説明

炭素繊維束

【課題】強度、剛性等の機械的特性に優れるとともに、開繊性に優れた炭素繊維束を提供すること。
【解決手段】パラレルプレート型粘度計により、190℃においてせん断速度10ラジアン/秒で測定した溶融粘度が異なる2種以上のポリアミドが付着した炭素繊維束。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭素繊維束等に関する。さらに詳しくは、特定のポリアミドが付着した炭素繊維束等に関する。また、本発明は、当該炭素繊維束を含む炭素繊維強化樹脂組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維は、軽量で高強度、高弾性な力学的性質を持ち、炭素繊維束は複数(通常は多数)の炭素繊維から構成される。炭素繊維又は炭素繊維束は、マトリックス樹脂と複合させて繊維強化複合材料として用いられることが多い。
【0003】
炭素繊維束は、通常、直径が数ミクロンのモノフィラメント(炭素繊維)から構成されているが、伸度が小さい等の理由のため、機械的摩擦等などによって毛羽が発生しやすく、取り扱いが問題になることが多い。このため、炭素繊維束は、一般に炭素繊維用サイジング剤によりサイジング処理を施されてから使用される(特許文献1および2参照)。
【0004】
炭素繊維用サイジング剤でサイジング処理を行うことにより、炭素繊維どうしの収束性を高められる。つまり、サイジング処理により、束になった炭素繊維束からフィラメントがはみでることを抑え、毛羽立ちを抑制することができる。またさらに、サイジング処理により、炭素繊維又は炭素繊維束の物理的特性を向上させることができる場合がある。また、炭素繊維表面に付着したサイジング剤を通じて、マトリックス樹脂との相溶性を高め、マトリックス樹脂と炭素繊維の接着性を高めることもできる。
【0005】
炭素繊維と複合化させるマトリックス樹脂としては、大きくは熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂に大別される。特に熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とする場合、熱硬化性樹脂と比較して高靭性の複合化材料を得やすい他、リサイクル性能等の成形性に優れるため、利用価値が大きい。
【0006】
このような熱可塑性樹脂との相溶性を高める炭素繊維用サイジング剤としては、ポリアミドをベースとしたものが挙げられる。ポリアミド系炭素繊維用サイジング剤で処理された炭素繊維はポリアミドやポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート等の各種の熱可塑性樹脂との相溶性に優れるため好ましい。
【0007】
また、炭素繊維用サイジング剤には、水溶性ポリアミドを水等に溶解させた溶液タイプのものの他、ポリウレタン型の重合体樹脂を水等に分散させた分散液タイプのものがある。分散液タイプのものを使用した場合、溶液タイプのものを使用する場合と比較して、炭素繊維の表面あるいは炭素繊維束の空隙に、より強く樹脂を固着させることができるため、炭素繊維または炭素繊維束の耐熱性や物理的特性を大幅に向上させることが可能となりえる。このことから、最近、特に分散液タイプのサイジング剤が求められている。
【0008】
一方、炭素繊維束を用いた複合化材料は、自動車や航空機向け材料等、用途拡大が進む中で、製品の軽量化志向や高性能化志向が強まり、複合化材料の薄物化や厚みの均一化等、複合化材料の加工性に関する要求が強くなっており、こうした背景の中、一度サイジング処理を行い集束させた炭素繊維束を、効率よく開繊する技術が求められている。なお、ここでいう炭素繊維束を用いた複合化材料とは、炭素繊維束及びマトリックス樹脂等を配合させて得られる繊維強化樹脂組成物そのもの、及び当該組成物を成形する等して得られる材料のことをいう。
【0009】
このような炭素繊維束の開繊性を改良する技術に関しての検討も進められている(特許文献3および4参照)。しかしながら、ポリアミド系水性分散液によりサイジング処理した炭素繊維束は、炭素繊維が密接に集束しやすい傾向(収束性)が強く、剛性が強くなりすぎる傾向があるため、耐熱性や物理的特性に優れる反面、開繊性が悪く、このため複合化材料中での均一性に劣るという問題があった。また、複合化材料中での均一性が劣るために、炭素繊維の分散性に疎、密な部分ができることとなり、結果として複合化材料を得るための成形性に劣る(例えば疎の部分に応力の負荷が集中して複合体全体の強度が低下する)等という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−214334号公報
【特許文献2】特開2004−360164号公報
【特許文献3】特開2003−3376号公報
【特許文献4】特開平1−292038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、強度、剛性等の機械的特性に優れるとともに、開繊性に優れた炭素繊維束を提供することにある。さらには、マトリックス樹脂等と混合して繊維強化樹脂組成物(ひいては複合化材料)を得た際、当該組成物の成形性が優れる炭素繊維束(つまり、開繊性に優れる炭素繊維束)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねてきた。その結果、特定のポリアミドを炭素繊維束に付着させることにより、強度、剛性等の機械的特性に優れるとともに、開繊性に優れた炭素繊維束が得られることを見出し、更に研究を重ねて本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、例えば以下の項に記載の炭素繊維束、炭素繊維強化樹脂組成物、及び複合化材料を包含する。
項1.
パラレルプレート型粘度計により、190℃においてせん断速度10ラジアン/秒で測定した溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドが付着した炭素繊維束。
項2.
溶融粘度の最も高いポリアミドと最も低いポリアミドの溶融粘度の差が、10〜1800Pa・sである項1に記載の炭素繊維束。
項3.
ポリアミドが、溶融粘度10〜2000Pa・sのポリアミドである、項1又は2に記載の炭素繊維束。
項4.
溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドが、ジアミンとジカルボン酸とが重縮合したポリアミド、ω−アミノ−ω′カルボン酸が重縮合したポリアミド、及び環状ラクタムが開環重合したポリアミドからなる群より選択される、溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドである、項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維束。
項5.
溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドが、−[NH(CHCO]−、−[NH(CHNHCO(CHCO]−、−[NH(CHNHCO(CHCO]−、−[NH(CH10CO]−、−[NH(CH11CO]−、および−[NH(CHNHCO−D−CO]−(式中Dは炭素数34の不飽和炭化水素を示す)からなる群より選択される少なくとも1種又は2種以上を構造単位とするポリアミドから選ばれる、溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドである、項4に記載の炭素繊維束。
項6.
溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドが、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、6/66共重合ナイロン、6/610共重合ナイロン、6/11共重合ナイロン、6/12共重合ナイロン、6/66/11共重合ナイロン、6/66/12共重合ナイロン、6/66/11/12共重合ナイロン、及び6/66/610/11/12共重合ナイロンからなる群より選択される、溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドである、項5に記載の炭素繊維束。
項7.
溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドが、いずれも6/66/12共重合ナイロンである、項6に記載の炭素繊維束。
項8.
ポリアミド水性分散液を用いてポリアミドを付着させたことを特徴とする、項1〜7のいずれかに記載の炭素繊維束。
項9.
溶融粘度のより低いポリアミドを付着させた後、溶融粘度のより高いポリアミドを付着させることにより得られる、項1〜8のいずれかに記載の炭素繊維束。
項10.
項1〜9のいずれかに記載の炭素繊維束、及びマトリックス樹脂を含有する、炭素繊維強化樹脂組成物。
項11.
マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂である、項10に記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
項12.
項10又は11に記載の炭素繊維強化樹脂組成物から得られる複合化材料。
【発明の効果】
【0014】
本発明の炭素繊維束は、溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドが付着しており、強度、剛性等の機械的特性に優れるとともに、開繊性に優れている。また、本発明の炭素繊維束は、マトリックス樹脂等と混合して繊維強化樹脂組成物(ひいては複合化材料)とした際、当該組成物の成形性が優れるという効果も奏するため、複合化材料を成形するのに有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に用いられるポリアミドとしては、公知のもの、又は公知の方法で製造されたものを用いることができる。市販されているものを用いてもよい。
【0016】
より具体的には、本発明に用いられるポリアミドとしては、例えば、ジアミンとジカルボン酸との重縮合、ω−アミノ−ω′カルボン酸の重縮合、又は環状ラクタムの開環重合、等の方法で製造されたポリアミドが挙げられる。つまり、ジアミンとジカルボン酸とが重縮合したポリアミド、ω−アミノ−ω′カルボン酸が重縮合したポリアミド、環状ラクタムが開環重合したポリアミド、等が挙げられる。なお、ここでの重縮合または開環重合の際に、重合調節剤として、ジカルボン酸またはモノカルボン酸を用いることができる。
【0017】
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、フェニレンジアミン、メタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0018】
ジカルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、フマル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸、ダイマー酸(リノール酸やオレイン酸を主成分とする不飽和脂肪酸より合成される炭素数36の不飽和ジカルボン酸)等が挙げられる。
【0019】
ω−アミノ−ω′カルボン酸としては、例えば、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。
【0020】
環状ラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタムおよびω−ラウリルラクタム等が挙げられる。
【0021】
前記重合調節剤として用いられるジカルボン酸としては、前記のポリアミドの製造に用いられるジカルボン酸と同様であり、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、フマル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸、ダイマー酸等が挙げられる。また、モノカルボン酸としては、例えば、カプロン酸、ヘプタン酸、ノナン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸等が挙げられる。
【0022】
本発明においては、ポリアミドの中でも、特に、−[NH(CHCO]−、−[NH(CHNHCO(CHCO]−、−[NH(CHNHCO(CHCO]−、−[NH(CH10CO]−、−[NH(CH11CO]−、および−[NH(CHNHCO−D−CO]−(式中Dは炭素数34の不飽和炭化水素を示す)からなる群より選択される少なくとも1種又は2種以上を構造単位とするポリアミドが、好ましく用いられる。
【0023】
かかるポリアミドの例としては、ナイロンが挙げられ、具体的には、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、6/66共重合ナイロン、6/610共重合ナイロン、6/11共重合ナイロン、6/12共重合ナイロン、6/66/11共重合ナイロン、6/66/12共重合ナイロン、6/66/11/12共重合ナイロン、又は6/66/610/11/12共重合ナイロン等が例示される。なお、ここでの「/」は各ナイロンの共重合体であることを示すため用いた記号である。例えば、6/66共重合ナイロンは、6−ナイロンと66−ナイロンの共重合ナイロンを表す。
【0024】
なかでも、比較的、得られる共重合ナイロンの諸物性を調整しやすいことから、3次元又は4次元の共重合体が好ましい。具体的には、6/66/11共重合ナイロン、6/66/12共重合ナイロン、6/66/11/12共重合ナイロン、6/66/610/11/12共重合ナイロンが好ましく、とりわけ、6/66/12共重合ナイロンがより好ましい。
【0025】
