説明

炭化珪素半導体装置

【課題】高温によるモールド樹脂の劣化を抑制できるようにする。
【解決手段】第1半導体チップ7の発熱によって加熱されたモールド樹脂11の温度を第2半導体チップ8に形成された温度センサによって検出する。これにより、温度センサでの検出結果に基づいて半導体パワー素子の動作を制御することで高温によるモールド樹脂11の劣化を抑制することができる。例えば、この温度がモールド樹脂11の耐熱温度よりも低く設定した温度閾値に達したときに、半導体パワー素子の動作を停止させるか、もしくは、その温度閾値を超えない程度に半導体パワー素子に流れる電流を制限する等により、高温によるモールド樹脂11の劣化を抑制することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素(以下、SiCという)にて構成される半導体パワー素子を備えたSiC半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、シリコン(Si)を半導体として用いて構成される半導体パワー素子を備えた半導体モジュールがある。例えば、半導体パワー素子をヒートシンクなどと呼ばれる金属製の放熱板に搭載したのち、樹脂モールドして一体構造とすることで半導体モジュールが構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−182074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、高圧、大電流を適用可能とする半導体パワー素子としてSiCにて構成されるものが注目されている。このようなSiCにて構成される半導体パワー素子についても、上記の従来技術と同様に、放熱板に搭載したのち、樹脂モールドして一体構造とした半導体モジュールとすることができる。
【0005】
しかしながら、SiCにて半導体パワー素子を構成する場合、SiC自体が耐熱性に優れていることから、例えば250℃程度まで耐えることができるものの、それを覆うモールド樹脂はそれ以下の温度までしか耐えられない。例えば、シリコーンやエポキシ樹脂等では、耐熱温度が150〜200℃程度となっている。このため、耐熱性に優れたSiCの耐熱温度を基準として素子動作を行うと、モールド樹脂が劣化し、クラックが発生したりひび割れが発生したりするという問題がある。
【0006】
従来、シリコンにて構成される半導体パワー素子では、素子自身の過昇温が問題とされることはあったが、高温下によるモールド樹脂の劣化が問題とはされていない。ところが、SiCにて構成される半導体パワー素子では、このようなモールド樹脂の劣化の問題が発生する。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、SiCにて構成される半導体パワー素子を有するSiC半導体装置において、高温によるモールド樹脂の劣化を抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、放熱板(2)の上に絶縁材(3)を介して配線パターン(4)に実装され、半導体パワー素子が形成されてなるSiCにて構成された第1半導体チップ(7)を備え、該第1半導体チップ(7)をモールド樹脂(11)にて覆ったSiC半導体装置において、モールド樹脂(11)のうち第1半導体チップ(7)の周囲を囲み該第1半導体チップ(7)に隣接している箇所の温度を検出する温度センサを備えていることを特徴としている。
【0009】
このように、第1半導体チップ(7)の発熱によって加熱されたモールド樹脂(11)の温度を温度センサによって検出することができるため、温度センサでの検出結果に基づいて半導体パワー素子の動作を制御することで高温によるモールド樹脂(11)の劣化を抑制することができる。例えば、この温度がモールド樹脂(11)の耐熱温度よりも低く設定した温度閾値に達したときに、半導体パワー素子の動作を停止させるか、もしくは、その温度閾値を超えない程度に半導体パワー素子に流れる電流を制限する等により、高温によるモールド樹脂(11)の劣化を抑制することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、温度センサは、第1半導体チップ(7)とは別チップとされた第2半導体チップ(8)に形成され、該第2半導体チップ(8)は、第1半導体チップ(7)との間にモールド樹脂(11)を挟んだ状態で、第1半導体チップ(7)から所定距離離間して配置され、該第2半導体チップ(8)の一面が第1半導体チップ(7)の一面に対して対向配置されていることを特徴としている。
【0011】
このように、第2半導体チップ(8)と第1半導体チップ(7)との間にモールド樹脂(11)が挟まれ、第2半導体チップ(8)の一面が第1半導体チップ(7)の一面に対して対向配置しつつ、第1半導体チップ(7)から第2半導体チップ(8)が所定距離離間して配置されるようにすることができる。このようにすれば、第1半導体チップ(7)に隣接している場所の温度を的確に検出できる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、第2半導体チップ(8)は、絶縁材(3)からの高さが第1半導体チップ(7)と同じ高さとされていることを特徴としている。
