説明

炭化水素の分離法

【課題】類似の沸点を有する異性体混合物を分離する方法の提供。
【解決手段】それぞれ沸点が近い化合物を分離する方法であって、上記化合物の炭化水素混合物を、高沸点希釈液及びゼオライトのような固形の吸着剤の存在下に蒸留することを含む吸着式異性体蒸留の方法である。高沸点希釈剤は、蒸留塔の底部から抜き出され、塔にリサイクルされる。この方法は、例えばメチルシクロヘキサンからn−へプタンの分離、ナフサ留分中のベンゼンをトルエンから分離する方法に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、類似の沸点を有する化合物を分離するための方法及び装置に関する。詳しくは、本発明は、炭化水素異性化物中の類似の沸点を有する化合物の分離方法、より詳しくはC7異性化物混合物中のノルマルアルカンからの単分枝状及び/または多分枝状アルカン及び環状アルカンの分離法、例えばメチルシクロヘキサン(MCH)からのn−C7の分離法に関する。また本発明は、炭化水素混合物中の芳香族化合物の分離法、例えばベンゼンを他の炭化水素から分離する方法、特にナフサ留分中のベンゼンをトルエンから分離する方法にも関する。更に本発明は、オレフィンからのパラフィンの分離、特にプロパン−プロピレン留分中のプロパンからのプロピレンの分離法に関する。
【背景技術】
【0002】
異性体混合物からの低オクタン価直鎖状異性体、すなわちノルマルアルカン類の効果的な除去は、ガソリンプールに使用するための高オクタン価混合物の製造や、触媒異性化プロセスの効率にとって重要な段階の一つである。この問題を扱った幾つかの方法が開示されており、それらの殆どは、C5/C6異性体混合物にのみ関するものである。
【0003】
米国特許第4,956,521号明細書は、C5/C6異性体からn−アルカン及び単分枝状アルカンを除去するために、それぞれ異なる特定のゼオライトを装填した様々な吸着剤床の使用を開示している。
【0004】
米国特許第6,069,289号明細書は、移動床中で単一の吸着剤を用い、かつ異なる脱着容量を有する二種の脱着剤を使用することによって、異性化反応器からの流出流から、高オクタン価化合物である多メチル分枝状アルカンを分離する方法を開示している。前記の吸着剤は、シリカライト、フェリエライト、ゼオライトベータ、MAPO−31、SAPO−31、SAPO−11、並びにカチオンとイオン交換したゼオライトX及びゼオライトYであることができる。
【0005】
米国特許第6,353,144号明細書は、C5〜C8異性体混合物を、吸着剤としてゼオライトを含むクロマトグラフィ分離域に注入し、それと交互にこの異性体混合物の吸着された様々な化合物を脱着させることができる溶離液を流すことによって、このような異性体混合物から異性体を分離する方法を開示している。
【0006】
米国特許第7,037,422号明細書は、C5及びC6アルカンの異性体混合物をCFIゼオライトと接触させることにより、この異性体混合物から高オクタン価化合物のナフサを分離する方法を開示している。C5及びC6アルカンの分枝状異性体は吸着され、次いで脱着される。前記のゼオライト中で、C5及びC6アルカンは、高オクタン価化合物であるメチルブタン及びジメチルブタンに異性化され、そしてメチルブタン及びジメチルブタンは、それぞれ他のC5異性体及びC6異性体よりも沸点が低いために、これらは、同じカラム中において触媒蒸留(catalytic distillation)によって回収される。
【0007】
米国特許第5,210,333号明細書は、吸着された芳香族化合物を飽和させる水素化機能が組み合わされた固定床中で、NaX及びNaYゼオライト上への吸着を利用することを開示している。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、異性化物混合物を含む炭化水素流を、より沸点の高い希釈溶剤で希釈することによって、吸着剤が配置された蒸留塔の中で、それぞれ沸点が近い異性体炭化水素を分離できることをここに見出した。従来技術の方法とは対照的に、本発明者らは、驚くべきことに、特性の成分を、たとえその沸点が、塔から留出する化合物よりも低い場合でも、塔中に保持され得るように蒸留を行い得ることを見出した。保持される一種またはそれ以上の成分よりも高いもしくは低い沸点を有する他の成分は、希釈溶剤を同伴することなく留出物流として抜くことができる。
【0009】
それ故、本発明者らは、ノルマルアルカン、単分枝状アルカン及び多分枝状アルカンを含む異性化物混合物から異性体を分離する方法であって、
(a) 上記異性化物混合物を蒸留段階に付し、但しこの際、この蒸留段階は、吸着域中に吸着剤を含み、この吸着域は、前記異性化物混合物よりも高い沸点を有する希釈液溶液と接触し、
(b) 単分枝状アルカン及び/または多分枝状アルカンを含む留出物流を前記蒸留段階から抜き出し、かつ吸着域中に少なくとも上記ノルマルアルカンを保持し、但しこの際、前記の吸着域は、5A、MCM−22、シリカライト、ZSM−5、イオン交換したHZSM−5、及びこれらの混合物からなる群から選択されるゼオライトを含み、
(c) 上記の希釈液溶液を含む流れを上記の蒸留段階から抜き出し、かつこの流れを段階(a)に戻す、
ことを含む上記方法を提供する。
【0010】
吸着剤、特に固体ゼオライト吸着剤の存在下での蒸留は、蒸留と吸着が同じ塔中で行われるために、異性化物混合物からの単分枝状異性体及び/または多分枝状異性体の分離を簡単に行うことを可能にする。それゆえ、本方法は、バッチ式または半連続式(例えばスウィングオペレーション)で操業される“吸着式異性体蒸留(adsorptive isomer distillation)と見なすことができる。
【0011】
上記異性化物混合物は、更に、環状アルカン、例えばナフテン類、オレフィン及び芳香族化合物、例えばベンゼン及びトルエンを含んでいてもよい。そうすると、留出物流もこれらの化合物を含むことになる。
【0012】
上記異性化物混合物(供給物)が環状アルカン、例えばナフテン類を含む場合には、これらは留出物流中に抜き取られる。これは、このような高沸点化合物が蒸留塔底から抜かれる従来の蒸留構成とは対照的である。
【0013】
段階(b)において“少なくとも”上記のノルマルアルカンは吸着段階に保持するとは、ノルマルアルカンの他に、他の化合物、特に単分枝状アルカンも吸着剤中に保持され得ることを意味する。
【0014】
本発明の好ましい態様の一つでは、段階(a)は、上記の異性化物混合物を含む第一の流れを、この異性化物混合物の沸点よりも高い沸点を有する上記の希釈液溶液の第二の流れと合流させ、そしてこの合流させた流れを上記の蒸留段階に付すことを含む。希釈剤流は反応器から抜き出され、そして吸着剤を含む蒸留装置に導入される前に異性化物供給物と組み合わされる。
【0015】
また、当然に、上記異性化物混合物及び希釈液溶液は、別々に蒸留塔に供給することもできる。それ故、異性化物混合物を含む第一の流れと、この異性化物混合物の沸点よりも高い沸点を有する希釈液溶液の第二の流れとの合流は、この合流した流れを実際の蒸留段階に付す前に蒸留塔の内部の供給域中で、あるいは塔の直ぐ付近で、例えば蒸留塔と流体連通している混合室中で、行うことができる。
【0016】
