炎症及び/又は自己免疫疾患における可溶性CD164の使用
本発明は、sCD164変異体及びその治療的使用、特に炎症又は自己免疫疾患を処置又は予防するための使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症及び自己免疫疾患の分野のものである。特に、本発明は新規sCD164変異体並びに炎症及び/又は自己免疫疾患の予防及び/又は処置におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの免疫系の主な機能は、外来の侵入者、例えば微生物又はウイルスによる感染から個体を保護することである。しかしながら、免疫系が個体自身の組織を攻撃して、自己免疫疾患として知られている病理状態であって、しばしば炎症過程を伴うものを引き起こすことがある。
【0003】
一般的に使用されている分類によると、CD4+T細胞は、特有の非重複サイトカイン発現パターンに基づいて、Tヘルパー1型細胞(Th1)及びTヘルパー2型細胞(Th2)と称される2つの異なるサブセットに分けることができる。Th1はIL−2、インターフェロンγ、IL−12及びTNF−αの分泌を特徴とし、そしてTh2はIL−4、IL−5、IL−9、IL−10及びIL−13の分泌を特徴とする。この一般的なカテゴリー分けにもかかわらず、これらはIFN−γとして厳密なサブセットではなく、そしてIL−10はTh1並びにTh2反応に伴う作用を抑制することができ、そしてIL−4及びIL−13は更にIL−12の産生を促進することができ、その結果Th1を促進し、そしてTh2反応を潜在的に阻害することができる。Th1 T細胞はマクロファージの活性化及び遅延型過敏反応(DTH)を媒介して、炎症促進性又は細胞媒介型の免疫反応を生じさせることができ、一方、Th2 T細胞はIgG1及びIgEの分泌を促進して即時型過敏反応(体液性免疫;抗体媒介型反応の刺激、肥満細胞の活性化、組織好酸球)を生じさせる。Th1は関節リウマチ、サルコイド、及び結核のような疾患の病因の重要な特徴であり、一方、Th2はアレルギー、抗寄生虫反応及び喘息気道に関与する。
【0004】
炎症は、体外又は体内の種々の侵襲、例えば感染物質、物理的損傷、低酸素症、又は身体のほぼあらゆる器官若しくは組織における疾病過程、に対する身体の基本的な反応である。炎症は4つの周知の症候、すなわち赤味、熱、圧痛/疼痛、及び腫脹を伴う。更に具体的には、炎症は、標的部位での免疫系細胞及び分子の集合を伴う。急性炎症疾患の例としては、関節リウマチ、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、及び1型糖尿病等がある。これらの疾患はまた、自己免疫疾患又は自己免疫/炎症障害としてしばしば特徴付けられる。
【0005】
上文で言及したように、自己免疫疾患は、身体がそれ自身の組織を異物として認識し、そしてそれらに対する免疫反応を指示する症状である。
【0006】
多数の異なる自己免疫疾患が存在しており、それらは各々異なる方法で身体に影響を及ぼし得る。例えば、自己免疫反応は、多発性硬化症において脳に、そしてクローン病においては腸に対して向けられている。他の自己免疫疾患、例えば全身性エリテマトーデス(狼瘡)においては、冒されている組織及び器官は同じ疾患を有する個体間で変動しうる。狼瘡を有する人は皮膚及び関節が冒されていることもあれば、一方、人によっては皮膚、腎臓、及び肺が冒されている場合もある。最終的に、ある組織が免疫系により受ける損傷は、真性糖尿病I型における膵臓のインスリン産生細胞の破壊と同様に持続性であり得る。
【0007】
関節リウマチは、感染の炎症の兆候及び症候を特徴とする疾患である。全身性エリテマトーデス(SLE)は、皮膚上の赤い鱗状の斑点を特徴とし、そして疾患が進行した段階では腎臓の機能不良を特徴とし、そして血管、特に腎臓の血管に免疫複合体が沈着することを特徴とする。多発性硬化症は、脱力感、身震い、そして極端な場合には麻痺を生じさせうる、慢性、又は再発性の炎症状態を特徴とする疾患であり、末梢神細胞を覆う保護的なミエリン鞘の免疫系攻撃を伴う。アレルギー性炎症は、アトピー性疾患のTh2細胞ベースの原因論と一致している。例えば、IL−4不在下でのTh2細胞のプライミングの欠損は、気道誘発後にアレルギー性炎症反応が生じるのを失敗に至らしめた。IL−5及びIL−13は、特徴的な好酸球浸潤及び粘液過分泌のより直接的な原因であることが示されている。
【0008】
多発性硬化症において、Th1媒介型の免疫反応は、疾患を促進すると考えられており、一方、Th2媒介型の免疫反応は疾患の進行についての改善作用を有すると考えられている。T細胞が発現しているIL−10は、多発性硬化症のラットモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を抑制することが証明されている。TNF−αは、EAEの誘導の原因であると仮定されている(TNF−αは、Th1及びTh2両方の培養物によって分泌されうる)。
【0009】
ヒト全身性エリテマトーデス(SLE)は、Th2反応によって引き起こされるものと考えられている。しかしながら、IFN−γはマウスモデルにおける疾患の進行につい主要な効果を有することが示されているが、IL−4は疾患の維持を媒介することが予期されている。
【0010】
心筋炎は心筋の炎症と定義されており、そして急性上気道感染後の心臓特異的抗原に対する自己免疫反応によって媒介されると考えられている。マウスモデルの実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、抗IL−4の投与によって減少し、これは疾患の進行におけるIL−4の役割を示唆している。
【0011】
自己免疫疾患の例を表1に記す。
【0012】
【表1】
【0013】
CD164は、糖タンパク質であるムチン様受容体又はシアロムチンのスーパーファミリーのメンバーである。シアロムチンは、cDNAレベル及びアミノ酸レベルで限られた類似性を示す50-3000kDの膜貫通型糖タンパク質である。ムチン様発現型タンパク質は、セリン残基及びトレオニン残基にリンクされた多数のO-グリコシル化を担持するという共通の特徴を有しており、このことは、細胞間又は細胞-細胞外マトリックスの多種の相互作用を暗示する。ムチン受容体の機能は、細胞型、及びコアムチン・ペプチドと相関され、また、グリコシル・トランスフェラーゼの細胞特異的発現とも相関される活性化状態に依存する。これらのコアムチン・ペプチド及びグリコシル・トランスフェラーゼの細胞特異的発現は、Oリンク型オリゴ糖側鎖の構造及び提示、膜固定、シグナル伝達能、及び/又はムチンの正しい細胞ドメインへの輸送を調節する。
【0014】
ヒトCD164は、マウスMGC-24v(M. musculus)及びラット・エンドリン(R.norvegicus)のオルソログであり、哺乳動物細胞のリソソーム及びエンドソーム区画内に見いだされる膜タンパク質である。種々異なるイソ型間の関係は、CD164/エンドリンの機能上重要なドメイン及び細胞内分布とともに説明されている(Chan et al., 2001)。
【0015】
その天然の状態において、ヒトCD164は、2つの80-85kDaサブユニットのジスルフィド結合型ホモダイマーである。CD164は高グリコシル化され、O-及びN-リンク型グリカンの両方を含有する。細胞外領域は、ジスルフィド内(inter-disulphide)架橋を含有する非ムチン・ドメインによってリンクされた2つのムチン・ドメイン(I及びII)、並びに、成長因子及びサイトカイン受容体において既に判明しているコンセンサス・パターンに似たシステインに富むモチーフから成っている。CD164はまた、エンドソーム及びリソソームに対してタンパク質をターゲットすることができるC末端モチーフ(すなわちYHTL)を含む、シングル・パス膜貫通型ドメインと13アミノ酸細胞内領域とを含有している。
【0016】
ヒト染色体6q21上に位置する単一ゲノム転写ユニットから、6つの真正エクソンを選択的スプライシングすることにより、4つのヒトCD164 mRNA種が生じることが記載されている(Zannettino A, 2001; Watt及びChan, 2000)。
【0017】
主要なCD164(E1-6)イソ型は、178アミノ酸のI型膜貫通型糖タンパク質を表す。既述の他のイソ型は、178アミノ酸を含有するシアロムチンCD164又はCD164イソ型デルタ5;184残基のCD164イソ型デルタ4;膜貫通固定モチーフを欠き189残基を有する、MGC-24(24kDのマルチ-グリコシル化型コアタンパク質に対応)と呼ばれる、200kDの主に可溶性のイソ型である。全てのイソ型はO-及びN-リンク型グリコシル化部位を有する高グリコシル化型タンパク質である。
【0018】
CD164の機能は、造血先駆細胞の接着の媒介又は調整、並びに、成長及び/又は分化の負の調整を含む。CD164は通常、CD34+及びCD34lo/-造血幹細胞、並びに付随するミクロ環境細胞によって発現される(Watt et al., 1998)。CD164はまた、関連する脊髄コロニー形成細胞及び赤血球コロニー形成細胞によって、脊髄間質細胞及び内皮細胞上、リンパ球上に弱く、そして間葉幹細胞上に発現される。CD164は、ヒトCD34+細胞が脊髄間質細胞に接着するのを容易にすることにより、そして、CD34+及びCD38lo/-造血先駆細胞の増殖を抑制することにより、造血において重要な役割を果たすことができ、有力なシグナル伝達分子として作用する(Zannettino et al., 1998)。
【0019】
これらの効果は、モノクローナル抗体(mAbs) 105A5及び103B2/9E10によって認識されるCD164クラスI及び/又はエピトープを伴う。エピトープは炭水化物依存性であり、N末端ムチン・ドメインI上に配置される(Watt et al., 2000; Doyonnas et al., 2000)。造血細胞と、近接したミクロ環境内の間質/内皮細胞との相互作用は、造血幹細胞の自己再生、静止、関与及び移動を調整する上で極めて重要であると考えられる。これらの相互作用は、接着受容体と、これらの同起源リガンドと、サイトカインとの間の協働を伴う。Ig、インテグリン、カドヘリン、及びムチン様タンパク質群を含む細胞接着分子(CAMS)の範囲が、これらのプロセスに関与する。
【0020】
CD164はまた、筋原性分化において役割を有している(Lee et al., 2001)。筋芽細胞系におけるCD164の過剰発現は、分化の生化学マーカーの発現を加速し、多核筋管の形成を促進したのに対して、アンチセンスCD164又はCD164の可溶性細胞外領域は筋形成を阻害した。
【0021】
可溶性MGC-24のピーナッツ凝集素(PNA)は、多くの癌腫内で発現される腫瘍関連炭水化物マーカーを示す。総MGC-24 mRNAは、ヒト結腸直腸癌腫において、正常な隣接する粘膜組織と比較して低いレベルで見いだされた(Matsui et al., 2000)。癌腫によるリンパ管侵襲が、結腸癌腫における低レベルのMGC-24 mRNAと相関しているのに対して、高レベルのMGC-24 mRNAが相関する静脈浸潤及び遠隔転移はより少なかった。CD164に対して特異的なモノクローナル抗体が癌の診断又は処置、及び造血阻害に有用であることを証明することができた(EP889054、EP761814)。
【0022】
WO02/098917は、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟型と80%相同の配列を含んで成るタンパク質NOV25(配列番号8;図1B)を開示している。
【0023】
EP1033401は、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟型と同一の配列を含んで成るタンパク質(配列番号7582)を開示している。
【0024】
これらの先行技術文献で開示されているCD164様タンパク質の生体活性及び治療上の有用性は解析がなされていない。
【0025】
発明の要約
本発明は、新規なsCD164変異体の産生と、サイトカイン、例えばインターフェロンγ、IL−2、IL−4、IL−5、IL−10及びTNF−αが、これらのサイトカインを産生する細胞において、コンカナバリンAのような物質で刺激した場合に発現するのをかかるsCD164変異体が阻害する効果を有する、という知見、に基づいている。
【0026】
従って、本発明は、sCD164変異体及び、炎症及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防のためのそれらの使用に関するものであり、ここで、前記sCD164は:
a. 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
b. シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
c. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
d. (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
e. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
f. (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される。
【0027】
これらの変異体、これらのsCD164変異体を含んで成る組成物、ころえらをコードするポリヌクレオチド、かかるsCD164変異体を産生する宿主細胞、及びかかるsCD164変異体の産生方法が本発明の更なる観点である。
【0028】
本発明の詳細な説明
本発明によると、ヒトCD164の細胞外ドメインの全部又は一部を含んで成る、sCD164変異体が、コンカナバリンA(ConA)又は抗CD3及び抗CD28抗体のような物質による抹消血単核球(PBMC)の刺激後、特定のサイトカイン、例えばインターフェロン−γ、IL−2、IL−4、IL−5、IL−10及びTNF−αの細胞発現及び分泌に対し阻害効果を有することが明らかとなった。サイトカイン放出は炎症/自己免疫疾患において生じる事象であるため、これらのsCD164変異体は炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患の予防又は処置のための治療タンパク質として提唱される。
【0029】
sCD164変異体の投与は、炎症性疾患/自己免疫疾患のin vivo動物モデルにおいて有益な効果を有することが示されている。sCD164変異体は、炎症、すなわち単球/マクロファージのマクロファージチオグリコレート誘発型動員の総称モデル、及びLPS誘発型のTNFα放出モデルにおける細胞浸潤を有意に低下させることが示された。
【0030】
本発明のsCD164変異体のポジティブな効果は、マウスのコンカナバリンA誘発型肝炎モデル及び皮膚炎症モデルにおいて明らかとなった。
【0031】
かかる事項に加え、マウスの潰瘍性結腸炎及び関節炎のモデルにおいて、sCD164変異体がこれらの疾患に関連する種々の生理学的パラメーターを有意に改善することが示されている。
【0032】
タンパク質の治療上の用途の更なる確信は、個体の炎症性疾患/自己免疫疾患についての動物モデルで得ることができる。
【0033】
従って、本発明の第一の観点は、炎症性障害及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防のための医薬の製造のためにsCD164変異体を使用することであり、ここで、sCD164変異体は:
a. 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
b. シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
c. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
d. (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
e. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
f. (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される。
【0034】
本発明の更なる観点は、皮膚炎症関連障害、肝炎、潰瘍性結腸炎又は関節炎の処置及び/又は予防のための医薬の製造のための(a)〜(e)で定義されているようなsCD164変異体の使用に関する。
【0035】
本発明の範囲内では、(a)〜(f)で定義されるポリペプチド又はタンパク質は、「sCD164変異体」又は「本発明のsCD164変異体」と称される。便宜上、(a)で列挙されている個々のsCD164変異体には、それらの構造的組成を反映する記号表示が付されている。図2は、これらのsCD164変異体の対応する名前を示している。エキソン1〜6から構成されるポリペプチドは、成熟完全長CD164細胞外ドメインに相当し、そして本明細書ではこれを可溶性CD164、又はsCD164と称する。配列番号16のsCD164変異体は、イムノグロブリンのFc部分に融合したsCD164を含んで成るFc融合タンパク質である。配列番号18のsCD164変異体であるCD164−Fcmは、Fc受容体及びC1q結合領域において変異したイムノグロブリンのFc部分と融合したsCD164を含んで成るFc融合タンパク質である(アミノ酸182〜185位のLLGGがAEGAに、そしてアミノ酸278−279位の変異したAPがSSに)。配列番号17は本発明のsCD164変異体ではなく、シグナルペプチドを含む完全長のヒトCD164前駆体である。
【0036】
「予防」という用語は、本発明の範囲内では、疾患又は疾患の1又は複数の症状の完全な予防を意味するだけではなく、疾患の早期発症前又は早期発症時の疾患の影響を部分的又は実質的に予防、減衰、低減、減少又は縮小することをも意味する。
【0037】
「処置」という用語は、疾患発症後の病理発生の減衰、低減、減少又は縮小を含む、疾患の進行に対する任意の有益な効果を意味する。
【0038】
本発明との関連で、CD164は膜貫通受容体として解されるべきものとする。用語「sCD164」又は「可溶性CD164」は、CD164の可溶性部分、特にCD164の細胞外ドメインの任意の部分を意味する。
【0039】
用語「sCD164変異体」は、CD164のスプライス変異体又はイソ型、であって、天然であるか人工的に生成したもの、特に図2の表で列記した特定のもの、例えばsCD164の融合タンパク質、を指す一般的用語として解されるべきである。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「ムテイン」は、sCD164変異体のアナログであって、本発明のsCD164変異体の1又は複数のアミノ酸残基が異なるアミノ酸残基で置換されているか、又は欠失しているか、あるいは1又は複数のアミノ酸残基がsCD164変異体の天然配列に付加されており、これが当初のsCD164変異体と比較して生じた生成物の活性に対し負の影響を多大には及ぼさないもの、を指す。これらのムテインは、例えば、既知の合成法及び/又は部位指定突然変異技術、又はそれに適した任意な他の既知の技術によって調製することもできる。
【0041】
本発明に従い使用することができるsCD164変異体のムテイン、又はムテインをコードする核酸には、本明細書に提示した技術及び手引きを基に、過度の実験を行うことなく、当業者がルーチンに得ることができる置換ペプチド又はポリヌクレオチドとしての、実質的に対応する配列の有限集合が含まれる。
【0042】
本発明のsCD164変異体のムテインには、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18の配列を有するポリペプチドであって、シグナル配列、例えば、配列番号17のアミノ酸1〜23に相当するヒトCD164のシグナル配列を任意に更に含んで成り、当該アミノ酸配列が少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を前記配列の少なくとも1つに対して有するもの、が含まれる。
【0043】
既知のコンピュータープログラムを使用することで、任意の特定のポリペプチドがsCD164変異体に対し同一(又は相同)(%)であるか否かを決定することができる。このようなアルゴリズム及びプログラムには、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTA及びCLUSTALW(Pearson及びLipman、(1988)Proc Natl Acad Sci USA 85(8):2444-8; Altschul他(1990)、J Mol Biol 215(3):403-410;Thompson他(1994)、Nucleic Acids Res 22(2):4673-4680; Higgins他(1996) Meth Enzymol 266:383-402; Altschul他(1997) Nuc Acids Res 25:3389-3402; Altschul他(1993) Nature Genetics 3:266-272)が含まれる。タンパク質及び核酸の配列相同性は、当業界で周知のベーシック・ローカル・アラインメント・サーチ・ツール(「BLAST」)を用いて評価される(例えばKarlin及びAltschul(1990) Proc Natl Acad Sci USA 87(6):2264-8;Altschul他、1990, 1993, 1997を参照のこと)。
【0044】
BLASTプログラムは、クエリー・アミノ酸又は核酸配列と、好ましくはタンパク質又は核酸配列データベースから得られる試験配列との間の、本明細書中で「高スコアリング・セグメントペア」と呼ばれる類似セグメントを同定することにより、相同配列を同定する。高スコアリング・セグメントペアは好ましくは、スコアリング・マトリックスによって同定(すなわちアラインメント)される。スコアリング・マトリックスの多くが当業者に知られている。好ましくは、使用されるスコアリング・マトリックスは、BLOSUM62マトリックスである(Gonnet他、(1992) Science 256(5062):1443-5; Henikoff及びHenikoff(1993) Proteins 17(1):49-61参照)。余り好ましくはないが、PAM又はPAM250マトリックスを使用することもできる(例えばSchwartz及びDayhoff編(1978) Matrices for Detecting Distance Relationships: Atlas of Protein Sequence and Structure, Washington: National Biomedical Research Foundation参照)。BLASTプログラムは、同定された全ての高スコアリング・セグメントペアの統計的有意性を評価し、そして好ましくはユーザー指定有意性閾値、例えばユーザー指定パーセント相同性を満たすセグメントを選択する。好ましくは、高スコアリング・セグメントペアの統計的有意性は、Karlinの統計的有意性の式を用いて評価される(例えばKarlin及びAltschul(1990) Proc Natl Acad Sci USA 87(6):2264-8参照)。BLASTプログラムは、デフォルト・パラメーター又はユーザーによって提供された改変パラメーターと共に使用することができる。
【0045】
グローバル配列アラインメントとも呼ばれる、クエリー配列(本発明の配列)と対象配列との間の最良の全体的マッチを決定する好ましい方法は、Brutlag他(1990) Comp. App. Biosci. 6:237-245のアルゴリズムに基づいてFASTDBコンピュータ・プログラムを使用して行うことができる。配列アラインメントにおいて、クエリー配列及び対象配列は両方ともアミノ酸配列である。前記グローバル配列アラインメントの結果はパーセント同一性で表される。FASTDBアミノ酸アラインメントにおいて使用される好ましいパラメーターは:マトリックス=PAM 0、k-タプル=2、ミスマッチ・ペナルティ=1、ジョイニング・ペナルティ=20、ランダム化グループ=25、長さ=0、カットオフ・スコア=1、ウィンドウ・サイズ=配列長、ギャップ・ペナルティ=5、ギャップ・サイズ・ペナルティ=0.05、ウィンドウ・サイズ=247又は対象アミノ酸配列長のいずれか短い方である。
【0046】
対象配列が、内部欠失ではなくN末端又はC末端の欠失により、クエリー配列よりも短い場合、FASTDBプログラムはグローバル・パーセント同一性を計算するときに対象配列のN末端及びC末端の切断を考慮しないため、パーセント同一性で表される結果は人の手により補正されなければならない。クエリー配列に対して、N末端及びC末端で切断された対象配列の場合、同一性(%)は、対応対象残基とマッチング/アラインメントされない、対象配列のN末端及びC末端であるクエリー配列の残基の数を、クエリー配列の総塩基のパーセントとして計算することにより、補正される。残基がマッチング/アラインメントされるかどうかは、FASTDB配列アラインメントの結果によって見極められる。次いでこのパーセンテージを同一性(%)から差し引き、指定パラメーターを使用して上記FASTDBプログラムによって計算することにより、最終パーセント同一性スコアに達する。この最終パーセント同一性スコアは、本発明の目的に使用されるものである。クエリー配列とマッチング/アラインメントされない対象配列のN末端及びC末端寄りの残基だけ、すなわち対象配列の最も遠いN末端及びC末端の外側のクエリーアミノ酸残基だけが、パーセント同一性スコアを人の手で調節する目的で考慮される。
【0047】
例えば、90アミノ酸残基の対象配列を100残基のクエリー配列とアラインメントすることにより、パーセント同一性を見極める。欠失は対象配列のN末端で発生し、従ってFASTDBアラインメントは、N末端で第1残基とマッチング/アラインメントしない。10個の不対残基は配列の10%(マッチングされないN及びC末端における残基の数/クエリー配列内の総残基数)なので、FASTDBプログラムによって計算されたパーセント同一性スコアから10%を差し引く。残る90残基が完全にマッチングされるのならば、最終パーセント同一性は90%になる。
【0048】
本発明によるムテインにとって好ましい変化は、「保存的」置換として知られているものである。sCD164変異体の保存的アミノ酸置換には、グループのメンバー間の置換がその分子の生物機能を保存することになる十分に類似した物理化学的特性を有するグループ内の同義アミノ酸を含めることができる(Grantham、1974年)。アミノ酸の挿入および欠失はまた、具体的にはそれら挿入および欠失が少数、例えば30個未満、好ましくは10個未満のアミノ酸とのみ関係していて機能コンホメーションにとって重要なアミノ酸、例えばシステイン残基を除去または置換しない場合には、それらの機能を変えることなく上文で規定するような配列中で実施することができることは明らかである。このような欠失および/または挿入により生成したタンパク質およびムテインは、本発明の範囲内にある。
【0049】
好ましくは、この同義アミノ酸グループは表I中で規定されるものである。より好ましくはこの同義アミノ酸グループは表II中で規定されるものであり、最も好ましくはこの同義アミノ酸グループは表III中で規定されるものである。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
本発明において使用するための、sCD164変異体、ポリペプチド又はタンパク質のムテインを得るために使用することができるタンパク質にアミノ酸置換をもたらす例として、任意な既知の方法の工程、例えば米国特許第4,959,314号、第4,588,585号及び第4,737,462号(Mark et al);第5,116,943号(Koths et al.)、第4,965,195号(Namen et al);第4,879,111号(Chong et al);及び第5,017,691号(Lee et al);において提示されているもの;並びに米国特許第4,904,584号(Shaw et al)において提示されているリジン置換タンパク質、が含まれる。
【0054】
用語「融合タンパク質」とは、sCD164変異体を含んで成るポリペプチド、あるいはそのムテイン又はフラグメントであって、別のタンパク質、例えば体液中で長期の滞留時間を有するタンパク質と融合したもの、を指す。従って、sCD164変異体は、別のタンパク質、ポリペプチド等、例えばイムノグロブリン又はそのフラグメントと融合されうる。
【0055】
「機能的誘導体」は、本明細書で使用する場合、sCD164変異体の誘導体をカバーしており、これらは当業界で知られている手段により残基上の側鎖として生じる官能基から調製してもよく、そしてそれらが医薬としての許容性を維持する限り、すなわち、それらが当該タンパク質の活性であって、未修飾のsCD164変異体の活性と実質的に同じか、又はそれより優れている活性を破壊せず、そしてそれを含む組成物に毒性を賦与しない限り、本発明に含まれる。
【0056】
好ましい態様において、機能的誘導体は、1又は複数の官能基に結合した少なくとも1つの部分を含んで成り、これはアミノ酸残基上の1又は複数の側鎖として生じる。前記部分は、好ましくはポリエチレングリコール側鎖を含み、これは抗原性部位をマスクして体液中のsCD164変異体の滞留時間を延ばすことを可能とする。
【0057】
他の誘導体には、カルボキシル基の脂肪族エステル、あるいは、アンモニアと、又は第一級若しくは第二級アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル部分(例えばアルカノイル又は炭素環式アロイル基)あるいはアシル部分により形成した遊離ヒドロキシル基(例えば、セリル又はスレオニル残基のO−アシル誘導体、が含まれる。
【0058】
sCD164変異体の「活性画分」として、本発明は、前記タンパク質単独のポリペプチド鎖の任意なフラグメント又は前駆体、あるいはこれらと、会合分子又はそれらと連結する残基、例えば糖又はリン酸残基、あるいはタンパク質分子又は糖残基自身の凝集物とが一緒になったものをカバーし、但し、前記フラグメントは当初のsCD164変異体と比較した場合、実質的に活性が損なわれてはいない。
【0059】
用語「塩」は、本明細書ではsCD164変異体のカルボキシル基の塩と、アミノ基の酸付加塩の両方を指す。カルボキシル基の塩は、当業者に知られた手段によって形成することができ、そして、無機塩、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、第二鉄塩又は亜鉛塩など、及び例えばアミン、例えばトリエタノールアミン、アルギニン又はリジン、ピペリジン、及びプロカインなどと一緒に形成されたような有機塩基との塩を含む。酸付加塩は、例えば鉱酸、例えば塩酸又は硫酸を有する塩、及び有機酸、例えば酢酸又はシュウ酸を有する塩を含む。当然ながら、そのような塩はみな本発明に関連するsCD164変異体の生体活性を保持しなければならない。
【0060】
任意のCD164変異体、そのムテイン、イソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分の生体活性は、例えば、以下の実施例2に記載のような細胞ベースのアッセイで試験することができる。sCD164変異体は、例えば、それがコンカナバリンA刺激抹消血単核球における少なくとも1つのサイトカイン(例えばTNFα、IFN−γ、IL−2、IL−4、IL−5、又はIL−10から選択されるもの)の放出を阻害する場合に、活性とみなすことができる。当初(未修飾)のsCD164変異体、又は配列番号15のsCD164は、例えば、比較として使用することができ、そしてsCD164変異体の任意のイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分は、原初のsCD164変異体又はsCD164変異体の少なくとも75%のEmax、及び原初のsCD164変異体について算出した値のわずかに10倍のEC50値を有するはずである。
【0061】
好ましい態様において、sCD164変異体の翻訳後修飾は、炎症及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防のための医薬の製造のために使用することができる。好ましくは、これらのタンパク質は、グリコシル化、リン酸化、及び/又はミリストイル化することができる。
【0062】
ヒトCD164の天然の細胞外ドメインは、修飾されることが知られており、例えば、配列番号の以下の位置で修飾される:
a)潜在的なNグリコシル化部位は残基3、9、18、49、54、71、81、98及び123に位置している;
b)潜在的なOグリコシル化部位は、残基11、12、17、20、21、25、26、31、32、89、90、92、96、99、100、104、108、110、111、112、113、115、117、118、119、121、122、125、127、129、130、136に位置している;
c)潜在的なcAMP−及びcGMP−依存プロテインキナーゼリン酸化部位は残基134〜137に位置している;
d)潜在的なプロテインキナーゼCのリン酸化部位は、残基100〜102及び112〜114に位置している;
e)潜在的なカゼインキナーゼIIのリン酸化部位は、残基73〜76及び136〜139に位置している;
f)CD164における潜在的なNミリストイル化部位は残基119に位置している。
【0063】
同様の修飾は、本発明のsCD164変異体の相当のアミノ酸位置において実施されることがある。図1に表されているアラインメントは、相当のアミノ酸位置の決定を容易にするものである。
【0064】
被験者に投与した場合のsCD164変異体の安定性を向上させるための方法として、他のタンパク質から単離したドメインを融合することでダイマー、トリマー等の形成を可能にすることで前記タンパク質ののマルチマーを生成させることである。本発明のポリペプチドの多量体化を可能にするタンパク質配列の例には、タンパク質から単離したドメイン、例えばhCG(WO97/30161、コラーゲンX(WO04/33486)、C4BP(WO04/20639)、Erbタンパク質(WO98/02540)、又はコイルドコイルペプチド(WO01/00814)がある。
【0065】
本発明の好ましい態様において、sCD164変異体の融合タンパク質は、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の一部を含んで成る。
【0066】
更に好ましい態様において、sCD164変異体は、イムノグロブリン融合体を含んで成り、すなわちsCD164変異体は、イムノグロブリンの全部又は一部と融合しているsCD164変異体の全部又は一部を含んで成る融合タンパク質である。かかる融合タンパク質の例は、ヒトイムノグロブリンタンパク質の定常/Fc領域によって表される。治療タンパク質及びイムノグロブリンを含んで成る融合タンパク質を生成させる、異なるストラテジーが知られている(WO91/08298;WO96/08570;WO93/22332;WO04/085478;WO01/03737、WO02/66514)。例えば、sCD164変異体をコードする核酸配列は、sCD164変異体のシグナル配列(又はそれ以外の任意の適切なシグナル/輸出配列)をその5’末端にコードしている核酸配列、あるいはヒトイムノグロブリンのλ重鎖IgG1の定常領域をコードしている核酸(NCBI Acc.No.CAA75302;セグメント246−477)をその3’末端にコードしている核酸配列、と融合した発現ベクター内にクローニングすることができる(その逆も同様である)。生じたベクターを使用して、CHO又はHEK293宿主細胞系を形質転換することができ、そして安定して発現するクローンであって、sCD164変異体をN末端に有するとともに、C末端にIgG1配列を有する組換え融合タンパク質を分泌するするクローンを選択することができる。このクローンは、産生をスケールアップし、そして培養液由来の組換え融合タンパク質を培養液を精製するために使用することができる。あるいは、ヒトイムノグロブリンλ重鎖IgG1の定常領域及びsCD164変異体をコードする核酸の位置は反転することができ、そして生じたタンパク質は発現し、そして適切なシグナル/輸出配列を用いることで分泌させることができる。
【0067】
sCD164変異体とIg部分との融合は直接的であってもよく、あるいは、1〜3アミノ酸残基ほどの短い長さか、又はより長い、例えば13アミノ酸残基の長さのショートリンカーペプチドを介してもよい。前記リンカーは、例えば、配列E−F−M(Glu−Phe−Met)のトリペプチドでもよく、あるいはGlu−Phe−Gly−Ala−Gly−Leu−Val−Leu−Val−Leu−Gly−Gly−Gln−Phe−Metを含んで成る13アミノ酸のリンカーであってもよく、これはsCD164変異体配列とイムノグロブリン配列との間に導入されている。生じた融合タンパク質は好ましくは、例えば体液中での長期の滞留時間(半減期)、比活性の増大、発現レベルの増大、又は融合タンパク質の精製が容易であるなどの向上した特性を有している。
【0068】
好ましい態様において、sCD164変異体は、Ig分子の定常領域と融合している。好ましくは、重鎖領域と融合しており、例えばヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインのような重鎖領域である。Ig分子の他のイソ型も本発明の融合タンパク質の生成に適しており、例えばイソ型IgG2又はIgG4、あるいは他のIgクラス、例えばIgM又はIgAが挙げられる。融合タンパク質はモノマー又はマルチマー、ヘテロ−又はホモマルチマーであってもよい。追加のアミノ酸置換は、Ig融合タンパク質のFc部分に対し、例えばFc受容体に対する結合を低下させる目的で、又は他の不所望な特性を低下させる目的で実施してもよい。sCD164−Fc変異体の一例として、配列番号16のタンパク質がある。Fc部分が変異したsCD164−Fc変異体の一例にはsCD164−Fcm(配列番号18)がある。
