説明

炭酸ガスの液化装置および二酸化炭素貯蔵システム

【課題】フロン等の中間冷媒を使用せずに、コーティングのない一般的な伝熱管を利用して二酸化炭素ガスを効率よく液化できる液化装置および二酸化炭素貯蔵システムを提供する。
【解決手段】容器10内に配置された冷却管15に冷媒aを流し、容器10内に二酸化炭素ガスbを供給することにより、冷却管15の表面で二酸化炭素ガスbを凝縮させる液化装置であって、冷却管15は容器10内において上下方向に離れて複数本並列に配置され、鉛直方向に重なる位置関係にある冷却管15同士の間には、下方に位置する冷却管15の上方を覆うカバー体25が設けられている。上方の冷却管15の表面で液化させられた二酸化炭素b1が、下方の冷却管15の表面に再付着することがなく、下方の冷却管15の表面において二酸化炭素が固化してしまうといった事態が回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒として液化天然ガス(LNG)、液化酸素、液化窒素、液化アルゴン等の気化時の冷熱を利用して二酸化炭素ガス(炭酸ガス)を液化させる液化装置および二酸化炭素貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素ガスを冷却凝縮して液化させる方法として、例えば液化天然ガス(LNG)を冷媒に用いる方法が知られている。だが、LNGの通常の利用温度は二酸化炭素の凝固温度よりも遙かに低い−150℃程度以下である。このため、冷却しすぎて二酸化炭素が冷却管の表面に凝固付着し、液化装置の閉塞に至ってしまうと、連続的な液化ができなくなってしまう。また、そのような液化装置の閉塞を回避するためには、冷却管を高密度に配置できなくなり、少ない容積で熱交換効率を上げることが困難となる。
【0003】
かかる問題を回避するために、特許文献1には、フロン等の中間冷媒を用いて二酸化炭素の固化を防止する技術が開示されている。また一方、特許文献2には、冷却管の表面に所定の厚さのコーティングを施すことにより温度降下を緩和し、冷却管の表面温度を二酸化炭素の液化可能温度に保持する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−69215号公報
【特許文献2】特開2003−336964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように中間冷媒を用いた場合、LNGで中間冷媒を冷却する工程と、中間冷媒で二酸化炭素ガスを冷却する工程の2段階が必要であり、プロセスが煩雑になるとともにシステムが複雑化してしまう。また一方、特許文献2のように冷却管の表面をコーティングして温度降下を緩和した場合は、冷熱の有効利用が図れなくなり、エネルギーの無駄を生じてしまう。また、コーティング加工の手間も必要となる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、フロン等の中間冷媒を使用せずに、コーティングのない一般的な伝熱管を利用して二酸化炭素ガスを効率よく液化できる液化装置および二酸化炭素貯蔵システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的に鑑み、本発明者らは、容器内に配置された複数本の冷却管に冷媒として液化天然ガスを流し、冷却管の表面で二酸化炭素ガスを凝縮させるいわゆるシェルアンドチューブ型の液化装置について、閉塞の原因を鋭意検討した。ここで、図8に従来のシェルアンドチューブ型の液化装置1’を示す。従来のシェルアンドチューブ型の液化装置1’では、容器10内において複数本の冷却管15が水平方向と鉛直方向に並べて並列に配置されている。従来のシェルアンドチューブ型の液化装置では、上下方向に重複する位置関係にある冷却管15では、上方の冷却管15の表面で液化させられた二酸化炭素が液滴となって自重で落下した場合、液化した二酸化炭素が下方の冷却管15の表面に再付着してそこで更に冷却され、これにより、特に下方の冷却管15の表面において、二酸化炭素が凝固温度よりも低い温度まで冷却されて固化していることが分かってきた。このため、液化装置の閉塞を回避するためには、液化した二酸化炭素が冷却管の表面に再付着することを防止するのが有効であることが判明した。本発明は、かかる新規な知見に基づいて創出されたものである。
