説明

炭化水素質組成物における腐食および微生物の制御の改善

炭化水素質組成物(例えば石油または液体燃料)において用いるための式(I):


(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は本明細書で定義する通りである)の添加剤を提供する。該添加剤は組成物の腐食耐性を改善する。該添加剤はまた、このような組成物中に含有される任意の添加殺生剤の耐微生物効果を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行出願の相互参照
本件は米国仮出願第61/053,412号(2008年5月15日出願)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、炭化水素質組成物用の添加剤に関する。より詳細には、本発明は、炭化水素質組成物,例えば石油および燃料の腐食特性および微生物耐性を改善するアミノアルコール添加剤に関する。該アミノアルコール添加剤はまた、典型的にはこのような組成物において使用される殺生物剤の効果を向上させる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
炭化水素質組成物,例えば石油(原油)及び燃料は、殆ど常に水分を含有する。追加の水がタンク内に雰囲気水分凝縮物として蓄積する可能性がある。水分は、ディーゼルタンク内で、例えば露出するタンク表面上の凝縮物液滴として、燃料内の溶解した水として、および燃料の下の水底部として、蓄積する。石油と同様に、水は凝縮してパイプラインに蓄積する可能性がある。アルコール/燃料混合物,例えば「ガソホール」は、アルコール不含有石油系燃料よりも高濃度の水を吸収および保持する傾向がある。加えて、より最近では、水は環境的な利点のために燃料中に意図的に組み込まれ始めている。内燃エンジン,特にディーゼルエンジン(水燃料エマルションを用いるもの)は、酸化窒素、炭化水素および粒状排出物をより低くできることが見出されている。乗用物からの排出の低減は、政府のおよび環境的な懸案事項によって動かされており、よって水性炭化水素燃料エマルションの使用を増大させることが期待されている。
【0004】
しかし、炭化水素質組成物中の水の存在(意図的な導入(例えば乳化燃料)を通じて、または凝縮を通じて(例えば、貯蔵容器または輸送容器の中で)のいずれかで)は問題を招く。微生物は生存のため水に依存し、炭化水素質組成物中の水は、微生物のコンタミネーションの原因となる可能性があるからである。微生物は、栄養摂取および生育のためにこれらの組成物中の有機分子に依存する。従って、幾つかの種が組成物を直接攻撃し、炭化水素および非炭化水素の成分を消費して生育する。
【0005】
燃料の生分解(微生物の生育に支持される)は、燃料のコンタミネーションの直接の原因である。色、燃焼熱、流動点、曇点、熱安定性、洗浄および耐食の特性は、微生物が燃料成分を選択的に攻撃するに従って負に変化する。バクテリアおよび菌類が繁殖するに従っての添加剤および燃料の性能の損失に加え、これらはバイオマスを形成し、これはタンク表面上およびフィルター上の燃料:水界面に蓄積する。原油の場合、微生物学的に影響される腐食は、硫酸塩還元菌(SRB)の活性および生育の結果としてパイプラインにおいて生じる可能性がある。
【0006】
腐食の問題はまた、炭化水素質組成物中の水および酸の存在によって影響される可能性がある。特にバイオディーゼル燃料は遊離脂肪酸を含有し、そして石油由来燃料は典型的には残留ナフテン酸および硫黄を含有し、これらは燃焼中に水蒸気と反応して硫酸を形成する可能性がある。硫黄および酸の燃料からの除去は可能であるが、これは燃料製造者に追加のプロセスコストを発生させる。加えて、リン酸およびカルボン酸を基にする潤滑剤は幾つかの燃料(例えば燃料エマルション)に意図的に添加して性能を改善する。原油において、微生物学的に影響される腐食に加え、溶解している二酸化炭素(炭酸)および/または硫化水素の存在もまた、腐食の問題を招来する。
【0007】
上記に鑑み、当該分野において、炭化水素質組成物における腐食および/または微生物の生育の制限を助ける添加剤の要求が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の簡単な要約
本発明は:炭化水素質組成物;および腐食防止量の式(I):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1、R2、R3、R4およびR5は以下で定義する通りである)
のアミノアルコール;を含むブレンド物を提供する。
【0011】
本発明はまた、炭化水素質組成物、式(I)のアミノアルコール、および殺生剤を含むブレンド物を提供する。
【0012】
本発明は更に、バイオディーゼル燃料に微生物耐性を付与する方法に関する。該方法は、バイオディーゼル燃料に有効量の式Iのアミノアルコールを含有させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、ディーゼル燃料におけるPs.Aeruginosaに対する、殺生剤(135ppm濃度で)を伴う種々のアミノアルコール化合物の1500ppm濃度での効果を比較する図である。
【図2】図2は、ディーゼル燃料におけるPs.Aeruginosaに対する、殺生剤(135ppm濃度で)を伴う種々のアミノアルコール化合物の3000ppm濃度での効果を比較する図である。
【図3】図3は、ディーゼル燃料におけるY.Tropicalisに対する、殺生剤(135ppm濃度で)を伴う種々のアミノアルコール化合物の1500ppm濃度での効果を比較する図である。
【図4】図4は、ディーゼル燃料におけるY.Tropicalisに対する、殺生剤(135ppm濃度で)を伴う種々のアミノアルコール化合物の3000ppm濃度での効果を比較する図である。
【図5】図5は、ディーゼル燃料におけるH.Resinaeに対する、殺生剤(135ppm濃度で)を伴う種々のアミノアルコール化合物の1500ppm濃度での効果を比較する図である。
【図6】図6は、ディーゼル燃料におけるH.Resinaeに対する、殺生剤(135ppm濃度で)を伴う種々のアミノアルコール化合物の3000ppm濃度での効果を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
一側面において、本発明は、炭化水素質組成物用のアミノアルコール添加剤を提供する。「炭化水素質組成物」は、石油(原油)、または液体燃料(例えばガソリン、ディーゼル、バイオディーゼル、ディーゼル/バイオディーゼルブレンド物、水−燃料エマルション、エタノール系燃料、およびエーテル系燃料)を意味する。好ましい燃料としては、高レベルの酸成分を含有するもの,例えばバイオディーゼルが挙げられる。
【0015】
添加剤は、炭化水素質組成物と接触する系(例えば貯蔵タンク、パイプラインおよびエンジン)の腐食を防止する。改善される耐腐食性は、1つには、組成物のpHを制御するというアミノアルコールの能力によると考えられる。
【0016】
本発明の添加剤は、式(I):
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、
1およびR3は、各々独立にH、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、もしくはアリール(好ましくはフェニル)であり、またはR1、R3およびこれらが付いている炭素がシクロアルキル環を形成し;
2およびR4は、各々独立にH、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アリール、アリール−アルキルであり、またはR2、R4およびこれらが付いている炭素がシクロアルキル環を形成し、但しR2およびR4が共に3個以上の炭素原子を含有することを条件とし;そして
5は、不存在またはC1〜C10アルキレン(架橋アルキル)、アリーレン(好ましくはフェニル)、−アリーレン−アルキレン−、または−アルキレン−アリーレン−(例えば、ベンジル、フェネチル等)であり;
ここでR1、R3およびR5のアルキル基、シクロアルキル基、アルキレン基、アリール基、およびアリーレン基は任意にアルキルまたはフェニルで置換されている。)
の1級アミノアルコール化合物である。アミノアルコールは、式(I)の化合物の2種以上の混合物の形であることができる。
【0019】
式Iの好ましいアミノアルコールとしては、式I−1の化合物(式Iの化合物であってR1がHであるもの)が挙げられる。
【0020】
式IおよびI−1の好ましいアミノアルコールとしては、式I−2の化合物(式IまたはI−1の化合物であってR2がHまたは直鎖アルキルであるもの)が挙げられる。
【0021】
式I、I−1およびI−2の好ましいアミノアルコールとしてはまた、式I−3の化合物(式I、I−1またはI−2の化合物であってR3が水素であり、そしてR4が直鎖アルキルであるもの)が挙げられる。
【0022】
式I、I−1、I−2およびI−3の好ましいアミノアルコールとしては更に、式I−4の化合物(式I、I−1、I−2またはI−3の化合物であってR5が結合であるかまたはメチレンもしくはエチレンの架橋であるもの)が挙げられる。
【0023】
式Iの更に好ましいアミノアルコールとしては、式(II):
【0024】
【化3】

