説明

炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患における可溶性CD164の使用

本発明は、特に炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患を処置するための、ヒトCD164の細胞外ドメインを含む可溶性タンパク質の新規の治療上の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症及び自己免疫疾患の分野、具体的には、炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患を予防及び/又は処置するのに有用な新規のタンパク質の発見に関する。
【背景技術】
【0002】
下記論議は、本発明の理解を容易にするように意図されるものであるが、しかし従来技術が本発明となるように意図又は容認されるものではない。
【0003】
CD164は、糖タンパク質であるムチン様受容体又はシアロムチンのスーパーファミリーのメンバーである。シアロムチンは、cDNAレベル及びアミノ酸レベルで限られた類似性を示す50-3000kDの膜貫通型糖タンパク質である。ムチン様発現型タンパク質は、セリン残基及びトレオニン残基にリンクされた多数のO-グリコシル化を担持するという共通の特徴を有しており、このことは、細胞間又は細胞-細胞外マトリックスの多種の相互作用を暗示する。Oリンク型側鎖の高密度アレイは、細胞を取り囲む多糖グリコカリックスを超えて突出するのに十分に、ムチン様分子を伸ばす拡張構造によって特徴付けられ、そしてまた、最適な暴露及び極めて多数の末端糖によっても特徴付けられる。構造的構成並びに負電荷によって、細胞がムチンのための特異的受容体を持たない限り(接着)、ムチン様糖タンパク質は反発バリアとして作用しうる。ムチン受容体の機能は、細胞型、及びコアムチン・ペプチドと相関され、また、グリコシル・トランスフェラーゼの細胞特異的発現とも相関される活性化状態に依存する。これらのコアムチン・ペプチド及びグリコシル・トランスフェラーゼの細胞特異的発現は、Oリンク型オリゴ糖側鎖の構造及び提示、膜固定、シグナル伝達能力、及び/又はムチンの正しい細胞ドメインへの輸送を調節する。
【0004】
ヒトCD164は、マウスMGC-24v(M. musculus)及びラット・エンドリン(R.norvegicus)のオーソログであり、哺乳動物細胞のリソソーム及びエンドソーム区画内に見いだされる膜タンパク質である。種々異なるイソ型間の関係は、CD164/エンドリンの機能上重要なドメイン及び細胞内分布とともに記載されている(Chan YH他、J Biol. Chem, 276:2139-2152, 2001)。
【0005】
その自然の状態において、ヒトCD164は、2つの80-85kDaサブユニットのジスルフィド・リンク型ホモダイマーである。CD164は高グリコシル化され、O-及びN-リンク型グリカンの両方を含有する。細胞外領域は、ジスルフィド内(inter-disulphide)架橋を含有する非ムチン・ドメインによってリンクされた2つのムチン・ドメイン(I及びII)、並びに、成長因子及びサイトカイン受容体において既に判明しているコンセンサス・パターンに似たシステインに富むモチーフから成っている。CD164はまた、エンドソーム及びリソソームに対してタンパク質をターゲットすることができるC末端モチーフ(すなわちYHTL)を含む、シングル・パス膜貫通型ドメインと13アミノ酸細胞内領域とを含有している。
【0006】
ヒト染色体6q21上に位置する単一ゲノム転写ユニットから、6つの真正エクソンを選択的スプライシングすることにより、4つのヒトCD164 mRNA種が生じることが記載されている(Zannettino A, J Biol Regul Homeost Agent, 15: 394-396, 2001; Watt及びChan, Leuk Lymph, 37(: 1-25. 2000)。おそらく、4つの選択的プロモーターと、非オーバーラップ性の選択的な最後の2つのエクソンと、常にスプライシングされるわけではない1つの内部イントロンとがある。主要なCD164(E1-6)イソ型は、178アミノ酸のI型膜貫通型糖タンパク質を表す。既述の他のイソ型は、178アミノ酸を含有するシアロムチンCD164又はCD164イソ型デルタ5;184残基のCD164イソ型デルタ4;膜貫通固定モチーフを欠き189残基を有する、MGC-24(24kDのマルチ-グリコシル化型コアタンパク質に対応)と呼ばれる、200kDの主に可溶性のイソ型である。全てのイソ型はO-及びN-リンク型グリコシル化部位を有する高グリコシル化型タンパク質である(図1)。
【0007】
CD164の機能は、造血先駆細胞の接着の媒介又は調整、並びに、成長及び/又は分化の負の調整を含む。CD164は通常、CD34+及びCD34lo/-造血幹細胞、並びに付随するミクロ環境細胞によって発現される(Watt他、Blood, 92: 849-866, 1998)。CD164はまた、関連する脊髄コロニー形成細胞及び赤血球コロニー形成細胞によって、脊髄間質細胞及び内皮細胞上、リンパ球上に弱く、そして間葉幹細胞上に発現される。CD164は、ヒトCD34+細胞が脊髄間質細胞に接着するのを容易にすることにより、そして、CD34+及びCD38lo/-造血先駆細胞の増殖を抑制することにより、造血において重要な役割を果たすことができ、有力なシグナル伝達分子として作用する(Zannettino他、Blood, 92:2613-2628, 1998)。
【0008】
これらの効果は、モノクローナル抗体(mAbs) 105A5及び103B2/9E10によって認識されるCD164クラスI及び/又はエピトープを伴う。エピトープは炭水化物依存性であり、N末端ムチン・ドメインI上に配置される(Watt他、Blood, 95, 3113-3124, 2000; Doyonnas他、J. Immunol, 165: 840-851, 2000)。造血細胞と、近接したミクロ環境内の間質/内皮細胞との相互作用は、造血幹細胞の自己再生、静止、関与及び移動を調整する上で極めて重要であると考えられる。これらの相互作用は、接着受容体と、これらの同起源リガンドと、サイトカインとの間の協働を伴う。Ig、インテグリン、カドヘリン、及びムチン様タンパク質群を含む細胞接着分子(CAMS)の範囲が、これらのプロセスに関与する。
【0009】
in vitroのCD164は、筋原性分化における役割を示した(Lee他、Mol Cell Biol, 21:7696-7706, 2001)。筋芽細胞系におけるCD164の過剰発現は、分化の生化学マーカーの発現を加速し、多核筋管の形成を促進したのに対して、アンチセンスCD164又はC164の可溶性細胞外領域は、筋形成を阻害した。
【0010】
可溶性MGC-24のピーナッツ凝集素(PNA)は、多くの癌腫内で発現される腫瘍関連炭水化物マーカーを示す。総MGC-24 mRNAは、ヒト結腸直腸癌腫において、正常な隣接する粘膜組織と比較して低いレベルで見いだされた(Matsui他、J Biochem, 127: 1103-1107, 2000)。癌腫によるリンパ管侵襲が、結腸癌腫における低レベルのMGC-24 mRNAと相関しているのに対して、高レベルのMGC-24 mRNAが相関する静脈浸潤及び遠隔転移はより少なかった。CD164に対して特異的なモノクローナル抗体が癌の診断又は処置、及び造血阻害に有用であることを証明することができた(欧州特許第889054号明細書、同第761814号明細書)。
【0011】
その他のCD164様タンパク質が開示されているが(NOV25、国際公開第02/098917号パンフレット;配列番号7852、欧州特許第1033401号明細書;図1)、これらの生物学的特性は分析されていない。
【0012】
発明の概要
驚くべきことに、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態を含む可溶性タンパク質が、通常コンカナバリンAのような物質で刺激されるとサイトカインを生成する細胞内のサイトカイン(つまりインターフェロン-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-10及びTNF-α)の発現に対する阻害効果を有することが見いだされた。さらに、CD164のこの可溶性フラグメントは、炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患に該当する動物モデルにおける関連生理学的応答(例えばリンパ球又はマクロファージの移動)を阻害する。
【0013】
従って、炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患の処置用及び/又は予防用の薬剤を製造するために、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質を使用することができる。これらの可溶性タンパク質のいずれかを含む医薬組成物は、炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防に適しており、そして一般には、サイトカインの発現を阻害するために個体に投与することができる。
【0014】
本発明の他の特徴及び利点は下記詳細な説明から明らかになるであろう。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明によれば、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)が、コンカナバリンA(ConA)のような物質でこれらの細胞を刺激するのに続いて生じる、これらの細胞における種々のサイトカイン(つまりインターフェロン-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-10及びTNF-α)の発現に対して阻害効果を有することが見いだされた。このタンパク質配列の治療上の有用性が、疾患用の動物モデルにおいてさらに確認され、この可溶性タンパク質は、有益なin vivoの生物学的特性、例えばリンパ球移動の低減又はMBP(ミエリン塩基性タンパク質)特異的T細胞増殖の阻害を示した。
【0016】
ヒトCD164の細胞外ドメインは可溶性タンパク質として分子の残りから単離されると、サイトカインの発現、あるいは自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患に関連する任意のその他の現象に対して何らかの効果を有するという指摘は、従来技術にはない。
【0017】
本発明の主な目的は、炎症性疾患及び/又は自己免疫障害の処置及び/又は予防のための薬剤を製造するためのヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質の使用にある。
【0018】
本発明に基づいて使用することができる可溶性タンパク質の中で、最も好ましい可溶性タンパク質は、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)、又はヒトCD164のシグナル配列と融合しているこの配列番号1の配列である。
【0019】
本発明に基づいて使用することができる他の好ましい可溶性タンパク質は、配列番号1の活性突然変異タンパク質又はイソ型の形態の配列番号1の変異体である。
【0020】
ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有するヒトCD164のイソ型は文献公知である(Chan YH他、J Biol Chem, 276: 2139-2152, 2001;図1)。MGC-24(配列番号6)と呼ばれるこれらのイソ型のうちの1つは、機能性膜貫通型ドメインを欠いているため可溶性であることが知られている一方、CD164−デルタ4(配列番号4)及びCD164−デルタ5(配列番号5)と呼ばれる他の2つは膜貫通型ドメインをまだ保存している。従ってこれらの後者の膜結合型イソ型の細胞外ドメインの成熟形態は、本発明に従い有用であると考えることができる。
【0021】
「可溶性タンパク質」としては、本発明は、細胞膜内へ組み込ませる配列、例えばヒト完全長CD164内の膜貫通ドメインを含有しないタンパク質配列を意図する。従って、これらの可溶性タンパク質は、細胞によって発現されると、細胞内に局在化されるか、又は好ましくはシグナル配列に融合される場合には細胞外空間内に分泌されることが予期される。
【0022】
ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質は文献公知であるが(Lee YN他、Mol Cell Biol, 21:7696-7706, 2001)、炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患を治療及び/又は予防するための何らかの有用性は指摘されていない。
【0023】
炎症性疾患及び/又は自己免疫障害を処置及び/又は予防するのに有用なものとして、本発明において定義された可溶性タンパク質配列は、同様の特性を有するか又は有すると思われるいかなるその他のヒト配列とも明確に区別される。
【0024】
国際公開第02/098917号パンフレットには、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と80%の相同性を有する配列を含むタンパク質NOV25(配列番号8:図1B)が開示されており、またこれが自己免疫疾患を含む種々の疾患において有用であり得ると示唆されている。しかし、この使用は推論的にすぎず、さらにこの文献は、細胞膜上に局在化していると予測される、このタンパク質の潜在的な細胞外ドメインから単離することができる可溶性フラグメントの治療上の有用性を認識していない。
【0025】
欧州特許第1033401号明細書に開示されたタンパク質(配列番号7582)は、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態と同一の配列(配列番号7;図1B)を含む。任意の種類の疾患の医療においてこのタンパク質を治療上使用することが示唆されてはいるものの、この文献もまた、このタンパク質の潜在的な細胞外ドメインから単離することができる可溶性フラグメントの治療上の有用性を認識していない。
【0026】
本発明は、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)の配列と比較した場合に、この配列と85%以上の相同性を有する、前記成熟形態の任意の変異体であって、実施例で提示するアッセイのいずれかにより、配列番号1と比較して活性が同程度であるか又は場合によっては増大しており、しかも特許請求の範囲に記載の使用及び方法のいずれかに関して許容されるようになっている変異体を「活性」であると定義する。
【0027】
「同等の」活性とは、可溶性タンパク質の変異体に関して記載されたアッセイのいずれかにおいて測定された活性が、配列番号1によって定義された可溶性タンパク質を使用して測定された活性と少なくとも同じ規模であり、また好ましくは、前記活性の75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%であり、そして前記活性の101%以下、102%以下、103%以下、104%以下、105%以下、110%以下、115%以下、120%以下又は125%以下であることを意味する。
【0028】
「増大した」活性とは、可溶性タンパク質の変異体に関して記載されたアッセイのいずれかにおいて測定された活性が、配列番号1によって定義された可溶性タンパク質を使用して測定された活性の少なくとも125%、130%、135%、140%、145%、150%、155%、160%、170%、180%、190%、200%、225%、250%、275%、300%、325%、350%、375%、400%、450%又は500%である。
【0029】
本明細書中に使用した用語「突然変異タンパク質」は、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する任意の配列であって、配列番号1における1又は複数のアミノ酸残基の挿入、欠失及び/又は置換により生成することができる配列を意味する。類似の活性突然変異タンパク質は、オーソロガス・タンパク質(CD164の共通の祖先から進化した、ヒト以外の遺伝子によってコードされる)に対応するもの、又はヒト・ゲノムにおける多形に由来するもののように、天然型であってよってよい。ヌクレオチド置換の結果1又は複数のアミノ酸変化が生じる場合、好ましい可溶性タンパク質は、1又は複数の抗炎症及び/又は抗自己免疫に関連する活性を保持するタンパク質を含む。