【0008】
即ち、本発明によれば、容器内に配置された冷却管に冷媒を流し、前記容器内に二酸化炭素ガスを供給することにより、前記冷却管の表面で二酸化炭素ガスを凝縮させる液化装置であって、前記冷却管は前記容器内において上下方向に離れて複数本並列に配置され、鉛直方向に重なる位置関係にある冷却管同士の間には、下方に位置する冷却管の上方を覆うカバー体が設けられていることを特徴とする、液化装置が提供される。
【0009】
かかる本発明の液化装置にあっては、鉛直方向に重なる位置関係にある冷却管同士において、上方に位置する冷却管の表面で凝縮されて液化した二酸化炭素は、当該上方に位置する冷却管の表面から自重で落下した場合、カバー体の上面に受け止められる。このため、上方の冷却管の表面で液化させられた二酸化炭素が、下方の冷却管の表面に再付着することがなく、下方の冷却管の表面において二酸化炭素が固化してしまうといった事態が回避される。
【0010】
本発明の液化装置において、前記カバー体は、水平方向に対して70°以下の傾斜角度を有する平板状であり、複数枚の前記カバー体が前記容器内において隙間を空けて平行に配置されており、各カバー体同士の間に、それぞれ複数本の冷却管が位置していても良い。このように、水平方向に対して70°以下の傾斜角度を有する平板状のカバー体を用いることにより、カバー体の上面に受け止められた液化した二酸化炭素は、カバー体の上面に沿って流れた後、カバー体の縁部から液化装置の容器内を流れ落ち、下方に位置する冷却管の表面に接触せずに、液化装置の容器底部まで落下していく。
また、前記冷却管に放熱用のフィンが取り付けられ、前記カバー体が、前記フィンの上方全体を覆う形状であっても良い。また、二酸化炭素の液温を検出する温度センサーを設け、冷媒の供給を前記温度センサーの検出値に基づいて制御するようにしても良い。なお、前記冷媒として例えば液化天然ガスが用いられる。
【0011】
また、本発明によれば、上記の液化装置を備えた二酸化炭素貯蔵システムであって、液化した二酸化炭素の貯蔵容器を備え、前記貯蔵容器と前記液化装置の間には、前記貯蔵容器から前記液化装置に二酸化炭素ガスを導入する導出ラインと、液化装置で液化した二酸化炭素を前記貯蔵容器に戻す送液管が接続されていることを特徴とする、二酸化炭素貯蔵システムが提供される。
【0012】
この二酸化炭素貯蔵システムにおいて、前記液化装置は、前記貯蔵容器よりも上方に配置され、前記液化装置で液化した二酸化炭素が、前記貯蔵容器に自重で流下するようにしても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上方の冷却管の表面で液化させた二酸化炭素を、カバー体の上面で受け止めることにより、下方の冷却管の表面に再付着することを防止できるので、下方の冷却管の表面において二酸化炭素が固化してしまうといった事態が回避され、液化装置の閉塞を防止できるようになる。また、本発明によれば、フロン等の中間冷媒を使用せずに、コーティングのない一般的な伝熱管を利用して、閉塞を生ずることなく、二酸化炭素を効率よく液化できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態にかかる液化装置の概略的な構成の説明図である。
【図2】図1におけるX−X断面図である。
【図3】本実施の形態にかかる液化装置の内部構造の説明図である。
【図4】カバー体の水平方向に対する傾斜角度が大きくなりすぎる場合の不具合を説明する図面である。
【図5】冷却管に放熱用のフィンが取り付けられた液化装置の説明図である。
【図6】従来の二酸化炭素貯蔵システムの概略的な構成の説明図である。
【図7】本実施の形態にかかる液化装置を備える二酸化炭素貯蔵システムの概略的な構成の説明図である。