他の態様の一つでは、段階(a)において、蒸留塔の底部から希釈剤の流れを抜き取りそしてこの流れを塔頂に戻すことによって、希釈液溶液を、吸着域中に吸着剤を含む蒸留塔内で向流で上記異性化物混合物を含む第一の流れと接触させる。このようにすることで、異性化物及び希釈剤が、これらが蒸留塔の中を向流状態で通過する際に蒸留塔内部で合流し、それによって塔の構成がより簡単になる。塔に導入する前にこれらの流れを合流させる必要はない。更に、塔頂での希釈剤の導入は、塔を完全に濡らすことを確実にする。異性化物供給物は、有利には、希釈されていない形で、塔底から5%〜50%、好ましくは約10%〜30%の位置で供給することができる。これは、ゼオライトの吸着容量を非常に効率良く使用することを可能にする。この際、ゼオライトの吸着容量は、図らずしも、静的な室温吸着状態に接近する。別の言い方をすれば、該方法のダイナミックな性質にも拘わらず、吸着剤の吸着容量は、定常状態において平衡条件下に達成されるものに近づく。
【0017】
また、当然ながら、単一の留出物流の代わりに、複数の留出物流を塔から抜き出すことができること、及び分離の向上のために、異なる吸着剤を装備した複数の吸着蒸留塔を直列に組み合わせ得ることは明らかである。
【0018】
直接的な比較、すなわち、異なる供給物が使用されそして複数の流れが吸着剤から溶離されるクロマトグラフィ法、例えば米国特許第6,353,144号明細書に記載の方法との直接的な比較は困難であるが、本発明では、上述の通り、ゼオライトの吸着容量は、かなりより良好に利用される。例えば、クロマトグラフィ法は、個々の塔における記載されている流量、使用時間及び吸着剤の質量に基づくと0.015g供給物/g吸着剤の見掛け容量を有するが、これに対し、本発明による吸着蒸留は、再生の前に約0.2g供給物/g吸着剤の量を処理することができ、それでもなお、以下に定義する分離因子に関してより高い値を達成することができる。加えて、本発明は、同じ塔を2〜3時間利用することを可能にするが、これに対して、米国特許第6,353,144号のクロマトグラフィ法は、各再生の間に、50秒/塔の充填時間を記載している。
【0019】
本発明によって、ノルマルアルカンの除去の選択性が劇的に向上される。選択性は、分離因子(separation factor, SF)として測定される。これは、本明細書においては、以下の式に従う重量比によって定義される。
【0020】
【数1】

【0021】
メチルシクロヘキサン(MCH)及びn−ヘプタン(n−C)を含む異性化物混合物の場合には、60から300の範囲の平均分離因子が、最大値としては2000もの値になりながら、3時間を越えて達成された。これは、米国特許第6,353,144号明細書に記載のような従来技術と比較すると劇的な改善を表している。なぜならば、従来技術では、二分枝状アルカンとn−アルカンとの間(すなわち、大きな異性体間隔)の平均分離因子は、クロマトグラフィ再生−溶離の手順に依存して50秒の有効吸着時間でせいぜい16だからである。
【0022】
以下の説明に拘束されるものではないが、異性化物混合物よりも高い沸点を有する希釈剤の存在が、蒸留搭内部での熱と質量の非常に効果的な分布に寄与する一方で、希釈剤の蒸気圧がなお支配的であると考えられる。C7異性化物成分の沸点(約80〜105℃)よりも十分に高い塔内温度は、搭中で気液平衡の確立を可能にし、そうして吸着物(主にn-C7)が、液相から吸着されるものと考えられる。
【0023】
ゼオライトの流路の内部では、拡散が気相で及び毛管凝縮によって進行し得る。特定の成分の優先的な吸着は、非保持成分側の平衡が生ずるように相の平衡をシフトさせ、他方、吸着された種は液相中に連続的に抽出される。気相に対して、凝縮相からの吸着は、仮説的圧力増加に等しい体積あたりのより高い分子濃度をエミュレートする。これは、吸着の増加につながる。
【0024】
このようにして、概プロセスは、ある意味では、非常に良好に制御された気相吸着法として働く。このプロセスでは、蒸留搭中で気相が発生し、そして同様に塔内に広がる液相の故に滞留時間が延長される。更に、気液平衡は、吸着−脱着平衡にも影響を与える。これは、全体が気相プロセスと比べて利点を有し得る。また同時に、空隙の体積は液状希釈剤溶液の存在の故に占められ、搭の性能に寄与する。それゆえ、本発明によって、搭中の空隙体積(吸着剤が無い部分の体積)を最小限にすることができる。
【0025】
処理すべき異性化物混合物を含む炭化水素流は、通常は、異性化プロセスから生じたものであり、この際、分離された非異性化化合物は前記プロセスに返送されることが必要である。本発明によって、高オクタン価の異性化物流(高RON/MON)を製造すること、及び異性化プロセスに戻すn−ヘプタンなどの非異性化化合物を含むリサイクル流の体積を減少することができる。それゆえ、異性化プロセスの経済が大きく改善される。更に、本発明は、メチルシクロヘキサン(MCH)の除去を可能にする。メチルシクロヘキサンは、特に異性化装置のためのリサイクル流の処理の場合において非常に望ましくない。なぜならば、これは異性化プロセスにおいてはコークスの前駆体となるからである。
【0026】
吸着剤は、好ましくは固形の吸着剤、例えばゼオライトである。それゆえ、蒸留段階の吸着は、5A、MCM−22、シリカライト、ZSM−5(好ましくは、25〜400のSi/Alモル比を有するもの)、イオン交換したHZSM−5、及びこれらの混合物からなる群から選択されるゼオライトを含む吸着域中で行われる。このようなゼオライトは、吸着剤と吸着物との間の最適な相互作用を可能にする必要な形状、すなわち孔口(pore mouth)及び流路寸法を有する。孔口(“ポータル”)レベルでのゼオライトの形状が、通常、吸着に基づくプロセスにおいて各異性体間での選択性を決定する。分子とゼオライト間での適合性を、臨界直径及び断面直径によって決めるだけではなく、適当な選択性を達成するためには他の分子パラメータも考慮するのがよい。これの有望な方策のひとつは、GounarisらによってChemical Engineering Science 61 (2006) 7933-7948に記載された新しい方法を適用することである。この方法では、分子とゼオライトポータルとが非常にぴったりと適合している時の計算された分子足紋(molecular footprint)と分子上の歪の両方が、特に非対称性ゼオライトにおいて、分子の浸透を決定する。特に、単分枝状種を、多分枝状種から分離すべき場合には、非対称性の側面が関連してくる。一般的に、従来技術に記載されるような、短軸が5.0〜5.5Åの範囲、そして長軸が5.5から6.0Åの範囲の断面寸法が、通常は、n−アルカンと分枝状異性体の分離に好適である。n−アルカン及び/または単分枝状異性体に選択性を有する孔形状を持つ他の好適な吸着剤には、MFIタイプのもの、例えばZSM−11、ZSM−12、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48及び他のアルミノシリケート類、並びにフェリエライト、MAPO−31、SAPO−5、SAPO−11、SAPO−31及びEU−1などを挙げることができる。
【0027】
