説明

炭化水素分解用触媒及びその製造法、該炭化水素分解用触媒を用いた水素の製造方法

【課題】 本発明は、メタンを主成分とする低級炭化水素と水蒸気を混合して反応させるスチーム改質において、触媒活性成分である金属ニッケル微粒子及び金属ルテニウム微粒子が、触媒粒子に担持させることにより低温における反応においても優れた触媒活性を有すると共に、低スチーム下においても耐コーキング性に優れ、耐久性の面でも優れた炭化水素分解用触媒の提供を目的とする。
【解決手段】 マグネシウム、アルミニウム、ニッケル及びルテニウムを構成元素とする炭化水素分解用触媒であって、金属ルテニウム微粒子の平均粒子径が1〜10nmであって、金属ルテニウムの含有量が炭化水素分解用触媒に対して0.025〜5.0wt%であり、かつ、金属ルテニウムの含有量がマグネシウム、アルミニウム、ニッケル及びルテニウムの合計モル数に対して、0.0001〜0.025である炭化水素分解用触媒である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタンを主体とする低級炭化水素ガスをスチーム改質によって水素を製造する炭化水素分解用触媒において、低スチーム下においても耐コーキング性(コーキング:炭素が析出する現象)に優れるとともに、優れた耐久性を有する炭化水素分解用触媒の提供を目的とする。
【0002】
さらに、本発明は、メタンを主成分とする低級炭化水素と水蒸気を混合して反応させるスチーム改質において、触媒活性成分である金属ニッケル微粒子及び金属ルテニウム微粒子が炭化水素分解用触媒を構成する粒子の表面近傍又は粒子を造粒して得られる触媒成形体の表面近傍のいずれかに高分散して担持させることにより低温における反応においても優れた触媒活性を有する炭化水素分解用触媒の提供を目的とする。
【背景技術】
【0003】
近年、環境問題から新しいエネルギー技術が求められており、この技術の一つである水素を原燃料として用いる固定床燃料電池は電気エネルギーを効率的でかつクリーンに生産できる分散電源として家庭用、産業用、自動車用として検討が進められている。
【0004】
メタンを主成分とする低級炭化水素などの原料ガスを改質して水素を主成分とする改質ガスを得る技術として、スチーム改質(SR)、部分酸化(POX)、スチーム改質(SR)と部分酸化(POX)との併用反応(オートサーマルリフォーミング)などの技術がある。このような改質技術の中、スチーム改質(SR)が最も高い効率で水素を得られる反応方法である。
【0005】
スチーム改質(SR)は以下の反応式によって行われる。
CH+HO→3H+CO
一般に、この反応は600℃〜800℃付近で行われ、S/C(水蒸気/炭素比:Steam/Carbon比)が2.5〜3.5付近で行われる。この反応は吸熱反応であり、温度が高い程、反応を促進することができる。
【0006】
現在、炭化水素分解用触媒における活性金属元素として、卑金属系ではニッケル、鉄、コバルト等が用いられ、貴金属系では白金、ロジウム、ルテニウム、イリジウム又はパラジウム等が用いられている。このうち、触媒活性の高さから、ニッケル、ルテニウムの金属元素を担持した触媒が主に市販されている。卑金属系元素は比較的炭素析出を起こしやすいため、水蒸気を理論組成よりも過剰に添加した水蒸気/炭素比が高い条件下で使用する必要がある。また、貴金属系元素では、水蒸気/炭素比が低い条件下でも炭素析出を起こしにくいが、触媒が高価であることから、これを用いた燃料電池システムの値段は非常に高価になってしまい、燃料電池システムのより一層の普及を妨げる要因となりうる。
【0007】
一般に市販されている触媒として、アルミナなどを主成分とするビーズ形担体に、活性金属元素として廉価な卑金属元素であるニッケル又は高価な貴金属元素であるルテニウムを含有する溶液をスプレー噴霧などによって製造されているものがある。
【0008】
一般的に、水素製造時の触媒特性は担持されている活性金属が微粒子であるほど優れるものであり、前記製造法によって得られたニッケルを主成分とする触媒は、金属ニッケル粒子のサイズが数十nmと大きく、低温における触媒活性が低く、また耐コーキング性に乏しく、触媒特性の経時劣化が著しく使用できるようなものではない。また、前記製造法によって得られたルテニウムを主成分とする触媒は、活性金属元素がルテニウムであるため、ある程度耐コーキング性は高いが、担持されている金属ルテニウム粒子のサイズが十数nmと大きく、低温における触媒活性が低い上にシンタリングにより触媒特性の経時劣化が著しく、使用できるようなものではない。
【0009】
これらのことから、炭化水素分解用触媒として、より安価であり、機能面では、低温においても優れた触媒活性を示し、低水蒸気/炭素比でも炭素析出(コーキング)が抑制されると共に高活性であって、しかも、高い耐久性を有する触媒が強く要求されている。
【0010】
従来、α−アルミナや酸化マグネシウム、酸化チタンなどの担体に、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、ニッケルなどを触媒活性金属として担持し、炭化水素分解用触媒として報告されている(特許文献1至5)。
【0011】
【特許文献1】特開昭50−4001号公報
【特許文献2】特開2000−503624号公報
【特許文献3】特開2003−225566号公報
【特許文献4】特開平11−276893号公報
【特許文献5】特開2003−265963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記特許文献1乃至3には、マグネシウム、アルミニウム、及びニッケルを含有する触媒が記載されているが、触媒を構成する粒子全体にニッケルが均一に存在するために、多量のニッケルを含有するものである。
【0013】
また、前記特許文献4記載の技術は、該触媒ニッケル担持量は特に0.1〜10wt%が好ましいとして提案されているが、特にニッケル担持量が少ない場合のメタン転化率は十分に高いとは言い難いものである。
【0014】
また、前記特許文献5の技術は、触媒活性金属としてニッケルとルテニウムの2成分を担持しているが、通常の含浸法やスプレー法、塗布法等にて担持されているため、ニッケル及びルテニウムの粒子径が大きくなってしまい、低温における触媒活性が低下してしまうと考えられる。
【0015】
そこで、本発明は、触媒活性成分である金属ニッケル及び金属ルテニウムを微粒子で担持させることにより、低温における反応においても優れた触媒活性を有し、低スチーム下においても耐コーキング性に極めて優れた炭化水素分解用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0017】
即ち、本発明は、マグネシウム、アルミニウム、ニッケル及びルテニウムを構成元素とする炭化水素分解用触媒であって、金属ルテニウム微粒子の平均粒子径が1〜10nmであって、金属ルテニウムの含有量が炭化水素分解用触媒に対して0.025〜5.0wt%であり、かつ、金属ルテニウムの含有量がマグネシウム、アルミニウム、ニッケル及びルテニウムの合計モル数に対して、0.0001〜0.025であることを特徴とする炭化水素分解用触媒である(本発明1)。
【0018】
また、本発明は、金属ニッケル微粒子の平均粒子径が1〜10nmであって金属ニッケルの含有量が炭化水素分解用触媒に対して0.1〜40wt%であり、かつ、金属ニッケルの含有量がマグネシウム、アルミニウム、ルテニウム及びニッケルの合計モル数に対して、0.0007〜0.342であることを特徴とする前記炭化水素分解用触媒である(本発明2)。
【0019】
また、本発明は、金属ニッケルに対する金属ルテニウムのモル数は0.0004〜30であることを特徴とする本発明1又は2の炭化水素分解用触媒である(本発明3)。
【0020】
また、本発明は、マグネシウム及びアルミニウムからなる層状複水水酸化物芯粒子と、該層状複水水酸化物芯粒子の表面にマグネシウム、アルミニウム、ニッケル及びルテニウムからなる層状複水水酸化物層を形成した層状複水水酸化物型粒子粉末を加熱焼成して酸化物粒子粉末を得、次いで、該酸化物粒子粉末を加熱還元して酸化物粒子粉末中のニッケル及びルテニウムを金属ニッケル微粒子及び金属ルテニウム微粒子にして得られることを特徴とする炭化水素分解用触媒の製造法である(本発明4)。
