れ線グラフである。
【図2d】リステリア菌感染の24時間前に150pgのGr−1 mAb又は対照ラットIgG(LPS不含)をi.p.注射した3匹のB7−H4KOマウス又は同腹仔対照における肝臓1g当たりのCFU×104を示す棒グラフである。次いで、マウスに3×106CFUのリステリア菌をi.p.注射した。感染後24時間に、マウスを屠殺し、肝臓中のリステリア菌を計数した。
【図3】野生型マウス(◆)又はB7−H4KOマウス(□)におけるLM感染後の時間に対する顆粒球当たりのLM CFUを示す棒グラフである。
【図4】RKOマウス(◆)又はB7−H4KOマウス(□)におけるLM感染後の日数に対する生存百分率を示す折れ線グラフである。
【図5a】図に示した濃度の組換えG−CSFと3日間平板培養した野生型マウス(◆)又はB7−H4KOマウス(□)の2×106個の骨髄細胞におけるG−CSF(ng/ml)に対するCPMを示す折れ線グラフである。培養液は、培養終了前18時間3HTdRでパルスし、収集してシンチレーションカウンターにより計数した。
【図5b】フローサイトメトリーにより分析したゲートされたGr−1+CD11b+顆粒球中のCFSEの希釈度の線グラフのパネルである。そこに示したマウスからの2×106個の骨髄細胞をCFSEで標識し、5日間培養した。細胞は収集してGr−1/CD11b mAbで二重に染色した。
【図6】日数に対するCPMの折れ線グラフである。正常B6マウスからの2×106個の骨髄細胞を、組換えマウスG−CSFの非存在下(A)、0.1ng/mlの存在下(B)又は1ng/mlの存在下(C)に20μg/mlの組換えマウスB7−H4Ig(△)又はマウスIg対照蛋白(▲)で被覆した96−穴プレート中で平板培養した。図に示したように、2乃至5日目に細胞を収集した。培養液は培養終了前18時間3HTdRでパルスし、収集してシンチレーションカウンターにより計数した。*P<0.05。
【図7a】健常ドナー(HA)(◆)、RA(▲)、及びSLE(□)患者の血清中の、sH4を示すグラフである。
【図7b】sH4がRA患者に存在し、健常ドナー存在しないことを示すウェスタンブロットである。
【図7c】sH4の濃度と、RAの重症度群0(▲)、1(X)、2(◆)、及び3(■)との間の相関関係を示すグラフである。
【図8a】B7−H4V、B7−H4VC及びB7−H4Igの概略図である。IgVドメイン;IgV、IgCドメイン;IgC。TM;膜貫通ドメイン、CY;細胞質ドメイン。
【図8b】CFAにおける、ニワトリコラーゲンII型で0日目及び21日目に免疫したマウスの、コラーゲン注射後の日数に対する%発病率のグラフである。−1日目及び20日目に、三つのマウス群が、コントロールベクター(□)、B7−H4V(▲)、又はB7−H4VC(■)での水圧注射であった;平均値±s.e.m(n=5)。
【図8c】CFAにおける、ニワトリコラーゲンII型で0日目及び21日目に免疫したマウスの、コラーゲン注射後の日数に対する臨床スコアのグラフである。−1日目及び20日目に、三つのマウス群に、コントロール(□)、B7−H4V(▲)、又はB7−H4VC(■)ベクターが水圧注射された;平均値±s.e.m(n=5)。
【図8d】抗CII全IgG血清レベルを示す棒グラフである。白;コントロールベクター、灰色;B7−H4V、黒;B7−H4VC;平均値±s.d.
【図8e】CIIμg/mlに対する毎分カウント数の線グラフである。コントロールベクター(□)、B7−H4V(▲)、又はB7−H4VC(■)が注射されたCIAマウスからの30日目の全脾細胞が、指定の量のCIIの存在下で72時間培養された;平均値±s.d.
【図8f】ELISAによりIFN−γ及びIL−17産生につき評価された、72時間培養後の全脾細胞の上清の棒グラフである;平均値±s.d.
【図8g】CFAにおける、ニワトリコラーゲンII型で0日目及び21日目に免疫したマウスの、コラーゲン注射後の日数に対する発病率の線グラフである。WTマウス(□)、B7−H4KOマウス(■);平均値±s.e.m.(n=5)。
【図8h】CFAにおける、ニワトリコラーゲンII型で0日目及び21日目に免疫したマウスの、臨床スコアの線グラフである。WTマウス(□)、B7−H4KOマウス(■);平均値±s.e.m.(n=5)。
【図9a】sH4が、そのドミナントネガティブ活性により好中球を活性化することを示す、空気嚢アッセイの棒グラフである。皮下空気嚢に、LPS(50μg)が注射された。5時間後、Gr−1+好中球が、滅菌生食水で嚢からすすがれた細胞のフローサイトメトリにより定量された。各棒は、各群における6〜8匹のマウスの平均を表す;平均値±s.d.
【図9b】コラーゲン曝露後の日数に対する発病率の線グラフである。六つのマウス群が、コントロールベクター及びコントロールラットIgG(▲)、コントロールベクター及び抗Gr−1 Ab(□)、B7−H4V及びコントロールラットIgG(●)、ならびに、B7−H4V及び抗Gr−1 Ab(○)、B7−H4VC及びコントロールラットIgG(■)、ならびに、B7−H4VC及び抗Gr−1 Ab(■)で処置された;平均値±s.e.m.(n=5)
【図9c】コラーゲン曝露後の日数に対するCIAマウスの臨床スコアの線グラフである。六つのマウス群が、コントロールベクター及びコントロールラットIgG(▲)、コントロールベクター及び抗Gr−1 Ab(□)、B7−H4V及びコントロールラットIgG(●)、ならびに、B7−H4V及び抗Gr−1 Ab(○)、B7−H4VC及びコントロールラットIgG(■)、ならびに、B7−H4VC及び抗Gr−1 Ab(■)で処置された;平均値±s.e.m.(n=5)
【図10a】MRL−lpr/lprマウスにおける、抗二本鎖DNA自己抗体の血清レベルの線グラフである。四つのマウス群が、コントロールベクター及びコントロールラットIgG(▲)、コントロールベクター及び抗Gr−1 Ab(□)、B7−H4VC及びコントロールラットIgG(■)、ならびに、B7−H4VC及び抗Gr−1 Ab(□)で処置された;平均値±s.e.m.(n=5)。
【図10b】B6−lpr/lprマウス(□)又はB6−lpr/lpr×B7−H4KOマウス(■)における、抗二本鎖DNA自己抗体の血清レベルの線グラフである;平均値±s.e.m.
【図10c】生後24週目のB6−lpr/lprマウス(□)又はB6−lpr/lpr×B7−H4KOマウス(□)の、脾臓及び末梢リンパ節における重量及び全細胞数を示すグラフのパネルである。(n=5)
【図10d】生後24週目のB6−lpr/lprマウス(□)又はB6−lpr/lpr×B7−H4KOマウス(□)の、蛋白尿グレードを示すグラフである。(n=5)
【図11a】CFAにおける、ニワトリコラーゲンII型で0日目及び21日目に免疫したマウスの、発病率の線グラフである。−1日目及び20日目に、三つのマウス群は、コントロールベクター(□)又はB7−H4Ig(■)と水圧注射であった;平均値±s.e.m(n=5)
【図11b】CFAにおける、ニワトリコラーゲンII型で0日目及び21日目に免疫したマウスの、臨床スコアの線グラフである。−1日目および20日目に、三つのマウス群は、コントロールベクター(□)又はB7−H4Ig(■)での水圧注射であった;平均値±s.e.m(n=5)
【図11c】抗CII全IgGの血清レベルの棒グラフである。白;コントロールベクター、黒;B7−H4Ig;平均値±s.d.
【図11d】コントロールベクター(□)又はB7−H4Ig(■)が注射されたCIAマウスからの、30日目の全脾細胞のCIIμg/mlに対する毎分カウント数の線グラフである。指定の量のCIIの存在又は非存在下で72時間培養された;平均値±s.d.
【図11e】ELISAによりIFN−γ及びIL−17産生につき評価された、72時間培養後の全脾細胞の上清を示す棒グラフである;平均値±s.d.
【図12】コントロールベクター、B7−H4V、B7−H4VC又はB7−H4Igで処置されたCIAマウスにおける、抗CII IgG1、IgG2a及びIgG2bの血清レベルの棒グラフである。30日目にELISAで測定された;平均値±s.d.
【図13】コントロールベクター(□)、B7−H4V(▲)、B7−H4VC(■)又はB7−H4Ig(●)が注射されたCIAマウスにおける30日目の脾臓CD4T細胞の、指定の量のCIIの存在下における72時間の増殖を示す、CIIμg/mlに対する毎分カウント数の線グラフである;平均値±s.d.
【図14】生後6、8、10及び12週の、コントロールmIgGプラスミド(□)又はB7−H4Igプラスミド(■)が注射されたMRL−lpr/lprマウスにおける、年齢(週)に対する%累積的生存率の線グラフである。全ての表現型が、生後19週目で分析された。
【図15】コントロールmIgGプラスミド(□)又はB7−H4Igプラスミド(■)が注射されたMRL−lpr/lprマウスにおける、年齢(週)に対するIgG自己抗体力価(A450nm)の線グラフである。
【図16】コントロールmIgGプラスミド(□)又はB7−H4Igプラスミド(□)が注射されたMRL−lpr/lprマウスにおける、蛋白尿グレードのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
I.定義
本明細書に用いている科学技術用語は全て、別に定義しない限り、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載した刊行物、特許出願、特許その他の文献は全て、許容される場合その全体が参照として本明細書に援用される。係争の場合には、定義を含めて、本明細書が制限するであろう。なお、これらの材料、方法および実施例は、単に例示的なものであり、それに限定することを意図するものではない。
【0021】
「有効量」又は「治療的有効量」という用語は、炎症反応もしくは処置されている自己免疫疾患状態の処置をもたらすか、そうでない場合は所望の薬理学的及び/又は生理学的効果をもたらすのに十分な投与量を意味する。正確な投与量は、対象に依存する変数(例えば、年齢、免疫系の健全性など)、疾患及び実施される処置などの種々の要因によって異なることになる。
【0022】
B7−H4ポリペプチドの「断片」とは完全長のポリペプチドよりも短いポリペプチドの断片である。一般に、断片は長さがアミノ酸5個以上である。抗原断片は抗体によって認識され、結合される能力を有する。
【0023】
「個体」、「個体」、「対象」及び「患者」という用語は、本明細書では互換可能に用いており、げっ歯類、サル、ヒト、家畜用哺乳動物、スポーツ用哺乳動物及びペット用哺乳動物を含む哺乳動物を意味するが、それに限定するものではない。
本明細書に用いている、核酸に関して「動作可能なように連結された」とは、発現制御配列が所望のコーディング配列の発現を効果的に制御するように遺伝子構築物に組み込まれることを意味する。
【0024】
「ポリペプチド」及び「蛋白」という用語は互換可能に用いており、長さ又は翻訳後修飾の有無とは関係なく、アミノ酸の任意のペプチド結合鎖のことを意味する。実施態様としては、保存的置換を有するB7−H4ポリペプチドが挙げられる。保存的置換としては、通常、以下のグループ内での置換が挙げられる:グリシン及びアラニン;バリン、イソロイシン及びロイシン;アスパラギン酸及びグルタミン酸;アスパラギン、グルタミン、セリン及びスレオニン;リジン、ヒスチジン及びアルギニン;並びにフェニルアラニン及びチロシン。
【0025】
「sH4」という用語は、B7−H4の細胞外ドメインの生物活性断片を含む可溶性B7−H4を意味する。
【0026】
「可溶性B7−H4アンタゴニスト」又は「sH4アンタゴニスト」という用語は、可溶性B7−H4の生物活性又は発現を阻害、減少、又は遮断する化合物をさす。適切な可溶性B7−H4アンタゴニストには、sH4をコードする核酸に特異的な、可溶性B7−H4、B7−H4融合蛋白質、プロテアーゼ阻害剤、小有機化合物、アンチセンスDNA、siRNA、及びマイクロRNAを拮抗できる、可溶性B7−H4、B7−H4又はその断片に結合する抗体及び抗体断片が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施態様においては、可溶性B7−H4アンタゴニストは、好中球媒介性の炎症を減少又は阻害する。
【0027】
本明細書で使用されるところの、「治療」という用語には、炎症反応又は自己免疫性疾患と関係する一つ以上の症状の、軽減、防止及び/又は除去が含まれる。
【0028】
II.抗炎症組成物
可溶性B7−H4(「sH4」とも呼ばれる)の生物活性又は発現を阻害、減少、又は遮断するための組成物が、提供される。ある実施態様では、組成物は、炎症反応を阻害、減少又は、低下させるために有効な量のsH4アンタゴニストを、活性薬剤として含む。例示的な炎症反応には、好中球媒介性の炎症反応が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
A.sH4アンタゴニスト
可溶性B7−H4アンタゴニストには、sH4の発現又は生物活性を阻害する化合物が含まれる。可溶性B7−H4は、ウェスタンブロット分析により約50kDaであり、変性状態における単量体B7−H4分子の全細胞外ドメインに等しいサイズである(図1b)。
【0030】
1.プロテアーゼ阻害剤
B7−H4の全細胞外部分の酵素的切断により、sH4が生成されると考えられる。完全長B7−H4cDNAによりトランスフェクションされた293T細胞は、培養上清にsH4を放出し、この分泌は、様々なプロテアーゼ阻害剤を伴ったインキュベーションにより阻害されうる。したがって、ある実施態様では、sH4アンタゴニストには、プロテアーゼ阻害剤が含まれる。例示的なプロテアーゼ阻害剤には、セリンプロテアーゼ阻害剤、システインプロテアーゼ阻害剤、アスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤、及びメタロプロテアーゼ阻害剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特異的プロテアーゼ阻害剤には、ロイペプチン、PMSF、AEBSF、アプロチニン、キモスタチン、抗トロンビンIII、3,4−ジクロロイソクマリン、TLCK、TPCK、DIFP、アンチパイン、α2−マクログロブリン、N−エチルマレイミド、E−64、キモスタチン、ペプスタチンA、1,10−フェナントロリン、ホスホラミドン、及びベスタチンが含まれる。
【0031】
2.阻害核酸
細胞外ドメインのIgV(図2a)部分だけを含むsH4は、自己免疫性疾患を悪化させるのに十分である。実際、B7−H4V及びB7−H4VC(図2a)は、動物モデルにおいて類似の効果を有し、その推定受容体の結合部位がIgVドメインに位置することを示唆する。結果は、コンピュータ生成モデルに基づくB7−H4 IgV構造を用いた過去の研究により支持される。過去の報告は、B7−H4が、アンカリング部分から離れることにより可溶性形態になりうる、GPI−アンカリング蛋白質であることを示唆する。しかし、最近の研究は、B7−H4が膜貫通蛋白質であることを示す。免疫グロブリンスーパーファミリーのいくつかの分子が、可溶性形態を示すことが明らかにされている。CD80、CD86及びPD−1を含むこれらの可溶性分子は、変異体をスプライシングすることにより作製される。したがって、sH4は、B7−H4の交互スプライシングにより生成されうる。
【0032】
阻害核酸は、sH4をコードする転写産物を生成するRNAスプライシングを特異的に阻害し、又はsH4をコードするRNAの発現を特異的に阻害又は減少できる。阻害核酸には、アンチセンスDNA、三重鎖形成性オリゴヌクレオチド、外部ガイド配列、siRNA、及びマイクロRNAが挙げられるが、これらに限定されるものではない。有用な阻害核酸には、sH4をコードするRNAの発現を、コントロールと比較して少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90又は95%減少するものが含まれる。阻害核酸及びそれらを作製する方法は、公知技術である。siRNA設計ソフトウェアは、例えばhttp://i.cs.hku.hk/〜sirna/software/sirna.php.で利用可能である。核酸の合成は周知であり、例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrook及びRussel編、第3版)Cold Spring Harbor,New York(2001)を参照。
【0033】
3.抗sH4抗体
sH4に特異的に結合する抗体又は抗体断片を用いて、sH4の生物活性を拮抗しうる。例示的な抗体は、mAb hH4.3である(Choi,I.H.ほか、J Immunol,171:4650−4(2003))。抗体を作製する方法は、従来技術において周知であり、当業者の能力の範囲内である。
【0034】
例えば、単クローン抗体(mAb)及びそれらの産生及び使用の方法が、Kohler及びMilstein,Nature 256:495−497(1975);米国特許第4,376,110号;Hartlow,E.ほか、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y,1988);Monoclonal Antibodies and Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,New York,N.Y.(1980);H.Zolaほか、in Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Applications,CRC Press,1982))の中に記載される。
【0035】
抗イディオタイプ抗体は、例えば、Idiotypy in Biology and Medicine,Academic Press,New York,1984;Immunological Reviews Volume 79,1984;Immunological Reviews Volume 90,1986;Curr.Top.Microbiol,Immunol.Volume 119,1985;Bona C.ほか、CRC Crit.Rev.Immunol.,pp.33−81(1981);Jerme,N K,Ann.Immunol.125C:373−389(1974);Jerne,N K,:Idiotypes−Antigens on the Inside,Westen−Schnurr,I.編、Editiones Roche,Basel,1982,Urbain,J.ほか、Ann.Immunol.133D:179−(1982);Rajewsky,K.ほか、Ann.Rev.Immunol.1:569−607(1983)の中に記載される。
【0036】
一定の実施態様は、B7−H4では存在しないか遮蔽されるsH4の新規なエピトープと反応する、多クローン性の及び単クローンの抗体を提供する。抗体は、異種、同種、同系、又はヒト化、一本鎖もしくはキメラ抗体などのこれらの修飾体とすることができる。抗体は、抗sH4抗体のイディオタイプに特異的な、抗イディオタイプ抗体とすることもできる。「抗体」という用語は、抗原結合部位を含み、sH4エピトープに結合可能な、完全分子ならびにその断片の両方が含まれる意味でもある。これらには、完全抗体のFc断片を欠く、したがって循環からより速やかに除去され、完全抗体より少ない非特異的組織結合を有しうる、Fab及びF(ab’)2断片が含まれる(Wahlほか、J.Nuc.Med 24:316−325(1983))。Fv断片も含まれる(Hochman,J.ほか、Biochemistry,12:1130−1135(1973);Sharon,J.ほか、Biochemistry,15:1591−1594(1976))。これらの様々な断片は、プロテアーゼ開裂又は化学開裂等の従来技術を用いて作製できる(例えば、Rousseauxほか、Meth. Enzymol.,121:663−69(1986)を参照)。
【0037】
多クローン抗体は、ウサギ、ヤギ、齧歯類等の免疫動物からの血清として得られ、さらなる処置なしで直接使用され、又は硫安沈殿、イオン交換クロマトグラフィ、及びアフィニティークロマトグラフィ等、従来の濃縮又は精製法が行われうる。
【0038】
免疫原は、sH4の任意の免疫原性部分とすることができる。好ましい免疫原としては、ヒトB7−H4の細胞外ドメインの全部又は一部が挙げられ、この場合、その残基群は、天然のB7−H4に存在するグリコシル化などの翻訳後修飾を含む。細胞外ドメインを含む免疫原は、当該分野で周知の各種方法、例えば、従来の組換え法を使用したクローン化遺伝子の発現、元の細胞、高レベルのB7−H4を発現する細胞集団からの単離によって作製する。
【0039】
mAbは、Kohler及びMilstein,Nature,256:495−97(1975)に紹介される手順、従来のハイブリドーマ技術及びその変更形態等(上記参考文献を参照)を用いて作製できる。抗原刺激された動物における所望の抗体反応を誘導するために、動物、好ましくはマウスが、上述のような免疫原による免疫化により抗原刺激される。
【0040】
抗原刺激された動物のリンパ節、脾臓又は末梢血からのBリンパ球が、通常はポリエチレングリコール(PEG)等の融合促進剤の存在下で骨髄腫細胞と融合される。多数のネズミ骨髄腫細胞系統の任意のものが、このような用途のために入手可能である:P3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−k0Ag8.653、Sp2/0−Ag14、又はHL1−653骨髄腫系統(ATCC、Rockville、Md.から入手可能)。後のステップには、融合していない親骨髄腫細胞及びドナーリンパ球細胞が最終的に死に、ハイブリドーマ細胞だけが生存するような、選択培地における増殖が含まれる。これらがクローニングされ増殖させられ、その上清が、例えばB7−H4−Ig融合蛋白質を用いたイムノアッセイ技術により、所望の特異性の抗体の存在につきスクリーニングされる。陽性クローンが、例えば限界希釈によりサブクローニングされ、mAbが単離される。
【0041】
これらの方法により作製されたハイブリドーマが、公知技術を用いて、インビトロ又はインビボで(腹水液中で)増殖させられうる(一般的にFinkほか、Prog.Clin.Pathol,9:121−33(1984)を参照)。一般に、個々の細胞系統が培養において増殖させられ、高濃度の単一のmAbを含む培地が、デカンテーション、濾過、又は遠心分離により採取されうる。
【0042】
抗体は、正常の多量体構造ではなく一本鎖抗体又はscFvとして作製されうる。一本鎖抗体は、目的のIgからの高頻度可変領域を含み、完全なIgの一部の大きさでありながら、天然Igの抗原結合部位を再現する(Skerra,A.ほか、Science,240:1038−1041(1988);Pluckthun,A.ほか、Methods Enzymol,178:497−515(1989);Winter,G.ほか、Nature,349:293−299(1991);Birdほか、Science 242:423(1988);Hustonほか、Proc.Natl.Acad.Sci USA 85:5879(1988);Jost C Rほか、J Biol Chem.269:26267−26273(1994);米国特許第4,704,692号、第4,853,871号、第4,94,6778号、第5,260,203号。好ましい実施態様においては、従来の分子生物学技術を用いて抗体が作製される。
【0043】
エピトープの存在を検出するための抗体の使用方法が、Coligan,J.E.ほか編、Current Protocols in Immunology,Wiley−Interscience,New York 1991(又は現行版);Butt,W.R.(編)Practical Immunoassay:The State of the Art,Dekker,N.Y.,1984;Bizollon,Ch.A.編、Monoclonal Antibodies and New Trends in Immunoassays,Elsevier,N.Y,1984;Butler,J.E.,ELISA(29章),van Oss,C.J.ほか、(編),IMMUNOCHEMISTRY,Marcel Dekker,Inc.,New York,1994,pp.759−803;Butler,J.E.(編),Immunochemistry of Solid−Phase Immunoassay,CRC Press,Boca Raton,1991;Weintraub,B.,Principles of Radioimmunoassays,Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques,The Endocrine Society,March,1986;Work,T.S.ほか、Laboratory Techniques and Biochemistry in Molecular Biology,North Holland Publishing Company,NY,(1978)(Chard,T.による章、“An Introduction to Radioimmune Assay and Related Techniques”)に記載される。
【0044】
B.B7−H4融合蛋白質
B7−H4融合ポリペプチドは、(i)第二ポリペプチドに直接融合された、又は、(ii)選択的に、第二ポリペプチドに融合されたリンカーペプチド配列に融合された、B7−H4蛋白質の全部又は一部を含む、第一融合パートナーを有する。例示的な融合蛋白質は、Sica、G.Lほか、B7−H4,a molecule of the B7 family,negatively regulates T cell immunity Immunity.18,849−61(2003)に記載される。
【0045】
B7−H4融合蛋白質は、好ましくはヒト免疫グロブリンCγ1鎖のヒンジ、CH2及びCH3領域に相当するアミノ酸配列を有する、第二ポリペプチド、好ましくはIg重鎖定常領域の一種以上のドメインに融合されうる。
【0046】
B7−H4融合蛋白質は、完全長B7−H4ポリペプチドを含むか、完全長B7−H4ポリペプチドの断片を含みうる。一実施態様においては、融合蛋白質は、B7−H4の断片を含む。本明細書において使用されるところの、B7−H4の断片とは、完全長蛋白質より短いポリペプチドである、ポリペプチドの任意のサブセットを指す。有用な断片は、その天然リガンドと結合する能力を保持するものである。完全長B7−H4の断片であるB7−H4ポリペプチドは、典型的に、完全長B7−H4と比較して、その天然リガンド(単数または複数)を結合する能力の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、100%、100%以上をも有する。
【0047】
一実施態様は、第一融合パートナーがB7−H4蛋白質の細胞外ドメインである、融合蛋白質を提供する。B7−H4ヌクレオチド及び蛋白質配列は、GENBANKにおいて、アクセス番号AY280972の下に見られる。さらに、B7−H4は米国特許第6,891,030号に記載され、可能な限りで参照により全体として本明細書に組み込まれる。融合蛋白質は、B7−H4の細胞外ドメイン全体又はB7−H4の生物活性を保持するその断片を含みうる。
【0048】
融合蛋白質の第一融合パートナーは、B7−H4の膜遠位IgVドメイン及び膜近位IgCドメインを含む。構造物は、B7−H4VCとも呼ばれる:
maslgqiifw siiniiiila gaialiigfg isgkhfitvt tftsagnige dgtlsctfep diklngiviq wlkegikglv hefkegkddl sqqhemfrgr tavfadqvvv gnaslrlknv qltdagtytc yirtskgkgn anleyktgaf smpeinvdyn asseslrcea prwfpqptva wasqvdqgan fsevsntsfe lnsenvtmkv vsvlynvtin ntyscmiend iakatgdikv tdsevkrrsq lqllns
(配列番号1)に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有しうる。
【0049】
別の実施態様においては、融合蛋白質の第一融合パートナーは、B7−H4のIgVドメインを含む。構造物は、B7−H4Vとも呼ばれる:
maslgqiifw siiniiiila gaialiigfg isgkhfitvt tftsagnige dgtlsctfep diklngiviq wlkegikglv hefkegkddl sqqhemfrgr tavfadqvvv gnaslrlknv qltdagtytc yirtskgkgn anleyktgaf smpein
(配列番号2)に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有しうる。
【0050】
好ましい実施態様においては、融合蛋白質は、IgFc定常領域に融合されたB7−H4の細胞外ドメイン又はその断片を含む。前述のように、B7−H4の細胞外ドメインのコード領域をマウスIgG2aのFc定常領域に融合させることにより、組換え型B7−H4Ig融合蛋白質が調製されうる(Chapovalほか、Methods Mol.Med.45:247−255(2000))。
【0051】
開示された融合蛋白質は、標準的な分子生物学技術を用いて単離されうる。例えば、B7−H4IgをコードするDNA配列を含む発現ベクターが、リン酸カルシウム沈殿により293細胞にトランスフェクションされ、無血清DMEMにおいて培養される。上清が72時間後に集められ、Protein G SEPHAROSE(登録商標)(Pharmacia、Uppsala、Sweden)カラムにより融合蛋白質が精製される。
【0052】
sH4の生物学的機能を減少、阻害、又は遮断する融合蛋白質を作製するために、B7−H4の変異体も使用されうる。本明細書で使用されるところの、「変異体」B7−H4ポリペプチドは、対応する野生型B7−H4ポリペプチド(例えばアクセス番号AY280972のアミノ酸配列を有するポリペプチド)のアミノ酸配列と比較して、少なくとも一つのアミノ酸配列変異を含有する。アミノ酸配列変異は、例えば、一つ以上のアミノ酸の置換、欠失又は挿入でありうる。
【0053】
B7−H4の変異体は、野生型B7−H4と同じ活性、ほぼ同じ活性、又は異なる活性を有しうる。ほぼ同じ活性とは、変異体がT細胞活性化を抑制しうることを意味する。
【0054】
当然のことながら、B7−H4の細胞外ドメインの変異体は、野生型B7−H4(すなわちアクセス番号AY280972)の細胞外ドメインに対して少なくとも80%の配列同一性を有し得、典型的に少なくとも85%、より典型的には少なくとも90%、さらに典型的には少なくとも95%の、B7−H4の細胞外ドメインに対する配列同一性を有しうる。一実施態様においては、融合蛋白質は、アクセス番号AY280972におけるB7−H4の細胞外ドメインと同一である、B7−H4の細胞外ドメインを含む。
【0055】
配列同一性百分率はコンピュータプログラム又は直接配列比較法を用いて算出することができる。2つの配列間の同一性を測定するための好ましいコンピュータプログラムによる方法としては、GCGプログラムパッケージ、FASTA、BLASTP及びTBLASTN(例えば、D. W. Mount、2001年、Bioinformatics:Sequence and Genome Analysis、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N. Y.参照)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。BLASTP及びTBLASTNプログラムはNCBI及び他の供給源から公に入手可能である。周知のSmith Watermanアルゴリズムも同一性測定に用いることができる。
【0056】
アミノ酸配列比較のための例示的なパラメータとしては、以下のものが挙げられる:1)Needleman及びWunschのアルゴリズム(J Mol. Biol.、48:p.443−453 (1970年));2)Hentikoff及びHentikoffのBLOSSUM62比較マトリックス(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、89:p.10915−10919 (1992年));3)ギャップペナルティ=12;及び4)ギャップ長ペナルティ=4。これらのパラメータを用いる有用なプログラムが「ギャップ」プログラムとして公に入手可能である(Genetics Computer Group、Madison、Wis.)。上記のパラメータ類は、(末端ギャップに対するペナルティのない)ポリペプチド比較のためのデフォルトパラメータ類である。
【0057】
或いは、ポリペプチド配列の同一性は、式:同一性%=(同一残基数)/(アミノ酸残基のアラインメント長)*100を用いて算出することができる。この計算において、アラインメント長には内部ギャップを含めるが、末端ギャップは含めない。
【0058】
アミノ酸置換は、任意のアミノ酸又はアミノ酸アナログを使用して行われうる。例えば、天然アミノ酸(例えばアラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、アルギニン、システイン、グリシン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、ロイシン、バリン、イソロイシン、リシン、メチオニン、プロリン、スレオニン、セリン、フェニルアラニン、トリプトファン、又はチロシン)のいずれかにより、置換が行われうる。
【0059】
B7−H4融合蛋白質ポリペプチドにおけるアミノ酸置換は、保存的置換でありうる。本明細書に用いている「保存的」アミノ酸置換とは、置換アミノ酸が同様な構造的又は化学的性質を有する置換である。「非保存的」アミノ酸置換とは置換アミノ酸の電荷、疎水性又は嵩が著しく変化する置換である。非保存的置換は、(a)置換領域のペプチド主鎖の、例えばシートもしくはヘリカル構造としての構造、(b)標的部位におけるその分子の電荷もしくは疎水性、又は(c)その側鎖の嵩、の維持に及ぼす影響がさらにいちじるしく異なる。保存的置換は、以下の群の中での置換を典型的に含む:グリシン及びアラニン;バリン、イソロイシン、及びロイシン;アスパラギン酸及びグルタミン酸;アスパラギン、グルタミン、セリン及びスレオニン;リシン、ヒスチジン及びアルギニン;ならびにフェニルアラニン及びチロシン。