特定の態様の一つでは、分離を容易化するため、そして異性化物混合物からの重質成分が希釈剤中に不所望に蓄積されることを防ぐために、このような重質成分(110〜120℃を超える沸点を有する成分)を、従来技術において“ハートカット(heart cut)蒸留として知られる慣用の初期蒸留段階に(すなわち、吸着蒸留の上流で)、炭化水素混合物を付すことによって除去する。希釈剤中の高沸点成分の蓄積が減少するために、(そうでない場合には希釈剤の狭い沸騰範囲を維持するために必要な)希釈剤(溶剤)の再生段階は不要である。
【0028】
使用時には、蒸留搭の吸着域の吸着容量は低下していく。それゆえ、更なる回収及び等級の向上のために吸着物(例えばノルマルアルカン)を特異的に除去する脱着剤での処理によって吸着剤の吸着容量を再確立するために、再生操業モードが設けられる。それゆえ、本方法は、更に、脱着剤流を上記吸着液中に流しそして少なくともノルマルアルカンを含む流れを抜き取ることによって、吸着されたアルカンを吸着域から脱着させることを含む。この流れ中の他の成分としては、同じく吸着剤によって捕獲される単分枝状アルカンも存在し得る。搭中に保持され次いで脱着される成分群は、吸着剤の種類に応じて拡張することができる。
【0029】
脱着剤は、吸着されたアルカンを吸着剤から除去することによって吸着剤を再生することができる任意の適当な化合物、例えば水素、窒素、イソペンタン、n−ペンタン、メタン、n−ブタン、イソブタンまたはこれらの混合物であることができる。好ましくは、脱着剤は、n−ペンタンまたはn−ブタンあるいはこれら両方の化合物の混合物の流れである。脱着(再生)は、従来技術において公知の任意の脱着技術に従い行うことができる。これは、液状の状態での脱着、すなわち気相の脱着剤の飽和点を超える圧力下での脱着、または組み合わせて、液相及び気相の両方中で作業できるように調節された圧力下での脱着を含むことができる。作業圧力は、好ましくは、蒸留装置の温度をできるだけ一定に維持しながら(恒温)、変化させる。本発明者らは、脱着剤、例えば若干のn−ペンタンが、次の吸着段階での再使用の際に吸着剤中に存在する場合もあるものの、吸着蒸留中の吸着剤の性能は影響を受けず、かなりの量のn−ペンタンが留出されることを見出した。
【0030】
本方法の更に別の態様の一つでは、脱着剤流を吸着域中に流す前に、希釈剤を搭から除去する。これは、脱着(再生)段階の間の脱着剤とゼオライト間のより良好な接触を可能にする。
【0031】
本発明においては、希釈液溶液は、好ましくは、異性体を実質的に含まず、そして135℃〜200℃の範囲で沸騰する、メチル−、エチル−またはプロピル−置換ベンゼン、及びメチル−、エチル−またはプロピル−置換ナフテン、例えばキシレン、クメン、メシチレン、プソイドクメン、ジュレン、デカリン、及びこれらの混合物を含む化合物からなる群から選択される化合物の溶液である。
【0032】
好ましい希釈剤の一つはメシチレンである。なぜならば、メシチレンが、特にC7異性体の処理の時に、最も効率が高いことが判明したからである。165℃の沸点を有するメシチレンを用いて操業した場合には、プロセスの構成並びに異性体及び希釈剤の搭供給点に依存して、蒸留段階の好ましいプロセス温度は140〜160℃の範囲、すなわち希釈剤の沸点よりも5℃〜25℃低い温度である。蒸留段階の間に温度を相対的に低下させることが、留出物中のメシチレンの含有量の低下及び熱の負荷量の節約からエネルギー効率の面で、蒸留物の品質を向上させることが判明した。しかし、温度をあまり低くしすぎると、プロセスに悪影響を与える恐れがある。例えば、希釈剤としてメシチレンを使用する場合には、135℃未満の恒温の搭温度は、蒸留物を生産しなかった。それゆえ、吸着は、好ましくは、希釈液の沸点近くの温度かまたは希釈剤−異性化物混合物の蒸留温度の近くの温度、好ましくは希釈液の沸点または希釈剤−異性化物混合物の蒸留温度よりもせいぜい20℃低い温度で行われる。
【0033】
本方法の更に別の態様の一つでは、ノルマルアルカン、単分枝状アルカン、多分枝状アルカン及び環状アルカン(例えばナフテン類)を含む異性化物混合物は、n−ヘプタン及びメチルシクロヘキサン(MCH)を含むC7−異性化物留分である。本発明によって、異なる異性化物留分を含む炭化水素流、例えばC5〜C8アルカンの任意の混合物、例えばC5〜C7、C6〜C7、C6〜C8、またはC8アルカンの混合物、より特には中間C7留分を含む炭化水素流を処理することができる。C7アルカンのこのような中間留分からの異性体の分離は特に困難である。なぜならば、この留分は、多分枝状異性体を回収しながら直鎖異性体(ノルマルアルカン)から分離することが非常に困難な単分枝状異性体を含む低オクタン群だからである。本発明の方法は、吸着剤中に保持されるn−C7(沸点98℃)に対して、例えばMCH(沸点101℃)を留出物として分離することに関して高い選択性を可能にする。上述の通り、MCHの含有率は、この化合物のリサイクルが、コーキングによる異性化触媒の失活を高めるため、異性化プロセスにおいて制御することが特に有利である。
【0034】
希釈液溶液は、好ましくは、蒸留搭の底から抜かれる。そしてこれは、蒸留搭の供給物に返送(リサイクル)することができ、ここで異性化物混合物と組み合わせることができる。本発明者らは、供給物としての異性化物混合物の希釈の程度や、搭の温度に依存して、希釈剤供給量の96%〜99.5%に相当する希釈剤流を搭底部で達成した(すなわち、本発明者らは最大99.5%の希釈剤を回収した)。搭の温度は、搭から出る留出物を決定するが、これはまた留出物中のメシチレンの含有率も決定する。温度が高いほど、より多くのメシチレンが留出物中に検出され、また留出物の質量という観点からも分離が向上する。留出物流中のメシチレン含有率は、温度をせいぜい145℃にまで低下させることによって、0.1〜0.5重量%の値まで減少させることができる。
【0035】
蒸留の間、異性化物混合物中の最も沸点が高い化合物の一部が、搭頂から抜かれる材料中に濃縮される。本発明者らは、蒸留段階に導入される合流された流れ中において、希釈剤、好ましくはメシチレンに対する異性化物の重量%が、5%〜50%、好ましくは10%〜30%、より好ましくは15%〜25%、例えば約20%である時に、特に高い選択性、すなわち高い分離因子が得られることを見出した。
【0036】
上述の通り、単一の吸着蒸留搭の代わりに、異なる吸着剤を備えた複数の吸着蒸留搭を直列に組み合わせて分離を向上させることができる。特定の態様の一つでは、本発明の方法は、最初の蒸留段階の留出物流を第二の蒸留段階の供給物として使用して、直列式の配置で行われる。好ましくは、第一蒸留段階に送られる異性化物混合物は、n−ヘプタン(n−C7)及びメチルヘキサン(特に、2−メチルヘキサン(2MH)及び3−メチルヘキサン(3MH)の形のメチルヘキサン)を含むC7−異性化物である。この際、第一蒸留段階中の吸着域は、ゼオライト5Aを含み、そして第二の蒸留段階中の吸着域はZSM−5ゼオライトを含む。それゆえ、第一蒸留段階において、ゼオライト5Aは上記のn−ヘプタンを保持し、他方、n−ヘプタン含有量が減少されたメチルヘキサン類含有留出物流は、第二の蒸留段階に供給物として使用される。そこで、その吸着域は、ZSM−5ゼオライトを含む。これは、より特異的にメチルヘキサン類、特に2−メチルヘキサン(2MH)及び3−メチルヘキサン(3MH)を保持するゼオライトである。更に、本発明者らは、異性化物からメチルヘキサン類を分離するためには、n−ヘプタンの分離は、メチルヘキサン分離工程の前に行う必要があることを見出した。なぜならば、n−ヘプタンは、メチルヘキサン類よりも、狭い孔口のゼオライト中により強く保持されるためである。それゆえ、脱着剤として機能し得るn−ヘプタンの残留が避けられる。