【0021】
また、本発明は、アニオンを含有したアルカリ性水溶液とマグネシウム原料とアルミニウム塩水溶液を混合し、pH値が7.0〜13.0の範囲の混合溶液とした後、該混合溶液を50℃〜300℃の温度範囲で熟成してマグネシウムとアルミニウムからなる層状複水水酸化物芯粒子を生成させ、次いで、該層状複水水酸化物芯粒子を含む水性懸濁液に、該芯粒子の生成時に添加した前記マグネシウム及び前記アルミニウムの合計モル数に対して、合計モル数が0.05〜0.5となる割合のマグネシウム、アルミニウム、ニッケル及びルテニウムを含有するマグネシウム原料、アルミニウム塩水溶液、ニッケル塩水溶液及びルテニウム塩水溶液を添加した後、pH値が9.0〜13.0の範囲、温度が40℃〜300℃の範囲で熟成して、前記芯粒子表面に層状複水水酸化物層を被覆形成させる成長反応を行った後、濾別、水洗し、得られた層状複水水酸化物粒子粉末を400℃〜1600℃の温度範囲で加熱焼成し酸化物粒子粉末を得、次いで、該酸化物粒子粉末を還元雰囲気下、700℃〜1100℃の温度範囲で加熱還元することを特徴とする炭化水素分解用触媒の製造法である(本発明5)。
【0022】
また、本発明は、低級炭化水素を主体としたガスをスチーム改質により水素を製造する方法において、本発明1乃至3のいずれかに記載の炭化水素分解用触媒、低級炭化水素ガス及びスチームを接触させることを特徴とする水素の製造方法である(本発明6)。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る炭化水素分解用触媒は、金属ニッケルだけでなく、金属ルテニウムについても非常に微細な粒子の状態で炭化水素分解用触媒を構成する粒子の表面近傍又は粒子を造粒して得られる触媒成形体の表面近傍のいずれかに高分散して担持されているため、活性金属種である金属ニッケルと金属ルテニウムの低級炭化水素及び水蒸気に接触する面積が増大し、比較的低温においても優れた触媒活性を有する。
【0024】
また、金属ニッケル及び金属ルテニウムが非常に微細な微粒子で炭化水素分解用触媒を構成する粒子の表面近傍又は粒子を造粒して得られる触媒成形体の表面近傍のいずれかに高分散して存在していることにより、低水蒸気条件下においてスチーム改質を行ってもコーキングしにくい。さらにマグネシウムを多量に多孔質担体が含んでいるため耐硫黄被毒性に極めて優れているので耐久性の面でも優れた触媒活性を有する。
【0025】
さらに、本発明にかかる炭化水素分解用触媒は、メタンなどの低級炭化水素ガスをオートサーマルリフォーミング(ATR)、部分酸化(POX)などの炭化水素分解用触媒、また二酸化炭素改質触媒として用いることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0027】
先ず、本発明に係る炭化水素分解用触媒について述べる。
【0028】
本発明に係る炭化水素分解用触媒の金属ルテニウム微粒子の平均粒子径は10nm以下であり水素製造に最適で低温において優れた触媒活性を有する。平均粒子径が10nmを超える金属ルテニウム微粒子を有する触媒では、メタンを主成分とする低級炭化水素ガスと水蒸気とを混合して水素を製造するスチーム改質において低温における低級炭化水素の転化率が低下してしまう。好ましくは9nm以下、より好ましくは8nm以下である。平均粒子径の下限値は0.5nm程度である。
【0029】
本発明に係る炭化水素分解用触媒の金属ルテニウムの含有量は、該触媒に対して0.025〜5.0wt%である。金属ルテニウムの含有量が0.025wt%未満又は5.0wt%以上の場合には低温における低級炭化水素の転化率が低下する。好ましくは0.025〜4.8wt%である。
【0030】
本発明に係る炭化水素分解用触媒の金属ルテニウムの含有量は、該触媒に含まれるマグネシウム、アルミニウム、ニッケル及びルテニウムの合計モル数に対するモル比(Ru/(Mg+Al+Ni+Ru))で示した場合0.0001〜0.025が好ましい。前記モル比が0.025を越える場合には、金属ルテニウム微粒子の平均粒子径が10nmを超えるため、低温における低級炭化水素の転化率が低下する。好ましくは0.0001〜0.024である。
【0031】
本発明に係る炭化水素分解用触媒の金属ニッケル微粒子の平均粒子径は10nm以下が好ましく、水素製造に最適で低温において優れた触媒活性を有する。平均粒子径が10nmを超える金属ニッケル微粒子を有する触媒では、メタンを主成分とする低級炭化水素ガスと水蒸気とを混合して水素を製造するスチーム改質において低級炭化水素の転化率が低下してしまう。さらに、10nmを超える金属ニッケル微粒子を有する触媒では触媒体の耐コーキング性が著しく低下する。好ましくは9nm以下、より好ましくは8nm以下である。平均粒子径の下限値は0.5nm程度である。
【0032】
本発明に係る炭化水素分解用触媒の金属ニッケルの含有量は、該触媒に対して0.10〜40wt%が好ましい。金属ニッケルの含有量が0.10wt%未満の場合には低級炭化水素の転化率が低下する。40wt%を超える場合には、金属ニッケル微粒子の粒子サイズが10nmを超え、耐コーキング性が低下してしまう。好ましくは0.18〜39.0wt%である。
【0033】
本発明に係る炭化水素分解用触媒の金属ニッケルの含有量は、該触媒に含まれるマグネシウム、アルミニウム、ルテニウム及びニッケルの合計モル数に対するモル比(Ni/(Mg+Al+Ru+Ni))で示した場合0.0007〜0.342が好ましい。前記モル比が0.342を越える場合には、金属ニッケル微粒子の平均粒子径が10nmを超えるため、低温における低級炭化水素の転化率が低下し、また耐コーキング性が低下する。より好ましくは0.001〜0.34、さらにより好ましくは0.0015〜0.34である。
【0034】
本発明に係る炭化水素分解用触媒の金属ルテニウムのモル数は金属ニッケルのモル数に対して0.0004〜30であることが好ましい。
【0035】
本発明に係る炭化水素分解用触媒において、金属ニッケル及び金属ルテニウムは、炭化水素分解用触媒を構成する粒子の粒子表面近傍に存在することが好ましい。また、本発明に係る炭化水素分解用触媒は、造粒して成形体の状態で用いることが好ましく、金属ニッケル及び金属ルテニウムが前記成形体の表面近傍に存在させてもよい。
【0036】
本発明に係る炭化水素分解用触媒のマグネシウムとアルミニウムとの比率は特に限定されないが、アルミニウムに対してマグネシウムが多い方が好ましく、マグネシウムとアルミニウムのモル比はMg:Al=4:1〜1.5:1が好ましい。マグネシウムが前記範囲を越える場合には十分な強度を有する成形体を容易に得ることが困難となり、前記範囲未満の場合には多孔質担体としての特性が得られ難くなる。
【0037】
本発明に係る炭化水素分解用触媒の比表面積値は7〜320m/gが好ましい。7m/g未満では高い空間速度において転化率が低下してしまう。320m/gを超える場合は触媒前駆体である層状複水水酸化物粒子粉末の工業的な生産が困難となる。より好ましくは20〜280m/gである。
【0038】
次に、本発明に係る炭化水素分解用触媒の製造方法について述べる。
【0039】
本発明に係る炭化水素分解用触媒は、前駆体である層状複水水酸化物粒子粉末を製造した後、400〜1600℃の温度範囲で加熱焼成して多孔質の酸化物粒子粉末とし、次いで、700〜1100℃の温度範囲で加熱還元して得ることができる。
【0040】
本発明における層状複水水酸化物粒子粉末は、アニオンを含有したアルカリ性水溶液とマグネシウム原料とアルミニウム塩水溶液を混合し、pH値が7.0〜13.0の範囲の混合溶液とした後、該混合溶液を50〜300℃の温度範囲で熟成して層状複水水酸化物芯粒子を生成し、
次いで、該層状複水水酸化物芯粒子を含む水懸濁液に、前記層状複水水酸化物芯粒子の生成時に添加した前記マグネシウムと前記アルミニウムとの合計モル数に対して、合計モル数が0.05〜0.5となる割合のマグネシウム、アルミニウム、ニッケル及びルテニウムを含有するマグネシウム塩水溶液、アルミニウム塩水溶液、ニッケル塩水溶液及びルテニウム塩水溶液を添加した後、pH値が9.0〜13.0の範囲、温度が40〜300℃の範囲で熟成して、前記層状複水水酸化物芯粒子の粒子表面に新たに添加したマグネシウム、アルミニウム、ニッケル及びルテニウムをトポタクティックに被覆形成する成長反応を行うことで得られる。
