説明

炭素電極研削装置

【課題】通電開始時におけるアーク発生の容易化とその後の安定化を図る。
【解決手段】アーク放電をおこなう炭素電極13の先端部13aを整形する研削装置であって、炭素電極の先端面を研削する先端研削刃21と、炭素電極の先端面から基端部13bへ向かう面13eを研削する側周面研削刃22と、先端研削刃21と側周面研削刃22とを炭素電極13の軸線13Lと一致する回転軸線20L回りに回転駆動する回転手段とを有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素電極研削装置に関し、特に、アーク放電によって石英粉を加熱溶融してガラス化するための炭素電極の研削に好適な研削装置の研削刃の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶シリコンの引き上げに用いる石英ガラスルツボは主にアーク溶融法によって製造されている。この方法の概略は、例えば、カーボン製モールドの内表面に石英粉を一定厚さに堆積して石英堆積層である石英粉成形体を形成し、この石英粉成形体の上方に炭素電極を設置し、そのアーク放電によって石英堆積層を加熱、ガラス化して石英ガラスルツボを製造する方法である。
【0003】
特許文献1にはアーク溶融による石英ガラスルツボの製造に関する技術が記載され、特許文献2,3にはアーク放電用の電極に関する技術が記載されている。また、特許文献4にはアーク放電用の電極間距離に関する技術が記載されている。
【0004】
近年、半導体デバイス製造工程の効率化等の要請から、製造するシリコンウェーハ口径が300mmを超える程度まで大きくなっており、これに伴って大口径の単結晶シリコンを引き上げ可能な石英ガラスルツボが要求されている。また、半導体デバイスの微細化等の要請から、単結晶シリコンの特性に直接影響を与える石英ガラスルツボ内面状態等のルツボ特性の向上も強く要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3647688号公報
【特許文献2】特開2002−68841号公報
【特許文献3】特開2001−097775号公報
【特許文献4】特開2003−335532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、30インチ〜40インチといった大口径の石英ガラスルツボを製造する際には、石英粉を溶融するために必要な電力量が増大し、これに伴って、アーク放電開始時に発生する電極の振動が無視し得ないものになってきた。アーク放電開始時に電極振動が発生した場合、アーク中を流れる電流が変化し、この電流変化がさらに電極を振動させ、電極振動の振幅がさらに大きくなる。その結果、発生するアークが不安定になり、溶融する石英粉状態に与える影響も無視できなくなるという問題がある。さらに、電極振動が大きくなった場合、振動により電極から剥離した微小片が落下して石英ガラスルツボ特性が悪化するという問題があった。また、電極振動の振幅が増大した場合には電極が破損する可能性があるという問題があった。
【0007】
電極の振動を防止するためには、電極を高強度の材料に変更する、電極径を拡大する等、電極強度を増すことが考えられる。しかし、石英ガラスルツボ製造に用いるアーク放電電極は、この電極自体が消耗してその組成が石英粉溶融雰囲気に放出されるため、ルツボ特性に与える影響から炭素電極以外のものは使用できない。また、電極径を拡大した場合には電力密度が低下し、結果的にアーク出力が低下してしまうため、処理温度が低下して、処理状態が不安定になりルツボ特性に悪影響を与える可能性がある。また、この処理温度低下によって、発生するヒューム(シリカ蒸気)が電極の上部に付着し、この付着物が落下して石英ガラスルツボ特性が悪化する可能性があるため、このような手段は採用できない。なお、このような電極振動による影響、およびアークの不安定性による影響はルツボ口径の増大に伴うアーク出力の増大によって初めて顕在化したものである。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.電極振動の発生を防止すること。
2.通電開始時におけるアーク発生の容易化とその後の安定化を図ること。
3.ルツボ特性の悪化を防止し、その向上を図ること。
4.大出力アーク溶融に対応可能な炭素電極を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述したような不具合が電極の先端形状によって改善されることを見出した。具体的には、炭素電極の先端部の直径R2と基端部の直径R1との比R2/R1の値が0.6〜0.8の範囲に設定されてなること、前記炭素電極の先端に軸線と略直交する平坦面が設けられてなること、前記炭素電極の先端位置に設けられ前記基端部側の直径R3から前記先端部の直径R2まで縮径する縮径部の長さL1が前記先端部の直径R2に対する比L1/R2の値が3.5〜7の範囲に設定されてなること、前記縮径部の基端部側の直径R3と前記炭素電極の基端部の直径R1との比R3/R1の値が0.8〜1の範囲に設定されてなること、前記縮径部の側周面が前記平坦面となす角度αと、前記基端部の側周面が前記平坦面となす角度βとの比α/βの値が7/9〜17/18の範囲に設定されてなること、アーク発生時または電力供給開始時における炭素電極の軸線どうしがなす角度の1/2が5°〜20°の範囲に設定されてなることが好ましい。
【0010】
これを実現するためには炭素電極の先端部の形状をこれらの条件を満たすように整形することが必要である。しかし、特許文献3に記載されるように、炭素電極自体は非常に固く、かつ欠けやすいため、通常の加工方法では上記のような形状に正確に加工することが難しかった。
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の炭素電極研削装置は、アーク放電用炭素電極の先端部を整形する研削装置であって、前記炭素電極の先端面を研削する先端研削刃と、前記炭素電極の前記先端面から基端部へ向かう側周面を研削する側周面研削刃と、前記先端研削刃と前記側周面研削刃とを前記炭素電極の軸線と一致する回転軸線回りに回転駆動する回転手段とを有してなる。本発明の炭素電極研削装置によれば、極めて固い柱状である材料を加工して、先端部から基端部側に向かって拡径するように炭素電極の先端部を研削して、容易に整形することが可能となる。
