説明

炭素繊維束の製造方法、および炭素繊維束の製造装置

【課題】ポリアクリロニトリル系前駆体繊維束の折れや厚み斑を防止するとともに、耐炎化炉内を走行するポリアクリロニトリル系前駆体繊維束の形態を安定に維持でき、メンテナンスが容易な炭素繊維束の製造方法および炭素繊維束の製造装置の提供。
【解決手段】耐炎化炉12の外側でポリアクリロニトリル系前駆体繊維束(繊維束)11を折り返しロール13により折り返し、耐炎化炉12内に走行させ耐炎化処理する工程と、繊維束11を炭素化処理する工程を有し、耐炎化炉12と折り返しロール13の間に溝が設けられた繊維束規制部材15を配置し繊維束11を繊維束規制部材15に通過させ、通過後の繊維束11の幅1mm当たりの見かけの平均繊度を2500〜5000dtexに保つ炭素繊維束の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維束の製造方法、および炭素繊維束の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系前駆体繊維束(以下、「前駆体繊維束」という。)を耐炎化する方法としては、図5に示すように、炭素繊維束の製造装置20に具備された耐炎化炉22の外側に折り返しロール23を配置し、前駆体繊維束21をジグザグ状に折り返して耐炎化炉22内を走行させ、耐炎化処理する方法が一般的である。耐炎化処理された前駆体繊維束は、炭素化手段24により炭素化処理されて炭素繊維束となる。
このような方法においては、折り返しロールとしてロール表面に溝が設けられた溝付きロールを多数使用し、前駆体繊維束を溝付きロールの溝内に案内することによって、前駆体繊維束を分離、独立させて、耐炎化処理される前駆体繊維束同士の絡み、折り返しロール乗り越え、処理斑等を防止する場合が多い。
【0003】
しかし、溝付きロールを使用しても、耐炎化処理される前駆体繊維束1本当たりのフィラメント数が多くなると、その断面形状が円形の場合、糸の最大厚みが大きくなり、蓄熱による糸切れが発生しやすくなるという問題があった。
糸切れの発生を抑制するには耐炎化処理の温度を下げればよいが、処理時間が長くかかりやすかった。また、耐炎化反応に必要な酸素が前駆体繊維束の内部にまで十分に拡散されにくくなり、内部と表面とで耐炎化の進行度が異なり、耐炎化処理の後に行われる炭素化処理において毛羽立ちや糸傷み等が発生することがあった。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、耐炎化炉の両側に配置された溝付きロールの溝形状を規定することによって、略矩形断面を有するポリアクリロニトリル系前駆体繊維束の平均扁平率と平均繊度を制御する方法、および装置が記載されている。これにより、均一な耐炎化進行度の耐炎化繊維束が得られ、後の炭素化処理での毛羽立ちや糸傷み等の発生を抑制し、高品質、高品位の炭素繊維束を得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−266024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、特に糸幅/糸厚み比で規定される平均扁平率が大きく、単位幅当たりの見かけの平均繊度が小さい前駆体繊維束の場合、溝付きロールを通過時に略矩形に保たれた前駆体繊維束の端が折れたり、厚み斑となったりすることがあった。その結果、耐炎化炉内を走行することで耐炎化斑や蓄熱による糸切れを引き起こすことがあった。
また、溝付きロールの溝内において、溝を形成する凸部のうち、片方の凸部の傾斜部に前駆体繊維束の走行位置がずれた場合、溝底部の端部を境に前駆体繊維束が折れやすくなり、走行する前駆体繊維束の形態が不安定になるという問題があった。
さらに、特許文献1に記載のように、折り返しロールとして溝付きロールを用いる場合、溝付きロールの交換が容易ではなく、メンテナンスが困難であった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を耐炎化処理するに際し、ポリアクリロニトリル系前駆体繊維束の折れや厚み斑を防止するとともに、耐炎化炉内を走行するポリアクリロニトリル系前駆体繊維束の形態を安定に維持できる炭素繊維束の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、ポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を耐炎化処理するに際し、ポリアクリロニトリル系前駆体繊維束の折れや厚み斑を防止し、耐炎化炉内を走行するポリアクリロニトリル系前駆体繊維束の形態を安定に維持でき、かつメンテナンスが容易な炭素繊維束の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の炭素繊維束の製