【0037】
それゆえ、本発明に従い二種のゼオライトを組み合わせることによって、それぞれ特定の異性体を高濃度で含む独立した流れ、例えばメチルヘキサン類の濃厚流及びn−ヘプタンの濃厚流を形成することができる。メチルヘキサン類の濃厚流及びn−ヘプタンの濃厚流は、異性化プロセスにおける別々の反応器ユニットに導入することができ、そこで、n−ヘプタンの異性化を好都合に行うことができる。これは、なぜならば、特にこのような異性化はメチルヘキサンを介して起きるからである。
【0038】
本発明の更に別の態様の一つでは、芳香族化合物、特にベンゼンが、これらを含む炭化水素混合物中で他の化合物から分離される。本発明者らは、ゼオライト吸着剤がベンゼン等の芳香族化合物を保持することができ、他方で他の炭化水素は留出されるように、ゼオライト吸着剤を選択できることを見出した。それゆえ、本発明者らは、炭化水素混合物中でベンゼンを他の炭化水素から分離するための方法であって、
(a)炭化水素混合物を蒸留段階に送り、但しこの際、この蒸留段階は、前記炭化水素混合物の沸点よりも高い沸点を有する希釈液溶液と接触する吸着域中に吸着剤を含み、
(b)前記蒸留段階から、ベンゼン以外の他の炭化水素を含む留出物流を抜き出し、そして吸着域中にベンゼンを保持し、但しこの際、前記吸着域は、ゼオライトX、ゼオライトY、またはこれら両方の混合物を含み、
(c)上記蒸留段階から、上記希釈液溶液を含む流れを抜き出し、そしてこの流れを段階(a)に戻す、
ことを含む上記方法を提供する。
【0039】
上記の他の炭化水素には、主に、トルエン、n−アルカン、分枝状アルカン、オレフィン及び他の不飽和炭化水素、並びに環状炭化水素などが含まれる。炭化水素混合物はガソリン流であることができ、この際、ベンゼンの除去は、1%またはそれ未満の低レベルまで達成しなければならない。
【0040】
蒸留段階の吸着は、好ましくは、イオン交換したゼオライトXもしくはY、またはこれらの混合物、特にNaX、NaY及びこれらの混合物からなる群から選択されるゼオライトを含む吸着域中で行われる。この際、前記NaX及びNaYゼオライトは、20未満のSi/Alモル比、最も好ましくは3未満のSi/Alモル比を有する。
【0041】
“他の炭化水素”という用語に含まれる特に重要な化合物の一つはトルエンである。環境に関する規制のために、特にナフサ留分の処理時には、同時にトルエンが分離されること無く、炭化水素混合物中のベンゼンを分離することが近年一層必要になっている。それゆえ、特定の態様の一つでは、炭化水素混合物は、好ましくは、少なくとも0.1重量%のベンゼン及びトルエンを含む混合物、より好ましくはベンゼン及びトルエンを含み、この際、ベンゼンとトルエンが合計で炭化水素混合物中の少なくとも0.1重量%の割合であるナフサ留分である。ナフサ留分は、FCCまたはコーカーナフサ(coker naphta)留分であることができる。これらは、両方ともかなりの量でベンゼン及びトルエンを含むためである。更に、分離を容易にし、そして炭化水素混合物からの重質成分が希釈剤中に不所望に蓄積されることを防ぐために、ナフサ留分などの炭化水素混合物を、異性化物混合物の分離の場合にように、慣用の初期蒸留段階(すなわち“ハートカット”蒸留)に付すことによって、このような重質成分(115℃を超える沸点を有する成分)を炭化水素混合物から除去することができる。炭化水素混合物からの高沸点成分の希釈剤中への蓄積が減少するために、(そうでない場合には溶剤の狭い沸点範囲を維持するために必要な)希釈剤(溶剤)の再生段階が不要である。
【0042】
特定の態様の一つでは、炭化水素供給物中でのベンゼンに対する重量基準のトルエンの相対量は、1〜10の範囲、好ましくは2〜7の範囲、より好ましくは5である。すなわち、供給物中のトルエンの量は、ベンゼンの量よりも1〜10倍、好ましくは2〜7倍、例えば5倍多い量であることができる。
【0043】
好ましくは、段階(a)は、上記の炭化水素混合物を含む第一の流れを、この炭化水素混合物よりも高い沸点を有する上記希釈液溶液の第二の流れと合流し、そしてこの合流した流れを上記の蒸留段階に導入する段階を含む。それゆえ、希釈剤流は反応器から抜かれ、そして吸着剤を含む蒸留ユニットに導入する前に、炭化水素供給物(ベンゼンを含む炭化水素混合物)と合流させる。
【0044】
他の態様の一つでは、段階(a)において、蒸留搭の底部から希釈剤流を抜き出しそしてこの流れを搭頂に戻すことによって、吸着域中に吸着剤を含む蒸留搭内部で、希釈液溶液と、炭化水素混合物を含む第一の流れとを向流で接触させる。これは、異性化物混合物の場合と態様と同じように、搭のかなりより簡単な構造を可能する。なぜならば、搭に導入する前に各流れを合流させる必要はなく、更に、搭頂への希釈剤の導入が、搭を完全に濡らすことを確実にするからである。
【0045】
希釈液溶液は、好ましくは、1個または3〜6個のメチル、エチルもしくはプロピル基で置換されたベンゼン、例えばクメン、プソイドクメン、メシチレン及びこれらの混合物からなる群から選択される化合物の溶液である。供給物が異性化物混合物からなる場合と同様に、ベンゼンとトルエンの分離は、希釈剤としてメシチレン(1,3,5トリメチルベンゼン)を使用すると、より良好に達成される。特に、ベンゼン−トルエン供給物中のメシチレンの含有率が多いほど、分離因子が大きくなる。この場合、分離因子は次のように計算される。
【0046】
【数2】

【0047】
これとは対照的に、デカリンなどの他の希釈剤の含有率を高めた場合には、分離因子に影響はない。好ましくは、メシチレンに対するベンゼン−トルエン供給物の重量%は、30%未満、より好ましくは20%未満であり、最も高い分離因子は10%で得られる。
【0048】
吸着物(ベンゼン)を除去することによって吸着剤を再生するために、脱着段階を行うこともできる。それゆえ、当該方法は、上記吸着域中に脱着剤流を流し、そしてベンゼンを含む流れを抜き出すことによって、吸着されたベンゼンを吸着域から脱着させることも含む。この脱着剤は、好ましくは、シクロヘキサンを少なくとも50重量%の割合で含む炭化水素である。シクロヘキサンは、これが、保持されたベンゼンを、系外で(ex-situ)、すなわち別の独立した段階(例えば、ベンゼンが分離されるプラントの直ぐ近くに置いた段階)で水素化することによって簡便に生成することができるという利点を供する。
【0049】
好ましい態様の一つでは、吸着域中に脱着剤流を流す前に、希釈剤を塔から除去する。これは、脱着(再生)段階の際に、塔中での脱着剤とゼオライト間のより良好な接触を可能にする。
【0050】
