説明

炭素膜構造

【課題】 IV特性において格段に優れた炭素膜を得ること。
【解決手段】本炭素膜の構造は基板10上に複数の炭素膜集合単位12が形成されている。炭素膜集合単位12は、細長い針状に成膜されている幹状炭素膜14と、この幹状炭素膜14の膜中途から膜下部にかけて当該幹状炭素膜14を囲むように成膜されている枝状炭素膜群16とを備える。幹状炭素膜14は、先端近傍の外周面に当該先端に向けて螺旋状の筋状段差部18を有する半径が先端に向かうにつれて小さくなる形状を備える細長い針状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端が電界放射(フィールドエミッション)を行うのに適した鋭利な形状に成膜される炭素膜構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電界放射は電界集中により電子が真空に放射される現象であり、この電界放射を行うものとして例えばカーボンナノチューブが開発されてきている。カーボンナノチューブは、極めて細長く高アスペクト比のために電界放射特性に優れたもので電界電子放出素子を得ることができるとされている。電界放射特性(IV特性)とは、陽極と冷陰極との間に電圧Vを印加して冷陰極から電界放射する際の、電圧Vと電界放射電流(エミッション電流)Iとの関係を示す曲線により示される特性であり、電界放射を開始する電圧(閾値)や、上記曲線の傾きや形状で特徴づけられる。
【0003】
このような冷陰極に蛍光体付きの陽極を対向配置し、冷陰極と陽極との間に電圧(陽陰極間電圧)を印加して冷陰極から電界放射により電子を放出させ、この放出した電子を蛍光体に加速衝突させて蛍光体を励起発光させる冷陰極蛍光ランプがある。
【0004】
この蛍光体の発光には所定量の電子放出が必要である。この電子放出量を示すエミッション電流を縦軸に、陽陰極間電圧を横軸にして示す電流電圧(IV)特性曲線は冷陰極の電子放出性能を示している。
【0005】
カーボンナノチューブの場合、上記IV特性曲線の傾きが緩やかに立ち上がってくる。そのため、カーボンナノチューブでは蛍光体が発光を開始させるためのエミッション電流を得るのに必要な電圧Vは高くなる。
【0006】
しかしながら、所望のエミッション電流を得るための印加電圧Vの値が大きいことはその電源設備が要求されたり、上記冷陰極蛍光ランプの製作に影響したりするなどの課題がある。そこで、より低い印加電圧Vで蛍光体を発光開始させることができるエミッション電流を得られるIV特性を提供する冷陰極用の炭素膜の実現が望まれていた。
【特許文献1】特開平10−223128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願人は、上記に鑑み、鋭意研究を行い、カーボンナノチューブ等に代えて、半径が先端に向かうにつれて針状に小さくなる形状を備えたことにより、より低い印加電圧で所望するエミッション電流を得ることができるIV特性に優れた針状炭素膜を開発することができた。本発明は、このような針状炭素膜の構造にさらに改良を重ねた結果、さらに、より低い印加電圧で所望するエミッション電流を得ることができるIV特性に優れた炭素膜を提供することができるに至ったものである。
【0008】
本発明による炭素膜構造は、基板上に形成される炭素膜であって、この炭素膜は複数の炭素膜集合単位からなり、前記炭素膜集合単位は幹状炭素膜とこの幹状炭素膜の途中から炭素膜の下部にかけて前記幹状炭素膜を囲むように成膜された枝状炭素膜群とからなるものである。
【0009】
本発明は、好ましくは、その先端近傍の外周面周りに当該先端に向けて連続した筋状段差部を有する。
【0010】
上記筋状段差部は、好ましくは、上記先端近傍の外周面周りを当該先端に向けて螺旋状になって連続している。
【0011】
上記筋状段差部は、好ましくは、グラフェンシートが複数層重なって螺旋状となった内部中空の針状炭素膜単位が先端に向けて多数段に積み重なって構成され、各針状炭素膜単位の境界で螺旋状に形成されているものである。上記「筋状」とはその連続方向の幅や形状を特定して限定するものではなく、TEM写真で観察した場合の表現の一例であり、少なくとも段差部に電界放射に有効な角張ったエミッションサイトとなる部分を有する。
