説明

炭素ナノチューブ大量合成装置及び大量合成方法

炭素ナノチューブの合成が行われる反応器の内部を外部に完全に開放し、反応器内部の一定領域を特定の気体が占有するようにすることによって、反応器が外部空気に露出されたオープン型でありながらも反応器の内部に外部空気が流入するのが遮断される炭素ナノチューブ大量合成装置及び大量合成方法を提供する。炭素ナノチューブ大量合成装置は、外部空気に開放された少なくとも一つの開口を有し、前記開口から前記外部空気が流入することが遮断されるよう、前記外部空気と比重の相異なる少なくとも一つの比重相異気体が満たされる比重相異気体占有領域が形成された反応器と、前記比重相異気体占有領域内に設けられ、前記開口から流入した触媒を媒介として炭素ナノチューブを合成する炭素ナノチューブ合成ユニットと、前記触媒を前記開口から前記炭素ナノチューブ合成ユニットに移送する移送ユニットと、前記比重相異気体及び前記炭素ナノチューブの合成のための炭素ソースガスをそれぞれ、前記比重相異気体占有領域及び前記炭素ナノチューブ合成ユニットに供給するガス供給ユニットとを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素ナノチューブ大量合成装置及びこれを用いる炭素ナノチューブ合成方法に係り、より詳細には、気相合成法を用いる炭素ナノチューブ大量合成装置及びこれを用いる炭素ナノチューブ大量合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素ナノチューブは、黒鉛面(graphite sheet)がシリンダー状に巻かれた構造で、黒鉛面の数によって単一壁、二重壁及び多重壁の炭素ナノチューブに区分される。
【0003】
炭素ナノチューブは、軽量で、優れた電気的特性及び機械的強度を有するほか、化学的に安定しており、かつ、表面反応が容易なため、電子情報産業分野、エネルギー分野、高性能複合素材、超微細ナノ部品などで様々に応用されると予想される。したがって、高純度の炭素ナノチューブを安価で大量に合成する方法が必需的に要求される。
【0004】
現在炭素ナノチューブを合成するための代表的な方法には、電気放電法、レーザー蒸着法、化学気相蒸着法及び気相合成法がある。電気放電法またはレーザー蒸着法によれば、炭素ナノチューブの合成時に炭素ナノチューブに加えて非晶質炭素物質が共に生成されるため、高純度の炭素ナノチューブを得るには熱的または化学的精製過程が必需的に要求され、このような方法では経済的な大量合成が困難である。化学気相蒸着法による炭素ナノチューブの合成では、高純度の炭素ナノチューブを基板に整列して成長させることが可能であるが、大量合成は困難であるという問題がある。
【0005】
一方、炭素ナノチューブを安価に合成する方法として気相合成法が大きく台頭しつつある。しかし、現在まで報告された様々な気相合成法による場合、合成された炭素ナノチューブに非晶質炭素粒子が多く含まれ、その精製が非常に難しい。特に、単一壁または二重壁の炭素ナノチューブを気相合成法で合成する場合、収率が非常に低く、非晶質炭素粒子が多く含まれることから、大量合成には向いていないと判断される。
【0006】
しかも、気相合成法を用いる炭素ナノチューブ大量合成装置は、バッチ型(batch)のもので、触媒金属を反応器に注入し、反応器を加熱して一定時間反応させた後に反応器を冷却する工程を毎バッチごとに繰返すことによって炭素ナノチューブを合成する方式である。このような合成装置は、毎バッチごとに個別工程を繰返さなければならず、高費用がかかるほか、生産性が非常に低く、また、毎バッチごとに同じ工程条件を提供し難いため、炭素ナノチューブの均質性が低下するという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
炭素ナノチューブは、軽量で、優れた電気的特性及び機械的強度を有するほか、化学的に安定しており、かつ、表面反応が容易なため、電子情報産業分野、エネルギー分野、高性能複合素材、超微細ナノ部品などで様々に応用されると予想される。したがって、高純度の炭素ナノチューブを安価で大量に合成する方法が必需的に要求される。
【0008】
本発明は上記の従来技術の問題点を解決するためのもので、その目的は、気相合成法を用い且つオープン型反応器を用いる炭素ナノチューブ大量合成方法及びその装置を提供することにある。
【0009】
本発明は、炭素ナノチューブの合成がなされる反応器の内部を反応器の外部に完全に開放させ、気体の比重差を用いて外気の流入を遮断した炭素ナノチューブ大量合成装置及びその大量合成方法に関する。
【0010】
本発明によれば、反応器の外部から反応器の内部に連続して触媒を投入し、また、反応器内部で合成された炭素ナノチューブが反応器の外部に連続して排出されるようにする連続工程が可能なため、炭素ナノチューブを大量合成できる。
【0011】
また、本発明によれば、触媒の移動速度、反応温度、触媒金属の粒子大きさ、炭素ソースガス注入量、水素ガス注入量を制御することによって、様々な特性を持つ炭素ナノチューブを大量に合成できる。
【0012】
なお、本発明によれば、触媒還元工程、炭素ナノチューブ合成工程及び炭素ナノチューブ冷却工程が連続して行われるため、生産性が増大し、高品質の均質な炭素ナノチューブを得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の本発明の目的は、外部空気に開放された少なくとも一つの開口を有し、該開口から外部空気が流入することが遮断されるように、外部空気と比重が相互に異なる少なくとも一つの比重相異気体が満たされる比重相異気体占有領域が形成された反応器と、前記比重相異気体占有領域内に設けられて、前記開口から流入する触媒を媒介として炭素ナノチューブを合成する炭素ナノチューブ合成ユニットと、前記触媒を前記開口から前記炭素ナノチューブ合成ユニットに移送する移送ユニットと、前記比重相異気体及び前記炭素ナノチューブの合成のための炭素ソースガスをそれぞれ前記比重相異気体占有領域及び前記炭素ナノチューブ合成ユニットに供給するガス供給ユニットと、を備えることを特徴とする、炭素ナノチューブ大量合成装置によって達成される。
【0014】
上記目的を達成するために、前記開口は、前記触媒が流入する入口と、前記炭素ナノチューブ合成ユニットによって合成された炭素ナノチューブを前記反応器の外部に排出する出口とを備え、前記移送ユニットは、前記入口、前記比重相異気体占有領域、前記炭素ナノチューブ合成ユニット及び出口を経由するように前記触媒及び/または前記炭素ナノチューブを移送することを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するために、前記炭素ナノチューブ合成ユニットは、前記反応器の内部に形成され、前記比重相異気体占有領域に満たされた前記比重相異気体によって前記外部空気から遮断される反応領域と、前記移送ユニットによって前記反応領域内に移送された前記触媒が炭素ソースガスと反応して前記炭素ナノチューブを合成するように、前記ガス供給ユニットに供給される前記炭素ソースガスを前記反応領域に吹き付ける炭素ソース噴射機構と、前記反応領域を加熱する加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
前記目的を達成するために、前記炭素ナノチューブ合成ユニットの前記反応領域は、前記炭素ソースガスよりも比重の小さい比重相異気体が満たされた比重相異気体占有領域の少なくとも一領域の下部に形成され、前記炭素ナノチューブ合成ユニットは、前記反応領域に噴射される前記炭素ソースガスが前記反応領域を外れるのを防ぐ、上側の開放された炭素ソース閉じ込め部をさらに備えることを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するために、前記比重相異気体占有領域は、前記炭素ソースガスよりも比重の小さい比重相異気体が満たされる第1比重相異気体占有領域と、前記炭素ソースガスよりも比重の大きい比重相異気体が満たされる第2比重相異気体占有領域と、を有し、前記第1比重相異気体占有領域、前記反応領域及び前記第2比重相異気体占有領域は、前記反応器内部で重力方向に沿って順次に形成されることを特徴とする。
【0018】
上記目的を達成するために、前記比重相異気体は、前記反応器中において前記開口の位置に応じて前記開口から外部空気が流入するのを遮断するように、前記外部空気よりも比重の大きい気体及び前記外部空気よりも比重の小さい気体のうち少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする。
【0019】
上記目的を達成するために、前記比重相異気体占有領域を占有する比重相異気体の少なくともいずれか一つは、水素ガスを含むことを特徴とする。
【0020】
上記目的を達成するために、前記反応器は、前記比重相異気体占有領域を占有する水素ガスの圧力と前記外部空気の圧力が平衡するように、前記水素ガスを前記反応器外部に排出する少なくとも一つの排出管が形成されることを特徴とする。
【0021】
上記目的を達成するために、前記比重相異気体占有領域は、重力方向に対して交差する方向に連通する第1占有領域と、前記入口と前記第1占有領域間を連通する第2占有領域と、前記出口と前記第1占有領域間を連通する第3占有領域と、を有し、前記反応器は、前記第1占有領域、前記第2占有領域及び前記第3占有領域が形成されるように前記入口及び前記出口側が折り曲げられて形成されることを特徴とする。
【0022】
上記目的を達成するために、前記入口及び前記出口は、前記比重相異気体占有領域に満たされる前記比重相異気体が重力によって前記入口または出口から前記反応器外部に排出されないように、前記第1占有領域と重力方向に対して位置差を持つことを特徴とする。
【0023】
上記目的を達成するために、前記炭素ナノチューブ合成ユニットは、前記反応器の内部に形成されるとともに、前記比重相異気体占有領域に満たされた前記比重相異気体によって前記外部空気から遮断される反応領域と、前記移送ユニットによって前記反応領域内に移送された前記触媒が前記炭素ソースガスと反応して前記炭素ナノチューブを合成するように、前記ガス供給ユニットから供給される前記炭素ソースガスを前記反応領域に吹き付ける炭素ソース噴射機構と、前記反応領域を加熱する加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0024】
上記目的を達成するために、前記比重相異気体は、前記外部空気よりも比重の小さい気体を含み、前記入口及び前記出口は、前記比重相異気体が重力によって前記入口または出口から前記反応器外部に排出されないように、前記第1占有領域よりも重力方向に対して低く位置することを特徴とする。
【0025】
上記目的を達成するために、前記比重相異気体は、前記外部空気よりも比重の小さい水素ガスを含むことを特徴とする。
【0026】
上記目的を達成するために、前記比重相異気体は、前記外部空気よりも比重の大きい気体を含み、前記入口及び前記出口は、前記比重相異気体が重力によって前記入口または出口から前記反応器外部に排出されないように、重力方向に対して前記第1占有領域よりも高く位置することを特徴とする。
【0027】
上記目的を達成するために、前記炭素ソース噴射機構は、前記反応領域に前記炭素ソースガスを均一に吹き付けるために前記反応領域の大きさに対応するように分散して配置された複数の噴射口を持つことを特徴とする。
