説明

炎症性および/またはアレルギー性障害を治療するためのH1およびH3受容体拮抗薬としての3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1−ピペリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)プロパン酸もしくはプロペン酸

本発明は、式(I)


[式中、ナフタレン環は2、3、4、5、6、7または8位においてRによって置換され得、そしてRは−CHCHCOOHまたは−CH=C(CH)COOHを表す]の化合物またはその塩、さらにはそれらを調製するための方法、それらを含有する組成物、およびアレルギー性鼻炎などのさまざまな疾患を治療する際のその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、それを調製するための方法、それを含有している医薬組成物に関し、さらにはさまざまな疾患、特に呼吸器気道の炎症性および/またはアレルギー性障害を治療する際のその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー性鼻炎、肺炎およびうっ血は、多くの場合、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、季節性アレルギー性鼻炎、通年性アレルギー性鼻炎のような他の状態と関連する医学上の状態である。一般的には、これらの状態には、少なくとも一部、さまざまな細胞、特にマスト細胞からのヒスタミンの放出が関与している炎症が介在する。
【0003】
「枯草熱」とも呼ばれるアレルギー性鼻炎は、世界中で、その人口の大部分に影響を及ぼしている。アレルギー性鼻炎には二つのタイプがあり、季節性と通年性である。季節性アレルギー性鼻炎の臨床症状としては、典型的には、鼻の痒みと刺激、クシャミ、および多くの場合鼻うっ血が伴う水様鼻汁が挙げられる。通年性アレルギー性鼻炎の臨床症状は、鼻の閉塞がよりひどくなり得る以外は似たようなものである。どちらのタイプのアレルギー性鼻炎も、喉および/または眼の痒み、流涙、眼の周りの浮腫などの他の症状を引き起こすこともある。アレルギー性鼻炎の症状は、その程度は、迷惑レベルから衰弱レベルまで変動し得る。
【0004】
アレルギー性鼻炎および他のアレルギー性状態には、さまざまな細胞系、中でも特にマスト細胞からのヒスタミンの放出が関与している。ヒスタミンの生理的な影響には、古典的には、H1、H2およびH3と呼ばれる3つの受容体サブタイプが介在する。H1受容体は中枢神経系および末梢神経系全体にわたって広く分布しており、覚醒状態および急性炎症に関与している。H2受容体は、ヒスタミンに応答して胃酸分泌に介在する。H3受容体は、中枢神経系および末梢神経系のいずれの神経終末上にも存在しており、神経伝達物質放出の抑制を介在する(非特許文献1)。最近、ヒスタミン受容体ファミリーの第4のメンバーが明らかにされ、H4受容体と命名された(非特許文献2)。H4受容体の分布は免疫系および炎症系の細胞に限られているようだが、この受容体の生理的な役割はまだ明らかになっていない。
【0005】
血管および神経終末中のH1受容体の活性化はアレルギー性鼻炎症状の多くを引き起こし、これらには、痒み、クシャミ、および水様鼻汁の産生が挙げられる。抗ヒスタミン化合物、すなわちクロルフェニラミンおよびセチリジンのような選択的H1受容体拮抗薬である薬物は、アレルギー性鼻炎が関与している痒み、クシャミおよび鼻汁を治療するのには効果があるが、鼻うっ血症状に対しては効果がない(非特許文献3)。このように、アレルギー性鼻炎の鼻うっ血症状を治療するためには、H1受容体拮抗薬は、プソイドエフェドリンまたはオキシメタゾリンのような交感神経作用性薬剤との組み合わせで投与されてきた。これらの薬物は、鼻粘膜中のβ−アドレナリン受容体を活性化して、血管の脈管緊張を高めることによって脱うっ血作用を生じると考えられている。鼻うっ血を治療するのに交感神経作用性薬物を用いることは、多くの場合、その中枢神経系刺激特性および血圧と心拍数への影響により、限定されている。それゆえ、中枢神経系および心血管系への影響なしに鼻うっ血を低下させる治療法は、既存療法を凌駕する利点を提供すると思われる。
【0006】
ヒスタミンH3受容体は、中枢神経系終末および末梢神経終末のいずれにも広く発現しており、神経伝達物質放出の抑制に介在する。単離されたヒト伏在静脈中の末梢交感神経のインビトロ電気刺激により、ノルアドレナリン放出と平滑筋収縮の増大を生じるが、これはヒスタミンH3受容体作動薬によって抑制することができる(非特許文献4及び5)。H3受容体作動薬はまた、交感神経活性化のブタ鼻粘膜血管緊張に対する影響を抑制する(非特許文献6)。インビボでは、H3受容体作動薬は、交感神経活性化によって生じた鼻気道抵抗の低下を抑制する(非特許文献7)。ヒト鼻粘膜中のヒスタミンH3受容体の活性化は、交感神経性血管収縮を抑制する(非特許文献8)。さらに、H3受容体拮抗薬は、ヒスタミンH1受容体拮抗薬との組み合わせで、鼻うっ血の指標である鼻気道抵抗と鼻腔体積へのマスト細胞活性化の影響を逆転させることが明らかになっており(非特許文献9)、そしてヒスタミン誘発鼻閉塞へのH3受容体の寄与についてのさらなる証拠が、正常ヒト対象に対して行われたヒスタミン鼻負荷試験研究によって提供されている(非特許文献10)が、この点に関してのH3機序は、新規かつ前例がないと思われる。
【非特許文献1】Hill et al., Pharmacol. Rev., 49:253-278, (1997)
【非特許文献2】Hough, Mol. Pharmacol., 59:415-419, (2001)
【非特許文献3】Aaronson, Ann. Allergy, 67:541-547, (1991)
【非特許文献4】Molderings et al., Naunyn-Schmiedeberg's Arch. Pharmacol., 346:46-50, (1992)
【非特許文献5】Valentine et al., Eur. J. Pharmacol., 366:73-78, (1999)
【非特許文献6】Varty & Hey., Eur. J. Pharmacol., 452:339-345, (2002)
【非特許文献7】Hey et al., Arzneim-Forsch Drug Res., 48:881-888, (1998)
【非特許文献8】Varty et al., Eur. J. Pharmacol., 484:83-89, (2004)
【非特許文献9】Mcleod et al., Am. J. Rhinol., 13:391-399, (1999)
【非特許文献10】Taylor-Clark et al., British J. Pharmacol., 1-8, (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
デュアルヒスタミンH1およびH3受容体拮抗薬である新規な化合物の群が見出された。「デュアル」ヒスタミンH1およびH3受容体拮抗薬とは、その化合物が、両方の受容体サブタイプにおいて活性を有することを意味する。特定的にはH1受容体における活性は、H3受容体における活性のおよそ10倍内であり得、より特定的にはそのような化合物は、両方の受容体サブタイプにおいてほぼ等能力であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
つまり、本発明は、第1の態様で、式(I)
【化1】

【0009】
[式中、
ナフタレン環は、2、3、4、5、6、7または8位においてRによって置換されており、そしてRは、−CHCHCOOHまたは−CH=C(CH)COOHを表す]
の化合物、もしくはその塩(例えば薬学的に許容される塩)を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化合物は、マスト細胞などの細胞からのヒスタミンの放出が関与しているさまざまな障害、特に呼吸器気道の炎症性および/またはアレルギー性障害のような炎症性および/またはアレルギー性障害、例えばアレルギー性鼻炎の治療で有用であることが期待され得る。
【0011】
本発明の化合物は、以下の特性の1つ以上を有し得るという点で、既知デュアルH1/H3受容体拮抗薬作動薬を凌駕する改善されたプロファイルを示し得る。
【0012】
(i)pKiが約7よりも大きいH3受容体拮抗薬活性;
(ii)pKiが約7よりも大きいH1受容体拮抗作動薬活性;
(iii)より低いCNS(中枢神経系)浸透;
(iv)改善されたバイオアベイラビリティ;および
(v)血液中でのより低いクリアランスおよび/またはより長い半減時間
【0013】
そのようなプロファイルを有する化合物は、経口で効果があること、および/または1日1回投与が可能であることが期待され得、および/またはさらには他の既存治療薬と比較して改善された副作用プロファイルを有し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の1つの実施形態では、Rは、−CHCHCOOHを表す。
【0015】
本発明のもう1つの実施形態では、ナフタレン環は、4位においてRによって置換されている。
【0016】
式(I)の化合物としては、後に記載する実施例の化合物およびその塩(薬学的に許容されるような塩)が挙げられる。
【0017】
つまり、さらなる態様で、本発明は、化合物3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1−ピペリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)プロパン酸またはその塩(薬学的に許容されるような塩)を提供する。
【0018】
さらに、以下における本発明による化合物の言及または本発明の化合物の言及には1種以上の式(I)の化合物およびその塩(薬学的に許容されるような塩)が含まれることを理解すべきである。
【0019】
本発明には、式(I)の化合物のシス配置およびトランス配置を含めた幾何異性体、およびエキソ二重結合およびエンド二重結合(例えば−CH=C(CH)COOHおよび−CH−C(=CH)COOH)を含めた位置異性体が、例えば他の異性体を実質的に含まないように単離された(すなわち純粋な)個々の各異性体として、またはそれらの混合物として包含される。つまり、例えば、本発明には、例えば他の異性体の存在が10%未満(例えば1%未満または0.1%未満)であるように、他の異性体を実質的に含まないよう単離された(すなわち純粋な)個々の異性体が包含される。幾何異性体の分離は、通常の方法、例えば分別結晶、クロマトグラフィーまたはHPLCによって達成され得る。
【0020】
式(I)の一部の化合物は、いくつかある互変形態のうちの1つの形態で存在し得る。本発明には、式(I)の化合物のすべての互変体が個々の互変体として、またはそれらの混合物として包含されることは理解されるであろう。
【0021】
式(I)の化合物は、結晶または非晶形態にあり得る。さらには、式(I)の化合物は、1つ以上の多形形態で存在し得る。つまり、本発明には、その範囲内に、式(I)の化合物のすべての多形形態が含まれる。一般的には、式(I)の化合物の最も熱力学的に安定な多形形態が特に重要である。
【0022】
式(I)の化合物の多形形態は、限定するものではないが、X線粉末回折(XPRD)パターン、赤外(IR)スペクトル、ラマンスペクトル、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)および固体核磁気共鳴(NMR)を含めて、いくつかある通常の分析手法を用いて、特性評価および区別され得る。
【0023】
多くの有機化合物は、それらが反応する、またはそれらが沈殿つまり結晶化する溶媒と溶媒和物を形成し得ることは理解されるであろう。例えば、水との溶媒和物は「水和物」として知られる。水、キシレン、N−メチルピロリドンおよびメタノールのような高沸点を有する溶媒および/または水素結合形成の高い傾向を有する溶媒は、溶媒和物を形成させるために用いられ得る。溶媒和物を識別するための方法としては、限定するものではないが、NMRおよび微量分析が挙げられる。このように、式(I)の化合物の溶媒和物は、本発明の範囲内にある。
【0024】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態にあり得、および/またはそのような塩として投与され得る。適切な塩のレビューについては、Berge et al., J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1-19を参照されたい。適切な薬学的に許容される塩としては、酸および塩基付加塩が挙げられる。
【0025】
典型的には、薬学的に許容される塩は、所望の酸または塩基を適宜用いることによって容易に調製され得る。この塩は、溶液から沈殿して、濾過によって捕集され得、あるいはその溶媒を蒸発させることによっても回収され得る。
【0026】
薬学的に許容される酸付加塩は、場合によっては有機溶媒などの適切な溶媒中で式(I)の化合物を適切な無機または有機酸(例えば臭化水素酸、塩化水素酸、ギ酸、硫酸、硝酸、リン酸、コハク酸、マレイン酸、酢酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸)と反応させてその塩を得ることにより形成され得、その塩は、通常例えば結晶化および濾過により単離される。つまり、式(I)の化合物の薬学的に許容される酸付加塩は、例えば、臭化水素酸塩、塩酸塩、ギ酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩またはナフタレンスルホン酸塩であり得る。
【0027】
1つの実施形態で、化合物3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1−ピペリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)プロパン酸の塩化水素酸塩が提供される。
【0028】
もう1つ実施形態で、化合物3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1−ピペリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)プロパン酸の臭化水素酸塩が提供される。
【0029】
薬学的に許容される塩基付加塩は、場合により有機溶媒などの適切な溶媒中で式(I)の化合物を適切な無機または有機塩基(例えばトリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、コリン、アルギニン、リシンまたはヒスチジン)と反応させてその塩基付加塩を得ることにより形成され得、その塩基付加塩は、通常、例えば結晶化および濾過によって単離される。
【0030】
他の好適な薬学的に許容される塩としては薬学的に許容される金属塩が挙げられ、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩のような薬学的に許容されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩が挙げられ、特に式(I)の化合物に存在し得る1つ以上のカルボン酸部分の薬学的に許容される金属塩が挙げられる。
【0031】
他の薬学的に許容されない塩、例えばシュウ酸塩またはトリフルオロ酢酸塩も、例えば本発明の化合物を単離する際に用いられ得るので、本発明の範囲内に含まれる。本発明には、その範囲内に、式(I)の化合物の塩のすべての考えられる化学量論体および非化学量論体が含まれる。
【0032】
本発明の範囲には本発明の化合物および塩のすべての溶媒和物(例えば水和物)および多形体が含まれる。
【0033】
本発明はまた、式(I)の化合物またはその塩の調製方法を提供する。
【0034】
第1の方法(A)によれば、式(I)の化合物は、式(Ia)
【化2】

