炎症および酸化ストレスレベル検定
【課題】本発明は、生体試料を用いた炎症および酸化ストレスに関連した生物体における全身性代謝状態の確定方法(炎症および酸化ストレスレベル検定)に関する。これは、アラキドン酸の1つまたは複数の誘導体(エイコサノイド)、リノール酸および/またはドコサヘキサエン酸の1つまたは複数の誘導体を、同時に、好ましくは1つまたは複数の酸化ストレスパラメーターと、ならびに/あるいは他の代謝産物クラスからの1つまたは複数の分析物と一緒に検出し、定量化することを、ならびにこのような方法を実行するために適合されたキットを包含する。さらに本発明は、当該方法に用いられるようなバイオマーカーに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料を用いた炎症および酸化ストレスに関連した生物体における全身性代謝状態の確定方法(炎症および酸化ストレスレベル検定)に関する。これは、アラキドン酸の1つまたは複数の誘導体(エイコサノイド)、リノール酸の1つまたは複数の誘導体、および/またはドコサヘキサエン酸の1つまたは複数の誘導体を、同時に、好ましくは1つまたは複数の酸化ストレスパラメーターと、ならびに/あるいは他の代謝産物クラスからの1つまたは複数の分析物と一緒に検出し、定量化することを、ならびにこのような方法を実行するために適合されたキットを包含する。さらに本発明は、当該方法に用いられるようなバイオマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、毛細管拡張、白血球浸潤、発赤、発熱、疼痛、腫脹、およびしばしばの機能損失により特徴づけられ、有害作因および損傷組織の排除を開始する一機序として役立つ細胞損傷に対する局所的応答である[Webster’s Medical Desk Dictionary. Merrian-Webster. 1986]。炎症性刺激が十分に強い場合、全身性炎症応答症候群[SIRS]が発症する。
【0003】
プロスタグランジンは、炎症、疼痛、発熱およびアナフィラキシー反応の重要な媒介物質である。プロスタノイドの作用により、広範な種々のその他の生物学的プロセス(例えば、恒常性、血小板凝集、腎臓および胃の機能、雌性生殖、血管新生、免疫学的機能、発育および癌)が、直接または間接的に影響を及ぼされる[Williams, C.S. et al., Oncogene 1999, 18, 7908-16;Rocca, B. et al., J. Clin Invest 1999, 103, 1469-77;Howe, L.R. Breast Cancer Res. 2007, 9, 210]。
【0004】
炎症の測定方法は、例えば、WO2003/014699、WO2006/124714およびWO2004/025303に記載されている。
【0005】
酸化ストレスは、「酸化促進/酸化防止の均衡における酸化促進に傾くような妨害」と定義されている[Sies, H., Oxidative Stress. Oxidants and Antioxidants. 1991, New York: Elsevier. 507]。それは、細胞性機能不全および死に関する重要な共通経路として、ならびに癌、糖尿病、閉塞性肺疾患、炎症性腸疾患、心虚血、糸球体腎炎、黄斑変性および種々の神経変性障害を含めた広範囲のヒトの医学的症状において考え得る治療標的として関連づけられている[Halliwell, B. and J.M.C. Gutteridge, Free Radicals in Biology and Medicine. 3 ed. 1999, Oxford: Oxford University Press Inc. 736]。
【0006】
酸化ストレス測定デバイスおよび方法は、例えば、WO2005/052575、WO2006/127695、JP2003083977、US5,891,622、US6,620,800、WO2003/016527、US6,096,556、WO1998/10295、WO2006/90228、WO2002/04029、WO1999/63341、EP0845732、WO2007/041868、WO2007/083632に記載されている。
【0007】
炎症および酸化ストレスは、密接に関連づけられる。食細胞、すなわちマクロファージおよび好中球は、炎症で活性化される。病原体と闘うために、それらは、酸化的損傷の重要な媒介物質である反応性酸素種を産生する。それらは微生物にとって有毒であるが、しかし組織損傷ももたらし得る。
【0008】
細胞/組織損傷の最終生成物のいくつか(例えば、タンパク質のニトロ化に関しては3−ニトロチロシン、脂質過酸化に関しては4−ヒドロキシ−2’−ノネナールおよびマロンジアルデヒド、あるいは核酸損傷に関しては8−ヒドロキシグアノシン)はすでに知られているが、しかしながら、検出プロセスは複雑であり、例えば、有益な治療効果を示す酸化ストレスの漸次変化を検出するために十分な感度を有するわけではない。
【0009】
酸化ストレス測定を炎症に関与するパラメーターの確定と組合せるためには、わずかな努力が成されてきたに過ぎない。例えば、WO02/100293は、眼性炎症および酸化ストレスを評価するための診断および予後方法ならびにその治療が記載するが、一方、WO02/090977は炎症または酸化特性に関して物質を試験するための方法を記載する。
【0010】
近年の発展は、特定のクラスの酸化ストレスパラメーター、すなわちプロスタノイドおよびイソプロスタンの検出に集中してきた[Masoodi, M. et al, Rap Comm Mass Spec 2006, 20, 3023;Taylor, A.W. et al, Analyt. Biochem. 2006, 350, 41]。しかしながら、これらの方法は、固相抽出または液−液抽出手法(500μlの最小試料容量を要する)を、しばしば複雑なワークアップ方法を伴う誘導化過程とその後の蒸発および再溶媒和ステップを必然的に用いる。さらに、これらの過程は、HPLCまたはLCタンデム質量分析手法を用いて、プロスタノイドおよびイソプロスタンの分析に関してのみ記載されている。
【0011】
従来技術に存在する上記の問題にかんがみて、生体試料における炎症および酸化ストレスに関連した全身性代謝状態を確定するための改良された方法であって、高感度を有し、全身性代謝状態におけるわずかな変化だけでも検出可能な方法を提供することは、本発明の基礎を成す一目的である。
【0012】
さらに、このような方法を実行するためのキットを提供することが、一目的である。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、生体試料における炎症および/または酸化ストレスレベルパラメーターの同時確定のための方法であって、アラキドン酸(エイコサノイド)、リノール酸および/またはドコサヘキサエン酸の1つまたは複数の誘導体を、同時に、それぞれ、好ましくは1つまたは複数の酸化ストレスパラメーターと、ならびに他の化学物質クラスからの分析物と一緒に検出することを包含する方法、ならびにこの方法を実行するために適合されたキットを提供する。さらに、アラキドン酸(エイコサノイド)、リノール酸および/またはドコサヘキサエン酸の誘導体、ならびにその他の酸化ストレスパラメーターおよび他の化学物質クラスからの分析物は、定量的分析方法、例えばクロマトグラフィー、分光分析および質量分光測定を用いて代謝産物濃度を測定することにより検出される。WO2007/003344およびWO2007/003343(これらの出願はともに参照により本明細書中で援用される)に記載されたような方法およびデバイスの使用が、特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】抽出工程のスキーム:微量滴定プレート上の試料の適用、水性メタノール(MeOH)による抽出、遠心分離、誘導化および固相抽出を伴わないLC−MS/MSによる分析。
【図2a】遊離脂肪酸、プロスタノイド、イソプロスタン、ならびにLOX−およびチトクロームP450−由来脂肪酸代謝産物の外部標準混合物のクロマトグラフィー分離。
【図2b】遊離脂肪酸、プロスタノイド、イソプロスタン、ならびにLOX−およびチトクロームP450−由来脂肪酸代謝産物の外部標準混合物のクロマトグラフィー分離。
【図3a】生体試料(指示したような)の選択における種々のエイコサノイドおよび脂肪酸誘導体の検出。
【図3b】生体試料(指示したような)の選択における種々のエイコサノイドおよび脂肪酸誘導体の検出。
【図3c】生体試料(指示したような)の選択における種々のエイコサノイドおよび脂肪酸誘導体の検出。
【図3d】生体試料(指示したような)の選択における種々のエイコサノイドおよび脂肪酸誘導体の検出。
【図4a】ラットにおける異なるプロマイシン投与量の作用。ラット血漿試料中の4つの異なるエイコサノイドの濃度(指示したような)を確定し、正規化した。
【図4b】ラットにおける異なるプロマイシン投与量の作用。ラット血漿試料中の4つの異なるエイコサノイドの濃度(指示したような)を確定し、正規化した。
【図4c】ラットにおける異なるプロマイシン投与量の作用。ラット血漿試料中の4つの異なるエイコサノイドの濃度(指示したような)を確定し、正規化した。
【図4d】ラットにおける異なるプロマイシン投与量の作用。ラット血漿試料中の4つの異なるエイコサノイドの濃度(指示したような)を確定し、正規化した。
【図5】単一LC−MS/MS実行において85%MeOHで抽出したMet、D3−Met、Met(O)(c=50μM)および6PGs(c=1μM)の標準分離。カラム:Zorbax Eclipse XDB C18、100×3mm、3.5μm。移動相:A=H2O、0.2%蟻酸、B=ACN、0.05%蟻酸;勾配溶離、流量=500μL/分、注入容量=20μL。正イオン化モード t=0〜3.0分、負イオン化モード t=3.0〜9分。