造方法は、総繊度が14,000〜40,000dtexのポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を耐炎化炉の外側で、折り返しロールにより折り返して、前記耐炎化炉内に走行させ耐炎化処理する工程と、耐炎化処理されたポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を炭素化処理する工程とを有する炭素繊維束の製造方法において、前記耐炎化炉と折り返しロールとの間に、下記式(1)〜(3)を満足する溝が設けられた繊維束規制部材を配置し、前記耐炎化炉から送出したポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を繊維束規制部材に通過させ、前記繊維束規制部材を通過後のポリアクリロニトリル系前駆体繊維束の幅1mm当たりの見かけの平均繊度を2,500〜5,000dtexに保つことを特徴とする。
0.5≦b/a≦0.8 ・・・(1)
0.4×a≦h≦0.7×a ・・・(2)
0.45×(a−b)≦R≦0.8×(a−b) ・・・(3)
(式(1)〜(3)中、aは溝開口部の平均幅(mm)であり、bは溝底部の平均幅(mm)であり、hは溝の平均深さ(mm)であり、Rは溝底部の曲率半径(mm)である。)
【0009】
また、前記繊維束規制部材と折り返しロールとの中心間距離が150mm以上となるように、繊維束規制部材を折り返しロールの送入側に配置することが好ましい。
さらに、前記繊維束規制部材と折り返しロールとの中心間距離が350mm以上となるように、繊維束規制部材を折り返しロールの送出側に配置することが好ましい。
【0010】
また、本発明の炭素繊維束の製造装置は、総繊度が14,000〜40,000dtexのポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を耐炎化処理する耐炎化炉と、該耐炎化炉の外側でポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を折り返して、耐炎化炉内に走行させる折り返しロールと、耐炎化処理されたポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を炭素化処理する炭素化手段とを具備する炭素繊維束の製造装置において、前記耐炎化炉と折り返しロールとの間に、下記式(1)〜(3)を満足する溝が設けられた繊維束規制部材が配置されたことを特徴とする。
0.5≦b/a≦0.8 ・・・(1)
0.4×a≦h≦0.7×a ・・・(2)
0.45×(a−b)≦R≦0.8×(a−b) ・・・(3)
(式(1)〜(3)中、aは開口部の平均幅(mm)であり、bは溝底部の平均幅(mm)であり、hは溝の平均深さ(mm)であり、Rは溝底部の曲率半径(mm)である。)
【0011】
さらに、前記繊維束規制部材が前記折り返しロールの送入側に配置され、繊維束規制部材と折り返しロールとの中心間距離が150mm以上であることが好ましい。
また、前記繊維束規制部材が前記折り返しロールの送出側に配置され、繊維束規制部材と折り返しロールとの中心間距離が350mm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の炭素繊維束の製造方法によれば、ポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を耐炎化処理するに際し、ポリアクリロニトリル系前駆体繊維束の折れや厚み斑を防止するとともに、耐炎化炉内を走行するポリアクリロニトリル系前駆体繊維束の形態を安定に維持できる。
また、本発明の炭素繊維束の製造装置によれば、ポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を耐炎化処理するに際し、ポリアクリロニトリル系前駆体繊維束の折れや厚み斑を防止し、耐炎化炉内を走行するポリアクリロニトリル系前駆体繊維束の形態を安定に維持でき、かつメンテナンスが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の炭素繊維束の製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る繊維束規制部材の一例を示す正面図である。
【図3】繊維束規制部材の部分拡大図である。
【図4】本発明の炭素繊維束の製造装置の他の例を示す概略構成図である。
【図5】従来の炭素繊維束の製造装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の炭素繊維束の製造装置の一例を示す概略構成図である。この例の炭素繊維束の製造装置10は、ポリアクリロニトリル系前駆体繊維束(以下、「前駆体繊維束」という。)11を耐炎化処理する耐炎化炉12と、耐炎化炉12の外側で前駆体繊維束11を合計6回折り返して、前駆体繊維束を耐炎化炉12内に走行させる折り返しロール13と、耐炎化処理された前駆体繊維束11を炭素化処理する炭素化手段14とを具備する。そして、前記耐炎化炉12と折り返しロール13との間には、繊維束規制部材15が配置されている。