【0060】
開示の融合蛋白質及びその変異体は、sH4と競合して、例えば共通の受容体に結合することによりsH4の生物活性を阻害するのが好ましい。受容体は典型的に、sH4及びB7−H4の両方に結合する免疫細胞上の受容体である。B7−H4の細胞外ドメインの変異体は、sH4と競合してsH4の生物活性を減少させる融合蛋白質の能力を高める保存的変異体及び非保存的変異体を含む。
【0061】
上記の融合蛋白質の二量体又は三量体である、二量体又は三量体融合蛋白質も提供される。鎖が、ジスルフィド結合又は他の鎖間共有結合を介してタンデム的に連結されるのが好ましい。
【0062】
好ましい二量体融合蛋白質においては、二量体化された通常のIgH鎖においてジスルフィド結合されるものと同じCys残基である、Ig重鎖の二つのCH領域におけるCys残基の共有結合形成から、二量体が生じる。
【0063】
適切な融合蛋白質には、直接又は一つ以上のモノマーの間のリンカー配列により、末端と末端で連結された、第一融合パートナーの二以上のリピートの多量体が含まれうる。
【0064】
C. 医薬組成物
sH4アンタゴニスト及びこれを含有するベクターを含む医薬組成物を提供する。こうした医薬組成物は、経口、非経口(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)又は皮下注射)、経皮(受動的に、又はイオン電気導入もしくは電気穿孔法により)、経粘膜(経鼻、膣内、直腸内又は舌下)経路によって、或いは生体内分解性挿入物を用いて投与することができ、各投与経路に適した剤型に製剤化することができる。
【0065】
1. 非経口投与用製剤
好ましい実施態様において、上記ペプチドは水溶液として非経口注射により投与する。この製剤は懸濁剤又は乳剤の形態をとることもできる。一般には、有効量のsH4アンタゴニスト又は誘導体生成物を含む医薬組成物が提供され、これは、任意選択的に、医薬用として許容可能な希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、佐剤及び/又は担体を含む。このような組成物は、希釈滅菌水、各種緩衝剤含有量(例えば、Tris−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pHおよびイオン強度の緩衝生理食塩水;並びに任意選択的に、界面活性剤、可溶化剤(例えば、TWEEN20、TWEEN80、Polysorbate 80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)及び保存剤(例えば、Thimersol、ベンジルアルコール)及び増量物質(例えば、乳糖、マンニトール)等の添加剤を含む。非水溶媒又はビヒクルの例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油、とうもろこし油などの植物油、ゼラチン及びオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルがある。これら製剤は、凍結乾燥し、使用直前に再溶解/再懸濁することができる。上記製剤は、例えば、細菌保定フィルターを通して濾過し、又は滅菌剤を上記製剤に添合し、上記組成物に放射線照射し、又は上記組成物を加熱することによって滅菌することができる。
【0066】
2. 経腸内投与用製剤
sH4アンタゴニストは経口送達用に製剤化することができる。経口用固形剤型については、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、1990年(Mack Publishing Co.Easton Pa.18042)の第89章に概ね記載されている。固形剤型としては、錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤もしくは薬用キャンデー、カシェ剤、ペレット剤、散剤又は顆粒剤、或いは原料をポリ乳酸、ポリグリコール酸などの高分子化合物の微粒子調製物もしくはリポソームに取り込ませたものが挙げられる。このような組成物は本発明の蛋白質及び誘導体の物理的状態、安定性、インビボ放出速度及びインビボクリアランス速度に影響を与えると考えられる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版(1990年、Mack Publishing Co.,Easton,Pa.18042)1435−1712頁を参照されたい。組成物は液状に調製することができ、又は乾燥粉末(例えば、凍結乾燥)状にすることができる。また、リポソームまたはプロテイノイド封入を行うことにより(例えば、米国特許第4,925,673号で報告されているプロテイノイドミクロスフェアとして)組成物を製剤化することができる。リポソーム封入を利用することができ、リポソームを各種ポリマーで誘導体化することができる(例えば、米国特許第5,013,556号)。Marshall,K.Modern Pharmaceutics、G.S.Banker及びC.T.Rhodes編、第10章、1979年をも参照されたい。概して、製剤は、ペプチド(又はその化学的修飾体)並びに胃の環境におけるペプチド、および腸における生物学的に活性の材料の放出を保護する不活性成分を含むことになる。
【0067】
ポリペプチドアンタゴニストは、化学的に修飾して誘導体の経口的送達が有効なものであるようにすることができる。概して、想定されている化学的修飾とは、(a)蛋白質分解の阻害;及び(b)胃又は腸から血流中への取り込みを可能にする、少なくとも一つの部分の上記成分分子自体に対する結合である。成分(単数または複数)の総合的安定性が高まり、体内における循環時間が長くなることも望まれる。PEG化は、製薬学的用途に好ましい化学的修飾である。用いることができる他の部分としては、プロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリプロリン、ポリ−1,3−ジオキソラン及びポリ−1,3,6−チオキソカンが挙げられる[例えばAbuchowski及びDavis(1981)“Soluble Polymer−Enzyme Adducts,”in Enzymes as Drugs.Hocenberg及びRoberts編、(Wiley−Interscience:New York,N.Y.)pp.367−383;及びNewmarkほか、(1982)J.Appl.Biochem.4:185−189を参照]。
【0068】
別の実施態様は、不活性希釈剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤などの佐剤;及び甘味剤、矯味矯臭剤及び芳香剤を含む他の成分を含みうる、医薬用として許容可能な乳剤、液剤、懸濁剤及びシロップ剤を含む、経口投与用液状剤型を提供する。
【0069】
徐放性経口製剤が望ましいと考えられる。sH4アンタゴニストを、拡散又は浸出機構による放出を可能にする不活性マトリックス、例えばガムに取り込ませることができる。ゆっくりと変性するマトリックスを製剤に取り込ませることもできる。別の徐放製剤はOros治療系(Alza Corp.)を利用したものであり、即ち薬剤が、水の侵入を許容し、浸透圧効果により単一の小開口から薬剤を押し出す半透膜に封入される。経口製剤の場合、放出場所は胃、小腸(十二指腸、空腸(jejunem)または回腸)または大腸とすることができる。この放出は、ペプチド(または誘導体)を保護するか、腸など胃環境を超えた場所でペプチド(または誘導体)を放出することによって、胃環境の有害な影響を避けることが好ましい。胃における抵抗性を完全にするためには、少なくともpH5.0に対して不浸透性のコーティングが不可欠である。腸溶コーティングとして用いられるより一般的な不活性成分の例には、トリメリト酸酢酸セルロース(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、HPMCP50、HPMCP55、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、Eudragit L30D、Aquateric、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、Eudragit L、Eudragit S及びShellacが挙げられる。これらのコーティングは混合膜として用いることができる。
【0070】
3. 局所送達製剤
組成物は局所に適用することができる。これは多くのペプチド製剤ではうまくいかないが、特に肺、鼻、口内(舌下、頬)、膣又は直腸粘膜に適用された場合には有効である場合がある。sH4アンタゴニストは、空気動力学的直径が約5ミクロン未満のエアロゾル又は噴霧乾燥粒子として送達させる場合、息を吸い込みながら肺に送達され得、肺の上皮層を超えて血流まで横断する。
【0071】
噴霧器、計量吸入器及び粉末吸入器を含むがこれに限られない、治療薬を肺に送達するために設計された様々な機械的装置を用いることができ、それらは全て当業者に周知である。市販のデバイスの具体例は、Ultravent噴霧器(Mallinckrodt Inc.,St.Louis、Mo.);Acorn II噴霧器(Marquest Medical Products,Englewood、Colo.);Ventolin計量吸入器(Glaxo Inc.,Research Triangle Park,N.C.);及びSpinhaler粉末吸入器(Fisons Corp.,Bedford、Mass)である。Nektar、Alkermes及びMannkindの各社は、いずれも技術が本明細書に説明される製剤に適用されうる承認済み又は臨床試験中の吸入用インスリン粉末製剤を有する。
【0072】
粘膜への投与用製剤は通常、噴霧乾燥薬物粒子となるが、これらは錠剤、ゲル剤、カプセル剤、懸濁剤又は乳剤に取り込ませることができる。標準的な医薬用賦形剤はどの製剤者からでも入手可能である。経口製剤は、チューインガム、ゲルストリップ、錠剤又は薬用キャンデーの形をとることができる。
【0073】
経皮製剤を調製することもできる。これらは通常、軟膏剤、ローション剤、噴霧剤又はパッチとなるが、これらは全て標準的な技術を用いて調製することができる。経皮製剤には浸透促進剤を含ませることが必要になる。
【0074】
4. 送達制御用ポリマーマトリックス
ポリマーデバイス(ロッド、シリンダ、フィルム、ディスク)の移植又は注射(微粒子)後に全身的に長期放出させるための、放出制御用ポリマーデバイスを作製することができる。マトリックスはミクロスフェアなどの微粒子の形をとることができ、この場合、ペプチドが固体のポリマーマトリックス又はマイクロカプセル内に分散され、コアはポリマーシェルと異なる材質のものとし、ペプチドが液体又は固体の性質とすることができるコアに分散又は懸濁される。本明細書において明確に定義していない限り、微粒子、ミクロスフェア及びマイクロカプセルは同じ意味で用いている。あるいは、ポリマーは、数ナノメートルから四センチメートルの範囲の薄いスラブもしくはフィルム、磨砕その他の標準的な方法で作製した粉末、又はヒドロゲルなどのゲルとしても成型することができる。
【0075】
生分解性マトリックスが好ましいが非生分解性及び生分解性マトリックスのいずれもsH4アンタゴニストの送達に用いることができる。分解及び放出プロフィールがより十分に特徴付けられているため、合成ポリマーが好ましいがこれらは天然又は合成ポリマーとすることができる。このポリマーは、所望の放出期間に基づいて選択される。ある場合には線形放出が最も有用でありうるが、別の場合にはパルス放出又は「バルク放出」がより効果的な結果をもたらしうる。ポリマーは、(通常、最大約90重量%の水を吸収する)ヒドロゲルの形をとることができ、多価イオン又はポリマーと選択的に架橋させることができる。
【0076】
マトリックスは、溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出及び当業者に周知の他の方法によって形成できる。生体内分解性ミクロスフェアは、例えば、Mathiowitz及びLanger,J.Controlled Release 5,13−22(1987);Mathiowitzほか、Reactive Polymers 6,275−283(1987);及びMathiowitzほか、J.Appl.Polymer Sci.35,755−774(1988)に記載されている、薬物送達用ミクロスフェアを作製するために開発された方法のいずれかを用いて調製することができる。
【0077】
デバイスは、埋設もしくは注入−通常は全身治療のための投与量よりもはるかに少ない投与量を送達する−部位を治療するための局所放出又は全身送達用に製剤化することができる。これらは皮下、筋肉内、脂肪内に埋設又は注入し、又は飲み込むことができる。
【0078】
III. 製造方法
上記及び実施例に記載されるように、ポリペプチドsH4アンタゴニスト、sH4アンタゴニストをコードする核酸コンストラクト、B7−H4又はその変異体は、公知技術の標準的な分子生物学プロトコルを使用して作製されうる。例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrook及びRussel編、第3版)Cold Spring Harbor,New York(2001)を参照。あるいは、B7−H4、sH4、そのアンタゴニスト又はアゴニスト、又はその変異体が、従来の生化学的技術を用いて、それらを発現する個体から単離及び精製されうる。
【0079】
IV. 炎症反応治療及び検出
A. 診断法
可溶性B7−H4は、サンプルとされるRAの約三分の二及びSLE患者の三分の一の血清にみられ、sH4の濃度はRAの重症度と密接に相関する。RA及びSLEの実験モデルにおいてsH4の効果が反復され、sH4が、内因性B7−H4の抑制機能を遮断するためのデコイとしての役割を果たし、全身性自己免疫疾患の増悪をもたらすことが示された(実施例を参照)。結果は、全身性自己免疫疾患の病因論におけるsH4の役割を示す。
【0080】
個体の生体試料のsH4の量を定量することにより、個体における炎症反応を検出でき、コントロール(同じアッセイにおける正常な個体の単一又はより好ましくはプール又は平均値)と比較して個体の生体試料のsH4の量が高いことは、炎症反応を表す。生体試料には、例えば組織又は個体からの流体、例えば血液、血漿、唾液、リンパ、脳脊髄液、又は痰等の生物流体が含まれる。コントロールは、自己免疫性疾患等の炎症反応のない個体からの生体試料を意味する。
【0081】
試料のsH4の量は、酵素結合抗体免疫吸着アッセイ、質量分析、分光測光、又はそれらの組み合わせ等の従来技術を用いて測定されうる。
【0082】
炎症反応又は自己免疫性疾患の重症度は、個体の生体試料のsH4のレベルを定量し、個体の生体試料のsH4の量を、炎症反応又は自己免疫性疾患の異なるステージを示すsH4の量(単数または複数)と相関させることにより、検出又は評価されうる。様々なステージの炎症性疾患又は様々なレベルの重症度のsH4の量は、炎症性疾患の様々なステージ又は病気の様々な重症度の患者におけるsH4を定量することにより予め決定されうる。例えば、RAについては、以下の重症度の分類が典型的に用いられる:クラスI:通常の活動を行う能力の制限がない;クラスII:中程度の制限があるが、日常生活動作の大半を行う能力がある;クラスIII:顕著な制限があり、日常生活及び仕事の動作の大半ができない;及びクラスIV:活動不能であり、ベッド又は車椅子に拘束される。各クラスからの患者においてsH4のレベルが決定され、特定の重症度レベルと相関づけられるsH4の参照レベルが作成されうる。
【0083】
あるいは、sH4の量が、好中球のレベルと相関づけられうる。炎症反応又は自己免疫性疾患を有する個体においては、sH4が好中球のレベルと同じように上昇する。したがって、個体のsH4レベルは好中球レベルの指標となりうる。
【0084】
重症度が検出又は評価できる代表的な炎症反応又は自己免疫性疾患には、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円形脱毛症、強直性脊椎炎(anklosing spondylitis)、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫内耳疾患、自己免疫リンパ球増殖性症候群(alps)、自己免疫血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、脂肪便症−皮膚炎、慢性疲労症候群免疫不全、症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、良性粘膜類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、ドゴー病、皮膚筋炎、皮膚筋炎−若年性、円板状ループス、混合型クリオグロブリン血症、線維症−繊維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、Iga腎症、インシュリン依存性糖尿病(I型)、若年性関節炎、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群(polyglancular syndromes)、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆管萎縮症、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、全身強直性症候群、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、脈管炎、白斑、及びヴェーゲナー肉芽腫症が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
B.炎症反応を治療する方法
慢性的及び持続的炎症は、関節リウマチ(RA)及び全身性エリテマトーデス(SLE)等の全身性自己免疫疾患の病因及び進行の主要な原因である。sH4は、内因性B7−H4を遮断するためのデコイ分子として働く。B7−H4は、抗原刺激の存在下で、T細胞の細胞周期進行を阻害する。B7−H4は、好中球前駆体の増殖を抑制することにより、先天免疫を阻害できる。高いレベルのsH4が内因性B7−H4の阻害作用を遮断すると考えられる。
【0086】
したがって、例えば病気の一つ以上の症状を阻害又は低下させるために有効な量のsH4アンタゴニストを必要な個体に投与することにより、インビボでsH4の生物活性を妨げることで、炎症反応を治療できる。病気の一つ以上の症状を阻害又は低下は、好中球レベルの低下により示されうる。sH4の発現の下方制御、sH4の除去、インビボでのsH4の結合剤、例えば抗体との結合、B7−H4の内因性レベルの増加、B7−H4融合蛋白質の投与、又はこれらの組み合わせにより、sH4生物活性の干渉が達成されうる。
【0087】
1. sH4発現の下方制御
炎症反応又は自己免疫性疾患を治療する一つの方法は、炎症反応を減少又は阻害するために有効な量の、sH4をコードする核酸に特異的な阻害核酸を、必要な個体に投与することによる。阻害核酸は、アンチセンスDNA、siRNA、マイクロRNA、又はその組み合わせでありうる。あるいは、阻害核酸は、B7−H4を切断してsH4を生成するプロテアーゼに特異的でありえる。好ましい実施態様においては、阻害核酸は、B7−H4発現に統計学的に有意な影響を与えずに、sH4発現を下方制御する。ある側面においては、sH4の下方制御が、好中球集団を減少させる。
【0088】
2. sH4の除去
個体の炎症反応又は自己免疫性障害を治療する別の方法は、個体の血液又は血漿からsH4を除去することによる。可溶性B7−H4は、ウルトラフェレーシス、アフェレーシス、又は透析等の周知の技術を用いて除去されうる。一実施態様においては、個体から血液又は血漿が除去される。可溶性B7−H4が、エクスビボで血液又は血漿から選択的に除去される。sH4を通しながら、他の成分を保持する特定の分子量カットオフを有するフィルターを使用して、sH4の選択的除去が達成されうる。
【0089】
あるいは、血液又は血漿が、sH4に特異的な結合剤と接触させられうる。結合剤は、基質に固定されうる。適切な結合剤には、sH4又はsH4の天然リガンドに特異的な抗体又は抗原結合性抗体断片が挙げられるが、これらに限定されるものではない。結合剤は、sH4と特異的に結合してsH4を捕え、これにより血液又は血漿から除去する。そして、処置された血液又は血漿が個体に戻される。
【0090】
3. sH4の不活性化
炎症反応又は自己免疫性疾患を治療する別の方法は、炎症反応を減少又は阻害するために有効な量のsH4結合剤を、必要な個体に投与することによる。代表的な結合剤には、sH4の生物活性を阻害又は減少する抗体又はその抗原結合性断片が挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的な抗体は、mAb hH4.3である。小分子を用いて、インビボでsH4を結合及び不活性にしうることはいうまでもない。
【0091】
4. B7−H4の過剰発現
B7−H4の過剰発現は、内因性sH4と競合させるために使用でき、したがって、炎症性反応及び自己免疫性疾患又は障害を治療するための有効な手段となりうる。B7−H4の過剰発現は、内因性B7−H4を刺激して発現を増加させることにより達成しうる。あるいは、B7−H4の血清レベルを一時的に高めるために、B7−H4が必要な個体にボーラスとして投与されうる。
【0092】
炎症反応又は自己免疫性疾患を治療するための別の方法は、B7−H4又はその機能的断片をコードする核酸コンストラクトを、必要な個体に投与することによる。機能的断片とは、sH4生物活性を妨げ、阻害し、又は減少させるB7−H4断片を意味する。
【0093】
別の実施態様においては、B7−H4融合蛋白質が、sH4媒介性炎症又はその症状を減少又は阻害するために有効な量、必要な個体に投与されうる。B7−H4融合蛋白質は、上述される。あるいは、B7−H4融合をコードする核酸コンストラクトが、必要な個体に投与されればよく、核酸コンストラクトが個体に発現されて、sH4の生物学的機能を減少又は阻害するために有効な量のB7−H4融合蛋白質を生成する。
【0094】
5. 遺伝子送達
sH4アンタゴニストをコードする核酸は、これを必要とする個体に対して炎症反応又は自己免疫疾患を処置するのに有効な量で投与することができる。DNAの送達では「外来」DNAを細胞内に、最終的には生きている動物体内に導入することが含まれる。遺伝子の送達はウイルスベクター又は非ウイルスベクターを用いて達成することができる。1つの方法は、培養一次細胞中に核酸を移入した後、この生体外で形質転換された細胞を個体に、全身性又は特定の器官又は組織中へ自家移植することを含む。
【0095】
核酸による治療は、哺乳動物の体細胞組織又は器官中にインビボで機能的に活性なDNAを直接移入することにより達成することができる。DNAの移入は以下に記載するいくつかの方法を用いて実現することができる。こうした系について選択可能なマーカー(例えば、G418抵抗性)を用いてインビトロでの発現に成功するかどうかを試験し、そのDNAを発現する形質移入された(transfected)クローンを選択した後、(誘導系の場合は誘導剤で処理した後) B7−H4発現産物の存在を適切なイムノアッセイでその産物に対する抗体を用いて検出することができる。DNAの取り込み、プラスミドの組込み及び組込みプラスミドの安定性を含むこの方法の効率性は、既知の方法を用いてプラスミドDNAを線状化し、「担体」として高分子量哺乳動物DNAを用いて同時形質移入することにより改善することができる。
【0096】
レトロウイルス媒介ヒト治療では両栄養性複製欠損性レトロウイルス系が利用される(Weiss及びTaylor、Cell、82:p.531−533 (1995年))。このようなベクターは、機能性DNAをヒトの細胞又は組織に、例えば、アデノシンデアミナーゼ遺伝子をリンパ球に、NPT−II遺伝子及び腫瘍壊死因子遺伝子を腫瘍浸潤リンパ球に導入するのに用いられてきた。一般に、レトロウイルス媒介遺伝子送達では遺伝子移入(transfer)のために標的細胞の増殖が必要となる(Bordignonほか、Science 270:p.470−475 (1995年))。この条件は今回のDNA分子が導入されることになる好ましい細胞の一部、即ち、活発に増殖している腫瘍細胞によって満たされる。いくつかの方法のいずれかを利用するプラスミド及びレトロウイルスベクターによる形質移入を用いた嚢胞性線維症の遺伝子治療がCollinsほかにより米国特許第5,240,846号に記載されている。
【0097】
B7−H4ポリペプチド又は融合蛋白をコードするDNA分子は、当該分野でよく知られているように、複製欠損性レトロウイルスをもたらすパッケージング細胞株を用いてレトロウイルスベクターに詰め込むことができる(例えば、Stone,D.ほか、J.Endocrinology、164:p.103−118 (2000年)参照)。遺伝子送達のための追加のウイルスがReynoldsほか、Molecular Medicine Today、5:p.25−31(1999年)に記載されている。
【0098】
また、組換えアデノウイルス(Murphyほか、Proc.Natl.Acad.Sci.94:p.13921−13926 (1997年))、神経細胞特異的に送達させ存続させるための単純ヘルペスウイルス(HSV)(Lowensteinほか、Brain Res. Molec. Brain Res.、30:p.169−175(1995年))を含む他のウイルスベクターを用いることもできる。ヒト遺伝子処置におけるアデノウイルスベクターの利点としては、組換えがまれであり、このようなウイルスとヒトの悪性腫瘍とに関連がなく、アデノウイルスのゲノムが最大7.5kbの大きさの外来遺伝子を受け入れさせるように操作することができる二本鎖DNAであり、生アデノウイルスが安全なヒトワクチン有機体であるという事実が挙げられる。また、アデノ関連ウイルスもまたヒトの治療用に有用である(Samulski,R.J.ほか、EMBO J.10:p.3941(1991年))。
【0099】
上記の開示されたDNA分子を発現することができ、特にヒトにおける今回の治療設定に有用である別のベクターは、複製しないようにすることができるワクシニアウイルスである(Peplinkski,G.R.ほか、Surgical Oncology Clinics of North America、p.7575−588 1998年))。組換えワクシニアウイルス及び異種DNAを含有する他のウイルス並びに免疫化及びDNA治療におけるそれらの使用に関する記載については、Moss,B.、Curr.Opin.Genet.Dev. 3:p.86−90(1993年);Moss,B. Biotechnology 20:p.345−362 (1992年);Moss,B.、Curr.Top.Microbiol Immunol 158:p.25−38(1992年);Moss,B.、Science 252:p.1662−1667(1991年);Piccini,Aほか、Adv.Virus Res.34:p.43−64(1988年);Moss,B.ほか、Gene Amplif Anal 3:p.201−213(1983年)に概説されている。
【0100】
裸のDNAもしくはRNA又はウイルスベクターの他に、設計された細菌をベクターとして使用することができる。Salmonella、BCG及びListeria monocytogenes(LM)を含む多くの細菌株(Hoiseth & Stocker、Nature 291:p.238−239(1981年);Poirier,T Pほか、J.Exp.Med.168:p.25−32(1988年);(Sadoff,J.C.ほか、Science 240,p.336−338(1988年);Stover,C.K.ほか、Nature 351,p.456−460(1991年);Aldovini,A.ほか、Nature 351,p.479−482(1991年);Schafer,R.ほか、J.Immunol.149,p.53−59(1992年);Ikonomidis,G.ほか、J.Exp.Med.180,p.2209−2218(1994年))。これらの微生物はワクチンベクターとして用いるための2つの有望な特性を示す:(1)経口的にワクチンを送達させる能力をもたらす腸内感染経路;及び(2)単球/マクロフェージの感染により抗原がフェッショナルAPCの標的となる、というものである。
【0101】
インビボでのウイルス媒介遺伝子移入の他に、DNAを直接的に移入するために、プラスミドDNAの投与(Wolffほか、Science、247:p.1465−1468 (1990年);Hickman,M.A.ほか、Hum.Gene Ther.、5:p.1477−1483(1994年))及び微粒子銃(particle bombardment)媒介遺伝子移入(O’Brien,J.ほか、Brain Res Brain Res Protco、10:p.12−15(2002年))を含む、当該分野で周知の物理的手段を用いることができる。さらに、インビトロで遺伝子を細胞中に移入するための周知の手段である電気穿孔法を用いてDNA分子をインビボで組織に移入することができる(Titomirov,A.V.ほか、Biochim.Biophys.Acta 1088:p.131((1991年))。
【0102】
「担体媒介遺伝子移入」についても記載がある(Wu,C.H.ほか、J.Biol.Chem.264:p.16985(1989年);Wu,G.Y.ほか、J.Biol.Chem.263:p.14621(1988年);Soriano, P. ほか、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:p.7128(1983年);Wang,C−Y.ほか、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:p.7851(1982年);Wilson,J.M.ほか、J.Biol.Chem.267:p.963(1992年))。好ましい担体は、アシル化mAbを脂質二重層に取り込むことができる免疫リポソームなどの標的化リポソーム(Liu et al. Curr Med Chem、10:p.1307−1315(2003年))である。アシアログリコプロテイン/ポリリジン(Wuほか、1989年、上掲)などのポリカチオンを用いることができ、この場合、この結合体は標的組織を認識する分子(例えば、肝臓用のアシアロオロソムコイド)及びDNAに結合して形質移入されるDNA結合性化合物を含む。ポリリジンは、DNAに損傷を与えることなくそれに結合するDNA結合性分子の1例である。次に、この結合体はプラスミドDNAと複合体を形成して移入される。
【0103】
形質移入又は微量注入のために用いるプラスミドDNAは、当該分野で周知の方法を用いて、例えば、Quiagen法(Quiagen)を用いた後、本明細書に例示した方法などの既知の方法を用いてDNAを精製することにより調製することができる。
【0104】
6. 併用療法
開示の組成物は、単独で、又は、免疫抑制因子、例えば他のリンパ球表面マーカー(例えばCD40)又はサイトカインに対する抗体、他の融合蛋白質、例えばCTLA41g、又は他の免疫抑制薬(例えばサイクロスポリンA、FK506−様化合物、ラパマイシン化合物、又はステロイド)、抗増殖剤、細胞毒性剤、又は免疫抑制を補助しうる他の化合物を含むがこれに限られない一つ以上の追加的治療剤と組み合わせて、必要な対象に投与されうる。
【0105】
本明細書で使用されるところの、「ラパマイシン化合物」という用語は、中性の三環式化合物ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、ラパマイシンアナログ、及びラパマイシンと同じ作用機序(例えばサイトカイン機能の阻害)を有すると考えられる他のマクロライド系化合物を含む。「ラパマイシン化合物」という語は、ラパマイシンと構造的な類似性を有する化合物、例えば治療効果を増強するために改変されている、類似の大環状構造を有する化合物を含む。例示的なラパマイシン化合物は、従来技術において周知である(例えば国際公開第95122972号、第95116691号、第95104738号、米国特許第6,015,809号;第5,989,591号;米国特許第5,567,709号;第5,559,112号;第5,530,006号;第5,484,790号;第5,385,908号;第5,202,332号;第5,162,333号;第5,780,462号;第5,120,727号を参照)。
【0106】
「FK506−様化合物」という語は、FK506、及びFK506誘導体及びアナログ、例えばFK506と構造的類似性をもつ化合物、例えば、治療効果を高めるために改変されている、類似の大環状構造をもつ化合物を含む。FK506−様化合物の例には、例えば国際公開第00101385号において記載されるものが含まれる。本明細書で用いられるところの「ラパマイシン化合物」という語には、FK506−様化合物が含まれないのが好ましい。
【0107】
別の適切な治療薬には、抗炎症剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。抗炎症剤は、非ステロイド性、ステロイド性、又はその組み合わせでありうる。一実施態様は、約1%(w/w)〜約5%(w/w)、典型的に約2.5%(w/w)又は抗炎症剤を含む経口組成物を提供する。非ステロイド系消炎薬の代表例には、ピロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、スドキシカム等のオキシカム;アスピリン、ジサルシド、ベノリレート、トリリセート、サファプリン、ソルプリン、ジフルニサル、及びフェンドサル等のサリチル酸塩;ジクロフェナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イソキセパック、フロフェナック、チオピナク、ジドメタシン、アセマタシン、フェンチアザク、ゾメピラク、クリダナク、オクキセピナク、フェルビナク、及びケトロラック等の酢酸誘導体;メフェナミック、メクロフェナミック、フルフェナミック、ニフルミック、及びトルフェナミック酸等のフェナム酸;イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、インドプロフェン(indopropfen)、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、及びチアプロフェン等のプロピオン酸誘導体;フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾン、及びトリメタゾン等のピラゾールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの非ステロイド系消炎薬の混合物が用いられてもよい。