本発明の更に別の態様の一つでは、パラフィン、特にプロパンが、このパラフィン及びオレフィンを含む炭化水素混合物中のオレフィン、特にプロピレンから分離される。本発明者らは、プロパンなどのパラフィンを吸着できるが、プロピレン及び他のオレフィンを留出させるようにも、ゼオライト吸着剤を選択し得ることを見出した。通常、プロピレンは、慣用の蒸留プロセスでプロパンから分離されるが、しかしこれは、下流の工程、例えばポリプロピレンに重合する工程におけるプロピレン純度に対する高い要求のために非常にコストがかかる。このような下流の重合行程では、99.7重量%ものプロピレン純度が必要とされる。慣用の蒸留法によってある程度のプロピレン純度(例えば80〜90%までの純度)を簡便に達成することは可能であるが、最後の精製段階において慣用の蒸留によって99.7%まで精製するのに要されるコストが、このプロセスの高いエネルギー要求の故に単純に多すぎる。それゆえ、パラフィンからオレフィンを分離するための、より便利な代替法、特に下流の工程のための純粋なオレフィン性流れの生成、より具体的にはプロパン―プロピレン画分からのプロピレン富化流の生成のためのより便利な代替法を提供できれば望ましいであろう。
【0051】
それゆえ、本発明者らは、炭化水素混合物中のオレフィンからパラフィンを分離するための方法であって、
(a)炭化水素混合物を蒸留段階に付し、但しこの際、上記蒸留段階は、炭化水素混合物よりも沸点が高い希釈液溶液と接触する吸着域中に吸着剤を含み、
(b)オレフィンを含む留出物流を上記蒸留段階から抜き出し、そして吸着域中にパラフィンを保持し、但しこの際、上記吸着域はゼオライトX、ゼオライトAまたはこれら両方の混合物を含み、
(c)上記の希釈液溶液を含む流れを上記蒸留段階から抜き出し、そしてこの流れを段階(a)に戻す、
ことを含む上記方法を提供する。
【0052】
好ましくは、当該方法は、上記炭化水素混合物中のオレフィンからパラフィン性化合物であるプロパンを分離することを含む。それゆえ、吸着域中に保持されるパラフィンは殆どがプロパンであり、他方、オレフィンは留出物流として塔を出る。プロパン−プロピレン画分中のプロピレンからプロパンの分離が特に重要である。このような画分は、事前の慣用の蒸留方法によって、本発明による一回またはそれ以上の最終の吸着蒸留段階を行う前に、所定のプロピレン純度、例えば80〜90%までの純度で得ることができる。このような事前の蒸留段階または初期蒸留段階は、希釈剤中に蓄積される恐れのある、炭化水素混合物供給物中の重質成分の除去にも役立つ。
【0053】
パラフィン−オレフィン炭化水素混合物を処理する際は、蒸留段階の吸着は、好ましくは、ゼオライト13X、ゼオライト3A、4A、5A、またはこれらの混合物を含む吸着域中で行われる。これらのゼオライトは、イオン交換したものでもよい。
【0054】
好ましくは、段階(a)は、上記の炭化水素混合物を含む第一の流れを、この炭化水素混合物よりも高い沸点を有する上記希釈液溶液の第二の流れと合流し、そしてこの合流した流れを上記の蒸留段階に通す段階を含む。それゆえ、希釈剤流は、反応器から抜き出され、そして吸着剤を含む蒸留ユニットに導入する前に、炭化水素供給物(パラフィン及びオレフィンを含む炭化水素混合物)と合流される。
【0055】
他の態様の一つでは、段階a)において、希釈剤の流れを蒸留塔の底部から抜き出しそしてこの流れを塔頂に戻すことによって、吸着域中に吸着剤を含む蒸留塔内部で、向流で、希釈液溶液と、炭化水素混合物を含む第一の流れとを接触させる。これは、異性化物混合物や、ベンゼン他の炭化水素混合物の態様と同じように、塔のかなりより簡単な構成を可能にする。なぜならば、塔に導入する前に各流れを合流する必要がないからである。また塔頂への希釈剤の導入が、塔を完全に濡らすことを確実にする。
【0056】
パラフィン−オレフィン炭化水素混合物を処理する際も、希釈液溶液は、好ましくは、1個または3〜6個のメチル、エチルまたはプロピル基で置換されたベンゼン、例えばクメン、プソイドクメン、メシチレン及びこれらの混合物からなる群から選択される化合物の溶液である。他の炭化水素混合物(供給物)関連の上記の態様と同じように、最も好ましい希釈液溶液は、メシチレン(1,3,5トリメチルベンゼン)の溶液である。
【0057】
供給物が、アルカン及び分枝状アルカンを含む異性化物混合物からなるか、あるいはベンゼンを他の炭化水素、特にトルエンから分離すべき、芳香族化合物を含む炭化水素混合物からなるか、あるいはパラフィン−オレフィン炭化水素混合物、例えばプロパン−ポリエチレン画分からなるかには関係なく、吸着のダイナミクスを高めることが望ましいであろう。それゆえ、塔の吸着時間、すなわち容量が完全に使用尽くされるまでの時間を短縮するために、塔中の高沸点希釈剤、特にメシチレンの水位が制御される。実質的に完全に満たした塔の代わりに、充填量を比較的減らした塔の使用に利点がある。なぜならば、これは、溢流を防ぐほか、塔を向流リサイクルモードで操業した際に過剰の希釈剤のホールドアップを防ぐからである。この際、塔の性能は、塔中での希釈剤の水位、希釈剤のリサイクル率及び供給物の流量の間でのバランスである。希釈剤の水位を減らした場合は、吸着剤の濡れを保障するためにリサイクル率を高める必要がある。供給物の流量およびリサイクル流の流量が多いほどに、液体ホールドアップを招き、そして留出物中の希釈剤の濃度を高める。過剰の供給物の流量は塔の溢流を招き、そうすると希釈剤が、塔を滴り落ちることができなくなる。本発明者らは、プロセスを向流モードで操業し、それによって最初に塔の上方から吸着剤を濡らし、そして希釈剤の水位を、異性化物または炭化水素混合物の供給位置と同じかまたはこれより低くしそして塔底から5〜20%、好ましくは塔底から約10%の位置にすると、留出物中の希釈剤含有量を高めることなく、リサイクル流量を4〜7倍に、そして供給物の流量を3倍高め得ることを見出した。その結果、塔の吸着時間を少なくとも3倍短縮することができ、それによって、吸着のダイナミクスがかなり向上される。異性化物または炭化水素混合物の供給位置は、塔底から5%〜50%、好ましくは約10%〜30%の位置である。
【0058】
本明細書で使用する塔底という用語は、本発明の吸着蒸留に使用した装置の最も低い点を意味する。
【0059】
また本発明は、当該方法を行うための装置もその範囲に含む。それゆえ、本発明者らは、長さの全体または一部に沿って加熱される蒸留塔であって、
・供給物混合物および希釈液溶液のそれぞれ別の流れの導入のための入口手段、あるいは供給物混合物と希釈液溶液とを合流した流れの導入のための入口手段、
・少なくとも一つの留出物流の抜き取りのための出口手段、
・上記希釈剤を含む液体溶液の流れの抜き取りのための出口手段、
・脱着剤流の導入のための入口手段、及び
・解圧した脱着剤流の抜き取りのための出口手段、
を含み、この際、固形の吸着剤材料で充填された吸着域が上記塔内に配置されている、上記蒸留塔を提供する。
【0060】
ここで、“供給物”という用語には、ノルマルアルカン、単分枝状アルカン、多分枝状アルカン及び環状アルカンを含む異性化物混合物、分離すべきベンゼンを含む炭化水素混合物、あるいはパラフィン−オレフィン炭化水素混合物、特にプロパン−プロピレン画分が包含される。この供給物は、上述のように希釈剤中に蓄積される恐れのある重質成分を除去するために、初期の慣用の蒸留段階に付したものであることもできる。
【0061】
当該蒸留塔は、更に、供給物と希釈剤との混合を行う供給領域を含むことができる。これは、上記の供給物混合物および希釈剤が、蒸留塔に別々に供給される場合に特に好適である。
【詳細な説明】
