炭素含有二酸化チタン光触媒および該光触媒の製造方法
本発明は、炭素で変性された二酸化チタン(vlp−TiO2)を基礎とする、昼光で活性な高効率の光触媒およびその製造方法に関する。vlp−TiO2は微細粒のチタン化合物(BET≧50m2/g)と炭素含有物質とを混合し、続いて400℃までの温度で熱処理することによって製造される。炭素含有量は0.05〜4質量%、有利には0.4〜0.8質量%である。生成物は約2.003のgにおける1.97〜2.05のg値の範囲においてだけ有意なESR信号を示すことを特徴とする。本発明による光触媒は、液体および気体における汚染物質および有害物質の無機化(酸化)に適している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視領域において光活性な二酸化チタンを基礎とする炭素含有光触媒に関し、以下ではこの光触媒をvlp−TiO2とも称する。
【0002】
さらに本発明は、可視光が照射されると光触媒として作用する炭素含有二酸化チタン(vlp−TiO2)の製造方法に関する。
【0003】
光触媒材料は、材料表面において高反応のフリーラジカルを生成する電子正孔対が光の影響下で生じる半導体である。二酸化チタンはその種の半導体である。二酸化チタンはUV光の照射により、空気酸素が還元され、汚染物質が環境に優しい最終生成物に酸化(無機化)されることによって、空気中および水中の天然の汚染物質および人工の汚染物質を除去できることが公知である。付加的に、二酸化チタンの表面はUV光の吸収により超親水性になる。鏡や窓の上の薄い二酸化チタンフィルムの防曇効果はこの超親水性を基礎としている。
【0004】
二酸化チタンの重大な欠点は太陽光のUV成分、すなわち放射線の僅か3〜4%しか利用できず、また拡散する昼光においては触媒的に全く活性でない、もしくは極めて僅かにしか活性でないということである。したがって以前から、上記の現象を発生させるために光化学的に作用する太陽光の主成分、約400nm〜約700nmの可視スペクトル領域も利用できるように二酸化チタンを変性することが試みられている。
【0005】
TiO2を昼光に対して光触媒的に活性にするやり方の1つはV、Pt、Cr、Feなどの金属イオンをドーピングすることである。別の可能性は、Ti4+を低減させることによりTiO2結晶格子内に酸素空孔を生じさせることである。これらの発展にはイオン注入またはプラズマ処理のようなコストの掛かる製造技術が必要とされる。可視領域での照射において光触媒的に作用する、窒素で変性された二酸化チタンが多くの特許に開示されている(例えばEP 1 178 011 A1, EP 1 254 863 A1)。
【0006】
さらには炭素で変性することによって、可視光を照射した際の二酸化チタンの光触媒作用が向上することが公知である。例えば、JP11333304Aには、その表面が少なくとも部分的に黒鉛、非結晶炭素、ダイアモンド状の炭素または炭化水素の沈殿物を有する二酸化チタンが記載されている。EP 0 997 191 Aには気相析出法を用いて表面に炭化チタンが被着された二酸化チタンが記載されている。二酸化チタンが殊に窒素、硫黄、炭素または他の元素をアニオンとして含有している光触媒材料は例えばEP 1 205 244 A1およびEP 1 205 245 A1に開示されている。アニオンは酸素の位置、格子間位置もしくは多結晶の酸化チタン粒子の粒界に存在する。材料の特徴もしくは触媒的または物理的な特性については言及されていない。さらには、塩酸で加水分解し、続けて350℃に加熱することによりチタンアルコラートから二酸化チタンを製造することが公知であり、この二酸化チタンは1.0〜1.7質量%の炭素を含有する(C. Lettmann等著Applied Catalysis B 32 (2001) 215)。ここで炭素はチタン化合物のリガンドに由来する。別の刊行物によれば、水酸化テトラブチルアンモニウムで四塩化チタンを加水分解し、続けて400℃で一時間焼成すると0.42質量%の炭素を含有する二酸化チタン物質が得られることが発見されている(S. Sakthivel & H. Kisch, Angew. Chem. Int. Ed. 42 (2003) 4908)。この場合炭素は沈殿剤に由来しており、また恐らく比較的均等にバルク中に分布している(バルクドーピング)。
【0007】
公知の光触媒材料の欠点は、その製造方法が大量生産に適していないということである。そのような方法は技術的な理由から大規模で実施することはできない、もしくはもはや経済的なものではない。さらには、得られる生成物の大部分はλ≧400nmの領域の可視光での有害物質の分解の際に不十分な光触媒作用しか示さず、また親水性の光誘導的な上昇は僅かなものである。さらに生成物はこれまで光触媒的な特性についてしか最適化されていない。色および明度、すなわち光学的な特性はこれまで考慮されていなかった。これに対して、僅かな固有色および高い光触媒作用を有する非常に明るいvlp−TiO2の使用は、例えば被覆材料、殊にペイント、塗料および装飾被覆に使用する場合のように、vlp−TiO2の固有色が許容されない、または僅かにしか許容されないあらゆる用途において利点を有する。
【0008】
本発明の課題は、炭素で変性された二酸化チタンを基礎とする、昼光で活性な高効率の光触媒およびその経済的な製造方法を提供することである。
【0009】
本発明によればこの課題は、5Kの温度で測定された電子スピン共鳴スペクトル(ESR)では、1.97〜2.05のg値の範囲においてだけ有意な信号を示し、λ≧400nmの範囲では純粋な二酸化チタンに比べて有意な吸光特性を有する、炭素含有二酸化チタン(vlp−TiO2)によって解決される。さらにこの課題は、少なくとも50m2/gのBET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積を有するチタン化合物が炭素含有物質と均質に混合され、この混合物が400℃までの温度で熱処理される製造方法によって解決される。本発明のさらに有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0010】
生成物
本発明によるvlp−TiO2は従来技術に記載されているタイプのものよりも高い光触媒作用を示す。光触媒作用(以下では光活性と称する)の尺度として、波長≧455nmの光を120分間照射した際の所定量のvlp−TiO2による4−クロロフェノールの分解を使用する。測定方法は下記において詳述する。前述の測定条件下では、本発明によるvlp−TiO2の光活性は少なくとも20%、有利には少なくとも40%、殊に有利には少なくとも50%である。炭素含有量は、TiO2に対して0.05〜4質量%、有利には0.05〜2.0質量%、殊に有利には0.3〜1.5質量%である。炭素含有量が0.4〜0.8質量%の場合に最良の結果が得られる。二酸化チタン粒子は、SakthivelおよびKisch(2003)により製造された、バルクドーピングされた二酸化チタンとは異なり表面層にのみ炭素を含有しており、したがって以下では「炭素で変性された」と称する。本発明によるvlp−TiO2の炭素ないし炭素化合物は恐らく先ず酸素を介してTiO2表面上で共有結合しており、またアルカリで洗い流される可能性がある。光触媒は付加的にまたは択一的に窒素および/または硫黄を含有していてもよい。
【0011】
本発明によるvlp−TiO2は非変性のTiO2に比べて波長λ≧400nmの可視光を吸収する。ここで吸光度に比例するクベルカ・ムンク関数F(R∞)は500nmにおいて400nmの値の約50%であり、600nmにおいて400nmの値の約20%である。
【0012】
5Kの温度で測定された、本発明によるvlp−TiO2電子スピン共鳴スペクトル(ESR)は2.002〜2.004、殊に2.003のg値における強い信号を特徴とする。1.97〜2.05のg値の範囲では別の信号は生じない。約2.003のgにおける信号の強度は、波長λ≧380nmの光(UVを含まない100Wのハロゲンランプ、コールドライトフィルタKG5)の照射によって暗闇での測定に比べて強まる。本発明によるvlp−TiO2のX線光電子スペクトル(XPS)は、530eVのO1s帯に対して285.6eVの結合エネルギにおける強い吸収帯の発生を特徴とする。さらに、vlp−TiO2はSakthivelおよびKisch(2003)による光触媒に比べて、X線光電子スペクトル(XPS)においても赤外線スペクトルにおいても炭酸塩帯を示さないという特徴を有する。可視光の照射のもとでvlp−TiO2は約8°の水の接触角を示し、これに対して非変性のTiO2は約21°の接触角を示す。
【0013】
新たな光触媒は人工的な可視光だけでなく、室内の拡散する昼光を用いても有害物質を分解することができる。この光触媒を液体または気体、殊に水および空気における汚染物質および有害物質を分解するために使用することができる。
【0014】
光触媒を有利にはガラス(通常のガラスおよび鏡面仕上げされたガラス)、木材、繊維、セラミック、コンクリート、建材、SiO2、金属、紙およびプラスチック等の種々の支持体の上に薄い層として設けることができる。これによって簡単な製造と共に、自浄作用のある表面に関しては建築産業、セラミック産業および自動車産業または環境技術(空調装置、空気清浄および空気殺菌のための装置、また例えば抗菌および抗ウィルスを目的とした殊に飲料水の浄水)のような多くの分野における適用の可能性が開かれる。光触媒を例えば壁、装飾被覆表面、塗装部、壁紙また木材表面、金属表面、ガラス表面またはセラミック表面に適用するため、または例えば断熱複合材料系また張り出したファサード構成要素のような構成部材に適用するためのペイント、装飾被覆、塗料および透明塗料のような内部領域および外部領域に対する被覆に使用することができ、また道路コーティングおよびプラスチック、プラスチックフィルム、繊維および紙に使用することができる。さらには光触媒をコンクリート完成品の製品、コンクリート製の敷石、屋根瓦、陶器、タイル、壁紙、布地、壁板、また内部領域および外部領域における天井や壁のための被覆要素に使用することができる。
【0015】
TiO2表面の親水性を光誘導的に高めることによって、例えば衛生の分野または自動車産業および建築産業における防曇鏡や防曇窓のような別の用途が生じる。
【0016】
さらに光触媒は光電池への使用および水分解に適している。
【0017】
図1〜9を参照しながら本発明によるvlp−TiO2を以下詳細に説明する。
【0018】
