説明

炭化水素転換触媒

炭化水素を転換するための触媒は、該触媒の総重量を基準として、1〜60重量%のゼオライト混合物、5〜99重量%の熱耐性無機酸化物、0〜70重量%の粘土を含んでいる。上記ゼオライト混合物は、該ゼオライト混合物の総重量を基準として、1〜75重量%のリンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータ、25〜99重量%のMFI構造を有するゼオライト、0〜74重量%の大孔径ゼオライトを含んでいる。上記リンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータの無水物の組成は、酸化物に基づく重量%として表されるとき、(0−0.3)NaO・(0.5−10)Al・(1.3−10)P・(0.7−15)M・(64−97)SiO(式中、MはFe、Co、Ni、Cu、Mn、ZnおよびSnから成る群から選択され、xはMの原子数を表し、yはMの酸化状態に必要な数を表す)で示される。本発明の触媒は、炭化水素の転換に優れており、軽質オレフィン(特にプロピレン)の収量を増加させるものである。本発明の触媒を炭化水素の接触分解法に使用することにより、軽質オレフィンを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライトを含有している炭化水素転換触媒に関する。より具体的には、本発明は、炭化水素を接触分解して、C−Cオレフィンを製造することができる、ゼオライト含有クラッキング触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
軽質オレフィン(C−Cオレフィン)は、石油化学工業にとって重要な原料である。軽質オレフィンは、ガス状炭化水素、ナフサ、ケロシン、軽油および減圧残油が原料として使用される水蒸気熱分解法によって、石油炭化水素から一般に調製されている。また従来の接触分解法を使用して、ガソリンおよび軽質ディーゼル油を製造する場合も、軽質オレフィンが副産物として、原料の15重量%未満の収量で製造される。
【0003】
石油炭化水素から軽質オレフィンを得るための接触分解法は、多くの特許において報告されている。金属担持触媒が使用されているが、この金属担持触媒の担体はSiO、Alまたは他の酸化物であり、金属成分は、グループIIB、VB、VIIB、およびVIIIの元素から主に選択されるものである。これらの金属は、いずれも水素化活性または脱水素活性活性を示すが、高温および低圧のクラッキング条件では脱水素活性を示すため、軽質オレフィンの生成を促進する(US3541179、US3647682、DD225135およびSU1214726)。上記触媒を使用したとき、担持金属の脱水素特性のために、重合反応によってコークス形成がクラッキング反応中に促進され、さらに増加したコークスが触媒上に形成される。したがって、沸点の範囲が220℃未満である軽質原料だけを使用することができる。
【0004】
他のいくつかの特許では、複合酸化物触媒が使用されている。該触媒の一例としては、(i)主成分としてZrO、HfO、またアジュバントとしてAl、Cr、MnO、Fe、およびアルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物を含んでいる触媒(US3725495、US3839485)、ならびに(ii)少量のFe、TiO、CaO、MgO、NaO、およびKOを含んでいるSiO・Al触媒が挙げられる(SU550173、SU559946)。
【0005】
石油化学処理および石油精製においてゼオライトを広く適用することにより、第三の種類の触媒、即ちゼオライト含有触媒が登場した。最近では、触媒ガソリンのオクタン価を向上させるために、形状選択添加剤が触媒に添加されている。例えば、US3758403には、ZSM−5ゼオライトと大孔径ゼオライトとを(1:10〜3:1の比で)活性成分として使用した触媒が開示されている。ガソリンのオクタン価を向上させることに加えて、この触媒から、CおよびCオレフィンが高収率で供給得られる。CおよびCオレフィンの収率は、ほぼ10重量%である。
【0006】
MFI構造を有するゼオライト(シリコンリッチな5員環ゼオライト)と、7オングストロームよりも大きい細孔径を有する大孔径ゼオライトとの混合物を含んでいる触媒を、石油炭化水素のクラッキングに使用して、軽質オレフィンを製造する場合、大孔径ゼオライト(主にY型のゼオライト)によって、原料がクラッキングされて、ガソリンおよびディーゼル油が生成する。さらにこれらガソリンおよびディーゼル油は、MFI構造を有するゼオライトによって軽質オレフィンへとクラッキングされる(US3758403、CN1043520A、US500649およびCN1026242C)。触媒のオレフィン選択性を向上させるためには、MFIゼオライトを、例えば遷移金属(US5236880)、リン(CN1205307A、US6566293)、希土類(CN1085825A)、リンおよび希土類(CN1093101A、US5380690、CN1114916A、CN1117518A、CN1143666A)、リンおよびアルカリ土類金属(CN1221015A、US6342153、CN1222558A、US6211104)、ならびにリンおよび遷移金属(CN1504540A)でさらに改質する。
【0007】
ゼオライトベータは、交差した多孔質導管を有する12員環構造を有する。(001)結晶面に平行な1次元多孔質導管についての12員環の細孔径は0.75〜0.57nmである一方、(100)結晶面に平行な2次元多孔質導管についての12員環の細孔径は0.65〜0.56nmである。ゼオライトベータは、今日までに発見された唯一の3次元構造を有するシリコンリッチな大孔径ゼオライトであり、その構造の特殊性に起因する構造選択性と酸触媒特性とを有しているに留まらず、さらに非常に高い熱安定性(結晶格子の破壊温度は1200℃よりも高い)、水熱安定性、および耐摩滅性も有している。このユニークな構造的特徴のために、ゼオライトベータは一連の触媒反応の際に、良好な熱安定性、水熱安定性、耐酸性、抗コークス化特性、および触媒活性を示す。それ故、ゼオライトベータは近年、新型の触媒物質へ急速に開発されている。石油炭化水素のクラッキングにゼオライトベータを使用して、軽質オレフィンを製造することは数多く報告されている。
【0008】
CN1103105Aには、イソブチレンおよびイソアミレンを高収率で得ることができるクラッキング触媒が開示されている。この触媒は4種の活性成分と担体からなる組成物である。また該活性成分は、シリカ/アルミナ比が異なっている改質HZSM−5およびシリコンリッチなHZSM−5、USY、ならびにゼオライトベータから成るものである。該担体は自然粘土、無機酸化物から成るものである。上記触媒の各成分と量とは、以下の通りである:(1)シリカ/アルミナ比が20〜100である改質HZSM−5(5〜25重量%)、(2)シリカ/アルミナ比が250〜450であるシリコンリッチなHZSM−5(1〜5重量%)、(3)USYゼオライト(5〜20重量%)、(4)ゼオライトベータ(1〜5重量%)、(5)自然粘度(30〜60重量%)、(6)無機酸化物(15〜30重量%)。上記触媒は、イソブチレンおよびイソアミレンを高収率で得ることができるという特徴を有している一方で、高オクタン価のガソリンを副生成物として製造することができる。
【0009】
CN1057408Aには、シリコンリッチなゼオライトを含有しているクラッキング触媒が開示されている。この触媒は10〜30重量%の改質シリコンリッチなゼオライトおよび70〜90重量%の担体から成るものである。該改質シリコンリッチなゼオライトは、ゼオライトの重量に基づいて0.01〜3.0重量%のリン、0.01〜1.0重量%の鉄または0.01〜10重量%のアルミニウム(ゼオライトの構造中のアルミニウムを除く)を含んでおり、シリカ/アルミナ比が15よりも高いZSMゼオライト、モルデナイト、またはゼオライトベータから選択されるものである。また該担体は無機酸化物、または無機酸化物およびカオリンの混合物である。炭化水素の接触分解過程の間に、上記触媒を使用して軽質オレフィンを製造した場合、ガソリンおよびディーゼル油が副生成物として製造される。
【0010】
CN1099788Aには、C−Cオレフィンを高収率で得ることができるクラッキング触媒が開示されている。この触媒は、単位格子の寸法が2.450nm以下のY型ゼオライト(10〜50重量%)、P、RE、Ca、Mg、H、Alなどで改質されたZSM−5ゼオライトまたはゼオライトベータ、もしくはそれらの混合物から選択されるゼオライト(2〜40重量%)、ならびにカオリンおよびアルミナ結合剤から成る半合成担体(20〜80重量%)から成るものである。上記触媒を使用することにより、C−Cオレフィンの収率を高めることができるだけでなく(iC+iCの収率が10〜13重量%以下になる)、ガソリンの収率を約35〜42重量%に保たつことができる。
