説明

炭酸ガス回収型燃料電池システム

【課題】 PAFCのアノード排ガスを改質器のバーナ燃料としてリサイクルするシステムにおいて、炭酸ガスを効率良く回収することが可能な炭酸ガス回収型燃料電池システムを提供する。
【解決手段】 都市ガスは脱硫器3に送られる。脱硫器3を出た燃料ガスは、エゼクタ5で水蒸気と混合され、改質器7に送られる。改質器7では、燃料ガスが水素リッチガスに改質される。改質器7を出た水素リッチガスは、さらにCO変成器9に送られ水素リッチガス中の一酸化炭素(CO)が二酸化炭素(炭酸ガス)に変成される。CO変成器を出たアノードガスは、二酸化炭素回収装置27に送られる。二酸化炭素回収装置27は、二酸化炭素濃縮装置29と二酸化炭素液化装置31とからなる。二酸化炭素濃縮装置29は、二酸化炭素を吸収分離、吸着分離、膜分離、膜・吸収ハイブリッド分離、ガスハイドレート分離のいずれかにより濃縮する装置で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にリン酸型燃料電池において、二酸化炭素を回収することが可能な炭酸ガス回収型燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、環境への負荷が少ない燃料電池が注目されている。燃料電池には固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸形燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)、固体酸化物形燃料電池(SOFC)等が開発されており、例えばPAFCはすでに商用機としての実績も多い。
【0003】
このような燃料電池において、アノード排ガス中には二酸化炭素(炭酸ガス)が含まれる。したがって、今般の二酸化炭素排出削減の要求に応えるためには、この二酸化炭素を効率良く回収する必要がある。
【0004】
このような炭酸ガス回収型の燃料電池としては、例えば、電力発生の際に得られる空気電極側の窒素濃縮ガスは水分が除去された後、分離装置に供給されて酸素と窒素に分離され、燃料電極側で得られる炭酸ガスと未反応燃料は他の分離装置に供給されて炭酸ガスと未反応燃料に分離され、分離された酸素と未反応燃料及び燃料電池内部の熱回収部から抜き出された水蒸気は改質器へ循環されて、酸素は改質器内で原料炭化水素と燃焼反応させて改質器で必要とされる熱量が供給され、燃料電池の燃料電極側から炭酸ガスと未反応燃料を分離する際に一部抜き出されたアルゴンガスに富む残燃料は、燃焼炉で改質器へ循環される分離酸素の一部と燃焼させられて、さらにアルゴンガスに富む混合ガスが得られる炭酸ガス等の回収方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−111320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された方法では、アノードの排ガスを改質器内バーナ燃料としてリサイクルする仕様とはなっていない。また、PAFCにおいて、アノードガスの中のほぼすべての水素等を消費して、炭酸ガスが濃縮されることを想定している。したがって、アノードガス中の二酸化炭素濃度(ドライ)が84%と非常に高い。すなわち、最高の発電効率を持つ燃料電池発電技術を使用し、最少の炭酸ガス発生で発電した上で、高濃度に発生した炭酸ガスを深冷分離するものを想定したものである。
【0007】
しかし、アノード排ガス中の炭酸ガスの濃度を高めるためには、PAFC発電部においてアノードガス中の略全ての水素を消費して発電する必要がある。しかし、実際には、アノードガス中の水素濃度が低下すると、その反応効率が下がるため、水素の略全てを発電に消費するのは効率的ではない。
【0008】
また、特許文献1では、改質器において、酸素と燃料の一部を反応させて一酸化炭素と水素を得る、いわゆる部分酸化法を適用している。しかし、この方法は、水蒸気改質と比較して、改質の効率が劣る。例えば、水蒸気改質はメタン1に対して4倍の水素を生み出すことが可能であるが、部分酸化では、メタン1に対して3倍の水素しか生み出すことができない。
【0009】
しかし、アノード排ガス中の水素等の残ガスを改質器の燃焼部で燃焼して、その熱で水蒸気改質を行おうとすると、アノード排ガス中には当該燃焼に用いられる水素が残存している必要がある。このため、炭酸ガスの濃度を前述のように高めることが困難である。したがって、全ガス中の炭酸ガス濃度が80%を超えるような高濃度であれば、特許文献1のような深冷分離も可能であるが、上述したようなアノード排ガスを改質器での燃焼ガスとして利用する場合には、上述の方法を適用することが困難であった。