【0015】
本発明に用いられる前駆体繊維束11としては、アクリロニトリル系重合体からなる繊維を束ねたものが挙げられる。アクリロニトリル系重合体としては、アクリロニトリルのホモポリマーおよび/またはアクリロニトリルと共重合可能なモノマーとの共重合体を用いることができる。
また、本発明に用いられる前駆体繊維束11は、総繊度が14,000〜40,000dtexである。前駆体繊維束の総繊度が14,000dtex以上であれば、断面形状を円形から略矩形にすることで前駆体繊維束の厚みの抑制量が大きくなり、蓄熱による糸切れ防止などにつながる。一方、総繊度が40,000dtex以下であれば、幅1mm当たりの見かけの平均繊度の範囲から、前駆体繊維束の幅が広くなりすぎず、形態を安定に維持することが容易となる。
本発明は、特に総繊度が20,000〜30,000dtexの前駆体繊維束を耐炎化処理するのに好適である。
【0016】
耐炎化炉12内を走行する前駆体繊維束11の断面形状は略矩形に保たれ、その平均扁平率が10〜50の範囲に制御されるのが好ましい。平均扁平率が10未満であると、前駆体繊維束11の厚みが増大し、耐炎化処理での反応による蓄熱で糸切れ等が起こりやすくなる。また、平均扁平率が50を超えると前駆体繊維束11の幅が増大するため、耐炎化炉12幅に対して処理可能な前駆体繊維束11の本数が減少し、設備生産性が低下する。従って、前駆体繊維束11は平均扁平率が10〜50の範囲に制御されるのが好ましく、より好ましくは15〜35の範囲である。
ここで、「略矩形」とは、略平行な2組の直線で囲まれた形状を指し、角が曲線であっても構わない。
【0017】
略矩形の前駆体繊維束の平均扁平率は以下のようにして定義した。
一般に知られるレーザー変位計をアクチュエータにより20mm/sの速度にてトウの幅方向に渡ってスライドさせながら、前駆体繊維束の厚みをサンプリング周期10ミリ秒毎にて測定する。同様の測定を1サンプルにつき5回行い、それを平均して繊維束厚みAとする。
また、走行する前駆体繊維束の駆動を止めて、ノギスを用いて前駆体繊維束の幅を長手方向に5cmの間隔で5点測定し、それを平均して繊維束幅Bとする。
繊維束幅Bを繊維束厚みAで除した値(B/A)を平均扁平率とする。
【0018】
耐炎化炉12は、前駆体繊維束11を耐炎化処理する手段である。耐炎処理温度は200〜300℃が好ましい。
耐炎化炉12の対面する側壁には、前駆体繊維束11が送入または送出するスリット状の送入口または送出口(図示略)が設けられている。このような耐炎化炉12としては、炭素繊維束を製造する際に用いられる公知の耐炎化炉を使用できる。
【0019】
折り返しロール13は、耐炎化炉12の外側に回転可能に設けられている。折り返しロール13は、耐炎化炉12から送出された前駆体繊維束11を掛け回して折り返すことにより、前駆体繊維束11の走行方向を逆方向に転換させ、再び耐炎化炉12内に走行させる。
折り返しロール13としては、軸方向に対して直線状である平ロールが適している。また、折り返しロール13の材質としては特に限定されず、例えば炭素鋼、ステンレス鋼、セラミックス、アルミニウム、チタンなどが挙げられる。
【0020】
繊維束規制部材15は、耐炎化炉12と折り返しロール13との間に配置されている。
ここで、繊維束規制部材15について、図2、3を用いて具体的に説明する。図2は繊維束規制部材15の一例を示す正面図であり、図3は繊維束規制部材15の部分拡大図である。
繊維束規制部材15の表面には、前駆体繊維束の進行方向に沿って延びる複数の溝151が設けられている。図3に示すように、繊維束規制部材15の表面には、複数の凸部152が離間して設けられ、溝151が形成されている。凸部152は、溝151に面する壁面153a、153bと、先端部154を有する。また、溝151の溝底部155は、その端部156a、156bが曲率半径R’の曲面状である。
【0021】
繊維束規制部材15に設けられた溝151は、下記式(1)〜(3)を満たす。
0.5≦b/a≦0.8 ・・・(1)
0.4×a≦h≦0.7×a ・・・(2)
0.45×(a−b)≦R≦0.8×(a−b) ・・・(3)
【0022】
式(1)〜(3)中、aは溝開口部158の平均幅(mm)であり、bは溝底部155の平均幅(mm)であり、hは溝151の平均深さ(mm)であり、Rは溝底部155の曲率半径(mm)である。
ここで、溝開口部158の幅とは、図3に示すように、隣接する凸部152の先端部154間の幅(凸部の先端部から、隣接する凸部の先端部までの距離a’)のことである。溝開口部158の平均幅は、距離a’を10点測定し、これらの値を平均したものである。
