説明

炭酸エステル化合物,電解質,電池および炭酸エステル化合物の製造方法

【課題】 標識化した炭酸エステル化合物およびその製造方法、ならびに標識化した炭酸エステル化合物を含む電解質および電池を提供する。
【解決手段】 1,3−ジオキソール−2−オン、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンあるいは炭酸ジメチルなどの炭酸エステルの構成元素のうちの少なくとも一部が、重水素,13C,17Oまたは18Oとなっている。すなわち、これらの化合物は標識化されており、例えば、電池の電解質に混合するようにすれば、電池内部における分解物などを解析することにより、作動メカニズムなどを調べることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸エステル化合物およびその製造方法、ならびに炭酸エステル化合物を含む電解質および電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型VTR(Videotape Recorder;ビデオテープレコーダ),デジタルスチルカメラ,携帯電話,携帯情報端末あるいはノート型パソコンなどのポータブル電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。それに伴い、これらの電子機器の電源として、軽量で高エネルギー密度を得ることができる二次電池の開発が進められている。中でも、負極に炭素材料を用い、正極にリチウムと遷移金属との複合材料を用い、電解液に炭酸エステルを用いたリチウムイオン二次電池は、従来の鉛電池およびニッケルカドミウム電池と比べて、大きなエネルギー密度を得ることができるので広く実用化されている。
【0003】
このようなリチウムイオン二次電池では、充電状態において負極が強還元剤となるので、電解液が分解され易くなり、それに伴い放電容量が低下してしまう。そこで、従来より、サイクル特性などの電池特性を向上させるために、電解液の組成について種々の検討がなされている。例えば、添加剤あるいは溶媒として、1,3−ジオキソール−2−オンあるいは4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが用いることが検討されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平8−45545号公報
【特許文献2】特開平7−240232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの添加剤あるいは溶媒は、分解して電極表面に被膜を形成することにより、電解液の更なる分解を抑制すると考えられているが、添加剤あるいは溶媒には複数の炭酸エステルを用いることが多く、電池内部において、いずれの添加剤あるいは溶媒が、どのようなメカニズムで働いているかは不明な点が多かった。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、標識化した炭酸エステル化合物およびその製造方法、ならびに標識化した炭酸エステル化合物を含む電解質および電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の炭酸エステル化合物は、構成元素のうちの少なくとも一部が、重水素,13C,17Oまたは18Oのものである。
【0007】
本発明の第1の炭酸エステル化合物の製造方法は、構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含むアルコールと、ホスゲン,トリホスゲン,ハロゲン化蟻酸エステル,炭酸エステルおよびハロゲン化炭酸エステルからなる群のうちの少なくとも1種とを反応させる工程を含むものである。
【0008】
本発明の第2の炭酸エステル化合物の製造方法は、構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含むアルキレンオキシドと、二酸化炭素とを反応させる工程を含むものである。
【0009】
本発明の第3の炭酸エステル化合物の製造方法は、構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含む炭酸エステルを、ハロゲン化剤によりハロゲン化する工程を含むものである。
【0010】
本発明の第4の炭酸エステル化合物の製造方法は、構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含むハロゲン化炭酸エステルのハロゲンを、ハロゲン交換反応により、他のハロゲンに置換する工程を含むものである。
【0011】
本発明の第5の炭酸エステル化合物の製造方法は、構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含むハロゲン化炭酸エステルを、塩基を用いて脱ハロゲン化水素することにより、不飽和結合を形成する工程を含むものである。
【0012】
本発明の電解質は、構成元素のうちの少なくとも一部が、重水素,13C,17Oまたは18Oである炭酸エステル化合物を含むものである。
【0013】
本発明の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、電解質は、構成元素のうちの少なくとも一部が、重水素,13C,17Oまたは18Oである炭酸エステル化合物を含むものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の炭酸エステル化合物によれば、構成元素のうちの少なくとも一部を、重水素,13C,17Oまたは18Oとしたので、これらの元素により標識化することができる。よって、この炭酸エステル化合物を含んだ本発明の電解質あるいは電池によれば、例えば、これらの内部における分解物などを解析することにより、作動メカニズムなどを調べることができる。
【0015】
