説明

炭化製品の安定化処理方法

【課題】コストの安い無機薬剤を用いて、しかも極微量の添加量で添加して炭化製品を確実に安定化することのできる下水汚泥の炭化製品の安定化処理方法を提供する。
【解決手段】下水道排水処理後に生成する濃縮汚泥の脱水汚泥を乾燥機206で熱風乾燥した上、乾燥汚泥を炭化炉222で乾留処理して炭化製品を製造するに際し、乾燥機206への投入前において脱水汚泥に対し、又は炭化炉222への投入前において乾燥汚泥に対し、有害物質を安定化する無機薬剤を混合することで炭化製品からの有害物質の溶出を抑制するようになす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下水道排水処理後に生成する濃縮汚泥を脱水し、更に乾燥処理及び炭化処理して得られる炭化製品の安定化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥は脱水後、従来は産業廃棄物として埋め立てられて来たが、併せて有効利用も進められており、コンポストとして堆肥代替に、また焼却して灰としてセメント原料代替に、或いは溶融して発生する溶融スラグを天然骨材代替に利用することが行われて来た。
しかしながらこれらへの利用には限界があり、今後更にその利用を拡大することが求められている。
【0003】
その一環として、近年、下水汚泥を内熱式或いは外熱式加熱装置で無酸素若しくは低酸素雰囲気中で加熱し、水分揮発と炭化水素の一部を熱分解或いは燃焼により揮発させて炭素リッチな成分に変える炭化操作により炭化製品を製造し、これを土壌改良剤や園芸材料として利用する実用化が始まっている。
【0004】
この炭化処理は、汚泥が基質中に炭素分を45重量%程度含んでいることから、焼却,溶融処理のように汚泥中の炭素分を消費してしまうのではなく、汚泥を無酸素或いは低酸素状態で熱分解(炭化)することにより炭素分を残留させ、新しい組成を持つ炭化物(炭化製品)として生成させるものである。
この炭化操作によりコンポストで問題になる臭気は消え、焼却に比べてCO発生量は大幅に削減でき、また汚泥を焼却或いは溶融処理する場合のように多量のエネルギーを消費し処理コストが高くなるといった問題も解消できる。
【0005】
図3はそのための装置の一例を示したものである。
図中200は受入ホッパ(脱水汚泥貯溜槽)であり、水分75〜85%程度まで脱水された脱水汚泥がこの受入ホッパ200に先ず受け入れられる。
ここに受け入れられた脱水汚泥は、中間貯溜槽202を経て定量供給装置204,搬送装置205により乾燥機206へと送られ、そこで所定の水分量、具体的には25〜45%程度の水分量まで乾燥処理される。
【0006】
乾燥機206は、図4に示しているように回転ドラム208の内部に撹拌軸210を有している。
ここで撹拌軸210は回転ドラム208の中心から偏心した位置に設けられている。
この撹拌軸210からは複数の撹拌羽根212が放射状に延び出している。
【0007】
一方回転ドラム208の内周面には周方向に所定間隔で複数の板状のリフター214が、回転ドラム208と一体回転する状態で設けられている。
その結果として、回転ドラム208内部の汚泥(脱水汚泥)は回転ドラム208の回転に伴ってリフター214により底部から上方に持ち上げられ、そしてその頂部近くで自重により落下する。
落下した汚泥は、その下側に位置する撹拌羽根212の高速回転により細かく粉砕され、回転ドラム208の底部側へと落下する。
【0008】
回転ドラム208内部の汚泥はこのような撹拌作用を受けながら、その内部に導かれた乾燥用熱風にさらされて乾燥処理され、次第に水分が減少していく。
尚この乾燥機206においては、回転ドラム208の傾斜勾配により、更には撹拌羽根212による粉砕及びその際の飛散作用によって、汚泥が回転ドラム208内部を軸方向に漸次送られて行く。
【0009】