溝底部155の幅とは、図3に示すように、溝底部155の端部156aの形状を形成する曲率半径R’の円と、溝151に面する壁面153aとの接点157aから、端部156bの形状を形成する曲率半径R’の円と、溝151に面する壁面153bとの接点157bまでの距離b’のことである。溝底部155の平均幅は、距離b’を10点測定し、これらの値を平均したものである。
溝151の深さとは、図3に示すように、凸部152の先端部154から溝底部155までの距離h’のことである。溝151の平均深さは、距離h’を10点測定し、これらの値を平均したものである。
溝底部155の平均曲率半径は、曲率半径R’を10点測定し、これらの値を平均したものである。
【0023】
本発明者らは鋭意検討した結果、前駆体繊維束の断面形状を略矩形に保つには、溝底部155の曲率半径R’を規定し、溝底部155に幅をもたせることが重要であることを見出した。
すなわち、溝開口部158の平均幅(a)と、溝底部155の平均幅(b)の比(b/a)が0.5未満であると、溝151の形状がV字状に近づき、前駆体繊維束の断面形状を略矩形に保持しにくくなる。一方、b/aが0.8を越えると、凸部152の壁面153a、153bの傾きが溝底部155に対して大きくなり、走行中の前駆体繊維束の端が折れやすくなり、前駆体繊維束の形態維持性が低下する。b/aは0.55〜0.65が好ましい。
【0024】
溝151の平均深さ(h)が溝開口部158の平均幅(a)の0.4倍未満であると、走行中の前駆体繊維束の一部が溝151を乗り越える場合があり、隣接する前駆体繊維束同士が絡んで毛羽立ちを生じることがある。一方、hが溝開口部158の平均幅(a)の0.7倍を超えると、溝151の断面積に対する前駆体繊維束の断面積が小さくなり、加工コストが増大して経済的ではない。hは0.45×a〜0.55×aが好ましい。
【0025】
溝底部155の平均曲率半径(R)が0.45×(a−b)未満であると、前駆体繊維束の端が折れやすくなったり、溝底部155の端部156a、156bにおいて前駆体繊維束に厚み斑が生じたりしやすくなる。一方、Rが0.8×(a−b)を超えると、溝底部155の幅に対して、端部156a、156bの形状を形成する円の半径が大きくなりすぎ、前駆体繊維束が溝151を乗り越える場合があり、隣接する前駆体繊維束同士が絡んで毛羽立ちを生じることがある。また、Rが大きくなると、凸部152の壁面153a、153bと、溝底部155とが滑らかにつながりにくくなり、前駆体繊維束の端が折れる原因となる可能性がある。Rは0.45×(a−b)〜0.65×(a−b)が好ましい。
【0026】
なお、溝底部155は図2、3に示すような平底に限定されず、円弧状であてもよい。円弧状であれば、前駆体繊維束の幅方向の走行の振れを抑制しやすくなり、走行位置制御性の向上が図れる。
【0027】
図1に示すように、繊維束規制部材15が折り返しロール13の送入側に配置される場合、繊維束規制部材15と折り返しロール13との中心間距離W1が150mm以上であることが好ましい。前駆体繊維束11は、繊維束規制部材15の通過時に溝に沿った形状となるため、中心間距離W1が150mm未満であると、前駆体繊維束11の幅が狭まった状態で折り返しロール13に到達し、次いで耐炎化炉12へ投入される可能性がある。中心間距離W1は200mm以上がより好ましい。中心間距離W1は、繊維束規制部材15を耐炎化炉12の外に配置している限り長くても構わないが、550mm以下が好ましい。
【0028】
また、図4に示すように、繊維束規制部材15が折り返しロール13の送出側に配置される場合、繊維束規制部材15と折り返しロール13との中心間距離W2が350mm以上であることが好ましい。折り返しロール13の送出側で前駆体繊維束を制御する場合、前駆体繊維束の幅方向の拘束力が強いため、中心間距離W2が350mm未満であると、前駆体繊維束が溝を乗り越えやすくなる。中心間距離W2は450mm以上がより好ましい。中心間距離W2は、繊維束規制部材15を耐炎化炉12の外に配置している限り長くても構わないが、700mm以下が好ましい。
【0029】
繊維束規制部材15の形態としては、図2に示すようなロール状(溝付きロール)でも、プレートに同溝を加工したプレート状(溝付きプレート)でもよく、前記式(1)〜(3)を満足する溝形状を有したものであれば何ら差し支えない。
また、繊維束規制部材15の材質としては特に限定されず、例えば炭素鋼、ステンレス鋼、セラミックス、アルミニウム、チタンなどが挙げられる。
【0030】
炭素化手段14は、耐炎化処理された前駆体繊維束11を炭素化処理する手段である。炭素化処理の温度は600℃を超える温度が好ましい。