【0041】
マグネシウム、アルミニウム、ニッケル、鉄の塩としては硝酸塩など水溶性のものであれば特に限定しない。
【0042】
マグネシウム原料としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム等を用いることができる。
【0043】
アルミニウム原料としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、塩基性アンモニウムアルミニウム等を用いることができる。
【0044】
ニッケル塩原料としては、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、安息香酸ニッケル、塩基性炭酸ニッケル、ギ酸ニッケル、クエン酸ニッケル、硫酸ニッケル二アンモニウム等を用いることができる。
【0045】
ルテニウム塩原料としては硝酸ルテニウム、塩化ルテニウム等を用いることができる。
【0046】
芯粒子に対する成長反応分のモル数が0.05未満の場合には、低級炭化水素の転化率が低くなり本発明の効果が得られない。0.5を超える場合には、金属ニッケル微粒子及び金属ルテニウム微粒子の平均粒子径が大きくなり低温における低級炭化水素の転化率が低下し、さらには耐コーキング性が低下する。好ましくは0.10〜0.45、より好ましくは0.12〜0.4である。
【0047】
成長反応におけるpH値が9.0未満の場合には、成長反応時に添加したマグネシウム、アルミニウム、ニッケル及びルテニウムが被覆層を形成せず分離して混在するようになり、本発明の目的とする触媒が得られない。pH値が13.0を超える場合には、アルミニウムの溶出が多過ぎて目的とする組成物が得られ難くなる。好ましくは9.0〜12.5、より好ましくは9.5〜12.0である。
【0048】
成長反応における反応温度が40℃未満の場合には、成長反応時に添加したマグネシウム、アルミニウム、ニッケル及びルテニウムが被覆層を形成せず分離して混在するようになり、本発明の目的とする触媒が得られない。300℃を超えた場合、層状複水水酸化物粒子以外に大きな水酸化アルミニウム粒子や水酸化酸化アルミニウム粒子が混在するようになり、触媒活性金属微粒子のシンタリングが促進され、所望の特性を持った触媒体が得られない。好ましくは60〜250℃である。
【0049】
成長反応における熟成時間は特に限定されるものではないが、1〜80時間、好ましくは、3〜24時間、より好ましくは、5〜18時間である。1時間未満では成長反応時に添加したマグネシウム、アルミニウム、ニッケル及びルテニウムが層状複水水酸化物芯粒子表面に十分な被覆層を形成しない。80時間を超える成長反応は工業的ではない。
【0050】
なお、ニッケル原料に微量含まれる不純物としてのコバルトが本発明に係る触媒に含有されても何ら問題はない。
【0051】
本発明における炭化水素分解用触媒の前駆体である層状複水水酸化物粒子粉末の平均板面径は0.05〜0.4μmが好ましい。平均板面径が0.05μm未満の場合には、濾別・水洗が困難となり工業的な生産が困難であり、0.4μmを超える場合には、触媒成形体を作製することが困難である。
【0052】
本発明における層状複水水酸化物粒子粉末の結晶子サイズD006は0.001〜0.08μmが好ましい。結晶子サイズD006が0.001μm未満の場合には、水性懸濁液の粘度が非常に高く工業的な生産が難しく、0.08μmを超える場合には、触媒成形体を作製するのが困難である。より好ましくは0.002〜0.07μmである。
【0053】
本発明における層状複水水酸化物粒子粉末の比表面積値は3.0〜300m/gが好ましい。比表面積値が3.0m/g未満の場合には、触媒成形体を作製するのが困難であり、300m/gを超える場合には、水性懸濁液の粘度が非常に高く、また濾別・水洗が困難となり工業的に生産が困難である。より好ましくは5.0〜250m/gである。
【0054】
本発明における層状複水水酸化物粒子粉末のニッケル含有量は、層状複水水酸化物粒子粉末全体に対して0.0057〜26.463wt%が好ましく、より好ましくは0.01〜20wt%である。また、層状複水水酸化物粒子粉末のニッケル含有量のモル数は層状複水水酸化物粒子粉末に含まれるマグネシウム、アルミニウム、ニッケル及びルテニウムの合計モル数に対する比Ni/(Mg+Al+Ni+Ru)が0.001〜0.32が好ましく、より好ましくは0.0015〜0.3である。
【0055】
本発明における層状複水水酸化物粒子粉末のルテニウム含有量は、層状複水水酸化物粒子粉末全体に対して0.0013〜3.328wt%が好ましく、より好ましくは0.002〜2.00wt%である。また、層状複水水酸化物粒子粉末のルテニウム含有量のモル数は層状複水水酸化物粒子粉末に含まれるマグネシウム、アルミニウム、ニッケル及びルテニウムの合計モル数に対する比Ru/(Mg+Al+Ni+Ru)が0.0015〜0.022が好ましく、より好ましくは0.0002〜0.02である。
【0056】
本発明における層状複水水酸化物粒子粉末のルテニウムのモル数はニッケルのモル数に対して0.0004〜30であることが好ましい。
【0057】
本発明における層状複水水酸化物粒子粉末のマグネシウムとアルミニウムとの比率は特に限定されないが、マグネシウムとアルミニウムのモル比はMg:Al=4:1〜1.5:1がより好ましい。
【0058】
本発明における酸化物粒子粉末は、前記層状複水水酸化物粒子粉末を400℃〜1600℃で焼成することにより得られる。層状複水水酸化物粒子粉末の焼成温度が400℃未満の場合には、多孔質体酸化物粒子を得ることができない。1600℃を超える場合には、多孔質体担体としての特性が低下する。好ましくは450〜1500℃、より好ましくは500〜1400℃である。焼成雰囲気は酸素、空気、また窒素、アルゴンなどの不活性ガスでも良い。
【0059】
本発明における酸化物粒子粉末の焼成時間は特に限定しないが0.5〜24時間が望ましい。24時間を越えると工業的とは言い難い。好ましくは1〜10時間である。
【0060】
本発明における層状複水水酸化物粒子粉末を焼成後に得られる酸化物粒子粉末のルテニウム含有量は、酸化物粒子粉末全体に対して0.025〜5.0wt%が好ましく、より好ましくは0.05〜4.0wt%である。また、酸化物粒子粉末のルテニウム含有量のモル数及び全金属イオンに対する比率は、層状複水水酸化物粒子粉末のモル数及び比率とほぼ同程度である。
【0061】
本発明における層状複水水酸化物粒子粉末を焼成後に得られる酸化物粒子粉末のニッケル含有量は、酸化物粒子粉末全体に対して0.10〜40wt%が好ましく、より好ましくは0.18〜35wt%である。また、酸化物粒子粉末のニッケル含有量のモル数及び全金属イオンに対する比率は、層状複水水酸化物粒子粉末のモル数及びモル比率とほぼ同程度である。
【0062】
本発明における酸化物粒子粉末は多孔質体であり、平均板面径は0.05〜0.4μmが好ましく、比表面積値は7.0〜320m/gが好ましい。
【0063】
本発明に係る炭化水素分解用触媒は、前記酸化物粒子粉末を700℃〜1100℃の範囲で還元処理することにより得られる。酸化物粒子粉末の還元温度が700℃未満の場合には、ニッケルが金属化しないので本発明の目的とする触媒活性が得られない。1100℃を超える場合にはニッケル及びルテニウムのシンタリングが進み金属ニッケル微粒子及び金属ルテニウム微粒子の粒子サイズが大きくなるため低温における低級炭化水素の転化率が低下し、さらに耐コーキング性も低下する。好ましくは700〜950℃である。還元時の雰囲気は、水素を含んだガスなど還元雰囲気であれば特に限定されない。熱処理の時間は特に限定しないが0.5〜24時間が望ましい。24時間を越えると工業的にメリットが見出せない。好ましくは、1〜10時間である。
【0064】
