説明

炎症状態およびアレルギー状態の治療のためのアンドロスタン誘導体およびβ2−アドレナリン受容体を含む吸入投与用の医薬製剤

【課題】呼吸管の炎症障害の治療において治療上有用な効果を有する吸入投与用の医薬製剤の提供。
【解決手段】長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬とともに式(I)の化合物またはその溶媒和物を含む医薬製剤。当該製剤は24時間以上の期間にわたって喘息等のアレルギー症状、炎症障害の治療に有用な効果を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンドロスタン類およびβ-アドレナリン受容体作働薬の抗炎症および抗アレルギー製剤の新規製剤ならびにその製造方法に関するものである。本発明はまた、前記化合物を含む医薬製剤およびその治療上の使用、特に炎症状態およびアレルギー状態の治療における使用に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
抗炎症性を有するグルココルチコイドは既知であり、喘息や鼻炎などの炎症性の障害または疾患の治療に広く用いられている。例えば、米国特許第4335121号には、6α,9α-ジフルオロ-17α-(1-オキソプロポキシ)-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル(プロピオン酸フルチカゾンの一般名で知られている)およびその誘導体が開示されている。グルココルチコイドの使用は通常、特に小児への使用では、副作用が生ずる危険性を懸念して数クォーターに限定されている。グルココルチコイドの副作用として警戒されているものには、視床下部下垂体副腎軸(HPA)の抑制、小児における骨の成長および高齢者における骨密度に及ぼす影響、眼の合併症(白内障形成および緑内障)および皮膚の萎縮が含まれる。ある種のグルココルチコイド化合物はまた、複雑な代謝経路を有し、その経路で活性代謝産物が産生されることによってその化合物の薬力学および薬物動態の理解が困難なものとなっている。最近作られたステロイドは以前に導入されたものよりもはるかに安全になってはいるが、優れた抗炎症性を持ち、予測可能な薬力学特性および薬物動態特性を有し、副作用のプロフィールが有望で、治療法が好都合であるような新たな分子の製造は依然として研究目的となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4335121号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人らの出願PCT.GB.01.03495で本出願人らは、これらの目的をかなり満足する新規なグルココルチコイド化合物を確認した。
【0005】
グルココルチコイドおよびβ-アドレナリン受容体作働薬を含む現行の組み合わせ剤は通常、1日2回の投与法で投与される。
【0006】
1日2回投与法と比べて1日1回投与の方が患者にはかなり簡便であり、患者のコンプライアンスが高くなり、従って疾患の管理が良好になるであろうと考えられ、そのような投与法を提供する薬剤の探求が行われてきた。
【0007】
そこで、安全かつ効果的な1日1回投与の組み合わせ製剤を提供することが、本発明の一つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、製剤が24時間以上の期間にわたって呼吸管の炎症障害の治療において治療上有用な効果を有する、長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬とともに下記式(I)の化合物:
【化1】

【0009】
またはその溶媒和物を含む、吸入投与用の医薬製剤が提供される。
【0010】
式(I)の化合物の化学名は、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステルである。
【0011】
下記において式(I)の化合物について言及する場合、それは式(I)の化合物およびその溶媒和物、特には製薬上許容される溶媒和物が含まれる。
【0012】
溶媒和物の例には水和物などがある。
【0013】
一部の実施形態では、好ましい長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬には、サルメテロールまたはフォルモテロールなどがある。
【0014】
特に好ましい長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬は、24時間にわたる治療効果を有する。
【0015】
一部の実施形態では、好ましい長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬には、WO02066422、WO02070490およびWO02076933に記載のものなどがある。
【0016】
特別に好ましい長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬には、下記式(M)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物などがある。
【化2】

【0017】
[式中、
mは2〜8の整数であり;
nは3〜11の整数であり;
ただしm+nは5〜19であり;
R11は-XSO2NR16R17であり、Xは-(CH2)p-またはC2-6アルケニレンであり;
R16およびR17は独立に、水素、C1-6アルキル、C3-7シクロアルキル、C(O)NR18R19、フェニルおよびフェニル(C1-4アルキル)-から選択され;
あるいはR16とR17がそれらが結合している窒素と一体となって、5員、6員または7員の含窒素環を形成しており;R16およびR17はそれぞれ場合によって、ハロ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ置換C1-6アルコキシ、-CO2R18、-SO2NR18R19、-CONR18R19、-NR18C(O)R19または5員、6員もしくは7員の複素環から選択される1個もしくは2個の基によって置換されていても良く;
R18およびR19は独立に、水素、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、フェニルおよびフェニル(C1-4アルキル)-から選択され;
pは0〜6、好ましくは0〜4の整数であり;
R12およびR13は独立に、水素、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロ、フェニルおよびC1-6ハロアルキルから選択され;
R14およびR15は独立に、水素およびC1-4アルキルから選択され;ただし、R14およびR15における炭素原子の総数は4を超えない。]
式(I)の化合物は、特に局所投与した際に、有益な抗炎症作用または抗アレルギー作用を有している可能性があり、それは例えば、それらの化合物の長期作用性を有しながらグルココルチコイド受容体への結合能およびその受容体を介して応答を引き出す能力によって示される。従って、式(I)の化合物は、特に1日1回の療法で、炎症性および/またはアレルギー性障害の治療に有用である。
【0018】
好ましくは本発明の医薬製剤において、式(I)の化合物またはその溶媒和物および長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬はいずれも、粒子形状で存在する。
【0019】
本発明の医薬製剤は、1以上の賦形剤を含むことができる。
【0020】
本明細書で使用される場合の「賦形剤」という用語は、無毒性であって、有害な形で組成物の他の成分と相互作用しない実質的に不活性な材料を意味し、炭水化物、有機塩および無機塩、ポリマー、アミノ酸、リン脂質、湿展剤、乳化剤、界面活性剤、ポロキサマー、プルロニック類(pluronics)およびイオン交換樹脂ならびにこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではなく、以下にその例を示すが、これらが全体を網羅しているわけではない。
【0021】
すなわち、
果糖などの(それに限定されるものではない)単糖類;乳糖などの(それに限定されるものではない)二糖類ならびにその組み合わせおよび誘導体;セルロースなどの(それに限定されるものではない)多糖類ならびにその組み合わせおよび誘導体;デキストリン類などの(それに限定されるものではない)オリゴ糖類ならびにその組み合わせおよび誘導体;ソルビトールなどの(それに限定されるものではない)多価アルコールならびにその組み合わせおよび誘導体等の炭水化物;
リン酸ナトリウムもしくはカルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどの(それらに限定されるものではない)有機および無機塩ならびにその組み合わせおよび誘導体;
ゼラチンなどの(それに限定されるものではない)天然生体分解性タンパク質ポリマーならびにその組み合わせおよび誘導体;キチンおよびデンプン、架橋デンプンなどの(それらに限定されるものではない)天然生体分解性多糖類ポリマーならびにその組み合わせおよび誘導体;キトサンの誘導体などの(それに限定されるものではない)半合成生体分解性ポリマー;ポリエチレングリコール類(PEG)、ポリ乳酸(PLA)などの(それらに限定されるものではない)合成生体分解性ポリマー;ポリビニルアルコールなどの(それに限定されるものではない)合成ポリマーなどのポリマーならびにその組み合わせおよび誘導体;
ロイシンなどの非極性アミノ酸などの(それに限定されるものではない)アミノ酸ならびにその組み合わせおよび誘導体;
レシチン類などのリン脂質ならびにその組み合わせおよび誘導体;
組み合わせおよび誘導体を含むアカシアガム、コレステロール、脂肪酸などの(それらに限定されるものではない)湿展剤/界面活性剤/乳化剤;
ポロキサマー188、プルロニック(登録商標)F-108などの(それらに限定されるものではない)ポロキサマー類/プルロニック類ならびにその組み合わせおよび誘導体;
アンバーライトIR120などの(それに限定されるものではない)イオン交換樹脂ならびにその組み合わせおよび誘導体;
ならびに上記賦形剤の組み合わせである。
【0022】
本発明の医薬製剤は好ましくは、粒子状の担体、好ましくは乳糖をさらに含む。
【0023】
本発明の医薬製剤は好ましくは、液化推進ガスをさらに含む。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、1日1回投与での呼吸管の炎症障害の治療方法において、本発明の第1の態様による医薬製剤を投与する段階を有する方法が提供される。
【0025】
本発明の第3の態様によれば、製剤が24時間以上の期間にわたって呼吸管の炎症障害の治療において治療上有用な効果を有する、長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬とともに下記式(I)の化合物:
【化3】

【0026】
またはその溶媒和物を含む医薬製剤を複数用量含み、その用量が吸入による前記製剤の1日1回投与に好適なものである吸入器が提供される。
【0027】
好ましくは式(I)の化合物もしくはその溶媒和物ならびに長期作用性β−アドレナリン受容体作働薬がいずれも、吸入器中に粒子形態で存在する。
【0028】
本発明の吸入器において、好ましくは前記製剤はさらに、粒子状担体、特に乳糖を含む。
【0029】
本発明の吸入器では、前記製剤は好ましくは、液化推進ガスをさらに含む。
【0030】
好ましくは前記吸入器は、粒子状の下記式(I)の化合物を含む本発明の医薬製剤を複数用量含む。
【化4】

【0031】
本発明の吸入器において、呼吸管の炎症障害は好ましくは喘息である。
【0032】
本発明による吸入器において、長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬は、上記の式(M)の化合物である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】非溶媒和の式(I)の化合物の形態1、形態2および形態3多形体のXRPDプロファイルを重ねた図を示す。
【図2】非溶媒和の式(I)の化合物の形態1、形態2ならびに形態1および形態2多形体の50:50混合物のXRPDプロファイルを重ねたものを、形態1および形態2の50:50混合物のプロファイルの時間依存性とともに示す。
【図3】非溶媒和型の式(I)の化合物の形態1多形体のDSCおよびTGAプロファイルを示す。
【図4】5つの時間点で得られた非溶媒和形態3の式(I)の化合物のXRPDプロファイルの時間依存性を示す。
【図5】図4のXRPD実験における温度および時間プロファイルを示す。
【図6】カプセルの形態での好適な医薬キャリアを示す。
【図7】図7aは好適な細長い医薬ブリスタ帯片の側断面図であり、図7bは図6aで示した医薬ブリスタ帯片の平面透視図を示す。
【図8】粉末貯留部を有する乾燥粉末吸入器(DPI)の断面図を示す。
【図9】細長い医薬ブリスタ帯片を有する乾燥粉末吸入器(DPI)の断面図を示す。
【図10】計量医薬吸入器に関する図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
化合物(I)は、in vitro系でのラットおよびヒトにおいて、非常に効率の高い肝臓代謝を受けて、単一の主要代謝物として17-βカルボン酸(X)を生じる。この代謝物は合成されており、in vitroの機能的グルココルチコイドアッセイで親化合物より1000倍強弱い活性を示している。
【化5】