【0030】
或いは、これらの配列は、合成型又は人工的である。合成型配列又は人工的配列は、周知の化学合成、組換えDNA技術、部位特定型突然変異誘発、又はこれに適したその他の任意の技術によって調製することができる。これらの配列は、実質的に対応する突然変異型又は短縮型ペプチド又はポリペプチドから成る有限集合を提供する。ペプチド又はポリペプチドは、従来技術及び本発明の実施例において提供された教示内容を用いて当業者によって日常的に獲得して試験することができる。
【0031】
これらの活性突然変異タンパク質の好ましい変化が、「保存的」又は「安全」置換として一般に知られている。保存的アミノ酸置換は、十分に類似した化学特性を有することにより、分子の構造及び生物学的機能を保存するアミノ酸との置換である。特にアミノ酸の挿入又は欠失が数個のアミノ酸、例えば10個未満及び好ましくは3つ未満のアミノ酸を伴うのにすぎず、そしてタンパク質又はペプチドの機能的コンフォメーションにとって重要なアミノ酸を除去又は置換するのではない場合に、配列の機能を変化させることなしに、挿入及び欠失を上記配列において行うこともできることは明らかである。
【0032】
天然型タンパク質の配列及び/又は構造に関する統計学的及び物理化学的な研究に基づいて保存的アミノ酸置換を選択することができる多くのモデルが、文献によって提供されている(Rogov SI及びNekrasov AN, Protein Eng, 14: 459-463, 2001)。アミノ酸の特異的な部分集合を使用すると、折り畳み可能な活性タンパク質を生成することができ、タンパク質構造内により容易に収容することができるアミノ酸「同義」置換の分類を助けることが、タンパク質デザイン試験で判った(Murphy LR他、Protein Eng, 13:149-52, 2000)。同義アミノ酸基及びより好ましい同義基は、表Iにおいて定義される基である。
【0033】
或いは、機能にとって必須の本発明の可溶性タンパク質中のアミノ酸は、当業者に知られた方法、例えば部位特定型突然変異誘発又はアラニン走査突然変異誘発によって同定することもできる(例えばCunningham他、Science, 244:1081-5, 1989)。特に興味深いのは、荷電型アミノ酸を、強く望まれる改善された特徴を有するタンパク質、例えば凝集が減少されたタンパク質を生成することができる他の荷電型アミノ酸又は中性アミノ酸と置換することである。凝集は活性を低減するだけではなく、医薬製剤又は生理学的に許容される製剤を調製するときに問題をはらむおそれもある。なぜならば、凝集体は免疫原性であり得るからである(Cleland他、Crit Rev Ther Drug Carrier Syst, 10: 307-77, 1993)。
【0034】
本発明の使用のために可溶性タンパク質の突然変異タンパク質を得るのに使用することができるタンパク質におけるアミノ酸置換生成の他の例は、米国特許第4,959,314号、同第4,588,585号、4,737,462号、同第5,116,943号、同第4,965,195号、同第4,879,111号、同第5,017,691号、及び同第4,904,584号の各明細書に提供されているような、任意の周知の方法ステップを含む。
【0035】
或いは、活性突然変異タンパク質は、哺乳動物に投与されたときに前記可溶性タンパク質の免疫原性を低減する配列変化から生じることもできる。文献はこれらの配列変化に関する多くの例を提供している。これらの配列変化はこの範囲でデザインして導入するか、又は特に治療タンパク質がヒト以外、哺乳動物以外又は天然型タンパク質以外であるときには、治療タンパク質の安全且つ効果的な投与を可能にするその他の機能的最適化のために、デザインして導入することができる(Vasserot AP他、Drug Disc Today, 8: 118-126, 2003; Marshall SA他、Drug Disc Today, 8:212-221, 2003; Schellekens H, Nat Rev Drug Disc, 1: 457-462, 2002, Gendel SM, Ann NY Acad SCI, 964; 87-98, 2002; Graddis TJ他、Curr Pharm Biotechnol, 3: 285-97, 2002;国際公開第03/104263号;同第03/006047号;第02/98454号;同第02/96454号;同第02/79415号;同第02/79232号;同第02/66514号;同第01/40281号;同第98/52976号;同第96/40792号;同第94/11028号の各パンフレット)。
【0036】
特にアミノ酸の挿入又は欠失が数個のアミノ酸、例えば30個未満及び好ましくは10個未満のアミノ酸を伴うのにすぎず、そして機能的コンフォメーションにとって重要なアミノ酸、例えばシステイン又はプロリンを除去又は置換するのではない場合に、配列の機能を変化させることなしに、挿入及び欠失を上記配列において行うこともできることは明らかである。これらの変化は、アミノ末端又はカルボキシ末端で発生するか、或いは配列内の残基の間に個別に散在しているか又は配列内部の1又は複数の連続的な基内に散在している、これらの末端位置間のいずれかの場所で発生することができる。
【0037】
実際問題として、任意の特定のポリペプチドがヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と相同のパーセンテージであるかどうかを、周知のコンピュータ・プログラムを従来通りに用いて見極めることができる。このようなアルゴリズム及びプログラムの一例としては、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTA及びCLUSTALW(Pearson及びLipman、(1988)Proc Natl Acad Sci USA 85(8):2444-8; Altschul他(1990)、J Mol Biol 215(3):403-410;Thompson他(1994)、Nucleic Acids Res 22(2):4673-4680; Higgins他(1996) Meth Enzymol 266:383-402; Altschul他(1997) Nuc Acids Res 25:3389-3402; Altschul他(1993) Nature Genetics 3:266-272)が挙げられる。特に好ましい実施態様の場合、タンパク質及び核酸の配列相同性は、ベーシック・ローカル・アラインメント・サーチ・ツール(「BLAST」)を用いて評価される。これは当業者によく知られている(例えばKarlin及びAltschul(1990) Proc Natl Acad Sci USA 87(6):2264-8;Altschul他、1990, 1993, 1997(全て前出)参照)。
【0038】
BLASTプログラムは、クエリー・アミノ酸又は核酸配列と、好ましくはタンパク質又は核酸配列データベースから得られる試験配列との間の、本明細書中で「高スコアリング・セグメントペア」と呼ばれる類似セグメントを同定することにより、相同配列を同定する。高スコアリング・セグメントペアは好ましくは、スコアリング・マトリックスによって同定(すなわちアラインメント)される。スコアリング・マトリックスの多くが当業者に知られている。好ましくは、使用されるスコアリング・マトリックスは、BLOSUM62マトリックスである(Gonnet他、(1992) Science 256(5062):1443-5; Henikoff及びHenikoff(1993) Proteins 17(1):49-61参照)。余り好ましくはないが、PAM又はPAM250マトリックスを使用することもできる(例えばSchwartz及びDayhoff編(1978) Matrices for Detecting Distance Relationships: Atlas of Protein Sequence and Structure, Washington: National Biomedical Research Foundation参照)。BLASTプログラムは、同定された全ての高スコアリング・セグメントペアの統計的有意性を評価し、そして好ましくはユーザー指定有意性閾値、例えばユーザー指定パーセント相同性を満たすセグメントを選択する。好ましくは、高スコアリング・セグメントペアの統計的有意性は、Karlinの統計的有意性の式を用いて評価される(例えばKarlin及びAltschul(1990) Proc Natl Acad Sci USA 87(6):2264-8参照)。BLASTプログラムは、デフォルト・パラメーター又はユーザーによって提供された改変パラメーターと共に使用することができる。好ましくはパラメーターはデフォルト・パラメーターである。
【0039】
グローバル配列アラインメントとも呼ばれる、クエリー配列(本発明の配列)と対象配列との間の最良の全体的マッチを見極める好ましい方法は、Brutlag他(1990) Comp. App. Biosci. 6:237-245のアルゴリズムに基づいてFASTDBコンピュータ・プログラムを使用して行うことができる。配列アラインメントにおいて、クエリー配列及び対象配列は両方ともアミノ酸配列である。前記グローバル配列アラインメントの結果はパーセント同一性で表される。FASTDBアミノ酸アラインメントにおいて使用される好ましいパラメーターは:マトリックス=PAM 0、k-タプル=2、ミスマッチ・ペナルティ=1、ジョイニング・ペナルティ=20、ランダム化グループ=25、長さ=0、カットオフ・スコア=1、ウィンドウ・サイズ=配列長、ギャップ・ペナルティ=5、ギャップ・サイズ・ペナルティ=0.05、ウィンドウ・サイズ=247又は対象アミノ酸配列長のいずれか短い方である。
【0040】
対象配列が、内部欠失ではなくN末端又はC末端の欠失により、クエリー配列よりも短い場合、パーセント同一性で表される結果はマニュアルで補正されなければならない。なぜならば、FASTDBプログラムは、グローバル・パーセント同一性を計算するときに対象配列のN末端及びC末端の切断を計上しないからである。クエリー配列に対して、N末端及びC末端で切断された対象配列の場合、パーセント同一性は、対応対象残基とマッチング/アラインメントされない、対象配列のN末端及びC末端であるクエリー配列の残基の数を、クエリー配列の総塩基のパーセントとして計算することにより、補正される。残基がマッチング/アラインメントされるかどうかは、FASTDB配列アラインメントの結果によって見極められる。次いでこのパーセンテージをパーセント同一性から差し引き、指定パラメーターを使用して上記FASTDBプログラムによって計算することにより、最終パーセント同一性スコアに達する。この最終パーセント同一性スコアは、本発明の目的に使用されるものである。クエリー配列とマッチング/アラインメントされない対象配列のN末端及びC末端寄りの残基だけ、すなわち対象配列の最も遠いN末端及びC末端の外側のクエリーアミノ酸残基だけが、パーセント同一性スコアをマニュアル調節する目的で考察される。
【0041】
例えば、90アミノ酸残基の対象配列を100残基のクエリー配列とアラインメントすることにより、パーセント同一性を見極める。欠失は対象配列のN末端で発生し、従ってFASTDBアラインメントは、N末端で第1残基とマッチング/アラインメントしない。10個の不対残基は配列の10%(マッチングされないN及びC末端における残基の数/クエリー配列内の総残基数)なので、FASTDBプログラムによって計算されたパーセント同一性スコアから10%を差し引く。残る90残基が完全にマッチングされるのならば、最終パーセント同一性は90%になるはずである。
【0042】
好ましい実施態様の場合、炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患の治療用及び/又は予防用の薬剤を製造するために、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質の翻訳後修飾形態を使用することができる。具体的には、これらのタンパク質は、アセチル化、アミド化、グリコシル化、リン酸化及び/又はミリストイル化することができる。
【0043】
ヒトCD164は、このような基で修飾されることが知られており、一連の特異的位置は、配列番号1で示されるように表すことができる:
a)潜在的N-グリコシル化部位が、残基3, 9, 18, 49, 54, 71, 81, 98及び123に配置され;
b)潜在的O-グリコシル化部位が、残基11, 12, 17, 20, 21, 25, 26, 31, 32, 89, 90, 92, 96, 99, 100, 104, 108, 110, 111, 112, 113, 115, 117, 118, 119, 121, 122, 125, 129, 130, 136に配置され;
c)潜在的cAMP及びcGMP依存性タンパク質キナーゼ・リン酸化部位が、残基134-137に配置され;
d)潜在的タンパク質キナーゼCリン酸化部位が、残基100-102及び112-114に配置され;
e)潜在的タンパク質キナーゼIIリン酸化部位が、残基73-76及び136-139に配置され;
f)sf-CD164における潜在的N-ミリストイル化部位は残基119に配置されている。
【0044】
このような修飾が、配列アラインメント(図1)によって同定されたような上記相同可溶性タンパク質の対応位置に存在することもできることは明らかである。
【0045】
別の好ましい実施態様の場合、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質は、可溶性融合タンパク質である。
【0046】
これらの可溶性タンパク質は、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、異種タンパク質配列のコード配列とフレーム単位でクローニングすることにより、得ることができる。
【0047】
「異種」という用語は、本明細書中に使用される場合には、ヒトCD164ポリペプチドとは別の任意のポリペプチドを意味するものとする。
【0048】
N末端又はC末端で可溶性融合タンパク質内に含むことができる異種配列の例は下記の通りである:膜結合型タンパク質の細胞外ドメイン、免疫グロブリン定常領域(Fc領域)、多量体化ドメイン、細胞外タンパク質のドメイン、シグナル配列、輸出配列、又はアフィニティ・クロマトグラフィによる精製を可能にする配列。
【0049】
異種配列の多くは、発現プラスミドにおいて商業的に入手可能である。それというのは、これらの配列は、これらと融合しているタンパク質の特異的生体活性を著しく損なうことなしに付加的な特性を提供するために、融合タンパク質内に一般に含まれるからである(Terpe K, Appl Microbiol Biotechnol, 60: 523-33, 20030)。このような付加的な特性の例は、より長く継続する体液中の半減期、細胞外局在化、又はいわゆる「ヒスチジンタグ」を形成する一連のヒスチジンによって(Gentz他、Proc Natl Acad Sci USA, 86: 821-4, 1989)、又はインフルエンザ血球凝集素に由来するエピトープである「HA」標識によって(Wilson他、Cell, 37: 767-78, 1994)可能にされるような、より容易な精製処置である。必要な場合には、異種配列は、タンパク質分解的切断によって、例えば、可溶性タンパク質と異種配列との間にタンパク質分解的切断部位を挿入し、そして精製済融合タンパク質を適切なプロテアーゼに暴露することによって、排除することができる。これらの特徴はタンパク質の製造及び医薬組成物の調製におけるタンパク質の使用を容易にするので、可溶性融合タンパク質にとって特に重要である。例えば、例(sf-CD164;配列番号2)において使用される可溶性タンパク質は、可溶性CD164のC末端で融合されたヘキサ-ヒスチジン・ペプチドによって精製された。可溶性融合タンパク質が免疫グロブリン領域を含む場合、融合は直接的に、又は1-3アミノ酸残基長もの短さ、又はより長い、例えば13アミノ酸残基長であることが可能な短いリンカー・ペプチドを介して形成することができる。前記リンカーは、例えば配列E-F-M(Glu-Phe-Met)のトリペプチド、又は本発明の物質の配列と免疫グロブリン配列との間に導入されたGlu-Phe-Gly-Ala-Gly-Leu-Val-Leu-Gly-Gly-Gln-Phe-Metを含む13-アミノ酸リンカー配列であってよい。結果として生じた融合タンパク質は、改善された特性、例えば体液中の延長された滞留時間(半減期)、増大した特異的活性、増大した発現レベルを有し、又は融合タンパク質の精製が容易になる。