【0035】
[式中、
【化3】

【0036】
は、一重または二重結合を表し、そしてナフタレン環は、2、3、4、5、6、7、8位においてR1aによって置換されており、そしてR1aは、RのエステルのようなRの保護誘導体、例えば、−CHCHCOORまたは−CH=C(CH)COOR(式中、各Rは、独立して、C〜Cアルキルのようなカルボン酸保護基、例えば、メチル、エチルまたはt−ブチル、特にメチルまたはエチルを表す)を表す]
の化合物を脱保護し、場合により水素化することによって調製され得る。他の適切な保護基としては、ベンジルなどのアラルキルが挙げられる。
【0037】
脱保護は、標準的な条件下で行われ得る。つまり、カルボン酸エステルの加水分解は、適切な水性溶媒系、例えばメタノール/水またはテトラヒドロフラン/水中、場合により還流などの昇温下で、適切な塩基、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの存在下で行われ得る。別の方法として、カルボン酸エステル、例えば、t−ブチルエステルの加水分解は、酸加水分解のための標準的な条件下、適切な酸、例えばジオキサン中塩化水素の存在下で行われ得る。保護基がベンジルなどのアラルキルの場合は、金属触媒例えば活性炭担持パラジウムの存在下のような標準的な条件下での水素化分解による脱保護が用いられ得る。
【0038】
水素化は、標準的な条件下で行われ得る。つまり、水素化は、適切な水素化剤例えば炭素担持パラジウムまたは適切な溶媒例えばエタノール中酸化白金の存在下で、場合により大気圧で、さらに場合により昇温下例えば40〜60℃で行われ得る。
【0039】
方法Aの1つの実施形態では、R1aは、定義したとおりであり、そして
【化4】

【0040】
は、一重結合を表し、このケースでは水素化ステップは必要とされない。
【0041】
式(Ia)の化合物は、アミド形成条件下で、式(II)
【化5】

【0042】
[式中、R1aは、式(Ia)に対して上記で定義したとおりである]
の化合物を式(III)
【化6】

【0043】
[式中、
【化7】

【0044】
は、一重または二重結合を表す]
の化合物と反応させることによって調製され得る。
【0045】
式(Ia)のアミドはアミドカップリングのための標準的な条件下で調製され得、例えば適切なカップリング剤例えばO−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)またはO−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)の存在下に、適切な塩基例えばトリエチルアミンの存在下で、適当な溶媒例えばN,N−ジメチルホルムアミド中で調製され得る。
【0046】
別の方法として化合物(Ia)は、0〜20℃の温度で溶媒例えばジクロロメタン中、トリエチルアミンまたは炭酸カリウムのような適切な塩基の存在下で、式(II)の化合物の酸塩化物をアミン(III)と反応させることによって調製され得る。
【0047】
1aが−CHCHCOORを表し、Rが上記で定義したとおりである式(II)の化合物は、式(IV)
【化8】

【0048】
[式中、ナフタレン環は、2、3、4、5、6、7または8位においてR1bによって置換されており、そしてR1bは、−CH=CH−COORを表し、Rは、上記で定義したとおりである]
の化合物の水素化によって調製され得る。
【0049】
水素化は標準的な条件下で行われる。つまり、水素化は、適切な水素化剤例えば炭素担持パラジウムまたは適切な溶媒例えばエタノール中酸化白金の存在下で、場合により大気圧で、また場合により昇温下例えば40〜60℃で行われ得る。
【0050】
上記で定義した式(IV)の化合物はヘック反応によっても調製され得、その場合には式(V)
【化9】

【0051】
[式中、ナフタレン環は、2、3、4、5、6、7または8位において臭素またはヨウ素によって置換されている]
の化合物またはその保護誘導体を、アクリル酸エステル例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸t−ブチルおよびアクリル酸ベンジルと反応させる。
【0052】
このBr/I置換基は、式(IV)の化合物においてカルボン酸基の導入が望まれる位置にあることは当業者なら理解するであろう。
【0053】
一般的には、このヘック反応は、適切な溶媒例えばN,N−ジメチルホルムアミド中、昇温下(例えば約100℃)で、適切な塩基例えばトリエチルアミン、ホスフィン例えばトリフェニルホスフィン、適切な触媒例えば酢酸パラジウム(II)の存在下に行われ得る。
【0054】
別の方法として、上記した式(IV)の化合物はウィッティヒ反応によっても調製され得、ここでは対応の式(VI)
【化10】

【0055】
[式中、ナフタレン環は、2、3、4、5、6、7または8位においてCHOによって置換されている]
の化合物を、適切な溶媒例えばトルエン中、昇温下例えば還流により、カルボアルコキシメチレン基(−CH−COOR[式中RはC1〜6アルキルを表す])含有リンイリド例えばカルボエトキシメチレン−トリフェニルホスホランと反応させる。
【0056】
1aが−CH=C(CH)COORを表し、Rが上記で定義したとおりである式(II)の化合物はヘック反応によって調製され得、ここでは、上述したヘック反応と同じような条件下で、式(V)の化合物またはその保護誘導体を、アクリル酸エステル例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルまたはメタクリル酸t−ブチルと反応させる。
【0057】
別の方法として、R1aが−CH=C(CH)COORを表し、Rが上記で定義したとおりである式(II)の化合物はウィッティヒ反応によって調製され得、ここでは、上述したウィッティヒ反応と同じような条件下で、上記した式(VI)の化合物を、カルボアルコキシメチレン基(−CH−COOR[式中RはC1〜6アルキルを表す])含有リンイリド例えばカルボエトキシエチレン−トリフェニルホスホランと反応させる。
【0058】
式(V)および式(VI)の化合物は公知である。あるいは、それらは、商業的に入手可能な材料(例えば、1,4−ジブロモナフタレンは、Acros社および/またはAlfa社から商業的に入手可能である)から、文献に載っている方法に従ってまたは本明細書に記載されている方法によって調製され得る。5−ブロモ−1−ナフタレンカルボン酸は、J. E. Baldwin, et al., Tetrahedron 1990, 46, 3019-28に記載されている方法によって調製され得;4−ブロモ−1−ナフタレンカルボン酸は、Can. J. Chem. 1981, 59, 2629-41に記載されている方法によって調製され得;8−ホルミル−1−ナフタレンカルボン酸は、J. Am. Chem. Soc., 1949, 71, 1870に記載されている方法によって調製され得る。
【0059】
アクリル酸エステルは公知であり、および/または商業的に入手可能である。アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルおよびベンジルアクリレートは、Aldrich社および/またはAcros社および/またはABCR社および/またはChemos社から入手可能である。
【0060】
式(III)の化合物は、以下の反応スキームに従って調製され得る:
【化11】

【0061】
[式中、
1は、炭酸カリウム、2−ブタノン;
2は、ヨウ化ナトリウム、炭酸カリウム、アセトニトリル;
3は、nBuLi、THFで、別の方法として、nBuLiに代えて、塩化イソプロピルマグネシウムが周囲温度で用いられ得る;
4は、a)トリエチルシラン、トリフルオロ酢酸、ジクロロメタン;b)2M HCl/エーテルであり、式(III)の化合物の混合物を得る;
5は、場合により行う水素化のステップで、10重量%パラジウム/炭素エタノール;
6は、塩化水素、エタノール]。
【0062】
上記に示されている式(III)の化合物の混合物は、水素化のステップ5を行う必要なく後続の反応で用いられ得ることは理解されるであろう。
【0063】
4−ヨードフェノール、1−ブロモクロロプロパン、3,3−ジメチルピペリジン、およびN−Boc−ピペリドンは公知であり、および/または例えばAldrich社、Alfa社、Manchester Organics社、Matrix Scientific社、ASDI社および/またはChem Service社から商業的に入手可能である。
【0064】
第2の方法(B)によれば式(I)の化合物は:
(i)式(II)の化合物を式(III)の化合物と反応させて、式(Ia)の化合物を生成させ;
(ii)式(Ia)の化合物を脱保護および場合により脱水素して、式(I)の化合物を生成させる、
ことによって調製され得る。
【0065】
方法(B)では中間体保護アミド例えばアミドエステル(Ia)は単離されない。アミドカップリング、および例えばカルボン酸エステル加水分解による脱保護、さらには場合による水素化は、上述した標準的な条件下で行われ得る。
【0066】
第3の方法(C)によれば、Rが−CHCHCOOHを表す式(I)の化合物は、式(Ic)
【化12】

