説明

炎症性疾患を処置するための組成物および方法

本発明は、フラクタルカインに結合するヒト化抗体およびそのFKN結合断片に関連する、組成物ならびに方法を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラクタルカインに結合する抗体に関連する組成物および方法を特徴とする。
【背景技術】
【0002】
フラクタルカイン(FKN)は、活性化された内皮細胞の表面に発現し、CX3CR1受容体に結合する膜貫通型ケモカインである。膜結合型FKNの膜結合型CX3CR1への結合は、セレクチンまたはインテグリンの介在なしに、強力な細胞間接着を媒介する。膜結合型FKNからシェディングされた分泌型FKNもまたCX3CR1に結合し、インテグリンの活性化および細胞走化性を誘導する。
【0003】
FKNの発現は、炎症誘発性サイトカインによって内皮細胞の表面上で誘導される。潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)、関節リウマチ(RA)、自己免疫性肝炎(AIH)、多発性硬化症(MS)、および糖尿病を含む炎症性および自己免疫疾患を含む、多数の疾患を有する患者において、FKNの発現上昇ならびにCX3CR1細胞傷害性エフェクターリンパ球およびマクロファージの蓄積が報告されている。Umehara et al., Arterioscler. Thromb. Vase. Biol. 24:34-40 (2004)には、アテローム性動脈硬化症および血管傷害におけるFKNの役割について記載されている。Nishimura et al., Ann. NY Acad. Sci. 1173:350-356 (2009)では、FKNについて、UCおよびCDのような炎症性腸疾患に対する有望な治療ターゲットとして考察されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抗体および抗体のFKN結合断片は、それらの持つ特異性から、望ましい治療薬である。抗体およびFKN結合断片は、特定の細胞または組織を標的とすることにより、非特異的な標的指向化による潜在的な副作用を最小にするために用いられ得る。本明細書に記載するものを含む炎症性疾患の処置に有用な治療用抗体を同定し、かつ特徴付けることが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本発明は、
(a)配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR−H1;
(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR−H2;
(c)配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR−H3;
(d)配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR−L1;
(e)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR−L2;および
(f)配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR−L3
から選択される6個のCDRを含む、抗FKN抗体またはそのFKN結合断片を特徴とする。
【0006】
抗体は完全な抗体であってよい。一例では、抗体はヒト化抗体である。ヒト化抗体の重鎖可変領域は、配列番号36、配列番号37、配列番号39、配列番号42、または配列番号43のアミノ酸配列を含んでよく、かつヒト化抗体の軽鎖可変領域は、配列番号38、配列番号44、または配列番号45のアミノ酸配列を含んでよい。
【0007】
一例では、抗体は、配列番号37のアミノ酸配列を有する重鎖および配列番号44のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、抗フラクタルカイン抗体またはそのFKN結合断片であ
る。
【0008】
抗体はまた、キメラ抗体であってもよい。一例では、キメラ抗体の重鎖の可変領域は配列番号26のアミノ酸配列を含み、キメラ抗体の軽鎖の可変領域は配列番号27のアミノ酸配列を含む。
【0009】
抗体のFKN結合断片もまた意図される。FKN結合断片は、FKNに対する結合特異性を保持するFab、Fab’、F(ab’)2、またはFv断片であってよい。
【0010】
特定の例によれば、抗体またはそのFKN結合断片がヒトの定常領域を含む場合、該定常領域はIgGアイソタイプ(例えばIgG2アイソタイプ)である。別の例では、抗体またはFKN結合断片は、ADCCおよび/または補体活性化を変異のないFc領域と比較して減少させるような当該変異Fc領域を含む。例えば、Fc領域はアミノ酸残基V234、G237、C131、またはC219の1以上において変異を受ける。
【0011】
望ましくは、抗体またはFKN結合断片は、FKNの、その受容体であるCX3CR1への結合を、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%まで、もしくはそれ以上実質的に減少または阻害するか、または本明細書に記載するような走化性アッセイにおいて、中和されたhFKNを実質的に阻害する。
【0012】
本発明はまた、本発明の抗体またはFKN結合断片、および医薬的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物も特徴とする。特定の実施形態によれば、組成物は、以下に記載するような1以上のさらなる治療薬を含む。
【0013】
上記の抗体またはFKN結合断片をコードする核酸もまた意図される。一実施形態によれば、核酸は、抗体またはそのFKN結合断片の重鎖の全部もしくは一部をコードする。別の実施形態によれば、核酸は、抗体またはそのFKN結合断片の軽鎖の全部もしくは一部をコードする。核酸は、ベクター(例えば発現ベクター)内にあってよい。
【0014】
本発明はまた、本発明の1以上のベクターを含む宿主細胞も特徴とする。一例では、宿主細胞は2つのベクターを含み、第1のベクターは本明細書に記載する抗体またはFKN結合断片の重鎖をコードする核酸を含み、第2のベクターは本明細書に記載する抗体またはFKN結合断片の軽鎖をコードする核酸を含む。宿主細胞における重鎖および軽鎖の発現によって、抗体またはFKN結合断片が産生される。一実施形態によれば、宿主細胞は原核生物のものである。別の実施形態によれば、宿主細胞は真核生物のものである。抗体およびFKN結合断片産生のために有用な、代表的な哺乳類細胞はCHO細胞およびNS0細胞である。
【0015】
本発明はまた、抗FKN抗体またはそのFKN結合断片を作製するための方法も特徴とする。該方法は、(a)本発明のベクターを適切な宿主細胞内で発現させること、および(b)抗体を回収することを含む。抗体またはFKN結合断片は、宿主細胞によって培養液中に分泌されてよい。一例では、抗体またはそのFKN結合断片は、少なくとも95%またはそれ以上の純度で、非抗体性の物質を除去して精製される。
【0016】
本発明に従って有効量の抗FKN抗体またはFKN結合断片を投与することにより、炎症性疾患を処置する方法もまた意図される。代表的な炎症性疾患は、炎症性腸疾患、クローン病、および潰瘍性大腸炎である。これらの疾患に対し、方法は、1以上の追加の治療薬を投与することを含んでよい。代表的な治療薬は、アヘン剤、5−アミノサリチル酸、6−メルカプトプリン、アザチオプリン、グルココルチコイド、メトトレキサート、シクロスポリン、およびメトロニダゾールである。その他の適切な治療薬を以下に記す。
【0017】
本発明に従って有効量の抗FKN抗体またはFKN結合断片を投与することにより処置され得る炎症性疾患には、自己免疫性肝胆道疾患(例えば、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、または原発性硬化性胆管炎)も含まれる。これらの疾患に対し、方法は、6−メルカプトプリン、ウルソデオキシコール酸、アザチオプリン、グルココルチコイド、サイアザイド系利尿薬、抗アルドステロン性利尿薬、シクロスポリン、アルブミン、またはスピロノラクトンを投与することをさらに含んでよい。
【0018】
本発明に従って有効量の抗FKN抗体またはFKN結合断片を投与することにより、関節リウマチ(RA)もまた処置され得る。RAの処置において、方法は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、メトトレキサート、レフルノミド、ブシラミン、5−アミノサリチル酸、グルココルチコイド、ヒドロキシクロロキン、ビタミンD、カルシウム、またはアレンドロネートを投与することをさらに含んでよい。
【0019】
全身性エリテマトーデス(例えば中枢神経系のループスまたはループス腎炎)もまた、本発明に従って有効量の抗FKN抗体またはFKN結合断片を、単独もしくは1以上の追加の治療薬と併用して投与することにより処置され得る。代表的な追加の治療薬は、グルココルチコイド、シクロホスファミド、メトトレキサート、シクロスポリン、およびタクロリムスである。
【0020】
多発性硬化症および視神経脊髄炎もまた、有効量の抗FKN抗体またはFKN結合断片を投与することにより処置され得る。処置は、グルココルチコイド、インターフェロン−β、またはCopaxone(登録商標)のような追加の治療薬を1以上投与することをさらに含んでよい。
【0021】
脱髄性多発神経根症(例えば、ギラン・バレー症候群または慢性炎症性脱髄性多発神経根症)もまた、有効量の抗FKN抗体またはFKN結合断片を投与することにより処置され得る。再び、併用療法もまた意図され、処置は、グルココルチコイドまたは静注用免疫グロブリンのような追加の治療薬を1以上投与することをさらに含んでよい。
【0022】
有効量の抗FKN抗体またはFKN結合断片を単独もしくは追加の治療薬と併用して投与することは、神経因性疼痛の処置にもまた有効であり得る。神経因性疼痛の処置のための代表的な追加の薬剤は、ラモトリギン、トピラマート、オクスカルバゼピン、レベチラセタム、フェンタニル、トラマドール、カプサイシン、クロニジン、NSAID、アミトリプチリン、プレガバリン、リドカイン、デュロキセチン、およびカルバマゼピンである。
【0023】
アルツハイマー病もまた、有効量の抗FKN抗体またはFKN結合断片を投与することにより処置され得る。方法は、タクリン塩酸塩、ドネペジル塩酸塩、リバスチグミン酒石酸塩、ガランタミン臭化水素酸塩、メマンチン塩酸塩、パロキセチン、リスペリドン、クエチアピン、またはペロスピロンのような追加の治療薬を1以上投与することをさらに含んでよい。
【0024】
癌に付随する内臓痛もまた、有効量の抗FKN抗体またはFKN結合断片を単独で、もしくはモルヒネ、NSAID、フェンタニル、リドカイン、ペンタゾシン、またはクロニジンのような追加の治療薬の1以上と併用して投与することにより処置され得る。
【0025】
アテローム性動脈硬化症もまた、有効量の抗FKN抗体またはFKN結合断片を投与することにより処置され得る。方法は、プロスタサイクリン、アスピリン、クロピドグレル、チクロピジン、リマプロスト、プロスタグランジンE1、HMG CoA還元酵素阻害
剤、ベザフィブラート、リドカイン、メキシレチン、利尿薬、ジギタリス、ドーパミン、β−アドレナリン受容体作用薬、硝酸イソソルビド、ニトログリセリン、ナトリウム利尿ペプチド、ワルファリン、ヘパリン、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ、またはプロカインアミドのような追加の治療薬を1以上投与することをさらに含んでよい。
【0026】
脈管障害(例えば加齢による黄斑変性症、ベーチェット病、原田病、およびサルコイドーシスに由来するぶどう膜炎)もまた、本発明に従って有効量の抗FKN抗体またはFKN結合断片を投与することにより処置され得る。方法は、グルココルチコイド、シクロホスファミド、ペガプタニブ、ラニビズマブ、NSAID、コルヒチン、クロラムブシル、サリドマイド、およびベルテポルフィンから選択される追加の治療薬の1以上を投与することをさらに含んでよい。
【0027】
腎症(例えばループス腎炎、糸球体腎炎、または糖尿病性腎症)もまた、本発明に従って有効量の抗FKN抗体またはFKN結合断片を投与することにより処置され得る。グルココルチコイド類、スルホニル尿素、シクロホスファミド、グリニド類、シクロスポリン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、ミゾリビン、利尿薬、インスリン、ビグアナイド、α−グルコシダーゼ阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、チアゾリジンジオン、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬、またはβ−アドレナリン受容体阻害剤が処置方法に含まれてよい。アドレナリン受容体阻害剤が処置方法に含まれてよい。
【0028】
本発明はまた、本明細書に記載するいずれかの炎症性疾患の処置における、本発明に従った抗FKN抗体またはFKN結合断片の使用にも関する。
【0029】
本発明はまた、本明細書に記載するいずれかの炎症性疾患を処置するための薬剤の調製における、本発明に従った抗FKN抗体またはFKN結合断片の使用にも関する。
【0030】
本発明はまた、有効量の抗FKN抗体またはFKN結合断片を、このような処置の必要性に応じて被験者に投与し、これによって炎症部位への白血球の動員が阻害されることによる、被験者の炎症部位への白血球の動員を阻害する方法も特徴とする。
【0031】
Ex vivoの計画もまた、治療上の応用のために用いることができる。Ex vivoの計画は、被験者から得た細胞に、抗体もしくは抗体断片をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトまたは形質導入することに関与する。トランスフェクトまたは形質導入された細胞は、次に被験者へ戻される。細胞は、造血性細胞(例えば骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、T細胞、またはB細胞)、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、角化細胞、または筋肉細胞を含むがこれらに限定されない、広範な型のいずれであってもよい。
【0032】
本発明の目的のため、次の略語および用語を以下のように定義する。
【0033】
「抗体」(本明細書では「免疫グロブリン」と互換的に用いられる)の語は、望ましい生物活性(例えばFKNに結合し、FKNとCX3CR1間の相互作用を調節する能力)を示す、完全なモノクローナルおよびポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、ならびに抗体断片を含む。「完全な抗体」は、2つの同一な軽(L)鎖および2つの同一な重(H)鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は1つの共有結合性ジスルフィド結合によって重鎖に結合するが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間で変動する。各重鎖および軽鎖はまた、規則的な間隔で鎖間にジスルフィド結合も有する。各重鎖
は一端に可変領域(VH)を有し、それに続いて幾つかの定常領域を有する。各軽鎖は一端に可変領域(VL)を有し、別の一端に定常領域を有する。軽鎖の定常領域は重鎖の第1の定常領域と並び、軽鎖の可変領域は重鎖の可変領域と並ぶ。特定のアミノ酸残基が、軽鎖と重鎖の可変領域の間の接触面を形成すると考えられている。
【0034】