【0012】
上記「連続」とは完全に連続していることに限定されず、部分的に連続する場合を含むことができる。
【0013】
この筋状段差部は上記炭素膜の外周面から螺旋状に膨出するような形態、あるいは突出するような形態、あるいは先端に向けて所定高さまで連続的に半径が小さくなっていき途中で不連続的に半径が小さくなりもしくは半径が大きくなるなどして、次いで連続的に半径が小さくなるという膜形成のペースが螺旋状に繰り替えされるような形態の筋状段差部である。結果として電界を集中させやすい構造の筋状段差部となっている。
【0014】
この針状炭素膜は、任意の位置から先端までの間で、半径が部分的に大きい部分が存在しても、全体として先端に向けて半径が小さくなる場合を含む。また、任意の位置から先端までの間の途中部分は真直ぐな場合に限定する必要はなく、途中部分において曲線状、折れ線状、等に変形していても、全体として先端に向けて半径が小さくなるとよい。上記任意の位置は、炭素膜の基部に限定するものではなく、途中の位置からでもよい。
【0015】
本発明による炭素膜構造では、その先端が基本構造として先細り形状を有した有効なエミッションサイト構造であるから、カーボンナノチューブのように先端に向けて半径が一定の炭素膜とは異なって、低い印加電圧で所望のエミッション電流を得ることができ、IV特性に優れた炭素膜構造である。
【0016】
そして本発明による炭素膜構造では、上記基本構造に加えてその先端近傍の外周面に当該先端に向けて螺旋状の筋状段差部を備えたので、先端だけでなく、その筋状段差部も電界集中する有効なエミッションサイトとなって電界放射が行われるものであり、筋状段差部が無い針状炭素膜よりもよりさらに低い印加電圧で所望のエミッション電流を得ることができ、IV特性が格段に向上する。
【0017】
本発明による炭素膜構造は、基板上に複数の炭素膜集合単位が形成されてなり、これら炭素膜集合単位は、幹状炭素膜と、この幹状炭素膜の膜中途から膜下部にかけて当該幹状炭素膜を囲むように成膜されている枝状炭素膜群とを備えると共に、上記幹状炭素膜は、グラフェンシートが多層に重なって内部中空となっていて、かつ、先端に向けて半径が小さくなる針状形状を備えることを特徴とするものである。
【0018】
上記幹状炭素膜は、好ましくは、その先端近傍の外周面周りに当該先端に向けて連続している筋状段差部を有する。
【0019】
本発明では、幹状炭素膜が先端に向けて半径が小さくなる形状を有するから、上記本発明第1と同様に、低い印加電圧で所望のエミッション電流を得ることができ、IV特性に優れた炭素膜である。
【0020】
そして、本発明では、この幹状炭素膜に加えて、さらに、針状炭素膜の膜中途から膜下部にかけて枝状炭素膜群が構成されているので、この枝状炭素膜群により、幹状炭素膜の姿勢が安定化し、電子を安定して放出することができる。
【0021】
本発明ではまた、枝状炭素膜群を構成する針状炭素膜からも電子放出が行われ、全体の電界放射量が多くなり、電界放射型の照明ランプの電界電子放出源に用いた場合、高輝度の照明ランプを提供することができるようになる。
【0022】
本発明ではさらに、基板上に成膜された場合、機械的に支持され、基板上に倒れ込みにくくなる結果、照明ランプの電子放出源としての安定性が向上することに加えて、幹状炭素膜の直径が細くても、電流を流し込むための基板との電気的コンタクトを枝状炭素膜群によりとることができる。
【0023】
本発明では、好ましくは上記筋状段差部にシート状、ウォール状、針状等の炭素膜が成膜される。筋状段差部にシート状、ウォール状、針状等の炭素膜が成膜されている場合、単に筋状段差部だけの場合よりもさらにより低い印加電圧で所望のエミッション電流を得ることができ、さらによりIV特性が向上する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、カーボンナノチューブよりもIV特性において格段に優れた炭素膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は実施の形態に係る炭素膜の構成を示す図である。
【図2】図2は実施の形態に係る炭素膜の平面視SEM写真像である。
【図3】図3は実施の形態に係る炭素膜の平面視SEM写真像である。