【0062】
図1は、本方法の一態様に従う吸着モードA及び脱着モードBの図示である。吸着及びそれと同時の蒸留の間、異性化物混合物1を希釈剤溶液3と合流して、合流供給物−希釈剤流4を形成する。この合流した流れ4は、吸着域が配置された蒸留塔中に導入される。MCH、多分枝状及び/または単分枝状アルカンを含む留出物を、流れ2として塔頂から抜き出す。塔の温度を制御することによって、希釈剤は殆ど完全に底部に向けることができ、そして流出流3として抜き出すことができる。塔の吸着域では、n−アルカンが保持される。保持される成分群は、吸着剤に依存して拡張することができる。塔の底部で抜かれた希釈液の流出流3はリサイクルされ、そして供給物異性化物混合物1と合流される。脱着段階Bの間、ペンタンなどの適当な脱着剤の流れ5が注入される。圧力は、これを液体または気体の状態で行えるように選択することができる。脱着された材料(n−アルカン及び/または単分枝状アルカン)を含む脱着剤流は、並流脱着モードでは流れ6として塔頂から出る。向流脱着モードでは、脱着剤は塔頂5’から注入され、そして脱着された成分と一緒に塔底6’から出る。
【0063】
図2では、底部から頂部へ希釈剤を直接リサイクルしてプロセスを行う。この図は、二つの塔の組み合わせを図示しており、この際、一方の塔1は、吸着モードで操業され、そして他方の塔2は脱着モードで操業される。Aは、異性化物の供給点であり、Bは、塔頂に戻される高沸点希釈剤溶剤リサイクルとして使用される。吸着物(直鎖状及び/または単分枝状異性体)を非常に低い濃度で及び添加された高沸点希釈剤溶剤を低濃度で含む留出物流Cは、塔頂で抜き出される。塔1中での吸着蒸留の間、塔2は再生し、そして吸着物は、脱着剤の流れDをポンプ輸送しそして脱着剤及び吸着物の流れEを塔頂から抜き出すことによって脱着する。脱着剤は、液体かまたは気体の状態であることができる。塔1での吸着蒸留段階の終わりに、希釈剤流Fは、塔1の底部から、再生された塔2の頂部にポンプ輸送され、この塔を希釈剤で満たしかつ塔1を空にする。これは、脱着及び再生段階の間の塔1中での脱着剤とゼオライトとのより良好な接触を可能にする。次いで、吸着蒸留は塔2中で進行し、他方、塔1では脱着段階が行われる。
【0064】
図3は、ゼオライト5A吸着剤上での、メシチレンで9重量%に希釈した異性化物混合物からのMCHの分離因子に関しての選択性のグラフを示す。C7異性化物混合物は、一連の単分枝状及び多分枝状異性体並びに約20重量%のn−ヘプタンを含む実在の供給物である。蒸留塔中で数時間操業した後に、留出物塔頂生成物中のMCHへの選択性は徐々に上昇して、約3〜4時間後には、300を超える分離因子をもってそれの最大に達することが観察される。操業終了時には、吸着剤の容量が使用尽くされ、分離因子の低下が観察される。塔は、メシチレンの沸点に近い温度で操業され、その結果、留出物はメシチレンをかなりの含有率で含んでいた。上述の通り、これは、塔をより低い温度で操業することによって避けることができる。
【0065】
図4は、ゼオライト5A吸着剤上での、メシチレン中に異性化物供給物を希釈した場合のそれの留出物組成に対する影響を示す。メシチレン中の異性化物の重量パーセントをグラフに示す。蒸留段階に流入する合流した流れ中での液状メシチレン溶液中の異性化物の重量パーセントが10%である場合は、吸着因子SFの最大値は約250であり、上記重量パーセントが約20%になると約2000の最大値まで劇的に上昇するが、希釈剤混合物中の異性化物の重量パーセントが30%まで増加すると、約40の最大値に急激に減少する。
【0066】
図5は、直列配置の場合と比べて単一の段階で操業しかつ複数種のゼオライトを組み合わせた場合の効果を示す。n−ヘプタン(n−C7=NC7)に対してメチルヘキサン類(2MH及び3MH)の特定の及び関連する場合について、これらのメチルヘキサン類が、第一段階のゼオライト(5A)には保持されないが、n−ヘプタンはほぼ完全に保持されることが認められる。このn−ヘプタンが減少した留出物流は、ゼオライトZSM‐5を吸着剤として含む第二の蒸留段階に通した後は、メチルヘキサン類が保持される結果となり、それゆえ、n−ヘプタンとメチルヘキサン類のそれぞれの濃厚流を形成することができる。それゆえ、主にn−ヘプタン及びメチルヘキサン類からなる上記二つの塔から得られる脱着物を水素化異性化ユニットにリサイクルして、これらを多分枝状異性体に転化することができる。オクタン価の観点では、三種の低RON化合物、すなわちn−ヘプタン、2−メチルヘキサン及び3−メチルヘキサンの除去を含むこの連続分離法を行う効果は、31基のユニットの最終留出物流におけるRONの向上である。
【0067】
図6は、希釈剤(溶剤)としてのメシチレン及びデカリンでベンゼン−トルエン供給物を希釈した効果を示す。メシチレンまたはデカリン中のベンゼン−トルエン混合物の重量パーセントをグラフに示す。デカリンは分離因子に何の効果も持たないのに対し、メシチレンの含有量が多いほどまたは逆にメシチレンに対してベンゼン−トルエンの含有量が少ないほど、ベンゼンに対して留出物中のトルエンの含有量が多くなる。この際、ベンゼンは、好ましくはゼオライト中に保持される。
【実施例】
【0068】
90cmの固定床ゼオライト塔中で実験を行った。この塔は、バッチ式蒸留ユニットとして使用し、この塔の全長にわたって加熱する。二種の供給物、すなわち実際の異性化物(real isomerate)、及びn−ヘプタンとメチルシクロヘキサン(MCH)との二成分混合物を使用した。蒸留の間、上記二成分混合物のうちで最も沸点が高いMCHは、塔頂生成物中で濃縮される(沸点 MCH:101℃、n−ヘプタン:98℃)。165℃の沸点を有するメシチレンが、異性化物混合物供給物に希釈剤として使用される。希釈の程度は、メシチレン中10重量%〜30重量%の範囲の供給物である。蒸留の間、希釈溶剤は、蒸留ユニットの底部から抜き取られてリサイクルされる。ZSM−5及び5Aのゼオライト押出物を、蒸留ユニットの吸着材料として使用した。これら両方の吸着材は、継続した数時間の蒸留の間の平均で225までの分離因子から明らかようにn−アルカンに対し高い選択性を供する。
【0069】
例1
予混合した供給物を用いたモデル異性化物系からの低ヘプタン濃度の留出物流の選択的製造。5Aゼオライト押出物432gを装填した塔を165℃に加熱した。この塔は前に使用し、そしてn−ペンタンの溢流によって再生したものであった。n−ペンタン(0.83重量%)、メチルシクロヘキサン(3.4重量%)及びメシチレン(95.8重量%)を有する合流した流れを含む供給物を、塔底から25%上方の位置で注入した。プロセスの開始から4.5時間後、824gの供給物を導入した。その結果、以下の表1に示す平均組成を有する三つの流れを与えた。この際、留出物の残部は、脱着からのn−ヘプタンによって補われる。
【0070】
【表1】

【0071】
