説明

炭素担持体、炭素担持体の製造方法、炭素担持体の製造装置、ガス生成方法、発電方法、及び発電装置

【課題】生物由来のエネルギー源である炭素担持体、炭素担持体の製造方法、炭素担持体の製造装置、炭素担持体を用いてエネルギー源であるガスを生成するガス生成方法、生成したガスを用いた発電方法、及び発電装置を提供する。
【解決手段】バイオマス(生物由来有機物)を400℃〜1000℃で乾溜することにより、バイオマスはガス、気体状のタール及びチャーに熱分解する。タールを含む気相成分をγ−アルミナでなるメソ多孔質粒子に接触させることにより、タールが分解されて炭素質固体となってメソ多孔質粒子に付着し、炭素担持体が生成される。タールが殆ど除去されたガス、チャー、及びタールをエネルギー源として利用可能にした炭素担持体が得られる。炭素担持体は、燃料として利用する他に、水性ガス化反応により水素ガスを発生させることも可能であり、水素ガスを利用して燃料電池による発電が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス起源のエネルギーを利用する技術に関し、より詳しくは、生物由来のエネルギー源である炭素担持体、炭素担持体の製造方法、炭素担持体の製造装置、炭素担持体を用いてエネルギー源であるガスを生成するガス生成方法、生成したガスを用いた発電方法、及び発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスとは、生物体又は生物廃棄物等の生物に由来する有機物で化石資源を除いたものを指し、具体的には、木材、紙、農業残渣、屎尿、食品廃棄物等が含まれる。バイオマスは、水と二酸化炭素とを主な原料として生物が生産した有機物であるので、再生可能な資源であり、またエネルギー源として消費した場合に、生産及び消費の2段階を合わせた二酸化炭素の放出量がほぼゼロであるという所謂カーボンフリーの特徴を有する。このように、バイオマスは、環境負荷の小さいエネルギー源として期待されており、その利用方法の研究が進められている。
【0003】
バイオマスを直接に燃料として燃焼させた場合は熱効率が低いので、効率良くバイオマスをエネルギー源として利用するためには、バイオマスを熱効率がより高い物質へ変換することが望ましい。バイオマスを変換する方法としては、バイオマスの乾溜によってバイオマスのガス化を行う方法が知られている。バイオマスのガス化により、一酸化炭素、メタン、エタン等の可燃性ガスが発生し、発生したガスを燃料として利用することができる。発生したガスは、バイオマスを直接に燃料とする場合に比べて高い熱効率で燃焼させることが可能であり、発電用の燃料及び熱源として利用することができる。またガス化後の固体残渣物であるチャーは、乾溜によってもガスに分解されなかった高分子量の有機物であり、バイオマスが木材である場合は木炭がチャーに相当する。バイオマスのガス化によって生成されるチャーも、燃料又は各種の工業原料として利用することが可能である。
【0004】
しかしながら、バイオマスのガス化においては、ガス及びチャー以外に、ガスよりも高分子量でチャーよりも低分子量のタールもまた生成する。タールはバイオマスの乾溜が行われる温度では気体であるが、常温では液体又は固体となり、ガスの不純物として生成する。タールを含んだガスは燃料としての品質が低下し、またタールを含んだガスを燃料として利用した場合は、ガスを燃焼させる装置及び環境をタールが汚染するという問題がある。従って、バイオマスのガス化の際には、発生したガス中のタール濃度を低減させることが必要となる。従来、ガスの温度制御、ガスの化学的処理、フィルタを用いたタールの除去、及び触媒を用いたタールの分解等、バイオマスのガス化の際にガス中のタール濃度を低減させる種々の技術が開発されている。非特許文献1には、ゼオライト又は活性アルミナ等の多孔質粒子にタールを付着させることによってガス中のタール濃度を低減させる技術が開示されている。
【非特許文献1】ナミオカ(T.Namioka)、他3名,「ハイ タール リダクション ウィズ ポーラス パーティクルズ フォア ロー テンペラチュア バイオマス ガスフィケイション(High Tar Reduction with Porous Particles for Low Temperature Biomass Gasification):エフェクツ オブ ポーラス パーティクルズ オン タール アンド ガス イールズ デュリング ソーダスト パイロリシス (Effects of Porous Particles on Tar and Gas Yields during Sawdust Pyrolysis)」、ジャーナル オブ ケミカル エンジニアリング オブ ジャパン(Journal of Chemical Engineering of Japan)、2003年、第36巻、第12号、p.1440−1448
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術でバイオマスとして想定されているものは主に木材であるので、バイオマスのガス化を行うプラントは森林地帯に設置されることとなる。そのような森林地帯では都市部に比べてエネルギー需要が低いので、バイオマスのガス化によって利用可能なエネルギーは供給過剰となり、余剰のエネルギーを他地域へ供給する必要がある。しかしながら、熱及び電気を他地域へ供給することはエネルギーの利用効率が悪く、また発生した可燃性のガスを他地域へ供給することは危険を伴うという問題がある。また従来のバイオマスのガス化技術では、発生したガスからある程度のタールを除去することによってタール濃度を低減させる種々の技術は開発されているものの、ガスから除去したタールの利用が困難であり、バイオマスが含む炭素の利用効率が低いという問題がある。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、タールに起因する炭素を粒子に担持させることにより、バイオマスが含む炭素の利用効率を向上させ、また運搬時に危険を伴うことがないエネルギー源である炭素担持体、炭素担持体の製造方法、及び炭素担持体の製造装置を提供することにある。