【0028】
上記目的を達成するために、前記開口から流入した触媒が還元されるように前記反応器内部の少なくとも一領域を加熱する加熱手段を備えることを特徴とする。
【0029】
上記目的を達成するために、前記炭素ナノチューブ合成ユニットは、前記反応領域に吹き付けられる前記炭素ソースガスが前記反応領域を外れるのを遮断する、上側に開放された炭素ソース閉じ込め部をさらに備えることを特徴とする。
【0030】
上記目的を達成するために、前記炭素ナノチューブが冷却されるように前記出口に近接する前記反応器の一領域を冷却する冷却ユニットをさらに備えることを特徴とする。
【0031】
上記の本発明の目的は、外部空気に開放された少なくとも一つの開口と比重相異気体占有領域が形成された反応器を用意する段階と、前記比重相異気体占有領域に前記開口から前記外部空気が流入するのを遮断するよう、前記外部空気と比重の相異なる少なくとも一つの比重相異気体を満たす段階と、前記比重相異気体占有領域内に炭素ソースガスを流入させ、前記比重相異気体によって前記外部空気と遮断された反応領域を形成する段階と、前記開口から前記反応器内の前記反応領域に触媒を供給する段階と、前記反応領域を形成する前記炭素ソースガスと前記触媒とが反応して炭素ナノチューブを合成する段階と、前記合成された炭素ナノチューブが前記開口から前記反応器の外部に排出される段階と、を含むことを特徴とする炭素ナノチューブ大量合成方法によっても達成される。
【0032】
上記目的を達成するために、前記比重相異気体占有領域は、重力方向に対して交差する方向に連通する第1占有領域と、前記入口と前記第1占有領域間を連通する第2占有領域と、前記出口と前記第1占有領域間を連通する第3占有領域と、を有し、前記反応器は、前記第1占有領域、前記第2占有領域及び前記第3占有領域が形成されるよう、前記入口及び前記出口側が折り曲げられて形成されることを特徴とする。
【0033】
上記目的を達成するために、前記入口及び前記出口は、前記比重相異気体占有領域に満たされる前記比重相異気体が重力によって前記入口または出口から前記反応器外部に排出されないよう、前記第1占有領域と重力方向に対する位置差を持つことを特徴とする。
【0034】
上記目的を達成するために、前記比重相異気体占有領域に満たされる前記比重相異気体は水素ガスを含み、前記第2占有領域を加熱する段階及び前記第2占有領域で前記水素ガスと前記触媒とが反応して前記触媒が還元される段階をさらに含むことを特徴とする。
【0035】
上記目的を達成するために、前記反応器の前記入口及び前記出口の少なくともいずれか一側には外部に連通した排出管が形成され、前記比重相異気体占有領域の前記水素ガスの圧力と前記外部空気の圧力とが平衡するように、前記水素ガスが前記排出管から排出される段階をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、気相合成法を用いる炭素ナノチューブ大量合成装置に利用することができる。特に、本発明は、オープン型反応器を持つ炭素ナノチューブ大量合成装置を用いて炭素ナノチューブを大量に合成する方法に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明の第1実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置を示す概略的な断面図である。図1に示すように、本発明の第1実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置は、内部に一定空間を持つアーチ型の反応器1を備え、触媒金属を還元する触媒金属還元ユニット100、還元された触媒金属から炭素ナノチューブを合成する炭素ナノチューブ合成ユニット200、合成された炭素ナノチューブを冷却する冷却ユニット300、反応器に雰囲気ガス及び炭素ソースガスなどを供給するガス供給ユニット50及び反応器の内部に触媒金属を供給する移送ユニットと、を備える。
【0039】
反応器1は、外部空気に開放されたオープン型の構造のもので、反応器入口2及び反応器出口3が外部に開放されており、反応器1の中央部分には下に凹入されて空間を形成する凹入部5が形成される。凹入部5は、炭素ソースガスを集めて維持させる役割を担うもので、炭素ソースガス閉じ込め部と呼ぶことができる。反応器入口及び反応器出口は、外部に開放された穴である開口と呼ぶことができる。
【0040】
ガス供給ユニット50は、炭素ソースガスタンク60(例えば、エチレンガスタンク)、アルゴンガスタンクや窒素ガスタンク70(不活性ガスタンク)及び水素ガスタンク80を備え、それぞれのガスタンクは、ガス供給管を通って反応器内部にガスを供給する。これらのガスタンクはそれぞれ精製器を有する。該精製器は、吸着法等によってそれぞれ炭素ソースガス混合物、不活性ガス混合物及び水素ガス混合物を精製し、高純度の炭素ソースダース、不活性ガス及び水素ガスを供給する。炭素ソースガスの例には、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロピレン、ブタン、ブチレン、ブタジエン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、ベンゼン、キシレン、揮発油、プロパン、液化プロパンガス(LPG)、液化天然ガス(LNG)、ナフサ、一酸化炭素及びアルコール類などがある。
【0041】
触媒金属還元ユニット100は、反応器1内に流入した触媒金属(catalytic
metal)酸化物または触媒金属酸化物の収容された触媒担体から触媒金属酸化物を還元させるもので、反応器1内に連結されて水素ガスを供給する第1ガスノズル112、及びボート10内の触媒金属酸化物を還元させるために反応器1の外部に設置される第1加熱手段110を備える。第1加熱手段110は、反応器の内部を加熱する発熱機構で、温度センサー(図示せず)を備えて反応器1の内部の温度を600〜1200℃に調節する。
【0042】
炭素ナノチューブ合成ユニット200は、反応器内に投入された触媒金属を炭素ソースガスと反応させて炭素ナノチューブを合成するもので、炭素ナノチューブの合成反応がなされる反応領域を含み、反応器1内に連結されて炭素ソースガスを均一に排出する、複数のノズルを有するシャワーヘッド212と、反応器1の外部に設置された第2加熱手段210とを備える。シャワーヘッド212は、複数のノズルが配列され、反応器1内の一定領域に均一に炭素ソースガスを吹き付けるので、反応器1内の反応領域全体にわたって均一に炭素ナノチューブの合成がなされる。第2加熱手段210は、反応器内部を加熱する発熱機構で、温度センサー(図示せず)を備えて反応器1の内部の温度を600〜1200℃に調節する。
【0043】
冷却ユニット300は、反応器1に設置されて反応器内部を冷却する冷却手段310を備える。反応器1には、不活性ガス、例えば、アルゴンガス、窒素ガスまたは水素ガスを注入する第3ガスノズル312が連結される。冷却手段310は水冷ジャケットなどにすれば良く、反応器1の周囲を取り囲むように形成すれば良い。第3ガスノズル312から供給される水素ガスは、反応器1の内部を水素ガス雰囲気にするだけでなく、合成された炭素ナノチューブを洗浄する役割も担う。
【0044】
なお、反応器入口2に近接した位置には、反応器1内で反応して残ったガスを排出する第1ガス排出管130が設けられ、反応器出口3に近接した位置には、反応器1内で反応して残ったガスを排出する第2ガス排出管330が設けられる。これは、反応器入口2及び反応器出口3において反応器内部の水素ガスの圧力と外部空気の圧力とを平衡させ、外部の空気が反応器入口及び反応器出口から反応器内部に浸透するのを確実に遮断するためである。すなわち、ガス注入管から反応器の内部に水素ガスを注入すると、反応器内部の水素ガスの圧力が増加して水素ガスの圧力が外部空気の圧力よりも大きくなり、水素ガスが反応器外部へ排出されることになり、この場合、水素ガスが反応器入口及び反応器出口から排出されると危険なため、別のガス排出管を設けて水素ガスを排出しているわけである。
【0045】
移送ユニットは、触媒金属を収容した容器、例えば、ボート10を反応器の内部に供給するもので、コンベヤーなどとすれば良い。移送ユニットは、モーター制御などによって触媒金属の移動速度を制御でき、その結果、触媒金属酸化物の還元時間及び炭素ナノチューブの合成時間を調節できる。ボート10は、触媒金属を収容する容器の一例で、金属、石英(quartz)またはグラファイト(graphite)の材質とすれば良い。ボート10は、底に穴が穿設される。ボートの穴は、触媒金属酸化物の還元過程及び炭素ナノチューブの合成過程でガスと触媒金属との接触を増加させ、触媒金属酸化物の還元及び炭素ナノチューブの合成をより容易にする。また、ボートの穴は、反応時にできる副産物の排出を容易にする。
【0046】
以上のように、本発明の第1実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置は、触媒金属還元ユニット100、炭素ナノチューブ合成ユニット200及び冷却ユニット300が連続して配置され、継続的な工程が可能になっている。
【0047】
第1実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置は、移送ユニットを介して反応器の外部から反応器の内部に触媒金属酸化物の収容されたボート10を供給し、触媒金属酸化物の収容されたボート10は、触媒金属還元ユニット100、炭素ナノチューブ合成ユニット200、冷却ユニット300を全て経た後に反応器出口3から反応器外部に搬出される。反応器出口3から搬出されたボート10より、合成された炭素ナノチューブを取る。その後、新しい触媒金属を収容したボート10が再び反応器入口2に移動して反応器内部に導かれるように、移送ユニットは反応器入口と反応器出口を循環する構造で形成される。移送ユニットの循環構造は図示してはいないが、これは当業者にとつては自明なものである。本発明による炭素ナノチューブ大量合成装置は、上記の連続工程の繰返しによって炭素ナノチューブを大量に合成する。
【0048】
図1では、加熱手段と冷却手段が近接しているとしたが、冷却手段と加熱手段の機能が互いに妨害を受けないように、互いに離れて配置されるか、熱伝逹遮断手段を使用しても良いことは、当業者にとっては自明であり、その具体的な説明は省略する。
【0049】
図2は、本発明の第1実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置において、炭素ナノチューブ合成のために反応器の内部に炭素ソースガス及び水素ガスが収容された状態を示す図である。図2に示すように、反応器1の内部は、水素ガス及び炭素ソースガスによって満たされている。以降詳述するが、反応器1の内部には外部空気が浸透できないので、反応器の内部は外部の空気と遮断される。
【0050】
図1及び図2に示すように、炭素ソースガスは、ガス供給ユニットと連結されたシャワーヘッド212から均一に供給され、水素ガスは、ガスノズル112,312から反応器1内に供給される。既に還元された触媒金属が反応器に供給される場合には、水素ガスの代わりに、ヘリウム、ネオン、アルゴン、ゼノンまたは窒素などが雰囲気ガスとして用いられることができる。
【0051】