このようにして乾燥機206で乾燥処理された後の乾燥汚泥は、続いて搬送装置216,220により乾燥汚泥貯溜槽218を経て炭化炉222へと搬送され、そこで乾留処理により汚泥の炭化が行われる。
【0010】
この炭化炉222には、図5に示しているように炉体224の内部に乾留容器としての円筒形状のレトルト226が設けられており、前段の乾燥機206で乾燥処理された乾燥汚泥が図示を省略するスクリューフィーダにてレトルト226内部に投入される。
【0011】
投入された乾燥汚泥は、先ず炉体224内部に配設された助燃バーナ(外熱室用バーナ)228による外熱室230内部の雰囲気加熱によって加熱される。
すると乾燥汚泥中に含まれていた可燃ガスがレトルト226に設けられた噴出しパイプ232を通じて外熱室230の雰囲気中に抜け出し、そしてこの可燃ガスが着火して、以後はその可燃ガスの燃焼によりレトルト226内部の汚泥の加熱が行われる。
この段階では助燃バーナ228は燃焼停止される。
【0012】
図5に示しているように、炉体224の内部には外熱室230と仕切られた排ガス処理室234が設けられており、外熱室230からの排ガスはここに導かれる。
この排ガス処理室234には排ガス処理室用バーナ236が設けられており、排ガス処理室234内に導かれた排ガス中の未燃ガスが、この排ガス処理室用バーナ236にて2次燃焼される。
レトルト226内部の汚泥は、図中左端からレトルト226の回転とともに漸次図中右方向に移って行き(レトルト226には若干の勾配が設けてある)、そして最終的に乾留残渣(炭化製品)がレトルト226の図中右端の出口238、つまり炭化炉222から排出される。
【0013】
図3において、240は熱風発生炉で、ここで発生した熱風が乾燥機206へと供給される。
乾燥機206に供給された熱風は、これを通過して集塵機242を通り、更に循環ファン244にて炭化炉排ガス熱交換器246,熱風炉排ガス熱交換器248を経て熱風発生炉240へと循環させられる。
【0014】
この循環系では乾燥機206においてリークエアが循環する熱風中に入り込む。
一方で熱風発生炉240には燃焼空気が定量供給されており、そのためここでは熱風発生炉240から延び出した分岐路250を通じて熱風の一部が抜き取られ、熱風炉排ガス熱交換器248を経て熱風炉排ガスファン252により煙突254から外部に放出される。
他方炭化炉222からは排気路256が延び出しており、炭化炉222からの排ガスが、排気路256を通じて炭化炉排ガスファン258により炭化炉排ガス熱交換器246を経て煙突254から外部に放出される。
この種の炭化処理装置は例えば下記特許文献1,特許文献2に開示されている。
【0015】
ところでこのようにして製造した炭化製品を利用するに際しては、当然環境中に汚染物質が流出しないよう安全性を担保する必要がある。
安全性担保面では、下水汚泥由来ではAs,Se,Fの溶出が特に問題になる。
【0016】
炭化製品の安全性評価方法と基準は現在まだ明確には決まっていない。
先ず溶出については、炭化製品を土壌改良剤として使うときはその溶出値は平成3年環境庁告示46号による試験方法で土壌環境基準を採用することが安全と思われる。
尚下水汚泥を熱分解せずに肥料として使う場合には、肥料取締法により溶出値が環境庁告示13号による試験法で埋立基準値を満足することとなっているが、炭化製品の溶出基準値としては緩いものと思われる。
【0017】
また有害物質の含有量については、炭化製品が園芸用に使われる場合を考えると、肥料に当るかどうか疑問もあるが、肥料取締法の方が土壌汚染対策法よりも厳しいので、含有量については肥料取締法基準を採用することが安全である。
【0018】
前述の土壌環境基準ではCd,Pb,6価Cr,As,総Hg,Seの6項目が基準値を満たすことを要求している。
この基準値は厳しい基準なので、溶融スラグのように高温で溶融してガラス組織に封じ込める操作を行っていない炭化操作では、下水汚泥の質や運転状態の変動により、現状では生産されている炭化製品の全てが必ずしもAs,Se,Fの溶出基準値を満たしているとは言えないのが実情である。