また、本発明の炭酸エステル化合物の製造方法によれば、構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含むアルコールと、ホスゲン,トリホスゲン,ハロゲン化蟻酸エステル,炭酸エステルおよびハロゲン化炭酸エステルからなる群のうちの少なくとも1種とを反応させる工程を含むようにしたので、あるいは構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含むアルキレンオキシドと、二酸化炭素とを反応させる工程を含むようにしたので、あるいは構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含む炭酸エステルを、ハロゲン化剤によりハロゲン化する工程を含むようにしたので、あるいは構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含むハロゲン化炭酸エステルのハロゲンを、ハロゲン交換反応により、他のハロゲンに置換する工程を含むようにしたので、あるいは構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含むハロゲン化炭酸エステルを、塩基を用いて脱ハロゲン化水素することにより、不飽和結合を形成する工程を含むようにしたので、本発明の炭酸エステル化合物を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
本発明の一実施の形態に係る炭酸エステル化合物は、炭酸エステルあるいはハロゲン化炭酸エステルにおける構成元素のうちの少なくとも一部が、同位体元素である重水素,13C,17Oまたは18Oとなっているものである。これにより、標識化することができる。なお、通常、炭酸エステルなどの構成元素としての水素(H),炭素(C),酸素(O)は、1 H,12C,16Oとして存在している。
【0018】
このような炭酸エステル化合物は、例えば、鎖式化合物,環式化合物あるいは不飽和化合物となっている。具体的には、化1に示した化合物あるいは化2に示した化合物などがある。
【0019】
【化1】

【0020】
【化2】

【0021】
化1において、R1,R2は、炭化水素基またはその少なくとも一部の水素をハロゲンで置換した基を表す。R1,R2は同一であってもよく、異なっていてもよい。但し、構成元素のうちの少なくとも一部は、重水素,13C,17Cまたは18Oである。R1,R2の具体例としては、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基あるいはこれらの少なくとも一部の水素をフッ素,塩素などのハロゲンで置換した基などがある。
【0022】
化2において、R3は、炭素間の単結合または炭素間の二重結合を有する炭化水素基またはその少なくとも一部の水素をハロゲンで置換した基を表す。但し、構成元素のうちの少なくとも一部は、重水素,13C,17Cまたは18Oである。R3の具体例としては、エチレン基あるいはその少なくとも一部の水素をフッ素,塩素などのハロゲンで置換した基,プロピレン基,ビニレン基,フェニレン基などがある。)
【0023】
このような炭酸エステル化合物について具体的に例を挙げれば、重水素,13C,17Oまたは18Oを構成元素として含む炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチル、フルオロ炭酸ジメチル、フルオロ炭酸ジエチル、フルオロ炭酸エチルメチル、フルオロ炭酸ジプロピル、フルオロ炭酸ジブチル、1,3−ジオキソラン−2−オン(炭酸エチレン)、1,3−ジオキソール−2−オン(炭酸ビニレン)、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、あるいは炭酸カテコールなどがある。
【0024】
炭酸エステル化合物は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0025】
例えば、構成元素のうちの少なくとも一部を、重水素,13C,17Oまたは18Oとしたアルコールと、ホスゲン,トリホスゲン,ハロゲン化蟻酸エステル,炭酸エステルあるいはハロゲン化炭酸エステルとを反応させることにより、製造することができる。アルコールとしては、例えば、重水素,13C,17Oまたは18Oを構成元素として含むメタノール、エタノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノールあるいはフェノールなどの1価のアルコール、または1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールあるいはカテコールなどの2価のアルコールが挙げられる。また、ホスゲン,トリホスゲン,またはハロゲン化蟻酸エステルを反応させる場合には、生成する塩化水素などのハロゲン化水素を捕捉するためにトラップ剤を用いてもよい。トラップ剤としては、例えば、ピリジンあるいはトリエチルアミンなどのアミンが挙げられる。炭酸エステルあるいはハロゲン化炭酸エステルを反応させる場合には、エステル交換反応となるので、触媒として塩酸あるいは硫酸などの酸、またはアルカリ金属の水酸化物などの塩基を用いてもよい。
【0026】
また、次のようにして、炭酸エステル化合物を製造してもよい。例えば、構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含むアルキレンオキシドと、二酸化炭素とを反応させることにより、環式の炭酸エステル化合物を製造することができる。アルキレンオキシドとしては、例えば、重水素,13C,17Oまたは18Oを構成元素として含むエチレンオキサイド,プロピレンオキサイドあるいはエポキシブタンが挙げられる。また、反応の際には、必要に応じて触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、ハロゲン化金属塩が挙げられる。
【0027】
更に、次のようにして、炭酸エステル化合物を製造してもよい。例えば、構成元素のうちの少なくとも一部について、重水素,13C,17Oまたは18Oとした炭酸エステルを、ハロゲン化剤を用いてハロゲン化することにより、製造することができる。ハロゲン化剤としては、例えば、ハロゲン単体,塩化スルフリル,塩化チオニルあるいはハロゲン化こはく酸イミドが挙げられる。また、必要に応じて、ラジカル開始剤あるいは触媒を用いてもよく、光照射を行なってもよい。
【0028】