【0025】
(式中、R2およびR4は、各々独立にH,直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アリール、アリール−アルキルであり、またはR2、R4およびこれらが付いている炭素がシクロアルキル環を形成し、そしてR2およびR4が共に3個以上の炭素原子を含有することを条件とする。)
の化合物が挙げられる。
【0026】
式(II)の好ましいアミノアルコールとしては、式(II−1)の化合物が挙げられ、これらは、式(II)の化合物であってR2およびR4が共に全部で11個以下の炭素原子を含有するものである。
【0027】
式(II)および式(II−1)の好ましいアミノアルコールとしては、式(II−2)の化合物が挙げられ、これらは式(II)または(II−1)の化合物であってR2およびR4が各々独立に直鎖アルキルであるものである。
【0028】
式(II)および式(II−1)の好ましいアミノアルコールとしては、式(II−3)の化合物も挙げられ、これらは、式(II)または(II−1)の化合物であってR2およびR4の一方がH、他方が直鎖アルキルであるものである。
【0029】
式(II)および式(II−1)の好ましいアミノアルコールとしては、式(II−4)の化合物が挙げられ、これらは、式(II)または(II−1)の化合物であってR2およびR4ならびにこれらが付いている炭素が共にシクロアルキル環を形成するものである。
【0030】
式(II)および式(II−1)の好ましいアミノアルコールとしては、式(II−5)の化合物が挙げられ、これらは、式(II)または(II−1)の化合物であってR2およびR4の一方がCH3、そして他方がアリール,好ましくはフェニルであるものである。
【0031】
本発明において使用するために好ましい1級アミノアルコールとしては、これらに限定するものではないが:2−アミノ−2−メチル−1−ヘキサノール、2−アミノ−2−エチル−1−ペンタノール、2−アミノ−2−メチル−1−ヘプタノール、2−アミノ−2−エチル−1−ヘキサノール、2−アミノ−2−プロピル−1−ペンタノール、2−アミノ−2−メチル−1−オクタノール、2−アミノ−2−エチル−1−ヘプタノール、2−アミノ−2−プロピル−1−ヘキサノール、2−アミノ−2−メチル−1−ノナノール、2−アミノ−2−エチル−1−オクタノール、2−アミノ−2−プロピル−1−ヘプタノール、2−アミノ−2−ブチル−1−ヘキサノール、2−アミノ−2−メチル−1−デカノール、2−アミノ−2−エチル−1−ノナノール、2−アミノ−2−プロピル−1−オクタノール、2−アミノ−2−ブチル−1−ヘプタノール、2−アミノ−2−メチル−1−ウンデカノール、2−アミノ−2−エチル−1−デカノール、2−アミノ−2−プロピル−1−ノナノール、2−アミノ−2−ブチル−1−オクタノール、2−アミノ−2−ペンチル−1−ヘプタノール、2−アミノ−2−メチル−1−ドデカノール、2−アミノ−2−エチル−1−ウンデカノール、2−アミノ−2−プロピル−1−デカノール、2−アミノ−2−ブチル−1−ノナノール、2−アミノ−2−ペンチル−1−オクタノール、(1−アミノシクロペンチル)メタノール、(1−アミノシクロヘキシル)メタノール、(1−アミノシクロヘプチル)メタノール、(1−アミノシクロオクチル)メタノール、(1−アミノシクロノニル)メタノール、(1−アミノシクロデシル)メタノール、(1−アミノシクロウンデシル)メタノール、(1−アミノシクロドデシル)メタノール、2−アミノ−2−フェニル−1−エタノール、2−アミノ−2−フェニル−1−プロパノール、2−アミノ−2−フェニル−1−ブタノール、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0032】
特に好ましいアミノアルコールとしては:2−アミノ−2−メチル−1−ヘキサノール、2−アミノ−2−エチル−1−ペンタノール、2−アミノ−2−メチル−1−オクタノール、2−アミノ−2−エチル−1−ヘプタノール、2−アミノ−2−プロピル−1−ヘキサノール、(1−アミノシクロヘキシル)メタノール、(1−アミノシクロオクチル)メタノール、2−アミノ−2−フェニル−1−プロパノール、(1−アミノシクロペンチル)メタノール、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0033】
アミノアルコール化合物は、当業者によって当該分野で周知の技術を用いて容易に調製できる。例えば、このような化合物は、ニトロアルカンと脂肪族もしくは芳香族のアルデヒドもしくはケトン、またはより好ましくはホルムアルデヒドとの反応、続いて接触水素化によって調製できる。
【0034】
アミノアルコールは、酸塩の形で使用できる。好適な塩としては、これらに限定するものではないが、ホウ酸、乳酸、ペラルゴン酸、ノナン酸、ネオデカン酸、セバシン酸、アゼライン酸、クエン酸、安息香酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、トール油脂肪酸、エチレンジアミンテトラ酢酸等の物質が挙げられる。他の塩の例としては、直鎖、分岐、環状、不飽和または芳香族のモノ−またはポリ−カルボン酸であって1〜24個の炭素を有するものが挙げられ、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、リンゴ酸、マレイン酸、安息香酸、クエン酸、乳酸、2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、セバシン酸、ミリスチン酸、アゼライン酸、トール油脂肪酸、ダイマー酸、エチレンジアミンテトラ酢酸等の物質が挙げられる。
【0035】
アミノアルコールは、一般的に、炭化水素質組成物中で、腐食安定性を与えること、および/または微生物耐性を増大させること(後者の場合においては、バイオディーゼルとともに使用する場合)、に十分な濃度で使用する。これらの有利な効果を与えるために必要な量は当業者によって容易に決定できる。例として、約0.001〜5質量パーセントが一般的に好ましく、より好ましくは約0.001〜2質量パーセント(組成物の総質量基準)を用いる。
【0036】
アミノアルコールはまた、他の1級、2級および3級のアミノアルコール、更に他の腐食防止剤との組合せで使用できる。炭化水素質組成物は他の任意の添加剤を含有できる。例えば、組成物が燃料である場合、典型的な添加剤としては、限定しないが、潤滑剤、セタンエンハンサー、燃焼促進剤、酸化防止剤/熱安定剤、および/または洗剤/沈殿制御添加剤が挙げられる。
【0037】