【0067】
[式中、
【化13】

【0068】
は、一重または二重結合を表し、そしてナフタレン環は、2、3、4、5、6、7または8位においてR1cによって置換され得、R1cは、−CH=CHCOOR(式中、Rは、アラルキル例えばベンジルのような適切なカルボン酸保護基を表す)を表す]
の化合物を水素化および脱保護することによって調製され得る。
【0069】
水素化および脱保護(水素化分解による)は、本明細書に記載したような標準的な条件下で行われ得、また組み合わせて一工程とすることができる。
【0070】
式(Ic)の化合物は、式(IV)の化合物を式(III)の化合物と反応させることによって調製され得る。
【0071】
第4の方法(D)によれば、式(I)の化合物は、式(I)の他の化合物から相互変換によって調製され得る。つまり、式(I)の化合物は、幾何異性体の異性化例えばシス異性体とトランス異性体との相互変換およびエキソとエンドとの二重結合相互変換、例えば、−CH=C(CH)COOHと−CH−C(=CH)COOHとの相互変換のような通常の相互変換手順を用いて式(I)の他の化合物からも調製され得る。この方法には、式(I)の化合物の対イオンおよび塩形態を変える手順も含まれ得る。つまり、式(I)の他の化合物からの相互変換(方法D)は、本発明のなおさらなる態様をなす。
【0072】
つまり、本発明は、式(I)の化合物またはその塩の調製方法を提供するもので、その方法は、本明細書にある(A)、(B)、(C)または(D)から選択され、さらに場合によりその後に塩の生成がある。
【0073】
典型的には、塩は、適宜所望の酸または塩基を用いて容易に調製され得る。塩は溶液から沈殿して、濾過によって捕集され得るか、またはその溶媒を蒸発させることによって回収され得る。式(I)の化合物の遊離塩基は、所望のとおりに、塩生成の前に単離してもよいし、またそうしなくてもよいことは理解されよう。
【0074】
式(I)の化合物の調製で用いられる中間体は、保護誘導体を用いるのが望ましくあり得ることは当業者なら理解するであろう。つまり、所望の化合物を得るためには、上記方法は、脱保護を、中間ステップとしてか、または最終ステップとして必要とし得る。官能基の保護および脱保護は、通常の手法により達成され得る。つまり、カルボン酸基は、例えば、Protective Groups in Organic Chemistry, Ed. J.F.W. McOmie (Plenum Press, 1973)またはProtective Groups in Organic Synthesis by Theodora W. Green (John Wiley and Sons, 1991)またはP.J. Kocienski in Protecting Groups, Georg Thieme Verlag 1994に記載されている任意の通常の保護基を用いて保護され得る。
【0075】
適切なカルボン酸保護基の例としては、アルキル基(例えばメチル、エチルまたはt−ブチル)、アラルキル基(例えばベンジル、ジフェニルメチルまたはトリフェニルメチル)、およびシリル基例えばトリアルキルシリル(例えばt−ブチルジメチルシリル)から選択される基が挙げられる。カルボン酸保護基は、通常の手法により脱離され得る。つまり、例えばアルキル基およびシリル基は、加溶媒分解により、例えば酸性または塩基性条件下での加水分解により脱離され得る。トリフェニルメチルのようなアラルキル基は、同様に、加溶媒分解により、例えば酸性条件下での加水分解により脱離され得る。ベンジルのようなアラルキル基は、金属触媒例えばパラジウム/活性炭の存在下での水素化分解により開裂され得る。
【0076】
式(I)の化合物、もしくはその薬学的に許容される塩が、有効な抗炎症および/または抗アレルギー効果を有していると期待され得る疾患状態の例としては、気管支炎(慢性気管支炎も含む)、喘息(アレルゲン誘発喘息反応も含む)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、副鼻腔炎およびアレルギー性鼻炎(季節性および通年性)のような呼吸器気道の疾患が挙げられる。他の疾患状態としては、炎症性腸疾患(例えばクローン病または潰瘍性大腸炎)も含めた腸管炎症疾患および放射線曝露またはアレルゲン曝露に二次的な腸管炎症疾患のような胃腸管の疾患が挙げられる。
【0077】
さらに、本発明の化合物は、腎炎、ならびに乾癬、湿疹、アレルギー性皮膚炎および超過敏反応のような皮膚疾患を治療するためにも用いられ得る。
【0078】
本発明の化合物は、鼻ポリープ症、結膜炎または掻痒症の治療でも有用であり得る。
【0079】
さらなる疾患としては、炎症性腸疾患のような胃腸管の炎症性疾患が挙げられる。
【0080】
特に重要となる疾患は、アレルギー性鼻炎である。
【0081】
H3受容体の拮抗薬である化合物はまた、非アレルギー性鼻炎のような他の疾患でも有用であり得る。
【0082】
本明細書における治療または療法への言及は、確立された状態の治療と同様に、予防にまで及ぶことは当業者なら理解するであろう。
【0083】
上述したように、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、治療薬として有用である。
【0084】
つまり、本発明のさらなる態様として、治療で使用するための式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩が提供される。
【0085】
本発明のもう1つの態様によれば、上記疾患のいずれかを治療するための医薬を製造するための式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用が提供される。
【0086】
さらなる態様で、治療を必要とするヒトまたは動物対象における、上記疾患のいずれかを治療するための方法が提供され、該方法は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む。
【0087】
治療で用いる場合、式(I)の化合物は、通常、適切な医薬組成物に製剤化される。そのような医薬組成物は、標準的な手順を用いて調製することができる。
【0088】
つまり、本発明は、場合により1種以上の薬学的に許容される担体および/または賦形剤と一緒に式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組成物をさらに提供する。
【0089】
適切には周囲温度および大気圧での混合によって調製され得る本発明の組成物は、経口、非経口、直腸または鼻内投与用に適合化され得、したがって、錠剤、カプセル剤、液体調製物例えば経口液体調製物、粉末、顆粒、ロゼンジ、再組成可能粉末、注射可能もしくは注入可能溶液もしくは懸濁液、または坐剤の形態であり得る。各特定のタイプの組成物については、当技術分野で周知の方法に従って適切な組成物が調製され得る。
【0090】
経口投与に適している組成物は、特に重要である。
【0091】
経口投与に適合化された医薬組成物は、カプセル剤または錠剤のような個別の単位;粉末または顆粒;水性または非水性液体中の溶液または懸濁液;可食フォームまたはホィップ;あるいは水中油型液体エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョンとして提供され得る。
【0092】
例えば、錠剤またはカプセル剤の形態での経口投与には、本活性薬物成分は、経口、無毒の薬学的に許容される不活性担体例えばエタノール、グリセロール、水などと組み合わせられ得る。錠剤またはカプセル剤に組み込むのに適している粉末は、本化合物を適切な微細なサイズに小さくし(例えばマイクロナイゼーションにより)、同様にして調製された、可食炭水化物、例えば、デンプンまたはマンニトールのような医薬担体と混合することによって調製され得る。矯味矯臭剤、防腐剤、分散剤および着色剤が存在していてもよい。
【0093】
カプセル剤は、上述したように粉末混合物を調製して、ゼラチンシース成形体に充填することで製造され得る。粉末混合物には、コロイド状シリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは固体ポリエチレングリコールのような滑沢剤および潤滑剤を充填工程の前に加えることができる。カプセル剤が摂取されたときのその医薬のアベイラビリティを良くするために、寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムのような崩壊剤または可溶化剤を加えることもできる。
【0094】
さらに、望ましいまたは必要な場合は、混合物には、適切な結着剤、滑沢剤、潤滑剤、甘味剤、矯味矯臭剤、崩壊剤および着色剤を組み込むこともできる。適切な結着剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖類例えばグルコースまたはベータ−ラクトース、コーンスウィートナー、天然および合成のガム例えばアカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの投与形態に用いられる潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、限定するものではないが、デンプン、メチルセルロース、カンテン、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、顆粒化またはスラグ化し、潤滑剤および崩壊剤を加え、錠剤にプレス加工することで製剤化される。粉末混合物は、適切に粉砕された本化合物を、上述した希釈剤つまり基剤と、そして場合により、結着剤例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン、溶液遅流化剤例えばパラフィン、再吸収促進剤例えば四級塩および/または吸収剤例えばベントナイト、カオリンまたはリン酸二カルシウムと混合することで調製される。粉末混合物は、結着剤例えばシロップ、デンプンペースト、アカディア粘液またはセルロースもしくはポリマー物質溶液で湿潤化し、スクリーンを強制通過させることで顆粒化することができる。顆粒化に代わるものとして、粉末混合物は、タブレット成形機に流すことができ、結果として不完全に形成されたスラグが顆粒に砕かれる。顆粒は、タブレット成形ダイスに付着するのを防ぐために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたはミネラルオイルを添加することで潤滑化することができる。潤滑化された混合物はこの後錠剤に圧縮成形される。本発明の化合物はまた、易流動性不活性担体と組み合わせて、顆粒化またはスラグ化工程を経ることなく直接錠剤に圧縮成形することができる。シェラックのシールコーティング、砂糖またはポリマー物質のコーティング、およびワックスの光沢コーティングからなる透明または不透明の保護コーティングを設けることもできる。異なる単位投与体を区別するために、これらのコーティングには染料を加えることができる。
【0095】
溶液剤、シロップ剤およびエリキシル剤のような経口液剤は、与えられた量が所定量の本化合物を含むように投与単位形態に調製することができる。シロップ剤は、適切に矯味矯臭化された水性溶液に本化合物を溶解させることで調製することができ、エリキシル剤は、無毒のアルコール性ビヒクルを用いることによって調製される。懸濁液剤は、無毒のビヒクル中に本化合物を分散させることで製剤化することができる。可溶化剤および乳化剤例えばエトキシル化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテル、防腐剤、矯味矯臭添加剤例えばペパーミントオイルまたは天然甘味料あるいはサッカリンまたは他の人工甘味料なども加えることができる。
【0096】
適切であれば、経口投与用の投与単位組成物は、マイクロカプセル化することができる。例えば粒子状物質をコーティングすることによって、または粒子状物質をポリマー、ワックスなどの中に包埋することによって製剤を調製して、その放出を遅延または持続させることもできる。
【0097】
鼻内投与用には、適切な組成物は、場合により1種以上の懸濁化剤、1種以上の防腐剤、1種以上の湿潤化剤および/または1種以上の等張性調整剤を含み得る。
【0098】
懸濁化剤の例としては、カルボキシメチルセルロース、ビーガム、トラガカント、ベントナイト、メチルセルロースおよびポリエチレングリコールが挙げられ、例えば微結晶セルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムである。
【0099】
安定化させるためには、本発明の組成物は、防腐剤を含ませることで微生物汚染および繁殖から保護され得る。薬学的に許容される抗微生物剤または防腐剤の例としては、四級アンモニウム化合物(例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリミドおよび塩化セチルピリジニウム)、水銀剤(例えば硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀およびチメロサール)、アルコール剤(例えばクロロブタノール、フェニルエチルアルコールおよびベンジルアルコール)、抗菌性エステル(例えばパラ−ヒドロキシ安息香酸のエステル)、エデト酸二ナトリウム(EDTA)のようなキレート剤、ならびにクロロヘキシジン、クロロクレゾール、ソルビン酸およびその塩、およびポリミキシンのような他の抗微生物剤が挙げられ得る。
【0100】
懸濁された医薬を含む組成物、例えば経鼻組成物は、薬学的に許容される湿潤化剤を含み得るが、これは医薬粒子を湿らせて、組成物水相中でのその分散を容易にするように働く。典型的には、使用する湿潤化剤の量は、混合中にその分散物の泡発生を引き起こさないものである。湿潤化剤の例としては、脂肪アルコール、エステルおよびエーテルが挙げられ、例えばポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Polysorbate 80)である。
【0101】
体液例えば鼻腔液との等張性を得るために等張性調整剤を含ませ得るが、結果として刺激のレベルが低下する。等張性調整剤の例としては、塩化ナトリウム、デキストロースおよび塩化カルシウムが挙げられる。
【0102】
本発明の鼻内組成物は、予圧縮型ポンプ、例えばVP3、VP7または改良版(Valois SA社により製造されている型式)を用いて鼻道に投与され得る。このタイプのポンプは、十分な力が掛けられないと、より少ない用量が適用され得るので、十分な力が掛けられるまでは、組成物が放出または噴霧されないようにできるので、効果的であると考えられる。典型的には、この予圧縮型ポンプは、8〜50mlの組成物を保持することができるボトル(ガラスまたはプラスチック)と一緒に用いられ得、各スプレーは、典型的には、50〜100μLを送達する。
【0103】
非経口投与用には、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩と滅菌ビヒクルとを用いて液体単位投与形態を調製する。本化合物は、用いるビヒクルおよび濃度にもよるが、ビヒクルに懸濁または溶解させることができる。溶液剤を調製する際、注射用には、本化合物を溶解させて、濾過滅菌し、その後適切なバイアルまたはアンプルに充填して、密封することができる。有利には、ビヒクルには局所麻酔剤、防腐剤および緩衝化剤などの補佐剤を溶解させておく。安定性を高めるためには、組成物を、バイアルに充填した後凍結させ、その水を真空下で除去することができる。非経口用懸濁液剤は、実質的に同じ方法で調製されるが、この場合本化合物はビヒクル中に溶解されるのではなく懸濁され、また滅菌は濾過によっては行えない。化合物は、滅菌ビヒクル中に懸濁させる前にエチレンオキシドに晒すことによって滅菌することができる。組成物中に界面活性剤または湿潤化剤を含ませることによって、本化合物の均一分散を容易にし得る。
【0104】
本組成物は、投与の方法に応じて、本活性物質を約0.1%〜99%(重量)、例えば約10〜60%(重量)含有し得る。前記した障害の治療で用いられる本化合物の用量は、例のとおり、障害の深刻度、患者の体重、および他の似たような要因とともに変わるものである。とはいえ、一般的な指針としては、適切な単位用量は、約0.05〜1000mg、より好適には約1.0〜200mg、例えば20〜100mgであり得、またそのような単位用量は、1日1回より多く、例えば1日に2または3回投与され得る。このような治療は、何週間または何ヶ月にも及び得る。1つの実施形態では本発明による化合物および医薬組成物は経口投与に適しており、および/または例えば20〜200mgの範囲(例えば約20〜100mg)の用量で1日1回の投与ができるものである。
【0105】
本発明による化合物および医薬組成物は、1種または複数の他の治療用薬剤、例えば他の抗ヒスタミン薬例えばH4受容体拮抗薬、抗コリン薬、コルチコステロイド(例えばフルチカゾンプロピオネート、ベクロメタゾンジプロピオネート、モメタゾンフロエート、トリアムシノロンアセトニド、ブデゾニド、および国際公開第02/12265号パンフレットに開示されているステロイド);または非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)(例えばナトリウムクロモグリケート、ネドクロミルナトリウム)、PDE−4阻害薬、ロイコトリエン拮抗薬、リポキシゲナーゼ阻害薬、ケモカイン拮抗薬(例えばCCR3、CCR1、CCR2、CCR4、CCR8、CXCR1、CXCR2)のような抗炎症薬、IKK拮抗薬、iNOS阻害薬、トリプターゼ阻害薬、エラスターゼ阻害薬、ベータ−2インテグリン拮抗薬およびアデノシン2a作動薬;またはベータアドレナリン作動薬(例えばサルメテロール、サルブタモール、ホルモテロール、フェノテロール、テルブタリン、および国際公開第02/66422号パンフレット、国際公開第02/270490号パンフレット、国際公開第02/076933号パンフレット、国際公開第03/024439号パンフレットおよび国際公開第03/072539号パンフレットに記載されているベータ作動薬ならびにその塩);または抗感染症薬例えば抗生剤および抗ウイルス剤との組み合わせでも用いられ得るし、また本発明の医薬組成物は、それらを含み得る。適切な場合は、他の治療用薬剤を塩(例えばアルカリ金属もしくはアミン塩としてまたは酸付加塩として)またはプロドラッグの形態で、またはエステル(例えば低級アルキルエステル)として、または溶媒和物(例えば水和物)として用いて、その治療用薬剤の活性および/または安定性および/または物理特性(例えば溶解度)を至適化し得ることは当業者には明らかであろう。適切な場合は、この治療用薬剤は、光学的に純粋な形態で用いられ得ることも明らかであろう。
【0106】
つまり本発明は、さらなる態様で、1種または複数(例えば1種または2種、例えば1種)の他の治療的に有効な薬剤と、場合により1種または複数の薬学的に許容される担体および/または賦形剤とも一緒に式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組み合わせを提供する。
【0107】
単独で用いられ得る、あるいはデュアル受容体拮抗薬との組み合わせで用いられ得る他のヒスタミン受容体拮抗薬としては、H4受容体の拮抗薬(および/または逆作動薬)、例えば、Jablonowski et al., J. Med. Chem. 46:3957-3960 (2003)に開示されている化合物が挙げられる。
【0108】
1つの実施形態で、本発明は、式(I)の化合物とβ−アドレナリン受容体作動薬とを含む組み合わせを提供する。
【0109】
β−アドレナリン受容体作動薬の例としては、サルメテロール(これは、ラセミ化合物、またはR−エナンチオマーのような単一エナンチオマーであり得る)、サルブタモール(これは、ラセミ化合物、またはR−エナンチオマーのような単一エナンチオマーであり得る)、ホルモテロール(これは、ラセミ化合物、またはR,R−ジアステレオマーのような単一ジアステレオマーであり得る)、サルメファモール、フェノテロール、カルモテロール、エタンテロール、ナミンテロール、クレンブテロール、ピルブテロール、フルエルブテロール、レプロテロール、バムブテロール、インダカテロール、テルブタリン、ならびにこれらの塩、例えばサルメテロールのキシナホ酸(1−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸)塩、サルブタモールの硫酸塩もしくは遊離塩基またはホルモテロールのフマル酸塩が挙げられる。1つの実施形態で、本発明の組み合わせは、長期作用性β−アドレナリン受容体作動薬、例えば、約12時間以上の効果的な気管支拡張を提供する化合物を含み得る。
【0110】
他のβ−アドレナリン受容体作動薬としては、国際公開第02/066422号パンフレット、国際公開第02/070490号パンフレット、国際公開第02/076933号パンフレット、国際公開第03/024439号パンフレット、国際公開第03/072539号パンフレット、国際公開第03/091204号パンフレット、国際公開第04/016578号パンフレット、国際公開第2004/022547号パンフレット、国際公開第2004/037807号パンフレット、国際公開第2004/037773号パンフレット、国際公開第2004/037768号パンフレット、国際公開第2004/039762号パンフレット、国際公開第2004/039766号パンフレット、国際公開第01/42193号パンフレットおよび国際公開第03/042160号パンフレットに記載のものが挙げられる。
【0111】
β−アドレナリン受容体作動薬の例としては:
3−(4−{[6−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミド;
3−(3−{[7−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル)フェニル]エチル}−アミノ)ヘプチル]オキシ}プロピル)ベンゼンスルホンアミド;
4−{(1R)−2−[(6−{2−[(2,6−ジクロロベンジル)オキシ]エトキシシ}ヘキシル)アミノ]−1−ヒドロキシエチル}−2−(ヒドロキシメチル)フェノール;
4−{(1R)−2−[(6−{4−[3−(シクロペンチルスルホニル)フェニル]ブトキシ}ヘキシル)アミノ]−1−ヒドロキシエチル}−2−(ヒドロキシメチル)フェノール;
N−[2−ヒドロキシl−5−[(1R)−1−ヒドロキシ−2−[[2−4−[[(2R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル]アミノ]フェニル]エチル]アミノ]エチル]フェニル]ホルムアミド;
N−2{2−[4−(3−フェニル−4−メトキシシフェニル)アミノフェニル]エチル}−2−ヒドロキシ−2−(8−ヒドロキシ−2(1H)−キノリノン−5−イル)エチルアミン;および
5−[(R)−2−(2−{4−[4−(2−アミノ−2−メチル−プロポキシ)−フェニルアミノ]−フェニル}−エチルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン
が挙げられる。
【0112】
このβ−アドレナリン受容体作動薬は、硫酸、塩酸、フマル酸、ヒドロキシナフトエ酸(例えば1−もしくは3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸)、シンナム酸、置換されたシンナム酸、トリフェニル酢酸、スルファミン酸、スルファニル酸、ナフタレンアクリル酸、安息香酸、4−メトキシ安息香酸、2−もしくは4−ヒドロキシ安息香酸、4−クロロ安息香酸および4−フェニル安息香酸から選択される薬学的に許容される酸と形成される塩の形態であり得る。
【0113】
もう1つの実施形態で、本発明は、式(I)の化合物とアデノシン2a作動薬とを含む組み合わせを提供する。
【0114】
A2a作動薬としては、国際特許出願であるPCT/EP/2005/005651に記載されているもの、例えば(2R,3R,4S,5R,2’R,3’R,4’S,5’R)−2,2’−{トランス−1,4−シクロヘキサンジイルビス[イミノ(2−{[2−(1−メチル−1H−イミダゾール−4−イル)エチル]アミノ}−9H−プリン−6,9−ジイル)]}ビス[5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオール]が挙げられる。
【0115】
もう1つの実施形態で、本発明は、式(I)の化合物と抗炎症薬とを含む組み合わせを提供する。
【0116】
抗炎症薬としてはコルチコステロイドが挙げられる。本発明の化合物との組み合わせで用いられ得る適切なコルチコステロイドは、抗炎症活性を有している経口および吸入用のコルチコステロイドおよびそのプロドラッグである。例としては、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17α−[(4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボニル)オキシ]−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル(モメタゾンフロエート)、6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3S−イル)エステル、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17β−(2,2,3,3−テトラメチルシクロプロピルカルボニル)オキシ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−シアノメチルエステル、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17β−(1−メチルシクロプロピルカルボニル)オキシ−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル、ベクロメタゾンエステル(例えばその17−プロピオン酸エステルまたはその17,21−ジプロピオン酸エステル)、ブデゾニド、フルニゾリド、モメタゾンエステル(例えばモメタゾンフロエート)、トリアムシノロンアセトニド、ロフレポニド、シクレソニド(16α,17−[[(R)−シクロヘキシルメチレン]ビス(オキシ)]−11β,21−ジヒドロキシ−プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン)、ブチキソコルトプロピオネート、RPR−106541、およびST−126が挙げられる。特に重要なコルチコステロイドとしては、プロピオン酸フルチカゾン、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17α−[(4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボニル)オキシ]−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル、6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17β−(2,2,3,3−テトラメチルシクロプロピルカルボニル)オキシ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−シアノメチルエステル、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17β−(1−メチルシクロプロピルカルボニル)オキシ−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル、およびモメタゾンフロエートが挙げられ得る。1つの実施形態では、このコルチコステロイドは、6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステルまたはモメタゾンフロエートである。
【0117】
転写活性よりも転写抑制に対して選択性をもっていると思われる、また組み合わせ治療で有用であると思われる、グルココルチコイド作動性を有する非ステロイド系化合物としては、以下の特許出願および特許:国際公開第03/082827号パンフレット、国際公開第98/54159号パンフレット、国際公開第04/005229号パンフレット、国際公開第04/009017号パンフレット、国際公開第04/018429号パンフレット、国際公開第03/104195号パンフレット、国際公開第03/082787号パンフレット、国際公開第03/082280号パンフレット、国際公開第03/059899号パンフレット、国際公開第03/101932号パンフレット、国際公開第02/02565号パンフレット、国際公開第01/16128号パンフレット、国際公開第00/66590号パンフレット、国際公開第03/086294号パンフレット、国際公開第04/026248号パンフレット、国際公開第03/061651号パンフレット、国際公開第03/08277号パンフレット、国際公開第06/000401号パンフレット、国際公開第06/000398号パンフレットおよび国際公開第06/015870号パンフレットに記載されているものが挙げられる。
【0118】
抗炎症薬としては、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)も挙げられる。
【0119】
NSAIDとしては、ナトリウムクロモグリケート、ネドクロミルナトリウム、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬(例えばテオフィリン、PDE4阻害薬または混合PDE3/PDE4阻害薬)、ロイコトリエン拮抗薬、ロイコトリエン合成抑制薬(例えばモンテルカスト)、iNOS(誘導性酸化窒素シンターゼ)阻害薬(例えば経口iNOS阻害薬)、IKK拮抗薬、トリプターゼおよびエラスターゼ阻害薬、ベータ−2インテグリン拮抗薬およびアデノシン受容体作動薬または拮抗薬(例えばアデノシン2a作動薬)、サイトカイン拮抗薬(例えばケモカイン拮抗薬、例えばCCR1、CCR2、CCR3、CCR4、またはCCR8拮抗薬)もしくはサイトカイン合成抑制薬、または5−リポキシゲナーゼ阻害薬が挙げられる。iNOS阻害薬としては、国際公開第93/13055号パンフレット、国際公開第98/30537号パンフレット、国際公開第02/50021号パンフレット、国際公開第95/34534号パンフレットおよび国際公開第99/62875号パンフレットに開示されているものが挙げられる。
【0120】
1つの実施形態で本発明は、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬との組み合わせでの式(I)の化合物の使用を提供する。本発明のこの態様で有用なPDE4特異的阻害薬は、PDE4酵素を阻害すると知られているかまたはPDE4阻害薬として作用することが見出されていて、且つPDE4のみの阻害薬であり、PDE4と同時に、PDEファミリーの他のメンバー、例えばPDE3およびPDE5も阻害する化合物ではない任意の化合物であり得る。
【0121】
重要と思われる化合物としては、シス−4−シアノ−4−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシシフェニル)シクロヘキサン−1−カルボン酸、2−カルボメトキシシ−4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシシ−4−ジフルオロメトキシシフェニル)シクロヘキサン−1−オンおよびシス−[4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシシ−4−ジフルオロメトキシシフェニル)シクロヘキサン−1−オール]が挙げられる。また、シス−4−シアノ−4−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシシフェニル]シクロヘキサン−1−カルボン酸(シロミラストとも呼ばれる)およびその塩、エステル、プロドラッグまたは物理的形態も挙げられ、これは1996年9月3日発行の米国特許第5552438号明細書に記載されている。
【0122】
他のPDE4阻害薬としては、Elbion社が提供しているAWD−12−281(Hofgen, N. et al. 15th EFMC Int Symp Med Chem (Sept 6-10, Edinburgh) 1998, Abst P.98; CAS reference No. 247584020-9);9−ベンジルアデニン誘導体指定NCS−613(INSERM社);Chiroscience and Schering−Plough社が提供しているD−4418;CI−1018(PD−168787)と識別され、Pfizer社のものであるとされるベンゾアゼピンPDE4阻害薬;Kyowa Hakko社が国際公開第99/16766号パンフレットで開示しているベンゾジオキソール誘導体;Kyowa Hakko社が提供しているK−34;Napp社が提供しているV−11294A(Landells, L.J. et al., Eur. Resp. J. [Ann. Cong. Eur. Resp. Soc. (Sept 19-23, Geneva) 1998] 1998, 12 (Suppl. 28): Abst P2393);Byk−Gulden社が提供しているロフルミラスト(CAS reference No 162401-32-3)およびプタラジノン(国際公開第99/47505号パンフレット);プマフェントリン、Byk−Gulden社(現在はAltana社)によって調製され、公表されている混合PDE3/PDE4阻害薬である(−)−p−[(4aR,10bS)−9−エトキシシ−1,2,3,4,4a,10b−ヘキサヒドロ−8−メトキシシ−2−メチルベンゾ[c][1,6]ナフチリジン−6−イル]−N,N−ジイソプロピルベンザミド;Almirall−Prodesfarma社が開発中のアロフィリン;Vernalis社が提供しているVM554/UM565;またはT−440(Tanabe Seiyaku; Fuji, K. et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 284(1):162, 1998)、およびT2585が挙げられる。
【0123】
重要であると思われるさらなる化合物が、公開された国際特許出願である国際公開第04/024728号パンフレット(Glaxo Group Ltd)、国際公開第04/056823号パンフレット(Glaxo Group Ltd)および国際公開第04/103998号パンフレット(Glaxo Group Ltd)に開示されている。
【0124】
なおもう1つの実施形態で、本発明は、式(I)の化合物と抗コリン薬とを含む組み合わせを提供する。
【0125】
抗コリン薬は、ムスカリン性受容体において拮抗薬として作用する化合物であり、特にMまたはM受容体の拮抗薬、M/MまたはM/M受容体のデュアル拮抗薬、M/M/M受容体のパン(汎)拮抗薬である化合物である。吸入による投与用の化合物の例としては、イプラトロピウム(例えば、臭化物として、CAS 22254-24-6、商品名「Atrovent」で販売されている)、オキシトロピウム(例えば、臭化物として、CAS 30286-75-0)、およびチオトロピウム(例えば、臭化物として、CAS 136310-93-5、商品名「Spiriva」で販売されている)が挙げられる。また、レバトロペート(例えば、臭化水素酸塩として、CAS 262586-79-8)、および国際公開第01/04118号パンフレットに開示されているLAS−34273も重要である。経口投与用の化合物の例としては、ピレンゼピン(CAS 28797-61-7)、ダリフェナシン(例えば、CAS 133099-04-4、または商品名「Enablex」で販売されている臭化水素酸塩についてはCAS 133099-07-7)、オキシブチニン(例えば、CAS 5633-20-5、商品名「Ditropan」で販売されている)、テロジリン(例えば、CAS 15793-40-5)、トルテロジン(例えば、CAS 124937-51-5、または酒石酸塩についてはCAS 124937-52-6、商品名「Detrol」で販売されている)、オチロニウム(例えば、臭化物として、CAS 26095-59-0、商品名「Spasmomen」で販売されている)、塩化トロスピウム(例えば、CAS 10405-02-4)、およびソリフェナシン(例えば、CAS 242478-37-1、またはCAS 242478-38-2、またはYM−905とも呼ばれ且つ商品名「Vesicare」で販売されているそのコハク酸塩)が挙げられる。
【0126】
他の抗コリン薬としては、米国特許出願第60/487981号に開示されている式(XXI)の化合物が挙げられ:
【化14】