【図6】単一LC−MS/MS実行において85%MeOHで抽出したα−ケトグルタレート、スクシネート(c=100μM)および6つのプロスタグランジン(c=1μM)の標準分離。カラム:Zorbax Eclipse XDB C18、100×3 mm、3.5μm。移動相:A=95/5 H2O/ACN、15mMのNH4Ac、pH=5.2;B=95/5 ACN/H2O、15mMのNH4Ac、pH=5.2;勾配溶離、流量=500μL/分、注入容量=20μL。負性獲得。
【図7】85%MeOHで抽出した4-HNEおよび4-HNE−d3(c=16μM)の標準分離。カラム:Zorbax Eclipse XDB C18、100×3mm、3.5μm。移動相:A=H2O、0.05%蟻酸;B=MeOH、0.05%蟻酸;アイソクラティック溶離液、10%A;流量=500μL/分、注入容量=20μL。正イオン化モード。
【発明を実施するための形態】
【0015】
プロスタノイド構造の生体活性脂質およびヒドロキシル化脂肪酸誘導体は、高等生物の代謝において中心的役割を果たす。プロスタグランジンは、炎症、疼痛、発熱およびアナフィラキシー反応の重要な媒介物質であり、トロンボキサンは血管収縮を媒介し、そしてプロスタサイクリンは、炎症の回復期において、ならびに心臓保護において、活性である。広範な種々のその他の生物学的プロセス(例えば、恒常性、血小板凝集、腎臓および胃の機能、雌性生殖、血管新生、免疫学的機能、発育および癌)は、プロスタノイドの作用により直接または間接的に影響を及ぼされる[Williams, C.S. et al., Oncogene 1999, 18, 7908-16;Rocca, B. et al., J. Clin Invest 1999, 103, 1469-77;Howe, L.R. Breast Cancer Res. 2007, 9, 210]。
【0016】
この多様化機能が、プロスタノイドを高等生物の全体的生物学的状態の有益な指標にする。小さな濃度変化が顕著な作用を発揮する場合、プロスタノイド代謝産物における不均衡は、急性反応、例えば局所性または全身性炎症、ならびに生物学的プロセスの慢性妨害を示す。実際の身体状態の正確な査定のために、さらなる代謝パラメーターが考慮されなければならない。
【0017】
酸化ストレスは、ミトコンドリア好気呼吸、細菌またはウイルス含有細胞の食作用、ならびに脂肪酸のペルオキシソーム媒介性分解により絶えず生成される反応性酸素種(ROS)により主に引き起こされる[Ames, B.N. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 1993, 90, 7915-22]。ROS産生の増大は、炎症において、放射線照射中に、あるいはホルモン、薬剤および環境毒素の代謝中に生じる。
【0018】
ROSは脂質と容易に反応して、異なる起源の脂質ヒドロペルオキシドを形成し得る。エステル化リノール酸含有脂質および遊離リノール酸のROS媒介性酸化は、ヒドロペルオキシオクタデカジエン酸(HPODE]異性体の形成を生じる;それらはその後、対応するヒドロキシオクタデカジエン酸(HODE)に還元される。他方で、ROSによるアラキドン酸含有脂質および遊離アラキドン酸の酸化は、ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸(HPETE)の複合混合物を形成し、これはヒドロキシエイコサテトラエン酸(HETE)に還元される[Blair, I.A., J. Biol. Chem 2008]。脂質ヒドロペルオキシドは、リポキシゲナーゼ(LOX)[Ames, B.N. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 1993, 90, 7915-22]およびシクロオキシゲナーゼ(COX)[Porter, N.A. et al., Lipids 1995, 30, 277-90]によっても形成されて、多価不飽和脂肪酸(PUFA)に作用し得る。
【0019】
正常代謝プロセスは酸化的損傷および炎症をもたらす危険な反応性酸素種を潜在的に生成するが、一方、両相互連結プロセスは順次、代謝反応に及ぼす全身性の且つ顕著な影響を有する。このプロセスは、年齢に伴って増大する。酸化ストレスおよび炎症は、多数の疾患、例えばアテローム硬化症、高血圧症、喘息、COPD、急性肺損傷、心不全、腎臓および肝臓疾患に関連づけられてきた。
【0020】
例えば腎臓疾患に関しては、非伝統的危険因子と考えられる酸化ストレスの増大および急性期炎症の増大はともに、尿毒症性心臓血管性危険への重要な誘因であると仮定される[Himmelfarb, J., Seminars in Dialysis 2008, 17, 449-454(6)]。酸化的細胞損傷は、アルコール性および非アルコール性脂肪肝疾患を伴って肝臓で高頻度に生じ、これは、8−ヒドロキシデオキシグアノシンおよび4-ヒドロキシ−2’−ノネナール指数と壊死炎症との強い相関を示す[Seki, S. et al., Histopathology 2003, 42, 365-71;Seki, S. et al., Hepatol. Res. 2005, 33, 132-34]。
【0021】
炎症および酸化ストレス関連パラメーターの同時査定、ならびに本発明による生物体の全体的代謝状態の確定は、疾患の診断、治療および予後に関して非常に有益である。理想的には、炎症、酸化ストレスおよび疾患の代謝的局面を網羅する、本発明により得られるような限定組および複合組のバイオマーカーは、健康管理における有益な診断および予後ツールとして役立つ。
【0022】
本発明の生体試料中の炎症、酸化ストレスおよび代謝妨害の全身状態を確定するための方法によれば、アラキドン酸(エイコサノイド)、リノール酸および/またはドコサヘキサエン酸の1つまたは複数の誘導体が検出される(本明細書中では、以後、第一群の化合物と呼ぶ)。好ましくはアラキドン酸、リノール酸および/またはドコサヘキサエン酸のこれらの1つまたは複数の誘導体は、同一試料から同時に検出される。
【0023】
アラキドン酸の誘導体は、好ましくは、アラキドン酸およびその代謝産物、例えばシクロオキシゲナーゼ−、リポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450−由来プロスタノイド、ヒドロキシ−、ヒドロペルオキシ−およびエポキシル化酸、ならびに非酵素的過酸化生成物、例えばイソプロスタンからなる群から選択される。
【0024】
リノール酸の誘導体は、リノール酸およびその代謝産物、例えばリポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450−由来酸化生成物、ならびに非酵素的過酸化生成物からなる群から選択される。
【0025】
ドコサヘキサエン酸の誘導体は、ドコサヘキサエン酸およびその代謝産物、例えばリポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450−由来ドコサノイド、ならびに非酵素的過酸化生成物、例えばイソプロスタンからなる群から選択される。
【0026】
さらに、本発明によれば、第一群の化合物、すなわち、アラキドン酸、リノール酸および/またはドコサヘキサエン酸の1つまたは複数の誘導体を、同時に、他の化学物質種からの炎症および/または酸化ストレスの1つまたは複数のパラメーター(本明細書中では、以後、第二群の化合物と呼ぶ)と一緒に検出することが好ましい。
【0027】
他の化学物質種からのこれらのパラメーターは、例えば、脂質酸化および/または過酸化の生成物、チロシン誘導体、例えばNO2−、Br−、Cl−チロシン、メチオニンスルホキシド、ケトン体、8−オキソ−グアニジンおよび8−OHグアノシン、ビオプテリン、プロビタミン、ビタミン、酸化防止剤、グルタチオン、オフタルメート、酸化コレステロールおよびステロールからなる群から選択される。
【0028】
さらに、本発明によれば、アラキドン酸、リノール酸および/またはドコサヘキサエン酸の1つまたは複数の誘導体(第一群)、ならびに炎症および/または酸化ストレスの1つまたは複数のパラメーター(第二群)を、同時に、多の代謝産物クラスからの1つまたは複数の分析物(本明細書中では、以後、第三群の化合物と呼ぶ)と一緒に検出することが特に好ましい。他の代謝産物クラスからのこれらの分析物は、例えば、α−ケトグルタレート、スクシネート、CoQ10、メチオニン、スフィンゴ脂質、例えばセラミド−1−ホスフェート、スフィンゴシン−1−ホスフェート、スフィンゴミエリンおよびヒドロキシル化スフィンゴミエリンからなる群から選択される。
【0029】
本発明によれば、3つの群の上記の化合物(代謝産物)の任意の組合せを基礎にした方法を実行することが原則として可能である場合でさえ、下記で示されるような以下の組合せ1)〜6)が特に好ましい。
1)HETE/HODE+メチオニンスルホキシド+メチオニン
2)アラキドン酸+セラミド−1−ホスフェート
3)アラキドン酸+酸化コレステロール/ステロール+スフィンゴミエリン
4)プロスタグランジン+スフィンゴシン−1−ホスフェート
5)HETE/HODE+8−オキソ−グアニジン/8−OH−グアノシン
6)プロスタグランジン+NO2−チロシン。
【0030】
検出は、好ましくは、WO2007/003344およびWO2007/003343(これらの出願はともに、参照により本明細書中で援用される)に記載されたような方法およびデバイスを用いて、1つまたは複数の代謝産物濃度を測定することにより実行される。微量滴定プレート中の挿入物がすでに内部標準を含有するこれらの方法を用いることにより、複雑なワークアップ方法を伴う一般的に用いられる多くの時間を要する誘導化過程、ならびに付加的な固相抽出または液−液抽出手順を回避することができる。その結果、本発明による方法は、要する時間がより少なくなり、そしてより小さな試料容量で実行され得る。特に、本発明によれば、5μl〜100μl、さらに好ましくは10μl〜50μlの範囲内の低容量を有する試料で検出を実行することが可能である。それとは全く異なり、従来技術の方法は、少なくとも500μlの容量を要する。本明細書に従って用いられるこれらの低試料容量により、当該方法は、小試料容積、例えば小動物からの試料に、あるいは新生児に関する試験に理想的に適用される。これらは別として、試料容量が本発明により有意に低減される場合でも、検出の限界は従来技術の検出限界とほとんど同一である。