上記の改善された腐食安定性および微生物耐性に加え、式Iの1級アミノアルコールが炭化水素質組成物中の殺生剤の活性を相乗的に向上させることを見出した。アミノアルコールと殺生剤との組合せは、従って、より効果的でより長持続の微生物制御を、殺生剤を単独で用いた場合に予測されるものよりも低減された殺生剤濃度で与える。
【0038】
よって、第2の側面に従い、本発明は、炭化水素質組成物、式Iのアミノアルコール、および殺生剤を含むブレンド物を提供する。本発明のこの側面は、上述のように殆どの石油および燃料の特徴(水の添加が意図的(例えば燃料エマルション)であってもそうでなくても)である水を含有する組成物に対して、特に応用可能である。このような組成物は、典型的には、少なくとも0.01質量%、および約50質量%以下の水を含有する。
【0039】
本発明のこの第2の側面のための好ましい炭化水素質組成物としては、石油および液体燃料が挙げられる。好ましい液体燃料としては、ガソリン、ディーゼル、バイオディーゼル、ディーゼル/バイオディーゼルブレンド物、水−燃料エマルション、エタノール系燃料、およびエーテル系燃料が挙げられる。この側面のために特に好ましい燃料はディーゼル燃料である。例によって示すように、式Iのアミノアルコールは、自身ではディーゼル燃料において非殺生物性であり、よってこれらがディーゼルにおける殺生剤化合物の効果を相乗的に向上できるという発見は驚くべきものである。
【0040】
炭化水素質組成物と相溶性である任意の殺生剤を本発明において使用できる。好ましい殺生剤としては:トリアジン,例えば1,3,5−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンおよびトリメチル−1,3,5−トリアジン−1,3,5−トリエタノール,例は、GROTAN(Troy Corporationより)である、ヨードプロピニルブチルカルバメート,例えばPOLYPHASE(Troy Corporationにより供給)、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン,例えばBIOBAN BIT(The Dow Chemical Companyにより販売)、4,4−ジメチルオキサゾリジン,例はBIOBAN CS−1135(The Dow Chemical Companyより)、7−エチルビシクロオキサゾリジン,BIOBAN CS−1246としてThe Dow Chemical Co.により販売、4−(2−ニトロブチル)−モルホリンと4,4’−(2−エチル−2−ニトロトリメチレン)ジモルホリンとの組合せ(FUELSAVERとしてThe Dow Chemical Co.により販売)、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリイン−3−オンとの組合せ,例えばKATHONブランド(Rohm&Haas Corporationにより供給)、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロ−オクチルイソチアゾリノン、ジブロモ−オクチルイソチアゾリノン、フェノール物,例えばo−フェニルフェノールおよびp−クロロ−m−クレゾールならびにこれらの対応するナトリウム塩および/またはカリウム塩、ナトリウムピリチオン、ジンクピリチオン、n−ブチルベンズイソチアゾリノン、1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタンクロリド、クロロタロニル、カルベンダジム、ジヨードメチルトリルスルホン、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、グルタルアルデヒド、N,N’−メチレン−ビス−モルホリン、エチレンジオキシメタノール(例えばTroyshield B7)、フェノキシエタノール(例えばComtram 121)、テトラメチロールアセチレンジウレア(例えばProtectol TD)、ジチオカルバメート、2,6−ジメチル−m−ジオキサン−4−オールアセテート(例えばBioban DXN)、ジメチロール−ジメチル−ヒダントイン、トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン、二環式オキサゾリジン(例えばNuospet 95)、(チオシアノメチルチオ)−ベンゾチアゾール(TCMTB)、メチレンビス(チオシアネート)(MBT)、置換ジオキサボリナン,例えばBIOBOR JF(Hammonds Fuel Additivesより)、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムスルフェート(THPS),例えばAQUCAR THPS 75(The Dow Chemical Companyより)、4級アンモニウム化合物,例えばアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド(ADBAC)、ココジアミン、ダゾメット,例えばProtectol DZ(BASFより)、ならびにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0041】
更に好ましい殺生剤(特に炭化水素質組成物が液体燃料である場合)は、4−(2−ニトロブチル)−モルホリンと4,4’−(2−エチル−2−ニトロトリメチレン)ジモルホリンとの組合せ(FUELSAVER(The Dow Chemical Companyより))、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの組合せ(CMIT/MIT)、(チオシアノメチルチオ)−ベンゾチアゾール(TCMTB)とメチレンビス(チオシアネート(MBT)との組合せ、置換ジオキサボリナン、オキサゾリジン,例えば4,4−ジメチルオキサゾリジンおよび7−エチルビシクロオキサゾリジン、およびこれらの2種以上の混合物である。
【0042】
石油用の更に好ましい殺生剤としては、グルタルアルデヒド、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、イソチアゾリノン,例えばBITおよびCMIT/MIT、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムスルフェート(THPS)、オキサゾリジン,例えば4,4−ジメチルオキサゾリジンおよび7−エチルビシクロオキサゾリジン、4級アンモニウム化合物,例えばアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド(ADBAC)、ココジアミン、ダゾメット、ならびにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0043】