【0035】
この効率の良い肝臓代謝はラットでのin vivoデータによって反映されており、肝臓血流に近い速度での血漿クリアランスおよび広範囲の一次通過代謝と一致する<1%の経口バイオアベイラビリティーが示されている。
【0036】
ヒト肝細胞でのin vitro代謝試験では、化合物(I)がプロピオン酸フルチカゾンと同じように代謝されるが、(I)の不活性な酸代謝物への変換が、プロピオン酸フルチカゾンの場合の約5倍の速さで起こることが明らかになっている。この非常に効率の高い肝臓不活性化は、ヒトにおける全身曝露を低減することで、安全性プロファイルの改善につながることが期待されると考えられる。
【0037】
吸入ステロイドは肺からも吸収され、その吸収経路は全身曝露に大きく寄与する。従って、肺吸収低下によって、安全性プロファイルが改善されると考えられる。式(I)の化合物を用いた研究で、麻酔を施したブタの肺への乾燥粉末投与後のプロピオン酸フルチカゾンの場合と比較して、式(I)の化合物への全身曝露の方がかなり低いことが明らかになっている。
【0038】
驚くべきことに本発明者らは、式(I)の化合物がヒトにおいてプロピオン酸フルチカゾンより有意に長い平均吸収時間(MAT)を示すことも認めた。測定の結果、式(I)の化合物が平均12時間の平均吸収時間を有し、プロピオン酸フルチカゾンが平均2.1時間のMATを有することが明らかになった。血漿濃度時間データの数学的逆畳み込みでは、肺投与量の90%が吸収されるのに要する時間が平均で、プロピオン酸フルチカゾンでは11時間であるのに対して式(I)の化合物では21時間であることがわかる。式(I)の化合物の経口バイオアベイラビリティーが非常に低いことから、全身曝露が主として肺からの吸収の結果であることが明らかになっている。これは、式(I)の化合物が、プロピオン酸フルチカゾンと比較して肺での滞留時間が有意に長いことを示唆するものであると考えられる。
【0039】
肺での滞留時間が長くなることで、作用期間が長くなる可能性があり、1日全身曝露が低くなることで、安全性プロファイルが改善される可能性があり、それによって式(I)の化合物は1日1回投与された場合に所望の抗炎症効果を示すことができるようになると考えられている。1日1回投与は、プロピオン酸フルチカゾンに通常用いられる1日2回投与の投与法と比較して、患者に対する簡便性はかなり高いものと考えられる。
【0040】
in vitroでのヒト肺組織アフィニティ実験は、ヒト肺組織に対する式(I)の化合物のかなり高いアフィニティが示している。
【0041】
これは、ヒト気管支上皮細胞を用いた細胞輸送および蓄積試験によっても裏付けられている。これらの試験は、プロピオン酸フルチカゾンと比較して、式(I)の化合物の方が細胞層を横断するフラックスが小さいことを示している。これらの試験はさらに、プロピオン酸フルチカゾンと比較して細胞層内での式(I)の化合物の蓄積が大きいことも示している。
【0042】
本発明の製剤が有用である疾患状態の例としては、喘息(アレルゲン誘発喘息反応など)、鼻炎(枯草熱を含む)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患および線維化症などの鼻、咽喉または肺の炎症状態などがある。
【0043】
本発明の製剤は、喘息およびCOPD、特には喘息などの呼吸管の炎症障害の治療において最も有用であると予想される。
【0044】
当業者には、本明細書で治療について言及する場合、それが予防ならびに確定した状態の治療にも拡大されることは明らかであろう。
【0045】
上記のように本発明の製剤は、ヒト薬または動物薬において、特には抗炎症剤および抗アレルギー剤において有用である。
【0046】
そこで本発明のさらに別の態様として、ヒト薬または動物薬での、特には炎症状態および/またはアレルギー状態の患者の治療において、特別には1日1回の投与で使用される本発明の製剤が提供される。
【0047】
本発明の別の態様によれば、炎症状態および/またはアレルギー状態の患者の治療における、特には1日1回投与における医薬の製造での本発明の製剤の使用が提供される。
【0048】
さらに別のまたは代替の態様において、炎症状態および/またはアレルギー状態のヒトまたは動物被験者の治療方法において、そのヒトまたは動物被験者に対して、特に1日1回投与で有効量の本発明の製剤を投与する段階を有する方法が提供される。
【0049】
本発明の製剤は、いずれか簡便な形での投与用に製剤することができることから、本発明はまた、その範囲内に、所望に応じて1以上の生理的に許容される希釈剤もしくは担体との混合で式(I)の化合物またはその生理的に許容される溶媒和物を含む医薬組成物も包含するものである。
【0050】
さらに、そのような医薬組成物の製造方法において、前記成分を混合する段階を有する方法が提供される。
【0051】
本発明による化合物は例えば、通気または吸入用に製剤することができる。
【0052】
有利には肺への局所投与用の組成物としては、乾燥粉末組成物および噴霧剤組成物などがある。
【0053】
肺への局所送達用の乾燥粉末組成物は、例えば、吸入器または通気器で用いるための、例えばゼラチンの予め計量されたカプセルおよびカートリッジの形とすることができる。その製剤の包装は、単回投与または多回投与のいずれに適したものでもよい。多回投与の場合には、該製剤をあらかじめ計量した形のもの(例えば、ディスカス(Diskus)(GB2242134参照)またはディスクヘラー(Diskhaler)(GB2178965、2129691および2169265参照)など)または使用の際に計量する形のもの(例えば、タービュヘラー(Turbuhaler)(EP69715参照)など)とすることができる。単回投与用の器具の1例としては、ロタヘラー(Rotahaler)(GB2064336参照)が挙げられる。ディスカス 吸入器は、長手方向に間隔をあけた複数のくぼみを有するベースシート、およびそれに対して密封するが剥離可能な蓋のシートから形成され、複数の容器を画定する長い帯片を含み、各容器はその中に本発明の第1の態様による製剤を好ましくは乳糖と一緒に含む吸入可能な剤型を有している。好ましくは、その帯片はロールとして巻くために十分な柔軟性を有するものである。蓋のシートおよびベースのシートは好ましくは先端部分を有し、それはお互いにシールされておらず、その先端部分のうちの少なくとも一方は巻き取り手段に連結するために作られている。また、ベースと蓋シートの間の密封がそれらの長さの全体にわたっていることが好ましい。蓋シートはベースシートから、ベースシートの末端から長手方向に剥離可能であることが好ましい。
【0054】
乾燥粉末製剤は、混合物もしくは複合体粒子として、あるいは複合体粒子の混合物として提供することができる。混合物製剤は通常、活性薬剤の微粉化した別個の粒子と乳糖もしくはデンプンなどの好適な粉末基剤を含む。乳糖の使用が好ましい。粉末基剤は、活性薬剤を効果的に計量可能とし、乾燥粉末組成物の流動特性を改善する希釈剤として働く。混合物にはまた、当業者には明らかなように、流動促進剤、化学的もしくは物理的安定剤、希釈剤および香味被覆剤などの別の成分が含まれていても良い。各カプセルまたはカートリッジは、式(I)の化合物20μg〜10mgおよび長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬を含むことができる。
【0055】
組成物粒子は、粉末組成物内のある粒子において、1以上の活性薬剤と適宜に1以上の別の賦形剤を含むことができる。そのような賦形剤は、そのような活性薬剤を含む粉末粒子からの活性薬剤の放出を持続させたり制御する上で好適なものであることができる(例えば、乾燥粉末粒子では疎水性もしくは親水性のコーティング剤もしくはマトリクス形成剤の使用による)。さらにまたは別の形態として、賦形剤は、医薬粒子の物理的および/または化学的安定性を高めたり、ないしは粉末組成物の粉末流動特性を高めることで、乾燥粉末の分散性を高めることができる。そのような賦形剤は、活性薬剤または活性薬剤とのマトリクスを形成することができるか、あるいは活性薬剤または活性薬剤をコーティングするか、それによってコーティングされていても良い。さらに、そして別の形態として、異なる組成を有する粒子で組成物粒子を製剤することで、乾燥粉末組成物として提供される粒子の混合物を形成することができる。
【0056】
別の形態として、本発明の化合物を賦形剤なしで提供することができる。
【0057】
そのような乾燥粉末は、微粉化、ビード粉砕ならびに公知の粒子形成または共沈法(単一または二重乳濁液法など)、スプレー乾燥、スプレーコーティング、超音波結晶化などによって形成することができる。
【0058】
これらの乾燥粉末組成物以外に、本発明の化合物はスプレー組成物として提供することができる。
【0059】
吸入による肺への局所的送達用のスプレー組成物は、例えば、投与量を計量できる吸入器などの加圧パックから適切な液化噴射剤を用いて送達される水性の溶液もしくは懸濁液として、またはエアロゾルとして製剤することができる。吸入に適するエアロゾル組成物は懸濁液または溶液のいずれでもよく、それは通常、別の治療活性成分と組み合わせても良い式(I)の化合物と、フルオロカーボンまたは水素含有クロロフルオロカーボンまたはそれらの混合物、とりわけヒドロフルオロアルカン、特に1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパンまたはそれらの混合物とを含有している。エアロゾルの組成物は場合により、オレイン酸またはレシチンなどの界面活性剤およびエタノールなどの共溶媒といった当業界では既知の追加の製剤化用添加剤を任意で含有することができる。製剤の1例としては、添加剤を含まず、本質的に式(I)の化合物(好ましくは、例えば形態1として非溶媒和物の形態で)(場合により別の活性成分をも含むことがある)および1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパンまたはそれらの混合物から選択される噴射剤からなる(例えば、それらのみからなる)ものが挙げられる。製剤の別の1例は、式(I)の粒状化合物、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパンまたはそれらの混合物から選択される噴射剤、およびその噴射剤中で溶解しうる懸濁剤、例えば、WO94/21229に記載のオリゴ酢酸またはその誘導体を含む。好ましい噴射剤は、1,1,1,2-テトラフルオロエタンである。本明細書の別の箇所に記載のように、式(I)の化合物は、1,1,1,2-テトラフルオロエタンと溶媒和物を形成しないように思われる。加圧製剤は通常はバルブ(例えば、計量バルブ)で閉じられたキャニスター(例えば、アルミニウムキャニスター)中に保持され、マウスピースを備えたアクチュエータ中に取り付けられる。
【0060】
加圧エアロゾル製剤は好ましくは、粒子状医薬、推進剤および安定剤を含まずに、水が加えられている(すなわち、発生期製剤水(nascent formulation water)以外に加えられる水)。加圧エアロゾル製剤も好ましくは、粒子状医薬、推進剤および安定剤を含まず、アミノ酸、その誘導体またはそれらの混合物を含む。
【0061】
吸入によって投与される薬剤は望ましくは粒子径を調節したものである。気管支系中に吸入させるための最適な粒子径は通常1〜10μmであり、好ましくは2〜5μmである。20μmを超える大きさの粒子は、一般的には大きすぎて、吸入させたときに小さな気道に到達できない。このような粒子径のものを得るためには、製造された状態の式(I)の化合物(および別の治療有効成分)の粒子径を、例えば微粒子化などの従来法によって減じることができる。所望の画分は空気分級または篩によって分取することができる。好ましくは、その粒子が結晶であって、例えば、連続的フローセル中で超音波を加えながら、液状溶媒中に薬剤としての式(I)の化合物を含んでいる流液とその薬剤に対する逆溶媒流液とを混合することを含む方法(例えば、国際特許出願PCT/GB99/04368)、または、液体溶媒中の該物質の溶液の流れと液状の該物質に対する逆溶媒の流れとを、軸上の出口を有する円筒形の混合容器に流し入れ、そうしてそれらの流れが渦を形成して十分に混合され、該物質の結晶粒子の沈殿が生ずるようにする方法(例えば、国際特許出願PCT/GB00/04327)によって、調製される。乳糖などの添加剤を用いる場合には、通常は、その添加剤の粒子径は本発明の吸入される薬剤の粒子径よりはるかに大きい。添加剤が乳糖である場合には、添加剤は典型的にはすりつぶした乳糖として存在し、85%未満の乳糖粒子のMMDが60〜90μmで15%以上の粒子のMMDが15μm未満である。
【0062】
鼻に局所投与するための製剤(例えば、鼻炎治療のため)としては、加圧エアロゾル製剤および加圧ポンプで鼻に投与される水性製剤が含まれる。非加圧で鼻腔に局所投与されるよう製造された製剤が特に興味深い。その製剤は好ましくは、それ用の希釈剤または担体として水を含む。
【0063】
肺または鼻へ投与するための水性製剤は、従来の添加剤、例えば、緩衝剤、浸透圧調整剤などとともに提供することができる。水性製剤はまた、ネブライザーで鼻に投与することができる。
【0064】
本発明の製剤は、それが適切であるならば、適切な緩衝剤を添加して緩衝化することができる。
【0065】
本発明による製剤中の式(I)の活性化合物の割合は、調製しようとする製剤が正確にはどのようなタイプであるのかによるが、通常は、0.001重量%〜10重量%の範囲内である。しかし、通常は大多数のタイプの製品でその比率は0.005%〜1%の範囲内であり、好ましくは0.01%〜0.5%である。しかし、吸入法または通気法用の粉末では、用いられる比率は、通常、0.1%〜5%の範囲内である。
【0066】
エアロゾル製剤は各計量用量またはエアロゾルの「1回吸入量」が、適宜に別の治療有効成分と組み合わせて式(I)の化合物を1μg〜2000μg、例えば20μg〜2000μg、好ましくは約20μg〜500μgを含有するように調製するのが好ましい。投与は1日1回または1日に数回、例えば、2、3、4または8回であり、例えば、各回につき1、2または3用量投与してもよい。好ましくは、式(I)の化合物は1日に1回または2回投与され、特に1日1回が好ましい。エアロゾルでの1日の合計投与量は代表的には10μg〜10mg、例えば100μg〜10mgで、好ましくは200μg〜2000μgである。
【0067】
製剤好ましくは、各計量用量または1回吸入が長期期作用性β-アドレナリン受容体作働薬0.5μg〜1000μg、好ましくは約5μg〜500μgを含むようにする。
【0068】
長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬の式(I)の化合物に対する比率は好ましくは、4:1〜1:20の範囲内である。
【0069】
吸入器の各計量用量または駆動は好ましくは、長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬10μg〜100μgおよび式(I)の化合物25μg〜500μgを含む。
【0070】
代表的には各計量用量は、1回の駆動で長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬約25μgおよび式(I)の化合物約250μgを含む。
【0071】
式(I)の化合物は長期作用性であることから、式(I)の化合物および長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬(M)を含む組成物は、1日1回投与され、各用量は、組成物が24時間以上にわたって呼吸器障害の治療において(例えば、喘息またはCOPD、特には喘息の治療において)治療効果を有するように選択する。
【0072】
本発明による医薬製剤は、別の治療有効成分、例えば抗ヒスタミン薬または抗アレルギー剤と併用することもできる。抗ヒスタミン剤には、メタピリレンまたはロラタジンなどがある。
【0073】
他の適切な組み合わせとしては、例えば、他の抗炎症剤、例えばNSAID(例えば、PDE4阻害剤、ロイコトリエン拮抗薬、iNOS阻害剤、トリプターゼおよびエラスターゼ阻害剤、β-インテグリン拮抗薬およびアデノシン2a作働薬)または抗感染剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤)が含まれる。
【0074】
上記のような別の治療有効成分と組み合わせた本発明による製剤は、簡便な方法での投与用に製剤することができることから、本発明の範囲には、所望に応じて1以上の生理的に許容される希釈剤もしくは担体との混合で別の治療有効成分と組み合わせた式(I)の化合物または生理的に許容されるその溶媒和物を含む医薬組成物も含まれる。呼吸管の炎症障害について好まし投与経路は、吸入による投与である。
【0075】
さらに、そのような医薬組成物の製造方法において、成分を混合する段階を有する方法が提供される。
【0076】
そのような組み合わせの個々の化合物は、別個の医薬組成物で順次に、あるいは組み合わせた医薬製剤で同時に投与することができる。公知の治療薬の適切な用量は、当業者には明らかであろう。
【0077】
驚くべきことに、式(I)の化合物は、一般に使用される有機溶媒と溶媒和物を形成するかなり強い傾向を示した。そのような溶媒和物は実質的に化学量論的である。例えば式(I)の化合物の溶媒に対する比率は1:1に近い。例えば本出願人の分析によれば、0.95:1〜1.05:1の範囲であると測定されている。例えば本発明者らは、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチル−2−ピロリドン、イソプロパノールおよびメチルエチルケトンなどの溶媒との溶媒和物を製造した。式(I)の化合物の溶媒和は予測できるものではない。しかしながら、それがイソプロパノールと溶媒和物を形成するとしても、エタノールやメタノールと溶媒和物を形成しないことを本発明者らは見出している。さらにそれは、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、酢酸エチル、酢酸メチル、トルエン、メチルイソブチルケトン(MIBK)および水と溶媒和物を形成しないように思われる。しかしながら、多くの溶媒には毒性があることから、特別な最終段階処理条件を開発して(後述)、式(I)の化合物が溶媒和した形態で製造できるようにする必要があった。そこで本発明の別の態様によれば、非溶媒和形態での式(I)の化合物が提供される。
【0078】
驚くべきことに本発明者らはさらに、非溶媒和形態での式(I)の化合物は多くの多形形態で存在し得ることも発見した。具体的には本発明者らは多形を確認しており、それらはX線粉末回折(XRPD)によって識別することができ、本発明者らは形態1、形態2および形態3と命名した。形態3は、形態2の不安定で微量の多形変形体であるように思われる。
【0079】
大まかに言って、これらの形態は下記のようなXRPDプロファイルを特徴とする。
【0080】
形態1:18.9°2θ周囲にピーク;
形態2:18.4°および21.5°2θ周囲にピーク;
形態3:18.6°および19.2°2θ周囲にピーク。
【0081】
21〜23°2θの範囲内で、形態3は単一のピークを示し、形態2は一対のピークを示す。7°2θでのピークはいずれの場合にも存在するが、形態1の場合より形態2および3の場合の方が強度がかなり大きい。
【0082】
多形体のXRPDパターンを図1に重ねて示している。室温での水系スラリー中における形態2の形態1への経時的変換を図2に示してある。形態2から形態1への変換において、18.4°2θ周囲での形態2のピーク特性の喪失(Bでラベル表示)、7°2θ周囲のピークにおける強度の顕著な低下(Aでラベル表示)および18.9°2θ周囲の形態1のピーク特性の出現(Cでラベル表示)が特に注目すべきものである。
【0083】
形態3の温度依存性を図4に示してある。温度は、図5に示したプロファイルに従って変動させた。図4から、温度範囲30〜170℃で形態3が最初に形態2に変換し、次に温度範囲170〜230℃で形態1に変換することがわかる。形態3から形態2への変換において、範囲21〜23°2θにおける1個のピークの同じ範囲内での2個のピークへの分割および18.6°2θ周囲のピークの18.4°2θ周囲への左方向シフトが特に顕著なものである。形態2から形態1への変換においては、前記の段落に記載のものと同様の変化を認めることができる。
【0084】
形態1の示差走査熱量測定(DSC)および熱重量分析(TGA)プロファイルを図3に示してある。これらのプロファイルは、DSCにおける吸熱事象およびTGAにおける化学分解に相当する280〜300℃(代表的には298℃に近い)周囲での遷移を特徴とする。形態2および3のDSCプロファイルは、行った実験の条件下ではほとんど異なっていないことから、これら3種類の形態間での識別を行う上で、DSCは好適な技術ではない。図3では、298℃周囲より下でTGAおよびDSCプロファイルにおいて動きがないことは、その物質が通常の運転温度では良好な物理的および化学的安定性を示すことを示唆するものである。
【0085】
実施例に示したように、形態1および3の溶解のエンタルピーがある種の有機溶媒中で測定されており、それによると形態3から形態1への遷移のエンタルピーは5.1〜6.7kJ/molと推算されている。
【0086】
そこで、非溶媒和形態1での式(I)の化合物が、室温で熱力学的安定性が最も高いように思われ、しかも望ましくない水分吸収に対する感受性が最も低いように思われることから、本発明者らはその化合物が好ましいと考える(実施例の項における結果を参照する)。
【0087】
一部の実施形態では本発明者らは、非溶媒和多形形態1での式(I)の化合物が等方または実質的に等方の粒子の形態であることが好ましいと考える。実質的に、等方粒子は長さが同様であるX、YおよびZ次元での寸法を有する。好ましくはその等方粒子は、正方両錐形または実質的に正方両錐形の粒子の形態のものである。
【0088】
驚くべきことに、形態1の多形体の正方両錐形粒子は微粉化後に比較的一定粒径の粒子を生じ、それは微粉化前の乾燥工程に依存しないように思われることが認められた。正方両錐形粒子は、良好な流動特性、良好なかさ密度を有し、濾過によって懸濁から容易に単離される。
【0089】
他の実施形態において本発明者らは、非溶媒和多形形態1での式(I)の化合物が針状粒子の形態であることが好ましいと考える。針状粒子は、形状が針のようなものである。
【0090】
驚くべきことに、形態1の針状粒子は微粉化後に比較的多様な粒径の粒子を与えることが認められており、粒径は平均で、正方両錐形粒子の微粉化から生じるものより大きい。微粉化薬剤のこの粒径プロファイルが好ましい一定の環境では、針状粒子が好ましい。針状粒子から得られた微粉化薬剤によって、活性化合物に対する全身曝露が低くなる可能性がある。
【0091】
溶媒和形態での式(I)の化合物の使用は好ましくないが、驚くべきことに本発明者らは、ある種の溶媒和物形態がそれを非溶媒和形態での式(I)の化合物の製造(例えば、最終段階としての溶媒の除去によって)における中間体として有用な物とする特に魅力的な物理化学的特性を有することを認めた。例えば本発明者らは、ある種の化学量論溶媒和物を高度結晶性の固体として単離できることを発見した。そこで本発明者らは、本発明の1態様として、
メチルエチルケトン溶媒和物としての式(I)の化合物;
プロパン-2-オール溶媒和物としての式(I)の化合物;
テトラヒドロフラン溶媒和物としての式(I)の化合物;
アセトン溶媒和物としての式(I)の化合物
も提供する。
【0092】
特に本発明者らは、結晶固体として上記溶媒和物を提供する。
【0093】
これら溶媒和物のさらに特定の利点は、溶媒和物の脱溶媒和(加熱によって)によって、好ましい形態1として非溶媒和形態が形成されるという点である。上記の溶媒和物は比較的毒性が低く、工業的規模の製造での使用に好適である。結晶固体としても単離できるDMF溶媒和物としての式(I)の化合物も、非溶媒和形態1への前進的処理での使用において興味深いものである。
【0094】
式(I)の化合物およびその溶媒和物は、本発明のさらに別の態様を構成する下記の方法によって製造することができる。
【0095】
式(I)の化合物を製造するための本発明による方法は、下記式(II)のチオ酸またはその塩のアルキル化を含む。
【化6】