免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの5つの主要な型が存在し、それらの幾つかは、例えばIgG、IgG、IgG、IgG、IgA、およびIgAのようなサブクラス(アイソタイプ)にさらに分けられる。抗体は、抗体とその他のタンパク質またはペプチドの1以上との共有結合性もしくは非共有結合性の会合によって形成される、比較的大きな融合分子の一部であってよい。抗体はまた、抗体に第2の分子(例えば毒素、放射性同位元素、または標識)が結合した免疫結合体の一部であってもよい。
【0035】
本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」の語は、実質的に均一な抗体、すなわちわずかに存在し得る可能性のある変異を除いては、同一である個々の抗体の集団から得た抗体を指す。
【0036】
非ヒト抗体の「ヒト化」型は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質的に有するフレームワーク領域(FR)、および非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列(すなわち「インポート」配列)を実質的に有する相補性決定領域(CDR)を含む抗体またはその断片である。幾つかの場合に、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域の残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体へのさらなる修飾が、抗体の能力を改良するために為され得る。
【0037】
「相補性決定領域」すなわち「CDR」は、免疫グロブリン軽鎖および重鎖それぞれの可変領域内の、3つの超可変配列のうちの1つを意味する。
【0038】
「フレームワーク領域」すなわち「FR」は、免疫グロブリン軽鎖および重鎖の3つのCDRのいずれの側にも位置するアミノ酸の配列を意味する。ヒト化抗体のFRおよびCDRは、親である配列と正確に対応している必要はなく、例えばインポートCDRまたはコンセンサスFRは、その部位のCDRまたはFR残基がコンセンサスまたはインポート配列のいずれかに対応しないように、少なくとも1の残基の置換、挿入、もしくは欠失により変異されてよい。しかしながら、このような変異は一般に大規模なものではないであろう。通常、ヒト化抗体の残基の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、または99%が、親配列の残基に対応し得る。
【0039】
本明細書で用いられる「約」の語は、量、持続時間などのような測定可能な値に言及する場合、特定の値から±20%まで、好ましくは±10%まで、さらに好ましくは±5%まで、さらになお好ましくは±2%までの変動を包含することが意図され、このような変動は開示する方法を実行するために適切である。他に指示のない限り、明細書および請求項において用いられる成分の量、分子量のような性質、反応条件などを表す全ての数は、全ての場合に「約」の語によって修飾されていることが理解されなければならない。従ってこれに反することが指示されていない限り、以下の明細書および添付の請求項において示される数のパラメータは、本発明によって得られると考えられる望ましい性質に依存して変動し得る近似値である。最低限でも、請求項の範囲に対する均等論の適用を制限しようとすることなく、それぞれの数のパラメータは、報告された有意な桁数に鑑みて、かつ通常の周辺技術を適用することによって、少なくとも解釈されなければならない。
【0040】
「十分量」または「有効量」は、炎症性疾患のような疾患を、臨床に関連する方法で処置または寛解させるために必要とされる、治療用の抗体またはその医薬組成物の量を意味
する。例えば炎症性疾患の治療上の処置に対する本発明の実行のために用いられる、治療用の抗FKN抗体、FKN結合断片、またはそれらの医薬組成物の十分な量は、投与の方法、年齢、および患者の一般的健康状態によって変動する。
【0041】
「結合親和性」は、一般に、分子(例えば抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)の間の、非共有結合性相互作用の強度の総和を指す。結合親和性は、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、放射性標識FKN結合アッセイ(RIA)、または表面プラズモン共鳴アッセイ(例えばBIACORE(登録商標))を含む、当該技術分野において公知の方法によって測定することができる。
【0042】
「キメラの」または「キメラ化」抗体(すなわち免疫グロブリン)は、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体における対応する配列と同一もしくは相同であるか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属するが、残りの鎖(単数または複数)は、別の種に由来する抗体における対応する配列と同一もしくは相同であるか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、およびこのような抗体の断片(それらが望ましい生物活性を示す限り)を指す(Morrison et al., Proc. Natl. Acad.. Set U.S.A. 81:6851-6855, 1984)。
【0043】
「エピトープ」または「抗原性の決定要因」は、直鎖構造または三次元構造いずれかの結果として、抗体に対する結合部位を形成するアミノ酸の配列を意味する。構造エピトープは、抗原のアミノ酸配列の非連続的な部分を含むことができ、エピトープの三次構造の結果として、抗体と相互作用する。対照的に、直鎖エピトープは、その一次構造に基づいて抗体により認識されるエピトープである。一実施形態によれば、Fabとの最小の接触面を形成するフラクタルカインのエピトープには、例えばE66−Q69、W81−Q87、H70−F73、およびH88−D90が含まれる。
【0044】
本明細書では「発現する」および「産生する」は同じ意味で用いられ、遺伝子産物の生合成を指す。これらの語は、RNAへの遺伝子の転写を包含する。これらの語はまた、RNAの1以上のポリペプチドへの翻訳も包含し、さらに全ての天然に起こる転写後および翻訳後修飾もさらに包含する。抗体の発現/産生は、細胞の細胞質内および/または細胞培養の増殖培地のような細胞外環境で起こり得る。
【0045】
「フラクタルカイン」、「FKN」、「FK」、または「ニューロタクチン」は、配列番号1(図1)により定義されるポリペプチドと相同であり、かつFKNの生物活性(例えばCX3CR1受容体への結合;T細胞および単球の化学誘引;または活性化された内皮細胞に対する白血球の接着の促進)を有するポリペプチドを意味する。FKNポリペプチドの生物活性は、標準的な方法のいずれかを用いて測定されてよい。本明細書で用いられるFKNには、FKNファミリーメンバーまたはアイソフォームのいずれも含まれる。例えば、参照により本明細書に取り込まれる米国特許第7,390,490号、国際公開第2006/046739号、および米国特許出願公開第2006/0233710号を参照されたい。
【0046】
「FKN結合断片」には、そのFKN結合領域を含み、FKNに結合できる、完全な抗体の一部が含まれる。FKN結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)、もしくはFv断片;二重特異性抗体;トリボディ;テトラボディ;ミニ抗体;アフィボディ分子;ミニボディ;直鎖抗体;単鎖抗体分子;または抗体断片から形成された多重特異性抗体であってよい。
【0047】
「相同」は、比較する配列の長さにわたって、既知の遺伝子またはタンパク質配列に対し、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、9
9%、もしくはそれを超える相同性を有するいずれの遺伝子またはタンパク質配列も意味する。「相同」タンパク質はまた、比較するタンパク質の生物活性の少なくとも1を有してよい。ポリペプチドについては、比較する配列の長さは一般に、少なくとも15、20、25、35、またはそれを超えるアミノ酸である。核酸については、比較する配列の長さは一般に、少なくとも50、60、75、100、125、またはそれを超えるヌクレオチドである。「相同性」はまた、抗体を産生するために用いられるエピトープと、抗体が結合するタンパク質もしくはその断片との間の実質的な類似性も指してよい。この場合の相同性は、問題となるタンパク質を特異的に認識できる抗体の産生を誘発するために十分な類似性を指す。
【0048】
「ヒト抗体」は、抗体が単にヒト由来であることを意味するか、または可変および定常領域配列がヒト配列であるかもしくはヒト抗体の配列であるいずれの抗体であることを意味する。この語は、ヒト遺伝子に由来する配列を有する(すなわちそれを利用している)が、例えば免疫原性の可能性を減少させること、親和性を増大させること、望ましくないフォールディングの原因となり得るシステインを除去することなどのために変化を加えた抗体を包含する。この語は、ヒト細胞では典型的でないグリコシル化が行われ得るような、非ヒト細胞内で組み換えにより産生された抗体を包含する。
【0049】
「ハイブリドーマ」は、培養された腫瘍性リンパ球と、刺激されたBまたはTリンパ球との間の細胞融合による産物を指し、親細胞の特異的な免疫潜在力を発現する。
【0050】
本明細書で用いられる「炎症性疾患」は、免疫系が異常に活性化されるいずれの疾病、疾患、または状態も指す。炎症性疾患は例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、関節リウマチ、筋炎、多発性硬化症、視神経脊髄炎、アテローム性動脈硬化症、乾癬、全身性エリテマトーデス(例えば中枢神経系のループスまたはループス腎炎)、腎炎、糸球体腎炎、自己免疫性肝胆道疾患(例えば自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、または原発性硬化性胆管炎)、移植片対宿主病、アトピー性皮膚炎、喘息、神経変性疾患(例えばアルツハイマー病)、脱髄性多発神経根症(例えばギラン・バレー症候群または慢性炎症性脱髄性多発神経根症)、神経因性疼痛、癌の内臓痛、アテローム性動脈硬化症、加齢による黄斑変性症、糖尿病性腎症、サルコイドーシスに由来するぶどう膜炎、または糖尿病であってよい。
【0051】
あるいは、疾病、疾患、または状態は、上部または下部の気道の疾病、例えば、リンパ腫性気管気管支炎;慢性気管支炎および嚢胞性線維症のようなアレルギー性過敏症または分泌過多状態;様々な原因による肺線維症(例えば特発性肺線維症);慢性閉塞性肺疾患(COPD);サルコイドーシス;アレルギー性および非アレルギー性鼻炎;アレルギー性または非アレルギー性蕁麻疹;免疫調節不全による炎症、組織再構築、血管新生、および新生物により特徴付けられる皮膚関連の疾病;ヒルシュスプルング病、下痢、吸収不良状態、炎症状態などの消化管の疾病;うつ病、不安状態、パーキンソン病、片頭痛およびその他の型の頭部痛、脳卒中、ならびに嘔吐症などの中枢および末梢神経系の疾患;脾臓およびリンパ組織などの免疫系の疾病、自己免疫疾患、またはその他の免疫関連の疾病;肺水腫、高血圧症、子癇前症、2型複合性局所疼痛症候群、および脳卒中のような心血管系の疾病;関節炎のような慢性炎症性疾患;骨関連の疾病;線維筋痛のような慢性疼痛;およびニューロキニン類、タキキニン類、またはその他の関連物質(例えばヘモキニン類)の作用が発病、病態、および病因に関与するその他の疾患である。
【0052】
炎症性疾患のさらなる例は、尋常性ざ瘡;急性呼吸促迫症候群;アジソン病;アレルギー性眼内炎症性疾患;ANCA関連小血管脈管炎;強直性脊椎炎;自己免疫性溶血性貧血;ベーチェット病;ベル麻痺;水疱性類天疱瘡;脳虚血;肝硬変;コーガン症候群;接触性皮膚炎;クッシング症候群;皮膚筋炎;円板状紅斑性狼瘡;好酸球性筋膜炎;結節性紅
斑;剥脱性皮膚炎;巣状糸球体硬化症;巣状分節性糸球体硬化症;巨細胞性動脈炎;痛風;痛風性関節炎;手湿疹;ヘノッホ・シェーンライン紫斑病;妊娠性疱疹;多毛症;特発性角膜強膜炎(idiopathic ceratoscleritis);特発性血小板減少性紫斑病;免疫性血小板減少性紫斑病;炎症性腸疾患または消化器疾患;炎症性皮膚疾患;扁平苔癬;リンパ腫性気管気管支炎;黄斑浮腫;重症筋無力症;非特異性線維化性肺疾患;骨関節炎;膵炎;妊娠性類天疱瘡;尋常性天疱瘡;歯周炎;結節性多発動脈炎;リウマチ性多発筋痛症;陰嚢掻痒症;掻痒症/炎症;乾癬性関節炎;肺ヒストプラスマ症;再発性多発性軟骨炎;酒さ;サルコイドーシス;強皮症;敗血症性ショック症候群;肩腱炎または滑液のう炎;シェーグレン症候群;スチル病;スウィート病;全身性硬化症;高安動脈炎;側頭動脈炎;中毒性表皮壊死症;移植片拒絶および移植片拒絶関連症候群;結核;1型糖尿病;脈管炎;フォークト・小柳・原田(VKH)病;およびウェゲナー肉芽腫症である。
【0053】
「単離された」または「精製された」は、自然の状態から「ヒトの手によって」変化したことを意味する。分子または組成物が自然に発生したものである場合、それが変化したかもしくは本来の環境から除去されたか、またはその両方であるとき、それは「単離された」かまたは「精製された」である。例えば、生きている植物または動物において自然に存在するポリヌクレオチドもしくはポリペプチドは「単離された」かまたは「精製された」ものではないが、その自然な状態において共存する物質から分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、本明細書で用いられる語のように「単離された」かまたは「精製された」ものである。
【0054】
「機能的に連結する」または「機能的に挿入する」は、コード配列の発現のために必要な調節性配列を、コード配列の発現が可能になるように、コード配列に対して適切な位置において核酸分子内に配置することを意味する。例として、プロモーターは、プロモーターがコード配列の転写または発現を制御できる場合に、コード配列に機能的に連結する。コード配列は、プロモーターまたは調節性配列に、センスもしくはアンチセンスの配向によって機能的に連結してよい。「機能的に連結する」の語は、時々、発現ベクターにおけるその他の転写制御エレメント(例えばエンハンサー)の配置に対して適用される。
【0055】
同じ意味で「核酸分子」とも称される「ポリヌクレオチド」は、修飾されていないRNAもしくはDNAまたは修飾されたRNAもしくはDNAであってよい、いずれのポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドも指す。「ポリヌクレオチド」には、単鎖および二本鎖DNA、単鎖および二本鎖領域が混合したDNA、単鎖および二本鎖RNA、ならびに単鎖および二本鎖領域が混合したRNA、単鎖であってよいか、またはさらに典型的には、二本鎖または単鎖および二本鎖領域が混合したDNAおよびRNAを含む複合型分子が含まれるが、これらに限定されない。加えて「ポリヌクレオチド」は、RNAもしくはDNA、またはRNAおよびDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。ポリヌクレオチドの語はまた、1以上の修飾された塩基を含むDNAまたはRNA、および安定性もしくはその他の理由のために修飾された骨格を有するDNAまたはRNAも含む。「修飾された」塩基には、例えばトリチル化塩基、およびイノシンのような稀な塩基が含まれる。DNAおよびRNAには様々な修飾が為され得る;従って「ポリヌクレオチド」は、自然界に典型的に見出される、化学的、酵素的、または代謝的に修飾された形のポリヌクレオチド、同様に、ウイルスおよび細胞に特有なDNAならびにRNAの化学形を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、しばしばオリゴヌクレオチドと称される、比較的短い核酸鎖も包含する。
【0056】
「ポリペプチド」は、一般にペプチド、オリゴペプチド、またはオリゴマーと称される短鎖、および一般にタンパク質と称される比較的長い鎖の両方を指す。ポリペプチドは、遺伝子によりコードされる20のアミノ酸以外のアミノ酸も含んでよい。「ポリペプチド」には、翻訳後プロセシングのような天然の工程、または当該技術分野において公知の化