炭素化手段14としては、炭素繊維束を製造する際に用いられる公知の炭素化炉を使用できる。
【0031】
図1に示す炭素繊維の製造装置1を用いた炭素繊維の製造方法では、前駆体繊維束11を耐炎化炉12にて、例えば200〜300℃の温度で耐炎化処理し、次いで炭素化手段14にて、例えば600℃を超える温度で炭素化処理することで、炭素繊維束を製造できる。
【0032】
具体的には、前駆体繊維束11は、耐炎化炉12の側壁内に設けられたスリット状の送入口(図示略)から送入され、耐炎化炉12を直線的に走行した後、対面の側壁に設けられたスリット状の送出口(図示略)から耐炎化炉12の外側に一旦送出される。次いで、繊維束規制部材15を通過する際に束毎に繊維束規制部材15の溝151に押し込まれて、前駆体繊維束の幅が任意の幅になるように規制されながら移送される。そして、折り返しロール13によって折り返され走行方向を転換し、再び耐炎化炉12内に送入される。このように、前駆体繊維束11は、繊維束規制部材15を通過することによって走行位置や断面形状を規制されつつ、折り返しロール13によって走行方向を複数回折り返すことで、耐炎化炉12内への送入送出を複数回繰り返しながら、耐炎化炉12内を全体として図1の上から下に向けて移動し、耐炎化処理される。耐炎化処理された前駆体繊維束(耐炎化繊維束)は、炭素化手段14によって炭素化処理され、炭素繊維束が得られる。
なお、炭素繊維束を製造する際は、前駆体繊維束を複数本平行に並べ、同時に耐炎化炉および炭素化手段内を走行させて、耐炎化処理および炭素化処理してもよい。
【0033】
繊維束規制部材15を通過した前駆体繊維束は、該前駆体繊維束の幅1mm当たりの見かけの平均繊度が2,500〜5,000dtexに保たれる。見かけの平均繊度が2,500dtex未満であると、処理可能な前駆体繊維束の本数が少なくなり、設備生産性が低下する。一方、見かけの平均繊度が5,000dtexを超えると、厚みが増大して耐炎化反応による蓄熱で毛羽立ちや糸切れが発生しやすくなる。前駆体繊維束の幅1mm当たりの見かけの平均繊度は、2,900〜4,200dtexに保たれるのが好ましい。
【0034】
本発明によれば、前駆体繊維束の幅1mm当たりの見かけの平均繊度を上記範囲内に保つことができるので、耐炎化処理温度を下げることなく、耐炎化反応の蓄熱による毛羽立ちや糸切れの発生を抑制でき、生産性を良好に維持できる。さらに、耐炎化反応に必要な酸素が前駆体繊維束の内部にまで十分に拡散されるので、内部と表面とで均一に耐炎化が進行しやすくなる。よって、炭素化処理において毛羽立ちや糸傷み等の発生を抑制できる。
【0035】
また、耐炎化炉12内を走行する前駆体繊維束は、耐炎化炉12前後に設置される駆動ローラーやニップローラー等の駆動装置(図示略)によって2×10−2〜2.1×10−1g/dtexの張力を付与されるのが好ましい。張力が5.2×10−2g/dtex未満であると、前駆体繊維束が懸垂し耐炎化炉の底にこすれて毛羽が発生し、後の炭素化処理で得られる炭素繊維束の品位、および引張り強度低下を招くおそれがある。一方、張力が2.1×10−1g/dtexを超えると、耐炎化処理での単糸切れによる毛羽立ちが増長し、ロール上で巻付きを発生するおそれがある。耐炎化炉内にて安定して耐炎化処理するには、前駆体繊維束にかかる張力を1×10−1〜1.7×10−1g/dtexとするのがより好ましい。
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、前駆体繊維束を耐炎化処理するに際し、溝の形状を規定した繊維束規制部材を用いることで、前駆体繊維束の走行位置を規制するとともに、前駆体繊維束の断面形状を略矩形に維持しつつ、平均繊度を所望の値に保つことができる。従って、耐炎化処理するに際し、特に繊維束規制部材通過時の前駆体繊維束の折れや厚み斑を防止でき、かつ耐炎化炉内を走行する前駆体繊維束の形態を安定に維持できる。
従って、本発明によれば、耐炎化処理中の糸切れや毛羽立ちを抑制でき、安定して高品位の炭素繊維束を製造できる。また、耐炎化炉と折り返しロールの間に繊維束規制部材を配置することで、繊維束規制部材の交換が簡便となり、メンテナンスが容易であるため、作業性の向上を図れる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
各種測定方法は、以下の通りである。
【0038】
(平均扁平率)
レーザー変位計(株式会社キーエンス製、「LK−G10」)をアクチュエータ(THK株式会社製、「KT45」)により20mm/sの速度にてトウの幅方向に渡ってスライドさせながら、前駆体繊維束の厚みをサンプリング周期10ミリ秒毎にて測定した。同様の測定を1サンプルにつき5回行い、それを平均して繊維束厚みAとした。
また、走行する前駆体繊維束の駆動を止めて、ノギスを用いて前駆体繊維束の幅を長手方向に5cmの間隔で5点測定し、それを平均して繊維束幅Bとした。