【0011】
CN1145396Aには、イソブチレンおよびイソアミレンを高収率で得ることができるクラッキング触媒が開示されている。この触媒は、3種の活性ゼオライト成分と担体とから成るものであり、触媒の重量に基づいて、6〜30重量%のシリコンリッチな5員環ゼオライト(リンおよび希土類を含んでいる)、5〜25重量%のUSYゼオライト、1〜5重量%のゼオライトベータ、30〜60重量%の粘土、および15〜30重量%の無機酸化物から成るものである。該触媒は、イソブチレンおよびイソアミレンを高収率で得ることができるという特徴を有している一方、高オクタン価のガソリンを副生成物として製造することができる。
【0012】
CN1354224Aには、異性体アルカン、プロピレンおよびイソブタンに富んだガソリンを製造するための接触分解触媒が開示されている。この触媒は、触媒の重量に基づいて0〜70重量%の粘土、5〜90重量%の無機酸化物、および1〜50重量%のゼオライトから成るものである。またこのゼオライトは、ゼオライトの重量に基づいて以下の(1)〜(3)の混合物である:(1)シリカ/アルミナ比が5〜15であり、RE含有量が8〜20重量%であるシリコンリッチなY型ゼオライト(20〜75重量%)、(2)シリカ/アルミナ比が16〜50であり、RE含有量が2〜7重量%であるシリコンリッチなY型ゼオライト(20〜75重量%)、および(3)ゼオライトベータまたはモルデナイトまたはZRPゼオライト(1〜50重量%)。上記触媒は、ガソリン中の異性体アルカンの含有量を増加させることができると同時に、プロピレンおよびイソブタンの収率を増加させることができるが、プロピレンの収率をほんの僅か増加させるだけである。
【0013】
CN1504541Aに開示の触媒は、炭化水素のクラッキングを触媒したときに、軽質オレフィンを製造するとともに、副生成物として芳香族を製造するものである。この触媒は、細孔径が0.45〜0.7nmの分子篩、アモルファス酸化物、ならびにリン、アルカリ土類金属、リチウムおよび希土類から選択される少なくとも2種の改質成分を含んでいる。上記分子篩は、シリカ−アルミナまたはシリカ−リン−アルミナの分子篩であり、該シリカ−アルミナ分子篩はZSM−5、ZSM−11、モルデナイト、またはゼオライトベータであり、上記シリカ−リン−アルミナ分子篩は、SAPO−5、SAPO−11、またはSAPO−34である。実際に必要とされる生成物に従って、オレフィンの製造中に主生成物として軽質オレフィンを製造するか、または副生成物として芳香族を製造するように、この触媒の活性中心を改質することができる。
【0014】
CN1566275Aには、炭化水素のクラッキングのための分子篩含有触媒、およびその調製が開示されている。この触媒は、第一ゼオライトおよび第二ゼオライトの混合物である分子篩、ならびに熱耐性無機酸化物および金属成分を含んでおり、さらに粘土を含んでいるか、または含んでいない。第一ゼオライトはY型のものであり、第二ゼオライトは、シリカのアルミナに対するモル比が20よりも大きいものである。第一ゼオライトの含有量は1〜50重量%であり、第二ゼオライトの含有量は1〜60重量%であり、熱耐性無機酸化物の含有量は2〜80重量%であり、粘土の含有量は0〜80重量%であり、金属成分の含有量は0.1〜30重量%である。また該金属成分は還元原子価状態として実質的に存在している。上記触媒は、C−Cオレフィンを高収率で得ることができるだけでなく、高脱硫化活性や、高クラッキング活性も有している。上記第二ゼオライトは、(i)リン、希土類および/またはアルカリ土類金属を含んでいるか、あるいは含んでいない、MFI構造を有するゼオライト、(ii)リン、希土類および/またはアルカリ土類金属を含んでいるか、あるいは含んでいないゼオライトベータ、(iii)リン、希土類および/またはアルカリ土類金属を含んでいるか、あるいは含んでいないモルデナイトから1種以上選択されるものである。
【0015】
US5006497およびUS5055176には、多成分触媒およびそれの接触分解法が開示されている。この触媒は、マトリックス、大孔径分子篩、パラフィンクラッキング/異性化分子篩、および芳香族化分子篩を含んでいる。上記大孔径分子篩は、ゼオライトY、DeAlY、USY、UHPY、VPI−5、円柱状の粘土、SAPO−37、ゼオライトベータ、およびそれらの混合物から成る群から選択されるものである。上記パラフィンクラッキング/異性化分子篩は、水素型ZSM−5、ZSM−11、ZSM−22、ZSM−35、およびZSM−57から成る群から選択されるものである。また上記芳香族化分子篩はGaZSM−5である。
【0016】
US20050070422には、接触分解によってプロピレンの収率を増加させるために使用される触媒組成物が開示されている。この触媒は、中間の細孔径を有する第一分子篩、導管の少なくとも1つの細孔径が第一分子篩の細孔径よりも小さい第二分子篩を含んでおり、さらに場合によっては大孔径の第三分子篩を含んでいる。上記第一分子篩は、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−57、ITQ−13およびMCM−22から成る群から選択されるものである。上記第二篩は、ECR−42、ZSM−22、ZSM−35、ZSM−23、MCM−22、MCM−49、SAPO−11、SAPO−34およびSAPO−41から成る群から選択されるものである。上記第三分子篩は、フォージャサイト、ゼオライトL、VPI−5、SAPO−37、ゼオライトX、ゼオライトベータ、ZSM−3、ZSM−4、ZSM−18、ZSM−20、MCM−9、MCM−41、MCM−41S、MCM−48、Y型ゼオライト、USY、REY、REUSYなどから成る群から選択されるものである。上記触媒は、ナフサおよび重質炭化水素の原料をクラッキングすることによってプロピレンを製造するために適切に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】US3541179
【特許文献2】US3647682
【特許文献3】DD225135
【特許文献4】SU1214726
【特許文献5】US3725495
【特許文献6】US3839485
【特許文献7】SU550173
【特許文献8】SU559946
【特許文献9】US3758403
【特許文献10】CN1043520A
【特許文献11】US500649
【特許文献12】CN1026242C
【特許文献13】US5236880
【特許文献14】CN1205307A
【特許文献15】US6566293
【特許文献16】CN1085825A
【特許文献17】CN1093101A
【特許文献18】US5380690
【特許文献19】CN1114916A
【特許文献20】CN1117518A
【特許文献21】CN1143666A
【特許文献22】CN1221015A
【特許文献23】US6342153
【特許文献24】CN1222558A
【特許文献25】US6211104
【特許文献26】CN1504540A
【特許文献27】CN1103105A
【特許文献28】CN1057408A
【特許文献29】CN1099788A
【特許文献30】CN1145396A
【特許文献31】CN1354224A
【特許文献32】CN1504541A
【特許文献33】CN1566275A
【特許文献34】US5006497
【特許文献35】US5055176
【特許文献36】US20050070422
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
軽質オレフィンの需要がますます高まっており、石油炭化水素の転換に優れ、軽質オレフィン(特にプロピレン)の収率が高い炭化水素転換触媒の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、先行技術の上述した開発状態に鑑みなされたものであって、その目的は、石油炭化水素を触媒転換して、軽質オレフィンを製造するための炭化水素転換触媒を提供することである。
【0020】
本発明の発明者は、鋭意検討を重ねた結果、炭化水素転換触媒が触媒成分として特定の改質ゼオライトベータを含んでいる場合に、C−C12オレフィンの選択性が著しく向上するために、クラッキングによる軽質オレフィン(C−Cオレフィン)の製造に有利になるため、石油炭化水素から上記軽質オレフィンを高収率で製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0021】