【0108】
ステロイド性抗炎症薬の代表例には、ハイドロコルチゾン、ヒドロキシル−トリアムシノロン、アルファ−メチルデキサメサゾン、デキサメサゾン−フォスフェート、ベクロメタゾンジプロピオネート、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デソキシメタゾン、酢酸デゾキシコルチコステロン、デキサメサゾン、ジクロリゾン、ジフロラゾンジアセテート、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、ピバリン酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン(フルプレドニリデン)、フルランドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、ジフルオロゾンジアセテート、フルラドレノロン、フルドロコルチゾン、ジフルロゾンジアセテート、フルラドレノロンアセトニド、メドリゾン、アムシナフェル、アムシナフィド、ベタメタゾン及びそのエステルの平衡物、クロロプレドニゾン、酢酸クロロプレドニゾン、クロコルテロン、クレシノロン、ジクロリゾン、ジフルルプレドネート、フルクロロニド、フルニゾリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンシクロペンチルプロピオネート、ヒドロコルタメート、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ベクロメタゾンジプロピオネート、トリアムシノロン、及びその混合物等のコルチコステロイドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
V. トランスジェニック動物
B7−H4を発現しないか発現が減少したトランスジェニック非ヒト動物が、スクリーニング及びテストにおいて有用である。内因性B7−H4遺伝子及び対立遺伝子が、遺伝子に遺伝因子を挿入して発現を妨げることにより妨げられうる。内因性B7−H4遺伝子が、相同的組み換えを使用して欠失されるのが好ましい。代表的な非ヒトトランスジェニック動物には、マウス又は他の齧歯類、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、及び非ヒト霊長類が含まれる。
【0110】
トランスジェニック動物が、B7−H4がいかに免疫系を調節するか、特にB7−H4がいかに免疫反応を抑制するかを研究するための研究ツールとして用いられうる。例えば、トランスジェニック動物を用いて、内因性B7−H4生物活性を模倣する化合物、又は、可溶性B7−H4と相互作用する化合物をスクリーニングできる。
【0111】
本発明は、以下の限定されない実施例を参照することによってさらに理解されよう。
【実施例】
【0112】
(実施例1)
B7−H4KOマウスの作製
マウス
6乃至8週令のC57BL16(B6)マウスをJackson Laboratoryから入手した。RAG−1 KOマウスはTaconic Farmsから購入した。実験には雌雄マウスとも使用した。全てのマウスは、Johns Hopkins Animal Facilityにおいて施設内動物管理使用委員会により承認された全てのプロトコルを用いて特定病原体感染防止条件下で飼育した。相同組換えによって遺伝子KOマウスを作製する一般的な方法については、Dong, H.ほか、Immunity 20:p.327−336 (2004年);Tamada, K.ほか、J. Immunol.、168:p.4832−4835 (2002年)により記載された。B7−H4KOマウスを作製するために、129SvJ細菌人工染色体(BAC)ライブラリ(Invitrogen、Carlsbad、CA)からマウスB7−H4ゲノムDNAのIgVドメイン(エクソン3)の上流の5.09kbDNA断片をPCR増幅し、pKOスクランブラーベクターNTKV−1907(Stratagene、La Jolla、CA)の5’アーム位中にクローニングした。同じライブラリからB7−H4ゲノムDNAのIgCドメイン(エクソン4)の下流の5.57kbDNA断片をPCR増幅し、同じベクターの3’アーム位中にクローニングしてB7−H4遺伝子からのIgV及びIgCドメインの除去をもたらす標的プラスミドを作製した(図1A)。B7−H4遺伝子の5’アーム及び3’アーム配列、ポジティブ選択マーカーNEO及びネガティブ選択マーカーTKを含有する標的断片を129SvIE胚幹(ES)細胞中に形質移入した。ES細胞形質移入体をネオマイシン薬剤選択にかけた。標的とするクローンは、3’外部プローブを用いるサザンブロット分析によって同定した。個々のB6の胚盤胞中に標的ES細胞を注入することによりキメラマウスを作製した。キメラマウスをB6マウスと交配してヘテロ接合体B7−H4(+I−)マウスを得た。野生型及びB7−H4対立遺伝子欠失を識別するためにPCR分析を行った。3種のPCRプライマーの配列は以下の通りとした。
【0113】
【化1】
10世代超の間B6へ戻し交配することによりホモ接合体マウスを作製した後、更なる分析に用いた。B7−H4KOマウスとRAG−1KOマウスとを戻し交配することによりB7−H4KO/RAG−1KOマウスを得た。
【0114】
B7−H4遺伝子のIgV及びIgC領域全体を欠損させてその潜在的な受容体とのこれらの相互作用を完全になくすことで129ES細胞における相同組換えを行ってB7−H4KOマウスを作製した。B7−H4遺伝子のIgV及びIgCドメインをコードするエクソンはNeo遺伝子カセットで置換した(図1)。ES細胞の標的組換えはサザンブロット分析によって確認し、4つの独立したESクローンからのデータを図に示した。
【0115】
B7−H4+対立遺伝子は12.25kb Spe1断片を有し、B7−H4−対立遺伝子は8.9kb Spe1断片を有すると予測される。両断片を有するクローン(2及び3)は組換えが生じたことを示す。これらのESクローンから標準的な手順によりキメラ雄性マウスを得た。こうしたマウスをC57BL16(B6)雌へ戻し交配し、2つの独立した標的ESクローンからヘテロ接合体改変マウスを確立した。次いで、B7−H4改変マウスがヘテロ接合体であるかホモ接合体であるかについて、尾部生検試料から単離したゲノムDNAのPCR分析により確認した。サザンブロット分析によってゲノムDNAが置換されていることを確認した。RT−PCR分析によってB7−H4欠損マウスの肝臓ではB7−H4mRNAが発現されていないことが明らかとなった。B7−H4KOマウスは正常に成長し、正常な同腹仔数が得られた。こうしたマウスを10世代の間、B6バックグラウンドへ戻し交配した後、下記の実験に用いた。
(実施例2)
B7−H4KOマウスにおけるリステリア菌感染に対する顆粒球媒介抵抗性の増強
抗体、組換え蛋白及びフローサイトメトリー分析
FITC、PE又はAPCと直接結合体を形成する、マウスGr−1及びCD11bに対する一次及び二次抗体はBD Pharmingen(San Diego、CA)又はeBiosciences(San Diego、CA)から購入した。結合体を形成していない一次抗体をハイブリドーマ培養上清から精製した。B7−H4Ig融合蛋白はSica,G.L.ほか、Immunity、18:p.849−861(2003年)に記載されているのと同様にして調製した。細胞は全て先に記載したように標準的なプロトコルを用いて染色し、FACSCaliburフローサイトメトリーで分析した(同上文献)。そのデータはSoftware CellQuest (BD)又はFlowJo (Tree Star Inc.、Ashland、OR)を用いて解析した。インビボ実験の場合、mAbは、以前に記載された様に(同上文献)調製し、精製した。抗NK1.1ハイブリドーマ(PKl36)及び抗IFN−γハイブリドーマ(R4−6A2)はATCCから購入した。抗Gr−1ハイブリドーマ(RB6−8C5)はシカゴ大学のHans Schreiber博士から親切な提供を受けた。対照マウスIgG、ラットIgG及びハムスターIgGはSigma(St.Louis、MO)から購入し、さらに、以前に記載された様に(同上文献)精製した。カラゲナンはSigmaから購入した。全ての細胞培養培地及び抗体はCellgro(Herndon、VA)から購入した。ウシ胎仔血清(FBS)はHyclone(Logan、UT) から購入した。
【0116】
リステリア菌感染及びコロニー計数
Listeria monocytogenes株DP−L4056はCerus Corp.のThomas W.Dubensky Jr.博士から親切な提供を受けた。リステリア菌のストックを調製するため、リステリア菌細胞をDlFCO Listeria Enrichment Broth (Becton Dickinson Co.、Sparks、MD)中、OD600nmで0.8乃至1となるまで増殖させた。培養物を遠心分離により採集しPBSで2度洗浄した。次いで、ペレットをストック用溶液(15乃至20%グリセロール含有PBS)に再懸濁し、マイクロチューブ当たり200μlのアリコートにして−80℃で貯蔵した。リステリア菌ストックのコロニー形成単位(CFU)は、BBL CHROMagar Listeriaプレート(Becton Dickinson Co.、Sparks、MD)上で増殖する上記アリコートの希釈系列液のコロニーを計測することにより求めた。感染させる前に、リステリア菌ストックを解凍してPBSで適切なCFU/ml濃度に希釈し、示したようにしてマウス又は細胞に適用した。6乃至8週令のマウスに対して、示したCFUのリステリア菌を腹腔内(i.p.)又は静脈内(i.v.)注射して感染させた。感染後の示した時点で、マウスの肝臓又は膵臓の一片を切り取り、重量を計ってPBS中ですり潰した。得られた肝臓懸濁液はBBL CHROMagar Listeriaプレート又はListeria Enrichment Brothの寒天プレート上で平板培養した。平板培養後2日にコロニーを計数し、肝臓又は脾臓のCFUIgに調整した。
【0117】
インビトロにおける顆粒球のリステリア菌感染
顆粒球は、Chen, L. Y.ほか、Hum. MoL. Genet、12:p.2547−2558 (2003年)に記載の方法と同様にして単離した。つまり、マウスに3%チオグリコレート培地をi.p.注射した。注射後4乃至5時間に、各マウスの腹膜腔を5mlのPBSで洗浄し、遠心分離により細胞を収集した。この方法では、採集細胞の90%より多くが、Gr−1+CD11b+顆粒球であった。1×106個の顆粒球を1×108CFUのLMと37℃で10分間インキュベートした。培養は、Penicillin−Streptomycin(Cellgro)の添加によって終結した。次いで、遠心分離によって細胞を収集し、これを96穴プレートで平板培養した。プレートを37℃でインキュベートし、示した時点で採集した。細胞は、1mlの滅菌水中に再懸濁して直ちに溶解させた。細胞溶解液又は希釈細胞溶解液をListeria Enrichment Brothの寒天プレート上に平板培養してコロニーを計数した。
【0118】
顆粒球の呼吸バースト及び貪食
Radsak,M.P.ほか、J. Immunol.、172:p.4956−4963 (2004年);Radsak,M.P.ほか、Blood、101:p.2810−2815(2003年)に記載の方法と同様にして、顆粒球の貪食活性及び酸化的バースト活性を測定した。つまり、1×106個の顆粒球を5×107個の赤色蛍光マイクロビーズ(FLUORESBRITE(登録商標) Polychromatic Red 1.0 Micron Microspheres、Polysciences Inc.、Warrington、PA)及び25μMのDCFH−DA(2’,7’−ジヒドロクロロフルオレセイン二酢酸、Sigma−Aldrich)と共に37℃で30乃至60分間インキュベートした。次いで、細胞をFACS緩衝液(1%FBSを含むPBS)で2度洗浄し、1%パラホルムアルデヒドを含むPBSで固定した。分析はフローサイトメトリーによって行った。
【0119】
病理学
組織の処理及び染色の方法についてはDong,H.、Nature Med. 8:p.793−800(2002年)に記載されている。簡単に言えば、6乃至8週令のマウスの脾臓試料をOCT化合物(Sakura Finetek USA、Torrance、CA)で包埋し、−80℃で凍結した。凍結組織はスライスにし、固定して5μg/mlのGr−1−ビオチン抗体で染色した。次いで、ABCペルオキシダーゼ(Vector laboratories Inc.、Burlingame、CA)及びDABペルオキシダーゼ基質(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)をメーカーのプロトコルに従ってスライドに適用した。最後に、ヘマトキシリン液を用いてGr−1ネガティブ細胞を染色した。
【0120】
結果
B7−H4KOマウスは正常な数及び率のT、B、NK、NKT細胞及びマクロファージを示す。CD3架橋による精製T細胞のインビトロ増殖、同種抗原刺激又は同種抗原に対する細胞傷害性T細胞の応答により判断して、T細胞応答に明白な変化は認められない。これらの結果から、抗原に対する多クローン性T細胞の応答はB7−H4KOマウスでは損なわれないことが示される。こうしたインビトロの知見と符合して、B7−H4KOマウスはCon−A誘導肝炎(Dong,H.ほか、Immunity、20327−336(2004年))、ハプテン誘導過敏症(Tsushima,F.ほか、Eur.J,Immunol.、33:p.2773−2782(2003年))及びOVA誘導気道炎症(Kamata,T.、J.Clin.Invest、111:p.109−119(2003年))に対して正常な応答を示すことも見出した。また、B7−H4欠損マウスはOVA蛋白に対するOT−I及びOT−II細胞の増殖(Sica,G.L.、Immunity、18849−861(2003年))、超抗原に対するCD4−Vβ8.118.2T細胞の増殖(Tamada,K.ほか、J.Immunol.、168:p.4832−4835(2002年))並びにインビボにおける同種抗原に対するCTL活性(Tamada,K.、Nature Med.、6:p.283−289(2000年))において野生型マウスと同等であることも見出した。また、正常なB細胞応答がTNP−KLHによる免疫化(Tamura,H.et al.、Blood97:p.1809−1816(2001年))後に認められた。B7−H4KOマウスは、SPF条件で最長1.5年、自然発生の自己免疫疾患を発症しない。
【0121】
これらのデータからB7−H4はアッセイにおける抗原駆動T及びB細胞応答に最小の関与であることが分かるが、これらの応答は、活動性感染の非存在下に行われたものであり、活動性感染が存在すれば、通常、自然免疫と適応免疫との精巧な協調を必要とする。この可能性を検証するために、B7−H4を除いた場合の影響をListeria monocytogenes (LM)に感染させたマウスで評価してB7−H4が感染に対する免疫に寄与するかどうかを調べた。マウスに、致死性を誘導するのに十分な腹腔内(i.p.)用量(2×106CFU)のLMを感染させた。次に、こうしたマウスの生残について評価した。B7−H4KOマウスはLM感染に対して有意により抵抗性であった。即ち、B7−H4KOマウスは野生型(WT)同腹仔よりもはるかに長く生残し、マウスの最大40%が細菌を除去し、いつまでも生存したのに対して、全ての同腹仔は9日目前後で死亡した(図2a)。この効果は、B7−H4KOマウスの脾臓(図2b)及び肝臓中のリステリア菌数の減少と相関性がある。興味深いことに、大部分のマウスは、適応免疫が通常まだ発達していない時点である3乃至4日以内に死んでいた。従って、これらの結果から、B7−H4は自然免疫応答の状況を変えることに関与することが示唆される。
【0122】
この抵抗性のメカニズムに取り組むために、自然免疫及び適応免疫の細胞組成を調べた。マウスをリステリア菌に感染させ、末梢血及びリンパ系器官中のT細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ及び顆粒球を特異的mAbによって調べた。LM感染後最初の3日以内ではNK、マクロファージ、T細胞及びB細胞に有意な差違は見られなかったが、脾臓中の顆粒球は、感染3日目で、同一に感染させたWT同腹仔よりもLM感染B7−H4KOマウスから有意により多く見出された(図2c)。同様な結果は、感染後の肝臓から単離される顆粒球及び末梢血の顆粒球においても得られた。しかしながら、未感染のB7−H4KOマウスでは、顆粒球数はWT対照の正常範囲内にあった。これらの結果から、B7−H4の役割はLM感染時の顆粒球応答を阻害することにあることが分かる。
【0123】
B7−H4KOマウスにおけるLM感染の抵抗性に顆粒球が必要とされるかどうかを明らかにするために、Gr−1mAbを接種することにより顆粒球を枯渇させた。Gr−ImAbを注射すると、2日目の脾臓において顆粒球が検出不可能なレベルにまで急速に減少した。Gr−Iおよび顆粒球を枯渇させると、PBS又はアイソタイプ適合対照mAbで処置したマウスと比較して、B7−KOマウスからの肝臓におけるLM負荷は有意に増大した(図2d)。NK細胞をNKI.ImAbによって枯渇させても肝臓におけるLMのコロニー形成に影響を及ぼさなかったが、マクロファージをカラゲナンにより枯渇させると、LMコロニーは中等度に増殖したが、Gr−I細胞枯渇の場合に比し、より重要性の低いレベルであった。従って、これらの結果は、Gr−Iおよび顆粒球が、B7−H4非存在下におけるLM感染に対する抵抗性に重要な役割を果たしていることを示すものである。
【0124】
B7−H4欠乏顆粒球では機能性が改変されているかどうかについて精製顆粒球とLMとの共培養により明らかにした。B7−H4欠乏顆粒球は培養系中のLMの正常な取り込み及び増殖阻害を示した(図3)。さらに、B7−H4KO顆粒球による呼吸バースト及び貪食も正常であり、B7−H4KO顆粒球はWT顆粒球と機能的に異ならないことが示された。従って、B7−H4KOマウスにおいてLM感染に対する抵抗性が増大するのは、顆粒球の機能的能力の増大によるのでなく、顆粒球数の増加による可能性が高い。
(実施例3)
B7−H4KOマウスの顆粒球媒介自然抵抗性は適応免疫と無関係である。
【0125】
活性化及び記憶T細胞はLMに対する免疫における重要な構成要素である(Nathan,C. Nature Rev.ImmunoL、6:p.173−182(2006年))。データはLM感染に対するB7−H4KOマウスの抵抗性が顆粒球を必要とすることを支持しているが、適応免疫もこの抵抗性に寄与しているかどうかは不明である。LM感染後の顆粒球数の増加はB7−H4KOマウスに見出される主要な表現型であるので、LM感染に対するB7−H4KOマウスの反応を適応免疫の非存在下に調べた。B7−H4KOマウスは、RAG−1KOバックグラウンドへ戻し交配してT及びB細胞を除去した。
【0126】
結果
小さな脾臓を有するRAG−1KO(RKO)マウスと異なって、B7−H4/RAG−1二重KO(DKO)マウスは脾臓の拡大を呈する。DKOマウスの脾臓サイズはB6バックグラウンドにおけるWT及びB7−H4KOマウスと同様である。脾臓、末梢血、肝臓及び骨髄の細胞成分をさらに分析すると、Gr1+CD11b+顆粒球が劇的に増加することが明らかとなった。
【0127】
RKO及びDKOマウスに対して、その後、致死量のLMを投与して感染させ、これらの自然抵抗性を検討した。LMによりRKOマウスを感染させることによって肝臓のLMは指数関数的に増殖し、4日目には死亡率100%となった(図4)。これとは際立って対照的に、DKOマウスは2日目の肝臓における細菌負荷が有意に少なく、大部分のマウスはLM感染後10日を超えて生残することができた(図4)。脾臓を含む他の器官でも同様なLMの指数関数的増殖が認められ、LM感染の播種が示された。感染B6バックグラウンドB7−H4KOマウスのかなりの割合が長期間生残した(図2a)のとは対照的に、DKOマウスは全て最終的に15日目に感染死したことは、適応免疫の重要な役割を確認するものである(図4)。LMが2日目という早期にDKOマウスの肝臓その他の器官から速やかに除去されたことと合せ、その結果は、B7−H4の欠乏によってLM感染に対する自然免疫が増強され、これは主として顆粒球の増加によって媒介されることを示す。
(実施例4)
B7−H4は顆粒球の増殖を直接阻害する。
【0128】
骨髄細胞の培養並びに顆粒球の増殖及び阻害試験
骨髄細胞を吸引し、Wilcox,R.A.ほか、Blood、103:p.177−184(2004年)に記載されている方法と同様にして調製した。B7−H4媒介増殖阻害の場合、96穴プレート中でB7−H4Ig又は対照マウスIgを一夜コーティングした。十分洗浄した後、組換えマウスG−CSF(Pepro Tech Inc.、Rocky Hill、NJ)を示した濃度で含み、又は含まない24穴プレート中でBM細胞を2×106個/穴平板培養した。示した時点で細胞を採集し、Beckman Coulter Counter(Beckman、Fullerton、CA)で細胞数を計数した。細胞増殖を調べるために、2×105/穴のBM細胞をG−CSFを含む96穴プレート中で平板培養した。3HTdRでパルスした後、細胞を3HTdRパルス後16時間にFilterMateセルハーベスタ(Perkin Elmer、Shelton、CT)で収集した。取り込まれた3HTdRはTrilux Liquid Scintillation及びLuminescence Counter(Wallac、Turku、Finland)によって検出した。細胞分裂試験の場合、まず、BM細胞を2μMのカルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(carboxfluorescein diacetate succinimidyl ester)(CFSE、Invitrogen、Carlsbad、CA)で標識し、次いで96穴又は24穴プレートにおける培養物に添加した。示した時点で細胞を収集し、mAb Gr−1及びCD11bで染色し、種々の時点のCFSE含量(2)についてフローサイトメトリー分析を行った。
【0129】
結果
B7−H4KOマウスにおいて顆粒球が増加したことから、B7−H4は顆粒球に増殖阻害シグナルを送達することに関与していることが示唆される。B7−H4KOマウスからの顆粒球について、これがWT顆粒球よりも増殖能に優れているかどうかを明らかにするための検討を行った。これを行うために、多数の顆粒球前駆体を含有する骨髄(BM)細胞をWT又はB7−H4KOマウスから調製し、G−CSFの存在又は非存在下に3日間培養して顆粒球/好中球の分化を促進した。次いで、BM細胞の増殖を 3HTdRの取り込みにより測定した。図5aに示したように、BM細胞は用量依存性に増殖することでG−CSFに反応するが、B7−H4KOマウスからのBM細胞の増殖はWT細胞からの場合よりも有意に高かった。培養の最後においてG−CSFに反応するBM細胞のフローサイトメトリー分析を行った結果から、生残細胞の95%超はCD11b+Gr−1+顆粒球であることを示している。
【0130】
このデータは顆粒球におけるB7−H4の阻害効果と一致しているが、BM細胞中の他の細胞成分が増殖に寄与することも考えられる。この可能性を明確に排除するために、BM細胞をCFSEで標識し、G−CSFで3日間刺激した後、この細胞を抗Gr−1+/CD11b+mAbで染色することにより細胞分裂に関して顆粒球を観察した。図5bは、B7−H4KOマウス(B6)からの70%のGr−1+CD11b+顆粒球が少なくとも1回分裂するのに対し、WTB6マウスからのわずか56%の顆粒球がCSFEの希釈を示した。同様ではあるがより大きな有意差がRAG−1KOバックグラウンドを有するマウスで見出された。即ち、DKOマウスの86%の顆粒球が分裂を始めたのに対し、RKOマウスからのわずか64.8%の顆粒球がCSFEの希釈を示した。従って、これらの結果から、BM細胞においてB7−H4が欠乏すると、BM由来顆粒球の増殖が増大することが示唆される。
【0131】
B7−H4の欠乏がBM由来顆粒球の増殖増大をもたらし得ることを考慮して、B7−H4がその増殖を直接阻害することができるかどうかを調べた。これを検証するために、組換えB7−H4Ig融合蛋白の存在下にWT BM由来顆粒球を培養し、顆粒球の増殖について調べた。WT BM細胞の増殖は、B7−H4の細胞外部分と免疫グロブリンFcとの融合蛋白であるB7−H4Igによって有意に阻害された。この阻害は培養3日目で明らかであり、4及び5日目でより著しくなった(図6a)。培養液に0.1ng/mlのG−CSFを添加すると、BM細胞の増殖が中等度に増大したにもかかわらず、B7−H4Ig媒介の抑制は有意には覆されなかった(図6b)。しかしながら、培養液中のG−CSFを1ng/mlに増加させると、BM細胞のB7−H4Ig媒介増殖阻害を大きく回復させることができた(図6c)。同様な阻害はB7−H4欠乏顆粒球でも認められた。集約すると、これらの結果から、さらに、B7−H4は顆粒球の増殖に対して阻害的であるが、これをG−CSFが逆転させ得るという証拠が得られる。
【0132】
B7−H4がリステリア菌感染に対する自然免疫を負に調節し得ることを発見した。B7−H4の効果は顆粒球の増殖抑制によって媒介されると考えられる。末梢組織におけるB7−H4の広範な発現パターンとの関連で、これまでに記載したT細胞応答の阻害におけるB7−H4の役割の他に、B7−H4が末梢組織の自然免疫の制御において重要な調節分子であることをデータは裏付けている。
【0133】
B7−H4KOマウスでは、B7−H4蛋白の細胞外部分の大部分が欠損することにより内因性B7−H4とその推定上の受容体との相互作用が完全に排除される。しかしながら、この遺伝子を除去すると、インビトロにおける多クローン性及び異種抗原刺激に対するT細胞応答に強い影響はない。Suh,W.K.ほか、Mol.Cell.Biol.、26:p.6403−6411(2006年)により報告された最近の研究でも同様な観察がなされている。これらの知見からB7−H4はCD3架橋又は異種抗原に対する強い多クローン性T細胞応答の阻害に実質的には影響を及ぼさないことが示唆されるが、B7−H4がT細胞応答のカスケードにおけるより選択的な段階に影響する可能性がある。例えば、最近の研究では、B7−H4KOマウスは数種の気道炎症反応並びにLCMV及びインフルエンザ感染に対して正常に反応するが、Leishmania major感染に対してはこのマウスはT細胞免疫応答の軽度の増強を示すことが分かっている。しかしながら、このノックアウト系では顆粒球の応答については検討されていない。今回の実験から、リステリア菌感染におけるB7−H4の主要な役割は顆粒球媒介自然免疫を抑制することであり、この効果は適応免疫系の非存在下のRAG−1 KOマウスでも認め得ることが示唆される。従って、これまでに報告されたT細胞免疫の阻害の他に、B7−H4は細菌感染に対する自然免疫の負の調節に重要な役割を果たし得る。
【0134】
B61B7−H4KOマウスの脾臓では顆粒球が軽度に増加するが、LM感染時には顆粒球は劇的に増加する(図2)。しかしながら、この増加は、単にLM誘導性炎症による動員の増大によるものではない。B6バックグラウンドのB7−H4KOマウスは感染のない血液、骨髄及び脾臓において顆粒球のわずかな増加を示す。RAG−1 KOバックグラウンドではより劇的な顆粒球増加が認められる。さらに、B7−H4KOマウスからの骨髄細胞はG−CSF刺激存在下により多くの顆粒球を産生する。最後に、培養液にB7−H4蛋白を含めると骨髄由来顆粒球の増殖が有意に阻害される。顆粒球の阻害におけるB7−H4の役割は、培養液により高濃度のG−CSFを添加することで少なくともある程度逆転し得る。G−CSFはインビボにおける顆粒球の増殖及び恒常性のための重要な因子である。この結果から、B7−H4はインビボにおけるG−CSFの役割に拮抗する負の調節因子として働き得ることが示唆される。集約すると、これらの結果から、B7−H4は、顆粒球の第一位の増殖因子であるG−CSFに対する顆粒球の反応性の阻害シグナルを供給することにより、顆粒球の恒常性を調節できることが確認される。
【0135】
B7−H4は、その推定上の受容体に結合すると、T細胞の細胞周期の進行を阻害することが示されている(Sica,G.L.ほか、Immunity 18:p.849−861(2003年);Kryczek,I.、J.Eicp.Med.、203:p.871−881(2006年))。この細胞培養系では、CFSEの希釈及び3HTdRの取り込みが明らかに阻害される(図6a)。骨髄細胞は、顆粒球の重要な増殖因子であるG−CSFを外因的に供給しなくても増殖(図6a)及び細胞分裂(図5g)が観察された。内因性G−CSFが骨髄細胞によって産生され、インビトロにおける基底レベルの増殖を維持している可能性がある。この抑制はG−CSFを添加することで大きく逆転し得た(図6c)。培養中、細胞アポトーシスの有意な増加は最長5日間認められなかった。従って、B7−H4結合による顆粒球において増殖阻害が主要なメカニズムであり得る。B7−H4mRNAは種々の細胞によって広く発現されるが、その細胞表面発現は、卵巣癌及び浸潤性マクロファージにおいて観察されたように(Kryczek,I.ほか、J.Eicp.Med.、203:p.871−881(2006年))、大部分は細胞質内に含み得る。B7−H4の表面発現が骨髄微小環境内のサイトカインによって調節されて顆粒球の増殖を阻害し得る。
【0136】
好中球を含む顆粒球は感染部位に最も早期に達する細胞の一つであり、貪食能を介した個々のの感染防御の最前線である(Nathan,C. Nature Rev.、Immunol.、6:p.173−182(2006年))。B7−H4KOマウスにおいてリステリア菌感染に対する抵抗性が増大することを示す上記知見は、リステリア菌及び恐らく他の病原体による感染に対する自然免疫を増強する新たなアプローチを包含する。また、RAG−1バックグラウンドのB7−H4KOマウスが、B6バックグラウンドのB7−H4KOマウスと比較して顆粒球数のより顕著な増加を示し、初期相のLM感染に対してより抵抗性であることも興味深い。こうしたデータは、顆粒球の恒常性及びリステリア菌感染に対する応答におけるT及びB細胞を含む適応免疫の構成要素の抑制的な役割の可能性を包含している。従って、アンタゴニスト活性を有する中和mAb又は適切に設計されたB7−H4蛋白のような、B7−H4発現を選択的に遮断する方法は、顆粒球を増加させ、病原体感染に対する自然免疫を増強する新しいアプローチを示す。
(実施例5)
関節リウマチ患者の血清中の可溶性B7−H4は重症度と相関する。
【0137】
患者及び健常ドナー:
Mayo ClinicのInternal Review Boardの承認の下、RAと診断された68人の患者、SLEと診断された35人の患者、及び24人の正常な健常ドナーから、血清試料が得られた。RA患者は、以下の4群に分類された。0:活動性疾患なし、1:1〜4の能動関節、2:5〜9の能動関節、3:10以上の能動関節で、関節外病変を伴うか伴わない。
【0138】
可溶性B7−H4、コラーゲン特異的自己抗体及び抗dsDNA自己抗体の検出:
ヒトsH4の検出のために、ヒトB7−H4に対する特異的mAb hH4.3(2μg/ml)及びhH4.1(2μg/ml)が、ELISAにおいてそれぞれ捕捉及び検出として使用された。リウマチ因子を除去するために、ELISAでの検出の前に、ヒトIgGアガロース(Sigma−Aldrich、St.Louis、Missouri)で血清が処置された。コラーゲン特異的自己抗体の測定のために、ニワトリコラーゲン(lμg/ml)が、プレートに一晩4℃でコートされ、検出抗体としてはビオチン結合抗マウスIgG、IgG1、IgG2a及びIgG2b Ab(BD、San Jose、CA)である。抗dsDNA自己抗体レベルを測定するために、PBS中10μg/mlのサケ精巣からのdsDNAが、プレートに一晩4℃でコートされ、HRP結合抗マウスIgG(BD、San Jose、CA)である。
【0139】
ウェスタンブロット:
血清が、2Xサンプルバッファー(100mM Tris緩衝食塩水中4%SDS、0.2%ブロムフェノールブルー、20%グリセロール)と混合され、5分間沸騰された。試料は、10%Readyゲル(Bio−Rad、Richmond、CA)上の還元条件下で電気泳動され、蛋白質がProtran BA85(Whatman、Florham Park、NJ)上にエレクトロブロットされた。イモビロン−Pシートが、PBS中5%の脱脂粉ミルクで1時間ブロックされ、一晩4℃で抗体とインキュベートされた。反復洗浄(5分5回)の後、結合性抗体が、ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識により検出された。
【0140】
結果
sH4を検出するために、American Rheumatism Association規準にもとづいて関節リウマチと診断された個々の患者からの血清が、ヒトB7−H4の異なるエピトープに結合する二つの特異的単クローン抗体(mAb)を用いた酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA)により分析された。このアッセイにおいては、RA患者からの65%(68中44)の試料及びSLE患者からの43%(15/35)が、バックグラウンドを上回り、したがって陽性だった。健常ドナー(HD)におけるsH4の評価では、わずか13%(3/24)が陽性であった(図7a)。sH4は、RA及びSLE患者において健常ドナーより有意に高い(P<0.05)。さらに、RA(96.1ng/ml)及びSLE(36.9ng/ml)におけるsH4の平均濃度は、健常ドナー(3.8ng/ml)のものより有意に高かった。結果は、RA及びSLE患者の有意な部分においてsH4が上昇することを示す。