本発明において、殺生剤(または殺生剤の組合せ)は、好ましくはブレンド物中に濃度約0.001〜2質量パーセント(ブレンド物の総質量基準)で存在する。しかし、コストを低減し、そして環境への負の影響の可能性を最低限にするために、低濃度の殺生剤を用いることが好ましい。事実、本発明の利点の1つは、殺生剤の効果を向上させることによって、本明細書で記載するアミノアルコールが、アミノアルコールなしで実現できるよりも少ない殺生剤の使用を可能にすることである。
【0044】
ブレンド物中の殺生剤に対する式Iのアミノアルコールの濃度は、臨界的ではないが、幾つかの好ましい態様においてアミノアルコール 対 殺生剤の質量比約5000:1〜約1:2に対応する。更に好ましい態様において、アミノアルコール 対 殺生剤の質量比は、約100:1〜1:2である。更に好ましい態様において、該質量比は約60:1〜1:1である。
【0045】
本発明に係る好ましい燃料ブレンド物は:
(a)液体燃料;
(b)上記で定義した式(I)のアミノアルコール;ならびに
(c)(i)4−(2−ニトロブチル)−モルホリンと4,4’−(2−エチル−2−ニトロトリメチレン)ジモルホリンとのブレンド物(FUELSAVER,The Dow Chemical Companyより);
(ii)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとのブレンド物;
(iii)(チオシアノメチルチオ)−ベンゾチアゾール(TCMTB)とメチレンビス(チオシアネート(MBT)とのブレンド物;
(iv)置換ジオキサボリナン;および
(v)オキサゾリジン;
からなる群から選択される殺生剤;
を含む。
【0046】
この態様において、アミノアルコール 対 殺生剤(i)の質量比は、好ましくは約30:1〜1:1、より好ましくは約25:1〜1.5:1である。更に、アミノアルコール 対 殺生剤(ii)の質量比は、好ましくは約70:1〜3:1である。
【0047】
本発明に係るより好ましい燃料ブレンド物は:
(a)液体燃料;
(b)上記で定義した式IIのアミノアルコール;ならびに
(c)(i)4−(2−ニトロブチル)−モルホリンと4,4’−(2−エチル−2−ニトロトリメチレン)ジモルホリンとのブレンド物;
(ii)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとのブレンド物;
(iii)(チオシアノメチルチオ)−ベンゾチアゾールとメチレンビス(チオシアネートとのブレンド物;
(iv)置換ジオキサボリナン;および
(v)オキサゾリジン;
からなる群から選択される殺生剤;
を含む。
【0048】
この態様において、アミノアルコール 対 殺生剤(i)の質量比は、好ましくは約30:1〜1:1、より好ましくは約25:1〜1.5:1である。更に、アミノアルコール 対 殺生剤(ii)の質量比は、好ましくは約70:1〜3:1である。
【0049】
本発明に係る好ましい石油系ブレンド物は:
(a)石油;
(b)上記で定義した式(I)のアミノアルコール;ならびに
(c)グルタルアルデヒド、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムスルフェート(THPS)、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、イソチアゾリノン化合物、4級アンモニウム化合物、ココジアミン;およびダゾメットからなる群から選択される殺生剤;
を含む。
【0050】
本発明に係るより好ましい石油ブレンド物は:
(a)石油;
(b)上記で定義した式(II)のアミノアルコール;ならびに
(c)グルタルアルデヒド、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムスルフェート(THPS)、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、イソチアゾリノン化合物、4級アンモニウム化合物、ココジアミン;およびダゾメットからなる群から選択される殺生剤;
を含む。
【0051】
本明細書で用いる「アルキル」は、1〜8個の炭素原子、より好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖の脂肪族基を網羅する。好ましいアルキル基としては、限定しないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、およびウンデシルが挙げられる。
【0052】
本明細書で用いる用語「アルケニル」は、1つ以上の炭素−炭素二重結合を有し、2〜8個の炭素原子、および好ましくは2〜6個の炭素原子を有する不飽和の直鎖または分岐鎖の脂肪族基を意味する。好ましいアルケニル基としては、限定しないが、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニルが挙げられる。
【0053】
本明細書で用いる用語「アルキニル」は、1つ以上の炭素−炭素三重結合を有し、2〜8個の炭素原子、および好ましくは2〜6個の炭素原子を有する不飽和の直鎖または分岐鎖の脂肪族基を意味する。好ましいアルキニル基としては、限定しないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルおよびヘキシニルが挙げられる。
【0054】
「アルキレン」基は、上記で定義したアルキルが2つの他の化学基の間に位置してこれらを接続させるものである。好ましいアルキレン基としては、限定しないが、メチレン、エチレン、プロピレン、およびブチレンが挙げられる。
【0055】
本明細書で用いる用語「シクロアルキル」としては、飽和および部分不飽和の、3〜12個の炭素、好ましくは3〜8個の炭素を有する環状炭化水素基が挙げられる。好ましいシクロアルキル基としては、限定しないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。
【0056】
「アリール」基は、1〜3個の芳香環を含むC6〜C12芳香族部分である。好ましくは、アリール基は、C6〜C10アリール基である。好ましいアリール基としては、限定しないが、フェニル、ナフチル、アントラセニル、およびフルオレニルが挙げられる。より好ましくはフェニルである。
【0057】
アルキル、シクロアルキル、およびアリール(ならびにこれらの架橋誘導体アルキレン、シクロアルキレン、およびアリーレン)は、任意に、1つ以上の他のアルキル(例えばメチル、エチル、ブチル)、フェニル、または両者で置換されている。
【0058】
特記がない場合、本明細書で用いる比、パーセント、部等は質量基準である。
【0059】
以下の例は本発明の例示であるがその範囲の限定を意図しない。
【0060】