【0019】
本発明は、下水汚泥に無機薬剤を加えた後、熱処理することによりAs等の溶出を基準値未満に抑制し、炭化製品の安全性を高める安定化技術に関するものである。
【0020】
尚、炭化製品の有害物質の含有量は肥料取締法の基準値を大幅に下回っているので、薬剤処理により有害物質を炭化製品に固定しても問題は無い。
【0021】
炭化製品の安定化に関する公知技術について公開されているものは見当たらないが、考えられるものとして次の方法がある。
その一つは、焼却飛灰や溶融飛灰の安定化に用いられるピペラジン基やジチオカルバミン酸基或いはピペラジンビスジチオカルバミン酸基等を有するキレート剤、即ち有機薬剤を炭化製品に添加して安定化する方法である。
しかしキレート剤は有機薬剤なので、日光や酸性雨にさらされる環境で有効利用する上では、使用環境中で分解する可能性があるなど安定性に不安があり、また分解による有害ガスが発生する恐れや、臭気があるので炭化製品の利用に支障が出るという問題がある。
またAsやSeは陽イオンでは存在せず、陰イオンの形態で存在するので一般のキレート剤では安定化できない問題がある。
【0022】
考えられる他の方法としては、無機薬剤を炭化製品に添加する方法がある。
この方法では、炭化炉出口付近或いは炭化炉から排出された炭化製品を水槽で冷却する際や冷却した後、無機薬剤を添加する。
しかし炭化炉出口付近で添加する方法では、炭化製品と薬剤の接触時間が短過ぎて反応効率が悪いために薬剤添加量が多くなったり、炭化製品冷却水槽からの排水に未反応薬剤が流出するので新たに排水処理装置を設置する必要があり、薬剤費及び設備費が高くついたり、設置スペース確保が問題になる。
また水槽内添加では炭化製品そのものに対してではなく、水洗槽内や配管内の水全体に薬剤を添加する必要もあり、更に薬剤使用量が多くなり費用がかさむ。
【0023】
また上記の2つの方法では炭化工程を経た後に薬剤を添加するのでAsやSeの一部が炭化工程で揮発してしまい、排ガスに有害物質が同伴する問題がある。
有害物質を大気に放出することは環境汚染になるので、排ガスを冷却後集塵機を通して捕集する必要が出て来るし、捕集した煤塵の安定化処理も必要になり、炭化装置の構成が複雑になる。
【0024】
【特許文献1】特開平11−37644号公報
【特許文献2】特開平11−33599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明が解決しようとする課題は、先ず、薬剤処理によっても、使用環境下で有機薬剤のように不安定化せず、その後の炭化製品の利用に支障が出ないようにすることである。
次には、汚泥と薬剤の反応時間を十分取り、加熱操作を加えて反応物の安定化度を増すことにより、薬剤添加量即ち処理費を安くして、炭化処理費用や炭化製品の価格上昇を抑え、その利用を促進することである。
【0026】
また炭化操作の前に薬剤を添加して有害物質を汚泥に固定して揮発を防止し、追加設備や薬剤費用を節約することである。
更に無機薬剤を用いての課題は、乾燥機及び炭化炉に腐食が生じないこと、大掛りな追加設備を不要とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
このような課題を解決するために案出された本願の請求項1の方法は、下水道排水処理後に生成する濃縮汚泥を脱水して水分75〜85%の脱水汚泥とし、該脱水汚泥を乾燥機で熱風乾燥して乾燥汚泥とした上、該乾燥汚泥を炭化炉で無酸素若しくは低酸素条件で加熱して乾留処理し炭化製品を製造するに際し、前記乾燥機への投入前において前記脱水汚泥に対し有害物質を安定化する無機薬剤を混合することによって、前記炭化製品からの該有害物質の溶出を抑制することを特徴とする。
【0028】