図1は非変性のTiO2とCで変性されたTiO2(vlp−TiO2)に関する、相対的な吸光度に比例するクベルカ・ムンク関数F(R∞)(任意の単位)を波長の関数として示しており、またこの図1からはvlp−TiO2が非変性の二酸化チタンとは異なり可視スペクトル領域において吸収を行うことが見て取れる。F(R∞)は500nmにおいて400nmの値の約50%であり、600nmにおいて400nmの値の約20%である。
【0019】
図2は、暗闇且つ5Kの温度で記録された、本発明によるvlp−TiO2の電子スピン共鳴スペクトル(ESR)(スペクトルA)と、SakthivelおよびKischにより製造されたTiO2の電子スピン共鳴スペクトル(スペクトルB)を示す。スペクトルAは2.003のg値においてだけ有意な信号を示す。スペクトルBは約2.003のgにおける主信号の他に、1.97〜2.05のg値の範囲において3つの別の信号を示す。
【0020】
図3は本発明によるvlp−TiO2のX線光電スペクトル(XPS)(スペクトルA)と、SakthivelおよびKischによる、四塩化チタンから水酸化テトラブチルアンモニウムを用いて沈殿された既知のTiO2のX線電子スペクトル(スペクトルB)を示す。vlp−TiO2のスペクトルは530eVのO1s吸収帯に対して285.6eVの結合エネルギにおいて有意なC1s信号を示し、これは元素の炭素を表す。これに対しスペクトルBは284.5eVの結合エネルギにおける元素の炭素に関するC1s信号を示し、また289.4eVおよび294.8eVにおいて付加的な帯域を示し、これは炭酸塩を表す。相応のIRスペクトルも、1738、1096および798cm-1において典型的な炭酸塩帯を示す。
【0021】
図4は、人工的な可視光(λ≧455nm)により4−クロロフェノールが分解される際の非変性のTiO2と比較したvlp−TiO2の光触媒作用を示す。溶液中の有機炭素の総含有量(TOCt)が開始値(TOC0)に比べて減少していることが示されている。vlp−TiO2を用いることにより3時間後には完全な分解が行われる。
【0022】
図5は、室内の拡散する昼光により(2.5×10-4のモル水溶液としての)4−クロロフェノールが分解される際の非変性のTiO2と比較したvlp−TiO2の光触媒作用を示す。溶液中の有機炭素の総含有量(TOCt)が開始値(TOC0)に比べて減少していることが示されている。強度の弱い拡散する昼光(400〜1200nmの範囲において7〜10W/m2)のもとでさえも、vlp−TiO2により6時間以内に80%の分解が行われている。非常に強度の弱い拡散する昼光(1.6<1W/m2)においてさえも、vlp−TiO2は市販のTiO2光触媒 (Degussa P25, Kemira UV-Titan, Sachtleben Hombikat, Tayca MT-100SA)に比べて依然として有意な光活性を示す。2.5×10-4のモル4−クロロフェノール溶液の分解率の測定は上記のように行われた。
【0023】
a)光強度:1.6W/m2;期間12h
触媒 BET表面積 分解率
vlp−TiO2 170m2/g 16%
P25 50m2/g 4%
UVチタン 20m2/g 5%
Hombikat 240m2/g 9%
MT−100SA 50m2/g 5%
b)光強度:<1W/m2;期間24h
触媒 BET表面積 分解率
vlp−TiO2 170m2/g 18%
Hombikat 240m2/g 3%
【0024】
図6は、室内の拡散する昼光により、ベンゼン(5体積%)、アセトアルデヒト(2体積%)および一酸化炭素(5体積%)が分解される際の非変性のTiO2と比較したvlp−TiO2の光触媒作用を示す。反応容器として、12mgの二酸化チタンで被覆されている紙製の円形フィルタ(d=15cm)が設けられている1リットルの丸底フラスコを使用する。雰囲気中の有機炭素の総含有量(TOCt)が開始値(TOC0)に比べて減少していることが示されている。曲線は本発明のvlp−TiO2によるベンゼン、アセトアルデヒトないし一酸化炭素の分解ならびに非変性の二酸化チタンによるアセトアルデヒトの分解を示す。
【0025】
図7は、アナターゼ型の反射のみを示す粉末X線回折グラフを示す。シェラー法により計算された結晶子の大きさは10nmである。
【0026】
図8は高解像度電子顕微鏡(HTEM)により提供された結晶子の格子線を有するvlp−TiO2の写真を示す。結晶子の大きさを10nmのオーダで評価することができる。
【0027】
図9は、C/Ti比として示されている、vlp−TiO2の炭素−深さプロフィールを示す。これはイオン衝撃(Ar+)およびESCA分析を用いて検出された。図示されている5×103秒の衝撃時間は約5nmの深さに相当する。
【0028】
製造
本発明による方法は、アモルファス、部分結晶性または結晶性の酸化チタンないし含水の酸化チタンおよび/またはチタン水和物および/または酸化チタン水和物の形で存在し、以下では出発チタン化合物と称する、チタン化合物を基礎とする。
【0029】
出発チタン化合物を例えば二酸化チタンの製造の際に硫酸法または塩素法により生成することができる。チタン水和物ないし酸化チタン水和物またはメタチタン酸は硫酸チタニルまたは塩化チタニルの加水分解の際に沈殿される。
【0030】
出発チタン化合物は細粒状の固体として、または相応の固体割合、少なくとも15質量%の懸濁液中として存在していてもよく、BETによる比表面積は少なくとも50m2/g、有利には約150〜350m2/g、殊に150〜250m2/gである。
【0031】
本発明による方法を産業的に使用するために、経済的な理由から出発チタン化合物として硫酸法により製造されるチタン水和物が好ましい。このチタン水和物は有利には事前に中和および洗浄されることにより付着している硫酸が取り除かれ、その結果固体の硫酸の割合は乾燥後には、SO3として計算し、<1質量%である。
【0032】
炭素含有物質は最高で400℃、より良好には<350℃、有利には<300℃の分解温度を有する。例えば木材、カーボンブラックまたは活性炭のような炭素含有物質、また殊に少なくとも1つの官能基を有する炭化水素のような有機炭素化合物が適していることが証明された。官能基としてOH;CHO;COOH;NHx;SHx;COORが考えられ、ここでRはアルキル基またはアリール基である。例えばコハク酸、グリセリンまたはエチレングリコールが該当する。また糖もしくは他の炭水化物も使用することができ、同様に有機アンモニウム水酸化物、殊にテトラアルキルアンモニウムを使用することができる。前述の化合物の混合物も適している。有利には、約0.7〜1.5、有利には約1の炭素/酸素比を有する水溶性ポリアルコール、殊にペンタエリトリトールが使用される。炭素化合物を固体として、または溶液として、または懸濁液として使用することができる。
【0033】
有機炭素化合物は、出発チタン化合物と均質に化合できるようにするために、この出発チタン化合物の表面について可能限り高い親和力を有することが望ましい。
【0034】
出発チタン化合物は、炭素化合物による出発チタン化合物の表面被覆が行われるように、有機炭素化合物と均質に混合される。この際有機炭素化合物は物理吸収または化学吸収されて出発チタン化合物の表面に存在していてもよい。出発チタン化合物の表面の被覆は、出発チタン化合物の懸濁液に炭素化合物を溶解することにより、または炭素化合物の懸濁液と出発チタン化合物の懸濁液とを混合することにより行われる。事前に乾燥された粉末状の出発チタン化合物と炭素化合物との強力な混合も同様に可能である。チタン水和物を使用する場合には、択一的に、チタン水和物の製造の際に加水分解すべき溶液に炭素化合物を既に混合することもできる。出発チタン化合物と炭素化合物の仕上がった混合物においては、炭素化合物の量は(固体としての)出発チタン化合物に対して1〜40質量%である。
【0035】
完成した混合物が懸濁液として存在する場合には、この混合物をさらに処理する前に粉末状の固体に乾燥させることができる。このために噴霧乾燥法または流動層乾燥法のような公知の方法が提供される。
【0036】
必要に応じて事前に乾燥されている完成した混合物は最高で400℃の温度で熱的に処理される。熱処理は酸化雰囲気において、有利には空気中または酸素空気混合気中において実施される。この際出発チタン化合物の表面における有機炭素化合物の分解およびH2O、CO2およびCOの遊離が生じる。熱処理が例えば市販の実験炉において不連続的なバッチ操作においても実施できるにもかかわらず、経済的な理由から所定の温度プロフィールを得ることができる連続的なプロセスが好ましい。連続的な方法として、相応の温度プロフィールおよび必要な滞留時間を実現することができる全ての方法が該当する。
【0037】
殊に適したユニットは間接的および直接的に加熱する回転炉である。連続的に駆動する流動層反応器、流動層乾燥器および加熱された鋤型ミキサも使用することができる。前述の3つのユニットは不連続的な動作様式においても駆動することができる。
【0038】
熱処理は有利には、0.05〜4.0質量%、有利には0.05〜2.0質量%、殊に有利には0.3〜1.5質量%また殊に0.4〜0.8質量%の炭素含有量を有する生成物(vlp−TiO2)が生じるように実施される。熱処理の経過において、白から茶色、最終的にベージュへの色の変化が生じる。最終生成物はベージュから薄く黄色がかった茶色を特徴とする。表面層のアモルファスおよび多結晶の領域においても表面自体と同様に炭素を検出できることを特徴とする。生成物は可視光において光活性である。
【0039】
熱処理後に生成物は公知の方法を用いて、例えばピン型ミル、ジェットミルまたはカウンタージェットミルで解凝集される。粉末状の事前に乾燥された混合物の場合、熱処理によって大抵の場合はさらなる粉砕を要しない凝集体の無い生成物が得られる。達成すべき粒子の微細度は出発チタン化合物の粒子の大きさに依存する。粒子の微細度または生成物の比表面積は極めて僅かな程度低いが、出発物質の粒子の微細度と同じオーダにある。光触媒の達成すべき粒子の微細度は光触媒の使用分野に依存する。粒子の微細度は通常の場合TiO2顔料と同じ範囲であるが、それ以上でもそれ以下でも良い。BET比表面積は100〜250m2/gであり、有利には130〜200m2/gであり、殊に130〜170m2/gである。
【0040】
実施例
本発明を以下の実施例に基づき詳細に説明するが、これによって本発明の範囲は制限されるべきではない。
【0041】
実施例1
硫酸法により製造された水性の酸化チタン水和物ペースト(35質量%、固体)が、蒸留水を用いて室温において、攪拌可能な懸濁液が生じるように希釈される。固体の割合は20〜25%である。6.0〜7.0のpH値が生じるまでNaOH溶液(36質量%)が添加される。続けて、乾燥した残留物において測定されたSO3含有量が1質量%になるまで、懸濁液が濾過されて蒸留水を用いて洗浄される。