反応器内部の温度が約900℃、反応器外部の温度は約20℃であるとすれば、各気体の質量は概略次の通りになる。標準状態(0℃=274K、1気圧)で水素ガス1モル(22.4リットル)の質量は2gであり、900℃(=1174K)の反応器の内部ではシャルルの法則によって水素ガスの体積が約4倍に増加するので、水素ガス1モル(22.4リットル)は約0.5gの質量を持つ。一方、標準状態における空気1モル(22.4リットル)の質量が約28.9gであるので、常温20℃における空気1モルの質量は約27gになる。
【0052】
したがって、外部空気と水素ガスが相互に接する位置である反応器の入口及び出口における空気の比重は、水素ガスの比重の約54倍に達し、この比重差によって空気は常に水素ガスの下に位置することになる。反応器内部は水素ガスが占有しており、以降詳述するが、反応器入口及び出口において水素ガスと外部空気の圧力は平衡しているので、外部空気は反応器の内部に流入することができない。反応器内部の水素ガスが占有する占有領域は、外部空気とは比重の異なるガスが占有しているから、比重相異気体占有領域と呼ぶことができる。このような水素ガス占有領域が、外部空気が反応器内部に流入するのを防ぐ。ここで、反応器入口側において水素ガスの占有する領域を反応器入口側占有領域とし、反応器出口側において水素ガスの占有する領域を反応器出口側占有領域とし、反応器入口側占有領域と反応器出口側占有領域との間で水素ガスの占有する領域を中央側占有領域とすれば、反応器入口及び反応器出口は、外部空気の流入を遮断するために、重力方向に中央側占有領域よりも低い位置に形成される。中央側占有領域は重力方向に対して交差する方向に形成され、反応器入口と中央側占有領域との間に反応器入口側占有領域が位置し、反応器出口と中央側占有領域との間に反応器出口側占有領域が位置する。
【0053】
反応器の凹入部5は、凹入部5の周囲よりも深く凹入して低い空間を形成する。したがって、凹入部5の真上でシャワーヘッドから吹き付けられた炭素ソースガスは、周囲の水素ガスに比べて比重が大きいため、シャワーヘッドの下に下降して凹入部5に集まる。凹入部5に集まった炭素ソースガスは、周囲の水素ガスよりも重いために凹入部5の上には上昇できず、凹入部からほとんど外れない。凹入部5の炭素ソースガス占有領域は、反応器内部で水素ガス占有領域によって取り囲まれている。炭素ソースガス占有領域は、炭素ソースガスと触媒金属とが反応して炭素ナノチューブを合成する反応領域になり、この反応領域は水素ガスによって反応器外部の空気から遮断される。
【0054】
反応器の内部に流入した水素ガスの一部は、反応器入口2及び反応器出口3に近接して設けられたガス排出管130,330から反応器の外部に排出される。これは、反応器の内部に存在する水素ガスの圧力と外部空気の圧力を相互に平衡させ、外部空気が反応器の内部に浸透するのを確実に遮断するためである。水素ガスが排出される過程でガス排出管に向かう水素ガスの流動が形成される。ガス排出管130,330が反応器入口2及び反応器出口3に近接した位置に設けられることから、反応器入口及び反応器出口に向かって水素ガスが継続して供給される形となり、これにより、水素ガスの圧力が外部空気の浸透を許容しない程度に維持されることが可能である。
【0055】
以下、本発明の第1実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置によって炭素ナノチューブが合成される過程について説明する。
【0056】
第1加熱手段110及び第2加熱手段210を用いて反応器1の触媒金属還元ユニット100と炭素ナノチューブ合成ユニット200を所望の温度、例えば、600〜1200℃に昇温させる(ステップ1)。
【0057】
次に、ガス供給ユニット50を用いて反応器1の内部に不活性ガス、例えば、アルゴンガスまたは窒素ガスなどを供給する(ステップ2)。反応器の内部に供給された比重の大きい不活性ガスは、反応器の内部に存在していた相対的に比重の小さい空気やその他の気体をはみ出すか及び/または押し流して反応器入口及び反応器出口から排出させる。これにより、反応器1中の不純物ガスが除去され、反応器1の内部は不活性ガス雰囲気となる。反応器内部を不活性ガスで満たすことは、前述したように、反応器内部を加熱してから行っても良いが、反応器内部を加熱する前に行っても良い。
【0058】
次いで、ガス供給ユニット50を用いて不活性ガス雰囲気とされた反応器1内部に水素ガスを供給する(ステップ3)。水素ガスは、反応器中に満たされたアルゴンガスよりも軽いために反応器の内部を上方から満たすようになる。
【0059】
続いて、移送ユニットによって1〜50nm大きさの触媒金属酸化物または該触媒金属酸化物の担持された触媒担体(support material)を収容しているボート10を、外部から反応器入口2を通って反応器の内部に供給する(ステップ4)。ここで、触媒担体は、粒子(powder)状にしても良く、マグネシウム酸化物(MgO)、アルミナ(AI)、ゼオライト(Zeolite)またはシリカなどからなることができ、触媒金属粒子酸化物を触媒金属触媒担体のナノ気孔に担持する方法は、ゾルゲル(sol−gel)法、共沈法(coprecipitation)、または、含浸法(impregnation)を利用できる。
【0060】
当該反応器の内部へ移動した触媒金属酸化物は、触媒金属還元ユニット100によって還元され、酸素の除去された純粋な触媒金属になる(ステップ5)。例えば、触媒金属酸化物が酸化鉄である場合、触媒金属還元ユニットを通りながら酸化鉄は水素ガスと反応して水と純粋な鉄に変化する。このような触媒金属は、鉄の他、Co、Ni、Moまたはこれらの合金などになりうる。
【0061】
触媒金属還元ユニットを通過したボート10は、炭素ナノチューブ合成ユニット200に移動する。炭素ナノチューブ合成ユニット200に移動した触媒金属は、反応領域で炭素ソースガスと反応して炭素ナノチューブを合成する(ステップ6)。
【0062】
上記の炭素ナノチューブ合成は、水素ガス雰囲気で行われるが、この水素ガスは触媒金属粒子の表面に形成される金属酸化物を除去し、触媒金属粒子の表面に炭素原子が過剰供給されるのを抑える。しかも、水素ガスは、触媒金属粒子の表面に吸着される非晶質炭素物質を除去し、成長する炭素ナノチューブの外壁に非晶質炭素塊りや炭素粒子が付着するのを抑止する。もちろん、炭素ナノチューブの合成時に炭素ソースガスの流量及び反応領域の温度を調節し、炭素ナノチューブの成長速度、直径及び結晶性を調節できる。
【0063】
特に、触媒金属粒子が粉末状触媒担体のナノ気孔に担持されて固着する場合、炭素ナノチューブ合成時に要求される高温でも触媒金属粒子の移動が抑制され、非常に均一な直径を持つ炭素ナノチューブの合成が可能になる。なお、数ナノメートル大きさの触媒金属粒子が粉末状の母体のナノ気孔に担持されて固着した状態で炭素ナノチューブが合成される場合、非晶質状態の炭素塊りが形成されず、高純度の炭素ナノチューブを形成することが可能になる。
【0064】
該炭素ナノチューブの合成されたボート10は、冷却ユニット300に移動して冷却手段310によって強制的に冷却される(ステップ7)。合成された高純度の炭素ナノチューブは冷却ユニット300を通りながら常温に冷却され、この合成された炭素ナノチューブは水素ガス雰囲気で繰返し洗浄される。
【0065】
最終的に、合成された炭素ナノチューブは反応器出口3から外部に搬出される(ステップ8)。搬出されたボート10から合成された炭素ナノチューブを取り出す。その後、ボート10は再び新しい触媒金属を載せてから反応器の内部に導かれ、炭素ナノチューブ合成過程が繰返し行われる。このような連続した工程によって炭素ナノチューブ大量合成が可能になるわけである。ここで、合成された炭素ナノチューブを冷却する過程は、反応器の外部で別に行っても良く、この場合、反応器は冷却手段を備えなくて済む。
【0066】
このような連続した工程によって炭素ナノチューブを合成するには、反応器内部に空気が浸透するのを確実に遮断しなければならない。空気の浸透によって反応器内部に酸素が存在してしまうと、酸素が炭素ソースガスと瞬間的に酸化反応するので炭素ナノチューブは得られず、さらには酸素が水素ガスと反応して爆発を起こす危険もある。したがって、反応器の内部に酸素が存在してはいけない。
【0067】
気相合成法を用いる既存のバッチ型炭素ナノチューブ大量合成装置は、反応器の内部で酸素を排除するために、反応器内部を外部から完全に遮断するバッチ型構造を採択し、また、反応器内部を不活性気体で充填したものとした。
【0068】
しかしながら、このような構造では、毎工程ごとに反応器内部を加熱して炭素ナノチューブを合成し、合成の完了した後には反応器内部を再び冷却する過程を繰返さなければならなかった。このため、炭素ナノチューブを合成する時間に加えて、炭素ナノチューブ合成の準備時間が別にかかり、生産性に限界があった。
【0069】
これに対し、本発明は、外部に開放された反応器を使用しているため、反応器内部を炭素ナノチューブ合成可能な温度に維持し続けることが可能であり、したがって、反応器内部の冷却及び加熱を繰返す必要がない。したがって、本発明の炭素ナノチューブ大量合成装置は、一度装置を稼動すると中断なく炭素ナノチューブを合成できることに特長がある。中断なく連続して炭素ナノチューブを合成できる理由は、次の通りである。反応器内部が外部に露出されているため、触媒金属を反応器内部に連続して供給することができる。また、触媒金属が連続的に流入する瞬間にも炭素ナノチューブの合成が中断なく行われるので、炭素ナノチューブ大量合成が可能である。したがって、反応器は、入口及び出口が外部に開放されたオープン型の構造にすると同時に、外部空気が反応器の内部に浸透するのを防止する必要がある。このため、比重の異なる気体がそれぞれ固有の領域を占有するようにすることによって、外部の空気が反応器の内部に浸透するのを遮断する。このように、反応器の内部で周囲の気体とは比重の異なる特定の気体が占有する領域を比重相異気体占有領域という。
【0070】
また、反応器入口及び反応器出口を基準に反応器内部に位置した比重相異気体の圧力は、反応器外部の空気の圧力と平衡を維持しているので、外部空気が反応器の内部に浸透することが防止される。
【0071】
図3は、本発明の第2実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置を示す概略的な断面図である。図3に示すように、本発明の第2実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置は、反応器入口2及び反応器出口3が上方に開放された略‘V’字状の構造であり、炭素ナノチューブ合成ユニット200の反応領域は、反応器の中央部分の下方に凹入した凹入部5に形成される。第2実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置では、分子量39.948のアルゴンガスを反応器の雰囲気ガスとし、アルゴンガスよりも大きい92.1の分子量を持つトルエンを炭素ソースガスとする。
【0072】
第2実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置は、第1実施例と同様に、触媒金属還元ユニット100、ガス供給ユニット、炭素ナノチューブ合成ユニット200及び冷却ユニット300を備える。ただし、説明の重複を避けるために一部ユニットの図示及び具体的な説明は省略する。
【0073】