上記のようにして得られた粉末状の触媒は、使用する各用途に合わせて成形しても良い。形状やサイズは特に限定しないが、例えば球状や円柱状、管状、ハニカム体への塗布などの形状でも良い。通常、球状や円柱状、管状の形状を持つ触媒体の場合のサイズは0.1〜30mm程度が好適である。条件によっては有機物や無機物などの各種バインダーを添加することで成形体の強度や細孔分布密度を調整しても良い。なお、本発明においては熱処理前に造粒・成形してもよい。
【0065】
また、層状複水水酸化物粒子粉末を焼成して複合酸化物を得、次いで、該複合酸化物をアニオンを含有する水溶液によって水和して層状複水水酸化物粒子粉末を得る方法が知られており、本発明においては、下記製造方法によってニッケル及びルテニウムを担持しても良い。ニッケル及びルテニウムを担持した層状複水酸化物粒子粉末は、前記と同様にして、必要により加熱焼成を行った後、加熱還元すればよい。
【0066】
即ち、マグネシウム及びアルミニウムのみからなる層状複水水酸化物粒子粉末を成形、焼成後に多孔質酸化物成形体とし、次いで、ニッケル及びルテニウムを含む溶液に含浸させることにより、多孔質酸化物粉末あるいは成形体の表面近傍にニッケル及びルテニウムを含む層状複水水酸化物粒子相を再生させる方法を用いて担持しても良い。
【0067】
また、前記製造法に従って粒子表面にニッケルが存在する層状複水水酸化物粒子粉末を得て、成形、焼成して多孔質酸化物成形体とし、ルテニウムを含む溶液に含浸させることにより、多孔質酸化物粉末あるいは成形体の表面近傍にニッケル、また成形体の表面近傍にルテニウムを含む層状複水水酸化物粒子相を再生させる方法を用いて担持しても良い。
【0068】
また、前記製造法に従って粒子表面にルテニウムが存在する層状複水水酸化物粒子粉末を得て、成形、焼成して多孔質酸化物成形体とし、ニッケルを含む溶液に含浸させることにより、多孔質酸化物粉末あるいは成形体の表面近傍にルテニウム、また成形体の表面近傍にニッケルを含む層状複水水酸化物粒子相を再生させる方法を用いて担持しても良い。
【0069】
また、前記製造法に従って粒子表面にニッケル及びルテニウムが存在する層状複水水酸化物粒子粉末を得て、成形、焼成して多孔質酸化物成形体とし、さらにニッケル及びルテニウムを含む溶液に含浸させることにより、多孔質酸化物粉末あるいは成形体の表面近傍にニッケル、ルテニウム、また成形体の表面近傍にニッケル、ルテニウムを含む層状複水水酸化物粒子相を再生させる方法を用いて担持しても良い。
【0070】
次に、本発明に係る炭化水素分解用触媒を用いた水素製造方法について述べる。
【0071】
本発明に係る炭化水素分解用触媒を用いた水素の製造方法は、反応温度が400〜900℃であり、水蒸気と低級炭化水素とのモル比(S/C)が1.2〜6.0であり、空間速度(GHSV)が500〜600,000h−1である条件下で、メタンを主成分とする低級炭化水素ガス及び水蒸気を本発明に係る炭化水素分解用触媒と接触させる。
【0072】
反応温度が400℃未満の場合には低級炭化水素の転化率が低く、長時間に渡り反応を行うとコーキングが起こりやすくなり終には触媒特性が失活することもある。900℃を超える場合にはメタンなどの低級炭化水素が分解してしまう。好ましくは450〜900℃、より好ましくは500〜850℃である。
【0073】
水蒸気と低級炭化水素のモル比S/Cが1.2未満の場合には耐コーキング性が低下する。またS/Cが6.0を超える場合には水素製造に多量の水蒸気を必要としコストがかさみ現実的ではない。好ましくは1.5〜6.0、より好ましくは1.8〜5.0である。
【0074】
なお、空間速度(GHSV)は800〜300,000h−1が好ましく、より好ましくは1,000〜200,000h−1ある。
【0075】
水素製造に用いる低級炭化水素ガスとしては、炭素数が1〜6、好ましくは1〜4である炭化水素が好ましい。このようなものには、例えば、メタンの他に、エタン、プロパン、ブタンなどが包含される。
【0076】
本発明に係る炭化水素分解用触媒は、オートサーマルリフォーミング反応で起動した後にスチーム改質に切り替わった場合でも、さらには長時間スチーム改質を行った場合でも十分な触媒活性、耐久性、耐コーキング性、耐硫黄被毒性を発揮でき、DSS(Daily start−up shut−down)を導入した燃料電池システムにおいて最適な触媒である。
【0077】
<作用>
本発明に係る炭化水素分解用触媒が低温において優れた触媒活性を有する理由は未だ明らかではないが、本発明者は次のように推定している。
【0078】
本発明に係る炭化水素分解用触媒は、前記製造法に由来して、金属ニッケル及び金属ルテニウムが従来にないほど微細な1〜10nmという粒子で触媒を構成する粒子の表面近傍又は造粒して得られる触媒成型体の表面近傍のいずれかに担持しているため、炭化水素分解反応において低級炭化水素ガスを効率良くニッケル及びルテニウムと接触させることができ優れた触媒活性を有し、さらに低温においても高い触媒活性を有するものである。
【0079】
また、前記のとおり、本発明にかかる炭化水素分解用触媒は、高い触媒活性を有するもので低スチーム下においても耐コーキング性に優れ高い触媒活性を示すことができる。
【実施例】
【0080】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0081】
層状複水水酸化物粒子粉末の板面径は、「電子顕微鏡写真TEM1200EX(日本電子株式会社製)」(加速電圧:100kV)を使用し、測定した数値の平均値で示したものである。
【0082】
層状複水水酸化物粒子粉末のD006(粒子の厚み)は、「X線回折装置RINT−2500(理学電機(株)製)」(管球:Cu、管電圧:40kV、管電流:300mA、ゴニオメーター:広角ゴニオメーター、サンプリング幅:0.020°、走査速度:2°/min、発散スリット:1°、散乱スリット:1°、受光スリット:0.50mm)を使用し、層状複水水酸化物粒子粉末のD006結晶面の回折ピーク曲線から、シェラーの式を用いて計算した値で示したものである。
【0083】
層状複水水酸化物粒子粉末の同定はX線回折測定で行った。X線回折測定は、前記X線回折装置を使用し、回折角2θが3〜80°で測定した。
【0084】
金属ニッケルや金属ルテニウムの粒子の大きさは、電子顕微鏡写真から測定した数値の平均値で示したものである。また10nmを超える金属微粒子の大きさは、「X線回折装置RINT−2500(理学電機(株)製)」(管球:Cu、管電圧:40kV、管電流:300mA、ゴニオメーター:広角ゴニオメーター、サンプリング幅:0.020°、走査速度:2°/min、発散スリット:1°、散乱スリット:1°、受光スリット:0.50mm)を使用し、シェラーの式を用いて微粒子の大きさを計算で求めた。このX線回折装置より求めた金属ニッケルや金属ルテニウムの粒子サイズは、電子顕微鏡写真より求めたものと同じであった。
【0085】
触媒を構成するマグネシウム、アルミニウム、ニッケル、ルテニウムの含有量は、該触媒を酸で溶解し、「プラズマ発光分光分析装置 SPS4000(セイコー電子工業(株))」で測定して求めた。
【0086】
BET比表面積値は、窒素によるB.E.T.法により測定した。
【0087】
スチーム改質反応時に析出した炭素の量は、触媒反応前後の触媒体の炭素量をカーボン・サルファー測定装置で測定し求めた。
【0088】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0089】
実施例1 <炭化水素用触媒の調製>
MgSO・7HO 110.9gとAl(SO・8HO 36.47gとを水で溶解させ1000mlとした。別にNaOH 220.2ml(14mol/L濃度)に、NaCO 12.54gを溶解させた1000ml溶液を加えて全量2000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩とアルミニウム塩との混合溶液を加え、98℃で20時間熟成を行って層状複水水酸化物芯粒子を得た。このときの反応溶液のpH10.1であった。