繊維束幅Bを繊維束厚みAで除した値(B/A)を平均扁平率とした。
【0039】
(平均繊度)
前駆体繊維束の幅1mmに対する見かけの平均繊度は、前駆体繊維束の総繊度を前記ノギスを用いて測定した繊維束幅Bで除することにより求めた。
【0040】
(張力)
前駆体繊維束にかかる張力は、走行する前駆体繊維束をテンションメータ(日本電産シンポ株式会社製、「DTMB」)により測定した。
【0041】
[実施例1]
炭素繊維束の製造装置として、図1に示す装置を用いた。耐炎化炉12と折り返しロール13の間には、繊維束規制部材15としてa=10mm、b=6.5mm、h=5mm、R=2.5mm[すなわち、b/a=0.65、h=0.50×a、R=0.71×(a−b)]の溝が表面に設けられた溝付きロールAを配置した。溝付きロールAは、折り返しロール13との中心間距離が450mmとなるように、折り返しロール13の送入側に配置した。
そして、総繊度が28,800dtexのポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を用い、炭素繊維束を製造した。
前駆体繊維束が溝付きロールAを通過したときの形態を観察し、平均扁平率、前駆体繊維束の幅1mmに対する見かけの平均繊度、前駆体繊維束にかかる張力を求めた。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例2]
繊維束規制部材として、a=8mm、b=4.8mm、h=4mm、R=1.5mm[すなわち、b/a=0.60、h=0.50×a、R=0.47×(a−b)]の溝が表面に設けられた溝付きロールBを用いた以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を製造した。
前駆体繊維束が溝付きロールAを通過したときの形態を観察し、平均扁平率、前駆体繊維束の幅1mmに対する見かけの平均繊度、前駆体繊維束にかかる張力を求めた。結果を表1に示す。
【0043】
[実施例3]
繊維束規制部材として、a=8mm、b=4.8mm、h=4mm、R=1.5mm[すなわち、b/a=0.60、h=0.50×a、R=0.47×(a−b)]の溝が表面に設けられた溝付きプレートAを用いた以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を製造した。
前駆体繊維束が溝付きプレートAを通過したときの形態を観察し、平均扁平率、前駆体繊維束の幅1mmに対する見かけの平均繊度、前駆体繊維束にかかる張力を求めた。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例1および2のように、上記式(1)〜(3)を満たす形状を有する溝が設けられた溝付きロールで前駆体繊維束の走行位置や形態を制御した場合、前駆体繊維束の端の折れや厚み斑、溝とび(溝乗り越え)等のトラブルは発生しなかった。また、表1の結果は、同じ形状の溝が設けられた溝付きロールと溝付きプレートの糸条形態制御性は同等であり、溝を加工する部材によって大きな差異がないことを示している。
【0046】
[実施例4]
溝付きロールAと折り返しロール13との中心間距離が250mmとなるように、溝付きロールAを折り返しロール13の送入側に配置した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を製造した。
前駆体繊維束が溝付きロールAを通過したときの形態を観察し、平均扁平率、前駆体繊維束の幅1mmに対する見かけの平均繊度、前駆体繊維束にかかる張力を求めた。結果を表2に示す。
【0047】
[実施例5]
繊維束規制部材として溝付きロールBを用い、溝付きロールBと折り返しロール13との中心間距離が250mmとなるように、溝付きロールBを折り返しロール13の送入側に配置した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を製造した。
前駆体繊維束が溝付きロールBを通過したときの形態を観察し、平均扁平率、前駆体繊維束の幅1mmに対する見かけの平均繊度、前駆体繊維束にかかる張力を求めた。結果を表2に示す。
【0048】
[比較例1]
繊維束規制部材としてa=10mm、b=6.8mm、h=5mm、R=3mm[すなわち、b/a=0.68、h=0.50×a、R=0.94×(a−b)]の溝が表面に設けられた溝付きロールCを用い、溝付きロールCと折り返しロール13との中心間距離が250mmとなるように、溝付きロールCを折り返しロール13の送入側に配置した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を製造した。
前駆体繊維束が溝付きロールCを通過したときの形態を観察し、平均扁平率、前駆体繊維束の幅1mmに対する見かけの平均繊度、前駆体繊維束にかかる張力を求めた。結果を表2に示す。