以下、第1実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置との相違点を中心にして第2実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置について説明する。
【0074】
第2実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置の反応器は、反応器入口2及び反応器出口3が上方に開放された構造であり、反応器入口2側には上方に上昇してから下方に下降する略‘A’字状の屈曲部150が形成され、‘A’字状の屈曲部150に触媒還元ユニット100が形成される。
【0075】
‘A’字状の屈曲部150には、ガス供給管から水素ガスが注入され、注入された水素ガスは、反応器入口2側の外部の空気及び反応器内部のアルゴンガスよりも比重が小さいため、‘A’字状の屈曲部150を上方から満たすようになる。したがって、‘A’字状の屈曲部150の中央部分が全て水素ガスで満たされるように水素ガスを注入する。この場合、反応器入口2側の空気は、‘A’字状の屈曲部150に満たされた水素ガスよりも比重が大きいため、常に水素ガスの下に位置し、反応器の内部に流入しない。また、‘A’字状の屈曲部150に触媒金属還元ユニット100が備えられ、水素ガスが触媒金属酸化物を還元させる。触媒金属酸化物が還元されながら反応器内部の水素ガスの量が減少するので、反応器内部に水素ガスを供給しなければならない。また、‘A’字状の屈曲部150には、反応器外部から供給された水素ガス中の一部を反応器の外部に排出させる排出管が設けられる。
【0076】
‘A’字状の屈曲部150に続く反応器1の内部は、アルゴンガスで満たされる。アルゴンガスは、空気及び水素ガスよりも比重が大きいため、反応器を下方から満たすようになる。ただし、アルゴンガスの注入量が一定限界を越えると、‘A’字状の屈曲部150の水素ガスを押し出して‘A’字状の屈曲部150にアルゴンガスが満たされるので、‘A’字状の屈曲部150の還元領域である傾斜した部分を越えないような程度にアルゴンガスの量を維持する。
【0077】
このとき、反応器の反応器出口3側ではアルゴンガスと外部の空気が接しているが、空気はアルゴンガスよりも比重が小さいために常にアルゴンガスの上側に位置し、したがって、外部の空気は反応器の内部に浸透されない。
【0078】
反応器の炭素ナノチューブ合成ユニット200では、アルゴンガスよりも比重の大きいトルエンを炭素ソースガスとして炭素ナノチューブを合成する。第2実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置の反応器は、重力方向に沿って下方に凹入するように凹入部5を形成しており、反応器内部に供給された炭素ソースガスが下降して凹入部5に效果的に集まるように、炭素ソースガスは周囲の雰囲気ガスよりも比重の大きいガスとしたわけである。したがって、反応器の凹入部5に集まったトルエンガスが触媒金属と反応して円滑に炭素ナノチューブが合成される。反応器の凹入部5は、炭素ソースガスを閉じ込める役割を担う。
【0079】
反応領域に供給される雰囲気ガスは、アルゴンガスに限定されることはなく、空気よりも比重の大きい不活性気体はいずれも使用可能である。また、炭素ソースガスもトルエンに限定されることはなく、雰囲気ガスよりも比重の大きいガスであればいずれも使用可能である。
【0080】
本実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置は、反応器1の内部で触媒還元反応を行うために‘A’字状の屈曲部150を形成したが、触媒還元された触媒を投入する場合には反応器内部で触媒を還元させる必要がないので、反応器に‘A’字状の屈曲部を形成しなくても良い。
【0081】
図4は、本発明の第3実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置を示す概略的な断面図である。図4に示すように、本発明の第3実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置は、第2実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置と略同様に構成され、ただし、反応器の構造において炭素ソースガスを閉じ込める凹入部の構造を変更し、反応器内部の上側に炭素ソース閉じ込め部250を設けた点に違いがある。
【0082】
第3実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置は、第1実施例と同様にガス供給ユニット、炭素ナノチューブ合成ユニット200及び冷却ユニット300を備えており、ただし、触媒金属還元ユニットは省略した。これは、既に還元反応された触媒金属を使用する場合には触媒金属還元ユニットを省略できるためである。
【0083】
第3実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置は、反応器内部の反応領域に供給される雰囲気ガスよりも比重の小さいガスを炭素ソースガスとする場合に適合する。反応器の雰囲気ガスとしてはアルゴンガスを使用し、炭素ソースガスはアルゴンガスよりも比重の小さいエチレンなどのガスを使用する。これに限定されず、雰囲気ガス及び炭素ソースガスは、上に言及した比重差を持つ他のガスとしても良い。炭素ソース閉じ込め部250は、側部は壁面で遮断され、上部は反応器の天井面で遮断され、下部のみ開放された構造である。炭素ソースガスを吹き付けるシャワーヘッドは、ノズルが上側に向って設置され、上側に向かって炭素ソースガスを吹き付ける。したがって、比重の小さい炭素ソースガスは上昇して炭素ソース閉じ込め部250に集まって留まる。
【0084】
したがって、炭素ソース閉じ込め部250に集まった炭素ソースガスは、炭素ソース閉じ込め部250に流入する触媒金属と反応して炭素ナノチューブを合成する。
【0085】
図5は、本発明の第4実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置を概略的に示す断面図である。図5に示すように、本発明の第4実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置は、第1実施例と略同様に構成され、ただし、反応器の両側にそれぞれ略‘U’字状の屈曲部400がさらに形成され、‘U’字状の屈曲部400のそれぞれに続く反応器入口2及び反応器出口3が上方に開放された点に違いがある。
【0086】
本実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置は、第1実施例と同様に触媒金属還元ユニット100、ガス供給ユニット(図示せず)、炭素ナノチューブ合成ユニット200及び冷却ユニット300を備え、ただし、図面の簡素化のために具体的な図示は省略した。
【0087】
反応器の‘U’字状の屈曲部400は、外気を遮断するために外部の空気よりも比重の大きいアルゴンガスが滞留する構造を採択したのである。反応器の‘U’字状の屈曲部400には、アルゴンガスを注入する注入管が連結される。反応器は、反応器入口2側に形成された‘U’字状の屈曲部400に続いて触媒還元ユニット100が形成され、触媒還元ユニット100と炭素ナノチューブ合成ユニット200が形成された部分には水素ガスが満たされ、反応器出口3側の‘U’字状の屈曲部400にはアルゴンガスが満たされる。したがって、反応器入口2と反応器出口3において外部の空気はアルゴンガスと接しており、外部の空気はアルゴンガスよりも比重が小さいためにアルゴンガスの上側に位置し、反応器の内部に浸透できない。
【0088】
‘U’字状の屈曲部400に注入されるガスは、アルゴンガスに限定されず、空気よりも比重の大きい他の不活性気体を使用しても良いことはもちろんである。また、それぞれの‘U’字状の屈曲部400には、同じ気体だけでなく、それぞれ異なる種類の気体を注入しても良い。
【0089】
反応器の炭素ナノチューブ合成ユニットにはシャワーヘッドからエチレンなど(炭素ソースガス)、水素ガスよりも比重の大きいガスが吹き込まれ、下方に凹入した凹入部5に炭素ソースガスが集まるようになり、触媒金属が凹入部5を通りながら炭素ナノチューブが合成される。
【0090】
上記の各実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置において、炭素ナノチューブ合成ユニットまたは反応領域を長く形成すると、触媒収容部材が反応しながら移動すべき距離が長くなるので、触媒収容部材の移動速度を速めることができる。すなわち、合成反応のために反応器内部の温度と反応時間を特定した場合に、炭素ナノチューブ合成ユニットが長く形成されると、触媒金属を反応器に投入する速度を増加させることができ、その結果、生産性の増加をもたらす。
【0091】
以上の実施例による合成装置は、加熱手段を反応器の外部に形成したが、本発明はこれに限定されず、触媒還元ユニット自体及び炭素ナノチューブ合成ユニット自体に加熱手段を一体に形成することも可能であり、本発明はこのような変形実施も全て含む。
【0092】
比重相異気体占有部とは、外部空気など周囲の気体と相異なる比重を持つ気体が、気体相互間の比重差によって一定空間を続けて占有する部分のことをいう。
【0093】
屈曲部が複数形成された大量合成装置は、反応器入口2から反応器出口3に至るまで1個または2個以上の比重相異気体占有部をおくことができる。
【0094】
比重相異気体占有部が2個以上形成された場合には、それぞれに異なる種類の気体を注入して占有するように構成しても良い。
【0095】
触媒収容部材を移動させる手段は、コンベヤーなどの自動手段を使用しても良く、手動式移動装置を使用しても良い。
【0096】
反応器に形成された凹入部5または炭素ソース閉じ込め部250は、炭素ソースガスを特定位置に集中させるため、炭素ナノチューブ合成の効率を上げることができる。
【0097】
図6は、本発明の第5実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置の構成を概略的に示す断面図である。図6に示すように、本発明の第5実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置は、反応器入口2aと反応器出口3aが外部空気に対して開放されたオープン型構造の反応器1aを備え、反応器入口2aから反応器1aの内部を経て反応器出口3aに達するように触媒金属を移送する移送ユニット15aを備える。
【0098】
反応器1aは、立設された構造であり、下方に開放された反応器入口2aが形成され、反応器入口2aの上側に触媒金属還元ユニット100aが設けられ、触媒金属還元ユニット100aに続いて下方に延びた部分に炭素ナノチューブ合成ユニット200aが設けられ、炭素ナノチューブ合成ユニット200aに連結された反応器1aの下側に冷却ユニット300aが設けられ、冷却ユニット300aに連結され、上方に開放されるように反応器出口3aが形成される。触媒金属還元ユニット100a、炭素ナノチューブ合成ユニット200a及び/または冷却ユニット300aには、反応器内に炭素ソースガス、水素ガス、アルゴンガスまたは窒素ガスなどの不活性ガスなどを供給するガス供給ユニット50aが連結される。反応器は、反応器入口2aから触媒金属還元ユニット100a、炭素ナノチューブ合成ユニット200a、冷却ユニット300a及び反応器出口3aが順に続く構造となっている。