【0127】
[式中、トロパン環に結合しているアルキル鎖の好ましい方向はエンドであり;
31およびR32は、独立に、好ましくは1〜6個の炭素原子を有している直鎖もしくは分枝鎖低級アルキル基、5〜6個の炭素原子を有しているシクロアルキル基、6〜10個の炭素原子を有しているシクロアルキル−アルキル、2−チエニル、2−ピリジル、フェニル、4個以下の炭素原子を有しているアルキル基で置換されたフェニル、および4個以下の炭素原子を有しているアルコキシ基で置換されたフェニルからなる群から選択され;
は、N原子の正電荷と会合しているアニオンを表し、Xは、限定するものではないが、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、およびトルエンスルホン酸イオンであり得る]、
例えば:
(3−エンド)−3−(2,2−ジ−2−チエニルエテニル)−8,8−ジメチル−8−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;
(3−エンド)−3−(2,2−ジフェニルエテニル)−8,8−ジメチル−8−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;
(3−エンド)−3−(2,2−ジフェニルエテニル)−8,8−ジメチル−8−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタン4−メチルベンゼンスルホネート;
(3−エンド)−8,8−ジメチル−3−[2−フェニル−2−(2−チエニル)エテニル]−8−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;および/または
(3−エンド)−8,8−ジメチル−3−[2−フェニル−2−(2−ピリジニル)エテニル]−8−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド
が挙げられる。
【0128】
さらなる抗コリン薬としては、米国特許出願第60/511009号に開示されている式(XXII)または式(XXIII)の化合物が挙げられ:
【化15】