観察されるとおり、メシチレン底部抜取物は、n−ヘプタンの含有量が低く、供給物用の希釈剤として再使用することができる。留出物は、MCHを多割合で含む。これは、操業中は、表1に示した最終の合流した留出物よりもかなり多い。塔のペレット間の空隙体積は操業終了時にフラッシュして、再び高希釈剤純度にする。吸着された種は、液状n−ペンタンで脱着した。プロセスの間に測定されたMCH及びn−C7の最も高い分離因子は230であり、他方、4.5時間の間での平均は、表に示すとおり(MCH/n−C7)、55であった。初期の最初の30分間は、SFが増大する傾向と、実質的なn−ペンタン脱着剤の生成が観察された。この試験の最中はずっと留出物中にn−ペンタンが検出されたが、これは、性能には深刻な影響は与えないようであった。しかし、本発明者らは、ペンタンに曝されていない新たに装填した塔で操業した際に、かなりより高いSF値が観察されるということを知らない。この試験における高い塔温度のために、実質的な量のメシチレンが留出物中に検出されるはずである。留出物中のメシチレンを避けるためには塔張出口での塔温度を制御することは望ましくそして可能である。本例は、最初の一時間は少量のメシチレンで操業し、他方、ペンタンの含有量は多い。異なる塔頂温度制御で繰り返し実験すると、温度をせいぜい145℃に低下させることによって留出物流中のメシチレン含有率を約0.5重量%まで減少できることが示される。
【0072】
例2
予混合供給物を用いた実際の異性化物からの低ヘプタン含有留出物の選択的製造。メシチレン中9%のC7異性化物の混合物を、ペンタンで脱着しそして再生した5Aゼオライトを装填した塔に、塔底から25%上方の供給位置で導入した。塔の温度は恒温であり、そして160℃で操業した。供給物、及び合流した流出流全体の組成は表2に示す通りである。
【0073】
【表2】

【0074】
この実験は4.5時間の期間行い、それゆえ、ゼオライト1g当たりn−ヘプタン0.053gの容量を有するゼオライトを完全に負荷する。これを、ゼオライト1g当たりn−ヘプタン0.050gのゼオライトの定常室温容量測定と比較すると、この実験は、蒸留の間にかなりより高い温度を使用しているにも拘わらず、ゼオライトの容量を完全に利用していることが分かる。そうでない場合には、温度の上昇は、ゼオライトの吸着容量を大きく低下させることは当業界において周知である。MCH及びn−ヘプタン間の分離因子の変化を図3に示す。
【0075】
例3
新たに装填したゼオライト5Aの塔に、塔底から10%上の位置で、メシチレン溶液中6.5%のC7異性化物を167℃で供給した。3.5時間操業した後の留出物の平均n−ヘプタン含有率は0.01重量%であった。供給物を高度に希釈しているので僅か11gのヘプタンしか塔に流さなかったが。容量は使用尽くされず、容量の僅か約40%だけが使用された。この実験の留出物中には、高温のために、かなりの量のメシチレンも認められた。
【0076】
例4
上記の塔に、426gのゼオライト5Aを装填し、そしてこの塔を、150℃に加熱したメシチレンで満たし、そして底部から頂部へのリサイクルを低率で開始した。恒温条件において、異性化物供給物100%を約50g/hrの速度で3時間注入した。注入位置は塔底から10%上の所であった。MCH及びn−C7間での全体としての分離因子は、3時間の操業時間の間、約2100であった。初期留出物(約30分間)は、82%を超える単分枝状物及び多分枝状物であった。多分枝状種と単分枝状種の沸点の温度差のために、最初の10分間は、多分枝状種が多くを占める留出物を与えた。供給物と留出物の組成は以下の表3に示す。この場合、吸着操業モードの後に、後蒸留を短時間行っただけで直ぐに脱着/再生段階を開始したので、いくらかの量の供給物が塔から留出されなかったために、留出物は供給物のうちの53%であった。質量収支は、n−ヘプタンのうちの96%が5Aゼオライト上に保持されたことを示す。n−C7の有効容量は0.07g/gゼオライトであった。留出物中のn−ヘプタンは、蒸留の最後の30分から生ずる。
【0077】
【表3】

【0078】
例5
90cm×φ3cmの塔またはこれと同等の任意の塔の吸着時間(容量が使用尽くされるまでの時間)を短縮するために、高沸点溶剤、本例ではメシチレンの水位を制御する。例4は、最初にメシチレンで満たした(約50%)塔の性能を示すものであるが、より充填量の少ない塔からは、これを向流リサイクル操業モードで使用すると、溢流及び過剰のメシチレンホールドアップを避けられるという利点を得ることができる。この塔の性能は、メシチレンの水位、メシチレンのリサイクル率及び供給物の流量との間のバランスである。メシチレンの水位を下げた場合には、吸着剤の濡れを保障するためにリサイクル率を高める必要がある。供給物の流量を50g/hrとし、そして初期メシチレン水位を見かけ空隙量の50%とした場合には、リサイクル率は50g/hr〜80g/hrの間にするべきである。供給物の流量が多いほど、リサイクル流量が多いほどに、液体のホールドアップと、留出物中のメシチレンの増加をまねく。供給物の流量が過剰の場合には、塔を滴り落ちることのできなかったメシチレンが塔から溢れ出る。まず吸着剤を上方から濡らし、そしてメシチレンを、塔底からほぼ10%の所の異性体供給点と同じかまたは好ましくはこれの直ぐ下の水位まで排出することによって、一連の実験を行った。これらの状況下において、留出物中のメシチレン含有量を増加させることなく、リサイクル率は約350g/hrまで、供給物の流量は約170g/hrまで増加させることができた。それゆえ、塔の吸着時間を、3倍以上短縮することができた。
【0079】
例6
本発明の更に別の対象は、炭化水素混合物中のトルエンからベンゼンを除去することである。この分離プロセスに特に好適なものは、NaX及びNaY等のゼオライト、好ましくは20未満、より良好には3未満のSi/Al比を有するこれらのゼオライトである。この分離プロセスでは、トルエンの存在が、多くの場合にベンゼンの吸着に不利に作用し、そしてこれらの二種の化合物間の選択性は低い。しかし、本発明者らは、メシチレンで希釈すると、ベンゼンに対する全体的な容量は低下するが、ベンゼンとトルエンとの間の選択性(または分離因子)は3まで向上することを見出した。図6は、溶剤中にベンゼンを1%及びトルエンを5%含むモデルシステムにおいて、上記二種の化合物間の吸着選択性(NaYゼオライト上)に対する、メシチレンによる希釈の効果を示している。選択性は、上に定義した分離因子として計算する。更に、供給物混合物を、各々の希釈剤10ml中の予備湿潤させたゼオライト2gと接触させながら、更に希釈した。図に示されるように、この場合、希釈剤の種類は分離に影響を及ぼし、デカリンは、メシチレンと同じ効果を持たないことが認められた。これは、吸着蒸留は、芳香族化合物の分離、特に炭化水素混合物中のトルエンからベンゼンの分離にも使用し得ることを示している。
【0080】

例7