例1:1−アミノシクロヘキシルメタノール(ACyHM)の調製
2リットルの三口フラスコ(マグネチックスターラー、窒素雰囲気生成装置、熱電対制御加熱マントルおよび添加漏斗を備える)にニトロシクロヘキサン(521g,4.04mol)を入れる。トリエチルアミン触媒(10.0mL)を添加し、そして黄色混合物を、加熱マントルを用いて55℃まで加温する。添加漏斗を介して、水性ホルムアルデヒド(37wt%,330mL,4.4mol)を90分間に亘って滴下添加する。反応は極めて穏やかに発熱し、添加中に60℃まで加温される。全てのホルムアルデヒドを添加した後、反応混合物を60℃で更に2時間保持し、分液漏斗に注ぎ入れ、そして1晩冷却/相分離させる。下部のオレンジ色の生成物層を回収(750.8g,溶解した水を含有する)し、そしてGC分析は、96.9%の純度を、約1.7%のニトロシクロヘキサンおよび1.4%のトリエチルアミンとともに示す。生成物は、更なる精製を伴わずに使用する。
【0061】
1−ニトロシクロヘキシルメタノールの1−アミノシクロヘキシルメタノールへの接触水素化。2リットルのParrオートクレーブにメタノール(310mL)およびラネーニッケル触媒(R−3111,43.7g 湿潤質量)を入れる。反応器をシールし、窒素でパージし、続いて水素でパージし、次いで65℃まで500psi水素圧下で上げる。急速撹拌しながら、1−ニトロシクロヘキシルメタノールの溶液(4.04molの活性成分を含有する約105gの水)(メタノール(800mL総溶液)中)を、65℃/500psi水素に維持しながら3時間に亘って添加する。添加が完了したら、反応を更に20分間継続させ、次いで室温まで冷却する。オートクレーブを通気し、開放して粗生成物を減圧ろ過にて単離する。メタノール溶媒をロータリーエバポレータ上で50℃/29”減圧にて除去する。揮散した粗生成物の収量は755.6g(まだ水を含有)である。これは、ステンレススチールメッシュを充填した分留塔を通って減圧蒸留され、85〜86℃/15torrで沸騰している生成物を回収する。GC分析は、水ホワイトオイルの>97%の純度を示す。オイルは、静置でゆっくり結晶化する。最終収率88%(459g)の精製生成物を得る。
【0062】
例2:2−アミノ−2−メチル−1−オクタノール、2−アミノ−2−エチル−1−ヘプタノール、および2−アミノ−2−プロピル−1−ヘキサノール(総称して「AoctM」)の混合物の調製。
上記手順を用いて、2−アミノ−2−メチル−1−オクタノール、2−アミノ−2−エチル−1−ヘプタノール、および2−アミノ−2−プロピル−1−ヘキサノールの混合物を、2−ニトロオクタン、3−ニトロオクタンおよび4−ニトロオクタンの混合物から調製する。アミノアルコールのこの混合物を試験で用いる。
【0063】
例3〜26:腐食試験
例3〜26は、燃料と接触する金属の腐食に対する本発明のアミノアルコールの効果を示す。
【0064】
軟炭素鋼(MCS)、低炭素細粒鋼(LCFGS)および鋳鉄(CI)の試験片(Metaspec Coより)を用いる。各試験片は1”x2”x1/8”と測定される。ディーゼル燃料中またはバイオディーゼル燃料中の全浸漬の前に、全ての試験片をアセトンで清浄にする。各試験片を試験前に計量し、そして試験および清浄化の後に再び計量する。燃料および水を4オンス広口フリントガラス瓶に入れ、そして1つの試験片を各瓶の中の燃料中に完全に浸す。試験系は、80%燃料および20%脱イオン水(質量基準)からなる。試験サンプルについて、アミノアルコールを0.427%で燃料+水の総質量に(56gの燃料+14gのDI水+0.3gのアミノアルコール)添加する。サンプルを50℃で機械対流オーブン(mechanical convection oven)内で加熱する。試験片を各週に目視で検査し、そして燃料の色を記録する。瓶を撹拌して水を分散させ、回して燃料中の試験片を見る;毎週の撹拌は周期的な燃料の添加および貯蔵タンクからの取出しによる撹拌を模擬する。試験の間瓶は閉じたままにする。試験後、試験片を再計量し、そして腐食を目視で評価する。本発明のアミノアルコールの結果を表1〜2に示す。
【0065】
表1〜2で分かるように、本発明のアミノアルコールは、ディーゼル燃料/水混合物と接触して試験される全ての金属について質量損失を低減する。加えて、目視の腐食は全ての金属で排除されている。バイオディーゼル燃料について、質量損失の低減は観察されないが、腐食の目視での低減が鋳鉄でのAOctMについて観察される。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
微生物耐性の例
以下の例は、殺生剤有りおよび無しでの燃料の微生物耐性に対するアミノアルコールの効果を示す。
【0069】
材料
バクテリア:Pseudomonas aeruginosa ATCC#33988,酵母:Yarrowia tropicalis ATCC#48138,およびカビ:Hormoconis resinae ATCC#20495,をBushnell−Haas培養液中で継代培養し、そして混合接種材料に用いる。混合接種材料中の有機体濃度は以下の通りである:Ps.aeruginosa−5.2x108cfu/mL;Y.tropicalis−4.6x107cfu/mL;H.resinae−4.2x107cfu/mL。これらのバクテリアは、燃料の微生物試験で一般的に用いられる有機体である。
【0070】