【0007】
また本発明の他の目的とするところは、燃料電池で利用するためのガスを炭素担持体を利用して生成するガス生成方法、生成したガスを用いた発電方法、及び発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る炭素担持体は、メソ多孔質粒子の表面に、炭素を主成分とする炭素質固体が付着してなることを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る炭素担持体は、前記炭素質固体は、前記メソ多孔質粒子の1グラム当たり20ミリモル以上の炭素を含むことを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る炭素担持体は、前記メソ多孔質粒子の比表面積は、1グラム当たり200平方メートル以上であることを特徴とする。
【0011】
第4発明に係る炭素担持体は、前記メソ多孔質粒子は、酸化アルミニウムを主成分とすることを特徴とする。
【0012】
第5発明に係る炭素担持体は、前記メソ多孔質粒子は、表面に酸点を有するγ−アルミナで構成されていることを特徴とする。
【0013】
第6発明に係る炭素担持体の製造方法は、第1乃至第5発明のいずれか一つに係る炭素担持体を製造する方法であって、生物由来有機物を400℃以上1000℃以下で熱分解し、熱分解によって発生した気相成分を400℃以上1000℃以下でメソ多孔質粒子に接触させることによって、メソ多孔質粒子の表面に炭素質固体を析出させることを特徴とする。
【0014】
第7発明に係る炭素担持体の製造方法は、第1乃至第5発明のいずれか一つに係る炭素担持体を製造する方法であって、生物由来有機物を400℃以上1000℃以下で熱分解し、熱分解によって発生した気相成分を、400℃以上1000℃以下で複数のメソ多孔質粒子が集積した集積物に浸透させ、前記集積物から、前記気相成分を浸透させたメソ多孔質粒子を取り出すことを特徴とする。
【0015】
第8発明に係る炭素担持体の製造方法は、前記集積物に浸透させた後の気相成分を回収することを特徴とする。
【0016】
第9発明に係る炭素担持体の製造方法は、熱分解により生物由来有機物から気相成分が分離した後の残渣を回収することを特徴とする。
【0017】
第10発明に係る炭素担持体の製造方法は、生物由来有機物を熱分解する際の温度及び/又は熱分解によって発生した気相成分を前記集積物に浸透させる際の温度を制御することにより、生物由来有機物に含まれる炭素を炭素担持体が収得する収率を調整することを特徴とする。
【0018】
第11発明に係る炭素担持体の製造装置は、第1乃至第5発明のいずれか一つに係る炭素担持体を製造する装置であって、生物由来有機物を400℃以上1000℃以下で熱分解する熱分解手段と、該熱分解手段によって発生した気相成分を、400℃以上1000℃以下で複数のメソ多孔質粒子が集積した集積物に浸透させる浸透手段と、前記集積物から、前記気相成分を浸透させたメソ多孔質粒子を取り出す手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
第12発明に係る炭素担持体の製造装置は、前記浸透手段が前記集積物に浸透させた後の少なくとも一部の気相成分を回収する手段と、該手段が回収した前記気相成分を燃焼させる手段と、該手段が燃焼により発生させた熱を利用して前記熱分解手段及び前記浸透手段の温度条件を制御する手段とを更に備えることを特徴とする。
【0020】
第13発明に係るガス生成方法は、第1乃至第5発明のいずれか一つに係る炭素担持体に、温度が700℃以上の水蒸気を含むガスを接触させ、発生する水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを回収することを特徴とする。
【0021】
第14発明に係る発電方法は、第1乃至第5発明のいずれか一つに係る炭素担持体を集積した集積物に、温度が700℃以上の水蒸気を含むガスを通流させ、発生する水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを回収し、回収した水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを燃料電池の燃料極へ供給し、前記水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを燃料極へ供給した燃料電池により発電を行うことを特徴とする。
【0022】
第15発明に係る発電装置は、燃料極を有する燃料電池と、第1乃至第5発明のいずれか一つに係る炭素担持体を集積した集積物に、温度が700℃以上の水蒸気を含むガスを通流させる手段と、該手段から発生する水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを回収する手段と、該手段が回収した水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを前記燃料電池の燃料極へ供給する手段と、該手段により前記水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを燃料極へ供給された前記燃料電池が発電する電力を出力する手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