学的修飾技術のいずれかによって修飾されたアミノ酸配列が含まれる。このような修飾については、基本的な教科書およびさらに詳細な研究書、ならびに多数の研究文献において十分に記載されている。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、およびアミノまたはカルボキシル末端を含む、ポリペプチド内のどこにでも起こり得る。同じ型の修飾は、所定のポリペプチド内の幾つかの部位において、同じかまたは異なる程度で存在し得ることが認識されるであろう。また、所定のポリペプチドは多くの型の修飾を含み得る。ポリペプチドは、ユビキチン化の結果としての分岐型であってよく、かつ分岐を有するかまたは有さない環状型であってもよい。環状型、分岐型、および分岐環状型のポリペプチドは、天然の翻訳後工程の結果であってよいか、または合成法によって作製されてもよい。修飾には、例えば、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム成分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合性架橋の形成、シスチン形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解性のプロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、およびアルギニル化のような、転移RNAにより仲介されるタンパク質へのアミノ酸の付加、ならびにユビキチン化が含まれる。例えば、Proteins - Structure and Molecular Properties, 2nd Ed., T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York, 1993、およびWold, F., Posttranslational Protein Modifications: Posttranslational Covalent Modification of Proteins, B. C. Johnson, Ed., Academic Press, New York, 1983の、1-12頁のPerspectives
and Prospects; Seifter et al., Analysis for Protein Modifications and Nonprotein Cofactors, Meth Enzymol (1990) 182:626-646、およびRattan et al., Protein Synthesis: Posttranslational Modifications and Aging, Ann NY Acad Sci (1992) 663:48-62を参照されたい。
【0057】
「特異的に結合する」は、抗体またはその断片が、抗原(例えばFKNまたはその断片)を認識して結合するが、試料(例えば生体試料)中のその他の分子は実質的に認識せず結合しないことを意味する。「特異的に」は、無作為のタンパク質間で、例えば露出された親水性領域により時々起こり得る、低レベルの非特異的な粘着性と区別することを意図する。これは、抗体が本発明の抗原以外のいずれのタンパク質にも結合し得ないということを意図するものではない。抗体は、関連するエピトープを含むいずれのタンパク質とも交差反応(および「特異的に結合」)し得る。
【0058】
「被験者」は、いずれの動物、例えば哺乳類(例えばヒト)も意味する。例えば炎症性疾患のために処置を受けている被験者は、医学または獣医学従事者によって、このような状態を有し得る症例として診断されたものである。診断は、いずれの適切な手段によって行われてもよい。当業者は、本発明の被験者が標準的な試験に供され得たか、または、年齢、遺伝的特徴、もしくは家族歴のような1以上の危険因子の存在から、高い危険性にあるものとして試験なしで同定され得たことを理解するであろう。
【0059】
細胞は、例えばDNAが細胞内へ導入された場合、このDNAのような外来性または異種性の核酸によって「形質転換」または「トランスフェクト」される。形質転換するDNAは、細胞のゲノム内に組み込まれて(例えば共有結合により)よいか、または組み込まれなくてもよい。例えば原核生物、酵母、および哺乳類細胞では、形質転換するDNAはプラスミドのようなエピソーム性のエレメントにおいて維持され得る。真核細胞に関して、安定的に形質転換された細胞、すなわち「安定化細胞」では、形質転換するDNAが染色体に組み込まれ、染色体複製を通して娘細胞に受け継がれる。この安定性は、形質転換するDNAを含む娘細胞の集団から構成される細胞株またはクローンを確立する、真核細胞の能力によって示される。「クローン」は、単一細胞または有糸分裂による共通の祖先
に由来する細胞の集団である。「細胞株」は、in vitroで多世代にわたって安定に増殖できる、初代細胞のクローンである。
【0060】
「処置する」は、予防および/または治療上の目的で、治療用抗体またはその医薬組成物を投与することを意味する。「疾病または疾患を治療する」、または「治療上の処置」のための使用は、既に疾病を患っている被験者に、被験者の状態を改善するために処置を施すことを指す。被験者は、いずれかの特徴的な症状の同定か、または当業者に公知の診断方法の使用に基づいて、炎症性疾患と診断され得る。「疾病または疾患を予防する」は、まだ病気ではないが、特定の疾病に感受性であるか、そうでなければ発症の危険性がある被験者の予防的処置を指す。被験者は、当該技術分野において公知の診断方法を用いて、炎症性疾患発症の危険があることが判定される。
【0061】
「ベクター」は、別の核酸断片が、その断片の複製または発現がもたらされるように機能的に挿入され得た、プラスミド、ファージ、コスミド、またはウイルスのようなレプリコンである。
【0062】
本明細書および添付の請求項で用いられる、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈に明らかに他の指示がない限り、複数のものを含む。従って、例えば「1個の細胞(a cell)」への参照は、2個以上の細胞の組み合わせなどを含む。
【0063】
本発明のその他の特徴および利点は、詳細な説明および請求項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1はヒトFKNのアミノ酸配列を示した図である。
【図2】図2は、抗FKNモノクローナル抗体の結合特性(すなわち中和活性、結合親和性、および種交差反応性)を示す表を示した図である。
【図3】図3は、ヒト化抗FKN mAb配列(提示順に、それぞれ配列番号36〜37および42〜43)、m3A5−2配列(配列番号26)、生殖系列Ig配列(配列番号40)、およびAAA68427.1配列(配列番号34)の、重鎖可変領域のアラインメントを示した図である。
【図4】図4は、ヒト化抗FKN mAb配列(提示順に、それぞれ配列番号38および44〜45)、m3A5−2配列(配列番号27)、生殖系列Ig配列(配列番号41)、およびABU90602.1配列(配列番号35)の、軽鎖可変領域のアラインメントを示した図である。
【図5】図5は、3回の独立した走化性アッセイの結果をまとめた表を示した図である。ヒト化抗hFKN mAbの中和活性を、走化性アッセイを用いて分析した。H3およびH3−2の、L2およびL4との組み合わせは全て、これらのmAbがキメラmAbと類似の中和活性を示したことから、ヒト化に成功した。しかしながら、絞りこまれた重要残基を用いて作製したHK2は、L2またはL4との組み合わせにおいて、中和活性の低下を示した。
【図6】図6Aおよび6Bは、m3A5−2 mAbおよびキメラmAbの中和活性を示す一連のグラフを示した図である。図6Aは、走化性アッセイによって決定した、m3A5−2 mAbの中和活性を示すグラフである。図6Bは、走化性アッセイによって決定した、キメラmAbの中和活性を示すグラフである。
【図7】図7A〜7Dは、走化性アッセイによって決定した、ヒト化抗hFKN抗体の中和活性を示す一連のグラフを示した図である。図7Aは、H3L2−IgG2の中和活性を示す。図7Bは、H3L4−IgG2の中和活性を示す。図7Cは、HK2L2−IgG2の中和活性を示す。図7Dは、HK2L4−IgG2の中和活性を示す。
【図8】図8A〜8Fは、走化性アッセイによって決定した、ヒト化抗hFKN抗体の中和活性を示す一連のグラフを示した図である。図8Aは、H3−2L2−IgG2の中和活性を示す。図8Bは、H3−2L4−IgG2の中和活性を示す。図8Cは、H3−2L5−IgG2の中和活性を示す。図8Dは、HK3L2−IgG2の中和活性を示す。図8Eは、HK3L4−IgG2の中和活性を示す。図8Fは、HK3L5−IgG2の中和活性を示す。
【図9】図9は、mAbのhFKNおよびカニクイザルFKNに対する結合親和性を測定するために用いた、BIACORE(登録商標)アッセイの結果をまとめた表を示した図である。
【図10】図10A〜10Cは、BIACORE(登録商標)アッセイにより決定した、キメラおよびヒト化抗hFKN抗体(H3L2、H3−2L2、H3L4、H3−2L4、およびHK2L4)の、hFKN−SEAPおよびカニクイザルFKN−SEAPに対する結合親和性を示す一連のグラフを示した図である。図10Aは、Ka値(1/Ms)を示す棒グラフである。図10Bは、Kd値(1/s)を示す棒グラフである。図10Cは、KD値(M)を示す棒グラフである。
【図11】図11は、FKNケモカインドメイン由来の重複する合成ペプチド(提示順に、それぞれ配列番号115〜135)のライブラリーを用いた、エピトープマッピングの結果を示した図である。
【図12】図12は、ELISAを用いたhFKNのエピトープマッピングの結果を示した図である。
【図13】図13は、BIACORE(登録商標)を用いたhFKNのエピトープマッピングの結果を示した図である。
【図14】図14は、フラクタルカインのFab結合部位同定のための、交差飽和実験の結果を示した図である。プロットは、FKNのE66〜Q69、W81〜Q87、H70〜F73、およびH88〜D90領域が、Fabによる最小接触面に含まれることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
発明の詳細な説明
本発明者らは、キメラ抗FK抗体、ヒト化抗FKN抗体、およびそれらのFKN結合断片を設計し、単離した。本明細書で特徴付けられるヒト化抗FKN抗体およびそのFKN結合断片は、炎症性疾患の処置のために用いられてよい。このような抗体はまた、白血球の炎症部位への動員を阻害するために用いられてもよい。本発明に従って処置することのできる炎症性疾患には、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、関節リウマチ、筋炎、多発性硬化症、視神経脊髄炎、アテローム性動脈硬化症、乾癬、全身性エリテマトーデス(例えば中枢神経系のループスまたはループス腎炎)、腎炎、糸球体腎炎、自己免疫性肝胆道疾患(例えば自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、または原発性硬化性胆管炎)、移植片対宿主病、アトピー性皮膚炎、喘息、神経変性疾患(例えばアルツハイマー病)、脱髄性多発神経根症(例えばギラン・バレー症候群または慢性炎症性脱髄性多発神経根症)、神経因性疼痛、癌の内臓痛、アテローム性動脈硬化症、加齢による黄斑変性症、糖尿病性腎症、サルコイドーシスに由来するぶどう膜炎、糖尿病、リンパ腫性気管気管支炎、慢性気管支炎および嚢胞性線維症のようなアレルギー性過敏症または分泌過多状態、様々な原因による肺線維症(例えば特発性肺線維症)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、サルコイドーシス、アレルギー性および非アレルギー性鼻炎、アレルギー性または非アレルギー性蕁麻疹、免疫調節不全による炎症、組織再構築、血管新生、および新生物により特徴付けられる皮膚関連の疾病、ヒルシュスプルング病、下痢、吸収不良状態、炎症状態などの消化管の疾病、うつ病、不安状態、パーキンソン病、片頭痛およびその他の型の頭部痛、脳卒中、ならびに嘔吐症のような、中枢および末梢神経系の疾患、脾臓およびリンパ組織などの免疫系の疾病、自己免疫疾患、またはその他の免疫関連の疾病、肺水腫、高血圧症、子癇前症、2型複合性局所疼痛症候群、および脳卒中のような心血管系の疾病、関節炎のような慢性炎症性疾患、骨関連の疾病、線維筋痛のような慢性疼痛、尋常性ざ瘡、
急性呼吸促迫症候群、アジソン病、アレルギー性眼内炎症性疾患、ANCA関連小血管脈管炎、強直性脊椎炎、自己免疫性溶血性貧血、ベーチェット病、ベル麻痺、水疱性類天疱瘡、脳虚血、肝硬変、コーガン症候群、接触性皮膚炎、クッシング症候群、皮膚筋炎、円板状紅斑性狼瘡、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、剥脱性皮膚炎、巣状糸球体硬化症、巣状分節性糸球体硬化症、巨細胞性動脈炎、痛風、痛風性関節炎、手湿疹、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、多毛症、特発性角膜強膜炎(idiopathic ceratoscleritis)、特発性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少性紫斑病、炎症性腸疾患または消化器疾患、炎症性皮膚疾患、扁平苔癬、リンパ腫性気管気管支炎、黄斑浮腫、重症筋無力症、非特異性線維化性肺疾患、骨関節炎、膵炎、妊娠性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、歯周炎、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、陰嚢掻痒症、掻痒症/炎症、乾癬性関節炎、肺ヒストプラスマ症、再発性多発性軟骨炎、酒さ、サルコイドーシス、強皮症、敗血症性ショック症候群、肩腱炎または滑液のう炎、シェーグレン症候群、スチル病、スウィート病、全身性硬化症、高安動脈炎、側頭動脈炎、中毒性表皮壊死症、移植片拒絶および移植片拒絶関連症候群、結核、1型糖尿病、脈管炎、フォークト・小柳・原田(VKH)病、およびウェゲナー肉芽腫症が含まれる。
【0066】
抗体
抗体またはそのFKN結合断片を作製および精製するための方法は、当該技術分野において公知である。例えば、Kohler et al., Nature 256:495-497 (1975); Hongo et al., Hybridoma 14:253-260 (1995); Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press), 2nd ed. (1988); Hammerling et al., Monoclonal
Antibodies and T-Cell Hybridomas (Elsevier), 563-681 (1981); Ni, Xiandai Mianyixue, 26:265-268 (2006);米国特許第7,189,826号;第7,078,492号;および第7,153,507号;Vollmers and Brandlein, Histology and Histopathology 20:927-937 (2005); Vollmers and Brandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology 27:185-191 (2005);米国特許出願公開第2006/258841号;米国特許出願公開第2006/183887号;米国特許出願公開第2006/059575号;米国特許出願公開第2005/287149号;米国特許出願公開第2005/100546号;および米国特許出願公開第2005/026229号を参照されたい。