【0012】
ここで、回転手段は、先端研削刃と側周面研削刃とを前記炭素電極の軸線と一致する回転軸線回りに回転駆動するが、この際、被研削物である炭素電極とこれら研削刃とは相対的に回転移動すればよく、研削刃を回転して炭素電極を固定するもの、炭素電極を回転して研削刃を固定するもの、炭素電極と研削刃とをいずれも逆方向あるいは順方向に回転するものが可能である。これにより、研削刃と炭素電極との相対移動状態を制御して、極めて固く脆い材質である炭素電電極を精密形状に研削することが容易となり、同時に、炭素電極表面粗さをアーク用の電力供給開始直後に電極振動を起こすことなくスムーズにアーク放電の発生が可能な粗さ範囲に設定することが可能となる。
【0013】
本発明において、前記先端研削刃と前記側周面研削刃とが、前記回転軸線を対称点として対称な位置関係を有するように取り付けられてなることが好ましい。炭素電極を電極軸線周りで回転研削する際に炭素電極に対する作用点が回転軸線に対して対称な位置にあることで、被研削物である炭素電極に作用する力を互いに対称な位置にある研削刃どうしで支持することができるため、炭素電極に対して作用する軸線に直交する力を相殺しながら研削をおこなうことができる。したがって、欠け等を発生することなく炭素電極形状を制御することが可能となる。
【0014】
本発明において、前記側周面研削刃は、前記回転軸線に沿った方向に延設されると共に、前記先端研削刃側に位置する前記側周面研削刃の一端から他端に向けて前記回転軸線から離間するように設けられていることが好ましい。アーク放電という極めて激烈な環境で電極強度を維持するために必要な電極の直径R1と、安定したアーク放電を得るために好適な電力密度を得るために必要な先端部の直径R2を有する電極構造を容易に実現することができ、通電開始時における電極振動を防止するとともに放電中に安定したアーク発生を維持して石英ガラスルツボ製造に必要な熱源を提供することができる。
【0015】
また、本発明において、前記先端研削刃は、前記回転軸線と直交する方向に延設されていることが好ましい。この構成によれば、研削により軸線と略直交する先端面(平坦面)を前記炭素電極の先端に設けることが可能となり、これにより、平坦面の外周部においてアーク発生を容易にするとともにアーク放電を安定して発生させることが可能となる。したがって、アーク溶融により製造する石英ガラスルツボの特性(品質)を向上することが可能となり、半導体単結晶引き上げに用いて好適な石英ガラスルツボを提供することが可能となる。
【0016】
本発明において、ルツボ特性とは、ルツボ内表面におけるガラス化状態、および、厚さ方向における気泡分布及び気泡の大きさ、OH基の含有量、アルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属類などの不純物含有量および、これらのルツボ高さ方向における不均一などの分布状態など、石英ガラスルツボで引き上げた単結晶シリコンの特性に影響を与える要因を意味するものである。
【0017】
本発明においては、前記回転手段は、前記回転軸線を中心に4分割された4つのガイド部分を有し、前記ガイド部分は、前記先端研削刃が取り付けられる2つの先端刃ガイド部分と、前記側周面研削刃が取り付けられる2つの側周刃ガイド部分を含み、前記先端刃ガイド部分には前記先端研削刃を取り付けるための第1の取り付け部が設けられており、前記側周刃ガイド部分には前記側周面研削刃を取り付けるための第2の取り付け部が設けられていることが好ましい。この構成によれば、前記先端研削刃と前記側周面研削刃とをそれぞれ別々に交換可能とすることができるため、これら前記先端研削刃と前記側周面研削刃との消耗に応じて別々に交換することにより、結果的に研削刃の寿命を延ばし、交換頻度を低減することが可能となる。また、ガイド部分が4分割されていることにより、回転軸線に対して対称位置に研削刃を位置することが可能となるとともに、それぞれのガイド部材を個別に交換可能とすること、およびガイド部材の回転軸線に対する取り付け位置制御を容易におこなうことが可能となる。さらに、研削刃に欠け等の破損が発生した場合でも、先端研削刃と側周面研削刃とを容易に交換することができる。また、研削刃が消耗した場合や破損した場合に、これら研削刃を削って再生することが容易にかつ低コストでおこなうことが可能となる。
【0018】
本発明においては、前記ガイド部分のうち、前記回転軸線の回りで隣り合わない2カ所には前記先端研削刃が取り付けられており、前記回転軸線の回りで隣り合わない他の2カ所には前記側周面研削刃が取り付けられていることが好ましい。前記先端研削刃が被研削物である炭素電極の軸線周方向位置における対称な2カ所で炭素電極の先端面(平坦面)を研削し、前記側周面研削刃が被研削物である炭素電極の軸線周方向位置における対称な2カ所で炭素電極の先端部の側周面(円錐台面)を研削することで、炭素電極に対して軸線と直交する方向に余分な力をかけることなく、かつ、軸線周方向位置における3カ所以上で研削した際に摩擦抵抗が大きくなり過ぎ、回転手段に過負荷がかかって研削できなくなることを防止できる。つまり、3カ所以上でそれぞれの研削刃が炭素電極に当接する状態であると、研削不能な程度の出力を有する駆動源であっても、それぞれの研削刃が2カ所でそれぞれの研削刃が炭素電極に当接する状態であると、研削刃と炭素電極とを相対回転させて研削をおこなうことが可能となる。これにより装置の製造コストを低減することが可能となる。
【0019】
本発明においては、前記先端研削刃が取り付けられた前記先端刃ガイド部分と、前記側周面研削刃が取り付けられた前記側周刃ガイド部分とが、前記回転軸線の回りで隣り合うよう配置されてなることが好ましい。前記先端研削刃が取り付けられた前記ガイド部分では側周面研削刃における研削をおこなわず、前記側周面研削刃が取り付けられた前記ガイド部分では前記先端研削刃における研削をおこなわないことにより、研削刃が消耗した際に最も研削能力が低下しやすい前記先端研削刃と前記側周面研削刃との境界部分、つまり、炭素電極の先端部における先端面(平坦面)の外周部に対応して研削をおこなう部分において、研削刃が鈍って研削能力が低下することを防止できる。これにより研削刃の長寿命化を図ることが可能となる。