【図4】図4は実施の形態に係る炭素膜のやや斜め方向から視たSEM写真像である。
【図5】図5は実施の形態に係る炭素膜のやや斜め方向から視たSEM写真像である。
【図6】図6は実施の形態に係る炭素膜のやや斜め方向から視たSEM写真像である。
【図7】図7は実施の形態に係る炭素膜のやや斜め方向から視たSEM写真像である。
【図8】図8は実施の形態に係る幹状炭素膜を撮影したSEM写真像である。
【図9】図9は実施の形態に係る幹状炭素膜の先端を撮影したSEM写真像である。
【図10】図10は実施の形態に係る幹状炭素膜の先端近傍の一部のTEM写真像である。
【図11】図11は実施の形態に係る幹状炭素膜の先端近傍の全体を模式的に示す図である。
【図12】図12はカーボンナノチューブ、針状炭素膜、筋状段差部付き針状炭素膜(幹状炭素膜)のIV特性曲線を示す図である。
【図13】図13は、炭素膜の製造装置の概略構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施の形態に係る炭素膜を説明する。
【0027】
実施の形態の炭素膜の構造は、図1で示すように、基板10上に複数の炭素膜集合単位12が形成されて構成されている。これら炭素膜集合単位12は、基板10上に所定の間隔で形成されている。炭素膜集合単位12は、先端に向け半径が小さくなる細長い針状の幹状炭素膜14と、この幹状炭素膜14の膜中途から膜下部にかけて当該幹状炭素膜14を囲むように成膜されている枝状炭素膜群16とから構成されている。幹状炭素膜は、図中の円部分を引き出して円Pで囲むように、先端近傍の外周面に当該先端に向けて連続状の筋状段差部18を有した構成になっている。これら筋状段差部18には膜中途から下部に向かうにつれ成長したシート状、ウォール状、針状等の炭素膜20が成膜される。この筋状段差部18は螺旋状になって幹状炭素膜14の先端に向けて連続している。
【0028】
以上の構成を備えた実施の形態の炭素膜構造では、炭素膜集合単位12で基板10上に形成されていると共に、枝状炭素膜群16が全体の基本構造となりその土台となる基本構造に対して幹状炭素膜14が先端に向けて半径が小さくなる針状形状を有した構造で形成されているから、カーボンナノチューブのように先端に向けて半径が一定の炭素膜とは異なって、低い印加電圧で所望のエミッション電流を得ることができるIV特性に優れた炭素膜構成である。
【0029】
また、炭素膜集合単位12が間隔を隔てて配置されているので各炭素膜集合単位12ごとの幹状炭素膜14は互いの電子放出を阻害しないから、電子放出性能が向上する。
【0030】
特に幹状炭素膜14はグラフェンシートが多層に重なった内部中空で先端に向けて半径が小さくなる針形状を備え、その先端に向かう外周面に螺旋状の筋状段差部18を備えているので、先端だけでなく、その筋状段差部18でも電界放射が行われるものであり、筋状段差部18が無い針状炭素膜の場合よりもよりさらに低い印加電圧で所望のエミッション電流を得ることができ、IV特性が格段に向上する。
【0031】
さらに、筋状段差部18には膜中途から下部に向かうにつれ成長したシート状、ウォール状、針状等の炭素膜20が成膜されるので、これらも電界を集中させやすい構成であり、上記IV特性の向上に貢献することができる。
【0032】
さらに、枝状炭素膜群16により、幹状炭素膜14の姿勢が安定化しかつ電気的コンタクトも確保できるので、電子を長期にわたり安定放出させることができる。
【0033】
以下、SEM写真像等を参照して実施の形態の炭素膜の構造を詳細に説明する。
【0034】
[炭素膜構造]
図2から図9までに実施の形態の炭素膜を撮影した一連のSEM(走査型電子顕微鏡)写真像、図10にTEM(透過型電子顕微鏡)写真像を示す。
【0035】
図2に実施の形態に係る炭素膜の平面視SEM写真像、図3にさらに拡大SEM写真像を示す。これのSEM写真像中に多数の炭素膜集合単位12が撮影されている。写真像中に大きさ単位が記入されている。図1では10μm単位で、図2では1μm単位が記入されている。図1、図2ではこれら炭素膜集合単位12は全体的にほぼ均等な間隔で成膜されている。炭素膜集合単位12は直径が数μmから10数μm以上である。図2、図3の平面視のSEM写真像からは炭素膜集合単位12を構成する幹状炭素膜14と枝状炭素膜群16のうち、枝状炭素膜群16の平面形状を確認することができるが幹状炭素膜14は針状であるからその形状を確認することはできない。