【図8】従来の液化装置の概略的な構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
図1〜3に示すように、本発明の実施の形態にかかる炭酸ガスの液化装置1は、円筒形状の容器10を有しており、容器10の両側には、冷媒として液化天然ガスaを液化装置1に供給する供給配管11と、液化装置1から出た液化天然ガスaを排出する排出配管12が接続してある。
【0017】
容器10内の両側方には、ヘッダー部13、14が設けられており、容器10内の中央には、これらヘッダー部13、14の間を連通させるように配置された複数本の冷却管15が設けられている。各冷却管15は長手方向がいずれも水平方向であり、各冷却管15同士は互いに平行に上下方向および水平方向の2次元方向に分布して配置され、かつ、各冷却管15同士の間に所定の隙間が形成される用に互いに離れて配置されている。
【0018】
容器10の上面には、原料ガスである二酸化炭素ガス(炭酸ガス)bを容器10内に導入するガス導入管20が接続してある。ガス導入管20の出口には、二酸化炭素ガスbを容器10内の全体に分布させて導入させるための拡散板21が取り付けられている。
【0019】
容器10の底面の最下部には、容器10内で冷却されて凝縮液化した二酸化炭素(液)b1を溜める液溜部22が形成されている。この液溜部22には、液溜部22に溜まった二酸化炭素(液)b1を抜き出す送液管23が接続されている。
【0020】
この液化装置1では、少なくとも鉛直方向に重なる位置関係にある複数の冷却管15同士の間には、下方に位置する冷却管15の上方を覆うようにカバー体25が設けられている。この実施の形態では、図2、3に示したように、水平方向に対して所定の傾斜角度θを有する複数枚の平板状のカバー体25が隙間を空けて平行に配置されており、各カバー体25同士の間に、それぞれ複数本の冷却管15が位置している。
【0021】
ここで、カバー体25の水平方向に対する傾斜角度θは、70°以下の範囲に設定されている。また、各カバー体25同士の間において、複数本の冷却管15は、カバー体25と同様に、傾斜角度θの方向に一列に並べて配置されている。
【0022】
以上のように構成されたいわゆるシェルアンドチューブ型の液化装置1において、冷媒である例えば−150〜−190℃の液化天然ガスaが、供給配管11を通じて容器10内のヘッダー部13に供給され、ヘッダー部13から冷却管15を通じてヘッダー部14に流れた後、液化天然ガスaが排出配管12から排出される。こうして、容器10内では、冷却管15に液化天然ガスaが連続的に供給されることにより、冷却管15の表面が冷却された状態となる。
【0023】
また一方で、容器10の内部において冷却管15の外側には、原料ガスである例えば0.6MPaG(ゲージ圧)以上、−10℃の二酸化炭素ガス(炭酸ガス)bがガス導入管20を通じて供給される。こうして容器10内に供給された二酸化炭素ガスbは、冷却管15の表面で例えば−40〜−50℃まで冷却されて凝縮し、液化される。こうして液化された二酸化炭素(液)b1が、液滴となって冷却管15の表面を自重で流下して容器10内を落下し、容器10底部の液溜部22に二酸化炭素(液)b1が溜められていく。そして、液溜部22に溜められた二酸化炭素(液)b1が送液管23を通じて、容器外に抜き出される。こうして、液化天然ガスaの冷熱を利用して、二酸化炭素(液)b1が連続的に生成される。
【0024】
本発明の実施の形態にかかる液化装置1にあっては、上下方向に隣接している冷却管15同士において、上方に位置する冷却管15の表面で凝縮されて液化した二酸化炭素b1が、当該上方に位置する冷却管15の表面から自重で落下した場合、カバー体25の上面に受け止められる。このため、上方の冷却管15から落下した二酸化炭素b1が、下方の冷却管15の表面に再付着することを防止され、下方の冷却管15の表面において二酸化炭素が固化してしまうといった事態が回避される。