【0099】
触媒金属還元ユニット100aは、反応器1a内に流入した触媒金属(catalytic metal)酸化物を還元させ、触媒金属酸化物から酸素を除去する機能を担う。触媒金属還元ユニット100aは、内部に空間が形成された反応器上部110a、及び反応器上部110aに設けられた第1加熱手段150aを備えて構成される。反応器入口2aの上部一側には、外気に露出されるように水素ガス排出管120aが設けられる。反応器上部110aは、反応器内部で上昇した気体を閉じ込めうるように、上側が密閉した構造となっている。第1加熱手段150aは、反応器内部を加熱する発熱機構であり、温度センサー(図示せず)を備えて反応器内部の温度を600〜1200℃に維持する。触媒金属還元ユニット100aの反応器上部110aは、反応器内部に供給された水素ガスによって占有される。すなわち、反応器内部に存在する気体のうち、比重の最も小さい水素ガスが反応器上部110aの内部を占有する占有領域を水素ガス占有部と呼ぶ。触媒金属酸化物は触媒担体に含まれた形態で提供される。
【0100】
炭素ナノチューブ合成ユニット200aは、触媒金属が炭素ソースガスと反応して炭素ナノチューブが合成される部分である。炭素ナノチューブ合成ユニット200aは、相対的に比重の小さい気体が上方に上昇できるように立設された空間が備えられた反応器中央部210a、及び、反応器中央部210aに設けられた第2加熱手段250aを備えて構成される。反応器中央部210aは、触媒金属と炭素ソースガスが反応して炭素ナノチューブが合成される反応領域が位置するので、充分な時間の間に触媒金属が経由できるように長く形成され、充分な炭素ソースガスが存在できるように内径の幅も反応器上部110aや反応器下部310aよりも大きく形成される。第2加熱手段250aもまた反応器内部を加熱する発熱機構であり、温度センサー(図示せず)を備えて反応器内部の温度を600〜1200℃に維持する。炭素ナノチューブ合成ユニット200aを構成する反応器中央部210aの内部には、水素ガスよりも比重の大きい炭素ソースガス、例えば、エチレンガスが満たされる。すなわち、反応器内部に存在する気体のうち、水素ガスよりは比重の大きいエチレンガスが反応器中央部210aの内部を占有する領域をエチレンガス反応領域という。反応器中央部210aは、比重差によって上下方向に気体が上昇または下降できるようにする立設された構造を例示したもので、図6に示す傾斜に限定されることはなく、比重差による気体の上昇及び下降を可能にする限り、それ以外の適切な傾斜を持つ構造も可能である。
【0101】
冷却ユニット300aは、合成された炭素ナノチューブを冷却させるためのもので、反応器の炭素ナノチューブ合成ユニット200aに連結され、炭素ソースガスよりも重いガス、例えば、アルゴンガスが留まるように底が密閉された構造の反応器下部310a、及び、反応器下部310aに設置される冷却手段350aを備えて構成される。冷却ユニット300aを構成する反応器下部310aの内部には、エチレンガスよりも比重の大きい不活性ガスの一つであるアルゴンガスが満たされ、アルゴンガスが反応器下部310aの内部を占有する占有領域をアルゴンガス占有部という。上述したように、重力方向を基準に反応器の上部の水素ガス占有部、反応器下部310aのアルゴンガス占有部は、互いに比重の異なる気体が反応器内部空間の各占有領域を占有しているので、これを比重相異気体占有部という。
【0102】
本実施例では冷却手段350aを水冷ジャケットで構成したが、冷却機能を行うものであれば、様々な形態の冷却手段350aが使用可能である。反応器下部310aの内側底部には水などの反応副産物を排出する‘U’字状の排出管20aが形成される。‘U’字状の排出管20aには‘U’字状に曲がった構造によって水が滞留し、これにより、反応器下部310aのガスは抜出されない。冷却ユニット300aは、アルゴンガスの温度を下げ、アルゴンガスが熱膨張して比重が小さくなるのを防ぐ。
【0103】
ガス供給ユニット50aは、反応器に連結された炭素ソースガスタンク、アルゴンガスタンクや窒素ガスタンク及び水素ガスタンクを備え、それぞれのタンクは、開閉バルブの介装されたガス注入管を介して反応器に連結される。これらのガスタンクはそれぞれ精製器を備える。これらの精製器は吸着法によってそれぞれ炭素ガス混合物及び水素ガス混合物を精製し、高純度の炭素ソースガス及び水素ガスを供給する。この炭素ソースガスの例には、メタン、エタンエチレン、アセチレン、プロピレン、ブタン、ブチレン、ブタジエン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、ベンゼン、キシレン、揮発油、プロパン、液化プロパンガス(LPG)、液化天然ガス(LNG)、ナフサ、一酸化炭素及びアルコール類などがある。不活性ガスは、反応器下部310aに満たされるもので、アルゴン、窒素に限定されず、炭素ソースガスよりも重い他の不活性ガスも使用可能である。冷却ユニット300aに連結されたガス供給ユニット50aの注入管を通って反応器内に供給されたガスのうち、炭素ソースガスは上昇して炭素ナノチューブ合成ユニット200aに位置し、水素ガスは上昇して炭素ナノチューブ合成ユニット200aを通過したのち触媒金属還元ユニット100aに位置する。この時、上昇する水素ガスが炭素ナノチューブ合成ユニット200aを通過しながら炭素ナノチューブ合成ユニット200aに満たされた炭素ソースガスと衝突して炭素ソースガスを流動させるので、流動する炭素ソースガスが触媒金属と活発に接触し、その結果、炭素ナノチューブ合成反応がより効率よく起きる。
【0104】
移送ユニット15aは、反応器内部を循環するように構成され、反応器入口2aから反応器出口3aまで触媒収容部材を移送する。移送ユニット15aは、モーター制御などによって触媒収容部材の移送速度を制御できるので、触媒金属酸化物の還元時間及び炭素ナノチューブの合成時間を自由に制御できる。本実施例に使用された触媒収容部材は、気相合成法による炭素ナノチューブ合成に必要な触媒金属を反応器に供給するためのバケット(bucket)10aであり、バケットの上端がコンベアベルトシステムにヒンジ結合されている。したがって、ヒンジ結合によって任意の位置でも直立状態を維持するので、触媒収容部材に収容された触媒金属は触媒収容部材からこぼれることがない。触媒収容部材はバケットに限定されず、触媒移送に好適な様々な形態のものが使用可能である。触媒収容部材の材質は、金属、石英、グラファイト(graphite)等にすることができる。触媒収容部材は、触媒金属と炭素ソースガスとの反応が活発になるように底に穴をあけた構成にしても良い。
【0105】
反応器内部の各領域を上下方向に区分した点線は、異なる気体が占有する領域を概略的に表示したものである。
【0106】
本実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置では、触媒金属を収容する触媒収容部材としてバケットが用いられたが、これに限定されず、触媒金属を収容できるボートやトレーなどの様々な手段を使用しても良く、使用される触媒収容部材によって適切な移送手段を選択して使用すれば良い。これは当業者にとっては自明なので、具体的な説明は省略する。
【0107】
以下、本発明の第5実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置を用いて炭素ナノチューブを合成する方法について説明する。
【0108】
第1加熱手段110a及び第2加熱手段210aを用いて反応器1aの触媒金属還元ユニット100aと炭素ナノチューブ合成ユニット200aを所望の温度、例えば、600〜1200℃に昇温させる(ステップ1)。
【0109】
次に、反応器上部110aに連結された不活性ガス注入管を通して反応器内部に不活性ガス、例えば、窒素ガスやアルゴンガスを供給する(ステップ2)。具体的に、アルゴンガスを反応器上部110aに連結されたガス注入管を通して供給すると、空気よりも比重の大きいアルゴンガスが反応器上部110aの左右側に移動しながら、反応器内部に存在していた空気を反応器入口2a及び反応器出口3aから反応器外部に排出させる。このようにして反応器1a内で空気や酸素が完全に除去され、反応器1aの内部は不活性ガス雰囲気とされる。
【0110】
次に、ガス供給ユニット50aを用いて反応器1aの内部に水素ガス及び炭素ソースガスを供給する(ステップ3)。
【0111】
続いて、触媒金属酸化物や該触媒金属酸化物の担持されている触媒担体(support material)を収容しているバケット10aを、外部から反応器入口2aを通して反応器の内部に供給する(ステップ4)。バケット10aの供給は、移送ユニット15aによってなされる。
【0112】
ここで、触媒担体は粒子(powder)状にしても良く、マグネシウム酸化物(MgO)、アルミナ(AlO)、ゼオライト(Zeolite)またはシリカなどからなることができ、触媒金属粒子酸化物を触媒担体のナノ気孔に担持する方法は、ゾルゲル(sol−gel)法、共沈法(coprecipitation)、または含浸法(impregnation)とすれば良い。
【0113】
続いて、反応器の内部に移動したバケット10aの触媒金属酸化物は、触媒金属還元ユニット100aの還元処理によって触媒金属となる(ステップ5)。例えば、触媒金属酸化物が酸化鉄である場合、酸化鉄は水素ガスと反応して水と純粋な鉄に変化される。このような触媒金属は、鉄の他に、Co、Ni、Moまたはこれらの合金などになりうる。
【0114】
触媒金属還元ユニット100aを通過したバケット10aの触媒金属は、炭素ナノチューブ合成ユニット200aに移動する。この炭素ナノチューブ合成ユニット200aに移動した触媒金属は、炭素ソースガスと反応して炭素ナノチューブとして合成される(ステップ6)。
【0115】
もちろん、炭素ナノチューブの合成時に、炭素ソースガス注入量及び炭素ナノチューブ合成ユニット200aの温度を調節することによって炭素ナノチューブ合成時の炭素ナノチューブの成長速度、直径及び結晶性を調節できる。
【0116】
特に、触媒金属粒子は粉末状触媒担体のナノ気孔に担持して固着されるが、この時、炭素ナノチューブ合成時に要求される高温状態において触媒金属粒子の移動が抑制され、均一な直径を持つ炭素ナノチューブ合成が可能になる。しかも、数ナノメートル大きさの触媒金属粒子が粉末状の母体のナノ気孔に担持されて固着した状態で炭素ナノチューブが合成されるので、非晶質状態の炭素塊りが形成されず、高純度の炭素ナノチューブが合成可能である。
【0117】
合成された炭素ナノチューブを載せたバケット10aは冷却ユニット300aに移動し、冷却手段350aによって常温に強制冷却される(ステップ7)。このような冷却過程を省略し、合成された炭素ナノチューブを反応器の外部に搬出したのち外部で冷却しても良い。
【0118】
冷却済みの合成された炭素ナノチューブは反応器出口3aから反応器の外部に搬出される(ステップ8)。搬出されたバケット10aから炭素ナノチューブを取り出した後、新しい金属触媒を投入してバケット10aを再び反応器入口2aから反応器内部に搬入させる。続いて反応器内部に搬入されたバケットに収容された新しい触媒金属と炭素ソースガスとが反応する炭素ナノチューブ合成過程が継続して行われ、大量に炭素ナノチューブを合成することが可能になる。合成された炭素ナノチューブを取り出したのち新しい金属触媒を投入する作業は、当業者に公知された一般の自動化装置によって行うと良い。