【0096】
この方法では、標準的な条件下で、式(II)の化合物を式FCH2Lの化合物(Lは脱離基(例:ハロゲン原子、メシル基もしくはトシル基など)を表す)、例えば適切なフルオロメチルハライドと反応させることができる。好ましくは、そのフルオロメチルハライド試薬はブロモフルオロメタンである。
【0097】
後述するように、式(II)の化合物は好ましくは、塩として、特にはジイソプロピルエチルアミンとの塩として用いる。
【0098】
式(I)の化合物の好ましい製造方法では、式(II)の化合物またはその塩を、場合によって相間移動触媒存在下にブロモフルオロメタンで処理する。好ましい溶媒は、適宜に水存在下での酢酸メチルまたはより好ましくは酢酸エチルである。水が存在することで、原料および生成物の両方の溶解度が向上し、相間移動触媒を用いることで、反応速度が大きくなる。使用可能な相間移動触媒の例には、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、メチルトリブチルアンモニウムクロライドおよびメチルトリオクチルアンモニウムクロライドなどがある(これらに限定されるものではない)。相間移動触媒の存在下でやはりかなり早い反応速度が得られる反応における溶媒として、THFも良好に用いられている。好ましくは、有機相に存在する生成物を、最初に希HClなどの水系酸で洗浄して、トリエチルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンなどのアミン化合物を除去し、次に重炭酸ナトリウムなどの水系塩基で洗浄して、未反応の前駆体式(II)の化合物を除去する。後述するように、酢酸エチル溶液でそうして製造された式(I)の化合物を蒸留し、トルエンを加えると、未溶媒和形態1が晶出する。
【0099】
式(II)の化合物は、例えばフィリップスらの報告(G. H. Phillippsら, (1994) Journal of Medicinal Chemistry, 37, 3717-3729)に記載の方法を用いて、下記式(III)の相当する17α-ヒドロキシル誘導体から製造することができる。
【化7】

【0100】
例えば、この段階には代表的には、エステル化を行う上で好適な試薬、例えばトリエチルアミンなどの有機塩基存在下に活性化エステルもしくは好ましくは2-フロイルハライド(例:2-フロイルクロライド(式(III)の化合物に対して少なくとも2倍モル量で使用))などの2-フロ酸の活性化誘導体を加える段階を有する。第2のモル量の2-フロイルクロライドが、式(III)の化合物におけるチオ酸部分と反応し、例えばジエチルアミンなどのアミンとの反応によって除去する必要がある。
【0101】
しかしながらこの方法には、得られる式(II)の化合物が副生成物である2−フロイルジエチルアミドによる汚染のために容易に姿勢されないという欠点がある。従って本発明者らは、この変換を行う上でのいくつかの改良された方法を発明した。
【0102】
第1のそのような改良された方法において本発明者らは、ジエタノールアミンなどの相対的に極性が高いアミンを用いることで、より水溶性が高い副生成物を得ることで(この場合、2-フロイルジエタノールアミド)、副生成物を水洗によって効率良く除去可能であることから、式(II)の化合物またはその塩を高純度で製造可能となることを発見した。
【0103】
そこで、本発明のこの態様により本発明者らは、
(a)2-フロ酸の活性化誘導体と、式(III)の化合物1モル当たり活性化誘導体少なくとも2モルの量で反応させて、下記式(IIA)の化合物:
【化8】

【0104】
を得る段階:ならびに
(b)段階(a)の生成物を水溶性2-フロイルアミドを形成可能な有機1級もしくは2級アミン塩基と反応させることで式(IIA)の化合物から硫黄連結2-フロイル部分を脱離させる段階
を有する式(II)の化合物の製造方法を提供する。
【0105】
この方法の2つの特に簡便な実施形態において本発明者らは、
(c1)段階(b)の生成物が実質的に水非混和性有機溶媒に溶解する場合に、段階(b)からのアミド副生成物を水系洗浄液によって洗浄除去で式(II)の化合物を精製する段階;あるいは
(c2)段階(b)の生成物が実質的に水混和性溶媒に溶解する場合に、段階(b)の生成物を水系媒体で処理することで式(II)の化合物を精製して、純粋な式(II)の化合物またはその塩を析出させる段階
のいずれかを有する最終生成物の効率の良い精製方法をも提供する。
【0106】
段階(a)では好ましくは、2-フロ酸の活性化誘導体は、2-フロ酸の活性化エステルであることができるが、より好ましくは2-フロイルハライド、特には2-フロイルクロライドである。この反応に好適な溶媒は、酢酸エチルまたは酢酸メチル(好ましくは酢酸メチル)(段階(c1)に従うことができる場合)またはアセトン(段階(c2)に従うことができる場合)である。通常、トリエチルアミンなどの有機塩基を存在させる。段階(b)では好ましくは、有機塩基はジエタノールアミンである。その塩基は好適には、メタノールなどの溶媒に溶かすことができる。段階(a)および(b)は、0〜5℃などの低温で行う。段階(c1)において水系洗浄液は水であることができるが、食塩水を用いることでさらに高収率が得られることから、それが好ましい。段階(c2)では、水系媒体は例えば、希HClなどの希水系酸である。
【0107】
本発明の関連する態様によれば本発明者らは、
(a)式(III)の化合物を2-フロ酸の活性化誘導体と、式(III)の化合物1モル当たり活性化誘導体を少なくとも2モルの量で反応させて、式(IIA)の化合物を得る段階;ならびに
(b)段階(a)の生成物と追加モルの式(III)の化合物を反応させることで式(IIA)の化合物から硫黄連結2-フロイル部分を脱離させて、式(II)の化合物2モルを得る段階
を有する式(II)の化合物の別途製造方法を提供する。
【0108】
段階(a)において好ましくは、2-フロ酸の活性化誘導体は2-フロ酸の活性化エステルであることができるが、より好ましくは2-フロイルハライド、特には2-フロイルクロライドである。この段階に好適な溶媒はアセトンである。通常、トリエチルアミンなどの有機塩基を存在させる。段階(b)では、好適な溶媒はDMFまたはじジメチルアセトアミドである。通常、トリエチルアミンなどの有機塩基を存在させる。段階(a)および(b)は、0〜5℃などの低温で行う。生成物は、酸で処理し、水で洗浄することで単離することができる。
【0109】
この上記方法は、過剰モルのフロイル部分がさらなるモルの式(II)の化合物との反応によって奪われて、追加モルの式(II)の化合物を形成することから、フロイルアミド副生成物を生成しないという点で非常に効率の良いものである(特に、環境上の利点を与える)。
【0110】
直前に記載の2つの方法において式(III)の化合物を式(II)の化合物に変換する上でのさらなる一般的条件は、当業者には公知のものである。
【0111】
しかしながら、好ましい組み合わせの条件によれば、式(II)の化合物は固体結晶塩の形で有利に単離可能であることを本発明者らは見出した。その好ましい塩は、トリエチルアミン、2,4,6-トリメチルピリジン、ジイソプロピルエチルアミンまたはN-エチルピペリジンなどの塩基で形成される塩である。式(II)の化合物のそのような塩型は、遊離のチオ酸より安定であり、容易に濾過および乾燥され、より高い純度で単離可能である。最も好ましい塩は、ジイソプロピルエチルアミンと形成される塩である。トリエチルアミン塩も興味深い。
【0112】
式(III)の化合物は、GB2088877Bに記載の手順に従って製造することができる。
【0113】
式(III)の化合物は、下記の段階を有する方法によっても製造することができる。
【化9】