請求項2の方法は、下水道排水処理後に生成する濃縮汚泥を脱水して脱水汚泥とし、該脱水汚泥を乾燥機で熱風乾燥して水分25〜45%の乾燥汚泥とした上、該乾燥汚泥を炭化炉で無酸素若しくは低酸素条件で加熱して乾留処理し炭化製品を製造するに際し、前記炭化炉への投入前において前記乾燥汚泥に対し有害物質を安定化する無機薬剤を混合することによって、前記炭化製品からの該有害物質の溶出を抑制することを特徴とする。
【0029】
請求項3の方法は、請求項2において、前記乾燥汚泥を10mm以下に解砕した後に前記無機薬剤を添加することを特徴とする。
【0030】
請求項4の方法は、請求項1〜3の何れかにおいて、前記無機薬剤の単味若しくは組合せ合計の添加率が、前記汚泥の固形分質量100部に対し該無機薬剤の純分換算で0.2部以上であることを特徴とする。
【0031】
請求項5の方法は、請求項1〜4の何れかにおいて、前記無機薬剤として塩化第一鉄,塩化第二鉄,硫酸第一鉄の何れか1種以上及び/又はカルシウム剤を固体状若しくは液体状で添加することを特徴とする。
【0032】
以上のように本発明では、次のようにして炭化製品を安定化処理する。
即ち薬剤として性能の安定した無機薬剤を使用して、更に加熱操作を加えることにより、使用環境下での安定化効果の劣化の危惧を解消している。
【0033】
炭化製品は例えば図1のような工程を経て製造される。
本発明の無機薬剤の添加箇所は、脱水汚泥になった後で乾燥機或いは炭化炉に汚泥が入る前の各装置で、且つ装置内部圧力が大気圧程度である箇所で、汚泥温度は概ね常温である。
また薬剤と反応させる汚泥温度は、常温から始まり炭化炉内での最高1050℃くらいまでの範囲である。
【0034】
図1における脱水汚泥は、通常水分が未だ80%程度あり、搬送はスクリューコンベヤやモーノポンプ等で行われるので機内圧は高い。
従って薬剤添加は、搬送装置から貯溜槽に移る段階の大気圧になったところで行うのが良い。
この段階では脱水汚泥がケーキ状でやや大きい塊状となっているので、添加時点では薬剤との混合は良くないが、搬送時間が長く取れるので混合,反応時間を十分取ることができる。
【0035】
図1における乾燥機は、通常内部に撹拌軸と撹拌羽根を持ち、脱水汚泥を解砕しながら熱風で水分約40%に乾燥する方式が用いられ、乾燥汚泥は通常数10mm以下の粒状になっているので脱水汚泥よりは薬剤との混合が良い。
【0036】
更に図1には示していないパドル式等の解砕装置を、炭化炉に投入する前に設けて更に乾燥汚泥を細かくすると、薬剤の反応効率が上がり、炭化反応も促進され処理能力が上がる。
乾燥汚泥の搬送装置としてはスクリューコンベヤやフライトコンベヤ或いはパドルコンベヤ等が用いられるが、ここでは汚泥の充填度は低いので、機内圧はほぼ大気圧なので薬剤は任意の箇所で添加できる。
【0037】
図1における炭化炉は、乾燥汚泥を無酸素若しくは低酸素雰囲気下で脱水及び熱分解する炉で、熱分解により発生する可燃ガスを燃焼して熱源としている。
燃焼場所がレトルト内の場合は内熱式、レトルト外の場合は外熱式と呼ばれており、外熱式の方が低酸素雰囲気にし易い。
乾燥汚泥はこの炭化操作によって炭素が約50%、無機物が残りを占める成分の細孔を持つ炭化製品に変わり、有効に利用できる形態になる。
【0038】
図1における直接水冷兼排出装置は、一般には水を張った水槽と炭化製品を排出するコンベヤとから成り、炭化炉と大気のシールをも兼用するが、ここに薬剤を添加しても添加量が多くなり費用がかさむ。
【0039】
本発明例では、無機薬剤として硫酸鉄や塩化鉄や石灰等、市場に流通し且つ安価なものを使用して薬剤費用を低減している。
硫酸鉄は固体の硫酸第一鉄や硫酸第一鉄を水に溶かした液体として添加するのが使い易いが、粉体状でも使用可能である。
塩化鉄は塩化第一鉄及び塩化第二鉄の水溶液が市場に出ており、これで添加するのが使い易いが、粉体状でも使用可能である。
カルシウム剤は消石灰,生石灰,炭酸カルシウム,炭酸水素カルシウムの粉体或いはスラリーでの添加が適している。
【0040】
本発明では、マイナスイオンの形態で存在するAsやSe錯イオンを、硫酸鉄や塩化鉄が水酸化鉄として沈殿する際に共沈する現象を利用している。