第1及び第2発明においては、炭素質固体がメソ多孔質粒子の表面に付着することによって、エネルギー源として利用可能な炭素担持体を実現する。
【0024】
第3発明においては、メソ多孔質粒子の比表面積を1グラム当たり200平方メートル以上とすることにより、気化したタール等の炭化物が効率的に分解・付着して炭素担持体が生成する。
【0025】
第4発明においては、活性アルミナ等の酸化アルミニウムを主成分とするメソ多孔質粒子を用いることにより、気化したタール等の炭化物がメソ多孔質粒子の表面で分解・付着して炭素担持体が生成可能となる。
【0026】
第5発明においては、メソ多孔質粒子を酸点を有するγ−アルミナとすることにより、気化したタール等の炭化物が効率的に分解・付着して炭素担持体が生成する。
【0027】
第6、第7及び第11発明においては、バイオマス(生物由来有機物)を400℃以上1000℃以下で熱分解して発生した気相成分をメソ多孔質粒子に接触させることにより、気相成分に含まれるタールがメソ多孔質粒子によって分解されて炭素質固体となってメソ多孔質粒子に付着し、炭素担持体が生成される。
【0028】
第8発明においては、メソ多孔質粒子に接触した後の気相成分を回収することで、タールの濃度が大幅に低減したガスが回収される。
【0029】
第9発明においては、バイオマスを熱分解した残渣を回収することで、チャーが回収される。
【0030】
第10発明においては、バイオマスの熱分解の温度及び/又は気相成分をメソ多孔質粒子に接触させる際の温度を制御することにより、炭素担持体がバイオマスから収得できる収率が変化する。
【0031】
第12発明においては、発生した気相成分は可燃性ガスを含んでいるので、気相成分を燃焼させることで、炭素担持体の製造に必要な熱を得ることができる。
【0032】
第13発明においては、炭素担持体に700℃以上の水蒸気を含むガスを接触させることにより、炭素担持体の炭素質固体によって水蒸気が還元されて水素ガスが発生し、炭素質固体が酸化されて一酸化炭素が発生する。
【0033】
第14及び第15発明においては、炭素担持体を用いて発生させた水素ガス及び/又は一酸化炭素を利用して、燃料電池により発電を行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
第1、第2、第3、第4及び第5発明にあっては、炭素質固体がメソ多孔質粒子の表面に付着した炭素担持体は、燃料及び水素ガス発生源としての利用が可能であり、固体であるために運搬が容易であって、揮発性を有しないために安全性が高いので、容易かつ危険を伴わずにエネルギー源として流通させることが可能である。
【0035】
第6、第7及び第11発明にあっては、バイオマスを熱分解することによって発生した気相成分に含まれるタールが、メソ多孔質粒子によって分解され、炭素質固体となってメソ多孔質粒子に付着して、炭素担持体が生成されるので、従来の技術ではガス中から除去するのみであったタールに含まれる炭素をエネルギー源として利用することが可能となり、バイオマスが含む炭素の利用効率を向上させることができる。
【0036】
第8発明にあっては、バイオマスを熱分解することによって発生するガスからタールが殆ど除去され、発生したガスを良質な燃料として利用することが可能となる。
【0037】
第9発明にあっては、良質な固体燃料であるチャーを製造することが可能となる。
【0038】
第10発明にあっては、バイオマスの熱分解及び炭素担持体の生成での温度を変化させることによって、ガス、炭素担持体、及びチャーの形態でバイオマスから収得できる炭素の収率の割合を変化させることができ、エネルギーの利用方法に応じて、より利用しやすい形態のエネルギー源をより高い収率で得ることが可能となる。
【0039】
第12発明にあっては、発生したガスを熱源とすることにより、外部のエネルギーを殆ど消費せずに炭素担持体を製造することができる。
【0040】
第13発明にあっては、炭素担持体を用いることで、種々の利用が可能な水素ガス及び/又は一酸化炭素を効率よく発生させることができる。
【0041】
第14及び第15発明にあっては、炭素担持体を用いて発生させた水素ガス及び/又は一酸化炭素を利用して、燃料電池により発電を行うことにより、バイオマス起源のエネルギーを高効率で利用することが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、本発明の炭素担持体の製造方法を示す概念図である。バイオマス(生物由来有機物)は、高分子量の有機物であり、木材の場合はセルロース及びリグニン等からなる。バイオマスを400℃〜1000℃で乾溜することにより、バイオマスは、低分子量のガス、高分子量のチャー、及びそれらの中間の分子量を有するタールに熱分解する。発生するガスは、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素、及び水素等からなり、常温で気体となる成分である。またタールは常温で液体又は固体となる成分であるが、400℃〜1000℃の温度範囲では気体のタール蒸気となっている。ガス及びタールがバイオマスの熱分解によって発生する気相成分となり、チャーが熱分解による残渣となる。
【0043】