【0013】
これにより、より的確に、第1半導体チップ(7)の発熱によって最も高温になる樹脂の近傍の温度をほぼ温度低下なく検出できるようにすることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、第2半導体チップ(8)は、絶縁材(3)上に固体状の樹脂支持台(11a)を介して配置され、この樹脂支持台(11a)にて支持された状態でモールド樹脂(11)による樹脂モールドが行われていることを特徴としている。
【0015】
このように、予め固形にしておいた固体状の樹脂支持台(11a)を用いて、この支持台(11a)の上に第2半導体チップ(8)を配置し、この状態で樹脂モールドを行うようにすることができる。このようにすれば、第2半導体チップ(8)と絶縁体(3)との距離を一定に保った状態で樹脂モールドを行うことができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、樹脂支持台(11a)とモールド樹脂(11)が同一材料であることを特徴としている。
【0017】
このように、樹脂支持台(11a)とモールド樹脂(11)を同一材料にすることで、双方の熱膨張係数が等しくなるため、第1半導体チップ(7)の発熱の際でも、双方の間で応力が発生しないようにできる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、第1半導体チップ(7)のうち絶縁材(3)とは反対側となる表面側に、絶縁部材(16)が配置され、第2半導体チップ(8)は、絶縁部材(16)を介して第1半導体チップ(7)の表面上に配置されていることを特徴としている。
【0019】
このように第2半導体チップ(8)を第1半導体チップ(7)の上に配置する構造とすることで、第2半導体チップ(8)に形成される温度センサを発熱部により近づけることができる。また、発熱部位の中でも放熱板(2)から最も遠い場所が最も高温になる可能性が高いことから、第2半導体チップ(8)を放熱部位の中でも最も放熱板(2)から遠い位置である第1半導体チップ(7)の上に搭載すれば、最も高温になる部位の温度を的確に検出することが可能となる。
【0020】
請求項7に記載の発明では、請求項1ないし6のいずれか1つに記載のSiC半導体装置を冷媒が循環させられる冷却機構にて冷却する半導体パワー素子制御システムであって、温度センサにてモールド樹脂(11)の温度上昇が検出されると、冷媒の流動量の増加もしくは冷媒の温度低下を行うようになっていることを特徴としている。
【0021】
このように、モールド樹脂(11)の温度上昇が検出されると、冷却機構内に循環させられる冷媒の流量を増やしたり、冷媒温度を下げるなどの制御を行うことで、より放熱効果を高めるようにすることができる。このようにすれば、半導体パワー素子を動作させつつ、モールド樹脂(11)の温度上昇を防ぐこともできる。
【0022】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるSiCにて構成された半導体パワー素子を備えたSiC半導体装置の断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態にかかるSiCにて構成された半導体パワー素子を備えたSiC半導体装置の断面図である。
【図3】図2に示すSiC半導体装置の製造工程の一例を表した断面図である。断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態にかかるSiCにて構成された半導体パワー素子を備えたSiC半導体装置の断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態にかかるSiCにて構成された半導体パワー素子を備えたSiC半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0025】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態にかかるSiCにて構成された半導体パワー素子を備えたSiC半導体装置の断面図である。この図を参照して、本実施形態にかかるSiC半導体装置の詳細について説明する。
【0026】
図1に示すように、SiC半導体装置1には、放熱板2の上に、絶縁材3を介して配線パターン4が形成され、この配線パターン4の所望位置の上にはんだ5、6を介してパワー素子が形成された第1半導体チップ7および温度センサが形成された第2半導体チップ8が実装されている。そして、これら第1半導体チップ7および第2半導体チップ8の所望位置がボンディングワイヤ9、10を介して、配線パターン4の所望位置と電気的に接続されている。そして、これら第1、第2半導体チップ7、8およびボンディングワイヤ9、10等を覆いつつ、配線パターン4の一部をリードとして引き出して露出させられるようにモールド樹脂11が配置されている。
【0027】
放熱板2は、熱伝導率の高い銅などの金属によって形成された板状部材である。絶縁材3は、絶縁性を有しつつ、熱伝達率の高い材質によって構成され、例えばセラミックスなどによって形成された絶縁基板などで構成されている。配線パターン4は、絶縁材3の表面に形成した金属層をパターニングして形成したものや、リードフレームなどによって構成される。この配線パターン4の一部が部分的にモールド樹脂11から露出させられていることから、その露出部位を通じて外部回路との電気的接続を行うことができる。