次いで、このアルカリ性懸濁液に、MgSO・7HO 14.08gとNiSO・6HO 30.04gとAl(SO・8HO 4.630gとRuCl 1.976gとを溶かした500mlのマグネシウム塩とニッケル塩とアルミニウム塩とルテニウム塩との混合溶液を加え、反応溶液のpHを11.8にし、さらに254℃で8時間熟成し、前記層状複水水酸化物芯粒子表面にトポタクティックに成長させ、層状複水水酸化物粒子を得た。なお、成長反応時に添加したマグネシウム、アルミニウム、ニッケル、ルテニウムの合計モル数は、芯粒子の生成時に添加した前記マグネシウムと前記アルミニウムとの合計モル数に対して、0.250であった。ここに得た層状複水水酸化物粒子の平均板面径は0.251μmであり、結晶子サイズD006は0.051μmであり、BETは18.9m/gであった。
【0090】
ここに得た層状複水水酸化物粒子粉末を成形して、直径3mmの球形体ビーズとした。810℃、22時間空気中にて焼成して酸化物粒子粉末とした後、820℃にて水素/アルゴン体積比が20/80のガス気流中において3時間還元処理を行い、炭化水素分解用触媒を得た。得られた触媒中のニッケルの含有量は18.26wt%(Ni/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.143(モル比))であり、金属ニッケル微粒子の大きさは7nmであった。得られた触媒中のルテニウムの含有量は2.621wt%(Ru/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.012(モル比))であり、金属ルテニウム微粒子の大きさは6nmであった。なお、金属ニッケル粒子及び金属ルテニウムは、粒子表面近傍にのみ存在するものと推定される。
【0091】
<炭化水素用触媒を用いた水素製造反応>
炭化水素用触媒の評価は、触媒を直径20mmのステンレス製反応管に20〜50g充填して触媒管を作った。
この触媒管(反応器)に対して、原料ガスとして都市ガス13A、水蒸気を、反応圧力0.5MPa、反応温度400℃〜1000℃、空間速度を50000h−1として流通させた。このときの水蒸気/炭素比(S/C)は1.5又は3.0である。
【0092】
なお、表中に示したメタン転化率は、下記式より算出されたものである。
メタン転化率(%)=(1−出口メタン濃度/入口メタン濃度)×100
【0093】
前記反応結果を表1乃至3に示す。
表1はGHSVが50000h−1、水蒸気/炭素(S/C)が3.0で、24時間反応させた場合、反応温度(400℃〜1000℃)とメタン転化率の関係を示す。
表2はGHSVが50000h−1、反応温度が700℃、水蒸気/炭素(S/C)が1.5及び3.0の場合、反応時間とメタン転化率の関係を示す。
表3ではGHSVが50000h−1、反応温度が700℃、水蒸気/炭素(S/C)が1.5における反応時間と触媒活性測定前後の炭素析出量の関係を示す。
【0094】
<実施例2>
MgCl・6HO 92.94gとAlCl・6HO 22.07gとを水で溶解させ1000mlとした。別にNaOH 93.08ml(14mol/L濃度)に、NaCO 16.53gを溶解させた1000ml溶液を加えて全量2000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩とアルミニウム塩との混合溶液を加え、60℃で3時間熟成を行って層状複水水酸化物芯粒子を得た。このときの反応溶液のpH7.5であった。
次いで、このアルカリ性懸濁液に、MgCl・6HO 20.25gとNiCl・6HO 4.636gとAlCl・6HO 4.811gとRuCl 0.124gとを溶かした500mlのマグネシウム塩とニッケル塩とアルミニウム塩とルテニウム塩との混合溶液を加え、反応溶液のpHを9.5にし、さらに55℃で14時間熟成し、前記層状複水水酸化物芯粒子表面にトポタクティックに成長させ、層状複水水酸化物粒子を得た。なお、成長反応時に添加したマグネシウム、アルミニウム、ニッケル、ルテニウムの合計モル数は、芯粒子の生成時に添加した前記マグネシウムと前記アルミニウムとの合計モル数に対して、0.200であった。ここに得た層状複水水酸化物粒子の平均板面径は0.062μmであり、結晶子サイズD006は0.005μmであり、BETは276.8m/gであった。
【0095】
ここに得た層状複水水酸化物粒子粉末を成形して、直径3mmの球形体ビーズとした。1380℃、7時間空気中にて焼成して酸化物粒子粉末とした後、790℃にて水素/アルゴン体積比が20/80のガス気流中において9時間還元処理を行い、炭化水素分解用触媒を得た。得られた触媒中のニッケルの含有量は3.339wt%(Ni/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.052(モル比))であり、金属ニッケル微粒子の大きさは2nmであった。得られた触媒中のルテニウムの含有量は0.172wt%(Ru/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.0008(モル比))であり、金属ルテニウム微粒子の大きさは1nmであった。なお、金属ニッケル粒子及び金属ルテニウムは、粒子表面近傍にのみ存在するものと推定される。
【0096】
<実施例3>
MgCl・6HO 138.29gとAlCl・6HO 32.85gとを水で溶解させ1000mlとした。別にNaOH 237.6ml(14mol/L濃度)に、NaCO 23.99gを溶解させた1000ml溶液を加えて全量2000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩とアルミニウム塩との混合溶液を加え、84℃で12時間熟成を行って層状複水水酸化物芯粒子を得た。このときの反応溶液のpH9.4であった。
次いで、このアルカリ性懸濁液に、MgCl・6HO 26.08gとNiCl・6HO 26.27gとAlCl・6HO 6.194gとRu(NO 1.476gとを溶かした500mlのマグネシウム塩とニッケル塩とアルミニウム塩とルテニウム塩との混合溶液を加え、反応溶液のpHを10.6にし、さらに142℃で11時間熟成し、前記層状複水水酸化物芯粒子表面にトポタクティックに成長させ、層状複水水酸化物粒子を得た。なお、成長反応時に添加したマグネシウム、アルミニウム、ニッケル、ルテニウムの合計モル数は、芯粒子の生成時に添加した前記マグネシウムと前記アルミニウムとの合計モル数に対して、0.238であった。ここに得た層状複水水酸化物粒子の平均板面径は0.278μmであり、結晶子サイズD006は0.034μmであり、BETは54.7m/gであった。
【0097】
ここに得た層状複水水酸化物粒子粉末を成形して、直径3mmの球形体ビーズとした。720℃、3時間空気中にて焼成して酸化物粒子粉末とした後、720℃にて水素/アルゴン体積比が20/80のガス気流中において12時間還元処理を行い、炭化水素分解用触媒を得た。得られた触媒中のニッケルの含有量は11.78wt%(Ni/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.090(モル比))であり、金属ニッケル微粒子の大きさは3nmであった。得られた触媒中のルテニウムの含有量は0.922wt%(Ru/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.004(モル比))であり、金属ルテニウム微粒子の大きさは2nmであった。なお、金属ニッケル粒子及び金属ルテニウムは、粒子表面近傍にのみ存在するものと推定される。
【0098】
<実施例4>
MgSO・7HO 40.65gとAl(SO・8HO 14.86gとを水で溶解させ1000mlとした。別にNaOH 202.1ml(14mol/L濃度)に、NaCO 6.178gを溶解させた1000ml溶液を加えて全量2000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩とアルミニウム塩との混合溶液を加え、85℃で7時間熟成を行って層状複水水酸化物芯粒子を得た。このときの反応溶液のpH8.9であった。