【0129】
[式中、
示されているH原子は、エキソ配置にあり;
41は、N原子の正電荷と会合しているアニオンを表し、R41は、限定するものではないが、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、およびトルエンスルホン酸イオンであり得;
42およびR43は、独立に、(好ましくは1〜6個の炭素原子を有している)直鎖もしくは分枝鎖低級アルキル基、(5〜6個の炭素原子を有している)シクロアルキル基、(6〜10個の炭素原子を有している)シクロアルキル−アルキル、(5〜6個の炭素原子およびヘテロ原子としてのNまたはOを有している)ヘテロシクロアルキル、(6〜10個の炭素原子およびヘテロ原子としてのNまたはOを有している)ヘテロシクロアルキル−アルキル、アリール、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、および置換されていてもよいヘテロアリールからなる群から選択され;
44は、(C〜C)アルキル、(C〜C12)シクロアルキル、(C〜C)ヘテロシクロアルキル、(C〜C)アルキル(C〜C12)シクロアルキル、(C〜C)アルキル(C〜C)ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、(C〜C)アルキル−アリール、(C〜C)アルキル−ヘテロアリール、−OR45、−CHOR45、−CHOH、−CN、−CF、−CHO(CO)R46、−CO47、−CHNH、−CHN(R47)SO45、−SON(R47)(R48)、−CON(R47)(R48)、−CHN(R48)CO(R46)、−CHN(R48)SO(R46)、−CHN(R48)CO(R45)、−CHN(R48)CONH(R47)からなる群から選択され;
45は、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル(C〜C12)シクロアルキル、(C〜C)アルキル(C〜C)ヘテロシクロアルキル、(C〜C)アルキル−アリール、(C〜C)アルキル−ヘテロアリールからなる群から選択され;
46は、(C〜C)アルキル、(C〜C12)シクロアルキル、(C〜C)ヘテロシクロアルキル、(C〜C)アルキル(C〜C12)シクロアルキル、(C〜C)アルキル(C〜C)ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、(C〜C)アルキル−アリール、(C〜C)アルキル−ヘテロアリールからなる群から選択され;
47およびR48は、独立に、H、(C〜C)アルキル、(C〜C12)シクロアルキル、(C〜C)ヘテロシクロアルキル、(C〜C)アルキル(C〜C12)シクロアルキル、(C〜C)アルキル(C〜C)ヘテロシクロアルキル、(C〜C)アルキル−アリール、および(C〜C)アルキル−ヘテロアリールからなる群から選択される]、
例えば:
(エンド)−3−(2−メトキシシ−2,2−ジ−チオフェン−2−イル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピオニトリル;
(エンド)−8−メチル−3−(2,2,2−トリフェニル−エチル)−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン;
3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピオンアミド;
3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピオン酸;
(エンド)−3−(2−シアノ−2,2−ジフェニル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
(エンド)−3−(2−シアノ−2,2−ジフェニル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;
3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロパン−1−オール;
N−ベンジル−3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピオンアミド;
(エンド)−3−(2−カルバモイル−2,2−ジフェニル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
1−ベンジル−3−[3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピル]−尿素;
1−エチル−3−[3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピル]−尿素;
N−[3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピル]−アセトアミド;
N−[3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピル]−ベンズアミド;
3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジ−チオフェン−2−イル−プロピオニトリル;
(エンド)−3−(2−シアノ−2,2−ジ−チオフェン−2−イル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
N−[3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピル]−ベンゼンスルホンアミド;
[3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピル]−尿素;
N−[3−((エンド)−8−メチル−8−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−2,2−ジフェニル−プロピル]−メタンスルホンアミド;および/または
(エンド)−3−{2,2−ジフェニル−3−[(1−フェニル−メタノイル)−アミノ]−プロピル}−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド
が挙げられる。
【0130】
有用であり得る好ましい抗コリン化合物としては:
(エンド)−3−(2−メトキシシ−2,2−ジ−チオフェン−2−イル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
(エンド)−3−(2−シアノ−2,2−ジフェニル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
(エンド)−3−(2−シアノ−2,2−ジフェニル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド;
(エンド)−3−(2−カルバモイル−2,2−ジフェニル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;
(エンド)−3−(2−シアノ−2,2−ジ−チオフェン−2−イル−エチル)−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンヨージド;および/または
(エンド)−3−{2,2−ジフェニル−3−[(1−フェニル−メタノイル)−アミノ]−プロピル}−8,8−ジメチル−8−アゾニア−ビシクロ[3.2.1]オクタンブロミド
が挙げられる。
【0131】
つまり本発明は、さらなる態様で、PDE4阻害薬と一緒に式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組み合わせを提供する。
【0132】
つまり本発明は、さらなる態様で、β−アドレナリン受容体作動薬と一緒に式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組み合わせを提供する。
【0133】
つまり本発明は、さらなる態様で、抗コリン薬と一緒に式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組み合わせを提供する。
【0134】
つまり本発明は、さらなる態様で、抗炎症薬(本明細書で記載した化合物の類のようなもの)と一緒に式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組み合わせを提供する。
【0135】
つまり本発明は、さらなる態様で、プロピオン酸フルチカゾンつまり6a,9a−ジフルオロ−17a−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11b−ヒドロキシ−16a−メチル−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17b−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステルまたはモメタゾンフロエートのようなコルチコステロイドと一緒に式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組み合わせを提供する。そのような組み合わせは、鼻内投与用に特に重要であり得る。
【0136】
つまり本発明は、さらなる態様で、PCT/EP/2005/005651に記載されている化合物のような、例えば(2R,3R,4S,5R,2’R,3’R,4’S,5’R)−2,2’−{トランス−1,4−シクロヘキサンジイルビス[イミノ(2−{[2−(1−メチル−1H−イミダゾール−4−イル)エチル]アミノ}−9H−プリン−6,9−ジイル)]}ビス[5−(2−エチル−2H−テトラゾール−5−イル)テトラヒドロ−3,4−フランジオール]のようなA2a受容体作動薬と一緒に式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組み合わせを提供する。
【0137】
上記した組み合わせは、使用のためには医薬組成物の形態で都合よく提供され得るので、薬学的に許容される希釈剤または担体と一緒に、上記で定義した組み合わせを含んでいる医薬組成物は本発明のさらなる態様を形成する。
【0138】
そのような組み合わせの個々の化合物は、別々の医薬組成物かまたは組み合わせの医薬組成物で順次または同時に投与され得る。好適には、個々の化合物は、組み合わせの医薬組成物で同時に投与されるものである。当業者であれば、知られている治療用薬剤の適切な用量は、容易に解るであろう。
【0139】
当然、適切であれば、上記他の治療用成分は、塩の形態で、例えばアルカリ金属もしくはアミン塩または酸付加塩として、またはプロドラッグの形態で、つまりエステル、例えば低級アルキルエステルとして、あるいは溶媒和物、例えば水和物として用いて、その治療用成分の活性および/または安定性および/または物理特性(例えば溶解度)を至適化し得ることは当業者には明らかであろう。また、当然、適切であれば、この治療用成分は、光学的に純粋な形態で用い得ることも明らかであろう。
【実施例】
【0140】
本発明の化合物は、以下に記載する方法または同じような方法によって調製され得る。つまり、以下の中間体および化合物の実施例は、本発明の化合物の調製を説明するためのものであって、いかなる意味においても、本発明の範囲を限定するものととるべきでない。
【0141】
一般的実験事項
実施例をとおして、以下の略記号が用いられ得る。
DCM:ジクロロメタン
DIPEA:N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
EtOAc:酢酸エチル
EtOH:エタノール
h:時
HBTU:O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HCl:塩酸
HPLC:高性能液体クロマトグラフィー
L:リットル
LCMS:液体クロマトグラフィー質量分光分析
MDAP:質量直結自動分取HPLC精製
MeOH:メタノール
min:分
ml:ミリリットル
NaCl:塩化ナトリウム
NaHCO:炭酸水素ナトリウム
NaOH:水酸化ナトリウム
NMP:1−メチル−2−ピロリドン
RT:保持時間
TBTU:O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート
THF:テトラヒドロフラン
【0142】
フラッシュシリカゲルは、Merck Art No.9385を指し;シリカゲルは、Merck Art No.7734を指す。
【0143】
SCXカートリッジは、静止相が高分子ベンゼンスルホン酸であるIon Exchange SPEカラムである。これらは、アミンを単離するために用いられ得る。
【0144】
SCX2カートリッジは、静止相が高分子プロピルスルホン酸であるIon Exchange SPEカラムである。これらは、アミンを単離するために用いられ得る。
【0145】
有機溶液は、例えば硫酸マグネシウムかまたは硫酸ナトリウムで乾燥され得る。
【0146】
所望であれば、反応は、窒素下で行われ得る。
【0147】
LCMSは、0.1%HCOHおよび0.01M酢酸アンモニウム/水(溶媒A)と0.05%HCOHおよび5%水/アセトニトリル(溶媒B)とで溶離するSupelcosil LCABZ+PLUSカラム(3.3cm×4.6mm ID)で、流速3mL/minで以下の溶離勾配:0.0〜0.7min 0%B;0.7〜4.2min 100%B;4.2〜5.3min 0%B;5.3〜5.5min 0%Bを用いて行った。マススペクトルは、エレクトロスプレーポジティブおよびネガティブモード(ES+veおよびES−ve)を用いるFisons VG Platform分光計で記録した。
【0148】
Flashmaster IIは、Argonaut Technologies Ltdから入手可能な自動マルチユーザー型フラッシュクロマトグラフィーシステムであり、使い捨ての順相SPEカートリッジ(2g〜100g)が使用されている。勾配法を行うことを可能にするための四元オンライン溶媒混合が付いている。溶媒、流量、勾配プロファイルおよびコレクション条件を管理する多機能オープンアクセスソフトウェアを用いてサンプルは列に並べられる。このシステムには、Knauer波長可変式UV検出器およびGilson FC204フラクションコレクターが装着されていて、自動的なピークカット、コレクションおよびトラッキングが可能になっている。
【0149】
化合物の結晶形態を分析するのに用いたXRPD法は、以下のとおりである。
【表1】

【0150】
XRPD分析は、X’Celerator検出器を用いるPANalytical X’Pert Pro X線粉末回折計、型式X’Pert Pro PW3040/60、シリアルナンバーDY1850で行った。取得条件は、放射線:Cu Kα、発生器電圧:40kV、発生器電流:45mA、開始角度:2.0°2θ、終了角度:40.0°2θ、ステップサイズ:0.0167°2θ、ステップあたりの時間:190.5秒であった。試料は、サンプル数ミリグラムをSiliconウエハー(ゼロバックグランド)プレート上に載せることで調製したが、結果として薄い粉末の層が得られた。ピーク位置は、Highscoreソフトウェアを用いて測定した。
【0151】
DSC温度記録図は、TA Q1000熱量計、シリアルナンバー1000−0126を用いて取得した。試料は、アルミ皿の中に秤量し、皿蓋を上に配置し、皿を密封することなく軽く口締めした。この実験は、10℃/minの加熱速度を用いて行った。
【0152】
(中間体1)
1−[(3−クロロプロピル)オキシ]−4−ヨードベンゼン
p−ヨードフェノール(20g、91ミリモル)、炭酸カリウム(25.2g、182ミリモル)および1−ブロモ−3−クロロプロパン(例えば、Aldrich社から、商業的に入手可能)(18g、114ミリモル)の無水2−ブタノン(300ml)中混合物を還流で72時間加熱し、室温まで冷却し、濾過し、蒸発乾固させた。得られた残留分をSPE濾過(70gシリカカートリッジ、20:1シクロヘキサン−酢酸エチルで溶離)により精製して、標題の化合物(24.9g);1H NMR (CDCl3) δ 7.5 (2H, d), 6.7 (2H, d), 4.1 (2H, t), 3.8 (2H, t), 2.2 (2H, q)を得た。
【0153】
(中間体2)
1−{3−[(4−ヨードフェニル)オキシ]プロピル}−3,3−ジメチルピペリジン
1−[(3−クロロプロピル)オキシ]−4−ヨードベンゼン(例えば、中間体1を調製したようにして)(6.5g、20ミリモル)、3,3−ジメチルピペリジン(例えばAlfa社から、商業的に入手可能)(3.39g、30ミリモル)、ヨウ化ナトリウム(2.99g、20ミリモル)および炭酸カリウム(3.3g、20ミリモル)の無水アセトニトリル(100ml)中混合物を還流で一晩加熱した。この混合物を室温まで冷却させ、蒸発乾固させ、水でクエンチして、ジクロロメタンで抽出し、乾燥させ、濾過し、濃縮して、標題の化合物(8g)を得た。LCMS RT = 2.37 min, ES+ve m/z 374 (M+H)+
【0154】
(中間体3)
1,1−ジメチルエチル4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−4−ヒドロキシ−1−ピペリジンカルボキシレート
1−{3−[(4−ヨードフェニル)オキシ]プロピル}−3,3−ジメチルピペリジン(例えば中間体2を調製したようにして)(3g、8.02ミリモル)の無水THF(30ml)溶液を窒素下で−78℃まで冷却し、nBuLi(1.6Mヘキサン溶液、6.02ml、9.63ミリモル)で処理し、0.5時間後、N−Boc−4−オキソピペリジン(例えばAldrich社から、商業的に入手可能)(1.99g、10ミリモル)のTHF(10ml)溶液を滴下で加えた。この混合物を室温まで昇温させ、一晩攪拌した。混合物を塩化アンモニウム溶液でクエンチし、EtOAcで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた残留分を、254nmでモニタリングしながら、100gカートリッジを用いるFlashMaster IIクロマトグラフィーにより、5分間100%シクロヘキサン、15分かけて100%シクロヘキサン〜100%EtOAc、5分で100%EtOAc〜100%DCM、そして40分かけて100%DCM〜30%MeOH(トリエチルアミン1%を含有)/DCM、その後5分間一定に保って溶離して精製し、標題の化合物(1.25g)を得た。LCMS RT = 2.48 min, ES+ve m/z 447 (M+H)+
【0155】
(中間体4)
3−ジメチル−1−(3−{[4−(4−ピペリジニル)フェニル]オキシ}プロピル)ピペリジン二塩酸塩
1,1−ジメチルエチル4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−4−ヒドロキシ−1−ピペリジンカルボキシレート(例えば中間体3を調製したようにして)(1.25g、2.8ミリモル)の無水DCM(10ml)溶液をトリエチルシラン(2.2ml、13.7ミリモル)で処理し、窒素下の室温にて0.5時間攪拌した。この溶液を−78℃まで冷却し、トリフルオロ酢酸(3ml)を加えた。反応を室温まで昇温させ、一晩攪拌した。この混合物を蒸発乾固させて、2回トルエンで共沸させた。得られた残留分を、MeOH、続いて2MアンモニアMeOH溶液で溶離するSCX−2カートリッジ(20g)で精製して、黄色の濃厚な油状物を得、これを2M塩化水素/エーテルで処理し、蒸発させて、標題の化合物(886mg)を得たが、いくらかの4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリジンジクロリドを含有していたので、この混合物のアリコート(0.54g)を、室温にて、EtOH(15ml)中で、10%wtパラジウム/炭素(0.5g)を用いて、大気圧で2時間かけて水素化した。セライトを通す濾過により触媒を除去し、エタノールで洗浄し、濾液を蒸発乾固させて、標題の化合物(448mg)を得た。LCMS RT = 1.77 min, ES+ve m/z 331 (M+H)+
【0156】
(中間体5)
4−[(1E)−3−(メチルオキシ)−3−オキソ−1−プロペン−1−イル]−1−ナフタレンカルボン酸
a)4−ブロモ−1−ナフタレンカルボン酸(これは、Can. J. Chem. 1981, 59, 2629-41に記載されている方法によって調製され得る)(100mg、0.4ミリモル)、トリエチルアミン(0.42ml、3ミリモル)、酢酸パラジウム(12mg、0.04ミリモル)、トリフェニルホスフィン(13mg、0.04ミリモル)およびアクリル酸メチル(1.19ml、0.11ミリモル)の無水DMF(8ml)溶液を100℃に4時間窒素下で加熱した。この混合物を室温まで冷却させ、減圧下で蒸発乾固させ、MeOH、続いて4M HCl/ジオキサン、その後2Mアンモニア/MeOHで溶離するカートリッジにより精製した。このアンモニア/メタノールフラクションを合わせて残留分を得、これをDCMと水とに分配させ、DCM層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させて濾過し、蒸発させて、標題の化合物(99mg、97%)を得た。LCMS RT = 3.25 min, ES-ve m/z 255 (M-H)-
【0157】
b)4−ブロモ−1−ナフタレンカルボン酸(9.42g)、トリエチルアミン(25ml)、酢酸パラジウム(0.85g)、トリフェニルホスフィン(0.98g)およびアクリル酸メチル(9.68g)の無水DMF(95ml)中混合物を100℃に1時間窒素下で加熱した。この混合物を室温まで冷却させ、セライトにより濾過し、ジエチルエーテル/水で洗浄した。濾液を、エーテル、その後EtOAcで抽出した。水相を2M塩化水素水溶液でおよそpH1に酸性化した。この固形物を濾過し、水で洗浄し、真空下40℃で乾燥させて、標題の化合物(8.2g)を得た。
【0158】
(中間体6)
4−[3−(メチルオキシ)−3−オキソプロピル]−1−ナフタレンカルボン酸
a)4−[(1E)−3−(メチルオキシ)−3−オキソ−1−プロペン−1−イル]−1−ナフタレンカルボン酸(例えば中間体5を調製したようにして)(1.73g、5.09ミリモル)をパラジウム/炭素(10重量%、350mg)/エタノール(50ml)で4時間水素化させた。触媒を、セライトを通す濾過により除去し、この混合物を再度新鮮な触媒(350mg)で一晩水素化した。混合物をセライトで濾過し、濃縮して、表題の化合物を得た。
【0159】
b)4−[(1E)−3−(メチルオキシ)−3−オキソ−1−プロペン−1−イル]−1−ナフタレンカルボン酸(例えば中間体5を調製したようにして)(4g、5.09ミリモル)/500mlエタノールをパラジウム/炭素(10重量%、1g)で約2時間水素化した。触媒を、セライトを通す濾過により除去し、溶媒を蒸発させ、得られた固形物を真空下に一晩放置して、標題の化合物(3.8g)を得た。ES+ve m/z 258 (M+H)+
【0160】
(中間体7)
メチル3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1−ピペリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)プロパノエート
4−[3−(メチルオキシ)−3−オキソプロピル]−1−ナフタレンカルボン酸(例えば中間体6を調製したようにして)(0.197g、0.76ミリモル)の無水DMF(2ml)溶液をHBTU(0.29g 0.77ミリモル)、ジイソプロピルエチルアミン(0.6ml、3.82ミリモル)で処理し、この混合物を室温にて20分間攪拌し、3,3−ジメチル−1−(3−{[4−(4−ピペリジニル)フェニル]オキシ}プロピル)ピペリジン二塩酸塩(例えば中間体4を調製したようにして)(250mg、0.63ミリモル)を加え、混合物を室温にて4時間攪拌した。この混合物を蒸発乾固させ、続いて2Mアンモニアメタノール溶液で溶離するSCX−2カートリッジ(5g)で精製して、標題の化合物(238mg)を得た。LCMS RT = 2.79 min, ES+ve m/z 571。
【0161】
(実施例1)
3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1−ピペリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)プロパン酸、ギ酸(1:1)
【化16】