【0119】
以上のような本発明の好ましい実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置は、触媒金属還元ユニット100a、炭素ナノチューブ合成ユニット200a及び冷却ユニット300aが連続して配置され、外気に開放されたオープン構造を持つので、継続した炭素ナノチューブの合成が可能である。すなわち、本発明は、反応器内部への触媒金属の連続的投入及び反応器内部で合成された炭素ナノチューブの連続的搬出が可能な連続工程を使用して炭素ナノチューブを合成する。
【0120】
ガス注入管から反応器内に注入された炭素ソースガス、水素ガス及びアルゴンガスなどは、比重が相互に異なるため、比重の最も小さい水素ガスが触媒金属還元ユニット100aの反応器上部110aを満たし、比重が水素ガスよりも大きいエチレンガスが炭素ナノチューブ合成ユニット200aの反応器中央部210aを満たし、比重の最も大きいアルゴンガスが反応器の最下部である反応器下部310aを満たすことになる。この過程で、ガス供給ユニット50aの一部ガス注入管は反応器中央部210aの下方に連結されることから、反応器内部に注入されたガスのうち、エチレンガスと水素ガスは上側に上昇し、アルゴンガスは下側に下降する。すなわち、水素ガスは、反応器中央部210aを通過して反応器の上部110aまで上昇し、エチレンガスは反応器中央部210aまで上昇し、この時、上昇する水素ガスとエチレンガスが反応器中央部210aに既に位置していたガスを流動させ、この流動によって炭素ソースガスであるエチレンガスが触媒金属と活発に接触する結果、炭素ナノチューブの合成が效果的に行われる。特に、エチレンガスは、水素ガスよりは比重が大きいがアルゴンガスよりは比重が小さいため、反応器中央部210aに滞留する。また、反応器中央部210aの上下両端をボトルネック状にすることによって、エチレンガスを反応器中央部210aにより容易に集めて滞留させることができる。
【0121】
反応器入口2a上側の触媒金属還元ユニット100aには高温の水素ガスが集まっており、高温の水素ガスは外部の空気よりも比重が小さいので、外部空気は常に水素ガスの下方に位置し、反応器1aの内部に浸透できない。具体的に、反応器内部の温度は約900℃に維持され、反応器外部の温度は約20℃とする。標準状態(0℃=274K、1気圧)で水素ガス1モル(22.4リットル)の質量が2gであるから、約900℃(=1174K)の反応器の内部ではシャルルの法則によって体積が約4倍に増加し、よって、水素ガス1モル(22.4リットル)は約0.5gの質量を持つ。そして、標準状態における空気1モル(22.4リットル)の質量が約28.9gであるから常温(20℃)における空気1モルの質量は約27gとなる。すなわち、空気と水素ガスが接する反応器の入口において空気の比重は水素ガスの比重の約54倍にもなるので、比重差によって空気は常に水素ガスの下に位置し、水素ガスを通過して上昇できず、反応器の内部に浸透できない。反応器開口が下方に開放された構造の場合では、外部空気の反応器内部への流入を防ぐためには、外部空気よりも軽いガス、例えば、水素ガスが反応器の開口側を占有しなければならない。
【0122】
また、反応器出口3aの下に位置する分子量39.948のアルゴンガスは、冷却ユニット300aによって冷却されて常温を維持するので、1モル(22.4リットル)の質量は約35gとなる。したがって、外部の空気はアルゴンガスよりも比重が小さいために常にアルゴンガスの上側に位置し、したがって、アルゴンガスを通過して反応器出口内に浸透できない。反応器開口が上方に開口された構造の場合では、外部空気の反応器内部への流入を防ぐには、外部空気よりも重いガス、例えば、アルゴンガスが反応器開口側を占有しなければならない。
【0123】
反応器の内部へ流入した水素ガスの一定量は、反応器上部110aの水素ガス排出管120aから反応器の外部に排出される。これは、反応器入口2aの水素ガスと外部空気が接する領域において水素ガスの圧力と外部空気の圧力を平衡させ、外部の空気が反応器の内部に浸透するのを確実に遮断するためである。換言すると、ガス注入管から反応器の内部に過量の水素ガスが注入されて水素ガスの圧力を増加させる一方で、水素ガス圧力の増加によって水素ガスが反応器入口2aから外部に排出されるのを防ぐよう、水素ガスの一定量が別の水素ガス排出管120aを通して排出されるようにし、反応器入口で水素ガスと外部空気との圧力を平衡させたわけである。すなわち、触媒金属酸化物が還元する時に一定量の水素ガスが反応するが、還元時に反応する水素ガスの量よりも過量の水素ガスを注入し、反応器内の水素ガスの圧力を一定水準以上に維持することができる。
【0124】
ここで、水素ガス排出管120aから一定量の水素ガスが排出されることから、触媒金属還元ユニット100aの反応器上部110aから水素ガス排出管120aまで水素ガスの流動が生成され、この流動の方向は反応器入口2aに向くので、反応器入口2aから外部空気が流入するのをより確実に遮断できる。
【0125】
本発明による炭素ナノチューブ大量合成装置は、比重の相互に異なる気体が反応器の特定領域を占有しているので、反応器が外部に完全に開放されたオープン型構造を採択しているにもかかわらず、外部の空気が反応器の内部に浸透できない。
【0126】
外部の空気が反応器の内部に流入すると、空気中の酸素が炭素ソースガスと瞬間的に酸化反応してしまい、炭素ナノチューブが得られなく、さらには酸素が水素ガスと反応して爆発を起こす危険もある。したがって、反応器の内部には酸素が存在してはいけない。
【0127】
気相合成法を用いる既存のバッチ型炭素ナノチューブ大量合成装置は、反応器の内部を酸素の全くない状態にするために、反応器内部を外部から完全に遮断した状態で反応器内部を不活性気体で充填して酸素や空気などを反応器の外部に排出させた後に、炭素ナノチューブを合成してきた。
【0128】
しかしながら、この場合では、毎工程ごとに反応器内部から酸素を除去したのち反応器内部を加熱して炭素ナノチューブを合成し、合成完了後には反応器内部を再び冷却し、炭素ナノチューブを回収する過程を繰り返さなければならず、炭素ナノチューブの合成準備に時間がかかってしまう。このため、実際、炭素ナノチューブ合成にかかる時間よりも合成準備及び解除に時間がかかってしまい、生産性増大に限界があった。
【0129】
これに対し、本発明による炭素ナノチューブ大量合成装置は、初期に一度合成のための準備をすると、炭素ナノチューブ合成のための反応環境として中断なく維持される。したがって、本発明による炭素ナノチューブ大量合成装置は、装置の稼動が始まると一瞬も中断することなく炭素ナノチューブの合成が続けられる。
【0130】
このような中断のない炭素ナノチューブの合成は、反応器の内部を外部に完全に開放した状態で新しい触媒金属が連続的に反応器内部に投入されることによって実現される。すなわち、触媒金属が反応器外部から供給される瞬間にも炭素ナノチューブ合成ユニット200aでは炭素ナノチューブの合成が中断なくなされる。
【0131】
反応器の内部は外気に完全に開放されているが、反応器の一定領域で特定気体が外気の流入を完全に遮断する。すなわち、一定の空間に存在する比重の相互に異なる気体はそれぞれ反応器内部の特定領域を占有することによって、他の気体が該当の特定領域に浸透するのを遮断し、外部の空気が反応器の内部に浸透するのを防ぐ。反応器内部の特定領域を占有する気体は外部空気と圧力の平衡を維持するので、外部の空気が反応器の内部に浸透することが防止される。
【0132】
図7は、本発明の第6実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置を概略的に示す断面図である。図7に示すように、本発明の第6実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置は、内部空間を有し、また、外気と連通する反応器通路4a、加熱手段の設けられた反応器1a、及び反応器通路4aを通して反応器の内部に触媒金属を移送する移送ユニット15aを備える。反応器通路4aは、触媒金属を反応器に出入させるもので、反応器入出口と呼んでも良い。
【0133】
本実施例による大量合成装置の反応器1aは、触媒金属が出入できる反応器通路4aが下方に開放されており、炭素ナノチューブ合成ユニット200aは反応器通路4a上側の反応器内部に形成される。
【0134】
ガス供給ユニット50aは、反応器の内部に水素ガス、炭素ソースガス及び不活性ガスを供給するガスタンクと、各ガスタンクを反応器に連結し、それぞれが開閉バルブを有するガス注入管とを備える。
【0135】
炭素ナノチューブ合成ユニット200aは、反応器1aの上部において炭素ソースガスタンクと連結され、炭素ソースガスを均一に吹き付けるように複数の噴射ノズルが配列されたシャワーヘッド230aと、シャワーヘッド230aの下側に位置して炭素ソースガスを集める、上側が開放された構造、例えば、上面のないボックス構造の炭素ソースガス閉じ込め部280aと、反応器に設置された加熱手段250aとを備える。
【0136】
炭素ソースガス閉じ込め部280aは、所定の高さを持つ壁面で取り囲まれ、上側のみ開放されたボックス構造である。シャワーヘッド230aは、炭素ソースガス閉じ込め部280aの壁面上端よりも下方に進入して位置する。したがって、シャワーヘッド230aから吹き付けられた炭素ソースガスは炭素ソースガス閉じ込め部280aの内側に閉じ込められる。炭素ソースガス閉じ込め部280aの外部にあふれた一部の炭素ソースガスは、主に反応器内の下部空間に存在する。
【0137】
また、シャワーヘッドは、炭素ソースガス閉じ込め部の開放された上面部分を殆ど覆えるような面積を持つ。もちろん、シャワーヘッドと炭素ソースガス閉じ込め部との間には、触媒収容部材が炭素ソースガス閉じ込め部を進入するための空間と、触媒収容部材が炭素ソースガス閉じ込め部から出て行くための空間は形成される。したがって、シャワーヘッドは、炭素ソースガス閉じ込め部への触媒収容部材の進入及び炭素ソースガス閉じ込め部からの触媒収容部材の排出を可能にしながらも、炭素ソースガスよりも軽い水素が炭素ソースガス閉じ込め部に進入するのを最小限に抑え、炭素ナノチューブ合成の収率を高く維持する。
【0138】
炭素ソースガス閉じ込め部280aは、その一側上部から触媒収容部材のバケットが進入し、他側上部からバケットが出て行くので、上側において余裕空間が形成され、その結果、炭素ソースガス閉じ込め部に存在すべき炭素ソースガスと触媒金属との反応がなされる反応領域は、炭素ソースガス閉じ込め部の上側余裕空間を占有する水素ガスよりも下に形成される。
【0139】
炭素ソースガス閉じ込め部280aには、水、剰余炭素ソースガス、またはその他反応副産物を排出させる排出管285aが形成される。炭素ソースガスが余分に反応器内に注入された場合、排出管285aから一部の炭素ソースガスを反応器外部に排出させる。炭素ソースガス閉じ込め部280aは、水素ガスよりも重い炭素ソースガスを集めるためのもので、ボックス構造に限定されず、上側が開放され、側面と底面が形成された様々な構造としても良い。
【0140】