【0020】
本発明においては、前記ガイド部分のうち、前記先端研削刃と前記側周面研削刃とが取り付けられていないガイド部分には、ダミー刃が設けられてなることが好ましい。この構成によれば、複数のガイド部分において、研削刃を取り付けた部分と研削刃を取り付けていない部分とを同形状とすることが可能なため、同一形状のガイド部分を複数用意すればよく、製造コストを低減することができ、研削刃の交換を容易に行うことが可能となる。ここで、ダミー刃は、このダミー刃と回転軸線との距離が、研削刃と回転軸線との距離に比べて長く設定されていればよく、単に、研削刃を取り付けない状態とすることもできる。
【0021】
本発明においては、上記の炭素電極研削装置を用いて炭素電極の先端部の整形をおこなうことにより、前記縮径部の長さL1と前記先端部の径寸法R2との比L1/R2の値を3.5〜7の範囲に設定することが容易となる。これにより、他の炭素電極に接触させた場合に1カ所のみで接触する形状、いいかえると、電力供給開始からアーク放電中において、1つの炭素電極と他の1つの炭素電極との最近接距離を有する部分が、一点、または、1つの線状部分、あるいは1つの面状となる1カ所のみとなるように直径R3,R2の値が設定されることで、この最近接距離となる部分においてアーク放電を発生させることができ、アーク発生を容易にするとともにアーク放電を安定して発生させることが可能となる。
【0022】
本発明においては、上記の炭素電極研削装置を用いて炭素電極の先端部の整形をおこなうことにより、前記縮径部の基端部側の直径R3と前記炭素電極の基端部の直径R1との比R3/R1の値を0.8〜1の範囲に設定することが容易となる。これにより、最近接距離を有する部分が1カ所となり、不平等電界により電極の先端部以外から放電することを防止してより安定したアーク発生を得ることができる。
【0023】
本発明においては、上記の炭素電極研削装置を用いて炭素電極の先端部の整形をおこなうことにより、前記縮径部の側周面が前記平坦面となす角度αと、前記基端部の側周面が前記平坦面となす角度βとの比α/βの値を7/9〜17/18の範囲に設定することが容易となる。これにより、不平等電界により電極の先端部から放電することを防止してより安定したアーク発生を得ることができる。
【0024】
本発明においては、上記の炭素電極研削装置を用いて炭素電極の先端部の整形をおこなうことにより、前記炭素電極の軸線どうしがなす角度の1/2を5°〜20°の範囲に設定することが容易となる。これにより、他の炭素電極に接触させた場合に1カ所のみで接触する形状、または、電力供給開始からアーク放電中においては他の1つの炭素電極との再近接距離を有する部分が、一点、または、1つの線状部分、あるいは1つの面状となる1カ所のみとなるようにして、この最近接距離となる部分においてアーク放電をおこない、電極振動を防止するとともに、アーク発生を容易にするとともにアーク放電を安定して発生させることが可能となる。
【0025】
なお、本発明の炭素電極研削装置は、いわゆる溶射法と称されるアーク放電中に石英粉を追加する製造方法において用いられる炭素電極、および、回転モールド法と称されアーク放電中に石英粉を追加しない製造方法において用いられる炭素電極のいずれを整形することも可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電極振動を防止するとともに、アーク発生を容易にするとともにアーク放電を安定して発生させることを可能として、口径サイズが増大した大口径ルツボであっても、発生させたアーク火炎により溶融した石英ガラスルツボ内表面における特性の面内バラツキ、あるいは、ルツボ表面特性の悪化を防止することができる炭素電極を加工可能な炭素電極研削装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る炭素電極研削装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明に係る炭素電極研削装置の一実施形態における研削手段を示す拡大組み立て図であり、(a)は回転軸線20Lと直交する方向から見た平面図であり、(b)は回転軸線20Lの方向から見た平面図である。
【図3】本発明に係る炭素電極研削装置の一実施形態におけるガイド部分を示す拡大分解図であり、(a)はガイド部分25Bを回転軸線20Lの方向から見た平面図であり、(b)はガイド部分25Bを回転軸線20Lと直交する方向から見た平面図であり、(c)はガイド部分25Aを回転軸線20Lの方向から見た平面図であり、(d)はガイド部分25Aを回転軸線20Lと直交する方向から見た平面図である。
【図4】石英ガラスルツボ製造装置の一実施形態を示す模式正面図である。
【図5】石英ガラスルツボ製造装置における炭素電極の一実施形態を示す模式図である。
【図6】図5における炭素電極の先端部分の拡大図である。
【図7】石英ガラスルツボ製造装置における炭素電極位置を示す模式図である。
【図8】石英ガラスルツボ製造装置における接触状態の炭素電極の先端部分を示す拡大模式図である。
【図9】本発明の他の実施形態における炭素電極の先端部分を示す模式図である。
【図10】本発明の他の実施形態における炭素電極の先端部分を示す模式図である。
【図11】本発明の他の実施形態における炭素電極を示す模式図であり、(a)は電極全体が連続的に縮径した形状、(b)は電極の先端部が丸みを帯びた形状を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る炭素電極研削装置の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0029】
図1は、本実施形態における炭素電極研削装置を一部断面視して示す模式図であり、図2は、図1のガイド部分および研削刃の組み立て状態を示す組み立て拡大図であり、図3は、図1のガイド部および研削刃を示す分解拡大図であり、図において、符号Gは、炭素電極研削装置である。
【0030】
本実施形態の炭素電極研削装置Gは、24インチ以上の石英ガラスルツボの製造に利用される炭素電極を研削・整形するものとして好適であるが、非導電体をアーク溶融するための装置における炭素電極であれば、被溶融物種類、ルツボ口径、装置出力、および、熱源としての用途等は限定されるものではなく、この構成に限られるものではない。