またさらに、本発明に用いられるポリアミドの例として、ポリアミドエラストマーも例示される。具体的には、ナイロンとポリエステルとの共重合体、又はナイロンとポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体である、ポリアミドエラストマーが例示される。当該ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリプロピレンオキシドグリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ポリヘキサメチレンオキシドグリコール等が例示される。また、当該ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が例示される。
このようなポリアミドエラストマーは、公知であるか、又は公知の方法により容易に製造することができる。また、市販品を購入して用いることもできる。
【0026】
また、本発明においては、ポリアミドの中でも、特に共重合ポリアミドを用いることが好ましい。例えば、上記で例示したポリアミドの中では、ω−アミノ−ω′カルボン酸が重縮合したポリアミド、環状ラクタムが開環重合したポリアミド、−[NH(CHCO]−、−[NH(CHNHCO(CHCO]−、−[NH(CHNHCO(CHCO]−、−[NH(CH10CO]−、−[NH(CH11CO]−、および−[NH(CHNHCO−D−CO]−(式中Dは炭素数34の不飽和炭化水素を示す)からなる群より選択される1種のみを構造単位とするポリアミド、6−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、以外のポリアミドが、共重合ポリアミドである。
【0027】
なお、本発明において、“2種以上のポリアミド”の2種以上とは、必ずしも異なる名称を有するポリアミド2種以上という意味を示すものではなく、溶融粘度が異なるポリアミドを別種として数えた場合の2種以上であることを示す。すなわち、溶融粘度が異なる2つ以上のポリアミドは、同じ名称のポリアミドであっても2種以上のポリアミドである。例えば同じ“6/66/12共重合ナイロン”であっても、その分子構造の違い(直鎖状、分岐状といった高分子鎖の絡まり状態や重合度の違い等)により様々な溶融粘度を有し得るので、本発明においては、ある溶融粘度の6/66/12共重合ナイロンと、それとは異なる溶融粘度の6/66/12共重合ナイロンとは、異なる種のポリアミド(2種のポリアミド)である。
【0028】
ポリアミドは、2種以上(例えば、2、3、4、5、又は6種)を組み合わせて用いる。すなわち、本発明の炭素繊維束は、溶融粘度の異なる2種以上(例えば、2、3、4、5、又は6種)のポリアミドが付着した炭素繊維束である。
【0029】
本明細書における溶融粘度は、平板/平板粘度計(パラレルプレート型粘度計)を用いて、190℃においてせん断速度10ラジアン/秒で測定された値である。当該粘度計としては、HAAKE社製のレオメーターMARS II(英弘精機株式会社 販売)を用いることができる。
【0030】
本発明に用いられる、ポリアミドの融点は、60℃〜180℃のものが好適に使用され、より好適なものは80℃〜160℃である。融点が60℃以上であれば、強度や剛性、耐熱性等の機械的特性がより優れた炭素繊維束が得られうる。また、融点が180℃以下であれば、より優れた開繊性を得られうる。なお、上記溶融粘度の定義から明らかなように、本発明に用いられるポリアミドは融点が190℃未満のものである。
【0031】
融点は、示差走査熱量分析計(DSC)にて測定された値である。具体的には、融点測定対象となるポリアミドを、220℃で5分間保持した後に、10℃/分の降温速度で40℃まで降温した後、5分間保持し、その後10℃/分で220℃まで昇温し、得られる吸熱ピークのピークトップの温度を融点とする。
【0032】
本発明の炭素繊維束は、溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドが付着した炭素繊維束である。ここで「溶融粘度が異なる」とは、上記条件下で測定した溶融粘度が異なることをいう。ポリアミドの溶融粘度の差は、好ましくは10〜1800Pa・s、より好ましくは20〜800Pa・s、さらに好ましくは30〜500Pa・s、さらにより好ましくは30〜300Pa・sである。
【0033】
また、各ポリアミドの溶融粘度は特に限定されないが、上記条件下の測定値で、10〜2000Pa・sが好ましく、20〜1000Pa・sがより好ましい。
【0034】
用いるポリアミド間の溶融粘度の差が大きいほど、開繊性は良くなるが、あまりに当該差が大きくなりすぎると、炭素繊維束に付着させた際に炭素繊維束にボイドが発生しやすく、その結果、炭素繊維束の強度や剛性等の機械的特性が損なわれる可能性があるため、上記好ましい溶融粘度の差の範囲を目安として、適宜溶融粘度の差を設定することが好ましい。
【0035】
なお、溶融粘度の異なる3種以上のポリアミドを用いる場合は、それぞれのポリアミドの溶融粘度の差が、上記範囲内にあることが好ましい。すなわち、最も溶融粘度の高いポリアミドと、最も低いポリアミドとの差が、上記範囲内にあることが好ましい。
【0036】
本発明において、溶融粘度の最も高いポリアミドとそれ以外のポリアミドの配合割合は、特に制限されないが、溶融粘度の最も高いポリアミド100質量部に対して、それ以外のポリアミドの合計が10〜1000質量部であることが好ましく、100〜300質量部であることがより好ましい。つまり、例えばポリアミドが2種含まれる場合には、溶融粘度のより高いポリアミド100質量部に対して、溶融粘度のより低いポリアミドが10〜1000質量部であることが好ましく、100〜300質量部であることがより好ましいわけであり、また、例えばポリアミドが3種(ポリアミドA、B、及びCとし、溶融粘度はA>B>Cとする)含まれる場合には、溶融粘度の最も高いポリアミドA100質量部に対して、それ以外のポリアミドの合計(B+C)が10〜1000質量部であることが好ましく、100〜300質量部であることがより好ましいわけである。
【0037】
本発明の溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドを炭素繊維に付着させる方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、押出機(エクストルーダー)を用い、炭素繊維とポリアミドを混合し、炭素繊維表面にポリアミドを付着させる方法、ポリアミドを水性媒体(特に水)に分散させたポリアミド水性分散液に炭素繊維束を含浸させた後、炭素繊維束を乾燥する方法、ポリアミドを溶媒に溶解してポリアミド溶液にした後、炭素繊維束を含浸させ、その後、炭素繊維束を乾燥させる方法、等が挙げられる。
【0038】
中でも、炭素繊維束にポリアミドが均一に付着しやすいこと、得られた炭素繊維束の機械的特性が優れる等の理由から、ポリアミドを水性媒体(特に水)に分散させたポリアミド水性分散液に炭素繊維束を含浸させた後、炭素繊維束を乾燥する方法を好ましく用いることができる。
【0039】