【0162】
メチル3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1−ピペリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)プロパノエート(例えば、中間体7で調製したようにして)(238mg、0.42ミリモル)および水酸化カリウム(117mg、2.08ミリモル)のメタノール(15ml)−水(1ml)中混合物をおよそ2時間還流加熱し、室温まで冷却させ、蒸発させ、その残留分を質量直結自動分取型HPLCにより精製して、標題の化合物(60mg)を得た。LCMS RT = 2.73 min, ES+ve m/z 557 (M+H)+
【0163】
1H NMR δ (250 MHz; DMSO-d6, 120℃) 8.19 (1H, s), 8.18-8.12 (1H, m), 7.89-7.82 (1H, m), 7.64-7.54 (2H, m), 7.44 (1H, d, J = 7.5 Hz), 7.37 (1H, d, J = 7.5 Hz), 7.18-7.12 (2H, m), 6.89-6.82 (2H, m), 4.02 (2H, t, J = 6.5 Hz), 3.38 (2H, t, J = 7.5 Hz), 3.10-2.97 (2H, m), 2.84-2.73 (1H, m), 2.69 (2H, t, J = 7.5 Hz), 2.38 (2H, t, J = 7.0 Hz), 2.34-2.27 (2H, m), 2.03 (2H, s), 1.90-1.74 (4H, m), 1.66-1.48 (4H, m), 1.23-1.17 (2H, m), 0.92 (6H, s).
【0164】
(実施例2)
3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1−ピペリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)プロパン酸、遊離塩基
化合物は、以下の反応スキームに従って調製され得る:
【化17】