【0042】
このようにして中和され洗浄された酸化チタン水和物は続けて、蒸留水を用いて攪拌可能な懸濁液(25%、固体)へともう一度希釈されて、固体に対して12質量%のコハク酸が添加される。コハク酸は懸濁液に固体として添加され、この懸濁液はコハク酸が完全に溶解するまで攪拌される。懸濁液はコハク酸の可溶性を改善するために約60℃に加熱される。このようにして調整された懸濁液は表面蒸発器(IR放射器)を使用して攪拌されながら、懸濁液からペースト状の材料が生じるまで乾燥される。続けてペースト状の材料は実験乾燥キャビネットにおいて固体の割合が>98%になるまで150℃で乾燥される。
【0043】
乾燥された酸化チタン水和物/コハク酸混合物300gが(例えば磨り潰して篩に掛けることによって)細かく粉砕され、また得られた粉末が石英シャーレにおいて蓋をされて290℃で実験炉に置かれる。1〜2時間の間隔で石英シャーレが取り出され、粉末がさらに混合される。実験炉において13〜15時間が経過すると、粉末の色は最初の黄色から灰色がかった黒を介して黄色がかった茶色に変化する。vlp−TiO2を得るための熱処理は、炭素含有量が最初の5〜5.5質量%から約0.65%〜0.80質量%に減少したときに終了されている。
【0044】
続いて光触媒が解凝集され、炭素含有量、光学的な特性、BET表面積および光活性が分析される。
【0045】
実施例2
実施例1に同様に行うが、12質量%のペンタエリトリトールが固体として酸化チタン水和物懸濁液に添加される。
【0046】
実施例3
実施例2と同様に行うが、5質量%のペンタエリトリトールが固体として酸化チタン水和物懸濁液に添加される。
【0047】
実施例4
実施例1と同様に、5質量%のペンタエリトリトールを使用する酸化チタン水和物/ペンタエリトリトール懸濁液について説明する。実施例1とは異なり、そのようにして得られる懸濁液の熱処理は以下のような連続的に駆動する回転炉において実施される:
回転炉は向流法で駆動し、ガスバーナによって直接的に加熱される。ガスバーナの裸火はフルー管によって保護されているので、生成物(vlp−TiO2)との直接的な接触は阻止される。加熱炉の長さは7mであり、内径は0.3mである。懸濁液は炉の導入部において細かく噴霧される。懸濁液の供給量は40kg/hである。炉の導入部における鎖内部構造体によって良好な渦流が生じ、これにより急激な乾燥とそれに続く乾燥された材料の粉砕が提供される。連続的に駆動する回転炉による処理時間は1時間である。搬出領域における炉の温度はバーナのガス量を介して260℃に調節される。炉の搬出部においてvlp−TiO2が黄色がかった茶色の微細な粉末として生じる。続いてvlp−TiO2が実験混合器(Braun、MX 2050)において解凝集され、炭素含有量、光学的な特性、BET表面積および光活性が分析される。
【0048】
実施例5
実施例4と同様に行うが、搬出領域における炉の温度がバーナのガス量を介して280℃に調節される。
【0049】
実施例6
実施例1と同様に、5質量%のペンタエリトリトールを使用する酸化チタン水和物/ペンタエリトリトール懸濁液について説明する。実施例1とは異なり、懸濁液は残留水分が22%である粉末状の固体になるよう電気的に加熱された炉において事前に乾燥される。事前に乾燥された粉末状の使用材料の熱処理は、以下のような連続的に駆動し間接的に加熱する回転炉において実施される:
回転炉は直流法で駆動され、電気的に3つの領域において加熱される。加熱炉の全長は2700mmであり、内径は390mmである。粉末状の固体はスクリューフィーダを介して炉の導入部へと供給される。回転炉の全長にわたる鎖内部構造体によって炉内の均質な分配が提供され、炉の壁におけるケーキングが阻止される。供給量は毎時25kg固体である。連続的に駆動する回転炉による処理時間は0.5時間である。炉の温度は3つの加熱領域において電気的に調節される。3つの加熱領域のそれぞれの温度を別個に調節することができる。炉の搬出部分においては、vlp−TiO2が茶色の微細な粉末として生じる。続いてvlp−TiO2が実験混合器(Braun、MX 2050)において解凝集され、炭素含有量、光学的な特性、BET表面積および光活性が分析される。
【0050】
比較例
約10m2/gのBET表面積を有するTiO2顔料(アナターゼ)(市販製品Kronos 1000)は実施例2と同様に、12%のペンタエリトリトールと混合され、熱処理される。
【0051】
【表1】
【0052】
表には本発明によるvlp−TiO2の分析および光活性も一緒に記載されている。
【0053】
チタン水和物から製造されるvlp−TiO2(実施例1〜6)は良好な光学的な値(PLVテスト)では、可視スペクトル領域において傑出した光触媒作用を示す。出発チタン化合物としてチタン水和物の代わりにアナターゼ顔料を使用した場合には十分な光活性のない生成物が得られる(比較例)。
【0054】
実施例7
二酸化チタン5g(市販製品Kerr-McGee Pigments GmbH社のTRONOX Titanhydrat-0)が室温で20mlの蒸留水に懸濁され、5mlのエチレングリコール(FLUKA AG社の市販製品)と混合され、また超音波槽(BerlinのBandelin Electronic社のSonorex Super RK 106、35kHz、120W率、高周波出力)において30分間処理される。一晩磁気的に攪拌した後に、溶剤が有利には真空中で除去され、残留物が100〜200℃、有利には約200℃で少なくとも12時間乾燥され、その後閉じられた容器において1時間以内300℃で加熱され、続いてさらに3時間この温度に維持される。この際、粉末の色は白から暗褐色を介してベージュへと変化することが確認される。それ以上長く加熱すると、無色で不活性の粉末になる。生成物の元素分析の結果、炭素は2.58質量%、窒素は0.02質量%また水素は0.40質量%であることが判明した。非変性のTiO2は0.07質量%のCおよび0.0質量%のNおよび0.0質量%のHを含有する。
【0055】
実施例8
表面の炭素化合物を遊離させるために、vlp−TiO25gが一晩2Mのカ性ソーダ液(pH12)100mlにおいて攪拌される。遠心分離することによって茶黄色の抽出物、また殆ど着色されていない白い残留物が得られ、後者は100℃で乾燥される。そのようにして得られた粉末は4−クロロフェノールを分解する際に可視光において活性を示さない。粉末が抽出物と再び合わせられ、有利には約200℃で若干加熱されると、粉末は分解反応時に未処理の(アルカリ液で処理されていない)vlp−TiO2と同じ活性を有する。
【0056】
実施例9
プラスチックフィルムの被覆のために、実施例6により製造された粉末が超音波槽において、メタノールまたはエタノールのような液体に懸濁され、結果として生じる懸濁液はスプレーボトルを用いて可能な限り薄くフィルム上に塗布される。引き続き343Kにおいて乾燥させた後に、被覆を所望の層厚に達成するまで繰り返すことができる。
【0057】
プラスチックフィルムの代わりに例えば紙(図6の実験を参照されたい)またはアルミニウム(下記の実験方法h):「ディップコーティング」を参照されたい)のような他の担体を使用することができる。
【0058】
測定方法
a)光学的な値(PLVテスト)の検出
この方法はvlp-TiO2の光学的な値、明度L*、色相a*、および色相b*を求めるために使用される。検査すべきvlp−TiO2から、所定の条件化下でFrankfurtのMATRA社の水圧式小型プレスを用いて粉末プレス加工物が製造される。続けてHUNTERLAB Tristimulus Colorimeterを用いて、粉末プレス加工物において規約反射値が検出される。
【0059】
vlp−TiO2はプレス加工物の製造の前に粉砕される。このために、得られたvlp−TiO2100gが市販のミキサ(製造元:Braun、モデル:MX 2050)に供給され、5秒間で12回粉砕される。粉砕ステップの間にその都度ミキサが開かれ、粉末が再度混ぜられる。円形状のくぼみを有する台板上には両面がつや消し白のシートが載置されており、プレスを用いてくぼみに金属リング(高さ4cm、直径2.4cm)を押圧する。粉砕されたvlp−TiO2約25gが僅かな揺れと振動で金属リングに添加される。2〜3kNの圧力により粉末が強く押圧される。プレス過程は15kNの目標動作圧力が達成されるまで二度繰り返される。金属リングを慎重に回転および張引することによって、この金属リングが台板から外される。台板とリングとの間の紙が取り除かれる。リング内にはプレス加工物が存在し、このプレス加工物がHUNTERLABの色度計における測定過程のために使用される。測定値L*、a*、b*は色度計において直接読み出される。
【0060】
b)光活性(有害物質分解)の検出
人工的な可視光において:
vlp−TiO215mgが超音波槽において4−クロロフェノールの2.5×10-4のモル溶液15mlに10分間分散され、続いて水冷式丸型キュベットにおいて光学台上で露光される。光活性を検出するための露光は、焦点合わせされたランプハウジング(AMKO Mod. A1020、焦点距離30cm)に取付けられているOsram XBO 150 W Xenon、ショートアークランプを用いて行われる。このランプのスペクトルは図10に示されている。30mmの内径および20mmの層厚を有する、15mlの容量の水冷式丸型キュベットにおいて反応が行われる。側方に取付けられている攪拌モータおよび攪拌磁石を用いて反応懸濁液を攪拌することができる。丸型キュベットは図11に示されている。キュベットはランプの焦点に固定される。光はキュベットの反応空間のみが放射されるように焦点合わせされる。全ての構成部品が光学台上に固定的に取付けられる。UV光を除去するために、ビーム路内にはエッジフィルタ(Fa. Schott)が挿入されており、このエッジフィルタの透過率はλ≧455nmである。露光によって起こりうる反応空間の加熱を阻止するために、付加的にIRフィルタがビーム路に取付けられる。ここでは水で充填されたシリンダ(直径6cm、長さ10cm)である。4−クロロフェノールの濃度の減少はUV分光器(A=224nm)を用いて、または分解(酸化)の場合には有機炭素の総含有量(TOC値)の測定を介して追跡される。
【0061】
室内の拡散する昼光において:
vlp−TiO250mgが超音波槽において4−クロロフェノールの2.5×10-4のモル溶液50mlに10分間分散され、続いてエルレンマイヤーフラスコ(100ml)において攪拌されながら室内の昼光に曝される。