【0028】
第1半導体チップ7は、SiCにて構成された半導体基板に対して半導体パワー素子を形成したものである。半導体パワー素子は、パワーMOSFET、IGBT、ショットキーバリアダイオード(以下、SBDという)など、通電時に発熱するどのような素子であっても良い。本実施形態では、半導体パワー素子が電流を基板垂直方向に流す縦型素子を想定し、第1半導体チップ7の裏面側に形成された電極(例えばパワーMOSFETにおけるドレイン電極やIGBTにおけるコレクタ電極)がはんだ5を介して配線パターン4に直接電気的および機械的に固定される形態を図示してある。また、第1半導体チップ7の表面側では、ボンディングワイヤ9を介して電気的に接続されているのに加えて、半導体パワー素子の種類によっては図示しないリードに電気的に接続されることで、大電流を流せる構造とされている。例えば、半導体パワー素子がパワーMOSFETやIGBTの場合には、ボンディングワイヤ9はゲート電極に電気的に接続され、リードがソース電極もしくはエミッタ電極に電気的に接続された構造とされる。
【0029】
また、第1半導体チップ7は複数の並列接続された半導体パワー素子群でも良い。こうすることで発熱を分散させつつ大電流を制御できる。
【0030】
第2半導体チップ8は、SiCにて構成された半導体基板に対して温度センサとしての機能を有する温特を有する素子が形成されたもので、例えばダイオード、トランジスタ、サーミスタもしくは熱電対などによって構成される。温度センサは、半導体パワー素子とは電気的に分離された構成とされ、この温度センサにより、モールド樹脂11のうち半導体パワー素子が形成された第1半導体チップ8の周囲を囲んでいる部分、換言すれば第1半導体チップ8に隣接している箇所の温度を検出する。
【0031】
第2半導体チップ8は、第1半導体チップ7とはモールド樹脂11を介して電気的に分離されているが、第2半導体チップ8の一面と第1半導体チップ7の一面、本実施形態の場合は第2半導体チップ8の側面と第1半導体チップ7の側面とが対向するように配置されている。また、第2半導体チップ8は、第1半導体チップ7から所定距離以内の場所に配置されており、第1半導体チップ7の発熱によって最も高温になる樹脂の近傍の温度をほぼ温度低下なく検出できるようにされている。これにより、モールド樹脂11のうち第1半導体チップ7に隣接している場所の温度を的確に検出できる。さらに、第2半導体チップ8は、絶縁材3からの高さ(絶縁材3の表面に対する法線方向への距離)が、第1半導体チップ7と実質的に同じ高さに揃えられるようにしている。これにより、より的確に、第1半導体チップ7の発熱によって最も高温になる樹脂の近傍の温度をほぼ温度低下なく検出できるようにしてある。
【0032】
ただし、第2半導体チップ8は必ずしもSiCによって構成されている必要はなく、第1半導体チップ7の発熱が樹脂を介して伝えられる温度以上を耐熱温度とする半導体材料であれば良いため、伝えられる温度によってはシリコンなどの他の半導体材料によって構成されていても良い。
【0033】
モールド樹脂11は、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂等、一般的な樹脂モールドに用いられる樹脂材料によって構成されている。このモールド樹脂11の耐熱温度は、例えば150〜200℃となっており、SiCの耐熱温度(250℃程度)よりも低い温度となっている。
【0034】
以上のような構造により、本実施形態にかかるSiC半導体装置1が構成されている。このように構成されたSiC半導体装置1では、第1半導体チップ7に形成された半導体パワー素子を動作させるときに、半導体パワー素子の発熱によって第1半導体チップ7を覆っているモールド樹脂11の耐熱温度を超えてしまい、モールド樹脂11が劣化してクラックやひび割れなどが発生する可能性がある。しかしながら、第1半導体チップ7の発熱によって加熱されたモールド樹脂11の温度を第2半導体チップ8に形成された温度センサによって検出することができるため、温度センサでの検出結果に基づいて半導体パワー素子の動作を制御することで高温によるモールド樹脂11の劣化を抑制することができる。例えば、この温度がモールド樹脂11の耐熱温度よりも低く設定した温度閾値に達したときに、半導体パワー素子の動作を停止させるか、もしくは、その温度閾値を超えない程度に半導体パワー素子に流れる電流を制限する等により、高温によるモールド樹脂11の劣化を抑制することが可能となる。
【0035】
すなわち、予め求めておいた電圧−温度特性表に基づいて、第2半導体チップ8に形成された温度センサに対して外部から温度検出用の電流を通電し、そのときに出力される電圧に基づいて、その電圧に対応する温度を求めることにより、モールド樹脂11の温度を検出する。このとき、温度検出用の電流としては、一定電流を長時間流すのではなく、パルス電流を流すようにしている。このようにすることで、電流を流し続けることによる第2半導体チップ8の自己発熱を防止することができ、より第1半導体チップ7の発熱に起因するモールド樹脂11の温度上昇のみを検出することが可能となる。したがって、モールド樹脂11を劣化させることなく、半導体パワー素子を動作させることが可能となる。