【0067】
キメラ抗体
キメラ抗体およびそれを産生する方法は、当該技術分野において公知であり、確立されている。本明細書で用いられる「キメラ抗体」の語は、非ヒト哺乳類、げっ歯類、または爬虫類の抗体のアミノ酸配列に由来する、少なくとも1の可変領域の少なくともある一部を有するが、抗体またはそのFKN結合断片の残りの部分はヒト由来である、抗体またはそのFKN結合断片を意味する。例えば、キメラ抗体は、マウス抗原結合領域と共にヒトFcまたはその他のこのような構造領域を含んで構成されてもよい。
【0068】
ヒト化抗体
本発明は、例えばFKNとCX3CR1間の相互作用を調節する、ヒト化抗FKN抗体およびそのFKN結合断片を包含する。ヒト化は、相補性決定領域(CDR)移植法を用いて行うことができる(Kontermann and Dubel, Antibody Engineering, Springer Lab Manual (2001) and Tsurushita et al., Methods 36:69-83 (2005))。ヒト化はまた、当該技術分野において公知の以下の方法(例えばJones et al., Nature 321 :522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988);およびVerhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988)を参照)を用いて、超可変領域配列を、ヒト抗体の対応する配列に対して置換することによっても行うことができる。ヒト化抗体は、典型的には幾つかの超可変領域残基、および場合によっては幾つかのFR残基が、非ヒト抗体の類似した部位由来の残基によって置換されたヒト抗体である。
【0069】
抗原性を減少させるためには、ヒト化抗体の作製において、軽鎖および重鎖の両方でヒト可変領域の使用を選択することが重要であり得る。「最良適合」法によれば、既知のヒト可変領域配列の全ライブラリーに対して、げっ歯類抗体の可変領域の配列がスクリーニングされる。次に、げっ歯類の配列に最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のヒトフレームワークとして受け入れられる。例えば、Sims et al., J. Immunol. 151 :2296-2308 (1993)およびChothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)を参照されたい。別の方法では、軽鎖または重鎖の特定の亜群の、全てのヒト抗体の共通配列に由来する特定のフレームワークが用いられる。幾つかの異なるヒト化抗体に対して、同じフレームワークが用いられ得る。例えば、Carter et al., Proc. Natl. Acad. Set USA 89:4285-4289 (1992) and Presta et al., J. Immunol. 151 :2623-2632 (1993)を参照されたい。
【0070】
さらに、抗体は一般に、抗原に対する高い親和性およびその他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化されることが望ましい。この目標を達成するため、一方法によれば、ヒト化抗体は、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを用いた、親配列および様々な概念的ヒト化産物の分析工程によって調製される。一般に三次元の免疫グロブリンモデルが利用可能であり、当業者に知られている。選択された候補である免疫グロブリン配列の有望な三次元立体構造を模式化し、表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を検討することにより、候補である免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性のある役割の分析、すなわち、候補である免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能となる。この方法により、単数または複数の標的抗原(例えばFKNまたはその断片)に対する親和性の増大のような、望ましい抗体の特性が達成されるように、FR残基をレシピエント配列およびインポート配列から選択して、組み合わせることができる。一般に、CDR残基が直接かつ最も実質的に、抗原結合への影響に関与する。
【0071】
FKN結合断片
本発明の特定の実施形態によれば、FKNとCX3CR1間の相互作用を調節するFKN結合断片が提供される。このような断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、またはScFv断片のような、完全な、ヒト化、および/またはキメラ抗体の機能的な抗原結合断片であってよい(例えば、Bird et al., Science 242:423-426 (1998)を参照)。このような断片は、組み換えにより形質転換した宿主細胞から直接、完全な抗体のタンパク質分解性の消化によって、例えばパパイン消化によって産生される(例えば、国際公開第94/29348号を参照)。FKN結合断片は、以下に記載する様々な工学技術を用いて産生され得る。
【0072】
Fv断片の2つの鎖の間の相互作用エネルギーは、Fab断片よりも低い。VHおよびVL領域の会合を安定化させるため、Fv断片はペプチド(例えば、Bird et al., Science 242:423-426 (1998)およびHuston et al., PNAS 85:5879-5883 (1998)を参照)、ジスルフィド結合(例えば、Glockshuber et al., Biochemistry 29:1362-1367 (1990)を参照)、および「knob in hole」変異(例えば、Zhu et al., Protein Sci. 6:781-788 (1997)を参照)によって結合する。ScFv断片は、当業者に公知の方法によって産生することができる(例えば、Whitlow et al., Methods Enzymol. 2:97-105 (1991)およびHuston
et al., Int. Rev. Immunol. 10:195-217 (1993)を参照)。ScFvはE.coliのような細菌細胞内で産生され得るが、真核細胞内でもまた産生され得る。ScFvが不利である一点は、多価結合によるアビディティーの増大が不可能な一価の産物であり、ScFv断片の半減期が短いことである。これらの問題を克服するための試みには、付加されたC末端システインを含むScFVから化学的結合によって(例えば、Adams et al., Cancer Res. 53:4026-4034 (1993)およびMcCartney et al., Protein Eng. 8:301-314 (1995)を参照)、または不対のC末端システイン残基を含むScFvの自発的な部位特異的二
量体化によって(例えば、Kipriyanov et al., Cell. Biophys. 26:187-204 (1995)を参照)産生された、二価の(ScFv’)が含まれる。あるいはScFvは、「二重特異性抗体」を形成するために、ペプチドリンカーを3ないし12残基に短くすることによって強制的に多量体を形成させることができる(例えば、Holliger et al., PNAS 90:6444-6448 (1993)を参照)。リンカーを短くすることで、さらに、「トリボディ」を形成するScFV三量体(例えば、Kortt et al., Protein Eng. 10:423-433 (1997)を参照)および「テトラボディ」を形成する四量体(例えば、Le Gall et al., FEBS Letters 453: 164-168 (1999)を参照)がもたらされ得る。二価のScFV分子の構築はまた、「ミニ抗体」(例えば、Pack et al., Biochemistry 31 : 1579-1584 (1992)を参照)および「ミニボディ」(例えば、Hu et al., Cancer Res. 56:3055-3061 (1996)を参照)を形成する、タンパク質二量体化モチーフとの遺伝的融合によっても達成され得る。第3のペプチドリンカーによって2つのScFvユニットを連結することで、ScFv−Sc−Fvタンデム((ScFV))もまた産生され得る(例えば、Kurucz et al., J. Immunol. 154:4576-4582 (1995)を参照)。二重特異性抗体は、短いリンカーによって別の抗体のVL領域に結合した一抗体由来のVH領域を含む、2本の単鎖の融合産物の非共有結合を通して産生され得る(例えば、Kipriyanov et al., Int. J. Can. 77:763-772 (1998)を参照)。このような二重特異性抗体の安定性は、ジスルフィド結合もしくは「knob in hole」変異の導入によって、または、2つの複合型ScFv断片がペプチドリンカーを介して結合した、単鎖二重特異性抗体(ScDb)の形成によって強化され得る(例えば、Kontermann et al., J. Immunol. Methods 226: 179-188 (1999)を参照)。四価の二重特異性分子は、例えばScFv断片を、IgG分子のCH3領域に、またはヒンジ領域を介してFab断片に融合することによって得られる(例えば、Coloma et al., Nature Biotechnol. 15: 159-163 (1997)を参照)。あるいは、四価の二重特異性分子は、二重特異的な単鎖二重特異性抗体の融合によって入手できる(例えば、Alt et al., FEBS Letters 454:90-94
(1999)を参照)。より小さな四価の二重特異性分子は、ヘリックス・ループ・ヘリックスモチーフを含むリンカーによるScFv−ScFvタンデム(DiBiミニ抗体)(例えば、Muller et al., FEBS Letters 432:45-49 (1998)を参照)または4つの抗体可変領域(VHおよびVL)を、分子内の対形成を阻止する配向において含む単鎖分子(タンデム二重特異性抗体)(例えば、Kipriyanov et al., J. Mol. Biol. 293:41-56 (1999)を参照)のいずれかの二量体化によっても形成することができる。二重特異性F(ab’)断片は、Fab’断片の化学的結合によって、またはロイシンジッパーを介したヘテロ二量体化によって作製できる(例えば、Shalaby et al., J. Exp. Med. 175:217-225 (1992)およびKostelny et al., J. Immunol. 148: 1547-1553 (1992)を参照)。単離されたVHおよびVL領域もまた入手可能である(例えば、参照により本明細書に取り込まれる、米国特許第6,248,516号;第6,291,158号;および第6,172,197号を参照)。
【0073】
医薬製剤
本発明の抗体もしくはそのFKN結合断片を含む治療用製剤は、水性または乾燥製剤の形において、生理的に許容される担体、賦形剤、もしくは安定剤と組み合わせてよい。許容される担体、賦形剤、または安定剤には、例えば生理食塩水;リン酸、クエン酸、およびその他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン);ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;アミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリン類を含む、単糖類、二糖類、およびその他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール類;ナトリウムのような、塩を形成する対イオン;またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはPEGのような非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0074】
本発明の抗体またはそのFKN結合断片は、マイクロカプセル内、コロイド性薬物送達
系(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、またはナノカプセル)内、またはマクロエマルション内に封入されてよい。抗体の投与を必要とするいずれの疾患にも適した放出特性を有する製剤において、抗体の持続放出投与が望まれる場合には、抗体のマイクロカプセル化が意図され得る。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸類(例えば、米国特許第3,773,919号を参照)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸塩との共重合体、非分解性のエチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)のような、分解性の乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドから構成される、注射用ミクロスフェア)、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0075】
in vivo投与に用いられる製剤は無菌でなければならない。これは無菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成される。
【0076】
併用療法
本発明の治療用抗体またはそのFKN結合断片は、治療法において単独か、またはその他の組成物と併用して用いることができる。例えば本発明の抗体は、別の抗体、抗炎症薬、細胞傷害剤、抗血管新生薬、サイトカイン、増殖抑制薬、または抗TNF−α治療薬の1以上と同時投与されてよい。このような併用療法には、併用投与(同じかまたは別々の製剤に2以上の薬剤が含まれる)および分離投与(例えば同時にまたは連続的に)が含まれる。2以上の薬剤を別々に投与する場合、本発明の抗体の投与は、付随する治療法に先立つか、または続いて行われてよい。
【0077】
抗FKN抗体またはそのFKN結合断片と併用して投与される治療薬の有効量は、医師の判断によるであろう。投与量決定は、処置される状態への最大の対応が達成されるように算出される。用量は、用いられる治療薬の型、および処置される特定の被験者のような因子にさらに依存し得る。適切な投与量は、追加の治療薬と抗FKN抗体またはそのFKN結合断片との併用作用(相乗作用)のために少なくすることができる。
【0078】
抗炎症薬
抗炎症性化合物は、本発明の抗体またはFKN結合断片と併用して投与されてよい。代表的な抗炎症薬には、グルココルチコイドのようなステロイド類、非ステロイド性抗炎症薬(例えばイブプロフェンまたはタクロリムス)、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))およびセレコキシブ(Celebrex(登録商標))のようなシクロオキシゲナーゼ−2−特異的阻害剤、副腎皮質ステロイド類(例えばプレドニゾンまたはヒドロコルチゾン)、Tリンパ球機能を標的とした特異的サイトカイン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、およびケトロラクが含まれる。例えば、参照により本明細書に取り込まれる、米国特許第7,112,578号および第7,199,119号を参照されたい。
【0079】
その他の薬剤
投与されてよいその他の治療薬には、例えばアミノサリチル酸類(例えば5−アミノサリチル酸)、スルファサラジン(例えばアザルフィジン)、メサラミン(例えばAsacol(登録商標)またはPentasa(登録商標))、アザチオプリン(例えばImuran(登録商標))、6−メルカプトプリン(例えばPurinethol(登録商標))、シクロスポリン、メトトレキサート、インフリキシマブ(例えばRemicade(登録商標))、インターフェロン(例えばインターフェロン−β)、グラチラマー酢酸塩(例えばCopaxone(登録商標))、ナタリズマブ(Tysabri(登録商標))、抗インテグリンα4、ウルソデオキシコール酸、タクリン塩酸塩、HMG CoA還元酵素阻害剤、リドカイン、スルホニル尿素、シクロホスファミド、静注用免疫グロブリン、アミトリプチリン、アヘン剤(例えばモルヒネ)