【0036】
図4ないし図7に上記炭素膜集合単位12のやや斜め方向から視たSEM写真像を示す。写真像中に大きさ単位が記入されている。図4では10μm単位、図5では10μm単位、図6では1μm単位、図7では10μm単位で、それら単位が記入されている。これらSEM写真像から炭素膜集合単位12の高さは幹状炭素膜14を除いて10数μmから数10μmである。幹状炭素膜14の周囲に枝状炭素膜群16がまとわりついている状態を確認することができる。また、炭素膜集合単位12が所定間隔で配置されていることを確認することができる。
【0037】
図8、図9に幹状炭素膜14を撮影したSEM写真像を示す。写真像中に大きさ単位が記入されている。図8では1μm単位で、図9では1μm単位が記入されている。幹状炭素膜14は先端に向けて半径が小さくなってエミッションサイトとして有効な先端形状を備えていることが示されている。幹状炭素膜14は枝状炭素膜群16から突出している状態を確認することができる。この幹状炭素膜14は先端に向かうにつれてその半径が小さくなっていることを確認することができる。
【0038】
図10に幹状炭素膜14の先端近傍の一部のTEM写真像を示す。図10の幹状炭素膜14の先端近傍はTEM写真像の撮影の都合でその全体が示されていないが、図11に幹状炭素膜14の先端近傍の全体を模式的に示す。また、図10のTEM写真像に示す幹状炭素膜14の先端近傍の一部を図11の円Qで囲む部分で簡略に拡大して示す。図10で確認することができ、また図11で示されているように、幹状炭素膜14はその外周面回りを当該先端に向けて螺旋状となって形成された筋状段差部18を有する。これら螺旋状になって連続する筋状段差部18にはシート状、ウォール状、針状等の炭素膜20が成膜されている。特に幹状炭素膜14の膜途中から下部に向けてこのシート状、ウォール状、針状等の炭素膜20が大きくなっており、これらは枝状炭素膜群16を構成するものと考えられる。これら筋状段差部18や炭素膜20はエミッションサイトとして有効な形状を備える。
【0039】
図11の円で囲む部分の拡大図において、幹状炭素膜14はグラフェンシートが複数層重なって螺旋状となった内部中空の針状炭素膜単位…19n−1、19n,19n+1…が先端に向けて多数段に積み重なって構成され、各針状炭素膜単位…19n−1、19n,19n+1…の境界で螺旋状の筋状段差部18が形成されている。この図11で示すように筋状段差部18はエミッションサイトとして有効な形状を有する。
【0040】
[炭素膜のIV特性]
図12は上記炭素膜のIV特性を示す図である。図12においてAは従来のカーボンナノチューブによるIV特性曲線、Bは筋状段差部が無い針状炭素膜によるIV特性曲線、Cは実施の形態の上記螺旋状の筋状段差部付きの炭素膜によるIV特性曲線である。これらIV特性曲線を比較して明らかであるように、いずれのIV特性曲線も電界放射を開始する電圧(閾値)はさほど相違しないが、IV特性曲線の傾きや形状が大きく相違している。すなわち、カーボンナノチューブのIV特性曲線Aでは所望するエミッション電流を得るための印加電圧が大きい曲線であり、筋状段差部が無い針状炭素膜によるIV特性曲線Bでは所望のエミッション電流を得る印加電圧はカーボンナノチューブの場合よりも低くなる曲線であり、実施の形態の上記螺旋状の筋状段差部付きの炭素膜によるIV特性曲線Cでは所望するエミッション電流を得るための印加電圧が最も低く済む曲線である。したがって、IV特性曲線は実施の形態の炭素膜が最も良く、そのIV特性が大きく向上した炭素膜であることが明らかである。
【0041】
以上において、実施の形態の炭素膜構造においては、鋭利な先端を備えた幹状炭素膜により電界放射させる電子放出源として、電界放射電流の調整範囲が極めて広いため、各種のデバイス、装置等への応用範囲が大きく拡充させることができるものとなる。特に、カーボンナノチューブと同等程度に直径に対する高さの比率であるアスペクト比をもっているにもかかわらず、枝状炭素膜群により先端がゆらぎにくく、基板上に機械的に支持して高い安定性があり、基板との電気的コンタクトを確保することができ、カーボンナノチューブとは異なって密集が制約され電界集中が起きやすく電子放出特性に優れた炭素膜構造である。