【0062】
アセトアルデヒトガス、ベンゼン蒸気および一酸化炭素の分解:
空気飽和状態のアセトアルデヒトガス(2体積%)またはベンゼン蒸気(5体積%)または一酸化炭素が充填されている丸底フラスコ(1l)には、vlp−TiO2で両面が被覆されている2つの円形フィルタ(紙、d=15cm、フィルタ毎に12mgの触媒)が挿入される。続いてフラスコが実験室において昼光に曝され、有害物質の減少および二酸化炭素の発生がIR分光器を用いて追跡される。
【0063】
c)炭素含有量の検出
検出は有機炭素総含有量(TOC)として炭素分析装置LECO C-200を用いて行われる。測定方法は誘導炉内のTiO2内に含有される酸素ガス下での有機物質の燃焼と、それに続く発生した二酸化炭素のIR検出器を用いた検出を基礎とする。TiO2の秤量は0.4gである。
【0064】
d)BET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積の検出
BET表面積はFa. MicromeriticsのTristar 3000を用いて静的で容量的な原理に従い測定される。
【0065】
e)XPS測定
結合エネルギを測定するために、装置Phi 5600 ESCA分光計(23.50eVのパスエネルギ;AI標準;300.0W;45.0°)が使用される。
【0066】
f)ESR測定
電子共鳴スペクトルを測定するために、Bruker Elexys 580分光器のX帯域(9.5GHz)が使用された。試料は10-5Torrまで排気され、10-2Torrの圧力になるまでヘリウムが充填され、続いて溶解される。測定は以下の条件の下で行われた:
100Hzで変調された磁場。RFパワー:0.0002−1mW。磁界:3340〜3500G。スイープ幅:100〜500G。変換時間:81.92ms。時定数:40.96ms。修正された振幅:0.2〜13G。温度:5K。g値はホールセンサを用いて検出される。
【0067】
拡散反射スペクトル(クベルカ・ムンク関数)の測定
粉末の拡散反射スペクトルは、積分球が設けられているShimadzuのUV-2401 PC UV/Vis分光器を用いて測定された。白の標準として硫酸バリウムが使用され、この硫酸バリウムと共に粉末は測定前に乳鉢において擦られている。クベルカ・ムンク関数は吸光度に比例する。
【0068】
h)超親水特性
水の接触角を測定するために、vlp−TiO2および非変性のTiO2がそれぞれ蒸留水に懸濁され、「ディップコーティング」によって5×5cmの大きさのアルミニウム片上に被着され、1時間400℃で焼成される。昼光のもとで保管した後、非変性の二酸化チタンに関しては21°の接触角が測定されたが、これに対してvlp−TiO2に関しては僅か8°の接触角が測定された。被覆されていないアルミニウム片の接触角は91°であった。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】非変性のTiO2とCで変性されたTiO2(vlp−TiO2)に関する、相対的な吸光度に比例するクベルカ・ムンク関数F(R∞)(任意の単位)。
【図2】暗闇且つ5Kの温度で記録された、本発明によるvlp−TiO2の電子スピン共鳴スペクトル(ESR)(スペクトルA)と、SakthivelおよびKischにより製造されたTiO2の電子スピン共鳴スペクトル(スペクトルB)。
【図3】本発明によるvlp−TiO2のX線光電スペクトル(XPS)(スペクトルA)と、SakthivelおよびKischによる、四塩化チタンから水酸化テトラブチルアンモニウムを用いて沈殿された既知のTiO2のX線電子スペクトル(スペクトルB)。
【図4】人工的な可視光(λ≧455nm)により4−クロロフェノールが分解される際の非変性のTiO2と比較したvlp−TiO2の光触媒作用。
【図5】室内の拡散する昼光により(2.5×10-4のモル水溶液としての)4−クロロフェノールが分解される際の非変性のTiO2と比較したvlp−TiO2の光触媒作用。
【図6】室内の拡散する昼光により、ベンゼン(5体積%)、アセトアルデヒト(2体積%)および一酸化炭素(5体積%)が分解される際の非変性のTiO2と比較したvlp−TiO2の光触媒作用。
【図7】アナターゼ型の反射のみを示す粉末X線回折グラフ。
【図8】高解像度電子顕微鏡(HTEM)により提供された結晶子の格子線を有するvlp−TiO2の写真。
【図9】C/Ti比として示されている、vlp−TiO2の炭素−深さプロフィール。
【図10】ランプのスペクトル。
【図11】丸型キュベット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視領域において光活性な二酸化チタンを基礎とする炭素含有光触媒に関し、以下ではこの光触媒をvlp−TiO2とも称する。
【0002】
さらに本発明は、可視光が照射されると光触媒として作用する炭素含有二酸化チタン(vlp−TiO2)の製造方法に関する。
【0003】
光触媒材料は、材料表面において高反応のフリーラジカルを生成する電子正孔対が光の影響下で生じる半導体である。二酸化チタンはその種の半導体である。二酸化チタンはUV光の照射により、空気酸素が還元され、汚染物質が環境に優しい最終生成物に酸化(無機化)されることによって、空気中および水中の天然の汚染物質および人工の汚染物質を除去できることが公知である。付加的に、二酸化チタンの表面はUV光の吸収により超親水性になる。鏡や窓の上の薄い二酸化チタンフィルムの防曇効果はこの超親水性を基礎としている。
【0004】
二酸化チタンの重大な欠点は太陽光のUV成分、すなわち放射線の僅か3〜4%しか利用できず、また拡散する昼光においては触媒的に全く活性でない、もしくは極めて僅かにしか活性でないということである。したがって以前から、上記の現象を発生させるために光化学的に作用する太陽光の主成分、約400nm〜約700nmの可視スペクトル領域も利用できるように二酸化チタンを変性することが試みられている。
【0005】
TiO2を昼光に対して光触媒的に活性にするやり方の1つはV、Pt、Cr、Feなどの金属イオンをドーピングすることである。別の可能性は、Ti4+を低減させることによりTiO2結晶格子内に酸素空孔を生じさせることである。これらの発展にはイオン注入またはプラズマ処理のようなコストの掛かる製造技術が必要とされる。可視領域での照射において光触媒的に作用する、窒素で変性された二酸化チタンが多くの特許に開示されている(例えばEP 1 178 011 A1, EP 1 254 863 A1)。
【0006】
さらには炭素で変性することによって、可視光を照射した際の二酸化チタンの光触媒作用が向上することが公知である。例えば、JP11333304Aには、その表面が少なくとも部分的に黒鉛、非結晶炭素、ダイアモンド状の炭素または炭化水素の沈殿物を有する二酸化チタンが記載されている。EP 0 997 191 Aには気相析出法を用いて表面に炭化チタンが被着された二酸化チタンが記載されている。二酸化チタンが殊に窒素、硫黄、炭素または他の元素をアニオンとして含有している光触媒材料は例えばEP 1 205 244 A1およびEP 1 205 245 A1に開示されている。アニオンは酸素の位置、格子間位置もしくは多結晶の酸化チタン粒子の粒界に存在する。材料の特徴もしくは触媒的または物理的な特性については言及されていない。さらには、塩酸で加水分解し、続けて350℃に加熱することによりチタンアルコラートから二酸化チタンを製造することが公知であり、この二酸化チタンは1.0〜1.7質量%の炭素を含有する(C. Lettmann等著Applied Catalysis B 32 (2001) 215)。ここで炭素はチタン化合物のリガンドに由来する。別の刊行物によれば、水酸化テトラブチルアンモニウムで四塩化チタンを加水分解し、続けて400℃で一時間焼成すると0.42質量%の炭素を含有する二酸化チタン物質が得られることが発見されている(S. Sakthivel & H. Kisch, Angew. Chem. Int. Ed. 42 (2003) 4908)。この場合炭素は沈殿剤に由来しており、また恐らく比較的均等にバルク中に分布している(バルクドーピング)。
【0007】
公知の光触媒材料の欠点は、その製造方法が大量生産に適していないということである。そのような方法は技術的な理由から大規模で実施することはできない、もしくはもはや経済的なものではない。さらには、得られる生成物の大部分はλ≧400nmの領域の可視光での有害物質の分解の際に不十分な光触媒作用しか示さず、また親水性の光誘導的な上昇は僅かなものである。さらに生成物はこれまで光触媒的な特性についてしか最適化されていない。色および明度、すなわち光学的な特性はこれまで考慮されていなかった。これに対して、僅かな固有色および高い光触媒作用を有する非常に明るいvlp−TiO2の使用は、例えば被覆材料、殊にペイント、塗料および装飾被覆に使用する場合のように、vlp−TiO2の固有色が許容されない、または僅かにしか許容されないあらゆる用途において利点を有する。
【0008】
本発明の課題は、炭素で変性された二酸化チタンを基礎とする、昼光で活性な高効率の光触媒およびその経済的な製造方法を提供することである。
【0009】
本発明によればこの課題は、5Kの温度で測定された電子スピン共鳴スペクトル(ESR)では、1.97〜2.05のg値の範囲においてだけ有意な信号を示し、λ≧400nmの範囲では純粋な二酸化チタンに比べて有意な吸光特性を有する、炭素含有二酸化チタン(vlp−TiO2)によって解決される。さらにこの課題は、少なくとも50m2/gのBET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積を有するチタン化合物が炭素含有物質と均質に混合され、この混合物が400℃までの温度で熱処理される製造方法によって解決される。本発明のさらに有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0010】
生成物