【0050】
好ましい実施態様の場合、可溶性タンパク質は、Ig分子の定常領域に融合される。好ましくは、可溶性タンパク質は、例えばヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインのような重鎖領域に融合される。Ig分子の他のイソ型、例えばイソ型IgG2又はIgG4、又は例えばIgM又はIgAのようなその他のIgクラスも、本発明による融合タンパク質の生成に適している。融合タンパク質はモノマー又は多量体、ヘテロ多量体又はホモ多量体であってよい。
【0051】
別の好ましい実施態様の場合、官能性誘導体は、1又は複数の官能基に結合された1つ以上の部分を含む。これらの官能基はアミノ酸残基上に1又は複数の側鎖として発生する。好ましくは、この部分はポリエチレン(PEG)部分である。ペジル化(PEGylation)が周知の方法、例えば国際公開第99/55377号パンフレットによって行われてよい。
【0052】
ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質及び可溶性融合タンパク質は、タンパク質を自然の状態で発現させるヒト又は哺乳動物の体液、細胞、又は組織から抽出して分離することができる。具体的には、直接的に分離されるのか又は培養されるのかにかかわらず、細胞は、これらの可溶性タンパク質を発現させ(自然の状態で、又は誘発剤に対する暴露に続いて)、そしてこれらを分泌することができる。タンパク質の精製方法は当業者に知られており、そして粒子を分裂させるために洗剤又はカオトロピック剤を使用し、これに続いて、イオン交換、アフィニティ・クロマトグラフィ、密度に基づく沈降、及びゲル電気泳動によってポリペプチドを微分抽出及び分離することを含む。
【0053】
一般に、可溶性タンパク質及び可溶性融合タンパク質は、組換えDNA関連技術及び化学合成技術を含む当業者に知られた任意の処置により調製することができる。
【0054】
組換えDNA関連技術は、可溶性タンパク質及び可溶性融合タンパク質を、これらをコードするポリヌクレオチドを先ず生成することにより生成することを可能にする。これらの核酸は、PCRによってゲノムDNAから、又はより効率的には、ヒトCD164の完全配列(配列番号3)又はその他の任意の関連相同配列を含有するベクターから得ることができる。所望の配列に対して相補的なオリゴヌクレオチド・プライマーは、制限エンドヌクレアーゼ配列を含有する。制限エンドヌクレアーゼ配列は、更なるクローニングのための特異的制限エンドヌクレアーゼによる消化を可能にし、可溶性タンパク質をコードする配列が、ポリAシグナル及び発現プラスミド内のその他の配列の残りに対して適正に位置決めされることを確実に保証する。
【0055】
一般的な遺伝子工学技術を用いて、これらのポリヌクレオチドはウィルス又はプラスミド起源の複製可能な発現ベクター内でクローニングすることができ、これらのポリヌクレオチドを使用して、エピソーム・ベクター又は非相同/相同に組み入れられたベクター、並びに形質転換、感染、析出、又はトランスフェクションに基づく技術によって、原核又は真核宿主細胞を形質転換する。これらのベクターは、自己の転写開始/終止調節配列の制御下で、原核又は真核宿主細胞内の組換えタンパク質の発現を可能にするべきである。これらの調節配列は、前記細胞内で構成的に活性又は誘発性であるように選択される。このような細胞において実質的に富化された細胞系を単離することにより、当該タンパク質を発現させる安定的な細胞系を提供する。
【0056】
ベクター及び原核又は真核宿主細胞を使用して組換えタンパク質をいかにしてクローニングして生成するかに関する教示は、多くの書籍及び概説、例えばOxford University Pressによって発行されたシリーズ「A Practical Approach」におけるいくつかの表題(「DNA Cloning 2:Expression Systems」1995; 「DNA Cloning 4: Mammalian Systems」1996; 「Protein Expression」1999;「Protein Purification Techniques」2001)によって提供されている。
【0057】
典型的な発現ベクターは下記のもの:
a) ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質又は可溶性融合タンパク質をコードするDNA配列;及び
b) 発現カセット
を含むべきであり、
前記配列(a)は、配列(b)内に含まれた組織特異的プロモーター又は構成性プロモーターと作用上連携している。
【0058】
発現ベクターは、当業者に知られた哺乳動物、酵母、昆虫又は細菌発現系のいずれかである。商業的に入手可能なベクター及び発現システムは、Genetics Institute(Cambridge, MA)、Stratagene(La Jolla, California)、Promega(Madison, Wisconsin)、及びInvitrogen (San Diego, California)を含む種々の供給元から入手可能である。所望の場合には、発現を向上させ、そして適正なタンパク質の折り畳みを容易にするために、配列のコドン・コンテキスト及びコドン対合を、発現ベクターが導入される特定の発現生物に関して最適化することができる(米国特許第5,082,767号明細書;Gustafsson C他、Trends Biotechnol, 22: 346-53, 2004)。
【0059】
特定のプラスミド又はウィルス・ベクターを選択する上で重要なファクターは下記のものを含む:ベクターを含有しないレシピエント細胞から、ベクターを含有するレシピエント細胞を認識して選択する際の容易さ;特定の宿主内で所望されるベクターのコピー数;及び異なる種の宿主細胞間でベクターを「シャトル」することができることが望ましいか否か。本発明による組換えベクターの一例としては、YAC(酵母人工染色体)、BAC(細菌人工染色体)、ファージ、ファージミド、コスミド、プラスミド、又は染色体DNA、非染色体DNA、半合成DNA又は合成DNAから成っていてよい線状DNA分子が挙げられる。
【0060】
一般に、組換え発現ベクターは、複製起点、宿主細胞の形質転換を可能にする選択可能マーカー、及び下流構造配列の転写を導くための高発現遺伝子由来のプロモーターを含むことになる。異種構造配列は適切な相で翻訳の開始及び終止配列、及び好ましくは翻訳されたタンパク質の細胞膜周辺腔は細胞外媒質内への分泌を導くことができるリーダー配列と集成される。ベクターが、哺乳動物宿主細胞内の所望の配列をトランスフェクトして発現させるように適合されている特定の実施態様の場合、好ましいベクターは、所望の宿主内の複製起点、好適なプロモーター及びエンハンサー、及び所要のリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライシング・ドナー及びアクセプター部位、転写終止配列、及び5'-フランキング非転写配列を含むことになる。SV40ウィルス・ゲノム由来のDNA配列、例えばSV40起源、初期プロモーター、エンハンサー、スプライシング及びポリアデニル化部位を使用することにより、所要の非転写遺伝要素を提供することができる。
【0061】
本発明の発現ベクターにおいて使用される好適なプロモーター領域は、異種遺伝子が発現される細胞宿主を考慮して選択される。当該核酸配列の発現を制御するために採用された特定のプロモーターは、ターゲットされる細胞内の核酸の発現を導くことができる限り、重要であるとは考えられない。従って、ヒト細胞がターゲットされる場合、ヒト細胞内で発現されることが可能なプロモーターに隣接して、このプロモーターの制御下に核酸コード領域を位置決めすることが好ましい。このプロモーターは例えばヒト・プロモーター又はウィルス・プロモーターである。使用されるプロモーターは構成性又は誘発性であってよい。
【0062】
好適なプロモーターは、これが発現を制御する核酸に対して異種であってよく、或いは、発現されるべきコード配列を含有する天然型ポリヌクレオチドに対して内生的であってもよい。加えて、プロモーターは、構造プロモーター/コード配列が挿入されている組換えベクター配列に対して一般に異種である。
【0063】
例えばCAT(クロラムフェニコール・トランスフェラーゼ)ベクター及びより好ましくはpKK232-8及びpCM7ベクターを使用して、任意の所望の遺伝子から、プロモーター領域を選択することができる。好ましい細菌プロモーターはLacI、LacZ、T3又はT7バクテリオファージRNAポリメラーゼ・プロモーター、gpt、ラムダPR、PL及びtrpプロモーター(欧州特許第0036776号明細書)、ポリヘドリン・プロモーター、又はバキュロウィルスに由来するp10タンパク質プロモーター(Kit Novagen)(Smith他(1983) Mol Cell Biol 3(12):2156-65; O'Reilly他、1992)、ラムダPRプロモーター又はtrcプロモーターである。真核細胞プロモーターは、CMV前初期HSVチミジン・キナーゼ、初期及び後期SV40、レトロウィルス由来LTR、及びマウス・メタロチオネイン-Lを含む。加えて、特定の細胞タイプに対して特異的なプロモーター、例えば脂肪組織、筋肉組織又は肝臓における発現を容易にするプロモーターを選択することもできる。好都合なベクター及びプロモーターの選択は、当業者の技術レベルに十分に含まれる。
【0064】
cDNA挿入体を採用する場合、典型的には、遺伝子転写物を適正にポリアデニル化するためのポリアデニル化シグナルを含むことを望むことになる。ポリアデニル化シグナルの性質は、本発明の実施の成功にとって重要であるとは考えられず、そしてこのような任意の配列、例えばヒト成長ホルモン及びSV40ポリアデニル化シグナルを採用することができる。また、発現カセットの要素として、ターミネーターも考えられる。これらの要素は、メッセージ・レベルを高め、そしてカセットからその他の配列内へのリードスルーを最小化するのに役立つことができる。
【0065】
ベクターは、付加的な非コード配列を含有することもできる。これらの配列の一例としては、非コード5'及び3'配列、ベクター配列、精製、プローブ又はプライミングのために使用される配列が挙げられる。例えば、異種配列は、転写、及びmRNAプロセッシング、例えばリボソーム結合及びmRNAの安定性において役割を演じることができる転写型、非翻訳型配列を含む。
【0066】
選択可能マーカーは、発現構造を含有する細胞の容易な同定を可能にする細胞に、同定可能な変化をもたらす。形質転換された宿主細胞を選択するための選択可能マーカー遺伝子は、好ましくはジヒドロ葉酸レダクターゼ又は真核細胞培養に対するネオマイシン抵抗性、S. cerevisiae又はtetracyclineのためのTRP1、E. coliにおけるリファンピシン又はアンピリシン抵抗、又はマイコバクテリアのためのレバン・サッカラーゼであり、この後者のマーカーはネガティブ選択マーカーである。
【0067】
代表的ではあるが非限定的な一例として、細菌の使用のための有用な発現ベクターは、選択可能マーカー、及びpBR322(ATCC 37017)の遺伝要素を含む商業的に入手可能なプラスミドに由来する細菌複製起点を含むことができる。このような商業的ベクターの一例としては、pKK223-3(Pharmacia, Uppsala, Sweden)及びpGEM1(Promega Biotec, Madison, WI, USA)が挙げられる。
【0068】
その他の多数の好適なベクター、例えば下記細菌ベクターが当業者に知られており、そして商業的に入手可能である:pTrc-His, pET30-His, pQE70, pQE60, pQE-9(Qiagen), pbs, pD10, phagescript, psiX174, pbluescript SK, pbsks, pNH8A, pNH16A, pNH18A, pNH46A(Stratagene); ptrc99a, pKK223-3, pKK233-3, pDR540, pRIT5(Pharmacia); pWLNEO, pSV2CAT, pOG44, pXT1, pSG(Stratagene);pSVK3, pBPV, pMSG, pSVL(Pharmacia);pQE-30(QIAexpress)。
【0069】
ポリペプチドの発現に適したベクターは、昆虫細胞及び昆虫細胞系において伝搬することができるバキュロウィルス・ベクターである。具体的な好適な宿主ベクターは、pVL 1392/1393バキュロウィルス転移ベクター(Pharmingen)であり、このベクターは、Spodoptera frugiperdaに由来するSF9細胞系(ATCC N°CRL 1711)をトランスフェクトするのに使用される。別の好適なバキュロウィルス・ベクターは当業者に知られており、例えばFastBacHTである。バキュロウィルス発現系におけるAPM1球状ヘッド・ポリペプチドの発現に適したその他のベクターの一例としては、Chai他(1993; Biotechnol Appl Biochem. Dec;18(第3部):259-73);Vlasak他(1983; Eur J Biochem Sep 1; 135(1):123-6);及びLenhard他(1996; Gene Mar 9;169(2):187-90)によって記載されたものが挙げられる。
【0070】
ポリペプチドの発現に適した更なるベクターは、哺乳動物ベクターである。多数の好適なベクター系が当業者に知られており、これらのベクター系は例えばpcDNA4HisMax、pcDNA3.1Hygro-His及びpcDNA3.1Hygroである。
【0071】
ポリペプチドの発現に適した更なるベクターは、ウィルス・ベクター、例えばアデノウィルスに由来するベクターである。本発明による好ましいアデノウィルス・ベクターは、Feldman及びSteg(1996; Semin Interv Cardiol 1(3):203-8)又はOhno他(1994; Science 265(5173):781-4)によって記載されたベクターである。
【0072】
レトロウィルス・ベクター及びアデノ随伴ウィルス・ベクターは、in vivoの外生的ポリヌクレオチドを、具体的にはヒトを含む哺乳動物に転移させるために選択される組換え遺伝子送達系であることが一般に理解されている。これらのベクターは遺伝子を細胞内に効率的に送達するのを可能にし、転移させられた核酸は、宿主の染色体DNA内に安定的に組み入れられる。
【0073】
ポリペプチドを発現させる別の可能性は、相同組換えによってゲノムの適切な遺伝子内に調節配列を導入し、ひいては調節配列と、発現の誘発が必要とされる遺伝子とを作用リンクさせることにより、遺伝子を内生的に活性化しすることである(国際公開第91/09955号パンフレット;同第02/10372号パンフレット)。
【0074】
宿主細胞は原核細胞又は真核細胞であってよい。好ましいのは真核宿主、例えば哺乳動物細胞、例えばヒト、サル、マウス及びチャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞である。なぜならばこれらの細胞は、正しい部位における正しい折り畳み又はグリコシル化を含む翻訳後修飾を、タンパク質分子に提供するからである。酵母細胞も、グリコシル化を含む翻訳後ペプチド修飾を行うことができる。酵母における所望のタンパク質の生成のために利用することができる強力なプロモーター配列及び高コピー数のプラスミドを利用する多数の組換えDNA法が存在する。酵母は、クローニングされた哺乳動物遺伝子生成物中のリーダー配列を認識し、リーダー配列を担持するペプチド(すなわちプレペプチド)を分泌する。
【0075】
可溶性タンパク質を発現させるためのレシピエントとして使用される好ましい宿主細胞は下記の通りである:
a)原核宿主細胞:Escherichia coli 菌株(すなわち、DH5-α菌株)、Bacillus subtilis, Salmonella typhimurium、及びPseudomonas, Streptomyces及びStaphylococcusのような種に由来する菌株;
b)真核宿主細胞:HeLa細胞(ATCC N°CCL2; ATCC N°CCL2.1, ATCC N°CCL2.2)、Cv 1細胞(ATCC N°CCL70)、COS細胞(ATCC N°CRL1650; N°CRL1651)、Sf-9細胞(ATCC N°CRL1711)、C127細胞(ATCC N°CRL-1804)、3T3(ATCC N°CRL-6361)、CHO(ATCC N°CCL-61)、ヒト腎臓293(ATCC N°45504; N°CRL-1573)、BHK(ECACC N° 84100501; N° 84111301)、PLC細胞、HepG2、及びHep3B。