【0031】
図1に示すように、本実施形態の炭素電極研削装置Gは、アーク放電をおこなう炭素電極13を整形する研削装置とされ、炭素電極13の研削をおこなう研削手段20と、研削中に炭素電極13を保持する保持手段30とを有する。
【0032】
研削手段20は、研削刃21,22と、研削刃21,22を回転する回転軸23とを有する。研削刃21、22は、図1〜図3に示すように、炭素電極13の先端面13dを研削する先端研削刃21と、炭素電極13の先端部13aから基端部13bへ向かって拡径する側周面13eを研削する側周面研削刃22とを有し、これら先端研削刃21と側周面研削刃22とが、炭素電極13の軸線13Lと一致する回転軸線20Lを中心に回動可能な回転軸23にガイド部分25を介して設けられる。
【0033】
先端研削刃21は、図1〜図3に示すように、略矩形の平板からなり、その一辺(稜線)が研削刃として炭素電極13に当接し、炭素電極13の研削面が回転軸23と直交する方向となるように回転軸23に取り付けられる。
【0034】
側周面研削刃22は、図1〜図3に示すように、略矩形の平板からなり、その一辺(稜線)が研削刃として炭素電極13に当接し、炭素電極13の研削面が回転軸23に沿った方向となるように回転軸23に取り付けられている。特に、側周面研削刃22は、先端研削刃21側に近い側周面研削刃22の一端22aから他端22bに向けてその刃面が回転軸線20Lから離間するように設けられている。
【0035】
回転軸23は駆動源24によって回転駆動されるとともに、ガイド部分25を取り付けるフランジ部26を有する。フランジ部26は回転軸23から拡径された形状を有し、回転軸23の回転軸線と直交する方向に拡径されている。これら、回転軸23、駆動源24、ガイド部25、フランジ部26は回転手段を構成している。
【0036】
フランジ部26には、図1〜図3に示すように、回転軸線20Lを中心に4分割される位置に4つのガイド部分25が取り付けられている。このガイド部分25は、先端研削刃21の取り付けられる2つの先端刃ガイド部分25Aと、側周面研削刃22の取り付けられる2つの側周刃ガイド部分25Bとからなり、これらが、回転軸線20Lに対して対称となるようにそれぞれオフセットされて取り付けられている。
【0037】
つまり、先端刃ガイド部分25Aと側周刃ガイド部分25Bは、回転軸線20Lの周方向に沿って交互になり、先端刃ガイド部分25Aどうしおよび側周刃ガイド部分25Bどうしが回転軸線20Lの回りにおいて隣り合わないように位置されている。そして、2つの先端刃ガイド部分25Aの各々に先端研削刃21が取り付けられ、2つの側周刃ガイド部分25Bの各々に側周面研削刃22が取り付けられる。
【0038】
ガイド部分25A,25Bは、いずれも、フランジ部26に取り付けられるとともに回転軸線20Lと直交する方向に延在する基部25aと、該基部25aから回転軸線20Lと並行な方向に向かうとともにこの回転軸線20Lから離間した位置に立設されるガイド部25bとを有する。ガイド部25bの回転軸線20Lに対向した面は、基部25a側からガイド部25bの先端側に向かって回転軸線20Lから離間するように傾斜している。
【0039】
先端刃ガイド部分25Aの基部25aには、先端研削刃21を取り付けるための取り付け部25A1が設けられている。先端研削刃21は、基部25aの延在する方向、つまり、回転軸線20Lと直交する方向に刃面が位置するように取り付けられる。先端刃ガイド部分25Aにおいて、回転軸線20Lと直交する方向に延びる先端研削刃21の刃面は、回転軸線20Lからガイド部25bの基端位置まで達し、かつ、炭素電極13の先端面(平坦面)13dの半径と等しいか、これより少し大きい寸法に設定されている。取り付け部25A1は基部25aに形成された凹部であり、先端研削刃21の刃先が基部25a表の面よりも回転軸線20Lの方向に突出した状態で固定されることを可能としている。
【0040】
また、側周刃ガイド部分25Bのガイド部25bには、側周面研削刃22を取り付けるための取り付け部25B1が設けられている。側周面研削刃22は、回転軸線20Lと並行な方向から多少傾いて刃面が位置するように取り付けられる。側周刃ガイド部分25Bにおいて、炭素電極13の先端面(平坦面)13dの外周位置と等しいか、これよりやや回転軸線20Lに近くなるように先端研削刃21側に位置する側周面研削刃22の一端22aが位置決めされ、この一端22aから回転軸線20Lまでの距離よりも大きい距離で回転軸線20Lから離間するように他端22bが位置決めされて、その結果、側周面研削刃22が回転軸線20Lと角度θ4をなすように設定される。この角度θ4は、後述するように、炭素電極13の側周面13eが電極軸線13Lとなす角度θ2と等しく設定される。
【0041】
取り付け部25B1はガイド部25bに形成された凹部であり、側周面研削刃22の刃先がガイド部25b表面よりも回転軸線20Lに近づく方向に突出した状態で固定されることを可能としている。また、側周面研削刃22は、その刃長の全長にわたって側周刃ガイド部分25Bのガイド部25bに向かって押圧されるように、取り付け部材25cによって押圧された状態としてガイド部25bに取り付けられている。この取り付け部材25cは、ガイド部25bに螺着等の手段により着脱可能とされており、側周面研削刃22を交換可能とされている。
【0042】
取り付け部25A1,25B1においては、研削刃21,22が、それぞれ炭素電極13に当接して研削をおこなう一辺(稜線)と同じ長さの4辺のうち任意の1辺を選択して取り付けられるように構成されている。
【0043】
研削手段20として組み立てられた4つのガイド部分25は、その内側面が回転軸線20Lに対向しており、基部25aからガイド部25bの先端側へ広がっているため、炭素電極13の先端部13aが接近した場合に、炭素電極13を研削位置へと導くガイドとして作用する。
【0044】
また、回転軸線20Lを中心にガイド部分25が回転することで、先端研削刃21と側周面研削刃22との刃面(刃となる一辺)の軌跡が後述する炭素電極13の先端面(平坦面)13dと側周面13eとに一致する形状を形成する。互いに略対向する側周面研削刃22どうしは、研削時に炭素電極13と当接する位置が回転軸線20Lに対して対称な位置となるため、研削時にこの回転軸線20Lと直交してかつ回転軸線20Lから離間する方向に作用する研削力の反作用を互いに打ち消して、回転軸23に回転軸線20Lと直交する方向に過大な力が作用することを防止できる。
