説明

炭素繊維モノフィラメント織編組織

【課題】 炭素繊維を使用して、全く新規な実用性ある布帛を提供する。
【課題手段】 直径10μm以下の炭素繊維モノフィラメントを単糸として使用し、1インチ間に5〜1500本の密度で有する炭素繊維編織布帛とした。この布帛は超薄布帛として、精密機器及び医療分野などに幅広く実用化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維モノフィラメントを単糸として使用した炭素繊維織編組織に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維は、金属等に比べて比重が小さく、弾性率が高く、熱伝導性があり、耐薬品性や耐熱性に優れ、生体適合性があり、導電性や電磁波シールド性などにも優れるという利点があるため、非常に幅広い用途に使用されている。
【0003】
一般に、炭素繊維はマルチフィラメント糸として供給され、一方向繊維や織物にして使用されることが多く、繊維の引張り強度は大きいが、結節強度が小さく、折れやすいという欠点がある。そのため、布帛形成には、例えば特許文献1に示されるように、通常、1K〜24K程度の繊維束としてプリプレグ製造用の織物などに使用されることが多く、炭素繊維モノフィラメントを単糸として使用したり、厚さ100μm以下の薄布に形成されたりすることはなかった。
【特許文献1】特開2003−268650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような炭素繊維を、モノフィラメント単独として使用し、全く新規な実用性ある布帛を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、炭素繊維を、直径10μm以下のモノフィラメントとして使用し、これを単糸として、1インチ間に5〜1500本の密度で有する炭素繊維編織布帛とすることによって、上記課題を解決した。
【0006】
かかる本発明では、厚さ20μm以下というような従来になく極めて薄い布帛を得ることが可能であり、かかる超薄布は、黒色の炭素繊維モノフィラメントからなるため、周囲に同化して、通常では視認できなくなるという意味で、透明性ある布帛となるが、高強度、高弾性率、熱伝導性、X線透過性、熱線吸収能、吸着能など炭素繊維本来の性能を十分に発揮しうるものである。
【0007】
更に、かかる布帛で補強した極薄強化プラスチックは、IT関連電子機器など超精密分野で、用途展開が可能となる。例えば、炭素繊維布帛で補強した強化プラスチックを、厚さ0.5mm以下、特に0.2mm以下という非常に薄いシートとして得ることも可能である。
【0008】
なお、本発明で使用する炭素繊維モノフィラメントの直径は、10μm以下であればよく、通常3μm以上、特に5〜10μm、7〜8μm程度であるのが好ましい。
【0009】
かかる炭素繊維モノフィラメントを用いた布帛は、織物であっても、編物であってもよく、レースやネット状のものであってもよい。通常、炭素繊維モノフィラメントを単糸として、1インチ間に5〜1500本の密度で有するようにするのが好ましく、特に8〜1000本程度の密度であるのが好ましい。
【0010】
なお、本発明の炭素繊維モノフィラメントからなる布帛は、強化プラスチックの補強材として有効に使用できる。例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂や、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂を含浸させ、又は積層して、極薄のシート状の強化プラスチックとすることができるのである。また、そのプリプレグを用いてパイプ状など3次元形状を有する強化プラスチック製品を得ることも可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の布帛は、炭素繊維からなるため、寸法安定性に優れ、機械的強度にも優れ、また、生体親和性、化学安定性、耐熱性、導電性など優れた特性を有するものである。しかも、炭素繊維を非常に細いモノフィラメントとして使用しているため、目視できないような超薄の布帛とすることができ、その結果、生体適合性繊維材料として、細胞成長を阻害せず、超高強度で、かつ柔軟性を有し、しかもその使用を目視的に感知させない状態で、非常に有効に使用可能となる。
また、本発明の厚さ20μm以下というような超薄布で補強した強化プラスチックは、厚さ0.5mm以下というような薄さでも、適度の強度を有し、しかも電導性、電波遮蔽性、熱線吸収能、X線透過性、熱伝導性、吸着能などの機能性あるシートとして、IT関連電子機器など超精密機器の分野で、広く使用されるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施例1
直径7μmの炭素繊維モノフィラメントを、経緯にそれぞれ12本/インチの密度で平織組織の織物とした。この織物は、10名のモニター確認によって、10名全てがその存在を視認できなかった。
この織物を生体適合性ある癒着防止膜として使用した。
【0013】
実施例2
直径7μmの炭素繊維モノフィラメントを、経緯にそれぞれ24本/インチの密度で平織組織の織物とした。
この織物に、シリコン樹脂を含浸して、厚さ0.2mmの強化プラスチックとした。これは耐熱性ある電導シートとして効果的に使用できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径10μm以下の炭素繊維モノフィラメントを単糸として、1インチ間に5〜1500本の密度で有する炭素繊維編織布帛。
【請求項2】
前記布帛の厚さが20μm以下である請求項1の炭素繊維編織布帛。
【請求項3】
請求項1又は2の炭素繊維編織布帛で補強した極薄強化プラスチック。
【請求項4】
前記積層体の厚さが0.5mm以下である請求項3の強化プラスチック。
【請求項5】
請求項1又は2の炭素繊維編織布帛からなる生体適合性繊維材料。
【請求項6】
前記布帛における炭素繊維モノフィラメントの密度が1インチ間10〜500本である請求項5の生体適合性繊維材料。

【公開番号】特開2006−118058(P2006−118058A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303759(P2004−303759)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(596053068)京都市 (26)
【出願人】(504050965)有限会社フクオカ機業 (4)
【出願人】(504389326)株式会社財木 (4)
【出願人】(394024411)
【Fターム(参考)】