【0076】
真核宿主(例えば酵母、昆虫又は哺乳動物の細胞)の場合、宿主の性質に応じて、種々異なる転写調節配列及び翻訳調節配列を採用することができる。これらの配列は、ウィルス源、例えばアデノウィルス、ウシ乳頭腫ウィルス、又はシミアンウィルスなどに由来してよい。この場合、調節シグナルは、高レベルの発現を有する特定の遺伝子と連携する。その例は、ヘルペス・ウィルスのTKプロモーター、SV40初期プロモーター、酵母gal4遺伝子プロモーターなどである。抑制及び活性化を可能にする転写開始調節シグナルを選択することができるので、遺伝子の発現を調節することができる。導入されたDNAによって安定的に形質転換されている細胞は、発現ベクターを含有する宿主細胞の選択を可能にする1又は複数のマーカーを導入することによっても選択することができる。マーカーは、栄養要求性宿主、殺生剤、例えば抗生物質、又は重金属、例えば銅、などに光栄養を提供することもできる。 選択可能マーカー遺伝子は、発現されるべきDNA遺伝子配列に直接的にリンクするか、又は、同時トランスフェクションによって同じ細胞内に導入することができる。本発明のタンパク質の最適な合成のために、付加的な要素を必要とすることもできる。
【0077】
可溶性タンパク質をコードする核酸が、開始部位として役立つためのメチオニンを欠いている場合、コンベンショナルな技術を用いて、核酸の第1コドンの次に、開始用メチオニンを導入することができる。同様に、可溶性CD164ポリペプチドcDNAに由来する挿入体がポリAシグナルを欠いている場合、この配列は、例えば、BglI及びSalI制限エンドヌクレアーゼ酵素を使用して、pSG5(Stratagene)からポリAシグナルをスプライシングし、そしてこれを哺乳動物発現ベクターpXT1(Stratagene)内に組み込むことにより、構造に加えることができる。pXT1はLTR及びモロニー・マウス白血病ウィルスに由来するgag遺伝子の一部である。構造内のLTRの位置は、効率的な安定したトランスフェクションを可能にする。ベクターは、単純ヘルペス・チミジン・キナーゼ・プロモーターと、選択可能ネオマイシン遺伝子とを含む。
【0078】
組換え生成処置において採用される宿主に応じて、本発明のポリペプチドはグリコシル化型であっても非グリコシル化型であってもよい。加えて、可溶性タンパク質は、いくつかの事例において宿主媒介型プロセスの結果として、初期修飾型メチオニン残基を含むこともできる。このように、当業者によく知られているように、翻訳開始コドンによってコードされるN末端メチオニンが、全ての真核細胞内の翻訳後に、任意のタンパク質から高効率で除去される。たいていのタンパク質上のN末端メチオニンも、たいていの原核細胞内で効率的に除去されるが、いくつかのタンパク質に関しては、この原核細胞除去プロセスが、N末端メチオニンが共有結合されたアミノ酸の性質に応じて非効率的である。
【0079】
可溶性タンパク質は、その限られた長さを考えると、化学合成技術によって、例えば固相合成及び液相合成によって生成することもできる。固相合成として、例えば、合成されるべきペプチドのC末端に対応するアミノ酸は、有機溶剤中に不溶性の支持体に結合され、そして反応の交互反復によって、すなわち、アミノ基を有するアミノ酸と、適切な保護基で保護された側鎖官能基とがC末端からN末端へ順番に1つづつ縮合される一方の反応と、樹脂に結合されたアミノ酸、又はペプチドのアミノ基の保護基が放出される他方の反応との交互の反復によって、ペプチド鎖はこのように延長される。
【0080】
固相合成法は、使用される保護基のタイプに応じて、tBoc法とFmoc法とに概ね分類される。典型的に使用される保護基は、tBoc(t-ブトキシカルボニル)、Cl-Z(2-クロロベンジルオキシカルボニル)、Br-Z(2-ブロモベンジルオキシカルボニル)、Bzl(ベンジル)、Fmoc(9-フルオレニルメトキシカルボニル)、Mbh(4,4'-ジメトキシジベンズヒドリル)、Mtr(4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル)、Trt(トリチル)、Tos(トシル)、Z(ベンジルオキシカルボニル)、及びアミノ基のためのCl2-Bzl(2,6-ジクロロベンジル);グアニジノ基のためのNO2(ニトロ)及びPmc(2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル);及びヒドロキシル基のためのtBu(t-ブチル)を含む。所望のペプチドの合成後、ペプチドは、脱保護反応を施され、固形支持体から切断される。このようなペプチド切断反応は、Boc法の場合にはフッ化水素又はトリフルオロメタンスルホン酸を用いて、またFmoc法の場合にはTFAを用いて行われる。本発明のタンパク質と同等の長さの全体的に合成のタンパク質が、文献において開示されている(Brown A他、J Pept Sci 2: 40-46, 1996; Muir TW, Annu Rev Biochem, 72:249-89, 2003; Casi G及びHilvert D, Curr Opin Struct Biol, 13;589-94, 2003)。
【0081】
可溶性タンパク質の化学合成は、非天然型アミノ酸を利用することによりタンパク質の構造及び機能の天然型の範囲を拡張するのを可能にする(Anthony-Cahill SJ及びMagliery TJ, Curr Pharm Biotechnol, 3: 285-97, 2002)。これらの分子は、可溶性タンパク質の配列及び/又は構造上でデザインすることにより、アミノ酸側鎖、アミノ酸キラリティ、及び/又はペプチド主鎖のレベルで化学的に修飾することができる残基を選択し、次いで、関連特性、例えば効能、精製し易さ、半減期を改善することができる。含まれるべきアミノ酸に対する好ましい代わりの「同義」基は、表IIに定義された基である。これらの化合物を合成して開発する技術は、当業者によく知られている(Hruby VJ 及びBalse PM, Curr Med Chem, 7:945-70, 2000; Golebiowski A他、Curr Opin Drug Discov Devel, 4: 428-34, 2001; Villain M他、Chem Biol, 8: 673-9, 2001, 国際公開第02/10195号パンフレット)。in vitro及びin vivo双方の翻訳系を用いて、非天然型アミノ酸をタンパク質内に組み込んで、タンパク質構造及び機能を調査及び/又は改善する種々の方法も文献において開示されている(Dougherty DA, Curr Opin Chem Bio, 4: 645-52, 2000)。
【0082】
本発明に基づき使用することができる合成又は組換え可溶性タンパク質の精製は、この目的に関して知られている方法のうちのいずれか1つ、すなわち、析出、クロマトグラフィ(アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィ、ホスホセルロース・クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、アフィニティ・クロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイト・クロマトグラフィ及びレクチン・クロマトグラフィ)、電気泳動、微分抽出、塩分別、又は遠心分離など)を伴う任意のコンベンショナルな処置によって行うことができる。例えば、種々のタンパク質精製法のための酵素学における方法を参照されたい。
【0083】
優先して用いることができる精製処置は、モノクローナル抗体、又は標的タンパク質(直接可溶性CD164、又は可溶性融合タンパク質の場合、異種配列、例えばヒスチジンタグ)に十分なアフィニティ及び特異性を持って結合する任意のその他の化学基を使用したアフィニティ・クロマトグラフィである。結合基は、カラム内部に含有されるゲル・マトリックス上に生成されそして固定化される。タンパク質を含有する不純調製物はカラムを通過させられる。可溶性タンパク質はアフィニティによってカラムに結合されるのに対して、不純物は通過することになる。残りの不純物を洗い流したあと、pH又はイオン強度を変化させることによって、可溶性タンパク質をゲルから溶離することができる。或いは、HPLC(高性能液体クロマトグラフィ)を用いることもできる。溶離は、タンパク質精製のために一般に採用される水-アセトニトリル系溶剤を用いて行うことができる。
【0084】
或いは、可溶性タンパク質は、文献中に開示された多数の方法のいずれかを適用して、可溶性タンパク質を発現させるトランスジェニック動物のミルクから単離することもできる(Protein Purification Applications, A Practical Approach (新版)、Simon Roe編、AEA Technology Products and Systems, Biosciences, Harwell; Clark (1998) J Mammary Gland Biol Neoplasia 3:337-50;米国特許第6,140,552号明細書)。
【0085】
炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患の治療用及び/又は予防用の薬剤を製造するために、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質は、活性誘導体、タンパク質分解抵抗性修飾形態、接合体、複合体、画分、前駆体及び/又は塩として生成、調製、投与又は一般的に使用することができる。
【0086】
本明細書中に使用される「誘導体」という用語は、周知の方法に基づいて、アミノ酸部分の側鎖上、又はN末端基又はC末端基上に存在する官能基から調製することができる。このような誘導体は、例えば、カルボキシル基のエステル又は脂肪族アミド、及び遊離アミノ基のN-アシル誘導体又は遊離ヒドロキシル基のO-アシル誘導体を含み、そしてアシル基と一緒に、例えばアルカノイル基又はアロイル基として形成される。
【0087】
「画分」という用語は、単独の、又は関連分子又は関連分子に結合された残基との組み合わされた状態における、化合物自体のポリペプチド鎖の任意のフラグメント、例えば糖又はホスフェートの残基、又は元のポリペプチド又はペプチドの凝集体を意味する。このような分子は、一次配列を通常は変化させない他の修飾、例えば、ペプチドのin vivo又はin vitro化学誘導体化(アセチル化又はカルボキシル化)、ペプチドの合成中及びプロセッシング中、又は更なるプロセッシング・ステップ中に、ペプチドのリン酸化(ホスホチロシン、ホスホセリン又はホスホトレオニン残基の導入)又はグリコシル化(グリコシル化に影響を与える酵素、例えば哺乳動物のグリコシル化酵素又は脱グリコシル化酵素にペプチドを暴露することによる)のパターンを修飾することにより形成された修飾から生じることもできる。
【0088】
「前駆体」とは、細胞又は身体への投与前又は投与後の代謝的及び酵素的プロセッシングによって、本発明の化合物に変換することができる化合物である。
【0089】
本明細書中の「塩」という用語は、本発明のペプチド、ポリペプチド又はこれらの類似体の、カルボキシル基の塩及びアミノ基の酸付加塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は、当業者に知られた手段によって形成することができ、そして、無機塩、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、第二鉄塩又は亜鉛塩など、及び例えばアミン、例えばトリエタノールアミン、アルギニン又はリシン、ピペリジン、及びプロカインなどと一緒に形成されたような有機塩基を有する塩を含む。酸付加塩は、例えば鉱酸、例えば塩酸又は硫酸を有する塩、及び有機酸、例えば酢酸又はシュウ酸を有する塩を含む。このような塩はいずれも、本発明のペプチド及びポリペプチド又はこれらの類似体と実質的に同様の活性を有するべきである。
【0090】
接合体又は複合体は、放射性標識、ビオチン、蛍光標識、細胞毒性薬、薬物送達薬の中から選択された分子と一緒に形成することができる。当業者に知られた分子及び方法を用いて、これらの接合体又は複合体を生成することにより、例えばその他のタンパク質(放射性又は蛍光標識、ビオチン)との相互作用の検出を可能にするか、又は治療効力を改善するか(細胞毒性薬)、又はポリマー、例えばポリエチレングリコール及びその他の天然型又は合成型ポリマーを使用して薬物送達効力を改善する(Pillai O及びPanchagnula R, Curr Opin Chem Biol, 5: 447-451, 2001)ことができる。
【0091】
ポリマーは任意の分子量を有していてよく、分枝型又は非分枝型であってよい。ポリエチレングリコールの場合、好ましい分子量は、取り扱い及び製造のし易さのために、約1 kDa〜約100 kDa(「約」という用語は、ポリエチレングリコールの調製の際に、いくつかの分子の量が、言及された分子量よりも多いか又は少ないことを示す)である。所望の治療プロフィール(例えば所望される徐放継続期間、生体活性に対して効果がある場合にはそれらの効果、取り扱い易さ、治療タンパク質又は類似体に対するポリエチレングリコールの抗原性及びその他の既知の効果の度合い又は欠乏)に応じて、他のサイズを用いることができる。
【0092】
ポリエチレングリコール分子(又はその他の化学部分)は、ポリペプチドの機能ドメイン又は抗原ドメインに対する効果を考慮しつつ、ポリペプチドに結合されるべきである。当業者にとって利用可能な多数の結合方法、例えば欧州特許0 401 384号明細書(本明細書中に参考のため引用する(PEGとG-CSFとのカップリング))。また、塩化トレシルを使用してGM-CSFのペジル化を報告するMalik他(1992) Exp Hematol 20(8):1028-35を参照されたい。例えば、ポリエチレングリコールは、反応性基、例えば遊離アミノ基又は遊離カルボキシル基を介して、アミノ酸残基を通して共有結合することができる。反応性基は、活性化されたポリエチレングリコール分子が結合され得る基である。遊離アミノ基を有するアミノ酸残基は、リシン残基及びN末端アミノ酸残基を含んでよく、遊離カルボキシル基を有するアミノ酸残基は、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基及びC末端アミノ酸残基を含んでよい。ポリエチレングリコール分子に結合するための反応性基として、スルフヒドリル基を使用することもできる。治療目的で好ましいのは、アミノ基における結合、例えばN末端又はリシン基における結合である。
【0093】
-CONH-ペプチド結合を、下記のもの:(CH2NH)還元型結合;(NHCO)レトロ-インベルソ結合;(CH2-O)メチレン-オキシ結合;(CH2-S)チオメチレン結合;(CH2CH20)カルバ結合;(CO-CH2)セトメチレン結合;(CHOH-CH2)ヒドロキシエチレン結合;(N-N)結合;E-アルセン結合;又は-CH=CH-結合、のうちの1又は複数と置換することにより、タンパク質分解に対して抵抗性のポリペプチドを生成することができる。こうして、本発明は、可溶性CD164、又は1つ以上のペプチド結合が上記のように修飾されているその変異体をも含む。加えて、アミノ酸はL又はDの本体内部にキラリティを有する。いくつかの実施態様の場合、アミノ酸のキラリティを変化させて本体内部に半減期を延長することが好ましい。このように、いくつかの実施態様の場合、アミノ酸の1又は複数が好ましくはL形態を成す。他の実施態様の場合、アミノ酸の1又は複数が好ましくはD形態を成す。
【0094】
サイトカイン放出及び/又は発現の阻害を検出するのを可能にする動物細胞、組織及びモデルを利用するin vivo又はin vitroアッセイ、並びに、細胞動員の阻害のようなin vivo又はin vitroアッセイによって、(安全性、薬物動態学的特性及び効力の点で)本発明のポリペプチド及び関連試薬の治療用途を評価することができる。種々の分子生物学技術、例えば二次元ゲル電気泳動又はRNA干渉を適用することにより、本発明において記載された生物学的及び治療上の活性の更なる特徴を得ることができる。
【0095】
in vivoでの脊椎動物の細胞の内部に可溶性タンパク質を送達する方法の具体的な1実施態様は、生理学的に許容される担体と、その細胞を含む組織の間質空間内に当該ポリペプチドを作業上コードするネイクド・ポリヌクレオチドとを含む調製物を導入するステップを含む。これにより、ネイクド・ポリヌクレオチドは、細胞内部内に取り込まれ、生理学的効果を有する。このことは特にin vitroの転移にあてはまるが、しかしin vivoに適用することもできる。