なお、限定的な解釈を望むものではないが、ポリアミドは炭素繊維束の表面のみに付着するのではなく、むしろ炭素繊維と炭素繊維との隙間や空隙に入り込んで付着する量が圧倒的に多いと考えられ、このような隙間や空隙に入り込んで付着したものが好ましいと考えられる。すなわち、本発明の炭素繊維束は、溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドが、炭素繊維と炭素繊維との隙間や空隙に付着した炭素繊維束であることが好ましいと考えられる。
【0040】
以下に、本発明に用いるポリアミド水性分散液に関して説明する。なお、当該ポリアミド水性分散液は炭素繊維用サイジング剤として用いることができ、本発明は当該炭素繊維用サイジング剤をも包含する。即ち、本発明は当該ポリアミド水性分散液からなる炭素繊維用サイジング剤を包含する。なお、当該ポリアミド水性分散液により炭素繊維束を処理して炭素繊維束にポリアミドを付着させる処理がサイジング処理に当たり、本発明は当該サイジング処理をも包含する。
【0041】
ポリアミド水性分散液を製造する方法については、特に限定はなく、水性媒体中にポリアミドを均一に分散できる方法であればよい。
【0042】
例えば、ポリアミドを、例えば機械粉砕法、冷凍粉砕法、湿式粉砕法等の粉砕法により粉砕して得られるポリアミド粉体を水性媒体中に分散させる方法、ポリアミド中の末端カルボキシル基を、塩基性物質を用いて中和し、自己乳化させて、水性分散液を製造する方法、界面活性剤を用いてポリアミドを乳化し水性分散液を製造する方法、等が挙げられる。
以下に、代表的な製造例として、ポリアミド中の末端カルボキシル基を、塩基性物質を用いて中和し、自己乳化し、水性分散液を製造する方法について示す。
【0043】
この製造方法では、例えば、容器内にポリアミド、塩基性物質および水性媒体を投入し、これらの混合液を調製する。
混合液の調製に用いる容器としては、ポリアミドが水性媒体中で軟化する温度以上の温度に加熱するための加熱手段と、内容物にせん断力を与えることのできる攪拌手段とを備えた、耐圧容器が好ましい。例えば、攪拌機付きの耐圧オートクレーブ等が好ましい。
【0044】
次に、この容器内でポリアミド、塩基性物質および水性媒体を混合して混合液を得る。そして、当該混合液をポリアミドの軟化温度以上に加熱し攪拌して、乳化させ、乳濁液を得る。当該乳濁液を室温まで冷却すると、ポリアミド水性分散液が得られる。
【0045】
水性媒体は、基本的には水であり、水道水、工業用水、イオン交換水、脱イオン水、純水などの各種の水を用いることができる。特に脱イオン水および純水が好ましい。また、当該水性媒体には、本発明の目的が阻害されない範囲において、必要に応じて、pH調整剤、粘度調整剤、防かび剤等が適宜添加されていてもよい。
【0046】
塩基性物質としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物やアンモニア、アミン化合物等が挙げられる。塩基性物質は1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、これらの中でも、分散液の静置安定性が優れる観点から特に水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムが好適に用いられる。
【0047】
塩基性物質の使用量は、得られる水性分散液の粘度の経時変化が少ない等、静置安定性に優れるという観点から、ポリアミドの末端カルボキシル基1モルあたり0.1〜2モルであることが好ましく、0.4〜1モルであることがより好ましい。
【0048】
ポリアミドの使用量は、特に限定されるものではないが、得られるポリアミド水性分散液100質量部に対して0.1〜80質量部に設定するのが好ましく、20〜70質量部に設定するのがより好ましい。
【0049】
また、塩基性物質の代わりに、界面活性剤を用いて、ポリアミド水性分散液を得ることができる。また、塩基性物質と界面活性剤を併用してポリアミド水性分散液を得ることもできる。
【0050】
界面活性剤の種類については特に限定されるものではないが、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等を用いることができる。アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ロジン酸塩、脂肪酸塩等を用いることができる。
【0051】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリグリセリンエステル等を用いることができる。
【0052】
これらの界面活性剤の中でも、乳化分散性および耐熱性が優れているという観点から、
ノニオン系界面活性剤が好ましく、ポリエチレングリコール、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸モノエステル等が好ましく、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体が特に好ましい。
【0053】
中でも、乳化分散性および耐熱性に優れる他、得られたポリアミド水性分散液を用いて、炭素繊維束に付着させた際、炭素繊維束への安定した付着性に優れるという観点において、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体が好適に用いられる。
【0054】
界面活性剤は、2種以上のものが併用されてもよい。この場合、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とが併用されてもよい。
【0055】
界面活性剤の使用量は、ポリアミド100質量部に対して1〜30質量部程度が好ましく、1〜15質量部程度がより好ましい。界面活性剤の使用量が多いと、乳化が容易になり、安定な水性分散液が得られるが、得られた水性分散液を用いて炭素繊維束に付着させた際、得られる炭素繊維束の各種物性が損なわれる虞がある。特に、炭素繊維束の強度、剛性等の機械的特性やマトリックス樹脂との接着性が損なわれたりする虞がある。よって、界面活性剤の使用量には注意する必要があり、上記使用量を目安として目的等に応じて適宜設定することが好ましい。
【0056】
上記ポリアミド水性分散液は、本発明の目的を阻害しない範囲において、必要に応じて、酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤を添加することで、ポリアミドの熱劣化を抑制し、ポリアミドを付着させて得られる炭素繊維束の耐熱性等の機械的特性を向上させることができる。
【0057】
酸化防止剤の種類は、特に限定されるものではないが、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等を用いることができる。
【0058】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、公知のヒンダードフェノール系酸化防止剤が使用できるが、代表的には、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチ−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)]メタン等を挙げることができる。なかでも、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチ−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンが特に好ましい。