更にまた、次のようにして、炭酸エステル化合物を製造してもよい。例えば、構成元素のうちの少なくとも一部について、重水素,13C,17Oまたは18Oとしたハロゲン化炭酸エステルのハロゲンを、ハロゲン交換反応を利用して、他のハロゲンに置換することにより製造することができる。具体的に例を挙げれば、塩素を有する炭酸エステル化合物を、ハロゲン交換剤、例えば、フッ素化剤としてフッ化カリウムで処理することにより、フッ素を有する炭酸エステル化合物を製造することができる。
【0029】
加えて、次のようにしても、炭酸エステル化合物を製造することができる。例えば、構成元素のうちの少なくとも一部について、重水素,13C,17Oまたは18Oとし、更にハロゲン原子を有する炭酸エステルを、塩基を用いて脱ハロゲン化水素することにより、不飽和結合を有する炭酸エステル化合物を製造することができる。塩基としては、例えば、トリメチルアミンあるいはピリジンなどのアミン類、またはアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。
【0030】
炭酸エステル化合物は、例えば、次のようにして二次電池に用いることができる。
【0031】
図1はその二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池はいわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を介して積層し巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、電解液が注入され、セパレータ23に含浸されている。また、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
【0032】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient ;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0033】
巻回電極体20の中心には例えばセンターピン24が挿入されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウム(Al)などよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0034】
図2は図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面または片面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
【0035】
正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、リチウム(Li)を吸蔵および放出可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。リチウムを吸蔵および放出可能な正極材料としては、例えば、硫化チタン(TiS2 ),硫化モリブデン(MoS2 ),セレン化ニオブ(NbSe2 )あるいは酸化バナジウム(V2 5 )などのリチウムを含有しないカルコゲン化物、または、リチウムコバルト複合酸化物(Lix CoO2 (0.05≦x≦1.10))、リチウムニッケル複合酸化物(Lix NiO2 )、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(Lix Ni1-z Coz 2 (z<1))、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(Lix Ni(1-v-w) Cov Mnw O2 (v+w<1))、スピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2 4 )、リチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4 )、リチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-u Mnu PO4 (u<1))などのリチウムを含有するリチウム含有化合物が挙げられる。
【0036】
負極22は、例えば、正極21と同様に、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面または両面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。負極集電体22Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
【0037】
負極活物質層22Bは、例えば、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて正極21と同様の結着剤を含んでいてもよい。リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な炭素材料が挙げられる。炭素材料としては、例えば難黒鉛化炭素,易黒鉛化炭素,グラファイト,熱分解炭素類,コークス,ガラス状炭素類,有機高分子化合物焼成体,活性炭およびカーボンブラックなどのいずれか1種または2種以上を用いることができる。このうち、コークス類には、ピッチコークス,ニードルコークスあるいは石油コークスなどがあり、有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子化合物を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。
【0038】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、また、スズ(Sn)またはケイ素(Si)を構成元素として含む材料が挙げられる。スズおよびケイ素はリチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。
【0039】