【0096】
炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患の治療用及び/又は予防用の薬剤を製造するために、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を使用することができる。これらのポリヌクレオチドは、組換えCD164ポリペプチドを発現させる、ヒト以外の動物及び植物を発生させるのに使用することもできる。動物又は植物はトランスジェニックであってよく、すなわちこれらの細胞のそれぞれは、CD164ポリペプチドをコードする遺伝子を含有し、或いは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを動物又は植物の体細胞内に、例えば哺乳動物の乳腺分泌上皮細胞内に導入することができる。好ましい実施態様の場合、ヒト以外の動物は、哺乳動物、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ又はウサギである。トランスジェニック動物、例えば哺乳動物を作り出す方法は当業者によく知られており、任意のこのような方法を、本発明において用いることができる。さらに、組換え可溶性タンパク質のポリペプチドをミルク中に分泌するトランスジェニック哺乳動物を発生させることができる。典型的には、コードされたポリペプチドは、タンパク質をミルク中に分泌するのを保証するためのシグナル配列を含む。
【0097】
「ネイクド」ポリヌクレオチドを含むin vitro及びin vivoでの使用のための組成物が、従来技術において記載されている(国際公開第90/11092号;同第95/11307号のパンフレット;Tascon他、Nature Medicine 2: 888-892, 1996)。本発明のさらに別の実施態様の場合、細胞内への「ネイクド」ポリヌクレオチドの転移は、粒子ボンバードメント(バイオリスティック)で進めることができる。前記粒子は、高い速度まで加速された、DNAをコートされたマイクロプロジェクタイルである。この速度は、Klein他((1990) Curr Genet Feb; 17(2):97-103)によって記載されたような、細胞膜を穿孔し、そして細胞を殺すことなしに細胞に侵入するのを可能にする速度である。別の実施態様の場合、本発明のポリヌクレオチドは、リポソーム内に捕捉することができる(Ghosh及びBacchawat, (1991) Targeted Diagn Ther 4:87-103; Wong他(1980) Gene 10:87-94; Nicolau他(1987) Methods Enzymol 149:157-76)。これらのリポソームはさらに、リポソーム膜内にレプチン、トリグリセリド、ACRP30、又はその他の既知のLSRリガンドを組み込むことにより、LSRを発現させる細胞にターゲットすることができる。所望の宿主生物に注入されるべきベクターの量は、注入部位に応じて変化する。指示投与量としては、動物体内、好ましくは哺乳動物体内、例えばマウス体内に0.1〜100 μgのベクターが注入されることになる。本発明によるベクターの別の実施態様の場合、ベクターは、宿主細胞内、好ましくは、治療される動物から予め捕集された宿主細胞内、より好ましくは体細胞、例えば筋細胞内にin vitroで導入することができる。後続のステップにおいて、所望のCD164ポリペプチド又はその所望のフラグメントをコードするベクターで形質転換された細胞を、動物体内に再導入することにより、体内に組換えタンパク質を局所的又は前進的に送達する。
【0098】
in vivo投与の場合、ポリヌクレオチドは、任意の好適な製剤の形態で、任意の濃度範囲(例えば1-500 μg/ml、好ましくは50-100 μg/ml)で、任意の容積(例えば1-100 ml、好ましくは1-20 ml)で投与することができ、そして任意の頻度(1日、2日、3日、5日、10日毎、又は任意の日数毎)で任意の回数(例えば1, 2, 3, 5又は10回)にわたって投与することができる。好ましい濃度、頻度、投与様式などは、特定のポリヌクレオチド、ベクター、動物などに依存することになり、当業者によって容易に見極めることができる。
【0099】
ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質は、炎症促進及び/又は免疫に関連するサイトカイン発現を阻害することができ、ひいては、「炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患」を予防及び/又は処置すると考えられる。
【0100】
免疫系の一次機能は、外来侵入体、例えば微生物による感染に対して個体を保護することである。免疫系が個体自身の組織を攻撃し、しばしば炎症プロセスを伴う自己免疫疾患として知られる病理状態を招くことが生じる場合がある。
【0101】
具体的には、明確な非オーバーラップ性サイトカイン発現パターンに基づいて、Tヘルパー1型細胞(Th1)及びTヘルパー2型細胞(Th2)と呼ばれる2つの異なるサブセットに、CD4+1細胞を割り当てることができる。Th1は、IL-2、インターフェロン-γ、IL-12及びTNF-αの分泌によって特徴付けられ、そしてTh2は、IL-4、IL-5、IL-9、IL-10及びIL-13の分泌によって特徴付けられる。にもかかわらず、これらは厳密な部分集合ではない。それというのも、IFN-γ及びIL-10がTh1応答並びにRh2応答と関連する効果を抑制することができるからである。また、IL-4及びIL-13はIL-12の生成を促進することができ、これによりTh1を促進して、Th2応答を潜在的に阻害する。Th1 T細胞は、マクロファージ活性化及び遅延型過敏症(DTH)を媒介することが可能であり、炎症促進性又は細胞媒介型免疫応答を生じさせるのに対して、Th2 T細胞は、IgG1及びIgE分泌を促進し、即時型アレルギー反応を導く(体液性免疫;抗体媒介型応答を刺激し、マスト細胞を活性化し、そして組織好酸球増加を誘発する)。Th1は、関節リウマチ、サルコイドーシス及び結核のような疾患の病原における主要な特徴であるのに対して、Th2は、アレルギー、抗寄生虫応答、及び喘息性気道に関与する(例えば線維形成の役割)。
【0102】
ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質を含む薬剤又は医薬組成物を使用することができる障害の非限定的リストは下記のものを含む:多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、関節リウマチ、若年性突発性関節炎、乾癬性関節炎、骨関節炎、脊椎関節症、炎症性大腸炎、内毒素血、クローン病、スティル病、ブドウ膜炎、ヴェグナー肉芽腫、ベーチェット病、強皮症、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、壊疽性膿皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、心筋炎、乾癬、全身性硬化、C型肝炎、アレルギー、アレルギー性炎、アレルギー性気道炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腸間膜梗塞、卒中、潰瘍性大腸炎、アレルギー喘息、気管支喘息、腸間膜梗塞、卒中、線維症、虚血後の筋肉、腎臓及び心臓の炎症、皮膚炎、糸球体腎炎、若年発症I型糖尿病、過敏症症候群、ウィルス性又は急性肝臓疾患、アルコール性肝不全、結核、敗血性ショック、HIV感染、移植片対宿主病(GVHD)、及びアテローム性動脈硬化。
【0103】
関節リウマチは、関節の炎症の兆候及び症状によって特徴付けられる疾患である。全身性紅斑性狼瘡(SLE)は、皮膚上の赤い鱗状斑、及びこの疾患の進行した段階では腎臓機能不全を特徴とし、また特に腎臓における血管内の免疫複合体の堆積によってトリガーされた免疫性反応と関連する。多発性硬化症は、衰弱、身体の振戦、及び極端な場合には、麻痺を引き起こし得る再発性炎症状態を特徴とするヒトの疾患であり、そして末梢神経細胞を取り囲む保護ミエリン鞘の免疫系発作を伴う。アレルギー性炎症は、Th2細胞に基づくアトピー疾患の原因論と一致する。例えば、IL-4の不在におけるTh2細胞の不完全なプライミングの結果、後続の気道攻撃後にアレルギー炎症応答が発生しなくなる。IL-5及びIL-13は、特徴的な好酸球浸潤物及び粘液過剰分泌により直接的に関与することが判っている。
【0104】
多発性硬化症の場合、Th1媒介型免疫応答は、その疾患を促進すると考えられるのに対して、Th2は、疾患の進行に対する改善効果を有すると考えられる。IL-10を発現させるT細胞は、多発性硬化症用ラットモデルの試験用自己免疫脳脊髄炎(EAE)を抑制することが判っている。TNF-αは、EAEの誘発に関与するという仮説がたてられている(TNF-αはTh1及びTh2の双方の培養によって分泌することができる)。
【0105】
ヒト全身性紅斑性狼瘡(SLE)はTh2応答によって駆動されると考えられる。しかし、IFN-γは、マウス・モデルにおける疾患の進行に対して主要な効果を有することが示され、これに対して、IL-4は、疾患維持を媒介すると予期される。
【0106】
心筋炎は、心筋の炎症によって定義され、急性上部呼吸器感染後の心筋特異的抗原に対する自己免疫応答によって媒介されると考えられる。マウスモデルにおける試験用自己免疫心筋炎(EAM)の重症性は、抗IL-4の投与によって低減され、疾患の進行におけるIL-4の役割を示す。
【0107】
本発明の別の実施態様は、個体中の1又は複数のサイトカインの発現を阻害する方法であって、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質を含む組成物を前記個体に投与することを含む、個体中の1又は複数のサイトカインの発現を阻害する方法である。サイトカインはTNF-α、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5又はIL-10である。これらの方法はその必要のある個体に、下記の医薬として又は生理学的に許容される組成物を提供又は投与することを含み、そして炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患の予防及び/又は治療のための方法として考えることができる。
【0108】
本発明のさらに別の実施態様は、医薬組成物であって、炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患の治療のために、医薬として許容される1又は複数の賦形剤の存在において、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質を含む、医薬組成物によって表される。これらの組成物はさらに、付加的な免疫抑制剤又は抗炎症性物質を含むことができる。或いは、可溶性タンパク質を含む医薬組成物は、種々の治療計画において用いるために合体させて「カクテル」にすることができる。
【0109】
本発明の医薬組成物は、医薬として許容される任意の好適な担体、動物への投与に適した、最終的には助剤(例えば賦形剤、安定剤又は希釈剤)を含む生物学的に適合可能なビヒクル及び添加剤(例えば生理食塩水)を含有することもできる。これらの助剤は、活性化合物を処理して医薬として使用することができる調製物にするのを容易にする。医薬組成物を任意の許容される方法で調製することにより、投与様式のニーズを満たすことができる。例えば生体材料及び薬物送達のための他のポリマー、並びに特定の投与様式を有効にするための種々異なる技術及びモデルが、文献において開示されている(Cleland JL他、Curr Opin Biotechnol, 12: 212-9, 2001; Luo B及びPrestwich GD、Exp Opin Ther Patents, 11: 1395-1410, 2001)。
【0110】
「医薬として許容される」とは、活性成分の生体活性の硬化を妨害せず、しかも投与される宿主に対して毒性でない任意の担体を含むものとする。例えば、非経口投与の場合、上記活性成分は、ビヒクル、例えば生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン及びリンガー溶液中で注射するための単位投与形態で調製することができる。
【0111】
活性成分の所望の血中濃度を確立するために、認められた任意の投与様式を用いることができ、またこの投与様式を当業者によって決定することができる。例えば投与は種々の非経口ルート、例えば皮下、静脈内、硬膜外、局所、皮内、くも膜下、直接心室内、腹腔内、経皮(例えば徐放性製剤)、筋内、腹腔内、鼻腔内、肺内(吸入)、眼内、口腔又は頬ルートによって行うことができる。非経口投与はボーラス注射によって、又は所定の時間にわたる漸次的な潅流によって行うことができる。その他の特に好ましい投与ルートは、エアロゾル及びデポ製剤である。本発明の薬剤の徐放性製剤、具体的にはデポ剤が特に考えられる。
【0112】
非経口投与のための調製物は、滅菌水性又は非水性溶液、懸濁液、及びエマルジョンを含み、これらは、当業者に知られた助剤又は賦形剤を含有することができ、日常的な方法に従って調製することができる。加えて、好適な油性注射懸濁液として、活性化合物の懸濁液を投与することができる。好適な親油性溶剤又はビヒクルは、脂肪油、例えばごま油、又は合成脂肪酸エステル、例えばごま油、又は合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチル又はトリグリセリドを含む。懸濁液の粘度を高める物質を含有することができる水性注射懸濁液は例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/又はデキストランを含む。任意には、懸濁液は安定剤を含有することもできる。医薬組成物は、注射による投与に適した溶液を含み、また、約0.01〜99パーセント、好ましくは約20〜75パーセントの活性化合物を、賦形剤と一緒に含有する。直腸投与することができる組成物は坐剤を含む。
【0113】
非経口(例えば静脈内、皮下、筋内)投与の場合、活性タンパク質は、医薬として許容される非経口ビヒクル(例えば水、生理食塩水、デキストロース溶液)、及び等張性(例えばマニトール)又は化学安定性(例えば保存剤及び緩衝液)を維持する添加剤と組み合わされた溶液、懸濁液、エマルジョン又は凍結乾燥粉末として調製することができる。製剤は、一般に用いられる技術によって滅菌される。経粘膜投与の場合、浸透されるべきバリアに適した浸透剤が製剤中に使用される。このような浸透剤は当業者に概ね知られている。
【0114】
経口で摂取することができる医薬として又は生理学的に許容される調製物は、ゼラチンから形成された押込型カプセル、並びにゼラチン及び可塑剤、例えばグリセロール又はソルビトールから形成された軟質の密封カプセルを含む。押込型カプセルは、充填剤、例えばラクトース、バインダー、例えば澱粉、及び/又は滑剤、例えばタルク又はステアリン酸マグネシウム、及び任意には安定剤との混和物中に活性成分を含有することができる。軟質カプセルの場合、活性化合物は好適な液体、例えば脂肪油、液体パラフィン又は液体ポリエチレングリコール中に溶解又は懸濁させることができる。加えて安定剤を添加することができる。経口投与のための全ての製剤は、このような投与に適した投与形態を成しているべきである。
【0115】
頬投与の場合、組成物は、コンベンショナルな様式で調製された錠剤又はトローチ剤の形態を成すことができる。吸入による投与の場合、本発明に従って使用するための化合物は、好適な気体駆出剤、例えば二酸化炭素の使用とともに、圧縮パック又はネブライザーからエアロゾル噴霧の形態で好都合に送達される。圧縮型エアロゾルの場合、投与単位は、計量送達のための弁を設けることにより決定することができる。化合物と好適な粉末ベース、例えばラクトース又は澱粉との粉末混合物を含有する、吸入器又は吹入れ器において使用するためのカプセル及びカートリッジ、例えばゼラチンを調製することができる。
【0116】
注射、例えばボーラス注射又は連続輸液による非経口投与のために、化合物を調製することができる。注射用製剤は、保存剤が添加された単位投与形態、例えばアンプル又は多数回投与容器の形態で提供することができる。組成物は、水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンのような形態を成すことができ、そして、調製剤、例えば懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤を含有することができる。或いは、活性成分は、使用前に好適なビヒクル、例えば発熱物質なしの滅菌水で戻すための粉末又は凍結乾燥形態を成していてもよい。