【0069】
本発明の更なる観点は、炎症及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防のための薬物の製造のためのsCD164変異体をコードするポリヌクレオチドの使用に関するものであり、当該sCD164変異体は:
a. 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
b. シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
c. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
d. (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
e. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
f. (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される。
【0070】
本発明により処置又は予防されうる炎症及び/又は自己免疫疾患は、任意の炎症又は自己免疫疾患又は症状であってもよく、そして好ましくは、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、若年性突発性関節炎、乾癬性関節炎、骨関節炎、脊椎関節症、炎症性大腸炎、内毒素血、クローン病、スティル病、ブドウ膜炎、ヴェグナー肉芽腫、ベーチェット病、強皮症、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、壊疽性膿皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、心筋炎、乾癬、全身性硬化、C型肝炎、アレルギー、アレルギー性炎、アレルギー性気道炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腸間膜梗塞、卒中、潰瘍性結腸炎、アレルギー喘息、気管支喘息、腸間膜梗塞、卒中、線維症、虚血後の筋肉、腎臓及び心臓の炎症、皮膚炎、糸球体腎炎、若年発症I型糖尿病、過敏症症候群、ウィルス性又は急性肝臓疾患、アルコール性肝不全、結核、敗血性ショック、HIV感染、移植片対宿主病(GVHD)、及びアテローム性動脈硬化から選択される。
【0071】
本発明が包含する皮膚炎症関連障害は、乾癬、アトピー性皮膚炎、皮膚の焼けるような痛み及び皮膚炎でありうる。皮膚炎症関連障害は、接触過敏症障害、例えば接触性皮膚炎であって、急性又は慢性の炎症が皮膚に接触する物質によって生じ、そして毒性(刺激)又はアレルギー反応を生じさせるものであってもよく、これらも本発明に含まれる。
【0072】
肝炎は、特定の肝炎ウイルス、アルコール、薬物、毒素又は寄生虫によって通常生じる肝臓の炎症である。急性ウイルス性肝炎は、特定の肝親和性(hepatotoropic)ウイルス(A、B、C、D、E及びG型肝炎ウイルス)によって生じる瀰漫性肝炎である。慢性肝炎は、急性肝炎と肝硬変との間のあらゆる障害を包含している。
【0073】
潰瘍性結腸炎は、大腸(結腸)の慢性炎症である。潰瘍性結腸炎を有する患者において、結腸の内層の潰瘍及び炎症は、腹痛、下痢及び直腸出血の症候を引き起こす。潰瘍性結腸炎はクローン病と称される腸の別の炎症状態と密接に関連している。また、それらはしばしば炎症性腸疾患(IBD)とも称される。潰瘍性結腸炎及びクローン病は、何十年にもわたって続くことがある慢性症状である。
【0074】
関節炎は、関節の炎症を包含する疾患である。当該関節は、腫脹、凝り、圧痛、発赤及び熱を示す。関節症状は、減量、発熱又は衰弱を伴うことがある。これらの症候が2週間以上続く場合、関節リウマチのような関節炎が原因の場合がある。関節炎はまた、敗血症性関節炎をもたらしうる感染によっても生じることがある。非常に一般的なタイプの関節炎は、変形性関節疾患(変形性関節症)である。関節炎は変形性関節症の顕著な特徴ではない。
【0075】
本発明の更なる観点は:
a. 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
b. シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
c. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
d. (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
e. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
f. (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択されるsCD164変異体に関する。
【0076】
更なる観点において、本発明は、本発明のsCD164変異体をコードするポリヌクレオチド配列に関する。当該ポリヌクレオチドは、例えばベクター、例えば発現ベクター内に存在することがある。本発明のsCD164変異体をコードするポリヌクレオチド配列は、従って、炎症及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防のための薬物の製造に使用することができる。これらのポリヌクレオチドはまた、組換えsCD164変異体を発現するヒト以外の動物及び植物の産生に使用することもできる。当該動物又は植物はトランスジェニックであってもよく、すなわち、それらの細胞はそれぞれsCD164変異体をコードする遺伝子を含み、あるいは、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、動物又は植物の体細胞内に、例えば哺乳類の乳腺分泌細胞内に導入することができる。好ましい態様において、ヒト以外の動物とは、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、又はウサギなどの哺乳類である。トランスジェニック動物、例えば哺乳類を作る方法は当業者にとって周知であり、そしてあらゆるそのような方法を本発明に使用することができる。更に、組換え可溶性ポリペプタンパク質ポリペプチドをミルク中に分泌することができるトランスジェニック哺乳類を作ることもできる。典型的には、コードポリペプチドは、前記タンパク質をミルク中に分泌することを保証するためのシグナル配列を含む。
【0077】
本発明のsCD164変異体をコードするポリヌクレオチドは、in vitro及びin vivoで利用するための組成物又は医薬組成物に調製することもできる。ポリペプチドは、「裸」のポリヌクレオチドとして投与することもできる(WO90/11092;WO95/11307;Tascon et al., 1996を参照のこと)。裸のポリヌクレオチドを細胞に伝達することは、微粒子銃(バイオリスティック)を用いて行ってもよく、前記粒子はDNAコーティングしたマイクロプロジェクタイルであり、それらは細胞膜を貫通して、細胞を殺すことなく細胞に進入するほど高速に加速され、例えばこれらはKlein et al. 1990で説明されている。更なる態様において、本発明のポリヌクレオチドは、リポソーム内で捕捉することができる(Ghosh及びBacchawat, (1991) Targeted Diagn Ther 4:87-103; Wong et al. (1980) Gene 10:87-94; Nicolau et al. (1987) Methods Enzymol 149:157-76)。これらのリポソームはさらに、リポソーム膜内にレプチン、トリグリセリド、アフィポネクチン(afiponectin)又はその他の既知のLSRリガンドを組み込むことにより、LSRを発現させる細胞にターゲティングすることができる。所望の宿主細胞に注射することができるベクターの量は、注射部位によって変化する。指標となる量として、動物、好ましくは哺乳類、例えばマウスの体内に0.1〜100μgのベクターが注射される。当該ベクターはまた、in vitroで哺乳類細胞、好ましくは処置される動物から予め採集した宿主細胞、更に好ましくは体細胞、例えば筋肉細胞に導入することができる。次の段階において、所望とするsCD164ポリペプチド又は所望とするそのフラグメントをコードするベクターで形質転換した細胞は、組換えタンパク質を局所的又は全身的に体内に送達するために、動物の体内に再導入される。
【0078】
in vivoでの投与のために、ポリヌクレオチドは、任意の適当な処方で、任意の範囲の濃度(例えば1〜500μg/ml、好ましくは50〜100μg/ml)で、任意の容積(例えば1〜100ml、好ましくは1〜20ml)で投与することができ、そして任意の回数(例えば、1、2、3、5、10回)で、任意の頻度(例えば1、2、3、5、10毎、又は任意の日数)で投与することができる。適当な濃度、頻度、投与形態等は、特定のポリヌクレオチド、ベクター、動物等に依存し、そして当業者が容易に決定できるものである。
【0079】
通常、本発明のsCD164変異体は、組換えDNA関連技術及び化学合成技術などの当業界で知られている任意の手順によって調製することができる。
【0080】
組換えDNA関連技術は、sCD164変異体をコードするポリヌクレオチドを最初に生成させることで、当該変異体の産生を可能にする。これらの核酸は、ゲノムDNA、又はヒトCD164の完全配列(配列番号17)又は他のあらゆる関連の相同配列を含むベクターからPCRによって得ることができる。所望の配列と相補的なオリゴヌクレオチドプライマーは、その後のクローニングのために特定の制限エンドヌクレアーゼによる消化を可能にする制限エンドヌクレアーゼ配列を含んでおり、これは、可溶性タンパク質をコードする配列がポリAシグナル及び残りのその他の配列に関して適切に発現プラスミド内に配置されることを保証するように注意して含まれる。
【0081】
一般的な遺伝子組換え技術を用いることで、これらのポリヌクレオチドは、原核又は真核宿主細胞を形質転換するのに使用するウイルス又はプラスミド起源の複製可能な発現ベクター内に、エピソームベクター又は非相同/相同組換えベクター、並びに形質転換−、感染−、沈殿−、又はトランスフェクション−ベースの技術を用いてクローニングすることができる。これらのベクターは、原核又は真核宿主細胞における組換えタンパク質の発現を、それら自身の転写開始/終結制御配列であって、前記細胞内で構成的に活性であり、誘導可能であるように選択される配列の制御下で可能にする。実質的にかかる細胞に富んでいる細胞系は、注目のタンパク質を発現する安定な細胞系を単離することで提供することができる。
【0082】
多くの書籍及び概説は、ベクター及び原核又は真核宿主細胞を用いてどのように組換えタンパク質をクローニングし、そして産生するかについての教示を提供しており、例えばOxford University Pressによって発行されたシリーズ「A Practical Approach」におけるいくつかの表題(「DNA Cloning 2:Expression Systems」1995; 「DNA Cloning 4: Mammalian Systems」1996; 「Protein Expression」1999;「Protein Purification Techniques」2001)によって提供されている。
【0083】
典型的な発現ベクターは下記のもの:
a)DNAコード配列、及び
b)発現カセット;
を含んで成り、ここで、前記配列(a)は、配列(b)に含まれる組織特異的又は構成的プロモーターと作用可能に関連している。
【0084】
発現ベクターは、当業者に知られた哺乳動物、酵母、昆虫又は細菌発現系のいずれかである。商業的に入手可能なベクター及び発現システムは、Genetics Institute(Cambridge, MA)、Stratagene(La Jolla, California)、Promega(Madison, Wisconsin)、及びInvitrogen (San Diego, California)を含む種々の供給元から入手可能である。所望の場合には、発現を向上させ、そして適正なタンパク質の折り畳みを容易にするために、配列のコドン構成及びコドン対合を、発現ベクターが導入される特定の発現生物に関して最適化することができる(米国特許第5,082,767号明細書;Gustafsson C et al., 2004)。
【0085】
一般に、組換え発現ベクターは、複製起点、宿主細胞の形質転換を可能にする選択マーカー、及び下流構造配列の転写を導くための高発現遺伝子由来のプロモーターを含むことになる。異種構造配列は適切なフェーズで翻訳の開始及び終止配列、及び好ましくは翻訳されたタンパク質の細胞膜周辺腔は細胞外媒質内への分泌を導くことができるリーダー配列とで構成される。ベクターが、哺乳動物宿主細胞内の所望の配列をトランスフェクションして発現させるように適合されている特定の実施態様の場合、好ましいベクターは、所望の宿主内の複製起点、好適なプロモーター及びエンハンサー、及び所要のリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライシング・ドナー及びアクセプター部位、転写終止配列、及び5'-フランキング非転写配列を含むことになる。SV40ウィルス・ゲノム由来のDNA配列、例えばSV40起源、初期プロモーター、エンハンサー、スプライシング及びポリアデニル化部位を使用することにより、所要の非転写遺伝因子を提供することができる。
【0086】
本発明の発現ベクターにおいて使用される好適なプロモーター領域は、異種遺伝子が発現される細胞宿主を考慮して選択される。当該核酸配列の発現を制御するために採用された特定のプロモーターは、ターゲットされる細胞内の核酸の発現を導くことができる限り、重要であるとは考えられない。従って、ヒト細胞がターゲティングされる場合、ヒト細胞内で発現されることが可能なプロモーターに隣接して、このプロモーターの制御下に核酸コード領域を位置決めすることが好ましい。このプロモーターは例えばヒト・プロモーター又はウィルス・プロモーターである。使用されるプロモーターは構成的又は誘導的であってよい。
【0087】
好適なプロモーターは、これが発現を制御する核酸に対して異種であってよく、或いは、発現されるべきコード配列を含有する天然型ポリヌクレオチドに対して内因性であってもよい。加えて、プロモーターは、コンストラクトプロモーター/コード配列が挿入されている組換えベクター配列に対して一般に異種のものである。
【0088】
例えばCAT(クロラムフェニコール・トランスフェラーゼ)ベクター及びより好ましくはpKK232−8及びpCM7ベクターを使用して、任意の所望の遺伝子から、プロモーター領域を選択することができる。好ましい細菌プロモーターはLacI、LacZ、T3又はT7バクテリオファージRNAポリメラーゼ・プロモーター、gpt、ラムダPR、PL及びtrpプロモーター(欧州特許第0036776号)、ポリヘドリン・プロモーター、又はバキュロウィルスに由来するp10タンパク質プロモーター(Kit Novagen)(Smith他(1983) Mol Cell Biol 3(12):2156-65; O'Reilly他、1992)、ラムダPRプロモーター又はtrcプロモーターである。真核細胞プロモーターは、CMV前初期HSVチミジン・キナーゼ、初期及び後期SV40、レトロウィルス由来LTR、及びマウス・メタロチオネイン−Lを含む。加えて、特定の細胞タイプに対して特異的なプロモーター、例えば脂肪組織、筋肉組織又は肝臓における発現を容易にするプロモーターを選択することもできる。好都合なベクター及びプロモーターの選択は、当業者の技術レベルに十分に含まれる。
【0089】
cDNAインサートを使用する場合、当業者は、典型的には、遺伝子転写物を適正にポリアデニル化するためのポリアデニル化シグナルを含めることを望む。ポリアデニル化シグナルの性質は、本発明の実施の成功にとって重要であるとは考えられず、そしてこのような任意の配列、例えばヒト成長ホルモン及びSV40ポリアデニル化シグナルを採用することができる。また、発現カセットの要素として、ターミネーターも考えられる。これらの要素は、メッセージ・レベルを高め、そしてカセットからその他の配列内へのリードスルーを最小化するのに役立つことができる。
【0090】
ベクターは、追加の非コード配列を含有することもできる。これらの配列の一例としては、非コード5'及び3'配列、ベクター配列、精製、プローブ又はプライミングのために使用される配列が挙げられる。例えば、異種配列は、転写、及びmRNAプロセシング、例えばリボソーム結合及びmRNAの安定性において役割を演じることができる転写型、非翻訳型配列を含む。
【0091】
選択マーカーは、発現コンストラクトを含有する細胞の容易な同定を可能にする細胞に、同定可能な変化をもたらす。形質転換された宿主細胞を選択するための選択マーカー遺伝子は、好ましくはジヒドロ葉酸レダクターゼ又は真核細胞培養に対するネオマイシン抵抗性、S.セレビシアエ(cerevisiae)のためのTRP1、E.コリ(coli)におけるテトラサイクリン、リファンピシン又はアンピリジン耐性、又はマイコバクテリアのためのレバン・サッカラーゼであり、この後者のマーカーはネガティブ選択マーカーである。
【0092】
代表例ではあるが非限定的な一例として、細菌の使用のための有用な発現ベクターは、選択マーカー、及びpBR322(ATCC 37017)の遺伝因子を含む商業的に入手可能なプラスミドに由来する細菌複製起点を含むことができる。このような商業的ベクターの一例としては、pKK223−3(Pharmacia, Uppsala, Sweden)及びpGEM1(Promega Biotec, Madison, WI, USA)が挙げられる。
【0093】
その他の多数の好適なベクター、例えば下記細菌ベクターが当業者に知られており、そして商業的に入手可能である:pTrc-His, pET30-His, pQE70, pQE60, pQE-9(Qiagen), pbs, pD10, phagescript, psiX174, pbluescript SK, pbsks, pNH8A, pNH16A, pNH18A, pNH46A(Stratagene); ptrc99a, pKK223-3, pKK233-3, pDR540, pRIT5(Pharmacia); pWLNEO, pSV2CAT, pOG44, pXT1, pSG(Stratagene);pSVK3, pBPV, pMSG, pSVL(Pharmacia);pQE-30(QIAexpress)。
【0094】
ポリペプチドの発現に適したベクターは、昆虫細胞及び昆虫細胞系において播種することができるバキュロウィルス・ベクターである。具体的な好適な宿主ベクターは、pVL 1392/1393バキュロウィルス転移ベクター(Pharmingen)であり、このベクターは、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)に由来するSF9細胞系(ATCC番号CRL 1711)をトランスフェクションするのに使用される。別の好適なバキュロウィルス・ベクターは当業者に知られており、例えばFastBacHTである。バキュロウィルス発現系におけるAPM1球状ヘッド・ポリペプチドの発現に適したその他のベクターの一例としては、Chai他(1993; Biotechnol Appl Biochem. Dec;18(第3部):259-73);Vlasak他(1983; Eur J Biochem Sep 1; 135(1):123-6);及びLenhard他(1996; Gene Mar 9;169(2):187-90)によって記載されたものが挙げられる。
【0095】
ポリペプチドの発現に適した更なるベクターは、哺乳動物ベクターである。多数の好適なベクター系が当業者に知られており、これらのベクター系は例えばpcDNA4HisMax、pcDNA3.1Hygro-His及びpcDNA3.1Hygroである。
【0096】
ポリペプチドの発現に適した更なるベクターは、ウィルス・ベクター、例えばアデノウィルスに由来するベクターである。本発明による好ましいアデノウィルス・ベクターは、Feldman及びSteg 1996 並びにOhno et al., 1994によって記載されたベクターである。
【0097】
レトロウィルス・ベクター及びアデノ随伴ウィルス・ベクターは、in vivoの外因性ポリヌクレオチドを、具体的にはヒトを含む哺乳動物に伝達するために選択される組換え遺伝子送達系であることが一般に理解されている。これらのベクターは遺伝子を細胞内に効率的に送達するのを可能にし、伝達した核酸は、宿主の染色体DNA内に安定的に組み込まれる。
【0098】
ポリペプチドを発現させる別の可能性は、相同組換えによってゲノムの適切な遺伝子内に調節配列を導入し、ひいては調節配列と、発現の誘導が必要とされる遺伝子とを作用可能に連結させることにより、遺伝子を内因的に活性化することである(WO91/09955;WO02/10372)。
【0099】
宿主細胞は原核細胞又は真核細胞でもよい。好ましいのは真核宿主、例えば哺乳動物細胞、例えばヒト、サル、マウス及びチャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞である。なぜならばこれらの細胞は、正しい部位における正しい折り畳み又はグリコシル化を含む翻訳後修飾を、タンパク質分子に提供するからである。酵母細胞も、グリコシル化を含む翻訳後ペプチド修飾を行うことができる。酵母における所望のタンパク質の生成のために利用することができる強力なプロモーター配列及び高コピー数のプラスミドを利用する多数の組換えDNA法が存在する。酵母は、クローニングされた哺乳動物遺伝子生成物中のリーダー配列を認識し、リーダー配列を担持するペプチド(すなわちプレペプチド)を分泌する。
【0100】
可溶性タンパク質を発現させるためのレシピエントとして使用される好ましい宿主細胞は下記の通りである:
a)原核宿主細胞:エスケリッチャ・コリ(Escherichia coli)菌株(すなわち、DH5-α菌株)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、及びシュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトマイセス(Streptomyces)及びスタフィロコッカス(Staphylococcus)のような種に由来する菌株;
b)真核宿主細胞:HeLa細胞(ATCC番号CCL2; ATCC番号CCL2.1, ATCC番号CCL2.2)、Cv 1細胞(ATCC番号CCL70)、COS細胞(ATCC番号CRL1650;番号CRL1651)、Sf-9細胞(ATCC番号CRL1711)、C127細胞(ATCC番号CRL-1804)、3T3(ATCC番号CRL-6361)、CHO(ATCC番号CCL-61)、ヒト腎臓293(ATCC番号45504;番号CRL-1573)、BHK(ECACC番号84100501;番号84111301)、PLC細胞、HepG2、及びHep3B。
【0101】
真核宿主(例えば酵母、昆虫又は哺乳動物の細胞)の場合、宿主の性質に応じて、種々異なる転写調節配列及び翻訳調節配列を採用することができる。これらの配列は、ウィルス源、例えばアデノウィルス、ウシ乳頭腫ウィルス、又はシミアンウィルスなどに由来してよい。この場合、調節シグナルは、高レベルの発現を有する特定の遺伝子と関係する。その例は、ヘルペス・ウィルスのTKプロモーター、SV40初期プロモーター、酵母gal4遺伝子プロモーターなどである。抑制及び活性化を可能にする転写開始調節シグナルを選択することができるので、遺伝子の発現を調節することができる。導入されたDNAによって安定的に形質転換されている細胞は、発現ベクターを含有する宿主細胞の選択を可能にする1又は複数のマーカーを導入することによっても選択することができる。マーカーは、栄養要求性宿主、殺生剤、例えば抗生物質、又は重金属、例えば銅、などに光栄養を提供することもできる。選択マーカー遺伝子は、発現されるべきDNA遺伝子配列に直接的に連結するか、又は、同時トランスフェクションによって同じ細胞内に導入することができる。本発明のタンパク質の最適な合成のために、付加的な要素を必要とすることもできる。
【0102】
可溶性タンパク質をコードする核酸が、開始部位としての役割を果たすためのメチオニンを欠いている場合、常用の技術を用いて、核酸の第1コドンの次に、開始用メチオニンを導入することができる。同様に、sCD164ポリペプチドcDNAに由来するインサートがポリAシグナルを欠いている場合、この配列は、例えば、BglI及びSalI制限エンドヌクレアーゼ酵素を使用して、pSG5(Stratagene)からポリAシグナルをスプライシングし、そしてこれを哺乳動物発現ベクターpXT1(Stratagene)内に組み込むことにより、コンストラクトに加えることができる。pXT1はLTR及びモロニー・マウス白血病ウィルスに由来するgag遺伝子の一部である、コンストラクト内のLTRの位置は、効率的な安定したトランスフェクションを可能にする。ベクターは、単純ヘルペス・チミジン・キナーゼ・プロモーターと、選択可能ネオマイシン遺伝子とを含む。
【0103】
sCD164変異体は、例えば固相合成及び液相合成によって産生することもできる。固相合成として、例えば、合成されるべきペプチドのC末端に対応するアミノ酸は、有機溶剤中に不溶性の支持体に結合され、そして反応の交互反復によって、すなわち、アミノ基を有するアミノ酸と、適切な保護基で保護された側鎖官能基とがC末端からN末端へ順番に1つづつ縮合される一方の反応と、樹脂に結合されたアミノ酸、又はペプチドのアミノ基の保護基が放出される他方の反応との交互の反復によって、ペプチド鎖はこのように延長される。
【0104】
固相合成法は、使用する保護基のタイプに応じて、大きくtBoc法とFmoc法とに分類される。典型的に使用される保護基は、tBoc(t-ブトキシカルボニル)、Cl−Z(2-クロロベンジルオキシカルボニル)、Br−Z(2-ブロモベンジルオキシカルボニル)、Bzl(ベンジル)、Fmoc(9-フルオレニルメトキシカルボニル)、Mbh(4,4'-ジメトキシジベンズヒドリル)、Mtr(4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル)、Trt(トリチル)、Tos(トシル)、Z(ベンジルオキシカルボニル)、及びCl2−Bzl(2,6-ジクロロベンジル)をアミノ基用に;NO2(ニトロ)及びPmc(2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル)をグアニジノ基用に;そしてtBu(t-ブチル)をヒドロキシル用に含む。所望のペプチドの合成後、ペプチドは、脱保護反応を施され、固体支持体から切断される。このようなペプチド切断反応は、Boc法の場合にはフッ化水素又はトリフルオロメタンスルホン酸を用いて、またFmoc法の場合にはTFAを用いて行われる。本発明のタンパク質に匹敵する長さの全体的に合成のタンパク質が、文献において開示されている(Brown A et al., 1996; Muir, 2003; Casi, 2003)。
【0105】
可溶性タンパク質の化学合成は、非天然型アミノ酸を利用することによりタンパク質の構造及び機能の天然型の範囲を拡張するのを可能にする(Anthony-Cahill及びMagliery, 2002)。これらの分子は、可溶性タンパク質の配列及び/又は構造上でデザインすることにより、アミノ酸側鎖、アミノ酸キラリティ、及び/又はペプチド主鎖のレベルで化学的に修飾することができる残基を選択し、次いで、関連特性、例えば効能、精製し易さ、半減期を向上させることができる。含まれるべきアミノ酸に対する好ましい代わりの「同義」群は、表IIで定義するものである。これらの化合物を合成して開発する技術は、当業者によく知られている(Hruby, 2000; Golebiowski, 2001; Villain et al., 2001, 国際公開第02/10195号パンフレット)。in vitro及びin vivo双方の翻訳系を用いて、非天然型アミノ酸をタンパク質内に組み込んで、タンパク質構造及び機能を調査及び/又は改善する種々の方法も文献において開示されている(Dougherty, 2000)。
【0106】
本発明の更なる観点は、本発明のsCD164変異体と特異的に反応する抗体、あるいはそのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分に関する。
【0107】
抗体は、モノクローナル抗体又は合成抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス抗体若しくはキメラ抗体であってもよい。
【0108】
本発明はまた、sCD164変異体の製造方法であって、本発明の宿主細胞を前記sCD164変異体の発現にとって適当な条件下で培養する段階を含んで成る方法に関する。
【0109】
前記細胞は、特定の細胞型に適合した任意の細胞培養液中で培養することができる。宿主細胞が哺乳類細胞である場合、培地はウシ胎児血清を含んでもよく、あるいは、好ましくは無血清のものでもよい。無血清培地の例には、例えばDMEMが含まれ、これは任意にHam’s F12又はProCho5培地を含む。
【0110】
本発明の更なる観点において、sCD164変異体の産生方法は、宿主細胞の細胞培養上清からsCD164変異体を単離する段階を含んで成る。sCD164変異体が上清中に分泌されない場合、これは細胞からも単離されうる。
【0111】
好ましい態様において、産生方法は更にsCD164変異体を精製する段階を含んで成る。
【0112】
本発明に従い使用することができる合成又は組換え可溶性タンパク質の精製は、この目的について知られている方法のいずれか、すなわち、沈殿、クロマトグラフィ(アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィ、ホスフォセルロース・クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、アフィニティ・クロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイト・クロマトグラフィ及びレクチン・クロマトグラフィ)、電気泳動、分画抽出、塩分別、又は遠心分離などを伴う任意の常用な手順によって行うことができる。
【0113】
優先して使用されうる精製手順は、モノクローナル抗体、又は十分な親和性及び特異性で、標的タンパク質と結合する(直接sCD164変異体に対して、又は、それが融合タンパク質である場合には、異種の配列、例えばヒスチジンタグ又はIg部分)任意の他の化学基、を用いるアフィニティークロマトグラフィーである。結合基は、生成してからカラム内に含まれるゲルマトリックス上に固定される。前記タンパク質を含む純粋でない調製物はカラムを通過する。可溶性タンパク質は親和力によってカラムと結合し、一方、不純物は通過することになる。残りの不純物を洗い流した後、pH又はイオン強度を変化させることによって、可溶性タンパク質をゲルから溶離することができる。或いは、HPLC(高性能液体クロマトグラフィ)を用いることもできる。溶離は、タンパク質精製のために一般に採用される水-アセトニトリル系溶剤を用いて行うことができる。
【0114】
好ましい態様において、本発明は、sCD164変異体を医薬組成物に製剤化する段階を更に含んで成る生産方法、及び本発明のsCD164変異体を含んで成る組成物又は医薬組成物、に関する。
【0115】
更なる観点において、本発明は、sCD164変異体、ムテイン、イソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分を含んで成る組成物又は医薬組成物に関する。かかる組成物は、更に追加の活性化合物、例えば、免疫抑制剤又は抗炎症物質を、同時に、連続して、又は別々に使用するために含んで成ることがある。本発明のsCD164変異体と併用することができる化合物には、例えばインターフェロン、好ましくはインターフェロン−β、又はTNF−αアンタゴニスト、例えばTNF受容体p55又はp75の可溶性型であって、TBF結合タンパク質I及びII(TBP−1、TBP−2)として知られているもの、あるいはそれらの誘導体が含まれる。
【0116】
本発明の医薬組成物はまた、医薬として許容される任意の好適な担体、動物への投与に適した、最終的には助剤(例えば賦形剤、安定剤又は希釈剤)を含む生物学的に適合可能なビヒクル及び添加剤(例えば生理食塩水)を含有することもできる。これらの助剤は、活性化合物を処理して医薬として使用することができる調製物にするのを容易にする。医薬組成物を任意の許容される方法で調製することにより、投与形態のニーズを満たすことができる。例えば生体材料及び薬物送達のための他のポリマー、並びに特定の投与形態を有効にするための種々異なる技術及びモデルが、文献において開示されている(Cleland, 2001; Luo B及びPrestwich, 2001)。
【0117】
「医薬として許容される」とは、活性成分の生体活性の効果を妨害せず、しかも投与される宿主に対して毒性でない任意の担体を含むものとする。例えば、非経口投与の場合、上記活性成分は、ビヒクル、例えば生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン及びリンガー溶液中で注射するための単位剤形で調製することができる。
【0118】
活性成分の所望の血中濃度を確立するために、認められた任意の投与形態を用いることができ、またこの投与形態を当業者によって決定することができる。例えば投与は種々の非経口経路、例えば経皮、静脈内、硬膜外、局所、皮内、髄腔内、直接心室内、腹腔内、経皮(例えば徐放性製剤)、筋内、腹腔内、鼻腔内、肺内(吸入)、眼内、経口又は口内の経路によって行うことができる。非経口投与はボーラス注射によって、又は所定の時間にわたる漸次的な潅流によって行うことができる。その他の特に好ましい投与経路は、エアロゾル及びデポー製剤である。本発明の薬剤の徐放性製剤、具体的にはデポー剤が特に考えられる。
【0119】
非経口投与のための調製物は、滅菌水性又は非水性溶液、懸濁液、及びエマルジョンを含み、これらは、当業者に知られた助剤又は賦形剤を含有することができ、ルーチンな方法に従って調製することができる。加えて、好適な油性注射懸濁液として、活性化合物の懸濁液を投与することができる。好適な親油性溶剤又はビヒクルは、脂肪油、例えばごま油、又は合成脂肪酸エステル、例えばごま油、又は合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチル又はトリグリセリドを含む。懸濁液の粘度を高める物質を含有することができる水性注射懸濁液は例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/又はデキストランを含む。任意には、懸濁液は安定剤を含有することもできる。医薬組成物は、注射による投与に適した溶液を含み、また、約0.01〜99パーセント、好ましくは約20〜75パーセントの活性化合物を、賦形剤と一緒に含有する。直腸投与することができる組成物は坐剤を含む。
【0120】
非経口(例えば静脈内、皮下、筋内)投与の場合、活性タンパク質は、医薬として許容される非経口ビヒクル(例えば水、生理食塩水、デキストロース溶液)、及び等張性(例えばマニトール)又は化学安定性(例えば保存剤及び緩衝液)を維持する添加剤と組み合わされた溶液、懸濁液、エマルジョン又は凍結乾燥粉末として調製することができる。製剤は、一般に用いられる技術によって滅菌される。経粘膜投与の場合、浸透されるべきバリアに適した浸透剤が製剤中に使用される。このような浸透剤は当業者に概ね知られている。
【0121】
経口で摂取することができる医薬として又は生理学的に許容される調製物は、ゼラチンから形成された押込型カプセル、並びにゼラチン及び可塑剤、例えばグリセロール又はソルビトールから形成された軟質の密封カプセルを含む。押込型カプセルは、充填剤、例えばラクトース、バインダー、例えば澱粉、及び/又は滑剤、例えばタルク又はステアリン酸マグネシウム、及び任意には安定剤との混和物中に活性成分を含有することができる。軟質カプセルの場合、活性化合物は好適な液体、例えば脂肪油、液体パラフィン又は液体ポリエチレングリコール中に溶解又は懸濁させることができる。加えて安定剤を添加することができる。経口投与のための全ての製剤は、このような投与に適した量であるべきである。
【0122】
口腔投与の場合、組成物は、常用の様式で調製された錠剤又はトローチ剤の形態を成すことができる。吸入による投与の場合、本発明に従って使用するための化合物は、好適な気体推進剤、例えば二酸化炭素の使用とともに、圧縮パック又はネブライザーからエアロゾル噴霧の形態で好都合に送達される。圧縮型エアロゾルの場合、投与単位は、計量送達のための弁を設けることにより決定することができる。化合物と好適な粉末ベース、例えばラクトース又は澱粉との粉末混合物を含有する、吸入器又は通気器において使用するためのカプセル及びカートリッジ、例えばゼラチンを調製することができる。
【0123】
注射、例えばボーラス注射又は連続輸液による非経口投与のために、化合物を調製することができる。注射用製剤は、保存剤が添加された単位剤形、例えばアンプル又は多数回投与容器の形態で提供することができる。組成物は、水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンのような形態を成すことができ、そして、調製剤、例えば懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤を含有することができる。或いは、活性成分は、使用前に好適なビヒクル、例えば発熱物質なしの滅菌水で戻すための粉末又は凍結乾燥形態を成していてもよい。
【0124】