このような負極材料としては、具体的には、スズの単体,合金,あるいは化合物、またはケイ素の単体,合金,あるいは化合物、またはこれらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。なお、本発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0040】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、更にまた、例えば、リチウムと合金を形成可能な他の金属元素または他の半金属元素を構成元素として含む材料を用いることもできる。このような金属元素あるいは半金属元素としては、マグネシウム(Mg),ホウ素(B),アルミニウム,ガリウム(Ga),インジウム(In),ゲルマニウム(Ge),鉛(Pb),ビスマス(Bi),カドミウム(Cd),銀(Ag),亜鉛(Zn),ハフニウム(Hf),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y),パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。
【0041】
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0042】
セパレータ23に含浸された電解液は、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。
【0043】
溶媒は、本発明の炭酸エステル化合物を含んでいる。これにより、例えば、電池を解体して分解物などを解析するれば、作動メカニズムなどを解明することができるようになっている。また、例えば、電極に形成された被膜における重水素,13C,17Oまたは18Oの量を解析することにより、炭酸エステル化合物などの最適な量や初回充電条件などを解明することができる。
【0044】
溶媒としては、この炭酸エステル化合物に加えて、他の溶媒を混合して用いてもよい。他の溶媒としては、電解質塩を溶解できる非プロトン性の溶媒が好ましく、例えば、炭酸エステルなどのエステル類、エーテル類、ラクトン類、ニトリル類、アミド類あるいはスルホン類が挙げられる。具体的には、1,3−ジオキソール−2−オン(炭酸エチレン)、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、1,3−ジオキソール−2−オン(炭酸ビニレン)、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、あるいは4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどの非水溶媒が挙げられる。他の溶媒には1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0045】
電解質塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、ビス[トリフルオロメタンスルホニル]イミドリチウム((CF3 SO2 2 NLi)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルリチウム((CF3 SO2 3 CLi)、トリスペンタフルオロエチルトリフルオロリン酸リチウム(LiP(C2 5 3 3 )、トリフルオロメチルトリフルオロホウ酸リチウム(LiB(CF3 )F3 )、ペンタフルオロエチルトリフルオロホウ酸リチウム(LiB(C2 5 )F3 )、あるいはビス[ペンタフルオロエタンスルホニル]イミドリチウム((C2 5 SO2 2 NLi)などのリチウム塩が挙げられる。電解質塩には1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0047】
まず、例えば、正極集電体21Aに正極活物質層21Bを形成し正極21を作製する。正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質の粉末と導電剤と結着剤とを混合して正極合剤を調製したのち、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとし、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し乾燥させ、圧縮成型することにより形成する。また、例えば、正極21と同様にして、負極集電体22Aに負極活物質層22Bを形成し負極22を作製する。
【0048】
次いで、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。続いて、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1,2に示した二次電池が完成する。
【0049】
このように本実施の形態によれば、炭酸エステルあるいはハロゲン化炭酸エステルにおける構成元素のうちの少なくとも一部を、重水素,13C,17Oまたは18Oとしたので、これらの元素により標識化することができる。よって、本実施の形態に係る二次電池によれば、例えば、これらの内部における分解物などを解析することにより、作動メカニズムなどを調べることができる。
【0050】
また、本実施の形態に係る炭酸エステル化合物の製造方法によれば、構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含むアルコールと、ホスゲン,トリホスゲン,ハロゲン化蟻酸エステル,炭酸エステルおよびハロゲン化炭酸エステルからなる群のうちの少なくとも1種とを反応させる工程を含むようにしたので、あるいは構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含むアルキレンオキシドと、二酸化炭素とを反応させる工程を含むようにしたので、あるいは構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含む炭酸エステルを、ハロゲン化剤によりハロゲン化する工程を含むようにしたので、あるいは構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含むハロゲン化炭酸エステルのハロゲンを、ハロゲン交換反応により、他のハロゲンに置換する工程を含むようにしたので、あるいは構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含むハロゲン化炭酸エステルを、塩基を用いて脱ハロゲン化水素することにより、不飽和結合を形成する工程を含むようにしたので、本実施の形態に係る炭酸エステル化合物を容易に製造することができる。