、ジフェノキシラート、アトロピン、ビタミンD、カルシウム、ラモトリギン、クエチアピン、プロスタグランジンE1、ニトログリセリン、ペガプタニブ、ラニビズマブ、硝酸イソソルビド、ペロスピロン、トピラマート、オクスカルバゼピン、ドーパミン、ミコフェノール酸モフェチル、ミゾリビン、レベチラセタム、フェンタニル、トラマドール、ジギタリス、カプサイシン、ナトリウム利尿ペプチド、クロニジン、−ドロネート(例えばアレンドロネート)、ベザフィブラート、メキシレチン、グリニド類(例えばナテグリニドまたはレパグリニド)、ドネペジル塩酸塩、レフルノミド、プレガバリン、リバスチグミン酒石酸塩、フェンタニル、プロスタサイクリン、プロカインアミド、コルヒチン、α−グルコシダーゼ阻害剤、利尿薬(例えばサイアザイド系利尿薬、または抗アルドステロン性利尿薬)、タクロリムス、メマンチン塩酸塩、ペンタゾシン、クロピドグレル、組織プラスミノーゲン活性化因子、サリドマイド、アンジオテンシン受容体遮断薬、チアゾリジンジオン、メトロニダゾール、スピロノラクトン、デュロキセチン、パロキセチン、クロニジン、チクロピジン、ヘパリン、カルシウムチャネル遮断薬、インスリン、アルブミン、ブシラミン、カルバマゼピン、リスペリドン、リマプロスト、ワルファリン、ベルテポルフィン、ガバペンチン、ガランタミン臭化水素酸塩、アスピリン、ウロキナーゼ、クロラムブシル、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、ビグアナイド、β−アドレナリン受容体阻害剤または作用薬、ヒドロキシクロロキン、およびミトキサントロンが含まれる。
【0080】
本明細書に記載する疾患(例えば炎症性疾患)の処置は、その他の治療法の施行をさらに含んでよい。例えば血漿分離交換法(例えば血漿交換療法)が、例えばギラン・バレー症候群、脱髄性多発神経根症(例えば慢性炎症性脱髄性多発神経根症)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、ベーチェット病、または多発性硬化症を処置するために用いられてよい。
【0081】
投与量および投与
炎症性疾患の緩和または処置は、一般に、疾患に付随する1以上の症状または合併症を減少させることを含む。炎症性疾患の場合、治療用抗体、FKN結合断片、またはその医薬組成物の治療上有効な量は、以下のうちの1、または組み合わせにより達成され得る:炎症の縮小;腹痛または痙攣の減少;腹部膨満感の減少;下痢の減少または排除;消化管の潰瘍の縮小;熱の低下;悪心の減少または軽減;倦怠感の減少;体重減少の最少化;関節痛の軽減;腫脹の縮小;掻痒感または皮膚発疹の軽減;黄疸の排除;および/または炎症性疾患に付随する1以上の症状の軽減。投与される抗体の「治療上有効な量」は、炎症性疾患を予防、寛解、または治療するために必要な最小量である。
【0082】
本明細書に記載する抗体、FKN結合断片、および医薬組成物は、急速投与または一定期間にわたる連続的な点滴による静脈内投与、局所、経口、皮下、気管支内注入により、脳内、鼻腔内、経皮、腹腔内、筋肉内、肺内、経膣、経直腸、関節内、動脈内、病巣内、非経口、脳における脳室内、または眼内のような、公知の方法に従って被験者へ投与される。処置が広範な副作用または毒性を伴う場合には、局所投与が特に望まれ得る。
【0083】
経口で使用される製剤は、咀嚼錠、もしくは有効成分が不活性の固形希釈剤と混合された硬ゼラチンカプセルとして、または有効成分が水性もしくは油性の溶媒と混合された軟ゼラチンカプセルとしても提供され得る。
【0084】
Ex vivoの計画もまた、治療上の応用のために用いることができる。Ex vivoの計画は、被験者から得た細胞に、抗体もしくは抗体断片をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトまたは形質導入することに関与する。トランスフェクトまたは形質導入された細胞は、次に被験者へ戻される。細胞は、造血性細胞(例えば骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、T細胞、またはB細胞)、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、角化細胞、または筋肉細胞を含むがこれらに限定されない、広範な型のいずれであ
ってもよい。
【0085】
本発明の組成物の投与量およびタイミングは、被験者の総合的な健康状態および炎症性疾患の症状の重症度を含む、様々な臨床的因子に依存する。処置は、1日ないし4年、1日ないし3年、1日ないし2年、1日ないし1年、1ないし100日、1ないし60日、1ないし20日、1ないし10日の範囲の期間、、または炎症性疾患もしくは炎症性疾患の症状が、処置されるかもしくは緩和されるまで継続され得る。本発明の組成物は、1日4回、1日3回、1日2回、毎日、週1回、月2回、月1回、2か月に1回、3か月に1回、または年1回投与されてよい。投与量は状態の重症度によって変動し、定常状態の血中濃度が約1ng/mLないし10μg/mL、または1ないし500ng/mLの範囲となるように設定される。投与される抗体の量は、典型的には、被験者の体重あたり約0.001ないし約30mg/kgの範囲である(例えば被験者の体重あたり0.01ないし約10mg/kg)。
【実施例】
【0086】
以下の実施例により本発明を例証するが、これは本発明を限定することを意図したものではない。
【0087】
[実施例1]マウス抗ヒトフラクタルカイン(hFKN)モノクローナル抗体の調製
マウス抗hFKNモノクローナル抗体(mAb)を、以前に記載されたように作製した(例えば、参照により本明細書に取り込まれる、米国特許第7,390,490号を参照)。中和mAbクローン1F3−1、3A5−2、1F3、1G1、2B2、3D5、3H7、6D1、7F6、および5H7−6を得た。
【0088】
[実施例2]ヒト化の候補となるmAbの選択
中和活性測定のための走化性アッセイ、hFKNに対する結合親和性測定のためのBIACORE(登録商標)アッセイ、およびカニクイザルFKNに対する種交差反応性測定のための酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて、クローン1F3−1、3A5−2、および5H7−6を分析した。中和活性、結合親和性、およびカニクイザルFKNに対する種交差反応性を図2に要約する。クローン3A5−2は、hFKNに対して最も高い中和活性および最も高い結合親和性を示した。クローン3A5−2は、カニクイザルFKNとhFKNに対して同等の反応性を示した。従って、クローン3A5−2をヒト化の候補として選択した。
【0089】
走化性アッセイは以下のように行った。細胞をトランスウェル培養プレート(MultiScreen-MIC Plate、5.0μm、Millipore、カタログ番号MAMIC 5S10)の上部のウェルに入れ、下部のウェルにリガンドを入れた。最初に、組み換えヒトFKN(R&D Systems、カタログ番号362−CX/CF)(最終濃度33ng/ml)(図1)を、様々な濃度の(0から10μg/ml)精製した抗体と共に、室温でプレインキュベートした。組成物は、以下の成分を含んだ:10xケモカイン溶液、15μl/ウェル;10x精製mAb、15μl/ウェル;および1x走化性緩衝液(0.5%BSA、0.5%FBS、20mM HEPES(pH7.4)、50μΜ 2−メルカプトエタノールを含むRPMI 1640(Invitrogen))、120μl/ウェル。30分後、CX3CR1をトランスフェクトしたB300.19細胞(2x10細胞/75μl)を上部のウェルに入れ、5%−COインキュベーター内で37℃にて4時間インキュベートした。インキュベーション後、下部ウェルの溶液を150μl回収し、50μlの4%PFA/PBSによって固定した後、30μlのサンプルから、FACSCantoIIセルアナライザーによって遊走細胞をカウントした。
【0090】
BIACORE(登録商標)アッセイは以下のように行った。組み換えプロテイン−A/G(P
ierce Chemical)を、アミンカップリング試薬(GE Healthcare)によって予め活性化したBIACORE(登録商標)センサーチップ(CM5)に固定化した。精製したmAbを、0.2μg/mlの濃度でセンサーチップ内に加えた。可溶性抗原(分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)に結合させた可溶性FKNまたはコントロールSEAPタンパク質)を、様々な濃度(0から200nM)でセンサーチップ内に加えた。添加した抗原と、センサーチップ上に捕捉されたmAbとの結合を連続的にモニターし、抗原の相対的な結合応答をBIACORE(登録商標)A100システム(GE Healthcare)を用いて測定した。
【0091】
ELISAは以下のように行った。ポリクローナル抗ウサギIgG抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories、カタログ番号711−005−152)を、96ウェルプレート(Nunc、カタログ番号442402)のウェル上にコートした。4℃にて一晩インキュベートした後、1xブロックエース(大日本製薬)により、ウェルを室温にて1時間ブロッキングした。0.05% Tween20/PBSで3回洗浄した後、ウェルに10nMのウサギポリクローナル抗PLAP抗体(Biomeda)を加えた(50μl/ウェル)。室温にて1時間インキュベートし、上記のように3回洗浄した後、ウェルにhFKN−SEAPまたはカニクイザルFKN−SEAPを含む培養上清を加え(最終濃度1nM)、室温にて1時間インキュベートした。3回洗浄した後、ウェルに精製した抗hFKN mAbを様々な濃度(0から10μg/ml)で加えた。1時間インキュベートして3回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories、カタログ番号715−036−151)を0.16μg/ml(50μl/ウェル)加え、室温にて1時間インキュベートした。3回洗浄した後、ウェルにTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)溶液を加え、15〜30分インキュベートした。ウェルに等量の反応停止溶液(2M HSO)を加え、マイクロプレートリーダー(Arvo, PerkinElmer)により450nmの吸光度を読み取った。
【0092】
可溶性hFKN−SEAPは以下のように調製した。hFKNの細胞外領域をコードするcDNAを、5’−SalI−hFKNプライマー(CGCGTCGACGCCACCATGGCTCCGATATCTCTGTC;配列番号2)および3’−NotI−hFKNプライマー(GCGGGCGGCCGCCCTCCGGGTGGCAGCCTGGG;配列番号3)によって増幅し、SEAP cDNAを含むpcDNA3.1(+)dSalI SEAPベクターへサブクローニングした。hFKN−SEAPの発現ベクターを、HEK293EBNA(HEK293E)細胞(Invitrogen)へトランスフェクトした。HEK293E細胞は、トランスフェクションの前日に、10%ウシ胎仔血清を含むDMEM(Invitrogen)中にまいた。トランスフェクションの日に、培地をOPTI-MEM II無血清培地(Invitrogen)に交換した。TransIT LT1(タカラバイオ)を製造元の指示に従って用いて、発現ベクターをトランスフェクトした。3日間のインキュベーション(5%CO、37℃)後、培養上清を回収した。SEAPタンパク質の濃度を、Great EscAPe SEAP Chemiluminescence Kit 2.0(Clontech)を用いて測定した。
【0093】
可溶性カニクイザルFKN−SEAPは以下のように調製した。カニクイザルFKNの細胞外領域をコードするcDNAを、5’−XhoI−カニクイザルFKNプライマー(GCGCTCGAGGCCACCATGGCTCCGATATCTCTGTCGTGG;配列番号4)および3’−NotI−カニクイザルFKNプライマー(CGCGGCGGCCGCGGTGGCAGCCTGGGAGTCAGGGAC;配列番号5)によって増幅し、SEAP cDNAを含むpENTR1A(Invitrogen)へサブクローニングした。カニクイザルFKNおよびSEAPをコードする断片を、GATEWAYシステム(Invitrogen)を用いて、カセットBを含むpcDNA3.1へ移入した。カニクイザルFKN−SEAPを含む培養上清を上記のように調製した。
【0094】
[実施例3]クローン3A5−2マウス抗hFKN mAbの、重鎖および軽鎖の可変領域のcDNAクローニング
クローン3A5−2の、重鎖および軽鎖のcDNAをRT−PCRによって増幅した。
クローン3A5−2のハイブリドーマから、RNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用いて全RNAを抽出した。全RNAを用いて、cDNA合成用キット(タカラバイオ)によりcDNAを合成し、重鎖に対して5’−Mm−HC−Leader1プライマー(GGGATGGRATGSAGCTGKGTMATSCTCTT;配列番号6)、5’−Mm−HC−Leader2プライマー(GGGATGRACTTCGGGYTGAGCTKGGTTTT;配列番号7)または5’−Mm−HC−Leader3プライマー(GGGATGGCTGTCTTGGGGCTGCTCTTCT;配列番号8)および3’−Mm−IgG2a−CH3−Rプライマー(TCATTTACCCGGAGTCCGGGAGAAGCTCTTAGTC;配列番号9)、ならびに軽鎖に対して5’−Mm−LC−Leader1プライマー(GGGATGGAGACAGACACACTCCTGCTAT;配列番号10)または5’−Mm−LC−Leader2プライマー(GGGATGGATTTTCAGGTGCAGATTTTCAG;配列番号11)または5’−Mm−LC−Leader3プライマー(GGGATGRAGTCACAKACYCAGGTCTTYRTA;配列番号12)または5’−Mm−LC−Leader4プライマー(GGGATGAGGKCCCCWGCTCAGYTYCTKGGR;配列番号13)または5’−Mm−LC−Leader5プライマー(GGGATGAAGTTGGCTGTTAGGCTGTTG;配列番号14)および3’−Mm−Ckappa−Rプライマー(CTAACACTCATTCCTGTTGAAGCTC;配列番号15)をそれぞれ用いて増幅した。増幅したcDNAを、pCR2.1ベクター(Invitrogen)へサブクローニングした。ABI3130XLを用いて配列を解析した。完全長の重鎖および5’端の配列を欠失したL鎖を得た。L鎖の5’端の配列を増幅して正確なリーダー配列を同定するため、5’−cDNA末端迅速増幅法(5’−RACE)を行った。cDNA合成用キット(タカラバイオ)を用いて二本鎖cDNAを調製し、5’アダプター(ad29S;ACATCACTCCGT(配列番号16)およびas29AS;ACGGAGTGATGTCCGTCGACGTATCTCTGCGTTGATACTTCAGCGTAGCT(配列番号17)をアニールした)を加えた。第1PCRに対して5’−PCR1プライマー(GTATCAACGCAGAGATACGTCGACGG;配列番号18)を、および第2PCRに対して5’−PCR4プライマー(AGCTACGCTGAAGTATCAACGCAGAG;配列番号19)を、およびH鎖の第1PCRに対して3’HC RACEプライマー_1(GTACGGAGTACTCCAAAAATGTTG;配列番号20)を、またはH鎖の第2PCRに対して3’HC RACEプライマー_2(TCTTCAGGCTGCAGGCTGATGATC;配列番号21)を、L鎖の第1PCRに対して3’LC RACEプライマー_3(AAATCTTCAGGCTGCAGGCTGTTG;配列番号22)を、またはL鎖の第2PCRに対して3’LC RACEプライマー_4(CTGTTGATCTTGAGAGAATATTGTG;配列番号23)をそれぞれ用いてcDNAを増幅した。上記のように、増幅したcDNAをサブクローニングして配列決定した。同定した可変領域の配列を以下に示す。