次に、バイオマスの熱分解により発生したガス及びタールの気相成分を、酸点を有するγ−アルミナを成分とするメソ多孔質粒子に400℃〜1000℃で接触させる。メソ多孔質粒子とは、多数のメソ細孔を有する多孔質粒子であり、メソ細孔とは孔径が2〜10nmの細孔である。ガス及びタールの気相成分がメソ多孔質粒子に接触している間に、メソ多孔質粒子の表面でタールが分解し、炭素を主成分とする炭素質固体がメソ多孔質粒子の表面に付着する。タールが分解されることにより、気相成分中のタール濃度が低減し、タールを殆ど含まないガスが生成される。またメソ多孔質粒子の表面に炭素質固体が付着してなる炭素担持体が生成される。
【0044】
図2は、炭素担持体の生成過程を模式的に示す模式図である。図2(a)には、酸点を有するγ−アルミナでなり、メソ細孔を有するメソ多孔質粒子の表面を示す。メソ多孔質粒子の表面にタール蒸気を接触させた場合、γ−アルミナの表面に存在する酸点にタールが吸着して分解し、分解したタールの一部はガスとなり、図2(a)に示す如く、分解したタールの大部分は炭素質固体としてメソ多孔質粒子の表面に析出する。析出した炭素質固体の表面には、タール分解活性を有する活性点が存在し、析出した炭素質固体にタールの蒸気が接触することにより、図2(b)に示す如く、炭素質固体上に更に炭素質固体が析出する。このようにして、メソ多孔質粒子の表面においてタールの分解及び炭素質固体の析出が繰り返され、図2(c)に示す如く、炭素質固体によってメソ多孔質粒子の表面が覆われた炭素担持体が生成される。
【0045】
本発明の炭素担持体に付着している炭素質固体は、炭素を主成分とし、炭素の含有率は重量百分率で70%以上である。炭素質固体は炭素を主成分としているので、炭素担持体は燃料としての利用が可能である。従って、本発明により、従来の技術ではガス中から除去するのみであったタールに含まれる炭素をエネルギー源として利用することが可能となる。また炭素担持体は、500℃以上に加熱した場合でもタールを揮発しない。即ち、本発明の炭素担持体は、固体であるために運搬が容易であり、揮発性を有しないために安全性が高いので、容易かつ危険を伴わずにバイオマス起源のエネルギー源として流通させることが可能である。なお、本発明の炭素担持体を燃料として利用した後は、γ−アルミナでなるメソ多孔質粒子が残留し、このメソ多孔質粒子はリサイクルすることができる。
【0046】
炭素質固体を付着させることによって炭素担持体を生成するメソ多孔質粒子は、γ−アルミナ以外に、活性アルミナ、又はシリカアルミナであってもよい。これら酸化アルミニウムを主成分とする他のメソ多孔質粒子も、表面でタールを分解し、タールが分解した炭素質固体を表面に付着させることによって炭素担持体を生成することができる。またメソ多孔質粒子の比表面積は、1グラム当たり200平方メートル以上であることが望ましい。メソ多孔質粒子の比表面積が200(m2 /g)以上である場合は、炭素質固体の収率が高くなる。またγ−アルミナは、1000℃以上の温度でα−アルミナへ相転移してタールの分解に係る活性を失うので、バイオマスの熱分解により発生した気相成分をメソ多孔質粒子に接触させる際の温度は、1000℃以下である必要がある。また400℃未満の温度ではメソ多孔質粒子の表面に接触したタールが分解する率が低下するので、バイオマスの熱分解により発生した気相成分をメソ多孔質粒子に接触させる際の温度は400℃以上である必要がある。なお、炭素質固体の収率を高めるためには、気相成分をメソ多孔質粒子に接触させる際の温度は500℃〜800℃であることが望ましい。
【0047】
更に、本発明によって炭素担持体を製造することによって、バイオマスからタールを含まないガス及びチャーを製造することができる。製造したガス及びチャーは、タールを含まないので、良質の燃料として利用することが可能である。即ち、本発明では、ガス、炭素担持体及びチャーの形態で、バイオマスが元々含んでいた炭素を利用することができるので、バイオマスの炭素利用効率が向上する。
【0048】
図3は、炭素担持体を生成する実験に用いた実験装置の一部を示す概略図である。内径30mmの反応管と内径20mmの反応管とを接合した形状の反応管11を、一方からバイオマスの粒子及び窒素ガスが流入し、他方からガスが流出する構成としてある。また反応管11内にワイヤメッシュ12を設け、流入したバイオマスの粒子がワイヤメッシュ12上に集積するように構成してある。更に反応管11内のワイヤメッシュ12の下方に分散板13を設け、分散板13上にγ−アルミナでなるメソ多孔質粒子を多数充填してある。反応管11は、電気炉21内に設置されており、反応管11の複数の部分の温度を測定するための熱電対23,23,…が備えられている。熱電対23,23,…は温度調節器22に接続されており、温度調節器22は、熱電対23,23,…を用いて反応管11の各部分の温度を測定し、反応管11の各部分の温度が所定の温度になるように電気炉21の動作を制御する構成となっている。
【0049】
反応管11内では、窒素ガスが、ワイヤメッシュ12上に集積したバイオマス、ワイヤメッシュ12、分散板13上に充填したメソ多孔質粒子、及び分散板13を通過して流れる。バイオマスが分解したガス及びタールは、窒素ガスの流れに伴って多数のメソ多孔質粒子に浸透した後、反応管11外へ流出する。実験では、反応管内の温度を適切な温度に調節することによって、バイオマスの熱分解及び炭素担持体の生成を行い、生成したガス、炭素担持体及びチャーの分析を行った。
【0050】
図4は、実験で生成した炭素担持体及びタールの炭素量を測定した結果を示す特性図である。図中の横軸は、メソ多孔質粒子1グラム当たりに生成した炭素担持体が含む炭素の量をミリモルの単位で示し、縦軸は、反応管11から流出した窒素ガス1立方メートル当たりに含まれるタールの炭素量をミリモルの単位で示す。炭素担持体は、メソ多孔質粒子1グラム当たりに通常30ミリモル程度の炭素を担持可能であり、最大で60ミリモルの炭素を担持可能である。図4に示した測定結果は、バイオマスの試料としてマツおが粉を用いた実験により、各炭素量を含む炭素担持体が生成されるときにガスに含まれるタールの炭素量を測定した結果を示す。