【0031】
生体試料は、哺乳類から、好ましくはマウス、ラット、モルモット、イヌ、ミニブタ、霊長類またはヒトから得られる。したがって本発明による方法は、in vitro方法である。
【0032】
本発明による検出は、一般的に用いられる、且つ、当該技術分野で既知である定量的分析方法、例えば、クロマトグラフィー、分光分析および質量分光測定に基づいている。質量分光測定が特に好ましいが、しかし特定の技法が特に限定されるというわけではない。例えば大気圧イオン化方式またはMALDIを、単一または三連四重極型−、イオントラップ−、TOFまたはTOF−TOF−検出系と組合せる通常質量分光測定技法を含む任意の質量分光測定法が、本発明に従って用いられ得る。
【0033】
全身代謝状態は、種々の種類の疾患を示し得る。本発明に従って関連し得る疾患の例は、種々の型の癌、炎症性疾患、例えば慢性気道炎症またはアテローム硬化症、ならびに代謝障害、例えば糖尿病である。さらに、閉塞性肺疾患、炎症性腸疾患、心虚血、糸球体腎炎、黄斑変性および種々の神経変性障害が言及され得る。本発明の方法は、酸化ストレスの漸次変化、例えば治療効果による変化を検出するのにも有用である。
【0034】
さらに本発明は、当該方法を実行するために適合されたキットであって、1つまたは複数のウエル、ならびに少なくとも1つの内部標準を含浸された1つまたは複数の挿入物を含有するデバイスを包含するキットにも向けられる。このようなデバイスは、上記のようにWO2007/003344およびWO2007/003343に詳細に記載されている。
【0035】
さらに本発明は、生体試料それ自体における炎症および酸化ストレスに関連した全身性代謝状態を確定するためのバイオマーカーにも向けられる。
【0036】
特に好ましい実施形態を明記する以下の実施例を考慮すると、本発明はより明らかになる。
【実施例】
【0037】
序論:
遊離脂肪酸代謝産物、例えばアラキドン酸およびその極めて多量の下流代謝産物はすべて、多数の生理学的および病理学的プロセス、例えば種々の型の癌、糖尿病、心臓血管性疾患および慢性気道炎症のような異なる疾患の発症において重要な役割を果たす。以下の実験設定では、種々の生体試料型におけるシクロオキシゲナーゼ−、リポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450酵素活性に由来するプロスタノイド、ヒドロキシ−、ヒドロペルオキシ−およびエポキシル化酸、ならびに非酵素的過酸化生成物、例えばイソプロスタンを確定することが主眼であった。
【0038】
本発明に記載したように、20μLの血漿およびその他の生体マトリックスから遊離脂肪酸代謝産物を抽出し、その後、HPLC−MS/MSにより分析するために、迅速方法を実施した。この方法に用いた低試料容量により、当該方法は小動物試験に用いるための理想的適用になる。
【0039】
定量的に確定した分析物を、表1に要約する。
【0040】
【表1】
【0041】
方法
種々の生体材料中の遊離脂肪酸代謝物を確定するために、図1に示したように、微量滴定プレート中に種々の代謝産物に関する安定同位体を含有するフィルタースポット上に少量の試料(20μL)を適用し、さらに誘導かせずに水性メタノール中で抽出した。HTC PAL自動試料採取機(CTC Analytics)とともにAgilent1100系(Agilent Technology)を用いた20μL抽出物の注入後に、RP-HPLC(Zorbax Eclipse C18、3.0×100mm、3.5μm)カラム上で代謝産物の分離を実行した。移動相組成は、A:H2O+0.05%(v/v)蟻酸、ならびにB:アセトニトリルプラス0.05%(v/v)蟻酸であった。流量は、500μL/分で一定であった。勾配溶離により、代謝産物を分離した。ESI電源(Applied Biosystems)を装備したAPI4000Qトラップ(商標)を用いた陰性検出モードでのMRM遷移により、検出を実行した。Analystバージョン1.4.2定量を用いて、代謝産物の定量化を実施した。標準混合物の代表的クロマトグラムを、図2aおよび2bに示す。
【0042】
試料調製:
0.001%BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)を含有するEDTA被覆バイアル中で、血漿調製を実施した。脳、肝臓および前立腺組織のホモジネートを、PBS緩衝液中に調製した。
【0043】
方法妥当性:
ヒト血漿を用いて、方法妥当性を実施した。定量のために、以下の内部標準を用いた:12(S)−HETE−d8、PGE2−d4、PGD2−d4、TXB2−d4、PGF2α−d4、6−ケトPGF1α−d4およびDHA−d5。6−点検量線を用いて検定の線形性を確定し、1/x計量因子をデータに適用した。外部標準溶液で血漿試料をスパイクし、予測定量化限界までPBSで希釈することにより定量化の下限(LLOQ)および検出限界(LOD)を確定した。分析物の線形範囲、相関係数、ならびにLLOQおよびLODに関する値を、表2に列挙する。
【0044】
【表2】
【0045】
6連続日に亘って、3つの濃度でスパイクされた血漿の反復注入(n=5)により、日内および日差再現性を確定した。分析物の平均濃度を真の値と比較することにより、検定の正確度を算定した(n=5)。各化合物の日内および日差精度および正確度に関する平均変動係数(CV)を、表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
妥当性手順は、以下の価を示した:
・定量化の下限は、5(S)-HpETE(LLOQ=143nmol/L)およびAA(LLOQ=233nmol/L)を除いて、すべて0.4〜50nmol/Lであった
・血漿中の典型的検定範囲は、プロスタノイドおよびヒドロキシル化脂肪酸代謝産物に関して1〜500nmol/Lである
・日内および日差精度に関する変動係数(CV)ならびに3つの濃度での正確度を確定した
・回収率は、代謝産物によって70〜120%であった。
【0048】
記載された方法を、血漿、血清、肝臓、脳および前立腺ホモジネートに適用した。如何なる誘導化または蒸発ステップを必要とせずに、遊離脂肪酸代謝産物を同定し、定量し得た。図3a、b、cおよびdは、それぞれヒト血清、脳ホモジネート、肝臓ホモジネート(ネズミ)、および前立腺組織(ヒト)から抽出した酸化脂肪酸代謝産物のTICを示す。
【0049】
疾患状態の試験症例は、肺炎症、前立腺癌および心臓血管性疾患と関連した遊離脂肪酸、プロスタグランジンおよびヒドロキシル化種の増大を示す。アラキドン酸の酸化を含めた低密度リポタンパク質(LDL)の酸化的修飾は腎変性における酸化ストレスおよび炎症プロセスを明白に示すため、一例として、当該方法を腎毒性モデルに適用した。
【0050】
異なる投与量のピューロマイシンを摂取しているラットの4つの群から得た血漿試料を、分析した。図4に示したように、シクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼ活性の増大が観察された。
【0051】
エイコサノイドと酸化ストレスパラメーターとの同時検出
代謝産物クラスのクロマトグラフィー特性によって、2つの異なる方法で、異なる代謝産物クラスからの化合物の同時検出を実施した:
1)単一LC−MS/MS実行における試料からの同一抽出ならびに検出
2)異なるLC−MS/MS実行における試料からの同一抽出ならびに検出
【0052】
3つの実施例を記載する。
【0053】
ad 1)メチオニン(Met)、メチオニンスルホキシド(Met(O))
図5は、Met、Met(O)、D3−Metおよび6つのプロスタグランジン(PGD2、PGE2、PGF2α、8−イソPGF2α、6−ケトPGF1αおよびTXB2)のクロマトグラフィー分離を示す。MetおよびMet(O)のための内部標準として、D3−Metを用いた。Met、Met(O)、D3−Met(すべてに関してc=50μM)およびPGs(すべてに関してc=1μM)の標準溶液を上記のように同時に抽出し、LC−MS/MS系中に注入した。Met、Met(O)およびD3−Metの検出を正イオンモードで達成し、t=3分後、データ獲得を負モードに切り替えて、プロスタノイドを検出した。
【0054】
α−ケトグルタレート、スクシネート
図6は、α−ケトグルタレート、スクシネートおよび6つのPGsのクロマトグラフィー分離を示す。α−ケトグルタレートおよびスクシネートの濃度は100μMであり、6つのPGsの濃度はc=1μMであった。分析物を上記のように同時的に抽出し、LC−MS/MS系に注入した。負イオンモードで検出を実施した。
【0055】
ad 2)4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)
図7は、4-HNEおよび内部標準4-HNE−d3の16μMの濃度でのクロマトグラフィー分離を示す。4-HNE、4-HNE−d3および6つのPGsを上記のように抽出し、LC−MS/MS系に注入した。正イオンモードで検出を実施した。4-HNEのクロマトグラフィー特性(t=1.1分での移動相中の高有機含量−90%MeOH−での溶離)のため、4-HNEおよびエイコサノイドの抽出を同時的に実施したが、しかしながら、検出は、2つの異なるLC−MS/MS実行で実施されなければならない。
【0056】