【実施例】
【0051】
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0052】
(実施例1)
[重水素化した4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの合成]
冷却器と滴下漏斗と2つずつを備えたフラスコを窒素により置換し、重水素化した1,3−ジオキソラン−2−オン4.0g(43mmol)を収め、80℃で加熱攪拌した。そののち、アゾビスイソブチロニトリル0.02g(0.12mmol)のクロロベンゼン溶液を滴下しながら、ハロゲン化剤として塩化スルフリル7.0g(52mmol)を同時に5分で滴下した。更に、1時間攪拌したのちの反応溶液に、ジエチルエーテルと飽和食塩水とを加えて、有機層を分液した。続いて、有機層を硫酸マグネシウム(MgSO4 )で乾燥し濾過したのち、減圧蒸留して、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(沸点;64℃〜69.5℃/0.5mmHg)1.3gを回収した。4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの収率は約23%であった。また、回収した4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンについて、ガスクロマト質量分析計(GC−MS;gas-chromatograph-massspectrometer)により質量分析を行ったところ、質量(m/z)は125であり、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが重水素化されていることを確認した。なお、重水素化していない4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの質量(m/z)は122である。
【0053】
(実施例2)
[重水素化した1,3−ジオキソール−2−オンの合成]
冷却器を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、重水素化した4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン1.3g(10mmol)と、脱水ジエチルエーテル1mlとを収め、アミンとしてトリエチルアミン1.3g(12mmol)を加え、50℃で13時間攪拌することにより、脱塩化水素を行った。続いて、ジエチルエーテル10mlと、ヘキサン10mlとを加えて攪拌した溶液を濾過し、副生したアンモニウム塩を除去した。次いで、アンモニウム塩を除去した溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮したのち、減圧蒸留することにより、1,3−ジオキソール−2−オン0.3gを回収した。1,3−ジオキソール−2−オンの収率は33%であった。また、回収した1,3−ジオキソール−2−オンについて、ガスクロマト質量分析計により質量分析を行ったところ、質量(m/z)は88であり、1,3−ジオキソール−2−オンが重水素化されていることを確認した。なお、重水素化していない1,3−ジオキソール−2−オンの質量(m/z)は86である。
【0054】
(実施例3)
[重水素化した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの合成]
窒素雰囲気下でフラスコに、重水素化した4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン1.3g(10mmol)と、フッ素化剤として、スプレードライにより作製したフッ化カリウム0.7g(12mmol)とを加え、50℃で攪拌することにより塩素とフッ素とを置換し、ジエチルエーテルで抽出した。続いて、抽出物を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥したのち、減圧蒸留して、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(沸点;75℃/5mmHg)0.9gを回収した。4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの収率は80%であった。また、回収した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンについて、ガスクロマト質量分析計により質量分析を行ったところ、質量(m/z)は109であり、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが重水素化されていることを確認した。なお、重水素化していない4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの質量(m/z)は106である。
【0055】
(実施例4)
[重水素化した炭酸ジメチルの合成]
トリホスゲン1.5g(5mmol)と、重水素化したメタノール1.1g(30mmol)のジエチルエーテル溶液に、トラップ剤としてピリジン2.4g(30mmol)のジエチルエーテル溶液を滴下し、7時間攪拌したのち、ジエチルエーテルで抽出し、常圧蒸留して炭酸ジメチル0.9gを回収した。炭酸ジメチルの収率は60%であった。また、回収した炭酸ジメチルについて、ガスクロマト質量分析計により質量分析を行ったところ、質量(m/z)は96であり、炭酸ジメチルが重水素化されていることを確認した。なお、重水素化していない炭酸ジメチルの質量(m/z)は90である。
【0056】
(実施例5)