【0042】
[炭素膜の製造]
図13を参照して炭素膜の製造例を説明する。図13は成膜装置の概略構成図である。
【0043】
真空成膜室21内に一対の平行平板電極22,24を対向配置する。真空成膜室21はガス導入系26と真空排気系28とを備える。直流電源30の負極側を上側の平行平板電極22に接続し、直流電源30の正極側を接地する。下側の平行平板電極24を接地する。上側の平板電極22をモリブデン材で構成する。上側の平板電極22近傍にSUS32を配置する。
【0044】
真空成膜室21に導入するガスは水素とメタンとの混合ガスである。下側の平行平板電極24上に基板34を搭載する。
【0045】
まず、真空成膜室21を真空排気系28で排気しガス導入系26から水素ガスを導入しその内圧を30torr程度に徐々に減圧し、真空成膜室21内圧力を30torrにする。真空成膜室21内圧が30torrになると、その圧力を5ないし25分程度維持する。
【0046】
この場合、直流電源30の印加により、両平板電極22,24間にプラズマ36を発生させ、電流を2.5A程度にまで徐々に増加させ、真空成膜室21内圧が30torrになるときには電流を2.5Aに維持する。こうして基板34上の酸化物を除去する。
【0047】
次いで、真空成膜室10内にガス導入系26から水素ガスとメタンガスとの混合ガスを導入し真空成膜室21内圧を75torr程度にまで徐々に増大し、真空成膜室21内圧が75torrになると、この内圧を2時間程度維持する。同時に直流電源30により電流を2.5Aから6A程度にまで徐々に増加させ、6Aに到達すると、その電流を2時間維持する。メタンガスに代えて他の炭素を含むガス、例えば、アセチレン、エチレン、プロパン、プロピレン等のガス、あるいは一酸化炭素、二酸化炭素、エタノールやアセトンの有機溶剤の蒸気を用いることができる。
【0048】
その結果、基板34上に発生するプラズマ36により、基板温度が900℃ないし1150℃程度となって、メタンガスが分解され、基板表面に上記説明した炭素膜が成膜される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成される炭素膜であって、この炭素膜は複数の炭素膜集合単位からなり、前記炭素膜集合単位は幹状炭素膜とこの幹状炭素膜の途中から炭素膜の下部にかけて前記幹状炭素膜を囲むように成膜された枝状炭素膜群とからなることを特徴とする炭素膜構造。
【請求項2】
請求項1に記載の炭素膜構造において、前記幹状炭素膜は、グラフェンシートが多層に重なって内部中空となっていて、かつ、先端に向けて半径が小さくなる針状形状を備えることを特徴とする炭素膜構造。
【請求項3】
請求項1に記載の炭素膜構造において、前記幹状炭素膜は、その先端近傍の外周面周りに当該先端に向けて連続している筋状段差部を有することを特徴とする炭素膜構造。
【請求項4】
請求項3に記載の炭素膜構造において、前記筋状段差部が、上記先端近傍の外周面周りを当該先端に向けて螺旋状になって連続していることを特徴とする炭素膜構造。
【請求項5】
請求項4に記載の炭素膜構造において、前記筋状段差部はグラフェンシートが複数層重なって螺旋状となった内部中空の針状炭素膜単位が先端に向けて多数段に積み重なって構成され、各針状炭素膜単位の境界で螺旋状に形成されているものであることを特徴とする炭素膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−242239(P2009−242239A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174129(P2009−174129)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【分割の表示】特願2006−341254(P2006−341254)の分割
【原出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(506036781)株式会社ライフ技術研究所 (7)
【Fターム(参考)】