【0051】
炭素担持体が含む炭素量がメソ多孔質粒子1グラム当たり40ミリモル以下では、窒素ガス1立方メートル当たりのタールの炭素量は、1ミリモル以下であり、タールの量が十分に低減していることがわかる。特に、炭素担持体の炭素量が20〜40ミリモルの範囲では、タールが増加しておらず、これらの炭素担持体が生成される状態では新たなタールが殆ど発生しない。炭素担持体の炭素量が40ミリモルを越えた範囲では、タールが増加しており、炭素担持体がタールを分解する分解能が低下していることがわかる。従って、炭素量が20〜40ミリモルである炭素担持体がガスに接触する状態を保つことによって、ガスに含まれるタールを最小限にすることができる。
【0052】
図5は、炭素担持体の生成によってバイオマスから収得した炭素の収率を示す図表である。図5に示す収率は、炭素担持体を生成する際に原料となった元のバイオマスが含む炭素量の内でガス、炭素担持体、及びチャーの夫々の形態で収得できた炭素の収率である。図3に示す実験装置で、バイオマスの試料として杉を用い、バイオマスの熱分解の温度及び気相成分をメソ多孔質粒子に接触させる温度を500℃〜650℃の範囲で変化させ、各温度で生成されたガス、炭素担持体、及びチャーの形態での炭素の収率を求めた結果を図5(a)に示す。例えば、温度を500℃にして炭素担持体を生成した場合は、ガス、炭素担持体、及びチャー夫々での炭素の収率は、元のバイオマスの炭素に対して、26.3%、49.7%、24.0%である。また、ナフタレンよりも高沸点の物質、即ちタールとして生成する炭素の量は、元のバイオマスの炭素に対して0.01%未満である。本発明では、このようにしてバイオマスの炭素の殆どを収得することができ、バイオマスの炭素の利用効率が向上する。また温度を上昇させることによって、ガスによる炭素の収率が上昇し、炭素担持体及びチャーによる炭素の収率が低下する。また温度を低下させることによって、ガスによる炭素の収率が低下し、炭素担持体及びチャーによる炭素の収率が上昇する。
【0053】
また図3に示す実験装置で、バイオマスの試料としてマツおが粉を用い、バイオマスの熱分解の温度を500℃に固定し、熱分解で発生した気相成分を接触させるメソ多孔質粒子の温度を500℃〜800℃の範囲で変化させ、生成されたガス、炭素担持体、及びチャーの形態での炭素の収率を求めた結果を図5(b)に示す。チャーの生成量は、バイオマスから気相成分とチャーとが生成する熱分解の温度によって定まり、熱分解の温度は500℃で一定であるので、チャーでの炭素の収率は28.2%で一定である。これに対し、バイオマスの熱分解で発生した気相成分がメソ多孔質粒子に接触する温度によって、メソ多孔質粒子の表面に炭素質固体が析出する量は変化する。気相成分が接触するメソ多孔質粒子の温度が500℃から800℃まで上昇することに応じて、炭素担持体による炭素の収率は49.8%から17.8%まで低下し、ガスによる炭素の収率は22.0%から54.0%まで上昇する。
【0054】
図5に示すように、本発明では、バイオマスを熱分解する温度、及び/又は熱分解で発生した気相成分をメソ多孔質粒子に接触させる温度を変化させることによって、ガス、炭素担持体、及びチャーの形態でバイオマスから収得できる炭素の収率の割合を変化させることができる。例えば、温度を上昇させることによって、ガスによる炭素の収率が上昇して炭素担持体及びチャーによる炭素の収率が低下し、温度を低下させることによって、ガスによる炭素の収率が低下して炭素担持体及びチャーによる炭素の収率が上昇する。このように、バイオマスを熱分解する温度、及び/又は熱分解で発生した気相成分をメソ多孔質粒子に接触させる温度を変化させることによって、ガスによる炭素の収率を20〜80%、炭素担持体による炭素の収率を10〜50%、チャーによる炭素の収率を10〜30%の範囲で夫々に調整することができる。従って、本発明では、エネルギーの利用方法に応じて、より利用しやすい形態のエネルギー源をより高い収率で得ることができるように調整することができる。
【0055】
図6は、炭素担持体の製造装置の構成例を示す模式的断面図である。炭素担持体の製造装置は、バイオマスの熱分解を行う熱分解炉(熱分解手段)31、及び炭素担持体の生成の反応を行う反応炉(浸透手段)41を備え、熱分解炉31及び反応炉41は互いに配管で接続されている。熱分解炉31には、上部からバイオマスを投入するバイオマス投入部33と、投入されて内部に集積したバイオマスを攪拌する攪拌機32と、熱分解によってバイオマスから気相成分が分離した後の残渣であるチャーを下部から回収するチャー回収部34とが設けられている。反応炉41には、上部から多数のメソ多孔質粒子を投入する粒子投入部43と、投入されたメソ多孔質粒子の集積物を攪拌する攪拌機42と、メソ多孔質粒子の集積物に浸透した後の気相成分及び炭素担持体を下部から排出する排出部45が設けられている。排出部45には、反応炉41から排出した炭素担持体を回収する炭素担持体回収部46と、反応炉41から排出したガスを回収する第1ガス回収部47及び第2ガス回収部48とが設けられている。
【0056】