【0114】
段階(a)は、式(V)の化合物を含む溶液の酸化を含むものである。好ましくは段階(a)は、メタノール、水、テトラヒドロフラン、ジオキサンまたはジエチレングリコールジメチルエーテルを含む溶媒存在下に行う。収率およびスループットを高める上で、好ましい溶媒はメタノール、水またはテトラヒドロフランであり、より好ましくは水またはテトラヒドロフラン、特には溶媒としての水およびテトラヒドロフランである。ジオキサンおよびジエチレングリコールジメチルエーテルも好ましい溶媒であり、それは場合により(そして好ましくは)水とともに用いることができる。好ましくは前記溶媒は、原料の量(1重量部)に対して3〜10体積部、より好ましくは4〜6体積部、特には5体積部の量で存在させる。好ましくは酸化剤は、原料の量に対して1〜9モル当量の量で存在させる。例えば50重量%の過ヨウ素酸を用いる場合、酸化剤は原料の量(1重量部)に対して1.1〜10重量部、より好ましくは1.1〜3重量部、特には1.3重量部の量で存在させることができる。好ましくは前記酸化段階は、化学酸化剤の使用を含む。より好ましくは前記酸化剤は、過ヨウ素酸もしくはヨウ素酸またはその塩である。最も好ましくは前記酸化剤は、過ヨウ素酸または過ヨウ素酸ナトリウム、特には過ヨウ素酸である。あるいは(または追加で)、好適な酸化反応、例えば空気および/または酸素を利用するものを有することができることの明らかであろう。酸化反応が空気および/または酸素を利用する場合、その反応で使用される溶媒は好ましくはメタノールである。好ましくは段階(a)では、試薬類を室温またはそれよりやや高い温度で、例えば25℃で例えば2時間インキュベートする。式(IV)の化合物は、逆溶媒を加えることによる反応混合物からの再結晶によって単離することができる。式(IV)の化合物に好適な逆溶媒は水である。驚くべきことに本発明者らは、水などの逆溶媒を加えることで式(IV)の化合物を沈殿させる条件を制御することが非常に望ましいことを発見した。再結晶を冷水(例えば、0〜5℃の温度の水/氷混合物)を用いて行う場合、より良好な逆溶媒特性が予想できるが、生成する結晶生成物が非常に嵩高く、柔らかいゲルに似ており、濾過が非常に困難であることを本発明者らは認めた。理論に拘束されるものではないが、この低密度生成物は、結晶格子内に多量の溶媒和溶媒を含むものと本発明者らは考えている。それに反して、約10℃以上の条件を用いると(例えば、ほぼ室温)、非常に容易に濾過される砂のような粘度の顆粒状生成物が生成する。これらの条件下では、結晶化は代表的には約1時間後に開始し、代表的には数時間(例えば2時間)以内に完了する。理論に拘束されるものではないが、この顆粒状生成物は結晶格子内に溶媒和溶媒をほとんど含まないと本発明者らは考えている。
【0115】
段階(b)は代表的には、ジメチルホルムアミドなどの好適な溶媒の存在下にカルボニルジイミダゾール(CDI)などの好適なカップリング剤とともに硫化水素ガスを用いる等でカルボン酸をカルボチオ酸に変換する上で好適な試薬を加える段階を有する。
【0116】
式(II)の化合物を製造する別の方法は、DMFなどの好適な溶媒の存在下にCDIなどの好適なカップリング剤とともに硫化水素ガスを用いる等でカルボン酸をカルボチオ酸に変換する上で好適な試薬で式(X)の化合物を処理する段階を有する。式(X)の化合物は、本明細書に記載のものと同様の方法によって製造することができる。
【0117】
式(I)の化合物またはその溶媒和物を製造する別法は、下記式(VI)の化合物:
【化10】

【0118】
をフッ素源と反応させる段階を有する。
【0119】
好適なフッ素源の例には、フッ化物(例:フッ化ナトリウム)またはより好ましくはHFなどがある。好ましい試薬は、HF水溶液である。THFまたはDMFなどの溶媒を用いることができる。
【0120】
式(VI)の化合物は、
(a)下記式(VII)の化合物:
【化11】

【0121】
またはその塩をアルキル化する段階;
(b)下記式(VIII)の化合物:
【化12】

【0122】
をエポキシド形成試薬と反応させる段階;あるいは
(c)下記式(IX)の化合物:
【化13】

【0123】
をエステル化する段階を有する方法によって製造することができる。
【0124】
方法(a)では、式(II)の化合物の式(I)の化合物への変換について前述したものと同様の条件を用いることができる。代表的には式(VII)の化合物を、標準的な条件下で式FCH2Lの化合物(Lは脱離基(例:ハロゲン原子、メシル基もしくはトシル基など)を表す)、例えば適切なフルオロメチルハライドと反応させる。好ましくは、そのフルオロメチルハライド試薬はブロモフルオロメタンである。
【0125】
方法(b)は好ましくは、(i)ハロヒドリン、特にはブロモヒドリンを形成する段階(例えば、ブロモダン(bromodan)または等価な試薬との反応によって)と、それに続く(ii)水酸化ナトリウムなどの塩基で処理して閉環を行う段階という2段階で行う。段階(i)の生成物は、所望に応じて単離可能な新規中間体である下記式(IXA)の化合物:
【化14】

【0126】
[式中、Xはハロゲン、特にはBrを表す。]
である。
【0127】
方法(c)において、好適な試薬は、トリエチルアミンなどの有機塩基存在下での活性化エステルまたは好ましくは2-フロイルハライド(例:2-フロイルクロライド)などの2-フロ酸の活性化誘導体であると考えられる。この反応は、ジメチルアミノピリジン(DMAP)などのアシル化触媒存在下に、約60℃等の高温で、あるいは室温で行うことができる。
【0128】
式(VII)の化合物は、下記式(XI)の化合物のエステル化を含む方法によって製造することができる。
【化15】

【0129】
式(III)の化合物の式(II)の化合物への変換について前述したものと同様の条件を用いることができる。例えば好適な試薬は、トリエチルアミンなどの有機塩基存在下での活性化エステルまたは好ましくは2-フロイルハライド(例:2-フロイルクロライド)などの2-フロ酸の活性化誘導体であると考えられる。式(XI)の化合物は公知である(J Labelled Compd Radiopharm (1997) 39(7) 567-584)。
【0130】
式(VIII)の化合物は、
(a)下記式(XII)の化合物:
【化16】

【0131】
またはその塩をアルキル化する段階;あるいは
(b)下記式(XIII)の化合物;
【化17】

【0132】
をエステル化する段階
を有する方法によって製造することができる。
【0133】
段階(a)において、式(II)の化合物の式(I)の化合物への変換について前述の条件と同様の条件を用いることができる。代表的には式(XII)の化合物を、標準的な条件下で式FCH2Lの化合物(Lは脱離基(例:ハロゲン原子、メシル基もしくはトシル基など)を表す)、例えば適切なフルオロメチルハライドと反応させる。好ましくは、そのフルオロメチルハライド試薬はブロモフルオロメタンである。
【0134】
方法(b)では、式(IX)の化合物の式(VI)の化合物への変換について前述の条件と同様の条件を用いることができる。例えば好適な試薬は、トリエチルアミンなどの有機塩基存在下での活性化エステルまたは好ましくは2-フロイルハライド(例:2-フロイルクロライド)などの2-フロ酸の活性化誘導体であると考えられる。
【0135】
式(IX)および(XIII)の化合物は、前述のものと同様の方法(例えば、標準的な条件下で式FCH2Lの化合物(Lは脱離基(例:ハロゲン原子、メシル基もしくはトシル基など)を表す)、例えば適切なフルオロメチルハライドと反応させることで)を用いて、相当するチオ酸(XI)および(XIV)(下記で定義)をアルキル化することで製造することができる。好ましくはフルオロメチルハライド試薬は、ブロモフルオロメタンである。チオ酸(XI)は公知である(J Labelled Compd Radiopharm (1997) 39(7) 567-584)。
【0136】
式(XII)の化合物は、下記式(XIV)の化合物:
【化18】

【0137】
またはその塩をエステル化する段階を有する方法によって製造することができる。
【0138】
この方法は、上記のものと同様の方法を用いて行うことができる。例えば好適な試薬は、トリエチルアミンなどの有機塩基存在下での活性化エステルまたは好ましくは2-フロイルハライド(例:2-フロイルクロライド)などの2-フロ酸の活性化誘導体であると考えられる。
【0139】
式(XIV)の化合物は、例えば式(IV)の化合物の式(III)の化合物への変換について前述した方法と同様の方法によって、相当するカルボン酸から製造することができる。上記の相当するカルボン酸は公知である(Upjohn、WO90/15816)。
【0140】
式(I)の化合物またはその溶媒和物のさらに別の製造方法は、11-β-ヒドロキシ基が保護またはマスクされた式(I)の化合物を脱保護または脱マスクする段階を有する。第1のそのような方法は、下記式(XV)の化合物:
【化19】

【0141】
[式中、Pはヒドロキシ保護基を表す。]
を脱保護する段階を有する。
【0142】
ヒドロキシ保護基Pの例は、文献(Protective Groups in Organic Chemistry Ed JFW McOmie (Plenum Press 1973)またはProtective Groups in Organic Synthesis by Theodora W Green (John Wiley and Sons, 1991))に記載されている。
【0143】
好適なヒドロキシ保護基Pの例には、炭酸エステル、アルキル(例:t-ブチルまたはメトキシメチル)、アラルキル(例:ベンジル、p-ニトロベンジル、ジフェニルメチルまたはトリフェニルメチル)、テトラヒドロピラニルなどの複素環基、アシル(例:アセチルまたはベンジル)ならびにトリアルキルシリル(例:t-ブチルジメチルシリル)などのシリル基から選択される基などがある。ヒドロキシ保護基は、従来の方法によって脱離させることができる。そこで例えば、炭酸エステルは塩基で処理することで脱離させることができ、アルキル、シリル、アシルおよび複素環基は、加溶媒分解により、例えば酸性もしくは塩基性条件下での加水分解によって脱離させることができる。トリフェニルメチルなどのアラルキル基も同様に、加溶媒分解または酸性条件下での加水分解によって脱離させることができる。ベンジルまたはp-ニトロベンジルなどのアラルキル基は、パラジウム/活性炭などの貴金属触媒存在下での水素化分解によって開裂させることができる。p−ニトロベンジルも、光分解によって開裂させることができる。
【0144】
11-β-ヒドロキシ基は、カルボニル基としてマスクすることができる。そこで、第2のそのような方法は、下記式(XVI)の化合物を還元する段階を有する。
【化20】

【0145】
式(I)の化合物への還元は、例えば水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化ホウ素化合物のような水素化物還元剤で処理することで行うことができる。
【0146】
11-ケトン(XVI)もマスクすることができる。式(XVI)の化合物のマスクされた誘導体の例には、(i)ケタール誘導体、例えば式(XVI)の化合物をアルコール(例:メタノール、エタノールまたはエタン-1,2-ジオール)で処理することで形成されるケタール、(ii)式(XVI)の化合物をチオール(例:メタンチオール、エタンチオールまたはエタン-1,2-ジチオール)で処理することで形成されるジチオケタール等のジチオケタール誘導体、(iii)例えば1-ヒドロキシ-エタン-2-チオールで式(XVI)の化合物を処理することで形成されるモノチオケタールなどのモノチオケタール誘導体、(iv)式(XVI)の化合物をエフェドリンなどのアルコールアミンで処理することで形成される誘導体、(v)式(XVI)の化合物をアミンで処理することで形成されるイミン、(vi)式(XVI)の化合物をヒドロキシルアミンで処理することで形成されるオキシムなどがある。本発明者らは、式(XVI)の化合物のそのような誘導体を本発明の1態様として特許請求する。
【0147】
これらのマスクされた誘導体は、従来の手段によってケトンに変換し戻すことができる。例えば、ケタール、イミンおよびオキシムは希酸で処理することでカルボニルに変換され、ジチオケタールは文献(P. C. Bulman Pageら (1989), Tetrahedron, 45, 7643-7677;およびその文献中の参考文献)に記載の各種方法によってケトンに変換される。
式(XV)の化合物は、
(a)下記式(XVII)の化合物:
【化21】