前述の製剤に加えて、化合物はデポー調製物として調製することもできる。このような長時間作用性製剤は、埋込み(例えば皮下又は筋内)によって、又は筋内注射によって投与することができる。こうして、例えば化合物は、好適な高分子又は疎水性材料(例えば許容される油中のエマルジョンとして)と、又はイオン交換樹脂と一緒に調製するか、又は控えめに可溶性の誘導体として、例えば難溶性の塩として調製することができる。或いは、化合物は、徐放システム、例えば治療薬を有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを使用して送達することもできる。種々の徐放性材料が確立されており、また当業者によってよく知られている。徐放性カプセルは、これらの化学的な性質に応じて、数週間から100日よりも長い期間にわたって化合物を放出することができる。
【0125】
言うまでもなく、投与量は、レシピエントの年齢、性別、健康状態および体重、もしあるならば並行して行われている治療の種類、治療の頻度、及び所望の効果の性質に依存することになる。投与量は、当業者によって理解されまた決定可能であるように、個々の患者に合わせて調整される。各治療に必要な総投与量は、多数回の投与又は単回投与によって投与することができる。本発明の医薬組成物は、単独で、又はその状態に対する、又はその状態のその他の症状に対するその他の治療との組み合わせにおいて投与することができる。通常、活性成分の一日投与量は、体重1キログラム当たり0.01〜100ミリグラム又はそれ以上から成る。通常、所望の結果を得るためには、1日1キログラム当たり1〜40ミリグラムを分割量で又は徐放形態で与えることが有効である。2回目又はその後の投与は、その個体に対する初回又は前回の投与量と同じか、またはこれよりも少ないか又は多い投与量で行うことができる。
【0126】
更なる観点において、本発明は、炎症及び/又は自己免疫疾患を処置及び/又は予防する方法であって、それを必要とする宿主に対し、有効量のsCD164変異体を登用する方法に関するものであり、当該sCD164変異体は:
a. 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
b. シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
c. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
d. (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
e. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
f. (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される。
【0127】
「有効量」とは、疾患の経過及び重症度に影響を与えるのに十分であって、このような病理の軽減又は緩和を招く量を意味する。有効量は投与経路及び患者の症状に依存する。
【0128】
組成物の投与量は、もちろん、処置される患者、患者の体重、病気の重症度、投与形態、及び処方する医師の判断に依存することになる。単回又は複数回で個体に投与される投与量は、薬物動態学的特性、投与経路、患者の状態及び特徴(性別、年齢、体重、健康状態、大きさ)、症状の程度、併用療法、治療頻度及び所望される効果を含む、種々のファクターに応じて変化する。
【0129】
本発明の物質は毎日又は一日おきに、より低い頻度で投与することができる。好ましくは、本発明の物質のうちの1又は複数が、1週間当たり1回、2回又は3回にわたって投与される。1日量は、所望の結果を得るのに効果的な、数回に分けた形態又は徐放形態で与えられる。2回目又はその後の投与は、その個体に対する初回又は前回の投与量と同じか、またはこれよりも少ないか又は多い投与量で行うことができる。2回目又は後続の投与は疾患発症中又は疾患発症前に行うことができる。
【0130】
本発明によれば、本発明の物質は、他の治療計画又は治療薬(多剤療法)の前、同時又は後に個体に予防的又は治療的に治療上有効な量で投与することができる。他の治療薬と同時に投与される活性物質を、同じ又は異なる組成物において投与することができる。
【0131】
本発明の方法で使用する任意のsCD164変異体について、治療上の有効量は細胞培養アッセイから最初に評価することができる。例えば、投与量を動物モデルにおいて定めることにより、循環濃度範囲を得ることができる。この循環濃度範囲は、in vitroにおいてサイトカイン発現を減少させることが示された濃度点又は濃度範囲を含む。このような情報を用いて、ヒトにおける有用な投与量をより正確に決定することができる。治療上有効な量は、患者の症状を改善する化合物量を意味する。このような化合物の毒性及び治療効力は、例えばLD50(試験個体群の50%を致死させる投与量)及びED50(個体群の50%において治療上効果的な投与量)を決定するための、細胞培養又は試験動物における標準的な薬学手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との投与量比は、治療指数であり、そしてLD50とED50との比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量範囲を定めるのに使用することができる。このような化合物の投与量は好ましくは、毒性がほとんど又は全くないED50を含む循環濃度範囲内にある。投与量は、採用される投与形態及び利用される投与経路に応じてこの範囲内で変化することができる。正確な製剤、投与経路及び投与量は、患者の状態に関して個々の医師によって選択することができる(例えばFingl et al., 1975, 「The Pharmacological Basis of Therapeutics」第1章を参照のこと)。
【0132】
本発明のsCD164変異体はまた、活性誘導体、タンパク質分解耐性修飾型、コンジュゲート、複合体、画分、前駆体、及び/又は塩として、製造、処方、投与することができ、あるいは炎症及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防のための医薬の製造に使用することができる。
【0133】
コンジュゲート又は複合体は、放射性標識、ビオチン、蛍光標識、細胞毒性薬、薬物送達薬の中から選択された分子と一緒に形成することができる。当業者に知られた分子及び方法を用いて、これらのコンジュゲート又は複合体を生成することにより、例えばその他のタンパク質(放射性又は蛍光標識、ビオチン)との相互作用の検出を可能にするか、又は治療効力を向上させるか(細胞毒性薬)、又はポリマー、例えばポリエチレングリコール及びその他の天然型又は合成型ポリマーを使用して薬物送達効力を向上させる(Pillai and Panchagnula, 2001)ことができる。
【0134】
ポリマーは任意の分子量を有していてよく、分枝型又は非分枝型であってよい。ポリエチレングリコールの場合、好ましい分子量は、取り扱い易さ及び製造のし易さのために、約1 kDa〜約100kDa(「約」という用語は、ポリエチレングリコールの調製の際に、分子によっては、言及された分子量よりも多いか又は少ないことを示す)である。所望の治療プロフィール(例えば所望される徐放継続期間、生体活性に対して効果がある場合にはそれらの効果、取り扱い易さ、治療タンパク質又は類似体に対するポリエチレングリコールの抗原性及びその他の既知の効果の度合い又は欠乏)に応じて、他のサイズを用いることができる。
【0135】
ポリエチレングリコール分子(又はその他の化学部分)は、ポリペプチドの機能ドメイン又は抗原ドメインに対する効果を考慮しつつ、ポリペプチドに結合されるべきである。当業者にとって利用可能な多数の結合方法、例えば欧州特許0 401 384号明細書(本明細書中に参考のため引用する(PEGとG−CSFとのカップリング))。また、塩化トレシルを使用してGM−CSFのペグ化を報告するMalik et al (1992) Exp Hematol 20(8):1028-35を参照されたい。例えば、ポリエチレングリコールは、反応性基、例えば遊離アミノ基又は遊離カルボキシル基を介して、アミノ酸残基を通して共有結合することができる。反応性基は、活性化されたポリエチレングリコール分子が結合され得る基である。遊離アミノ基を有するアミノ酸残基は、リジン残基及びN末端アミノ酸残基を含んでよく、遊離カルボキシル基を有するアミノ酸残基は、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基及びC末端アミノ酸残基を含んでよい。ポリエチレングリコール分子に結合するための反応性基として、スルフヒドリル基を使用することもできる。治療目的で好ましいのは、アミノ基における結合、例えばN末端又はリジン基における結合である。
【0136】
−CONH−ペプチド結合を、下記のもの:(CH2NH)還元型結合;(NHCO)レトロ-インベルソ結合;(CH2−O)メチレン-オキシ結合;(CH2−S)チオメチレン結合;(CH2CH20)カルバ結合;(CO−CH2)セトメチレン結合;(CHOH−CH2)ヒドロキシエチレン結合;(N−N)結合;E−アルセン結合;又は−CH=CH−結合、のうちの1又は複数と置換することにより、タンパク質分解に対して耐性があるポリペプチドを生成することができる。従って、本発明は、可溶性sCD164、又は少なくとも1つのペプチド結合が上記のように修飾されているその変異体をも含む。加えて、アミノ酸はL又はDの本体内部にキラリティを有する。態様によっては、アミノ酸のキラリティを変化させて本体内部に半減期を延長することが好ましい。このように、態様によっては、1又は複数のアミノ酸が好ましくはL形態を成す。他の実施態様の場合、1又は複数のアミノ酸が好ましくはD形態を成す。
【0137】
in vivoでの脊椎動物の細胞の内部に可溶性タンパク質を送達する方法の具体的な1実施態様は、生理学的に許容される担体と、その細胞を含む組織の間質空間内に当該ポリペプチドを動作可能なようにコードする裸のポリヌクレオチドとを含む調製物を導入するステップを含む。これにより、裸のポリヌクレオチドは、細胞内部内に取り込まれ、生理学的効果を有する。このことは特にin vitroの転移にあてはまるが、しかしin vivoに適用することもできる。
【0138】
本発明の更なる観点は、個体における1又は複数のサイトカインの発現を阻害する方法であって、前記個体に対し、本発明のsCD164変異体を含んで成る方法に関する。サイトカインはTNFα、IFN−γ、IL−2、IL−4、IL−5、又はIL−10であってもよい。これらの方法は、必要としている個体に対し、前記医薬組成物又は後述する生理学的に許容される組成物を提供又は投与することを含んで成り、炎症及び/又は自己免疫疾患を予防及び/又は処置するための方法とみなされうる。
【0139】
本発明はまた、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを含んで成る可溶性タンパク質を含む新規のスクリーニング・アッセイ及びキットであって、サイトカインの分泌及び発現の阻害剤としての化合物の特性を同定して比較するために使用することができるもの、も提供する。当該キット及びアッセイは、本発明のsCD164変異体であって、最終的に標識されているか、あるいは固体支持体上に固定されているものを含んで成ることがある。
【0140】
学術論文又は要約、公開済又は未公開の米国又は外国特許出願明細書、公開済の米国又は外国特許明細書、又はその他の参考文献を含む、本明細書中に引用した全ての参考文献の全体が、引用参考文献に提供された全てのデータ、表、図面及び本文を含めて、引用により本明細書に組み入れられる。加えて、本明細書中で引用された参考文献中で引用された文献の内容全体も引用により本明細書に組み入れられる。
【0141】
既知の方法ステップ、常用の方法ステップ、既知の方法又は常用の方法に言及していることは、本発明の任意の特徴、説明又は実施態様が関連技術において開示、教示又は示唆されていることを認めていることでは断じてない。
【0142】
具体的な態様の前記説明は本発明の一般的な性質を完全に明らかにするので、当業者の知識(本明細書中に引用された参考文献の内容を含む)を応用することにより、他者が不必要な試験を行うことなしに、また本発明の全体的な概念を逸脱することなしに、種々の用途のためにこのような特定の実施態様を変更し、且つ/又は、改変することができる。従ってこのような改変及び変更は意味において、本明細書中で提示した教示及び指針に基づく、開示された実施態様の同等物の範囲であるものとする。言うまでもなく、本明細書中の語法又は用語は、説明を目的としたものであり、本発明を限定するものではないので、本発明の用語又は語法は、当業者の知識と組み合わせて、本明細書中に提供された教示内容及び指針に照らして、当業者により解釈されうる。
【0143】
本発明をこのように説明した結果、以下の実施例が例示を目的として提供されており、本発明を限定することを意図していないことが当該実施例を参照することで更に容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0144】
略語
AUC 濃度曲線下面積
ip 腹腔内
iv 静脈内
sc 皮下
s.e.m. 標準誤差
【0145】
実施例1:sCD164の哺乳類細胞におけるクローニング、ハイ・スループット発現及び精製
ヒトCD164の完全細胞外領域をコードするcDNA配列 (NCBI Acc. 番号NP_006007;配列番号17の残基1−163)を、Gateway(登録商標)クローニング技術(Invitrogen)を用いてサブクローニングすることにより、発現プラスミドを生成した。この発現プラスミドは、ヒトCD164の細胞外領域の成熟形態(140アミノ酸、すなわち163−配列番号15の23アミノ酸のシグナルペプチド)を、C末端のヘキサ−ヒスチジンタグと融合させた可溶性融合タンパク質として発現させそして分泌するのを可能にする。当該タグはアフィニティー精製において役割を果たす。分泌は、分泌は天然型CD164シグナル配列(NCBI Acc. No. NP_006007/配列番号17の残基1−23)によって駆動する。
【0146】
ハイ・スループット発現のための哺乳動物細胞として、エプスタイン−バール・ウィルス核抗原を発現させるヒト胚腎臓293細胞(HEK293-EBNA, Invitrogen)を選択した。
【0147】
Ex-cell VPRO無血清培地(種ストック、維持培地、JRH Biosciences)中の懸濁液中で、細胞を維持した。トランスフェクションから16時間〜20時間前(トランスフェクション第−1日)に、細胞を、それぞれ2%FBS(ウシ胎仔血清)播種培地(JRH Biosciences)とともに50mlのDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)/F12(1:1)を含有している2xT225フラスコ内で播種した(2x105細胞/mlの密度)。翌日(トランスフェクション第0日)、JetPEI(登録商標)試薬(2μl/μg プラスミド;PolyPlus-トランスフェクション)を使用して、トランスフェクションを行った。フラスコ毎に、113μgのsCD164発現プラスミドを、2.3μgの緑蛍光タンパク質(GFP)発現プラスミドと一緒に同時トランスフェクションした。次いで、トランスフェクション混合物を2xT225フラスコに添加し、そして37℃(5%CO2)で6日間にわたってインキュベートした。GFPによる蛍光を定性的に評価するために、第1日及び第6日に顕微鏡(Axiovert 10 Zeiss)によって、ポジティブトランスフェクションを確認した。第6日(採集日)に、2つのフラスコからの上清(100ml)をプールし、そして遠心分離し(4℃、400g)、固有の識別子が付けられたポット内に入れた。
【0148】
C末端His標識付き組換えタンパク質を発現させる細胞に由来する100ml及び500mlの培地試料から始めて、精製プロセスを実施した。試料を1倍量の低温緩衝液A(50 mM NaH2PO4; 600 mM NaCl; 8.7 % (w/v)グリセロール、pH7.5)で希釈することにより、最終溶液をそれぞれ200 ml及び1000 mlにした。試料を0.22 μm滅菌フィルター(Millipore, 500 mlフィルター・ユニット)を通して濾過し、そして四角い滅菌培地瓶(Nalgene)内に4℃で保持した。
【0149】
精製は、自動サンプル・ローダー(Labomatic)に接続されたVISIONワークステーション(Applied Biosystems)において、4℃で実施した。精製手順は、2つの連続ステップ、つまりNiイオン(4.6 x 50 mm, 0.83 ml)で負荷されたPoros 20 MC(Applied Biosystems)カラム上の金属アフィニティ・クロマトグラフィ、及びこれに続くSephadex G-25培地(Amersham Pharmacia)カラム(1.0 x 10 cm)上のゲル濾過から成った。
【0150】
第1のクロマトグラフィ・ステップに際して、金属アフィニティ・カラム(Ni-カラム)を30カラムボリュームのEDTA溶液(100 mM EDTA; 1M NaCl; pH 8.0)で再生させ、15カラムボリュームの100 mM NiSO4溶液で洗浄することによりNiイオンで再負荷し、10カラムボリュームの緩衝液Aで洗浄し、続いて7カラムボリュームの緩衝液B(50 mM NaH2PO4; 600 mM NaCl; 8.7 % (w/v)グリセロール、400 mM;イミダゾール、pH7.5)で洗浄し、そして最後に15 mMイミダゾールを含有する15カラムボリュームの緩衝液Aで平衡させた。試料をLabomatic サンプル・ローダーによって、200 mlサンプル・ループ内に移し、続いて10 ml/分の流速でNi金属アフィニティ・カラム上に装填した。1000 ml試料に対して、装填手順を5回繰り返した。N-カラムを12倍量の緩衝液Aで洗浄し、続いて、20mMイミダゾールを含有する、28カラムボリュームの緩衝液Aで洗浄した。この洗浄後、ゆるく付着した混入タンパク質をカラムから溶離した。組換えHis標識付きタンパク質を、流速2ml/分で10カラムボリュームの緩衝液Bを用いて、Ni-カラムから最後に溶離し、溶離されたタンパク質を1.6ml画分で採集した。
【0151】
第2クロマトグラフィ・ステップに際して、Sephadex G-25ゲル濾過カラムを2 mlの緩衝液D(1.137 M NaCl;2.7 mM KCl; 1.5 mM KH2PO4;8 mM Na2HPO4;pH 7.2)で再生させ、続いて、4カラムボリュームの緩衝液C(137 mM NaCl; 2.7 mM KCl; 1.5 mM KH2PO4;8 mM Na2HPO4;20 %(w/v)グリセロール;pH 7.4)で平衡化した。Ni-カラムから溶離されたピーク画分が、VISION上の一体化されたサンプル・ローダーを通して、自動的にSephadex G-25カラム上にローディングし、そしてタンパク質を流速2 ml/分で緩衝液Cを用いて溶離した。脱塩された試料を2.2 ml画分で回収した。画分を0.22 μm滅菌遠心分離フィルター(Millipore)を通して濾過し、等分し、凍結し、そして-80℃で保存した。試料のアリコートを、抗His抗体を用いたクーマシー染色及びウェスタン・ブロットによって、SDS-PAGE(4-12 % NuPAGEゲル; Novex)上で分析した。
【0152】
0.1 %クーマシー・ブルーR250染色溶液(30 %メタノール、10%酢酸)中で室温で1時間にわたって、NuPAGEゲルをインキュベートすることにより、クーマシー染色を実施した。続いて、バックグラウンドがクリアになり、タンパク質バンドがはっきりと目に見えるまで、ゲルを20 %メタノール、7.5 %酢酸中で脱染した。
【0153】
ウェスタン・ブロットに際しては、NuPAGEゲルからニトロセルロース膜へ、290mAで1時間にわたって4℃で、タンパク質を電気移動した。膜を緩衝液E(137 mM NaCl;2.7 mM KCl; 1.5 mM KH2PO4;8 mM Na2HPO4;0.1 % Tween 20, pH 7.4)中の5%粉乳で1時間にわたって室温でブロックし、続いて、緩衝液E中の2.5 %粉乳中の2種のウサギ・ポリクローナル抗His抗体(G-18及びH-15、それぞれ0.2μg/ml;Santa Cruz)と一緒に、4℃で一晩にわたってインキュベートした。室温でさらに1時間にわたってインキュベートした後、膜を緩衝液E(3 x 10分)で洗浄し、そして次いで2.5 %粉乳を含有する緩衝液E中に1/3000で希釈された二次HRP接合型抗ウサギ抗体(DAKO, HRP 0399)と一緒にインキュベートした。緩衝液Eで洗浄(3 x 10分)した後、膜を1分間にわたってECLキット(Amersham Pharmacia)で現像した。膜を続いてHyperfilm(Amersham Pharmacia)に晒し、フィルムを現像し、そしてウェスタン・ブロット画像を視覚的に分析した。
【0154】
ウシ血清アルブミンをスタンダードとして用いるBCAタンパク質アッセイ・キット(Pierce)を使用して、試料中のタンパク質の濃度を決定した。
【0155】
sCD164変異体Ex4,5,6(配列番号1)、Ex1(配列番号3)、Ex1,6(配列番号4)、Ex1,4,6(配列番号5)、Δ2,3(配列番号6)、Δ4(配列番号8)、Ext1,2,3(配列番号9)、Δ6(配列番号11)、Δ5(配列番号12)、A22E,G80E(配列番号12)及びN9a、N18A(配列番号14)、sCD164−Fc(配列番号16)及びsCD164−Fcm(配列番号18)は、sCD164(配列番号15)について上文に記載した発現ベクター系、宿主細胞及び精製方法を用いて生成し、そして精製した。
【0156】
実施例2:細胞ベース・アッセイによって測定したサイトカイン放出に対するsCD164変異体の効果(コンカナバリンA誘発型)
コンカナバリンA(Con A)誘発型サイトカイン分泌に対するsCD164変異体の効果を、in vitroでのサイトカインビーズアレイ(CBA)で測定した。測定したサイトカインには、Il−2、IFN−γ、TNF−α、IL−5、IL−4及びIl−10を含めた。
【0157】
下記装置及びソフトウェアを使用した:
・96ウェル・マイクロタイター・プレート・フォトメーターEX(Labsystem)
・Graph Pad Software(Prism)
・Excelソフトウェア(Microsoft)
・フローサイトメーター(Becton-Dickinson)
・CBA Analysisソフトウェア
・細胞培養のためのフード
・細胞培養のためのインキュベーター
・遠心分離機
・ピペット
【0158】
下記材料及び試薬を使用した:
・バフィー・コート(遠心した500mlのヒト全血から得られた白血球及び血小板の濃縮物)
・DMEM(GIBCO)
・ヒト血清型AB(SIGMA)
・L−グルタミン(GIBCO)
・ペニシリン-ストレプトマイシン(GIBCO)
・フィコール(PHARMACIA)
・細胞培養用96ウェル・マイクロタイター・プレート(COSTAR)
・コンカナバリンA(SIGMA)
・ヒトTh1/Th2サイトカインCBAキット(Becton-Dickinson)
・PBS(GIBCO)
・Falcon 50ml 滅菌管(Becton-Dickinson)
・ウシ血清アルブミン(BSA; SIGMA)
・グリセロール(MERCK)
・ジメチルスルホキシド(DMSO; SIGMA)
・96ウェル・マイクロタイター・プレートコニカルボトム(NUNC)
・autoMACS(登録商標)セパレーター及びMACS細胞単離キット(Miltenyl Biotec)
【0159】
細胞を、細胞ベース・アッセイのために下記のように単離した。
【0160】
ヒト末梢血単核球(PBMC)を、DMEMで希釈したバフィー・コートから単離した。その後、50mlのFalcon管内の15mlのフィコール層上に、希釈血液25mlをゆっくりと添加し、そして管を遠心分離した(2000rpm、20分、室温、中断無し)。次いで界面相(環)を採集し、そして細胞を25mlのDMEMで洗浄し、続いて遠心分離ステップを行った(1200rpm、5分)。この手順を3回繰り返した。バフィー・コートはほぼ600 x 106の総細胞数をもたらした。
【0161】
細胞ベース・アッセイに適用した条件は下記のものである:
- 2%グリセロール中最終量100 μlにおいて、96ウェル・プレートの1ウェル当たりの細胞数が100,000、
- 5 ng/mlのマイトジェン・コンカナバリンA(ConA)、
- 各アッセイに対して48時間。
【0162】
下記のものを混合することにより、各ウェル内に細胞を準備した:
- DMEM + 2.5%ヒト血清 + 1% L-グルタミン + 1%ペニシリン-ストレプトマイシン中で希釈された80 μlの細胞1.25 x 106個/ml;
- PBS + 20%グリセロール中で希釈されたsCD164変異体を含有する10 μlの溶液(タンパク質の最終希釈率は1/10である);
- 10 μl ConA。
【0163】
48時間後、細胞の上清を採集し、そしてヒト・サイトカインをヒトTh1/Th2サイトカインCBAキット(Becton-Dickinson)によって測定した。
【0164】
マイクロウェル・プレートから生じた試料と混合する前に数秒間にわたって強力にボルテックスすることにより、混合されたヒトTh1/Th2捕捉ビーズ懸濁液を調製した。分析する各アッセイにつき、それぞれの捕捉ビーズの10 μlアリコートを、「混合済みの捕捉ビーズ」とラベルを付けた1つの管内に添加した。ビーズ混合物を十分にボルテックスした。アッセイ希釈剤(20 μlの上清 + 60 μlのアッセイ希釈剤)を使用して、上清を希釈した(1:4)。次いで、試料を96ウェル・マイクロタイター・プレートコニカルボトム(Nunc)内に移す前に、試料希釈物を混合した。
【0165】
希釈した上清50 μlを96ウェル・マイクロタイター・プレートコニカルボトム(Nunc)内に添加することにより、ヒトTh1/Th2サイトカインCBAアッセイを実施した。混合された捕捉ビーズ50 μlを添加し、続いてヒトTh1/Th2 PE検出試薬50 μlを添加した。次いでプレートを3時間にわたってRTでインキュベートし、そして直接的な露光から保護し、続いて5分間にわたって1500rpmで遠心分離した。次いで上清を慎重に廃棄した。後続のステップにおいて、洗浄緩衝液200 μlをそれぞれのウェルに2回添加し、5分間にわたって1500rpmで遠心分離し、そして上清を慎重に廃棄した。その後、洗浄緩衝液130 μlをそれぞれのウェルに添加することにより、ビーズ・ペレットを再懸濁した。試料をフローサイトメーター上で最後に分析した。CBA アプリケーション・ソフトウェア、Activity Base及びMicrosoft Excel ソフトウェアを使用して、データを分析した。
【0166】
ヒトPBMC細胞(混合物)及び単離された細胞からのサイトカイン放出に対するsCD164変異体の効果を、6種のサイトカイン:TNF-α、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5又はIL-10に関して測定した。結果を図3〜12に表す。
【0167】
前記変異体の活性の評価のために、最大の効果がもたらされるsCD164変異体の濃度(Emax)、及び50%の活性がもたらされるsCD164変異体の濃度を決定した。結果を図13に要約する。
【0168】
実施例3:細胞ベースアッセイにおいて測定したサイトカイン放出に対するsCD164及びsCD164変異体の効果(T細胞受容体を媒介するPBMCの活性化)
sCD164(配列番号15)、並びにsCD164変異体であるsCD164−Fc(配列番号16)及びsCD164−Fcm(配列番号18)の、T細胞受容体を媒介とした活性化(抗ヒトCD3及び抗ヒトCD28抗体による)の後のPBMC細胞のサイトカイン分泌(IL−2、TNF−α及びIL−4)に対する効果。
【0169】
材料と試薬
−バフィー・コート
−DMEM GIBCO Ref.:21331−020
−ヒト血清AB型 SIGMA Ref.:H1513
−L−グルタミン GIBCO Ref.:250 030−020
−ペニシリン-ストレプトマイシン GIBCO Ref.:150 070−063
−フィコール PHARMACIA Ref.:17−1440−03
−細胞培養用96ウェル・マイクロタイター・プレート 平板 COSTAR Ref.:3596
−細胞培養用96ウェル・マイクロタイター・プレート 丸底 COSTAR Ref.:3799
−水溶性デキサメタゾン SIGMA Ref.:D2915
−ヒトTh1/Th2サイトカインCBAキット Becton−Dickinson Ref.:550749
−PBS GIBCO Ref.:14190−094
−FALCON 50ml 滅菌済み Becton−Dickinson Ref.:2070
−精製済みの抗ヒトCD3 BD Pharmingen Ref.:555336
−精製済みの抗ヒトCD28 BD Pharmingen Ref.:555725
【0170】
バフィーコート由来のヒトPBMCの精製
バフィーコートをDMEMで1〜2倍に希釈した。その後、30mlの希釈した血液をゆっくりと50mlのFalconチューブ内の15mlのフィコール層上に添加し、そして当該チューブを遠心した(2500rpm、20分、室温、中断無し)。
【0171】
次いで界面相(環)を回収し、そして細胞を25mlのDMEMで洗浄し、続いて遠心分離ステップを行った(1500rpm、5分)。この手順を3回繰り返した。
【0172】
活性試験
− DMEM+2.5%ヒト血清+1%L−グルタミン+1%ペニシリン+ストレプトマイシンで希釈した180μlの1.1×106細胞/mlを、丸底の96ウェル・マイクロタイタープレートに添加した。
− sCD164変異体又はsCD164変異体を含む20μlの以下の溶液をウェル毎に添加した:
・sCD164 用量反応 109μg/ml〜0.21μg/mlに10点
・sCD164−Fc 用量反応 120μg/ml〜0.23μg/mlに10点
・sCD164−Fcm 用量反応 130μg/ml〜0.25μg/mlに10点
− 混合物を2〜3時間37℃、5%CO2でインキュベートした。
【0173】
ヒトPBMCの刺激
− 丸底の96ウェル・マイクロタイタープレートにおいて、PBS1ml当たり5μgの50μlの抗ヒトCD3溶液を各ウェルに添加した。
− 混合物を一晩4℃でインキュベートし、そして3回PBSで洗浄した。
− 90μlのPBMC細胞混合物とsCD164又はsCD164変異体を添加。
− ウェル当たり10μlの抗ヒトCD28溶液を10μg/ml PBSで添加。
− 48時間後、細胞の上清を回収し、そしてヒトサイトカインを特異的なイムノアッセイ(ELISA、R&D Systemsキット)及びヒトTh1/Th2サイトカインCBAキット Becton−Dickinsonで測定した。
【0174】
結果(図14)
試験した3つの化合物、sCD164(図14A)、sCD164−Fc変異体(図14B)及びsCD164−Fcm変異体(図14C)は、サイトカインTNF−α、Il−2及びIL−4の放出を同等の効果で低下させた(EC50=1〜10mcg/ml)。
【0175】
実施例4:動物モデルの免疫細胞動員に対するsCD164変異体の効果−チオグリコレート誘発型白血球腹膜動員アッセイ
免疫細胞動員に対するsCD164変異体の効果は、チオグリコレート誘発型白血球腹膜動員アッセイを用いて試験した。本実施例においては、ssCD164−Fc(配列番号16)が単球/マクロファージの動員を低下させる能力を評価した。
【0176】
材料と方法
腹腔炎を8週齢のC3Hマウス(Elevage Janvier)にチオグリコレートを注射(1.5%、40ml/kg、ip)することで誘導した。sCD164−Fc又はビヒクル(PBS/0.02%BSA)は、皮下又は静注経路で、0.003、0.03及び0.3mg/kgの用量で、チオグリコレートの曝露15分前及び24時間後に注射した。曝露の48時間後、動物を屠殺し、そして腹腔の洗浄を2×5mlのPBS−1mM EDTA(+4℃)を用いて実施した。遠心(10分3000rpm)後、ペレットを1mlのPBSに再懸濁した。腹膜細胞をBeckman/Coulterカウンターを用いて計数した。抗炎症化合物であるデキサメタゾン(1mg/kg)を参照ポジティブコントロールとして使用した。
【0177】
結果
iv経路から0.003、0.03及び0.3mg/kgの用量で投与したsCD164−Fcは、マクロファージの腹膜動員をそれぞれ32%、38%及び34%有意に低下させた。デキサメタゾン(1mg/kg、iv)は、マクロファージの腹膜動員を94%低下させた。
【0178】
sc経路から0.3mg/kgの用量で投与したsCD164−Fcは、マクロファージの腹膜動員を若干ではあるが有意に低下させた(−27%)。デキサメタゾン(1mg/kg、sc)は、マクロファージの腹膜動員を61%低下させた。
【0179】
このモデルにおいて、細胞動員の低下に対するsCD164変異体のポジティブな効果は、前記分子が炎症組織への細胞浸潤を軽減する能力について示唆している。
【0180】
sCD164(配列番号15)及びsCD164−Fc(配列番号16)の有効性は、独立した一対一の実験において比較した。両分子は同様の有効性を示し、これは祖のえっかFcエフェクター機能がチオグリコレートモデルの生体活性に必要とされないことを示唆している。
【0181】
実施例5:動物モデルにおける免疫細胞動員に対するsCD164変異体の効果−マウスにおけるLPS誘発型TNFα放出
このモデルにおける従来の実験は、sCD164がLPS導入後のTNFα放出を低下させる能力について証明している。以下の実験において、sCD164(配列番号15)、及びsCD164変異体であるsCD164−Fc(配列番号16)の一対一の比較を実施した。
【0182】
材料と方法
C3Hマウス(Elevage Janvier)(8週齢)に、E.コリ(E.coli)のLPS(O111:B4、Sigma、0.3mg/kg、ip)を試験分子の投与から15分後に与えた。LPSは滅菌生理食塩水で溶解した。デキサメタゾン(0.1mg/kg、sc)を参照として使用した。24時間後、動物を屠殺し、そして血液をサンプリングした。TNF−αの血漿レベルは、ELISAキット(R&D)を用いて血清中のものについて決定した。統計分析は、ANOVA検定、続くDunnetの事後検定により決定した。
【0183】
結果
皮下注射したデキサメタゾンは、LPS誘発型TNF−αを有意に減少させることができた(P<0.001)。LPSの15分前に注射済みの、試験した両sCD164分子(sCD164及びsCD164−Fc)は、1mg/kgの試験した用量で、LPS誘発型のTNFα放出を有意に減少させることができた(P<0.001)(図15を参照のこと)。
【0184】
実施例6:コンカナバリンA誘発型肝炎のマウスモデルにおけるsCD164変異体の効果
複数のsCD164変異体が、ConA刺激したヒト抹消血単核球(PBMC)による特定のサイトカインの分泌をin vitroで阻害することが示した(上記実施例2及び3を参照のこと)。サイトカインはT細胞誘発型のConA誘発型肝炎において必須の役割を果たしており(Seino et al. 2001, Kusters, 1996; Toyonaga et al. 1994)、本モデルをsCD164変異体を更に試験するために使用した。
【0185】
材料と方法
8週齢のC3Hマウス(Elevage Janvier)に、コンカナバリンA(Sigma、20mg/kg、 iv 酢酸ナトリウムバッファー中(pH5.0))を、sCD164−Fc(0.1、0.3及び1mg/kg)又はビヒクル(PBS/0.02%BSA)の皮下投与から1時間後に与えた。18時間後、動物を屠殺し、そして血液をサンプリングした。トランスアミナーゼの血清レベル(アラニントランスアミナーゼ(ALAT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT))は、臨床分析機(日立)を用いて、血清中のものについて決定した。デキサメタゾン(0.3mg/kg、sc)を参照として使用した。
【0186】
結果(図16)
0.1、0.3及び1mg/kgの用量で、scから投与したsCD164−Fc(配列番号16)は、コンカナバリンAによって誘導される血清トランスアミナーゼの上昇を有意に低下させた(それぞれ、ALAT:−52%、−69%及び−59%;ASAT:−54%、−64%及び−63%)。デキサメタゾン(0.3mg/kg、sc)は、血清トランスアミナーゼのレベルを96%低下させた。
【0187】
sCD164(配列番号15)及びsCD164−Fc(配列番号16)の有効性は、独立した一対一の実験において比較した。いずれの分子も類似の有効性をもたらし、その結果、Fcエフェクター機能がコンカナバリンAモデルにおける生体活性に必要ないことが示唆された。
【0188】
実施例7:マウスの接触過敏症モデル(CHS)におけるsCD164変異体の効果
接触過敏症は、皮膚の炎症に関連する障害のT細胞媒介型モデルである。このモデルにおいて、1型のサイトカイン反応を誘導するハプテンDNFB(ジニトロフルオロベンゼン)を使用した。
【0189】
材料と方法
8〜12週齢の雌のBalb/cを、35μlの新たに調製した感作溶液(0.5%のジニトロフルオロベンゼン−DNFB/アセトン/油、4:1)を剃毛した腹部に適用することで−5及び−4日目に感作した。0日目に、10μlの曝露溶液(0.2%DNFB/アセトニトリル/油、4:1)を右耳の背部側及び腹部側に適用することで、CHS反応を誘発させた(曝露、CH)。sCD164−Fc(配列番号16)を、DNGB曝露から30分後にiv経路で0.1、0.3、13mg/kg投与した。コントロールとして、左耳に等量のビヒクル(アセトン/オリーブ油)を曝露した。1mg/kgのデキサメタゾン及び30mg/kgのEnbrel(登録商標)(エタネルセプト−可溶性TNF受容体)をポジティブコントロールとして用い、sc経路で投与した。正確なカリパーを用いて、耳の表面上の3つの異なる部位について耳の厚さを曝露から24、48及び72時間目に測定した。