加えて、この液化装置1にあっては、こうしてカバー体25の上面に受け止められた液化した二酸化炭素(液)b1は、カバー体25の傾斜にしたがってカバー体25上面に滞留することなく流れ落ちていく。そして、カバー体25の縁部(最下部)まで到達した二酸化炭素(液)b1は、当該カバー体25の縁部から落下し、更に下方にあるカバー体25の上面、もしくは、液化装置1の容器10の内面まで落下していく。このため、下方の冷却管15の表面において二酸化炭素が固化してしまうといった事態が回避される。その結果、液化装置1の閉塞を防止でき、二酸化炭素の連続的な液化運転が可能となる。
【0025】
なお、冷却管15の表面で凝縮されて液化した二酸化炭素b1の粘度は常温の水のように低いものであり、仮にカバー体25が水平面であってもそこに溜まって流れない、というものではない。また、カバー体25が水平方向に対して僅かにでも傾斜していれば(例えば、傾斜角度θが2〜3°程度)、カバー体25の上面に受け止められた二酸化炭素(液)b1は、カバー体25の傾斜にしたがってカバー体25上面を円滑に流れ落ちていく。
しかし一方で、カバー体25の水平方向に対する傾斜角度θがあまり大きくなりすぎると、図4に示すように、カバー体25の間に傾斜角度θの方向に沿って一列に並べて配置されている複数本の冷却管15同士の間において、上方の冷却管15の表面で凝縮されて液化した二酸化炭素b1が、当該上方に位置する冷却管15の表面から自重で落下した際に、下方に位置する冷却管15の表面に接触してしまう恐れがある。これにより、上方の冷却管15から落下した二酸化炭素b1が、下方の冷却管15の表面に再付着して、下方の冷却管15の表面において二酸化炭素が固化してしまう不具合が生ずる可能性がある。かかる不具合を解消するために、カバー体25の水平方向に対する傾斜角度θは、70°以下の範囲に設定する必要がある。
【0026】
また、冷却管15への二酸化炭素の固着を回避できるので、容器10内に冷却管15を高密度に配置できるようになり、少ない容積で熱交換効率を上げることが可能となる。なお、上述したように、複数本の冷却管15が、カバー体25同士の間において、カバー体25と同じ傾斜角度θの方向に一列に並べて配置されているので、容器10内に冷却管15を更に高密度に配置でき、より少ない容積で熱交換効率を向上させることが可能となる。また、フロン等の中間冷媒の使用も省略できるようになる。また、冷却管15には、コーティングのない一般的な伝熱管を利用でき、冷熱を有効利用して二酸化炭素ガスbを効率よく液化できるようになる。
【0027】
なお、カバー体25の形状や配置は、図2、3に示した形態に限られない。鉛直方向に重なる位置関係にある任意の二つ冷却管15同士の間において、下方に位置する冷却管15の上方を覆う形状のカバー体25が配置されていれば、上方の冷却管15の表面で液化させられた二酸化炭素b1が、下方の冷却管15の表面に再付着することを防止できる。
【0028】
図5に示すように、冷却管15に放熱用のフィン26が取り付けられた液化装置1の場合、カバー体25の形状は、下方に位置する冷却管15のみならず、当該冷却管15に取り付けられたフィン26の上方全体を覆う形状とすることが望ましい。フィン26の上方全体を覆う形状のカバー体25を用いることにより、上方の冷却管15およびフィン26の表面で液化させられた二酸化炭素b1が、下方の冷却管15およびフィン26の表面に再付着することを防止できる。これにより、下方の冷却管15およびフィン26の表面のいずれにおいても二酸化炭素が固化してしまうといった事態が回避される。
【0029】
また、図5に示すように、液溜部22に溜められた二酸化炭素(液)b1の液温を検出する温度センサー27を設け、液化天然ガスaの供給配管11に設けた流量制御弁28を、温度センサー27の検出値に基づいて制御しても良い。即ち、液溜部22に溜められた二酸化炭素(液)b1の液温が例えば−50℃以下となった場合には、流量制御弁28を閉め、液化装置1への液化天然ガスaの供給を停止するようにインターロック制御を行う。これにより、二酸化炭素が固化温度(−56.6℃)以下に冷却されるのを防止することができる。