ディーゼル燃料.2007 Certification Diesel,Batch# WA1421LT10を、Haltermann Products(The Dow Chemical Companyの子会社である),Channelview,Texas.から得る。製品番号:HF 0582。
【0071】
バイオディーゼル燃料.これらの例のためのバイオディーゼルは、Stepan Company(Northfield, IL)からSB−Wとして得る。
【0072】
殺生剤.この評価のために選択する殺生剤は、FUELSAVERTM(”FS”)(The Dow Chemical Companyより)であり、これは4−(2−ニトロブチル)−モルホリンと4,4’−(2−エチル−2−ニトロトリメチレン)ジモルホリンとの組合せである。
【0073】
殺生剤FUELSAVERTM.135および1000ppm。
【0074】
試験するアミノアルコール.2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)(比較例)、ACyHM(例A)、およびAOctM(例B)、トリエタノールアミン(TEA)(比較例)。
【0075】
試験するアミノアルコール塩.AOctMおよびオレイン酸の塩、AOctMおよび酢酸の塩、TEAおよびオレイン酸の塩(比較例)。液体アミノアルコールおよび液体カルボン酸の塩は、各々の等モル量を計量し、そしてこれらを均一になるまでよく混合することによって調製する。アミノアルコールおよび/またはカルボン酸(固体であるもの)について、塩は、等モル量をメタノール中で均一になるまで混合し、次いで溶媒を取り除くことによって調製する。
【0076】
オレイン酸およびオレイン酸カリウム.オレイン酸はAldrichから得る。オレイン酸カリウムは、オレイン酸と水酸化カリウムとから、上記のアミノアルコール塩と同じ様式で調製する。
【0077】
アミノアルコール量.アミノアルコールは、ディーゼルおよびバイオディーゼルにおいて殺生剤有りおよび無しで、以下の量の1つ以上で評価する:100,500,1500および3000ppm。
【0078】
アミノアルコール塩、オレイン酸およびオレイン酸カリウムの量.アミノアルコール塩、オレイン酸、およびオレイン酸カリウムは、バイオディーゼル中で以下の量の1つ以上で評価する:100,500,および1500ppm。
【0079】
微生物試験手順
試験は、ベークライトねじ蓋付きのガラス瓶中で、最低でも4週間実施する。各々の燃料サンプルについて、アミノアルコール、次いで殺生剤(存在する場合)を所望量で130mLのディーゼル燃料に5分間撹拌しながら添加する。Bushnell−Haas培養液(24mL)を水相としてディーゼル燃料の下に添加する。1mLの混合接種材料を添加する。瓶を5回上下にひっくり返すことによってサンプルを毎週混合する。0日として挙げる有機体のカウントは、水底部と燃料とを混合した後に水底部で検出される初期有機体数を表す。
【0080】
微生物生存は、プレートカウント法を用いて測定する。トリプシン大豆寒天をPseudomonas aeruginosaに用い、そしてサブローデキストロース寒天(0.5μg/mlゲンタマイシンとともに)をYarrowia tropicalisに用い、そして微生物学用グレード寒天1.5%(0.01%テルル酸カリウムとともに)をHormoconis resinaeに用いる。バクテリアは37℃で48時間、および菌類は25℃で5〜7日間、インキュベートする。
【0081】
ディーゼル燃料中のアミノアルコールの評価から収集されるデータを、表3〜13および図1〜6によって示す。備考:プロットしたグラフは、135ppmのFUELSAVERで実現される向上を示す。ここで、<10有機体カウントが観察され、「9」はグラフの目的に用いる。データから分かるように、ディーゼル燃料において、いずれのアミノアルコールも、燃料の微生物耐性を自身で増大させることはできない。しかし、相乗効果が本発明のアミノアルコールと殺生剤との間で観察される。相乗効果は、低量の殺生剤で最も明白である。高量では、殺生剤自身が試験時間の間に亘って本質的に完全に有効であるからである。
【0082】
バイオディーゼル燃料中の本発明のアミノアルコールの評価から収集されるデータを表14〜17によって示す。データから分かるように、バイオディーゼル中のアミノアルコールの存在は、バイオディーゼルの微生物耐性を殺生剤不存在下でも向上させる。
【0083】
バイオディーゼル燃料中の本発明の実施されるアミノアルコール塩の評価(殺生剤不存在下)から収集されるデータを表15〜17によって示す。分かるように、AOctM自身のように、AOctMとオレイン酸との実施される塩の添加は、バイオディーゼルの微生物耐性を殺生剤不存在下でも顕著に向上させる。AOctMと酢酸との塩はそれほど有効ではないが、バクテリアに対する幾らかかの抑制がより高量で実現される。AOctM(AOctMオレエートとともに)、オレイン酸、およびオレイン酸カリウムの比較は、本発明のアミノアルコールの所定の塩が、アミノアルコール自体よりも有効であることを示す。例えば、1500ppmでのAOctMオレエートは、約36質量%のAOctM(540ppm)を含有し、そして12週間完全に抑制性である。しかし、500ppmでのAOctMは、2〜4週間の抑制効果を示すに過ぎず、その後衰える。オレイン酸およびオレイン酸カリウムはこれらのレベルでは効果を有さず、AOctMオレエートがAOctMと比べてより有効であると考えられる。
【0084】
【表3】