次いで、このアルカリ性懸濁液に、MgSO・7HO 14.74gとNiSO・6HO 23.29gとAl(SO・8HO 5.386gとRu(NO 0.956gとを溶かした500mlのマグネシウム塩とニッケル塩とアルミニウム塩とルテニウム塩との混合溶液を加え、反応溶液のpHを9.1にし、さらに91℃で18時間熟成し、前記層状複水水酸化物芯粒子表面にトポタクティックに成長させ、層状複水水酸化物粒子を得た。なお、成長反応時に添加したマグネシウム、アルミニウム、ニッケル、ルテニウムの合計モル数は、芯粒子の生成時に添加した前記マグネシウムと前記アルミニウムとの合計モル数に対して、0.435であった。ここに得た層状複水水酸化物粒子の平均板面径は0.182μmであり、結晶子サイズD006は0.014μmであり、BETは113.6m/gであった。
【0099】
ここに得た層状複水水酸化物粒子粉末を成形して、直径3mmの球形体ビーズとした。550℃、8時間空気中にて焼成して酸化物粒子粉末とした後、900℃にて水素/アルゴン体積比が20/80のガス気流中において5時間還元処理を行い、炭化水素分解用触媒を得た。得られた触媒中のニッケルの含有量は27.61wt%(Ni/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.222(モル比))であり、金属ニッケル微粒子の大きさは6nmであった。得られた触媒中のルテニウムの含有量は1.783wt%(Ru/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.008(モル比))であり、金属ルテニウム微粒子の大きさは4nmであった。なお、金属ニッケル粒子及び金属ルテニウムは、粒子表面近傍にのみ存在するものと推定される。
【0100】
<実施例5>
MgSO・7HO 109.4gとAl(SO・8HO 41.51gとを水で溶解させ1000mlとした。別にNaOH 221.7ml(14mol/L濃度)に、NaCO 17.55gを溶解させた1000ml溶液を加えて全量2000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩とアルミニウム塩との混合溶液を加え、74℃で11時間熟成を行って層状複水水酸化物芯粒子を得た。このときの反応溶液のpH8.5であった。
次いで、このアルカリ性懸濁液に、MgSO・7HO 42.14gとNiSO・6HO 86.44gとAl(SO・8HO 15.99gとRuCl 4.093gとを溶かした500mlのマグネシウム塩とニッケル塩とアルミニウム塩とルテニウム塩との混合溶液を加え、反応溶液のpHを8.2にし、さらに81℃で12時間熟成し、前記層状複水水酸化物芯粒子表面にトポタクティックに成長させ、層状複水水酸化物粒子を得た。なお、成長反応時に添加したマグネシウム、アルミニウム、ニッケル、ルテニウムの合計モル数は、芯粒子の生成時に添加した前記マグネシウムと前記アルミニウムとの合計モル数に対して、0.488であった。ここに得た層状複水水酸化物粒子の平均板面径は0.115μmであり、結晶子サイズD006は0.009μmであり、BETは178.3m/gであった。
【0101】
ここに得た層状複水水酸化物粒子粉末を成形して、直径3mmの球形体ビーズとした。480℃、12時間空気中にて焼成して酸化物粒子粉末とした後、840℃にて水素/アルゴン体積比が20/80のガス気流中において16時間還元処理を行い、炭化水素分解用触媒を得た。得られた触媒中のニッケルの含有量は33.19wt%(Ni/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.274(モル比))であり、金属ニッケル微粒子の大きさは8nmであった。得られた触媒中のルテニウムの含有量は3.430wt%(Ru/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.016(モル比))であり、金属ルテニウム微粒子の大きさは7nmであった。なお、金属ニッケル粒子及び金属ルテニウムは、粒子表面近傍にのみ存在するものと推定される。
【0102】
<実施例6>
Mg(NO・6HO 251.9gとAl(NO・9HO 65.81gとを水で溶解させ1000mlとした。別にNaOH 329.9ml(14mol/L濃度)に、NaCO 28.51gを溶解させた1000ml溶液を加えて全量2000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩とアルミニウム塩との混合溶液を加え、152℃で3時間熟成を行って層状複水水酸化物芯粒子を得た。このときの反応溶液のpH9.6であった。
次いで、このアルカリ性懸濁液に、Mg(NO・6HO 23.93gとNi(NO・6HO 31.99gとAl(NO・9HO 6.252gとRu(NO 8.631gとを溶かした500mlのマグネシウム塩とニッケル塩とアルミニウム塩とルテニウム塩との混合溶液を加え、反応溶液のpHを10.8にし、さらに168℃で14時間熟成し、前記層状複水水酸化物芯粒子表面にトポタクティックに成長させ、層状複水水酸化物粒子を得た。なお、成長反応時に添加したマグネシウム、アルミニウム、ニッケル、ルテニウムの合計モル数は、芯粒子の生成時に添加した前記マグネシウムと前記アルミニウムとの合計モル数に対して、0.167であった。ここに得た層状複水水酸化物粒子の平均板面径は0.324μmであり、結晶子サイズD006は0.006μmであり、BETは32.2m/gであった。
【0103】
ここに得た層状複水水酸化物粒子粉末を成形して、直径3mmの球形体ビーズとした。1420℃、8時間空気中にて焼成して酸化物粒子粉末とした後、1080℃にて水素/アルゴン体積比が20/80のガス気流中において2時間還元処理を行い、炭化水素分解用触媒を得た。得られた触媒中のニッケルの含有量は8.912wt%(Ni/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.069(モル比))であり、金属ニッケル微粒子の大きさは3nmであった。得られた触媒中のルテニウムの含有量は4.186wt%(Ru/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.019(モル比))であり、金属ルテニウム微粒子の大きさは2nmであった。なお、金属ニッケル粒子及び金属ルテニウムは、粒子表面近傍にのみ存在するものと推定される。
【0104】
<実施例7>
Mg(NO・6HO 235.0gとAl(NO・9HO 78.15gとを水で溶解させ1000mlとした。別にNaOH 242.2ml(14mol/L濃度)に、NaCO 36.84gを溶解させた1000ml溶液を加えて全量2000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩とアルミニウム塩との混合溶液を加え、113℃で14時間熟成を行って層状複水水酸化物芯粒子を得た。このときの反応溶液のpH9.2であった。
次いで、このアルカリ性懸濁液に、Mg(NO・6HO 45.04gとNi(NO・6HO 116.1gとAl(NO・9HO 14.98gとRuCl 2.484gとを溶かした500mlのマグネシウム塩とニッケル塩とアルミニウム塩とルテニウム塩との混合溶液を加え、反応溶液のpHを10.4にし、さらに121℃で9時間熟成し、前記層状複水水酸化物芯粒子表面にトポタクティックに成長させ、層状複水水酸化物粒子を得た。なお、成長反応時に添加したマグネシウム、アルミニウム、ニッケル、ルテニウムの合計モル数は、芯粒子の生成時に添加した前記マグネシウムと前記アルミニウムとの合計モル数に対して、0.333であった。ここに得た層状複水水酸化物粒子の平均板面径は0.212μmであり、結晶子サイズD006は0.021μmであり、BETは88.1m/gであった。
【0105】
ここに得た層状複水水酸化物粒子粉末を成形して、直径3mmの球形体ビーズとした。890℃、2時間空気中にて焼成して酸化物粒子粉末とした後、880℃にて水素/アルゴン体積比が20/80のガス気流中において4時間還元処理を行い、炭化水素分解用触媒を得た。得られた触媒中のニッケルの含有量は24.93wt%(Ni/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.200(モル比))であり、金属ニッケル微粒子の大きさは4nmであった。得られた触媒中のルテニウムの含有量は1.288wt%(Ru/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.006(モル比))であり、金属ルテニウム微粒子の大きさは3nmであった。なお、金属ニッケル粒子及び金属ルテニウムは、粒子表面近傍にのみ存在するものと推定される。