炭素担持体の製造装置は、更に、第2ガス回収部48が回収したガスを燃焼させる燃焼炉35を備え、燃焼炉35には、燃焼炉35が発生した熱を熱分解炉31及び反応炉41へ供給するための熱配管36が接続されている。熱配管36は、熱分解炉31及び反応炉41に接触して配設され、燃焼炉35で発生した高温ガスが熱分解炉31及び反応炉41の外面を巡って熱分解炉31及び反応炉41の内部を加熱するように構成されている。更に、燃焼炉35には温度調節器37が接続されており、温度調節器37は、熱分解炉31及び反応炉41内の温度が所定の温度になるように燃焼炉35の動作を制御する。
【0057】
バイオマス投入部33は、乾燥したバイオマスを外部から投入されて一時的に蓄積し、所定のレートでバイオマスを熱分解炉31へ投入する。攪拌機42は熱分解炉31内のバイオマスを攪拌し、バイオマスの熱分解により発生した気相成分は反応炉41内へ流入する。チャー回収部34は、バイオマスから気相成分が分離した後の残渣であるチャーを熱分解炉31の下部から回収する。粒子投入部43は所定のレートでメソ多孔質粒子を反応炉41内へ投入し、投入されたメソ多孔質粒子は反応炉41内で集積物となる。攪拌機42は反応炉41内のメソ多孔質粒子の集積物を攪拌し、熱分解炉31から流入した気相成分がメソ多孔質粒子の集積物に浸透する。メソ多孔質粒子の集積物に気相成分が浸透することによって、気相成分に含まれるタールが分解して炭素質固体がメソ多孔質粒子の表面に付着し、炭素担持体が生成される。排出部45は、熱分解炉31からの気相成分が十分に浸透した集積物の底部分のメソ多孔質粒子と、メソ多孔質粒子の集積物を上から下へ浸透した後の気相成分とを反応炉41の下部から排出する。排出部45が排出したメソ多孔質粒子は、タールが分化した炭素質固体が表面に付着して炭素担持体となっており、炭素担持体回収部46は、排出部45が排出した固体成分である炭素担持体を回収する。また排出部45が排出した気相成分は、メタン等のガスであり、第2ガス回収部48は、排出部45が排出したガスの一部を燃焼炉35に回収し、第1ガス回収部47は残りのガスを回収する。燃焼炉35は、第2ガス回収部48が回収したガスを燃焼させ、温度調節器37は、燃焼炉35の動作を制御して、熱分解炉31及び反応炉41内の温度を400℃〜1000℃に調節する。
【0058】
以上の如き本発明の炭素担持体の製造装置により、タールを含まないガス、炭素担持体、及びチャーを製造することができる。炭素担持体及びチャーは、固体でかつ安全性が高く、運搬が容易であるので、炭素担持体の製造装置がエネルギー需要の低い場所に設置されている場合であっても、エネルギー源として容易に他地域へ供給することが可能であり、バイオマス起源のエネルギーの利用効率を向上させることができる。また温度調節器37が熱分解炉31及び反応炉41内の温度を調節することにより、用途に合わせて、ガス、炭素担持体、及びチャーの製造量の割合を調整することができる。例えば、炭素担持体の製造装置が設置されている地域でのエネルギー需要が高い場合は、ガスの割合を増やしてガス発電等でガスを地域で利用し、また炭素担持体の製造装置が設置されている地域でのエネルギー需要が低い場合は、炭素担持体及びチャーの割合を増やして他地域への供給量を増やすことができる。
【0059】
なお、図6に示した炭素担持体の製造装置は、本発明の一例であり、本発明の炭素担持体の製造装置はその他の構成とすることも可能である。例えば、炭素担持体の製造装置は、チャー回収部34が回収したチャー、炭素担持体回収部46が回収した炭素担持体、第1ガス回収部47が回収したガス、及び熱配管36から排出した排気ガスが保持する熱を回収する熱回収機を備え、熱回収機が回収した熱でバイオマスを乾燥させ、乾燥させたバイオマスをバイオマス投入部33へ投入する構成であってもよい。また炭素担持体の製造装置は、燃焼炉35で燃焼させた高温のガスを熱分解炉31及び反応炉41へ導入することによって、内部から熱分解炉31及び反応炉41を加熱する構成であってもよい。また炭素担持体の製造装置は、電気炉等を用いて外部からのエネルギー供給により熱分解炉31及び反応炉41を加熱する構成であってもよい。また炭素担持体の製造装置は、反応炉41内にメソ多孔質粒子を充填させるのではなく、メソ多孔質粒子が集積した移動層又は流動層を作成し、作成した移動層又は流動層にバイオマスが熱分解した気相成分を浸透させる構成であってもよい。
【0060】
以上に説明した如く、本発明の炭素担持体は、燃料としての利用が可能である。しかしながら、本発明の炭素担持体の利用方法はこれに限るものではなく、水性ガス化反応による水素発生源としての利用が可能である。図7は、本発明の炭素担持体から発生した水素を用いて発電を行う本発明の発電装置の構成例を示すブロック図である。本発明の発電装置は、固体酸化物型燃料電池等の高温作動型の燃料電池61と、燃料電池61で利用するための水素ガスを発生させるガス化反応器51とを備えている。
【0061】
ガス化反応器51には、炭素担持体52を貯蔵する貯蔵器52からガス化反応器51へ炭素担持体を供給する供給機53が設けられ、ガス化反応後のメソ多孔質粒子をガス化反応器51から回収する回収器54が設けられている。ガス化反応器51には、ドロマイト等の脱硫能を有する粒子が充填された脱硫器55がガス管で接続されており、ガス化反応器51が生成したガスは脱硫器55へ流入する構成となっている。脱硫器55には、ニッケル触媒等の炭化水素改質のための触媒が充填された改質器56がガス管で接続されており、脱硫器55からのガスが改質器56へ流入する構成となっている。また改質器56はガス管で燃料電池61の燃料極に接続されており、改質器56からのガスが燃料電池61の燃料極へ導入される構成となっている。また燃料電池61には、空気極へ空気を供給する空気供給機63が設けられており、更に燃料電気61が発電した電力を外部へ出力する電力出力部64が接続されている。更に、燃料電池61はガス管でガス化反応器51に接続されており、燃料電池61が排出する700℃以上の水蒸気を含んだ排気ガスの少なくとも一部をガス化反応器51へ供給する構成となっている。