【0095】
重鎖(H)可変領域のヌクレオチド配列:
CAGGTCCAGCTGCAGCAGTCTGGACCTGAACTGGTGAAGCCTGGGGCTTCAGTGAAGATGTCCTGCAAGGCTTCTGGCTACACCTTCACAAACTACTATATACACTGGGTGAAGCAGAGGCCTGGACAGGGACTTGAGTGGATTGGATGGATTTATCCTGGAGATGGTAGTCCTAAGTTCAATGAGAGGTTCAAGGGCAAGACCACACTGACTGCAGACAAGTCCTCAAACACAGCCTACATGTTGCTCAGCAGCCTGACCTCTGAAGACTCTGCGATCTATTTCTGTGCAACTGGGCCCACTGATGGCGACTACTTTGACTACTGGGGCCAGGGCACCACTCTCACAGTCTCCTCA(配列番号24)
【0096】
軽鎖(L)可変領域のヌクレオチド配列:
GACATCCAGATGACTCAGTCTCCAGCCTCCCTATCTGCATCTGTGGGAGAAACTGTCACCATCACATGTCGAGCAAGCGGGAATATTCACAATTTTTTAGCATGGTATCAGCAGAAACAGGGAAAATCTCCTCAGTTCCTGGTCTATAATGAAAAAACCTTAGCAGATGGTGTGCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCAGGAACACAATATTCTCTCAAGATCAACAGCCTGCAGCCTGAAGATTTTGGGATTTATTTCTGTCAACAGTTTTGGAGTACTCCGTATACGTTCGGAGGGGGGACCAAGCTGGAAATAAAA(配列番号25)
【0097】
重鎖(H)可変領域のアミノ酸配列:
QVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYTFTNYYIHWVKQRPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGKTTLTADKSSNTAYMLLSSLTSEDSAIYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTLTVSS(配列番号26)
【0098】
軽鎖(L)可変領域のアミノ酸配列:
DIQMTQSPASLSASVGETVTITCRASGNIHNFLAWYQQKQGKSPQFLVYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTQYSLKINSLQPEDFGIYFCQQFWSTPYTFGGGTKLEIK(配列番号27)
【0099】
[実施例4]クローン3A5−2からのヒト化抗FKN mAbの設計
マウス抗hFKN mAbであるクローン3A5−2を、相補性決定領域(CDR)移植法によってヒト化した(Kontermann and Dubel, Antibody Engineering, Springer Lab
Manual (2001)およびTsurushita et al., Methods 36:69-83 (2005))。CDRのアミノ酸配列を以下に示す。
CDR−H1:NYYIH(配列番号28)
CDR−H2:WIYPGDGSPKFNERFKG(配列番号29)
CDR−H3:GPTDGDYFDY(配列番号30)
CDR−L1:RASGNIHNFLA(配列番号31)
CDR−L2:NEKTLAD(配列番号32)
CDR−L3:QQFWSTPYT(配列番号33)
【0100】
ヒトアクセプターフレームワークは、ヒト可変領域区分の中から選択した。同定した3A5−2のCDRを、選択したヒトアクセプターフレームワーク内に移植した。設計したヒト化配列を以下に示す。
【0101】
H鎖(H3と命名;配列番号36)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSDDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS
【0102】
H鎖(H3−2と命名;配列番号37)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVKQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTNTAYMLLSSLRSEDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS
【0103】
L鎖(L2と命名;配列番号38)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKFLVYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTQYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK
【0104】
H鎖(H4と命名;配列番号39)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTRDKSTNTAYMELSSLRSDDTAVYFCATGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS
【0105】
H鎖の生殖系列配列(配列番号40)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTXXXXXWVRQAPGQGLEWMGXXXXXXXXXXXXXXXXXRVTMTRDTSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARXXXXXXXXXXWGQGTTVTVSS
【0106】
L鎖の生殖系列配列(配列番号41)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCXXXXXXXXXXXWYQQKPGKAPKLLIYXXXXXXXGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCXXXXXXXXXFGGGTKVEIK
【0107】
H鎖(HK2と命名;配列番号42)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTMTADTSTSTAYMELSSLRSEDTAVYFCARGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS
【0108】
H鎖(HK3と命名;配列番号43)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYIHWVRQAPGQGLEWIGWIYPGDGSPKFNERFKGRTTLTADKSTSTAY
MELSSLRSEDTAVYFCARGPTDGDYFDYWGQGTTVTVSS
【0109】
L鎖(L4と命名;配列番号44)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK
【0110】
L鎖(L5と命名;配列番号45)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASGNIHNFLAWYQQKPGKAPKLLIYNEKTLADGVPSRFSGSGSGTQYTLTISSLQPEDFATYFCQQFWSTPYTFGGGTKVEIK
【0111】
全てのヒト化配列を整列させた(図3および4)。
【0112】
[実施例5]ヒト化抗hFKN mAb発現ベクターの構築
ヒト化mAbを発現させるリーダー配列を選択するため、AAA68427.1およびABU90602.1との類似性に基づいて生殖細胞系のセグメントを探索した。VH1−1−18およびVKI−O12のセグメントが、それぞれAAA68427.1およびABU90602.1に最も類似していた。これらのリーダー配列を、ヒト化mAbの発現に用いた。これらのリーダー配列を以下に示す。
【0113】
H鎖アミノ酸配列(配列番号46)
MDWTWSILFLVAAPTGAHS
【0114】
H鎖ヌクレオチド配列
ATGGACTGGACCTGGAGCATCCTTTTCTTGGTGGCAGCACCAACAGGTGCCCACTCC(H3およびH3−2に対する;配列番号47)
ATGGACTGGACATGGTCCATCCTGTTCCTGGTGGCCGCTCCAACTGGCGCACACTCT(HK2およびHK3に対する;配列番号48)
【0115】
L鎖アミノ酸配列(配列番号49)
MDMRVPAQLLGLLLLWLRGARC
【0116】
L鎖ヌクレオチド配列(配列番号50)
ATGGACATGAGGGTCCCCGCTCAGCTCCTGGGGCTCCTGCTACTCTGGCTCCGAGGTGCCAGATGT
【0117】
設計したヒト化抗hFKN mAbの可変領域に上記のリーダー配列を加えたものを、以下のプライマーを用いたPCRによって作製した。
【0118】
H3重鎖に対する
h3A5−2_VH3−1プライマー(配列番号51):
ATGGACTGGACCTGGAGCATCCTTTTCTTGGTGGCAGCACCAACAGGTGC
h3A5−2_VH3−2Rプライマー(配列番号52):
CCAGACTGCACCAGCTGCACCTGGGAGTGGGCACCTGTTGGTGCTGCCAC
h3A5−2_VH3−3プライマー(配列番号53):
GTGCAGCTGGTGCAGTCTGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGGGCCTCAGT
h3A5−2_VH3−4Rプライマー(配列番号54):
GTGTATCCAGAAGCCTTGCAGGAGACCTTCACTGAGGCCCCAGGCTTCTT
h3A5−2_VH3−5プライマー(配列番号55):
TGCAAGGCTTCTGGATACACCTTCACCAACTACTATATACACTGGGTGAA
h3A5−2_VH3−6Rプライマー(配列番号56):
ATCCACTCAAGCCCTTGTCCAGGGGCCTGCTTCACCCAGTGTATATAGTA
h3A5−2_VH3−7プライマー(配列番号57):
GGACAAGGGCTTGAGTGGATAGGATGGATTTATCCTGGAGATGGTAGTCC
h3A5−2_VH3−8Rプライマー(配列番号58):
GTCCTGCCCTTGAACCTCTCATTGAACTTAGGACTACCATCTCCAGGATA
h3A5−2_VH3−9プライマー(配列番号59):
GAGAGGTTCAAGGGCAGGACCACCCTGACCGCAGACAAGTCCACGAACAC
h3A5−2_VH3−10Rプライマー(配列番号60):
GATCTCAGGCTGCTCAGCAACATGTAGGCTGTGTTCGTGGACTTGTCTGC
h3A5−2_VH3−11プライマー(配列番号61):
TTGCTGAGCAGCCTGAGATCTGACGACACGGCCGTGTATTTCTGTGCGAC
h3A5−2_VH3−12Rプライマー(配列番号62):
TAGTCAAAGTAGTCGCCATCAGTGGGCCCTGTCGCACAGAAATACACGGC
h3A5−2 VH3−13プライマー(配列番号63):
GATGGCGACTACTTTGACTACTGGGGCCAAGGGACCACGGTCACCGTCTC
h3A5−2_Rプライマー(配列番号64):
GACCGATGGGCCCTTGGTGGAGGCTGAAGAGACGGTGACCGTGGTCCC
【0119】
L2軽鎖に対する
h3A5−2_VL2−1プライマー(配列番号65):
GCCACCATGGACATGAGGGTCCCCGCTCAGCTCCTGGGGCTCCTGCTACTCTGGCTCCGAGGTGCCAGAT
h3A5−2_VL2−2Rプライマー(配列番号66):
TCCTACAGATGCAGACAGGGAGGATGGAGACTGGGTCATCTGGATGTCACATCTGGCACCTCGGAGCCAG
h3A5−2_VL2−3プライマー(配列番号67):
CCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCCGAGCAAGCGGGAATATTCACAATTTTTT
h3A5−2_VL2−4Rプライマー(配列番号68):
GAACTTAGGGGCTTTCCCTGGTTTCTGTTGATACCATGCTAAAAAATTGTGAATATTCCCGCTTGCTCGG
h3A5−2_VL2−5プライマー(配列番号69):
CAGGGAAAGCCCCTAAGTTCCTGGTCTATAATGAAAAAACCTTAGCAGATGG GGTCCCATCAAGGTTCAG
h3A5−2_VL2−6Rプライマー(配列番号70):
GTTGCAGACTGCTGATGGTGAGAGTATATTGTGTCCCAGATCCACTGCCACTGAACCTTGATGGGACCCC
h3A5−2_VL2−7プライマー(配列番号71):
CACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCGACCTACTTCTGTCAACAGTTTTGGAGTACTCCGTAT
h3A5−2_VL2−8Rプライマー(配列番号72):
TTTGATCTCCACCTTGGTCCCTCCGCCGAACGTATACGGAGTACTCCAAAACTGTTGACAGAA
h3A5−2_VL−R(配列番号73):
GACAGATGGTGCAGCCACAGTTCGTTTGATCTCCACCTTGGTCCCTCC
【0120】
作製したH3およびL2を、H3に対して5’−Eco−Sal−h3A5−2_VH_Fプライマー(GCGAATTCGTCGACGCCACCATGGACTGGACCTGGAGCATCCTTTTCTTG;配列番号74)および3’−NheI−h3A5−2_VH_R(CGCGCTAGCTGAAGAGACGGTGACCGTGGTCCC;配列番号75)、ならびにL2に対して5’−h3A5−2_VL_SalI−kozac_Fプライマー(GCGGTCGACGCCACCATGGACATGAGGGTCCCC;配列番号76)および3’−h3A5−2_VL−Rプライマー(GACAGATGGTGCAGCCACAGTTCGTTTGATCTCCACCTTGGTCCCTCC;配列番号77)をそれぞれ用いたPCRによって増幅した。
【0121】
H4はGenscript USA Inc.によって作製された。H4の配列を以下に示す。
H4(配列番号78):
GAATTCGTCGACGCCACCATGGACTGGACATGGTCCATCCTGTTCCTGGTGGCCGCTCCAACTGGCGCACACTCTCAGGTGCAGCTGGTGCAGAGTGGCGCTGAGGTGAAGAAACCCGGAGCATCAGTGAAGGTGTCCTGCAAAGCCAGCGGATACACCTTCACCAACTACTATATTCATTGGGTGAGGCAGGCTCCTGGACAGGGACTGGAGTGGATCGGATGGATCTACCCAGGGGAC
GGTTCCCCTAAGTTCAACGAAAGGTTTAAAGGCCGGACCACACTGACCAGGGATAAGTCAACCAATACAGCTTACATGGAACTGTCCAGCCTGCGCTCTGACGATACAGCAGTGTATTTCTGTGCCACTGGGCCAACCGACGGCGACTACTTTGATTATTGGGGCCAGGGAACTACCGTGACCGTGTCTAGTGCTAGC