【0030】
次に、二酸化炭素貯蔵システムについて説明する。先ず、図6に示す従来の二酸化炭素貯蔵システム2について説明する。この二酸化炭素貯蔵システム2は、二酸化炭素(液)b1の貯蔵容器30を備えている。貯蔵容器30には、貯蔵容器30に二酸化炭素(液)b1を受け入れる受入ライン31と、貯蔵容器30から二酸化炭素(液)b1を払い出す払出ライン32が接続されている。受入ライン31には弁(A)が設けられ、払出ライン32には弁(C)が設けられている。また、貯蔵容器30には、加圧循環ライン33が接続されており、この加圧循環ライン33には、加圧蒸発器34と弁(D)が設けられている。また、貯蔵容器30上部に、大気に開放された二酸化炭素ガスbの放散ライン35が接続されており、この放散ライン35には、弁(B)が設けられている。
【0031】
表1に示すように、図6に示す従来の二酸化炭素貯蔵システム2では、貯蔵容器30への二酸化炭素(液)b1の受入時には、受入ライン31の弁(A)を開にし、払出ライン32の弁(C)および加圧循環ライン33の弁(D)を閉にする。これにより、受入ライン31から貯蔵容器30へ二酸化炭素(液)b1が受入られる。
【0032】
【表1】

【0033】
また、貯蔵容器30からの二酸化炭素(液)b1の払出時には、受入ライン31の弁(A)を閉にし、払出ライン32の弁(C)および加圧循環ライン33の弁(D)を開にする。これにより、加圧蒸発器34で蒸発された二酸化炭素ガスbが加圧循環ライン33から貯蔵容器30に戻され、貯蔵容器30内の二酸化炭素(液)b1が押し出されて、払出ライン32から送液される。
【0034】
さらに、受入も払出も行わない静止状態では、受入ライン31の弁(A)、払出ライン32の弁(C)および加圧循環ライン33の弁(D)をいずれも閉にする。
【0035】
ところで、かかる二酸化炭素貯蔵システム2では、貯蔵容器30への二酸化炭素(液)b1の受入時において、貯蔵容器30内の二酸化炭素(液)b1の液面が上昇することにより、液面上にある二酸化炭素ガスbの圧力が上昇する。また、受入も払出も行わない静止状態においても、系外からの熱侵入により貯蔵容器30内の二酸化炭素(液)b1が蒸発し、液面上にある二酸化炭素ガスbの圧力が上昇する。
【0036】
そこで、かかる二酸化炭素貯蔵システム2では、受入時、および、受入も払出も行わない静止状態においては、放散ライン35の弁(B)を所定の開度に開き、貯蔵容器30内から二酸化炭素ガスbを適宜大気中に排出させる。これにより、貯蔵容器30内の圧力が一定の設定圧力に維持される。
【0037】
ところが、従来の二酸化炭素貯蔵システム2では、貯蔵容器30内から排出した二酸化炭素ガスbを大気中に排出していたので、二酸化炭素のロスが生じていた。また、二酸化炭素ガスは地球温暖化にも影響を及ぼすので、大気中に排出するのは望ましくない。
【0038】
そこで、図7に示す本実施の形態にかかる二酸化炭素貯蔵システム3では、二酸化炭素のロスを生じさせない構成となっている。即ち、図7に示す本実施の形態にかかる二酸化炭素貯蔵システム3も、先に図6で説明した従来の二酸化炭素貯蔵システム2と同様に、二酸化炭素(液)b1の貯蔵容器30を備えている。貯蔵容器30には、貯蔵容器30に二酸化炭素(液)b1を受け入れる受入ライン31と、貯蔵容器30から二酸化炭素(液)b1を払い出す払出ライン32が接続されている。受入ライン31には弁(A)が設けられ、払出ライン32には弁(C)が設けられている。また、貯蔵容器30には、加圧循環ライン33が接続されており、この加圧循環ライン33には、加圧蒸発器34と弁(D)が設けられている。
【0039】
但し、図7に示す本実施の形態にかかる二酸化炭素貯蔵システム3では、貯蔵容器30上部に、液化装置1の容器10に連通する二酸化炭素ガスbaの導出ライン36が接続されており、この導出ライン36に、弁(B)が設けられている。なお、液化装置1は、先に図1〜5において詳しく説明した本発明の実施の形態にかかる液化装置1である。液化装置1は、貯蔵容器30よりも上方に配置されている。また、液化装置1の底部には、液化装置1内の容器内で液化した二酸化炭素(液)b1を、貯蔵容器30に流下させる送液管23が接続されている。このように、図7に示す本実施の形態にかかる二酸化炭素貯蔵システム3は、貯蔵容器30の上方に液化装置1を配置して点において、図6に示す従来の二酸化炭素貯蔵システム2と、大きく異なっている。