反応器に設置された加熱手段は、反応器の内部全体を加熱する。したがって、反応器通路4aから反応器の内部に流入したバケット10aの触媒金属酸化物は、炭素ソースガス閉じ込め部280aに到達する前に、ガス注入管から注入されて反応器内部に充填された水素ガスと反応して還元されることによって酸素が除去される。したがって、水素ガスの充填された反応器自体が触媒金属を還元する触媒金属還元ユニットの役割を担う。
【0141】
これに加えて、触媒金属還元が確実になされるよう、炭素ソースガス閉じ込め部の一側に接する別の還元誘導案内面が形成される。還元誘導案内面は、横方向に充分な長さで形成され、触媒収容部材の触媒金属酸化物が反応器の内部空間の上側を沿って充分な時間の間に移動しながら還元されるのを可能にする。本実施例では還元誘導案内面を別に形成したが、本発明はこれに限定されることはなく、適切な移送経路を持つように移送ユニットを配置することによって炭素ソースガス閉じ込め部に到達する前に触媒収容部材が反応器上部に沿って十分に長い経路を移動し、触媒金属酸化物が充分な時間還元されるようにしても良い。
【0142】
反応器通路4aは、反応器から下方に所定の長さだけ延びて形成され、反応器通路4aの外周には、冷却手段350aを備えた冷却ユニット300aが設けられ、反応器内で合成された炭素ナノチューブが反応器外部に排出する際に炭素ナノチューブを冷却させる。
【0143】
反応器通路4aの上部一側には水素ガス排出管120aが設けられる。ガス供給ユニット50aから水素ガスが過量供給される場合には水素ガスの圧力が継続して増大するので、反応器通路4aの水素ガスと外部空気が接する領域において水素ガスの圧力と外部空気の圧力が平衡を維持するよう、一定量の水素ガスは反応器の外部に排出されなければならない。この時、水素ガスの安定した排出のため、水素ガスは反応器通路4aではなく水素ガス排出管120aから排出されるようにしたわけである。水素ガス排出管120aを反応器の下部に設けたのは、反応器内の高温の環境で反応器の上部に上昇した水素ガスが直ちに反応器の外部に排出されず、反応器の内部に十分に満たされるようにし、結果として反応器内部の水素ガスの圧力を十分に増加させるためである。
【0144】
反応器外部の空気は、水素ガスよりも比重が大きいために水素ガスの下に位置する性質があり、反応器通路4aは下方に開放されているため、水素ガスの満たされた反応器内部には比重の大きい空気が浸透できない。しかも、反応器通路4aの水素ガスと外部空気とが接する領域において水素ガスの圧力と外部空気の圧力が平衡を維持するので、空気は反応器の内部に浸透できない。
【0145】
本実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置は、反応器通路4aが下方に開放された構造であるにもかかわらず、外部の空気は反応器中の高温の水素ガスよりも比重が大きいため、常に水素ガスの下に存在し、結果として外部の空気は反応器1aの内部に浸透できない。
【0146】
本実施例ではアルゴンガスの注入管が反応器のシャワーヘッドに連結される。これにより、反応準備段階でアルゴンガスを噴射すると、アルゴンガスが反応器内部に存在していた空気を下方に押し出して反応器通路から排出させ、反応器内部は不活性ガス雰囲気となる。以降反応器に水素ガスを供給して触媒金属を還元させ、炭素ソースガスを供給して炭素ナノチューブを合成する過程が行われる。これ以外の具体的な過程は、上記の実施例を参照されたい。
【0147】
図8は、本発明の第7実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置を概略的に示す断面図である。図8に示すように、本発明の第7実施例による合成装置は、触媒金属を収容している触媒収容部材のバケット10aの搬入及び搬出が反応器通路4aを通って行われる点は、第2実施例による大量合成装置と同様である。ただし、反応器通路4aが上方に開放されており、反応器通路4aに続く‘U’字状の屈曲部400aが形成される点が、第2実施例による大量合成装置と異なる。触媒金属酸化物を収容したバケット10aを反応器内部に搬入して炭素ナノチューブを合成し、再びバケットを反応器外部に搬出する移送ユニット15aが備えられる。
【0148】
反応器通路4aの下側に‘U’字状の屈曲部400aが形成され、‘U’字状の屈曲部400aの一端が折り曲げられて所定長さだけ水平に延長され、この水平延長部分の末端には炭素ナノチューブの合成のための炭素ナノチューブ合成ユニット200aが続く。
【0149】
‘U’字状の屈曲部400aは外周に設置された冷却手段350aと共に冷却ユニット300aを構成し、‘U’字状の屈曲部400aに続く反応器の内部は、触媒金属還元ユニット100a及び炭素ナノチューブ合成ユニット200aが形成される。
【0150】
‘U’字状の屈曲部400aは、ガス供給ユニット50aのアルゴン注入管から注入されたアルゴンガスが所定の高さまで満たされ、また、冷却手段350aによって‘U’字状の屈曲部400aが冷却される。冷却されたアルゴンガスは、反応器外部の空気よりも比重が格段に大きくなる。したがって、反応器通路4aの部分では、外部空気は比重の大きいアルゴンガスよりも常に上側に存在し、このため、外部の空気はアルゴンガスによって遮断され、反応器1aの内部に浸透できない。‘U’字状の屈曲部400aを占有する気体はアルゴンガスに限定されず、外部空気よりも比重の大きい他の不活性ガスとしても良い。
【0151】
‘U’字状の屈曲部400aから折り曲げられた反応器の水平延長部分105aは、反応器外部に設置された加熱手段によって加熱され、水素ガス注入管から反応器内部に注入された水素ガスと移送ユニット15aによって反応器の水平延長部分105aに到達した触媒金属酸化物とが反応することによって、触媒金属酸化物から酸素が除去される。また、水平延長部分105aを通過した触媒収容部材は、反応器後方部205aの天井面に近接して移動するので、予め還元されなかった触媒金属酸化物があるとしても、反応器後方部205aの上側空間に満たされた水素と触媒金属酸化物が還元反応し、触媒金属酸化物が確実に還元される。水平延長部分105aの長さは、図8に示す長さに限定されることはなく、触媒金属酸化物が充分な時間還元できるような充分な長さにすれば良い。
【0152】
反応器の水平延長部分105aに続く反応器後方部205aは、所定大きさの空間を有し、上部には、炭素ソースガスが均一に噴射されるシャワーヘッド230aが設置される。反応器後方部205aの上部には、炭素ソースガスよりも軽い水素ガスが排出される水素ガス排出管207aが設けられ、反応器後方部205aの下部には加熱手段250aが設置される。移送ユニット15aによって反応器後方部205aに進入した触媒収容部材の触媒金属酸化物は、シャワーヘッド230aの下を通過しながら炭素ソースガスと反応して炭素ナノチューブを合成する。合成された炭素ナノチューブを収容した触媒収容部材は、移送ユニット15aによって同じ経路に沿って反応器の外部に排出される。
【0153】
反応器後方部205aは、水平延長部分105aに比べて深く形成され、シャワーヘッド230aは反応器後方部205aの底に近接して位置する。これにより、反応器後方部205aの底の一定空間には炭素ソースガスが集まり、以降触媒金属と炭素ソースガスが反応する反応領域を形成する。触媒金属が反応器後方部205aの底の真上を通過するので、触媒金属と密集している炭素ソースガスが反応して活発に炭素ナノチューブを合成する。すなわち、反応器後方部205aの底を水平延長部分205aに比べて深く形成することによって、重力によって水素ガスよりも重い炭素ソースガスを反応器後方部205aの下部空間に密集させ、反応効率を高めることができる。
【0154】
これ以外の本実施例の具体的な説明は、上記の実施例における説明と同様なので省略する。
【0155】
図9は、本発明の第8実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置を概略的に示す断面図である。図9に示すように、本発明の第8実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置は、‘U’字状の屈曲部がない点と、反応器通路が下方に開放された点以外は、上記の第7実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置と略同様に構成される。
【0156】
反応器の内部は水素で満たされ、反応器通路が下方に開放されており、かつ、反応器通路の上側も水素で満たされているので、反応器外部の空気は反応器内部に流入することができない。反応器通路から空気が流入できない理由は本発明の第5実施例及び第6実施例で説明した理由と同様なので、重複説明は省略する。
【0157】
本実施例の水素ガス排出管207aは、第7実施例の炭素ナノチューブ大量合成装置と違い、反応器通路の上側に形成される。水素ガス排出管207aを反応器通路に近接して形成することによって、反応器通路から水素ガスが排出されるのを防止することができる。
【0158】
上記各実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置において、炭素ナノチューブ合成ユニット200aを長く形成すると、触媒収容部材が反応しながら移動すべき距離が増加するため、触媒収容部材の移動速度を速めることができる。すなわち、合成反応のために反応器内部の温度と反応時間を特定した場合に、炭素ナノチューブ合成ユニット200aが長く形成されると触媒金属を反応器に投入する速度を増加させることができ、その結果、生産性の増加が図られる。
【0159】
本発明の各実施例による合成装置は、加熱手段及び冷却手段350aを反応器の外部に備えたが、本発明は、これに限定されず、加熱及び冷却機能に適切ないずれの位置にしても良い。
【0160】
本発明による炭素ナノチューブ大量合成装置は、反応器の形状に応じて1箇所または2箇所以上の比重相異気体占有部をおくことができ、互いに離れて位置する比重相異気体占有部は、同じ気体によって占有されても良く、異なる気体によって占有されても良い。
【0161】
触媒収容部材を移動させる手段は、コンベヤーに限定されず、公知の様々な移送手段にしても良い。
【0162】
反応器に形成された炭素ソースガス閉じ込め部280aは、炭素ナノチューブ合成の効率を増大させるためのもので、炭素ソースガスを特定位置に集中させる機能を担う。
【0163】
本発明の好適な実施例では、合成された炭素ナノチューブを常温に冷却させるために別の冷却手段を備えたが、本発明は、これに限定されず、冷却手段を別に設置せず、反応器外部に排出された炭素ナノチューブを反応器外部で冷却する構成にしても良い。
【0164】
以上では上記の具体的な実施例を挙げて本発明を説明してきたが、発明の要旨及び範囲を逸脱しない限度内で様々な修正及び変形が可能であることは、当該技術分野における通常の知識を持つ者にとっては明らかである。したがって、これらの本発明の要旨内における修正及び変形はいずれも、添付の特許請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明は、気相合成法を用いる炭素ナノチューブ大量合成装置に利用可能である。特に、本発明は、オープン型反応器を持つ炭素ナノチューブ大量合成装置を用いて炭素ナノチューブを大量に合成する方法に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】本発明の第1実施例による気相合成法を用いる炭素ナノチューブ大量合成装置を示す概略図である。