【0148】
またはその塩
[式中、Pはヒドロキシ保護基を表す。]
をアルキル化する段階;あるいは
(b)下記式(XVIII)の化合物:
【化22】

【0149】
をエステル化する段階
を有する方法によって製造することができる。
【0150】
段階(a)において、式(II)の化合物の式(I)の化合物への変換について前述の条件と同様の条件を用いることができる。代表的には式(XVII)の化合物を、標準的な条件下で式FCH2Lの化合物(Lは脱離基(例:ハロゲン原子、メシル基もしくはトシル基など)を表す)、例えば適切なフルオロメチルハライドと反応させる。好ましくは、そのフルオロメチルハライド試薬はブロモフルオロメタンである。
【0151】
段階(b)では、式(IX)の化合物の式(VI)の化合物への変換について前記で用いたものと同様の条件を用いることができる。例えば好適な試薬は、トリエチルアミンなどの有機塩基存在下での活性化エステルまたは好ましくは2-フロイルハライド(例:2-フロイルクロライド)などの2-フロ酸の活性化誘導体であると考えられる。
【0152】
式(XVIII)の化合物は、前述のものと同様の方法(例えば、標準的な条件下で式FCH2Lの化合物(Lは脱離基(例:ハロゲン原子、メシル基もしくはトシル基など)を表す)、例えば適切なフルオロメチルハライドと反応させることで)を用いて、相当するチオ酸をアルキル化することで製造することができる。好ましくは前記フルオロメチルハライド試薬はブロモフルオロメタンである。前記相当するチオ酸は公知の化合物であるか、あるいは標準的な方法によって製造することができる。別法として、式(XVIII)の化合物は、相当するヒドロキシ誘導体の保護によって製造することができる。
【0153】
式(XVII)の化合物は、下記式(XIX)の化合物:
【化23】

【0154】
[式中、Pはヒドロキシ保護基を表す。]
をエステル化する段階を有する方法によって製造することができる。
【0155】
この方法は、式(III)の化合物の式(II)の化合物への変換について前述したものと同様の方法を用いて行うことができる。例えば好適な試薬は、トリエチルアミンなどの有機塩基存在下での活性化エステルまたは好ましくは2-フロイルハライド(例:2-フロイルクロライド)などの2-フロ酸の活性化誘導体であると考えられる。
【0156】
式(XIX)の化合物は、相当するヒドロキシ誘導体(III)を保護することで製造することができ、最初にチオ酸を保護し、それから脱保護することになると考えられる。
【0157】
式(XVI)の化合物は、
(a)下記式(XX)の化合物:
【化24】

【0158】
またはその塩もしくは誘導体
[式中、11-カルボニル基はマスクされている。]
をアルキル化する段階;あるいは
(b)下記式(XXI)の化合物:
【化25】

【0159】
または誘導体
[式中、11-カルボニル基はマスクされている。]
をエステル化する段階
を有する方法によって製造することができる。
【0160】
段階(a)において、式(III)の化合物の式(II)の化合物への変換について前述の条件と同様の条件を用いることができる。代表的には式(XX)の化合物を、標準的な条件下で式FCH2Lの化合物(Lは脱離基(例:ハロゲン原子、メシル基もしくはトシル基など)を表す)、例えば適切なフルオロメチルハライドと反応させる。好ましくは、そのフルオロメチルハライド試薬はブロモフルオロメタンである。
【0161】
段階(b)では、式(IX)の化合物の式(VI)の化合物への変換について上記で用いたものと同様の条件を用いることができる。例えば好適な試薬は、トリエチルアミンなどの有機塩基存在下での活性化エステルまたは好ましくは2-フロイルハライド(例:2-フロイルクロライド)などの2-フロ酸の活性化誘導体であると考えられる。
【0162】
11-ケトン基がマスクされた式(XXI)の化合物またはその誘導体は、前述のものと同様の方法(例えば、標準的な条件下で式FCH2Lの化合物(Lは脱離基(例:ハロゲン原子、メシル基もしくはトシル基など)を表す)、例えば適切なフルオロメチルハライドと反応させることで)を用いて、相当するチオ酸をアルキル化することで製造することができる。好ましくは前記フルオロメチルハライド試薬はブロモフルオロメタンである。前記相当するチオ酸は公知の化合物であるか、あるいは前述のものと同様の方法によって相当するカルボン酸から製造することができる。
【0163】
式(XX)の化合物は、下記式(XXII)の化合物:
【化26】

【0164】
またはその誘導体
[式中、11-ケトン基はマスクされている。]
をエステル化する段階を有する方法によって製造することができる。
【0165】
この方法は、前述したものと同様の方法を用いて行うことができる。例えば好適な試薬は、トリエチルアミンなどの有機塩基存在下での活性化エステルまたは好ましくは2−フロイルハライド(例:2-フロイルクロライド)などの2-フロ酸の活性化誘導体であると考えられる。
【0166】
11-ケトン基がマスクされた式(XXII)の化合物およびその誘導体は、相当するヒドロキシ誘導体(IV)を酸化し、次にケトンをマスクし、その後カルボン酸基をチオ酸に変換する(例えば、式(IV)の化合物の(III)の化合物への変換を参照)ことで製造することができる。
【0167】
式(I)の化合物またはその溶媒和物のさらに別の製造方法は、下記式(XXIII)の化合物:
【化27】