【0141】
ウェスタンブロット分析を用いて、3人の関節リウマチ患者からの血清におけるsH4の存在が確認された。B7−H4に対する特異的mAbを用いて、ELISAにおいて検出可能なsH4を有する3人のRA患者からの血清が、単一の50kDaのバンドを示した。これは、ヒトB7−H4の細胞外ドメインの予測サイズにマッチした。これに対して、三人の健常ドナーからの血清においてはハンドが観察されなかった(図7b)。データは、RA患者の血清におけるsH4の存在を支持する。
【0142】
sH4の濃度上昇とRAの重症度との関連が調査された。病気の重症度に基づいて、68人のRA患者が、方法に記載されるように、群3を最も重度として4群(0−3)に分類された。群3におけるsH4の平均濃度(260.7ng/ml)は、群0(22.0ng/ml)又は群1(18.8ng/ml)のものより有意に高かった。しかし、Scheffeテストによると、群0−2の間には有意差がなかった(図7c)。したがってデータは、群3のRA患者が最も高いレベルのsH4を有することを示し、sH4が重度のRAの進行に関与する可能性があることを示唆する。
(実施例6)
可溶性B7−H4がマウスモデルにおいてコラーゲン誘導性関節炎を悪化させる。
【0143】
マウス
雄DBA/1jマウス、MRL−lpr/lprマウス及びC57BL/6−lpr/lpr(B6−lpr/lpr)が、Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME)から得られた。生後4〜10週目の年齢がマッチしたマウスが、全ての実験に用いられた。このラボにおいて、B7−H4KOマウスが上述の通りに生成され、B6バックグラウンドに10世代戻し交配されている。DBA/1jバックグラウンドに5世代戻し交配されたB7−H4KOマウスにより、DBA/1j×B7−H4KOマウスが作製された。B6−lpr/lprとB7−H4KOマウスの間で戻し交配することにより、B6−lpr/lpr×B7−H4KOマウスが得られた。全てのマウスは、Institutional Animal Care and Use Committeeによる承認プロトコルの下で、Johns Hopkins HospitalのAnimal Facilityで維持された。
【0144】
コラージュ(collage)誘導性関節炎の誘導:
完全フロイントアジュバントにおいて乳化された4.0mg/mlのmycobacterium tuberculosis(DIFCO、Detroit、MI)を添加した0.05M酢酸中の0.2mgのニワトリコラーゲン(Sigma−Aldrich、St.Louis、Missouri)の尾基底皮内注射により、生後8〜10週目の雄DBA/1jマウスにおいてCIAが誘導された。最初の一次免疫の十四日後に、マウスが同じように一回ブーストされた。病気の重症度が、足の外観検査により評価された。各足が、炎症の程度につき0〜4のスケールで採点された:0、紅斑及び腫れの所見なし;1、中足(足根部)又は足関節に限定された紅斑及び軽度の腫れ;2、足関節から中足まで広がる紅斑及び軽度の腫れ;3、足関節から中足関節まで広がる紅斑及び軽度の腫れ;4、足首、足及び指趾を含む紅斑及び重度の腫れ。四つの足全てからのスコアが加算されて、各動物についての合計が得られた。
【0145】
ネズミB7−H4コンストラクト
Sica,G.L.ほか、B7−H4,a molecule of the B7 family,negatively regulates T cell immunity.Immunity 18,849−61(2003))に記載されるように、B7−H4Igコンストラクトが準備された。B7−H4V及びB7−H4VCプラスミドを生成するために、2つの隣接5’及び3’プライマがXhoI及びEcoRI制限部位をそれぞれ伴って設計された(5’プライマ;5’−ccgctcgagccaccatggcttccttggggcag−3’(SEQ ID NO:6)、B7−H4Vの3’プライマ;5’−cggaattccgctaatttatctctggcatact−3’(SEQ ID NO:7)、B7−H4VCの3’プライマ;5’−cggaattccgctaagagttcagcaactgcag−3’(SEQ ID N0:8))。プライマを使用して、cDNAの適切な領域が増幅された。PCR産物が、XhoI及びEcroRIで消化され、及びXhoI/EcroRI−消化pcDNA3.1ベクターにライゲートされた(Invitrogen、Carlsbad、CA)。
【0146】
コラーゲン特異的T細胞増殖及びサイトカイン産生。
【0147】
最後の免疫化の後、14日目に脾臓が除去された。磁性ビーズ(Miltenyi Biotec、Auburn、CA)を用いて、CD4+T細胞が精製された。全脾細胞又は精製CD4+T細胞が、96ウェル平底マイクロタイタープレートにおいて、変性(60℃、30分)ニワトリコラーゲンII型(CII)により72時間刺激され、[3H]チミジン(1μCi/ウェル)で(Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)最後の12時間パルスされた。精製CD4+T細胞の培養に、同系マウスからの照射(50Gy)脾細胞が、抗原提供細胞として加えられた。48時間後に培養からの上清が集められ、製造者により推奨されるプロトコルに従ってELISAキットを使用して、マウスIFN−γ(BD、San Jose、CA)及びIL−17A(eBioscience)につき検定された。
【0148】
結果
RAの病因におけるsH4の考えうる役割を反復し、調査するために、コラーゲン誘導性関節炎(CIA)のマウスモデルが用いられた。CIAは、良く特徴付けされたヒト関節炎のマウスモデルであり、DBA/1jマウスへのコラーゲン注射が大きな関節の腫れ及び進行性炎症を誘導し、関節炎をもたらす。インビボでsH4を発現するために、マウスB7−H4 cDNAの膜貫通及び細胞内ドメインを欠失させた発現ベクターB7−H4VCが構築され、IgV及びIgCドメインの両方をコードする切断遺伝子がCMV最初期プロモータの制御下におかれた。B7−H4のIgVドメインだけを含む別のベクター、B7−H4Vも作製された(図8a)。発現時には、これらの切断蛋白質/ポリペプチドが、細胞表面上の内因性B7−H4と競合して、その推定受容体と結合することが期待される。親ベクターが、コントロールとして含まれる。公知技術の流体力学的発現方法により、これらのプラスミドの注射が、二つの抗ネズミB7−H4 mAbを用いた特異的捕捉サンドイッチELISAに基づいて、血清中最大2μg/mlのsH4の発現をもたらした。
【0149】
CIAモデルにおいて、コラーゲンによるDBA/1jマウスの免疫化は、28日目頃から関節炎症状の外観をもたらした。コントロールベクターで処置したマウスは32日目から関節炎を発症し、80%のマウスが第一免疫化の後60日で病気を発症した。B7−H4VCの注射は、より早期の病気の発現(17日)をもたらし、100%のマウスが30日頃に関節炎を発症した。B7−H4Vが注射されたマウスにおいても、類似の結果が見られた(図8b)。さらに、B7−H4V又はB7−H4VCのいずれかによる処置は、臨床スコアの増加(図8c)、足蹠の腫れの増加及び組織病理学分析で示される炎症細胞の関節浸潤の増加により示されるように、関節炎の重症度を有意に増加させる。
【0150】
細胞及び液性免疫反応の評価から、免疫化及びB7−H4VC又はB7−H4V処置から30日後に、関節炎の発病率及び重症度の増加が、IgG1、IgG2a及びIgG2bを含む他のサブタイプだけでなく、コラーゲンCIIに対する全IgG自己抗体の上昇(8d図)を伴うことが明らかになった(図12)。B7−H4VC又はB7−H4Vで処置されたマウスからの全脾臓細胞又は精製CD4+T細胞のCIIによる刺激から、コントロールベクターで処置されたマウスと比較してはるかに高い増殖レベルも誘導された(図8e及び図13)。重要なことに、CIA進行の原因となる二つの主要サイトカインIFN−γ及びIL−17も、培養において有意に増加する(図8f)。合わせて考えると、データは、sH4がCIIに対する自己免疫反応を増強し、自己免疫CIAを悪化させることを示す。
【0151】
B7−H4VC及びB7−H4Vが、細胞表面上における内因性B7−H4の効果をブロックするデコイとして作用するならば、B7−H4欠損マウス(B7−H4KO)においても類似の増悪効果が観察されるはずである。これをテストするために、B7−H4KO表現型マウスが、DBA/1jバックグラウンドに5世代戻し交配された。B7−H4KO−DBA/1Jマウスは普通に成長し、全体的外観及び免疫系の発達において明らかな異常を有しない。しかしこれらのマウスは、はるかに深刻なCIAを発症し、B7−H4+/+コントロールマウスより高い形態論(図8g)及び臨床スコア(図8h)を示し、B7−H4VC又はB7−H4V処置マウスと類似の結果となった。したがって、データは、sH4がデコイ分子として機能して、自己免疫反応を増加させ、CIAを悪化させることを支持する。
(実施例7)
好中球増加がsH4によるCIAの増悪の原因となる。
【0152】
好中球の空気嚢アッセイ
Edwards,J.C.ほか、J Pathol,134:147−56(1981)に記載されるように、空気嚢アッセイが行われた。簡単にいうと、2,2,2−トリブロモエタノール(Sigma−Aldrich、St.Louis、Missouri)でマウスが麻酔され、5mlの無菌空気の注射により皮下胸椎嚢がつくられた。3日後に3mlの空気が嚢に再注射された。最初の注射の6日後に、1mlPBS中の50μgLPSが嚢に注射された。5時間後にマウスが麻酔され、嚢が3mlのPBSで洗浄されて浸潤細胞が集められた。
【0153】
結果
B7−H4KOマウスは、好中球の迅速な増加によりListeria感染に抵抗をもつ。さらなる実験は、B7−H4が好中球前駆体の増殖を直接阻害できることを示した。したがって、RAの進行性炎症の解釈を提供しうる仮説として、sH4は、内因性B7−H4を遮断し、これにより、好中球媒介性炎症を介してCIAを悪化させうる。sH4の発現がネズミの末梢組織における好中球を増加させるかが調査された。マウスのRA損傷における好中球数に直接アクセスするのが困難なため、炎症誘発後に好中球を皮下空気嚢から集められる空気嚢アッセイが用いられた。図9aに示されるように、B7−H4V又はB7−H4VCが注射されたマウスは、各空気嚢の好中球がコントロールベクターのものより有意に多かった。B7−H4KOマウスにおける前の研究と合わせて、結果は、sH4がインビボで末梢組織における好中球の迅速な増加を誘導することを示す。
【0154】
好中球を枯渇させて、CIA増悪におけるsH4の効果を除去できるかが調査された。CIA−マウスを、B7−H4VC又はB7−H4Vで処置し、その後一日おきに抗Gr−1抗体で処置して好中球を枯渇させた。CIA発病率(図9b)及び臨床スコア(図9c)の両方における、B7−H4V又はB7−H4VCの効果の増強が、抗Gr−1抗体処置により完全に除去された。したがって結果は、好中球がCIAの進行におけるsH4の効果の原因となることを支持する。
(実施例8)
可溶性B7−H4がlprマウスにおけるSLE−様疾患を悪化させ、自己免疫反応を高める。
【0155】
尿蛋白質排泄
計量棒分析(GERMAINE、San Antonio、TX)により、尿蛋白質排泄が測定された。蛋白尿グレードが、以下のように0〜4で採点された:グレード0、正常;グレード1、30mg/dl;グレード2、100mg/dl;グレード3、300mg/dl;グレード4、2000mg/dl。
【0156】
関節炎及び腎炎の組織評価
CIAマウスは、35日で屠殺された。後足が除去され、ホルマリン固定され、10%EDTAで脱灰され、パラフィンに包埋され、切断され、H&Eで染色された。腎臟病の組織評価では、マウスが生後6ヵ月で屠殺された。腎臓が、ホルマリン固定されるか、冷凍切断のためにTissue Tek(Sakura Finetek、Torrance、CA)でスナップ冷凍された。ホルマリン固定組織は、パラフィンに包埋され、切断され、過沃素酸−Schiff(PAS)法により染色された。凍結切片は、アセトン及び1%パラホルムアルデヒドに固定され、FITC結合抗マウスIgG Ab又はC3 Ab(ICN/Cappel、Aurora、OH)で染色された。
【0157】
有意な割合のSLE患者も、血清中に検出可能なsH4を有する(図7a)。sH4がSLEの進行にも関与している可能性がある。これをテストするために、マウスが、主に自己抗体及びリンパ増殖の効果により進行性SLE−様症状を自発的に発症するMRL−lpr/lprマウスにおいて、自己免疫を促進できるかを決定するためにsH4が調査された。MRL−lpr/lprマウスが、B7−H4VCプラスミドで処置され、血清中の抗dsDNA自己抗体が評価された。図10aに示されるように、B7−H4VCで処置すると、10週目で、血清中の抗dsDNA自己抗体の濃度が、コントロールプラスミドで処置されたマウスよりも有意に高く上昇した。抗Gr−1抗体の注射による好中球の枯渇は、この効果を完全に除去し、CIAモデルにおける観察と同様の結果であった。この最初の研究は、sH4が、このSLEモデルにおける自己免疫反応の促進にも関与することを示唆する。
【0158】
SLEの発病学における免疫反応及びsH4の役割の分析を促進するために、B7−H4−/−表現型マウスが、MRL−lpr系統と類似するがSLE−様症状が弱い系統B6−lpr/lprマウスに戻し交配された。予想通り、B6−lpr/lpr×B7−H4KOマウスにおいては、コントロールB6−lpr/lprマウスよりも、抗dsDNA IgG自己抗体がはるかに早く、はるかに高い力価で生成された(図10b)。重要なことに、B6−lpr/lpr×B7−H4KOマウスは、コントロールB6−lpr/lprマウスと比較して、有意な重量増加(図10c)を伴って重度の脾腫及びリンパ腺症を速やかに発症した。B6−lpr/lpr×B7−H4KOマウスにおいては、コントロールよりも脾臓及びリンパ節がずっと大きく、これらの臓器の細胞充実度が有意に増加した(図10c)。sH4処置によりこれらの臓器において有意に増加される主な細胞成分は、好中球(Gr−1+CD11b+)及びT細胞(CD3+CD8+、CD3+CD4+及びCD3+CD4−CD8−B220+)である。B6−lpr/lpr×B7−H4KOマウスは、間質炎症細胞浸潤、糸球体過形成及び糸球体間質細胞増加を伴って重度の糸球体腎炎を発症した。さらに、マウスは、30週以内に血管周囲の細胞浸潤、全IgGの糸球体沈着)及びC3ならびに蛋白尿増加(図10d)を伴って脈管炎も発症した。これに対して、コントロールB6−lpr/lprマウスは、24ヶ月まで可視症状の一切ない正常な腎臓を有する。合わせて考えると、結果は、sH4が、抗体及び細胞媒介自己免疫反応及び症状を増強することにより、lprマウスにおいてSLE−様疾患を悪化させることを示す。
(実施例9)
B7−H4IgによるCIA進行の阻害
データが、RA及びSLEネズミモデルにおけるsH4が病気の進行を促進することを示す一方で、これらのデータは、内因性B7−H4が自己免疫反応の抑制におけるチェックポイント分子であることも支持する。したがって、これらの自己免疫性疾患を抑制するための潜在的アプローチは、推定受容体を結合するために、アゴニスト形態のB7−H4の発現を増加させることである。B7−H4細胞外ドメインがネズミIgG2a Fc部分に融合されたB7−H4Ig融合蛋白質の効果は、Sica,G.L.ほか、B7−H4,a molecule of the B7 family,negatively regulates T cell immunity.Immunity 18,849−61(2003);Chapoval,A.I.,Zhu,G.& Chen,L.Immunoglobulin fusion proteins as a tool for evaluation of T−cell costimulatory molecules.Mol Biotechnol 21,259−64(2002)により記載された。B7−H4IgのFc部分は、Fc受容体を結合して、インビボでアゴニストの効果を促進できた。その後、CIAの進行におけるB7−H4Igの効果がテストされた。コントロールプラスミドと比較して、CII曝露の1日前のB7−H4Igプラスミド処置は、関節炎発病率及び臨床スコアを有意に低下させるとともに、CIAの発症を遅延させた(図11aおよびb)。さらに、B7−H4Igプラスミド処置は、CIIに対する全IgG(図11c)及びIgG1、IgG2a及びIgG2b自己抗体の産生を抑制した(図12)。CIIに応答した脾細胞及びCD4+T細胞の増殖(図11d及び図13)、ならびにIFN−γ及びIL−17産生も、B7−H4Ig処置により有意に抑制された(図11e)。集合的に、結果は、B7−H4Igが液性及び細胞自己免疫の両方を抑制するアゴニストとして作用し得たことを示す。さらに、この方法は、CIAの発病抑制においても有効なはずである。
(実施例10)
MRL−lpr/lprマウスにおけるB7−H4Igの発現が生存率を高める。
【0159】
MRL−lpr/lprマウスに、生後6、8、10及び12週目でコントロールmIgGプラスミド又はB7−H4Igプラスミドが注射された。全ての表現型が、生後19週目で分析された。各群は5〜10匹のマウスを含み、各実験組が少なくとも二回繰り返された。図14は、生後6、8、10及び12週目でコントロールmIgGプラスミド(□)又はB7−H4Igプラスミド(■)を注射されたMRL−lpr/lprマウスにおける、年齢(週)に対する%累積生存率の線グラフである。図14は、B7−H4Ig(ネズミ)ベクターによる処置が、MRL−lpr/lprマウスの生存率を高めることを示す。全ての表現型が、生後19週目で分析された。
【0160】
図15は、コントロールmIgGプラスミド(□)又はB7−H4Igプラスミド(■)を注射されたMRL−lpr/lprマウスにおける、年齢(週)に対するIgG自己抗体力価(A450nm)の線グラフである。図15は、B7−H4Ig(ネズミ)ベクターによる処置が、MRL−lpr/lprマウスにおいて自己抗体(抗DNA)を阻害することを示す。図16は、コントロールmIgGプラスミド(□)又はB7−H4Igプラスミド(□)を注射されたMRL−lpr/lprマウスにおける蛋白尿グレードのグラフである。図16は、B7−H4Ig(ネズミ)ベクターによる処置がMRL−lpr/lprマウス(1)において腎臓損傷を阻害することを示す。
【0161】
統計的分析。
【0162】
単一比較のためのMann−Whitney Uテスト及びANOVA、その後多重比較のためのScheffeテストにより、統計的分析が行われた。全ての統計的分析において、P<0.05で有意性が認められた。
【0163】
当業者は、本明細書に記載されている特定の実施態様に対する多くの均等物を、通常の実験作業を超えることなくして、認識し、確認できる。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されるものである。
【技術分野】
【0001】
関連する出願への相互参照
本願は、2006年12月27日に出願された米国特許出願第60/877,319号および2007年7月13日に出願された米国特許出願第60/949,742号の利益と米国特許出願第60/877,319号および米国特許出願第60/949,742号に対する優先権を主張する。米国特許出願第60/877,319号および米国特許出願第60/949,742号の両方は、その許される全体が参考として援用される。
【0002】
政府の支援
本発明は、国立衛生研究所により与えられた補助金番号第R01 CA98731のもと、政府の支援でなされた。政府は、本発明における一定の権利を有す。
【0003】
本発明は、一般に、炎症反応を調節する組成物及び方法に関し、特に、自己免疫性障害に関係する炎症反応を治療又は阻害するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
免疫応答を調節することは、多くの疾患及び障害の処置において重要である。例えば、癌又は感染症に罹患している患者の免疫応答を増強することは有益であると考えられる。あるいは、炎症状態を患う患者における免疫反応を阻害又は減少することが、有益である。
【0005】
慢性的及び持続的炎症は、関節リウマチ(RA:rheumatoid arthritis)及び全身性エリテマトーデス(SLE:systemic lupus erythematosus)等の全身性自己免疫疾患の発病及び進行の主な原因である。RAは、関節破壊、変形及び機能喪失につながることの多い、炎症性の高い多発性関節炎である。末梢関節の付加的な対称性の腫れが、病気の特徴である。関節外特徴及び全身症状が一般に生じ得、関節症状の開始に先立ちうる。慢性的痛み、能力障害及び超過死亡率が、残念な後遺症である。RAの進行の間には、滑膜過形成及びCD4+T細胞、B細胞、CD8+T細胞、マクロファージ、樹状細胞及び好中球による滑膜間質への浸潤の結果、炎症関節の滑膜表層が厚みを増す(非特許文献1;非特許文献2)。SLEにおいては、自己抗体の産生が、糸球体、皮膚、肺及び滑膜を含む多くの組織及び臓器における免疫複合体の蓄積をもたらし、これにより特徴的な慢性炎症及び組織損傷を伴うリウマチ性病変を生成する。
【0006】
いくつかの関節炎モデルにおいては、好中球の枯渇が、関節炎の重症度の低下をもたらした。最も一般的なRAの動物モデルは、ニワトリコラーゲンII型(CII)による曝露によりDBA/1jマウスの全主要関節における持続的な慢性炎症が誘導される、コラーゲン誘導性関節炎(CIA:collagen−induced arthritis)である(非特許文献3)。CD4+T細胞は、RAの病因において中心的役割を果たすと長いあいだ考えられていたが、RAの開始、進行及び維持における好中球の重要な役割の検討への新たな関心がある。損傷における好中球の大量の浸潤により、TNF−α、IL−1及びIL−6を含む炎症誘発性サイトカインが放出され、これが好中球及び他の炎症細胞の機能に影響を与えうる。
【0007】
広範囲に研究されるSLEのネズミモデルは、Fasアポトーシス遺伝子の突然変異が、ヒトSLEに類似した自発的自己免疫性障害をもたらすlpr系統である。この系統における研究は、ヒトSLE症状の多くの面を反復する。例えば、lprマウスは、全免疫グロブリンの多クローン性の増加だけでなく、抗クロマチン、抗DNA、及び抗IgG血清自己抗体を産生する。病気の重症度は、遺伝的背景に強く依存する。例えば、MRL−lpr/lprマウスは、DNAに対する高レベルのIgG自己抗体を産生し、免疫複合体の蓄積による重度の糸球体腎炎を発症し、他方でC57BL/6(B6)−lpr/lprマウスは、はるかに軽度の免疫病理を伴って、低レベルの自己抗体を産出する。
【0008】
共刺激及び共阻害機能を有するものを含む補助シグナル分子は、有効な免疫反応の誘導、及び不要な自己免疫の防止のために重要である。B7−CD28ファミリーを通じたシグナルが、このバランスの主なレギュレータであり、自己免疫の制御において重要な役割を果たすことが明らかになっている。全身性自己免疫疾患における炎症反応の持続は、共阻害機能の障害又は共刺激機能の増強によるバランスの喪失を意味する。この点に関しては、その受容体PD−1に結合後の主な共阻害分子B7−H1に対する自己抗体が、RA患者の有意な割合において見られ、自己抗体の存在がRA症状の進行に関与していることが、特に興味深い。
【0009】
B7−CD28ファミリー分子の可溶性形態も、リウマチ様疾患の進行に関与している。最近の研究は、可溶性PD−1がRA患者において検出でき、可溶性PD−1のレベルが滑液のTNF−アルファ濃度と相関づけられることを示す。B7−H4は、より最近B7ファミリーメンバーに加えられた。B7−H4は、推定受容体に結合することにより、T細胞に対して強力な阻害作用を有する。その表面発現は、IL−10及びIL−6を含む炎症性サイトカインにより、マクロファージ及び腫瘍細胞において上方制御されうると考えられるが、細胞表面B7−H4は正常組織において通常は検出されない。B7−H4が、抗原刺激の存在下でT細胞反応を抑制しうることが報告されている。可溶性B7−H4(sH4)は、可能性のあるバイオマーカーとして卵巣癌患者においても検出されているが、sH4の産生及び機能の機序は知られない。B7−H4欠損マウスは、Leishmaniaの主な感染に対するTヘルパー1型T細胞反応がやや増強されることが分かった。独立して産生されたB7−H4ノックアウトマウスを用いて、Listeria monocytogenes菌感染に対する抵抗につながるB7−H4の欠如は、好中球前駆体の増殖の直接制御により生じることが示された。まとめると、B7−H4が免疫、特に自己免疫及び感染に対する抵抗に関与することは明らかだが、機序は不明である。
【0010】
したがって、自己免疫性障害の治療のための組成物及び方法を提供することが、本発明の目的である。
【0011】
炎症反応の治療のための組成物及び方法を提供することが、本発明の別の目的である。
【0012】
可溶性B7−H4の生物活性を阻害、減少、又は遮断するための組成物及び方法を提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Feldmann,M.ほか、Cell,85:307−10(1996)
【非特許文献2】Moreland,L.W.ほか、N Engl J Med,337:141−7(1997)
【非特許文献3】Williams,R.O,ほか、Proc Natl Acad Sci USA,91:2762−6(1994)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
個体における炎症反応を減少、阻害、又は軽減するために有効な量の可溶性B7−H4(sH4)アンタゴニストを含む組成物、及び、炎症性障害及び自己免疫性疾患又は障害の治療又は予防の方法が開発されている。T細胞性免疫のB7−H4阻害を含めて、可溶性H4(「sH4」)がB7−H4活性を妨げることが発見されている。したがって、sH4生物活性の干渉は、B7−H4活性を回復する有効な方法であり、したがって、自己免疫性疾患又は障害を含む炎症性疾患又は障害を治療するための有効な方法を提供すると考えられる。
【0015】
好適なsH4アンタゴニストには、sH4結合剤、例えばsH4の抗体及び天然リガンド、sH4アンタゴニストをコードする核酸、プロテアーゼ阻害剤、B7−H4ポリペプチド、B7−H4融合蛋白質、及び核酸をコードするsH4に特異的な阻害核酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。炎症性反応又は自己免疫性疾患又は障害を治療する別の方法は、sH4の発現を下方制御又は阻害する薬剤、インビボでsH4を不活性化する薬剤、インビボでsH4の天然リガンドと競合する薬剤、又はその組み合わせを、必要な個体に投与することによる。
【0016】
ある実施態様では、好中球媒介性炎症が減少又は阻害される。一つ以上の症状を減少、阻害、又は軽減するために、sH4アンタゴニストの一つ以上で治療できる代表的な炎症性疾患又は障害には、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円形脱毛症、強直性脊椎炎(anklosing spondylitis)、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫内耳疾患、自己免疫リンパ球増殖性症候群(ALPS:autoimmune lymphoproliferative syndrome)、自己免疫血小板減少性紫斑病(ATP:autoimmune thrombocytopenic purpura)、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、脂肪便症−皮膚炎、慢性疲労症候群免疫不全症候群(CFIDS:chronic fatigue syndrome immune deficiency syndrome)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、良性粘膜類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、ドゴー病、皮膚筋炎、皮膚筋炎−若年性、円板状ループス、混合型クリオグロブリン血症、線維症−繊維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP:idiopathic thrombocytopenia purpura)、Iga腎症、インシュリン依存性糖尿病(I型)、若年性関節炎、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群(polyglancular syndromes)、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆管萎縮症、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、全身強直性症候群、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、脈管炎、白斑、及びヴェーゲナー肉芽腫症を含む自己免疫性疾患又は障害が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
炎症反応又は自己免疫性疾患又は障害を治療するさらに別の方法は、個体の血液又は血漿からsH4を選択的に除去することによる。血液又は血漿からsH4を選択的に除去するために、血液又は血漿が、sH4に特異的な結合剤によりエクスビボで処置されうる。処置された血液又は血漿が、個体に戻されうる。
【0018】
炎症反応又は自己免疫性疾患又は障害の重症度は、個体の生体試料におけるsH4のレベルを測定し、試料中のsH4のレベルを、病気又は障害の進行における様々な時点で個体から得たsH4の所定の量に相関させることにより評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】B7−H4遺伝子の破壊を示す概略図である。マウスB7−H4遺伝子のIgV及びIgCドメインをコードするエクソンを含有する4.7kb DNA断片がネオマイシン耐性(Neo)遺伝子をコードする1.7kb断片によって置換されている。閉四角形はB7−H4をコードするエクソンを表す。エクソン間の線はイントロン配列を表す。開四角は非翻訳エクソンを表す。Neoは斜線を施した四角により表されている。
【図2a】野生型マウス(◆)又はB7−H4KOマウス(□)におけるListeria monocytogenes(LM)感染後日数に対する生残百分率を示す折れ線グラフである。
【図2b】LMを感染させた野生型マウス(○)又はB7−H4KOマウス(▲)の2又は3日目における脾臓1g当たりのCFU(×108)を示すグラフである。
【図2c】LMを感染させた野生型マウス(◆)又はB7−H4KOマウス(□)におけるLM感染後日数に対する脾臓顆粒球百分率を示す折れ線グラフである。
【図2d】リステリア菌感染の24時間前に150pgのGr−1 mAb又は対照ラットIgG(LPS不含)をi.p.注射した3匹のB7−H4KOマウス又は同腹仔対照における肝臓1g当たりのCFU×104を示す棒グラフである。次いで、マウスに3×106CFUのリステリア菌をi.p.注射した。感染後24時間に、マウスを屠殺し、肝臓中のリステリア菌を計数した。
【図3】野生型マウス(◆)又はB7−H4KOマウス(□)におけるLM感染後の時間に対する顆粒球当たりのLM CFUを示す棒グラフである。
【図4】RKOマウス(◆)又はB7−H4KOマウス(□)におけるLM感染後の日数に対する生存百分率を示す折れ線グラフである。
【図5a】図に示した濃度の組換えG−CSFと3日間平板培養した野生型マウス(◆)又はB7−H4KOマウス(□)の2×106個の骨髄細胞におけるG−CSF(ng/ml)に対するCPMを示す折れ線グラフである。培養液は、培養終了前18時間3HTdRでパルスし、収集してシンチレーションカウンターにより計数した。
【図5b】フローサイトメトリーにより分析したゲートされたGr−1+CD11b+顆粒球中のCFSEの希釈度の線グラフのパネルである。そこに示したマウスからの2×106個の骨髄細胞をCFSEで標識し、5日間培養した。細胞は収集してGr−1/CD11b mAbで二重に染色した。
【図6】日数に対するCPMの折れ線グラフである。正常B6マウスからの2×106個の骨髄細胞を、組換えマウスG−CSFの非存在下(A)、0.1ng/mlの存在下(B)又は1ng/mlの存在下(C)に20μg/mlの組換えマウスB7−H4Ig(△)又はマウスIg対照蛋白(▲)で被覆した96−穴プレート中で平板培養した。図に示したように、2乃至5日目に細胞を収集した。培養液は培養終了前18時間3HTdRでパルスし、収集してシンチレーションカウンターにより計数した。*P<0.05。
【図7a】健常ドナー(HA)(◆)、RA(▲)、及びSLE(□)患者の血清中の、sH4を示すグラフである。
【図7b】sH4がRA患者に存在し、健常ドナー存在しないことを示すウェスタンブロットである。
【図7c】sH4の濃度と、RAの重症度群0(▲)、1(X)、2(◆)、及び3(■)との間の相関関係を示すグラフである。
【図8a】B7−H4V、B7−H4VC及びB7−H4Igの概略図である。IgVドメイン;IgV、IgCドメイン;IgC。TM;膜貫通ドメイン、CY;細胞質ドメイン。
【図8b】CFAにおける、ニワトリコラーゲンII型で0日目及び21日目に免疫したマウスの、コラーゲン注射後の日数に対する%発病率のグラフである。−1日目及び20日目に、三つのマウス群が、コントロールベクター(□)、B7−H4V(▲)、又はB7−H4VC(■)での水圧注射であった;平均値±s.e.m(n=5)。
【図8c】CFAにおける、ニワトリコラーゲンII型で0日目及び21日目に免疫したマウスの、コラーゲン注射後の日数に対する臨床スコアのグラフである。−1日目及び20日目に、三つのマウス群に、コントロール(□)、B7−H4V(▲)、又はB7−H4VC(■)ベクターが水圧注射された;平均値±s.e.m(n=5)。
【図8d】抗CII全IgG血清レベルを示す棒グラフである。白;コントロールベクター、灰色;B7−H4V、黒;B7−H4VC;平均値±s.d.