またFはCaと溶解度の小さいCaFとなって沈殿することを利用している。
またこれらの生成物が加熱によってより安定した物質に変わることをも利用している。
【0041】
本発明はこのように安定化性能に優れる方法なので、無機酸単味でも添加率が低くできるし、安全を見てカルシウム剤を併用したりしているので既存装置を腐食させることはない。
【0042】
また本発明では薬剤添加を常温で行い、従来の炭化装置の既存ラインを利用でき、新たな装置としては薬剤の貯溜槽や薬剤の定量供給装置及び配管或いは乾燥汚泥の解砕装置兼搬送装置等の簡単な装置で済む利点がある。
【0043】
更に乾燥機や炭化炉内で汚泥と薬剤が強く撹拌されることを利用して、反応が効率良く進み薬剤消費量を低減でき、更に新たな撹拌装置は不要であり、設備費やスペースが節約できる。
【0044】
尚、薬剤添加はほぼ大気圧下(−50Pa〜+50Pa)で行うのが良く、この場合薬剤の添加状況監視や保守を運転中にもやり易くなる。
【発明の作用・効果】
【0045】
炭化製品の安全性の評価は、現状では平成3年環境庁告示46号の試験方法によっている。
この方法では、炭化製品:蒸留水を1:10で容器中で振とうし、上澄み液を0.45μmメンブレンで濾過した液を溶媒抽出或いは強酸で溶解してAs濃度等を測定している。
従って炭化製品のAs等の溶出値は、振とうにより溶解したAs等化合物イオンや、振とうにより炭化製品から剥離した微粒のAs等を含むコロイド状物質が0.45μmメンブレンをどのくらい通過するかどうかで決まるといえる。
前述したように下水道由来の炭化製品では殆どの場合でAs,Se,Fの溶出値が問題になる。
従ってイオン形態及び微粒子(コロイド)状態の両方で存在するAs等を安定化すれば、炭化製品の安全性が担保されることになる。
【0046】
本発明の一例として用いた硫酸鉄や塩化鉄添加では、pHを中性〜アルカリ性にすれば水酸化鉄を生成し沈殿するが、その際にAs,Seの錯イオンも共沈させるのでAsやSeの安定化効果がある。
また硫酸鉄や塩化鉄添加ではFの安定化はできないが、石灰等のカルシウム剤を添加するとCaFとして沈殿するのでFを安定化できる。
【0047】
また本発明の別の例としてのカルシウム剤と塩化鉄等との共用法では、イオン形態とコロイド形態の両方のAs,Seを凝集沈殿させるので更に効果が増す。
この際、硫酸鉄や塩化鉄は水酸化鉄として沈殿するときにAs,Seを共沈し、カルシウム剤はその補助を行い且つpH調整機能を果たし、硫酸鉄や塩化鉄を添加し過ぎた場合も中和できて装置の腐食を防げる効果があるので、硫酸鉄や塩化鉄よりも上流で汚泥に添加するのが望ましい。
塩化鉄は塩化第一鉄と塩化第二鉄の何れでも良いが、pHが塩化第二鉄よりもやや高い塩化第一鉄の方が使い易い。
硫酸鉄も同様である。
【0048】
かかる本発明は、単価の安い無機薬剤を極微量の添加率で用いて炭化製品を確実に安定化できるので、安価で且つ安定化効果に優れた炭化製品の安定化手段として有用である。
また薬剤を使うことで製品品質への影響が心配されたが、微量の添加率なので有効利用上問題にはならなかった。
従って炭化製品の利用を促進し、埋立地の延命やCO発生抑制によって環境保全に役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
次に本発明の実施形態を以下に詳しく説明する。
表1と表2に、薬剤の種類と添加率及び添加時の条件と溶出試験結果について、発明例と比較例を示した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
脱水汚泥は流域下水道処理施設のものを使用し、炭化製品製造実機設備で薬剤種類と添加率及び添加箇所を変えて、その他は同一運転下で運転し、得られた炭化製品を用いて評価した。
【0053】
炭化製品の安定化評価方法は、前述の環境庁告示46号法に拠った。
効果を鮮明にするため、振とうは炭化製品が激しく撹拌されて最も溶出し易い条件である横振り振とうで行った。