【0059】
硫黄系酸化防止剤としてはジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)等があげられる。これらのなかでも、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)が特に好ましい。
【0060】
燐系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜燐酸、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4−ジイルビスフォスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t −ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t −ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト等を使用することができる。
アミン系酸化防止剤としては、オクチル化ジフェニルアミン、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、フェニル−1−ナフチルアミン、ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、N,N´−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等を使用することができる。
【0061】
酸化防止剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの酸化防止剤を併用することで、さらに耐熱性を向上させることができる。
【0062】
酸化防止剤の使用量は、ポリアミド100質量部に対して好ましくは0.01〜10質量部であり、より好ましくは0.05〜8質量部であり、特に好ましくは0.1〜5質量部である。
【0063】
以上のようにして得られたポリアミド水性分散液において、分散されたポリアミド粒子の平均粒子径は、通常、0.1〜20μmである。平均粒子径が0.1μm以上であれば、ポリアミド水性分散液の粘度が高くなりすぎる虞がより少ない(粘度が高いと、移送時等、取扱いにくくなるほか、炭素繊維束へ含浸させる際の作業性が悪くなる可能性がある)。また、20μm以下であれば、水性分散液の安定性がより向上し得る。また、炭素繊維束に、より均一に含浸させやすくなる。
【0064】
なお、平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定法によるものである。すなわち、ポリアミド水性分散液をレーザー回折式粒度分布測定装置にて測定した際に得られる値である。
【0065】
ポリアミド水性分散液の濃度(w/w%)は、0.1〜80質量%であることが望ましく、さらに好ましくは20〜70質量%である。ポリアミドの濃度が80質量%以下であれば、水性分散液の静置安定性がより向上し、水性分散液の濃度が0.1質量%以上の場合、炭素繊維束へポリアミドをより付着させやすくなる。
【0066】
次に、本発明において使用される炭素繊維束について記述する。
【0067】
本発明における炭素繊維束の炭素繊維としては、特に限定されない。炭素繊維の具体例としては、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ等、繊維状であれば種類は特に限らないが、安価なコストを実現できる点と炭素繊維を束ねてなる炭素繊維束から得られる成形体が良好な機械的特性を持つという点で、ポリアクリロニトリル系炭素繊維が好適に用いられる。
【0068】
炭素繊維の形態についても、連続長繊維や連続長繊維をカットした短繊維、粉末状に粉砕したミルド糸等、いずれでも良い。これらは、織物、編み物、不織布等のシート状等に、用途や必要特性に応じて様々に選ぶことができる。
【0069】
炭素繊維束は炭素繊維から構成される。炭素繊維束は、例えば、市販されているものを用いることができる。市販されている炭素繊維束は、毛羽立ちを押さえ作業性を改善するため、予め、エポキシ系化合物等によりサイジング処理が施されているものが通常であるが、本発明においては、これらのサイジング処理剤を溶剤洗浄、乾燥等により除去したものを用いてもよいし、市販されている炭素繊維束をそのまま用いることもできる。もちろん、サイジング処理が施されていない炭素繊維束も用いることができる。
【0070】
なお、溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドを炭素繊維に付着させる方法として、ポリアミド水性分散液に炭素繊維束を含浸させた後、炭素繊維束を乾燥する方法を用いる場合、(i)溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドが分散されたポリアミド水性分散液を用いてもよいし、あるいは、(ii)1種類のポリアミドを分散させたポリアミド水性分散液に炭素繊維束を含浸させ乾燥して当該ポリアミドを付着させた後、これとは別の溶融粘度の異なるポリアミドを分散させたポリアミド水性分散液を用いて、再度、炭素繊維束にポリアミドを付着させ、溶融粘度の異なる2種のポリアミドを付着させた炭素繊維束を得ることもできる。また、当該手順を繰り返し、溶融粘度の異なる3種以上のポリアミドを付着させた炭素繊維束を得ることもできる。
【0071】
いずれの方法においても、(つまり、ポリアミド水性分散液中に分散されるポリアミドが1種の場合でも2種以上の場合でも)用いるポリアミド水性分散液は、上記の製造方法で得られ、上記の構成を備え得る。(ポリアミドを2種以上含むポリアミド水性分散液の場合、各ポリアミドの合計が上記の構成の説明におけるポリアミド量となる。)
上記(ii)のようにして、溶融粘度の異なるポリアミドをそれぞれ別個に炭素繊維束に付着させる場合、特に限定はされないが、(X)溶融粘度のより低いポリアミドを先に炭素繊維束に付着させた後、溶融粘度のより高いポリアミドを付着させた場合のほうが、(Y)溶融粘度のより高いポリアミドを先に炭素繊維束に付着させた後、溶融粘度のより低いポリアミドを付着させる場合よりも、より優れた機械的特性と開繊性の両方を兼ね備えた炭素繊維束が得られる。
【0072】
なぜ(X)の場合の方が(Y)の場合より優れた炭素繊維束が得られるのか、その機構は明確にはわからない。限定的な解釈を望むものではないが、次のように推測される。すなわち、ポリアミドが炭素繊維束に付着する場合、溶融粘度のより高いポリアミドは炭素繊維束の表面に、また、溶融粘度のより低いポリアミドは炭素繊維束の内部、すなわち、炭素繊維と炭素繊維の空隙に、均一に付着しやすい傾向があると推測される。この傾向が、得られる炭素繊維束の機械的特性及び開繊性に影響していると考えられる。したがって、ポリアミドを炭素繊維に付着させる際に、これらの溶融粘度及び配合比を考慮し、適宜調整することにより、炭素繊維束の強度、剛性等の機械的特性と開繊性、さらには、柔軟性、風合い等の特性を調整し、複合化材料を加工しやすくなるものと思われる。