【0049】
[比較例2]
繊維束規制部材としてa=8mm、b=4.5mm、h=4mm、R=1mm[すなわち、b/a=0.56、h=0.50×a、R=0.29×(a−b)]の溝が表面に設けられた溝付きロールDを用い、溝付きロールDと折り返しロール13との中心間距離が250mmとなるように、溝付きロールDを折り返しロール13の送入側に配置した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を製造した。
前駆体繊維束が溝付きロールDを通過したときの形態を観察し、平均扁平率、前駆体繊維束の幅1mmに対する見かけの平均繊度、前駆体繊維束にかかる張力を求めた。結果を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
溝付きロールA、またはBの通過後と折り返しロール上での前駆体繊維束の形態を観察したところ、前駆体繊維束の形態は制御されていた。また、実施例4、5では、前駆体繊維束の幅方向に溝付きロールA、またはBの設置位置をずらし、繊維束規制部材の凸部の壁面に片あたりさせて走行させたが、前駆体繊維束の形態は制御可能であった。
一方、比較例1の場合、溝付きロールCの通過後と折り返しロール上での前駆体繊維束の形態を観察したところ、前駆体繊維束の形態は制御されていたが、前駆体繊維束の幅方向に溝付きロールCの設置位置をずらし、繊維束規制部材の凸部の壁面に片あたりさせて走行させた場合、前駆体繊維束の端が厚くなり厚み斑が生じた。
比較例2の場合、溝付きロールDの通過後と折り返しロール上での前駆体繊維束の形態を観察したところ、前駆体繊維束の形態は制御されていたが、前駆体繊維束の幅方向に溝付きロールDの設置位置をずらし、繊維束規制部材の凸部の壁面に片あたりさせて走行させた場合、前駆体繊維束の端が折れた状態で折り返しロールを通過する結果となった。
以上の結果より、上記式(1)、(2)を満足する溝であっても、繊維束規制部材の凸部の壁面と溝底部を滑らかに接続する曲率半径Rでなければ、特に前駆体繊維束が片あたりして走行した場合に前駆体繊維束の端が折れたり、厚み斑が生じたりするなどのトラブルが発生することになる。従って、上記式(3)を満足する範囲内に平均曲率半径Rを設定する必要がある。
【0052】
[実施例6〜9]
繊維束規制部材として溝付きロールBを用い、溝付きロールBと折り返しロール13との中心間距離が表3に示す値になるように、溝付きロールBを折り返しロール13の送入側に配置した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を製造した。
前駆体繊維束が溝付きロールBを通過したときの形態を観察し、溝付きロールBを通過する前の平均扁平率、前駆体繊維束の幅1mmに対する見かけの平均繊度、前駆体繊維束にかかる張力を求めた。結果を表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
折り返しロールの送入側に繊維束規制部材を配置する場合、前駆体繊維束は繊維束規制部材通過時に溝に沿った形状になり、走行位置規制と前駆体繊維束の形態制御がなされる。そして繊維束規制部材通過後に略矩形の形状に戻り、折り返しロールを通過する。特に、折り返しロールと繊維束規制部材の中心間距離が150mm以上となるように、溝付きロールBを配置した実施例6〜8では、トラブルもなく前駆体繊維束の走行位置および断面形状を容易に制御できた。
なお、実施例9では、折り返しロール上での前駆体繊維束の幅が、繊維束規制部材を設置しない時に比較して0.8〜0.9倍程度に収縮した状態で通過する結果となった。実施例9の場合、前駆体繊維束の断面形状が実施例6〜8に比べると若干略矩形に戻りにくくなり、前駆体繊維束の端が厚みをもち、幅の狭まった状態で折り返しロールに到達し、次いで耐炎化炉内に送入された。
従って、前駆体繊維束の断面形状を略矩形により制御しやすくするには、折り返しロールと繊維束規制部材の中心間距離を150mm以上に設定するのが好ましい。
【0055】
[実施例10〜13]
繊維束規制部材として溝付きロールBを用い、溝付きロールBと折り返しロール13との中心間距離が表4に示す値になるように、溝付きロールBを折り返しロール13の送出側に配置した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を製造した。
前駆体繊維束が溝付きロールBを通過したときの形態を観察し、溝付きロールBを通過する前の平均扁平率、前駆体繊維束の幅1mmに対する見かけの平均繊度、前駆体繊維束にかかる張力を求めた。結果を表4に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