産業上の利用可能性
本発明は、生体試料中の炎症および酸化ストレスレベルに関連した全身性代謝状態を画定するための改良された方法を提供する。この方法は、きわめて感度が高く、全身性代謝状態におけるわずかな変化のみでも検出可能である。この方法は、アラキドン酸(エイコサノイド)、リノール酸および/またはドコサヘキサエン酸(ドコサノイド)の1つまたは複数の誘導体の検出および定量化を包含する。当該方法の感度ならびに結果の質をさらに増大するために、好ましくは1つまたは複数の酸化ストレスパラメーターを同時に検出し、定量する。当該方法は、他の代謝産物クラスからの1つまたは複数の代謝産物を同時にさらに検出し、定量することにより、さらに改良される。したがって本発明の特に好ましい実施形態では、3つの群の化合物が同時に検出され、定量されて、これが、炎症および酸化ストレスに関連した生物源の全身性代謝状態に関して当該方法(検定)の感度および信頼度を大いに改良する。
【0057】
したがって、本発明に記載された方法は、生体試料における炎症および酸化ストレスに関連した代謝の平行確定を可能にする。これは、全身性代謝状態の包括的評価を可能にするために、特に鑑別診断のためには、不可欠である。さらなる利点は、当該手法が高い感度および選択度をともに有し、非常に低い試料用量、すなわち約20μLを要する、という事実に基づいている。
【0058】
本発明の方法に従ってスクリーニングされるべき潜在的治療標的としては、広範囲のヒトの医学的症状、例えば種々の方の癌、糖尿病、閉塞性肺疾患、炎症性腸疾患、心虚血、糸球体腎炎、黄斑変性症および種々の神経変性疾患が挙げられる。本発明の方法は、全身性代謝状態の漸次変化、たとえば、治療効果による変化の検出にも有用である。したがって、該方法および該方法を実行するための該キットは、多くの医学分野において、診断および療法の両方できわめて効率的である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料を用いた炎症および酸化ストレスに関連した生物体における全身性代謝状態の確定方法(炎症および酸化ストレスレベル検定)に関する。これは、アラキドン酸の1つまたは複数の誘導体(エイコサノイド)、リノール酸の1つまたは複数の誘導体、および/またはドコサヘキサエン酸の1つまたは複数の誘導体を、同時に、好ましくは1つまたは複数の酸化ストレスパラメーターと、ならびに/あるいは他の代謝産物クラスからの1つまたは複数の分析物と一緒に検出し、定量化することを、ならびにこのような方法を実行するために適合されたキットを包含する。さらに本発明は、当該方法に用いられるようなバイオマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、毛細管拡張、白血球浸潤、発赤、発熱、疼痛、腫脹、およびしばしばの機能損失により特徴づけられ、有害作因および損傷組織の排除を開始する一機序として役立つ細胞損傷に対する局所的応答である[Webster’s Medical Desk Dictionary. Merrian-Webster. 1986]。炎症性刺激が十分に強い場合、全身性炎症応答症候群[SIRS]が発症する。
【0003】
プロスタグランジンは、炎症、疼痛、発熱およびアナフィラキシー反応の重要な媒介物質である。プロスタノイドの作用により、広範な種々のその他の生物学的プロセス(例えば、恒常性、血小板凝集、腎臓および胃の機能、雌性生殖、血管新生、免疫学的機能、発育および癌)が、直接または間接的に影響を及ぼされる[Williams, C.S. et al., Oncogene 1999, 18, 7908-16;Rocca, B. et al., J. Clin Invest 1999, 103, 1469-77;Howe, L.R. Breast Cancer Res. 2007, 9, 210]。
【0004】
炎症の測定方法は、例えば、WO2003/014699、WO2006/124714およびWO2004/025303に記載されている。
【0005】
酸化ストレスは、「酸化促進/酸化防止の均衡における酸化促進に傾くような妨害」と定義されている[Sies, H., Oxidative Stress. Oxidants and Antioxidants. 1991, New York: Elsevier. 507]。それは、細胞性機能不全および死に関する重要な共通経路として、ならびに癌、糖尿病、閉塞性肺疾患、炎症性腸疾患、心虚血、糸球体腎炎、黄斑変性および種々の神経変性障害を含めた広範囲のヒトの医学的症状において考え得る治療標的として関連づけられている[Halliwell, B. and J.M.C. Gutteridge, Free Radicals in Biology and Medicine. 3 ed. 1999, Oxford: Oxford University Press Inc. 736]。
【0006】
酸化ストレス測定デバイスおよび方法は、例えば、WO2005/052575、WO2006/127695、JP2003083977、US5,891,622、US6,620,800、WO2003/016527、US6,096,556、WO1998/10295、WO2006/90228、WO2002/04029、WO1999/63341、EP0845732、WO2007/041868、WO2007/083632に記載されている。
【0007】
炎症および酸化ストレスは、密接に関連づけられる。食細胞、すなわちマクロファージおよび好中球は、炎症で活性化される。病原体と闘うために、それらは、酸化的損傷の重要な媒介物質である反応性酸素種を産生する。それらは微生物にとって有毒であるが、しかし組織損傷ももたらし得る。
【0008】
細胞/組織損傷の最終生成物のいくつか(例えば、タンパク質のニトロ化に関しては3−ニトロチロシン、脂質過酸化に関しては4−ヒドロキシ−2’−ノネナールおよびマロンジアルデヒド、あるいは核酸損傷に関しては8−ヒドロキシグアノシン)はすでに知られているが、しかしながら、検出プロセスは複雑であり、例えば、有益な治療効果を示す酸化ストレスの漸次変化を検出するために十分な感度を有するわけではない。
【0009】
酸化ストレス測定を炎症に関与するパラメーターの確定と組合せるためには、わずかな努力が成されてきたに過ぎない。例えば、WO02/100293は、眼性炎症および酸化ストレスを評価するための診断および予後方法ならびにその治療が記載するが、一方、WO02/090977は炎症または酸化特性に関して物質を試験するための方法を記載する。
【0010】
近年の発展は、特定のクラスの酸化ストレスパラメーター、すなわちプロスタノイドおよびイソプロスタンの検出に集中してきた[Masoodi, M. et al, Rap Comm Mass Spec 2006, 20, 3023;Taylor, A.W. et al, Analyt. Biochem. 2006, 350, 41]。しかしながら、これらの方法は、固相抽出または液−液抽出手法(500μlの最小試料容量を要する)を、しばしば複雑なワークアップ方法を伴う誘導化過程とその後の蒸発および再溶媒和ステップを必然的に用いる。さらに、これらの過程は、HPLCまたはLCタンデム質量分析手法を用いて、プロスタノイドおよびイソプロスタンの分析に関してのみ記載されている。
【0011】
従来技術に存在する上記の問題にかんがみて、生体試料における炎症および酸化ストレスに関連した全身性代謝状態を確定するための改良された方法であって、高感度を有し、全身性代謝状態におけるわずかな変化だけでも検出可能な方法を提供することは、本発明の基礎を成す一目的である。
【0012】
さらに、このような方法を実行するためのキットを提供することが、一目的である。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、生体試料における炎症および/または酸化ストレスレベルパラメーターの同時確定のための方法であって、アラキドン酸(エイコサノイド)、リノール酸および/またはドコサヘキサエン酸の1つまたは複数の誘導体を、同時に、それぞれ、好ましくは1つまたは複数の酸化ストレスパラメーターと、ならびに他の化学物質クラスからの分析物と一緒に検出することを包含する方法、ならびにこの方法を実行するために適合されたキットを提供する。さらに、アラキドン酸(エイコサノイド)、リノール酸および/またはドコサヘキサエン酸の誘導体、ならびにその他の酸化ストレスパラメーターおよび他の化学物質クラスからの分析物は、定量的分析方法、例えばクロマトグラフィー、分光分析および質量分光測定を用いて代謝産物濃度を測定することにより検出される。WO2007/003344およびWO2007/003343(これらの出願はともに参照により本明細書中で援用される)に記載されたような方法およびデバイスの使用が、特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】抽出工程のスキーム:微量滴定プレート上の試料の適用、水性メタノール(MeOH)による抽出、遠心分離、誘導化および固相抽出を伴わないLC−MS/MSによる分析。
【図2a】遊離脂肪酸、プロスタノイド、イソプロスタン、ならびにLOX−およびチトクロームP450−由来脂肪酸代謝産物の外部標準混合物のクロマトグラフィー分離。
【図2b】遊離脂肪酸、プロスタノイド、イソプロスタン、ならびにLOX−およびチトクロームP450−由来脂肪酸代謝産物の外部標準混合物のクロマトグラフィー分離。
【図3a】生体試料(指示したような)の選択における種々のエイコサノイドおよび脂肪酸誘導体の検出。
【図3b】生体試料(指示したような)の選択における種々のエイコサノイドおよび脂肪酸誘導体の検出。
【図3c】生体試料(指示したような)の選択における種々のエイコサノイドおよび脂肪酸誘導体の検出。
【図3d】生体試料(指示したような)の選択における種々のエイコサノイドおよび脂肪酸誘導体の検出。