先ず、上記実験と同様に、ゼオライトA5が装填されそして同じ条件で操業した吸着蒸留用90cm塔にC7異性性化物を流すことによって別の実験を行った。このプロセスは、例4に記載のようにリサイクルモードで行った。次いで、今やn−ヘプタンを非常に低濃度でしか含まない5A塔からの留出物を、ビーズの形のZSM−5 Si/Al400ゼオライトが装填されそして150℃で操業された類似の吸着蒸留塔に供給した。これにより、ZSM−5ゼオライト中に特異的に保持された2−メチルヘキサン(2MH)及び3−メチル−ヘキサン(3MH)の除去を狙うことができた。この塔から留出物は、約10%の割合で元のメチルヘキサン類を残した。この組成を図5に示す。これらの実験は、吸着蒸留によって、留出物中に高い回収率で特定の異性体をより高い濃度で含む別々の流れを得ることができることを示している。上記両方のゼオライト床は、n−ペンタンを用いて再生したものであり、そしてこの脱着剤は、吸着剤の特異性に見たところでは影響を与えることなく、蒸留中に共生成されたものである。化合物の略語は文献に記載のものであり、そして沸点が増す順に並べる。更に、本発明の方法では、慣用の蒸留を行った際のように2,3−ジメチルペンタン(23DMP)とメチルヘキサン類の沸点が非常に近いことから23DMPがメチルヘキサン類と一緒に分離されるのではなく、91の比較的高いRONを有する23DMPを最終の留出物中に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、塔に導入する前に、異性化物供給物混合物及び希釈剤を一緒にする本発明の一つの態様に従う吸着及び脱着モードの蒸留塔の図示である。
【図2】図2は、希釈剤を塔頂に直接リサイクルする本発明の他の態様に従う吸着及び脱着モードの蒸留塔の図示である。
【図3】図3は、メシチレンで希釈した異性化物供給物からのMCHの分離因子に関しての選択性のグラフを示す。
【図4】図4は、異性化物供給物をメシチレン中で希釈する効果を示すグラフである。
【図5】図5は、一つまたは二つの段階で吸着蒸留を行った後の留出物流中の異性体、特にメチルヘキサン類(MCH)の組成を示すグラフである。
【図6】図6は、希釈剤としてメシチレン及びデカンを用いることによる、NaYゼオライト上でのベンゼン及びトルエンの分離を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノルマルアルカン、単分枝状アルカン及び多分枝状アルカンを含む異性化物混合物から異性体を分離する方法であって、
(a) 上記異性化物混合物を蒸留段階に導入し、但しこの際、この蒸留段階は、前記異性化物混合物よりも高い沸点を有する希釈液溶液と接触している吸着域中に吸着剤を含み、
(b) 多分枝状アルカン及び/または単分枝状アルカンを含む留出物流を、上記蒸留段階から抜き出し、かつ少なくとも上記のノルマルアルカンを吸着域中に保持し、但しこの際、前記吸着域は、5A、MCM−22、シリカライト、ZSM−5、イオン交換したHZSM−5及びこれらの混合物からなる群から選択されるゼオライトを含み、
(c) 上記希釈液溶液を含む流れを上記蒸留段階から抜き出し、そしてこの流れを段階(a)に戻す、
ことを含む前記方法。
【請求項2】
段階(a)が、上記の異性化物混合物を含む第一の流れを、この異性化物混合物よりも高い沸点を有する上記希釈液溶液の第二の流れと合流させ、そしてこの合流した流れを上記蒸留段階に導入する段階を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
段階(a)において、希釈液溶液と、上記異性化物混合物を含む第一の流れとを、希釈剤の流れを蒸留塔の底部から抜き出しかつこの流れを塔頂に戻すことによって、吸着域中に吸着剤を含む蒸留塔中で向流モードで接触させる、請求項1の方法。
【請求項4】
脱着剤流を上記吸着域中に流し、そして少なくともノルマルアルカンを含む流れを抜き出すことによって、吸着されたアルカンを吸着域から脱着させることを更に含む、請求項1の方法。
【請求項5】
脱着剤が、水素、窒素、イソペンタン、n−ペンタン、メタン、n−ブタン、イソブタンまたはこれらの混合物である、請求項4の方法。
【請求項6】
希釈液溶液が、135℃〜200℃の範囲の沸点を有する、メチル、エチル、プロピルで置換されたベンゼン、及びメチル、エチル、プロピルで置換されたナフテンを含む化合物からなる群から選択される化合物の溶液である、請求項1〜5のいずれか一つの方法。
【請求項7】
ノルマルアルカン、単分枝状アルカン、多分枝状アルカン及び環状アルカンを含む異性化物混合物が、n−ヘプタン及びメチルシクロヘキサンを含むC7異性化物留分である、請求項1〜6のいずれか一つの方法。
【請求項8】
蒸留段階に流入する合流した流れ中での希釈剤に対する異性化物の重量パーセントが5%〜50%である、請求項2の方法。
【請求項9】
第一の蒸留段階の留出物流を、第二の蒸留段階への供給物として使用するようにした直列配置で行われる、請求項7の方法。
【請求項10】
炭化水素混合物中のベンゼンを他の炭化水素から分離する方法であって、
(a) 上記炭化水素混合物を蒸留段階に導入し、但しこの際、この蒸留段階は、前記炭化水素混合物よりも高い沸点を有する希釈液溶液と接触している吸着域中に吸着剤を含み、
(b) ベンゼン以外の他の炭化水素を含む留出物流を上記蒸留段階から抜き出し、かつベンゼンは吸着域中に保持し、但しこの際、前記吸着域は、ゼオライトX、ゼオライトY、またはこれら両方の混合物を含み、
(c) 上記希釈液溶液を含む流れを上記蒸留段階から抜き出し、そしてこの流れを段階(a)に戻す、
上記方法。
【請求項11】
段階(a)が、上記炭化水素混合物を含む第一の流れを、この炭化水素混合物よりも高い沸点を有する上記希釈液溶液の第二の流れと合流し、そしてこの合流した流れを上記蒸留段階に導入する段階を含む、請求項10の方法。
【請求項12】
段階(a)において、希釈液溶液と、炭化水素混合物を含む第一の流れとを、希釈剤の流れを蒸留塔の底部から抜き出し、そしてこの流れを塔頂に戻すことによって、吸着域中に吸着剤を含む蒸留塔中で向流モードで接触させる、請求項11の方法。
【請求項13】
希釈液溶液が、1または3〜6個のメチル、エチルもしくはプロピル基またはこれらの混合物で置換されたベンゼンからなる群から選択される化合物の溶液である、請求項10の方法。
【請求項14】
上記吸着域中に脱着剤流を流し、そしてベンゼンを含む流れを抜き出すことによって、吸着されたベンゼンを吸着域から脱着させることを更に含み、この際、脱着剤が、シクロヘキサンを少なくとも50重量%含む炭化水素である、請求項10の方法。
【請求項15】
希釈剤の水位が、異性化物または炭化水素混合物の供給位置と同じかまたはこれよりは下にあり、かつ塔底から5〜20%の位置である、請求項3または12の方法。
【請求項16】
長さの全体または一部に沿って加熱される蒸留塔を含む、請求項1〜10の方法を行うための装置であって、前記蒸留塔が、
・それぞれ供給物混合物及び希釈液溶液の別々の流れを導入するための入口手段、または供給物混合物と希釈液溶液とを合流した流れの導入のための入口手段、
・少なくとも一つの留出物流を抜き出すための出口手段、
・上記希釈剤を含む液体溶液の流れを抜き出すための出口手段、
・脱着剤流の導入のための入口手段、及び
・解圧された脱着剤流を抜き出すための出口手段、
を含み、
個体の脱着剤材料が充填された吸着域が、上記塔内に配置されている、上記装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−174545(P2008−174545A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−310041(P2007−310041)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(590000282)ハルドール・トプサー・アクチエゼルスカベット (50)
【Fターム(参考)】