折り返しロールの送出側に繊維束規制部材を配置する場合、前駆体繊維束が折り返しロールによって拘束されるため、折り返しロールの送入側に繊維束規制部材を配する場合と比較して、中心間距離が長くなるように設定するのが好ましい。特に、折り返しロールと繊維束規制部材の中心間距離が350mm以上となるように、溝付きロールBを配置した実施例10〜12では、トラブルもなく前駆体繊維束の走行位置および断面形状を容易に制御できた。
なお、実施例13では、実施例10〜12に比べると走行位置制御性が若干低下し溝とび(溝乗り越え)が発生した。
従って、前駆体繊維束の走行位置および断面形状をより制御しやすくするには、折り返しロールと繊維束規制部材の中心間距離を350mm以上に設定するのが好ましい。
【符号の説明】
【0058】
10:炭素繊維束の製造装置、
11:前駆体繊維束、
12:耐炎化炉、
13:折り返しロール、
14:炭素化手段、
15:繊維束規制部材、
151:溝、
155:溝底部、
158:溝開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
総繊度が14,000〜40,000dtexのポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を耐炎化炉の外側で、折り返しロールにより折り返して、前記耐炎化炉内に走行させ耐炎化処理する工程と、
耐炎化処理されたポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を炭素化処理する工程とを有する炭素繊維束の製造方法において、
前記耐炎化炉と折り返しロールとの間に、下記式(1)〜(3)を満足する溝が設けられた繊維束規制部材を配置し、前記耐炎化炉から送出したポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を繊維束規制部材に通過させ、
前記繊維束規制部材を通過後のポリアクリロニトリル系前駆体繊維束の幅1mm当たりの見かけの平均繊度を2,500〜5,000dtexに保つ、炭素繊維束の製造方法。
0.5≦b/a≦0.8 ・・・(1)
0.4×a≦h≦0.7×a ・・・(2)
0.45×(a−b)≦R≦0.8×(a−b) ・・・(3)
(式(1)〜(3)中、aは溝開口部の平均幅(mm)であり、bは溝底部の平均幅(mm)であり、hは溝の平均深さ(mm)であり、Rは溝底部の曲率半径(mm)である。)
【請求項2】
前記繊維束規制部材と折り返しロールとの中心間距離が150mm以上となるように、繊維束規制部材を折り返しロールの送入側に配置する、請求項1に記載の炭素繊維束の製造方法。
【請求項3】
前記繊維束規制部材と折り返しロールとの中心間距離が350mm以上となるように、繊維束規制部材を折り返しロールの送出側に配置する、請求項1に記載の炭素繊維束の製造方法。
【請求項4】
総繊度が14,000〜40,000dtexのポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を耐炎化処理する耐炎化炉と、
該耐炎化炉の外側でポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を折り返して、耐炎化炉内に走行させる折り返しロールと、
耐炎化処理されたポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を炭素化処理する炭素化手段とを具備する炭素繊維束の製造装置において、
前記耐炎化炉と折り返しロールとの間に、下記式(1)〜(3)を満足する溝が設けられた繊維束規制部材が配置された、炭素繊維束の製造装置。
0.5≦b/a≦0.8 ・・・(1)
0.4×a≦h≦0.7×a ・・・(2)
0.45×(a−b)≦R≦0.8×(a−b) ・・・(3)
(式(1)〜(3)中、aは溝開口部の平均幅(mm)であり、bは溝底部の平均幅(mm)であり、hは溝の平均深さ(mm)であり、Rは溝底部の曲率半径(mm)である。)
【請求項5】
前記繊維束規制部材が前記折り返しロールの送入側に配置され、繊維束規制部材と折り返しロールとの中心間距離が150mm以上である、請求項4に記載の炭素繊維束の製造装置。
【請求項6】
前記繊維束規制部材が前記折り返しロールの送出側に配置され、繊維束規制部材と折り返しロールとの中心間距離が350mm以上である、請求項4に記載の炭素繊維束の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−6804(P2011−6804A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149701(P2009−149701)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】