【0117】
前述の製剤に加えて、化合物はデポ調製物として調製することもできる。このような長時間作用性製剤は、埋込み(例えば皮下又は筋内)によって、又は筋内注射によって投与することができる。こうして、例えば化合物は、好適な高分子又は疎水性材料(例えば許容される油中のエマルジョンとして)と、又はイオン交換樹脂と一緒に調製するか、又は控えめに可溶性の誘導体として、例えば控えめに可溶性の塩として調製することができる。或いは、化合物は、徐放システム、例えば治療薬を含有する固形疎水性ポリマーの半透性マトリックスを使用して送達することもできる。種々の徐放性材料が確立されており、また当業者によってよく知られている。徐放性カプセルは、これらの化学的な性質に応じて、数週間から100日よりも長い期間にわたって化合物を放出することができる。
【0118】
言うまでもなく、投与量は、レシピエントの年齢、性別、健康状態および体重、もしあるならば並行して行われている治療の種類、治療の頻度、及び所望の効果の性質に依存することになる。投与量は、当業者によって理解されまた決定可能であるように、個々の患者に合わせて調整される。各治療に必要な総投与量は、多数回の投与又は単回投与によって投与することができる。本発明の医薬組成物は、単独で、又はその状態に対する、又はその状態のその他の症状に対するその他の治療との組み合わせにおいて投与することができる。通常、活性成分の一日投与量は、体重1キログラム当たり0.01〜100ミリグラム又はそれ以上から成る。通常、所望の結果を得るためには、1日1キログラム当たり1〜40ミリグラムを数回に分けて又は徐放形態で投与することが効果的である。2回目又は後続の投与は、その個体に対する初回又は前回の投与量と同じか、またはこれよりも少ないか又は多い投与量で行うことができる。
【0119】
「有効な量」とは、疾患の経過及び重症度に影響を与えるのに十分であって、このような病理の軽減又は緩和を招く量を意味する。有効な量は投与ルート及び患者の状態に依存することになる。
【0120】
最小有効濃度値を用いて、投与インターバルを決定することもできる。化合物は、時間の10-90%、好ましくは30-90%、及び最も好ましくは50-90%にわたって、最小有効濃度を上回る血漿レベルを維持する投薬計画を用いて投与されるべきである。局所的な投与又は選択的取込みの場合、薬物の有効局所的濃度は、血漿濃度には関係しないことがある。
【0121】
組成物の投与量は、もちろん、治療される患者、患者の体重、病気の重症度、投与様式、及び処方する医師の判断に依存することになる。単回又は複数回で個体に投与される投与量は、薬物動態学的特性、投与ルート、患者の状態及び特徴(性別、年齢、体重、健康状態、大きさ)、症状の程度、並行して行われている治療、治療頻度及び所望される効果を含む、種々のファクターに応じて変化する。
【0122】
本発明の物質は毎日又は一日おきに、より低い頻度で投与することができる。好ましくは、本発明の物質のうちの1又は複数が、1週間当たり1回、2回又は3回にわたって投与される。1日投与量は、所望の結果を得るのに効果的な、数回に分けた形態又は徐放形態で与えられる。2回目又は後続の投与は、その個体に対する初回又は前回の投与量と同じか、またはこれよりも少ないか又は多い投与量で行うことができる。2回目又は後続の投与は疾患発症中又は疾患発症前に行うことができる。
【0123】
本発明によれば、本発明の物質は、他の治療計画又は治療薬(複数投薬計画)の前、同時又は後に個体に予防的又は治療的に治療上有効な量で投与することができる。他の治療薬と同時に投与される活性物質を、同じ又は異なる組成物中で投与することができる。
【0124】
本発明の方法において使用される任意の化合物に関して、治療上有効な投与量を細胞培養アッセイから最初に評価することができる。例えば、投与量を動物モデルにおいて定めることにより、循環濃度範囲を得ることができる。この循環濃度範囲は、in vitro系でサイトカイン発現を減少させることが示された濃度点又は濃度範囲を含む。このような情報を用いて、ヒトにおける有用な投与量をより正確に決定することができる。治療上有効な量は、患者の症状を改善する化合物量を意味する。このような化合物の毒性及び治療効力は、例えばLD50(試験個体群の50%を致死させる投与量)及びED50(個体群の50%において治療上効果的な投与量)を決定するための、細胞培養又は試験動物における標準的な薬学手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との投与量比は、治療指数であり、そしてLD50とED50との比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量範囲を定めるのに使用することができる。このような化合物の投与量は好ましくは、毒性がほとんど又は全くないED50を含む循環濃度範囲内にある。投与量は、採用される投与形態及び利用される投与ルートに応じてこの範囲内で変化することができる。正確な製剤、投与ルート及び投与量は、患者の状態に関して個々の医師によって選択することができる(例えばFingl他、1975, 「The Pharmacological Basis of Therapeutics」第1章参照)。
【0125】
本発明はまた、新規のスクリーニング・アッセイ及びキットであって、サイトカインの分泌及び発現のインヒビターとしての化合物の特性を同定して比較するために使用することができる、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質を含む、新規のスクリーニング・アッセイ及びキットを提供する。キット及びアッセイは、最終的には標識付けされるか又は固形支持体上に固定化される、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質を含むべきである。
【0126】
本明細書中で本発明を説明するために使用される用語の意味及び範囲を説明して定義するために、下記定義を示す。
【0127】
本明細書中に相互に置き換え可能に使用される用語「オリゴヌクレオチド」、及び「ポリヌクレオチド」及び核酸は、一本鎖又は二本鎖の形態の、2つ以上のヌクレオチドから成るRNA、DNA又はRNA/DNAハイブリッド配列を含む。これらの用語は、1つ以上の修飾を含む「修飾型ヌクレオチド」を含む。修飾型ヌクレオチドの一例としては:(a)選択的連結基、(b)プリンの類似形、(c)ピリミジンの類似形、又は(d)類似の糖が挙げられる。類似のリンク基、プリン、ピリミジン及び糖の例は従来技術において知られている(国際公開95/04064号パンフレット)。可溶性タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、合成、組換え、ex vivo生成、又はこれらの組み合わせを含む任意の周知の方法によって、並びに当業者に知られた任意の精製法を利用して、調製することができる。
【0128】
ポリヌクレオチド構造、組換えポリヌクレオチド及び組換えポリペプチドという用語は、当業者による使用と一致して本明細書中に使用される。「上流」及び「下流」という用語も、当業者による使用と一致して本明細書中に使用される。「塩基対合」及び「ワトソン・クリック塩基対合」は相互に置き換え可能に本明細書中に使用され、当業者による使用と一致して本明細書中に使用される。同様に「相補的」、「の相補体」、「相補体」、「相補的ポリヌクレオチド」、「相補的核酸」及び「相補的ヌクレオチド配列」という用語も互に置き換え可能に本明細書中に使用され、当業者による使用と一致して本明細書中に使用される。
【0129】
同様に、「精製された」という用語は、他の化合物、例えば核酸、脂質、炭水化物及びその他のタンパク質から単離された可溶性タンパク質を記述するのに使用される。いくつかの好ましい実施態様において、ポリペプチドは、試料のポリペプチド分子の最小約50%、約60%、約75%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約99.5%が単一のアミノ酸配列を有する場合に、実質的に純粋である。いくつかの好ましい実施態様において、実質的に純粋なポリペプチドは典型的には、タンパク質試料の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約99.5%(重量/重量)を含む。当業者によく知られた多数の方法、例えば試料のアガロース又はポリアクリルアミド・ゲル電気泳動によって、ポリペプチド純度又は同質性が示され、続いてゲル染色時の単一ポリペプチド・バンドが視覚化される。或る特定の目的で、当業者によく知られているHPLC又はその他の方法を用いて、より高い分解能を達成することができる。
【0130】
さらに、本明細書中に使用される「精製された」という用語は、絶対的な純粋性を必要とはしない。むしろこの用語は相対的な定義として意図される。出発材料又は天然材料を、1桁以上に、好ましくは2又は3桁に、及びより好ましくは4又は5桁に精製することが特に考えられる。或いは、精製は、相同ポリヌクレオチド(DNA、RNA又はその両方)又はポリペプチドに対する「最小の」パーセント純度として表すこともできる。好ましい実施態様としては、CD164ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、異種ポリヌクレオチド又はポリペプチドに対して最小;10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、96%、98%、99%、99.5%、100%純粋である。更なる好ましい実施態様として、ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、任意の番号の位置から1000番目の位置までに、異種ポリヌクレオチド又はポリペプチドに対して90%〜100%(例えば99.995%純粋)の範囲の「最小」純度を有している。加えて、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの純度は、担体溶液以外の全ての材料及び化合物に対するパーセンテージ(上述の通り)として表すことができる。1000番目の位置までの各番号は、個々の純粋種として主張することができる。
【0131】
「単離された」という用語は、その材料が、元の環境(例えばこれが自然に発生するものならば自然環境)から取り出されることを必要とする。例えば、生きている動物中に存在する自然発生型ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、単離されておらず、自然系内の共存する材料のうちのいくつか又は全てから離された、同じポリヌクレオチド又はDNA又はポリペプチドは単離されている。このようなポリヌクレオチドは、ベクターの一部であってよく、且つ/又はこのようなポリヌクレオチド又はポリペプチドは組成物の一部であってよく、そして、ベクター又は組成物がその自然環境の部分でないという点で、やはり単離されている。
【0132】
「プライマー」という用語は、ターゲット・ヌクレオチド配列に対して相補的であり、そして、ターゲット・ヌクレオチド配列とハイブリッド形成するのに使用される特異的オリゴヌクレオチド配列を意味する。プライマーは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、又は逆転写酵素によって触媒されるヌクレオチド重合のための開始点として役立つ。
【0133】
「タンパク質」又は「ポリペプチド」は、ポリマーの長さには関係なしにアミノ酸のポリマーを意味する。従って、ペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質は、ポリペプチドの定義に含まれる。この用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾を特定または排除しない。例えば、グリコシル基、アセチル基、ホスフェート基、脂質基、及びミリストイル化基などの共有結合を含むポリペプチドは、「ポリペプチド」という用語に明らかに含まれる。またこの定義には、リン酸化又は脱リン酸化ポリペプチドも含まれる。またこの定義には、アミノ酸の1又は複数の類似体(非自然発生型アミノ酸、無関係の生体系内にだけ自然発生するアミノ酸、哺乳動物系に由来する修飾型アミノ酸などを含む)、置換型リンケージを有するポリペプチド、並びに当業者に知られている自然発生型及び非自然発生型のその他の修飾が含まれる。
【0134】
「含む」、「から成る」及び「本質的に〜から成る」は、これらの標準的な意味に従って定義される。M.P.E.P.に示された定義された意味は、この技術分野において定義された意味を管理しており、連邦巡回判例法に示された定義された意味が、M.P.E.P.に示された意味を管理している。この点を考慮して、これらの用語は本出願全体を通して互いに置き換えることによって、それぞれの用語と関連する特定の意味を付すことができる。
【0135】
本明細書中に使用される「処置する」という用語は、臨床的症状の開始後に化合物を投与することを意味する。
【0136】
本明細書中に使用される「予防する」という用語は、臨床的症状の開始前に化合物を投与することを意味する。
【0137】
本発明の文脈内の「予防」という用語は、疾患又は疾患の1又は複数の症状の完全な予防を意味するだけではなく、疾患の早期発症前又は早期発症時の疾患の影響を部分的又は実質的に予防、減衰、低減、減少又は縮小することをも意味する。
【0138】
本発明の文脈内の「治療」という用語は、疾患発症後の病理発生の減衰、低減、減少又は縮小を含む、疾患の進行に対する任意の有益な効果を意味する。
【0139】
定期刊行物の論文又は要約、発行済又は未発行の米国又は外国特許出願明細書、発行済の米国又は外国特許明細書、又はその他の参考文献を含む、本明細書中に引用した全ての参考文献の全体を、引用参考文献に提供された全てのデータ、表、図面及び本文を含めて、参考のため本明細書中に引用する。加えて、本明細書中に引用された参考文献中に引用された文献の内容全体も参考のため本明細書中に引用する。
【0140】
既知の方法ステップ、コンベンショナルな方法ステップ、既知の方法又はコンベンショナルな方法に言及することが、本発明の任意の特徴、説明又は実施態様が関連技術において開示、教示又は示唆されていることを認めることには決してない。
【0141】
本発明を下記実施例によって以下に説明する。これらの実施例は本発明を限定するものとは決して解釈するべきではない。実施例は、特定された図面に関する。
【0142】
特定の実施態様の前記説明は本発明の全体的な性質を完全に明らかにするので、当業者の知識(本明細書中に引用された参考文献の内容を含む)を応用することにより、他者が不必要な試験を行うことなしに、また本発明の全体的な概念を逸脱することなしに、種々の用途のためにこのような特定の実施態様を変更し、且つ/又は、改変することができる。従ってこのような改変及び変更は意味において、本明細書中に提供された教示及び指針に基づく、開示された実施態様の同等物の範囲であるものとする。言うまでもなく、本明細書中の語法又は用語は、説明を目的としたものであり、本発明を限定するものではないので、本発明の用語又は語法は、当業者の知識と組み合わせて、本明細書中に提供された教示内容及び指針に照らして、当業者によって解釈することができる。
【実施例】
【0143】
実施例1:His標識付きsf-CD164の哺乳動物細胞におけるクローニング、ハイ・スループット発現及び調製
ヒトCD164の完全細胞外領域をコードするcDNA配列 (NCBI Acc. No. NP_006007;配列番号3の残基1-163)を、Gateway(登録商標)クローニング技術(Invitrogen)を用いてサブクローニングすることにより、発現プラスミドを生成した。この発現プラスミドは、ヒトCD164の細胞外領域の成熟形態(140アミノ酸)を、ヘキサ-ヒスチジンタグで融合されたそのC末端を有する可溶性融合タンパク質(146アミノ酸;sf-CD164;配列番号2)として発現させそして分泌するのを可能にし、次いでアフィニティ精製のために使用する。分泌は天然型CD164シグナル配列(NCBI Acc. No. NP_006007;配列番号3の残基1-23)によって駆動する。
【0144】
ハイ・スループット発現のために選択された哺乳動物細胞は、エプスタイン-バール・ウィルス核抗原を発現させるヒト胚腎臓293細胞(HEK293-EBNA, Invitrogen)であった。
【0145】