上記目的を達成するために、本発明は次の炭化水素転換触媒を提供する。即ち、本発明の炭化水素転換触媒は、該触媒の総重量を基準として、1〜60重量%のゼオライト混合物、5〜99重量%の熱耐性無機酸化物、および0〜70重量%の粘土を含んでいるものである。上記ゼオライト混合物は、該ゼオライト混合物の総重量を基準として、1〜75重量%のリンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータ、25〜99重量%のMFI構造を有するゼオライト、および0〜74重量%の大孔径ゼオライトを含んでいる。
【0022】
上記リンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータの無水物の化学式は、酸化物の質量パーセントで、(0−0.3)NaO・(0.5−10)Al・(1.3−10)P・(0.7−15)M・(64−97)SiOとして表される。
【0023】
式中、遷移金属Mは、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、ZnおよびSnから成る群から選択される1種以上であり、xは遷移金属Mの原子数を表し、yは遷移金属Mの酸化状態を満足するために必要とされる数を表す。
【0024】
具体的には、本発明は以下の(1)〜(12)に関する。
【0025】
(1)炭化水素転換触媒であって、該触媒の総重量を基準として、1〜60重量%のゼオライト混合物、5〜99重量%の熱耐性無機酸化物、および0〜70重量%の粘土を含んでおり、
上記ゼオライト混合物は、該ゼオライト混合物の総重量を基準として、1〜75重量%のリンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータ、25〜99重量%のMFI構造を有するゼオライト、および0〜74重量%の大孔径ゼオライトを含んでおり、
上記リンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータの無水物の化学式は、酸化物の質量パーセントで、(0−0.3)NaO・(0.5−10)Al・(1.3−10)P・(0.7−15)M・(64−97)SiO(式中、遷移金属Mは、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、ZnおよびSnから成る群から選択される1種以上であり、xは遷移金属Mの原子数を表し、yは遷移金属Mの酸化状態を満足するために必要とされる数を表す)として表される、炭化水素転換触媒。
【0026】
(2)上記炭化水素転換触媒が、該触媒の総重量を基準として、10〜50重量%の上記ゼオライト混合物、10〜70重量%の上記熱耐性無機酸化物、および0〜60重量%の上記粘土を含んでいることを特徴とする、態様(1)の炭化水素転換触媒。
【0027】
(3)上記リンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータの無水物の化学式が、(0−0.2)NaO・(1−9)Al・(1.5−7)P・(0.9−10)M・(75−95)SiOとして表されることを特徴とする、態様(1)の炭化水素触媒。
【0028】
(4)上記リンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータの無水物の化学式が、(0−0.2)NaO・(1−9)Al・(2−5)P・(1−3)M・(82−95)SiOとして表されることを特徴とする、態様(3)の炭化水素触媒。
【0029】
(5)上記遷移金属Mが、Fe、Co、NiおよびCuから成る群から選択される1種以上であることを特徴とする、態様(1)の炭化水素転換触媒。
【0030】
(6)上記遷移金属Mが、Feおよび/またはCuから成る群から選択されることを特徴とする、態様(5)の炭化水素転換触媒。
【0031】
(7)上記MFI構造を有するゼオライトが、ZSM−5ゼオライトおよびZRPゼオライトから成る群から選択される1種以上であることを特徴とする、態様(1)の炭化水素転換触媒。
【0032】
(8)上記MFI構造を有するゼオライトが、希土類を含んでいるZRPゼオライト、リンを含んでいるZRPゼオライト、リンおよび希土類を含んでいるZRPゼオライト、リンおよびアルカリ土類金属を含んでいるZRPゼオライト、ならびにリンおよび遷移金属を含んでいるZSPゼオライトから成る群から選択される1種以上であることを特徴とする、態様(7)の炭化水素転換触媒。
【0033】
(9)上記大孔径ゼオライトが、フォージャサイト、ゼオライトL、ゼオライトベータ、ゼオライトΩ、モルデナイト、およびZSM−18ゼオライトから成る群から選択される1種以上であることを特徴とする、態様(1)の炭化水素触転換媒。
【0034】
(10)上記大孔径ゼオライトが、Y型ゼオライト、リンおよび/または希土類を含んでいるY型ゼオライト、超安定性Y型ゼオライト、ならびにリンおよび/または希土類を含んでいる超安定性Y型ゼオライトから成る群から選択される1種以上であることを特徴とする、態様(9)の炭化水素転換触媒。
【0035】
(11)上記粘土が、カオリン、ハロイサイト、モンモリロナイト、珪藻土、エンデライト(endellite)、サポナイト、レクトライト、セピオライト、アタパルガイト、ヒドロタルサイト、およびベントナイトから成る群から選択される1種以上であることを特徴とする、態様(1)の炭化水素転換触媒。
【0036】
(12)上記粘土が、カオリン、ハロイサイト、およびモンモリロナイトから成る群から選択される1種以上であることを特徴とする、態様(1)の炭化水素転換触媒。
【発明の効果】
【0037】
本発明の炭化水素転換触媒では、(i)リンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータと、MFI構造を有するゼオライトとのゼオライト混合物、または(ii)リンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータと、MFI構造を有するゼオライトと、大孔径ゼオライトとのゼオライト混合物が、活性成分として使用されている。上記ゼオライトベータはリンおよび遷移金属Mで同時に改質されているので、炭化水素の接触分解法に適用した場合、上記ゼオライトベータの水熱安定性が向上し、ディーゼル油および重油のクラッキングが促進するだけでなく、C−C12オレフィンの選択性が顕著に増加する。その上、その内のC−C12オレフィンは、C−Cオレフィンを製造するのに効果的な前躯体であるため、MFI構造を有するゼオライトによりさらにクラッキングされることによって、C−Cオレフィンを製造するのに有利である。よって、本発明において提供される触媒は、石油炭化水素の転換に優れており、軽質オレフィン(特にプロピレン)を高収率で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
軽質オレフィンを炭化水素から高収率で製造するために、本発明は以下の炭化水素転換触媒を提供する。即ち、本発明の炭化水素転換触媒は、該触媒の総重量を基準として、1〜60重量%のゼオライト混合物、5〜99重量%の熱耐性無機酸化物、および0〜70重量%の粘土を含んでいるものである。上記ゼオライト混合物は、該ゼオライト混合物の総重量を基準として、1〜75重量%のリンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータ、25〜99重量%のMFI構造を有するゼオライト、および0〜74重量%の大孔径ゼオライトを含んでいる。
【0039】
上記リンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータの無水物の化学式は、酸化物の質量パーセントで、(0−0.3)NaO・(0.5−10)Al・(1.3−10)P・(0.7−15)M・(64−97)SiOとして表される。
【0040】
式中、遷移金属Mは、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、ZnおよびSnから成る群から選択される1種以上であり、xは遷移金属Mの原子数を表し、yは遷移金属Mの酸化状態を満足するために必要とされる数を表す。
【0041】
本発明において特に断りの無い限り、用語「軽質オレフィン」はC−Cオレフィンを意味し、用語「炭化水素」は石油炭化水素を意味する。