【0106】
<実施例8>
MgSO・7HO 167.2gとAl(SO・8HO 43.41gとを水で溶解させ1000mlとした。別にNaOH 118.8ml(14mol/L濃度)に、NaCO 14.74gを溶解させた1000ml溶液を加えて全量2000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩とアルミニウム塩との混合溶液を加え、65℃で4時間熟成を行って層状複水水酸化物芯粒子を得た。このときの反応溶液のpH8.1であった。
次いで、このアルカリ性懸濁液に、MgSO・7HO 18.84gとNiSO・6HO 10.58gとAl(SO・8HO 4.891gとRu(NO 1.737gとを溶かした500mlのマグネシウム塩とニッケル塩とアルミニウム塩とルテニウム塩との混合溶液を加え、反応溶液のpHを9.8にし、さらに81℃で8時間熟成し、前記層状複水水酸化物芯粒子表面にトポタクティックに成長させ、層状複水水酸化物粒子を得た。なお、成長反応時に添加したマグネシウム、アルミニウム、ニッケル、ルテニウムの合計モル数は、芯粒子の生成時に添加した前記マグネシウムと前記アルミニウムとの合計モル数に対して、0.143であった。ここに得た層状複水水酸化物粒子の平均板面径は0.082μmであり、結晶子サイズD006は0.008μmであり、BETは214.3m/gであった。
【0107】
ここに得た層状複水水酸化物粒子粉末を成形して、直径3mmの球形体ビーズとした。940℃、5時間空気中にて焼成して酸化物粒子粉末とした後、960℃にて水素/アルゴン体積比が20/80のガス気流中において8時間還元処理を行い、炭化水素分解用触媒を得た。得られた触媒中のニッケルの含有量は5.425wt%(Ni/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.040(モル比))であり、金属ニッケル微粒子の大きさは2nmであった。得られた触媒中のルテニウムの含有量は1.401wt%(Ru/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.006(モル比))であり、金属ルテニウム微粒子の大きさは3nmであった。なお、金属ニッケル粒子及び金属ルテニウムは、粒子表面近傍にのみ存在するものと推定される。
【0108】
<実施例9>
MgCl・6HO 98.95gとAlCl・6HO 20.26gとを水で溶解させ1000mlとした。別にNaOH 315.6ml(14mol/L濃度)に、NaCO 14.87gを溶解させた1000ml溶液を加えて全量2000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩とアルミニウム塩との混合溶液を加え、95℃で18時間熟成を行って層状複水水酸化物芯粒子を得た。このときの反応溶液のpH12.5であった。
次いで、このアルカリ性懸濁液に、MgCl・6HO 19.19gとNiCl・6HO 90.93gとAlCl・6HO 3.931gとRuCl 5.742gとを溶かした500mlのマグネシウム塩とニッケル塩とアルミニウム塩とルテニウム塩との混合溶液を加え、反応溶液のpHを12.8にし、さらに284℃で12時間熟成し、前記層状複水水酸化物芯粒子表面にトポタクティックに成長させ、層状複水水酸化物粒子を得た。なお、成長反応時に添加したマグネシウム、アルミニウム、ニッケル、ルテニウムの合計モル数は、芯粒子の生成時に添加した前記マグネシウムと前記アルミニウムとの合計モル数に対して、0.454であった。ここに得た層状複水水酸化物粒子の平均板面径は0.398μmであり、結晶子サイズD006は0.078μmであり、BETは4.1m/gであった。
【0109】
ここに得た層状複水水酸化物粒子粉末を成形して、直径3mmの球形体ビーズとした。610℃、14時間空気中にて焼成して酸化物粒子粉末とした後、760℃にて水素/アルゴン体積比が20/80のガス気流中において7時間還元処理を行い、炭化水素分解用触媒を得た。得られた触媒中のニッケルの含有量は38.63wt%(Ni/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.326(モル比))であり、金属ニッケル微粒子の大きさは9nmであった。得られた触媒中のルテニウムの含有量は4.712wt%(Ru/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.023(モル比))であり、金属ルテニウム微粒子の大きさは10nmであった。なお、金属ニッケル粒子及び金属ルテニウムは、粒子表面近傍にのみ存在するものと推定される。
【0110】
<実施例10>
MgSO・7HO 202.6gとAl(SO・8HO 80.02gとを水で溶解させ1000mlとした。別にNaOH 228.9ml(14mol/L濃度)に、NaCO 25.39gを溶解させた1000ml溶液を加えて全量2000mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩とアルミニウム塩との混合溶液を加え、53℃で12時間熟成を行って層状複水水酸化物芯粒子を得た。このときの反応溶液のpH7.1であった。
次いで、このアルカリ性懸濁液に、MgSO・7HO 8.079gとNiSO・6HO 0.517gとAl(SO・8HO 3.188gとRuCl 0.027gとを溶かした500mlのマグネシウム塩とニッケル塩とアルミニウム塩とルテニウム塩との混合溶液を加え、反応溶液のpHを9.2にし、さらに42℃で1時間熟成し、前記層状複水水酸化物芯粒子表面にトポタクティックに成長させ、層状複水水酸化物粒子を得た。なお、成長反応時に添加したマグネシウム、アルミニウム、ニッケル、ルテニウムの合計モル数は、芯粒子の生成時に添加した前記マグネシウムと前記アルミニウムとの合計モル数に対して、0.042であった。ここに得た層状複水水酸化物粒子の平均板面径は0.051μmであり、結晶子サイズD006は0.001μmであり、BETは298.2m/gであった。
【0111】
ここに得た層状複水水酸化物粒子粉末を成形して、直径3mmの球形体ビーズとした。1100℃、13時間空気中にて焼成して酸化物粒子粉末とした後、1010℃にて水素/アルゴン体積比が20/80のガス気流中において4時間還元処理を行い、炭化水素分解用触媒を得た。得られた触媒中のニッケルの含有量は0.222wt%(Ni/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.002(モル比))であり、金属ニッケル微粒子の大きさは1nmであった。得られた触媒中のルテニウムの含有量は0.026wt%(Ru/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.0001(モル比))であり、金属ルテニウム微粒子の大きさは2nmであった。なお、金属ニッケル粒子及び金属ルテニウムは、粒子表面近傍にのみ存在するものと推定される。
【0112】
<参考例1>
MgSO・7HO 199.7gとAl(SO・8HO 78.84gとNiSO・6HO 170.5gとRuCl 3.364gとを水で溶解させ1000mlとした。別にNaOH 595.0ml(14mol/L濃度)に、NaCO 24.07gを溶解させた1000ml溶液を加えて全量1000mlのアルカリ混合溶液を用意した。
このアルカリ混合溶液に上記マグネシウム塩とアルミニウム塩との混合溶液を加え、132℃で24時間熟成を行い、触媒前駆体である層状複水水酸化物粒子粉末を得た。該層状複水水酸化物粒子粉末の板面径は0.298μmであり、結晶子サイズD006は0.041μmであり、BETは59.3m/gであった。