本発明によるvlp−TiO2は従来技術に記載されているタイプのものよりも高い光触媒作用を示す。光触媒作用(以下では光活性と称する)の尺度として、波長≧455nmの光を120分間照射した際の所定量のvlp−TiO2による4−クロロフェノールの分解を使用する。測定方法は下記において詳述する。前述の測定条件下では、本発明によるvlp−TiO2の光活性は少なくとも20%、有利には少なくとも40%、殊に有利には少なくとも50%である。炭素含有量は、TiO2に対して0.05〜4質量%、有利には0.05〜2.0質量%、殊に有利には0.3〜1.5質量%である。炭素含有量が0.4〜0.8質量%の場合に最良の結果が得られる。二酸化チタン粒子は、SakthivelおよびKisch(2003)により製造された、バルクドーピングされた二酸化チタンとは異なり表面層にのみ炭素を含有しており、したがって以下では「炭素で変性された」と称する。本発明によるvlp−TiO2の炭素ないし炭素化合物は恐らく先ず酸素を介してTiO2表面上で共有結合しており、またアルカリで洗い流される可能性がある。光触媒は付加的にまたは択一的に窒素および/または硫黄を含有していてもよい。
【0011】
本発明によるvlp−TiO2は非変性のTiO2に比べて波長λ≧400nmの可視光を吸収する。ここで吸光度に比例するクベルカ・ムンク関数F(R∞)は500nmにおいて400nmの値の約50%であり、600nmにおいて400nmの値の約20%である。
【0012】
5Kの温度で測定された、本発明によるvlp−TiO2電子スピン共鳴スペクトル(ESR)は2.002〜2.004、殊に2.003のg値における強い信号を特徴とする。1.97〜2.05のg値の範囲では別の信号は生じない。約2.003のgにおける信号の強度は、波長λ≧380nmの光(UVを含まない100Wのハロゲンランプ、コールドライトフィルタKG5)の照射によって暗闇での測定に比べて強まる。本発明によるvlp−TiO2のX線光電子スペクトル(XPS)は、530eVのO1s帯に対して285.6eVの結合エネルギにおける強い吸収帯の発生を特徴とする。さらに、vlp−TiO2はSakthivelおよびKisch(2003)による光触媒に比べて、X線光電子スペクトル(XPS)においても赤外線スペクトルにおいても炭酸塩帯を示さないという特徴を有する。可視光の照射のもとでvlp−TiO2は約8°の水の接触角を示し、これに対して非変性のTiO2は約21°の接触角を示す。
【0013】
新たな光触媒は人工的な可視光だけでなく、室内の拡散する昼光を用いても有害物質を分解することができる。この光触媒を液体または気体、殊に水および空気における汚染物質および有害物質を分解するために使用することができる。
【0014】
光触媒を有利にはガラス(通常のガラスおよび鏡面仕上げされたガラス)、木材、繊維、セラミック、コンクリート、建材、SiO2、金属、紙およびプラスチック等の種々の支持体の上に薄い層として設けることができる。これによって簡単な製造と共に、自浄作用のある表面に関しては建築産業、セラミック産業および自動車産業または環境技術(空調装置、空気清浄および空気殺菌のための装置、また例えば抗菌および抗ウィルスを目的とした殊に飲料水の浄水)のような多くの分野における適用の可能性が開かれる。光触媒を例えば壁、装飾被覆表面、塗装部、壁紙また木材表面、金属表面、ガラス表面またはセラミック表面に適用するため、または例えば断熱複合材料系また張り出したファサード構成要素のような構成部材に適用するためのペイント、装飾被覆、塗料および透明塗料のような内部領域および外部領域に対する被覆に使用することができ、また道路コーティングおよびプラスチック、プラスチックフィルム、繊維および紙に使用することができる。さらには光触媒をコンクリート完成品の製品、コンクリート製の敷石、屋根瓦、陶器、タイル、壁紙、布地、壁板、また内部領域および外部領域における天井や壁のための被覆要素に使用することができる。
【0015】
TiO2表面の親水性を光誘導的に高めることによって、例えば衛生の分野または自動車産業および建築産業における防曇鏡や防曇窓のような別の用途が生じる。
【0016】
さらに光触媒は光電池への使用および水分解に適している。
【0017】
図1〜9を参照しながら本発明によるvlp−TiO2を以下詳細に説明する。
【0018】
図1は非変性のTiO2とCで変性されたTiO2(vlp−TiO2)に関する、相対的な吸光度に比例するクベルカ・ムンク関数F(R∞)(任意の単位)を波長の関数として示しており、またこの図1からはvlp−TiO2が非変性の二酸化チタンとは異なり可視スペクトル領域において吸収を行うことが見て取れる。F(R∞)は500nmにおいて400nmの値の約50%であり、600nmにおいて400nmの値の約20%である。
【0019】
図2は、暗闇且つ5Kの温度で記録された、本発明によるvlp−TiO2の電子スピン共鳴スペクトル(ESR)(スペクトルA)と、SakthivelおよびKischにより製造されたTiO2の電子スピン共鳴スペクトル(スペクトルB)を示す。スペクトルAは2.003のg値においてだけ有意な信号を示す。スペクトルBは約2.003のgにおける主信号の他に、1.97〜2.05のg値の範囲において3つの別の信号を示す。
【0020】
図3は本発明によるvlp−TiO2のX線光電スペクトル(XPS)(スペクトルA)と、SakthivelおよびKischによる、四塩化チタンから水酸化テトラブチルアンモニウムを用いて沈殿された既知のTiO2のX線電子スペクトル(スペクトルB)を示す。vlp−TiO2のスペクトルは530eVのO1s吸収帯に対して285.6eVの結合エネルギにおいて有意なC1s信号を示し、これは元素の炭素を表す。これに対しスペクトルBは284.5eVの結合エネルギにおける元素の炭素に関するC1s信号を示し、また289.4eVおよび294.8eVにおいて付加的な帯域を示し、これは炭酸塩を表す。相応のIRスペクトルも、1738、1096および798cm-1において典型的な炭酸塩帯を示す。
【0021】
図4は、人工的な可視光(λ≧455nm)により4−クロロフェノールが分解される際の非変性のTiO2と比較したvlp−TiO2の光触媒作用を示す。溶液中の有機炭素の総含有量(TOCt)が開始値(TOC0)に比べて減少していることが示されている。vlp−TiO2を用いることにより3時間後には完全な分解が行われる。
【0022】
図5は、室内の拡散する昼光により(2.5×10-4のモル水溶液としての)4−クロロフェノールが分解される際の非変性のTiO2と比較したvlp−TiO2の光触媒作用を示す。溶液中の有機炭素の総含有量(TOCt)が開始値(TOC0)に比べて減少していることが示されている。強度の弱い拡散する昼光(400〜1200nmの範囲において7〜10W/m2)のもとでさえも、vlp−TiO2により6時間以内に80%の分解が行われている。非常に強度の弱い拡散する昼光(1.6<1W/m2)においてさえも、vlp−TiO2は市販のTiO2光触媒 (Degussa P25, Kemira UV-Titan, Sachtleben Hombikat, Tayca MT-100SA)に比べて依然として有意な光活性を示す。2.5×10-4のモル4−クロロフェノール溶液の分解率の測定は上記のように行われた。
【0023】
a)光強度:1.6W/m2;期間12h
触媒 BET表面積 分解率
vlp−TiO2 170m2/g 16%
P25 50m2/g 4%
UVチタン 20m2/g 5%
Hombikat 240m2/g 9%
MT−100SA 50m2/g 5%
b)光強度:<1W/m2;期間24h
触媒 BET表面積 分解率
vlp−TiO2 170m2/g 18%
Hombikat 240m2/g 3%
【0024】
図6は、室内の拡散する昼光により、ベンゼン(5体積%)、アセトアルデヒト(2体積%)および一酸化炭素(5体積%)が分解される際の非変性のTiO2と比較したvlp−TiO2の光触媒作用を示す。反応容器として、12mgの二酸化チタンで被覆されている紙製の円形フィルタ(d=15cm)が設けられている1リットルの丸底フラスコを使用する。雰囲気中の有機炭素の総含有量(TOCt)が開始値(TOC0)に比べて減少していることが示されている。曲線は本発明のvlp−TiO2によるベンゼン、アセトアルデヒトないし一酸化炭素の分解ならびに非変性の二酸化チタンによるアセトアルデヒトの分解を示す。
【0025】
図7は、アナターゼ型の反射のみを示す粉末X線回折グラフを示す。シェラー法により計算された結晶子の大きさは10nmである。
【0026】
図8は高解像度電子顕微鏡(HTEM)により提供された結晶子の格子線を有するvlp−TiO2の写真を示す。結晶子の大きさを10nmのオーダで評価することができる。
【0027】
図9は、C/Ti比として示されている、vlp−TiO2の炭素−深さプロフィールを示す。これはイオン衝撃(Ar+)およびESCA分析を用いて検出された。図示されている5×103秒の衝撃時間は約5nmの深さに相当する。
【0028】
製造
本発明による方法は、アモルファス、部分結晶性または結晶性の酸化チタンないし含水の酸化チタンおよび/またはチタン水和物および/または酸化チタン水和物の形で存在し、以下では出発チタン化合物と称する、チタン化合物を基礎とする。
【0029】
出発チタン化合物を例えば二酸化チタンの製造の際に硫酸法または塩素法により生成することができる。チタン水和物ないし酸化チタン水和物またはメタチタン酸は硫酸チタニルまたは塩化チタニルの加水分解の際に沈殿される。
【0030】
出発チタン化合物は細粒状の固体として、または相応の固体割合、少なくとも15質量%の懸濁液中として存在していてもよく、BETによる比表面積は少なくとも50m2/g、有利には約150〜350m2/g、殊に150〜250m2/gである。
【0031】
本発明による方法を産業的に使用するために、経済的な理由から出発チタン化合物として硫酸法により製造されるチタン水和物が好ましい。このチタン水和物は有利には事前に中和および洗浄されることにより付着している硫酸が取り除かれ、その結果固体の硫酸の割合は乾燥後には、SO3として計算し、<1質量%である。
【0032】
炭素含有物質は最高で400℃、より良好には<350℃、有利には<300℃の分解温度を有する。例えば木材、カーボンブラックまたは活性炭のような炭素含有物質、また殊に少なくとも1つの官能基を有する炭化水素のような有機炭素化合物が適していることが証明された。官能基としてOH;CHO;COOH;NHx;SHx;COORが考えられ、ここでRはアルキル基またはアリール基である。例えばコハク酸、グリセリンまたはエチレングリコールが該当する。また糖もしくは他の炭水化物も使用することができ、同様に有機アンモニウム水酸化物、殊にテトラアルキルアンモニウムを使用することができる。前述の化合物の混合物も適している。有利には、約0.7〜1.5、有利には約1の炭素/酸素比を有する水溶性ポリアルコール、殊にペンタエリトリトールが使用される。炭素化合物を固体として、または溶液として、または懸濁液として使用することができる。