【0168】
[式中、Lは脱離基(例えば、クロライド、ヨージドなどのフッ化物以外のハライドまたはメシレート、トシレート、トリフレートなどのスルホン酸エステル)を表す。]
とフッ素源との反応を含む。
【0169】
好ましくはフッ素源は、KFなどのフッ化物イオンである。この変換についての詳細は、文献(G. H. Phillippsら, (1994) Journal of Medicinal Chemistry, 37, 3717-3729またはJ Labelled Compd Radiopharm (1997) 39(7) 567-584)に記載されている。
【0170】
式(XXIII)の化合物は、本明細書に記載の方法と同様の方法によって製造することができる。式(VI)、(VIII)、(IX)、(IXA)、(XV)および(XVI)(-CH2F部分が-CH2L部分(Lはフッ素以外の脱離基を表す)である)の相当する新規な中間体は、本発明の1態様として特許請求される。
【0171】
式(I)の化合物またはその溶媒和物のさらに別の製造方法は、3-カルボニル基が保護またはマスクされた式(I)の化合物の誘導体の脱保護または脱マスクの段階を有する。
【0172】
3-カルボニル基は、11-カルボニル位のマスキングに関して前述したものと同様の方法でマスクすることができる。従って3-カルボニルは、例えばケタール、モノチオケタール、ジチオケタール、アルコールアミン、オキシムまたはイミンとの誘導体としてマスクすることができる。カルボニル基は従来の手段によって回収することができる。例えばケタールは希酸で処理することでカルボニルに変換され、ジチオケタールはブルマンらの報告(P. C. Bulman Pageら (1989), Tetrahedron, 45, 7643-7677)およびその文献中の参考文献に記載の各種方法によってケトンに変換される。
【0173】
ある種の中間体化合物は新規であり、本発明者らは、適切であればそれらの塩および溶媒和物とともに、本発明の1態様としてそれらを提供する。
【0174】
上記のように本発明者らは、本発明の特定の態様として、
(a)エタノール、メタノール、水、酢酸エチル、トルエン、メチルイソブチルケトンまたはそれらの混合物などの非溶媒和性溶媒存在下に式(I)の化合物を結晶化させる段階;あるいは
(b)溶媒和型での式(I)の化合物(例えば、アセトン、プロパン-2-オール、メチルエチルケトン、DMFまたはテトラヒドロフランとの溶媒和物の形態で)を例えば加熱によって脱溶媒和する段階
を有する非溶媒和型での式(I)の化合物の製造方法を提供する。
【0175】
段階(b)において脱溶媒和は、50℃を超える温度、好ましくは100℃を超える温度で行う。加熱は通常、減圧下で行う。
【0176】
上記の方法によって得ることができる非溶媒和型での式(I)の化合物も提供される。
【0177】
本発明の特定の態様として、非溶媒和形態1の多形体としての式(I)の化合物を製造する方法において、式(I)の化合物をメチルイソブチルケトン、酢酸エチルまたは酢酸メチルに溶かす段階ならびにイソオクタンまたはトルエンなどの非溶媒和性逆溶媒を加えることで非溶媒和形態1として式(I)の化合物を製造する段階を有する方法も提供される。
【0178】
この方法の第1の好ましい実施形態によれば、式(I)の化合物を酢酸エチルに溶かすことができ、逆溶媒としてのトルエンを加えることで非溶媒和形態1多形体としての式(I)の化合物を得ることができる。収率を向上させるため、好ましくは酢酸エチル溶液は高温とし、トルエンを加えたら混合物を蒸留して、酢酸エチルの含有量を減らす。
【0179】
この方法の第2の好ましい実施形態によれば、式(I)の化合物をメチルイソブチルケトンに溶かすことができ、逆溶媒としてのイソオクタンを加えることで非溶媒和形態1多形体としての式(I)の化合物を得ることができる。
【0180】
上記の方法によって得ることができる非溶媒和形態1多形体としての式(I)の化合物も提供される。
【0181】
非溶媒和形態2の多形体としての式(I)の化合物を製造する方法は、式(I)の化合物をメタノールまたは無水ジクロロメタンに非溶媒和型での式(I)の化合物を溶解させる段階ならびに非溶媒和形態2多形体としての式(I)の化合物を再結晶する段階を有する。代表的には式(I)の化合物を、メタノールまたは無水ジクロロメタンに高温で溶かし、放冷する。
【0182】
上記の方法によって得ることができる非溶媒和形態2多形体としての式(I)の化合物も提供される。
【0183】
非溶媒和形態3の多形体としての式(I)の化合物を製造する方法は、特にはアセトン溶媒和物としての式(I)の化合物を水の存在下に(代表的には1〜3体積%の水)塩化メチレンに式(I)の化合物を溶解させる段階ならびに非溶媒和形態3多形体としての式(I)の化合物を再結晶する段階を有する。
【0184】
上記の方法によって得ることができる非溶媒和形態3多形体としての式(I)の化合物も提供される。
【0185】
式(I)の化合物および/またはその溶媒和物もしくは多形体の利点には、その物質が優れた抗炎症特性を示すように思われるとともに、予測可能な薬物動態挙動および薬力学的挙動を有しており、有望な副作用プロファイル、長期作用期間を有し、ヒト患者での治療の簡便な投与法と適合するものであり、特には1日1回投与に対して調整可能であることなどがあり得る。その利点は、式(I)の化合物および/またはその溶媒和物もしくは多形体を長期作用性β−アドレナリン受容体作働薬と併用した時に特に明らかになると考えられる。さらに別の利点には、その物質が望ましい物理的および化学的特性を有することで、製造および貯蔵が容易になるという点などがあり得る。
【0186】
図6における医薬キャリアは、医薬粉末5を封入した壁2を有するカプセル1の形態である。医薬粉末5は、カプセル1の壁2に穴を開けるち放出され、患者がそれを吸入することができる。
【0187】
図7aには、乾燥粉末105が入ったポケット107、底部110および積層部114、115を有する蓋を有する1個のブリスタ帯片106の側断面図を示してある。蓋は、プラスチック積層部に結合した金属箔積層部114からなる。この図では、蓋114、115は、適切な手段(例:接着、溶接)によって底部110に気密に封着されている。底部110は有機ポリマープラスチック103を有する。ポケット107を示すブリスタ帯片106の平面透視図を図7bに示してある。積層蓋114、115は底部110に封着されている。
【0188】
図8には、本発明による投薬用の乾燥粉末吸入器420の断面図を示してある。吸入器420には、貯留部423および貯留部カバー424を画定する本体421がある。貯留部には、乾燥粉末形態での医薬供給部405がある。本体421によって画定される貯留部の壁423は、プラスチック材料403からなる。底部425および本体421は開口430を画定しており、それを通って粉末405が貯留部から計量部材432に通過することができる。粉末405は、ホッパーを形成する貯留部の壁423によってガイドされて計量部材432に至る。主本体421の下側端部から横方向にマウスピース435が延在しており、そこから患者は通路433を介して吸入を行う。装置を鼻吸入用である場合、それが鼻ピースに代わるものと考えられる。
【0189】
図9には、本発明による投薬に好適な細長い医薬キャリアを含む乾燥粉末吸入器の簡略化した平面断面図を示してある。吸入器540は、医薬ブリスタ帯片506からの医薬粉末の単位用量を投薬するものである。吸入器は、本体521内の医薬帯片506を封入する外側ケーシング544からなる。医薬帯片は例えば、上記の図2a〜2bに記載のいずれかのものであることができる。患者は、装置を口に保持し、レバー538を押し、マウスピース535から吸入を行うことで吸入器を使用する。レバー538を押すことで、吸入器の内部機構が始動することで、コイル状に巻かれた医薬ブリスタ帯片506の蓋514および底部510シートが、巻き取りホイール542およびベースホイール543を用いることでインデックスホイール541で分離される。ブリスタポケット507内の単位用量の粉末医薬が放出され、出口533およびマウスピース535から患者がそれを吸入することができる。
【0190】
図10には、標準的な計量吸入装置の断面を模式的に示してある。
【0191】
図10に示した標準的な計量式医薬吸入器は、エアロゾル缶20を配置することができる筐体10を有する。この筐体の一端は開放されており(これは以下において、説明の都合上、装置の頂部であると考える)、他端は閉鎖されている。図示の実施形態では、出口30は、患者の口に挿入するためのマウスピースの形態であるが、それは所望に応じて、患者の鼻孔に挿入するためのノズルとして設計することができる。
【0192】
首領域21および口輪22を有するエアロゾル缶20は、一端に出口バルブステム40を有する。このバルブ部材を押すことで、エアロゾル缶から計量された用量を放出することができるか、あるいはバルブステム40を固定し、缶の主本体をバルブ部材に対して移動させて用量を放出させることができる。
【0193】
図10に示したように、エアロゾル缶20は筐体10内に配置されていることから、一端がその開放頂部から突出しており、首21およびバルブ口輪22が筐体10内に封入されるように缶が配置されている。スペーサーリブ(不図示)を筐体内部に設けて、筐体10の内部表面から離れた缶20の外表面を保持するようにすることができる。筐体10の下端には支持体50が設けられており、それにはエアロゾル缶20のバルブステム40を配置および支持できる通路60がある。第2の通路70が支持体50に設けられており、それは出口40内部に向かっている。従って、それらの部分が図1に示した位置にある時、エアロゾル缶20の突出部分を押すことで、缶をバルブステム40に対して移動させて、バルブを開けることができ、エアロゾル缶に入っている1用量の医薬が通路70から放出され、出口30から出て、それを患者が吸入することができる。それを完全に押す都度、1用量がエアロゾル缶から放出される。
【0194】
本体6はプラスチック材料製であり、筐体9およびノズル11を画定するものである。筐体9は、側壁ならびに第1の末端壁および第2の末端壁14によって形成される空洞部を画定している。投薬ノズル11が接続されており、それは第2の末端壁14から遠ざかる方向に延在し、外部テーパ形状を有する。
【実施例】
【0195】
下記の実施例は本発明を説明するものであるが、本発明を限定するものではない。
【0196】
実施例
全般
H-NMRスペクトルは400MHzで記録し、化学シフトはテトラメチルシランに対するppmで表している。下記の略号をシグナルの多重度を記載するために用いる:s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、m(多重線)、dd(二重線の二重線)、ddd(二重線の二重線の二重線)、dt(三重線の二重線)およびb(広い)。バイオテージ(Biotage)とは、フラッシュ12iクロマトグラフィーモジュール上で作動させる、KPSil含有の充填シリカゲルカートリッジを意味する。LCMSはスペルコジル(Supelcosil)LCABZ+PLUSカラム(3.3cm×4.6mm内径)を用い、水中に0.1%HCO2Hおよび0.01M酢酸アンモニウムを含む液(溶剤A)およびアセトニトリル中に0.05%HCO2Hおよび5% 水を含む液(溶剤B)により、以下の溶離勾配:0から0.7分0%B、0.7から4.2分100%B、4.2から5.3分0%B、5.3から5.5分0%Bを用い、流速3mL/分で溶出させて行った。マススペクトルはファイソンス(Fisons)VGプラットホーム(VG Platform)スペクトロメータでエレクトロスプレー陽性および陰性モード(ES+veおよびES-ve)を用いて記録した。
【0197】
DSCおよびTGAプロファイルは、窒素ガス流および10℃/分の熱勾配で非密封パンを用いるネッチ(Netzsch)STA449C同時熱分析装置を用いて得た。
【0198】
水分吸収特性は、ハイデン・イガソルブ(Hiden Igasorb)水吸収微量天秤を用いて得た。プログラムによって、相対湿度(RH)が0%から90%RHまで段階的に上昇し、次に0%RHまで10%RHずつ段階的に低下するようにしている。
【0199】
図1および2に示したXRPD分析は、フィリップス(Phillips)のエクスパート(X′pert)MPD粉末回折計(製造番号DY667)で行った。この方法は、0.02°2θ刻みの段階および各段階での収集時間1秒で2から45°2θまで行う。図4に示したXRPD分析では、0.04°2θ刻みの段階および収集時間1秒で2から35°2θまで走査を行う方法を用いるアントン・パール(Anton Parr)TTK熱補助装置を有する同じ装置を用いた。
【0200】
中間体
中間体1:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸
6α,9α-ジフルオロ-11β,17α-ジヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(GB2088877Bに記載の方法に従って調製したもの)(18g、43.64mmol)の無水ジクロロメタン(200mL)およびトリエチルアミン(15.94mL、114mmol)溶液を、2-フロイルクロリド(11.24mL、114mmol)の無水ジクロロメタン(100mL)溶液で5℃未満で約40分かけて処理した。この溶液を5℃未満で30分間攪拌した。この結果得られた固体をろ過して集め、3.5%炭酸水素ナトリウム水溶液、水、1M塩酸および水で順次洗い、減圧下60℃で乾燥してクリーム色の固体を得た。このジクロロメタンろ液を3.5%炭酸水素ナトリウム溶液、水、1M塩酸および水で順次洗い、乾燥し(NaSO)、溶媒留去してクリーム色の固体を得た。これを上記で単離したものと合わせた。合わせた固体(26.9g)をアセトン(450mL)中に懸濁し攪拌した。ジエチルアミン(16.8mL、162mmol)を添加し、混合物を室温で4.5時間攪拌した。この混合物を濃縮し、沈殿物をろ過して集め、少量のアセトンで洗った。洗液とろ液を合わせ、濃縮し、シリカゲルバイオテージカラムに乗せ、24:1のクロロホルム:メタノールで溶出した。より極性の強い成分を含む画分を集め、蒸発させてクリーム色の固体を得た。これを上記で単離した固体と合わせ減圧乾燥して淡ベージュ色の固体(19.7g)を得た。これを温水に溶解し、濃塩酸でpHを2に調節し、この混合物を酢酸エチルで抽出した。この有機抽出物を乾燥し(NaSO)、溶媒留去して、50℃で乾燥した後、標題化合物をクリーム色固体(18.081g、82%)として得た:LCMS保持時間3.88分、m/z507MH+、NMRδ(CDCl3):7.61(1H、m)、7.18-7.12(2H、m)、6.52(1H、dd、J4、2Hz)、6.46(1H、s)、6.41(1H、dd、J10、2Hz)、5.47および5.35(1H、2m)、4.47(1H、bd、J9Hz)、3.37(1H、m)、1.55(3H、s)、1.21(3H、s)、1.06(3H、d、J7Hz)。
【0201】
中間体1:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(第1の別法)
6α,9α-ジフルオロ-11β,17α-ジヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(GB2088877Bに記載の手順に従って製造)(1重量部、49.5g)のアセトン(10体積部)懸濁液を撹拌しながら冷却して0〜5℃とし、温度を5℃以下に維持しながらトリエチルアミン(0.51重量部、2.1当量)で処理し、0〜5℃で5分間撹拌する。次に反応温度を0〜5℃に維持しながら2-フロイルクロライド(0.65重量部、2.05当量)を最低20分間かけて加える。反応液を0〜5℃で30分間撹拌し、HPLCによる分析用にサンプリングする。ジエタノールアミン(1.02重量部、4当量)のメタノール(0.8体積部)溶液を約15分間かけて加え、次にメタノール(0.2体積部)のライン洗浄(line wash)を行い、反応液を0〜5℃で1時間撹拌する。反応液をHPLCによる分析用に再度サンプリングしてから、約20℃まで昇温させ、水(1.1重量部)で処理する。温度を25℃以下に維持しながら、反応混合物をHCl(比重1.18(11.5M)、1体積部)の水溶液(水10体積部)で約20分間かけて処理する。得られた懸濁液を20〜23℃で少なくとも30分間撹拌し、濾過する。フィルターケーキを水で洗浄する(2体積部×3)。生成物を約60℃で一晩真空乾燥して、標題化合物を白色固体として得る(58.7g、96.5%)。
【0202】
中間体1:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(第2の別法)
6α,9α-ジフルオロ-11β,17α-ジヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(GB2088877Bに記載の手順に従って製造)(1重量部、49.5g)のアセトン(10体積部)懸濁液を撹拌しながら冷却して0〜5℃とし、温度を5℃以下に維持しながらトリエチルアミン(0.51重量部、2.1当量)で処理し、0〜5℃で5分間撹拌する。次に反応温度を0〜5℃に維持しながら2-フロイルクロライド(0.65重量部、2.05当量)を最低20分間かけて加える。反応混合物を少なくとも30分間撹拌し、反応温度を0〜5℃の範囲に維持しながら、水(10体積部)で希釈する。得られた沈殿を濾取し、アセトン/水(50/50、2体積部)および水(2体積部で2回)の順で洗浄する。生成物を約55℃で一晩真空乾燥して、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-イルS-(2-フラニルカルボニル)チオ酸無水物を白色固体として得る(70.8g、98.2%)。(NMRδ(CD3CN)0.99(3H、d)(J=7.3Hz)、1.24(3H、s)、1.38(1H、m)(J=3.9Hz)、1.54(3H、s)、1.67(1H、m)、1.89(1H、広いd)(J=15.2Hz)、1.9-2.0(1H、m)、2.29-2.45(3H、m)、3.39(1H、m)、4.33(1H、m)、4.93(1H、広いs)、5.53(1H、ddd)(J=6.9,1.9Hz;JHF=50.9Hz)、6.24(1H、m)、6.29(1H、dd)(J=10.3、2.0Hz)、6.63(2H、m)、7.24-7.31(3H、m)、7.79(1H、dd)(J=<1Hz)、7.86(1H、dd)(J=<1Hz))。生成物の一部(0.56g)を、DMF(総ステロイド投入量に関して10体積部)中で1:1のモル比で6α,9α-ジフルオロ-11β,17α-ジヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(0.41g)と混合する。反応混合物をトリエチルアミン(約2.1当量)で処理し、混合物を約20℃で約6時間撹拌する。過剰の濃HCl(0.5体積部)を含む水(50体積部)を反応混合物に加え、得られた沈殿を濾取する。濾過床を水で洗浄し(5体積部で2回)、約55℃で一晩真空乾燥して、標題化合物が白色固体として残る(0.99g、102%)。
【0203】
中間体1A:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸ジイソプロピルエチルアミン塩
6α,9α-ジフルオロ-11β,17α-ジヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸(GB2088877Bに記載の手順に従って製造)(49.5g)の酢酸メチル(500mL)懸濁液を撹拌しながら、反応温度を0〜5℃に維持しつつ、トリエチルアミン(35mL)で処理する。2-フロイルクロライド(25mL)を加え、混合物を0〜5℃で1時間撹拌する。ジエタノールアミン(52.8g)のメタノール(50mL)溶液を加え、混合物を0〜5℃で少なくとも2時間撹拌する。反応温度を15℃以下に維持しながら希塩酸(約1M、550mL)を加え、混合物を15℃で撹拌する。有機相を分液し、水相を酢酸メチルで逆抽出する(250mLで2回)。有機相を全て合わせ、食塩水で順次洗浄し(250mLで5回)、ジイソプロピルエチルアミン(30mL)で処理する。反応混合物を大気圧下での蒸留によって濃縮して約250mLの容量とし、冷却して25〜30℃とする(通常、蒸留/その後の冷却の際に所望の生成物の結晶化が起こる)。tert-ブチルメチルエーテル(TBME)(500mL)を加え、得られたスラリーをさらに冷却し、0〜5℃で少なくとも10分間熟成させる。生成物を濾取し、冷TBMEで洗浄し(200mLで2回)、約40〜50℃で真空乾燥する(75.3g、98.7%)。NMR(CDCl3)δ:7.54-7.46(1H、m)、7.20-7.12(1H、dd)、7.07-6.99(1H、dd)、6.48-6.41(2H、m)、6.41-6.32(1H、dd)、5.51-5.28(1H、dddd2JH−F50Hz)、4.45-4.33(1H、bd)、3.92-3.73(3H、bm)、3.27-3.14(2H、q)、2.64-2.12(5H、m)、1.88-1.71(2H、m)、1.58-1.15(3H、s)、1.50-1.38(15H、m)、1.32-1.23(1H、m)、1.23-1.15(3H s)、1.09-0.99(3H、d)。
【0204】
中間体1B:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸トリエチルアミン塩
中間体1(30g)の酢酸エチル(900mL)懸濁液を撹拌しながら、トリエチルアミン(1.05モル当量、8.6mL)で処理し、混合物を約20℃で1.5時間撹拌する。沈殿を濾取し、酢酸エチルで洗浄し(2体積部で2回)、45℃で18時間真空乾燥して、標題化合物を白色固体として得る(28.8g、80%)。NMR(CDCl3)δ:7.59-7.47(1H、m)、7.23-7.13(1H、dd)、7.08-6.99(1H、d)、6.54-6.42(2H、m)、6.42-6.32(1H、dd)、5.55-5.26(1H、dddd2JH−F50Hz)、4.47-4.33(1H、bd)、3.88-3.70(1H、bm)、3.31-3.09(6H、q)、2.66-2.14(5H、m)、1.93-1.69(2H、m)、1.61-1.48(3H、s)、1.43-1.33(9H、t)、1.33-1.26(1H、m)、1.26-1.15(3H s)、1.11-0.97(3H、d)。
【0205】
実施例
実施例1:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル非溶媒和形態1
中間体1(2.5g、4.94mmol)の懸濁液を無水N,N-ジメチルホルムアミド(25mL)に溶かし、炭酸水素ナトリウム(465mg、5.53mmol)を加えた。混合物を-20℃で撹拌し、ブロモフルオロメタン(0.77mL、6.37mmol)を加え、混合物を-20℃で2時間撹拌した。ジエチルアミン(2.57mL、24.7mmol)を加え、混合物を-20℃で30分間撹拌した。混合物を2M塩酸(93mL)に加え、30分間撹拌した。水(300mL)を加え、沈殿を濾取し、水で洗浄し、50℃で真空乾燥して白色固体を得た。それをアセトン/水から再結晶して(6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステルのアセトン溶媒和物を得)、50℃で真空乾燥して、標題化合物を得た(2.351g、88%)。LCMS保持時間3.66分、m/z539MH+、NMRδ(CDCl3):7.60(1H、m)、7.18-7.11(2H、m)、6.52(1H、dd、J4.2Hz)、6.46(1H、s)、6.41(1H、dd、J10、2Hz)、5.95および5.82(2H dd、J51、9Hz)、5.48および5.35(1H、2m)、4.48(1H、m)、3.48(1H、m)、1.55(3H、s)、1.16(3H、s)、1.06(3H、d、J7Hz)。
【0206】
実施例1:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル非溶媒和形態1(第1の別法)
中間体1A(12.61g、19.8mmol;中間体1 10gと等価)の酢酸エチル(230mL)および水(50mL)中の流動性懸濁液を相間移動触媒(ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、10モル%)で処理し、冷却して3℃とし、ブロモフルオロメタン(1.10mL、19.5mmol、0.98当量)で処理し、予め冷却した(0℃)酢酸エチル(EtOAc)(20mL)で洗浄する。懸濁液を終夜撹拌して、昇温させて17℃とする。水層を分液し、有機相を1MHCl(50mL)、1重量/体積%NaHCO3溶液(50mLで3回)および水(50mLで2回)の順で洗浄する。酢酸エチル溶液を蒸留液が約73℃の温度に達するまで大気圧下で蒸留し、その時点でトルエン(150mL)を加える。全ての残留EtOAcが除去されるまで(蒸留物温度約103℃)大気圧下で蒸留を継続する。得られた懸濁液を冷却し、<10℃で熟成し、濾過する。濾過床をトルエンで洗浄し(30mLで2回)、生成物を減圧下に60℃で真空乾燥して恒量とすることで、標題化合物を得る(8.77g、82%)。
【0207】
実施例1:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル非溶媒和形態1(第2の別法)
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステルアセトン溶媒和物(例えば、実施例11に従って製造)(50.0g)のアセトン(1500mL)および水(75mL)懸濁液を加熱還流した。得られた混合物を熱濾過(ワットマン(Whatman)54濾紙)することで透明とした。その際に、少量の固体が濾液中で結晶化した。追加のアセトン(200mL)を濾液に加えて、還流下に明溶液を得た。溶液を還流しながら濁りが認められるまで大気圧下で蒸留した(溶媒約750mLを回収)。トルエン(1000mL)を熱溶液に加え、大気圧下での蒸留を続けて、約98℃の温度で結晶化を生じさせた。反応温度が105℃となるまで溶媒の蒸留を続けた(溶媒約945mLを回収した)。混合物を冷却して室温とし、さらに冷却し、<10℃で10分間熟成した。生成物を濾過し、トルエン(150mL)で洗浄し、吸引乾燥した。生成物を減圧下に16時間約60℃で乾燥して、標題化合物を高密度の白色固体として得た(37.8g、83.7%)。
【0208】
実施例1の生成物のXRPDパターンを図1に示してある。DSCおよびTGAプロファイルを図3に示してある。
【0209】
実施例2:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル非溶媒和形態2
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル(例えば、実施例1の方法1に従って製造)(6.0g)のジクロロメタン(180mL)懸濁液を加熱還流して、明溶液を得た。溶液を熱濾過によって透明とし(ワットマン54濾紙)、溶液を大気圧下で蒸留して(溶媒約100mLを回収)、還流下に結晶化を生じさせた。混合物を約30分間還流状態に維持し、徐々に冷却して室温とした。混合物をさらに冷却し、10〜20℃で2時間熟成させた。スラリーを冷却して10℃以下とし、生成物を濾過し、吸引乾燥し、約60℃で一晩真空乾燥して、白色固体を得た(4.34g、71%)。
【0210】
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル非溶媒和形態2のより純粋なサンプルを、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル(例えば、実施例1の方法1に従って製造)をメタノール(60体積部、大気圧下で蒸留して約37.5体積部とする)中で冷却下に結晶化させることで得た。生成物を濾過によって単離し、減圧下に60℃で16時間乾燥機乾燥することで、白色の静電気帯電固体(4.34g、71%)を得た。
【0211】
実施例2の生成物のXRPDパターンを図1に示してある。
【0212】
実施例3:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル非溶媒和形態3
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステルアセトン溶媒和物(例えば実施例11に従って製造)(20.0g)のジクロロメタン(800mL、40体積部)および水(10mL、0.5体積部)懸濁液を加熱還流して、明溶液を得た。溶液を熱濾過(ワットマン54濾紙)によって透明とし、その間に少量の固体が濾液中で結晶化し、それは加熱還流すると完全に溶解した。溶液を大気圧下に蒸留し(溶媒約400mLを回収)、放冷して室温とした。混合物をさらに冷却し、<10℃で10分間熟成した。生成物を濾過し、吸引乾燥し、約60℃で終夜真空乾燥して、白色固体を得た(12.7g、70%)。
【0213】
実施例3生成物のXRPDパターンを図1および図4に示してある。
【0214】
実施例4:非溶媒和6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステルの形態1、2および3の相互変換
形態1および形態2の混合物を室温で水中にてスラリーとしたところ、これらの成分が時間の経過とともに完全に形態1に変換されることが明らかになった。XRPD結果を図2に示してある。形態1および形態2の混合物を室温でエタノール中にてスラリーとすることでも同様の結果が得られた。これらの結果から、この2種類の形態の中で、形態1が熱力学的により安定な多形体であると言うことができる。
【0215】
形態3についての熱XRPD試験を、図4に示したように行った。温度および時間プロファイルを図5に示してあり、図4に示した5つのトレースが図5に示した平衡箇所で得られた。この結果は、温度が上昇するにつれて、形態3が最初に形態2に変換し、次に形態1に変換することを示している。
【0216】
実施例5:非溶媒和6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステルの形態1、2および3の水分吸収
3種類の形態の水分吸収特性を、湿度の段階的上昇とそれに続く低下に曝露した場合の固体の重量変化をモニタリングすることで測定した。得られた結果は次の通りであった。
【0217】
形態1:25℃で相対湿度0〜90%の範囲で0.18重量%の水分取り込み;
形態2:25℃で相対湿度0〜90%の範囲で1.1〜2.4重量%の水分取り込み;
形態3:25℃で相対湿度0〜90%の範囲で1.2〜2.5重量%の水分取り込み。
【0218】
実施例6:非溶媒和6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステルの形態1および3の溶解のエンタルピー
DMSOおよびアセトニトリルへの溶解のエンタルピーを25℃で測定した。結果は以下の通りであった。
【表1】