【0085】
【表4】

【0086】
【表5】

【0087】
【表6】

【0088】
【表7】

【0089】
【表8】

【0090】
【表9】

【0091】
【表10】

【0092】
【表11】

【0093】
【表12】

【0094】
【表13】

【0095】
【表14】

【0096】
【表15】

【0097】
【表16】

【0098】
【表17】

【0099】
本発明をその好ましい態様に従って上記で説明してきたが、これは本開示の精神および範囲の中で改変できる。従って本件は、本明細書で開示する一般的な原理を用いた本発明の任意の変形、用途または適用を網羅する。更に本件は、本発明が属する分野における公知または慣行のものに含まれるような本開示からの逸脱を網羅することを意図し、そしてこれは特許請求の範囲の限定に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素質組成物;ならびに
腐食防止量の、式(I):
【化1】

(式中:
1およびR3は、各々独立にH、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、もしくはアリールであり、またはR1、R3およびこれらが付いている炭素がシクロアルキル環を形成し;
2およびR4は、各々独立にH、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アリール、アリール−アルキルであり、またはR2、R4およびこれらが付いている炭素がシクロアルキル環を形成し、但しR2およびR4が共に3個以上の炭素原子を含有することを条件とし;そして
5は、不存在またはC1〜C10アルキレン、アリーレン、−アリーレン−アルキレン−、または−アルキレン−アリーレン−であり;
ここでアルキル、シクロアルキル、アルキレン、アリール、およびアリーレンは任意にアルキルまたはフェニルで置換されている。)
のアミノアルコールまたはその塩;
を含む、ブレンド物。
【請求項2】
1がHである、請求項1に記載のブレンド物。
【請求項3】
2がHまたは直鎖アルキルである、請求項1〜2に記載のブレンド物。
【請求項4】
3が水素であり、そしてR4が直鎖アルキルである、請求項1〜3に記載のブレンド物。
【請求項5】
5が不存在であるかまたはメチレンもしくはエチレンの架橋である、請求項1〜4に記載のブレンド物。
【請求項6】
アミノアルコールが式(II):
【化2】

の化合物である、請求項1〜5に記載のブレンド物。
【請求項7】
2およびR4が共に11個以下の炭素原子を含有する、請求項6に記載のブレンド物。
【請求項8】
2およびR4が各々独立に直鎖アルキルである、請求項6〜7に記載のブレンド物。
【請求項9】
2およびR4のうち、一方がHであり、そして他方が直鎖アルキルである、請求項6〜7に記載のブレンド物。
【請求項10】
2およびR4が、これらが付いている炭素と共にシクロアルキル環を形成する、請求項6〜7に記載のブレンド物。
【請求項11】
2およびR4のうち、一方がCH3であり、そして他方がアリールである、請求項6〜7に記載のブレンド物。
【請求項12】
アミノアルコールが:2−アミノ−2−メチル−1−ヘキサノール、2−アミノ−2−エチル−1−ペンタノール、2−アミノ−2−メチル−1−ヘプタノール、2−アミノ−2−エチル−1−ヘキサノール、2−アミノ−2−プロピル−1−ペンタノール、2−アミノ−2−メチル−1−オクタノール、2−アミノ−2−エチル−1−ヘプタノール、2−アミノ−2−プロピル−1−ヘキサノール、2−アミノ−2−メチル−1−ノナノール、2−アミノ−2−エチル−1−オクタノール、2−アミノ−2−プロピル−1−ヘプタノール、2−アミノ−2−ブチル−1−ヘキサノール、2−アミノ−2−メチル−1−デカノール、2−アミノ−2−エチル−1−ノナノール、2−アミノ−2−プロピル−1−オクタノール、2−アミノ−2−ブチル−1−ヘプタノール、2−アミノ−2−メチル−1−ウンデカノール、2−アミノ−2−エチル−1−デカノール、2−アミノ−2−プロピル−1−ノナノール、2−アミノ−2−ブチル−1−オクタノール、2−アミノ−2−ペンチル−1−ヘプタノール、2−アミノ−2−メチル−1−ドデカノール、2−アミノ−2−エチル−1−ウンデカノール、2−アミノ−2−プロピル−1−デカノール、2−アミノ−2−ブチル−1−ノナノール、2−アミノ−2−ペンチル−1−オクタノール、(1−アミノシクロペンチル)メタノール、(l−アミノシクロヘキシル)メタノール、(l−アミノシクロヘプチル)メタノール、(1−アミノシクロオクチル)メタノール、(1−アミノシクロノニル)メタノール、(1−アミノシクロデシル)メタノール、(l−アミノシクロウンデシル)メタノール、(l−アミノシクロドデシル)メタノール、2−アミノ−2−フェニル−1−エタノール、2−アミノ−2−フェニル−1−プロパノール、2−アミノ−2−フェニル−1−ブタノール、またはこれらの2種以上の混合物である、請求項1〜11に記載のブレンド物。
【請求項13】
アミノアルコールが、2−アミノ−2−メチル−1−ヘキサノール、2−アミノ−2−エチル−1−ペンタノール、2−アミノ−2−メチル−1−オクタノール、2−アミノ−2−エチル−1−ヘプタノール、2−アミノ−2−プロピル−1−ヘキサノール、(1−アミノシクロヘキシル)メタノール、(1−アミノシクロオクチル)メタノール、2−アミノ−2−フェニル−1−プロパノール、(1−アミノシクロペンチル)メタノール、またはこれらの2種以上の混合物である、請求項1〜12に記載のブレンド物。
【請求項14】
殺生物有効量の殺生剤を更に含む、請求項1〜13に記載のブレンド物。
【請求項15】
殺生剤が、トリアジン、ヨードプロピニルブチルカルバメート、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、4,4−ジメチルオキサゾリジン、7−エチルビシクロオキサゾリジン、4−(2−ニトロブチル)−モルホリンと4,4’−(2−エチル−2−ニトロトリメチレン)ジモルホリンとの組合せ、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの組合せ、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロ−オクチルイソチアゾリノン、ジブロモ−オクチルイソチアゾリノン、フェノール物,またはその対応するナトリウム塩もしくはカリウム塩、ナトリウムピリチオン、ジンクピリチオン、n−ブチルベンズイソチアゾリノン、1−(3−クロロアリル)−3,5,7−トリアザ−1−アゾニアアダマンタンクロリド、クロロタロニル、カルベンダジム、ジヨードメチルトリルスルホン、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、グルタルアルデヒド、N,N’−メチレン−ビス−モルホリン、エチレンジオキシメタノール、フェノキシエタノール、テトラメチロールアセチレンジウレア、ジチオカルバメート、2,6−ジメチル−m−ジオキサン−4−オールアセテート、ジメチロール−ジメチル−ヒダントイン、トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン、二環式オキサゾリジン、(チオシアノメチルチオ)−ベンゾチアゾール、メチレンビス(チオシアネート)、置換ジオキサボリナン、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムスルフェート、4級アンモニウム化合物、ココジアミン、ダゾメット、またはこれらの混合物である、請求項14に記載のブレンド物。
【請求項16】
炭化水素質組成物が液体燃料であり、そして殺生剤が、4−(2−ニトロブチル)−モルホリンと4,4’−(2−エチル−2−ニトロトリメチレン)ジモルホリンとの組合せ、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの組合せ、(チオシアノメチルチオ)−ベンゾチアゾールとメチレンビス(チオシアネート(MBT)との組合せ、置換ジオキサボリナン、オキサゾリジン、またはこれらの混合物である、請求項14〜15に記載のブレンド物。
【請求項17】
炭化水素質組成物が石油であり、そして殺生剤が、グルタルアルデヒド、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、イソチアゾリノン化合物、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムスルフェート、オキサゾリジン化合物、4級アンモニウム、ココジアミン、ダゾメット、またはこれらの混合物である、請求項14〜15に記載のブレンド物。
【請求項18】
液体燃料;
腐食防止量の、式(I):
【化3】