【化18】

【0165】
式中、
Bnは、ベンジルを表し、
BOCは、t−ブトキシカルボニルを表す。
【0166】
(中間体8)(ステージ0)
1,4−ジブロモナフタレン
0〜10℃にて、臭素(120.9ml、3当量)のクロロホルム(400ml)溶液を、6時間かけて、ナフタレン(100g)のクロロホルム(200ml)およびDMF(19ml)溶液に加える。この反応物を0〜30℃(例えば20〜30℃)にて約24時間まで攪拌し、その後クロロホルム(100ml)を加える。反応混合物を重亜硫酸ナトリウム水溶液(1×600ml)で洗浄し、その後5%重炭酸ナトリウム水溶液(1×300ml)、その後水(300ml)で洗浄し、その後蒸発させる。この残留分を、65〜70℃に加熱した後、20〜30℃に3〜4時間冷却することによりメタノール(2600ml)から結晶化させる。生成物を濾過してから、真空下50〜55℃で乾燥させる(乾燥重量117g)。
【0167】
(中間体9)(ステージ1)
4−ブロモ−1−ナフタレンカルボン酸
1,4−ジブロモナフタレン(100g)のTHF(500ml)溶液をマグネシウム(8.49g)およびヨウ素(トレース)/THF(200ml)に約2時間かけて加え、65〜75℃で最大7時間(典型的には3〜4時間)加熱して、グリニャール試薬溶液を調製する。溶液を0〜10℃に冷却し、この溶液に二酸化炭素ガスを10〜16時間通す。水(100ml)をゆっくり加えて、約30分間0〜10℃にて攪拌した後、塩酸で酸性化(典型的にはpH2〜3)する。THF層を濾別して、濃縮する。この残留分を炭酸ナトリウム水溶液(20%、500ml)に加え、トルエン(2×200ml)で洗浄する。この水溶液を塩酸で処理する(典型的にはpH2〜3にする)。生成物を濾別し、水で洗浄して、真空下約90〜100℃で約12時間乾燥させる(乾燥重量60g)。
【0168】
(中間体10)(ステージ2)
4−{(1E)−3−オキソ−3−[(フェニルメチル)オキシ]−1−プロペン−1−イル}−1−ナフタレンカルボン酸
4−ブロモ−1−ナフタレンカルボン酸(100g)、ベンジルアクリレート(96.8g)、トリフェニルホスフィン(10.2g)酢酸パラジウム(II)(2g)、トリエチルアミン(258ml)およびDMF(600ml)の混合物を90〜100℃で4〜12時間(典型的には10〜12時間)加熱する。この攪拌期間の間に2つのさらなる酢酸パラジウム(II)分割分(20g)を4時間の間隔で加える。混合物を活性炭(3×15g)で50〜80℃(典型的には70〜80℃)にて処理するが、各投入後は、40〜45℃で濾過する。この後DMFを真空下80〜90℃で留去し、残留分を25〜35℃に冷却する。残留分にジクロロメタン(100ml)および水(100ml)を加え、混合物を、濃塩酸で酸性化し、20〜35℃で約30分間攪拌する。混合物を濾過して、その固体生成物を乾燥させる。この残留分を、90〜100℃で、DMF(600ml)、その後水(400ml)の混合物に溶解させ、1〜1.5時間攪拌する。この溶液を80〜85℃にて濾過し、20〜35℃に冷却して、約2時間攪拌する。生成物を濾別し、乾燥させる(乾燥重量43g)。
【0169】
(中間体11)(ステージ3)
3,3−ジメチル−1−(フェニルメチル)−2,6−ピペリジンジオン
ジメチルグルタル酸(250g)のキシレン(1.87L)溶液をp−トルエンスルホン酸(5.9g)で処理し、還流加熱する。ベンジルアミン(165.5g)のキシレン(6ml)溶液を2時間かけて加えて、還流を約24時間続け、その後水を共沸で全部除去する。混合物を冷却して、溶媒を減圧下の蒸留により除去すると、所望の生成物が残る(乾燥重量321g)。
【0170】
(中間体12)(ステージ4)
3,3−ジメチル−1−(フェニルメチル)ピペリジン
3,3−ジメチル−1−(フェニルメチル)−2,6−ピペリジンジオン(200g)のTHF(400ml)溶液を、1〜4時間(例えば1〜2時間)かけて、−5〜+5℃にて、水素化アルミニウムリチウム(68g)のTHF(2L)溶液に加える。この混合物をこの後20〜35℃に約1〜2時間加熱して、その後24〜30時間還流加熱する。混合物をこの後−5〜+5℃に冷却し、酢酸エチル(280ml)をゆっくり、続いて硫酸ナトリウム水溶液(257g/水1.4L)およびさらなる酢酸エチル(1L)を加える。混合物を25〜35℃で約1時間攪拌する。この有機相をHyflowベッドで濾過し、酢酸エチル(2×2L)で洗浄する。濾液層を合わせ、その後ブライン(1L)で洗浄し、蒸発させて、生成物を得る。生成物は、石油エーテルと酢酸エチルの混合物で溶離するカラムクロマトグラフィーにより、または分別蒸留によりさらに精製され得る(乾燥重量105g)。
【0171】
(中間体13)(ステージ5)
3,3−ジメチルピペリジン
0〜15℃(典型的には0〜5℃)に冷却された1−クロロエチルクロロホルメート(94.6g)のジクロロメタン(560ml)溶液に15minかけて3,3−ジメチル−1−(フェニルメチル)ピペリジン(112g)を加え、この反応混合物を約1時間攪拌して、20〜30℃まで昇温させる。反応を還流で2〜20時間(例えば約2時間)加熱し、その後溶媒を真空で除去する。この残留分に5〜30℃(典型的には20〜30℃)にてメタノール(560ml)を加えて、混合物を還流で3〜20時間(例えば3〜4時間)加熱して、5〜30℃に冷却し、濃縮する。ジエチルエーテル(400ml)およびイソプロパノール(20ml)を加え、その後混合物を25〜35℃で30分〜2時間攪拌する。この固形物質を濾別し、ジエチルエーテル(200ml)で洗浄する。この固形物を水(336ml)およびジエチルエーテル(560ml)に溶解させて、その後20〜30℃にて10M水酸化ナトリウム(200ml)を加える。層を分離し、水層をジエチルエーテル(560ml)で抽出する。合わせたエーテル溶液を濃縮し、生成物を分別蒸留により精製する(乾燥重量41g)。
【0172】
(中間体1)(ステージ6)
1−[(3−クロロプロピル)オキシ]−4−ヨードベンゼン
4−ヨードフェノール(250g)、炭酸カリウム(313.6g)および2−ブタノン(1500ml)の混合物を15〜20min攪拌する。25〜30℃にて1−ブロモクロロプロパン(357.71g)を約10分かけて加える。さらに10min攪拌した後、反応全量を還流(約80〜85℃)に22〜24時間加熱する。25〜30℃に冷却した後、混合物を濾過し、そのケーキを2−ブタノン(750ml)で洗浄する。濾液を減圧下50〜60℃で濃縮する。酢酸エチル(3750ml)を加え、10〜20分間攪拌して、透明な溶液を得る。これを、2N水酸化ナトリウム溶液(1250ml)、水(2500ml)および塩化ナトリウム水溶液(2500ml)で洗浄し、その後硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を減圧下50〜60℃で濃縮する。n−ヘプタン(250ml)を加え、約20分間25〜30℃にて攪拌する。溶液をこの後−5〜−10℃に冷却し、約30分攪拌する。この固形物を濾過し、冷n−ヘプタン(125ml、0〜5℃)で洗浄し、この固形物を乾燥させる。
【0173】
2回目収穫物の単離
合わせた濾液と洗浄液を濃縮し、n−ヘプタン(70ml)を加え、この混合物を約20分間25〜30℃にて攪拌する。この溶液を−5〜−10℃に冷却し、約35分間攪拌し、その固形物を濾過し、冷n−ヘプタン(30ml、0〜5℃)で洗浄する。いずれもの収穫物からの生成物を真空下35〜40℃で6〜10時間乾燥させて、標題の化合物(285g)を得た。
【0174】
(中間体2)(ステージ7)
1−{3−[(4−ヨードフェニル)オキシ]プロピル}−3,3−ジメチルピペリジン
1−[(3−クロロプロピル)オキシ]−4−ヨードベンゼン(100g)およびアセトニトリル(600ml)の混合物を約5分間25〜35℃にて攪拌し、その後約10分かけて炭酸カリウム(93.07g)、続いて3,3−ジメチルピペリジン(49.53g)を加える。ヨウ化カリウム(2.24g)を加え、その後この混合物を約15分間攪拌し、次いで78〜82℃に22〜24時間加熱する。反応混合物を25〜35℃に冷却して、その固形残留分を濾過し、アセトニトリル(200ml)で洗浄する。濾液および洗浄液を減圧下50〜60℃で濃縮して、濃厚な液体を得、これをn−ヘプタン(100ml)と一緒に約30分間25〜30℃にて攪拌する。溶液をこの後−5〜10℃に冷却し、約30分間攪拌する。この固形物を濾過し、冷n−ヘプタン(50ml、0〜5℃)で洗浄し、その後真空下35〜40℃で6〜10時間乾燥させて、標題の化合物(97g)を得る。
【0175】
2回目収穫物の単離
合わせた濾液と洗浄液を濃縮して濃厚なシロップを得、n−ヘプタン(50ml)を加え、約20分間25〜30℃にて攪拌する。この溶液を−5〜−10℃に冷却し、約40分間攪拌し、その後その固形物を濾過し、冷n−ヘプタン(40ml、0〜5℃)で洗浄する。この固形物を真空下35〜40℃で6〜10時間乾燥させて、標題の化合物を得る。表題化合物の総乾燥重量(1回目および2回目収穫物からの)は92.1gである。
【0176】
(中間体3)(ステージ8)
1,1−ジメチルエチル4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−4−ヒドロキシ−1−ピペリジンカルボキシレート
1−{3−[(4−ヨードフェニル)オキシ]プロピル}−3,3−ジメチルピペリジン(25g)のTHF(125ml)溶液を約15分間攪拌し、その後0〜5℃に冷却する。イソプロピルマグネシウムクロリド溶液(70.5ml、1.9M)を0〜5℃にて約40分かけて加え、その後この混合物を0〜5℃で2〜3時間攪拌する。混合物をこの後−78〜−80℃に冷却し、予冷(−20〜−30℃)N−Boc−ピペリジノン(16g)THF(125ml)溶液を約1〜2時間かけて加え、この反応混合物を約1.5時間−78〜−80℃にて攪拌する。反応混合物を25〜30℃に昇温させ、その後23〜24時間攪拌する。25〜30℃にて飽和塩化アンモニウム溶液(375ml)、続いて酢酸エチル(500ml)を加えて、混合物を約50分間攪拌する。この水層を酢酸エチル(250ml)で抽出する。合わせた有機層を水(375ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗製の標題の化合物(30.3g)を得る。
【0177】
(中間体14)(ステージ9)
4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン
粗製1,1−ジメチルエチル−4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−4−ヒドロキシ−1−ピペリジンカルボキシレート(100g)の95%エタノール(500ml)中混合物を5〜10℃に冷却し、濃塩化水素(300ml)を5〜10℃にて約45分かけて加え、その後約15分間攪拌する。この混合物をこの後還流(約80〜85℃)に約6時間加熱する。混合物を真空下50〜60℃で濃縮し、その後水(500ml)を加える。混合物をこの後5〜10℃に冷却し、そのpHを、5〜10℃にて2N水酸化ナトリウム溶液でpH10〜12に調整する。混合物を25〜35℃に温めて、酢酸エチル(500ml、その後2×200ml)で抽出する。合わせた酢酸エチル層を、水(200ml)、その後10%塩化ナトリウム水溶液(200ml)で洗浄する。溶媒を真空下で除去し、その生成物を、MeOH/DCM 0〜70%の線型勾配を用いるカラムクロマトグラフィー(100〜200メッシュシリカゲル)により精製して、標題の化合物(21.7g)を得る。
【0178】
(中間体15)(ステージ10)
フェニルメチル(2E)−3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−3,6−ジヒドロ−1(2H)−ピリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)−2−プロペノエート
4−{(1E)−3−オキソ−3−[(フェニルメチル)オキシ]−1−プロペン−1−イル}−1−ナフタレンカルボン酸(63.3g)の酢酸エチル(570ml)中混合物を25〜35℃で10〜15分間攪拌する。25〜35℃にてトリエチルアミン(73.6g)を約10分かけて加え、続いてにてTBTU(61.2g)を約5分かけて加える。この混合物を約35分間攪拌し、その後0〜10℃に冷却する。0〜10℃にて4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(57g)の酢酸エチル(570ml)溶液を約15分かけて加えて、約15分間攪拌する。温度をゆっくり25〜35℃に上げて、2.5〜3.5時間攪拌する。酢酸エチル(570ml)および飽和炭酸水素ナトリウム溶液(570ml)を加え、約70分間25〜35℃にて攪拌する。水相を分離し、酢酸エチル層を水(570ml)および塩化ナトリウム水溶液溶液(570ml)で洗浄する。この有機層を減圧下約55℃以下で濃縮して、濃厚な液体を得る。アセトン(114ml)を加え、その溶液を25〜35℃に冷却し、約20分間攪拌する。n−ヘプタン(114ml)をゆっくり加え、その混合物をこの後0〜5℃に冷却し、約60分間攪拌し、その固形物を濾過し、冷n−ヘプタン(57ml)で洗浄する。この固形物を真空下35〜40℃で乾燥させて、標題の化合物(47g)を得る。
【0179】
(実施例2)(ステージ11)
3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1−ピペリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)プロパン酸、遊離塩基
フェニルメチル−(2E)−3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−3,6−ジヒドロ−1(2H)−ピリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)−2−プロペノエート(47g)のメタノール(705ml)溶液を水素化フラスコに加える。10%Pd/C(11.75g、50%湿り)を加え、この混合物を60〜70psiの水素圧下で40〜45℃に加熱し、約2〜3時間震盪する。反応混合物を25〜30℃に冷却し、セライトで濾過し、MeOH(235ml)で洗浄する。濾液を真空下約60℃以下の温度で濃縮して、標題の化合物(37.2g)を得る。
NMR分析により、この化合物が表題の化合物であることが確認された。
【0180】
(実施例3)
3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1−ピペリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)プロパン酸、塩酸塩
窒素下30〜35℃にて3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1−ピペリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)プロパン酸(321.2g)を5〜10分かけてイソプロパノール(1.93L)に加え、約300〜400rpmで攪拌した。さらなるイソプロパノール(1.61L)を加え、この混合物を65〜70℃に温めて溶液を得、これをこの後40〜45℃に冷却し、約300rpmで攪拌した。濃塩酸(50ml)を約1時間かけて加え、約40分後、真正の3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1−ピペリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)プロパン酸、塩酸塩シード(1.6g)をイソプロパノール(約10〜12ml)中スラリーとして加えた。この混合物をこの後約4時間かけて約15℃に冷却した。混合物をこの後この温度で一晩攪拌した。この懸濁液を濾過し、その固形物をイソプロパノール(1.2Lおよび0.6L)で洗浄し、この後この固形物を約4時間吸引乾燥して、その後真空下21時間50〜60℃で乾燥させて、表題化合物(乾燥重量236g)を得た。
【0181】
シードは以下のようにして調製した:遊離塩基(300mg)を加熱しながらイソプロパノール(3.3ml)に溶解させる。周囲温度にて濃塩化水素(37%、0.0465ml、1.05当量)をこの遊離塩基溶液に加えた。反応物を温度周期(0〜40℃)に週末の間放置しておいた。その白色の固形物を単離し、イソプロパノールで洗浄し、約2時間空気乾燥させ、その後真空オーブン中で一晩40℃にて乾燥させた(重量137mg)。
【0182】
3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1−ピペリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)プロパン酸の塩酸塩(実施例3)の代表的なXRPDパターンを図1に示す。
【0183】
ピーク角度は以下の表にまとめられている。
【表2】