【図4a】ラットにおける異なるプロマイシン投与量の作用。ラット血漿試料中の4つの異なるエイコサノイドの濃度(指示したような)を確定し、正規化した。
【図4b】ラットにおける異なるプロマイシン投与量の作用。ラット血漿試料中の4つの異なるエイコサノイドの濃度(指示したような)を確定し、正規化した。
【図4c】ラットにおける異なるプロマイシン投与量の作用。ラット血漿試料中の4つの異なるエイコサノイドの濃度(指示したような)を確定し、正規化した。
【図4d】ラットにおける異なるプロマイシン投与量の作用。ラット血漿試料中の4つの異なるエイコサノイドの濃度(指示したような)を確定し、正規化した。
【図5】単一LC−MS/MS実行において85%MeOHで抽出したMet、D3−Met、Met(O)(c=50μM)および6PGs(c=1μM)の標準分離。カラム:Zorbax Eclipse XDB C18、100×3mm、3.5μm。移動相:A=H2O、0.2%蟻酸、B=ACN、0.05%蟻酸;勾配溶離、流量=500μL/分、注入容量=20μL。正イオン化モード t=0〜3.0分、負イオン化モード t=3.0〜9分。
【図6】単一LC−MS/MS実行において85%MeOHで抽出したα−ケトグルタレート、スクシネート(c=100μM)および6つのプロスタグランジン(c=1μM)の標準分離。カラム:Zorbax Eclipse XDB C18、100×3 mm、3.5μm。移動相:A=95/5 H2O/ACN、15mMのNH4Ac、pH=5.2;B=95/5 ACN/H2O、15mMのNH4Ac、pH=5.2;勾配溶離、流量=500μL/分、注入容量=20μL。負性獲得。
【図7】85%MeOHで抽出した4-HNEおよび4-HNE−d3(c=16μM)の標準分離。カラム:Zorbax Eclipse XDB C18、100×3mm、3.5μm。移動相:A=H2O、0.05%蟻酸;B=MeOH、0.05%蟻酸;アイソクラティック溶離液、10%A;流量=500μL/分、注入容量=20μL。正イオン化モード。
【発明を実施するための形態】
【0015】
プロスタノイド構造の生体活性脂質およびヒドロキシル化脂肪酸誘導体は、高等生物の代謝において中心的役割を果たす。プロスタグランジンは、炎症、疼痛、発熱およびアナフィラキシー反応の重要な媒介物質であり、トロンボキサンは血管収縮を媒介し、そしてプロスタサイクリンは、炎症の回復期において、ならびに心臓保護において、活性である。広範な種々のその他の生物学的プロセス(例えば、恒常性、血小板凝集、腎臓および胃の機能、雌性生殖、血管新生、免疫学的機能、発育および癌)は、プロスタノイドの作用により直接または間接的に影響を及ぼされる[Williams, C.S. et al., Oncogene 1999, 18, 7908-16;Rocca, B. et al., J. Clin Invest 1999, 103, 1469-77;Howe, L.R. Breast Cancer Res. 2007, 9, 210]。
【0016】
この多様化機能が、プロスタノイドを高等生物の全体的生物学的状態の有益な指標にする。小さな濃度変化が顕著な作用を発揮する場合、プロスタノイド代謝産物における不均衡は、急性反応、例えば局所性または全身性炎症、ならびに生物学的プロセスの慢性妨害を示す。実際の身体状態の正確な査定のために、さらなる代謝パラメーターが考慮されなければならない。
【0017】
酸化ストレスは、ミトコンドリア好気呼吸、細菌またはウイルス含有細胞の食作用、ならびに脂肪酸のペルオキシソーム媒介性分解により絶えず生成される反応性酸素種(ROS)により主に引き起こされる[Ames, B.N. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 1993, 90, 7915-22]。ROS産生の増大は、炎症において、放射線照射中に、あるいはホルモン、薬剤および環境毒素の代謝中に生じる。
【0018】
ROSは脂質と容易に反応して、異なる起源の脂質ヒドロペルオキシドを形成し得る。エステル化リノール酸含有脂質および遊離リノール酸のROS媒介性酸化は、ヒドロペルオキシオクタデカジエン酸(HPODE]異性体の形成を生じる;それらはその後、対応するヒドロキシオクタデカジエン酸(HODE)に還元される。他方で、ROSによるアラキドン酸含有脂質および遊離アラキドン酸の酸化は、ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸(HPETE)の複合混合物を形成し、これはヒドロキシエイコサテトラエン酸(HETE)に還元される[Blair, I.A., J. Biol. Chem 2008]。脂質ヒドロペルオキシドは、リポキシゲナーゼ(LOX)[Ames, B.N. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 1993, 90, 7915-22]およびシクロオキシゲナーゼ(COX)[Porter, N.A. et al., Lipids 1995, 30, 277-90]によっても形成されて、多価不飽和脂肪酸(PUFA)に作用し得る。
【0019】
正常代謝プロセスは酸化的損傷および炎症をもたらす危険な反応性酸素種を潜在的に生成するが、一方、両相互連結プロセスは順次、代謝反応に及ぼす全身性の且つ顕著な影響を有する。このプロセスは、年齢に伴って増大する。酸化ストレスおよび炎症は、多数の疾患、例えばアテローム硬化症、高血圧症、喘息、COPD、急性肺損傷、心不全、腎臓および肝臓疾患に関連づけられてきた。
【0020】
例えば腎臓疾患に関しては、非伝統的危険因子と考えられる酸化ストレスの増大および急性期炎症の増大はともに、尿毒症性心臓血管性危険への重要な誘因であると仮定される[Himmelfarb, J., Seminars in Dialysis 2008, 17, 449-454(6)]。酸化的細胞損傷は、アルコール性および非アルコール性脂肪肝疾患を伴って肝臓で高頻度に生じ、これは、8−ヒドロキシデオキシグアノシンおよび4-ヒドロキシ−2’−ノネナール指数と壊死炎症との強い相関を示す[Seki, S. et al., Histopathology 2003, 42, 365-71;Seki, S. et al., Hepatol. Res. 2005, 33, 132-34]。
【0021】
炎症および酸化ストレス関連パラメーターの同時査定、ならびに本発明による生物体の全体的代謝状態の確定は、疾患の診断、治療および予後に関して非常に有益である。理想的には、炎症、酸化ストレスおよび疾患の代謝的局面を網羅する、本発明により得られるような限定組および複合組のバイオマーカーは、健康管理における有益な診断および予後ツールとして役立つ。
【0022】
本発明の生体試料中の炎症、酸化ストレスおよび代謝妨害の全身状態を確定するための方法によれば、アラキドン酸(エイコサノイド)、リノール酸および/またはドコサヘキサエン酸の1つまたは複数の誘導体が検出される(本明細書中では、以後、第一群の化合物と呼ぶ)。好ましくはアラキドン酸、リノール酸および/またはドコサヘキサエン酸のこれらの1つまたは複数の誘導体は、同一試料から同時に検出される。
【0023】
アラキドン酸の誘導体は、好ましくは、アラキドン酸およびその代謝産物、例えばシクロオキシゲナーゼ−、リポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450−由来プロスタノイド、ヒドロキシ−、ヒドロペルオキシ−およびエポキシル化酸、ならびに非酵素的過酸化生成物、例えばイソプロスタンからなる群から選択される。
【0024】
リノール酸の誘導体は、リノール酸およびその代謝産物、例えばリポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450−由来酸化生成物、ならびに非酵素的過酸化生成物からなる群から選択される。
【0025】
ドコサヘキサエン酸の誘導体は、ドコサヘキサエン酸およびその代謝産物、例えばリポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450−由来ドコサノイド、ならびに非酵素的過酸化生成物、例えばイソプロスタンからなる群から選択される。
【0026】
さらに、本発明によれば、第一群の化合物、すなわち、アラキドン酸、リノール酸および/またはドコサヘキサエン酸の1つまたは複数の誘導体を、同時に、他の化学物質種からの炎症および/または酸化ストレスの1つまたは複数のパラメーター(本明細書中では、以後、第二群の化合物と呼ぶ)と一緒に検出することが好ましい。
【0027】
他の化学物質種からのこれらのパラメーターは、例えば、脂質酸化および/または過酸化の生成物、チロシン誘導体、例えばNO2−、Br−、Cl−チロシン、メチオニンスルホキシド、ケトン体、8−オキソ−グアニジンおよび8−OHグアノシン、ビオプテリン、プロビタミン、ビタミン、酸化防止剤、グルタチオン、オフタルメート、酸化コレステロールおよびステロールからなる群から選択される。
【0028】
さらに、本発明によれば、アラキドン酸、リノール酸および/またはドコサヘキサエン酸の1つまたは複数の誘導体(第一群)、ならびに炎症および/または酸化ストレスの1つまたは複数のパラメーター(第二群)を、同時に、多の代謝産物クラスからの1つまたは複数の分析物(本明細書中では、以後、第三群の化合物と呼ぶ)と一緒に検出することが特に好ましい。他の代謝産物クラスからのこれらの分析物は、例えば、α−ケトグルタレート、スクシネート、CoQ10、メチオニン、スフィンゴ脂質、例えばセラミド−1−ホスフェート、スフィンゴシン−1−ホスフェート、スフィンゴミエリンおよびヒドロキシル化スフィンゴミエリンからなる群から選択される。
【0029】