【0042】
上記炭化水素は、各種石油蒸留物(C炭化水素、ガソリン、ディーゼル油、および水素化残渣など)から成る群から選択される1種以上であるか、上記各種石油蒸留物の混合蒸留物である。また炭化水素として、以下の(i)〜(iii)を直接的に使用してもよい:(i)原油および残油、(ii)減圧ガス油、原油、および残油のうちの1種、または(iii)減圧ガス油、原油、および残油から成る群から選択される2種以上の混合物。
【0043】
好ましい1実施形態では、炭化水素転換触媒は、該触媒の総重量を基準として、10〜50重量%の上記ゼオライト混合物、10〜70重量%の上記熱耐性無機酸化物、および0〜60重量%の上記粘土を含んでいる。
【0044】
まず以下では、本発明の炭化水素転換触媒の必須成分の1つである、上記改質ゼオライトベータを説明する。
【0045】
リンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータの無水物の化学式が、酸化物の質量パーセントで表される場合、好ましい範囲は、(0−0.2)NaO・(1−9)Al・(1.5−7)P・(0.9−10)M・(75−95)SiOであり、より好ましくは(0−0.2)NaO・(1−9)Al・(2−5)P・(1−3)M・(82−95)SiOである。
【0046】
好ましい実施形態では、上記遷移金属Mは、Fe、Co、NiおよびCuから成る群から1種以上選択され、より好ましくはFeおよび/またはCuである。
【0047】
本発明において提供される炭化水素転換触媒では、上記MFI構造を有するゼオライトは、ペンタシル構造を有するシリカリッチなゼオライトを意味する。該MFI構造を有するゼオライトは、ZSM−5ゼオライトおよびZRPゼオライトから成る群から選択される1種以上であるが、特に希土類を含んでいるZRPゼオライト(CN1052290A、CN1058382AおよびUS5232675参照)、リンを含んでいるZRPゼオライト(CN1194181A、US5951963参照)、リンおよび希土類を含んでいるZRPゼオライト(CN1147420A参照)、リンおよびアルカリ土類金属を含んでいるZRPゼオライト(CN1211469A、CN1211470AおよびUS6080698参照)、ならびにリンおよび遷移金属を含んでいるZRPゼオライト(CN1465527AおよびCN1611299A参照)から成る群から選択される1種以上である。
【0048】
上記大孔径ゼオライトは、少なくとも0.7nmの開環を有する多孔質構造を有しているものである。上記ゼオライトとしては、例えばY型ゼオライト、ゼオライトL、ゼオライトベータ、ゼオライトΩ、モルデナイトおよびZSM−18ゼオライトから成る群から選択される1種以上であるものが挙げられるが、特にY型ゼオライト、リンおよび/または希土類を含んでいるY型ゼオライト、超安定性Y型ゼオライト、ならびにリンおよび/または希土類を含んでいる超安定性Y型ゼオライトから成る群から選択される1種以上のものが挙げられる。
【0049】
さらに、上記MFI構造を有するゼオライトおよび上記大孔径ゼオライトは、市販品であってもよいし、あるいは本明細書に詳細に記載されていないが、本発明の技術分野においては公知である様々な方法を使用して調製されたものであってもよい。
【0050】
上記リンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータを、様々な方法を使用することによって調製してもよい。例えばリンおよび上記遷移金属Mを、(1)ゼオライトベータの合成中に導入してもよいし、あるいは(2)ゼオライトベータ合成後の、アンモニウムと交換する工程、リンで改質する工程、上記遷移金属で改質する工程、およびか焼する工程などによって導入してもよい。
【0051】
例えば、上記リンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータを、以下の方法に従って調製してもよい。即ち、従来の結晶化によって得たナトリウム型ゼオライトベータをアンモニウム塩、およびHOと、ゼオライトベータ:アンモニウム塩:HO=1:(0.1〜1):(5〜10)の重量比で、室温〜100℃の温度で0.5〜2時間にわたって混合して交換し、ろ過する。このような交換工程を1〜4回行って、ゼオライトベータ中のNaOの含有量を0.2重量%未満にする。次いで、含浸またはイオン交換によって、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、ZnおよびSnから成る群から選択される1種以上の遷移金属、ならびにリンを、上記交換したゼオライトベータに導入して、ゼオライトベータを改質する。次いで、乾燥し、400〜800℃で0.5〜8時間にわたってか焼して、リンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータを得る。なお、このか焼を水蒸気雰囲気下において実施してもよい。
【0052】
本発明の改質ゼオライトベータを調製するための方法では、リンおよび遷移金属Mを上記ゼオライトに導入することによって改質する方法を、例えば本技術においては従来公知の含浸法またはイオン交換法によって実施することができる。
【0053】
含浸を例えば次の(a)〜(c)の3つの方法のうちの1つによって行うことができる。
【0054】
(a)アンモニウム交換したゼオライトベータのろ過ケークを、所定量のリン化合物水溶液と室温〜95℃の温度で均一に混合し、乾燥してから、400〜800℃でか焼する。生じた固体を、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、ZnおよびSnから選択される1種以上の遷移金属Mを含んでいる化合物の、所定量の水溶液と室温〜95℃の温度で均一に混合して、乾燥する。
【0055】
(b)アンモニウム交換したゼオライトベータのろ過ケークを、所定量のリン化合物水溶液と室温〜95℃の温度で均一に混合し、乾燥する。生じた固体を、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、ZnおよびSnから選択される1種以上の遷移金属Mを含んでいる化合物の、所定量の水溶液と室温〜95℃の温度で均一に混合して、乾燥する。なお、上記2つ水溶液の含浸順序を逆にしてもよい。
【0056】
(c)アンモニウム交換したゼオライトベータのろ過ケークを、リン化合物とFe、Co、Ni、Cu、Mn、ZnおよびSnから選択される1種以上の遷移金属Mを含んでいる化合物とを含有している、所定量の混合水溶液と、室温〜95℃の温度で均一に混合し、乾燥する。
【0057】
また、上記イオン交換を例えば以下の方法の通りに行ってもよい。
【0058】
アンモニウム交換したゼオライトベータのろ過ケークを、所定量のリン化合物水溶液と室温〜95℃の温度で均一に混合し、乾燥してから、400〜800℃でか焼する。生じた固体を、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、ZnおよびSnから選択される1種以上の遷移金属Mを含んでいる化合物の所定量の水溶液と、1:(5〜20)の固体/液体比で均一に混合し、80〜95℃の温度で2〜3時間にわたって攪拌して、ろ過する。なおこの交換工程を複数回繰り返し行ってもよい。このようにして得られた交換工程後のサンプルを水で複数回洗浄し、次いで、乾燥する。
【0059】
本発明の改質ゼオライトベータを調製するための方法では、上記アンモニウム塩は、アンモニウム交換処理の技術において一般に使用される無機塩類であり、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、および硝酸アンモニウムから選択されるものであるか、またはそれらの混合物である。
【0060】
本発明の改質ゼオライトベータを調製するための方法では、上記リン化合物は、リン酸、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、およびリン酸アンモニウムから選択されるものであるか、またはそれらの混合物である。
【0061】
本発明の改質ゼオライトベータを調製するための方法では、上記Fe、Co、Ni、Cu、Mn、ZnおよびSnから選択される1種以上の遷移金属Mを含んでいる化合物は、それらの硫酸塩、硝酸塩、および塩化物などの対応する水溶性の塩から選択されるものである。
【0062】
本発明の改質ゼオライトベータを調製するための方法では、上記乾燥を従来公知の方法によって行ってもよく、乾燥温度は室温〜350℃、好ましくは100〜200℃であってもよい。また上記か焼の温度は、従来公知の温度、一般に400〜800℃、好ましくは450〜700℃である。