【0073】
ポリアミドが付着した炭素繊維束におけるポリアミドの付着量は、炭素繊維束100質量部に対して0.01〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部であり、さらに好ましくは0.2〜5質量部である。付着量が炭素繊維束100質量部に対して20質量部以下であると、より優れた開繊性が得られることが期待でき、また、0.01質量部以上であると、より炭素繊維束の収束性に優れ、加工工程において、機械的な毛羽立ちがより生じにくくなる。なお、ここでの“炭素繊維束100質量部”とは、ポリアミドが付着する前の炭素繊維束を基準とする。
【0074】
ポリアミド水性分散液中に炭素繊維束を含浸させた後、炭素繊維束を乾燥して、ポリアミドを付着させた炭素繊維束を得る具体的な方法としては、特に限定されないが、例えば、ローラー浸漬法やローラー接触法等を適用し、炭素繊維束を水性分散液中に含浸させ、絞りコントローラー等を用いて、水性分散液の炭素繊維束への付着量を調整した後、例えば、熱風、熱板、ローラー、赤外線ヒーター等の熱媒を用いて乾燥処理を行った後、水分を除去することにより、ポリアミドが付着した炭素繊維束を得ることができる。なお、絞りコントローラーの絞り圧力を調整することで、ポリアミドの付着量の微調整が可能である。
【0075】
なお、ここで乾燥処理時の温度は、特に限定されないが、ポリアミドを融解し、均一に炭素繊維束に付着させるという点で、ポリアミドの融点以上の温度で乾燥処理することが好ましく、特に融点+30℃〜+70℃の温度で乾燥処理をするのが好ましい。
【0076】
本発明のポリアミドが付着した炭素繊維束は、マトリックス樹脂を配合させ繊維強化樹脂組成物として用いることもできる。よって、本発明は、(α)溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドが付着した炭素繊維束、及び(β)マトリックス樹脂、を含有する炭素繊維強化樹脂組成物をも包含する。ここで、マトリックス樹脂は熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のどちらにも特に限定されず、また、一緒に用いてもよいが、得られた成形品の機械的特性かつ成形効率の高いプレス成形または射出成形が可能である熱可塑性樹脂が好ましい。
【0077】
上記(α)成分及び(β)成分を例えば混合して当該炭素繊維強化樹脂組成物を製造することができる。混合割合は特に制限されないが、例えば(β)成分100質量部に対して(α)成分が好ましくは10〜1000質量部程度、より好ましくは30〜300質量部程度である。(α)成分と(β)成分の混合には、これらを均一に混合できる公知の方法を用いることができ、例えば一軸押出し機、二軸押出し機、プレス機、高速ミキサー、射出成形機、引抜成形機等の公知の装置を用いて、常法に従って行うことができる。当該炭素繊維強化樹脂組成物は、その組成、配合方法等により、マトリックス樹脂と炭素繊維との粉末状混合物、この混合物からなる造粒物等の各種の形態で得られる。また、当該炭素繊維強化樹脂組成物による成形品は、公知の方法、例えば当該組成物を金型内で射出成形することにより得ることができる。なお、当該炭素繊維強化樹脂組成物には必要に応じて他の公知の添加剤を併用することも可能である。添加剤の具体例としては、酸化防止剤や耐熱安定剤、耐候剤、離型剤及び滑剤、顔料、染料、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、強化材などが挙げられる。
【0078】
熱可塑性樹脂としては、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等)の他、スチレン系樹脂、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリメチレンメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルニトリル、フェノールフェノキシ樹脂、フッ素樹脂等が例示される。さらには、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、飽和ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー等も例示される。またさらに、これらの共重合体、変性体、およびこれらを2種類以上ブレンドしたものでもよい。なお、ここでの変性体とは、分子構造内のカルボキシル基等の反応性のある官能基を置換して得られた誘導体や、分子構造内にオキシエチレン基等のジオールを付加させた誘導体をいう。
【0079】
本発明のポリアミドが付着した炭素繊維束は、強度、剛性等の機械的特性が優れるとともに、開繊性に優れた炭素繊維束であり、様々な複合化材料を得るための成形性に優れているといえる。言い換えるならば、本発明の炭素繊維束は、機械的特性に優れるほか、マトリックス樹脂を配合させて炭素繊維強化樹脂組成物とすることができ、当該組成物から複合化材料を成形する際の加工性も特に優れているため、薄型化や極めて均一成形を要求される高性能の複合化材料を得るのに適した炭素繊維束であるといえる。当該複合化材料は、特に自動車や航空機等向けの構造材料として極めて有用である。なお、当該複合化材料は公知の方法により炭素繊維強化樹脂組成物を成型して得ることができる。
【実施例】
【0080】
次に本発明における実施例、比較例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記の溶融粘度は、いずれも、パラレルプレート型粘度計(具体的にはHAAKE社製のレオメーターMARS II)を用いて、190℃においてせん断速度10ラジアン/秒で測定された値である。また、下記の融点は、示差走査熱量分析計(DSC)にて測定された値である。具体的には、融点測定対象となるポリアミドを、220℃で5分間保持した後に、10℃/分の降温速度で40℃まで降温した後、5分間保持し、その後10℃/分で220℃まで昇温し、得られる吸熱ピークのピークトップの温度を融点とした。
【0081】
実施例1
ポリアミド水性分散液Iの製造
直径50mmのタービン型撹拌羽根を備えた内容積1リットルの耐圧オートクレーブ中に、ポリアミドとして6/66/12共重合ナイロン〔末端カルボキシル基180ミリモル/kg、融点158℃、溶融粘度140Pa・s〕240g、脱イオン水146gおよび10%水酸化ナトリウム水溶液14g、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]2.4gを仕込み密閉した。次に、撹拌機を始動し、1000rpmの回転数で撹拌しながらオートクレーブ内部を180℃まで昇温した。内温を180℃に保ちながらさらに30分間撹拌した後、内容物を室温まで冷却した。さらに、水性分散液中のポリアミド濃度が20%になるように脱イオン水を加え、ポリアミド水性分散液Iを得た。この水性分散液Iの平均粒子径を測定したところ、1.5μmであった。なお、平均粒子径の測定には回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所、商品名“SALD−2000J”)を用いた。また、例えば直径1μmの球と同じ回折・散乱光のパターンを示す被測定粒子は、その形状に関わらず粒子径1μmとして算出した。以下の平均粒子径の測定も、これと同様に行った。