本発明によれば、3つの群の上記の化合物(代謝産物)の任意の組合せを基礎にした方法を実行することが原則として可能である場合でさえ、下記で示されるような以下の組合せ1)〜6)が特に好ましい。
1)HETE/HODE+メチオニンスルホキシド+メチオニン
2)アラキドン酸+セラミド−1−ホスフェート
3)アラキドン酸+酸化コレステロール/ステロール+スフィンゴミエリン
4)プロスタグランジン+スフィンゴシン−1−ホスフェート
5)HETE/HODE+8−オキソ−グアニジン/8−OH−グアノシン
6)プロスタグランジン+NO2−チロシン。
【0030】
検出は、好ましくは、WO2007/003344およびWO2007/003343(これらの出願はともに、参照により本明細書中で援用される)に記載されたような方法およびデバイスを用いて、1つまたは複数の代謝産物濃度を測定することにより実行される。微量滴定プレート中の挿入物がすでに内部標準を含有するこれらの方法を用いることにより、複雑なワークアップ方法を伴う一般的に用いられる多くの時間を要する誘導化過程、ならびに付加的な固相抽出または液−液抽出手順を回避することができる。その結果、本発明による方法は、要する時間がより少なくなり、そしてより小さな試料容量で実行され得る。特に、本発明によれば、5μl〜100μl、さらに好ましくは10μl〜50μlの範囲内の低容量を有する試料で検出を実行することが可能である。それとは全く異なり、従来技術の方法は、少なくとも500μlの容量を要する。本明細書に従って用いられるこれらの低試料容量により、当該方法は、小試料容積、例えば小動物からの試料に、あるいは新生児に関する試験に理想的に適用される。これらは別として、試料容量が本発明により有意に低減される場合でも、検出の限界は従来技術の検出限界とほとんど同一である。
【0031】
生体試料は、哺乳類から、好ましくはマウス、ラット、モルモット、イヌ、ミニブタ、霊長類またはヒトから得られる。したがって本発明による方法は、in vitro方法である。
【0032】
本発明による検出は、一般的に用いられる、且つ、当該技術分野で既知である定量的分析方法、例えば、クロマトグラフィー、分光分析および質量分光測定に基づいている。質量分光測定が特に好ましいが、しかし特定の技法が特に限定されるというわけではない。例えば大気圧イオン化方式またはMALDIを、単一または三連四重極型−、イオントラップ−、TOFまたはTOF−TOF−検出系と組合せる通常質量分光測定技法を含む任意の質量分光測定法が、本発明に従って用いられ得る。
【0033】
全身代謝状態は、種々の種類の疾患を示し得る。本発明に従って関連し得る疾患の例は、種々の型の癌、炎症性疾患、例えば慢性気道炎症またはアテローム硬化症、ならびに代謝障害、例えば糖尿病である。さらに、閉塞性肺疾患、炎症性腸疾患、心虚血、糸球体腎炎、黄斑変性および種々の神経変性障害が言及され得る。本発明の方法は、酸化ストレスの漸次変化、例えば治療効果による変化を検出するのにも有用である。
【0034】
さらに本発明は、当該方法を実行するために適合されたキットであって、1つまたは複数のウエル、ならびに少なくとも1つの内部標準を含浸された1つまたは複数の挿入物を含有するデバイスを包含するキットにも向けられる。このようなデバイスは、上記のようにWO2007/003344およびWO2007/003343に詳細に記載されている。
【0035】
さらに本発明は、生体試料それ自体における炎症および酸化ストレスに関連した全身性代謝状態を確定するためのバイオマーカーにも向けられる。
【0036】
特に好ましい実施形態を明記する以下の実施例を考慮すると、本発明はより明らかになる。
【実施例】
【0037】
序論:
遊離脂肪酸代謝産物、例えばアラキドン酸およびその極めて多量の下流代謝産物はすべて、多数の生理学的および病理学的プロセス、例えば種々の型の癌、糖尿病、心臓血管性疾患および慢性気道炎症のような異なる疾患の発症において重要な役割を果たす。以下の実験設定では、種々の生体試料型におけるシクロオキシゲナーゼ−、リポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450酵素活性に由来するプロスタノイド、ヒドロキシ−、ヒドロペルオキシ−およびエポキシル化酸、ならびに非酵素的過酸化生成物、例えばイソプロスタンを確定することが主眼であった。
【0038】
本発明に記載したように、20μLの血漿およびその他の生体マトリックスから遊離脂肪酸代謝産物を抽出し、その後、HPLC−MS/MSにより分析するために、迅速方法を実施した。この方法に用いた低試料容量により、当該方法は小動物試験に用いるための理想的適用になる。
【0039】
定量的に確定した分析物を、表1に要約する。
【0040】
【表1】
【0041】
方法
種々の生体材料中の遊離脂肪酸代謝物を確定するために、図1に示したように、微量滴定プレート中に種々の代謝産物に関する安定同位体を含有するフィルタースポット上に少量の試料(20μL)を適用し、さらに誘導かせずに水性メタノール中で抽出した。HTC PAL自動試料採取機(CTC Analytics)とともにAgilent1100系(Agilent Technology)を用いた20μL抽出物の注入後に、RP-HPLC(Zorbax Eclipse C18、3.0×100mm、3.5μm)カラム上で代謝産物の分離を実行した。移動相組成は、A:H2O+0.05%(v/v)蟻酸、ならびにB:アセトニトリルプラス0.05%(v/v)蟻酸であった。流量は、500μL/分で一定であった。勾配溶離により、代謝産物を分離した。ESI電源(Applied Biosystems)を装備したAPI4000Qトラップ(商標)を用いた陰性検出モードでのMRM遷移により、検出を実行した。Analystバージョン1.4.2定量を用いて、代謝産物の定量化を実施した。標準混合物の代表的クロマトグラムを、図2aおよび2bに示す。
【0042】
試料調製:
0.001%BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)を含有するEDTA被覆バイアル中で、血漿調製を実施した。脳、肝臓および前立腺組織のホモジネートを、PBS緩衝液中に調製した。
【0043】
方法妥当性:
ヒト血漿を用いて、方法妥当性を実施した。定量のために、以下の内部標準を用いた:12(S)−HETE−d8、PGE2−d4、PGD2−d4、TXB2−d4、PGF2α−d4、6−ケトPGF1α−d4およびDHA−d5。6−点検量線を用いて検定の線形性を確定し、1/x計量因子をデータに適用した。外部標準溶液で血漿試料をスパイクし、予測定量化限界までPBSで希釈することにより定量化の下限(LLOQ)および検出限界(LOD)を確定した。分析物の線形範囲、相関係数、ならびにLLOQおよびLODに関する値を、表2に列挙する。
【0044】
【表2】
【0045】
6連続日に亘って、3つの濃度でスパイクされた血漿の反復注入(n=5)により、日内および日差再現性を確定した。分析物の平均濃度を真の値と比較することにより、検定の正確度を算定した(n=5)。各化合物の日内および日差精度および正確度に関する平均変動係数(CV)を、表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
妥当性手順は、以下の価を示した:
・定量化の下限は、5(S)-HpETE(LLOQ=143nmol/L)およびAA(LLOQ=233nmol/L)を除いて、すべて0.4〜50nmol/Lであった
・血漿中の典型的検定範囲は、プロスタノイドおよびヒドロキシル化脂肪酸代謝産物に関して1〜500nmol/Lである
・日内および日差精度に関する変動係数(CV)ならびに3つの濃度での正確度を確定した
・回収率は、代謝産物によって70〜120%であった。
【0048】
記載された方法を、血漿、血清、肝臓、脳および前立腺ホモジネートに適用した。如何なる誘導化または蒸発ステップを必要とせずに、遊離脂肪酸代謝産物を同定し、定量し得た。図3a、b、cおよびdは、それぞれヒト血清、脳ホモジネート、肝臓ホモジネート(ネズミ)、および前立腺組織(ヒト)から抽出した酸化脂肪酸代謝産物のTICを示す。
【0049】
疾患状態の試験症例は、肺炎症、前立腺癌および心臓血管性疾患と関連した遊離脂肪酸、プロスタグランジンおよびヒドロキシル化種の増大を示す。アラキドン酸の酸化を含めた低密度リポタンパク質(LDL)の酸化的修飾は腎変性における酸化ストレスおよび炎症プロセスを明白に示すため、一例として、当該方法を腎毒性モデルに適用した。
【0050】
異なる投与量のピューロマイシンを摂取しているラットの4つの群から得た血漿試料を、分析した。図4に示したように、シクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼ活性の増大が観察された。
【0051】
エイコサノイドと酸化ストレスパラメーターとの同時検出
代謝産物クラスのクロマトグラフィー特性によって、2つの異なる方法で、異なる代謝産物クラスからの化合物の同時検出を実施した:
1)単一LC−MS/MS実行における試料からの同一抽出ならびに検出
2)異なるLC−MS/MS実行における試料からの同一抽出ならびに検出
【0052】
3つの実施例を記載する。
【0053】
ad 1)メチオニン(Met)、メチオニンスルホキシド(Met(O))
図5は、Met、Met(O)、D3−Metおよび6つのプロスタグランジン(PGD2、PGE2、PGF2α、8−イソPGF2α、6−ケトPGF1αおよびTXB2)のクロマトグラフィー分離を示す。MetおよびMet(O)のための内部標準として、D3−Metを用いた。Met、Met(O)、D3−Met(すべてに関してc=50μM)およびPGs(すべてに関してc=1μM)の標準溶液を上記のように同時に抽出し、LC−MS/MS系中に注入した。Met、Met(O)およびD3−Metの検出を正イオンモードで達成し、t=3分後、データ獲得を負モードに切り替えて、プロスタノイドを検出した。