【0063】
上記改質ゼオライトベータの調製では、出発物質のゼオライトベータは特に限定されない。出発物質のゼオライトベータは、本発明の技術分野において一般に使用されているものであってもよいし、市販品であってもよいし、あるいは本発明の技術分野において公知の方法に従って調製されたものであってもよい。好ましい実施形態では、上記出発物質のゼオライトベータは、ナトリウム型ゼオライトベータである。このナトリウム型ゼオライトベータが有機テンプレート剤を含んでいる場合、該有機テンプレート剤を除いた後に上記操作を行うべきである。さらにナトリウム型ゼオライトベータ中のナトリウム含有量は、リンおよび上記遷移金属Mを含んでいるゼオライトベータの無水物の化学式中の、ナトリウム含有量についての要求値を満たすべきである。ナトリウム含有量が上記要求値を満たさない場合、アンモニウム交換法を使用して、上記出発物質のゼオライトベータ中のナトリウムを除去してもよい。この点に関して、上記アンモニウム交換工程は、上記改質ゼオライトベータを調製する際に必須ではない。
【0064】
本発明の上記改質ゼオライトベータを調製するための方法では、該方法において使用されるデバイスおよび条件調節方法は特に限定されず、本発明の技術分野において従来公知のデバイスおよび条件調節方法であってもよい。
【0065】
以下では、本発明の炭化水素転換触媒中のもう1つ別の必須成分である、熱耐性無機酸化物について説明する。
【0066】
上記熱耐性無機酸化物は特に限定されないが、クラッキング触媒のマトリックスおよび結合剤成分として使用される熱耐性無機酸化物(例えばアルミナ、シリカおよびアモルファスシリカ−アルミナ)の1種以上から選択されることが好ましい。上記熱耐性無機酸化物およびその調製方法は当業者に公知である。また上記熱耐性無機酸化物は、市販品であってもよいし、または本発明の技術分野において公知の方法によってその前躯体から調製されたものであってもよい。
【0067】
さらに、本発明の炭化水素転換触媒を調製するときには、上記熱耐性無機酸化物の代わりに、上記熱耐性無機酸化物の前躯体を直接使用してもよい。したがって、用語「熱耐性無機酸化物」は、熱耐性無機酸化物それ自体、および/またはその前躯体を包含している。
【0068】
本明細書において、上記熱耐性無機酸化物の前躯体は、本発明の炭化水素転換触媒を調製するときに、上記熱耐性無機酸化物を形成することができる物質を意味する。具体的には例えば、上記アルミナの前躯体は、アルミナ水和物および/またはアルミナゾルから成る群から選択されるものであってもよい。上記アルミナ水和物は、例えばベーマイト、シュードベーマイト、アルミニウム三水和物、およびアモルファス水酸化アルミニウムから成る群から選択される1種以上であってもよい。上記シリカの前躯体は、例えばシリカゾル、シリカゲル、および水ガラスから成る群から選択される1種以上であってもよい。さらに、上記アモルファスシリカ−アルミナの前躯体は、シリカ−アルミナゾル、シリカゾルとアルミナゾルとの混合物、ならびにシリカ−アルミナゲルから成る群から選択される1種以上であってもよい。また上記熱耐性無機酸化物の前躯体およびその調製方法は、当業者に公知である。
【0069】
本発明の炭化水素転換触媒は、任意成分として粘土を含んでいてもよい。上記粘土は特に限定されないが、クラッキング触媒の一般的な活性成分としての粘土から成る群から選択される1種以上であることが好ましい。例えば粘土は、カオリン、ハロイサイト、モンモリロナイト、珪藻土、エンデライト、サポナイト、レクトライト、セピオライト、アタパルガイト、ヒドロタルサイト、およびベントナイトから成る群から1種以上選択されるものであり、好ましくは、カオリン、ハロイサイト、およびモンモリロナイトから成る群から選択される1種以上であることが好ましい。上記粘土およびその調製方法は、当業者に公知であるか、または市販されている。
【0070】
本発明の炭化水素転換触媒を調製するための方法として、以下の方法を説明するが、本発明はこの方法の範囲に限定されない。
【0071】
上記熱耐性無機酸化物および/またはその前躯体の、全部もしくは一部を水と混合し、スラリーにする。生じたスラリーに場合によっては、上記粘土を加える。この時点で、上記熱耐性無機酸化物および/またはその前躯体の残余を、そのスラリーにさらに加えてもよい。上記ゼオライト混合物を該スラリーに加え、混合し、均一なスラリーにする。次いで、該スラリーを乾燥し、か焼する。上記ゼオライト混合物を加える前、上記粘土を加える前または後に、生じたスラリーに酸を加えて、スラリーのpHを1〜5に調整する。pHが規定の範囲内に入った後で、生じたスラリーを30〜90℃で0.1〜10時間にわたって熟成させる。この熟成工程の後に、上記熱耐性無機酸化物および/またはその前躯体の残余を加える。
【0072】
本発明の炭化水素転換触媒を調製する方法では、上記粘土を上記熟成工程の前または後に加えてもよい。上記粘土を加える順番は、本発明の炭化水素転換触媒の特性に対して影響を与えない。
【0073】
本発明の炭化水素転換触媒の調製では、上記熱耐性無機酸化物および/またはその前躯体の、全部もしくは一部を、上記熟成工程の前に加えてもよい。耐触媒摩滅性により優れた上記触媒を得るためには、上記熱耐性無機酸化物および/またはその前躯体の一部を上記熟成工程の前に加え、次いで、上記熱耐性無機酸化物および/またはその前躯体の残余を上記熟成工程の後に加えることが好ましい。後者の場合、最初に加える一部と後ほど加える一部との重量比は、1:0.1〜10であり、より好ましくは1:0.1〜5である。
【0074】
本発明の炭化水素転換触媒を調製するための方法では、スラリーのpHを調整するために酸を加える。上記酸は、水溶性無機酸および有機酸から成る群から1種以上選択されるものであり、塩酸、硝酸、リン酸、および1〜10の炭素原子を有するカルボン酸から成る群から選択される1種以上であることが好ましい。また上記酸の量は、スラリーのpHを1〜5、好ましくは1.5〜4に調整するのに十分な量である。
【0075】
本発明の炭化水素転換触媒を調製するための方法では、上記熟成を40〜80℃で0.5〜8時間にわたって行う。
【0076】
上記スラリーを乾燥するための方法および条件は当業者にとって公知である。例えば上記乾燥は、空気乾燥、ベーキング、強制空気乾燥、および噴霧乾燥から成る群から選択されてもよい。なお上記乾燥は噴霧乾燥であることが好ましい。乾燥温度は、室温〜400℃、好ましくは100〜350℃であってもよい。噴霧乾燥にとって都合の良いように、乾燥前のスラリーの固形分は、10〜50重量%であることが好ましく、20〜50重量%であることがより好ましい。
【0077】
スラリーを乾燥した後のか焼の条件は当業者にとって公知である。一般に、か焼を400〜700℃で、好ましくは450〜650℃で、少なくとも0.5時間、好ましくは0.5〜100時間、より好ましくは0.5〜10時間にわたって行う。
【0078】
本発明の触媒は、石油炭化水素の転換に優れており、軽質オレフィン(特にプロピレン)を高収率で得ることができる。
【実施例】
【0079】
以下の実施例を使用して、本発明をさらに説明するが、本発明はそれらに限定されない。
【0080】
実施例1〜10を使って、リンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータ、およびそれを調製するための方法を説明する。改質ゼオライトベータの各サンプル中の、NaO、Fe、Co、NiO、CuO、Mn、ZnO、SnO、Al、およびSiOの含有量を、蛍光X線法によって測定した(なお、Yang Cuidingら編集、「石油化学工業分析方法(RIPP実験方法)」、科学出版社、1990年出版を参照のこと)。
【0081】
以下で使用した全ての試薬は、特別な説明がなされているもの以外は、化学的に純粋な試薬である。
【0082】
〔実施例1〕
100g(無水ベース)のゼオライトベータ(中国石化斉魯触媒会社製造、SiO/Alの比=25)を、NaOの含有量が0.2重量%未満になるまでNHCl溶液で交換洗浄し、ろ過して、ろ過ケークを得た。また6.8gのHPO(濃度85%)と3.2gのCu(NO・3HOとを90gの水に加えて、溶かしてから、上記ろ過ケークと混合して、含浸させ、乾燥し、550℃で2時間にわたってか焼した。その結果、リンおよび遷移金属Cuを含んでいる改質ゼオライトベータB1を得た。これの無水物の化学組成は、0.1NaO・8.2Al・4.0P・1.0CuO・86.7SiOであった。
【0083】
〔実施例2〕