【0036】
また、SiC半導体装置1は、冷却水などの冷媒が循環させられる冷却機構に対して放熱板2が接触させられた半導体パワー素子制御システムに組み込むことができる。この場合、例えば、上記したように温度センサで検出された温度が温度閾値に達するなどにより、モールド樹脂11の温度上昇が検出されると、冷却機構内に循環させられる冷媒の流量を増やしたり、冷媒温度を下げるなどの制御を行うことで、より放熱効果を高めるようにすることができる。このようにしても、半導体パワー素子を動作させつつ、モールド樹脂11の温度上昇を防ぐこともできる。
【0037】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態のSiC半導体装置1は、第1実施形態に対して第2半導体チップ8の配線引出構造の構成を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0038】
図2は、本実施形態にかかるSiCにて構成された半導体パワー素子を備えたSiC半導体装置の断面図である。この図に示されるように、本実施形態では、第2半導体チップ8がリード12、13に対して電気的に接続された構造とされている。リード12、13は、一方のリード12の一端が第2半導体チップ8の裏面側にはんだ14を介して電気的に接続され、他方のリード13の一端が第2半導体チップ8の表面側にはんだ15を介して電気的に接続されている。そして、各リード12、13の他端がモールド樹脂11から露出させられており、この露出部位において外部との電気的な接続が行えるようになっている。
【0039】
また、リード12、13のうち、リード12が絶縁材3側に向けて配置されているが、リード12と絶縁材3とは所定距離離間している。このような配置とすることで、第2半導体チップ8の高さを第1半導体チップ7の高さに近づけ、これらが実質的に同じ高さとなるようにすることで、より的確に、第1半導体チップ7の発熱によって最も高温になる樹脂の近傍の温度をほぼ温度低下なく検出できるようにしてある。
【0040】
このように、リード12、13を用いて第2半導体チップ8と外部との電気的接続構造を構成しても良い。このような構造は、例えば温度センサとしてサーミスタや熱電対などを用いる場合に好適である。
【0041】
なお、このような構造のSiC半導体装置1の製造において、リード12、13の露出部位を保持した状態でモールド樹脂11による樹脂モールドを行うことにより、第2半導体チップ8と絶縁材3との距離を一定に保つことができるが、次のような手法によって製造することもできる。例えば、図3に示すように、予め固形にしておいた固体状の樹脂支持台11aを用いて、この支持台11aの上にリード12、13との電気的な接続を行った後の第2半導体チップ8を配置し、この状態で樹脂モールドを行うようにすると良い。このようにしても、第2半導体チップ8と絶縁材3との距離を一定に保った状態で樹脂モールドを行うことができる。この場合、樹脂支持台11aとモールド樹脂11が同一材料であると好ましい。このように、樹脂支持台11aとモールド樹脂11を同一材料にすることで、双方の熱膨張係数が等しくなるため、第1半導体チップ7の発熱の際でも、双方の間で応力が発生しないようにできる。
【0042】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態のSiC半導体装置1は、第1実施形態に対して第2半導体チップ8の配置場所を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0043】
図4は、本実施形態にかかるSiCにて構成された半導体パワー素子を備えたSiC半導体装置の断面図である。この図に示されるように、本実施形態では、第2半導体チップ8が第1半導体チップ7よりも寸法が小さいものである場合において、第2半導体チップ8を第1半導体チップ7の表面上に配置した構造としている。第1半導体チップ7のうち絶縁材3とは反対側となる表面側には絶縁部材16が配置されており、この絶縁部材16が第2半導体チップ8との間に配置されることで、第1半導体チップ7と第2半導体チップ8との間の絶縁が図られている。より詳しくは、第2半導体チップ8の表裏面がはんだ14、15を介してリード12、13に電気的に接続された構造とされているが、リード12と第1半導体チップ7との間に絶縁部材16を配置している。この絶縁部材16は、第1半導体チップ7の上に別部品として備えられるものであっても良いし、第1半導体チップ7の表面予め形成しておいた絶縁膜などであっても良い。なお、ここではリード12、13の引出部位が図示されていないが、紙面垂直方向に引出部位が設けられている。
【0044】
このように第2半導体チップ8を第1半導体チップ7の上に配置する構造は、第2半導体チップ8に形成される温度センサを発熱部により近づけることができるし、単に第2半導体チップ8を第1半導体チップ7の上に搭載するだけであるため、製造し易い。また、発熱部位の中でも放熱板2から最も遠い場所が最も高温になる可能性が高いことから、第2半導体チップ8を放熱部位の中でも最も放熱板2から遠い位置である第1半導体チップ7の上に搭載すれば、最も高温になる部位の温度を的確に検出することが可能となる。