【図8e】CIIμg/mlに対する毎分カウント数の線グラフである。コントロールベクター(□)、B7−H4V(▲)、又はB7−H4VC(■)が注射されたCIAマウスからの30日目の全脾細胞が、指定の量のCIIの存在下で72時間培養された;平均値±s.d.
【図8f】ELISAによりIFN−γ及びIL−17産生につき評価された、72時間培養後の全脾細胞の上清の棒グラフである;平均値±s.d.
【図8g】CFAにおける、ニワトリコラーゲンII型で0日目及び21日目に免疫したマウスの、コラーゲン注射後の日数に対する発病率の線グラフである。WTマウス(□)、B7−H4KOマウス(■);平均値±s.e.m.(n=5)。
【図8h】CFAにおける、ニワトリコラーゲンII型で0日目及び21日目に免疫したマウスの、臨床スコアの線グラフである。WTマウス(□)、B7−H4KOマウス(■);平均値±s.e.m.(n=5)。
【図9a】sH4が、そのドミナントネガティブ活性により好中球を活性化することを示す、空気嚢アッセイの棒グラフである。皮下空気嚢に、LPS(50μg)が注射された。5時間後、Gr−1+好中球が、滅菌生食水で嚢からすすがれた細胞のフローサイトメトリにより定量された。各棒は、各群における6〜8匹のマウスの平均を表す;平均値±s.d.
【図9b】コラーゲン曝露後の日数に対する発病率の線グラフである。六つのマウス群が、コントロールベクター及びコントロールラットIgG(▲)、コントロールベクター及び抗Gr−1 Ab(□)、B7−H4V及びコントロールラットIgG(●)、ならびに、B7−H4V及び抗Gr−1 Ab(○)、B7−H4VC及びコントロールラットIgG(■)、ならびに、B7−H4VC及び抗Gr−1 Ab(■)で処置された;平均値±s.e.m.(n=5)
【図9c】コラーゲン曝露後の日数に対するCIAマウスの臨床スコアの線グラフである。六つのマウス群が、コントロールベクター及びコントロールラットIgG(▲)、コントロールベクター及び抗Gr−1 Ab(□)、B7−H4V及びコントロールラットIgG(●)、ならびに、B7−H4V及び抗Gr−1 Ab(○)、B7−H4VC及びコントロールラットIgG(■)、ならびに、B7−H4VC及び抗Gr−1 Ab(■)で処置された;平均値±s.e.m.(n=5)
【図10a】MRL−lpr/lprマウスにおける、抗二本鎖DNA自己抗体の血清レベルの線グラフである。四つのマウス群が、コントロールベクター及びコントロールラットIgG(▲)、コントロールベクター及び抗Gr−1 Ab(□)、B7−H4VC及びコントロールラットIgG(■)、ならびに、B7−H4VC及び抗Gr−1 Ab(□)で処置された;平均値±s.e.m.(n=5)。
【図10b】B6−lpr/lprマウス(□)又はB6−lpr/lpr×B7−H4KOマウス(■)における、抗二本鎖DNA自己抗体の血清レベルの線グラフである;平均値±s.e.m.
【図10c】生後24週目のB6−lpr/lprマウス(□)又はB6−lpr/lpr×B7−H4KOマウス(□)の、脾臓及び末梢リンパ節における重量及び全細胞数を示すグラフのパネルである。(n=5)
【図10d】生後24週目のB6−lpr/lprマウス(□)又はB6−lpr/lpr×B7−H4KOマウス(□)の、蛋白尿グレードを示すグラフである。(n=5)
【図11a】CFAにおける、ニワトリコラーゲンII型で0日目及び21日目に免疫したマウスの、発病率の線グラフである。−1日目及び20日目に、三つのマウス群は、コントロールベクター(□)又はB7−H4Ig(■)と水圧注射であった;平均値±s.e.m(n=5)
【図11b】CFAにおける、ニワトリコラーゲンII型で0日目及び21日目に免疫したマウスの、臨床スコアの線グラフである。−1日目および20日目に、三つのマウス群は、コントロールベクター(□)又はB7−H4Ig(■)での水圧注射であった;平均値±s.e.m(n=5)
【図11c】抗CII全IgGの血清レベルの棒グラフである。白;コントロールベクター、黒;B7−H4Ig;平均値±s.d.
【図11d】コントロールベクター(□)又はB7−H4Ig(■)が注射されたCIAマウスからの、30日目の全脾細胞のCIIμg/mlに対する毎分カウント数の線グラフである。指定の量のCIIの存在又は非存在下で72時間培養された;平均値±s.d.
【図11e】ELISAによりIFN−γ及びIL−17産生につき評価された、72時間培養後の全脾細胞の上清を示す棒グラフである;平均値±s.d.
【図12】コントロールベクター、B7−H4V、B7−H4VC又はB7−H4Igで処置されたCIAマウスにおける、抗CII IgG1、IgG2a及びIgG2bの血清レベルの棒グラフである。30日目にELISAで測定された;平均値±s.d.
【図13】コントロールベクター(□)、B7−H4V(▲)、B7−H4VC(■)又はB7−H4Ig(●)が注射されたCIAマウスにおける30日目の脾臓CD4T細胞の、指定の量のCIIの存在下における72時間の増殖を示す、CIIμg/mlに対する毎分カウント数の線グラフである;平均値±s.d.
【図14】生後6、8、10及び12週の、コントロールmIgGプラスミド(□)又はB7−H4Igプラスミド(■)が注射されたMRL−lpr/lprマウスにおける、年齢(週)に対する%累積的生存率の線グラフである。全ての表現型が、生後19週目で分析された。
【図15】コントロールmIgGプラスミド(□)又はB7−H4Igプラスミド(■)が注射されたMRL−lpr/lprマウスにおける、年齢(週)に対するIgG自己抗体力価(A450nm)の線グラフである。
【図16】コントロールmIgGプラスミド(□)又はB7−H4Igプラスミド(□)が注射されたMRL−lpr/lprマウスにおける、蛋白尿グレードのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
I.定義
本明細書に用いている科学技術用語は全て、別に定義しない限り、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載した刊行物、特許出願、特許その他の文献は全て、許容される場合その全体が参照として本明細書に援用される。係争の場合には、定義を含めて、本明細書が制限するであろう。なお、これらの材料、方法および実施例は、単に例示的なものであり、それに限定することを意図するものではない。
【0021】
「有効量」又は「治療的有効量」という用語は、炎症反応もしくは処置されている自己免疫疾患状態の処置をもたらすか、そうでない場合は所望の薬理学的及び/又は生理学的効果をもたらすのに十分な投与量を意味する。正確な投与量は、対象に依存する変数(例えば、年齢、免疫系の健全性など)、疾患及び実施される処置などの種々の要因によって異なることになる。
【0022】
B7−H4ポリペプチドの「断片」とは完全長のポリペプチドよりも短いポリペプチドの断片である。一般に、断片は長さがアミノ酸5個以上である。抗原断片は抗体によって認識され、結合される能力を有する。
【0023】
「個体」、「個体」、「対象」及び「患者」という用語は、本明細書では互換可能に用いており、げっ歯類、サル、ヒト、家畜用哺乳動物、スポーツ用哺乳動物及びペット用哺乳動物を含む哺乳動物を意味するが、それに限定するものではない。
本明細書に用いている、核酸に関して「動作可能なように連結された」とは、発現制御配列が所望のコーディング配列の発現を効果的に制御するように遺伝子構築物に組み込まれることを意味する。
【0024】
「ポリペプチド」及び「蛋白」という用語は互換可能に用いており、長さ又は翻訳後修飾の有無とは関係なく、アミノ酸の任意のペプチド結合鎖のことを意味する。実施態様としては、保存的置換を有するB7−H4ポリペプチドが挙げられる。保存的置換としては、通常、以下のグループ内での置換が挙げられる:グリシン及びアラニン;バリン、イソロイシン及びロイシン;アスパラギン酸及びグルタミン酸;アスパラギン、グルタミン、セリン及びスレオニン;リジン、ヒスチジン及びアルギニン;並びにフェニルアラニン及びチロシン。
【0025】
「sH4」という用語は、B7−H4の細胞外ドメインの生物活性断片を含む可溶性B7−H4を意味する。
【0026】
「可溶性B7−H4アンタゴニスト」又は「sH4アンタゴニスト」という用語は、可溶性B7−H4の生物活性又は発現を阻害、減少、又は遮断する化合物をさす。適切な可溶性B7−H4アンタゴニストには、sH4をコードする核酸に特異的な、可溶性B7−H4、B7−H4融合蛋白質、プロテアーゼ阻害剤、小有機化合物、アンチセンスDNA、siRNA、及びマイクロRNAを拮抗できる、可溶性B7−H4、B7−H4又はその断片に結合する抗体及び抗体断片が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施態様においては、可溶性B7−H4アンタゴニストは、好中球媒介性の炎症を減少又は阻害する。
【0027】
本明細書で使用されるところの、「治療」という用語には、炎症反応又は自己免疫性疾患と関係する一つ以上の症状の、軽減、防止及び/又は除去が含まれる。
【0028】
II.抗炎症組成物
可溶性B7−H4(「sH4」とも呼ばれる)の生物活性又は発現を阻害、減少、又は遮断するための組成物が、提供される。ある実施態様では、組成物は、炎症反応を阻害、減少又は、低下させるために有効な量のsH4アンタゴニストを、活性薬剤として含む。例示的な炎症反応には、好中球媒介性の炎症反応が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
A.sH4アンタゴニスト
可溶性B7−H4アンタゴニストには、sH4の発現又は生物活性を阻害する化合物が含まれる。可溶性B7−H4は、ウェスタンブロット分析により約50kDaであり、変性状態における単量体B7−H4分子の全細胞外ドメインに等しいサイズである(図1b)。
【0030】
1.プロテアーゼ阻害剤
B7−H4の全細胞外部分の酵素的切断により、sH4が生成されると考えられる。完全長B7−H4cDNAによりトランスフェクションされた293T細胞は、培養上清にsH4を放出し、この分泌は、様々なプロテアーゼ阻害剤を伴ったインキュベーションにより阻害されうる。したがって、ある実施態様では、sH4アンタゴニストには、プロテアーゼ阻害剤が含まれる。例示的なプロテアーゼ阻害剤には、セリンプロテアーゼ阻害剤、システインプロテアーゼ阻害剤、アスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤、及びメタロプロテアーゼ阻害剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特異的プロテアーゼ阻害剤には、ロイペプチン、PMSF、AEBSF、アプロチニン、キモスタチン、抗トロンビンIII、3,4−ジクロロイソクマリン、TLCK、TPCK、DIFP、アンチパイン、α2−マクログロブリン、N−エチルマレイミド、E−64、キモスタチン、ペプスタチンA、1,10−フェナントロリン、ホスホラミドン、及びベスタチンが含まれる。
【0031】
2.阻害核酸
細胞外ドメインのIgV(図2a)部分だけを含むsH4は、自己免疫性疾患を悪化させるのに十分である。実際、B7−H4V及びB7−H4VC(図2a)は、動物モデルにおいて類似の効果を有し、その推定受容体の結合部位がIgVドメインに位置することを示唆する。結果は、コンピュータ生成モデルに基づくB7−H4 IgV構造を用いた過去の研究により支持される。過去の報告は、B7−H4が、アンカリング部分から離れることにより可溶性形態になりうる、GPI−アンカリング蛋白質であることを示唆する。しかし、最近の研究は、B7−H4が膜貫通蛋白質であることを示す。免疫グロブリンスーパーファミリーのいくつかの分子が、可溶性形態を示すことが明らかにされている。CD80、CD86及びPD−1を含むこれらの可溶性分子は、変異体をスプライシングすることにより作製される。したがって、sH4は、B7−H4の交互スプライシングにより生成されうる。
【0032】
阻害核酸は、sH4をコードする転写産物を生成するRNAスプライシングを特異的に阻害し、又はsH4をコードするRNAの発現を特異的に阻害又は減少できる。阻害核酸には、アンチセンスDNA、三重鎖形成性オリゴヌクレオチド、外部ガイド配列、siRNA、及びマイクロRNAが挙げられるが、これらに限定されるものではない。有用な阻害核酸には、sH4をコードするRNAの発現を、コントロールと比較して少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90又は95%減少するものが含まれる。阻害核酸及びそれらを作製する方法は、公知技術である。siRNA設計ソフトウェアは、例えばhttp://i.cs.hku.hk/〜sirna/software/sirna.php.で利用可能である。核酸の合成は周知であり、例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrook及びRussel編、第3版)Cold Spring Harbor,New York(2001)を参照。
【0033】
3.抗sH4抗体
sH4に特異的に結合する抗体又は抗体断片を用いて、sH4の生物活性を拮抗しうる。例示的な抗体は、mAb hH4.3である(Choi,I.H.ほか、J Immunol,171:4650−4(2003))。抗体を作製する方法は、従来技術において周知であり、当業者の能力の範囲内である。
【0034】
例えば、単クローン抗体(mAb)及びそれらの産生及び使用の方法が、Kohler及びMilstein,Nature 256:495−497(1975);米国特許第4,376,110号;Hartlow,E.ほか、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y,1988);Monoclonal Antibodies and Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,New York,N.Y.(1980);H.Zolaほか、in Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Applications,CRC Press,1982))の中に記載される。
【0035】
抗イディオタイプ抗体は、例えば、Idiotypy in Biology and Medicine,Academic Press,New York,1984;Immunological Reviews Volume 79,1984;Immunological Reviews Volume 90,1986;Curr.Top.Microbiol,Immunol.Volume 119,1985;Bona C.ほか、CRC Crit.Rev.Immunol.,pp.33−81(1981);Jerme,N K,Ann.Immunol.125C:373−389(1974);Jerne,N K,:Idiotypes−Antigens on the Inside,Westen−Schnurr,I.編、Editiones Roche,Basel,1982,Urbain,J.ほか、Ann.Immunol.133D:179−(1982);Rajewsky,K.ほか、Ann.Rev.Immunol.1:569−607(1983)の中に記載される。
【0036】
一定の実施態様は、B7−H4では存在しないか遮蔽されるsH4の新規なエピトープと反応する、多クローン性の及び単クローンの抗体を提供する。抗体は、異種、同種、同系、又はヒト化、一本鎖もしくはキメラ抗体などのこれらの修飾体とすることができる。抗体は、抗sH4抗体のイディオタイプに特異的な、抗イディオタイプ抗体とすることもできる。「抗体」という用語は、抗原結合部位を含み、sH4エピトープに結合可能な、完全分子ならびにその断片の両方が含まれる意味でもある。これらには、完全抗体のFc断片を欠く、したがって循環からより速やかに除去され、完全抗体より少ない非特異的組織結合を有しうる、Fab及びF(ab’)2断片が含まれる(Wahlほか、J.Nuc.Med 24:316−325(1983))。Fv断片も含まれる(Hochman,J.ほか、Biochemistry,12:1130−1135(1973);Sharon,J.ほか、Biochemistry,15:1591−1594(1976))。これらの様々な断片は、プロテアーゼ開裂又は化学開裂等の従来技術を用いて作製できる(例えば、Rousseauxほか、Meth. Enzymol.,121:663−69(1986)を参照)。
【0037】
多クローン抗体は、ウサギ、ヤギ、齧歯類等の免疫動物からの血清として得られ、さらなる処置なしで直接使用され、又は硫安沈殿、イオン交換クロマトグラフィ、及びアフィニティークロマトグラフィ等、従来の濃縮又は精製法が行われうる。
【0038】
免疫原は、sH4の任意の免疫原性部分とすることができる。好ましい免疫原としては、ヒトB7−H4の細胞外ドメインの全部又は一部が挙げられ、この場合、その残基群は、天然のB7−H4に存在するグリコシル化などの翻訳後修飾を含む。細胞外ドメインを含む免疫原は、当該分野で周知の各種方法、例えば、従来の組換え法を使用したクローン化遺伝子の発現、元の細胞、高レベルのB7−H4を発現する細胞集団からの単離によって作製する。
【0039】
mAbは、Kohler及びMilstein,Nature,256:495−97(1975)に紹介される手順、従来のハイブリドーマ技術及びその変更形態等(上記参考文献を参照)を用いて作製できる。抗原刺激された動物における所望の抗体反応を誘導するために、動物、好ましくはマウスが、上述のような免疫原による免疫化により抗原刺激される。
【0040】
抗原刺激された動物のリンパ節、脾臓又は末梢血からのBリンパ球が、通常はポリエチレングリコール(PEG)等の融合促進剤の存在下で骨髄腫細胞と融合される。多数のネズミ骨髄腫細胞系統の任意のものが、このような用途のために入手可能である:P3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−k0Ag8.653、Sp2/0−Ag14、又はHL1−653骨髄腫系統(ATCC、Rockville、Md.から入手可能)。後のステップには、融合していない親骨髄腫細胞及びドナーリンパ球細胞が最終的に死に、ハイブリドーマ細胞だけが生存するような、選択培地における増殖が含まれる。これらがクローニングされ増殖させられ、その上清が、例えばB7−H4−Ig融合蛋白質を用いたイムノアッセイ技術により、所望の特異性の抗体の存在につきスクリーニングされる。陽性クローンが、例えば限界希釈によりサブクローニングされ、mAbが単離される。
【0041】
これらの方法により作製されたハイブリドーマが、公知技術を用いて、インビトロ又はインビボで(腹水液中で)増殖させられうる(一般的にFinkほか、Prog.Clin.Pathol,9:121−33(1984)を参照)。一般に、個々の細胞系統が培養において増殖させられ、高濃度の単一のmAbを含む培地が、デカンテーション、濾過、又は遠心分離により採取されうる。
【0042】
抗体は、正常の多量体構造ではなく一本鎖抗体又はscFvとして作製されうる。一本鎖抗体は、目的のIgからの高頻度可変領域を含み、完全なIgの一部の大きさでありながら、天然Igの抗原結合部位を再現する(Skerra,A.ほか、Science,240:1038−1041(1988);Pluckthun,A.ほか、Methods Enzymol,178:497−515(1989);Winter,G.ほか、Nature,349:293−299(1991);Birdほか、Science 242:423(1988);Hustonほか、Proc.Natl.Acad.Sci USA 85:5879(1988);Jost C Rほか、J Biol Chem.269:26267−26273(1994);米国特許第4,704,692号、第4,853,871号、第4,94,6778号、第5,260,203号。好ましい実施態様においては、従来の分子生物学技術を用いて抗体が作製される。
【0043】
エピトープの存在を検出するための抗体の使用方法が、Coligan,J.E.ほか編、Current Protocols in Immunology,Wiley−Interscience,New York 1991(又は現行版);Butt,W.R.(編)Practical Immunoassay:The State of the Art,Dekker,N.Y.,1984;Bizollon,Ch.A.編、Monoclonal Antibodies and New Trends in Immunoassays,Elsevier,N.Y,1984;Butler,J.E.,ELISA(29章),van Oss,C.J.ほか、(編),IMMUNOCHEMISTRY,Marcel Dekker,Inc.,New York,1994,pp.759−803;Butler,J.E.(編),Immunochemistry of Solid−Phase Immunoassay,CRC Press,Boca Raton,1991;Weintraub,B.,Principles of Radioimmunoassays,Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques,The Endocrine Society,March,1986;Work,T.S.ほか、Laboratory Techniques and Biochemistry in Molecular Biology,North Holland Publishing Company,NY,(1978)(Chard,T.による章、“An Introduction to Radioimmune Assay and Related Techniques”)に記載される。
【0044】
B.B7−H4融合蛋白質
B7−H4融合ポリペプチドは、(i)第二ポリペプチドに直接融合された、又は、(ii)選択的に、第二ポリペプチドに融合されたリンカーペプチド配列に融合された、B7−H4蛋白質の全部又は一部を含む、第一融合パートナーを有する。例示的な融合蛋白質は、Sica、G.Lほか、B7−H4,a molecule of the B7 family,negatively regulates T cell immunity Immunity.18,849−61(2003)に記載される。
【0045】
B7−H4融合蛋白質は、好ましくはヒト免疫グロブリンCγ1鎖のヒンジ、CH2及びCH3領域に相当するアミノ酸配列を有する、第二ポリペプチド、好ましくはIg重鎖定常領域の一種以上のドメインに融合されうる。
【0046】
B7−H4融合蛋白質は、完全長B7−H4ポリペプチドを含むか、完全長B7−H4ポリペプチドの断片を含みうる。一実施態様においては、融合蛋白質は、B7−H4の断片を含む。本明細書において使用されるところの、B7−H4の断片とは、完全長蛋白質より短いポリペプチドである、ポリペプチドの任意のサブセットを指す。有用な断片は、その天然リガンドと結合する能力を保持するものである。完全長B7−H4の断片であるB7−H4ポリペプチドは、典型的に、完全長B7−H4と比較して、その天然リガンド(単数または複数)を結合する能力の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、100%、100%以上をも有する。
【0047】
一実施態様は、第一融合パートナーがB7−H4蛋白質の細胞外ドメインである、融合蛋白質を提供する。B7−H4ヌクレオチド及び蛋白質配列は、GENBANKにおいて、アクセス番号AY280972の下に見られる。さらに、B7−H4は米国特許第6,891,030号に記載され、可能な限りで参照により全体として本明細書に組み込まれる。融合蛋白質は、B7−H4の細胞外ドメイン全体又はB7−H4の生物活性を保持するその断片を含みうる。
【0048】
融合蛋白質の第一融合パートナーは、B7−H4の膜遠位IgVドメイン及び膜近位IgCドメインを含む。構造物は、B7−H4VCとも呼ばれる:
maslgqiifw siiniiiila gaialiigfg isgkhfitvt tftsagnige dgtlsctfep diklngiviq wlkegikglv hefkegkddl sqqhemfrgr tavfadqvvv gnaslrlknv qltdagtytc yirtskgkgn anleyktgaf smpeinvdyn asseslrcea prwfpqptva wasqvdqgan fsevsntsfe lnsenvtmkv vsvlynvtin ntyscmiend iakatgdikv tdsevkrrsq lqllns
(配列番号1)に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性を有しうる。
【0049】
別の実施態様においては、融合蛋白質の第一融合パートナーは、B7−H4のIgVドメインを含む。構造物は、B7−H4Vとも呼ばれる:
maslgqiifw siiniiiila gaialiigfg isgkhfitvt tftsagnige dgtlsctfep diklngiviq wlkegikglv hefkegkddl sqqhemfrgr tavfadqvvv gnaslrlknv qltdagtytc yirtskgkgn anleyktgaf smpein
(配列番号2)に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%又は99%の配列同一性を有しうる。
【0050】
好ましい実施態様においては、融合蛋白質は、IgFc定常領域に融合されたB7−H4の細胞外ドメイン又はその断片を含む。前述のように、B7−H4の細胞外ドメインのコード領域をマウスIgG2aのFc定常領域に融合させることにより、組換え型B7−H4Ig融合蛋白質が調製されうる(Chapovalほか、Methods Mol.Med.45:247−255(2000))。
【0051】
開示された融合蛋白質は、標準的な分子生物学技術を用いて単離されうる。例えば、B7−H4IgをコードするDNA配列を含む発現ベクターが、リン酸カルシウム沈殿により293細胞にトランスフェクションされ、無血清DMEMにおいて培養される。上清が72時間後に集められ、Protein G SEPHAROSE(登録商標)(Pharmacia、Uppsala、Sweden)カラムにより融合蛋白質が精製される。
【0052】
sH4の生物学的機能を減少、阻害、又は遮断する融合蛋白質を作製するために、B7−H4の変異体も使用されうる。本明細書で使用されるところの、「変異体」B7−H4ポリペプチドは、対応する野生型B7−H4ポリペプチド(例えばアクセス番号AY280972のアミノ酸配列を有するポリペプチド)のアミノ酸配列と比較して、少なくとも一つのアミノ酸配列変異を含有する。アミノ酸配列変異は、例えば、一つ以上のアミノ酸の置換、欠失又は挿入でありうる。
【0053】
B7−H4の変異体は、野生型B7−H4と同じ活性、ほぼ同じ活性、又は異なる活性を有しうる。ほぼ同じ活性とは、変異体がT細胞活性化を抑制しうることを意味する。
【0054】
当然のことながら、B7−H4の細胞外ドメインの変異体は、野生型B7−H4(すなわちアクセス番号AY280972)の細胞外ドメインに対して少なくとも80%の配列同一性を有し得、典型的に少なくとも85%、より典型的には少なくとも90%、さらに典型的には少なくとも95%の、B7−H4の細胞外ドメインに対する配列同一性を有しうる。一実施態様においては、融合蛋白質は、アクセス番号AY280972におけるB7−H4の細胞外ドメインと同一である、B7−H4の細胞外ドメインを含む。
【0055】
配列同一性百分率はコンピュータプログラム又は直接配列比較法を用いて算出することができる。2つの配列間の同一性を測定するための好ましいコンピュータプログラムによる方法としては、GCGプログラムパッケージ、FASTA、BLASTP及びTBLASTN(例えば、D. W. Mount、2001年、Bioinformatics:Sequence and Genome Analysis、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N. Y.参照)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。BLASTP及びTBLASTNプログラムはNCBI及び他の供給源から公に入手可能である。周知のSmith Watermanアルゴリズムも同一性測定に用いることができる。
【0056】
アミノ酸配列比較のための例示的なパラメータとしては、以下のものが挙げられる:1)Needleman及びWunschのアルゴリズム(J Mol. Biol.、48:p.443−453 (1970年));2)Hentikoff及びHentikoffのBLOSSUM62比較マトリックス(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、89:p.10915−10919 (1992年));3)ギャップペナルティ=12;及び4)ギャップ長ペナルティ=4。これらのパラメータを用いる有用なプログラムが「ギャップ」プログラムとして公に入手可能である(Genetics Computer Group、Madison、Wis.)。上記のパラメータ類は、(末端ギャップに対するペナルティのない)ポリペプチド比較のためのデフォルトパラメータ類である。
【0057】
或いは、ポリペプチド配列の同一性は、式:同一性%=(同一残基数)/(アミノ酸残基のアラインメント長)*100を用いて算出することができる。この計算において、アラインメント長には内部ギャップを含めるが、末端ギャップは含めない。
【0058】
アミノ酸置換は、任意のアミノ酸又はアミノ酸アナログを使用して行われうる。例えば、天然アミノ酸(例えばアラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、アルギニン、システイン、グリシン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、ロイシン、バリン、イソロイシン、リシン、メチオニン、プロリン、スレオニン、セリン、フェニルアラニン、トリプトファン、又はチロシン)のいずれかにより、置換が行われうる。
【0059】
B7−H4融合蛋白質ポリペプチドにおけるアミノ酸置換は、保存的置換でありうる。本明細書に用いている「保存的」アミノ酸置換とは、置換アミノ酸が同様な構造的又は化学的性質を有する置換である。「非保存的」アミノ酸置換とは置換アミノ酸の電荷、疎水性又は嵩が著しく変化する置換である。非保存的置換は、(a)置換領域のペプチド主鎖の、例えばシートもしくはヘリカル構造としての構造、(b)標的部位におけるその分子の電荷もしくは疎水性、又は(c)その側鎖の嵩、の維持に及ぼす影響がさらにいちじるしく異なる。保存的置換は、以下の群の中での置換を典型的に含む:グリシン及びアラニン;バリン、イソロイシン、及びロイシン;アスパラギン酸及びグルタミン酸;アスパラギン、グルタミン、セリン及びスレオニン;リシン、ヒスチジン及びアルギニン;ならびにフェニルアラニン及びチロシン。
【0060】
開示の融合蛋白質及びその変異体は、sH4と競合して、例えば共通の受容体に結合することによりsH4の生物活性を阻害するのが好ましい。受容体は典型的に、sH4及びB7−H4の両方に結合する免疫細胞上の受容体である。B7−H4の細胞外ドメインの変異体は、sH4と競合してsH4の生物活性を減少させる融合蛋白質の能力を高める保存的変異体及び非保存的変異体を含む。
【0061】
上記の融合蛋白質の二量体又は三量体である、二量体又は三量体融合蛋白質も提供される。鎖が、ジスルフィド結合又は他の鎖間共有結合を介してタンデム的に連結されるのが好ましい。
【0062】
好ましい二量体融合蛋白質においては、二量体化された通常のIgH鎖においてジスルフィド結合されるものと同じCys残基である、Ig重鎖の二つのCH領域におけるCys残基の共有結合形成から、二量体が生じる。
【0063】
適切な融合蛋白質には、直接又は一つ以上のモノマーの間のリンカー配列により、末端と末端で連結された、第一融合パートナーの二以上のリピートの多量体が含まれうる。
【0064】
C. 医薬組成物
sH4アンタゴニスト及びこれを含有するベクターを含む医薬組成物を提供する。こうした医薬組成物は、経口、非経口(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)又は皮下注射)、経皮(受動的に、又はイオン電気導入もしくは電気穿孔法により)、経粘膜(経鼻、膣内、直腸内又は舌下)経路によって、或いは生体内分解性挿入物を用いて投与することができ、各投与経路に適した剤型に製剤化することができる。
【0065】
1. 非経口投与用製剤
好ましい実施態様において、上記ペプチドは水溶液として非経口注射により投与する。この製剤は懸濁剤又は乳剤の形態をとることもできる。一般には、有効量のsH4アンタゴニスト又は誘導体生成物を含む医薬組成物が提供され、これは、任意選択的に、医薬用として許容可能な希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、佐剤及び/又は担体を含む。このような組成物は、希釈滅菌水、各種緩衝剤含有量(例えば、Tris−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pHおよびイオン強度の緩衝生理食塩水;並びに任意選択的に、界面活性剤、可溶化剤(例えば、TWEEN20、TWEEN80、Polysorbate 80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)及び保存剤(例えば、Thimersol、ベンジルアルコール)及び増量物質(例えば、乳糖、マンニトール)等の添加剤を含む。非水溶媒又はビヒクルの例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油、とうもろこし油などの植物油、ゼラチン及びオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルがある。これら製剤は、凍結乾燥し、使用直前に再溶解/再懸濁することができる。上記製剤は、例えば、細菌保定フィルターを通して濾過し、又は滅菌剤を上記製剤に添合し、上記組成物に放射線照射し、又は上記組成物を加熱することによって滅菌することができる。
【0066】
2. 経腸内投与用製剤