【0122】
HK2の可変領域は、以下のプライマーによるPCRを用いた点突然変異導入によって、H4から作製した。
3A5−2_HKG2_sal24Fプライマー(配列番号79):
CGCGTCGACGCCACCATGGACTGGACATGGTCCATCCTG
h3A5−2_HKG2_280Fプライマー(配列番号80):
ATGACCGCCGATACCTCAACCTCCACAGCTTACATGGAA
h3A5−2_HKG2_300Rプライマー(配列番号81):
GGTTGAGGTATCGGCGGTCATTGTGGTCCG
h3A5−2_HKG2_340Fプライマー(配列番号82):
GAGGATACAGCAGTGTATTTCTGTGCCCGGGGGCCAACC
h3A5−2_HKG2_370Rプライマー(配列番号83):
GGCACAGAAATACACTGCTGTATCCTCAGAGCGCAG
h3A5−2_HKG2_Nhe24R(配列番号84):
CGCGCTAGCACTAGACACGGTCACGGTAGTTCC
【0123】
HK3の可変領域は、以下に示すプライマーによるPCRを用いた点突然変異導入によって、HK2から作製した。
h3A5−2_HKG2_sal24Fプライマー(配列番号85):
CGCGTCGACGCCACCATGGACTGGACATGGTCCATCCTG
HKG3_Rプライマー(配列番号86):
TTGACTTATCGGCGGTCAGTGTGGTCCGGCCTTTAAACCTTTC
HKG3_Fプライマー(配列番号87):
ACACTGACCGCCGATAAGTCAACCTCCACAGCTTACATGGAA
h3A5−2_HKG2_Nhe24Rプライマー(配列番号88):
CGCGCTAGCACTAGACACGGTCACGGTAGTTCC
【0124】
L4の可変領域は、以下に示すプライマーによるPCRを用いた点突然変異導入によって、L2から作製した。
h3A5−2_VL4_sal24Fプライマー(配列番号89):
CGCGTCGACGCCACCATGGACATGAGGGTCCCCGCTCAG
h3A5−2_VL4_200Rプライマー(配列番号90):
CAGCAGCTTAGGGGCTTTCCCTGGTTTCTG
h3A5−2_VL4_190Fプライマー(配列番号91):
GGGAAAGCCCCTAAGCTGCTGATCTATAATGAAAAA
h3A5−2_VL4_260Rプライマー(配列番号92):
TGTCCCAGATCCACTGCCACTGAACCTTGA
h3A5−2_VL4_250Fプライマー(配列番号93):
AGTGGCAGTGGATCTGGGACAGACTATACTCTCACC
h3A5−2_VL4_BsiW24Rプライマー(配列番号94):
CGCCGTACGTTTGATCTCCACCTTGGTCCCTCC
【0125】
L5の可変領域は、以下に示すプライマーによるPCRを用いた点突然変異導入によって、L4から作製した。
h3A5−2_VL4_sal24Fプライマー(配列番号95):
CGCGTCGACGCCACCATGGACATGAGGGTCCCCGCTCAG
VL5_Rプライマー(配列番号96):
GGTGAGAGTATACTGTGTCCCAGATCCACTGCCACTGAAC
VL5_Fプライマー(配列番号97):
GGATCTGGGACACAGTATACTCTCACCATCAGCAGTCTG
h3A5−2_VL4_BsiW24R(配列番号98):
cgcCGTACGTTTGATCTCCACCTTGGTCCCTCC
【0126】
IgG2およびIgκの定常領域を、IgG2に対して5’−NheI−IgG2_Fプライマー(CGCGCTAGCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCC;配列番号99)および3’−EcoRV−IgG2_Rプライマー(CGCGATATCTCATTTACCCGGAGACAGGGAGAG;配列番号100)、ならびにIgκに対して5’−BsiWI−Igk_Fプライマー(CGCCGTACGGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATC;配列番号101)および3’−EcoRV−Igk_Rプライマー(CGCGATATCCTAACACTCTCCCCTGTTGAAGCT;配列番号102)をそれぞれ用いて増幅した。増幅した定常領域を、NotIが欠失したpENTR1A dNotIへサブクローニングした。
【0127】
作製した可変領域を、重鎖に対してSalI−NheI部位、または軽鎖に対してSalI−BsiWI部位をそれぞれ用いて、pENTR1A−IgG2またはpENTR1A−Igκへサブクローニングした。L2の場合、Igκの定常領域は5’−hIGK_Fプライマー(CGAACTGTGGCTGCACCATCTGTC;配列番号103)および3’−hIGK_NotI−Rプライマー(CGCGCGGCCGCCTAACACTCTCCCCTGTTGAAGCTCTT;配列番号104)を用いて増幅した。増幅したIgκ定常領域および作製したL2をPCRによって組み合わせ、pENTR1Aへサブクローニングした。サブクローニングした可変領域および定常領域を、GATEWAYシステム(Invitrogen)を用い、重鎖および軽鎖それぞれについてpEE6.4またはpEE12.4(Lonza)へ移入した。
【0128】
H3−2は、GeneTailor Site-Directed Mutagenesis Systemを用いた点突然変異導入により、pENTR1A−H3−IgG2から5’−h3A5−2_H3−2_300Fプライマー(TTGCTGAGCAGCCTGAGATCTGAGGACACGGCC;配列番号105)および3’−h3A5−2_H3−2_320Rプライマー(AGATCTCAGGCTGCTCAGCAACATGTAGGC;配列番号106)によって作製した。GeneTailorによる部位特異的変異誘発は、製造元の指示に従って行った。変異導入した可変領域および定常領域を、上記のようにpEE6.4へ移入した。
【0129】
[実施例6]ヒト化抗hFKN mAbの調製
ヒト化抗hFKN mAbの重鎖および軽鎖の発現ベクターをHEK293E細胞へトランスフェクトした。トランスフェクションの日に、HEK293E細胞を、10%ウシ胎仔血清を含むDMEM(Invitrogen)にまいた。5時間インキュベートした後、重鎖および軽鎖発現ベクターの混合を、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を製造元の指示に従って用いてトランスフェクトした。トランスフェクションの翌日、培地を293無血清培地(SFM)II(Invitrogen)と交換した。37℃にて5日間インキュベートした後、培養上清を回収した。BIACORE(登録商標)アッセイには、回収した培養上清を直接使用した。走化性アッセイには、上清を組み換えプロテインAセファロースカラム(Pharmacia)を用いて精製した。
【0130】
[実施例7]マウス−ヒトキメラ3A5−2mAbの調製
マウス3A5−2の重鎖の可変領域は、5’−EcoRI−SalI−3A5−2VHプライマー(GCGGAATTCGTCGACGCCACCATGCGATGGAGCTGGATC;配列番号107)および3’−IgG重複3A5−2VHプライマー(GACCGATGGGCCCTTGGTGGAGGCTGAGGAGACTGTGAGAGTGGTGCC;配列番号108)によって増幅した。ヒトIgG2定常領域は、5’−hIgG2プライマー(GCCTCCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCCCTGGCGCCCTG;配列番号109)および3’−NotI−hIgG2(CGCGCGGCCGCTCATTTACCCGGAGACAGGGAGAG;配列番号110
)によって増幅した。増幅した3A5−2VHおよびヒトIgG2定常領域をPCRによって組み合わせ、細胞選択のためのブラストサイジン耐性遺伝子を有するpCX−IRES−bsrへサブクローニングした。マウス3A5−2の軽鎖の可変領域は、5’−3A_VL−SalI−kozac_Fプライマー(GCGGTCGACGCCACCATGAGTGTGCTCACTCAG;配列番号111)および3’−3A−IgG1,2_VH−Rプライマー(GACAGATGGTGCAGCCACAGTTCGTTTTATTTCCAGCTTGGTCCCCCCT;配列番号112)によって増幅した。ヒトIgκ定常領域は、5’−hIGK_Fプライマー(CGAACTGTGGCTGCACCATCTGTC;配列番号113)および3’−hIGK NotI−R(CGCGCGGCCGCCTAACACTCTCCCCTGTTGAAGCTCTT;配列番号114)によって増幅した。増幅した3A5−2VHおよびヒトIgG2定常領域をPCRによって組み合わせ、細胞選択のためのピューロマイシン耐性遺伝子を有する、pMX−IRES−puroへサブクローニングした。
【0131】
レトロウイルスパッケージングのために、キメラ軽鎖の発現ベクターをpE-EcoおよびpGp(タカラバイオ)と共にHEK293E細胞へトランスフェクトした。HEK293E細胞は、トランスフェクションの前日に、10%FBSを加えたDMEM(Invitrogen)中にまいた。トランスフェクションの日に、ベクターをTranIT LT1(タカラバイオ)によってトランスフェクトした。3日間インキュベートした後、レトロウイルスを含む培養上清を回収して、B300.19細胞へ加えた。8時間インキュベートした後、培養上清を除いて10%FBSを含むRPMI1640(Invitrogen)を加えた。2日間培養した後、感染細胞を選択するためピューロマイシンを加えた。選択した細胞は、次に、軽鎖について記載したものと似た方法によって作製したキメラ重鎖を有する、別の組み換えレトロウイルスに感染させた。ブラストサイジンを用いて選択後、二重選択された細胞を、Integra CELLine(Integra Bioscience)内で、8mM Glutamax、55μΜ 2−メルカプトエタノール、1xコレステロール(Invitrogen)を含むSF-O培地(三光純薬)によって培養した。培養上清を、走化性アッセイおよびBIACORE(登録商標)アッセイのために、組み換えプロテインAセファロースカラム(Pharmacia)を用いて精製した。
【0132】
[実施例8]ヒト化hFKN mAbの分析
中和活性を測定するための走化性アッセイならびにhFKNおよびカニクイザルFKNに対する結合親和性を測定するためのBIACORE(登録商標)アッセイを用いて、ヒト化抗hFKN mAbを分析した。3回の独立した走化性アッセイの代表的なデータおよび結果を図5にまとめ、かつ図6A〜B、7A〜D、および8A〜Fに示す。重鎖であるH3およびH3−2と、軽鎖であるL2およびL4との組み合わせは全て、これらのmAbがキメラmAbと類似の中和活性を示したことから、ヒト化に成功した。しかしながら、絞りこまれた重要残基を用いて作製したHK2は、L2またはL4との組み合わせにおいて、中和活性の低下を示した。BIACORE(登録商標)アッセイの結果を、図9および10A〜Cにまとめる。重鎖であるH3およびH3−2と、軽鎖であるL2およびL4との組み合わせは全て、キメラmAbに比較して類似のレベルの親和性を示した。一方で、HK2L4は他よりも低い親和性を示した。これらの結果により、3A5−2は、特に重鎖の場合に、通常の重要残基の同定を用いる一般的な方法によってはヒト化に成功しなかったことが示唆される。
【0133】
走化性アッセイは以下のように行った。細胞をトランスウェル培養プレート(MultiScreen-MIC Plate、5.0μm、Millipore、カタログ番号MAMIC 5S10)の上部のウェルに入れ、下部のウェルにリガンドを入れた。最初に、組み換えヒトFKN(R&D Systems、カタログ番号362−CX/CF)(最終濃度10ng/ml)を、様々な濃度の(0から10μg/ml)精製抗体と共に下部のウェルに加えた。組成物は、以下の成分を含んだ:3xケモカイン溶液、50μl/ウェル;1.5x精製mAb、100μl/ウェル;ケモカインおよび精製抗体は、1x走化性緩衝液(上記)により希釈した。CX3CR1をトランスフェクトしたB300.19細胞(2x10細胞/75μl)を
、様々な濃度の(0から10μg/ml)精製抗体と共に上部のウェルに加えた。組成物は、以下の成分を含んだ:3x細胞懸濁液、25μl/ウェル;1.5x精製mAb溶液、50μl/ウェル;細胞および精製抗体は1x走化性緩衝液により希釈した。走化性アッセイは、5%−COインキュベーター内で37℃にて4時間行った。インキュベーション後、下部ウェルの150μlを回収し、50μlの4%PFA/PBSによって固定した後、30μlのサンプルから、FACSCantoIIセルアナライザーによって遊走細胞をカウントした。
【0134】
BIACORE(登録商標)アッセイは上記のように行った。しかしながらヒト化およびキメラmAbに対しては、センサーチップ上の捕捉抗体として抗ヒトIgGマウスmAb(GE
Healthcare)を用いた。
【0135】
[実施例9]FKNケモカインドメイン由来の合成ペプチドを用いたエピトープマッピング
FKNケモカインドメイン由来の、互いに一部分を重複させた合成ペプチドライブラリーを用いて、エピトープマッピングを行った。Sigma Genosysにより、21種類の15残基ペプチドを合成した。ペプチドをDMSOで10mg/mlに溶解した。これらのペプチド(50μg/ml)を、ELISAプレート(Nunc)に4℃にて一晩コートした。ペプチド溶液を除去し、各ウェルに1%ブロックエース(大日本製薬)を含むPBS溶液を加えて1時間室温でインキュベートした後、0.05% Tween20を含むTris緩衝食塩水(pH7.4)(洗浄液)により洗浄した。ウェルにH3−2L4抗体溶液(50μg/ml)を加え、室温で2時間インキュベートした。抗体溶液を除き、洗浄液で洗浄した。ウェルにペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体溶液(Zymed;400ng/ml)を加え、室温で1時間インキュベートした。抗体溶液を除き、洗浄液で洗浄した。各ウェルにTMBZ溶液(Sigma)を加え、室温で10分インキュベートした。反応を1N HS0溶液によって停止させ、450〜650nmにおける吸光度を測定した。結果を図11に示す。H3−2L4抗体は、ヒトFKNのN末端および中央領域由来のペプチドと反応した。
【0136】
[実施例10]アラニンまたはセリン置換変異体の調製
hFKN−SEAPのアラニンまたはセリン置換変異体を、以下のように調製した。hFKNの細胞外領域をコードするcDNAを、hFKN−SEAPの発現ベクターであるpcDNA3.1(+)hFKN−SEAPからSalI/NotI制限酵素を用いて単離し、SEAP cDNAを含むpENTR1A_dSEAP−(His)10ベクターへサブクローニングした(pENTR1AはInvitrogenから購入した)。アラニンまたはセリン置換変異は、GeneTailor(商標)Site-Directed Mutagenesis System(Invitrogen)を、製造元の指示に従って用いて導入した。変異導入したhFKN−SEAPのcDNA断片を、Gatewayシステム(Invitrogen)を用いてpcDNA3.1(+)_カセットBベクター(カセットBはInvitrogenから購入した)へ移入した。hFKN−SEAPのアラニンまたはセリン置換変異体の発現ベクターを、HEK293EBNA(HEK293E)細胞(Invitrogen)へトランスフェクトした。HEK293E細胞は、トランスフェクションの前日に、10%ウシ胎仔血清を含むDMEM(Invitrogen)中にまいた。TransIT LT1(タカラバイオ)を製造元の指示に従って用いて、発現ベクターをトランスフェクトした。3日間のインキュベーション(5%CO、37℃)後、培養上清を回収した。SEAPタンパク質の濃度を、Great EscAPe SEAP Chemiluminescence Kit 2.0(Clontech)を用いて測定した。