【0219】
この結果から、形態3から形態1への遷移のエンタルピーが約5.1〜6.7kJ/molであると確認することができる。遷移のエントロピーが小さいと仮定すると、両方の形態が非溶媒和であることから、遷移のエンタルピーは遷移の自由エネルギーと等しくなると考えられる。そこでこのデータは、形態1が25℃で熱力学的に最も安定であることを示唆している。
【0220】
実施例7:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル・メチルエチルケトン溶媒和物
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル(例えば、実施例1に従って製造)(400mg)のメチルエチルケトン(3.2mL)懸濁液を加熱還流して、透明溶液を得る。溶媒の一部を大気圧下で留去し(約1mL)、混合物を冷却して約20℃とする。結晶化した生成物を濾取し、約20℃で真空乾燥して、標題化合物を白色固体として得る(310mg、68%)。NMRδ(CDCl3)には、親化合物についての実施例1に記載のピークと、2.45(2H、q)、2.14(3H、s)、1.06(3H、t)という追加の溶媒ピークがある。
【0221】
実施例8:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル・イソプロパノール溶媒和物
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル(例えば、実施例1に従って製造)(150mg)のイソプロパノール(15mL)溶液を約8週間の期間をかけてゆっくり結晶化させる。得られる塊状(chunky)結晶を濾過によって単離して、標題化合物を白色固体として得る。NMRδ(CDCl3)には、親化合物についての実施例1に記載のピークと4.03(1H、m)、1.20(6H、d)という追加の溶媒ピークがある。
【0222】
実施例9:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル・テトラヒドロフラン溶媒和物
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル(例えば、実施例1に従って製造)(150mg)のTHF(20体積部)の懸濁液を昇温させて透明溶液を得る。溶媒を6日間かけてゆっくり蒸発させて、標題化合物を白色固体として得る。別法として、そのTHF溶液を重炭酸カリウム(2重量%)水溶液(水50体積部)に滴下し、沈殿した生成物を濾過によって回収して、標題化合物を白色固体として得る。NMRδ(CDCl3)には、親化合物についての実施例1に記載のピークおよび3.74(4H、m)、1.85(4H、m)という別の溶媒ピークがある。
【0223】
実施例9:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル・テトラヒドロフラン溶媒和物(別法)
流動性の6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸トリエチルアミン塩(例えば、中間体1Bに従って製造)(1.2g)のTHF(10mL)懸濁液を相間移動触媒(テトラブチルアンモニウムブロミド、代表的には8〜14モル%)で処理し、冷却して約3℃とし、ブロモフルオロメタン(0.98当量)で処理する。懸濁液を2〜5時間撹拌し、昇温させて17℃とする。反応混合物を水(30体積部)に投入し、約10℃で30分間撹拌し、濾過する。回収した固体を水で洗浄し(3体積部で4回)、生成物を60℃で一晩真空乾燥して、標題化合物を白色固体として得る(0.85g、87%)。
【0224】
実施例10:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル・DMF溶媒和物
中間体1(4.5g、8.88mmol)のDMF(31mL)中混合物を重炭酸カリウム(0.89g、8.88mmol)で処理し、混合物を冷却して-20℃とする。0℃のブロモフルオロメタン(0.95g、8.50mmol、0.98当量)のDMF(4.8mL)溶液を加え、混合物を-20℃で4時間撹拌する。混合物を-20℃でさらに30分間撹拌し、2M塩酸(100mL)に加え、0〜5℃でさらに30分間撹拌する。沈殿を減圧濾過によって回収し、水で洗浄し、50℃で乾燥して、標題化合物を得る(4.47g、82%)。NMRδ(CD3OD)には、親化合物についての実施例1に記載のピークと7.98(1H、bs)、2.99(3H、s)、2.86(3H、s)という追加の溶媒ピークがある。
【0225】
実施例11:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル・アセトン溶媒和物
中間体1(530.1g、1重量部)のジメチルホルムアミド(DMF)(8体積部)溶液を炭酸水素カリウム(0.202重量部、1.02当量)で処理し、混合物を撹拌しながら冷却して-17±3℃とする。ブロモフルオロメタン(BFM)(0.22重量部、0.99当量)を加え、反応液を-17±3℃で少なくとも2時間撹拌する。反応混合物を水(17体積部)に5±3℃で約10分間かけて加え、次に水(1体積部)でのライン洗浄を行う。懸濁液を5〜10℃で少なくとも30分間撹拌し、濾過する。フィルターケーキ(6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステルのDMF溶媒和物)を水で洗浄し(4体積部で4回)、生成物をフィルター上で吸引乾燥する。湿ったケーキを容器に戻し、アセトン(5.75体積部)を加え、2時間加熱還流する。混合物を冷却して52±3℃とし、温度を52±3℃に維持しながら水(5.75体積部)を加える。混合物を冷却して20±3℃とし、濾過し、60±5℃で終夜真空乾燥して、標題化合物を白色固体として得る(556.5g、89%)。NMRδ(CDCl3)には、親化合物についての実施例1に記載のピークと2.17(6H、s)という追加の溶媒ピークがある。
【0226】
実施例12:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル非溶媒和形態1を含む乾燥粉末組成物
以下のようにして乾燥粉末製剤を調製した。
【0227】
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル非溶媒和形態1(実施例1の第1の別法に従って製造し、MMDが3μmとなるまで微粉化):0.20mg;
粉砕乳糖(粒子の85%以下が60〜90μmのMMDを有し、粒子の15%以上が15μm未満のMMDを有する):12mg。
【0228】
上記に記載の製剤をそれぞれ充填したブリスタ60個を含む剥離可能なブリスタ帯片を製造した。
【0229】
実施例12A:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル非溶媒和形態1および長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬を含む乾燥粉末組成物
乾燥粉末製剤を以下のようにして調製することができる。
【0230】
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル非溶媒和形態1(実施例1の第1の別法に従って製造し、MMDが3μmとなるまで微粉化):0.20mg;
長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬(MMDが3μmとなるまで微粉化):0.02mg;
粉砕乳糖(粒子の85%以下が60〜90μmのMMDを有し、粒子の15%以上が15μ未満のMMDを有する):12mg。
【0231】
上記に記載の製剤をそれぞれ充填したブリスタ60個を含む剥離可能なブリスタ帯片を製造することができる。
【0232】
実施例13:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル非溶媒和形態1を含むエアロゾル製剤
アルミニウム缶に以下のように製剤を充填した。
【0233】
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル非溶媒和形態1(実施例1の第1の別法に従って製造し、MMDが3μmとなるまで微粉化):250μg;
1,1,1,2-テトラフルオロエタン:50μLまで(1回駆動当たりの量)。
【0234】
これらを120回の駆動に好適な総量となるようにし、缶に駆動当たり50μLを投薬するように調整されたバルブを取り付けた。
【0235】
実施例13A:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル非溶媒和形態1および長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬を含むエアロゾル製剤
アルミニウム缶に以下のように製剤を充填した。
【0236】
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオ酸S-フルオロメチルエステル非溶媒和形態1(実施例1の第1の別法に従って製造し、MMDが3μmとなるまで微粉化):250μg;
長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬(MMDが3μmとなるまで微粉化):25μg;
1,1,1,2-テトラフルオロエタン:50μLまで(1回駆動当たりの量)。
【0237】
これらを120回の駆動に好適な総量となるようにし、缶に駆動当たり50μLを投薬するように調整されたバルブを取り付けることができる。
【0238】
薬理活性
in vitroでの薬理活性
薬理活性はグルココルチコイド作働薬活性のin vitro機能アッセイで評価したが、これは通常in vivoでの抗炎症活性または抗アレルギー活性を示唆するものである。
【0239】
本セクションにおける実験では、式(I)の化合物を非溶媒和形態1として用いた。
【0240】
この機能アッセイは、レイらの報告(K. P. Rayら, Biochem J. (1997), 328, 707-715)に記載されているものに基づいて行った。sPAP(分泌性アルカリホスファターゼ)に結合させたELAM遺伝子プロモーターからのNF-κB応答性エレメントを含んでいるリポーター遺伝子で、安定にトランスフェクトしたA549細胞を、適切な量の供試化合物で、37℃で1時間処理した。次いで、その細胞を腫瘍壊死因子(TNF、10ng/mL)で16時間刺激し、その時点で産生されたアルカリホスファターゼを標準的な比色アッセイ法で測定した。用量反応曲線を描き、その曲線からEC50値を推定した。
【0241】
この試験で化合物(I)は1nM未満のEC50値を示した。グルココルチコイド受容体(GR)は少なくとも2種類の別個の機序で機能しうるが、それらは、遺伝子プロモーター中の特定の配列に対するGRの直接的結合を介して遺伝子の発現を上昇することによるもの、および他の転写調節因子(NFκBまたはAP-1など)がGRと直接的に相互作用することによって駆動される遺伝子発現を低下することによるものである。
【0242】
上述の方法の変法では、これらの機能をモニターするために2種類のリポータープラスミドを作成し、A549ヒト肺上皮細胞中にトランスフェクションによって別々に導入した。第1の細胞系は、ホタルのルシフェラーゼリポーター遺伝子が、転写因子NFκBがTNFαで刺激された場合に起こる活性化に特異的に応答する合成プロモーターの制御下にあるものを含んでいる。第2の細胞系は、コンセンサスグルココルチコイド応答エレメントを3コピー含む合成プロモーターの制御下にあるウミシイタケ(renilla)ルシフェラーゼリポーター遺伝子を含んでおり、これはグルココルチコイドによる直接的刺激に応答する。トランス活性化とトランス抑制の同時測定を、2種の細胞系を1:1の比で96ウェルプレート中で混合し(1ウェルあたり細胞40000個)、37℃で一晩増殖させることによって行った。供試化合物をDMSO中に溶解し、細胞に最終のDMSO濃度が0.7%となるように添加した。1時間インキュベートした後、0.5ng/mLのTNFα(R&D Systems)を添加し、さらに37℃で15時間インキュベートした後、ホタルおよびウミシイタケのルシフェラーゼのレベルをパッカード・ファイアライト(Packard Firelite)キットを製造者の使用説明書に従って用いて測定した。用量反応曲線を描き、それからEC50値を求めた。
【表2】