【0045】
保持手段30は、炭素電極13の軸線13Lが研削手段20における回転軸線20Lと一致するように複数の接触部31により炭素電極13を保持するとともに、この状態で、図示しない往復駆動部により軸線13L方向に炭素電極13を往復移動させるように位置設定が可能なものとされる。
【0046】
本実施形態の炭素電極研削装置Gによって研削される炭素電極13は、石英ガラスルツボ製造装置1に取り付けられる。
【0047】
図4は、石英ガラスルツボ製造装置を示す模式図である。
【0048】
図4に示すように、この石英ガラスルツボ製造装置1は、石英ガラスルツボの外形を規定するモールド10を有し、モールド10は図示しない回転手段によって回転可能とされ、回転するモールド10の内部に原料粉(石英粉)が所定厚さに充填されて石英粉成形体11とされる。このモールド10内部には、その内表面まで貫通するとともに他端が図示しない減圧手段に接続された通気孔12が複数設けられ、石英粉成形体11内部を減圧可能となっている。モールド10の上側には図示しない電力供給手段に接続されたアーク加熱用の炭素電極13,13,13が設けられ、石英粉成形体11を加熱可能とされている。3本の炭素電極13,13,13は、電極位置設定手段14により、図中矢印Tで示す上下方向の位置および矢印Dで示す電極間距離Dを設定可能とされている。
【0049】
ここで、石英粉とは、石英に限らず、二酸化ケイ素(シリカ)を含む、水晶、珪砂等、石英ガラスルツボの原材料として周知の材料の粉体をも含むものとし結晶状態、アモルファス、ガラス状態であるものを全て含み、その内部構造は石英のみに限定されないものとする。
【0050】
石英ガラスルツボ製造装置1は、300kVA〜12,000kVAの出力範囲で、複数の炭素電極13,13,13によりアーク放電によって非導電性対象物(石英粉)を加熱溶融する高出力の装置である。
【0051】
石英ガラスルツボ製造装置1は、石英ガラスルツボ製造時にアーク放電をおこなう際、各炭素電極13どうしが角度θ1を保ったまま電極の先端の距離を最適位置に制御して、各炭素電極13における電力密度が40kVA/cm 〜1700kVA/cm、より好ましくは40kVA/cm 〜450kVA/cmとなるように電力供給をおこなう。
【0052】
具体的には、直径R2に設定された炭素電極13に対して、300〜12,000kVAの電力を供給する。電力密度がこの範囲以下であると安定したアークを持続することができないが、この範囲内であると、電極振動の増大原因となるローレンツ力を許容範囲内におさめることが可能となるため、発生した電極振動を収束させることが可能となる。
【0053】
ここで、電力密度とは、炭素電極13において、電極中心軸13Lに直交する電極断面の単位断面積あたりに供給される電力量を意味する。具体的には、電極の先端部13aから軸方向長さ15〜25mm程度、好ましくは20mmの位置において電極中心軸13Lに直交する電極の断面積に対する1本の電極に供給する電力の比
供給電力量(kVA)/電極断面積(cm
で表される。
【0054】
図5は、本実施形態における炭素電極13を示す模式図、図6は、図5に示した炭素電極13の先端部分の拡大図である。
【0055】
本実施形態の炭素電極13は略円柱棒状体であり、基端部13b側が略均一直径R1とされ、この基端部13bの直径R1と先端部13aの直径R2との比R2/R1の値が0.6〜0.8の範囲に設定されてなり、先端部13aに炭素電極13の軸線13Lと略直交する平坦面13dが設けられるとともに、この先端部13aに縮径部13cが設けられ、先端部13aの直径R2<R1とされる。
【0056】
本実施形態において縮径部13cは略円錐台形状であり、基端部13b側の直径R3から先端部13aの直径R2まで徐々に縮径するとともに、この縮径部13cの長さL1が先端部13aの直径R2に対する比L1/R2の値が3.5〜7の範囲に設定されている。縮径部13cは、その基端部側の直径R3と前記炭素電極の基端部の直径R1との比R3/R1の値が0.8〜1の範囲に設定される。本実施形態においては、縮径部13cの基端部側の直径R3が電極の基端部の直径R1と等しい状態とされている。
【0057】
また、縮径部13cの側周面13eが平坦面13dとなす角度αと、基端部13b側の側周面13mが前記平坦面13dとなす角度βとの比α/βの値が7/9〜17/18の範囲に設定されている。なお、本実施形態においては、角度βは90°に設定されている。
【0058】
図7は、石英ガラスルツボ製造装置の炭素電極位置を示す模式図である。
【0059】
炭素電極13,13,13は、例えば、三相交流(R相、S相、T相)のアーク放電をおこなうよう同一形状の電極棒とされ、図4,図7に示すように、下方に頂点を有するような逆三角錐状となるとともに、それぞれの電極棒の軸線13Lどうしが角度θ1をなすように設けられている。
【0060】
図8は、石英ガラスルツボ製造装置において接触状態の炭素電極の先端部分を示す拡大模式図である。
【0061】
図8に示すように、炭素電極13は、電力供給開始時において炭素電極13どうしが接触した場合に、側周面13eが炭素電極13の軸線13Lとなす角度θ2は、その接触位置が縮径部13cの範囲内に位置するように設定され、好ましくはθ1>2×θ2とされるが、たとえば、この角度がθ1=2×θ2とされて接触位置が円錐台となる縮径部13cと均一径部分との境界付近まで位置している場合でも、接触位置が縮径部13cの範囲内に位置することが可能な範囲であればこの限りではない。なお、θ2=90°−αである。
【0062】
縮径部13cの長さL1は、先端部13aから接触位置までの距離L2に対して、L2<L1となるとともに、先端部13aから接触位置までの距離L2は、炭素電極13の直径R1に対して、比L2/Rが0〜0.9の範囲となるよう設定される。もちろん、これらL1およびL2は、炭素電極13の軸線13Lどうしの角度θ1および側周面13eが炭素電極13の軸線13Lとなす角度θ2に依存するので、上記の条件を満たすように、これらの範囲が設定されることになる。