【0054】
α−ケトグルタレート、スクシネート
図6は、α−ケトグルタレート、スクシネートおよび6つのPGsのクロマトグラフィー分離を示す。α−ケトグルタレートおよびスクシネートの濃度は100μMであり、6つのPGsの濃度はc=1μMであった。分析物を上記のように同時的に抽出し、LC−MS/MS系に注入した。負イオンモードで検出を実施した。
【0055】
ad 2)4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)
図7は、4-HNEおよび内部標準4-HNE−d3の16μMの濃度でのクロマトグラフィー分離を示す。4-HNE、4-HNE−d3および6つのPGsを上記のように抽出し、LC−MS/MS系に注入した。正イオンモードで検出を実施した。4-HNEのクロマトグラフィー特性(t=1.1分での移動相中の高有機含量−90%MeOH−での溶離)のため、4-HNEおよびエイコサノイドの抽出を同時的に実施したが、しかしながら、検出は、2つの異なるLC−MS/MS実行で実施されなければならない。
【0056】
産業上の利用可能性
本発明は、生体試料中の炎症および酸化ストレスレベルに関連した全身性代謝状態を画定するための改良された方法を提供する。この方法は、きわめて感度が高く、全身性代謝状態におけるわずかな変化のみでも検出可能である。この方法は、アラキドン酸(エイコサノイド)、リノール酸および/またはドコサヘキサエン酸(ドコサノイド)の1つまたは複数の誘導体の検出および定量化を包含する。当該方法の感度ならびに結果の質をさらに増大するために、好ましくは1つまたは複数の酸化ストレスパラメーターを同時に検出し、定量する。当該方法は、他の代謝産物クラスからの1つまたは複数の代謝産物を同時にさらに検出し、定量することにより、さらに改良される。したがって本発明の特に好ましい実施形態では、3つの群の化合物が同時に検出され、定量されて、これが、炎症および酸化ストレスに関連した生物源の全身性代謝状態に関して当該方法(検定)の感度および信頼度を大いに改良する。
【0057】
したがって、本発明に記載された方法は、生体試料における炎症および酸化ストレスに関連した代謝の平行確定を可能にする。これは、全身性代謝状態の包括的評価を可能にするために、特に鑑別診断のためには、不可欠である。さらなる利点は、当該手法が高い感度および選択度をともに有し、非常に低い試料用量、すなわち約20μLを要する、という事実に基づいている。
【0058】
本発明の方法に従ってスクリーニングされるべき潜在的治療標的としては、広範囲のヒトの医学的症状、例えば種々の方の癌、糖尿病、閉塞性肺疾患、炎症性腸疾患、心虚血、糸球体腎炎、黄斑変性症および種々の神経変性疾患が挙げられる。本発明の方法は、全身性代謝状態の漸次変化、たとえば、治療効果による変化の検出にも有用である。したがって、該方法および該方法を実行するための該キットは、多くの医学分野において、診断および療法の両方できわめて効率的である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料における炎症および/または酸化ストレスに関連した全身性代謝状態の確定方法であって、アラキドン酸の1つまたは複数の誘導体(エイコサノイド)、リノール酸の1つまたは複数の誘導体、および/またはドコサヘキサエン酸の1つまたは複数の誘導体を、同時に、好ましくは1つまたは複数の酸化ストレスパラメーターと、ならびに/あるいは他の代謝産物クラスからの1つまたは複数の分析物と一緒に検出し、定量化することを包含する方法。
【請求項2】
前記酸化ストレスパラメーターが、脂質酸化および/または過酸化の生成物、チロシン誘導体、例えばNO2−、Br−、Cl−チロシン、メチオニンスルホキシド、ケトン体、8−オキソ−グアニジンおよび8−OHグアノシン、ビオプテリン、プロビタミン、ビタミン、酸化防止剤、グルタチオン、オフタルメート、酸化コレステロールおよびステロールからなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項3】
他の代謝産物クラスからの前記分析物がα−ケトグルタレート、スクシネート、CoQ10、メチオニン、スフィンゴ脂質、例えばセラミド−1−ホスフェート、スフィンゴシン−1−ホスフェート、スフィンゴミエリンおよびヒドロキシル化スフィンゴミエリンからなる群から選択される請求項1および/または請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記検出が1つまたは複数の代謝産物濃度を測定することにより実行される請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記検出が1μl〜1ml、好ましくは5μl〜100μl、さらに好ましくは10μl〜50μlの範囲内の容量を有する試料で実行される請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記検出が代謝産物の誘導化、ならびに/あるいは代謝産物の液−液または固相抽出のような任意の通常試料調製手法を用いずに実行される請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記生体試料が哺乳類から、好ましくはマウス、ラット、モルモット、イヌ、ミニブタ、霊長類またはヒトから得られる請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記検出が定量的分析方法、好ましくはクロマトグラフィー、分光分析および質量分光測定に基づいている請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
クロマトグラフィーがGC、CE、LC、HPLCおよびUPLCを含み;分光分析がUV/Vis、IRおよびNMRを含み;ならびに質量分光測定が通常質量分光測定技法(大気圧イオン化方式またはMALDIを、単一または三連四重極型−、イオントラップ−、TOFまたはTOF−TOF−検出系と組合せる)を含む請求項8記載の方法。
【請求項10】
アラキドン酸の前記誘導体がアラキドン酸およびその代謝産物、例えばシクロオキシゲナーゼ−、リポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450−由来プロスタノイド、ヒドロキシ−、ヒドロペルオキシおよびエポキシル化酸、ならびに非酵素的過酸化生成物、例えばイソプロスタンからなる群から選択される請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
リノール酸の前記誘導体がリノール酸およびその代謝産物、例えばリポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450−由来酸化生成物、ならびに非酵素的過酸化生成物からなる群から選択される請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ドコサヘキサエン酸の前記誘導体がドコサヘキサエン酸およびその代謝産物、例えばリポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450−由来ドコサノイド、ならびに非酵素的過酸化生成物、例えばイソプロスタンからなる群から選択される請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記全身性代謝状態が種々の癌型、炎症性疾患、例えば慢性気道炎症またはアテローム硬化症、および代謝障害、例えば糖尿病を示す請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
1つまたは複数のウエルならびに少なくとも1つの内部標準を含浸された1つまたは複数の挿入物を含むデバイスを包含するキットであって、請求項1〜請求項13のいずれか一項に記載の方法を実行するために適合されるキット。
【請求項15】
生体試料における炎症および/または酸化ストレスに関連した全身性代謝状態を確定するためのバイオマーカーであって、アラキドン酸の1つまたは複数の誘導体(エイコサノイド)、リノール酸の1つまたは複数の誘導体、および/またはドコサヘキサエン酸の1つまたは複数の誘導体を、好ましくは1つまたは複数の酸化ストレスパラメーターと、ならびに/あるいは他の代謝産物クラスからの1つまたは複数の分析物と一緒に含むバイオマーカー。
【請求項16】
前記酸化ストレスパラメーターが、脂質酸化および/または過酸化の生成物、チロシン誘導体、例えばNO2−、Br−、Cl−チロシン、メチオニンスルホキシド、ケトン体、8−オキソ−グアニジンおよび8−OHグアノシン、ビオプテリン、プロビタミン、ビタミン、酸化防止剤、グルタチオン、オフタルメート、酸化コレステロールおよびステロールからなる群から選択される請求項15記載のバイオマーカー。
【請求項17】
他の代謝産物クラスからの前記分析物がα−ケトグルタレート、スクシネート、CoQ10、メチオニン、スフィンゴ脂質、例えばセラミド−1−ホスフェート、スフィンゴシン−1−ホスフェート、スフィンゴミエリンおよびヒドロキシル化スフィンゴミエリンからなる群から選択される請求項15および/または請求項16記載のバイオマーカー。
【請求項18】
アラキドン酸の前記誘導体がアラキドン酸およびその代謝産物、例えばシクロオキシゲナーゼ−、リポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450−由来プロスタノイド、ヒドロキシ−、ヒドロペルオキシおよびエポキシル化酸、ならびに非酵素的過酸化生成物、例えばイソプロスタンからなる群から選択される請求項15〜請求項17のいずれか一項に記載のバイオマーカー。
【請求項19】