【0062】
供給機53は、貯蔵器52から所定のレートで炭素担持体をガス化反応器51へ供給し、供給された炭素担持体はガス化反応器51内で集積物となる。燃料電池61からガス化反応器51へ供給される排気ガスに含まれる700℃以上の水蒸気は、炭素担持体の集積物へ通流する。炭素を主成分とする炭素質固体に覆われた炭素担持体に高温の水蒸気が接触することにより、水蒸気と炭素との間で水性ガス化反応が起こり、水素ガス及び一酸化炭素が発生する。水蒸気が炭素担持体に接触する際の温度が700℃未満である場合は、水性ガス化反応の効率が低下するので、ガス化反応器51へ供給される水蒸気の温度は700℃以上である必要がある。回収器54は、水蒸気が十分に通流して元に戻ったメソ多孔質粒子を回収する。回収器54が回収したメソ多孔質粒子はリサイクルされる。
【0063】
ガス化反応器51が発生するガスは、水素ガス及び一酸化炭素以外に、水蒸気、二酸化炭素、及び微量の炭化水素を含む。ガス化反応器51が発生したガスは、脱硫器55で脱硫され、改質器56で炭化水素が水素及び一酸化炭素に改質される。改質器56から燃料電池61の燃料極へ水素ガス及び一酸化炭素が供給され、空気供給機63から燃料電池61の空気極へ空気が供給されて、燃料電池61は発電を行う。燃料電池61が発電した電力は、電力出力部64から外部へ出力される。
【0064】
以上に説明した如く、本発明の発電装置により、本発明の炭素担持体は水性ガス化反応による水素ガス発生源として利用され、発生した水素を燃料とした燃料電池61が発電を行う。高温型の燃料電池は発電の効率が高いので、本発明により、バイオマス起源のエネルギーを高効率で利用することが可能となる。
【0065】
なお、図7に示した発電装置は、本発明の一例であり、本発明の発電装置はその他の構成とすることも可能である。図8は、本発明の発電装置の他の構成例を示すブロック図である。発電装置は、燃料電池61が排出する高温の排気ガスから熱を回収する熱回収機62を備える。熱回収機62は、燃料電池61から回収した熱で700℃以上の水蒸気を発生させ、発生させた水蒸気をガス化反応器51へ供給する構成となっている。更に発電装置は、回収器54がガス化反応器51から回収したメソ多孔質粒子が保持する熱を回収する熱回収機65を備える。熱回収機65は、水蒸気等の熱媒体を利用して、回収した熱により、貯蔵器52が貯蔵する炭素担持体を予め加熱しておく構成となっている。発電装置のその他の構成は、図7に示した発電装置の構成と同様であり、対応する部分に同符号を付してその説明を省略する。
【0066】
供給機53は予めある程度の温度まで加熱された炭素担持体を貯蔵器52からガス化反応器51へ供給し、熱回収機62は700℃以上の水蒸気をガス化反応器51へ供給し、ガス化反応器51内で高温の水蒸気が炭素担持体に接触することにより、水素ガス及び一酸化炭素が発生する。発生した水素ガス及び一酸化炭素が脱硫器55及び改質器56を経て燃料電池61の燃料極に供給されることにより、燃料電池61は発電を行う。熱回収機62で燃料電池61からの排気ガスの熱を回収して高温の水蒸気を発生させることにより、水蒸気の含有率が高いガスをガス化反応器51へ供給して、効率良く水素ガス及び一酸化炭素を発生させることができる。また回収器54がガス化反応器51から回収したメソ多孔質粒子は、熱を保持しており、熱回収機65でメソ多孔質粒子の熱を回収して炭素担持体の予熱を行うことにより、発電装置の熱効率を向上させることができる。
【0067】
また、本発明の発電装置は、外部からのエネルギー供給により700℃以上の水蒸気を発生させる構成であってもよい。また図7及び図8には外部改質型の発電装置の例を示したが、本発明の発電装置は、燃料電池の燃料極へ炭素担持体及び水蒸気を供給し、燃料極上で水素ガス及び一酸化炭素を発生させて発電を行う内部改質型の発電装置であってもよい。また本発明の炭素担持体を利用して発生させた水素ガスは、燃料電池で利用することに限るものではなく、水性ガス化反応によって発生した水素ガスを回収してその他の用途に利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の炭素担持体の製造方法を示す概念図である。
【図2】炭素担持体の生成過程を模式的に示す模式図である。
【図3】炭素担持体を生成する実験に用いた実験装置の一部を示す概略図である。
【図4】実験で生成した炭素担持体及びタールの炭素量を測定した結果を示す特性図である。
【図5】炭素担持体の生成によってバイオマスから収得した炭素の収率を示す図表である。
【図6】炭素担持体の製造装置の構成例を示す模式的断面図である。
【図7】本発明の炭素担持体から発生した水素を用いて発電を行う本発明の発電装置の構成例を示すブロック図である。
【図8】本発明の発電装置の他の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0069】
11 反応管
31 熱分解炉(熱分解手段)
34 チャー回収部
35 燃焼炉
37 温度調節器
41 反応炉(浸透手段)
46 炭素担持体回収部
47 第1ガス回収部
48 第2ガス回収部
51 ガス化反応器
61 燃料電池
62 熱回収機
64 電力出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソ多孔質粒子の表面に、炭素を主成分とする炭素質固体が付着してなることを特徴とする炭素担持体。
【請求項2】