【0040】
液化装置1の両側には、冷媒として液化天然ガスaを液化装置1に供給する供給配管11と、液化装置1から出た液化天然ガスaを排出する排出配管12が接続してある。なお、供給配管11には、バイパス配管40が分岐接続されており、供給配管11に設けられた開閉弁41と、バイパス配管40に設けられた開閉弁42の開閉操作により、液化天然ガスaを液化装置1に供給する状態と、液化天然ガスaを液化装置1に供給せずにバイパス配管40に流す状態とに切り替え可能である。
【0041】
表2に示すように、図7に示す本実施の形態にかかる二酸化炭素貯蔵システム3でも、貯蔵容器30への二酸化炭素(液)b1の受入時には、受入ライン31の弁(A)を開にし、払出ライン32の弁(C)および加圧循環ライン33の弁(D)を閉にする。これにより、受入ライン31から貯蔵容器30へ二酸化炭素(液)b1が受入られる。
【0042】
【表2】

【0043】
また、貯蔵容器30からの二酸化炭素(液)b1の払出時には、受入ライン31の弁(A)を閉にし、払出ライン32の弁(C)および加圧循環ライン33の弁(D)を開にする。これにより、加圧蒸発器34で蒸発された二酸化炭素ガスbが加圧循環ライン33から貯蔵容器30に戻され、貯蔵容器30内の二酸化炭素(液)b1が押し出されて、払出ライン32から送液される。
【0044】
さらに、受入も払出も行わない静止状態では、受入ライン31の弁(A)、払出ライン32の弁(C)および加圧循環ライン33の弁(D)をいずれも閉にする。
【0045】
図7に示す本実施の形態にかかる二酸化炭素貯蔵システム3でも同様に、貯蔵容器30への二酸化炭素(液)b1の受入時において、貯蔵容器30内の二酸化炭素(液)b1の液面が上昇することにより、液面上にある二酸化炭素ガスbの圧力が上昇する。また、受入も払出も行わない静止状態においても、系外からの熱侵入により貯蔵容器30内の二酸化炭素(液)b1が蒸発し、液面上にある二酸化炭素ガスbの圧力が上昇する。
【0046】
そこで、この二酸化炭素貯蔵システム3では、受入時、および、受入も払出も行わない静止状態においては、導出ライン36の弁(B)を所定の開度に開き、貯蔵容器30内から二酸化炭素ガスbを適宜、液化装置1の容器10内に導入する。これにより、貯蔵容器30内の圧力が一定の設定圧力に維持される。
【0047】
そして、液化装置1の容器10内に導入された二酸化炭素ガスbは、冷却管15の表面で冷却されて凝縮し、液化される。こうして液化された二酸化炭素(液)b1が、容器10底部に溜められ、送液管23を流下して貯蔵容器30内に戻される。なお、液化装置1の容器10内で二酸化炭素ガスbが液化される際には、上方の冷却管15で液化させられた二酸化炭素b1が、下方の冷却管15に再付着することがなく、液化装置1の閉塞が防止される。
【0048】
このように、図7に示す本実施の形態にかかる二酸化炭素貯蔵システム3によれば、貯蔵容器30内から排出した二酸化炭素ガスbを貯蔵容器30内に戻すことにより、二酸化炭素のロスがなくなる。この場合、貯蔵容器30の容量×0.1〜0.2%/日程度の二酸化炭素ガスbの放散削減ができる。また、液化用電力の削減(例えばフロン冷凍機電力)も達成できる。また、地球温暖化に影響を及ぼす二酸化炭素ガスを、大気中に排出することが回避される。
【0049】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明はかかる形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0050】