100g(無水ベース)のゼオライトベータを、NaOの含有量が0.2重量%になるまでNHCl溶液で交換洗浄し、ろ過して、ろ過ケークを得た。また12.5gのHPO(濃度85%)と6.3gのCuClとを、90gの水に加えて、溶かしてから、上記ろ過ケークと混合して、含浸させ、乾燥し、550℃で2時間にわたってか焼した。その結果、リンおよび遷移金属Cuを含んでいる改質ゼオライトベータB2を得た。これの無水物の化学組成は、0.1NaO・7.0Al・6.9P・3.5CuO・82.5SiOであった。
【0084】
〔実施例3〕
100g(無水ベース)のゼオライトベータを、NaOの含有量が0.2重量%未満になるまでNHCl溶液で交換洗浄し、ろ過して、ろ過ケークを得た。また4.2gのNHPOを60gの水に溶かしてから、上記ろ過ケークと混合して、含浸させ、乾燥し、550℃で2時間にわたってか焼し、サンプルを得た。該サンプルをCu(NO溶液(濃度5%)と1:5の固体:液体比で、80〜90℃で2時間にわたって交換し、ろ過した。所定量に達するまで、この交換を数回行い、次いで、550℃で2時間にわたってか焼した。その結果、リンおよび遷移金属Cuを含んでいる改質ゼオライトベータB3を得た。これの無水物の化学組成は、0.03NaO・2.0Al・2.5P・2.1CuO・93.4SiOであった。
【0085】
〔実施例4〕
100g(無水ベース)のゼオライトベータを、NaOの含有量が0.2重量%未満になるまでNHCl溶液で交換洗浄し、ろ過して、ろ過ケークを得た。また7.1gのHPO(濃度85%)と8.1gのFe(NO・9HOとを、90gの水に加えて溶かしてから、上記ろ過ケークと混合して、含浸させ、乾燥した。得られたサンプルを、550℃で2時間にわたってか焼した。その結果、リンおよび遷移金属Feを含んでいる改質ゼオライトベータB4を得た。これの無水物の化学組成は、0.1NaO・6.0Al・4.1P・1.5Fe・88.3SiOであった。
【0086】
〔実施例5〕
100g(無水ベース)のゼオライトベータを、NaOの含有量が0.2重量%未満になるまでNHCl溶液で交換洗浄し、ろ過して、ろ過ケークを得た。また10.3gのHPO(濃度85%)と39.6gのCo(NO・6HOとを、90gの水に加えて溶かしてから、上記ろ過ケークと混合して、含浸させ、乾燥し、550℃で2時間にわたってか焼した。その結果、リンおよび遷移金属Coを含んでいる改質ゼオライトベータB5を得た。これの無水物の化学組成は、0.1NaO・6.7Al・5.4P・9.6Co・78.2SiOであった。
【0087】
〔実施例6〕
100g(無水ベース)のゼオライトベータを、NaOの含有量が0.2重量%未満になるまでNHCl溶液で交換洗浄し、ろ過して、ろ過ケークを得た。また7.5gのHPO(濃度85%)と6.7gのNi(NO・6HOとを、90gの水に加えて溶かしてから、上記ろ過ケークと混合して、含浸させ、乾燥した。得られたサンプルを、550℃で2時間にわたってか焼した。その結果、リンおよび遷移金属Niを含んでいる改質ゼオライトベータB6を得た。これの無水物の化学組成は、0.08NaO・6.0Al・4.3P・1.8NiO・87.8SiOであった。
【0088】
〔実施例7〕
100g(無水ベース)のゼオライトベータを、NaOの含有量が0.2重量%未満になるまでNHCl溶液で交換洗浄し、ろ過して、ろ過ケークを得た。また6.9gのHPO(濃度85%)と16.1gのMn(NOとを、90gの水に加えて溶かしてから、上記ろ過ケークと混合して、含浸させ、乾燥した。得られたサンプルを、550℃で2時間にわたってか焼した。その結果、リンおよび遷移金属Mnを含んでいる改質ゼオライトベータB7を得た。これの無水物の化学組成は、0.09NaO・1.9Al・3.8P・6.4Mn・87.8SiOであった。
【0089】
〔実施例8〕
結晶化製品としての100g(無水ベース)のゼオライトベータを、NaOの含有量が0.2重量%未満になるまでNHCl溶液で交換洗浄し、ろ過して、ろ過ケークを得た。また2.5gのHPO(濃度85%)と6.1gのZn(NO・6HOとを、90gの水に加えて溶かしてから、上記ろ過ケークと混合して、含浸させ、乾燥した。得られたサンプルを、550℃で2時間にわたってか焼した。その結果、リンおよび遷移金属Znを含んでいる改質ゼオライトベータB8を得た。これの無水物の化学組成は、0.15NaO・1.3Al・1.5P・1.6ZnO・95.8SiOであった。
【0090】
〔実施例9〕
100g(無水ベース)のゼオライトベータを、NaOの含有量が0.2重量%未満になるまでNHCl溶液で交換洗浄し、ろ過して、ろ過ケークを得た。また7.1gのHPO(濃度85%)と4.2gのSnCl・5HOとを、90gの水に加えて溶かしてから、上記ろ過ケークと混合して、含浸させ、乾燥した。得られたサンプルを、550℃で2時間にわたってか焼した。その結果、リンおよび遷移金属Snを含んでいる改質ゼオライトベータB9を得た。これの無水物の化学組成は、0.11NaO・6.3Al・4.1P・1.7SnO・87.8SiOであった。
【0091】
〔実施例10〕
100g(無水ベース)のゼオライトベータを、NaOの含有量が0.2重量%未満になるまでNHCl溶液で交換洗浄し、ろ過して、ろ過ケークを得た。また7.1gのHPO(濃度85%)と、3.2gのCu(NO・3HOと、5.3gのFe(NO・9HOとを、90gの水に加えて溶かしてから、上記ろ過ケークと混合して、含浸させ、乾燥した。得られたサンプルを、550℃で2時間にわたってか焼した。その結果、リンならびに遷移金属CuおよびFeを含んでいる改質ゼオライトベータB10を得た。これの無水物の化学組成は、0.11NaO・5.9Al・4.1P・1.0CuO・1.0Fe・87.9SiOであった。
【0092】
本発明の炭化水素転換触媒、およびそれを調製するための方法を、実施例11〜20を使って説明する。上記触媒の調製中に使用する出発物質は以下の通りである。
【0093】
粘土:
ハロイサイト(Suzhou Porcelain Clay Corporationの工業製品、その固形分は71.6重量%である);
カオリン(Suzhou Kaolin Corporationの工業製品、その固形分は76重量%である);
モンモリロナイト(Zhejiang Fenghong Clay Co., Ltdの工業製品、その固形分は95重量%である)。
【0094】
熱耐性無機酸化物またはその前躯体:
シュードベーマイト(Shandong Aluminum Factoryの工業製品、その固形分は62.0重量%である);
アルミナゾル(Qilu Catalyst Factoryの製品、Alの含有量は21.5重量%である);
シリカゾル(Beijing Chemical Factoryの製品、シリカの含有量は16.0重量%である)。
【0095】
大孔径ゼオライトの全ては、Qilu Catalyst Factoryの製品であり、その工業商標は以下の通りである:
DASY2.0(物理化学的パラメーターは次の通り:単位格子の寸法は2.446nmであり、NaOの含有量は1.1重量%であり、希土類酸化物REの含有量は2.0重量%である(この内、酸化ランタンの含有量は1.06重量%であり、酸化セリウムの含有量は0.26重量%であり、他の希土類酸化物の含有量は0.68重量%である));
USY(物理化学的パラメーターは次の通り:単位格子の寸法は2.445nmであり、NaOの含有量は0.36重量%である);
DASY0.0(物理化学的パラメーターは次の通り:単位格子の寸法は2.443nmであり、NaOの含有量は0.85重量%である);
DASY6.0(物理化学的パラメーターは次の通り:単位格子の寸法は2.451nmであり、NaOの含有量は1.6重量%であり、希土類酸化物REの含有量は6.2重量%である(この内、酸化ランタンの含有量は3.29重量%であり、酸化セリウムの含有量は0.81重量%であり、他の希土類酸化物の含有量は2.10重量%である));
REHY(物理化学的パラメーターは次の通り:単位格子の寸法は2.465nmであり、NaOの含有量は3.2重量%であり、希土類酸化物REの含有量は7.0重量%である(この内、酸化ランタンの含有量は3.71重量%であり、酸化セリウムの含有量は0.91重量%であり、他の希土類酸化物の含有量は2.38重量%である)。
【0096】
MFI構造を有するゼオライトの全ては、Qilu Catalyst Factoryの製品であり、その工業商標は以下の通りである:
ZSP−2(SiO/Al=70、NaOの含有量は0.03重量%であり、Pの含有量は4.9重量%であり、Feの含有量は2.1重量%である);