【0063】
炭素電極13は、均一径部分である基端部13bにおける直径R1とアーク放電単位時間(1分)当たりに消耗する長さLLとの比LL/R1が0.02〜0.6の範囲となるよう設定されている。炭素電極13の直径R1は、アーク放電の出力と、石英ガラスルツボの口径(大きさ)によって規定される溶融するべき原料粉の量と、溶融処理の温度等の条件と、必要なアーク放電持続時間と、必要な電極強度からが決定されるが、これに加えて、電極振動発生防止の観点から、炭素電極13の直径R1を規定するものである。具体的には、32インチの石英ガラスルツボの製造においては、60分で120mm程度、つまり、1分あたり2mm程度であり、この際の炭素電極13の直径R1は、φ20〜120mmとされる。
【0064】
炭素電極13は、粒子径0.3mm以下、好ましくは0.1mm以下、さらに好ましくは0.05mm以下の高純度炭素粒子によって形成されて、その密度が1.30〜1.80g/cm 、あるいは1.30〜1.70g/cm のとき、電極各相に配置した炭素電極相互の密度差が0.2g/cm以下とされることができ、このように高い均質性を有していることによって、発生したアークが安定であり、炭素電極13の局部的な欠落を防止できる。
【0065】
炭素電極13は、粒子がコークスなどの原料、例えば石炭系ピッチコークス、およびコールタールピッチなどの結合材、例えば石炭系コールタールピッチを炭化した混練物を用いて、押し出し成形やCIP成形により形成することが出来る。炭素電極13は全体的に円柱形状であり、先端部が先細りの形状に形成される。例えば押出し成形によるカーボン電極の製造方法では、目的とする粒子径が得られるように調整されたカーボン質原料と結合材とを加熱混練し、加熱混練して得られる混練物を130〜200℃で押出し成形し、これを焼成後2600〜3100℃で黒鉛化した黒鉛材料を得、これを加工した後、2000℃以上の加熱下で塩素などのハロゲン系ガスにより純化処理する手段を採用することができる。CIP成形によるカーボン電極の製造方法では、目的とする粒子径が得られるように調整されたカーボン質原料と結合材とを加熱混練し、得られる混練物を粉砕し、篩分し、得られた2次粒子をCIP成形し、これを焼成後、2600〜3100℃で黒鉛化して黒鉛材料を得、これを加工した後、2000℃以上の加熱下で塩素などのハロゲン系ガスにより純化処理する手段を採用することができる。
【0066】
本実施形態の炭素電極研削装置Gは、保持手段30によって保持した炭素電極13を軸線13Lの方向に移動することで、軸線13Lと回転軸線20Lとを一定させた状態で研削手段20に炭素電極13を接近させて押圧し、先端部13aを先端研削刃21と側周面研削刃22とに当接させ先端部13aを研削する。これにより、回転軸線20Lと直交する方向で回転軸線20Lから離間する一方向に過大な反作用を受けることなく炭素電極13の先端部13aに先端面13dと側周面13eとを形成して、アーク放電特性の優れた炭素電極13を整形することが可能となる。この際、先端面13dを研削する先端研削刃21が2カ所とされ、側周面13eを研削する側周面研削刃22が2カ所とされているため、研削刃21,22に作用する力が駆動部に対する過負荷となることを防止しながら整形処理をおこなうことができる。
【0067】
また、本実施形態の炭素電極研削装置Gは、回転軸線20Lに対称な位置で炭素電極13を研削するようにしたため、欠け等を発生することなく炭素電極形状を制御することが可能となる。
【0068】
また、本実施形態の炭素電極研削装置Gは、先端研削刃21と側周面研削刃22とをそれぞれ独立に交換可能としたため、それぞれの消耗状態に応じて先端研削刃21と側周面研削刃22とを別々に交換することが可能となるため、交換作業時間の短縮、消耗した研削刃21,22の研磨等による再生時間の短縮、研削刃の構成の単純化およびこれによる製造コストの低減を図ることが可能となる。同時に、研削刃21,22を、その4辺のうちから研削をおこなう刃となる1辺を選択して取り付けられるように構成したので、それぞれの消耗状態に応じて研削刃21,22における研削刃となる辺を個々に交換して取り付けることが可能となるため、交換作業時間の短縮、消耗した研削刃21,22の研磨等による再生時間の短縮、研削刃の構成の単純化およびこれによる製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0069】
本実施形態の炭素電極研削装置Gによれば、石英ガラスルツボ製造装置1において、上述したように整形した炭素電極13を取り付け、同時に、電力供給時およびアーク発生時の電極位置を設定したことにより、平坦面13dの外周部13da位置において炭素電極13どうしの電極間距離を最短として、先端部13a以外での放電発生と電極振動発生を同時に防止するとともに、アーク発生に最適な電流密度を実現してアーク発生を容易にし、かつ、アーク放電を安定して発生させることが可能となる。このように安定したアークを実現できることにより、被溶融物であるルツボ内表面に炭素電極13からの微小片が落下して内部に取り込まれることを防止することもできる。
【0070】
本実施形態の炭素電極研削装置Gによれば、石英ガラスルツボ製造装置1において、上述したように整形した炭素電極13を取り付けたことで、電力密度を最適な範囲とすることができるため、アーク放電の出力と、石英ガラスルツボの口径(大きさ)によって規定される溶融するべき原料粉の量と、溶融処理の温度等の条件と、必要なアーク放電持続時間と、必要な電極強度と電極振動発生防止の条件を同時に満たして、アーク溶融に必要な熱量を石英粉成形体11溶融に供給できるアーク火炎が発生できるとともに、同時に、電極振動を防止することができるという効果を実現することが可能となる。
【0071】
また、本実施形態の炭素電極としては、図9に示すように、アーク放電をおこなう先端部13aを有する棒状の電極13E1と、この電極13E1に接続される複数の電極13E2,13E2によって形成される炭素電極13Eとされることも可能である。この際、電極13E1の先端部13aは、上述したようにその先端形状を設定されるとともに、電極13E1基部の直径と、電極13E2外形の直径はいずれもR1として等しく設定される。
【0072】