【0045】
したがって、第2半導体チップ8を第1半導体チップ7の上に搭載することにより、最も高温になる部位の温度をより的確に検出することが可能な構造にできる。なお、ここでは温度センサが形成された第2半導体チップ8の電気的な配線引出構造を第2実施形態のようにリード12、13とした場合について説明したが、第1実施形態のようにボンディングワイヤ10を用いる形態としても良い。
【0046】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態のSiC半導体装置1は、第1実施形態に対して放熱構造を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0047】
図5は、本実施形態にかかるSiCにて構成された半導体パワー素子を備えたSiC半導体装置の断面図である。この図に示されるように、本実施形態では、第1半導体チップ7の表面側にも放熱板17を配置すると共に絶縁材18を介して配線パターン19を形成し、配線パターン19と第1半導体チップ7の表面側の所望部位とがはんだ20を介して電気的に接続された構造としている。このように、第1半導体チップ7の表面側にも放熱板17を備える構造とすることもできる。このように、より放熱効果を高めた構造についても、第1実施形態と同様に温度センサを備えた第2半導体チップ8を備えることができ、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0048】
(他の実施形態)
上記第1、第2実施形態では、第1、第2半導体チップ7、8のように、半導体パワー素子が形成されるチップと温度センサが形成されるチップを別チップとする場合について説明したが、これらを同じ1チップ内に形成しても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 SiC半導体装置
2 放熱板
3 絶縁材
4 配線パターン
7 第1半導体チップ
8 第2半導体チップ
11 モールド樹脂
11a 樹脂支持台
12、13 リード
16 絶縁部材
17 放熱板
18 絶縁材
19 配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱板(2)の上に絶縁材(3)を介して配線パターン(4)に実装され、半導体パワー素子が形成されてなる炭化珪素にて構成された第1半導体チップ(7)を備え、該第1半導体チップ(7)をモールド樹脂(11)にて覆った炭化珪素半導体装置において、
前記モールド樹脂(11)のうち前記第1半導体チップ(7)の周囲を囲み該第1半導体チップ(7)に隣接している箇所の温度を検出する温度センサを備えていることを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記温度センサは、前記第1半導体チップ(7)とは別チップとされた第2半導体チップ(8)に形成され、該第2半導体チップ(8)は、前記第1半導体チップ(7)との間に前記モールド樹脂(11)を挟んだ状態で、前記第1半導体チップ(7)から所定距離離間して配置され、該第2半導体チップ(8)の一面が前記第1半導体チップ(7)の一面に対して対向配置されていることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第2半導体チップ(8)は、前記絶縁材(3)からの高さが前記第1半導体チップ(7)と同じ高さとされていることを特徴とする請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記第2半導体チップ(8)は、前記絶縁材(3)上に固体状の樹脂支持台(11a)を介して配置され、この樹脂支持台(11a)にて支持された状態で前記モールド樹脂(11)による樹脂モールドが行われていることを特徴とする請求項2または3に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記樹脂支持台(11a)と前記モールド樹脂(11)が同一材料であることを特徴とする請求項4に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記第1半導体チップ(7)のうち前記絶縁材(3)とは反対側となる表面側に、絶縁部材(16)が配置され、前記第2半導体チップ(8)は、前記絶縁部材(16)を介して前記第1半導体チップ(7)の表面上に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置を冷媒が循環させられる冷却機構にて冷却する半導体パワー素子制御システムであって、
前記温度センサにて前記モールド樹脂(11)の温度上昇が検出されると、前記冷媒の流動量の増加もしくは前記冷媒の温度低下を行うようになっていることを特徴とする半導体パワー素子制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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