【0243】
in vivo薬理活性
in vivoでの薬理活性はオバルブミンで感作されたブラウン・ノルウェー(Brown Norway)ラット好酸球増加症モデルで評価した。このモデルはアレルゲンによって誘発された、喘息における肺の炎症の主要な要素である肺の好酸球増加症を模倣するように設計されたものである。
【0244】
このセクションにおける実験では、式(I)の化合物を非溶媒和形態1として用いた。
【0245】
化合物(I)は、このモデルでオバルブミン負荷の30分前に食塩水中の気管内(IT)投与用懸濁液として投与後、用量依存的に肺好酸球増加症の阻害を示した。化合物(I)30μgの単回投与後に顕著な阻害が見られ、その応答は同じ実験でプロピオン酸フルチカゾンの同量投与で認められたものより有意に大きい(p=0.016)ものであった(化合物(I)での69%の阻害に対し、プロピオン酸フルチカゾンでは41%の阻害)。
【0246】
胸腺退縮のラットモデルでは、化合物(I)を1日に100μg、3日間IT投与したところ、同じ実験でのプロピオン酸フルチカゾンの同量投与と比較して胸腺重量の有意に小さい低減(p=0.004)が誘発された(化合物(I)における胸腺重量の67%低減に対し、プロピオン酸フルチカゾンでは78%の低減)。
【0247】
これらの結果を総合すると、化合物(I)の治療指数はプロピオン酸フルチカゾンよりも優れていることを示している。
【0248】
in vitroでのラットおよびヒトの肝細胞における代謝
化合物(I)をラットまたはヒトの肝細胞とインキュベーションすると、その化合物は、プロピオン酸フルチカゾンと同一の様式で代謝され、17βカルボン酸(X)が唯一の目立った代謝産物であることが示された。この代謝産物の出現速度を、実施例1をヒト肝細胞とインキュベーション(37℃、10μMの薬剤濃度、3例の被験者からの肝細胞、細胞200000および700000個/mL)して調べると、化合物(I)はプロピオン酸フルチカゾンより約5倍迅速に代謝されることが示された。
【表3】

【0249】
代謝産物産生の中央値は、化合物(I)で102〜118ピコモル/h、プロピオン酸フルチカゾンで18.8〜23.0ピコモル/hであった。
【0250】
ラットに静脈内(IV)および経口投与した後の薬物動態
化合物(I)を雄のウィスター・ハン(Wistar Han)ラットに経口投与(0.1mg/kg)および静脈投与(0.1mg/kg)し、薬物動態パラメーターを測定した。化合物(I)は経口でのバイオアベイラビリティーは無視しうる程度で(0.9%)、血漿クリアランスは47.3mL/分/kgで、この値は肝血流に近いものであった(プロピオン酸フルチカゾンの血漿クリアランス=45.2mL/分/kg)。
【0251】
ブタへの気管内乾燥粉末投与後の薬力学
麻酔を施したブタ(2匹)に、化合物(I)(1mg)およびプロピオン酸フルチカゾン(1mg)の均一な混合物を乳糖(10重量%)中に混合して乾燥粉末としたものを用いて気管内投与を行った。血液サンプルを連続的に投与8時間後まで採取した。化合物(I)とプロピオン酸フルチカゾンの血中レベルは抽出後にLC-MS/MS法を用いて分析し、その方法での定量の下限値は化合物(I)およびプロピオン酸フルチカゾンについてそれぞれ10および20pg/mLであった。これらの方法を用いると、化合物(I)は投与の2時間後まで定量することができ、プロピオン酸フルチカゾンは投与の8時間後まで定量できた。最高血中濃度は双方の化合物とも投与の15分以内に観察された。IV投与(0.1mg/kg)で得られた血中半減期データを、化合物(I)のAUC(0−無限大)の値の計算に用いた。これは化合物(I)の血中動態がIT投与の2時間後までしか明らかでないことを補うものであり、化合物(I)とプロピオン酸フルチカゾンとの間のデータが限られていることによる偏りを取り除くものである。
【0252】
CmaxとAUC(0−無限)の値は、化合物(I)の全身への暴露がプロピオン酸フルチカゾンに比べて著しく低いことを示している。
【表4】

【0253】
化合物(I)とプロピオン酸フルチカゾンの薬物動態パラメーターは、麻酔を施したブタにこれら2種の化合物の混合物を0.1mg/kgで静脈投与した後のものと同じであった。これら2種のグルココルチコイドのクリアランスはこの実験的ブタモデルでは類似したものであった。
【0254】
本明細書と特許請求の範囲を通じて、文脈によって特に他の意味を考える必要がない限りは、「含む(「comprise」)」という用語およびその変化した形、例えば「comprises」および「comprising」は、記載された整数もしくは段階または整数の群が含まれることを意味しているがその他の何らかの整数もしくは段階または整数もしくは段階の群を排除するものではないと理解される。
【0255】
本願に記載された特許および特許出願は、参照によって本明細書に組み込まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬とともに下記式(I)の化合物:
【化1】

またはその溶媒和物を含み、24時間以上の期間にわたって呼吸管の炎症障害の治療において治療上有用な効果を有する、吸入投与用の医薬製剤。
【請求項2】
前記式(I)の化合物またはその溶媒和物および前記長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬がいずれも粒子状形態で存在する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
粒子状担体をさらに含む、請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記担体が乳糖である、請求項3に記載の医薬製剤。
【請求項5】
液化推進剤ガスをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
前記呼吸管の炎症障害が喘息である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬が、下記式(M)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【化2】

[式中、
mは2〜8の整数であり;
nは3〜11の整数であり;
ただしm+nは5〜19であり;
R11は-XSO2NR16R17であり、Xは-(CH2)p-またはC2-6アルケニレンであり;
R16およびR17は独立に、水素、C1-6アルキル、C3-7シクロアルキル、C(O)NR18R19、フェニルおよびフェニル(C1-4アルキル)-から選択されるか;
あるいはR16とR17は、それらが結合している窒素と一体となって、5員、6員または7員の含窒素環を形成しており;R16およびR17はそれぞれ場合によって、ハロ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ置換C1-6アルコキシ、-CO2R18、-SO2NR18R19、-CONR18R19、-NR18C(O)R19または5員、6員もしくは7員の複素環から選択される1個もしくは2個の基によって置換されていてもよく;
R18およびR19は独立に、水素、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、フェニルおよびフェニル(C1-4アルキル)-から選択され;
pは0〜6、好ましくは0〜4の整数であり;
R12およびR13は独立に、水素、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロ、フェニルおよびC1-6ハロアルキルから選択され;
R14およびR15は独立に、水素およびC1-4アルキルから選択され;ただし、R14およびR15における炭素原子の総数は4を超えない。]
【請求項8】
長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬とともに下記式(I)の化合物:
【化3】

またはその溶媒和物を含み、24時間以上の期間にわたって呼吸管の炎症障害の治療において治療上有用な効果を有する医薬製剤を複数用量含み、その用量が吸入による前記製剤の1日1回投与に好適なものである吸入器。
【請求項9】
前記式(I)の化合物もしくはその溶媒和物および前記長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬がいずれも粒子状形態で存在する、請求項8に記載の吸入器。
【請求項10】
前記製剤が粒子状担体をさらに含む請求項8または9に記載の吸入器。
【請求項11】
前記担体が乳糖である、請求項10に記載の吸入器。
【請求項12】
前記製剤が液化推進剤ガスをさらに含む、請求項8〜11のいずれか1項に記載の吸入器。
【請求項13】
粒子状の下記式(I)の化合物:
【化4】

またはその溶媒和物、粒子状の長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬および担体を含む複数用量の医薬製剤が入った吸入器であって、各医薬が1日1回の吸入による投与から24時間以上の期間にわたって呼吸管の炎症障害の治療において治療上有用な効果を提供するのに適切な量で存在する、上記吸入器。
【請求項14】
前記呼吸管の炎症障害が喘息である、請求項8〜13のいずれか1項に記載の吸入器。
【請求項15】
前記長期作用性β-アドレナリン受容体作働薬が下記式(M)の化合物またはその塩もしくは溶媒和物である、請求項8〜13のいずれか1項に記載の吸入器。
【化5】

[式中、
mは2〜8の整数であり;
nは3〜11の整数であり;
ただしm+nは5〜19であり;
R11は-XSO2NR16R17であり、Xは-(CH2)p-またはC2-6アルケニレンであり;
R16およびR17は独立に、水素、C1-6アルキル、C3-7シクロアルキル、C(O)NR18R19、フェニルおよびフェニル(C1-4アルキル)-から選択されるか;
あるいはR16とR17は、それらが結合している窒素と一体となって、5員、6員または7員の含窒素環を形成しており;R16およびR17はそれぞれ場合によって、ハロ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ置換C1-6アルコキシ、-CO2R18、-SO2NR18R19、-CONR18R19、-NR18C(O)R19または5員、6員もしくは7員の複素環から選択される1個もしくは2個の基によって置換されていてもよく;
R18およびR19は独立に、水素、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、フェニルおよびフェニル(C1-4アルキル)-から選択され;
pは0〜6、好ましくは0〜4の整数であり;
R12およびR13は独立に、水素、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロ、フェニルおよびC1-6ハロアルキルから選択され;
R14およびR15は独立に、水素およびC1-4アルキルから選択され;ただし、R14およびR15における炭素原子の総数は4を超えない。]
【請求項16】
1日1回治療を行うための炎症状態および/またはアレルギー状態の患者の治療でのヒトまたは動物用の医薬において使用するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製剤の使用。
【請求項17】
1日1回治療を行うための炎症状態および/またはアレルギー状態の患者治療用の医薬製造における請求項1〜7のいずれか1項に記載の製剤の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−280701(P2010−280701A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177124(P2010−177124)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2003−565460(P2003−565460)の分割
【原出願日】平成15年2月4日(2003.2.4)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】