炭素電極13Eには、その基端側となる電極13E1の一端(図示右端)にメネジ部13Eaが設けられており、他端(図示左端)31bには縮径部が形成されている。電極13E2の両端にはそれぞれメネジ部13Eaとオネジ部13Ebが形成されており、電極13E1と電極13E2はこのメネジ部13Eaとオネジ部13Ebで連結して継ぎ足せるように形成されている。
【0073】
本実施形態においては、このような電極13E1の先端を研削することもできる。
【0074】
なお、上述したガイド部分25は、先端刃ガイド部分25Aに取り付け部25B1に対応する凹部をガイド部25bに設けることや、側周刃ガイド部分25Bに取り付け部25A1に対応する凹部を基部25aに設けることが可能である。これにより、4つのガイド部分25をほぼ同形状として、交換可能とするとともに、その製造コストを低減することが可能となる。
【0075】
また、この際、取り付け部25B1に対応して先端刃ガイド部分25Aのガイド部25bに設けた凹部には側周面研削刃22と略同形のダミー刃を取り付けるとともに、取り付け部25A1に対応して側周刃ガイド部分25Bの基部25aに設けた凹部には先端研削刃21と略同形状のダミー刃を取り付けることができる。これにより、研削中に炭素電極13がガイド部分25に当接して、炭素電極13が欠けるあるいは、ガイド部分25が破損するということを防止できる。
【0076】
なお、本実施形態においては、縮径部13cの基端部側の直径R3が均一直径R1と同じで、縮径部13cが円錐台形状のものを示したが、次のような構成も可能である。
【0077】
図10は、本発明の他の実施形態における炭素電極研削装置により研削する炭素電極の先端部分を示す模式図である。
【0078】
図10に示すように、他の実施形態としての炭素電極13Aは、直径R3<R1とされ、かつ、縮径部13cは円錐台状とされる。つまり、基端部13b側の均一径部分と縮径部13cとが段を形成するようにすることも可能である。この場合、角度α、角度βはそれぞれ、上述した条件を満たすように設定することができる。また、平坦面13dの外周部13daと段部を形成する均一径部分の端部外周部13baとを結んだ面13L2と、電極軸線13Lとのなす角度θ3が、上記のαまたはθ2と同様に設定されることもできる。
【0079】
炭素電極研削装置は、先端研削刃21が基部25aから突出する突出量と側周面研削刃22がガイド部25bから突出する突出量とを、この形状に対応して設定することが可能である。
【0080】
図11は、本発明の他の実施形態におけるアーク放電装置の炭素電極の先端部分を示す模式図である。
【0081】
さらに、本発明の炭素電極としては、図11(a)に示すように、炭素電極13Bの基部から先端部13aに連続的に縮径し、基部の直径R1に対し先端部13aの直径R2が小さく設定されており、その全長に渡る側面13fが円錐台となっているものが可能である。また、上述した図5,図6に示したものに対して先端部13aの角丸め加工をおこなうことで、図11(b)に示すように、炭素電極13Cの先端部13aにおける接触部分が、その基部が均一径部に連続する円錐台の側周面13hとされるとともに、この円錐台より先端部13a側が、この円錐台となめらかに連続し、かつ、炭素電極13の軸線13Lに沿った断面輪郭において曲率不連続点が存在しない曲線、例えば楕円弧、あるいは円弧とされる形状となっているものが可能である。これらのうち平坦面13dの外周部を明確に有さないものに関しては、電極間距離が最短となる部分が、図5,図6に示した平坦面13dの外周部13daに対応するように、1カ所になるように設定することができる。
【0082】
炭素電極研削装置は、先端研削刃21が基部25aから突出する突出量と側周面研削刃22がガイド部25bから突出する突出量とを、この形状に対応して設定することが可能である。
【実施例】
【0083】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0084】
<実施例1>
本発明の炭素電極研削装置により、以下に示す条件で電極加工をおこなった。
R1=50mm , R2=35mm , L1=100mm
このときのモータ容量、刃の枚数、モータの極数、トルク、および、加工時間を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
表1に示す結果から、実験例1,2では、モータ容量が小さいために、電極が噛み込んでしまい、加工できなかったことがわかる。つまり、実施例2以下に示す石英ガラスルツボ製造にとって好適な電極形状を実現するためには、本発明の炭素電極研削装置が必要である。
【0087】
<実施例2>
本発明の石英ガラスルツボ製造装置を用いて、表2に示すR2がそれぞれ異なる条件にてアーク放電をおこなって石英ガラスルツボを製造し、振動発生の有無、電極へのヒューム付着有無を目視で判断し比較した。その結果を表2に示す。ここで、判定とは、石英ガラスルツボの製造に最も好ましいアークの安定度合いのものを◎とし、好ましいものを○とし、好ましくないものを×とした。
ルツボ口径;32インチ
出力;3,000kVA
処理時間;30分
電極形状;先端円錐台
θ1/2;10°
θ2;4°
炭素電極直径R1;50mm
炭素電極における電力密度P/R2;153〜611kVA/cm
【0088】
【表2】

【0089】
上記の結果から、R2/R1<0.6では、アーク放電開始時に振動が発生し、アークが不安定であることがわかった。また、R2/R1>0.8では、アーク放電は安定するものの、シリカヒュームが付着しやすいため、不適であることがわかった。
【0090】
<実施例3>
R2を30mmの一定値とし、L1を変化させた点以外は上記の実施例2と同様の条件にてアーク放電をおこなって石英ガラスルツボを製造し、振動発生の有無、電極へのヒューム付着有無を目視で判断し比較した。その結果を表3に示す。
【0091】
【表3】

【0092】
上記の結果から、L1−(X/tan(θ1/2))が50mm以上であれば、安定したアークを得ることができることがわかった。ただし、L1−X/tan(θ1/2)をあまり大きくしても、電極加工製造コストの観点から好ましくないため、L1−X/tan(θ1/2)<150mm程度が良好である。
【0093】