図1,2に示した二次電池を作製した。まず、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とをLi2 CO3 :CoCO3 =0.5:1のモル比で混合し、空気中において900℃で5時間焼成して焼成物を得た。得られた焼成物について、X線回折測定を行ったところ、JCPDSファイルに登録されたLiCoO2 のピークと良く一致していた。このLiCoO2 を粉砕し、レーザー回折法で得られる累積50%粒径が150μmのLiCoO2 粉末とし、正極活物質とした。このLiCoO2 粉末95質量部と、炭酸リチウム5質量部とを混合し、この混合物91質量部と、導電剤としてグラファイト6質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合して正極合剤を調製したのち、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとした。続いて、この正極合剤スラリーを厚み20μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体21Aの両面に均一に塗布して乾燥させたのち圧縮成型して正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製した。そののち、正極集電体21Aの一端にアルミニウム製の正極リード25を取り付けた。
【0057】
また、負極活物質として人造黒鉛90質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合し、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとした。続いて、この負極合剤スラリーを銅箔よりなる負極集電体22Aに均一に塗布して乾燥させたのち圧縮成型して負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製した。続いて、負極集電体22Aの一端にニッケル製の負極リード26を取り付けた。
【0058】
正極21および負極22をそれぞれ作製したのち、厚み25μmの微多孔性ポリプロピレンフィルムよりなるセパレータ23を用意し、負極22,セパレータ23,正極21,セパレータ23の順に積層してこの積層体を渦巻型に多数回巻回することにより、外径18mmの渦巻型の巻回電極体20を作製した。
【0059】
巻回電極体20を作製したのち、巻回電極体20を一対の絶縁板12,13で挟み、負極リード26を電池缶11に溶接すると共に、正極リード25を安全弁機構15に溶接して、巻回電極体20をニッケルめっきした鉄製の電池缶11の内部に収納した。続いて、電池缶11の内部に電解液を減圧方式により注入した。電解液には、1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸ジメチルと、重水素化した1,3−ジオキソール−2−オンとを、1,3−ジオキソラン−2−オン:炭酸ジメチル:重水素化した1,3−ジオキソール−2−オン=47.5:47.5:5の質量比で混合した混合溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を溶解させたものを用いた。電解液におけるLiPF6 の濃度は、1mol/lとした。
【0060】
そののち、ガスケット27を介して電池蓋24を電池缶21にかしめることにより、直径18mm、高さ65mmの円筒型の二次電池を作製した。
【0061】
実施例5に対する比較例5として、重水素化した1,3−ジオキソール−2−オンを用いなかったことを除き、他は実施例5と同様にして二次電池を作製した。
【0062】
作製した実施例5および比較例5の二次電池について、サイクル特性を調べた。サイクル特性は、23℃で充放電を50サイクル行い、1サイクル目の放電容量に対する50サイクル目の放電容量維持率(50サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100(%)を求めた。その際、充電は、1.1Aの定電流で電池電圧が4.2Vに達するまで行ったのち、4.2Vの定電圧で電流値が20mAに達するまで行い、放電は、2Aの定電流密度で電池電圧が3.0Vに達するまで行った。それらの結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1から分かるように、重水素化した1,3−ジオキソール−2−オンを用いても、重水素化していない1,3−ジオキソール−2−オンを用いた場合と同様に、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0065】
また、実施例5の二次電池を解体して、負極表面の被膜をTOF−SIMS(Time Of Fright-Secondary Ion Mass Spectroscopy;飛行時間型二次イオン質量分析)により分析したところ、炭素数3以上の重水素化された炭化水素と、重水素化されたアルコキシリチウムとが確認された。すなわち、1,3−ジオキソール−2−オンの分解挙動を解明することができた。また、被膜における重水素化物を含む被膜の量を調べることにより、1,3−ジオキソール−2−オンの添加量や充電条件を解明することができた。
【0066】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、電解質として電解液を用いる場合について説明したが、電解液を高分子化合物に保持させてゲル状の電解質としてもよい。
【0067】
また、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる二次電池について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他のアルカリ金属、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属、またはアルミニウムなどの他の軽金属を用いる場合についても、本発明を適用することができる。また、負極において、リチウムの溶解析出反応を利用する二次電池についても、本発明を適用することができる。
【0068】
更に、上記実施の形態または実施例では、円筒型の二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明はラミネートフィルム型,コイン型,ボタン型、角型あるいは大型などの他の形状を有する二次電池、または積層構造などの他の構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。また、本発明は、二次電池に限らず、一次電池などの他の電池についても同様に適用することができる。
【0069】