sH4アンタゴニストは経口送達用に製剤化することができる。経口用固形剤型については、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、1990年(Mack Publishing Co.Easton Pa.18042)の第89章に概ね記載されている。固形剤型としては、錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤もしくは薬用キャンデー、カシェ剤、ペレット剤、散剤又は顆粒剤、或いは原料をポリ乳酸、ポリグリコール酸などの高分子化合物の微粒子調製物もしくはリポソームに取り込ませたものが挙げられる。このような組成物は本発明の蛋白質及び誘導体の物理的状態、安定性、インビボ放出速度及びインビボクリアランス速度に影響を与えると考えられる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版(1990年、Mack Publishing Co.,Easton,Pa.18042)1435−1712頁を参照されたい。組成物は液状に調製することができ、又は乾燥粉末(例えば、凍結乾燥)状にすることができる。また、リポソームまたはプロテイノイド封入を行うことにより(例えば、米国特許第4,925,673号で報告されているプロテイノイドミクロスフェアとして)組成物を製剤化することができる。リポソーム封入を利用することができ、リポソームを各種ポリマーで誘導体化することができる(例えば、米国特許第5,013,556号)。Marshall,K.Modern Pharmaceutics、G.S.Banker及びC.T.Rhodes編、第10章、1979年をも参照されたい。概して、製剤は、ペプチド(又はその化学的修飾体)並びに胃の環境におけるペプチド、および腸における生物学的に活性の材料の放出を保護する不活性成分を含むことになる。
【0067】
ポリペプチドアンタゴニストは、化学的に修飾して誘導体の経口的送達が有効なものであるようにすることができる。概して、想定されている化学的修飾とは、(a)蛋白質分解の阻害;及び(b)胃又は腸から血流中への取り込みを可能にする、少なくとも一つの部分の上記成分分子自体に対する結合である。成分(単数または複数)の総合的安定性が高まり、体内における循環時間が長くなることも望まれる。PEG化は、製薬学的用途に好ましい化学的修飾である。用いることができる他の部分としては、プロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリプロリン、ポリ−1,3−ジオキソラン及びポリ−1,3,6−チオキソカンが挙げられる[例えばAbuchowski及びDavis(1981)“Soluble Polymer−Enzyme Adducts,”in Enzymes as Drugs.Hocenberg及びRoberts編、(Wiley−Interscience:New York,N.Y.)pp.367−383;及びNewmarkほか、(1982)J.Appl.Biochem.4:185−189を参照]。
【0068】
別の実施態様は、不活性希釈剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤などの佐剤;及び甘味剤、矯味矯臭剤及び芳香剤を含む他の成分を含みうる、医薬用として許容可能な乳剤、液剤、懸濁剤及びシロップ剤を含む、経口投与用液状剤型を提供する。
【0069】
徐放性経口製剤が望ましいと考えられる。sH4アンタゴニストを、拡散又は浸出機構による放出を可能にする不活性マトリックス、例えばガムに取り込ませることができる。ゆっくりと変性するマトリックスを製剤に取り込ませることもできる。別の徐放製剤はOros治療系(Alza Corp.)を利用したものであり、即ち薬剤が、水の侵入を許容し、浸透圧効果により単一の小開口から薬剤を押し出す半透膜に封入される。経口製剤の場合、放出場所は胃、小腸(十二指腸、空腸(jejunem)または回腸)または大腸とすることができる。この放出は、ペプチド(または誘導体)を保護するか、腸など胃環境を超えた場所でペプチド(または誘導体)を放出することによって、胃環境の有害な影響を避けることが好ましい。胃における抵抗性を完全にするためには、少なくともpH5.0に対して不浸透性のコーティングが不可欠である。腸溶コーティングとして用いられるより一般的な不活性成分の例には、トリメリト酸酢酸セルロース(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、HPMCP50、HPMCP55、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、Eudragit L30D、Aquateric、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、Eudragit L、Eudragit S及びShellacが挙げられる。これらのコーティングは混合膜として用いることができる。
【0070】
3. 局所送達製剤
組成物は局所に適用することができる。これは多くのペプチド製剤ではうまくいかないが、特に肺、鼻、口内(舌下、頬)、膣又は直腸粘膜に適用された場合には有効である場合がある。sH4アンタゴニストは、空気動力学的直径が約5ミクロン未満のエアロゾル又は噴霧乾燥粒子として送達させる場合、息を吸い込みながら肺に送達され得、肺の上皮層を超えて血流まで横断する。
【0071】
噴霧器、計量吸入器及び粉末吸入器を含むがこれに限られない、治療薬を肺に送達するために設計された様々な機械的装置を用いることができ、それらは全て当業者に周知である。市販のデバイスの具体例は、Ultravent噴霧器(Mallinckrodt Inc.,St.Louis、Mo.);Acorn II噴霧器(Marquest Medical Products,Englewood、Colo.);Ventolin計量吸入器(Glaxo Inc.,Research Triangle Park,N.C.);及びSpinhaler粉末吸入器(Fisons Corp.,Bedford、Mass)である。Nektar、Alkermes及びMannkindの各社は、いずれも技術が本明細書に説明される製剤に適用されうる承認済み又は臨床試験中の吸入用インスリン粉末製剤を有する。
【0072】
粘膜への投与用製剤は通常、噴霧乾燥薬物粒子となるが、これらは錠剤、ゲル剤、カプセル剤、懸濁剤又は乳剤に取り込ませることができる。標準的な医薬用賦形剤はどの製剤者からでも入手可能である。経口製剤は、チューインガム、ゲルストリップ、錠剤又は薬用キャンデーの形をとることができる。
【0073】
経皮製剤を調製することもできる。これらは通常、軟膏剤、ローション剤、噴霧剤又はパッチとなるが、これらは全て標準的な技術を用いて調製することができる。経皮製剤には浸透促進剤を含ませることが必要になる。
【0074】
4. 送達制御用ポリマーマトリックス
ポリマーデバイス(ロッド、シリンダ、フィルム、ディスク)の移植又は注射(微粒子)後に全身的に長期放出させるための、放出制御用ポリマーデバイスを作製することができる。マトリックスはミクロスフェアなどの微粒子の形をとることができ、この場合、ペプチドが固体のポリマーマトリックス又はマイクロカプセル内に分散され、コアはポリマーシェルと異なる材質のものとし、ペプチドが液体又は固体の性質とすることができるコアに分散又は懸濁される。本明細書において明確に定義していない限り、微粒子、ミクロスフェア及びマイクロカプセルは同じ意味で用いている。あるいは、ポリマーは、数ナノメートルから四センチメートルの範囲の薄いスラブもしくはフィルム、磨砕その他の標準的な方法で作製した粉末、又はヒドロゲルなどのゲルとしても成型することができる。
【0075】
生分解性マトリックスが好ましいが非生分解性及び生分解性マトリックスのいずれもsH4アンタゴニストの送達に用いることができる。分解及び放出プロフィールがより十分に特徴付けられているため、合成ポリマーが好ましいがこれらは天然又は合成ポリマーとすることができる。このポリマーは、所望の放出期間に基づいて選択される。ある場合には線形放出が最も有用でありうるが、別の場合にはパルス放出又は「バルク放出」がより効果的な結果をもたらしうる。ポリマーは、(通常、最大約90重量%の水を吸収する)ヒドロゲルの形をとることができ、多価イオン又はポリマーと選択的に架橋させることができる。
【0076】
マトリックスは、溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出及び当業者に周知の他の方法によって形成できる。生体内分解性ミクロスフェアは、例えば、Mathiowitz及びLanger,J.Controlled Release 5,13−22(1987);Mathiowitzほか、Reactive Polymers 6,275−283(1987);及びMathiowitzほか、J.Appl.Polymer Sci.35,755−774(1988)に記載されている、薬物送達用ミクロスフェアを作製するために開発された方法のいずれかを用いて調製することができる。
【0077】
デバイスは、埋設もしくは注入−通常は全身治療のための投与量よりもはるかに少ない投与量を送達する−部位を治療するための局所放出又は全身送達用に製剤化することができる。これらは皮下、筋肉内、脂肪内に埋設又は注入し、又は飲み込むことができる。
【0078】
III. 製造方法
上記及び実施例に記載されるように、ポリペプチドsH4アンタゴニスト、sH4アンタゴニストをコードする核酸コンストラクト、B7−H4又はその変異体は、公知技術の標準的な分子生物学プロトコルを使用して作製されうる。例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrook及びRussel編、第3版)Cold Spring Harbor,New York(2001)を参照。あるいは、B7−H4、sH4、そのアンタゴニスト又はアゴニスト、又はその変異体が、従来の生化学的技術を用いて、それらを発現する個体から単離及び精製されうる。
【0079】
IV. 炎症反応治療及び検出
A. 診断法
可溶性B7−H4は、サンプルとされるRAの約三分の二及びSLE患者の三分の一の血清にみられ、sH4の濃度はRAの重症度と密接に相関する。RA及びSLEの実験モデルにおいてsH4の効果が反復され、sH4が、内因性B7−H4の抑制機能を遮断するためのデコイとしての役割を果たし、全身性自己免疫疾患の増悪をもたらすことが示された(実施例を参照)。結果は、全身性自己免疫疾患の病因論におけるsH4の役割を示す。
【0080】
個体の生体試料のsH4の量を定量することにより、個体における炎症反応を検出でき、コントロール(同じアッセイにおける正常な個体の単一又はより好ましくはプール又は平均値)と比較して個体の生体試料のsH4の量が高いことは、炎症反応を表す。生体試料には、例えば組織又は個体からの流体、例えば血液、血漿、唾液、リンパ、脳脊髄液、又は痰等の生物流体が含まれる。コントロールは、自己免疫性疾患等の炎症反応のない個体からの生体試料を意味する。
【0081】
試料のsH4の量は、酵素結合抗体免疫吸着アッセイ、質量分析、分光測光、又はそれらの組み合わせ等の従来技術を用いて測定されうる。
【0082】
炎症反応又は自己免疫性疾患の重症度は、個体の生体試料のsH4のレベルを定量し、個体の生体試料のsH4の量を、炎症反応又は自己免疫性疾患の異なるステージを示すsH4の量(単数または複数)と相関させることにより、検出又は評価されうる。様々なステージの炎症性疾患又は様々なレベルの重症度のsH4の量は、炎症性疾患の様々なステージ又は病気の様々な重症度の患者におけるsH4を定量することにより予め決定されうる。例えば、RAについては、以下の重症度の分類が典型的に用いられる:クラスI:通常の活動を行う能力の制限がない;クラスII:中程度の制限があるが、日常生活動作の大半を行う能力がある;クラスIII:顕著な制限があり、日常生活及び仕事の動作の大半ができない;及びクラスIV:活動不能であり、ベッド又は車椅子に拘束される。各クラスからの患者においてsH4のレベルが決定され、特定の重症度レベルと相関づけられるsH4の参照レベルが作成されうる。
【0083】
あるいは、sH4の量が、好中球のレベルと相関づけられうる。炎症反応又は自己免疫性疾患を有する個体においては、sH4が好中球のレベルと同じように上昇する。したがって、個体のsH4レベルは好中球レベルの指標となりうる。
【0084】
重症度が検出又は評価できる代表的な炎症反応又は自己免疫性疾患には、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円形脱毛症、強直性脊椎炎(anklosing spondylitis)、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫内耳疾患、自己免疫リンパ球増殖性症候群(alps)、自己免疫血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、脂肪便症−皮膚炎、慢性疲労症候群免疫不全、症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、良性粘膜類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、ドゴー病、皮膚筋炎、皮膚筋炎−若年性、円板状ループス、混合型クリオグロブリン血症、線維症−繊維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、Iga腎症、インシュリン依存性糖尿病(I型)、若年性関節炎、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群(polyglancular syndromes)、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆管萎縮症、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、全身強直性症候群、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、脈管炎、白斑、及びヴェーゲナー肉芽腫症が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
B.炎症反応を治療する方法
慢性的及び持続的炎症は、関節リウマチ(RA)及び全身性エリテマトーデス(SLE)等の全身性自己免疫疾患の病因及び進行の主要な原因である。sH4は、内因性B7−H4を遮断するためのデコイ分子として働く。B7−H4は、抗原刺激の存在下で、T細胞の細胞周期進行を阻害する。B7−H4は、好中球前駆体の増殖を抑制することにより、先天免疫を阻害できる。高いレベルのsH4が内因性B7−H4の阻害作用を遮断すると考えられる。
【0086】
したがって、例えば病気の一つ以上の症状を阻害又は低下させるために有効な量のsH4アンタゴニストを必要な個体に投与することにより、インビボでsH4の生物活性を妨げることで、炎症反応を治療できる。病気の一つ以上の症状を阻害又は低下は、好中球レベルの低下により示されうる。sH4の発現の下方制御、sH4の除去、インビボでのsH4の結合剤、例えば抗体との結合、B7−H4の内因性レベルの増加、B7−H4融合蛋白質の投与、又はこれらの組み合わせにより、sH4生物活性の干渉が達成されうる。
【0087】
1. sH4発現の下方制御
炎症反応又は自己免疫性疾患を治療する一つの方法は、炎症反応を減少又は阻害するために有効な量の、sH4をコードする核酸に特異的な阻害核酸を、必要な個体に投与することによる。阻害核酸は、アンチセンスDNA、siRNA、マイクロRNA、又はその組み合わせでありうる。あるいは、阻害核酸は、B7−H4を切断してsH4を生成するプロテアーゼに特異的でありえる。好ましい実施態様においては、阻害核酸は、B7−H4発現に統計学的に有意な影響を与えずに、sH4発現を下方制御する。ある側面においては、sH4の下方制御が、好中球集団を減少させる。
【0088】
2. sH4の除去
個体の炎症反応又は自己免疫性障害を治療する別の方法は、個体の血液又は血漿からsH4を除去することによる。可溶性B7−H4は、ウルトラフェレーシス、アフェレーシス、又は透析等の周知の技術を用いて除去されうる。一実施態様においては、個体から血液又は血漿が除去される。可溶性B7−H4が、エクスビボで血液又は血漿から選択的に除去される。sH4を通しながら、他の成分を保持する特定の分子量カットオフを有するフィルターを使用して、sH4の選択的除去が達成されうる。
【0089】
あるいは、血液又は血漿が、sH4に特異的な結合剤と接触させられうる。結合剤は、基質に固定されうる。適切な結合剤には、sH4又はsH4の天然リガンドに特異的な抗体又は抗原結合性抗体断片が挙げられるが、これらに限定されるものではない。結合剤は、sH4と特異的に結合してsH4を捕え、これにより血液又は血漿から除去する。そして、処置された血液又は血漿が個体に戻される。
【0090】
3. sH4の不活性化
炎症反応又は自己免疫性疾患を治療する別の方法は、炎症反応を減少又は阻害するために有効な量のsH4結合剤を、必要な個体に投与することによる。代表的な結合剤には、sH4の生物活性を阻害又は減少する抗体又はその抗原結合性断片が挙げられるが、これらに限定されるものではない。代表的な抗体は、mAb hH4.3である。小分子を用いて、インビボでsH4を結合及び不活性にしうることはいうまでもない。
【0091】
4. B7−H4の過剰発現
B7−H4の過剰発現は、内因性sH4と競合させるために使用でき、したがって、炎症性反応及び自己免疫性疾患又は障害を治療するための有効な手段となりうる。B7−H4の過剰発現は、内因性B7−H4を刺激して発現を増加させることにより達成しうる。あるいは、B7−H4の血清レベルを一時的に高めるために、B7−H4が必要な個体にボーラスとして投与されうる。
【0092】
炎症反応又は自己免疫性疾患を治療するための別の方法は、B7−H4又はその機能的断片をコードする核酸コンストラクトを、必要な個体に投与することによる。機能的断片とは、sH4生物活性を妨げ、阻害し、又は減少させるB7−H4断片を意味する。
【0093】
別の実施態様においては、B7−H4融合蛋白質が、sH4媒介性炎症又はその症状を減少又は阻害するために有効な量、必要な個体に投与されうる。B7−H4融合蛋白質は、上述される。あるいは、B7−H4融合をコードする核酸コンストラクトが、必要な個体に投与されればよく、核酸コンストラクトが個体に発現されて、sH4の生物学的機能を減少又は阻害するために有効な量のB7−H4融合蛋白質を生成する。
【0094】
5. 遺伝子送達
sH4アンタゴニストをコードする核酸は、これを必要とする個体に対して炎症反応又は自己免疫疾患を処置するのに有効な量で投与することができる。DNAの送達では「外来」DNAを細胞内に、最終的には生きている動物体内に導入することが含まれる。遺伝子の送達はウイルスベクター又は非ウイルスベクターを用いて達成することができる。1つの方法は、培養一次細胞中に核酸を移入した後、この生体外で形質転換された細胞を個体に、全身性又は特定の器官又は組織中へ自家移植することを含む。
【0095】
核酸による治療は、哺乳動物の体細胞組織又は器官中にインビボで機能的に活性なDNAを直接移入することにより達成することができる。DNAの移入は以下に記載するいくつかの方法を用いて実現することができる。こうした系について選択可能なマーカー(例えば、G418抵抗性)を用いてインビトロでの発現に成功するかどうかを試験し、そのDNAを発現する形質移入された(transfected)クローンを選択した後、(誘導系の場合は誘導剤で処理した後) B7−H4発現産物の存在を適切なイムノアッセイでその産物に対する抗体を用いて検出することができる。DNAの取り込み、プラスミドの組込み及び組込みプラスミドの安定性を含むこの方法の効率性は、既知の方法を用いてプラスミドDNAを線状化し、「担体」として高分子量哺乳動物DNAを用いて同時形質移入することにより改善することができる。
【0096】
レトロウイルス媒介ヒト治療では両栄養性複製欠損性レトロウイルス系が利用される(Weiss及びTaylor、Cell、82:p.531−533 (1995年))。このようなベクターは、機能性DNAをヒトの細胞又は組織に、例えば、アデノシンデアミナーゼ遺伝子をリンパ球に、NPT−II遺伝子及び腫瘍壊死因子遺伝子を腫瘍浸潤リンパ球に導入するのに用いられてきた。一般に、レトロウイルス媒介遺伝子送達では遺伝子移入(transfer)のために標的細胞の増殖が必要となる(Bordignonほか、Science 270:p.470−475 (1995年))。この条件は今回のDNA分子が導入されることになる好ましい細胞の一部、即ち、活発に増殖している腫瘍細胞によって満たされる。いくつかの方法のいずれかを利用するプラスミド及びレトロウイルスベクターによる形質移入を用いた嚢胞性線維症の遺伝子治療がCollinsほかにより米国特許第5,240,846号に記載されている。
【0097】
B7−H4ポリペプチド又は融合蛋白をコードするDNA分子は、当該分野でよく知られているように、複製欠損性レトロウイルスをもたらすパッケージング細胞株を用いてレトロウイルスベクターに詰め込むことができる(例えば、Stone,D.ほか、J.Endocrinology、164:p.103−118 (2000年)参照)。遺伝子送達のための追加のウイルスがReynoldsほか、Molecular Medicine Today、5:p.25−31(1999年)に記載されている。
【0098】
また、組換えアデノウイルス(Murphyほか、Proc.Natl.Acad.Sci.94:p.13921−13926 (1997年))、神経細胞特異的に送達させ存続させるための単純ヘルペスウイルス(HSV)(Lowensteinほか、Brain Res. Molec. Brain Res.、30:p.169−175(1995年))を含む他のウイルスベクターを用いることもできる。ヒト遺伝子処置におけるアデノウイルスベクターの利点としては、組換えがまれであり、このようなウイルスとヒトの悪性腫瘍とに関連がなく、アデノウイルスのゲノムが最大7.5kbの大きさの外来遺伝子を受け入れさせるように操作することができる二本鎖DNAであり、生アデノウイルスが安全なヒトワクチン有機体であるという事実が挙げられる。また、アデノ関連ウイルスもまたヒトの治療用に有用である(Samulski,R.J.ほか、EMBO J.10:p.3941(1991年))。
【0099】
上記の開示されたDNA分子を発現することができ、特にヒトにおける今回の治療設定に有用である別のベクターは、複製しないようにすることができるワクシニアウイルスである(Peplinkski,G.R.ほか、Surgical Oncology Clinics of North America、p.7575−588 1998年))。組換えワクシニアウイルス及び異種DNAを含有する他のウイルス並びに免疫化及びDNA治療におけるそれらの使用に関する記載については、Moss,B.、Curr.Opin.Genet.Dev. 3:p.86−90(1993年);Moss,B. Biotechnology 20:p.345−362 (1992年);Moss,B.、Curr.Top.Microbiol Immunol 158:p.25−38(1992年);Moss,B.、Science 252:p.1662−1667(1991年);Piccini,Aほか、Adv.Virus Res.34:p.43−64(1988年);Moss,B.ほか、Gene Amplif Anal 3:p.201−213(1983年)に概説されている。
【0100】
裸のDNAもしくはRNA又はウイルスベクターの他に、設計された細菌をベクターとして使用することができる。Salmonella、BCG及びListeria monocytogenes(LM)を含む多くの細菌株(Hoiseth & Stocker、Nature 291:p.238−239(1981年);Poirier,T Pほか、J.Exp.Med.168:p.25−32(1988年);(Sadoff,J.C.ほか、Science 240,p.336−338(1988年);Stover,C.K.ほか、Nature 351,p.456−460(1991年);Aldovini,A.ほか、Nature 351,p.479−482(1991年);Schafer,R.ほか、J.Immunol.149,p.53−59(1992年);Ikonomidis,G.ほか、J.Exp.Med.180,p.2209−2218(1994年))。これらの微生物はワクチンベクターとして用いるための2つの有望な特性を示す:(1)経口的にワクチンを送達させる能力をもたらす腸内感染経路;及び(2)単球/マクロフェージの感染により抗原がフェッショナルAPCの標的となる、というものである。
【0101】
インビボでのウイルス媒介遺伝子移入の他に、DNAを直接的に移入するために、プラスミドDNAの投与(Wolffほか、Science、247:p.1465−1468 (1990年);Hickman,M.A.ほか、Hum.Gene Ther.、5:p.1477−1483(1994年))及び微粒子銃(particle bombardment)媒介遺伝子移入(O’Brien,J.ほか、Brain Res Brain Res Protco、10:p.12−15(2002年))を含む、当該分野で周知の物理的手段を用いることができる。さらに、インビトロで遺伝子を細胞中に移入するための周知の手段である電気穿孔法を用いてDNA分子をインビボで組織に移入することができる(Titomirov,A.V.ほか、Biochim.Biophys.Acta 1088:p.131((1991年))。
【0102】
「担体媒介遺伝子移入」についても記載がある(Wu,C.H.ほか、J.Biol.Chem.264:p.16985(1989年);Wu,G.Y.ほか、J.Biol.Chem.263:p.14621(1988年);Soriano, P. ほか、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:p.7128(1983年);Wang,C−Y.ほか、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:p.7851(1982年);Wilson,J.M.ほか、J.Biol.Chem.267:p.963(1992年))。好ましい担体は、アシル化mAbを脂質二重層に取り込むことができる免疫リポソームなどの標的化リポソーム(Liu et al. Curr Med Chem、10:p.1307−1315(2003年))である。アシアログリコプロテイン/ポリリジン(Wuほか、1989年、上掲)などのポリカチオンを用いることができ、この場合、この結合体は標的組織を認識する分子(例えば、肝臓用のアシアロオロソムコイド)及びDNAに結合して形質移入されるDNA結合性化合物を含む。ポリリジンは、DNAに損傷を与えることなくそれに結合するDNA結合性分子の1例である。次に、この結合体はプラスミドDNAと複合体を形成して移入される。
【0103】
形質移入又は微量注入のために用いるプラスミドDNAは、当該分野で周知の方法を用いて、例えば、Quiagen法(Quiagen)を用いた後、本明細書に例示した方法などの既知の方法を用いてDNAを精製することにより調製することができる。
【0104】
6. 併用療法
開示の組成物は、単独で、又は、免疫抑制因子、例えば他のリンパ球表面マーカー(例えばCD40)又はサイトカインに対する抗体、他の融合蛋白質、例えばCTLA41g、又は他の免疫抑制薬(例えばサイクロスポリンA、FK506−様化合物、ラパマイシン化合物、又はステロイド)、抗増殖剤、細胞毒性剤、又は免疫抑制を補助しうる他の化合物を含むがこれに限られない一つ以上の追加的治療剤と組み合わせて、必要な対象に投与されうる。
【0105】
本明細書で使用されるところの、「ラパマイシン化合物」という用語は、中性の三環式化合物ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、ラパマイシンアナログ、及びラパマイシンと同じ作用機序(例えばサイトカイン機能の阻害)を有すると考えられる他のマクロライド系化合物を含む。「ラパマイシン化合物」という語は、ラパマイシンと構造的な類似性を有する化合物、例えば治療効果を増強するために改変されている、類似の大環状構造を有する化合物を含む。例示的なラパマイシン化合物は、従来技術において周知である(例えば国際公開第95122972号、第95116691号、第95104738号、米国特許第6,015,809号;第5,989,591号;米国特許第5,567,709号;第5,559,112号;第5,530,006号;第5,484,790号;第5,385,908号;第5,202,332号;第5,162,333号;第5,780,462号;第5,120,727号を参照)。
【0106】
「FK506−様化合物」という語は、FK506、及びFK506誘導体及びアナログ、例えばFK506と構造的類似性をもつ化合物、例えば、治療効果を高めるために改変されている、類似の大環状構造をもつ化合物を含む。FK506−様化合物の例には、例えば国際公開第00101385号において記載されるものが含まれる。本明細書で用いられるところの「ラパマイシン化合物」という語には、FK506−様化合物が含まれないのが好ましい。
【0107】
別の適切な治療薬には、抗炎症剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。抗炎症剤は、非ステロイド性、ステロイド性、又はその組み合わせでありうる。一実施態様は、約1%(w/w)〜約5%(w/w)、典型的に約2.5%(w/w)又は抗炎症剤を含む経口組成物を提供する。非ステロイド系消炎薬の代表例には、ピロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、スドキシカム等のオキシカム;アスピリン、ジサルシド、ベノリレート、トリリセート、サファプリン、ソルプリン、ジフルニサル、及びフェンドサル等のサリチル酸塩;ジクロフェナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イソキセパック、フロフェナック、チオピナク、ジドメタシン、アセマタシン、フェンチアザク、ゾメピラク、クリダナク、オクキセピナク、フェルビナク、及びケトロラック等の酢酸誘導体;メフェナミック、メクロフェナミック、フルフェナミック、ニフルミック、及びトルフェナミック酸等のフェナム酸;イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、インドプロフェン(indopropfen)、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、及びチアプロフェン等のプロピオン酸誘導体;フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾン、及びトリメタゾン等のピラゾールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの非ステロイド系消炎薬の混合物が用いられてもよい。
【0108】
ステロイド性抗炎症薬の代表例には、ハイドロコルチゾン、ヒドロキシル−トリアムシノロン、アルファ−メチルデキサメサゾン、デキサメサゾン−フォスフェート、ベクロメタゾンジプロピオネート、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デソキシメタゾン、酢酸デゾキシコルチコステロン、デキサメサゾン、ジクロリゾン、ジフロラゾンジアセテート、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、ピバリン酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン(フルプレドニリデン)、フルランドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、ジフルオロゾンジアセテート、フルラドレノロン、フルドロコルチゾン、ジフルロゾンジアセテート、フルラドレノロンアセトニド、メドリゾン、アムシナフェル、アムシナフィド、ベタメタゾン及びそのエステルの平衡物、クロロプレドニゾン、酢酸クロロプレドニゾン、クロコルテロン、クレシノロン、ジクロリゾン、ジフルルプレドネート、フルクロロニド、フルニゾリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンシクロペンチルプロピオネート、ヒドロコルタメート、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ベクロメタゾンジプロピオネート、トリアムシノロン、及びその混合物等のコルチコステロイドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
V. トランスジェニック動物
B7−H4を発現しないか発現が減少したトランスジェニック非ヒト動物が、スクリーニング及びテストにおいて有用である。内因性B7−H4遺伝子及び対立遺伝子が、遺伝子に遺伝因子を挿入して発現を妨げることにより妨げられうる。内因性B7−H4遺伝子が、相同的組み換えを使用して欠失されるのが好ましい。代表的な非ヒトトランスジェニック動物には、マウス又は他の齧歯類、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、及び非ヒト霊長類が含まれる。
【0110】
トランスジェニック動物が、B7−H4がいかに免疫系を調節するか、特にB7−H4がいかに免疫反応を抑制するかを研究するための研究ツールとして用いられうる。例えば、トランスジェニック動物を用いて、内因性B7−H4生物活性を模倣する化合物、又は、可溶性B7−H4と相互作用する化合物をスクリーニングできる。
【0111】
本発明は、以下の限定されない実施例を参照することによってさらに理解されよう。
【実施例】
【0112】
(実施例1)
B7−H4KOマウスの作製
マウス
6乃至8週令のC57BL16(B6)マウスをJackson Laboratoryから入手した。RAG−1 KOマウスはTaconic Farmsから購入した。実験には雌雄マウスとも使用した。全てのマウスは、Johns Hopkins Animal Facilityにおいて施設内動物管理使用委員会により承認された全てのプロトコルを用いて特定病原体感染防止条件下で飼育した。相同組換えによって遺伝子KOマウスを作製する一般的な方法については、Dong, H.ほか、Immunity 20:p.327−336 (2004年);Tamada, K.ほか、J. Immunol.、168:p.4832−4835 (2002年)により記載された。B7−H4KOマウスを作製するために、129SvJ細菌人工染色体(BAC)ライブラリ(Invitrogen、Carlsbad、CA)からマウスB7−H4ゲノムDNAのIgVドメイン(エクソン3)の上流の5.09kbDNA断片をPCR増幅し、pKOスクランブラーベクターNTKV−1907(Stratagene、La Jolla、CA)の5’アーム位中にクローニングした。同じライブラリからB7−H4ゲノムDNAのIgCドメイン(エクソン4)の下流の5.57kbDNA断片をPCR増幅し、同じベクターの3’アーム位中にクローニングしてB7−H4遺伝子からのIgV及びIgCドメインの除去をもたらす標的プラスミドを作製した(図1A)。B7−H4遺伝子の5’アーム及び3’アーム配列、ポジティブ選択マーカーNEO及びネガティブ選択マーカーTKを含有する標的断片を129SvIE胚幹(ES)細胞中に形質移入した。ES細胞形質移入体をネオマイシン薬剤選択にかけた。標的とするクローンは、3’外部プローブを用いるサザンブロット分析によって同定した。個々のB6の胚盤胞中に標的ES細胞を注入することによりキメラマウスを作製した。キメラマウスをB6マウスと交配してヘテロ接合体B7−H4(+I−)マウスを得た。野生型及びB7−H4対立遺伝子欠失を識別するためにPCR分析を行った。3種のPCRプライマーの配列は以下の通りとした。