<実施例4>
R2を30mmの一定値とし、R3を変化させた点以外は上記の実施例2と同様の条件にてアーク放電をおこなって石英ガラスルツボを製造し、振動発生の有無、電極へのヒューム付着有無を目視で判断し比較した。その結果を表4に示す。
【0094】
【表4】

【0095】
上記の結果から、R3/R1<0.8では、振動が発生するためアークが不安定となることがわかった。
<実施例5>
R2を30mmの一定値とし、θ1/2を変化させた点以外は上記の実施例2と同様の条件かつ電極の先端角θ2=4°にてアーク放電をおこなって石英ガラスルツボを製造し、振動発生の有無、電極へのヒューム付着有無を目視で判断し比較した。その結果を表5に示す。
【0096】
【表5】

【0097】
上記の結果から、θ1/2が5°以下の場合、電極の先端部以外からもアークが飛ぶため、振動が発生してしまい、好ましくないことがわかった。θ1/2が20°を超える場合、電極にフュームが付きやすいため、好ましくないことがわかった。
【0098】
R2=R1 の条件では、アークがいろんなところから飛ぶので不具合があり、また、R2<0.6R1 の条件では、電極が細すぎて振動が起こるため好ましくない。本質的には、0.7R1以下の領域を50〜100mmにすることが重要であることがわかった。
【符号の説明】
【0099】
G…炭素電極研削装置
1…石英ガラスルツボ製造装置
10…モールド
11…石英粉成形体
12…通気孔
13…炭素電極
13L…炭素電極の軸線
13A,13B,13C…炭素電極
13E…炭素電極
13E1,13E2…炭素電極
13Ea…メネジ部
13Eb…オネジ部
13L…軸線
13a…炭素電極の先端部
13b…炭素電極の基端部
13ba…端部外周部
13c…炭素電極の縮径部
13d…先端面(平坦面)
13da…炭素電極の先端面(平坦面)の外周部
13e…炭素電極の側周面
13f…炭素電極の側面
13h…炭素電極の側周面
13m…炭素電極の側周面
15…電極位置設定手段
20…研削手段
20L…回転軸線
21…先端研削刃
22…側周面研削刃
22a…側周面研削刃の一端
22b…側周面研削刃の他端
23…回転軸
24…駆動源
25…ガイド部分
25A…先端刃ガイド部分
25B…側周刃ガイド部分
25A1…取り付け部
25B1…取り付け部
25a…基部
25b…ガイド部
25c…取り付け部材
26…フランジ部
30…保持手段
31…接触部
D…電極間距離
R1…炭素電極の基端部の直径
R2…炭素電極の先端部の直径
R3…縮径部の基端部側の直径
α,β…角度
θ1,θ2,θ3…角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク放電用炭素電極の先端部を整形する研削装置であって、
前記炭素電極の先端面を研削する先端研削刃と、
前記炭素電極の前記先端面から基端部へ向かう側周面を研削する側周面研削刃と、
前記先端研削刃と前記側周面研削刃とを前記炭素電極の軸線と一致する回転軸線回りに回転駆動する回転手段とを有してなることを特徴とする炭素電極研削装置。
【請求項2】
前記先端研削刃と前記側周面研削刃とが、前記回転軸線を対称点として対称な位置関係を有するように取り付けられてなることを特徴とする請求項1記載の炭素電極研削装置。
【請求項3】
前記側周面研削刃は、前記回転軸線に沿った方向に延設されると共に、前記先端研削刃側に位置する前記側周面研削刃の一端から他端に向けて前記回転軸線から離間するように設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の炭素電極研削装置。
【請求項4】
前記先端研削刃は、前記回転軸線と直交する方向に延設されていることを特徴とする請求項1または2記載の炭素電極研削装置。
【請求項5】
前記回転手段は、前記回転軸線を中心に4分割された位置に4つのガイド部分を有し、前記ガイド部分は、前記先端研削刃が取り付けられる2つの先端刃ガイド部分と、前記側周面研削刃が取り付けられる2つの側周刃ガイド部分を含み、前記先端刃ガイド部分には前記先端研削刃を取り付けるための第1の取り付け部が設けられており、前記側周刃ガイド部分には前記側周面研削刃を取り付けるための第2の取り付け部が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の炭素電極研削装置。
【請求項6】
前記ガイド部分のうち、前記回転軸線の回りで隣り合わない2カ所には前記先端研削刃が取り付けられており、前記回転軸線の回りで隣り合わない他の2カ所には前記側周面研削刃が取り付けられていることを特徴とする請求項5記載の炭素電極研削装置。
【請求項7】
前記先端研削刃が取り付けられた前記先端刃ガイド部分と、前記側周面研削刃が取り付けられた前記側周刃ガイド部分とが、前記回転軸線の回りで隣り合うよう配置されてなることを特徴とする請求項6記載の炭素電極研削装置。
【請求項8】
前記ガイド部分のうち、前記先端研削刃と前記側周面研削刃とが取り付けられていないガイド部分には、ダミー刃が設けられてなることを特徴とする請求項5から7のいずれか記載の炭素電極研削装置。
【請求項9】
前記ガイド部分のうち、互いに隣り合わない2つのガイド部分に2つの先端研削刃がそれぞれ取り付けられており、互いに隣り合わない他の2つのガイド部分に2つの側周面研削刃がそれぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項5記載の炭素電極研削装置。
【請求項10】
前記先端研削刃が取り付けられた先端刃ガイド部分では前記側周面研削刃による研削をおこなわず、側周面研削刃が取り付けられた側周刃ガイド部分では前記先端研削刃による研削をおこなわないことを特徴とする請求項5から9のいずれか記載の炭素電極研削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−184344(P2010−184344A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4421(P2010−4421)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(592176044)ジャパンスーパークォーツ株式会社 (90)
【Fターム(参考)】