図5で説明したように、液溜部22に溜められた二酸化炭素(液)b1の液温を温度センサー27で検出して液化装置1への液化天然ガスaの供給をインターロック制御する場合、液化装置1を2セット設置し、一方の液化装置1に冷媒を通し、液溜部22の温度が下限(−50℃)になった場合に他方の液化装置1に切替えるようにしても良い。また、液溜部22の温度が下限(−50℃)になった液化装置1を、常温以上のガスで加温しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、たとえば、発電プラントの排ガス中の炭酸ガスを回収した後のLNG冷熱利用による炭酸ガスの液化技術に適用できる。また、鉄鋼業における液化酸素・液化窒素・液化アルゴンの気化時の冷熱利用による炭酸ガスの液化技術に適用できる。また、空気分離装置等低温プラントからのオフガス利用による炭酸ガスの液化技術に適用できる。
【符号の説明】
【0052】
a 液化天然ガス
b 二酸化炭素ガス(炭酸ガス)
b1 二酸化炭素(液)
1 液化装置
2、3 二酸化炭素貯蔵システム
10 容器
11 供給配管
12 排出配管
13、14 ヘッダー部
15 冷却管
20 ガス導入管
21 拡散板
22 液溜部
23 送液管
25 カバー体
26 フィン
27 温度センサー
28 流量制御弁
30 貯蔵容器
31 受入ライン
32 払出ライン
33 加圧循環ライン
34 加圧蒸発器
35 放散ライン
36 導出ライン
40 バイパス配管
41、42 開閉弁
A、B、C、D 弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に配置された冷却管に冷媒を流し、前記容器内に二酸化炭素ガスを供給することにより、前記冷却管の表面で二酸化炭素ガスを凝縮させる液化装置であって、
前記冷却管は前記容器内において上下方向に離れて複数本並列に配置され、
鉛直方向に重なる位置関係にある冷却管同士の間には、下方に位置する冷却管の上方を覆うカバー体が設けられていることを特徴とする、液化装置。
【請求項2】
前記カバー体は、水平方向に対して70°以下の傾斜角度を有する平板状であり、
複数枚の前記カバー体が前記容器内において隙間を空けて平行に配置されており、
各カバー体同士の間に、それぞれ複数本の冷却管が位置していることを特徴とする、請求項1に記載の液化装置。
【請求項3】
前記冷却管に放熱用のフィンが取り付けられ、
前記カバー体が、前記フィンの上方全体を覆う形状であることを特徴とする、請求項1または2に記載の液化装置。
【請求項4】
二酸化炭素の液温を検出する温度センサーを設け、
冷媒の供給を前記温度センサーの検出値に基づいて制御することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の液化装置。
【請求項5】
前記冷媒として液化天然ガスが用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の液化装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の液化装置を備えた二酸化炭素貯蔵システムであって、
液化した二酸化炭素の貯蔵容器を備え、
前記貯蔵容器と前記液化装置の間には、前記貯蔵容器から前記液化装置に二酸化炭素ガスを導入する導出ラインと、液化装置で液化した二酸化炭素を前記貯蔵容器に戻す送液管が接続されていることを特徴とする、二酸化炭素貯蔵システム。
【請求項7】
前記液化装置は、前記貯蔵容器よりも上方に配置され、
前記液化装置で液化した二酸化炭素が、前記貯蔵容器に自重で流下することを特徴とする、請求項6に記載の二酸化炭素貯蔵システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−207865(P2012−207865A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74456(P2011−74456)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】