【0184】
およそ164℃の融点を有する3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1−ピペリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)プロパン酸の塩酸塩(実施例3)の代表的なDSC温度記録図を図2に示す。
【0185】
生物学的データ
本発明の化合物は、以下の、または同じようなアッセイに従って、インビトロおよび/またはインビボの生物学的活性について試験され得る。
【0186】
H1受容体細胞系の作出およびFLIPRアッセイプロトコル
【0187】
1.ヒスタミンH1細胞系の作出
ヒトH1受容体は、文献[Biochem. Biophys. Res. Commun., 201(2):894 (1994)]に記載されている既知の手順を用いてクローン化され得る。ヒトH1受容体を安定に発現しているチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、文献[Br. J. Pharmacol., 117(6):1071 (1996)]に記載されている既知の手順に従って作出され得る。
【0188】
ヒスタミンH1官能拮抗薬アッセイ:官能pKi値の決定
ヒスタミンH1細胞系を、非コート黒色壁透明底384ウェル組織培養プレート中の、10%透析ウシ胎仔血清(Gibco/Invitrogenカタログ番号12480−021)および2mM L−グルタミン(Gibco/Invitrogenカタログ番号25030−024)が補充されたアルファ最小必須培地(Gibco/Invitrogen、カタログ番号22561−021)に接種し、5%CO、37℃で一晩保持する。
【0189】
各ウェルから過剰の培地を除去して10μlを残す。各ウェルに30μlの負荷染料(Tyrodes緩衝液+プロベネシド(145mM NaCl、2.5mM KCl、10mM HEPES、10mM D−グルコース、1.2mM MgCl、1.5mM CaCl、2.5mMプロベネシド、pHはNaOH 1.0Mで7.40に調整)に希釈された250μM Brilliant Black、2μM Fluo−4)を加え、プレートを5%CO、37℃で60分間インキュベートする。
【0190】
Tyrodes緩衝液+プロベネシドに必要とされる濃度まで希釈された10μlの試験化合物(または対照としての10μl Tyrodes緩衝液+プロベネシド)を各ウェルに加え、プレートを37℃、5%COで30分間インキュベートする。プレートをこの後FLIPR(商標)(Molecular Devices、UK)の中に入れて、Sullivanら(Lambert DG (ed.), Calcium Signaling Protocols, New Jersey: Humana Press, 1999, 125-136)に記載されているようにして、ヒスタミンの最終アッセイ濃度がEC80である結果をもたらす濃度のヒスタミン10μlを加える前および後に、細胞蛍光発光(λex=488nm、λEM=540nm)をモニタリングする。
【0191】
官能拮抗は、FLIPR(商標)システム(Molecular Devices)により測定されるヒスタミン誘発蛍光発光増大の抑制によって示される。濃度影響曲線から、官能アフィニティーは、標準的な薬理数学解析によって決定される。
【0192】
ヒスタミンH1官能拮抗アッセイ:拮抗薬pA2の決定
ヒスタミンH1受容体発現CHO細胞を、上述したようにして非コート黒色壁透明底96ウェル組織培養プレート中に接種する。
【0193】
一晩培養させた後、各ウェルから増殖培地を除去し、200μlリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、50μl負荷染料(Tyrodes緩衝液+プロベネシド(145mM NaCl、2.5mM KCl、10mM HEPES、10mM D−グルコース、1.2mM MgCl、1.5mM CaCl、2.5mMプロベネシド、pHはNaOH 1.0Mで7.40に調整)に希釈された250μM Brilliant Black、1μM Fluo−4)で置き換える。細胞を37℃で45分間インキュベートする。負荷緩衝液を除去し、細胞を上記と同じように洗浄して、90μlのTyrodes緩衝液+プロベネシドを各ウェルに加える。Tyrodes緩衝液+プロベネシドに必要とされる濃度まで希釈された10μlの試験化合物(または対照としての10μl Tyrodes緩衝液+プロベネシド)を各ウェルに加え、プレートを37℃、5%COで30分間インキュベートする。
【0194】
プレートをこの後FLIPR(商標)(Molecular Devices、UK)の中に入れて、Sullivanら(Lambert DG (ed.), Calcium Signaling Protocols, New Jersey: Humana Press, 1999, 125-136)に記載されているようにして、1mM〜0.1nMの濃度範囲に亘る50μlヒスタミンを加える前および後に、細胞蛍光発光(λex=488nm、λEM=540nm)をモニタリングする。ヒスタミンに対しての最大応答の50%応答を生じるのに必要とされるヒスタミン濃度であるヒスタミンEC50を決定するための標準的な4パラメータ論理式を用いて、得られる濃度応答曲線を非線型回帰により解析する。拮抗薬pA2を以下の標準式を用いて計算する:pA2=log(DR−1)−log[B](式中、DR=用量比で、EC50拮抗薬処理/EC50対照と定義され、[B]=拮抗薬の濃度)。
【0195】
2.H3受容体細胞系作出、膜調製および官能GTPγSアッセイプロトコル
【0196】
ヒスタミンH3細胞系の作出
ヒスタミンH3 cDNAを、その保有ベクターであるpCDNA3.1 TOPO(InVitrogen)から、酵素BamH1およびNot−1によるプラスミドDNAの制限消化により単離し、同じ酵素で消化した誘導性発現ベクターpGene(InVitrogen)中にライゲーションする。GeneSwitch(商標)システム(誘導物質の不存在下では導入遺伝子発現がスイッチオフされ、誘導物質の存在下ではスイッチオンされるシステム)を、米国特許第5364791号、第5874534号および第5935934号明細書に記載されているように実行する。ライゲーションされたDNAをコンピテントDH5α E.coli宿主細菌細胞中に形質転換し、Zeocin(商標)(pGeneおよびpSwitch上に存在しているsh ble遺伝子を発現している細胞のセレクションを可能にする抗生物質)を50μg/mlで含有するLuria Broth(LB)寒天上に植え付ける。再ライゲーションされたプラスミドを含有しているコロニーを制限分析により明らかにする。哺乳動物細胞へのトランスフェクション用DNAを、pGeneH3プラスミド含有宿主細菌の250ml培養液から調製し、DNA調製キット(Qiagen Midi−Prep)を用いて製造者ガイドライン(Qiagen)のとおりに単離する。
【0197】
pSwitch調節プラスミド(InVitrogen)が前もってトランスフェクションされたCHO K1細胞を、10%(体積/体積)透析仔ウシ血清、L−グルタミン、およびハイグロマイシン(100μg/ml)が補充されたHams F12(GIBCOBRL、Life Technologies)培地を含有しているComplete Mediumに、使用24時間前に、T75フラスコあたり2×10細胞で接種する。Lipofectアミンplusを用いて製造者ガイドライン(InVitrogen)に従って細胞にプラスミドDNAをトランスフェクションする。トランスフェクション48時間後、細胞を、500μg/ml Zeocin(商標)が補充された完全培地中に入れる。
【0198】
セレクション10〜14日後、培養培地に10nM Mifepristone(InVitrogen)を加えて、受容体の発現を誘導する。誘導18時間後、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA;1:5000;InVitrogen)を用いてフラスコから細胞を引き離し、続いてリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)で数回洗浄し、その後フェノールレッドを含まない、またEarles saltsおよび3%Foetal CloneII(Hyclone)が補充された、Minimum Essential Medium(MEM)含有Sorting Mediumに再懸濁させる。ヒスタミンH3受容体のN−末端ドメインに対して作製されたウサギポリクローナル抗体(4a)で染色し、氷上で60分間インキュベートし、続いてソート培地中で2回洗浄することにより、およそ1×10細胞を受容体発現について調べる。Alexa 488蛍光発光マーカー(Molecular Probes)がコンジュゲートされたヤギ抗ウサギ抗体と一緒に氷上で60分間細胞をインキュベートすることにより、受容体結合抗体を検出する。Sorting Mediumで2回さらに洗浄した後、細胞を50μm Filcon(商標)(BD Biosciences)で濾過し、その後Automatic Cell Deposition Unitが装着されたFACS Vantage SE Flow Cytometerで分析する。対照細胞は、同じように処理された非誘導性細胞である。陽性に染色された細胞を、500μg/ml Zeocin(商標)含有Complete Mediumが入っている96ウェルプレート中に単一細胞としてソートし、増殖させてから、受容体発現について抗体およびリガンドの結合についての研究により再分析する。クローン、3H3、を選択して膜調製する。
【0199】
培養細胞からの膜調製
このプロトコルの全てのステップは、4℃で行い、また試薬は予冷する。細胞ペレットを10体積の均質化緩衝液(50mM N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、1mMエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、KOHでpH7.4、10−6Mロイペプチン(アセチル−ロイシル−ロイシル−アルギナル;Sigma L2884)、25μg/mlバシトラシン(Sigma B0125)、1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)および2×10−6MペプスタチンA(Sigma))に再懸濁させる。細胞をこの後1リットルガラス製Waringブレンダー中で2×15秒間バーストすることによりホモジナイズし、続いて500gで20分間遠心分離する。上澄み液をこの後48,000gで30分間スピンさせる。ペレットを、5秒間ボルテックスすることにより均質化緩衝液(4×元の細胞ペレットの体積)に再懸濁させ、続いてDounceホモジナイザーでホモジナイズする(10〜15ストローク)。この時点で調製物をポリプロピレンチューブ中にアリコートし、−80℃で保存する。
【0200】
ヒスタミンH3官能拮抗薬アッセイ
単白色384ウェルプレート中でアッセイされている各化合物に対して:
(a)必要とされる濃度までDMSOに希釈された0.5μlの試験化合物(または対照としての0.5μl DMSO);
(b)Wheat Germ Agglutinin Polystyrene LeadSeeker(登録商標)(WGA PS LS)シンチレーション近接アッセイ(SPA)ビーズを膜(上述した方法に従って調製)と混合し、10μM最終アッセイ濃度を含むアッセイ緩衝液(20mM N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)+100mM NaCl+10mM MgCl、pH7.4 NaOH)に希釈して、5μg蛋白、ウェルあたり0.25mgビーズ、およびグアノシン5’ジホスフェート(GDP)(Sigma、アッセイ緩衝液に希釈)30μlの最終体積を得、これをローラー上で60分間室温にてインキュベートすることによって調製された30μlビーズ/膜/GDPミックス;
(c)15μl 0.38nM[35S]−GTPγS(Amersham;放射能濃度=37MBq/ml;比放射能=1160Ci/ミリモル)、ヒスタミン(ヒスタミンの最終アッセイ濃度がEC80である結果をもたらす濃度の)
を加える。
【0201】
2〜6時間後、プレートを1500rpmで5分間遠心分離し、613/55フィルターを用いてViewlux計数器で5分間/プレート計数する。4パラメーター論理式を用いてデータを解析する。基底活性、すなわちウェルにヒスタミンを加えていないものを最小値として用いる。
【0202】
インビボ抗炎症膨疹および潮紅モデル
雄Dunkin−Hartleyモルモット500g〜1kgに試験化合物またはビヒクルを、1ml注射器を用いて口腔の中に(0.5ml/kgp.o.)、または耳辺縁静脈から(0.33ml/kgi.v.)投与する。化合物は、5%DMSO/45%PEG200/50%水に製剤化する。
【0203】
経口化合物投与2時間後かまたは静脈内化合物投与15分後に、モルモットをイソフルラン(5%、2〜3l/min O)で麻酔して、耳辺縁静脈から0.33ml/kgi.v.、エバンスブルー溶液(生理食塩水中2%)を与えた。
【0204】
エバンスブルーの投与直後、且つまだイソフルラン下にある間に、動物を腹臥位に配置して、背部分の毛を剃る。ヒスタミン(10μg/100μl×4)およびビヒクル(1×100μl PBS)を、毛を剃った背部表面に皮内注入する。
【0205】
ヒスタミン負荷試験の後、動物を麻酔から回復させ、そして30分後にペントバルビトンのi.p.過剰投与で安楽死させた。背部皮膚を慎重に除去し、測位カリパスを用いて内部皮膚表面から2つの直交直径を測ることにより膨疹部分(青色に染色)を測定して、その平均半径を計算する。この値を用いて各膨疹の面積を計算し、そして続いて全てのヒスタミン誘導膨疹の平均値を各動物に対して計算する。ビヒクル負荷試験膨疹中にエバンスブルーが認められる場合は、その動物はデータセットから排除する。
【0206】
各試験化合物に対して用量応答曲線を作成する。各投与の経路(経口または静脈内)についてのID50値が計算され得る。
【0207】
CNS浸透
【0208】
(i)ボーラス投与によるCNS浸透
化合物を雄CD Sprague Dawleyラットに1mg/kgの見かけ用量濃度で静脈内投与する。化合物は5%DMSO/45%PEG200/50%水に製剤化する。投与5分後に、血液サンプルをイソフルランによる終末麻酔下に採取し、脳も、脳浸透を評価するために取り出す。血液サンプルは直接ヘパリン試験管に採取する。分析のためには血液サンプルは蛋白沈殿を用いて調製し、脳サンプルは、均質化およびそれに続いての蛋白沈殿による脳からの薬物の抽出を用いて調製する。血液および脳抽出物中の親薬物の濃度を、化合物特異的質量転移を用いる定量LC−MS/MS分析により決定する。
【0209】
(ii)定常状態静脈内輸液後のCNS浸透
負荷用量の化合物を雄CD Sprague Dawleyラットに0.4mg/kgの見かけ用量濃度で与える。化合物を、この後、0.1mg/kg/hの見かけ用量濃度で4時間静脈内輸液する。化合物は2%DMSO/30%PEG200/68%水に製剤化する。投与0.5、1.5、2.5、3、3.5および4時間後に連続的または終末の血液サンプルを採取する。最終血液サンプルをイソフルランによる終末麻酔下に集め、脳も、脳浸透の評価のために取り出す。血液サンプルは直接ヘパリン試験管に採取する。分析のためには血液サンプルは蛋白沈殿を用いて調製し、脳サンプルは、均質化およびそれに続いての蛋白沈殿による脳からの薬物の抽出を用いて調製する。血液および脳抽出物中の親薬物の濃度を、化合物特異的質量転移を用いる定量LC−MS/MS分析により決定する。
【0210】
ラット薬理動態
化合物を雄CD Sprague Dawleyラットに1回の静脈内または経口投与によりそれぞれ1mg/kgおよび3mg/kgの見かけ用量濃度で投与する。化合物は5%DMSO/45%PEG200/50%水に製剤化する。静脈内プロファイルは、投与0.083、0.25、0.5、1、2、4、および7時間後(一部の研究では12時間および24時間サンプルが採取され得る)に連続的または終末の血液サンプルを採取することにより得られる。経口プロファイルは、投与0.25、0.5、1、2、4、7および12時間後(一部の研究では24時間および30時間サンプルが採取され得る)に連続的または終末の血液サンプルを採取することにより得られる。血液サンプルは直接ヘパリン試験管に採取する。血液サンプルを蛋白沈殿によって調製し、化合物特異的質量転移を用いるLC−MS/MSによる定量分析に付す。薬物濃度−時間プロファイルを作成し、ノンコンパートメントPKアナリシスを用いて、半減時間、クリアランス、分布容積および経口バイオアベイラビリティの推定値を求める。
【0211】
イヌ薬理動態
化合物を雄ビーグル犬に1回の静脈内または経口投与によりそれぞれ1mg/kgおよび2mg/kgの見かけ投与濃度で投与する。この研究は、同じイヌがいずれの投与事象にも用いられ且つその投与事象が1週間離して行われるようなクロスオーバーデザインにより行う。化合物は5%DMSO/45%Peg200/50%水に製剤化する。静脈内プロファイルは、投与0.083、0.25、0.5、0.75、1、2、4、6および12時間後(一部の研究では24時間サンプルが採取され得る)に連続的な血液サンプルを採取することにより得られる。経口プロファイルは、投与0.25、0.5、0.75、1、2、4、6、12および24時間後に連続的な血液サンプルを採取することにより得られる。血液サンプルは直接ヘパリン試験管に採取する。血液サンプルを蛋白沈殿によって調製し、化合物特異的質量転移を用いるLC−MS/MSによる定量分析に付す。薬物濃度−時間プロファイルを作成し、ノンコンパートメントPKアナリシスを用いて、半減時間、クリアランス、分布容積および経口バイオアベイラビリティの推定値を求める。
【0212】
結果
これらのアッセイまたは同じようなアッセイで、実施例1および3の化合物は、
(i)実施例1ではおよそ7.4そして実施例3ではおよそ7.3のH3における平均pKi(pKb)
(ii)実施例1ではおよそ7.8そして実施例3ではおよそ7.9のH1における平均pKi(pKb)、および実施例3では約8.1のpA2
(iii)インビボの抗炎症活性(膨疹および潮紅モデルで約0.6mg/Kgi.v.および約2.8mg/Kg経口のID50(実施例3))
(iv)ラットおよびイヌでの経口バイオアベイラビリティ(実施例1ではラットで約59%、そして実施例1および3のデータを組み合わせるとイヌで約60%)
(v)ラットおよびイヌでの低い血漿クリアランス(実施例1のラットで約4〜5時間(IV経路)の半減時間、および実施例1および3のデータを組み合わせるとイヌでおよそ3時間の半減時間)
(vi)50ng/gm未満(実施例1および3)の低いCNS浸透
を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1−ピペリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)プロパン酸の塩酸塩(実施例3)についてのXRPDパターンを示すものである。
【図2】3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1−ピペリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)プロパン酸の塩酸塩(実施例3)のDSC温度記録図を示すものである。観察される事象:出現温度がおよそ164℃の、サンプルの融解による吸熱。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
ナフタレン環は、2、3、4、5、6、7または8位においてRによって置換され得、そしてRは、−CHCHCOOHまたは−CH=C(CH)COOHを表す]
の化合物、またはその塩。
【請求項2】
ナフタレン環が、2、3、4、5、6、7または8位においてRによって置換され得、そしてRが、−CHCHCOOHを表す請求項1に記載の化合物、またはその塩。
【請求項3】
3−(4−{[4−(4−{[3−(3,3−ジメチル−1−ピペリジニル)プロピル]オキシ}フェニル)−1−ピペリジニル]カルボニル}−1−ナフタレニル)プロパン酸、またはその塩。
【請求項4】
化合物が、薬学的に許容される塩の形態にある、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
化合物が、塩酸塩の形態にある請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
治療で使用するための、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
炎症性および/またはアレルギー性障害の治療で使用するための請求項6に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
アレルギー性鼻炎の治療で使用するための請求項7に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
場合により1種以上の薬学的に許容される担体および/または賦形剤と一緒に、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含んでなる組成物。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩と、1種以上の他の治療用化合物とを含む組み合わせ。
【請求項11】
炎症性および/またはアレルギー性障害を治療または予防するための医薬の製造における請求項1〜5のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項12】
障害が、アレルギー性鼻炎である請求項11に記載の使用。
【請求項13】
炎症性および/またはアレルギー性障害の治療または予防を必要とする患者に請求項1〜5のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを含む、炎症性および/またはアレルギー性障害を治療または予防するための方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−520001(P2009−520001A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546432(P2008−546432)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069943
【国際公開番号】WO2007/071691
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】