【0033】
有機炭素化合物は、出発チタン化合物と均質に化合できるようにするために、この出発チタン化合物の表面について可能限り高い親和力を有することが望ましい。
【0034】
出発チタン化合物は、炭素化合物による出発チタン化合物の表面被覆が行われるように、有機炭素化合物と均質に混合される。この際有機炭素化合物は物理吸収または化学吸収されて出発チタン化合物の表面に存在していてもよい。出発チタン化合物の表面の被覆は、出発チタン化合物の懸濁液に炭素化合物を溶解することにより、または炭素化合物の懸濁液と出発チタン化合物の懸濁液とを混合することにより行われる。事前に乾燥された粉末状の出発チタン化合物と炭素化合物との強力な混合も同様に可能である。チタン水和物を使用する場合には、択一的に、チタン水和物の製造の際に加水分解すべき溶液に炭素化合物を既に混合することもできる。出発チタン化合物と炭素化合物の仕上がった混合物においては、炭素化合物の量は(固体としての)出発チタン化合物に対して1〜40質量%である。
【0035】
完成した混合物が懸濁液として存在する場合には、この混合物をさらに処理する前に粉末状の固体に乾燥させることができる。このために噴霧乾燥法または流動層乾燥法のような公知の方法が提供される。
【0036】
必要に応じて事前に乾燥されている完成した混合物は最高で400℃の温度で熱的に処理される。熱処理は酸化雰囲気において、有利には空気中または酸素空気混合気中において実施される。この際出発チタン化合物の表面における有機炭素化合物の分解およびH2O、CO2およびCOの遊離が生じる。熱処理が例えば市販の実験炉において不連続的なバッチ操作においても実施できるにもかかわらず、経済的な理由から所定の温度プロフィールを得ることができる連続的なプロセスが好ましい。連続的な方法として、相応の温度プロフィールおよび必要な滞留時間を実現することができる全ての方法が該当する。
【0037】
殊に適したユニットは間接的および直接的に加熱する回転炉である。連続的に駆動する流動層反応器、流動層乾燥器および加熱された鋤型ミキサも使用することができる。前述の3つのユニットは不連続的な動作様式においても駆動することができる。
【0038】
熱処理は有利には、0.05〜4.0質量%、有利には0.05〜2.0質量%、殊に有利には0.3〜1.5質量%また殊に0.4〜0.8質量%の炭素含有量を有する生成物(vlp−TiO2)が生じるように実施される。熱処理の経過において、白から茶色、最終的にベージュへの色の変化が生じる。最終生成物はベージュから薄く黄色がかった茶色を特徴とする。表面層のアモルファスおよび多結晶の領域においても表面自体と同様に炭素を検出できることを特徴とする。生成物は可視光において光活性である。
【0039】
熱処理後に生成物は公知の方法を用いて、例えばピン型ミル、ジェットミルまたはカウンタージェットミルで解凝集される。粉末状の事前に乾燥された混合物の場合、熱処理によって大抵の場合はさらなる粉砕を要しない凝集体の無い生成物が得られる。達成すべき粒子の微細度は出発チタン化合物の粒子の大きさに依存する。粒子の微細度または生成物の比表面積は極めて僅かな程度低いが、出発物質の粒子の微細度と同じオーダにある。光触媒の達成すべき粒子の微細度は光触媒の使用分野に依存する。粒子の微細度は通常の場合TiO2顔料と同じ範囲であるが、それ以上でもそれ以下でも良い。BET比表面積は100〜250m2/gであり、有利には130〜200m2/gであり、殊に130〜170m2/gである。
【0040】
実施例
本発明を以下の実施例に基づき詳細に説明するが、これによって本発明の範囲は制限されるべきではない。
【0041】
実施例1
硫酸法により製造された水性の酸化チタン水和物ペースト(35質量%、固体)が、蒸留水を用いて室温において、攪拌可能な懸濁液が生じるように希釈される。固体の割合は20〜25%である。6.0〜7.0のpH値が生じるまでNaOH溶液(36質量%)が添加される。続けて、乾燥した残留物において測定されたSO3含有量が1質量%になるまで、懸濁液が濾過されて蒸留水を用いて洗浄される。
【0042】
このようにして中和され洗浄された酸化チタン水和物は続けて、蒸留水を用いて攪拌可能な懸濁液(25%、固体)へともう一度希釈されて、固体に対して12質量%のコハク酸が添加される。コハク酸は懸濁液に固体として添加され、この懸濁液はコハク酸が完全に溶解するまで攪拌される。懸濁液はコハク酸の可溶性を改善するために約60℃に加熱される。このようにして調整された懸濁液は表面蒸発器(IR放射器)を使用して攪拌されながら、懸濁液からペースト状の材料が生じるまで乾燥される。続けてペースト状の材料は実験乾燥キャビネットにおいて固体の割合が>98%になるまで150℃で乾燥される。
【0043】
乾燥された酸化チタン水和物/コハク酸混合物300gが(例えば磨り潰して篩に掛けることによって)細かく粉砕され、また得られた粉末が石英シャーレにおいて蓋をされて290℃で実験炉に置かれる。1〜2時間の間隔で石英シャーレが取り出され、粉末がさらに混合される。実験炉において13〜15時間が経過すると、粉末の色は最初の黄色から灰色がかった黒を介して黄色がかった茶色に変化する。vlp−TiO2を得るための熱処理は、炭素含有量が最初の5〜5.5質量%から約0.65%〜0.80質量%に減少したときに終了されている。
【0044】
続いて光触媒が解凝集され、炭素含有量、光学的な特性、BET表面積および光活性が分析される。
【0045】
実施例2
実施例1に同様に行うが、12質量%のペンタエリトリトールが固体として酸化チタン水和物懸濁液に添加される。
【0046】
実施例3
実施例2と同様に行うが、5質量%のペンタエリトリトールが固体として酸化チタン水和物懸濁液に添加される。
【0047】
実施例4
実施例1と同様に、5質量%のペンタエリトリトールを使用する酸化チタン水和物/ペンタエリトリトール懸濁液について説明する。実施例1とは異なり、そのようにして得られる懸濁液の熱処理は以下のような連続的に駆動する回転炉において実施される:
回転炉は向流法で駆動し、ガスバーナによって直接的に加熱される。ガスバーナの裸火はフルー管によって保護されているので、生成物(vlp−TiO2)との直接的な接触は阻止される。加熱炉の長さは7mであり、内径は0.3mである。懸濁液は炉の導入部において細かく噴霧される。懸濁液の供給量は40kg/hである。炉の導入部における鎖内部構造体によって良好な渦流が生じ、これにより急激な乾燥とそれに続く乾燥された材料の粉砕が提供される。連続的に駆動する回転炉による処理時間は1時間である。搬出領域における炉の温度はバーナのガス量を介して260℃に調節される。炉の搬出部においてvlp−TiO2が黄色がかった茶色の微細な粉末として生じる。続いてvlp−TiO2が実験混合器(Braun、MX 2050)において解凝集され、炭素含有量、光学的な特性、BET表面積および光活性が分析される。
【0048】
実施例5
実施例4と同様に行うが、搬出領域における炉の温度がバーナのガス量を介して280℃に調節される。
【0049】
実施例6
実施例1と同様に、5質量%のペンタエリトリトールを使用する酸化チタン水和物/ペンタエリトリトール懸濁液について説明する。実施例1とは異なり、懸濁液は残留水分が22%である粉末状の固体になるよう電気的に加熱された炉において事前に乾燥される。事前に乾燥された粉末状の使用材料の熱処理は、以下のような連続的に駆動し間接的に加熱する回転炉において実施される:
回転炉は直流法で駆動され、電気的に3つの領域において加熱される。加熱炉の全長は2700mmであり、内径は390mmである。粉末状の固体はスクリューフィーダを介して炉の導入部へと供給される。回転炉の全長にわたる鎖内部構造体によって炉内の均質な分配が提供され、炉の壁におけるケーキングが阻止される。供給量は毎時25kg固体である。連続的に駆動する回転炉による処理時間は0.5時間である。炉の温度は3つの加熱領域において電気的に調節される。3つの加熱領域のそれぞれの温度を別個に調節することができる。炉の搬出部分においては、vlp−TiO2が茶色の微細な粉末として生じる。続いてvlp−TiO2が実験混合器(Braun、MX 2050)において解凝集され、炭素含有量、光学的な特性、BET表面積および光活性が分析される。
【0050】
比較例
約10m2/gのBET表面積を有するTiO2顔料(アナターゼ)(市販製品Kronos 1000)は実施例2と同様に、12%のペンタエリトリトールと混合され、熱処理される。
【0051】
【表1】
【0052】
表には本発明によるvlp−TiO2の分析および光活性も一緒に記載されている。
【0053】
チタン水和物から製造されるvlp−TiO2(実施例1〜6)は良好な光学的な値(PLVテスト)では、可視スペクトル領域において傑出した光触媒作用を示す。出発チタン化合物としてチタン水和物の代わりにアナターゼ顔料を使用した場合には十分な光活性のない生成物が得られる(比較例)。
【0054】
実施例7
二酸化チタン5g(市販製品Kerr-McGee Pigments GmbH社のTRONOX Titanhydrat-0)が室温で20mlの蒸留水に懸濁され、5mlのエチレングリコール(FLUKA AG社の市販製品)と混合され、また超音波槽(BerlinのBandelin Electronic社のSonorex Super RK 106、35kHz、120W率、高周波出力)において30分間処理される。一晩磁気的に攪拌した後に、溶剤が有利には真空中で除去され、残留物が100〜200℃、有利には約200℃で少なくとも12時間乾燥され、その後閉じられた容器において1時間以内300℃で加熱され、続いてさらに3時間この温度に維持される。この際、粉末の色は白から暗褐色を介してベージュへと変化することが確認される。それ以上長く加熱すると、無色で不活性の粉末になる。生成物の元素分析の結果、炭素は2.58質量%、窒素は0.02質量%また水素は0.40質量%であることが判明した。非変性のTiO2は0.07質量%のCおよび0.0質量%のNおよび0.0質量%のHを含有する。
【0055】
実施例8
表面の炭素化合物を遊離させるために、vlp−TiO25gが一晩2Mのカ性ソーダ液(pH12)100mlにおいて攪拌される。遠心分離することによって茶黄色の抽出物、また殆ど着色されていない白い残留物が得られ、後者は100℃で乾燥される。そのようにして得られた粉末は4−クロロフェノールを分解する際に可視光において活性を示さない。粉末が抽出物と再び合わせられ、有利には約200℃で若干加熱されると、粉末は分解反応時に未処理の(アルカリ液で処理されていない)vlp−TiO2と同じ活性を有する。