【0113】
【化1】
10世代超の間B6へ戻し交配することによりホモ接合体マウスを作製した後、更なる分析に用いた。B7−H4KOマウスとRAG−1KOマウスとを戻し交配することによりB7−H4KO/RAG−1KOマウスを得た。
【0114】
B7−H4遺伝子のIgV及びIgC領域全体を欠損させてその潜在的な受容体とのこれらの相互作用を完全になくすことで129ES細胞における相同組換えを行ってB7−H4KOマウスを作製した。B7−H4遺伝子のIgV及びIgCドメインをコードするエクソンはNeo遺伝子カセットで置換した(図1)。ES細胞の標的組換えはサザンブロット分析によって確認し、4つの独立したESクローンからのデータを図に示した。
【0115】
B7−H4+対立遺伝子は12.25kb Spe1断片を有し、B7−H4−対立遺伝子は8.9kb Spe1断片を有すると予測される。両断片を有するクローン(2及び3)は組換えが生じたことを示す。これらのESクローンから標準的な手順によりキメラ雄性マウスを得た。こうしたマウスをC57BL16(B6)雌へ戻し交配し、2つの独立した標的ESクローンからヘテロ接合体改変マウスを確立した。次いで、B7−H4改変マウスがヘテロ接合体であるかホモ接合体であるかについて、尾部生検試料から単離したゲノムDNAのPCR分析により確認した。サザンブロット分析によってゲノムDNAが置換されていることを確認した。RT−PCR分析によってB7−H4欠損マウスの肝臓ではB7−H4mRNAが発現されていないことが明らかとなった。B7−H4KOマウスは正常に成長し、正常な同腹仔数が得られた。こうしたマウスを10世代の間、B6バックグラウンドへ戻し交配した後、下記の実験に用いた。
(実施例2)
B7−H4KOマウスにおけるリステリア菌感染に対する顆粒球媒介抵抗性の増強
抗体、組換え蛋白及びフローサイトメトリー分析
FITC、PE又はAPCと直接結合体を形成する、マウスGr−1及びCD11bに対する一次及び二次抗体はBD Pharmingen(San Diego、CA)又はeBiosciences(San Diego、CA)から購入した。結合体を形成していない一次抗体をハイブリドーマ培養上清から精製した。B7−H4Ig融合蛋白はSica,G.L.ほか、Immunity、18:p.849−861(2003年)に記載されているのと同様にして調製した。細胞は全て先に記載したように標準的なプロトコルを用いて染色し、FACSCaliburフローサイトメトリーで分析した(同上文献)。そのデータはSoftware CellQuest (BD)又はFlowJo (Tree Star Inc.、Ashland、OR)を用いて解析した。インビボ実験の場合、mAbは、以前に記載された様に(同上文献)調製し、精製した。抗NK1.1ハイブリドーマ(PKl36)及び抗IFN−γハイブリドーマ(R4−6A2)はATCCから購入した。抗Gr−1ハイブリドーマ(RB6−8C5)はシカゴ大学のHans Schreiber博士から親切な提供を受けた。対照マウスIgG、ラットIgG及びハムスターIgGはSigma(St.Louis、MO)から購入し、さらに、以前に記載された様に(同上文献)精製した。カラゲナンはSigmaから購入した。全ての細胞培養培地及び抗体はCellgro(Herndon、VA)から購入した。ウシ胎仔血清(FBS)はHyclone(Logan、UT) から購入した。
【0116】
リステリア菌感染及びコロニー計数
Listeria monocytogenes株DP−L4056はCerus Corp.のThomas W.Dubensky Jr.博士から親切な提供を受けた。リステリア菌のストックを調製するため、リステリア菌細胞をDlFCO Listeria Enrichment Broth (Becton Dickinson Co.、Sparks、MD)中、OD600nmで0.8乃至1となるまで増殖させた。培養物を遠心分離により採集しPBSで2度洗浄した。次いで、ペレットをストック用溶液(15乃至20%グリセロール含有PBS)に再懸濁し、マイクロチューブ当たり200μlのアリコートにして−80℃で貯蔵した。リステリア菌ストックのコロニー形成単位(CFU)は、BBL CHROMagar Listeriaプレート(Becton Dickinson Co.、Sparks、MD)上で増殖する上記アリコートの希釈系列液のコロニーを計測することにより求めた。感染させる前に、リステリア菌ストックを解凍してPBSで適切なCFU/ml濃度に希釈し、示したようにしてマウス又は細胞に適用した。6乃至8週令のマウスに対して、示したCFUのリステリア菌を腹腔内(i.p.)又は静脈内(i.v.)注射して感染させた。感染後の示した時点で、マウスの肝臓又は膵臓の一片を切り取り、重量を計ってPBS中ですり潰した。得られた肝臓懸濁液はBBL CHROMagar Listeriaプレート又はListeria Enrichment Brothの寒天プレート上で平板培養した。平板培養後2日にコロニーを計数し、肝臓又は脾臓のCFUIgに調整した。
【0117】
インビトロにおける顆粒球のリステリア菌感染
顆粒球は、Chen, L. Y.ほか、Hum. MoL. Genet、12:p.2547−2558 (2003年)に記載の方法と同様にして単離した。つまり、マウスに3%チオグリコレート培地をi.p.注射した。注射後4乃至5時間に、各マウスの腹膜腔を5mlのPBSで洗浄し、遠心分離により細胞を収集した。この方法では、採集細胞の90%より多くが、Gr−1+CD11b+顆粒球であった。1×106個の顆粒球を1×108CFUのLMと37℃で10分間インキュベートした。培養は、Penicillin−Streptomycin(Cellgro)の添加によって終結した。次いで、遠心分離によって細胞を収集し、これを96穴プレートで平板培養した。プレートを37℃でインキュベートし、示した時点で採集した。細胞は、1mlの滅菌水中に再懸濁して直ちに溶解させた。細胞溶解液又は希釈細胞溶解液をListeria Enrichment Brothの寒天プレート上に平板培養してコロニーを計数した。
【0118】
顆粒球の呼吸バースト及び貪食
Radsak,M.P.ほか、J. Immunol.、172:p.4956−4963 (2004年);Radsak,M.P.ほか、Blood、101:p.2810−2815(2003年)に記載の方法と同様にして、顆粒球の貪食活性及び酸化的バースト活性を測定した。つまり、1×106個の顆粒球を5×107個の赤色蛍光マイクロビーズ(FLUORESBRITE(登録商標) Polychromatic Red 1.0 Micron Microspheres、Polysciences Inc.、Warrington、PA)及び25μMのDCFH−DA(2’,7’−ジヒドロクロロフルオレセイン二酢酸、Sigma−Aldrich)と共に37℃で30乃至60分間インキュベートした。次いで、細胞をFACS緩衝液(1%FBSを含むPBS)で2度洗浄し、1%パラホルムアルデヒドを含むPBSで固定した。分析はフローサイトメトリーによって行った。
【0119】
病理学
組織の処理及び染色の方法についてはDong,H.、Nature Med. 8:p.793−800(2002年)に記載されている。簡単に言えば、6乃至8週令のマウスの脾臓試料をOCT化合物(Sakura Finetek USA、Torrance、CA)で包埋し、−80℃で凍結した。凍結組織はスライスにし、固定して5μg/mlのGr−1−ビオチン抗体で染色した。次いで、ABCペルオキシダーゼ(Vector laboratories Inc.、Burlingame、CA)及びDABペルオキシダーゼ基質(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)をメーカーのプロトコルに従ってスライドに適用した。最後に、ヘマトキシリン液を用いてGr−1ネガティブ細胞を染色した。
【0120】
結果
B7−H4KOマウスは正常な数及び率のT、B、NK、NKT細胞及びマクロファージを示す。CD3架橋による精製T細胞のインビトロ増殖、同種抗原刺激又は同種抗原に対する細胞傷害性T細胞の応答により判断して、T細胞応答に明白な変化は認められない。これらの結果から、抗原に対する多クローン性T細胞の応答はB7−H4KOマウスでは損なわれないことが示される。こうしたインビトロの知見と符合して、B7−H4KOマウスはCon−A誘導肝炎(Dong,H.ほか、Immunity、20327−336(2004年))、ハプテン誘導過敏症(Tsushima,F.ほか、Eur.J,Immunol.、33:p.2773−2782(2003年))及びOVA誘導気道炎症(Kamata,T.、J.Clin.Invest、111:p.109−119(2003年))に対して正常な応答を示すことも見出した。また、B7−H4欠損マウスはOVA蛋白に対するOT−I及びOT−II細胞の増殖(Sica,G.L.、Immunity、18849−861(2003年))、超抗原に対するCD4−Vβ8.118.2T細胞の増殖(Tamada,K.ほか、J.Immunol.、168:p.4832−4835(2002年))並びにインビボにおける同種抗原に対するCTL活性(Tamada,K.、Nature Med.、6:p.283−289(2000年))において野生型マウスと同等であることも見出した。また、正常なB細胞応答がTNP−KLHによる免疫化(Tamura,H.et al.、Blood97:p.1809−1816(2001年))後に認められた。B7−H4KOマウスは、SPF条件で最長1.5年、自然発生の自己免疫疾患を発症しない。
【0121】
これらのデータからB7−H4はアッセイにおける抗原駆動T及びB細胞応答に最小の関与であることが分かるが、これらの応答は、活動性感染の非存在下に行われたものであり、活動性感染が存在すれば、通常、自然免疫と適応免疫との精巧な協調を必要とする。この可能性を検証するために、B7−H4を除いた場合の影響をListeria monocytogenes (LM)に感染させたマウスで評価してB7−H4が感染に対する免疫に寄与するかどうかを調べた。マウスに、致死性を誘導するのに十分な腹腔内(i.p.)用量(2×106CFU)のLMを感染させた。次に、こうしたマウスの生残について評価した。B7−H4KOマウスはLM感染に対して有意により抵抗性であった。即ち、B7−H4KOマウスは野生型(WT)同腹仔よりもはるかに長く生残し、マウスの最大40%が細菌を除去し、いつまでも生存したのに対して、全ての同腹仔は9日目前後で死亡した(図2a)。この効果は、B7−H4KOマウスの脾臓(図2b)及び肝臓中のリステリア菌数の減少と相関性がある。興味深いことに、大部分のマウスは、適応免疫が通常まだ発達していない時点である3乃至4日以内に死んでいた。従って、これらの結果から、B7−H4は自然免疫応答の状況を変えることに関与することが示唆される。
【0122】
この抵抗性のメカニズムに取り組むために、自然免疫及び適応免疫の細胞組成を調べた。マウスをリステリア菌に感染させ、末梢血及びリンパ系器官中のT細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ及び顆粒球を特異的mAbによって調べた。LM感染後最初の3日以内ではNK、マクロファージ、T細胞及びB細胞に有意な差違は見られなかったが、脾臓中の顆粒球は、感染3日目で、同一に感染させたWT同腹仔よりもLM感染B7−H4KOマウスから有意により多く見出された(図2c)。同様な結果は、感染後の肝臓から単離される顆粒球及び末梢血の顆粒球においても得られた。しかしながら、未感染のB7−H4KOマウスでは、顆粒球数はWT対照の正常範囲内にあった。これらの結果から、B7−H4の役割はLM感染時の顆粒球応答を阻害することにあることが分かる。
【0123】
B7−H4KOマウスにおけるLM感染の抵抗性に顆粒球が必要とされるかどうかを明らかにするために、Gr−1mAbを接種することにより顆粒球を枯渇させた。Gr−ImAbを注射すると、2日目の脾臓において顆粒球が検出不可能なレベルにまで急速に減少した。Gr−Iおよび顆粒球を枯渇させると、PBS又はアイソタイプ適合対照mAbで処置したマウスと比較して、B7−KOマウスからの肝臓におけるLM負荷は有意に増大した(図2d)。NK細胞をNKI.ImAbによって枯渇させても肝臓におけるLMのコロニー形成に影響を及ぼさなかったが、マクロファージをカラゲナンにより枯渇させると、LMコロニーは中等度に増殖したが、Gr−I細胞枯渇の場合に比し、より重要性の低いレベルであった。従って、これらの結果は、Gr−Iおよび顆粒球が、B7−H4非存在下におけるLM感染に対する抵抗性に重要な役割を果たしていることを示すものである。
【0124】
B7−H4欠乏顆粒球では機能性が改変されているかどうかについて精製顆粒球とLMとの共培養により明らかにした。B7−H4欠乏顆粒球は培養系中のLMの正常な取り込み及び増殖阻害を示した(図3)。さらに、B7−H4KO顆粒球による呼吸バースト及び貪食も正常であり、B7−H4KO顆粒球はWT顆粒球と機能的に異ならないことが示された。従って、B7−H4KOマウスにおいてLM感染に対する抵抗性が増大するのは、顆粒球の機能的能力の増大によるのでなく、顆粒球数の増加による可能性が高い。
(実施例3)
B7−H4KOマウスの顆粒球媒介自然抵抗性は適応免疫と無関係である。
【0125】
活性化及び記憶T細胞はLMに対する免疫における重要な構成要素である(Nathan,C. Nature Rev.ImmunoL、6:p.173−182(2006年))。データはLM感染に対するB7−H4KOマウスの抵抗性が顆粒球を必要とすることを支持しているが、適応免疫もこの抵抗性に寄与しているかどうかは不明である。LM感染後の顆粒球数の増加はB7−H4KOマウスに見出される主要な表現型であるので、LM感染に対するB7−H4KOマウスの反応を適応免疫の非存在下に調べた。B7−H4KOマウスは、RAG−1KOバックグラウンドへ戻し交配してT及びB細胞を除去した。
【0126】
結果
小さな脾臓を有するRAG−1KO(RKO)マウスと異なって、B7−H4/RAG−1二重KO(DKO)マウスは脾臓の拡大を呈する。DKOマウスの脾臓サイズはB6バックグラウンドにおけるWT及びB7−H4KOマウスと同様である。脾臓、末梢血、肝臓及び骨髄の細胞成分をさらに分析すると、Gr1+CD11b+顆粒球が劇的に増加することが明らかとなった。
【0127】
RKO及びDKOマウスに対して、その後、致死量のLMを投与して感染させ、これらの自然抵抗性を検討した。LMによりRKOマウスを感染させることによって肝臓のLMは指数関数的に増殖し、4日目には死亡率100%となった(図4)。これとは際立って対照的に、DKOマウスは2日目の肝臓における細菌負荷が有意に少なく、大部分のマウスはLM感染後10日を超えて生残することができた(図4)。脾臓を含む他の器官でも同様なLMの指数関数的増殖が認められ、LM感染の播種が示された。感染B6バックグラウンドB7−H4KOマウスのかなりの割合が長期間生残した(図2a)のとは対照的に、DKOマウスは全て最終的に15日目に感染死したことは、適応免疫の重要な役割を確認するものである(図4)。LMが2日目という早期にDKOマウスの肝臓その他の器官から速やかに除去されたことと合せ、その結果は、B7−H4の欠乏によってLM感染に対する自然免疫が増強され、これは主として顆粒球の増加によって媒介されることを示す。
(実施例4)
B7−H4は顆粒球の増殖を直接阻害する。
【0128】
骨髄細胞の培養並びに顆粒球の増殖及び阻害試験
骨髄細胞を吸引し、Wilcox,R.A.ほか、Blood、103:p.177−184(2004年)に記載されている方法と同様にして調製した。B7−H4媒介増殖阻害の場合、96穴プレート中でB7−H4Ig又は対照マウスIgを一夜コーティングした。十分洗浄した後、組換えマウスG−CSF(Pepro Tech Inc.、Rocky Hill、NJ)を示した濃度で含み、又は含まない24穴プレート中でBM細胞を2×106個/穴平板培養した。示した時点で細胞を採集し、Beckman Coulter Counter(Beckman、Fullerton、CA)で細胞数を計数した。細胞増殖を調べるために、2×105/穴のBM細胞をG−CSFを含む96穴プレート中で平板培養した。3HTdRでパルスした後、細胞を3HTdRパルス後16時間にFilterMateセルハーベスタ(Perkin Elmer、Shelton、CT)で収集した。取り込まれた3HTdRはTrilux Liquid Scintillation及びLuminescence Counter(Wallac、Turku、Finland)によって検出した。細胞分裂試験の場合、まず、BM細胞を2μMのカルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(carboxfluorescein diacetate succinimidyl ester)(CFSE、Invitrogen、Carlsbad、CA)で標識し、次いで96穴又は24穴プレートにおける培養物に添加した。示した時点で細胞を収集し、mAb Gr−1及びCD11bで染色し、種々の時点のCFSE含量(2)についてフローサイトメトリー分析を行った。
【0129】
結果
B7−H4KOマウスにおいて顆粒球が増加したことから、B7−H4は顆粒球に増殖阻害シグナルを送達することに関与していることが示唆される。B7−H4KOマウスからの顆粒球について、これがWT顆粒球よりも増殖能に優れているかどうかを明らかにするための検討を行った。これを行うために、多数の顆粒球前駆体を含有する骨髄(BM)細胞をWT又はB7−H4KOマウスから調製し、G−CSFの存在又は非存在下に3日間培養して顆粒球/好中球の分化を促進した。次いで、BM細胞の増殖を 3HTdRの取り込みにより測定した。図5aに示したように、BM細胞は用量依存性に増殖することでG−CSFに反応するが、B7−H4KOマウスからのBM細胞の増殖はWT細胞からの場合よりも有意に高かった。培養の最後においてG−CSFに反応するBM細胞のフローサイトメトリー分析を行った結果から、生残細胞の95%超はCD11b+Gr−1+顆粒球であることを示している。
【0130】
このデータは顆粒球におけるB7−H4の阻害効果と一致しているが、BM細胞中の他の細胞成分が増殖に寄与することも考えられる。この可能性を明確に排除するために、BM細胞をCFSEで標識し、G−CSFで3日間刺激した後、この細胞を抗Gr−1+/CD11b+mAbで染色することにより細胞分裂に関して顆粒球を観察した。図5bは、B7−H4KOマウス(B6)からの70%のGr−1+CD11b+顆粒球が少なくとも1回分裂するのに対し、WTB6マウスからのわずか56%の顆粒球がCSFEの希釈を示した。同様ではあるがより大きな有意差がRAG−1KOバックグラウンドを有するマウスで見出された。即ち、DKOマウスの86%の顆粒球が分裂を始めたのに対し、RKOマウスからのわずか64.8%の顆粒球がCSFEの希釈を示した。従って、これらの結果から、BM細胞においてB7−H4が欠乏すると、BM由来顆粒球の増殖が増大することが示唆される。
【0131】
B7−H4の欠乏がBM由来顆粒球の増殖増大をもたらし得ることを考慮して、B7−H4がその増殖を直接阻害することができるかどうかを調べた。これを検証するために、組換えB7−H4Ig融合蛋白の存在下にWT BM由来顆粒球を培養し、顆粒球の増殖について調べた。WT BM細胞の増殖は、B7−H4の細胞外部分と免疫グロブリンFcとの融合蛋白であるB7−H4Igによって有意に阻害された。この阻害は培養3日目で明らかであり、4及び5日目でより著しくなった(図6a)。培養液に0.1ng/mlのG−CSFを添加すると、BM細胞の増殖が中等度に増大したにもかかわらず、B7−H4Ig媒介の抑制は有意には覆されなかった(図6b)。しかしながら、培養液中のG−CSFを1ng/mlに増加させると、BM細胞のB7−H4Ig媒介増殖阻害を大きく回復させることができた(図6c)。同様な阻害はB7−H4欠乏顆粒球でも認められた。集約すると、これらの結果から、さらに、B7−H4は顆粒球の増殖に対して阻害的であるが、これをG−CSFが逆転させ得るという証拠が得られる。
【0132】
B7−H4がリステリア菌感染に対する自然免疫を負に調節し得ることを発見した。B7−H4の効果は顆粒球の増殖抑制によって媒介されると考えられる。末梢組織におけるB7−H4の広範な発現パターンとの関連で、これまでに記載したT細胞応答の阻害におけるB7−H4の役割の他に、B7−H4が末梢組織の自然免疫の制御において重要な調節分子であることをデータは裏付けている。
【0133】
B7−H4KOマウスでは、B7−H4蛋白の細胞外部分の大部分が欠損することにより内因性B7−H4とその推定上の受容体との相互作用が完全に排除される。しかしながら、この遺伝子を除去すると、インビトロにおける多クローン性及び異種抗原刺激に対するT細胞応答に強い影響はない。Suh,W.K.ほか、Mol.Cell.Biol.、26:p.6403−6411(2006年)により報告された最近の研究でも同様な観察がなされている。これらの知見からB7−H4はCD3架橋又は異種抗原に対する強い多クローン性T細胞応答の阻害に実質的には影響を及ぼさないことが示唆されるが、B7−H4がT細胞応答のカスケードにおけるより選択的な段階に影響する可能性がある。例えば、最近の研究では、B7−H4KOマウスは数種の気道炎症反応並びにLCMV及びインフルエンザ感染に対して正常に反応するが、Leishmania major感染に対してはこのマウスはT細胞免疫応答の軽度の増強を示すことが分かっている。しかしながら、このノックアウト系では顆粒球の応答については検討されていない。今回の実験から、リステリア菌感染におけるB7−H4の主要な役割は顆粒球媒介自然免疫を抑制することであり、この効果は適応免疫系の非存在下のRAG−1 KOマウスでも認め得ることが示唆される。従って、これまでに報告されたT細胞免疫の阻害の他に、B7−H4は細菌感染に対する自然免疫の負の調節に重要な役割を果たし得る。
【0134】
B61B7−H4KOマウスの脾臓では顆粒球が軽度に増加するが、LM感染時には顆粒球は劇的に増加する(図2)。しかしながら、この増加は、単にLM誘導性炎症による動員の増大によるものではない。B6バックグラウンドのB7−H4KOマウスは感染のない血液、骨髄及び脾臓において顆粒球のわずかな増加を示す。RAG−1 KOバックグラウンドではより劇的な顆粒球増加が認められる。さらに、B7−H4KOマウスからの骨髄細胞はG−CSF刺激存在下により多くの顆粒球を産生する。最後に、培養液にB7−H4蛋白を含めると骨髄由来顆粒球の増殖が有意に阻害される。顆粒球の阻害におけるB7−H4の役割は、培養液により高濃度のG−CSFを添加することで少なくともある程度逆転し得る。G−CSFはインビボにおける顆粒球の増殖及び恒常性のための重要な因子である。この結果から、B7−H4はインビボにおけるG−CSFの役割に拮抗する負の調節因子として働き得ることが示唆される。集約すると、これらの結果から、B7−H4は、顆粒球の第一位の増殖因子であるG−CSFに対する顆粒球の反応性の阻害シグナルを供給することにより、顆粒球の恒常性を調節できることが確認される。
【0135】
B7−H4は、その推定上の受容体に結合すると、T細胞の細胞周期の進行を阻害することが示されている(Sica,G.L.ほか、Immunity 18:p.849−861(2003年);Kryczek,I.、J.Eicp.Med.、203:p.871−881(2006年))。この細胞培養系では、CFSEの希釈及び3HTdRの取り込みが明らかに阻害される(図6a)。骨髄細胞は、顆粒球の重要な増殖因子であるG−CSFを外因的に供給しなくても増殖(図6a)及び細胞分裂(図5g)が観察された。内因性G−CSFが骨髄細胞によって産生され、インビトロにおける基底レベルの増殖を維持している可能性がある。この抑制はG−CSFを添加することで大きく逆転し得た(図6c)。培養中、細胞アポトーシスの有意な増加は最長5日間認められなかった。従って、B7−H4結合による顆粒球において増殖阻害が主要なメカニズムであり得る。B7−H4mRNAは種々の細胞によって広く発現されるが、その細胞表面発現は、卵巣癌及び浸潤性マクロファージにおいて観察されたように(Kryczek,I.ほか、J.Eicp.Med.、203:p.871−881(2006年))、大部分は細胞質内に含み得る。B7−H4の表面発現が骨髄微小環境内のサイトカインによって調節されて顆粒球の増殖を阻害し得る。
【0136】
好中球を含む顆粒球は感染部位に最も早期に達する細胞の一つであり、貪食能を介した個々のの感染防御の最前線である(Nathan,C. Nature Rev.、Immunol.、6:p.173−182(2006年))。B7−H4KOマウスにおいてリステリア菌感染に対する抵抗性が増大することを示す上記知見は、リステリア菌及び恐らく他の病原体による感染に対する自然免疫を増強する新たなアプローチを包含する。また、RAG−1バックグラウンドのB7−H4KOマウスが、B6バックグラウンドのB7−H4KOマウスと比較して顆粒球数のより顕著な増加を示し、初期相のLM感染に対してより抵抗性であることも興味深い。こうしたデータは、顆粒球の恒常性及びリステリア菌感染に対する応答におけるT及びB細胞を含む適応免疫の構成要素の抑制的な役割の可能性を包含している。従って、アンタゴニスト活性を有する中和mAb又は適切に設計されたB7−H4蛋白のような、B7−H4発現を選択的に遮断する方法は、顆粒球を増加させ、病原体感染に対する自然免疫を増強する新しいアプローチを示す。
(実施例5)
関節リウマチ患者の血清中の可溶性B7−H4は重症度と相関する。
【0137】
患者及び健常ドナー:
Mayo ClinicのInternal Review Boardの承認の下、RAと診断された68人の患者、SLEと診断された35人の患者、及び24人の正常な健常ドナーから、血清試料が得られた。RA患者は、以下の4群に分類された。0:活動性疾患なし、1:1〜4の能動関節、2:5〜9の能動関節、3:10以上の能動関節で、関節外病変を伴うか伴わない。
【0138】
可溶性B7−H4、コラーゲン特異的自己抗体及び抗dsDNA自己抗体の検出:
ヒトsH4の検出のために、ヒトB7−H4に対する特異的mAb hH4.3(2μg/ml)及びhH4.1(2μg/ml)が、ELISAにおいてそれぞれ捕捉及び検出として使用された。リウマチ因子を除去するために、ELISAでの検出の前に、ヒトIgGアガロース(Sigma−Aldrich、St.Louis、Missouri)で血清が処置された。コラーゲン特異的自己抗体の測定のために、ニワトリコラーゲン(lμg/ml)が、プレートに一晩4℃でコートされ、検出抗体としてはビオチン結合抗マウスIgG、IgG1、IgG2a及びIgG2b Ab(BD、San Jose、CA)である。抗dsDNA自己抗体レベルを測定するために、PBS中10μg/mlのサケ精巣からのdsDNAが、プレートに一晩4℃でコートされ、HRP結合抗マウスIgG(BD、San Jose、CA)である。
【0139】
ウェスタンブロット:
血清が、2Xサンプルバッファー(100mM Tris緩衝食塩水中4%SDS、0.2%ブロムフェノールブルー、20%グリセロール)と混合され、5分間沸騰された。試料は、10%Readyゲル(Bio−Rad、Richmond、CA)上の還元条件下で電気泳動され、蛋白質がProtran BA85(Whatman、Florham Park、NJ)上にエレクトロブロットされた。イモビロン−Pシートが、PBS中5%の脱脂粉ミルクで1時間ブロックされ、一晩4℃で抗体とインキュベートされた。反復洗浄(5分5回)の後、結合性抗体が、ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識により検出された。
【0140】
結果
sH4を検出するために、American Rheumatism Association規準にもとづいて関節リウマチと診断された個々の患者からの血清が、ヒトB7−H4の異なるエピトープに結合する二つの特異的単クローン抗体(mAb)を用いた酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA)により分析された。このアッセイにおいては、RA患者からの65%(68中44)の試料及びSLE患者からの43%(15/35)が、バックグラウンドを上回り、したがって陽性だった。健常ドナー(HD)におけるsH4の評価では、わずか13%(3/24)が陽性であった(図7a)。sH4は、RA及びSLE患者において健常ドナーより有意に高い(P<0.05)。さらに、RA(96.1ng/ml)及びSLE(36.9ng/ml)におけるsH4の平均濃度は、健常ドナー(3.8ng/ml)のものより有意に高かった。結果は、RA及びSLE患者の有意な部分においてsH4が上昇することを示す。
【0141】
ウェスタンブロット分析を用いて、3人の関節リウマチ患者からの血清におけるsH4の存在が確認された。B7−H4に対する特異的mAbを用いて、ELISAにおいて検出可能なsH4を有する3人のRA患者からの血清が、単一の50kDaのバンドを示した。これは、ヒトB7−H4の細胞外ドメインの予測サイズにマッチした。これに対して、三人の健常ドナーからの血清においてはハンドが観察されなかった(図7b)。データは、RA患者の血清におけるsH4の存在を支持する。
【0142】
sH4の濃度上昇とRAの重症度との関連が調査された。病気の重症度に基づいて、68人のRA患者が、方法に記載されるように、群3を最も重度として4群(0−3)に分類された。群3におけるsH4の平均濃度(260.7ng/ml)は、群0(22.0ng/ml)又は群1(18.8ng/ml)のものより有意に高かった。しかし、Scheffeテストによると、群0−2の間には有意差がなかった(図7c)。したがってデータは、群3のRA患者が最も高いレベルのsH4を有することを示し、sH4が重度のRAの進行に関与する可能性があることを示唆する。
(実施例6)
可溶性B7−H4がマウスモデルにおいてコラーゲン誘導性関節炎を悪化させる。
【0143】
マウス
雄DBA/1jマウス、MRL−lpr/lprマウス及びC57BL/6−lpr/lpr(B6−lpr/lpr)が、Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME)から得られた。生後4〜10週目の年齢がマッチしたマウスが、全ての実験に用いられた。このラボにおいて、B7−H4KOマウスが上述の通りに生成され、B6バックグラウンドに10世代戻し交配されている。DBA/1jバックグラウンドに5世代戻し交配されたB7−H4KOマウスにより、DBA/1j×B7−H4KOマウスが作製された。B6−lpr/lprとB7−H4KOマウスの間で戻し交配することにより、B6−lpr/lpr×B7−H4KOマウスが得られた。全てのマウスは、Institutional Animal Care and Use Committeeによる承認プロトコルの下で、Johns Hopkins HospitalのAnimal Facilityで維持された。
【0144】
コラージュ(collage)誘導性関節炎の誘導:
完全フロイントアジュバントにおいて乳化された4.0mg/mlのmycobacterium tuberculosis(DIFCO、Detroit、MI)を添加した0.05M酢酸中の0.2mgのニワトリコラーゲン(Sigma−Aldrich、St.Louis、Missouri)の尾基底皮内注射により、生後8〜10週目の雄DBA/1jマウスにおいてCIAが誘導された。最初の一次免疫の十四日後に、マウスが同じように一回ブーストされた。病気の重症度が、足の外観検査により評価された。各足が、炎症の程度につき0〜4のスケールで採点された:0、紅斑及び腫れの所見なし;1、中足(足根部)又は足関節に限定された紅斑及び軽度の腫れ;2、足関節から中足まで広がる紅斑及び軽度の腫れ;3、足関節から中足関節まで広がる紅斑及び軽度の腫れ;4、足首、足及び指趾を含む紅斑及び重度の腫れ。四つの足全てからのスコアが加算されて、各動物についての合計が得られた。
【0145】
ネズミB7−H4コンストラクト
Sica,G.L.ほか、B7−H4,a molecule of the B7 family,negatively regulates T cell immunity.Immunity 18,849−61(2003))に記載されるように、B7−H4Igコンストラクトが準備された。B7−H4V及びB7−H4VCプラスミドを生成するために、2つの隣接5’及び3’プライマがXhoI及びEcoRI制限部位をそれぞれ伴って設計された(5’プライマ;5’−ccgctcgagccaccatggcttccttggggcag−3’(SEQ ID NO:6)、B7−H4Vの3’プライマ;5’−cggaattccgctaatttatctctggcatact−3’(SEQ ID NO:7)、B7−H4VCの3’プライマ;5’−cggaattccgctaagagttcagcaactgcag−3’(SEQ ID N0:8))。プライマを使用して、cDNAの適切な領域が増幅された。PCR産物が、XhoI及びEcroRIで消化され、及びXhoI/EcroRI−消化pcDNA3.1ベクターにライゲートされた(Invitrogen、Carlsbad、CA)。
【0146】
コラーゲン特異的T細胞増殖及びサイトカイン産生。
【0147】
最後の免疫化の後、14日目に脾臓が除去された。磁性ビーズ(Miltenyi Biotec、Auburn、CA)を用いて、CD4+T細胞が精製された。全脾細胞又は精製CD4+T細胞が、96ウェル平底マイクロタイタープレートにおいて、変性(60℃、30分)ニワトリコラーゲンII型(CII)により72時間刺激され、[3H]チミジン(1μCi/ウェル)で(Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)最後の12時間パルスされた。精製CD4+T細胞の培養に、同系マウスからの照射(50Gy)脾細胞が、抗原提供細胞として加えられた。48時間後に培養からの上清が集められ、製造者により推奨されるプロトコルに従ってELISAキットを使用して、マウスIFN−γ(BD、San Jose、CA)及びIL−17A(eBioscience)につき検定された。
【0148】
結果