Ex-cell VPRO無血清培地(種ストック、維持培地、JRH Biosciences)中の懸濁液中で、細胞を維持した。トランスフェクションから16時間〜20時間前(トランスフェクション第-1日)に、細胞を2x T225フラスコ内で播種し(2 x 105細胞/mlの密度)、それぞれのフラスコは、2% FBS(ウシ胎仔血清)播種培地(JRH Biosciences)とともに50 mlのDMEM(Dulbeccoの変性イーグル培地)/F12 (1:1)を含有する。翌日(トランスフェクション第0日)、JetPEI(登録商標)試薬(2μl/μg プラスミド;PolyPlus-トランスフェクション)を使用して、トランスフェクションを行った。フラスコ毎に、113 μgのsf-CD164発現プラスミドを、2.3 μgの緑蛍光タンパク質(GFP)発現プラスミドと一緒に同時トランスフェクトした。次いで、トランスフェクション混合物を2 x T225フラスコに添加し、そして37℃(5% CO2)で6日間にわたってインキュベートした。GFPによる蛍光を質的に評価するために、第1日及び第6日に顕微鏡(Axiovert 10 Zeiss)によって、ポジティブのトランスフェクションを確認した。第6日(捕集日)に、2つのフラスコからの上澄み(100ml)をプールし、そして遠心分離し(4℃、400g)、固有の識別子を担持するポット内に入れた。
【0146】
C末端His標識付き組換えタンパク質を発現させる細胞に由来する100 ml及び500 mlの培地試料から始めて、精製プロセスを実施した。試料を1容積の低温緩衝液A(50 mM NaH2PO4; 600 mM NaCl; 8.7 % (w/v)グリセロール、pH7.5)で希釈することにより、最終溶液をそれぞれ200 ml及び1000 mlにした。試料を0.22 μm滅菌フィルター(Millipore, 500 mlフィルター・ユニット)を通して濾過し、そして四角い滅菌培地瓶(Nalgene)内に4℃で保持した。
【0147】
精製は、自動サンプル・ローダー(Labomatic)に接続されたVISIONワークステーション(Applied Biosystems)において、4℃で実施した。精製手順は、2つの連続ステップ、つまりNiイオン(4.6 x 50 mm, 0.83 ml)で負荷されたPoros 20 MC(Applied Biosystems)カラム上の金属アフィニティ・クロマトグラフィ、及びこれに続くSephadex G-25培地(Amersham Pharmacia)カラム(1.0 x 10 cm)上のゲル濾過から成った。
【0148】
第1のクロマトグラフィ・ステップに際して、金属アフィニティ・カラム(Ni-カラム)を30カラム容積のEDTA溶液(100 mM EDTA; 1M NaCl; pH 8.0)で再生させ、15カラム容積の100 mM NiSO4溶液で洗浄することによりNiイオンで再負荷し、10カラム容積の緩衝液Aで洗浄し、続いて7カラム容積の緩衝液B(50 mM NaH2PO4; 600 mM NaCl; 8.7 % (w/v)グリセロール、400 mM;イミダゾール、pH7.5)で洗浄し、そして最後に15 mMイミダゾールを含有する15カラム容積の緩衝液Aで平衡させた。試料をLabomatic サンプル・ローダーによって、200 mlサンプル・ループ内に移し、続いて10 ml/分の流量でNi金属アフィニティ・カラム上に装填した。1000 ml試料に対して、装填手順を5回繰り返した。N-カラムを12容積の緩衝液Aで洗浄し、続いて、20mMイミダゾールを含有する29カラム容積の緩衝液Aで洗浄した。この洗浄後、ゆるく付着された汚染タンパク質をカラムから溶離した。組換えHis標識付きタンパク質を、流量2 ml/分で10カラム容積の緩衝液Bを用いて、Ni-カラムから最後に溶離し、溶離されたタンパク質を1.6 ml画分で捕集した。
【0149】
第2クロマトグラフィ・ステップに際して、Sephadex G-25ゲル濾過カラムを2 mlの緩衝液D(1.137 M NaCl;2.7 mM KCl; 1.5 mM KH2PO4;8 mM Na2HPO4;pH 7.2)で再生させ、続いて、4カラム容積の緩衝液C(137 mM NaCl; 2.7 mM KCl; 1.5 mM KH2PO4;8 mM Na2HPO4;20 %(w/v)グリセロール;pH 7.4)で平衡させた。Ni-カラムから溶離されたピーク画分が、VISION上の一体化されたサンプル・ローダーを通して、自動的にSephadex G-25カラム上にローディングし、そしてタンパク質を流量2 ml/分で緩衝液Cを用いて溶離した。脱塩された試料を2.2 ml画分で回収した。画分を0.22 μm滅菌遠心分離フィルター(Millipore)を通して濾過し、アリコートし、凍結し、そして-80℃で保存した。試料のアリコートを、抗His抗体を用いたクーマシー染色及びウェスタン・ブロットによって、SDS-PAGE(4-12 % NuPAGEゲル; Novex)上で分析した。
【0150】
0.1 %クーマシー・ブルーR250染色溶液(30 %メタノール、10%酢酸)中で室温で1時間にわたって、NuPAGEゲルをインキュベートすることにより、クーマシー染色を実施した。続いて、バックグラウンドがクリアになり、タンパク質バンドがはっきりと目に見えるまで、ゲルを20 %メタノール、7.5 %酢酸中で脱染した。
【0151】
ウェスタン・ブロットに際しては、NuPAGEゲルからニトロセルロース膜へ、290mAで1時間にわたって4℃で、タンパク質を電気移動した。膜を緩衝液E(137 mM NaCl;2.7 mM KCl; 1.5 mM KH2PO4;8 mM Na2HPO4;0.1 % Tween 20, pH 7.4)中の5%粉乳で1時間にわたって室温でブロックし、続いて、緩衝液E中の2.5 %粉乳中の2種のウサギ・ポリクローナル抗His抗体(G-18及びH-15、それぞれ0.2μg/ml;Santa Cruz)と一緒に、4℃で一晩にわたってインキュベートした。室温でさらに1時間にわたってインキュベートした後、膜を緩衝液E(3 x 10分)で洗浄し、そして次いで2.5 %粉乳を含有する緩衝液E中に1/3000で希釈された二次HRP接合型抗ウサギ抗体(DAKO, HRP 0399)と一緒にインキュベートした。緩衝液Eで洗浄(3 x 10分)した後、膜を1分間にわたってECLキット(Amersham Pharmacia)で現像した。膜を続いてHyperfilm(Amersham Pharmacia)に晒し、フィルムを現像し、そしてウェスタン・ブロット画像を視覚的に分析した。
【0152】
ウシ血清アルブミンを有するBCAタンパク質アッセイ・キット(Pierce)を標準通り使用して、試料中のタンパク質の濃度を決定した。
【0153】
実施例2:細胞ベース・アッセイによって測定されたサイトカイン放出に対するsf-CD164の効果
下記in vitro細胞ベース・アッセイは、コンカナバリンA(Concanavalin A)(Con A)によって誘発されたサイトカイン分泌に対するsf-CD164の効果を測定する。サイトカイン分泌は、IL-2、IFN-γ、TNF-α、IL-5、IL-4及びIL-10に対するサイトカイン・ビード・アレイ(CBA)アッセイによって測定される。
【0154】
下記装置及びソフトウェアを使用した:
・96ウェル・マイクロタイター・プレート・フォトメーターEX(Labsystem)
・Graph Pad Software(Prism)
・Excelソフトウェア(Microsoft)
・フローサイトメーター(Becton-Dickinson)
・CBA Analysisソフトウェア
・細胞培養のためのフード
・細胞培養のためのインキュベーター
・遠心分離機
・ピペット
下記材料及び試薬を使用した:
・バフィー・コート
・DMEM(GIBCO)
・ヒト血清型AB(SIGMA)
・L-グルタミン(GIBCO)
・ペニシリン-ストレプトマイシン(GIBCO)
・Ficoll(PHARMACIA)
・細胞培養用96ウェル・マイクロタイター・プレート(COSTAR)
・コンカナバリンA(SIGMA)
・ヒトTh1/Th2サイトカインCBAキット(Becton-Dickinson)
・PBS(GIBCO)
・Falcon 50ml 滅菌管(Becton-Dickinson)
・ウシ血清アルブミン(BSA; SIGMA)
・グリセロール(MERCK)
・ジメチルスルホキシド(DMSO; SIGMA)
・96ウェル・マイクロタイター・プレート円錐底(NUNC)
・autoMACS(登録商標)セパレーター及びMACS細胞単離キット(Miltenyl Biotec)
細胞を、細胞ベース・アッセイのために下記のように単離した。
【0155】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、DMEMで希釈されたバフィー・コートから単離した。その後、50 mlのFalcon管内の15 mlのFicoll層上に、希釈血液25 mlをゆっくりと添加し、そして管を遠心分離した(2000 rpm, 20分、制動なしの室温で)。次いで間相(環)を捕集し、そして細胞を25 mlのDMEMで洗浄し、続いて遠心分離ステップを行った(1200 rpm、5分)。この手順を3回繰り返した。バフィー・コートはほぼ600 x 106の総細胞数をもたらした。
【0156】
白血球(T細胞、B細胞、単球)の部分個体群を、単離キットの製造元の指示書(MACS; Miltenyl Biotec)に従ってPBMCから調製した。上述のバフィー・コートからPBMCを単離した。単個細胞懸濁液を確保するように注意した。CD4 + T細胞を調製するために、CD4 + T細胞単離キットIIを使用した(カタログ番号130-091-155, Miltenyl Biotec)。PBMCをカウントし、10分間にわたって遠心分離し、そして1ml当たりの細胞数2.5 x 108の濃度(細胞数107当たり40 μlの緩衝液)で、低温PBS緩衝液(0.5% BSA及び2mM EDTAを補充されたリン酸緩衝生理食塩水pH7.2)中に再懸濁した。総細胞数107当たり10 μlのビオチン-抗体カクテル(キットとともに供給)を添加した。懸濁液をよく混ぜ、そして10分間にわたって4-8℃でインキュベートした。細胞数107当たり30 μlの緩衝液を添加し、続いて、総細胞数107当たり20 μlの抗ビオチンMicroBeadsを添加した。懸濁液をよく混ぜ、そしてさらに15分間にわたって4-8℃でインキュベートした。10-20x標識容積を添加することにより、細胞を緩衝液で洗浄し、そして10分間にわたって300xgで遠心分離した。上澄みを完全に取り除き、そして細胞を、500 μlの緩衝液中の細胞数が108になるまで再懸濁した。autoMACS(登録商標)セパレーターで磁気分離を行った。製造元の指示書に従って、autoMACS(登録商標)セパレーターを準備してプライミングした。磁気標識付き細胞を含有する管をautoMACS(登録商標)セパレーター内に入れ、そしてプログラム「減損」を選んだ。ネガティブ画分を捕集した(出口「neg1」)。この画分は、富化されたCD4 + T細胞をあらわす。所望の場合には、ポジティブな画分を続いて捕集した(出口「pos1」)。この画分は、磁気標識が付けられた非CD4 + T細胞を表す。
【0157】
細胞ベース・アッセイのために適用された条件は下記のものである:
- 2%グリセロール中最終100 μlにおいて、96ウェル・プレートの1ウェル当たりの細胞数100 000、
- 5 ng/mlのマイトジェン・コンカナバリンA(ConA)、
- 各アッセイに対して48時間。
【0158】
下記のものを混合することにより、各ウェル内に細胞を準備した:
- DMEM + 2.5%ヒト血清 + 1% L-グルタミン + 1%ペニシリン-ストレプトマイシン中で希釈された80 μlの細胞1.25 x 106個/ml;
- PBS + 20%グリセロール中で希釈されたsf-CD164を含有する10 μlの溶液(タンパク質の最終希釈率は1/10である);
- 10 μl ConA。
【0159】
48時間後、細胞の上澄みを捕集し、そしてヒト・サイトカインをヒトTh1/Th2サイトカインCBAキット(Becton-Dickinson)によって測定した。
【0160】
マイクロウェル・プレートから生じた試料と混合する前に数秒間にわたって強力に渦流形成することにより、混合されたヒトTh1/Th2捕捉ビード懸濁液を調製した。それぞれの被分析アッセイに際して、それぞれの捕捉ビードの10 μlアリコートを、「混合された捕捉ビード」と標識付けされた単一の管内に添加した。ビード混合物を十分に渦流形成した。アッセイ希釈剤(20 μlの上澄み + 60 μlのアッセイ希釈剤)を使用して、上澄みを希釈した(1:4)。次いで、試料を96ウェル・マイクロタイター・プレート円錐底(Nunc)内に移す前に、試料希釈物を混合した。
【0161】
希釈された上澄み50 μlを96ウェル・マイクロタイター・プレート円錐底(Nunc)内に添加することにより、ヒトTh1/Th2サイトカインCBAアッセイを実施した。混合された捕捉ビード50 μlを添加し、続いてヒトTh1/Th2 PE検出試薬50 μlを添加した。次いでプレートを3時間にわたってRTでインキュベートし、そして直接的な露光から保護し、続いて5分間にわたって1500rpmで遠心分離した。次いで上澄みを注意深く廃棄した。後続のステップにおいて、洗浄緩衝液200 μlをそれぞれのウェルに2回添加し、5分間にわたって1500rpmで遠心分離し、そして上澄みを注意深く廃棄した。その後、洗浄緩衝液130 μlをそれぞれのウェルに添加することにより、ビード・ペレットを再懸濁した。試料をフローサイトメーター上で最後に分析した。CBA アプリケーション・ソフトウェア、Activity Base及びMicrosoft Excel ソフトウェアを使用して、データを分析した。
【0162】
ヒトPBMC細胞(混合物)及び単離された細胞からのサイトカイン放出に対するsf-CD164の効果を、6種のサイトカイン:TNF-α、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5又はIL-10に関して測定した。これらのサイトカインの放出は両細胞ベース・アッセイにおいて、投与量に応じてsf-CD164によって有意に減じられた(IC50を表IIIに要約した)。IL-2及びTNF-αの2つの投与量依存性曲線例を、ヒトPBMC及び単離されたCD4+T細胞に関して、それぞれ図2及び図3に示す。
【0163】
実施例3:LPS誘発型TNF-α放出動物モデルにおいて測定された、サイトカイン放出に対するsf-CD164投与の効果
マウスにおけるリポ多糖(LPS)誘発型TNF-α放出モデルを、国際公開第98/38179号パンフレットに従って準備した。LPS(O111:B4; SIGMA)をC3H/HeNマウス(Charles River, France)に注射した(0.3 mg/kg, i.p.)。90分後に血液を採取し、そしてELISAキット(R&D)を使用して血漿TNF-αを測定した。sf-CD164及びデキサメタゾンをPBS中に希釈し、そしてLPS投与の15分前に注射した(sf-CD164を0.03、0.1及び0.3 mg/kg, iv;又はデキサメタゾンを0.1 mg/kg, sc)。
【0164】
正の対照として使用された抗炎症化合物デキサメタゾンは、LPS誘発型TNF-α放出を72%だけ有意に(p<0.001)阻害した。sf-CD164は0.3 mg/kgで、LPS誘発型TNF-α放出を38%だけ有意に(p<0.01)阻害した(図4)。0.03及び0.1 mg/kgのより低い投与量は、TNF-αを阻害することはできたが、しかしこの阻害は統計的にはあまり有意ではなかった。
【0165】
実施例4:2種の動物モデルにおいて測定された、免疫細胞動員に対するsf-CD164投与の効果
腹膜におけるチオグリコール酸塩誘発型白血球動員のアッセイによって、免疫細胞動員に対するsf-CD164投与の効果を最初に試験した(図5)。
【0166】
マウス(系統C3H、生後8週間、n=6;Elevage Janvier, France)に、0.02% BSAを含有するPBS中に希釈されたsf-CD164(0.03、0.1及び0.3 mg/kg, iv)又はデキサメタゾン(1 mg/kg, sc)を注射した。試験分子投与から15分後に、チオグリコール酸塩(1.5%, 40 ml/kg, ip; SIGMA)を注射した。試験分子の第2の投与を24時間後に行った。チオグリコール酸塩による攻撃から48時間後に動物を犠牲にし、そして腹膜腔の洗浄を、2 x 5ml PBS-1mM EDTA(+4℃)を使用して行った。遠心分離(3000rpmで10分間)後、ぺレットを1 ml PBS中に再懸濁した。Beckman/Coulterカウンターを使用して、腹膜細胞をカウントした。