【0190】
結果
図17に示す通り、sCD164−Fcは、耳の腫脹/浮腫を0.3及び1mg/kgのiv投与で有意に軽減させることができた(図17A;p<0.01;2way−ANOVAの後、ボンフェローニ検定)。1mg/kgでiv経路により到達した最大効果は全実験(曝露後0〜72時間)を通じ−53%であった(図17C)。
【0191】
sCD164−Fcの有効性は、それぞれ1mg/kg及び30mg/kgをscから全身投与したデキサメタゾン及びEnbrel(登録商標)(エタネルセプト−可溶性TNF受容体)と比較した(図17Cに示す)。sCD164−Fcを1mg/kg用いてAUC(濃度曲線下面積)評価上で達成した有効性(0−72時間)は、デキサメタゾン及びEnbrel(登録商標)の双方に匹敵する。
【0192】
実施例8:デキストラン硫酸ナトリウム誘発型の潰瘍性結腸炎の疾患モデルにおけるsCD164変異体の効果
結腸炎のDSSモデルは、ヒトへの影響と幾つかの点で、例えば結腸粘膜におけるマクロファージの浸潤及び炎症性サイトカイン(すなわち、TNFα、IL−1β、IL−6)のアップレギュレーションについて類似している。
【0193】
材料と方法
潰瘍性結腸炎(UC)を、飲料水で(経口)投与したデキストラン硫酸ナトリウム(DSS4%)によって雌のマウス(Balb/c、20〜22g、Elevage Janvier)に誘導した。当該マウスは、7日間DSSに自由にアクセスできた。体重は毎日測定した。UCの重症度は、排泄物の構成及び血液の存在を評価する臨床スコア[(0=硬い、1=ゆるい、2=下痢)及び(0=血液無し、1=潜血、2=全体的な直腸出血)]によって評価した。当該疾患の誘発から7日後、動物を屠殺した。結腸の長さ及び重量を決定し、そして重量/長さ/100g体重の比率を算出した。脾臓の重量も決定した。血液をサンプリングし、特定のELISAを用いて血清アミロイドタンパク質(SAA)を決定した。
【0194】
試験物質又はビヒクル(PBS/0.02%BSA)は、UCの誘発から3,4,5及び5日目に投与した。Enbrel(登録商標)(1mg/kg、sc)は参照化合物として使用した。3つの研究を以下の表の通り実施した:
【表5】
【0195】
研究3において、結腸内のIL−1βの含量も測定した。
【0196】
結果
研究1:(図18、A−F)
sCD164−Fcm(3mg/kg、ip)は、以下のものを有意に抑制した:結腸の縮小(長さ −21%、図18C)、血清アミロイドタンパク質Aの増大(−36%、図18E)及び浮腫(−27%、図18F)。臨床スコアは、sCD164−Fcmを1及び3mg/kgの用量でip投与した場合に、6日目に改善した(それぞれ−23%及び−32%;図18D)。重量/長さの比率及び体重の減少は、sCD164−Fcmによって影響を受けなかった(図18D)。
【0197】
Enbrel(登録商標)(1mg/kg、ip)は、以下のものを有意に抑制した::結腸の縮小(長さ −24%及び重量/長さの比率 −29%)、6日目の臨床スコア(−23%)及び血清アミロイドタンパク質Aの増大(−37%)。体重の減少及び脾腫は抑制されなかった。
【0198】
研究2:(図19、A−F)
sCD164−Fcm(1mg/kg、sc)は以下のものを有意に低下させた:臨床スコア(6日目(−22%))、体重減少(5〜7日目)、結腸の縮小(長さ(−18%)及び重量/長さの比率(−46%))。血清アミロイドタンパク質Aの増大は、sCD164−Fcmを3mg/kgの用量でsc投与した場合に有意に低下した。0.3mg/kgの用量で、sc投与した場合、sCD164−Fcmは更に以下のものを抑制した:結腸の縮小(長さ(−13%)及び重量/長さの比率(−26%))。脾腫は改善されなかった。
【0199】
Enbrel(登録商標)(1mg/kg、sc)は、以下のものを有意に抑制した::臨床スコア(5日目(−21%))、結腸の縮小(長さ −17%及び重量/長さの比率 −31%)、及び血清アミロイドタンパク質Aの増大(−36%)。脾腫は改善されなかった。
【0200】
研究3:(図20、A−G)
sCD164−Fcm(0.3及び1mg/kg、sc)は以下のものを有意に改善した:結腸の縮小(それぞれ−18%及び−26%)及び重量/長さの比率(それぞれ−19%及び−25%))及び結腸におけるIL−1βの含量(−22%)。sCD164−Fcmは、臨床スコア及び脾腫を改善させる傾向にあったが、体重の減少及び血清アミロイドAタンパク質に対してはなんら効果を有さなかった。
【0201】
sCD164−Fc(1mg/kg、sc)は結腸の縮小及び脾腫を有意に改善した。sCD164−Fcmは、臨床スコア及び結腸におけるIL−1βの含量を改善させる傾向にあったが、体重の減少及び血清アミロイドAタンパク質に対してはなんら効果を有さなかった。
【0202】
Enbrel(登録商標)(1mg/kg、sc)は、以下のものを有意に軽減した:臨床スコア(5日目(−38%)、7日目(−30%))、結腸の縮小(長さ −29%)及び重量/長さの比率(−33%))、脾腫(−27%)及び泰淳の減少(5日目(−83%))。Enbrel(登録商標)は、血清アミロイドタンパク質A及び結腸におけるIL−1βの含量を減少させる傾向があった。
【0203】
IgG1は読取値のいずれも改善させなかった。
【0204】
実施例9:マウスの関節炎K/BxN血清移入モデルにおけるscD164変異体の効果
本実施例は、ナイーブマウスに対し、K/BxNマウス(自然発生的に関節炎を発祥するマウス)の血清を移入することによって誘導した関節炎の受動モデルである。
【0205】
材料と方法
8週齢のBalb/cマウス(Charles River)に、iv経路から、150μlのK/BxN血清(Charles McKay、オーストラリア)であって、グルコースイソメラーゼ6リン酸イソメラーゼに対する自己抗体を高レベルで含むものを与えた。それらは結果的に深刻な関節炎となり、腫脹、紅斑、浮腫、関節の硬直及び強直の存在を評価することで臨床スコア(0−12)が評価された。最終的なスコアは、それぞれの手足についてのスコアの合計とした。足首、前足及び後足の腫脹はカリパーを用いて測定した。臨床スコア及び腫脹は毎日決定した。疾患の血液移入から14日後、サンプリングしてオステオカルシンを決定し、そして足を切除して組織学のためのホルマリン固定した。
【0206】
sCD164−Fc又はビヒクル(PBS/0.02%BSA)をip経路(研究1Nr1)又はsc経路(研究Nr2)から一日一回、一週間に五日投与し、これは移入から3日目に開始した。Enbrel(登録商標)(10mg/kg、sc、一日一回、一週間に3日)を参照化合物として使用した。
【0207】
結果
研究1:腹腔経路によるsCD164−Fc処理(図21、A−D)
ip経路から一日一回、一週間に5日、0.3、1及び3mg/kg投与したsCD164−Fcは、臨床スコアを有意に(p<0.05−0.01)それぞれ7%、14%及び17%低下させ、そして手足の腫脹を9%、19%及び21%低下させた。更に、sCD164−Fc(0.3、1及び3mg/kg)は血清オステオカルシン(骨分解の指標)をそれぞれ6%、11%及び37%低下させる傾向があった。sCD164−Fcの有効性は用量依存性であった。
【0208】
sc経路から、一日一回、一週間に3日10mg/kgの用量で投与したEnbrel(登録商標)は、臨床スコア、手足の腫脹及び血清オステオカルシンをそれぞれ25%、36%及び86%有意に(p<0.01)低下させた。
【0209】
研究2:皮下経路によるsCD164−Fc処理(図22、A−D)
sc経路から一日一回、一週間に5日、1及び3mg/kg投与したsCD164−Fcは、臨床スコアを有意に(p<0.05−0.01)それぞれ6%及び14%低下させた。手足の腫脹は、sCD164−Fcを3mg/kgの用量で投与した場合、14%有意に低下させた。更に、sCD164−Fcは、血清オステオカルシン(骨分解の指標)をそれぞれ16%及び31%低下させる傾向があった。sCD164−Fcの有効性は用量依存性であった。
【0210】
sc経路から、一日一回、一週間に3日10mg/kgの用量で投与したEnbrel(登録商標)は、臨床スコア、手足の腫脹及び血清オステオカルシンをそれぞれ31%、38%及び64%有意に(p<0.01)低下させた。
【0211】
IgG1は、手足の腫脹、臨床スコア及び血清オステオカルシンに対し予防効果を有していなかった。
【0212】
マクロファージの動員を減少させ、そしてTNFα及びIL−1βの放出を調節する可溶性CD164変異体は、この疾患モデルにおける病理過程の結果を調節する全ての特徴を示す。
【0213】
実施例10:LPSが誘導したTNF−αの放出の動物モデルにおいて測定したサイトカイン放出に対するsCD164変異体の投与の効果
マウスにおけるリポ多糖(LPS)誘発型TNF−α放出は、WO98/38179特許に従い準備した。LPS(O111:B4; SIGMA)をC3H/HeNマウス(Charles River, フランス)に注射した(0.3mg/kg, ip)。90分後に血液をサンプリングし、そしてELISAキット(R&D)を使用して血漿TNF−αを測定した。sCD164変異体及びデキサメタゾンをPBS中に希釈し、そしてLPS投与の15分前に注射した(Sf−CD164変異体を0.03、0.1及び0.3mg/kg、iv;又はデキサメタゾンを0.1mg/kg、sc)。
【0214】
ポジティブコントロールとして使用した抗炎症化合物デキサメタゾンは、LPS誘発型TNF-α放出を72%有意に(p<0.001)阻害する。sCD164変異体はLPS誘発型TNF-α放出を同様に阻害するものと予想される。
【0215】
実施例11:2つの動物モデルにおける免疫細胞動員に対するsCD164変異体の効果
免疫細胞動員に対するCD164変異体の効果は、チオグリコール酸塩誘発型白血球腹膜動員アッセイを用いて試験することができる。
【0216】
マウス(C3H種、8週齢、n=6;Elevage Janvier、フランス)に、0.02%BSAを含有するPBS中で希釈したCD164変異体(0.03、0.1及び0.3mg/kg、iv)又はデキサメタゾン(1mg/kg、sc)を注射する。試験分子投与から15分後に、チオグリコール酸塩(1.5%、40ml/kg、 ip; SIGMA)を注射した。試験分子の2回目の投与を24時間後に行う。チオグリコール酸塩による曝露から48時間後に動物を屠殺し、そして腹膜腔の洗浄を、2x5ml PBS−1mM EDTA(+4℃)を使用して行う。遠心分離(3000rpmで10分間)後、ぺレットを1mlPBS中で再懸濁する。Beckman/Coulterカウンターを使用して、腹膜細胞をカウントする。
【0217】
デキサメタゾンは、マクロファージの動員を69%有意に(p<0.001)用量依存的に阻害する。sCD164変異体(0.03、0.1及び0.3mg/kg)は、マクロファージの腹膜におけるチオグリコール酸塩誘発型動員を阻害するのが好ましい。
【0218】
好中球及びリンパ球の腹膜におけるLPS誘発型動員は、sCD164変異体を試験する更なる方法である。上述のものと同様の投与プロトコールを使用するが、但し、LPS(O111:B4;SIGMA;0.9mg/kg、40ml/kg、ip)を用いる。sCD164変異体は、好中球及びリンパ球のLPS誘発型の腹腔動員を阻害するものと予想される。
【0219】
実施例12:MBP特異的抗原処理及び提示についての細胞ベースアッセイにおけるsCD164変体の効果
ミエリン塩基性タンパク質ペプチドAc1−11(MBP(Ac1−11))によって誘発されるミエリン塩基性タンパク質(MBP)特異的T細胞の増殖に対する、sCD164変異体の効果を試験するためのアッセイを使用することができる。ミエリン塩基性タンパク質(MBP)の免疫優性ペプチドAc1−11で経皮免疫化(ECi)することにより、Ac1−11特異的T細胞受容体に関してトランスジェニックであるマウスが、試験用アレルギー脳脊髄炎(EAE)の誘発型及び自然発生型の両方に対して保護されることが証明されている。
【0220】
B10.PL及びMBPトランスジェニック・マウスの脾臓を採集し、そしてホモジェナイズすることにより、単一の細胞の懸濁液が得られる。Gay溶液で赤血球を溶解した後、脾細胞をPBS中に再懸濁し、洗浄し、そしてカウントする。単離手順後、トリパンブルー色素排除による細胞生存可能性は90%超である。次いで、B10.PL抗原提示細胞(APC)に、25Gyのg−放射線(刺激因子)を当て、洗浄し、そして細胞数1.9×106/mlで完全培地中で再懸濁する。応答細胞個体群を、完全培地において細胞数3.8×106/mlで調節する。1ウェル当たり80μlの各細胞懸濁液を96ウェルプレート内で混合する。次いで抗原を20μlの容積:1ウェル当たり10μg/mlのマウスMBP又は1μg/mlのAc1−11MBPペプチドを添加する(適切なネガティブコントロールはそれぞれネガティブコントロール、MSA及び無関係なMBPに由来するペプチドである)。タンパク質又は小分子を20μlの容積で添加し、次いで5% CO2を有する加湿雰囲気中で37℃でインキュベートする。3日間の培養後、上清を集め、そして−80℃で凍結し、その後、サイトカイン生成の試験を行うか、或いは、1μCiの3Hチミジンを添加し、そして14−16時間にわたってさらにインキュベートした後、放射能の取込みに関してカウントする。
【0221】
sCD164変異体は、Ac1−11によって誘導したMBP特異的なT細胞の増殖を阻害しうる。従って、活性なsCD164変異体は、多発性硬化症の処置に有用であり得る。
【0222】
実施例13:劇症性の肝硬変の動物モデルにおけるsCD164変異体の効果
複数のsCD164変異体が、ConA刺激したヒト抹消血単核球(PBMC)による特定のサイトカイン分泌をin vitroで阻害することが証明されている(実施例2を参照のこと)。サイトカインは、T細胞誘発型のConA誘発型肝硬変において必須の役割を果たすので(Seino et al., 2001, Kusters, 1996; Toyonaga et al., 1994)、このモデルを使用することで活性CD164変異体を試験することができる。
【0223】
雌のC57/BL6マウス(8週齢;IFFA CREDO)を使用する。一般に、1試験群当たり7匹の動物を使用する。12時間の明−暗サイクル下の標準的な条件においてマウスを維持し、放射線処理した食品及び水を自由に与えた。
【0224】
コンカナバリンA(ConA;Sigma参照番号C7275)を、18mg/kg、iv注射し、そして血液試料を注射から1.30時間後及び8時間後に採取する。ConA注射の30分前にsCD164変異体を注射する。ポジティブコントロールとしてデキサメタゾン(0.1mg/kg)を注射し、そしてネガティブコントロールとしてPBS−BSA 1.8%グリセロールを注射する。屠殺したときに、血液を心臓から採取する。ConA注射から1.5時間後に、TH1/TH2 CBAアッセイを用いて、IL−6及びIFN−ガンマ・サイトカイン・レベルを測定する。COBAS機器(Hitachi)を用いて、トランスアミラーゼ血液パラメーターを決定する。
【0225】
当該実験は、sCD164変異体が、sCD164変異体の皮下送達後、劇症肝炎を模倣するマウス・モデルにおける肝臓の損傷を防ぐことを示すことが予想される。理由としては、関連パラメーター、例えばトランスアミラーゼ・レベル(ALAT)、IFN−γ及びIL−6サイトカイン・レベルが低下しうるためである。
【0226】
【表6】
【表7】
【図面の簡単な説明】
【0227】
【図1】図1は、添付の配列表の配列番号1〜15の配列を有するsCD164変異体の(アミノ酸の)アラインメント及び長さを示す。
【図2】図2は、本発明のsCD164変異体を特徴付ける多数のパラメーターを要約する表を示す。
【図3】図3は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIL−2放出に対するsCD164変異体Ex1,2,4(配列番号2)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたIL−2の濃度をコントロール細胞(すなわち、sCD164変異体で処理していない細胞)における最大放出の%で表す。
【図4】図4は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIFN−γ(A)、IL−2(B)、IL−5(C)、TNF−α(D)、IL−(E)又はIL−10(F)の放出に対するsCD164変異体Δ2,3(配列番号6)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図5】図5は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIFN−γ(A)、IL−2(B)、IL−5(C)、TNF−α(D)、IL−(E)又はIL−10(F)の放出に対するsCD164変異体Δ4(配列番号8)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図6】図6は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIFN−γ(A)、IL−2(B)、IL−5(C)、TNF−α(D)、IL−(E)又はIL−10(F)の放出に対するsCD164変異体Δ5(配列番号12)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図7】図7は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIFN−γ(A)、IL−2(B)、IL−5(C)、TNF−α(D)、IL−(E)又はIL−10(F)の放出に対する可溶性sCD164−Fc変異体(配列番号16)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、分泌によって放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図8】図8は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIFN−γ(A)、IL−2(B)、IL−5(C)、TNF−α(D)、IL−(E)又はIL−10(F)の放出に対するsCD164変異体A22E、G80E(配列番号13)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図9】図9は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIFN−γ(A)、IL−2(B)、IL−5(C)、TNF−α(D)、IL−(E)又はIL−10(F)の放出に対するsCD164変異体N9A、N18A(配列番号14)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図10】図10は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIFN−γ(A)、IL−2(B)、IL−5(C)、TNF−α(D)、IL−(E)又はIL−10(F)の放出に対するsCD164変異体Ex1,4,6(配列番号5)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図11】図11は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIFN−γ(A)、IL−2(B)、IL−5(C)、TNF−α(D)、IL−(E)又はIL−10(F)の放出に対するsCD164変異体Ex1,6(配列番号4)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図12】図12は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIFN−γ(A)、IL−2(B)、IL−5(C)、TNF−α(D)、IL−(E)又はIL−10(F)の放出に対するsCD164変異体Δ6(配列番号11)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図13】図13は、図3〜12に示した実験に基づいて算出したEmax及びEC50値を示す。
【図14】図14は、抗CD3/抗CD28抗体で刺激したヒトPBMCからのTNF−α、IL−2及びIL−4の放出に対する(A)sCD164(配列番号15)、(B)sCD164−Fc変異体(配列番号16)及び(C)sCD164−Fcm変異体(配列番号18)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図15】図15は、LPS誘発型TNF−α放出についての動物モデルにおけるTNF−α放出(pg/ml)に対するsCD164及びsCD154−Fc(1mg/kg、iv)投与の効果を示す。デキサメタゾンは0.1mg/kgでsc投与した。
【図16】図16は、コンカナバリンAによって誘導された肝炎のモデルにおけるトランスアミナーゼALAT及びASATの血清レベルに対する0.1、0.3及び1mg/kg(sc)のsCD164−Fc及びデキサメタゾン(0.3mg/kg、sc)の効果を示す。コントロール:賦形剤処理(PBS/0.02%BSA)。
【図17】図17は、(A)0.1、0.3及び1mg/kgでのsCD164−Fc iv処理及び(B)sc経路による1mg/kgのデキサメタゾン及び30mg/kgのEnbrel(登録商標)処理の後のDNFB誘発型の耳腫脹の阻害を示す。(C)は全ての処理のAUC阻害(%)を示す。データはn=8のマウス/グループの平均±SEMとして示した1回の実験を示している。
【図18】図18は、以下のパラメーターに対しての、D3からD7までに4%デキストラン硫酸ナトリウムにより誘導された潰瘍性結腸炎のマウスモデル(経口)における0.3、1及び3mg/kg(ip経路)でのsCD164−Fcm、1mg/kg(sc)でのEnbrel(登録商標)、コントロール4%DSS及び水の効果を示す:(A)体重の変化(% D0)(B)臨床スコア(0−4)(C)結腸の長さ(cm)(D)結腸の重量/長さ(mg/100g bw/cm)(E)血清アミロイドタンパク質(μg/ml)(F)脾臓の重量(mg/100g bw)
【図19】図19は、以下のパラメーターに対しての、マウスおいて4%デキストラン硫酸ナトリウムにより誘導された潰瘍性結腸炎のモデル(経口)における0.3、1及び3mg/kg(sc経路)でのsCD164−Fcm、1mg/kg(sc)でのEnbrel(登録商標)、コントロール4%DSS及び水の効果を示す:(A)体重の変化(% D0)(B)臨床スコア(0−4)(C)結腸の重量/長さ(mg/100g bw/cm)(D)結腸の長さ(cm)(E)血清アミロイドタンパク質(μg/ml)(F)脾臓の重量(mg/100g bw)
【図20−1】図20は、以下のパラメーターに対しての、D3からD7までに4%デキストラン硫酸ナトリウムにより誘導された潰瘍性結腸炎のマウスモデル(ip投与)における0.1、0.3及び1mg/kg(ip経路)でのsCD164−Fcm、1mg/kg(sc)でのEnbrel(登録商標)、1mg/kgでのsCD164−Fc、IgG1、コントロール4%DSS及び水の効果を示す:(A)体重の変化(% D0)(B)臨床スコア(0−4)(C)結腸の重量/長さ(mg/100g bw/cm)(D)結腸の長さ(cm)(E)血清アミロイドタンパク質(μg/ml)(F)脾臓の重量(mg/100g bw)(G)IL−1β(pg/mg プロット)
【図20−2】図20は、以下のパラメーターに対しての、D3からD7までに4%デキストラン硫酸ナトリウムにより誘導された潰瘍性結腸炎のマウスモデル(ip投与)における0.1、0.3及び1mg/kg(ip経路)でのsCD164−Fcm、1mg/kg(sc)でのEnbrel(登録商標)、1mg/kgでのsCD164−Fc、IgG1、コントロール4%DSS及び水の効果を示す:(A)体重の変化(% D0)(B)臨床スコア(0−4)(C)結腸の重量/長さ(mg/100g bw/cm)(D)結腸の長さ(cm)(E)血清アミロイドタンパク質(μg/ml)(F)脾臓の重量(mg/100g bw)(G)IL−1β(pg/mg プロット)
【図21】図21は、マウスの関節炎のK/BxN血清移入モデルにおける0.3、1及び3mg/kg(ip経路)でのsCD164−Fc、10mg/kg(sc)でのEnbrel(登録商標)、コントロール(賦形剤処理)の効果を示す:(A)臨床スコア(0−4)(B)臨床スコア(AUC D0−14)(C)総腫脹(mm vs d0)(D)総腫脹(AUC D0−14)(E)オステオカルシン(ng/mg)
【図22】図22は、マウスの関節炎のK/BxN血清移入モデルにおける0.3、1及び3mg/kg(sc経路)でのsCD164−Fc、10mg/kg(sc)でのEnbrel(登録商標)、コントロール(賦形剤処理)の効果を示す:(A)臨床スコア(0−4)(B)臨床スコア(AUC D0−14)(C)総腫脹(mm vs d0)(D)総腫脹(AUC D0−14)(E)オステオカルシン(ng/mg)
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症及び自己免疫疾患の分野のものである。特に、本発明は新規sCD164変異体並びに炎症及び/又は自己免疫疾患の予防及び/又は処置におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの免疫系の主な機能は、外来の侵入者、例えば微生物又はウイルスによる感染から個体を保護することである。しかしながら、免疫系が個体自身の組織を攻撃して、自己免疫疾患として知られている病理状態であって、しばしば炎症過程を伴うものを引き起こすことがある。
【0003】
一般的に使用されている分類によると、CD4+T細胞は、特有の非重複サイトカイン発現パターンに基づいて、Tヘルパー1型細胞(Th1)及びTヘルパー2型細胞(Th2)と称される2つの異なるサブセットに分けることができる。Th1はIL−2、インターフェロンγ、IL−12及びTNF−αの分泌を特徴とし、そしてTh2はIL−4、IL−5、IL−9、IL−10及びIL−13の分泌を特徴とする。この一般的なカテゴリー分けにもかかわらず、これらはIFN−γとして厳密なサブセットではなく、そしてIL−10はTh1並びにTh2反応に伴う作用を抑制することができ、そしてIL−4及びIL−13は更にIL−12の産生を促進することができ、その結果Th1を促進し、そしてTh2反応を潜在的に阻害することができる。Th1 T細胞はマクロファージの活性化及び遅延型過敏反応(DTH)を媒介して、炎症促進性又は細胞媒介型の免疫反応を生じさせることができ、一方、Th2 T細胞はIgG1及びIgEの分泌を促進して即時型過敏反応(体液性免疫;抗体媒介型反応の刺激、肥満細胞の活性化、組織好酸球)を生じさせる。Th1は関節リウマチ、サルコイド、及び結核のような疾患の病因の重要な特徴であり、一方、Th2はアレルギー、抗寄生虫反応及び喘息気道に関与する。
【0004】
炎症は、体外又は体内の種々の侵襲、例えば感染物質、物理的損傷、低酸素症、又は身体のほぼあらゆる器官若しくは組織における疾病過程、に対する身体の基本的な反応である。炎症は4つの周知の症候、すなわち赤味、熱、圧痛/疼痛、及び腫脹を伴う。更に具体的には、炎症は、標的部位での免疫系細胞及び分子の集合を伴う。急性炎症疾患の例としては、関節リウマチ、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、及び1型糖尿病等がある。これらの疾患はまた、自己免疫疾患又は自己免疫/炎症障害としてしばしば特徴付けられる。
【0005】
上文で言及したように、自己免疫疾患は、身体がそれ自身の組織を異物として認識し、そしてそれらに対する免疫反応を指示する症状である。
【0006】
多数の異なる自己免疫疾患が存在しており、それらは各々異なる方法で身体に影響を及ぼし得る。例えば、自己免疫反応は、多発性硬化症において脳に、そしてクローン病においては腸に対して向けられている。他の自己免疫疾患、例えば全身性エリテマトーデス(狼瘡)においては、冒されている組織及び器官は同じ疾患を有する個体間で変動しうる。狼瘡を有する人は皮膚及び関節が冒されていることもあれば、一方、人によっては皮膚、腎臓、及び肺が冒されている場合もある。最終的に、ある組織が免疫系により受ける損傷は、真性糖尿病I型における膵臓のインスリン産生細胞の破壊と同様に持続性であり得る。
【0007】
関節リウマチは、感染の炎症の兆候及び症候を特徴とする疾患である。全身性エリテマトーデス(SLE)は、皮膚上の赤い鱗状の斑点を特徴とし、そして疾患が進行した段階では腎臓の機能不良を特徴とし、そして血管、特に腎臓の血管に免疫複合体が沈着することを特徴とする。多発性硬化症は、脱力感、身震い、そして極端な場合には麻痺を生じさせうる、慢性、又は再発性の炎症状態を特徴とする疾患であり、末梢神細胞を覆う保護的なミエリン鞘の免疫系攻撃を伴う。アレルギー性炎症は、アトピー性疾患のTh2細胞ベースの原因論と一致している。例えば、IL−4不在下でのTh2細胞のプライミングの欠損は、気道誘発後にアレルギー性炎症反応が生じるのを失敗に至らしめた。IL−5及びIL−13は、特徴的な好酸球浸潤及び粘液過分泌のより直接的な原因であることが示されている。
【0008】
多発性硬化症において、Th1媒介型の免疫反応は、疾患を促進すると考えられており、一方、Th2媒介型の免疫反応は疾患の進行についての改善作用を有すると考えられている。T細胞が発現しているIL−10は、多発性硬化症のラットモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を抑制することが証明されている。TNF−αは、EAEの誘導の原因であると仮定されている(TNF−αは、Th1及びTh2両方の培養物によって分泌されうる)。
【0009】
ヒト全身性エリテマトーデス(SLE)は、Th2反応によって引き起こされるものと考えられている。しかしながら、IFN−γはマウスモデルにおける疾患の進行につい主要な効果を有することが示されているが、IL−4は疾患の維持を媒介することが予期されている。
【0010】
心筋炎は心筋の炎症と定義されており、そして急性上気道感染後の心臓特異的抗原に対する自己免疫反応によって媒介されると考えられている。マウスモデルの実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、抗IL−4の投与によって減少し、これは疾患の進行におけるIL−4の役割を示唆している。
【0011】
自己免疫疾患の例を表1に記す。
【0012】
【表1】
【0013】
CD164は、糖タンパク質であるムチン様受容体又はシアロムチンのスーパーファミリーのメンバーである。シアロムチンは、cDNAレベル及びアミノ酸レベルで限られた類似性を示す50-3000kDの膜貫通型糖タンパク質である。ムチン様発現型タンパク質は、セリン残基及びトレオニン残基にリンクされた多数のO-グリコシル化を担持するという共通の特徴を有しており、このことは、細胞間又は細胞-細胞外マトリックスの多種の相互作用を暗示する。ムチン受容体の機能は、細胞型、及びコアムチン・ペプチドと相関され、また、グリコシル・トランスフェラーゼの細胞特異的発現とも相関される活性化状態に依存する。これらのコアムチン・ペプチド及びグリコシル・トランスフェラーゼの細胞特異的発現は、Oリンク型オリゴ糖側鎖の構造及び提示、膜固定、シグナル伝達能、及び/又はムチンの正しい細胞ドメインへの輸送を調節する。
【0014】
ヒトCD164は、マウスMGC-24v(M. musculus)及びラット・エンドリン(R.norvegicus)のオルソログであり、哺乳動物細胞のリソソーム及びエンドソーム区画内に見いだされる膜タンパク質である。種々異なるイソ型間の関係は、CD164/エンドリンの機能上重要なドメイン及び細胞内分布とともに説明されている(Chan et al., 2001)。
【0015】
その天然の状態において、ヒトCD164は、2つの80-85kDaサブユニットのジスルフィド結合型ホモダイマーである。CD164は高グリコシル化され、O-及びN-リンク型グリカンの両方を含有する。細胞外領域は、ジスルフィド内(inter-disulphide)架橋を含有する非ムチン・ドメインによってリンクされた2つのムチン・ドメイン(I及びII)、並びに、成長因子及びサイトカイン受容体において既に判明しているコンセンサス・パターンに似たシステインに富むモチーフから成っている。CD164はまた、エンドソーム及びリソソームに対してタンパク質をターゲットすることができるC末端モチーフ(すなわちYHTL)を含む、シングル・パス膜貫通型ドメインと13アミノ酸細胞内領域とを含有している。
【0016】
ヒト染色体6q21上に位置する単一ゲノム転写ユニットから、6つの真正エクソンを選択的スプライシングすることにより、4つのヒトCD164 mRNA種が生じることが記載されている(Zannettino A, 2001; Watt及びChan, 2000)。
【0017】
主要なCD164(E1-6)イソ型は、178アミノ酸のI型膜貫通型糖タンパク質を表す。既述の他のイソ型は、178アミノ酸を含有するシアロムチンCD164又はCD164イソ型デルタ5;184残基のCD164イソ型デルタ4;膜貫通固定モチーフを欠き189残基を有する、MGC-24(24kDのマルチ-グリコシル化型コアタンパク質に対応)と呼ばれる、200kDの主に可溶性のイソ型である。全てのイソ型はO-及びN-リンク型グリコシル化部位を有する高グリコシル化型タンパク質である。
【0018】
CD164の機能は、造血先駆細胞の接着の媒介又は調整、並びに、成長及び/又は分化の負の調整を含む。CD164は通常、CD34+及びCD34lo/-造血幹細胞、並びに付随するミクロ環境細胞によって発現される(Watt et al., 1998)。CD164はまた、関連する脊髄コロニー形成細胞及び赤血球コロニー形成細胞によって、脊髄間質細胞及び内皮細胞上、リンパ球上に弱く、そして間葉幹細胞上に発現される。CD164は、ヒトCD34+細胞が脊髄間質細胞に接着するのを容易にすることにより、そして、CD34+及びCD38lo/-造血先駆細胞の増殖を抑制することにより、造血において重要な役割を果たすことができ、有力なシグナル伝達分子として作用する(Zannettino et al., 1998)。
【0019】
これらの効果は、モノクローナル抗体(mAbs) 105A5及び103B2/9E10によって認識されるCD164クラスI及び/又はエピトープを伴う。エピトープは炭水化物依存性であり、N末端ムチン・ドメインI上に配置される(Watt et al., 2000; Doyonnas et al., 2000)。造血細胞と、近接したミクロ環境内の間質/内皮細胞との相互作用は、造血幹細胞の自己再生、静止、関与及び移動を調整する上で極めて重要であると考えられる。これらの相互作用は、接着受容体と、これらの同起源リガンドと、サイトカインとの間の協働を伴う。Ig、インテグリン、カドヘリン、及びムチン様タンパク質群を含む細胞接着分子(CAMS)の範囲が、これらのプロセスに関与する。
【0020】
CD164はまた、筋原性分化において役割を有している(Lee et al., 2001)。筋芽細胞系におけるCD164の過剰発現は、分化の生化学マーカーの発現を加速し、多核筋管の形成を促進したのに対して、アンチセンスCD164又はCD164の可溶性細胞外領域は筋形成を阻害した。
【0021】
可溶性MGC-24のピーナッツ凝集素(PNA)は、多くの癌腫内で発現される腫瘍関連炭水化物マーカーを示す。総MGC-24 mRNAは、ヒト結腸直腸癌腫において、正常な隣接する粘膜組織と比較して低いレベルで見いだされた(Matsui et al., 2000)。癌腫によるリンパ管侵襲が、結腸癌腫における低レベルのMGC-24 mRNAと相関しているのに対して、高レベルのMGC-24 mRNAが相関する静脈浸潤及び遠隔転移はより少なかった。CD164に対して特異的なモノクローナル抗体が癌の診断又は処置、及び造血阻害に有用であることを証明することができた(EP889054、EP761814)。
【0022】
WO02/098917は、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟型と80%相同の配列を含んで成るタンパク質NOV25(配列番号8;図1B)を開示している。
【0023】
EP1033401は、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟型と同一の配列を含んで成るタンパク質(配列番号7582)を開示している。
【0024】
これらの先行技術文献で開示されているCD164様タンパク質の生体活性及び治療上の有用性は解析がなされていない。
【0025】
発明の要約
本発明は、新規なsCD164変異体の産生と、サイトカイン、例えばインターフェロンγ、IL−2、IL−4、IL−5、IL−10及びTNF−αが、これらのサイトカインを産生する細胞において、コンカナバリンAのような物質で刺激した場合に発現するのをかかるsCD164変異体が阻害する効果を有する、という知見、に基づいている。
【0026】
従って、本発明は、sCD164変異体及び、炎症及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防のためのそれらの使用に関するものであり、ここで、前記sCD164は:
a. 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
b. シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
c. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
d. (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
e. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
f. (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される。
【0027】
これらの変異体、これらのsCD164変異体を含んで成る組成物、ころえらをコードするポリヌクレオチド、かかるsCD164変異体を産生する宿主細胞、及びかかるsCD164変異体の産生方法が本発明の更なる観点である。
【0028】
本発明の詳細な説明
本発明によると、ヒトCD164の細胞外ドメインの全部又は一部を含んで成る、sCD164変異体が、コンカナバリンA(ConA)又は抗CD3及び抗CD28抗体のような物質による抹消血単核球(PBMC)の刺激後、特定のサイトカイン、例えばインターフェロン−γ、IL−2、IL−4、IL−5、IL−10及びTNF−αの細胞発現及び分泌に対し阻害効果を有することが明らかとなった。サイトカイン放出は炎症/自己免疫疾患において生じる事象であるため、これらのsCD164変異体は炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患の予防又は処置のための治療タンパク質として提唱される。
【0029】
sCD164変異体の投与は、炎症性疾患/自己免疫疾患のin vivo動物モデルにおいて有益な効果を有することが示されている。sCD164変異体は、炎症、すなわち単球/マクロファージのマクロファージチオグリコレート誘発型動員の総称モデル、及びLPS誘発型のTNFα放出モデルにおける細胞浸潤を有意に低下させることが示された。
【0030】
本発明のsCD164変異体のポジティブな効果は、マウスのコンカナバリンA誘発型肝炎モデル及び皮膚炎症モデルにおいて明らかとなった。
【0031】
かかる事項に加え、マウスの潰瘍性結腸炎及び関節炎のモデルにおいて、sCD164変異体がこれらの疾患に関連する種々の生理学的パラメーターを有意に改善することが示されている。
【0032】
タンパク質の治療上の用途の更なる確信は、個体の炎症性疾患/自己免疫疾患についての動物モデルで得ることができる。
【0033】
従って、本発明の第一の観点は、炎症性障害及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防のための医薬の製造のためにsCD164変異体を使用することであり、ここで、sCD164変異体は:
a. 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
b. シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
c. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
d. (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
e. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
f. (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される。
【0034】
本発明の更なる観点は、皮膚炎症関連障害、肝炎、潰瘍性結腸炎又は関節炎の処置及び/又は予防のための医薬の製造のための(a)〜(e)で定義されているようなsCD164変異体の使用に関する。
【0035】
本発明の範囲内では、(a)〜(f)で定義されるポリペプチド又はタンパク質は、「sCD164変異体」又は「本発明のsCD164変異体」と称される。便宜上、(a)で列挙されている個々のsCD164変異体には、それらの構造的組成を反映する記号表示が付されている。図2は、これらのsCD164変異体の対応する名前を示している。エキソン1〜6から構成されるポリペプチドは、成熟完全長CD164細胞外ドメインに相当し、そして本明細書ではこれを可溶性CD164、又はsCD164と称する。配列番号16のsCD164変異体は、イムノグロブリンのFc部分に融合したsCD164を含んで成るFc融合タンパク質である。配列番号18のsCD164変異体であるCD164−Fcmは、Fc受容体及びC1q結合領域において変異したイムノグロブリンのFc部分と融合したsCD164を含んで成るFc融合タンパク質である(アミノ酸182〜185位のLLGGがAEGAに、そしてアミノ酸278−279位の変異したAPがSSに)。配列番号17は本発明のsCD164変異体ではなく、シグナルペプチドを含む完全長のヒトCD164前駆体である。
【0036】
「予防」という用語は、本発明の範囲内では、疾患又は疾患の1又は複数の症状の完全な予防を意味するだけではなく、疾患の早期発症前又は早期発症時の疾患の影響を部分的又は実質的に予防、減衰、低減、減少又は縮小することをも意味する。
【0037】
「処置」という用語は、疾患発症後の病理発生の減衰、低減、減少又は縮小を含む、疾患の進行に対する任意の有益な効果を意味する。
【0038】
本発明との関連で、CD164は膜貫通受容体として解されるべきものとする。用語「sCD164」又は「可溶性CD164」は、CD164の可溶性部分、特にCD164の細胞外ドメインの任意の部分を意味する。
【0039】
用語「sCD164変異体」は、CD164のスプライス変異体又はイソ型、であって、天然であるか人工的に生成したもの、特に図2の表で列記した特定のもの、例えばsCD164の融合タンパク質、を指す一般的用語として解されるべきである。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「ムテイン」は、sCD164変異体のアナログであって、本発明のsCD164変異体の1又は複数のアミノ酸残基が異なるアミノ酸残基で置換されているか、又は欠失しているか、あるいは1又は複数のアミノ酸残基がsCD164変異体の天然配列に付加されており、これが当初のsCD164変異体と比較して生じた生成物の活性に対し負の影響を多大には及ぼさないもの、を指す。これらのムテインは、例えば、既知の合成法及び/又は部位指定突然変異技術、又はそれに適した任意な他の既知の技術によって調製することもできる。
【0041】
本発明に従い使用することができるsCD164変異体のムテイン、又はムテインをコードする核酸には、本明細書に提示した技術及び手引きを基に、過度の実験を行うことなく、当業者がルーチンに得ることができる置換ペプチド又はポリヌクレオチドとしての、実質的に対応する配列の有限集合が含まれる。
【0042】
本発明のsCD164変異体のムテインには、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18の配列を有するポリペプチドであって、シグナル配列、例えば、配列番号17のアミノ酸1〜23に相当するヒトCD164のシグナル配列を任意に更に含んで成り、当該アミノ酸配列が少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を前記配列の少なくとも1つに対して有するもの、が含まれる。
【0043】
既知のコンピュータープログラムを使用することで、任意の特定のポリペプチドがsCD164変異体に対し同一(又は相同)(%)であるか否かを決定することができる。このようなアルゴリズム及びプログラムには、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTA及びCLUSTALW(Pearson及びLipman、(1988)Proc Natl Acad Sci USA 85(8):2444-8; Altschul他(1990)、J Mol Biol 215(3):403-410;Thompson他(1994)、Nucleic Acids Res 22(2):4673-4680; Higgins他(1996) Meth Enzymol 266:383-402; Altschul他(1997) Nuc Acids Res 25:3389-3402; Altschul他(1993) Nature Genetics 3:266-272)が含まれる。タンパク質及び核酸の配列相同性は、当業界で周知のベーシック・ローカル・アラインメント・サーチ・ツール(「BLAST」)を用いて評価される(例えばKarlin及びAltschul(1990) Proc Natl Acad Sci USA 87(6):2264-8;Altschul他、1990, 1993, 1997を参照のこと)。
【0044】
BLASTプログラムは、クエリー・アミノ酸又は核酸配列と、好ましくはタンパク質又は核酸配列データベースから得られる試験配列との間の、本明細書中で「高スコアリング・セグメントペア」と呼ばれる類似セグメントを同定することにより、相同配列を同定する。高スコアリング・セグメントペアは好ましくは、スコアリング・マトリックスによって同定(すなわちアラインメント)される。スコアリング・マトリックスの多くが当業者に知られている。好ましくは、使用されるスコアリング・マトリックスは、BLOSUM62マトリックスである(Gonnet他、(1992) Science 256(5062):1443-5; Henikoff及びHenikoff(1993) Proteins 17(1):49-61参照)。余り好ましくはないが、PAM又はPAM250マトリックスを使用することもできる(例えばSchwartz及びDayhoff編(1978) Matrices for Detecting Distance Relationships: Atlas of Protein Sequence and Structure, Washington: National Biomedical Research Foundation参照)。BLASTプログラムは、同定された全ての高スコアリング・セグメントペアの統計的有意性を評価し、そして好ましくはユーザー指定有意性閾値、例えばユーザー指定パーセント相同性を満たすセグメントを選択する。好ましくは、高スコアリング・セグメントペアの統計的有意性は、Karlinの統計的有意性の式を用いて評価される(例えばKarlin及びAltschul(1990) Proc Natl Acad Sci USA 87(6):2264-8参照)。BLASTプログラムは、デフォルト・パラメーター又はユーザーによって提供された改変パラメーターと共に使用することができる。
【0045】
グローバル配列アラインメントとも呼ばれる、クエリー配列(本発明の配列)と対象配列との間の最良の全体的マッチを決定する好ましい方法は、Brutlag他(1990) Comp. App. Biosci. 6:237-245のアルゴリズムに基づいてFASTDBコンピュータ・プログラムを使用して行うことができる。配列アラインメントにおいて、クエリー配列及び対象配列は両方ともアミノ酸配列である。前記グローバル配列アラインメントの結果はパーセント同一性で表される。FASTDBアミノ酸アラインメントにおいて使用される好ましいパラメーターは:マトリックス=PAM 0、k-タプル=2、ミスマッチ・ペナルティ=1、ジョイニング・ペナルティ=20、ランダム化グループ=25、長さ=0、カットオフ・スコア=1、ウィンドウ・サイズ=配列長、ギャップ・ペナルティ=5、ギャップ・サイズ・ペナルティ=0.05、ウィンドウ・サイズ=247又は対象アミノ酸配列長のいずれか短い方である。
【0046】
対象配列が、内部欠失ではなくN末端又はC末端の欠失により、クエリー配列よりも短い場合、FASTDBプログラムはグローバル・パーセント同一性を計算するときに対象配列のN末端及びC末端の切断を考慮しないため、パーセント同一性で表される結果は人の手により補正されなければならない。クエリー配列に対して、N末端及びC末端で切断された対象配列の場合、同一性(%)は、対応対象残基とマッチング/アラインメントされない、対象配列のN末端及びC末端であるクエリー配列の残基の数を、クエリー配列の総塩基のパーセントとして計算することにより、補正される。残基がマッチング/アラインメントされるかどうかは、FASTDB配列アラインメントの結果によって見極められる。次いでこのパーセンテージを同一性(%)から差し引き、指定パラメーターを使用して上記FASTDBプログラムによって計算することにより、最終パーセント同一性スコアに達する。この最終パーセント同一性スコアは、本発明の目的に使用されるものである。クエリー配列とマッチング/アラインメントされない対象配列のN末端及びC末端寄りの残基だけ、すなわち対象配列の最も遠いN末端及びC末端の外側のクエリーアミノ酸残基だけが、パーセント同一性スコアを人の手で調節する目的で考慮される。
【0047】
例えば、90アミノ酸残基の対象配列を100残基のクエリー配列とアラインメントすることにより、パーセント同一性を見極める。欠失は対象配列のN末端で発生し、従ってFASTDBアラインメントは、N末端で第1残基とマッチング/アラインメントしない。10個の不対残基は配列の10%(マッチングされないN及びC末端における残基の数/クエリー配列内の総残基数)なので、FASTDBプログラムによって計算されたパーセント同一性スコアから10%を差し引く。残る90残基が完全にマッチングされるのならば、最終パーセント同一性は90%になる。
【0048】
本発明によるムテインにとって好ましい変化は、「保存的」置換として知られているものである。sCD164変異体の保存的アミノ酸置換には、グループのメンバー間の置換がその分子の生物機能を保存することになる十分に類似した物理化学的特性を有するグループ内の同義アミノ酸を含めることができる(Grantham、1974年)。アミノ酸の挿入および欠失はまた、具体的にはそれら挿入および欠失が少数、例えば30個未満、好ましくは10個未満のアミノ酸とのみ関係していて機能コンホメーションにとって重要なアミノ酸、例えばシステイン残基を除去または置換しない場合には、それらの機能を変えることなく上文で規定するような配列中で実施することができることは明らかである。このような欠失および/または挿入により生成したタンパク質およびムテインは、本発明の範囲内にある。
【0049】
好ましくは、この同義アミノ酸グループは表I中で規定されるものである。より好ましくはこの同義アミノ酸グループは表II中で規定されるものであり、最も好ましくはこの同義アミノ酸グループは表III中で規定されるものである。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
本発明において使用するための、sCD164変異体、ポリペプチド又はタンパク質のムテインを得るために使用することができるタンパク質にアミノ酸置換をもたらす例として、任意な既知の方法の工程、例えば米国特許第4,959,314号、第4,588,585号及び第4,737,462号(Mark et al);第5,116,943号(Koths et al.)、第4,965,195号(Namen et al);第4,879,111号(Chong et al);及び第5,017,691号(Lee et al);において提示されているもの;並びに米国特許第4,904,584号(Shaw et al)において提示されているリジン置換タンパク質、が含まれる。
【0054】
用語「融合タンパク質」とは、sCD164変異体を含んで成るポリペプチド、あるいはそのムテイン又はフラグメントであって、別のタンパク質、例えば体液中で長期の滞留時間を有するタンパク質と融合したもの、を指す。従って、sCD164変異体は、別のタンパク質、ポリペプチド等、例えばイムノグロブリン又はそのフラグメントと融合されうる。
【0055】
「機能的誘導体」は、本明細書で使用する場合、sCD164変異体の誘導体をカバーしており、これらは当業界で知られている手段により残基上の側鎖として生じる官能基から調製してもよく、そしてそれらが医薬としての許容性を維持する限り、すなわち、それらが当該タンパク質の活性であって、未修飾のsCD164変異体の活性と実質的に同じか、又はそれより優れている活性を破壊せず、そしてそれを含む組成物に毒性を賦与しない限り、本発明に含まれる。
【0056】
好ましい態様において、機能的誘導体は、1又は複数の官能基に結合した少なくとも1つの部分を含んで成り、これはアミノ酸残基上の1又は複数の側鎖として生じる。前記部分は、好ましくはポリエチレングリコール側鎖を含み、これは抗原性部位をマスクして体液中のsCD164変異体の滞留時間を延ばすことを可能とする。
【0057】
他の誘導体には、カルボキシル基の脂肪族エステル、あるいは、アンモニアと、又は第一級若しくは第二級アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル部分(例えばアルカノイル又は炭素環式アロイル基)あるいはアシル部分により形成した遊離ヒドロキシル基(例えば、セリル又はスレオニル残基のO−アシル誘導体、が含まれる。
【0058】
sCD164変異体の「活性画分」として、本発明は、前記タンパク質単独のポリペプチド鎖の任意なフラグメント又は前駆体、あるいはこれらと、会合分子又はそれらと連結する残基、例えば糖又はリン酸残基、あるいはタンパク質分子又は糖残基自身の凝集物とが一緒になったものをカバーし、但し、前記フラグメントは当初のsCD164変異体と比較した場合、実質的に活性が損なわれてはいない。
【0059】
用語「塩」は、本明細書ではsCD164変異体のカルボキシル基の塩と、アミノ基の酸付加塩の両方を指す。カルボキシル基の塩は、当業者に知られた手段によって形成することができ、そして、無機塩、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、第二鉄塩又は亜鉛塩など、及び例えばアミン、例えばトリエタノールアミン、アルギニン又はリジン、ピペリジン、及びプロカインなどと一緒に形成されたような有機塩基との塩を含む。酸付加塩は、例えば鉱酸、例えば塩酸又は硫酸を有する塩、及び有機酸、例えば酢酸又はシュウ酸を有する塩を含む。当然ながら、そのような塩はみな本発明に関連するsCD164変異体の生体活性を保持しなければならない。
【0060】
任意のCD164変異体、そのムテイン、イソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分の生体活性は、例えば、以下の実施例2に記載のような細胞ベースのアッセイで試験することができる。sCD164変異体は、例えば、それがコンカナバリンA刺激抹消血単核球における少なくとも1つのサイトカイン(例えばTNFα、IFN−γ、IL−2、IL−4、IL−5、又はIL−10から選択されるもの)の放出を阻害する場合に、活性とみなすことができる。当初(未修飾)のsCD164変異体、又は配列番号15のsCD164は、例えば、比較として使用することができ、そしてsCD164変異体の任意のイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分は、原初のsCD164変異体又はsCD164変異体の少なくとも75%のEmax、及び原初のsCD164変異体について算出した値のわずかに10倍のEC50値を有するはずである。
【0061】
好ましい態様において、sCD164変異体の翻訳後修飾は、炎症及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防のための医薬の製造のために使用することができる。好ましくは、これらのタンパク質は、グリコシル化、リン酸化、及び/又はミリストイル化することができる。
【0062】
ヒトCD164の天然の細胞外ドメインは、修飾されることが知られており、例えば、配列番号の以下の位置で修飾される:
a)潜在的なNグリコシル化部位は残基3、9、18、49、54、71、81、98及び123に位置している;
b)潜在的なOグリコシル化部位は、残基11、12、17、20、21、25、26、31、32、89、90、92、96、99、100、104、108、110、111、112、113、115、117、118、119、121、122、125、127、129、130、136に位置している;
c)潜在的なcAMP−及びcGMP−依存プロテインキナーゼリン酸化部位は残基134〜137に位置している;
d)潜在的なプロテインキナーゼCのリン酸化部位は、残基100〜102及び112〜114に位置している;
e)潜在的なカゼインキナーゼIIのリン酸化部位は、残基73〜76及び136〜139に位置している;
f)CD164における潜在的なNミリストイル化部位は残基119に位置している。
【0063】
同様の修飾は、本発明のsCD164変異体の相当のアミノ酸位置において実施されることがある。図1に表されているアラインメントは、相当のアミノ酸位置の決定を容易にするものである。
【0064】
被験者に投与した場合のsCD164変異体の安定性を向上させるための方法として、他のタンパク質から単離したドメインを融合することでダイマー、トリマー等の形成を可能にすることで前記タンパク質ののマルチマーを生成させることである。本発明のポリペプチドの多量体化を可能にするタンパク質配列の例には、タンパク質から単離したドメイン、例えばhCG(WO97/30161、コラーゲンX(WO04/33486)、C4BP(WO04/20639)、Erbタンパク質(WO98/02540)、又はコイルドコイルペプチド(WO01/00814)がある。
【0065】
本発明の好ましい態様において、sCD164変異体の融合タンパク質は、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の一部を含んで成る。
【0066】
更に好ましい態様において、sCD164変異体は、イムノグロブリン融合体を含んで成り、すなわちsCD164変異体は、イムノグロブリンの全部又は一部と融合しているsCD164変異体の全部又は一部を含んで成る融合タンパク質である。かかる融合タンパク質の例は、ヒトイムノグロブリンタンパク質の定常/Fc領域によって表される。治療タンパク質及びイムノグロブリンを含んで成る融合タンパク質を生成させる、異なるストラテジーが知られている(WO91/08298;WO96/08570;WO93/22332;WO04/085478;WO01/03737、WO02/66514)。例えば、sCD164変異体をコードする核酸配列は、sCD164変異体のシグナル配列(又はそれ以外の任意の適切なシグナル/輸出配列)をその5’末端にコードしている核酸配列、あるいはヒトイムノグロブリンのλ重鎖IgG1の定常領域をコードしている核酸(NCBI Acc.No.CAA75302;セグメント246−477)をその3’末端にコードしている核酸配列、と融合した発現ベクター内にクローニングすることができる(その逆も同様である)。生じたベクターを使用して、CHO又はHEK293宿主細胞系を形質転換することができ、そして安定して発現するクローンであって、sCD164変異体をN末端に有するとともに、C末端にIgG1配列を有する組換え融合タンパク質を分泌するするクローンを選択することができる。このクローンは、産生をスケールアップし、そして培養液由来の組換え融合タンパク質を培養液を精製するために使用することができる。あるいは、ヒトイムノグロブリンλ重鎖IgG1の定常領域及びsCD164変異体をコードする核酸の位置は反転することができ、そして生じたタンパク質は発現し、そして適切なシグナル/輸出配列を用いることで分泌させることができる。
【0067】
sCD164変異体とIg部分との融合は直接的であってもよく、あるいは、1〜3アミノ酸残基ほどの短い長さか、又はより長い、例えば13アミノ酸残基の長さのショートリンカーペプチドを介してもよい。前記リンカーは、例えば、配列E−F−M(Glu−Phe−Met)のトリペプチドでもよく、あるいはGlu−Phe−Gly−Ala−Gly−Leu−Val−Leu−Val−Leu−Gly−Gly−Gln−Phe−Metを含んで成る13アミノ酸のリンカーであってもよく、これはsCD164変異体配列とイムノグロブリン配列との間に導入されている。生じた融合タンパク質は好ましくは、例えば体液中での長期の滞留時間(半減期)、比活性の増大、発現レベルの増大、又は融合タンパク質の精製が容易であるなどの向上した特性を有している。
【0068】
好ましい態様において、sCD164変異体は、Ig分子の定常領域と融合している。好ましくは、重鎖領域と融合しており、例えばヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインのような重鎖領域である。Ig分子の他のイソ型も本発明の融合タンパク質の生成に適しており、例えばイソ型IgG2又はIgG4、あるいは他のIgクラス、例えばIgM又はIgAが挙げられる。融合タンパク質はモノマー又はマルチマー、ヘテロ−又はホモマルチマーであってもよい。追加のアミノ酸置換は、Ig融合タンパク質のFc部分に対し、例えばFc受容体に対する結合を低下させる目的で、又は他の不所望な特性を低下させる目的で実施してもよい。sCD164−Fc変異体の一例として、配列番号16のタンパク質がある。Fc部分が変異したsCD164−Fc変異体の一例にはsCD164−Fcm(配列番号18)がある。
【0069】
本発明の更なる観点は、炎症及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防のための薬物の製造のためのsCD164変異体をコードするポリヌクレオチドの使用に関するものであり、当該sCD164変異体は:
a. 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
b. シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
c. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
d. (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
e. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
f. (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される。
【0070】
本発明により処置又は予防されうる炎症及び/又は自己免疫疾患は、任意の炎症又は自己免疫疾患又は症状であってもよく、そして好ましくは、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、若年性突発性関節炎、乾癬性関節炎、骨関節炎、脊椎関節症、炎症性大腸炎、内毒素血、クローン病、スティル病、ブドウ膜炎、ヴェグナー肉芽腫、ベーチェット病、強皮症、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、壊疽性膿皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、心筋炎、乾癬、全身性硬化、C型肝炎、アレルギー、アレルギー性炎、アレルギー性気道炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腸間膜梗塞、卒中、潰瘍性結腸炎、アレルギー喘息、気管支喘息、腸間膜梗塞、卒中、線維症、虚血後の筋肉、腎臓及び心臓の炎症、皮膚炎、糸球体腎炎、若年発症I型糖尿病、過敏症症候群、ウィルス性又は急性肝臓疾患、アルコール性肝不全、結核、敗血性ショック、HIV感染、移植片対宿主病(GVHD)、及びアテローム性動脈硬化から選択される。
【0071】
本発明が包含する皮膚炎症関連障害は、乾癬、アトピー性皮膚炎、皮膚の焼けるような痛み及び皮膚炎でありうる。皮膚炎症関連障害は、接触過敏症障害、例えば接触性皮膚炎であって、急性又は慢性の炎症が皮膚に接触する物質によって生じ、そして毒性(刺激)又はアレルギー反応を生じさせるものであってもよく、これらも本発明に含まれる。
【0072】
肝炎は、特定の肝炎ウイルス、アルコール、薬物、毒素又は寄生虫によって通常生じる肝臓の炎症である。急性ウイルス性肝炎は、特定の肝親和性(hepatotoropic)ウイルス(A、B、C、D、E及びG型肝炎ウイルス)によって生じる瀰漫性肝炎である。慢性肝炎は、急性肝炎と肝硬変との間のあらゆる障害を包含している。
【0073】
潰瘍性結腸炎は、大腸(結腸)の慢性炎症である。潰瘍性結腸炎を有する患者において、結腸の内層の潰瘍及び炎症は、腹痛、下痢及び直腸出血の症候を引き起こす。潰瘍性結腸炎はクローン病と称される腸の別の炎症状態と密接に関連している。また、それらはしばしば炎症性腸疾患(IBD)とも称される。潰瘍性結腸炎及びクローン病は、何十年にもわたって続くことがある慢性症状である。
【0074】
関節炎は、関節の炎症を包含する疾患である。当該関節は、腫脹、凝り、圧痛、発赤及び熱を示す。関節症状は、減量、発熱又は衰弱を伴うことがある。これらの症候が2週間以上続く場合、関節リウマチのような関節炎が原因の場合がある。関節炎はまた、敗血症性関節炎をもたらしうる感染によっても生じることがある。非常に一般的なタイプの関節炎は、変形性関節疾患(変形性関節症)である。関節炎は変形性関節症の顕著な特徴ではない。
【0075】
本発明の更なる観点は:
a. 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
b. シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
c. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
d. (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
e. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
f. (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択されるsCD164変異体に関する。
【0076】
更なる観点において、本発明は、本発明のsCD164変異体をコードするポリヌクレオチド配列に関する。当該ポリヌクレオチドは、例えばベクター、例えば発現ベクター内に存在することがある。本発明のsCD164変異体をコードするポリヌクレオチド配列は、従って、炎症及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防のための薬物の製造に使用することができる。これらのポリヌクレオチドはまた、組換えsCD164変異体を発現するヒト以外の動物及び植物の産生に使用することもできる。当該動物又は植物はトランスジェニックであってもよく、すなわち、それらの細胞はそれぞれsCD164変異体をコードする遺伝子を含み、あるいは、当該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、動物又は植物の体細胞内に、例えば哺乳類の乳腺分泌細胞内に導入することができる。好ましい態様において、ヒト以外の動物とは、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、又はウサギなどの哺乳類である。トランスジェニック動物、例えば哺乳類を作る方法は当業者にとって周知であり、そしてあらゆるそのような方法を本発明に使用することができる。更に、組換え可溶性ポリペプタンパク質ポリペプチドをミルク中に分泌することができるトランスジェニック哺乳類を作ることもできる。典型的には、コードポリペプチドは、前記タンパク質をミルク中に分泌することを保証するためのシグナル配列を含む。
【0077】
本発明のsCD164変異体をコードするポリヌクレオチドは、in vitro及びin vivoで利用するための組成物又は医薬組成物に調製することもできる。ポリペプチドは、「裸」のポリヌクレオチドとして投与することもできる(WO90/11092;WO95/11307;Tascon et al., 1996を参照のこと)。裸のポリヌクレオチドを細胞に伝達することは、微粒子銃(バイオリスティック)を用いて行ってもよく、前記粒子はDNAコーティングしたマイクロプロジェクタイルであり、それらは細胞膜を貫通して、細胞を殺すことなく細胞に進入するほど高速に加速され、例えばこれらはKlein et al. 1990で説明されている。更なる態様において、本発明のポリヌクレオチドは、リポソーム内で捕捉することができる(Ghosh及びBacchawat, (1991) Targeted Diagn Ther 4:87-103; Wong et al. (1980) Gene 10:87-94; Nicolau et al. (1987) Methods Enzymol 149:157-76)。これらのリポソームはさらに、リポソーム膜内にレプチン、トリグリセリド、アフィポネクチン(afiponectin)又はその他の既知のLSRリガンドを組み込むことにより、LSRを発現させる細胞にターゲティングすることができる。所望の宿主細胞に注射することができるベクターの量は、注射部位によって変化する。指標となる量として、動物、好ましくは哺乳類、例えばマウスの体内に0.1〜100μgのベクターが注射される。当該ベクターはまた、in vitroで哺乳類細胞、好ましくは処置される動物から予め採集した宿主細胞、更に好ましくは体細胞、例えば筋肉細胞に導入することができる。次の段階において、所望とするsCD164ポリペプチド又は所望とするそのフラグメントをコードするベクターで形質転換した細胞は、組換えタンパク質を局所的又は全身的に体内に送達するために、動物の体内に再導入される。
【0078】
in vivoでの投与のために、ポリヌクレオチドは、任意の適当な処方で、任意の範囲の濃度(例えば1〜500μg/ml、好ましくは50〜100μg/ml)で、任意の容積(例えば1〜100ml、好ましくは1〜20ml)で投与することができ、そして任意の回数(例えば、1、2、3、5、10回)で、任意の頻度(例えば1、2、3、5、10毎、又は任意の日数)で投与することができる。適当な濃度、頻度、投与形態等は、特定のポリヌクレオチド、ベクター、動物等に依存し、そして当業者が容易に決定できるものである。
【0079】
通常、本発明のsCD164変異体は、組換えDNA関連技術及び化学合成技術などの当業界で知られている任意の手順によって調製することができる。
【0080】
組換えDNA関連技術は、sCD164変異体をコードするポリヌクレオチドを最初に生成させることで、当該変異体の産生を可能にする。これらの核酸は、ゲノムDNA、又はヒトCD164の完全配列(配列番号17)又は他のあらゆる関連の相同配列を含むベクターからPCRによって得ることができる。所望の配列と相補的なオリゴヌクレオチドプライマーは、その後のクローニングのために特定の制限エンドヌクレアーゼによる消化を可能にする制限エンドヌクレアーゼ配列を含んでおり、これは、可溶性タンパク質をコードする配列がポリAシグナル及び残りのその他の配列に関して適切に発現プラスミド内に配置されることを保証するように注意して含まれる。
【0081】
一般的な遺伝子組換え技術を用いることで、これらのポリヌクレオチドは、原核又は真核宿主細胞を形質転換するのに使用するウイルス又はプラスミド起源の複製可能な発現ベクター内に、エピソームベクター又は非相同/相同組換えベクター、並びに形質転換−、感染−、沈殿−、又はトランスフェクション−ベースの技術を用いてクローニングすることができる。これらのベクターは、原核又は真核宿主細胞における組換えタンパク質の発現を、それら自身の転写開始/終結制御配列であって、前記細胞内で構成的に活性であり、誘導可能であるように選択される配列の制御下で可能にする。実質的にかかる細胞に富んでいる細胞系は、注目のタンパク質を発現する安定な細胞系を単離することで提供することができる。
【0082】
多くの書籍及び概説は、ベクター及び原核又は真核宿主細胞を用いてどのように組換えタンパク質をクローニングし、そして産生するかについての教示を提供しており、例えばOxford University Pressによって発行されたシリーズ「A Practical Approach」におけるいくつかの表題(「DNA Cloning 2:Expression Systems」1995; 「DNA Cloning 4: Mammalian Systems」1996; 「Protein Expression」1999;「Protein Purification Techniques」2001)によって提供されている。
【0083】
典型的な発現ベクターは下記のもの:
a)DNAコード配列、及び
b)発現カセット;
を含んで成り、ここで、前記配列(a)は、配列(b)に含まれる組織特異的又は構成的プロモーターと作用可能に関連している。
【0084】
発現ベクターは、当業者に知られた哺乳動物、酵母、昆虫又は細菌発現系のいずれかである。商業的に入手可能なベクター及び発現システムは、Genetics Institute(Cambridge, MA)、Stratagene(La Jolla, California)、Promega(Madison, Wisconsin)、及びInvitrogen (San Diego, California)を含む種々の供給元から入手可能である。所望の場合には、発現を向上させ、そして適正なタンパク質の折り畳みを容易にするために、配列のコドン構成及びコドン対合を、発現ベクターが導入される特定の発現生物に関して最適化することができる(米国特許第5,082,767号明細書;Gustafsson C et al., 2004)。
【0085】