【0082】
ポリアミド水性分散液IIの製造
水性分散液Iの製造の際と同じ機能を備えた耐圧オートクレーブ中に、ポリアミドとして6/66/12共重合ナイロン〔末端カルボキシル基175ミリモル/kg、融点158℃、溶融粘度;60Pa・s〕240g、脱イオン水146gおよび10%水酸化ナトリウム水溶液13g、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]2.4gを仕込んだ以外は、水性分散液Iの場合と同様に操作し、ポリアミド水性分散液IIを得た。この水性分散液IIの平均粒子径を測定したところ、1.3μmであった。
【0083】
得られたポリアミド水性分散液IとIIを質量比1:1になるように混合してポリアミド水性分散液Aを得た後、これを含浸槽に充填した。
【0084】
炭素繊維束への付着
ボビンに巻かれた炭素繊維束(三菱レイヨン株式会社製の商品名“パイロフィルTR50SI5L”:フィラメント数15000本、フィラメント径7μm、目付け1000mg/m)に一定の張力をかけてボビンより送り出した。
【0085】
次に、上記のポリアミド水性分散液Aを入れた含浸槽で連続的にローラー浸漬を行った後、熱風乾燥(190℃10分)を行った。ここでは、ポリアミド水性分散液Aの固形分濃度と浸漬後の絞りを調整し、熱風乾燥後のポリアミド水性分散液Aの固形分、すなわちポリアミドの炭素繊維束への付着量が、炭素繊維束100質量部に対して1質量部になるように調整した。なお、ここでの“炭素繊維束100質量部”とは、ポリアミドが付着する前の炭素繊維束を基準とするものであり、以下の例でも同様である。
【0086】
このようにして、本発明における炭素繊維束(実施例1)を得た。
【0087】
実施例2
ポリアミド水性分散液IIIの製造
水性分散液Iの製造の際と同じ機能を備えた耐圧オートクレーブ中に、ポリアミドとして6/66/12共重合ナイロン〔末端カルボキシル基170ミリモル/kg、融点120℃、溶融粘度;200Pa・s〕240g、脱イオン水146gおよび10%水酸化ナトリウム水溶液13g、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]2.4gを仕込んだ以外は、水性分散液Iの場合と同様に操作し、ポリアミド水性分散液IIIを得た。この水性分散液IIIの平均粒子径を測定したところ、1.1μmであった。
【0088】
得られたポリアミド水性分散液IIIとIを質量比1:1になるように混合した以外は、実施例1と同様に操作し、本発明における炭素繊維束(実施例2)を得た。
【0089】
実施例3
ポリアミド水性分散液IVの製造
水性分散液Iの製造の際と同じ機能を備えた耐圧オートクレーブ中に、ポリアミドとして6/66/12共重合ナイロン〔末端カルボキシル基160ミリモル/kg、融点90℃、溶融粘度;20Pa・s〕240g、脱イオン水146gおよび10%水酸化ナトリウム水溶液12g、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]2.4gを仕込んだ以外は、水性分散液Iの場合と同様に操作し、ポリアミド水性分散液IVを得た。この水性分散液IVの平均粒子径を測定したところ、1.2μmであった。
【0090】
得られたポリアミド水性分散液IVとIIIを質量比1:1になるように混合した点と、炭素繊維束に付着させる際、熱風乾燥を160℃10分で行った以外は、実施例1と同様に操作し、本発明における炭素繊維束(実施例3)を得た。
【0091】
実施例4
実施例1で得られたポリアミド水性分散液IとIIを質量比3:7になるように混合した以外は、実施例1と同様に操作し、本発明における炭素繊維束(実施例4)を得た。
【0092】
実施例5
実施例1において、ポリアミド水性分散液IとIIを混合せず、水性分散液Iのみを用いて、実施例1と同様の操作で、ポリアミドの付着量が炭素繊維束の質量の0.5%になるように調整して、炭素繊維束に付着させた。
【0093】
次に、ポリアミドが付着した炭素繊維束に、ポリアミド水性分散液IIを用い、同様の操作を行って当該炭素繊維束に対して更にポリアミドを付着させ、本発明における炭素繊維束(実施例5)を得た。なお、合計のポリアミドの付着量が炭素繊維束の質量の1%になるように調整して操作した。
【0094】
実施例6
実施例5において、ポリアミド水性分散液IとIIを使用する順序を逆にして、炭素繊維束にポリアミドを付着させた以外は、実施例5と同様に操作し、本発明における炭素繊維束(実施例6)を得た。
【0095】
実施例7
ポリアミド水性分散液Vの製造
直径50mmのタービン型撹拌羽根を備えた内容積1リットルの耐圧オートクレーブ中に、ポリアミドとしてポリエーテルブロックアミド共重合体〔融点150℃、溶融粘度;100Pa・s〕160g、脱イオン水224g、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体(質量平均分子量15,500、エチレンオキシド含有量80質量%)16gおよび1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]6.4gを仕込み、密閉した。次に、撹拌機を始動し、500rpmの回転数で撹拌しながらオートクレーブ内部を180℃まで昇温した。内温を180℃に保ちながらさらに15分間撹拌した後、内容物を室温まで冷却した。さらに、水性分散液中のポリアミド系エラストマー濃度が20質量%になるように脱イオン水を加え、ポリアミド水性分散液Vを得た。この水性分散液Vの平均粒子径を測定したところ、1.6μmであった。
【0096】
ポリアミド水性分散液IとVを質量比1:1になるように混合した以外は、実施例1と同様に操作し、本発明における炭素繊維束(実施例7)を得た。
【0097】
比較例1
ポリアミド水性分散液として、ポリアミド水性分散液Iのみを用いた以外は、実施例1と同様に操作し、炭素繊維束(比較例1)を得た。
【0098】
比較例2
ポリアミド水性分散液として、ポリアミド水性分散液IIのみを用いた以外は、実施例1と同様に操作し、炭素繊維束(比較例2)を得た。
【0099】
比較例3
ポリアミド水性分散液VIの製造
水性分散液Iの製造の際と同じ機能を備えた耐圧オートクレーブ中に、ポリアミドとして6/66/12共重合ナイロン〔末端カルボキシル基175ミリモル/kg、融点140℃、溶融粘度;170Pa・s〕240g、脱イオン水146gおよび10%水酸化ナトリウム水溶液13g、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]2.4gを仕込んだ以外は、水性分散液Iの場合と同様に操作し、ポリアミド水性分散液VIを得た。この水性分散液VIの平均粒子径を測定したところ、1.3μmであった。