【0167】
デキサメタゾンは、マクロファージの動員を69%だけ有意に(p<0.001)阻害した。この効果は投与量に依存した。sf-CD164(0.03、0.1及び0.3 mg/kg)は、マクロファージの腹膜におけるチオグリコール酸塩誘発型動員をそれぞれ5%、26%(p<0.05)及び43%(p<0.001)だけ有意に阻害し、また、腹膜におけるリンパ球(それぞれ14%、18%及び34%)及び好中球(それぞれ3%、9%及び23%)の動員を有意に阻害した。
【0168】
同様の結果が、好中球及びリンパ球の腹膜におけるLPS誘発型動員において得られた(図5)。
【0169】
上述の同じ投与プロトコルを、LPS(O111:B4; SIGMA; 0.9 mg/kg, 40 ml/kg, ip)と一緒に使用した。Sf-CD164(0.03、0.1及び0.3 mg/kg)は、好中球の腹膜におけるLPS誘発型動員をそれぞれ9%、35%(p<0.001)及び43%(p<0.001)だけ有意に阻害した。同じ投与量でSf-CD164は、活性化リンパ球の動員をもそれぞれ8%、26%(p<0.05)及び47%(p<0.001)だけ有意に阻害した。デキサメタゾン(0.1 mg/kg)は、活性化リンパ球の動員を有意に(p<0.001)阻害した。
【0170】
実施例5:MBP特異的抗原の処理及び提示に関する細胞ベース・アッセイにおけるsf-CD164の効果
ミエリン塩基性タンパク質ペプチドAc1-11(MBP(Ac1-11))によって誘発されるミエリン塩基性タンパク質(MBP)特異的T細胞の増殖に対する、sf-CD164の効果を試験するためのアッセイを開発した。ミエリン塩基性タンパク質(MBP)の免疫優性ペプチドAc1-11で上皮免疫化(ECi)することにより、Ac1-11特異的T細胞受容体に関してトランスジェニックであるマウスが、試験用アレルギー脳脊髄炎(EAE)の誘発形態及び自然形態の両方に対して保護されることが判っている。
【0171】
B10.PL及びMBPトランスジェニック・マウスの脾臓を捕集し、そして均質化することにより、単個細胞懸濁液を得た。Gay溶液で赤血球を溶解した後、脾細胞をPBS中に再懸濁し、洗浄し、そしてカウントした。
【0172】
単離処理後、トリパンブルー色素排除によれば、細胞生存可能性は90%を上回った。次いで、B10.PL抗原提示細胞(APC)に、25Gyのg-放射線(刺激因子)を当て、洗浄し、そして細胞数1.9*106/mlで完全培地中に再懸濁した。応答細胞個体群を、完全培地において細胞数3.8*106/mlで調節した。1ウェル当たり80 μlの各細胞懸濁液を96ウェルプレート内で混合した。次いで抗原を20 μlの容積:1ウェル当たり10 μg/mlのマウスMBP又は1 μg/mlのAc 1-11 MBPペプチドで添加した(適切な負の対照はそれぞれBSA、MSA及び無関連なMBPに由来するペプチドである)。タンパク質又は小分子を20 μlの容積で添加し、次いで5% CO2を有する加湿雰囲気中で37℃でインキュベートした。3日間の培養後、上澄みを捕集し、そして-80℃で凍結し、その後、サイトカイン生成の試験を行うか、或いは、1 μCiの3Hチミジンを添加し、そして14-16時間にわたってさらにインキュベートした後、放射能の取込みに関してカウントした。
【0173】
Sf-CD164(50 μg/ml)は、Ac1-11(1 μg/ml;図6)によって誘発されたMBP特異的T細胞の増殖を有意に阻害した。このように、Sf-CD164又は可溶性CD164は、多発性硬化症の治療に有用であり得る。
【0174】
実施例6:劇症肝炎の動物モデルにおけるSf-CD164投与の効果
Sf-CD164タンパク質は、ConAで刺激されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)によって、或る特定のサイトカインの分泌を阻害することがin vitroで示されている。サイトカインは、T細胞で誘発されるConAで誘発される肝炎において重要な役割を演じるので(Seino他、2001, Annals of surgery 234, 681; Kusters S, Gastroenterology 111(2):462-71, 1996; Toyonaga他、1994, PNAS 91, 614-618)、我々はこのモデルにおいてSf-CD164を試験した。
【0175】
メスのC57/BL6マウス(生後8週;IFFA CREDO)を使用した。一般に、1試験群当たり7匹の動物を使用する。12時間の明-暗サイクル下の標準的な条件においてマウスを維持し、放射線処理された食品及び水を自由に与えた。
【0176】
コンカナバリンA(ConA; Sigma参照番号C7275)を、18mg/kg ivで注射し、そして血液試料を注射から1.30時間後及び8時間後に採取した。ConA注射の30分前にSf-CD164を注射した。正の対照にはデキサメタゾン(0.1 mg/kg)を注射し、そして負の対照にはPBS-BSA 1.8%グリセロールを注射した。犠牲にしたときに、血液を心臓から採取した。ConA注射から1.5時間後に、TH1/TH2 CBAアッセイを用いて、IL-6及びIFN-ガンマ・サイトカイン・レベルを測定した。COBAS機器(Hitachi)を用いて、トランスアミラーゼ血液パラメーターを見極めた。
【0177】
試験は、sf-CD164(1 mg/kg)は、sf-CD164の皮下送達後、劇症肝炎を模倣するマウス・モデルにおける肝臓の損傷を防ぐことを示す。それというのも、sf-CD164は関連パラメーター、例えばトランスアミラーゼ・レベル(ALAT)、IFN-γ及びIL-6サイトカイン・レベルを減少させるからである(図7)。ALATレベルの減少は、IFN-γ及びIL-6の両レベルの減少に帰因し得る。種々異なるサイトカインが、ConA注射後の肝臓損傷に関与している。例えば抗TNF-アルファ抗体が、疾患に対する保護をもたらし(Seino他、2001, Annals of surgery 234, 681)、そしてNKT細胞によるIL-4生成の阻害は、マウスにおけるT細胞媒介型肝炎において肝臓を保護することが判った(Ajuebor他、2003 J. Immunology 170, 5252-9)。
【0178】
【表1】

【0179】
【表2】

【0180】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】A)完全長のヒトCD164(hCD164; NCBI Acc. No. NP_006007;配列番号3)、ヒトCD164−デルタ4(hCD164-DELTA4;NCBI Acc. No. AAG53908;配列番号4)、CD164−デルタ5(hCD164-DELTA5;NCBI Acc. No. AAG53907;配列番号5)、及びMGC-24(hMGC-24;NCBI Acc. No. Q04900;配列番号6)のアミノ酸アラインメント。シグナル配列を四角で囲む。細胞外領域の最後を矢印で示す。グリコシル化部位をアスタリスクで示す。(B)CD164(配列番号3のアミノ酸24-163及び配列番号2のアミノ酸1-140に相当する、配列番号1のアミノ酸1-140)、MGC-24(配列番号6のアミノ酸24-163)、CD164−デルタ4(配列番号4のアミノ酸24-150)、CD164−デルタ5(配列番号5のアミノ酸24-145)、配列番号7852(欧州特許第1033401号明細書;配列番号7のアミノ酸24-163)、及びNOV25(国際公開第02/098917号パンフレット;配列番号8のアミノ酸24-161)の細胞外ドメインの成熟形態のアミノ酸アラインメント。配列番号1とは異なるNOV25内の位置に下線を付す。
【図2】ConAで刺激されたヒトPBMC細胞混合物にsf-CD164を投与することによる、IL-2(A)及びTNF-α(B)の発現に対する効果。X軸は、sf-CD164濃度(μg/ml)を表す。Y軸は分泌により放出されたサイトカインのパーセンテージを示す。
【図3】ConAで刺激されたヒトCD4 T細胞混合物にsf-CD164を投与することによる、IL-2(A)及びTNF-α(B)の発現に対する効果。X軸は、sf-CD164濃度(μg/ml)を表す。Y軸は分泌により放出されたサイトカインのパーセンテージを示す。
【図4】LPS誘発型TNF-α放出のための動物モデルにおけるTNF-α放出に対するsf-CD164投与の効果。アスタリスクは統計的有意性を示す。
【図5】腹膜におけるチオグリコール酸塩誘発型(A)又はLPS誘発型(B)の細胞動員のための動物モデルにおける細胞移動に対する、sf-CD164投与の効果。Y軸は1 μl当たりの細胞の濃度(Aの場合マクロファージ、Bの場合活性化されたリンパ球)を示す。アスタリスクは統計的有意性を示す。
【図6】自己抗原MBP特異的T細胞の増殖に対する、sf-CD164投与の効果。Y軸は、分裂細胞による標識付きヌクレオチド(3Hチミジン)の組み込みに関連する放射能(CPM、1分当たりのカウント)を表す。アスタリスクは統計的有意性を示す。
【図7】トランスアミナーゼ・レベル(ALAT; A)、IL-6放出(B)、及びIFN-γ(C)放出に対する、ConA誘発型肝炎動物モデルへのsf-CD164投与の効果。Dexaはデキサメタゾンを表す。アスタリスクは統計的有意性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防のための薬剤を製造するためのヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質の使用。
【請求項2】
前記タンパク質が:
a) 配列番号1、又は
b) ヒトCD164のシグナル配列と融合している配列番号1
から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記可溶性タンパク質が、配列番号1の活性突然変異タンパク質又はイソ型である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記可溶性タンパク質が
a) MGC-24(配列番号6);又は
b) 下記ヒトCD164イソ型:CD164−デルタ4(配列番号4)、CD164−デルタ5(配列番号5)のいずれかの細胞外ドメインの成熟形態
から選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記可溶性タンパク質がグリコシル化されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記可溶性タンパク質が、配列番号1で示される位置のいずれかでグリコシル化されている、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記可溶性タンパク質がリン酸化されている、請求項1から6までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記可溶性タンパク質が、配列番号1で示される位置のいずれかでリン酸化されている、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記可溶性タンパク質が、ミリストイル化されている、請求項1から8までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記可溶性タンパク質が、配列番号1で示される位置のいずれかでミリストイル化されている、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記可溶性タンパク質が、可溶性融合タンパク質である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記可溶性融合タンパク質が、シグナル配列を含む、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記可溶性融合タンパク質が、ヒスチジンタグを含有する、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項14】
前記可溶性融合タンパク質が、配列番号2である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記可溶性融合タンパク質が、免疫グロブリンのFc領域を含む、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項16】
前記可溶性タンパク質が、活性誘導体、タンパク質分解抵抗性修飾形態、接合体、複合体、画分、前駆体及び/又は塩である、請求項1から15までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患の処置及び/又は予防のための薬剤を製造するためのヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の使用。
【請求項18】
前記炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患が:多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、関節リウマチ、若年性突発性関節炎、乾癬性関節炎、骨関節炎、脊椎関節症、炎症性大腸炎、内毒素血、クローン病、スティル病、ブドウ膜炎、ヴェグナー肉芽腫、ベーチェット病、強皮症、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、壊疽性膿皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、心筋炎、乾癬、全身性硬化症、C型肝炎、アレルギー、アレルギー性炎、アレルギー性気道炎症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腸間膜梗塞、卒中、潰瘍性大腸炎、アレルギー喘息、気管支喘息、腸間膜梗塞、卒中、線維症、虚血後の筋肉、腎臓及び心臓の炎症、皮膚炎、糸球体腎炎、若年発症I型糖尿病、過敏症症候群、ウィルス性又は急性肝臓疾患、アルコール性肝不全、結核、敗血性ショック、HIV感染、移植片対宿主病(GVHD)、及びアテローム性動脈硬化から成る群から選択される、請求項1から17までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
個体中の1又は複数のサイトカインの発現を阻害する方法であって、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質を含む組成物を前記個体に投与することを含む、個体中の1又は複数のサイトカインの発現を阻害する方法。
【請求項20】
前記サイトカインが、TNF-α、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5又はIL-10である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患の処置のために、医薬として許容される1又は複数の賦形剤の存在において、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質を含む、医薬組成物。
【請求項22】
サイトカインの分泌及び発現のインヒビターとしての化合物の特性を同定して比較するための、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質を含んで成る、スクリーニング・アッセイ。
【請求項23】
サイトカインの分泌及び発現のインヒビターとしての化合物の特性を同定して比較するためのキットであって、ヒトCD164の細胞外ドメインの成熟形態(配列番号1)と85%以上の相同性を有する配列を含む可溶性タンパク質を含んで成るキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−528159(P2006−528159A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520839(P2006−520839)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051596
【国際公開番号】WO2005/011728
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(599177396)アプライド リサーチ システムズ エーアールエス ホールディング ナームロゼ フェンノートシャップ (70)
【Fターム(参考)】