加えて、上記実施の形態または実施例では、炭酸エステル化合物を電池に用いる場合について説明したが、キャパシタなどにも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の炭酸エステル化合物を用いた二次電池の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した二次電池における巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【符号の説明】
【0071】
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17…ガスケット、20…巻回電極体、21…正極、21A…正極集電体、21B…正極活物質層、22…負極、22A…負極集電体、22B…負極活物質層、23…セパレータ、24…センターピン、25…正極リード、26…負極リード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成元素のうちの少なくとも一部が、重水素,13C,17Oまたは18Oであることを特徴とする炭酸エステル化合物。
【請求項2】
鎖式化合物,環式化合物,および不飽和化合物からなる群のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の炭酸エステル化合物
【請求項3】
化1または化2に示した化合物からなる群のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の炭酸エステル化合物。
【化1】

(式中、R1,R2は、炭化水素基またはその少なくとも一部の水素をハロゲンで置換した基を表す。但し、構成元素のうちの少なくとも一部は、重水素,13C,17Oまたは18Oである。)
【化2】

(式中、R3は、炭素間の単結合または炭素間の二重結合を有する炭化水素基またはその少なくとも一部の水素をハロゲンで置換した基を表す。但し、構成元素のうちの少なくとも一部は、重水素,13C,17Oまたは18Oである。)
【請求項4】
構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含むアルコールと、ホスゲン,トリホスゲン,ハロゲン化蟻酸エステル,炭酸エステルおよびハロゲン化炭酸エステルからなる群のうちの少なくとも1種とを反応させる工程を含むことを特徴とする炭酸エステル化合物の製造方法。
【請求項5】
構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含むアルキレンオキシドと、二酸化炭素とを反応させる工程を含むことを特徴とする炭酸エステル化合物の製造方法。
【請求項6】
構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含む炭酸エステルを、ハロゲン化剤によりハロゲン化する工程を含むことを特徴とする炭酸エステル化合物の製造方法。
【請求項7】
構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含むハロゲン化炭酸エステルのハロゲンを、ハロゲン交換反応により、他のハロゲンに置換する工程を含むことを特徴とする炭酸エステル化合物の製造方法。
【請求項8】
構成元素のうちの少なくとも一部に、重水素,13C,17Oまたは18Oを含むハロゲン化炭酸エステルを、塩基を用いて脱ハロゲン化水素することにより、不飽和結合を形成する工程を含むことを特徴とする炭酸エステル化合物の製造方法。
【請求項9】
構成元素のうちの少なくとも一部が、重水素,13C,17Oまたは18Oである炭酸エステル化合物を含むことを特徴とする電解質。
【請求項10】
前記炭酸エステル化合物は、鎖式化合物,環式化合物,および不飽和化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項9記載の電解質。
【請求項11】
前記炭酸エステル化合物は、化3または化4に示した化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項9記載の電解質。
【化3】

(式中、R1,R2は、炭化水素基またはその少なくとも一部の水素をハロゲンで置換した基を表す。但し、構成元素のうちの少なくとも一部は、重水素,13C,17Oまたは18Oである。)
【化4】

(式中、R3は、炭素間の単結合または炭素間の二重結合を有する炭化水素基またはその少なくとも一部の水素をハロゲンで置換した基を表す。但し、構成元素のうちの少なくとも一部は、重水素,13C,17Oまたは18Oである。)
【請求項12】
正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記電解質は、構成元素のうちの少なくとも一部が、重水素,13C,17Oまたは18Oである炭酸エステル化合物を含む
ことを特徴とする電池。
【請求項13】
前記炭酸エステル化合物は、鎖式化合物,環式化合物,および不飽和化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項12記載の電池。
【請求項14】
前記炭酸エステル化合物は、化5または化6に示した化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項12記載の電池。
【化5】

(式中、R1,R2は、炭化水素基またはその少なくとも一部の水素をハロゲンで置換した基を表す。但し、構成元素のうちの少なくとも一部は、重水素,13C,17Oまたは18Oである。)
【化6】

(式中、R3は、炭素間の単結合または炭素間の二重結合を有する炭化水素基またはその少なくとも一部の水素をハロゲンで置換した基を表す。但し、構成元素のうちの少なくとも一部は、重水素,13C,17Oまたは18Oである。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−84469(P2007−84469A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273931(P2005−273931)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】