【0056】
実施例9
プラスチックフィルムの被覆のために、実施例6により製造された粉末が超音波槽において、メタノールまたはエタノールのような液体に懸濁され、結果として生じる懸濁液はスプレーボトルを用いて可能な限り薄くフィルム上に塗布される。引き続き343Kにおいて乾燥させた後に、被覆を所望の層厚に達成するまで繰り返すことができる。
【0057】
プラスチックフィルムの代わりに例えば紙(図6の実験を参照されたい)またはアルミニウム(下記の実験方法h):「ディップコーティング」を参照されたい)のような他の担体を使用することができる。
【0058】
測定方法
a)光学的な値(PLVテスト)の検出
この方法はvlp-TiO2の光学的な値、明度L*、色相a*、および色相b*を求めるために使用される。検査すべきvlp−TiO2から、所定の条件化下でFrankfurtのMATRA社の水圧式小型プレスを用いて粉末プレス加工物が製造される。続けてHUNTERLAB Tristimulus Colorimeterを用いて、粉末プレス加工物において規約反射値が検出される。
【0059】
vlp−TiO2はプレス加工物の製造の前に粉砕される。このために、得られたvlp−TiO2100gが市販のミキサ(製造元:Braun、モデル:MX 2050)に供給され、5秒間で12回粉砕される。粉砕ステップの間にその都度ミキサが開かれ、粉末が再度混ぜられる。円形状のくぼみを有する台板上には両面がつや消し白のシートが載置されており、プレスを用いてくぼみに金属リング(高さ4cm、直径2.4cm)を押圧する。粉砕されたvlp−TiO2約25gが僅かな揺れと振動で金属リングに添加される。2〜3kNの圧力により粉末が強く押圧される。プレス過程は15kNの目標動作圧力が達成されるまで二度繰り返される。金属リングを慎重に回転および張引することによって、この金属リングが台板から外される。台板とリングとの間の紙が取り除かれる。リング内にはプレス加工物が存在し、このプレス加工物がHUNTERLABの色度計における測定過程のために使用される。測定値L*、a*、b*は色度計において直接読み出される。
【0060】
b)光活性(有害物質分解)の検出
人工的な可視光において:
vlp−TiO215mgが超音波槽において4−クロロフェノールの2.5×10-4のモル溶液15mlに10分間分散され、続いて水冷式丸型キュベットにおいて光学台上で露光される。光活性を検出するための露光は、焦点合わせされたランプハウジング(AMKO Mod. A1020、焦点距離30cm)に取付けられているOsram XBO 150 W Xenon、ショートアークランプを用いて行われる。このランプのスペクトルは図10に示されている。30mmの内径および20mmの層厚を有する、15mlの容量の水冷式丸型キュベットにおいて反応が行われる。側方に取付けられている攪拌モータおよび攪拌磁石を用いて反応懸濁液を攪拌することができる。丸型キュベットは図11に示されている。キュベットはランプの焦点に固定される。光はキュベットの反応空間のみが放射されるように焦点合わせされる。全ての構成部品が光学台上に固定的に取付けられる。UV光を除去するために、ビーム路内にはエッジフィルタ(Fa. Schott)が挿入されており、このエッジフィルタの透過率はλ≧455nmである。露光によって起こりうる反応空間の加熱を阻止するために、付加的にIRフィルタがビーム路に取付けられる。ここでは水で充填されたシリンダ(直径6cm、長さ10cm)である。4−クロロフェノールの濃度の減少はUV分光器(A=224nm)を用いて、または分解(酸化)の場合には有機炭素の総含有量(TOC値)の測定を介して追跡される。
【0061】
室内の拡散する昼光において:
vlp−TiO250mgが超音波槽において4−クロロフェノールの2.5×10-4のモル溶液50mlに10分間分散され、続いてエルレンマイヤーフラスコ(100ml)において攪拌されながら室内の昼光に曝される。
【0062】
アセトアルデヒトガス、ベンゼン蒸気および一酸化炭素の分解:
空気飽和状態のアセトアルデヒトガス(2体積%)またはベンゼン蒸気(5体積%)または一酸化炭素が充填されている丸底フラスコ(1l)には、vlp−TiO2で両面が被覆されている2つの円形フィルタ(紙、d=15cm、フィルタ毎に12mgの触媒)が挿入される。続いてフラスコが実験室において昼光に曝され、有害物質の減少および二酸化炭素の発生がIR分光器を用いて追跡される。
【0063】
c)炭素含有量の検出
検出は有機炭素総含有量(TOC)として炭素分析装置LECO C-200を用いて行われる。測定方法は誘導炉内のTiO2内に含有される酸素ガス下での有機物質の燃焼と、それに続く発生した二酸化炭素のIR検出器を用いた検出を基礎とする。TiO2の秤量は0.4gである。
【0064】
d)BET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積の検出
BET表面積はFa. MicromeriticsのTristar 3000を用いて静的で容量的な原理に従い測定される。
【0065】
e)XPS測定
結合エネルギを測定するために、装置Phi 5600 ESCA分光計(23.50eVのパスエネルギ;AI標準;300.0W;45.0°)が使用される。
【0066】
f)ESR測定
電子共鳴スペクトルを測定するために、Bruker Elexys 580分光器のX帯域(9.5GHz)が使用された。試料は10-5Torrまで排気され、10-2Torrの圧力になるまでヘリウムが充填され、続いて溶解される。測定は以下の条件の下で行われた:
100Hzで変調された磁場。RFパワー:0.0002−1mW。磁界:3340〜3500G。スイープ幅:100〜500G。変換時間:81.92ms。時定数:40.96ms。修正された振幅:0.2〜13G。温度:5K。g値はホールセンサを用いて検出される。
【0067】
拡散反射スペクトル(クベルカ・ムンク関数)の測定
粉末の拡散反射スペクトルは、積分球が設けられているShimadzuのUV-2401 PC UV/Vis分光器を用いて測定された。白の標準として硫酸バリウムが使用され、この硫酸バリウムと共に粉末は測定前に乳鉢において擦られている。クベルカ・ムンク関数は吸光度に比例する。
【0068】
h)超親水特性
水の接触角を測定するために、vlp−TiO2および非変性のTiO2がそれぞれ蒸留水に懸濁され、「ディップコーティング」によって5×5cmの大きさのアルミニウム片上に被着され、1時間400℃で焼成される。昼光のもとで保管した後、非変性の二酸化チタンに関しては21°の接触角が測定されたが、これに対してvlp−TiO2に関しては僅か8°の接触角が測定された。被覆されていないアルミニウム片の接触角は91°であった。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】非変性のTiO2とCで変性されたTiO2(vlp−TiO2)に関する、相対的な吸光度に比例するクベルカ・ムンク関数F(R∞)(任意の単位)。
【図2】暗闇且つ5Kの温度で記録された、本発明によるvlp−TiO2の電子スピン共鳴スペクトル(ESR)(スペクトルA)と、SakthivelおよびKischにより製造されたTiO2の電子スピン共鳴スペクトル(スペクトルB)。
【図3】本発明によるvlp−TiO2のX線光電スペクトル(XPS)(スペクトルA)と、SakthivelおよびKischによる、四塩化チタンから水酸化テトラブチルアンモニウムを用いて沈殿された既知のTiO2のX線電子スペクトル(スペクトルB)。
【図4】人工的な可視光(λ≧455nm)により4−クロロフェノールが分解される際の非変性のTiO2と比較したvlp−TiO2の光触媒作用。
【図5】室内の拡散する昼光により(2.5×10-4のモル水溶液としての)4−クロロフェノールが分解される際の非変性のTiO2と比較したvlp−TiO2の光触媒作用。
【図6】室内の拡散する昼光により、ベンゼン(5体積%)、アセトアルデヒト(2体積%)および一酸化炭素(5体積%)が分解される際の非変性のTiO2と比較したvlp−TiO2の光触媒作用。
【図7】アナターゼ型の反射のみを示す粉末X線回折グラフ。
【図8】高解像度電子顕微鏡(HTEM)により提供された結晶子の格子線を有するvlp−TiO2の写真。
【図9】C/Ti比として示されている、vlp−TiO2の炭素−深さプロフィール。
【図10】ランプのスペクトル。
【図11】丸型キュベット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
λ≧400nmの範囲において、純粋な二酸化チタンに比べて有意な吸光特性を有する二酸化チタンを基礎とする炭素含有光触媒において、
1.97〜2.05のg値の範囲においてだけ有意な信号を示す、5Kの温度において測定された電子スピン共鳴スペクトル(ESR)を特徴とする、光触媒。
【請求項2】
前記ESRスペクトルにおける前記信号は2.002〜2.004のg値において生じる、請求項1記載の光触媒。
【請求項3】
530eVのO1s帯に対してX線光電子スペクトル(XPS)における285.6eVの結合エネルギにおいて強い吸収帯が生じることを特徴とする、請求項1または2記載の光触媒。
【請求項4】
前記吸光度に比例するクベルカ・ムンク関数F(R∞)は500nmにおいて400nmの値の約50%であり、600nmにおいて400nmの値の約20%である、請求項1から3までのいずれか1項または複数項記載の光触媒。
【請求項5】
少なくとも20%、有利には少なくとも40%、殊に少なくとも50%の光活性を有する、請求項1から4までのいずれか1項または複数項記載の光触媒。
【請求項6】
炭素含有量は、0.05〜4質量%、有利には0.05〜2.0質量%、殊に有利には0.3〜1.5質量%の範囲である、請求項1から5までのいずれか1項または複数項記載の光触媒。
【請求項7】
炭素含有量は0.4〜0.8質量%の範囲である、請求項6記載の光触媒。
【請求項8】
炭素は前記二酸化チタンの粒子の表面層にのみ堆積されている、請求項1から7までのいずれか1項または複数項記載の光触媒。
【請求項9】
前記X線光電子スペクトル(XPS)においても赤外線スペクトルにおいても炭酸塩帯を示さない、請求項1から8までのいずれか1項または複数項記載の光触媒。
【請求項10】
BET比表面積は100〜250m2/g、有利には130〜200m2/g、殊に130〜170m2/gである、請求項1から9までのいずれか1項または複数項記載の光触媒。