分析項目はpH,As,Se,Fを主体に行った。
検液の分析はAs及びSeは水素化物発生原子吸光法とし、Fは直接蒸留−吸光光度法に拠った。
【0054】
尚表1,表2において、無機薬剤1,2は薬剤を2種使う場合の何れかの区分を指す。
添加率は、乾きベースの汚泥量に対する薬剤純分の外掛け質量%を指す。
汚泥水分は、汚泥が元々持っている水分で、添加した水は含まず、水分=(水分量/(水分量+乾きベース汚泥量))×100%である。
解砕有無とは、炭化処理前の薬剤添加前に、乾燥汚泥を解砕するかしないかを指す。
検液pHとは、環境庁告示46号法で振とう操作後、静置してから後、濾過した液の25℃でのpHのことをいう。
【0055】
これら表1,表2の結果から明らかなように、本発明に従って無機薬剤を添加することで炭化製品を良好に安定化できることが分る。
【0056】
尚図2に無機薬剤の好適な添加時期ないし添加箇所の例を矢印で示した。
ここで無機薬剤の添加は図2中の何れか1つだけでなく、複数の時期ないし箇所で行うようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】炭化製品の製造工程を示す図である。
【図2】無機薬剤の好適な添加時期,添加箇所の例を示す図である。
【図3】炭化処理装置を示す図である。
【図4】図3の乾燥機を詳しく示す図である。
【図5】図3の炭化炉を詳しく示す図である。
【符号の説明】
【0058】
206 乾燥機
222 炭化炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水道排水処理後に生成する濃縮汚泥を脱水して水分75〜85%の脱水汚泥とし、該脱水汚泥を乾燥機で熱風乾燥して乾燥汚泥とした上、該乾燥汚泥を炭化炉で無酸素若しくは低酸素条件で加熱して乾留処理し炭化製品を製造するに際し、
前記乾燥機への投入前において前記脱水汚泥に対し有害物質を安定化する無機薬剤を混合することによって、前記炭化製品からの該有害物質の溶出を抑制することを特徴とする炭化製品の安定化処理方法。
【請求項2】
下水道排水処理後に生成する濃縮汚泥を脱水して脱水汚泥とし、該脱水汚泥を乾燥機で熱風乾燥して水分25〜45%の乾燥汚泥とした上、該乾燥汚泥を炭化炉で無酸素若しくは低酸素条件で加熱して乾留処理し炭化製品を製造するに際し、
前記炭化炉への投入前において前記乾燥汚泥に対し有害物質を安定化する無機薬剤を混合することによって、前記炭化製品からの該有害物質の溶出を抑制することを特徴とする炭化製品の安定化処理方法。
【請求項3】
請求項2において、前記乾燥汚泥を10mm以下に解砕した後に前記無機薬剤を添加することを特徴とする炭化製品の安定化処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記無機薬剤の単味若しくは組合せ合計の添加率が、前記汚泥の固形分質量100部に対し該無機薬剤の純分換算で0.2部以上であることを特徴とする炭化製品の安定化処理方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記無機薬剤として塩化第一鉄,塩化第二鉄,硫酸第一鉄の何れか1種以上及び/又はカルシウム剤を固体状若しくは液体状で添加することを特徴とする炭化製品の安定化処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−88020(P2006−88020A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275549(P2004−275549)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000230571)日本下水道事業団 (46)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】