RAの病因におけるsH4の考えうる役割を反復し、調査するために、コラーゲン誘導性関節炎(CIA)のマウスモデルが用いられた。CIAは、良く特徴付けされたヒト関節炎のマウスモデルであり、DBA/1jマウスへのコラーゲン注射が大きな関節の腫れ及び進行性炎症を誘導し、関節炎をもたらす。インビボでsH4を発現するために、マウスB7−H4 cDNAの膜貫通及び細胞内ドメインを欠失させた発現ベクターB7−H4VCが構築され、IgV及びIgCドメインの両方をコードする切断遺伝子がCMV最初期プロモータの制御下におかれた。B7−H4のIgVドメインだけを含む別のベクター、B7−H4Vも作製された(図8a)。発現時には、これらの切断蛋白質/ポリペプチドが、細胞表面上の内因性B7−H4と競合して、その推定受容体と結合することが期待される。親ベクターが、コントロールとして含まれる。公知技術の流体力学的発現方法により、これらのプラスミドの注射が、二つの抗ネズミB7−H4 mAbを用いた特異的捕捉サンドイッチELISAに基づいて、血清中最大2μg/mlのsH4の発現をもたらした。
【0149】
CIAモデルにおいて、コラーゲンによるDBA/1jマウスの免疫化は、28日目頃から関節炎症状の外観をもたらした。コントロールベクターで処置したマウスは32日目から関節炎を発症し、80%のマウスが第一免疫化の後60日で病気を発症した。B7−H4VCの注射は、より早期の病気の発現(17日)をもたらし、100%のマウスが30日頃に関節炎を発症した。B7−H4Vが注射されたマウスにおいても、類似の結果が見られた(図8b)。さらに、B7−H4V又はB7−H4VCのいずれかによる処置は、臨床スコアの増加(図8c)、足蹠の腫れの増加及び組織病理学分析で示される炎症細胞の関節浸潤の増加により示されるように、関節炎の重症度を有意に増加させる。
【0150】
細胞及び液性免疫反応の評価から、免疫化及びB7−H4VC又はB7−H4V処置から30日後に、関節炎の発病率及び重症度の増加が、IgG1、IgG2a及びIgG2bを含む他のサブタイプだけでなく、コラーゲンCIIに対する全IgG自己抗体の上昇(8d図)を伴うことが明らかになった(図12)。B7−H4VC又はB7−H4Vで処置されたマウスからの全脾臓細胞又は精製CD4+T細胞のCIIによる刺激から、コントロールベクターで処置されたマウスと比較してはるかに高い増殖レベルも誘導された(図8e及び図13)。重要なことに、CIA進行の原因となる二つの主要サイトカインIFN−γ及びIL−17も、培養において有意に増加する(図8f)。合わせて考えると、データは、sH4がCIIに対する自己免疫反応を増強し、自己免疫CIAを悪化させることを示す。
【0151】
B7−H4VC及びB7−H4Vが、細胞表面上における内因性B7−H4の効果をブロックするデコイとして作用するならば、B7−H4欠損マウス(B7−H4KO)においても類似の増悪効果が観察されるはずである。これをテストするために、B7−H4KO表現型マウスが、DBA/1jバックグラウンドに5世代戻し交配された。B7−H4KO−DBA/1Jマウスは普通に成長し、全体的外観及び免疫系の発達において明らかな異常を有しない。しかしこれらのマウスは、はるかに深刻なCIAを発症し、B7−H4+/+コントロールマウスより高い形態論(図8g)及び臨床スコア(図8h)を示し、B7−H4VC又はB7−H4V処置マウスと類似の結果となった。したがって、データは、sH4がデコイ分子として機能して、自己免疫反応を増加させ、CIAを悪化させることを支持する。
(実施例7)
好中球増加がsH4によるCIAの増悪の原因となる。
【0152】
好中球の空気嚢アッセイ
Edwards,J.C.ほか、J Pathol,134:147−56(1981)に記載されるように、空気嚢アッセイが行われた。簡単にいうと、2,2,2−トリブロモエタノール(Sigma−Aldrich、St.Louis、Missouri)でマウスが麻酔され、5mlの無菌空気の注射により皮下胸椎嚢がつくられた。3日後に3mlの空気が嚢に再注射された。最初の注射の6日後に、1mlPBS中の50μgLPSが嚢に注射された。5時間後にマウスが麻酔され、嚢が3mlのPBSで洗浄されて浸潤細胞が集められた。
【0153】
結果
B7−H4KOマウスは、好中球の迅速な増加によりListeria感染に抵抗をもつ。さらなる実験は、B7−H4が好中球前駆体の増殖を直接阻害できることを示した。したがって、RAの進行性炎症の解釈を提供しうる仮説として、sH4は、内因性B7−H4を遮断し、これにより、好中球媒介性炎症を介してCIAを悪化させうる。sH4の発現がネズミの末梢組織における好中球を増加させるかが調査された。マウスのRA損傷における好中球数に直接アクセスするのが困難なため、炎症誘発後に好中球を皮下空気嚢から集められる空気嚢アッセイが用いられた。図9aに示されるように、B7−H4V又はB7−H4VCが注射されたマウスは、各空気嚢の好中球がコントロールベクターのものより有意に多かった。B7−H4KOマウスにおける前の研究と合わせて、結果は、sH4がインビボで末梢組織における好中球の迅速な増加を誘導することを示す。
【0154】
好中球を枯渇させて、CIA増悪におけるsH4の効果を除去できるかが調査された。CIA−マウスを、B7−H4VC又はB7−H4Vで処置し、その後一日おきに抗Gr−1抗体で処置して好中球を枯渇させた。CIA発病率(図9b)及び臨床スコア(図9c)の両方における、B7−H4V又はB7−H4VCの効果の増強が、抗Gr−1抗体処置により完全に除去された。したがって結果は、好中球がCIAの進行におけるsH4の効果の原因となることを支持する。
(実施例8)
可溶性B7−H4がlprマウスにおけるSLE−様疾患を悪化させ、自己免疫反応を高める。
【0155】
尿蛋白質排泄
計量棒分析(GERMAINE、San Antonio、TX)により、尿蛋白質排泄が測定された。蛋白尿グレードが、以下のように0〜4で採点された:グレード0、正常;グレード1、30mg/dl;グレード2、100mg/dl;グレード3、300mg/dl;グレード4、2000mg/dl。
【0156】
関節炎及び腎炎の組織評価
CIAマウスは、35日で屠殺された。後足が除去され、ホルマリン固定され、10%EDTAで脱灰され、パラフィンに包埋され、切断され、H&Eで染色された。腎臟病の組織評価では、マウスが生後6ヵ月で屠殺された。腎臓が、ホルマリン固定されるか、冷凍切断のためにTissue Tek(Sakura Finetek、Torrance、CA)でスナップ冷凍された。ホルマリン固定組織は、パラフィンに包埋され、切断され、過沃素酸−Schiff(PAS)法により染色された。凍結切片は、アセトン及び1%パラホルムアルデヒドに固定され、FITC結合抗マウスIgG Ab又はC3 Ab(ICN/Cappel、Aurora、OH)で染色された。
【0157】
有意な割合のSLE患者も、血清中に検出可能なsH4を有する(図7a)。sH4がSLEの進行にも関与している可能性がある。これをテストするために、マウスが、主に自己抗体及びリンパ増殖の効果により進行性SLE−様症状を自発的に発症するMRL−lpr/lprマウスにおいて、自己免疫を促進できるかを決定するためにsH4が調査された。MRL−lpr/lprマウスが、B7−H4VCプラスミドで処置され、血清中の抗dsDNA自己抗体が評価された。図10aに示されるように、B7−H4VCで処置すると、10週目で、血清中の抗dsDNA自己抗体の濃度が、コントロールプラスミドで処置されたマウスよりも有意に高く上昇した。抗Gr−1抗体の注射による好中球の枯渇は、この効果を完全に除去し、CIAモデルにおける観察と同様の結果であった。この最初の研究は、sH4が、このSLEモデルにおける自己免疫反応の促進にも関与することを示唆する。
【0158】
SLEの発病学における免疫反応及びsH4の役割の分析を促進するために、B7−H4−/−表現型マウスが、MRL−lpr系統と類似するがSLE−様症状が弱い系統B6−lpr/lprマウスに戻し交配された。予想通り、B6−lpr/lpr×B7−H4KOマウスにおいては、コントロールB6−lpr/lprマウスよりも、抗dsDNA IgG自己抗体がはるかに早く、はるかに高い力価で生成された(図10b)。重要なことに、B6−lpr/lpr×B7−H4KOマウスは、コントロールB6−lpr/lprマウスと比較して、有意な重量増加(図10c)を伴って重度の脾腫及びリンパ腺症を速やかに発症した。B6−lpr/lpr×B7−H4KOマウスにおいては、コントロールよりも脾臓及びリンパ節がずっと大きく、これらの臓器の細胞充実度が有意に増加した(図10c)。sH4処置によりこれらの臓器において有意に増加される主な細胞成分は、好中球(Gr−1+CD11b+)及びT細胞(CD3+CD8+、CD3+CD4+及びCD3+CD4−CD8−B220+)である。B6−lpr/lpr×B7−H4KOマウスは、間質炎症細胞浸潤、糸球体過形成及び糸球体間質細胞増加を伴って重度の糸球体腎炎を発症した。さらに、マウスは、30週以内に血管周囲の細胞浸潤、全IgGの糸球体沈着)及びC3ならびに蛋白尿増加(図10d)を伴って脈管炎も発症した。これに対して、コントロールB6−lpr/lprマウスは、24ヶ月まで可視症状の一切ない正常な腎臓を有する。合わせて考えると、結果は、sH4が、抗体及び細胞媒介自己免疫反応及び症状を増強することにより、lprマウスにおいてSLE−様疾患を悪化させることを示す。
(実施例9)
B7−H4IgによるCIA進行の阻害
データが、RA及びSLEネズミモデルにおけるsH4が病気の進行を促進することを示す一方で、これらのデータは、内因性B7−H4が自己免疫反応の抑制におけるチェックポイント分子であることも支持する。したがって、これらの自己免疫性疾患を抑制するための潜在的アプローチは、推定受容体を結合するために、アゴニスト形態のB7−H4の発現を増加させることである。B7−H4細胞外ドメインがネズミIgG2a Fc部分に融合されたB7−H4Ig融合蛋白質の効果は、Sica,G.L.ほか、B7−H4,a molecule of the B7 family,negatively regulates T cell immunity.Immunity 18,849−61(2003);Chapoval,A.I.,Zhu,G.& Chen,L.Immunoglobulin fusion proteins as a tool for evaluation of T−cell costimulatory molecules.Mol Biotechnol 21,259−64(2002)により記載された。B7−H4IgのFc部分は、Fc受容体を結合して、インビボでアゴニストの効果を促進できた。その後、CIAの進行におけるB7−H4Igの効果がテストされた。コントロールプラスミドと比較して、CII曝露の1日前のB7−H4Igプラスミド処置は、関節炎発病率及び臨床スコアを有意に低下させるとともに、CIAの発症を遅延させた(図11aおよびb)。さらに、B7−H4Igプラスミド処置は、CIIに対する全IgG(図11c)及びIgG1、IgG2a及びIgG2b自己抗体の産生を抑制した(図12)。CIIに応答した脾細胞及びCD4+T細胞の増殖(図11d及び図13)、ならびにIFN−γ及びIL−17産生も、B7−H4Ig処置により有意に抑制された(図11e)。集合的に、結果は、B7−H4Igが液性及び細胞自己免疫の両方を抑制するアゴニストとして作用し得たことを示す。さらに、この方法は、CIAの発病抑制においても有効なはずである。
(実施例10)
MRL−lpr/lprマウスにおけるB7−H4Igの発現が生存率を高める。
【0159】
MRL−lpr/lprマウスに、生後6、8、10及び12週目でコントロールmIgGプラスミド又はB7−H4Igプラスミドが注射された。全ての表現型が、生後19週目で分析された。各群は5〜10匹のマウスを含み、各実験組が少なくとも二回繰り返された。図14は、生後6、8、10及び12週目でコントロールmIgGプラスミド(□)又はB7−H4Igプラスミド(■)を注射されたMRL−lpr/lprマウスにおける、年齢(週)に対する%累積生存率の線グラフである。図14は、B7−H4Ig(ネズミ)ベクターによる処置が、MRL−lpr/lprマウスの生存率を高めることを示す。全ての表現型が、生後19週目で分析された。
【0160】
図15は、コントロールmIgGプラスミド(□)又はB7−H4Igプラスミド(■)を注射されたMRL−lpr/lprマウスにおける、年齢(週)に対するIgG自己抗体力価(A450nm)の線グラフである。図15は、B7−H4Ig(ネズミ)ベクターによる処置が、MRL−lpr/lprマウスにおいて自己抗体(抗DNA)を阻害することを示す。図16は、コントロールmIgGプラスミド(□)又はB7−H4Igプラスミド(□)を注射されたMRL−lpr/lprマウスにおける蛋白尿グレードのグラフである。図16は、B7−H4Ig(ネズミ)ベクターによる処置がMRL−lpr/lprマウス(1)において腎臓損傷を阻害することを示す。
【0161】
統計的分析。
【0162】
単一比較のためのMann−Whitney Uテスト及びANOVA、その後多重比較のためのScheffeテストにより、統計的分析が行われた。全ての統計的分析において、P<0.05で有意性が認められた。
【0163】
当業者は、本明細書に記載されている特定の実施態様に対する多くの均等物を、通常の実験作業を超えることなくして、認識し、確認できる。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要な個体における炎症反応の一つ以上の症状を減少又は阻害するために有効な量の可溶性B7−H4アンタゴニストと、前記アンタゴニストの投与のための薬理学上許容可能な担体とを含む、医薬組成物用量単位。
【請求項2】
前記B7−H4アンタゴニストが、(i)直接第二ポリペプチドに、又は(ii)選択的に前記第二ポリペプチドに融合されたリンカーペプチド配列に融合されたB7−H4細胞外ドメインの全部又は一部を含む第一融合パートナーを含む、融合蛋白質である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記第一融合パートナーが、B7−H4の前記膜遠位IgVドメインと前記膜近位IgCドメインとを含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
第一ユニット内の前記アンタゴニストと、第二ユニット内の前記薬理学上許容可能な担体とを含むキット内の、請求項1に記載の医薬組成物であり、前記ユニットが、投与のために組み合わせられる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記炎症反応が、自己免疫性疾患又は障害と関連する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記炎症反応が、好中球媒介性である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記自己免疫性疾患又は障害が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円形脱毛症、強直性脊椎炎(anklosing spondylitis)、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫内耳疾患、自己免疫リンパ球増殖性症候群(ALPS)、自己免疫血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、脂肪便症−皮膚炎、慢性疲労症候群免疫不全、症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、良性粘膜類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、ドゴー病、皮膚筋炎、皮膚筋炎−若年性、円板状ループス、混合型クリオグロブリン血症、線維症−繊維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、Iga腎症、インシュリン依存性糖尿病(I型)、若年性関節炎、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群(polyglancular syndromes)、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆管萎縮症、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、全身強直性症候群、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、脈管炎、白斑、及びヴェーゲナー肉芽腫症からなる群より選択される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
必要な個体における炎症反応の一つ以上の症状を治療又は阻害する方法であり、前記個体における前記炎症反応の前記一つ以上の症状を減少又は阻害するために有効な量の可溶性B7−H4のアンタゴニストを、前記個体に投与するステップを含む、方法。
【請求項9】
前記炎症反応が、自己免疫性疾患又は障害と関連する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記個体が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円形脱毛症、強直性脊椎炎(anklosing spondylitis)、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫内耳疾患、自己免疫リンパ球増殖性症候群(alps)、自己免疫血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、脂肪便症−皮膚炎、慢性疲労症候群免疫不全、症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、良性粘膜類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、ドゴー病、皮膚筋炎、皮膚筋炎−若年性、円板状ループス、混合型クリオグロブリン血症、線維症−繊維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、Iga腎症、インシュリン依存性糖尿病(I型)、若年性関節炎、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群(polyglancular syndromes)、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆管萎縮症、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、全身強直性症候群、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、脈管炎、白斑、及びヴェーゲナー肉芽腫症からなる群より選択される自己免疫性疾患を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記可溶性B7−H4アンタゴニストが、B7−H4細胞外ドメインに対して少なくとも80%の配列同一性を含むB7−H4ポリペプチドを含み、液性免疫、細胞性免疫、または両方を抑制又は阻害できる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記可溶性B7−H4アンタゴニストが、イムノグロビン又はその断片を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記イムノグロビン又はその断片が、イムノグロビンFc領域を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
B7−H4細胞外ドメインに対して少なくとも80%の配列同一性を含むB7−H4ポリペプチドをコードする核酸を、前記個体において発現するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記B7−H4ポリペプチドが、イムノグロビンFc領域をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
自己免疫性疾患又は障害の重症度又は発症リスクを評価する方法であり、
個体から生体試料を得るステップと;
前記試料中の可溶性B7−H4のレベルを決定するステップと、
前記試料中の前記可溶性B7−H4のレベルを、正常コントロールあるいは自己免疫性疾患または障害の重症度又もしくは発症リスクを示すことが分かっているレベルを伴うコントロールにおけるレベルと比較するステップ
を含む、方法。
【請求項17】
前記自己免疫性疾患又は障害が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円形脱毛症、強直性脊椎炎(anklosing spondylitis)、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫内耳疾患、自己免疫リンパ球増殖性症候群(alps)、自己免疫血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、脂肪便症−皮膚炎、慢性疲労症候群免疫不全、症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、良性粘膜類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、ドゴー病、皮膚筋炎、皮膚筋炎−若年性、円板状ループス、混合型クリオグロブリン血症、線維症−繊維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、Iga腎症、インシュリン依存性糖尿病(I型)、若年性関節炎、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群(polyglancular syndromes)、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆管萎縮症、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、全身強直性症候群、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、脈管炎、白斑、及びヴェーゲナー肉芽腫症からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
炎症反応を治療又は阻害する方法であり、
a)個体から生物流体を除去するステップと;
b)処置された生物流体を得るために、前記生物流体から可溶性B7−H4を除去するステップと;
c)前記処置された生物流体を、前記個体に戻すステップと
を含む、方法。
【請求項19】
前記生物流体が、全血液又は血漿を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
可溶性B7−H4を除去するステップが、限外濾過、アフェレーシス、又は透析により生じる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
可溶性B7−H4が、免疫吸着技術を用いて、前記生物流体から選択的に除去される、請求項18に記載の方法。
【請求項1】
必要な個体における炎症反応の一つ以上の症状を減少又は阻害するために有効な量の可溶性B7−H4アンタゴニストと、前記アンタゴニストの投与のための薬理学上許容可能な担体とを含む、医薬組成物用量単位。
【請求項2】
前記B7−H4アンタゴニストが、(i)直接第二ポリペプチドに、又は(ii)選択的に前記第二ポリペプチドに融合されたリンカーペプチド配列に融合されたB7−H4細胞外ドメインの全部又は一部を含む第一融合パートナーを含む、融合蛋白質である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記第一融合パートナーが、B7−H4の前記膜遠位IgVドメインと前記膜近位IgCドメインとを含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
第一ユニット内の前記アンタゴニストと、第二ユニット内の前記薬理学上許容可能な担体とを含むキット内の、請求項1に記載の医薬組成物であり、前記ユニットが、投与のために組み合わせられる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記炎症反応が、自己免疫性疾患又は障害と関連する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記炎症反応が、好中球媒介性である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記自己免疫性疾患又は障害が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円形脱毛症、強直性脊椎炎(anklosing spondylitis)、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫内耳疾患、自己免疫リンパ球増殖性症候群(ALPS)、自己免疫血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、脂肪便症−皮膚炎、慢性疲労症候群免疫不全、症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、良性粘膜類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、ドゴー病、皮膚筋炎、皮膚筋炎−若年性、円板状ループス、混合型クリオグロブリン血症、線維症−繊維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、Iga腎症、インシュリン依存性糖尿病(I型)、若年性関節炎、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群(polyglancular syndromes)、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆管萎縮症、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、全身強直性症候群、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、脈管炎、白斑、及びヴェーゲナー肉芽腫症からなる群より選択される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
必要な個体における炎症反応の一つ以上の症状を治療又は阻害する方法であり、前記個体における前記炎症反応の前記一つ以上の症状を減少又は阻害するために有効な量の可溶性B7−H4のアンタゴニストを、前記個体に投与するステップを含む、方法。
【請求項9】
前記炎症反応が、自己免疫性疾患又は障害と関連する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記個体が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円形脱毛症、強直性脊椎炎(anklosing spondylitis)、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫内耳疾患、自己免疫リンパ球増殖性症候群(alps)、自己免疫血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、脂肪便症−皮膚炎、慢性疲労症候群免疫不全、症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、良性粘膜類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、ドゴー病、皮膚筋炎、皮膚筋炎−若年性、円板状ループス、混合型クリオグロブリン血症、線維症−繊維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、Iga腎症、インシュリン依存性糖尿病(I型)、若年性関節炎、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群(polyglancular syndromes)、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆管萎縮症、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、全身強直性症候群、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、脈管炎、白斑、及びヴェーゲナー肉芽腫症からなる群より選択される自己免疫性疾患を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記可溶性B7−H4アンタゴニストが、B7−H4細胞外ドメインに対して少なくとも80%の配列同一性を含むB7−H4ポリペプチドを含み、液性免疫、細胞性免疫、または両方を抑制又は阻害できる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記可溶性B7−H4アンタゴニストが、イムノグロビン又はその断片を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記イムノグロビン又はその断片が、イムノグロビンFc領域を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
B7−H4細胞外ドメインに対して少なくとも80%の配列同一性を含むB7−H4ポリペプチドをコードする核酸を、前記個体において発現するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記B7−H4ポリペプチドが、イムノグロビンFc領域をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
自己免疫性疾患又は障害の重症度又は発症リスクを評価する方法であり、
個体から生体試料を得るステップと;
前記試料中の可溶性B7−H4のレベルを決定するステップと、
前記試料中の前記可溶性B7−H4のレベルを、正常コントロールあるいは自己免疫性疾患または障害の重症度又もしくは発症リスクを示すことが分かっているレベルを伴うコントロールにおけるレベルと比較するステップ
を含む、方法。
【請求項17】
前記自己免疫性疾患又は障害が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、円形脱毛症、強直性脊椎炎(anklosing spondylitis)、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫肝炎、自己免疫内耳疾患、自己免疫リンパ球増殖性症候群(alps)、自己免疫血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、脂肪便症−皮膚炎、慢性疲労症候群免疫不全、症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、良性粘膜類天疱瘡、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、ドゴー病、皮膚筋炎、皮膚筋炎−若年性、円板状ループス、混合型クリオグロブリン血症、線維症−繊維筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、Iga腎症、インシュリン依存性糖尿病(I型)、若年性関節炎、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群(polyglancular syndromes)、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆管萎縮症、乾癬、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、全身強直性症候群、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、脈管炎、白斑、及びヴェーゲナー肉芽腫症からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
炎症反応を治療又は阻害する方法であり、
a)個体から生物流体を除去するステップと;
b)処置された生物流体を得るために、前記生物流体から可溶性B7−H4を除去するステップと;
c)前記処置された生物流体を、前記個体に戻すステップと
を含む、方法。
【請求項19】
前記生物流体が、全血液又は血漿を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
可溶性B7−H4を除去するステップが、限外濾過、アフェレーシス、又は透析により生じる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
可溶性B7−H4が、免疫吸着技術を用いて、前記生物流体から選択的に除去される、請求項18に記載の方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図8e】
【図8f】
【図8g】
【図8h】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図11d】
【図11e】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図8e】
【図8f】
【図8g】
【図8h】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図11d】
【図11e】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2010−530354(P2010−530354A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544267(P2009−544267)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/088960
【国際公開番号】WO2008/083228
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(505011280)ザ ジョンズ ホプキンス ユニバーシティー (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/088960
【国際公開番号】WO2008/083228
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(505011280)ザ ジョンズ ホプキンス ユニバーシティー (12)
【Fターム(参考)】
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