一般に、組換え発現ベクターは、複製起点、宿主細胞の形質転換を可能にする選択マーカー、及び下流構造配列の転写を導くための高発現遺伝子由来のプロモーターを含むことになる。異種構造配列は適切なフェーズで翻訳の開始及び終止配列、及び好ましくは翻訳されたタンパク質の細胞膜周辺腔は細胞外媒質内への分泌を導くことができるリーダー配列とで構成される。ベクターが、哺乳動物宿主細胞内の所望の配列をトランスフェクションして発現させるように適合されている特定の実施態様の場合、好ましいベクターは、所望の宿主内の複製起点、好適なプロモーター及びエンハンサー、及び所要のリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライシング・ドナー及びアクセプター部位、転写終止配列、及び5'-フランキング非転写配列を含むことになる。SV40ウィルス・ゲノム由来のDNA配列、例えばSV40起源、初期プロモーター、エンハンサー、スプライシング及びポリアデニル化部位を使用することにより、所要の非転写遺伝因子を提供することができる。
【0086】
本発明の発現ベクターにおいて使用される好適なプロモーター領域は、異種遺伝子が発現される細胞宿主を考慮して選択される。当該核酸配列の発現を制御するために採用された特定のプロモーターは、ターゲットされる細胞内の核酸の発現を導くことができる限り、重要であるとは考えられない。従って、ヒト細胞がターゲティングされる場合、ヒト細胞内で発現されることが可能なプロモーターに隣接して、このプロモーターの制御下に核酸コード領域を位置決めすることが好ましい。このプロモーターは例えばヒト・プロモーター又はウィルス・プロモーターである。使用されるプロモーターは構成的又は誘導的であってよい。
【0087】
好適なプロモーターは、これが発現を制御する核酸に対して異種であってよく、或いは、発現されるべきコード配列を含有する天然型ポリヌクレオチドに対して内因性であってもよい。加えて、プロモーターは、コンストラクトプロモーター/コード配列が挿入されている組換えベクター配列に対して一般に異種のものである。
【0088】
例えばCAT(クロラムフェニコール・トランスフェラーゼ)ベクター及びより好ましくはpKK232−8及びpCM7ベクターを使用して、任意の所望の遺伝子から、プロモーター領域を選択することができる。好ましい細菌プロモーターはLacI、LacZ、T3又はT7バクテリオファージRNAポリメラーゼ・プロモーター、gpt、ラムダPR、PL及びtrpプロモーター(欧州特許第0036776号)、ポリヘドリン・プロモーター、又はバキュロウィルスに由来するp10タンパク質プロモーター(Kit Novagen)(Smith他(1983) Mol Cell Biol 3(12):2156-65; O'Reilly他、1992)、ラムダPRプロモーター又はtrcプロモーターである。真核細胞プロモーターは、CMV前初期HSVチミジン・キナーゼ、初期及び後期SV40、レトロウィルス由来LTR、及びマウス・メタロチオネイン−Lを含む。加えて、特定の細胞タイプに対して特異的なプロモーター、例えば脂肪組織、筋肉組織又は肝臓における発現を容易にするプロモーターを選択することもできる。好都合なベクター及びプロモーターの選択は、当業者の技術レベルに十分に含まれる。
【0089】
cDNAインサートを使用する場合、当業者は、典型的には、遺伝子転写物を適正にポリアデニル化するためのポリアデニル化シグナルを含めることを望む。ポリアデニル化シグナルの性質は、本発明の実施の成功にとって重要であるとは考えられず、そしてこのような任意の配列、例えばヒト成長ホルモン及びSV40ポリアデニル化シグナルを採用することができる。また、発現カセットの要素として、ターミネーターも考えられる。これらの要素は、メッセージ・レベルを高め、そしてカセットからその他の配列内へのリードスルーを最小化するのに役立つことができる。
【0090】
ベクターは、追加の非コード配列を含有することもできる。これらの配列の一例としては、非コード5'及び3'配列、ベクター配列、精製、プローブ又はプライミングのために使用される配列が挙げられる。例えば、異種配列は、転写、及びmRNAプロセシング、例えばリボソーム結合及びmRNAの安定性において役割を演じることができる転写型、非翻訳型配列を含む。
【0091】
選択マーカーは、発現コンストラクトを含有する細胞の容易な同定を可能にする細胞に、同定可能な変化をもたらす。形質転換された宿主細胞を選択するための選択マーカー遺伝子は、好ましくはジヒドロ葉酸レダクターゼ又は真核細胞培養に対するネオマイシン抵抗性、S.セレビシアエ(cerevisiae)のためのTRP1、E.コリ(coli)におけるテトラサイクリン、リファンピシン又はアンピリジン耐性、又はマイコバクテリアのためのレバン・サッカラーゼであり、この後者のマーカーはネガティブ選択マーカーである。
【0092】
代表例ではあるが非限定的な一例として、細菌の使用のための有用な発現ベクターは、選択マーカー、及びpBR322(ATCC 37017)の遺伝因子を含む商業的に入手可能なプラスミドに由来する細菌複製起点を含むことができる。このような商業的ベクターの一例としては、pKK223−3(Pharmacia, Uppsala, Sweden)及びpGEM1(Promega Biotec, Madison, WI, USA)が挙げられる。
【0093】
その他の多数の好適なベクター、例えば下記細菌ベクターが当業者に知られており、そして商業的に入手可能である:pTrc-His, pET30-His, pQE70, pQE60, pQE-9(Qiagen), pbs, pD10, phagescript, psiX174, pbluescript SK, pbsks, pNH8A, pNH16A, pNH18A, pNH46A(Stratagene); ptrc99a, pKK223-3, pKK233-3, pDR540, pRIT5(Pharmacia); pWLNEO, pSV2CAT, pOG44, pXT1, pSG(Stratagene);pSVK3, pBPV, pMSG, pSVL(Pharmacia);pQE-30(QIAexpress)。
【0094】
ポリペプチドの発現に適したベクターは、昆虫細胞及び昆虫細胞系において播種することができるバキュロウィルス・ベクターである。具体的な好適な宿主ベクターは、pVL 1392/1393バキュロウィルス転移ベクター(Pharmingen)であり、このベクターは、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)に由来するSF9細胞系(ATCC番号CRL 1711)をトランスフェクションするのに使用される。別の好適なバキュロウィルス・ベクターは当業者に知られており、例えばFastBacHTである。バキュロウィルス発現系におけるAPM1球状ヘッド・ポリペプチドの発現に適したその他のベクターの一例としては、Chai他(1993; Biotechnol Appl Biochem. Dec;18(第3部):259-73);Vlasak他(1983; Eur J Biochem Sep 1; 135(1):123-6);及びLenhard他(1996; Gene Mar 9;169(2):187-90)によって記載されたものが挙げられる。
【0095】
ポリペプチドの発現に適した更なるベクターは、哺乳動物ベクターである。多数の好適なベクター系が当業者に知られており、これらのベクター系は例えばpcDNA4HisMax、pcDNA3.1Hygro-His及びpcDNA3.1Hygroである。
【0096】
ポリペプチドの発現に適した更なるベクターは、ウィルス・ベクター、例えばアデノウィルスに由来するベクターである。本発明による好ましいアデノウィルス・ベクターは、Feldman及びSteg 1996 並びにOhno et al., 1994によって記載されたベクターである。
【0097】
レトロウィルス・ベクター及びアデノ随伴ウィルス・ベクターは、in vivoの外因性ポリヌクレオチドを、具体的にはヒトを含む哺乳動物に伝達するために選択される組換え遺伝子送達系であることが一般に理解されている。これらのベクターは遺伝子を細胞内に効率的に送達するのを可能にし、伝達した核酸は、宿主の染色体DNA内に安定的に組み込まれる。
【0098】
ポリペプチドを発現させる別の可能性は、相同組換えによってゲノムの適切な遺伝子内に調節配列を導入し、ひいては調節配列と、発現の誘導が必要とされる遺伝子とを作用可能に連結させることにより、遺伝子を内因的に活性化することである(WO91/09955;WO02/10372)。
【0099】
宿主細胞は原核細胞又は真核細胞でもよい。好ましいのは真核宿主、例えば哺乳動物細胞、例えばヒト、サル、マウス及びチャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞である。なぜならばこれらの細胞は、正しい部位における正しい折り畳み又はグリコシル化を含む翻訳後修飾を、タンパク質分子に提供するからである。酵母細胞も、グリコシル化を含む翻訳後ペプチド修飾を行うことができる。酵母における所望のタンパク質の生成のために利用することができる強力なプロモーター配列及び高コピー数のプラスミドを利用する多数の組換えDNA法が存在する。酵母は、クローニングされた哺乳動物遺伝子生成物中のリーダー配列を認識し、リーダー配列を担持するペプチド(すなわちプレペプチド)を分泌する。
【0100】
可溶性タンパク質を発現させるためのレシピエントとして使用される好ましい宿主細胞は下記の通りである:
a)原核宿主細胞:エスケリッチャ・コリ(Escherichia coli)菌株(すなわち、DH5-α菌株)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、及びシュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトマイセス(Streptomyces)及びスタフィロコッカス(Staphylococcus)のような種に由来する菌株;
b)真核宿主細胞:HeLa細胞(ATCC番号CCL2; ATCC番号CCL2.1, ATCC番号CCL2.2)、Cv 1細胞(ATCC番号CCL70)、COS細胞(ATCC番号CRL1650;番号CRL1651)、Sf-9細胞(ATCC番号CRL1711)、C127細胞(ATCC番号CRL-1804)、3T3(ATCC番号CRL-6361)、CHO(ATCC番号CCL-61)、ヒト腎臓293(ATCC番号45504;番号CRL-1573)、BHK(ECACC番号84100501;番号84111301)、PLC細胞、HepG2、及びHep3B。
【0101】
真核宿主(例えば酵母、昆虫又は哺乳動物の細胞)の場合、宿主の性質に応じて、種々異なる転写調節配列及び翻訳調節配列を採用することができる。これらの配列は、ウィルス源、例えばアデノウィルス、ウシ乳頭腫ウィルス、又はシミアンウィルスなどに由来してよい。この場合、調節シグナルは、高レベルの発現を有する特定の遺伝子と関係する。その例は、ヘルペス・ウィルスのTKプロモーター、SV40初期プロモーター、酵母gal4遺伝子プロモーターなどである。抑制及び活性化を可能にする転写開始調節シグナルを選択することができるので、遺伝子の発現を調節することができる。導入されたDNAによって安定的に形質転換されている細胞は、発現ベクターを含有する宿主細胞の選択を可能にする1又は複数のマーカーを導入することによっても選択することができる。マーカーは、栄養要求性宿主、殺生剤、例えば抗生物質、又は重金属、例えば銅、などに光栄養を提供することもできる。選択マーカー遺伝子は、発現されるべきDNA遺伝子配列に直接的に連結するか、又は、同時トランスフェクションによって同じ細胞内に導入することができる。本発明のタンパク質の最適な合成のために、付加的な要素を必要とすることもできる。
【0102】
可溶性タンパク質をコードする核酸が、開始部位としての役割を果たすためのメチオニンを欠いている場合、常用の技術を用いて、核酸の第1コドンの次に、開始用メチオニンを導入することができる。同様に、sCD164ポリペプチドcDNAに由来するインサートがポリAシグナルを欠いている場合、この配列は、例えば、BglI及びSalI制限エンドヌクレアーゼ酵素を使用して、pSG5(Stratagene)からポリAシグナルをスプライシングし、そしてこれを哺乳動物発現ベクターpXT1(Stratagene)内に組み込むことにより、コンストラクトに加えることができる。pXT1はLTR及びモロニー・マウス白血病ウィルスに由来するgag遺伝子の一部である、コンストラクト内のLTRの位置は、効率的な安定したトランスフェクションを可能にする。ベクターは、単純ヘルペス・チミジン・キナーゼ・プロモーターと、選択可能ネオマイシン遺伝子とを含む。
【0103】
sCD164変異体は、例えば固相合成及び液相合成によって産生することもできる。固相合成として、例えば、合成されるべきペプチドのC末端に対応するアミノ酸は、有機溶剤中に不溶性の支持体に結合され、そして反応の交互反復によって、すなわち、アミノ基を有するアミノ酸と、適切な保護基で保護された側鎖官能基とがC末端からN末端へ順番に1つづつ縮合される一方の反応と、樹脂に結合されたアミノ酸、又はペプチドのアミノ基の保護基が放出される他方の反応との交互の反復によって、ペプチド鎖はこのように延長される。
【0104】
固相合成法は、使用する保護基のタイプに応じて、大きくtBoc法とFmoc法とに分類される。典型的に使用される保護基は、tBoc(t-ブトキシカルボニル)、Cl−Z(2-クロロベンジルオキシカルボニル)、Br−Z(2-ブロモベンジルオキシカルボニル)、Bzl(ベンジル)、Fmoc(9-フルオレニルメトキシカルボニル)、Mbh(4,4'-ジメトキシジベンズヒドリル)、Mtr(4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル)、Trt(トリチル)、Tos(トシル)、Z(ベンジルオキシカルボニル)、及びCl2−Bzl(2,6-ジクロロベンジル)をアミノ基用に;NO2(ニトロ)及びPmc(2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル)をグアニジノ基用に;そしてtBu(t-ブチル)をヒドロキシル用に含む。所望のペプチドの合成後、ペプチドは、脱保護反応を施され、固体支持体から切断される。このようなペプチド切断反応は、Boc法の場合にはフッ化水素又はトリフルオロメタンスルホン酸を用いて、またFmoc法の場合にはTFAを用いて行われる。本発明のタンパク質に匹敵する長さの全体的に合成のタンパク質が、文献において開示されている(Brown A et al., 1996; Muir, 2003; Casi, 2003)。
【0105】
可溶性タンパク質の化学合成は、非天然型アミノ酸を利用することによりタンパク質の構造及び機能の天然型の範囲を拡張するのを可能にする(Anthony-Cahill及びMagliery, 2002)。これらの分子は、可溶性タンパク質の配列及び/又は構造上でデザインすることにより、アミノ酸側鎖、アミノ酸キラリティ、及び/又はペプチド主鎖のレベルで化学的に修飾することができる残基を選択し、次いで、関連特性、例えば効能、精製し易さ、半減期を向上させることができる。含まれるべきアミノ酸に対する好ましい代わりの「同義」群は、表IIで定義するものである。これらの化合物を合成して開発する技術は、当業者によく知られている(Hruby, 2000; Golebiowski, 2001; Villain et al., 2001, 国際公開第02/10195号パンフレット)。in vitro及びin vivo双方の翻訳系を用いて、非天然型アミノ酸をタンパク質内に組み込んで、タンパク質構造及び機能を調査及び/又は改善する種々の方法も文献において開示されている(Dougherty, 2000)。
【0106】
本発明の更なる観点は、本発明のsCD164変異体と特異的に反応する抗体、あるいはそのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分に関する。
【0107】
抗体は、モノクローナル抗体又は合成抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス抗体若しくはキメラ抗体であってもよい。
【0108】
本発明はまた、sCD164変異体の製造方法であって、本発明の宿主細胞を前記sCD164変異体の発現にとって適当な条件下で培養する段階を含んで成る方法に関する。
【0109】
前記細胞は、特定の細胞型に適合した任意の細胞培養液中で培養することができる。宿主細胞が哺乳類細胞である場合、培地はウシ胎児血清を含んでもよく、あるいは、好ましくは無血清のものでもよい。無血清培地の例には、例えばDMEMが含まれ、これは任意にHam’s F12又はProCho5培地を含む。
【0110】
本発明の更なる観点において、sCD164変異体の産生方法は、宿主細胞の細胞培養上清からsCD164変異体を単離する段階を含んで成る。sCD164変異体が上清中に分泌されない場合、これは細胞からも単離されうる。
【0111】
好ましい態様において、産生方法は更にsCD164変異体を精製する段階を含んで成る。
【0112】
本発明に従い使用することができる合成又は組換え可溶性タンパク質の精製は、この目的について知られている方法のいずれか、すなわち、沈殿、クロマトグラフィ(アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィ、ホスフォセルロース・クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、アフィニティ・クロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイト・クロマトグラフィ及びレクチン・クロマトグラフィ)、電気泳動、分画抽出、塩分別、又は遠心分離などを伴う任意の常用な手順によって行うことができる。
【0113】
優先して使用されうる精製手順は、モノクローナル抗体、又は十分な親和性及び特異性で、標的タンパク質と結合する(直接sCD164変異体に対して、又は、それが融合タンパク質である場合には、異種の配列、例えばヒスチジンタグ又はIg部分)任意の他の化学基、を用いるアフィニティークロマトグラフィーである。結合基は、生成してからカラム内に含まれるゲルマトリックス上に固定される。前記タンパク質を含む純粋でない調製物はカラムを通過する。可溶性タンパク質は親和力によってカラムと結合し、一方、不純物は通過することになる。残りの不純物を洗い流した後、pH又はイオン強度を変化させることによって、可溶性タンパク質をゲルから溶離することができる。或いは、HPLC(高性能液体クロマトグラフィ)を用いることもできる。溶離は、タンパク質精製のために一般に採用される水-アセトニトリル系溶剤を用いて行うことができる。
【0114】
好ましい態様において、本発明は、sCD164変異体を医薬組成物に製剤化する段階を更に含んで成る生産方法、及び本発明のsCD164変異体を含んで成る組成物又は医薬組成物、に関する。
【0115】
更なる観点において、本発明は、sCD164変異体、ムテイン、イソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分を含んで成る組成物又は医薬組成物に関する。かかる組成物は、更に追加の活性化合物、例えば、免疫抑制剤又は抗炎症物質を、同時に、連続して、又は別々に使用するために含んで成ることがある。本発明のsCD164変異体と併用することができる化合物には、例えばインターフェロン、好ましくはインターフェロン−β、又はTNF−αアンタゴニスト、例えばTNF受容体p55又はp75の可溶性型であって、TBF結合タンパク質I及びII(TBP−1、TBP−2)として知られているもの、あるいはそれらの誘導体が含まれる。
【0116】
本発明の医薬組成物はまた、医薬として許容される任意の好適な担体、動物への投与に適した、最終的には助剤(例えば賦形剤、安定剤又は希釈剤)を含む生物学的に適合可能なビヒクル及び添加剤(例えば生理食塩水)を含有することもできる。これらの助剤は、活性化合物を処理して医薬として使用することができる調製物にするのを容易にする。医薬組成物を任意の許容される方法で調製することにより、投与形態のニーズを満たすことができる。例えば生体材料及び薬物送達のための他のポリマー、並びに特定の投与形態を有効にするための種々異なる技術及びモデルが、文献において開示されている(Cleland, 2001; Luo B及びPrestwich, 2001)。
【0117】
「医薬として許容される」とは、活性成分の生体活性の効果を妨害せず、しかも投与される宿主に対して毒性でない任意の担体を含むものとする。例えば、非経口投与の場合、上記活性成分は、ビヒクル、例えば生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン及びリンガー溶液中で注射するための単位剤形で調製することができる。
【0118】
活性成分の所望の血中濃度を確立するために、認められた任意の投与形態を用いることができ、またこの投与形態を当業者によって決定することができる。例えば投与は種々の非経口経路、例えば経皮、静脈内、硬膜外、局所、皮内、髄腔内、直接心室内、腹腔内、経皮(例えば徐放性製剤)、筋内、腹腔内、鼻腔内、肺内(吸入)、眼内、経口又は口内の経路によって行うことができる。非経口投与はボーラス注射によって、又は所定の時間にわたる漸次的な潅流によって行うことができる。その他の特に好ましい投与経路は、エアロゾル及びデポー製剤である。本発明の薬剤の徐放性製剤、具体的にはデポー剤が特に考えられる。
【0119】
非経口投与のための調製物は、滅菌水性又は非水性溶液、懸濁液、及びエマルジョンを含み、これらは、当業者に知られた助剤又は賦形剤を含有することができ、ルーチンな方法に従って調製することができる。加えて、好適な油性注射懸濁液として、活性化合物の懸濁液を投与することができる。好適な親油性溶剤又はビヒクルは、脂肪油、例えばごま油、又は合成脂肪酸エステル、例えばごま油、又は合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチル又はトリグリセリドを含む。懸濁液の粘度を高める物質を含有することができる水性注射懸濁液は例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/又はデキストランを含む。任意には、懸濁液は安定剤を含有することもできる。医薬組成物は、注射による投与に適した溶液を含み、また、約0.01〜99パーセント、好ましくは約20〜75パーセントの活性化合物を、賦形剤と一緒に含有する。直腸投与することができる組成物は坐剤を含む。
【0120】
非経口(例えば静脈内、皮下、筋内)投与の場合、活性タンパク質は、医薬として許容される非経口ビヒクル(例えば水、生理食塩水、デキストロース溶液)、及び等張性(例えばマニトール)又は化学安定性(例えば保存剤及び緩衝液)を維持する添加剤と組み合わされた溶液、懸濁液、エマルジョン又は凍結乾燥粉末として調製することができる。製剤は、一般に用いられる技術によって滅菌される。経粘膜投与の場合、浸透されるべきバリアに適した浸透剤が製剤中に使用される。このような浸透剤は当業者に概ね知られている。
【0121】
経口で摂取することができる医薬として又は生理学的に許容される調製物は、ゼラチンから形成された押込型カプセル、並びにゼラチン及び可塑剤、例えばグリセロール又はソルビトールから形成された軟質の密封カプセルを含む。押込型カプセルは、充填剤、例えばラクトース、バインダー、例えば澱粉、及び/又は滑剤、例えばタルク又はステアリン酸マグネシウム、及び任意には安定剤との混和物中に活性成分を含有することができる。軟質カプセルの場合、活性化合物は好適な液体、例えば脂肪油、液体パラフィン又は液体ポリエチレングリコール中に溶解又は懸濁させることができる。加えて安定剤を添加することができる。経口投与のための全ての製剤は、このような投与に適した量であるべきである。
【0122】
口腔投与の場合、組成物は、常用の様式で調製された錠剤又はトローチ剤の形態を成すことができる。吸入による投与の場合、本発明に従って使用するための化合物は、好適な気体推進剤、例えば二酸化炭素の使用とともに、圧縮パック又はネブライザーからエアロゾル噴霧の形態で好都合に送達される。圧縮型エアロゾルの場合、投与単位は、計量送達のための弁を設けることにより決定することができる。化合物と好適な粉末ベース、例えばラクトース又は澱粉との粉末混合物を含有する、吸入器又は通気器において使用するためのカプセル及びカートリッジ、例えばゼラチンを調製することができる。
【0123】
注射、例えばボーラス注射又は連続輸液による非経口投与のために、化合物を調製することができる。注射用製剤は、保存剤が添加された単位剤形、例えばアンプル又は多数回投与容器の形態で提供することができる。組成物は、水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンのような形態を成すことができ、そして、調製剤、例えば懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤を含有することができる。或いは、活性成分は、使用前に好適なビヒクル、例えば発熱物質なしの滅菌水で戻すための粉末又は凍結乾燥形態を成していてもよい。
【0124】
前述の製剤に加えて、化合物はデポー調製物として調製することもできる。このような長時間作用性製剤は、埋込み(例えば皮下又は筋内)によって、又は筋内注射によって投与することができる。こうして、例えば化合物は、好適な高分子又は疎水性材料(例えば許容される油中のエマルジョンとして)と、又はイオン交換樹脂と一緒に調製するか、又は控えめに可溶性の誘導体として、例えば難溶性の塩として調製することができる。或いは、化合物は、徐放システム、例えば治療薬を有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを使用して送達することもできる。種々の徐放性材料が確立されており、また当業者によってよく知られている。徐放性カプセルは、これらの化学的な性質に応じて、数週間から100日よりも長い期間にわたって化合物を放出することができる。
【0125】
言うまでもなく、投与量は、レシピエントの年齢、性別、健康状態および体重、もしあるならば並行して行われている治療の種類、治療の頻度、及び所望の効果の性質に依存することになる。投与量は、当業者によって理解されまた決定可能であるように、個々の患者に合わせて調整される。各治療に必要な総投与量は、多数回の投与又は単回投与によって投与することができる。本発明の医薬組成物は、単独で、又はその状態に対する、又はその状態のその他の症状に対するその他の治療との組み合わせにおいて投与することができる。通常、活性成分の一日投与量は、体重1キログラム当たり0.01〜100ミリグラム又はそれ以上から成る。通常、所望の結果を得るためには、1日1キログラム当たり1〜40ミリグラムを分割量で又は徐放形態で与えることが有効である。2回目又はその後の投与は、その個体に対する初回又は前回の投与量と同じか、またはこれよりも少ないか又は多い投与量で行うことができる。
【0126】
更なる観点において、本発明は、炎症及び/又は自己免疫疾患を処置及び/又は予防する方法であって、それを必要とする宿主に対し、有効量のsCD164変異体を登用する方法に関するものであり、当該sCD164変異体は:
a. 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
b. シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
c. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
d. (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
e. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
f. (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される。
【0127】
「有効量」とは、疾患の経過及び重症度に影響を与えるのに十分であって、このような病理の軽減又は緩和を招く量を意味する。有効量は投与経路及び患者の症状に依存する。
【0128】
組成物の投与量は、もちろん、処置される患者、患者の体重、病気の重症度、投与形態、及び処方する医師の判断に依存することになる。単回又は複数回で個体に投与される投与量は、薬物動態学的特性、投与経路、患者の状態及び特徴(性別、年齢、体重、健康状態、大きさ)、症状の程度、併用療法、治療頻度及び所望される効果を含む、種々のファクターに応じて変化する。
【0129】
本発明の物質は毎日又は一日おきに、より低い頻度で投与することができる。好ましくは、本発明の物質のうちの1又は複数が、1週間当たり1回、2回又は3回にわたって投与される。1日量は、所望の結果を得るのに効果的な、数回に分けた形態又は徐放形態で与えられる。2回目又はその後の投与は、その個体に対する初回又は前回の投与量と同じか、またはこれよりも少ないか又は多い投与量で行うことができる。2回目又は後続の投与は疾患発症中又は疾患発症前に行うことができる。
【0130】
本発明によれば、本発明の物質は、他の治療計画又は治療薬(多剤療法)の前、同時又は後に個体に予防的又は治療的に治療上有効な量で投与することができる。他の治療薬と同時に投与される活性物質を、同じ又は異なる組成物において投与することができる。
【0131】
本発明の方法で使用する任意のsCD164変異体について、治療上の有効量は細胞培養アッセイから最初に評価することができる。例えば、投与量を動物モデルにおいて定めることにより、循環濃度範囲を得ることができる。この循環濃度範囲は、in vitroにおいてサイトカイン発現を減少させることが示された濃度点又は濃度範囲を含む。このような情報を用いて、ヒトにおける有用な投与量をより正確に決定することができる。治療上有効な量は、患者の症状を改善する化合物量を意味する。このような化合物の毒性及び治療効力は、例えばLD50(試験個体群の50%を致死させる投与量)及びED50(個体群の50%において治療上効果的な投与量)を決定するための、細胞培養又は試験動物における標準的な薬学手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との投与量比は、治療指数であり、そしてLD50とED50との比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量範囲を定めるのに使用することができる。このような化合物の投与量は好ましくは、毒性がほとんど又は全くないED50を含む循環濃度範囲内にある。投与量は、採用される投与形態及び利用される投与経路に応じてこの範囲内で変化することができる。正確な製剤、投与経路及び投与量は、患者の状態に関して個々の医師によって選択することができる(例えばFingl et al., 1975, 「The Pharmacological Basis of Therapeutics」第1章を参照のこと)。
【0132】
本発明のsCD164変異体はまた、活性誘導体、タンパク質分解耐性修飾型、コンジュゲート、複合体、画分、前駆体、及び/又は塩として、製造、処方、投与することができ、あるいは炎症及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防のための医薬の製造に使用することができる。
【0133】
コンジュゲート又は複合体は、放射性標識、ビオチン、蛍光標識、細胞毒性薬、薬物送達薬の中から選択された分子と一緒に形成することができる。当業者に知られた分子及び方法を用いて、これらのコンジュゲート又は複合体を生成することにより、例えばその他のタンパク質(放射性又は蛍光標識、ビオチン)との相互作用の検出を可能にするか、又は治療効力を向上させるか(細胞毒性薬)、又はポリマー、例えばポリエチレングリコール及びその他の天然型又は合成型ポリマーを使用して薬物送達効力を向上させる(Pillai and Panchagnula, 2001)ことができる。
【0134】
ポリマーは任意の分子量を有していてよく、分枝型又は非分枝型であってよい。ポリエチレングリコールの場合、好ましい分子量は、取り扱い易さ及び製造のし易さのために、約1 kDa〜約100kDa(「約」という用語は、ポリエチレングリコールの調製の際に、分子によっては、言及された分子量よりも多いか又は少ないことを示す)である。所望の治療プロフィール(例えば所望される徐放継続期間、生体活性に対して効果がある場合にはそれらの効果、取り扱い易さ、治療タンパク質又は類似体に対するポリエチレングリコールの抗原性及びその他の既知の効果の度合い又は欠乏)に応じて、他のサイズを用いることができる。
【0135】
ポリエチレングリコール分子(又はその他の化学部分)は、ポリペプチドの機能ドメイン又は抗原ドメインに対する効果を考慮しつつ、ポリペプチドに結合されるべきである。当業者にとって利用可能な多数の結合方法、例えば欧州特許0 401 384号明細書(本明細書中に参考のため引用する(PEGとG−CSFとのカップリング))。また、塩化トレシルを使用してGM−CSFのペグ化を報告するMalik et al (1992) Exp Hematol 20(8):1028-35を参照されたい。例えば、ポリエチレングリコールは、反応性基、例えば遊離アミノ基又は遊離カルボキシル基を介して、アミノ酸残基を通して共有結合することができる。反応性基は、活性化されたポリエチレングリコール分子が結合され得る基である。遊離アミノ基を有するアミノ酸残基は、リジン残基及びN末端アミノ酸残基を含んでよく、遊離カルボキシル基を有するアミノ酸残基は、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基及びC末端アミノ酸残基を含んでよい。ポリエチレングリコール分子に結合するための反応性基として、スルフヒドリル基を使用することもできる。治療目的で好ましいのは、アミノ基における結合、例えばN末端又はリジン基における結合である。
【0136】
−CONH−ペプチド結合を、下記のもの:(CH2NH)還元型結合;(NHCO)レトロ-インベルソ結合;(CH2−O)メチレン-オキシ結合;(CH2−S)チオメチレン結合;(CH2CH20)カルバ結合;(CO−CH2)セトメチレン結合;(CHOH−CH2)ヒドロキシエチレン結合;(N−N)結合;E−アルセン結合;又は−CH=CH−結合、のうちの1又は複数と置換することにより、タンパク質分解に対して耐性があるポリペプチドを生成することができる。従って、本発明は、可溶性sCD164、又は少なくとも1つのペプチド結合が上記のように修飾されているその変異体をも含む。加えて、アミノ酸はL又はDの本体内部にキラリティを有する。態様によっては、アミノ酸のキラリティを変化させて本体内部に半減期を延長することが好ましい。このように、態様によっては、1又は複数のアミノ酸が好ましくはL形態を成す。他の実施態様の場合、1又は複数のアミノ酸が好ましくはD形態を成す。
【0137】
in vivoでの脊椎動物の細胞の内部に可溶性タンパク質を送達する方法の具体的な1実施態様は、生理学的に許容される担体と、その細胞を含む組織の間質空間内に当該ポリペプチドを動作可能なようにコードする裸のポリヌクレオチドとを含む調製物を導入するステップを含む。これにより、裸のポリヌクレオチドは、細胞内部内に取り込まれ、生理学的効果を有する。このことは特にin vitroの転移にあてはまるが、しかしin vivoに適用することもできる。
【0138】
本発明の更なる観点は、個体における1又は複数のサイトカインの発現を阻害する方法であって、前記個体に対し、本発明のsCD164変異体を含んで成る方法に関する。サイトカインはTNFα、IFN−γ、IL−2、IL−4、IL−5、又はIL−10であってもよい。これらの方法は、必要としている個体に対し、前記医薬組成物又は後述する生理学的に許容される組成物を提供又は投与することを含んで成り、炎症及び/又は自己免疫疾患を予防及び/又は処置するための方法とみなされうる。
【0139】
本発明はまた、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドを含んで成る可溶性タンパク質を含む新規のスクリーニング・アッセイ及びキットであって、サイトカインの分泌及び発現の阻害剤としての化合物の特性を同定して比較するために使用することができるもの、も提供する。当該キット及びアッセイは、本発明のsCD164変異体であって、最終的に標識されているか、あるいは固体支持体上に固定されているものを含んで成ることがある。
【0140】
学術論文又は要約、公開済又は未公開の米国又は外国特許出願明細書、公開済の米国又は外国特許明細書、又はその他の参考文献を含む、本明細書中に引用した全ての参考文献の全体が、引用参考文献に提供された全てのデータ、表、図面及び本文を含めて、引用により本明細書に組み入れられる。加えて、本明細書中で引用された参考文献中で引用された文献の内容全体も引用により本明細書に組み入れられる。
【0141】
既知の方法ステップ、常用の方法ステップ、既知の方法又は常用の方法に言及していることは、本発明の任意の特徴、説明又は実施態様が関連技術において開示、教示又は示唆されていることを認めていることでは断じてない。
【0142】
具体的な態様の前記説明は本発明の一般的な性質を完全に明らかにするので、当業者の知識(本明細書中に引用された参考文献の内容を含む)を応用することにより、他者が不必要な試験を行うことなしに、また本発明の全体的な概念を逸脱することなしに、種々の用途のためにこのような特定の実施態様を変更し、且つ/又は、改変することができる。従ってこのような改変及び変更は意味において、本明細書中で提示した教示及び指針に基づく、開示された実施態様の同等物の範囲であるものとする。言うまでもなく、本明細書中の語法又は用語は、説明を目的としたものであり、本発明を限定するものではないので、本発明の用語又は語法は、当業者の知識と組み合わせて、本明細書中に提供された教示内容及び指針に照らして、当業者により解釈されうる。
【0143】
