説明

炭化水素樹脂の水素化

【課題】触媒系の失活が著しく遅延されるところの、硫黄及び/又はハロゲン含有炭化水素樹脂の水素化のための方法を提供する。樹脂中の硫黄について更に改善された耐性を有するそのような方法を提供する。
【解決手段】本発明は、貴金属触媒の存在下に炭化水素樹脂を水素化する方法に関し、硫化物及び/又はハロゲンと反応し得る、少なくとも一つの金属酸化物の更なる存在下に、水素化がなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄不純物を含む炭化水素樹脂を水素化するための方法に関する。炭化水素樹脂は、石油流出物を含む、典型的には原油の(接触)クラッキングから生ずる炭化水素フラクション及びナフサ分解装置からの炭化水素フラクションの重合により生産され、かつ大量の不純物、例えば、硫黄化合物、窒素化合物、塩素化合物及び/又はフッ素化合物を含む傾向にある。所望の性質の樹脂を得るために、これらは通常、慣用の水素化触媒、例えば、ニッケル又は貴金属触媒を使用して水素化される。
【背景技術】
【0002】
水素化において、しばしば問題は、供給原料中の硫黄及び/又は硫黄化合物が、ニッケル触媒の寿命に負の影響を及ぼし、かつ貴金属触媒の活性に負の影響を及ぼすこと自体に存在する。この問題を回避するために、多くの注意が、水素化及び/又は脱水素化のための耐硫黄性の触媒系の開発に払われてきている。
【0003】
通常硫黄不純物は、メルカプタン又はチオフェン系化合物として供給原料中に存在する。該化合物は、硫化された水素化触媒、例えば、Co−Mo、Ni−Mo又はNi−W触媒を使用してH2Sに転化され得る。この方法はまた、水素化脱硫(HDS)として公知である。形成されたH2Sは次に、酸化亜鉛との反応により除去されることができ、又は有機物ストリッパーにおける分離及び濃縮後に、慣用のクラウス法において元素硫黄に加工され得る。
【0004】
欧州特許出願公開第398,446号公報において、好ましくは、金属酸化物粒子と水素化成分粒子との間の何らの直接接触なしに別々の成分として担体上に存在する、少なくとも一つの水素化成分及び金属酸化物成分に基いた水素化又は脱水素化触媒を使用することが提案されている。
【0005】
この触媒は、種々のイオウを含有する供給原料の水素化のために良好な基礎を提供する。しかし、炭化水素樹脂を水素化するとき触媒が未だ急速に失活する故に、特にスラリー相での樹脂水素化の分野において更なる改善が必要である。硫黄含有樹脂がモノリス(monolith)触媒上に再循環されるところの水素化プロセスの一実施態様において、触媒の失活がはなはだしく、それにより、そのようなプロセスを実行することを実際上不可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、触媒系の失活が著しく遅延されるところの、硫黄及び/又はハロゲン含有炭化水素樹脂の水素化のための方法を提供することが本発明の第一の目的である。樹脂中の硫黄について更に改善された耐性を有するそのような方法を提供することが更なる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、貴金属触媒の存在下に炭化水素樹脂を水素化することを含む、炭化水素樹脂の水素化のための方法を提供し、ここで、該水素化は、硫化物及び/又はハロゲンとの反応を可能にする、少なくとも一つの金属酸化物の更なる存在下になされる。
【0008】
本発明において、水素化は、ハロゲン及び/又は硫黄含有不純物の分解を生ずる。貴金属触媒との混合物又は別々のいずれかにおいて、金属酸化物成分の更なる存在により、該分解生成物が取除かれる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、反応速度(水素消費)を転化率の度合に対してプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好ましい実施態様において、本発明は、少なくとも二つの段階、即ち、樹脂が貴金属触媒の存在下に水素化される第一の段階、及び水素化された樹脂中の製造された硫化水素(又はハロゲン化物)が金属酸化物に基いた吸収剤に吸収される第二の段階を含む。これらの段階は同時に実行され得る。ここで、該金属酸化物成分及び貴金属成分は、反応混合物中に一緒に存在する。貴金属及び反応混合物が互いに分離された後に、吸着を実行することがまた可能である。任意的に反応混合物は、再循環される。即ち、貴金属と再度接触される。
【0011】
更に詳しくは、一段階法の実施態様として、反応混合物中に一緒にスラリー化された金属酸化物及び貴金属成分を有すること、固定床における反応器中に存在する両者の成分を有すること、又は貴金属触媒、例えば、貴金属触媒を含有する構築された触媒、例えば、モノリス触媒のベッド上にスラリー化された金属酸化物成分を有する反応混合物を再循環すること、又は金属酸化物の固定床上に、そこにスラリー化された貴金属を有する反応混合物を再循環することが可能である。
【0012】
樹脂が第一に貴金属成分上で水素化され、そして続いて、金属酸化物成分により処理される二段階法を実行することがまた可能である。これは、二つの続く反応器ベッド、好ましくは二つの続く反応器において実行され得る。ここで、まず、樹脂が貴金属触媒上で水素化され、そして続いて、ここで製造された硫化水素が第二のベッド(反応器)において吸収される。他の実施態様において、貴金属成分及び/又は金属酸化物成分が、夫々の段階において反応混合物中でスラリー化されることがまた可能である。これは、まず、貴金属が反応混合物中にスラリー化され、該金属は次いで水素化後に分離され、金属酸化物が混合物中にスラリー化され、そして吸着後に再度分離され、次いで任意的に上記のように再循環されることを意味する。
【0013】
この方法において、該系上に樹脂の一部を再循環し、それにより、汚染物の除去を増大することを可能にする。
【0014】
硫黄不純物を含む炭化水素樹脂を水素化する本発明の手段は、公知の系の更なる改善を提供することが分った。より詳しくは、この方法は、触媒失活に対する高い耐性を有することが分った。
【0015】