【図2】本発明の第1実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置における反応器内のガスの占有状態を示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置を示す概略的な断面図である。
【図4】本発明の第3実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置を示す概略的な断面図である。
【図5】本発明の第4実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置を示す概略的な断面図である。
【図6】本発明の第5実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置を示す概略的な断面図である。
【図7】本発明の第6実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置を示す概略的な断面図である。
【図8】本発明の第7実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置を示す概略的な断面図である。
【図9】本発明の第8実施例による炭素ナノチューブ大量合成装置を概略的に示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部空気に開放された少なくとも一つの開口を有し、該開口から外部空気が流入することが遮断されるように、外部空気と比重が相互に異なる少なくとも一つの比重相異気体が満たされる比重相異気体占有領域が形成された反応器と、
前記比重相異気体占有領域内に設けられて、前記開口から流入する触媒を媒介として炭素ナノチューブを合成する炭素ナノチューブ合成ユニットと、
前記触媒を前記開口から前記炭素ナノチューブ合成ユニットに移送する移送ユニットと、
前記比重相異気体及び前記炭素ナノチューブの合成のための炭素ソースガスをそれぞれ前記比重相異気体占有領域及び前記炭素ナノチューブ合成ユニットに供給するガス供給ユニットと、
を備えることを特徴とする、炭素ナノチューブ大量合成装置。
【請求項2】
前記開口は、前記触媒が流入する入口と、前記炭素ナノチューブ合成ユニットによって合成された炭素ナノチューブを前記反応器の外部に排出する出口とを備え、
前記移送ユニットは、前記入口、前記比重相異気体占有領域、前記炭素ナノチューブ合成ユニット及び出口を経由するように前記触媒及び/または前記炭素ナノチューブを移送することを特徴とする、請求項1に記載の炭素ナノチューブ大量合成装置。
【請求項3】
前記炭素ナノチューブ合成ユニットは、
前記反応器の内部に形成され、前記比重相異気体占有領域に満たされた前記比重相異気体によって前記外部空気から遮断される反応領域と、
前記移送ユニットによって前記反応領域内に移送された前記触媒が炭素ソースガスと反応して前記炭素ナノチューブを合成するように、前記ガス供給ユニットに供給される前記炭素ソースガスを前記反応領域に吹き付ける炭素ソース噴射機構と、
前記反応領域を加熱する加熱手段と、
を備えることを特徴とする、請求項2に記載の炭素ナノチューブ大量合成装置。
【請求項4】
前記炭素ナノチューブ合成ユニットの前記反応領域は、前記炭素ソースガスよりも比重の小さい比重相異気体が満たされた比重相異気体占有領域の少なくとも一領域の下部に形成され、
前記炭素ナノチューブ合成ユニットは、前記反応領域に噴射される前記炭素ソースガスが前記反応領域を外れるのを防ぐ、上側の開放された炭素ソース閉じ込め部をさらに備えることを特徴とする、請求項3に記載の炭素ナノチューブ大量合成装置。
【請求項5】
前記比重相異気体占有領域は、前記炭素ソースガスよりも比重の小さい比重相異気体が満たされる第1比重相異気体占有領域と、前記炭素ソースガスよりも比重の大きい比重相異気体が満たされる第2比重相異気体占有領域と、を有し、
前記第1比重相異気体占有領域、前記反応領域及び前記第2比重相異気体占有領域は、前記反応器内部で重力方向に沿って順次に形成されることを特徴とする、請求項3に記載の炭素ナノチューブ大量合成装置。
【請求項6】
前記比重相異気体は、前記反応器中において前記開口の位置に応じて前記開口から外部空気が流入するのを遮断するように、前記外部空気よりも比重の大きい気体及び前記外部空気よりも比重の小さい気体のうち少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする、請求項3に記載の炭素ナノチューブ大量合成装置。
【請求項7】
前記比重相異気体占有領域を占有する比重相異気体の少なくともいずれか一つは、水素ガスを含むことを特徴とする、請求項3に記載の炭素ナノチューブ大量合成装置。
【請求項8】
前記反応器は、前記比重相異気体占有領域を占有する水素ガスの圧力と前記外部空気の圧力が平衡するように、前記水素ガスを前記反応器外部に排出する少なくとも一つの排出管が形成されることを特徴とする、請求項7に記載の炭素ナノチューブ大量合成装置。
【請求項9】
前記比重相異気体占有領域は、重力方向に対して交差する方向に連通する第1占有領域と、前記入口と前記第1占有領域間を連通する第2占有領域と、前記出口と前記第1占有領域間を連通する第3占有領域と、を有し、
前記反応器は、前記第1占有領域、前記第2占有領域及び前記第3占有領域が形成されるように前記入口及び前記出口側が折り曲げられて形成されることを特徴とする、請求項2に記載の炭素ナノチューブ大量合成装置。
【請求項10】
前記入口及び前記出口は、前記比重相異気体占有領域に満たされる前記比重相異気体が重力によって前記入口または出口から前記反応器外部に排出されないように、前記第1占有領域と重力方向に対して位置差を持つことを特徴とする、請求項9に記載の炭素ナノチューブ大量合成装置。
【請求項11】
前記炭素ナノチューブ合成ユニットは、
前記反応器の内部に形成されるとともに、前記比重相異気体占有領域に満たされた前記比重相異気体によって前記外部空気から遮断される反応領域と、
前記移送ユニットによって前記反応領域内に移送された前記触媒が前記炭素ソースガスと反応して前記炭素ナノチューブを合成するように、前記ガス供給ユニットから供給される前記炭素ソースガスを前記反応領域に吹き付ける炭素ソース噴射機構と、
前記反応領域を加熱する加熱手段と、
を備えることを特徴とする、請求項10に記載の炭素ナノチューブ大量合成装置。
【請求項12】
前記比重相異気体は、前記外部空気よりも比重の小さい気体を含み、
前記入口及び前記出口は、前記比重相異気体が重力によって前記入口または出口から前記反応器外部に排出されないように、前記第1占有領域よりも重力方向に対して低く位置することを特徴とする、請求項11に記載の炭素ナノチューブ合成ユニット。
【請求項13】
前記比重相異気体は、前記外部空気よりも比重の小さい水素ガスを含むことを特徴とする、請求項12に記載の炭素ナノチューブ合成ユニット。
【請求項14】
前記比重相異気体は、前記外部空気よりも比重の大きい気体を含み、
前記入口及び前記出口は、前記比重相異気体が重力によって前記入口または出口から前記反応器外部に排出されないように、重力方向に対して前記第1占有領域よりも高く位置することを特徴とする、請求項11に記載の炭素ナノチューブ合成ユニット。
【請求項15】
前記炭素ソース噴射機構は、前記反応領域に前記炭素ソースガスを均一に吹き付けるために前記反応領域の大きさに対応するように分散して配置された複数の噴射口を持つことを特徴とする、請求項3または13に記載の炭素ナノチューブ大量合成装置。
【請求項16】
前記開口から流入した触媒が還元されるように前記反応器内部の少なくとも一領域を加熱する加熱手段を備えることを特徴とする、請求項7または13に記載の炭素ナノチューブ大量合成装置。
【請求項17】
前記炭素ナノチューブ合成ユニットは、前記反応領域に吹き付けられる前記炭素ソースガスが前記反応領域を外れるのを遮断する、上側に開放された炭素ソース閉じ込め部をさらに備えることを特徴とする、請求項7または13に記載の炭素ナノチューブ大量合成装置。
【請求項18】
前記炭素ナノチューブが冷却されるように前記出口に近接する前記反応器の一領域を冷却する冷却ユニットをさらに備えることを特徴とする、請求項2乃至14のいずれか1項に記載の炭素ナノチューブ大量合成装置。
【請求項19】
外部空気に開放された少なくとも一つの開口と比重相異気体占有領域が形成された反応器を用意する段階と、
前記比重相異気体占有領域に前記開口から前記外部空気が流入するのを遮断するよう、前記外部空気と比重の相異なる少なくとも一つの比重相異気体を満たす段階と、
前記比重相異気体占有領域内に炭素ソースガスを流入させ、前記比重相異気体によって前記外部空気と遮断された反応領域を形成する段階と、
前記開口から前記反応器内の前記反応領域に触媒を供給する段階と、
前記反応領域を形成する前記炭素ソースガスと前記触媒とが反応して炭素ナノチューブを合成する段階と、
前記合成された炭素ナノチューブが前記開口から前記反応器の外部に排出される段階と、
を含むことを特徴とする、炭素ナノチューブ大量合成方法。
【請求項20】
前記比重相異気体占有領域は、重力方向に対して交差する方向に連通する第1占有領域と、前記入口と前記第1占有領域間を連通する第2占有領域と、前記出口と前記第1占有領域間を連通する第3占有領域と、を有し、
前記反応器は、前記第1占有領域、前記第2占有領域及び前記第3占有領域が形成されるよう、前記入口及び前記出口側が折り曲げられて形成されることを特徴とする、請求項19に記載の炭素ナノチューブ大量合成方法。
【請求項21】
前記入口及び前記出口は、
前記比重相異気体占有領域に満たされる前記比重相異気体が重力によって前記入口または出口から前記反応器外部に排出されないよう、前記第1占有領域と重力方向に対する位置差を持つことを特徴とする、請求項20に記載の炭素ナノチューブ大量合成方法。
【請求項22】
前記比重相異気体占有領域に満たされる前記比重相異気体は、水素ガスを含み、
前記第2占有領域を加熱する段階及び
前記第2占有領域で前記水素ガスと前記触媒とが反応して前記触媒が還元される段階を、
さらに含むことを特徴とする、請求項20に記載の炭素ナノチューブ大量合成方法。
【請求項23】
前記反応器の前記入口及び前記出口の少なくともいずれか一側には外部に連通した排出管が形成され、
前記比重相異気体占有領域の前記水素ガスの圧力と前記外部空気の圧力とが平衡するように、前記水素ガスが前記排出管から排出される段階をさらに含むことを特徴とする、請求項22に記載の炭素ナノチューブ大量合成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−531456(P2008−531456A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557941(P2007−557941)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【国際出願番号】PCT/KR2006/000806
【国際公開番号】WO2006/107144
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(507294904)シーエヌティカンパニーリミテッド (1)
【Fターム(参考)】