本発明をこのように説明した結果、以下の実施例が例示を目的として提供されており、本発明を限定することを意図していないことが当該実施例を参照することで更に容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0144】
略語
AUC 濃度曲線下面積
ip 腹腔内
iv 静脈内
sc 皮下
s.e.m. 標準誤差
【0145】
実施例1:sCD164の哺乳類細胞におけるクローニング、ハイ・スループット発現及び精製
ヒトCD164の完全細胞外領域をコードするcDNA配列 (NCBI Acc. 番号NP_006007;配列番号17の残基1−163)を、Gateway(登録商標)クローニング技術(Invitrogen)を用いてサブクローニングすることにより、発現プラスミドを生成した。この発現プラスミドは、ヒトCD164の細胞外領域の成熟形態(140アミノ酸、すなわち163−配列番号15の23アミノ酸のシグナルペプチド)を、C末端のヘキサ−ヒスチジンタグと融合させた可溶性融合タンパク質として発現させそして分泌するのを可能にする。当該タグはアフィニティー精製において役割を果たす。分泌は、分泌は天然型CD164シグナル配列(NCBI Acc. No. NP_006007/配列番号17の残基1−23)によって駆動する。
【0146】
ハイ・スループット発現のための哺乳動物細胞として、エプスタイン−バール・ウィルス核抗原を発現させるヒト胚腎臓293細胞(HEK293-EBNA, Invitrogen)を選択した。
【0147】
Ex-cell VPRO無血清培地(種ストック、維持培地、JRH Biosciences)中の懸濁液中で、細胞を維持した。トランスフェクションから16時間〜20時間前(トランスフェクション第−1日)に、細胞を、それぞれ2%FBS(ウシ胎仔血清)播種培地(JRH Biosciences)とともに50mlのDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)/F12(1:1)を含有している2xT225フラスコ内で播種した(2x105細胞/mlの密度)。翌日(トランスフェクション第0日)、JetPEI(登録商標)試薬(2μl/μg プラスミド;PolyPlus-トランスフェクション)を使用して、トランスフェクションを行った。フラスコ毎に、113μgのsCD164発現プラスミドを、2.3μgの緑蛍光タンパク質(GFP)発現プラスミドと一緒に同時トランスフェクションした。次いで、トランスフェクション混合物を2xT225フラスコに添加し、そして37℃(5%CO2)で6日間にわたってインキュベートした。GFPによる蛍光を定性的に評価するために、第1日及び第6日に顕微鏡(Axiovert 10 Zeiss)によって、ポジティブトランスフェクションを確認した。第6日(採集日)に、2つのフラスコからの上清(100ml)をプールし、そして遠心分離し(4℃、400g)、固有の識別子が付けられたポット内に入れた。
【0148】
C末端His標識付き組換えタンパク質を発現させる細胞に由来する100ml及び500mlの培地試料から始めて、精製プロセスを実施した。試料を1倍量の低温緩衝液A(50 mM NaH2PO4; 600 mM NaCl; 8.7 % (w/v)グリセロール、pH7.5)で希釈することにより、最終溶液をそれぞれ200 ml及び1000 mlにした。試料を0.22 μm滅菌フィルター(Millipore, 500 mlフィルター・ユニット)を通して濾過し、そして四角い滅菌培地瓶(Nalgene)内に4℃で保持した。
【0149】
精製は、自動サンプル・ローダー(Labomatic)に接続されたVISIONワークステーション(Applied Biosystems)において、4℃で実施した。精製手順は、2つの連続ステップ、つまりNiイオン(4.6 x 50 mm, 0.83 ml)で負荷されたPoros 20 MC(Applied Biosystems)カラム上の金属アフィニティ・クロマトグラフィ、及びこれに続くSephadex G-25培地(Amersham Pharmacia)カラム(1.0 x 10 cm)上のゲル濾過から成った。
【0150】
第1のクロマトグラフィ・ステップに際して、金属アフィニティ・カラム(Ni-カラム)を30カラムボリュームのEDTA溶液(100 mM EDTA; 1M NaCl; pH 8.0)で再生させ、15カラムボリュームの100 mM NiSO4溶液で洗浄することによりNiイオンで再負荷し、10カラムボリュームの緩衝液Aで洗浄し、続いて7カラムボリュームの緩衝液B(50 mM NaH2PO4; 600 mM NaCl; 8.7 % (w/v)グリセロール、400 mM;イミダゾール、pH7.5)で洗浄し、そして最後に15 mMイミダゾールを含有する15カラムボリュームの緩衝液Aで平衡させた。試料をLabomatic サンプル・ローダーによって、200 mlサンプル・ループ内に移し、続いて10 ml/分の流速でNi金属アフィニティ・カラム上に装填した。1000 ml試料に対して、装填手順を5回繰り返した。N-カラムを12倍量の緩衝液Aで洗浄し、続いて、20mMイミダゾールを含有する、28カラムボリュームの緩衝液Aで洗浄した。この洗浄後、ゆるく付着した混入タンパク質をカラムから溶離した。組換えHis標識付きタンパク質を、流速2ml/分で10カラムボリュームの緩衝液Bを用いて、Ni-カラムから最後に溶離し、溶離されたタンパク質を1.6ml画分で採集した。
【0151】
第2クロマトグラフィ・ステップに際して、Sephadex G-25ゲル濾過カラムを2 mlの緩衝液D(1.137 M NaCl;2.7 mM KCl; 1.5 mM KH2PO4;8 mM Na2HPO4;pH 7.2)で再生させ、続いて、4カラムボリュームの緩衝液C(137 mM NaCl; 2.7 mM KCl; 1.5 mM KH2PO4;8 mM Na2HPO4;20 %(w/v)グリセロール;pH 7.4)で平衡化した。Ni-カラムから溶離されたピーク画分が、VISION上の一体化されたサンプル・ローダーを通して、自動的にSephadex G-25カラム上にローディングし、そしてタンパク質を流速2 ml/分で緩衝液Cを用いて溶離した。脱塩された試料を2.2 ml画分で回収した。画分を0.22 μm滅菌遠心分離フィルター(Millipore)を通して濾過し、等分し、凍結し、そして-80℃で保存した。試料のアリコートを、抗His抗体を用いたクーマシー染色及びウェスタン・ブロットによって、SDS-PAGE(4-12 % NuPAGEゲル; Novex)上で分析した。
【0152】
0.1 %クーマシー・ブルーR250染色溶液(30 %メタノール、10%酢酸)中で室温で1時間にわたって、NuPAGEゲルをインキュベートすることにより、クーマシー染色を実施した。続いて、バックグラウンドがクリアになり、タンパク質バンドがはっきりと目に見えるまで、ゲルを20 %メタノール、7.5 %酢酸中で脱染した。
【0153】
ウェスタン・ブロットに際しては、NuPAGEゲルからニトロセルロース膜へ、290mAで1時間にわたって4℃で、タンパク質を電気移動した。膜を緩衝液E(137 mM NaCl;2.7 mM KCl; 1.5 mM KH2PO4;8 mM Na2HPO4;0.1 % Tween 20, pH 7.4)中の5%粉乳で1時間にわたって室温でブロックし、続いて、緩衝液E中の2.5 %粉乳中の2種のウサギ・ポリクローナル抗His抗体(G-18及びH-15、それぞれ0.2μg/ml;Santa Cruz)と一緒に、4℃で一晩にわたってインキュベートした。室温でさらに1時間にわたってインキュベートした後、膜を緩衝液E(3 x 10分)で洗浄し、そして次いで2.5 %粉乳を含有する緩衝液E中に1/3000で希釈された二次HRP接合型抗ウサギ抗体(DAKO, HRP 0399)と一緒にインキュベートした。緩衝液Eで洗浄(3 x 10分)した後、膜を1分間にわたってECLキット(Amersham Pharmacia)で現像した。膜を続いてHyperfilm(Amersham Pharmacia)に晒し、フィルムを現像し、そしてウェスタン・ブロット画像を視覚的に分析した。
【0154】
ウシ血清アルブミンをスタンダードとして用いるBCAタンパク質アッセイ・キット(Pierce)を使用して、試料中のタンパク質の濃度を決定した。
【0155】
sCD164変異体Ex4,5,6(配列番号1)、Ex1(配列番号3)、Ex1,6(配列番号4)、Ex1,4,6(配列番号5)、Δ2,3(配列番号6)、Δ4(配列番号8)、Ext1,2,3(配列番号9)、Δ6(配列番号11)、Δ5(配列番号12)、A22E,G80E(配列番号12)及びN9a、N18A(配列番号14)、sCD164−Fc(配列番号16)及びsCD164−Fcm(配列番号18)は、sCD164(配列番号15)について上文に記載した発現ベクター系、宿主細胞及び精製方法を用いて生成し、そして精製した。
【0156】
実施例2:細胞ベース・アッセイによって測定したサイトカイン放出に対するsCD164変異体の効果(コンカナバリンA誘発型)
コンカナバリンA(Con A)誘発型サイトカイン分泌に対するsCD164変異体の効果を、in vitroでのサイトカインビーズアレイ(CBA)で測定した。測定したサイトカインには、Il−2、IFN−γ、TNF−α、IL−5、IL−4及びIl−10を含めた。
【0157】
下記装置及びソフトウェアを使用した:
・96ウェル・マイクロタイター・プレート・フォトメーターEX(Labsystem)
・Graph Pad Software(Prism)
・Excelソフトウェア(Microsoft)
・フローサイトメーター(Becton-Dickinson)
・CBA Analysisソフトウェア
・細胞培養のためのフード
・細胞培養のためのインキュベーター
・遠心分離機
・ピペット
【0158】
下記材料及び試薬を使用した:
・バフィー・コート(遠心した500mlのヒト全血から得られた白血球及び血小板の濃縮物)
・DMEM(GIBCO)
・ヒト血清型AB(SIGMA)
・L−グルタミン(GIBCO)
・ペニシリン-ストレプトマイシン(GIBCO)
・フィコール(PHARMACIA)
・細胞培養用96ウェル・マイクロタイター・プレート(COSTAR)
・コンカナバリンA(SIGMA)
・ヒトTh1/Th2サイトカインCBAキット(Becton-Dickinson)
・PBS(GIBCO)
・Falcon 50ml 滅菌管(Becton-Dickinson)
・ウシ血清アルブミン(BSA; SIGMA)
・グリセロール(MERCK)
・ジメチルスルホキシド(DMSO; SIGMA)
・96ウェル・マイクロタイター・プレートコニカルボトム(NUNC)
・autoMACS(登録商標)セパレーター及びMACS細胞単離キット(Miltenyl Biotec)
【0159】
細胞を、細胞ベース・アッセイのために下記のように単離した。
【0160】
ヒト末梢血単核球(PBMC)を、DMEMで希釈したバフィー・コートから単離した。その後、50mlのFalcon管内の15mlのフィコール層上に、希釈血液25mlをゆっくりと添加し、そして管を遠心分離した(2000rpm、20分、室温、中断無し)。次いで界面相(環)を採集し、そして細胞を25mlのDMEMで洗浄し、続いて遠心分離ステップを行った(1200rpm、5分)。この手順を3回繰り返した。バフィー・コートはほぼ600 x 106の総細胞数をもたらした。
【0161】
細胞ベース・アッセイに適用した条件は下記のものである:
- 2%グリセロール中最終量100 μlにおいて、96ウェル・プレートの1ウェル当たりの細胞数が100,000、
- 5 ng/mlのマイトジェン・コンカナバリンA(ConA)、
- 各アッセイに対して48時間。
【0162】
下記のものを混合することにより、各ウェル内に細胞を準備した:
- DMEM + 2.5%ヒト血清 + 1% L-グルタミン + 1%ペニシリン-ストレプトマイシン中で希釈された80 μlの細胞1.25 x 106個/ml;
- PBS + 20%グリセロール中で希釈されたsCD164変異体を含有する10 μlの溶液(タンパク質の最終希釈率は1/10である);
- 10 μl ConA。
【0163】
48時間後、細胞の上清を採集し、そしてヒト・サイトカインをヒトTh1/Th2サイトカインCBAキット(Becton-Dickinson)によって測定した。
【0164】
マイクロウェル・プレートから生じた試料と混合する前に数秒間にわたって強力にボルテックスすることにより、混合されたヒトTh1/Th2捕捉ビーズ懸濁液を調製した。分析する各アッセイにつき、それぞれの捕捉ビーズの10 μlアリコートを、「混合済みの捕捉ビーズ」とラベルを付けた1つの管内に添加した。ビーズ混合物を十分にボルテックスした。アッセイ希釈剤(20 μlの上清 + 60 μlのアッセイ希釈剤)を使用して、上清を希釈した(1:4)。次いで、試料を96ウェル・マイクロタイター・プレートコニカルボトム(Nunc)内に移す前に、試料希釈物を混合した。
【0165】
希釈した上清50 μlを96ウェル・マイクロタイター・プレートコニカルボトム(Nunc)内に添加することにより、ヒトTh1/Th2サイトカインCBAアッセイを実施した。混合された捕捉ビーズ50 μlを添加し、続いてヒトTh1/Th2 PE検出試薬50 μlを添加した。次いでプレートを3時間にわたってRTでインキュベートし、そして直接的な露光から保護し、続いて5分間にわたって1500rpmで遠心分離した。次いで上清を慎重に廃棄した。後続のステップにおいて、洗浄緩衝液200 μlをそれぞれのウェルに2回添加し、5分間にわたって1500rpmで遠心分離し、そして上清を慎重に廃棄した。その後、洗浄緩衝液130 μlをそれぞれのウェルに添加することにより、ビーズ・ペレットを再懸濁した。試料をフローサイトメーター上で最後に分析した。CBA アプリケーション・ソフトウェア、Activity Base及びMicrosoft Excel ソフトウェアを使用して、データを分析した。
【0166】
ヒトPBMC細胞(混合物)及び単離された細胞からのサイトカイン放出に対するsCD164変異体の効果を、6種のサイトカイン:TNF-α、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5又はIL-10に関して測定した。結果を図3〜12に表す。
【0167】
前記変異体の活性の評価のために、最大の効果がもたらされるsCD164変異体の濃度(Emax)、及び50%の活性がもたらされるsCD164変異体の濃度を決定した。結果を図13に要約する。
【0168】
実施例3:細胞ベースアッセイにおいて測定したサイトカイン放出に対するsCD164及びsCD164変異体の効果(T細胞受容体を媒介するPBMCの活性化)
sCD164(配列番号15)、並びにsCD164変異体であるsCD164−Fc(配列番号16)及びsCD164−Fcm(配列番号18)の、T細胞受容体を媒介とした活性化(抗ヒトCD3及び抗ヒトCD28抗体による)の後のPBMC細胞のサイトカイン分泌(IL−2、TNF−α及びIL−4)に対する効果。
【0169】
材料と試薬
−バフィー・コート
−DMEM GIBCO Ref.:21331−020
−ヒト血清AB型 SIGMA Ref.:H1513
−L−グルタミン GIBCO Ref.:250 030−020
−ペニシリン-ストレプトマイシン GIBCO Ref.:150 070−063
−フィコール PHARMACIA Ref.:17−1440−03
−細胞培養用96ウェル・マイクロタイター・プレート 平板 COSTAR Ref.:3596
−細胞培養用96ウェル・マイクロタイター・プレート 丸底 COSTAR Ref.:3799
−水溶性デキサメタゾン SIGMA Ref.:D2915
−ヒトTh1/Th2サイトカインCBAキット Becton−Dickinson Ref.:550749
−PBS GIBCO Ref.:14190−094
−FALCON 50ml 滅菌済み Becton−Dickinson Ref.:2070
−精製済みの抗ヒトCD3 BD Pharmingen Ref.:555336
−精製済みの抗ヒトCD28 BD Pharmingen Ref.:555725
【0170】
バフィーコート由来のヒトPBMCの精製
バフィーコートをDMEMで1〜2倍に希釈した。その後、30mlの希釈した血液をゆっくりと50mlのFalconチューブ内の15mlのフィコール層上に添加し、そして当該チューブを遠心した(2500rpm、20分、室温、中断無し)。
【0171】
次いで界面相(環)を回収し、そして細胞を25mlのDMEMで洗浄し、続いて遠心分離ステップを行った(1500rpm、5分)。この手順を3回繰り返した。
【0172】
活性試験
− DMEM+2.5%ヒト血清+1%L−グルタミン+1%ペニシリン+ストレプトマイシンで希釈した180μlの1.1×106細胞/mlを、丸底の96ウェル・マイクロタイタープレートに添加した。
− sCD164変異体又はsCD164変異体を含む20μlの以下の溶液をウェル毎に添加した:
・sCD164 用量反応 109μg/ml〜0.21μg/mlに10点
・sCD164−Fc 用量反応 120μg/ml〜0.23μg/mlに10点
・sCD164−Fcm 用量反応 130μg/ml〜0.25μg/mlに10点
− 混合物を2〜3時間37℃、5%CO2でインキュベートした。
【0173】
ヒトPBMCの刺激
− 丸底の96ウェル・マイクロタイタープレートにおいて、PBS1ml当たり5μgの50μlの抗ヒトCD3溶液を各ウェルに添加した。
− 混合物を一晩4℃でインキュベートし、そして3回PBSで洗浄した。
− 90μlのPBMC細胞混合物とsCD164又はsCD164変異体を添加。
− ウェル当たり10μlの抗ヒトCD28溶液を10μg/ml PBSで添加。
− 48時間後、細胞の上清を回収し、そしてヒトサイトカインを特異的なイムノアッセイ(ELISA、R&D Systemsキット)及びヒトTh1/Th2サイトカインCBAキット Becton−Dickinsonで測定した。
【0174】
結果(図14)
試験した3つの化合物、sCD164(図14A)、sCD164−Fc変異体(図14B)及びsCD164−Fcm変異体(図14C)は、サイトカインTNF−α、Il−2及びIL−4の放出を同等の効果で低下させた(EC50=1〜10mcg/ml)。
【0175】
実施例4:動物モデルの免疫細胞動員に対するsCD164変異体の効果−チオグリコレート誘発型白血球腹膜動員アッセイ
免疫細胞動員に対するsCD164変異体の効果は、チオグリコレート誘発型白血球腹膜動員アッセイを用いて試験した。本実施例においては、ssCD164−Fc(配列番号16)が単球/マクロファージの動員を低下させる能力を評価した。
【0176】
材料と方法
腹腔炎を8週齢のC3Hマウス(Elevage Janvier)にチオグリコレートを注射(1.5%、40ml/kg、ip)することで誘導した。sCD164−Fc又はビヒクル(PBS/0.02%BSA)は、皮下又は静注経路で、0.003、0.03及び0.3mg/kgの用量で、チオグリコレートの曝露15分前及び24時間後に注射した。曝露の48時間後、動物を屠殺し、そして腹腔の洗浄を2×5mlのPBS−1mM EDTA(+4℃)を用いて実施した。遠心(10分3000rpm)後、ペレットを1mlのPBSに再懸濁した。腹膜細胞をBeckman/Coulterカウンターを用いて計数した。抗炎症化合物であるデキサメタゾン(1mg/kg)を参照ポジティブコントロールとして使用した。
【0177】
結果
iv経路から0.003、0.03及び0.3mg/kgの用量で投与したsCD164−Fcは、マクロファージの腹膜動員をそれぞれ32%、38%及び34%有意に低下させた。デキサメタゾン(1mg/kg、iv)は、マクロファージの腹膜動員を94%低下させた。
【0178】
sc経路から0.3mg/kgの用量で投与したsCD164−Fcは、マクロファージの腹膜動員を若干ではあるが有意に低下させた(−27%)。デキサメタゾン(1mg/kg、sc)は、マクロファージの腹膜動員を61%低下させた。
【0179】
このモデルにおいて、細胞動員の低下に対するsCD164変異体のポジティブな効果は、前記分子が炎症組織への細胞浸潤を軽減する能力について示唆している。
【0180】
sCD164(配列番号15)及びsCD164−Fc(配列番号16)の有効性は、独立した一対一の実験において比較した。両分子は同様の有効性を示し、これは祖のえっかFcエフェクター機能がチオグリコレートモデルの生体活性に必要とされないことを示唆している。
【0181】
実施例5:動物モデルにおける免疫細胞動員に対するsCD164変異体の効果−マウスにおけるLPS誘発型TNFα放出
このモデルにおける従来の実験は、sCD164がLPS導入後のTNFα放出を低下させる能力について証明している。以下の実験において、sCD164(配列番号15)、及びsCD164変異体であるsCD164−Fc(配列番号16)の一対一の比較を実施した。
【0182】
材料と方法
C3Hマウス(Elevage Janvier)(8週齢)に、E.コリ(E.coli)のLPS(O111:B4、Sigma、0.3mg/kg、ip)を試験分子の投与から15分後に与えた。LPSは滅菌生理食塩水で溶解した。デキサメタゾン(0.1mg/kg、sc)を参照として使用した。24時間後、動物を屠殺し、そして血液をサンプリングした。TNF−αの血漿レベルは、ELISAキット(R&D)を用いて血清中のものについて決定した。統計分析は、ANOVA検定、続くDunnetの事後検定により決定した。
【0183】
結果
皮下注射したデキサメタゾンは、LPS誘発型TNF−αを有意に減少させることができた(P<0.001)。LPSの15分前に注射済みの、試験した両sCD164分子(sCD164及びsCD164−Fc)は、1mg/kgの試験した用量で、LPS誘発型のTNFα放出を有意に減少させることができた(P<0.001)(図15を参照のこと)。
【0184】
実施例6:コンカナバリンA誘発型肝炎のマウスモデルにおけるsCD164変異体の効果
複数のsCD164変異体が、ConA刺激したヒト抹消血単核球(PBMC)による特定のサイトカインの分泌をin vitroで阻害することが示した(上記実施例2及び3を参照のこと)。サイトカインはT細胞誘発型のConA誘発型肝炎において必須の役割を果たしており(Seino et al. 2001, Kusters, 1996; Toyonaga et al. 1994)、本モデルをsCD164変異体を更に試験するために使用した。
【0185】
材料と方法
8週齢のC3Hマウス(Elevage Janvier)に、コンカナバリンA(Sigma、20mg/kg、 iv 酢酸ナトリウムバッファー中(pH5.0))を、sCD164−Fc(0.1、0.3及び1mg/kg)又はビヒクル(PBS/0.02%BSA)の皮下投与から1時間後に与えた。18時間後、動物を屠殺し、そして血液をサンプリングした。トランスアミナーゼの血清レベル(アラニントランスアミナーゼ(ALAT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT))は、臨床分析機(日立)を用いて、血清中のものについて決定した。デキサメタゾン(0.3mg/kg、sc)を参照として使用した。
【0186】
結果(図16)
0.1、0.3及び1mg/kgの用量で、scから投与したsCD164−Fc(配列番号16)は、コンカナバリンAによって誘導される血清トランスアミナーゼの上昇を有意に低下させた(それぞれ、ALAT:−52%、−69%及び−59%;ASAT:−54%、−64%及び−63%)。デキサメタゾン(0.3mg/kg、sc)は、血清トランスアミナーゼのレベルを96%低下させた。
【0187】
sCD164(配列番号15)及びsCD164−Fc(配列番号16)の有効性は、独立した一対一の実験において比較した。いずれの分子も類似の有効性をもたらし、その結果、Fcエフェクター機能がコンカナバリンAモデルにおける生体活性に必要ないことが示唆された。
【0188】
実施例7:マウスの接触過敏症モデル(CHS)におけるsCD164変異体の効果
接触過敏症は、皮膚の炎症に関連する障害のT細胞媒介型モデルである。このモデルにおいて、1型のサイトカイン反応を誘導するハプテンDNFB(ジニトロフルオロベンゼン)を使用した。
【0189】
材料と方法
8〜12週齢の雌のBalb/cを、35μlの新たに調製した感作溶液(0.5%のジニトロフルオロベンゼン−DNFB/アセトン/油、4:1)を剃毛した腹部に適用することで−5及び−4日目に感作した。0日目に、10μlの曝露溶液(0.2%DNFB/アセトニトリル/油、4:1)を右耳の背部側及び腹部側に適用することで、CHS反応を誘発させた(曝露、CH)。sCD164−Fc(配列番号16)を、DNGB曝露から30分後にiv経路で0.1、0.3、13mg/kg投与した。コントロールとして、左耳に等量のビヒクル(アセトン/オリーブ油)を曝露した。1mg/kgのデキサメタゾン及び30mg/kgのEnbrel(登録商標)(エタネルセプト−可溶性TNF受容体)をポジティブコントロールとして用い、sc経路で投与した。正確なカリパーを用いて、耳の表面上の3つの異なる部位について耳の厚さを曝露から24、48及び72時間目に測定した。
【0190】
結果
図17に示す通り、sCD164−Fcは、耳の腫脹/浮腫を0.3及び1mg/kgのiv投与で有意に軽減させることができた(図17A;p<0.01;2way−ANOVAの後、ボンフェローニ検定)。1mg/kgでiv経路により到達した最大効果は全実験(曝露後0〜72時間)を通じ−53%であった(図17C)。
【0191】
sCD164−Fcの有効性は、それぞれ1mg/kg及び30mg/kgをscから全身投与したデキサメタゾン及びEnbrel(登録商標)(エタネルセプト−可溶性TNF受容体)と比較した(図17Cに示す)。sCD164−Fcを1mg/kg用いてAUC(濃度曲線下面積)評価上で達成した有効性(0−72時間)は、デキサメタゾン及びEnbrel(登録商標)の双方に匹敵する。
【0192】
実施例8:デキストラン硫酸ナトリウム誘発型の潰瘍性結腸炎の疾患モデルにおけるsCD164変異体の効果
結腸炎のDSSモデルは、ヒトへの影響と幾つかの点で、例えば結腸粘膜におけるマクロファージの浸潤及び炎症性サイトカイン(すなわち、TNFα、IL−1β、IL−6)のアップレギュレーションについて類似している。
【0193】
材料と方法
潰瘍性結腸炎(UC)を、飲料水で(経口)投与したデキストラン硫酸ナトリウム(DSS4%)によって雌のマウス(Balb/c、20〜22g、Elevage Janvier)に誘導した。当該マウスは、7日間DSSに自由にアクセスできた。体重は毎日測定した。UCの重症度は、排泄物の構成及び血液の存在を評価する臨床スコア[(0=硬い、1=ゆるい、2=下痢)及び(0=血液無し、1=潜血、2=全体的な直腸出血)]によって評価した。当該疾患の誘発から7日後、動物を屠殺した。結腸の長さ及び重量を決定し、そして重量/長さ/100g体重の比率を算出した。脾臓の重量も決定した。血液をサンプリングし、特定のELISAを用いて血清アミロイドタンパク質(SAA)を決定した。
【0194】
試験物質又はビヒクル(PBS/0.02%BSA)は、UCの誘発から3,4,5及び5日目に投与した。Enbrel(登録商標)(1mg/kg、sc)は参照化合物として使用した。3つの研究を以下の表の通り実施した:
【表5】
【0195】
研究3において、結腸内のIL−1βの含量も測定した。
【0196】
結果
研究1:(図18、A−F)
sCD164−Fcm(3mg/kg、ip)は、以下のものを有意に抑制した:結腸の縮小(長さ −21%、図18C)、血清アミロイドタンパク質Aの増大(−36%、図18E)及び浮腫(−27%、図18F)。臨床スコアは、sCD164−Fcmを1及び3mg/kgの用量でip投与した場合に、6日目に改善した(それぞれ−23%及び−32%;図18D)。重量/長さの比率及び体重の減少は、sCD164−Fcmによって影響を受けなかった(図18D)。
【0197】
Enbrel(登録商標)(1mg/kg、ip)は、以下のものを有意に抑制した::結腸の縮小(長さ −24%及び重量/長さの比率 −29%)、6日目の臨床スコア(−23%)及び血清アミロイドタンパク質Aの増大(−37%)。体重の減少及び脾腫は抑制されなかった。
【0198】
研究2:(図19、A−F)
sCD164−Fcm(1mg/kg、sc)は以下のものを有意に低下させた:臨床スコア(6日目(−22%))、体重減少(5〜7日目)、結腸の縮小(長さ(−18%)及び重量/長さの比率(−46%))。血清アミロイドタンパク質Aの増大は、sCD164−Fcmを3mg/kgの用量でsc投与した場合に有意に低下した。0.3mg/kgの用量で、sc投与した場合、sCD164−Fcmは更に以下のものを抑制した:結腸の縮小(長さ(−13%)及び重量/長さの比率(−26%))。脾腫は改善されなかった。
【0199】
Enbrel(登録商標)(1mg/kg、sc)は、以下のものを有意に抑制した::臨床スコア(5日目(−21%))、結腸の縮小(長さ −17%及び重量/長さの比率 −31%)、及び血清アミロイドタンパク質Aの増大(−36%)。脾腫は改善されなかった。
【0200】
研究3:(図20、A−G)
sCD164−Fcm(0.3及び1mg/kg、sc)は以下のものを有意に改善した:結腸の縮小(それぞれ−18%及び−26%)及び重量/長さの比率(それぞれ−19%及び−25%))及び結腸におけるIL−1βの含量(−22%)。sCD164−Fcmは、臨床スコア及び脾腫を改善させる傾向にあったが、体重の減少及び血清アミロイドAタンパク質に対してはなんら効果を有さなかった。
【0201】
sCD164−Fc(1mg/kg、sc)は結腸の縮小及び脾腫を有意に改善した。sCD164−Fcmは、臨床スコア及び結腸におけるIL−1βの含量を改善させる傾向にあったが、体重の減少及び血清アミロイドAタンパク質に対してはなんら効果を有さなかった。
【0202】
Enbrel(登録商標)(1mg/kg、sc)は、以下のものを有意に軽減した:臨床スコア(5日目(−38%)、7日目(−30%))、結腸の縮小(長さ −29%)及び重量/長さの比率(−33%))、脾腫(−27%)及び泰淳の減少(5日目(−83%))。Enbrel(登録商標)は、血清アミロイドタンパク質A及び結腸におけるIL−1βの含量を減少させる傾向があった。
【0203】
IgG1は読取値のいずれも改善させなかった。
【0204】
実施例9:マウスの関節炎K/BxN血清移入モデルにおけるscD164変異体の効果
本実施例は、ナイーブマウスに対し、K/BxNマウス(自然発生的に関節炎を発祥するマウス)の血清を移入することによって誘導した関節炎の受動モデルである。
【0205】
材料と方法
8週齢のBalb/cマウス(Charles River)に、iv経路から、150μlのK/BxN血清(Charles McKay、オーストラリア)であって、グルコースイソメラーゼ6リン酸イソメラーゼに対する自己抗体を高レベルで含むものを与えた。それらは結果的に深刻な関節炎となり、腫脹、紅斑、浮腫、関節の硬直及び強直の存在を評価することで臨床スコア(0−12)が評価された。最終的なスコアは、それぞれの手足についてのスコアの合計とした。足首、前足及び後足の腫脹はカリパーを用いて測定した。臨床スコア及び腫脹は毎日決定した。疾患の血液移入から14日後、サンプリングしてオステオカルシンを決定し、そして足を切除して組織学のためのホルマリン固定した。
【0206】
sCD164−Fc又はビヒクル(PBS/0.02%BSA)をip経路(研究1Nr1)又はsc経路(研究Nr2)から一日一回、一週間に五日投与し、これは移入から3日目に開始した。Enbrel(登録商標)(10mg/kg、sc、一日一回、一週間に3日)を参照化合物として使用した。
【0207】
結果
研究1:腹腔経路によるsCD164−Fc処理(図21、A−D)
ip経路から一日一回、一週間に5日、0.3、1及び3mg/kg投与したsCD164−Fcは、臨床スコアを有意に(p<0.05−0.01)それぞれ7%、14%及び17%低下させ、そして手足の腫脹を9%、19%及び21%低下させた。更に、sCD164−Fc(0.3、1及び3mg/kg)は血清オステオカルシン(骨分解の指標)をそれぞれ6%、11%及び37%低下させる傾向があった。sCD164−Fcの有効性は用量依存性であった。
【0208】
sc経路から、一日一回、一週間に3日10mg/kgの用量で投与したEnbrel(登録商標)は、臨床スコア、手足の腫脹及び血清オステオカルシンをそれぞれ25%、36%及び86%有意に(p<0.01)低下させた。
【0209】
研究2:皮下経路によるsCD164−Fc処理(図22、A−D)
sc経路から一日一回、一週間に5日、1及び3mg/kg投与したsCD164−Fcは、臨床スコアを有意に(p<0.05−0.01)それぞれ6%及び14%低下させた。手足の腫脹は、sCD164−Fcを3mg/kgの用量で投与した場合、14%有意に低下させた。更に、sCD164−Fcは、血清オステオカルシン(骨分解の指標)をそれぞれ16%及び31%低下させる傾向があった。sCD164−Fcの有効性は用量依存性であった。
【0210】
sc経路から、一日一回、一週間に3日10mg/kgの用量で投与したEnbrel(登録商標)は、臨床スコア、手足の腫脹及び血清オステオカルシンをそれぞれ31%、38%及び64%有意に(p<0.01)低下させた。
【0211】
IgG1は、手足の腫脹、臨床スコア及び血清オステオカルシンに対し予防効果を有していなかった。
【0212】
マクロファージの動員を減少させ、そしてTNFα及びIL−1βの放出を調節する可溶性CD164変異体は、この疾患モデルにおける病理過程の結果を調節する全ての特徴を示す。
【0213】
実施例10:LPSが誘導したTNF−αの放出の動物モデルにおいて測定したサイトカイン放出に対するsCD164変異体の投与の効果
マウスにおけるリポ多糖(LPS)誘発型TNF−α放出は、WO98/38179特許に従い準備した。LPS(O111:B4; SIGMA)をC3H/HeNマウス(Charles River, フランス)に注射した(0.3mg/kg, ip)。90分後に血液をサンプリングし、そしてELISAキット(R&D)を使用して血漿TNF−αを測定した。sCD164変異体及びデキサメタゾンをPBS中に希釈し、そしてLPS投与の15分前に注射した(Sf−CD164変異体を0.03、0.1及び0.3mg/kg、iv;又はデキサメタゾンを0.1mg/kg、sc)。
【0214】
ポジティブコントロールとして使用した抗炎症化合物デキサメタゾンは、LPS誘発型TNF-α放出を72%有意に(p<0.001)阻害する。sCD164変異体はLPS誘発型TNF-α放出を同様に阻害するものと予想される。
【0215】
実施例11:2つの動物モデルにおける免疫細胞動員に対するsCD164変異体の効果
免疫細胞動員に対するCD164変異体の効果は、チオグリコール酸塩誘発型白血球腹膜動員アッセイを用いて試験することができる。
【0216】
マウス(C3H種、8週齢、n=6;Elevage Janvier、フランス)に、0.02%BSAを含有するPBS中で希釈したCD164変異体(0.03、0.1及び0.3mg/kg、iv)又はデキサメタゾン(1mg/kg、sc)を注射する。試験分子投与から15分後に、チオグリコール酸塩(1.5%、40ml/kg、 ip; SIGMA)を注射した。試験分子の2回目の投与を24時間後に行う。チオグリコール酸塩による曝露から48時間後に動物を屠殺し、そして腹膜腔の洗浄を、2x5ml PBS−1mM EDTA(+4℃)を使用して行う。遠心分離(3000rpmで10分間)後、ぺレットを1mlPBS中で再懸濁する。Beckman/Coulterカウンターを使用して、腹膜細胞をカウントする。
【0217】
デキサメタゾンは、マクロファージの動員を69%有意に(p<0.001)用量依存的に阻害する。sCD164変異体(0.03、0.1及び0.3mg/kg)は、マクロファージの腹膜におけるチオグリコール酸塩誘発型動員を阻害するのが好ましい。
【0218】
好中球及びリンパ球の腹膜におけるLPS誘発型動員は、sCD164変異体を試験する更なる方法である。上述のものと同様の投与プロトコールを使用するが、但し、LPS(O111:B4;SIGMA;0.9mg/kg、40ml/kg、ip)を用いる。sCD164変異体は、好中球及びリンパ球のLPS誘発型の腹腔動員を阻害するものと予想される。
【0219】
実施例12:MBP特異的抗原処理及び提示についての細胞ベースアッセイにおけるsCD164変体の効果
ミエリン塩基性タンパク質ペプチドAc1−11(MBP(Ac1−11))によって誘発されるミエリン塩基性タンパク質(MBP)特異的T細胞の増殖に対する、sCD164変異体の効果を試験するためのアッセイを使用することができる。ミエリン塩基性タンパク質(MBP)の免疫優性ペプチドAc1−11で経皮免疫化(ECi)することにより、Ac1−11特異的T細胞受容体に関してトランスジェニックであるマウスが、試験用アレルギー脳脊髄炎(EAE)の誘発型及び自然発生型の両方に対して保護されることが証明されている。
【0220】
B10.PL及びMBPトランスジェニック・マウスの脾臓を採集し、そしてホモジェナイズすることにより、単一の細胞の懸濁液が得られる。Gay溶液で赤血球を溶解した後、脾細胞をPBS中に再懸濁し、洗浄し、そしてカウントする。単離手順後、トリパンブルー色素排除による細胞生存可能性は90%超である。次いで、B10.PL抗原提示細胞(APC)に、25Gyのg−放射線(刺激因子)を当て、洗浄し、そして細胞数1.9×106/mlで完全培地中で再懸濁する。応答細胞個体群を、完全培地において細胞数3.8×106/mlで調節する。1ウェル当たり80μlの各細胞懸濁液を96ウェルプレート内で混合する。次いで抗原を20μlの容積:1ウェル当たり10μg/mlのマウスMBP又は1μg/mlのAc1−11MBPペプチドを添加する(適切なネガティブコントロールはそれぞれネガティブコントロール、MSA及び無関係なMBPに由来するペプチドである)。タンパク質又は小分子を20μlの容積で添加し、次いで5% CO2を有する加湿雰囲気中で37℃でインキュベートする。3日間の培養後、上清を集め、そして−80℃で凍結し、その後、サイトカイン生成の試験を行うか、或いは、1μCiの3Hチミジンを添加し、そして14−16時間にわたってさらにインキュベートした後、放射能の取込みに関してカウントする。