ZRP−1(SiO/Al=30、NaOの含有量は0.17重量%であり、希土類酸化物REの含有量は1.4%である(その内、酸化ランタンの含有量は0.84重量%であり、酸化セリウムの含有量は0.18重量%であり、他の希土類酸化物の含有量は0.38重量%である);
ZSP−1(SiO/Al=30、NaOの含有量は0.1重量%であり、Pの含有量は2.0重量%であり、Feの含有量は0.9重量%である);
ZRP−5(SiO/Al=50、NaOの含有量は0.05重量%であり、Pの含有量は4.0重量%である)。
【0097】
〔実施例11〕
6.3kgのハロイサイトを25.0kgの脱カチオン水に加え、スラリーにした。該スラリーに4.0kgのシュードベーマイトを加え、塩酸でpHを2に調整し、均一に攪拌し、70℃で1時間にわたって放置して熟成させた。次いで、1.4kgのアルミナゾル(熟成の前および後に加える熱耐性無機酸化物(またはその前躯体)の重量比は1:0.12である)を加え、均一に攪拌した後、0.6kg(無水ベース)の改質ゼオライトベータB1と、0.6kg(無水ベース)の超安定性ゼオライト−Y DASY2.0と、1.5kg(無水ベース)のMFI構造を有するゼオライトZSP−2との混合物を水でスラリーにすることによって得られた7.7kgのスラリーを加え、均一に攪拌した。このようにして、22.5重量%の固形分を有するスラリーを得た。生じたスラリーを噴霧乾燥し、20〜150μmの直径を有する粒子に250℃で成形した。次いで、得られた粒子を550℃で2時間にわたってか焼し、触媒C1を得た。C1の組成を表1に示す。
【0098】
〔実施例12〕
改質ゼオライトベータB1をそれと同量の改質ゼオライトベータB2に代えたこと以外は、実施例11に記載の方法に従って、触媒C2を調製した。C2の組成を表1に示す。
【0099】
〔実施例13〕
改質ゼオライトベータB1をそれと同量の改質ゼオライトベータB4に代えたこと以外は、実施例11に記載の方法に従って、触媒C3を調製した。C3の組成を表1に示す。
【0100】
〔実施例14〕
改質ゼオライトベータB1をそれと同量の改質ゼオライトベータB10に代えたこと以外は、実施例11に記載の方法に従って、触媒C4を調製した。C4の組成を表1に示す。
【0101】
〔比較例1〕
本比較例において、リンおよび遷移金属で改質されていないゼオライトベータを含んでいる参考触媒、およびそれを調製するための方法を記載する。
【0102】
改質ゼオライトベータB1を、リンおよび遷移金属で改質されていないことを除いて実施例1と同じであるゼオライトベータに代えたこと以外は、実施例11に記載の方法に従って、参考触媒CB1を調製した。CB1の組成を表1に示す。
【0103】
〔比較例2〕
本比較例において、ゼオライトベータを含んでいない参考触媒、およびそれを調製するための方法を開示する。
【0104】
ゼオライトベータを加えず、超安定性ゼオライト−Yの量を1.2kg(無水ベース)にしたこと以外は、実施例11に記載の方法に従って、参考触媒CB2を調製した。CB2の組成を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
〔実施例15〕
4.0kgのシュードベーマイトを、12.5kgの脱カチオン水に加え、硝酸でpHを2に調整してから、均一に攪拌し、50℃で5時間にわたって放置することによって熟成させた。このようにして、熟成生成物を得た。
【0107】
また2.3kgのアルミナゾル(熟成の前および後に加える熱耐性無機酸化物(またはその前躯体)の重量比は1:0.2である)を、2.5kgの脱カチオン水に加えた。そこに4.0kgのカオリンを加え、スラリーにし、均一に攪拌した。次いで、0.5kg(無水ベース)の改質ゼオライトベータB3と、2.5kg(無水ベース)の超安定性ゼオライト−Y USYと、1.0kg(無水ベース)のMFI構造を有するゼオライトZRP−1との混合物を脱カチオン水でスラリーにすることによって得られた11.4kgのスラリー、ならびに上記熟成生成物を加え、均一に攪拌した。このようにして、27.2重量%の固形分を有するスラリーを得た。生じたスラリーを噴霧乾燥し、20〜150μmの直径を有する粒子に220℃で成形した。次いで、得られた粒子を520℃で4時間にわたってか焼し、触媒C5を得た。C5の組成を表2に示す。
【0108】
〔実施例16〕
3.9kgのカオリンおよび1.1kgのモンモリロナイトを18.0kgの脱カチオン水に加え、スラリーにした。4.0kgのシュードベーマイト(熱耐性無機酸化物の前躯体を熟成前に加えた)をそこに加え、塩酸でpHを3に調整し、均一に攪拌して、60℃で2時間にわたって放置することにより熟成させた。次いで、2.0kg(無水ベース)のリンおよび遷移金属Coを含んでいる改質ゼオライトベータB5と、0.5kg(無水ベース)のゼオライト−Y REHYと、1.0kg(無水ベース)のMFI構造を有するゼオライトとの混合物を、水でスラリーにすることによって得られた10.0kgのスラリーを加え、均一に攪拌した。このようにして、27.0重量%の固形分を有するスラリーを得た。生じたスラリーを噴霧乾燥し、20〜150μmの直径を有する粒子に280℃で成形した。次いで、得られた粒子を580℃で2.5時間にわたってか焼し、触媒C6を得た。C6の組成を表2に示す。
【0109】
〔実施例17〕
4.2kgのハロイサイトを17.8kgの脱カチオン水に加え、スラリーにした。4.0kgのシュードベーマイトをそこに加え、塩酸でpHを3.5に調整し、均一に攪拌して、75℃で0.5時間にわたって放置することにより熟成させた。2.3kgのアルミナゾル(熟成の前および後に加える熱耐性無機酸化物(またはその前躯体)の重量比は1:0.2である)をそこに加え、均一に攪拌した。次いで、1.0kg(無水ベース)のリンおよび遷移金属Niを含んでいる改質ゼオライトベータB6と、1.0kg(無水ベース)の超安定性ゼオライト−Y DASY0.0と、2.0kg(無水ベース)のMFI構造を有するゼオライトZSP−1との混合物を、水でスラリーにすることによって得られた11.4kgのスラリーを加え、均一に攪拌した。このようにして、25.2重量%の固形分を有するスラリーを得た。生じたスラリーを噴霧乾燥し、20〜150μmの直径を有する粒子に250℃で成形した。次いで、得られた粒子を600℃で1時間にわたってか焼し、触媒C7を得た。C7の組成を表2に示す。
【0110】
〔実施例18〕
4.9kgのハロイサイトを20.0kgの脱カチオン水に加え、スラリーにした。4.0kgのシュードベーマイトをそこに加え、塩酸でpHを3.5に調整し、均一に攪拌して、75℃で0.5時間にわたって放置することにより熟成させた。2.3kgのアルミナゾル(熟成の前および後に加える熱耐性無機酸化物(またはその前躯体)の重量比は1:0.2である)をそこに加え、均一に攪拌した。次いで、0.2kg(無水ベース)のリンおよび遷移金属Mnを含んでいる改質ゼオライトベータB7と、0.8kg(無水ベース)の超安定性ゼオライト−Y DASY2.0と、2.5kg(無水ベース)のMFI構造を有するゼオライトZSP−1との混合物を、水でスラリーにすることによって得られた10.0kgのスラリーを加え、均一に攪拌した。このようにして、24.3重量%の固形分を有するスラリーを得た。生じたスラリーを噴霧乾燥し、20〜150μmの直径を有する粒子に250℃で成形した。次いで、得られた粒子を600℃で1時間にわたってか焼し、触媒C8を得た。C8の組成を表2に示す。
【0111】
〔実施例19〕
3.5kgのハロイサイトを15.6kgの脱カチオン水に加え、スラリーにした。4.0kgのシュードベーマイトをそこに加え、塩酸でpHを4.0に調整し、均一に攪拌して、60℃で1時間にわたって放置することにより熟成させた。4.7kgのアルミナゾル(熟成の前および後に加える熱耐性無機酸化物(またはその前躯体)の重量比は1:0.4である)をそこに加え、均一に攪拌した。次いで、0.5kg(無水ベース)の改質ゼオライトベータB8と、0.5kg(無水ベース)の超安定性ゼオライト−Y DASY6.0と、3.0kg(無水ベース)のMFI構造を有するゼオライトZRP−5との混合物を、水でスラリーにすることによって得られた11.4kgのスラリーを加え、均一に攪拌した。このようにして、25.5重量%の固形分を有するスラリーを得た。生じたスラリーを噴霧乾燥し、20〜150μmの直径を有する粒子に220℃で成形した。次いで、得られた粒子を550℃で2時間にわたってか焼し、触媒C9を得た。C9の組成を表2に示す。
【0112】
〔実施例20〕