本発明において、種々の炭化水素樹脂供給原料が使用され得る。炭化水素樹脂の通常の定義は、ISO472に与えられており、即ち、コールタール、石油及びテレピン油供給原料からの重合により製造された生成物である。石油蒸留物、樹脂等が好ましい。これらの供給原料を直製的に使用することが可能であるが、また、上記の水素化脱硫法からの生成物、即ち、例えば、50ppm以下、好ましくは300ppm以下の範囲の減じられた硫黄含有量を有する供給原料を使用することが可能である。
【0016】
供給原料はまず、慣用の貴金属触媒上で水素化された。通常、これらは、触媒の重量に基いて計算して0.01〜5重量%の貴金属を含有する、担持された貴金属触媒である。好ましい量は、0.1〜2重量%である。使用され得る貴金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及びこれらの合金、例えば、白金‐パラジウムである。
【0017】
担体として、貴金属触媒のための適切な担体、例えば、セラミックス物質が使用され得る。例は、シリカ、アルミナ、シリカ‐アルミナ、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、粘度物質、これらの組合わせ等である。
【0018】
金属酸化物成分の金属は通常、安定な金属硫化物を与えるために硫化水素と反応されるそれらの金属から選ばれるであろう。適切な金属の例示は、引用された欧州特許出願公開第398446号公報に与えられている。例は、銀、ランタン、アンチモン、ニッケル、ビスマス、カドミウム、鉛、スズ、バナジウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、コバルト、銅、タングステン、亜鉛、モリブデン、マンガン及び鉄である。好ましい金属は、亜鉛及び鉄である。
【0019】
上記のように、本発明を実行するための種々の可能性がある。第一の実施態様において、供給原料はまず、貴金属触媒のベッド上で水素化される。水素化された供給原料は次いで、金属酸化物粒子の吸収ベッドにおいて処理される。これは、貴金属触媒のベッドと同一の反応器又は別々の反応器における第二のベッドのいずれかであり得る。触媒の回収及び再生を容易にする観点から、後者の実施態様が好ましい。
【0020】
他の実施態様によれば、金属酸化物粒子の存在下に水素化を実行することが可能である。これは、一つのベッドに金属酸化物粒子及び貴金属触媒を混合することによりなされ得る。しかし、上記の理由のためにこれは好ましくない。
【0021】
本発明は、スラリー反応器中で適切に実行されることができ、貴金属触媒は、任意的に金属酸化物成分と一緒に、水素化されるべき樹脂中にスラリー化される。
【0022】
水素化条件は、水素化されるべき樹脂のタイプに依存する。通常、より軽質の樹脂は、より苛酷ではない条件を要求する。通常、温度は、2〜250バールの水素圧力を伴って、125〜350℃であろう。
【実施例】
【0023】
二つの実験が、主にチオフェン化合物の形態における硫黄の25ppmを含む、重合された炭化水素樹脂に基いてなされた。第一の実験において、貴金属触媒(シリカ‐アルミナ球体上の0.5重量%の白金)が、23g触媒/樹脂の1kgの量で樹脂中にスラリー化された。250℃の温度で、100バールの圧力における水素が、樹脂を通してバブリングされた。添付図において、反応速度(水素消費)が、転化率の度合に対してプロットされている。
【0024】
第二の実験において、更に、酸化亜鉛粉が、樹脂の10g/kgの量において樹脂中にスラリー化された。図はまた、この実験の速度対転化率のプロットを与えている。貴金属の活性が本発明の系において非常に増大されていることが、二つのプロットの比較から明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属触媒の存在下に炭化水素樹脂を水素化する方法において、硫化物及び/又はハロゲンと反応し得る、少なくとも一つの金属酸化物の更なる存在下に、水素化がなされるところの方法。
【請求項2】
貴金属触媒が担持された触媒であり、担体が好ましくは、シリカ、アルミナ、シリカ‐アルミナ、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、粘度物質及びこれらの組合わせから選ばれるところの請求項1記載の方法。
【請求項3】
触媒の貴金属含有量が、触媒の重量に基いて計算して0.0001〜5重量%であるところの請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
貴金属が、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、並びに白金‐パラジウム及び上記金属から成る他の合金から選ばれるところの請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
金属酸化物が、銀、ランタン、アンチモン、ニッケル、ビスマス、カドミウム、鉛、スズ、バナジウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、コバルト、銅、タングステン、亜鉛、モリブデン、マンガン及び鉄の酸化物より成る群から選ばれるところの請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
金属酸化物が、亜鉛又は鉄の酸化物であるところの請求項5記載の方法。
【請求項7】
水素化が、貴金属触媒の固定床及び炭化水素樹脂中の分散された金属酸化物を含むループ反応器中で実行され、該分散物が、該触媒床を通して再循環されるところの請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
固定床が、モノリス又は他の構築された反応器要素であるところの請求項7記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−82432(P2012−82432A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−264580(P2011−264580)
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【分割の表示】特願2001−535417(P2001−535417)の分割
【原出願日】平成12年11月1日(2000.11.1)
【出願人】(500586141)ビーエーエスエフ コーポレーション (12)
【Fターム(参考)】