【0221】
sCD164変異体は、Ac1−11によって誘導したMBP特異的なT細胞の増殖を阻害しうる。従って、活性なsCD164変異体は、多発性硬化症の処置に有用であり得る。
【0222】
実施例13:劇症性の肝硬変の動物モデルにおけるsCD164変異体の効果
複数のsCD164変異体が、ConA刺激したヒト抹消血単核球(PBMC)による特定のサイトカイン分泌をin vitroで阻害することが証明されている(実施例2を参照のこと)。サイトカインは、T細胞誘発型のConA誘発型肝硬変において必須の役割を果たすので(Seino et al., 2001, Kusters, 1996; Toyonaga et al., 1994)、このモデルを使用することで活性CD164変異体を試験することができる。
【0223】
雌のC57/BL6マウス(8週齢;IFFA CREDO)を使用する。一般に、1試験群当たり7匹の動物を使用する。12時間の明−暗サイクル下の標準的な条件においてマウスを維持し、放射線処理した食品及び水を自由に与えた。
【0224】
コンカナバリンA(ConA;Sigma参照番号C7275)を、18mg/kg、iv注射し、そして血液試料を注射から1.30時間後及び8時間後に採取する。ConA注射の30分前にsCD164変異体を注射する。ポジティブコントロールとしてデキサメタゾン(0.1mg/kg)を注射し、そしてネガティブコントロールとしてPBS−BSA 1.8%グリセロールを注射する。屠殺したときに、血液を心臓から採取する。ConA注射から1.5時間後に、TH1/TH2 CBAアッセイを用いて、IL−6及びIFN−ガンマ・サイトカイン・レベルを測定する。COBAS機器(Hitachi)を用いて、トランスアミラーゼ血液パラメーターを決定する。
【0225】
当該実験は、sCD164変異体が、sCD164変異体の皮下送達後、劇症肝炎を模倣するマウス・モデルにおける肝臓の損傷を防ぐことを示すことが予想される。理由としては、関連パラメーター、例えばトランスアミラーゼ・レベル(ALAT)、IFN−γ及びIL−6サイトカイン・レベルが低下しうるためである。
【0226】
【表6】
【表7】
【図面の簡単な説明】
【0227】
【図1】図1は、添付の配列表の配列番号1〜15の配列を有するsCD164変異体の(アミノ酸の)アラインメント及び長さを示す。
【図2】図2は、本発明のsCD164変異体を特徴付ける多数のパラメーターを要約する表を示す。
【図3】図3は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIL−2放出に対するsCD164変異体Ex1,2,4(配列番号2)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたIL−2の濃度をコントロール細胞(すなわち、sCD164変異体で処理していない細胞)における最大放出の%で表す。
【図4】図4は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIFN−γ(A)、IL−2(B)、IL−5(C)、TNF−α(D)、IL−(E)又はIL−10(F)の放出に対するsCD164変異体Δ2,3(配列番号6)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図5】図5は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIFN−γ(A)、IL−2(B)、IL−5(C)、TNF−α(D)、IL−(E)又はIL−10(F)の放出に対するsCD164変異体Δ4(配列番号8)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図6】図6は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIFN−γ(A)、IL−2(B)、IL−5(C)、TNF−α(D)、IL−(E)又はIL−10(F)の放出に対するsCD164変異体Δ5(配列番号12)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図7】図7は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIFN−γ(A)、IL−2(B)、IL−5(C)、TNF−α(D)、IL−(E)又はIL−10(F)の放出に対する可溶性sCD164−Fc変異体(配列番号16)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、分泌によって放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図8】図8は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIFN−γ(A)、IL−2(B)、IL−5(C)、TNF−α(D)、IL−(E)又はIL−10(F)の放出に対するsCD164変異体A22E、G80E(配列番号13)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図9】図9は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIFN−γ(A)、IL−2(B)、IL−5(C)、TNF−α(D)、IL−(E)又はIL−10(F)の放出に対するsCD164変異体N9A、N18A(配列番号14)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図10】図10は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIFN−γ(A)、IL−2(B)、IL−5(C)、TNF−α(D)、IL−(E)又はIL−10(F)の放出に対するsCD164変異体Ex1,4,6(配列番号5)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図11】図11は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIFN−γ(A)、IL−2(B)、IL−5(C)、TNF−α(D)、IL−(E)又はIL−10(F)の放出に対するsCD164変異体Ex1,6(配列番号4)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図12】図12は、ConAで刺激したヒトPBMC細胞のIFN−γ(A)、IL−2(B)、IL−5(C)、TNF−α(D)、IL−(E)又はIL−10(F)の放出に対するsCD164変異体Δ6(配列番号11)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図13】図13は、図3〜12に示した実験に基づいて算出したEmax及びEC50値を示す。
【図14】図14は、抗CD3/抗CD28抗体で刺激したヒトPBMCからのTNF−α、IL−2及びIL−4の放出に対する(A)sCD164(配列番号15)、(B)sCD164−Fc変異体(配列番号16)及び(C)sCD164−Fcm変異体(配列番号18)の効果を示す。X軸はsCD164変異体濃度をμg/mlで表す。Y軸は、放出されたサイトカインの濃度を%で表す。
【図15】図15は、LPS誘発型TNF−α放出についての動物モデルにおけるTNF−α放出(pg/ml)に対するsCD164及びsCD154−Fc(1mg/kg、iv)投与の効果を示す。デキサメタゾンは0.1mg/kgでsc投与した。
【図16】図16は、コンカナバリンAによって誘導された肝炎のモデルにおけるトランスアミナーゼALAT及びASATの血清レベルに対する0.1、0.3及び1mg/kg(sc)のsCD164−Fc及びデキサメタゾン(0.3mg/kg、sc)の効果を示す。コントロール:賦形剤処理(PBS/0.02%BSA)。
【図17】図17は、(A)0.1、0.3及び1mg/kgでのsCD164−Fc iv処理及び(B)sc経路による1mg/kgのデキサメタゾン及び30mg/kgのEnbrel(登録商標)処理の後のDNFB誘発型の耳腫脹の阻害を示す。(C)は全ての処理のAUC阻害(%)を示す。データはn=8のマウス/グループの平均±SEMとして示した1回の実験を示している。
【図18】図18は、以下のパラメーターに対しての、D3からD7までに4%デキストラン硫酸ナトリウムにより誘導された潰瘍性結腸炎のマウスモデル(経口)における0.3、1及び3mg/kg(ip経路)でのsCD164−Fcm、1mg/kg(sc)でのEnbrel(登録商標)、コントロール4%DSS及び水の効果を示す:(A)体重の変化(% D0)(B)臨床スコア(0−4)(C)結腸の長さ(cm)(D)結腸の重量/長さ(mg/100g bw/cm)(E)血清アミロイドタンパク質(μg/ml)(F)脾臓の重量(mg/100g bw)
【図19】図19は、以下のパラメーターに対しての、マウスおいて4%デキストラン硫酸ナトリウムにより誘導された潰瘍性結腸炎のモデル(経口)における0.3、1及び3mg/kg(sc経路)でのsCD164−Fcm、1mg/kg(sc)でのEnbrel(登録商標)、コントロール4%DSS及び水の効果を示す:(A)体重の変化(% D0)(B)臨床スコア(0−4)(C)結腸の重量/長さ(mg/100g bw/cm)(D)結腸の長さ(cm)(E)血清アミロイドタンパク質(μg/ml)(F)脾臓の重量(mg/100g bw)
【図20−1】図20は、以下のパラメーターに対しての、D3からD7までに4%デキストラン硫酸ナトリウムにより誘導された潰瘍性結腸炎のマウスモデル(ip投与)における0.1、0.3及び1mg/kg(ip経路)でのsCD164−Fcm、1mg/kg(sc)でのEnbrel(登録商標)、1mg/kgでのsCD164−Fc、IgG1、コントロール4%DSS及び水の効果を示す:(A)体重の変化(% D0)(B)臨床スコア(0−4)(C)結腸の重量/長さ(mg/100g bw/cm)(D)結腸の長さ(cm)(E)血清アミロイドタンパク質(μg/ml)(F)脾臓の重量(mg/100g bw)(G)IL−1β(pg/mg プロット)
【図20−2】図20は、以下のパラメーターに対しての、D3からD7までに4%デキストラン硫酸ナトリウムにより誘導された潰瘍性結腸炎のマウスモデル(ip投与)における0.1、0.3及び1mg/kg(ip経路)でのsCD164−Fcm、1mg/kg(sc)でのEnbrel(登録商標)、1mg/kgでのsCD164−Fc、IgG1、コントロール4%DSS及び水の効果を示す:(A)体重の変化(% D0)(B)臨床スコア(0−4)(C)結腸の重量/長さ(mg/100g bw/cm)(D)結腸の長さ(cm)(E)血清アミロイドタンパク質(μg/ml)(F)脾臓の重量(mg/100g bw)(G)IL−1β(pg/mg プロット)
【図21】図21は、マウスの関節炎のK/BxN血清移入モデルにおける0.3、1及び3mg/kg(ip経路)でのsCD164−Fc、10mg/kg(sc)でのEnbrel(登録商標)、コントロール(賦形剤処理)の効果を示す:(A)臨床スコア(0−4)(B)臨床スコア(AUC D0−14)(C)総腫脹(mm vs d0)(D)総腫脹(AUC D0−14)(E)オステオカルシン(ng/mg)
【図22】図22は、マウスの関節炎のK/BxN血清移入モデルにおける0.3、1及び3mg/kg(sc経路)でのsCD164−Fc、10mg/kg(sc)でのEnbrel(登録商標)、コントロール(賦形剤処理)の効果を示す:(A)臨床スコア(0−4)(B)臨床スコア(AUC D0−14)(C)総腫脹(mm vs d0)(D)総腫脹(AUC D0−14)(E)オステオカルシン(ng/mg)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのsCD164変異体の使用であって、当該sCD164変異体が:
(a) 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
(b) シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
(c) (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
(d) (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
(e) (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
(f) (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される、使用。
【請求項2】
皮膚炎症関連障害の処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのsCD164変異体の使用であって、当該sCD164変異体が:
a. 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
b. シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
c. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
d. (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
e. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
f. (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される、使用。
【請求項3】
肝炎の処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのsCD164変異体の使用であって、当該sCD164変異体が:
(a) 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
(b) シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
(c) (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
(d) (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
(e) (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
(f) (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される、使用。
【請求項4】
潰瘍性結腸炎の処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのsCD164変異体の使用であって、当該sCD164変異体が:
(a) 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
(b) シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
(c) (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
(d) (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
(e) (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
(f) (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される、使用。
【請求項5】
関節炎の処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのsCD164変異体の使用であって、当該sCD164変異体が:
(a) 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
(b) シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
(c) (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
(d) (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
(e) (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
(f) (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される、使用。
【請求項6】
前記sCD164変異体が1又は複数の部位でグリコシル化されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記sCD164変異体がリン酸化されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記sCD164変異体がミリストイル化されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記融合タンパク質がイムノグロブリン(Ig)融合物を含んで成る、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
Ig融合物がFc融合物である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記融合タンパク質がヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を含んで成る、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
機能的誘導体が、アミノ酸残基上の1又は複数の側鎖として発生する、1又は複数の官能基に結合した少なくとも1つの部分を含んで成る、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記部分がポリエチレン部分である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
炎症及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのsCD164変異体をコードするポリヌクレオチドの使用であって、当該sCD164変異体が:
a. 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
b. シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
c. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
d. (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
e. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
f. (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される、使用。
【請求項15】
前記炎症及び/又は自己免疫疾患が:多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、関節リウマチ、若年性突発性関節炎、乾癬性関節炎、骨関節炎、脊椎関節症、炎症性大腸炎、内毒素血、クローン病、スティル病、ブドウ膜炎、ヴェグナー肉芽腫、ベーチェット病、強皮症、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、壊疽性膿皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、心筋炎、乾癬、全身性硬化症、C型肝炎、アレルギー、アレルギー性炎、アレルギー性気道炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腸間膜梗塞、卒中、潰瘍性結腸炎、アレルギー喘息、気管支喘息、腸間膜梗塞、卒中、線維症、虚血後の筋肉、腎臓及び心臓の炎症、皮膚炎、糸球体腎炎、若年発症I型糖尿病、過敏症症候群、ウィルス性又は急性肝臓疾患、アルコール性肝不全、結核、敗血性ショック、HIV感染、移植片対宿主病(GVHD)及びアテローム性動脈硬化から成る群から選択される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
炎症及び/又は自己免疫疾患を処置及び/又は予防する方法であって、必要とされる宿主に対し、
a. 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
b. シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
c. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
d. (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
e. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
f. (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される、有効量のsCD164変異体を投与することを含んで成る方法。
【請求項17】
a. 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
b. シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
c. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
d. (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
e. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
f. (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される、sCD164変異体。
【請求項18】
請求項17に記載のsCD164変異体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項19】
請求項17に記載のポリペプチドを発現するよう修飾されている宿主細胞。
【請求項20】
請求項19に記載の宿主細胞を、前記sCD164変異体の発現に適した条件下で培養するステップを含んで成る、請求項17に記載のsCD164変異体の産生方法。
【請求項21】
sCD164変異体を、請求項19に記載の宿主細胞の細胞培養上清から単離するステップを含んで成る、請求項17に記載のsCD164変異体の産生方法。
【請求項22】
sCD164変異体を精製するステップを更に含んで成る、請求項20又は21に記載の産生方法。
【請求項23】
sCD164を医薬組成物に製剤化するステップを更に含んで成る、請求項20又は21のいずれかに記載の産生方法。
【請求項24】
請求項17に記載のsCD164変異体を含んで成る組成物。
【請求項25】
請求項17に記載のポリペプチドと特異的に反応する抗体。
【請求項1】
炎症及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのsCD164変異体の使用であって、当該sCD164変異体が:
(a) 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
(b) シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
(c) (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
(d) (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
(e) (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
(f) (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される、使用。
【請求項2】
皮膚炎症関連障害の処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのsCD164変異体の使用であって、当該sCD164変異体が:
a. 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
b. シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
c. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
d. (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
e. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
f. (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される、使用。
【請求項3】
肝炎の処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのsCD164変異体の使用であって、当該sCD164変異体が:
(a) 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
(b) シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
(c) (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
(d) (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
(e) (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
(f) (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される、使用。
【請求項4】
潰瘍性結腸炎の処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのsCD164変異体の使用であって、当該sCD164変異体が:
(a) 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
(b) シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
(c) (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
(d) (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
(e) (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
(f) (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される、使用。
【請求項5】
関節炎の処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのsCD164変異体の使用であって、当該sCD164変異体が:
(a) 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
(b) シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
(c) (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
(d) (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
(e) (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
(f) (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される、使用。
【請求項6】
前記sCD164変異体が1又は複数の部位でグリコシル化されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記sCD164変異体がリン酸化されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記sCD164変異体がミリストイル化されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記融合タンパク質がイムノグロブリン(Ig)融合物を含んで成る、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
Ig融合物がFc融合物である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記融合タンパク質がヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を含んで成る、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
機能的誘導体が、アミノ酸残基上の1又は複数の側鎖として発生する、1又は複数の官能基に結合した少なくとも1つの部分を含んで成る、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記部分がポリエチレン部分である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
炎症及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防のための医薬の製造のためのsCD164変異体をコードするポリヌクレオチドの使用であって、当該sCD164変異体が:
a. 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
b. シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
c. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
d. (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
e. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
f. (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される、使用。
【請求項15】
前記炎症及び/又は自己免疫疾患が:多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、関節リウマチ、若年性突発性関節炎、乾癬性関節炎、骨関節炎、脊椎関節症、炎症性大腸炎、内毒素血、クローン病、スティル病、ブドウ膜炎、ヴェグナー肉芽腫、ベーチェット病、強皮症、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、壊疽性膿皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、心筋炎、乾癬、全身性硬化症、C型肝炎、アレルギー、アレルギー性炎、アレルギー性気道炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腸間膜梗塞、卒中、潰瘍性結腸炎、アレルギー喘息、気管支喘息、腸間膜梗塞、卒中、線維症、虚血後の筋肉、腎臓及び心臓の炎症、皮膚炎、糸球体腎炎、若年発症I型糖尿病、過敏症症候群、ウィルス性又は急性肝臓疾患、アルコール性肝不全、結核、敗血性ショック、HIV感染、移植片対宿主病(GVHD)及びアテローム性動脈硬化から成る群から選択される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
炎症及び/又は自己免疫疾患を処置及び/又は予防する方法であって、必要とされる宿主に対し、
a. 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
b. シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
c. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
d. (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
e. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
f. (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される、有効量のsCD164変異体を投与することを含んで成る方法。
【請求項17】
a. 配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16又は18から選択される配列を有するポリペプチド;
b. シグナル配列、好ましくは配列番号17のアミノ酸1〜23を更に含んで成る、(a)のポリペプチド;
c. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列が(a)又は(b)の配列の少なくとも一方に対し少なくとも90%又は91%又は92%又は93%又は94%又は95%の同一性を有するムテイン;
d. (a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA配列の相補鎖と、高度にストリンジェントな条件下ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる(a)又は(b)のポリペプチドのムテイン;
e. (a)又は(b)のポリペプチドのムテインであって、アミノ酸配列の任意の変化が保存的アミノ酸置換であるムテイン;
f. (a)〜(e)のポリペプチドのイソ型、融合タンパク質、機能的誘導体、又は活性画分、
から選択される、sCD164変異体。
【請求項18】
請求項17に記載のsCD164変異体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項19】
請求項17に記載のポリペプチドを発現するよう修飾されている宿主細胞。
【請求項20】
請求項19に記載の宿主細胞を、前記sCD164変異体の発現に適した条件下で培養するステップを含んで成る、請求項17に記載のsCD164変異体の産生方法。
【請求項21】
sCD164変異体を、請求項19に記載の宿主細胞の細胞培養上清から単離するステップを含んで成る、請求項17に記載のsCD164変異体の産生方法。
【請求項22】
sCD164変異体を精製するステップを更に含んで成る、請求項20又は21に記載の産生方法。
【請求項23】
sCD164を医薬組成物に製剤化するステップを更に含んで成る、請求項20又は21のいずれかに記載の産生方法。
【請求項24】
請求項17に記載のsCD164変異体を含んで成る組成物。
【請求項25】
請求項17に記載のポリペプチドと特異的に反応する抗体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20−1】
【図20−2】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20−1】
【図20−2】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2008−527986(P2008−527986A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551690(P2007−551690)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050422
【国際公開番号】WO2006/077266
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(504320031)ラボラトワール セローノ ソシエテ アノニム (14)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050422
【国際公開番号】WO2006/077266
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(504320031)ラボラトワール セローノ ソシエテ アノニム (14)
【Fターム(参考)】
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