前記炭素質固体は、前記メソ多孔質粒子の1グラム当たり20ミリモル以上の炭素を含むことを特徴とする請求項1に記載の炭素担持体。
【請求項3】
前記メソ多孔質粒子の比表面積は、1グラム当たり200平方メートル以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素担持体。
【請求項4】
前記メソ多孔質粒子は、酸化アルミニウムを主成分とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の炭素担持体。
【請求項5】
前記メソ多孔質粒子は、表面に酸点を有するγ−アルミナで構成されていることを特徴とする請求項4に記載の炭素担持体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の炭素担持体を製造する方法であって、
生物由来有機物を400℃以上1000℃以下で熱分解し、
熱分解によって発生した気相成分を400℃以上1000℃以下でメソ多孔質粒子に接触させることによって、メソ多孔質粒子の表面に炭素質固体を析出させること
を特徴とする炭素担持体の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の炭素担持体を製造する方法であって、
生物由来有機物を400℃以上1000℃以下で熱分解し、
熱分解によって発生した気相成分を、400℃以上1000℃以下で複数のメソ多孔質粒子が集積した集積物に浸透させ、
前記集積物から、前記気相成分を浸透させたメソ多孔質粒子を取り出すこと
を特徴とする炭素担持体の製造方法。
【請求項8】
前記集積物に浸透させた後の気相成分を回収することを特徴とする請求項7に記載の炭素担持体の製造方法。
【請求項9】
熱分解により生物由来有機物から気相成分が分離した後の残渣を回収することを特徴とする請求項7又は8に記載の炭素担持体の製造方法。
【請求項10】
生物由来有機物を熱分解する際の温度及び/又は熱分解によって発生した気相成分を前記集積物に浸透させる際の温度を制御することにより、生物由来有機物に含まれる炭素を炭素担持体が収得する収率を調整することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一つに記載の炭素担持体の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の炭素担持体を製造する装置であって、
生物由来有機物を400℃以上1000℃以下で熱分解する熱分解手段と、
該熱分解手段によって発生した気相成分を、400℃以上1000℃以下で複数のメソ多孔質粒子が集積した集積物に浸透させる浸透手段と、
前記集積物から、前記気相成分を浸透させたメソ多孔質粒子を取り出す手段と
を備えることを特徴とする炭素担持体の製造装置。
【請求項12】
前記浸透手段が前記集積物に浸透させた後の少なくとも一部の気相成分を回収する手段と、
該手段が回収した前記気相成分を燃焼させる手段と、
該手段が燃焼により発生させた熱を利用して前記熱分解手段及び前記浸透手段の温度条件を制御する手段と
を更に備えることを特徴とする請求項11に記載の炭素担持体の製造装置。
【請求項13】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の炭素担持体に、温度が700℃以上の水蒸気を含むガスを接触させ、
発生する水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを回収すること
を特徴とするガス生成方法。
【請求項14】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の炭素担持体を集積した集積物に、温度が700℃以上の水蒸気を含むガスを通流させ、
発生する水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを回収し、
回収した水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを燃料電池の燃料極へ供給し、
前記水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを燃料極へ供給した燃料電池により発電を行うこと
を特徴とする発電方法。
【請求項15】
燃料極を有する燃料電池と、
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の炭素担持体を集積した集積物に、温度が700℃以上の水蒸気を含むガスを通流させる手段と、
該手段から発生する水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを回収する手段と、
該手段が回収した水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを前記燃料電池の燃料極へ供給する手段と、
該手段により前記水素ガス及び/又は一酸化炭素ガスを燃料極へ供給された前記燃料電池が発電する電力を出力する手段と
を備えることを特徴とする発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−132746(P2009−132746A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56746(P2006−56746)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(506074015)バイオコーク技研株式会社 (23)
【Fターム(参考)】