【請求項11】
可視光において光活性である、炭素含有二酸化チタンの製造方法において、
少なくとも50m2/gのBET比表面積を有するチタン化合物を有機炭素化合物と均質に混合させ、該混合物を400℃までの温度で熱処理することを特徴とする、製造方法。
【請求項12】
前記チタン化合物は、アモルファス、部分結晶性または結晶性のチタン酸化物ないし含水のチタン酸化物またはチタン水和物または酸化チタン水和物である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記チタン化合物は硫酸プロセスに由来するチタン水和物である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記チタン水和物を事前に中和および洗浄し、その結果乾燥後の固体のSO2含有量は1質量%以下である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
炭素含有物質は、最高で400℃、有利には<350℃、殊に有利には<300℃の分解温度を有する、請求項11から14までのいずれか1項または複数項記載の方法。
【請求項16】
炭素含有物質は、少なくとも1つの官能基を包含する炭化水素である。請求項11から15までのいずれか1項または複数項記載の方法。
【請求項17】
前記官能基は以下の基:OH、CHO、COOH、NHx、SHx、COORの内の1つであり、ここでRはアルキル基またはアリール基である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
炭素化合物として、エチレングリコール、グリセリン、炭水化物、有機アンモニウム水酸化物またはそれらの混合物のグループから成る化合物を使用する、請求項15から17までのいずれか1項または複数項記載の方法。
【請求項19】
炭素を含有する物質は木、活性炭またはカーボンブラックである、請求項11から14までのいずれか1項または複数項記載の方法。
【請求項20】
前記熱処理を連続的に駆動する焼成装置において、有利には回転炉または流動床において実施する、請求項11から19までのいずれか1項または複数項記載の方法。
【請求項21】
前記熱処理を酸化雰囲気において、有利には空気中または酸素空気混気中において実施する、請求項11から20までのいずれか1項または複数項記載の方法。
【請求項22】
前記熱処理の前に、例えば噴霧乾燥器または流動床乾燥器において別個の事前乾燥を実施する、請求項11から21までのいずれか1項または複数項記載の方法。
【請求項23】
プラスチック、プラスチックフィルム、繊維、紙および道路コーティングにおける、請求項1から22までのいずれか1項または複数項記載の光触媒の使用。
【請求項24】
建築産業において建築部材の製品、殊にコンクリート完成品の製品、殊にコンクリート製の敷石、屋根瓦、陶器、タイル、壁紙、布地、壁板、また内部領域および外部領域の天井や壁のための被覆要素における、請求項1から22までのいずれか1項または複数項記載の光触媒の使用。
【請求項25】
空調装置、空気洗浄および空気殺菌のための装置、また殊に抗菌および抗ウィルスを目的とした浄水における、請求項1から22までのいずれか1項または複数項記載の光触媒の使用。
【請求項26】
光電池および水分解における、請求項1から22までのいずれか1項または複数項記載の光触媒の使用。
【請求項1】
λ≧400nmの範囲において、純粋な二酸化チタンに比べて有意な吸光特性を有する二酸化チタンを基礎とする炭素含有光触媒において、
1.97〜2.05のg値の範囲においてだけ有意な信号を示す、5Kの温度において測定された電子スピン共鳴スペクトル(ESR)を特徴とする、光触媒。
【請求項2】
前記ESRスペクトルにおける前記信号は2.002〜2.004のg値において生じる、請求項1記載の光触媒。
【請求項3】
530eVのO1s帯に対してX線光電子スペクトル(XPS)における285.6eVの結合エネルギにおいて強い吸収帯が生じることを特徴とする、請求項1または2記載の光触媒。
【請求項4】
前記吸光度に比例するクベルカ・ムンク関数F(R∞)は500nmにおいて400nmの値の約50%であり、600nmにおいて400nmの値の約20%である、請求項1から3までのいずれか1項または複数項記載の光触媒。
【請求項5】
少なくとも20%、有利には少なくとも40%、殊に少なくとも50%の光活性を有する、請求項1から4までのいずれか1項または複数項記載の光触媒。
【請求項6】
炭素含有量は、0.05〜4質量%、有利には0.05〜2.0質量%、殊に有利には0.3〜1.5質量%の範囲である、請求項1から5までのいずれか1項または複数項記載の光触媒。
【請求項7】
炭素含有量は0.4〜0.8質量%の範囲である、請求項6記載の光触媒。
【請求項8】
炭素は前記二酸化チタンの粒子の表面層にのみ堆積されている、請求項1から7までのいずれか1項または複数項記載の光触媒。
【請求項9】
前記X線光電子スペクトル(XPS)においても赤外線スペクトルにおいても炭酸塩帯を示さない、請求項1から8までのいずれか1項または複数項記載の光触媒。
【請求項10】
BET比表面積は100〜250m2/g、有利には130〜200m2/g、殊に130〜170m2/gである、請求項1から9までのいずれか1項または複数項記載の光触媒。
【請求項11】
可視光において光活性である、炭素含有二酸化チタンの製造方法において、
少なくとも50m2/gのBET比表面積を有するチタン化合物を有機炭素化合物と均質に混合させ、該混合物を400℃までの温度で熱処理することを特徴とする、製造方法。
【請求項12】
前記チタン化合物は、アモルファス、部分結晶性または結晶性のチタン酸化物ないし含水のチタン酸化物またはチタン水和物または酸化チタン水和物である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記チタン化合物は硫酸プロセスに由来するチタン水和物である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記チタン水和物を事前に中和および洗浄し、その結果乾燥後の固体のSO2含有量は1質量%以下である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
炭素含有物質は、最高で400℃、有利には<350℃、殊に有利には<300℃の分解温度を有する、請求項11から14までのいずれか1項または複数項記載の方法。
【請求項16】
炭素含有物質は、少なくとも1つの官能基を包含する炭化水素である。請求項11から15までのいずれか1項または複数項記載の方法。
【請求項17】
前記官能基は以下の基:OH、CHO、COOH、NHx、SHx、COORの内の1つであり、ここでRはアルキル基またはアリール基である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
炭素化合物として、エチレングリコール、グリセリン、炭水化物、有機アンモニウム水酸化物またはそれらの混合物のグループから成る化合物を使用する、請求項15から17までのいずれか1項または複数項記載の方法。
【請求項19】
炭素を含有する物質は木、活性炭またはカーボンブラックである、請求項11から14までのいずれか1項または複数項記載の方法。
【請求項20】
前記熱処理を連続的に駆動する焼成装置において、有利には回転炉または流動床において実施する、請求項11から19までのいずれか1項または複数項記載の方法。
【請求項21】
前記熱処理を酸化雰囲気において、有利には空気中または酸素空気混気中において実施する、請求項11から20までのいずれか1項または複数項記載の方法。
【請求項22】
前記熱処理の前に、例えば噴霧乾燥器または流動床乾燥器において別個の事前乾燥を実施する、請求項11から21までのいずれか1項または複数項記載の方法。
【請求項23】
プラスチック、プラスチックフィルム、繊維、紙および道路コーティングにおける、請求項1から22までのいずれか1項または複数項記載の光触媒の使用。
【請求項24】
建築産業において建築部材の製品、殊にコンクリート完成品の製品、殊にコンクリート製の敷石、屋根瓦、陶器、タイル、壁紙、布地、壁板、また内部領域および外部領域の天井や壁のための被覆要素における、請求項1から22までのいずれか1項または複数項記載の光触媒の使用。
【請求項25】
空調装置、空気洗浄および空気殺菌のための装置、また殊に抗菌および抗ウィルスを目的とした浄水における、請求項1から22までのいずれか1項または複数項記載の光触媒の使用。
【請求項26】
光電池および水分解における、請求項1から22までのいずれか1項または複数項記載の光触媒の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−532287(P2007−532287A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506713(P2007−506713)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003601
【国際公開番号】WO2005/108505
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(592039299)クローノス インターナショナル インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】KRONOS INTERNATIONAL, INC.
【住所又は居所原語表記】Peschstrasse 5, D−51373 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003601
【国際公開番号】WO2005/108505
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(592039299)クローノス インターナショナル インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】KRONOS INTERNATIONAL, INC.
【住所又は居所原語表記】Peschstrasse 5, D−51373 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】
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