リノール酸の前記誘導体がリノール酸およびその代謝産物、例えばリポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450−由来酸化生成物、ならびに非酵素的過酸化生成物からなる群から選択される請求項15〜請求項18のいずれか一項に記載のバイオマーカー。
【請求項20】
ドコサヘキサエン酸の前記誘導体がドコサヘキサエン酸およびその代謝産物、例えばリポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450−由来ドコサノイド、ならびに非酵素的過酸化生成物、例えばイソプロスタンからなる群から選択される請求項15〜請求項19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記全身性代謝状態が種々の癌型、炎症性疾患、例えば慢性気道炎症またはアテローム硬化症、および代謝障害、例えば糖尿病を示す請求項15〜請求項20のいずれか一項に記載のバイオマーカー。
【請求項1】
生体試料における炎症および/または酸化ストレスに関連した全身性代謝状態の確定方法であって、アラキドン酸の1つまたは複数の誘導体(エイコサノイド)、リノール酸の1つまたは複数の誘導体、および/またはドコサヘキサエン酸の1つまたは複数の誘導体を、同時に、好ましくは1つまたは複数の酸化ストレスパラメーターと、ならびに/あるいは他の代謝産物クラスからの1つまたは複数の分析物と一緒に検出し、定量化することを包含する方法。
【請求項2】
前記酸化ストレスパラメーターが、脂質酸化および/または過酸化の生成物、チロシン誘導体、例えばNO2−、Br−、Cl−チロシン、メチオニンスルホキシド、ケトン体、8−オキソ−グアニジンおよび8−OHグアノシン、ビオプテリン、プロビタミン、ビタミン、酸化防止剤、グルタチオン、オフタルメート、酸化コレステロールおよびステロールからなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項3】
他の代謝産物クラスからの前記分析物がα−ケトグルタレート、スクシネート、CoQ10、メチオニン、スフィンゴ脂質、例えばセラミド−1−ホスフェート、スフィンゴシン−1−ホスフェート、スフィンゴミエリンおよびヒドロキシル化スフィンゴミエリンからなる群から選択される請求項1および/または請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記検出が1つまたは複数の代謝産物濃度を測定することにより実行される請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記検出が1μl〜1ml、好ましくは5μl〜100μl、さらに好ましくは10μl〜50μlの範囲内の容量を有する試料で実行される請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記検出が代謝産物の誘導化、ならびに/あるいは代謝産物の液−液または固相抽出のような任意の通常試料調製手法を用いずに実行される請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記生体試料が哺乳類から、好ましくはマウス、ラット、モルモット、イヌ、ミニブタ、霊長類またはヒトから得られる請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記検出が定量的分析方法、好ましくはクロマトグラフィー、分光分析および質量分光測定に基づいている請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
クロマトグラフィーがGC、CE、LC、HPLCおよびUPLCを含み;分光分析がUV/Vis、IRおよびNMRを含み;ならびに質量分光測定が通常質量分光測定技法(大気圧イオン化方式またはMALDIを、単一または三連四重極型−、イオントラップ−、TOFまたはTOF−TOF−検出系と組合せる)を含む請求項8記載の方法。
【請求項10】
アラキドン酸の前記誘導体がアラキドン酸およびその代謝産物、例えばシクロオキシゲナーゼ−、リポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450−由来プロスタノイド、ヒドロキシ−、ヒドロペルオキシおよびエポキシル化酸、ならびに非酵素的過酸化生成物、例えばイソプロスタンからなる群から選択される請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
リノール酸の前記誘導体がリノール酸およびその代謝産物、例えばリポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450−由来酸化生成物、ならびに非酵素的過酸化生成物からなる群から選択される請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ドコサヘキサエン酸の前記誘導体がドコサヘキサエン酸およびその代謝産物、例えばリポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450−由来ドコサノイド、ならびに非酵素的過酸化生成物、例えばイソプロスタンからなる群から選択される請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記全身性代謝状態が種々の癌型、炎症性疾患、例えば慢性気道炎症またはアテローム硬化症、および代謝障害、例えば糖尿病を示す請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
1つまたは複数のウエルならびに少なくとも1つの内部標準を含浸された1つまたは複数の挿入物を含むデバイスを包含するキットであって、請求項1〜請求項13のいずれか一項に記載の方法を実行するために適合されるキット。
【請求項15】
生体試料における炎症および/または酸化ストレスに関連した全身性代謝状態を確定するためのバイオマーカーであって、アラキドン酸の1つまたは複数の誘導体(エイコサノイド)、リノール酸の1つまたは複数の誘導体、および/またはドコサヘキサエン酸の1つまたは複数の誘導体を、好ましくは1つまたは複数の酸化ストレスパラメーターと、ならびに/あるいは他の代謝産物クラスからの1つまたは複数の分析物と一緒に含むバイオマーカー。
【請求項16】
前記酸化ストレスパラメーターが、脂質酸化および/または過酸化の生成物、チロシン誘導体、例えばNO2−、Br−、Cl−チロシン、メチオニンスルホキシド、ケトン体、8−オキソ−グアニジンおよび8−OHグアノシン、ビオプテリン、プロビタミン、ビタミン、酸化防止剤、グルタチオン、オフタルメート、酸化コレステロールおよびステロールからなる群から選択される請求項15記載のバイオマーカー。
【請求項17】
他の代謝産物クラスからの前記分析物がα−ケトグルタレート、スクシネート、CoQ10、メチオニン、スフィンゴ脂質、例えばセラミド−1−ホスフェート、スフィンゴシン−1−ホスフェート、スフィンゴミエリンおよびヒドロキシル化スフィンゴミエリンからなる群から選択される請求項15および/または請求項16記載のバイオマーカー。
【請求項18】
アラキドン酸の前記誘導体がアラキドン酸およびその代謝産物、例えばシクロオキシゲナーゼ−、リポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450−由来プロスタノイド、ヒドロキシ−、ヒドロペルオキシおよびエポキシル化酸、ならびに非酵素的過酸化生成物、例えばイソプロスタンからなる群から選択される請求項15〜請求項17のいずれか一項に記載のバイオマーカー。
【請求項19】
リノール酸の前記誘導体がリノール酸およびその代謝産物、例えばリポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450−由来酸化生成物、ならびに非酵素的過酸化生成物からなる群から選択される請求項15〜請求項18のいずれか一項に記載のバイオマーカー。
【請求項20】
ドコサヘキサエン酸の前記誘導体がドコサヘキサエン酸およびその代謝産物、例えばリポキシゲナーゼ−およびチトクロームP450−由来ドコサノイド、ならびに非酵素的過酸化生成物、例えばイソプロスタンからなる群から選択される請求項15〜請求項19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記全身性代謝状態が種々の癌型、炎症性疾患、例えば慢性気道炎症またはアテローム硬化症、および代謝障害、例えば糖尿病を示す請求項15〜請求項20のいずれか一項に記載のバイオマーカー。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2010−528302(P2010−528302A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509737(P2010−509737)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004323
【国際公開番号】WO2008/145384
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(509324458)バイオクレイツ ライフ サイエンス エージー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004323
【国際公開番号】WO2008/145384
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(509324458)バイオクレイツ ライフ サイエンス エージー (3)
【Fターム(参考)】
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