3.2kgのハロイサイトを12.0kgの脱カチオン水に加え、スラリーにした。塩酸でスラリーのpHを3に調整し、均一に攪拌して、55℃で6時間にわたって放置することにより熟成させた。21.9kgのシリカゾルおよび2.3kgのアルミナゾル(熟成の前および後に加える熱耐性無機酸化物(またはその前躯体)の重量比は1:2である)をそこに加え、均一に攪拌した。次いで、1.0kg(無水ベース)の改質ゼオライトベータB9と、3.0kg(無水ベース)のMFI構造を有するゼオライトZRP−5との混合物を、水でスラリーにすることによって得られた11.4kgのスラリーを加え、均一に攪拌した。このようにして、19.7重量%の固形分を有するスラリーを得た。生じたスラリーを噴霧乾燥し、20〜150μmの直径を有する粒子に250℃で成形した。次いで、得られた粒子を550℃で2時間にわたってか焼し、触媒C10を得た。C10の組成を表2に示す。
【0113】
【表2】

【0114】
〔実施例21〜24〕
本発明において提供される炭化水素転換触媒の触媒性能を、実施例21〜24を使って説明する。
【0115】
触媒C1〜C4を、100%の水蒸気を用いて800℃で14時間にわたって熟成させた。小型固定流動床反応器を使い、180gの上記触媒を該反応器に供給した。反応温度が560℃であり、触媒の油に対する比が10であり、重量空間速度が4h−1である条件下において、減圧ガス油と水蒸気との混合物(水蒸気の量は減圧ガス油の25重量%である)を導入することによって、熟成させた各触媒をそれぞれ評価した。減圧ガス油の特性を表3に示す。また評価の結果を表4に示す。
【0116】
〔比較例3〜4〕
参考触媒の触媒性能を、比較例3〜4を使って説明する。
【0117】
実施例21に記載の方法に従って同じ原料油を使って、参考触媒CB1およびCB2を評価した。その結果を表4に示す。
【0118】
【表3】

【0119】
【表4】

【0120】
表4の結果は、同じ条件で熟成され、且つ、ゼオライトの含有量が同じである参考触媒CB1(ゼオライトベータは改質されていない)と比べて、本発明の炭化水素転換触媒は、重油をクラッキングする能力を1.3〜2%向上させ、LPGの収率を0.6〜2.1%上げ、軽質オレフィン(C+C+C)の収率を1〜2%上げたことを示している。また表4の結果は、ゼオライトベータを含んでいない参考触媒CB2と比べて、本発明の炭化水素転換触媒は、重油をクラッキングする能力を1.9〜2.6%向上させ、LPGの収率を1.0〜2.5%上げ、軽質オレフィン(C+C+C)の収率を1.8〜2.8%上げたことを示している。
【0121】
〔実施例25〜30〕
反応条件が異なる場合の、本発明において提供される炭化水素転換触媒の触媒性能を、実施例25〜30を使って説明する。
【0122】
触媒C5〜C10を、100%水蒸気を用いて800℃で17時間にわたって熟成させた。小型固定流動床反応器を使い、180gの上記触媒を該反応器に供給した。常圧残油を導入することによって、熟成させた各触媒をそれぞれ評価した。常圧残油の特性を表3に示す。また反応条件および生成物の分布を表5に示す。
【0123】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
該触媒の総重量を基準として、1〜60重量%のゼオライト混合物、5〜99重量%の熱耐性無機酸化物、および0〜70重量%の粘土を含んでいる炭化水素転換触媒であって、
上記ゼオライト混合物は、該ゼオライト混合物の総重量を基準として、1〜75重量%のリンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータ、25〜99重量%のMFI構造を有するゼオライト、および0〜74重量%の大孔径ゼオライトを含んでおり、
上記リンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータの無水物の化学式は、酸化物の質量パーセントで、(0−0.3)NaO・(0.5−10)Al・(1.3−10)P・(0.7−15)M・(64−97)SiOとして表され、
式中、遷移金属Mは、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、ZnおよびSnから成る群から選択される1種以上であり、xは遷移金属Mの原子数を表し、yは遷移金属Mの酸化状態を満足するために必要とされる数を表す、炭化水素転換触媒。
【請求項2】
上記炭化水素転換触媒が、該触媒の総重量を基準として、10〜50重量%の上記ゼオライト混合物、10〜70重量%の上記熱耐性無機酸化物、および0〜60重量%の上記粘土を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の炭化水素転換触媒。
【請求項3】
上記リンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータの無水物の化学式が、(0−0.2)NaO・(1−9)Al・(1.5−7)P・(0.9−10)M・(75−95)SiOとして表されることを特徴とする、請求項1に記載の炭化水素転換触媒。
【請求項4】
上記リンおよび遷移金属Mで改質されたゼオライトベータの無水物の化学式が、(0−0.2)NaO・(1−9)Al・(2−5)P・(1−3)M・(82−95)SiOとして表されることを特徴とする、請求項3に記載の炭化水素転換触媒。
【請求項5】
上記遷移金属Mが、Fe、Co、NiおよびCuから成る群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の炭化水素転換触媒。
【請求項6】
上記遷移金属Mが、Feおよび/またはCuであることを特徴とする、請求項5に記載の炭化水素転換触媒。
【請求項7】
上記MFI構造を有するゼオライトが、ZSM−5ゼオライトおよびZRPゼオライトから成る群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の炭化水素転換触媒。
【請求項8】
上記MFI構造を有するゼオライトが、希土類を含んでいるZRPゼオライト、リンを含んでいるZRPゼオライト、リンおよび希土類を含んでいるZRPゼオライト、リンおよびアルカリ土類金属を含んでいるZRPゼオライト、ならびにリンおよび遷移金属を含んでいるZSPゼオライトから成る群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項7に記載の炭化水素転換触媒。
【請求項9】
上記大孔径ゼオライトが、フォージャサイト、ゼオライトL、ゼオライトベータ、ゼオライトΩ、モルデナイト、およびZSM−18ゼオライトから成る群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の炭化水素転換触媒。
【請求項10】
上記大孔径ゼオライトが、Y型ゼオライト、リンおよび/または希土類を含んでいるY型ゼオライト、超安定性Y型ゼオライト、ならびにリンおよび/または希土類を含んでいる超安定性Y型ゼオライトから成る群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項9に記載の炭化水素転換触媒。
【請求項11】
上記粘土が、カオリン、ハロイサイト、モンモリロナイト、珪藻土、エンデライト、サポナイト、レクトライト、セピオライト、アタパルガイト、ヒドロタルサイト、およびベントナイトから成る群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の炭化水素転換触媒。
【請求項12】
上記粘土が、カオリン、ハロイサイト、およびモンモリロナイトから成る群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の炭化水素転換触媒。

【公表番号】特表2010−501341(P2010−501341A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525892(P2009−525892)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/CN2006/002559
【国際公開番号】WO2008/034299
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(503191287)中国石油化工股▲ふん▼有限公司 (35)
【出願人】(509059424)中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院 (14)
【Fターム(参考)】