(式中:
1およびR3は、各々独立にH、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、もしくはアリールであり、またはR1、R3およびこれらが付いている炭素がシクロアルキル環を形成し;
2およびR4は、各々独立にH、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アリール、アリール−アルキルであり、またはR2、R4およびこれらが付いている炭素がシクロアルキル環を形成し、但しR2およびR4が共に3個以上の炭素原子を含有することを条件とし;そして
5は、不存在またはC1〜C10アルキレン、アリーレン、−アリーレン−アルキレン−、または−アルキレン−アリーレン−であり;
ここでアルキル、シクロアルキル、アルキレン、アリール、およびアリーレンは任意にアルキルまたはフェニルで置換されている。)
のアミノアルコールまたはその塩;ならびに
(i)4−(2−ニトロブチル)−モルホリンと4,4’−(2−エチル−2−ニトロトリメチレン)ジモルホリンとのブレンド物(FUELSAVER,The Dow Chemical Companyより);
(ii)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとのブレンド物;
(iii)(チオシアノメチルチオ)−ベンゾチアゾール(TCMTB)とメチレンビス(チオシアネート(MBT)とのブレンド物;
(iv)置換ジオキサボリナン;および
(v)オキサゾリジン;
からなる群から選択される殺生剤;
を含む、燃料ブレンド物。
【請求項19】
アミノアルコールが式(II):
【化4】

のアミノアルコールである、請求項18に記載の燃料ブレンド物。
【請求項20】
アミノアルコールの殺生剤(i)に対する質量比が、約30:1〜1:1の間である、請求項18〜19に記載の燃料ブレンド物。
【請求項21】
アミノアルコールの殺生剤(ii)に対する質量比が、好ましくは約70:1〜3:1の間である、請求項18〜19に記載の燃料ブレンド物。
【請求項22】
(a)石油;
(b)上記で定義した式(I)のアミノアルコール;ならびに
(c)グルタルアルデヒド、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムスルフェート(THPS)、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、イソチアゾリノン化合物、4級アンモニウム化合物、ココジアミン;およびダゾメットからなる群から選択される殺生剤;
を含む、石油系ブレンド物。
【請求項23】
バイオディーゼル燃料に微生物耐性を付与する方法であって、バイオディーゼル燃料中に有効量の式(I):
【化5】

(式中:
1およびR3は、各々独立にH、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、もしくはアリールであり、またはR1、R3およびこれらが付いている炭素がシクロアルキル環を形成し;
2およびR4は、各々独立にH、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、シクロアルキル−アルキル、アリール、アリール−アルキルであり、またはR2、R4およびこれらが付いている炭素がシクロアルキル環を形成し、但しR2およびR4が共に3個以上の炭素原子を含有することを条件とし;そして
5は、不存在またはC1〜C10アルキレン、アリーレン、−アリーレン−アルキレン−、または−アルキレン−アリーレン−であり;
ここでアルキル、シクロアルキル、アルキレン、アリール、およびアリーレンは任意にアルキルまたはフェニルで置換されている。)
のアミノアルコールまたはその塩を含有させることを含む、方法。
【請求項24】
アミノアルコールが、ホウ酸、乳酸、ペラルゴン酸、ノナン酸、ネオデカン酸、セバシン酸、アゼライン酸、クエン酸、安息香酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、トール油脂肪酸、直鎖、分岐、環式、または不飽和もしくは芳香族の、1〜24個の炭素を有するモノ−またはポリカルボン酸、式(I)の化合物の塩である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
アミノアルコールが、式(I)の化合物のオレイン酸塩である、請求項23〜24に記載の方法。
【請求項26】
アミノアルコールが、2−アミノ−2−メチル−1−オクタノール、2−アミノ−2−エチル−1−ヘプタノール、および2−アミノ−2−プロピル−1−ヘキサノールの混合物のオレイン酸塩である、請求項23〜25に記載の方法。
【請求項27】
バイオディーゼル燃料および式(I)のアミノアルコールを含む、ブレンド物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−522069(P2011−522069A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509541(P2011−509541)
【出願日】平成21年4月29日(2009.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/042034
【国際公開番号】WO2009/140062
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(591252611)アンガス ケミカル カンパニー (32)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】