続いて、この粉末状触媒前駆体を直径3mmの球形体ビーズとした。850℃、24時間空気中にて焼成し、850℃にて水素/アルゴン体積比が20/80のガス気流中において5時間還元処理を行い、炭化水素分解用触媒を得た。得られた触媒中のニッケルの含有量は42.811wt%(Ni/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.360(モル比))であり、金属ニッケル微粒子の大きさは35nmであった。得られた触媒中のルテニウムの含有量は1.843wt%(Ru/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.009(モル比))であり、金属ルテニウム微粒子の大きさは18nmであった。なお、金属ニッケル粒子及び金属ルテニウムは、粒子全体に存在するものと推定される。
【0113】
<参考例2>
MgCl・6HO 138.7gとAlCl・6HO 28.40gとNiCl・6HO 54.75gとRuCl 9.761gとを水で溶解させ1000mlとした。別にNaOH 157.0ml(14mol/L濃度)に、NaCO 17.46gを溶解させた1000ml溶液を加えて全量1000mlのアルカリ混合溶液を用意した。
このアルカリ混合溶液に上記マグネシウム塩とアルミニウム塩との混合溶液を加え、72℃で18時間熟成を行い、触媒前駆体である層状複水水酸化物粒子粉末を得た。該層状複水水酸化物粒子粉末の板面径は0.068μmであり、結晶子サイズD006は0.003μmであり、BETは284.5m/gであった。
続いて、この粉末状触媒前駆体を直径3mmの球形体ビーズとした。1250℃、20時間空気中にて焼成し、1000℃にて水素/アルゴン体積比が20/80のガス気流中において10時間還元処理を行い、炭化水素分解用触媒を得た。得られた触媒中のニッケルの含有量は23.783wt%(Ni/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.196(モル比))であり、金属ニッケル微粒子の大きさは22nmであった。得られた触媒中のルテニウムの含有量は8.191wt%(Ru/(Mg+Al+Ni+Ru)=0.039(モル比))であり、金属ルテニウム微粒子の大きさは20nmであった。なお、金属ニッケル粒子及び金属ルテニウムは、粒子全体に存在するものと推定される。
【0114】
<比較例1>
α−アルミナ粉末を2.5mmの球形状ビーズとして、1150℃で10時間空気中にて焼成した。これにNi(NO・6HO 212.2gを純水に溶解させた1000mlの溶液をスプレーで塗布し、乾燥後、660℃で6時間空気中にて焼成した。さらに水素/アルゴン体積比が20/80のガス気流中において800℃で9時間還元処理を行った。得られた触媒中のニッケルの含有量は10.2wt%(Ni/(Al+Ni)=0.256)であり、金属ニッケル微粒子の大きさは48nmであった。
【0115】
<比較例2>
α−アルミナ粉末を2.5mmの球形状ビーズとして、1200℃で5時間空気中にて焼成した。これにRuCl 212.2gを純水に溶解させた1000mlの溶液をスプレーで塗布し、乾燥後、580℃で5時間空気中にて焼成した。さらに水素/アルゴン体積比が20/80のガス気流中において540℃で3時間還元処理を行った。得られた触媒中のルテニウムの含有量は9.015wt%(Ru/α−Al+Ru=0.048)であり、金属ルテニウム微粒子の大きさは15nmであった。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【0119】
表1から明らかなとおり、本発明に係る炭化水素分解用触媒を用いた場合、400℃〜1000℃の如何なる温度においてもメタン転化率はほぼ化学平衡付近である。
【0120】
表2から明らかなとおり、本発明に係る炭化水素分解用触媒を用いた場合、S/Cが1.5及び3.0の場合であってもメタン転化率はほぼ化学平衡付近と高い転化率を有しているとともに、長時間の反応においても高いメタン添加率を維持している。
【0121】
表3から明らかなとおり、本発明に係る炭化水素分解用触媒を用いた場合、メタン転化率が84%以上と高く、しかも、炭素析出量が0.2%以下と炭素の析出を抑制でき耐コーキング性に優れるものである。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、メタンを主成分とする低級炭化水素と水蒸気とを混合反応するスチーム改質において、触媒活性成分である金属ニッケル及び金属ルテニウムが従来にない微粒子の状態で炭化水素分解用触媒を構成する粒子の表面近傍又は粒子を造粒して得られる触媒成形体の表面近傍のいずれかに高分散して担持されていることにより、低温においても優れた触媒活性を有する。また、低スチーム下においても耐コーキング性に優れ、耐久性の面でも優れた触媒活性を有する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム、アルミニウム、ニッケル及びルテニウムを構成元素とする炭化水素分解用触媒であって、金属ルテニウム微粒子の平均粒子径が1〜10nmであって、金属ルテニウムの含有量が炭化水素分解用触媒に対して0.025〜5.0wt%であり、かつ、金属ルテニウムの含有量がマグネシウム、アルミニウム、ニッケル及びルテニウムの合計モル数に対して、0.0001〜0.025であることを特徴とする炭化水素分解用触媒。
【請求項2】
金属ニッケル微粒子の平均粒子径が1〜10nmであって金属ニッケルの含有量が炭化水素分解用触媒に対して0.1〜40wt%であり、かつ、金属ニッケルの含有量がマグネシウム、アルミニウム、ルテニウム及びニッケルの合計モル数に対して、0.0007〜0.342であることを特徴とする請求項1記載の炭化水素分解用触媒。
【請求項3】
金属ニッケルに対する金属ルテニウムのモル数は0.0004〜30であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭化水素分解用触媒。
【請求項4】
マグネシウム及びアルミニウムからなる層状複水水酸化物芯粒子と、該層状複水水酸化物芯粒子の表面にマグネシウム、アルミニウム、ニッケル及びルテニウムからなる層状複水水酸化物層を形成した層状複水水酸化物型粒子粉末を加熱焼成して酸化物粒子粉末を得、次いで、該酸化物粒子粉末を加熱還元して酸化物粒子粉末中のニッケル及びルテニウムを金属ニッケル微粒子及び金属ルテニウム微粒子にして得られることを特徴とする炭化水素分解用触媒の製造法。
【請求項5】
アニオンを含有したアルカリ性水溶液とマグネシウム原料とアルミニウム塩水溶液を混合し、pH値が7.0〜13.0の範囲の混合溶液とした後、該混合溶液を50℃〜300℃の温度範囲で熟成してマグネシウムとアルミニウムからなる層状複水水酸化物芯粒子を生成させ、次いで、該層状複水水酸化物芯粒子を含む水性懸濁液に、該芯粒子の生成時に添加した前記マグネシウム及び前記アルミニウムの合計モル数に対して、合計モル数が0.05〜0.5となる割合のマグネシウム、アルミニウム、ニッケル及びルテニウムを含有するマグネシウム原料、アルミニウム塩水溶液、ニッケル塩水溶液及びルテニウム塩水溶液を添加した後、pH値が9.0〜13.0の範囲、温度が40℃〜300℃の範囲で熟成して、前記芯粒子表面に層状複水水酸化物層を被覆形成させる成長反応を行った後、濾別、水洗し、得られた層状複水水酸化物粒子粉末を400℃〜1600℃の温度範囲で加熱焼成し酸化物粒子粉末を得、次いで、該酸化物粒子粉末を還元雰囲気下、700℃〜1100℃の温度範囲で加熱還元することを特徴とする炭化水素分解用触媒の製造法。
【請求項6】
低級炭化水素を主体としたガスをスチーム改質により水素を製造する方法において、請求項1乃至3のいずれかに記載の炭化水素分解用触媒、低級炭化水素ガス及びスチームを接触させることを特徴とする水素の製造方法。


【公開番号】特開2006−61759(P2006−61759A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244197(P2004−244197)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】