【0137】
[実施例11]hFKNのエピトープマッピングのためのELISA
抗hFKNポリクローナル抗体(eBioscience)およびH3−2L4をそれぞれ、ELISAプレート(Nunc)のウェルに一晩4℃にてコートした。それぞれについて抗体溶液
を除去し、各ウェルに1%ウシ血清アルブミンを含むPBSを加えて1時間室温でインキュベートした後、0.05% Tween20を含むTris緩衝食塩水(pH7.4)(洗浄液)により洗浄した。アラニンまたはセリン置換変異体を1% BSAを含むPBSで0.13nMに希釈し、その50μlをELISAプレートに加えて4時間室温にてインキュベートした。変異体を含む溶液を除き、洗浄液で洗浄した。各ウェルにp−ニトロフェニルリン酸溶液(Thermo Scientific)を加え、室温で30分インキュベートした。反応を1N NaOH溶液によって停止させ、405nmにおける吸光度を測定した。結果を図12に示す。R68A変異体は、H3−2L4との反応性を特異的に失った。H3−2L4との反応性を失ったその他の変異体は、ポリクローナル抗体との反応性もまた失った。これらの結果により、R68はH3−2L4に対する決定的なエピトープであることが示される。
【0138】
[実施例12]BIACORE(登録商標)を用いたhFKNのエピトープマッピング
抗ヒスチジンタグ抗体(Bethyl)を、CM5センサーチップ(GE Healthcare)上に固定化した。アラニンまたはセリン置換変異体を含む溶液をHBS-EP緩衝液(GE Healthcare)で10倍に希釈してチップ上に載せ、HBS-EPで洗浄した後に抗原結合レベルを測定した。H3−2L4および抗FKNポリクローナル抗体溶液を抗原結合チップに載せ、HBS-EPで洗浄した後に抗体結合レベルを測定した。[抗体結合レベル/抗原結合レベル]を算出し、各変異体について算出した値を野生型の値と比較した。結果を図13に示す。
【0139】
[実施例13]その他の抗体のR68A変異体との反応性
マウス抗ヒトFKNモノクローナル抗体(1F3、1G1、2B2、3D5、6D1、7F6)およびH3−2L4抗体を、ELISAプレート(Nunc)に一晩4℃にてコートした。抗体溶液を除去した。各ウェルに1%BSAを含むPBS溶液を加えて1時間室温でインキュベートした後、ウェルを0.05% Tween20を含むTris緩衝食塩水(pH7.4)によって洗浄した。ウェルに野生型およびR68A変異型のFKN−SEAP−His溶液(1、0.5、0.25、0.125nM)を加え、2時間室温でインキュベートした。抗原溶液を除去し、洗浄液で洗浄した。各ウェルにp−ニトロフェニルリン酸溶液(Thermo Scientific)を加え、室温で30分インキュベートした。反応を1N NaOH溶液によって停止させ、405nmにおける吸光度を測定した。
【0140】
これらの抗体の中和活性を、上記のような走化性アッセイに基づいて試験した。10nMのヒトFKN、および様々な濃度のこれらの抗体を、トランスウェルプレートの下部のウェルに加えた。プレートの上部のウェルに、CX3CR1を発現する細胞を加えた。37℃で4時間インキュベートした後、下部ウェルの培地を回収し、4%ホルムアルデヒド溶液を用いて細胞を固定した。FACSアナライザーを用いて細胞数を計数した。中和活性と、R68A変異体との反応性の関連について表1に示す。CTX活性を強力に中和する抗体は、そのR68A変異体との反応性を失っていた。この結果から、ヒトFKNのR68は、FKNの機能を効果的に中和できる抗体の重要な認識部位であることが示される。
【0141】
【表1】

【0142】
[実施例14]NMRによるhFKNのエピトープマッピング
H3−2L4抗体からのFabの精製
100mgの精製したH3−2L4抗体の溶液(20mg/mlのPBS溶液)を、2mM EDTAを含む0.1M リン酸緩衝液(pH7.0)に対して透析した。透析緩衝液で抗体濃度を15mg/mlに調整し、30mMのシステインを加えた。抗体溶液に0.2mgのパパイン(Sigma)を加え、37℃にて14時間インキュベートした。溶液にヨードアセトアミドを加えて酵素反応を停止させた。パパイン消化した抗体溶液を、PBS溶液に対して一晩室温で透析した。溶液をProSep vA(Millipore)カラムに通し、フロースルー画分を回収した。フロースルー画分を、抗ヒトIgG Fc抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を固定化したカラムに通し、フロースルーを回収した。フロースルー画分を濃縮し、Superose 12 10/300 GL(GE Healthcare)に通して、Fab断片を含む画分を回収した。これらの画分の純度をSDS PAGEで分析し、Fabが濃縮された画分を集めた。
【0143】
フラクタルカインにおけるFab結合部位の同定
フラクタルカインにおけるFabの結合部位を同定するため、安定同位体標識した(H、15NおよびH、13C、15N)フラクタルカインを調製し(Mizoue, L et al., Biochemistry, 38: 1402-1414 (1999))、15N−異核種単一量子コヒーレンス法(HSQC)に基づくNMR実験を実行した。20mM 酢酸緩衝液(pH5.0)および80%DO(交差飽和実験)または5%D0(その他の実験)中でNMRサンプルを調製した。全てのNMR実験は、低温プローブを備えた700MHz Bruker Avance分光計において、45℃の温度下で行った。
【0144】
非標識Fabの添加によってフラクタルカインのスペクトルが変化したことから、標識フラクタルカインとFabの間の相互作用が示唆される。Fabと複合体形成したフラクタルカインの、主鎖15NおよびΝの連鎖帰属は、3D HNCAスペクトルから完成させた。
【0145】
交差飽和実験は、タンパク質−タンパク質相互作用の結合接触面を決定するための、最も正確なNMR法の一つである(Takahashi, H et al., Nat. Struct. Mol. Biol., 7: 220-223 (2000))。実験の結果、Fabへの選択的照射によって幾つかの残基由来シグナ
ルの強度が減少した(図14)。これらの残基は、2つの別々の近接した領域に位置した。一領域はE66〜Q69からなり、もう一つの領域はW81〜Q87からなる。さらに、これらの残基の化学シフトがFabの添加によって大きく影響されたことにより、交差飽和実験のデータが支持される(図14)。これらの結果から、本発明者らは、これらの領域がFabの接触面に含まれると結論付けた。
【0146】
その他の実施形態
前述の説明から、本明細書に記載する発明を様々な使用法および条件において用いるため、これに変更および改変が為され得ることは明らかである。このような実施形態もまた、以下の請求項の範囲内である。
【0147】
本明細書で言及される全ての出版物は、それぞれの独立した出版物または特許出願が参照により取り込まれることを明確かつ個別に指示されたものとして同範囲まで参照により本明細書に取り込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗フラクタルカイン抗体またはそのFKN結合断片であって、
(a)配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR−H1;
(b)配列番号29のアミノ酸配列を含むCDR−H2;
(c)配列番号30のアミノ酸配列を含むCDR−H3;
(d)配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR−L1;
(e)配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR−L2;および
(f)配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR−L3
を含む、前記抗体またはその断片。
【請求項2】
抗体が完全な抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
抗体またはFKN結合断片がヒト化されている、請求項1または2に記載の抗体またはそのFKN結合断片。
【請求項4】
抗体が重鎖および軽鎖を含み、前記抗体またはFKN結合断片の重鎖可変領域が、配列番号36、配列番号37、配列番号39、配列番号42、または配列番号43のアミノ酸配列を含み、かつ前記抗体またはFKN結合断片の軽鎖可変領域が、配列番号38、配列番号44、または配列番号45のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体またはそのFKN結合断片。
【請求項5】
抗体またはFKN結合断片がキメラである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗体またはそのFKN結合断片。
【請求項6】
抗体が重鎖および軽鎖を含み、前記抗体の重鎖可変領域が配列番号26のアミノ酸配列を含み、かつ前記抗体の軽鎖可変領域が配列番号27のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の抗体またはそのFKN結合断片。
【請求項7】
ヒト定常領域を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体またはそのFKN結合断片。
【請求項8】
IgGアイソタイプの定常領域を含む、請求項7に記載の抗体またはそのFKN結合断片。
【請求項9】
IgG2アイソタイプの定常領域を含む、請求項8に記載の抗体またはそのFKN結合断片。
【請求項10】
前記抗体がADCCおよび/または補体活性化を減少させる変異Fc領域を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の抗体またはそのFKN結合断片。
【請求項11】
Fc領域がV234、G237、C131、またはC219の1以上において変異している、請求項10に記載の抗体またはそのFKN結合断片。
【請求項12】
FKN結合断片がFab、Fab’、F(ab’)2、およびFvからなる群より選択され、かつ該FKN結合断片がフラクタルカインに対する結合特異性を保持する、請求項1または3〜9のいずれか一項に記載の抗体またはそのFKN結合断片。
【請求項13】
抗体がフラクタルカインとCX3CR1との結合を阻害する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗体またはそのFKN結合断片。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の抗体またはそのFKN結合断片を含む医薬組成物。
【請求項15】
組成物が担体をさらに含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
組成物が追加の治療薬をさらに含む、請求項14または15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の抗体またはそのFKN結合断片をコードする核酸。
【請求項18】
前記核酸が、前記抗体またはそのFKN結合断片の重鎖の全部もしくは一部をコードする、請求項17に記載の核酸。
【請求項19】
前記核酸が、前記抗体またはそのFKN結合断片の軽鎖の全部もしくは一部をコードする、請求項17または18に記載の核酸。
【請求項20】
請求項17〜19のいずれか一項に記載の核酸を含むベクター。
【請求項21】
ベクターが発現ベクターである、請求項20に記載のベクター。
【請求項22】
請求項20または21に記載のベクターを1以上含む宿主細胞。
【請求項23】
前記宿主細胞が第1および第2のベクターを含み、前記第1のベクターが請求項1〜13のいずれか一項に記載の抗体またはそのFKN結合断片の重鎖をコードする核酸を含み、第2のベクターが請求項1〜13のいずれか一項に記載の抗体またはそのFKN結合断片の軽鎖をコードする核酸を含む、請求項22に記載の宿主細胞。
【請求項24】
前記宿主細胞における前記重鎖および軽鎖の発現によって、請求項1〜13のいずれか一項に記載の抗体またはそのFKN結合断片が産生される、請求項23に記載の宿主細胞。
【請求項25】
宿主細胞が原核生物である、請求項22〜24のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項26】
宿主細胞が真核生物である、請求項22〜24のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【請求項27】
宿主細胞が哺乳類である、請求項26に記載の宿主細胞。
【請求項28】
細胞がCHO細胞またはNS0細胞である、請求項27に記載の宿主細胞。
【請求項29】
抗フラクタルカイン抗体またはそのFKN結合断片を作製するための方法であって、(a)請求項20または21に記載のベクターを適切な宿主細胞内で発現させること、および(b)抗体またはそのFKN結合断片を回収することを含む、前記方法。
【請求項30】
前記抗体またはそのFKN結合断片が前記宿主細胞によって培養液中に分泌される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体またはそのFKN結合断片が、前記抗体を含む培養液に対して少なくとも95%またはそれ以上の純度まで精製される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
炎症性疾患を処置する方法であって、請求項1〜13のいずれか一項に記載の抗体またはそのFKN結合断片の有効量を、このような処置の必要性に応じて被験者に投与することを含み、これによって炎症性疾患が処置される方法。
【請求項33】
前記炎症性疾患が、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、自己免疫性肝炎、多発性硬化症、または神経因性疼痛である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
抗体またはその断片が、配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、抗フラクタルカイン抗体またはそのFKN結合断片。
【請求項35】
炎症性疾患を処置するために用いられる、請求項1〜13または34のいずれか一項に記載の抗体またはそのFKN結合断片。
【請求項36】
炎症性疾患が、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、自己免疫性肝炎、多発性硬化症、または神経因性疼痛である、請求項35に記載の抗体またはそのFKN結合断片。
【請求項37】
炎症性疾患を処置するために用いる薬剤の調製における、請求項1〜13または34のいずれか一項に記載の抗体またはそのFKN結合断片の使用。
【請求項38】
炎症性疾患が、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節リウマチ、自己免疫性肝炎、多発性硬化症、または神経因性疼痛である、請求項37に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−509158(P2013−509158A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520621(P2012−520621)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際出願番号】PCT/JP2010/069653
【国際公開番号】WO2011/052799
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】