【0100】
ポリアミド水性分散液として、水性分散液VIを用いて、実施例1と同様に操作を行い、炭素繊維束(比較例3)を得た。
【0101】
評価
(炭素繊維束の剛性)
実施例1〜7および比較例1〜3の炭素繊維束を用いて、炭素繊維束の曲げ試験を行い、炭素繊維束の剛性を比較した。試験は各サンプルについて3回実施した。
【0102】
得られた炭素繊維束を24cmの長さに切断し、試験片とした。カンチレバー式機能を備えている実験台の台上に、試験片の中央部と片端を固定させ、固定していない試験片の片端の上方より2.1gの錘を載せて荷重を加えた後、荷重を加えている試験片の片側を宙に浮かせて、試験片の状態を確認した。試験片の曲がり具合により、以下の基準で炭素繊維束の剛性を5段階に評価した。ここでは、数字が大きいほど炭素繊維束の剛性が強いことを示している。
【0103】
5・・・ 繊維束がほとんど曲がらない。折れ曲がり角度は10度未満
4・・・ 繊維束が少し曲がる。折れ曲がり角度は10度以上〜30度未満
3・・・ 繊維束がやや曲がる。折れ曲がり角度は30度以上〜45度未満
2・・・ 繊維束が大きく曲がる。折れ曲がり角度は45度以上〜90度未満
1・・・ 繊維束が完全に折れ曲がる。折れ曲がり角度は90度
(炭素繊維束の開繊性)
得られた炭素繊維束を10cmの長さに切断し、試験片とした。試験片5本を90℃の熱水に1分間浸漬させた後、取り出し、指でほぐして、ほぐしやすさを開繊性の指標とした。ここでは、6人のパネラーにより、以下の基準で炭素繊維束の開繊性を5段階に評価し平均値を算出した。尚、数字が大きいほど炭素繊維束の開繊性が優れていることを示している。
【0104】
5・・・ 指でほぐさず、熱水に浸漬させるだけで、炭素繊維束がほぐれる。
4・・・ 炭素繊維の一本、一本は、軽く縺れている程度。軽く指を動かすだけで、炭素繊維束がほぐれる。
3・・・ 炭素繊維束の一本、一本が、密着している。指を動かせば炭素繊維束はほぐれる。
2・・・ 炭素繊維束の一本、一本が、強く密着している。指を動かせば、少し時間が掛かるが、炭素繊維束はほぐれる。
1・・・ 炭素繊維束の一本、一本が、大変、強く密着している。指を動かしても、炭素繊維束をほぐすのが容易ではない。
【0105】
【表1】

【0106】
表1に、実施例と比較例の結果を示した。表1から、溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドが付着した炭素繊維束は、比較例に示されるような1種のポリアミドが付着した炭素繊維束と比較して、剛性は保たれつつ開繊性が改良されていることが分かった。
【0107】
以上のことから、本発明の、溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドが付着した炭素繊維束は、強度、剛性等の機械的特性が優れるとともに、開繊性に優れた炭素繊維束であり、様々な複合化材料を得るための成形性に優れていることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラレルプレート型粘度計により、190℃においてせん断速度10ラジアン/秒で測定した溶融粘度が異なる2種以上のポリアミドが付着した炭素繊維束。
【請求項2】
溶融粘度の最も高いポリアミドと最も低いポリアミドの溶融粘度の差が、10〜1800Pa・sである請求項1に記載の炭素繊維束。
【請求項3】
ポリアミドが、溶融粘度10〜2000Pa・sのポリアミドである、請求項1又は2に記載の炭素繊維束。
【請求項4】
溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドが、ジアミンとジカルボン酸とが重縮合したポリアミド、ω−アミノ−ω′カルボン酸が重縮合したポリアミド、及び環状ラクタムが開環重合したポリアミドからなる群より選択される、溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドである、請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維束。
【請求項5】
溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドが、−[NH(CHCO]−、−[NH(CHNHCO(CHCO]−、−[NH(CHNHCO(CHCO]−、−[NH(CH10CO]−、−[NH(CH11CO]−、および−[NH(CHNHCO−D−CO]−(式中Dは炭素数34の不飽和炭化水素を示す)からなる群より選択される少なくとも1種又は2種以上を構造単位とするポリアミドから選ばれる、溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドである、請求項4に記載の炭素繊維束。
【請求項6】
溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドが、6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、6/66共重合ナイロン、6/610共重合ナイロン、6/11共重合ナイロン、6/12共重合ナイロン、6/66/11共重合ナイロン、6/66/12共重合ナイロン、6/66/11/12共重合ナイロン、及び6/66/610/11/12共重合ナイロンからなる群より選択される、溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドである、請求項5に記載の炭素繊維束。
【請求項7】
溶融粘度の異なる2種以上のポリアミドが、いずれも6/66/12共重合ナイロンである、請求項6に記載の炭素繊維束。
【請求項8】
ポリアミド水性分散液を用いてポリアミドを付着させたことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の炭素繊維束。
【請求項9】
溶融粘度のより低いポリアミドを付着させた後、溶融粘度のより高いポリアミドを付着させることにより得られる、請求項1〜8のいずれかに記載の炭素繊維束。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の炭素繊維束、及びマトリックス樹脂を含有する、炭素繊維強化樹脂組成物。
【請求項11】
マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂である、請求項10に記載の炭素繊維強化樹脂組成物。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の炭素繊維強化樹脂組成物から得られる複合化材料。

【公開番号】特開2013−104156(P2013−104156A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249736(P2011−249736)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】