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、PAFCのアノード排ガスを改質器内バーナ燃料としてリサイクルするシステムにおいて、二酸化炭素を効率良く回収することが可能な炭酸ガス回収型燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達するために本発明は、炭酸ガス回収型燃料電池システムであって、燃料ガスと水蒸気とを混合し、混合ガスを改質する改質器と、前記改質器からの水素リッチガス中の一酸化炭素(CO)を変性するCO変成器と、燃料電池セルスタックのアノードにアノードガスを供給するアノードガス供給ラインと、前記燃料電池セルスタックのカソードに空気を供給するカソードガス供給ラインと、アノード排ガスを支燃性ガスとともに前記改質器の燃焼部に導入するアノード排ガスラインと、前記燃焼部で燃焼された燃焼排ガスを排出する燃焼排ガスラインと、を少なくとも具備し、前記アノードガス、前記アノード排ガス、前記燃焼排ガスの少なくともいずれかに含まれる二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置が設けられていることを特徴とする炭酸ガス回収型燃料電池システムである。
【0012】
前記二酸化炭素回収装置は、吸収分離、吸着分離、膜分離、膜・吸収ハイブリッド分離、ガスハイドレート分離のいずれかにより濃縮する装置で構成される二酸化炭素濃縮装置が設けられていることが望ましい。
【0013】
前記二酸化炭素濃縮装置で分離され濃縮されたガスから二酸化炭素の深冷分離を行う二酸化炭素液化装置が設けられることが望ましい。
【0014】
前記二酸化炭素回収装置は、前記燃焼排ガスラインに設けられ、前記燃焼排ガスから二酸化炭素を回収してもよい。
【0015】
前記支燃性ガスは酸素富化ガスであり、前記アノード排ガスラインを流れるアノード排ガスは酸素供給部からの酸素とともに前記燃焼部で燃焼してもよい。
【0016】
前記支燃性ガスは空気であり、前記燃焼排ガスラインには、さらに窒素回収装置が設けられ、前記二酸化炭素回収装置で二酸化炭素が回収された残ガスから窒素を回収してもよい。
【0017】
前記二酸化炭素回収装置は、前記アノード排ガスラインに設けられ、前記アノード排ガスから二酸化炭素を回収し、回収後のアノード排ガスが前記燃焼部に送られてもよい。
【0018】
前記二酸化炭素回収装置は、前記アノードガス供給ラインに設けられ、前記アノードガスから二酸化炭素を回収し、回収後のアノードガスが前記アノードに送られてもよい。
【0019】
本発明によれば、アノード排ガスを改質器内バーナ燃料としてリサイクルするため、アノード排ガス中に水素ガスを残す必要がある。このため燃料電池セルスタックにおけるアノードガスの流路での水素濃度を所定以上に確保することができ、発電効率が高い。また、アノード排ガスを支燃性ガスとともに改質器の燃焼部で燃焼し、改質器において水蒸気改質を行うため、改質効率が高い。
【0020】
また、アノードガス、アノード排ガス、燃焼排ガスの少なくともいずれかに含まれる二酸化炭素を、二酸化炭素濃縮装置と、濃縮されたガスから深冷分離を行う二酸化炭素液化装置とからなる二酸化炭素回収装置によって回収するため、ガス中の二酸化炭素のドライ濃度が低くても、二酸化炭素を確実に回収することができる。
【0021】
また、二酸化炭素回収装置が燃焼排ガスラインに設けられ、燃焼排ガスから二酸化炭素を回収すれば、二酸化炭素の回収によって、燃料電池セルスタック入口ラインのガス組成が変化することがない。このため、システムへの影響を最小限にすることができる。
【0022】
また、さらに支燃性ガスとして酸素を用いることで、二酸化炭素を回収する燃焼排ガスラインにおける二酸化炭素の濃度を高めることができる。このため、より効率良く二酸化炭素を濃縮することができる。
【0023】
また、支燃性ガスとして空気を用い、燃焼排ガスラインにさらに窒素回収装置を設けることで、二酸化炭素回収装置で二酸化炭素が回収された残ガスから窒素を回収することもできる。
【0024】
また、二酸化炭素回収装置がアノード排ガスラインに設けられ、アノード排ガスから二酸化炭素を回収すれば、二酸化炭素の回収に伴って、改質器にリサイクルされるガスの組成が変化するものの、水素や炭化水素等の可燃性ガスの濃度が増加するため、改質器にとっては空燃比の調整など簡便な方法でシステムの運転が可能である。
【0025】
また、本発明では、二酸化炭素回収装置をアノードガス供給ラインに設けることも可能である。いずれにおいても、直接深冷分離が不可能である低〜中濃度の二酸化炭素を効率良く回収することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、PAFCのアノード排ガスを改質器内バーナ燃料としてリサイクルするシステムにおいて、二酸化炭素排出原単位を改善しつつ、二酸化炭素を効率良く回収することが可能な炭酸ガス回収型燃料電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】炭酸ガス回収型燃料電池システム1を示すブロック図。
【図2】炭酸ガス回収型燃料電池システム1aを示すブロック図。
【図3】炭酸ガス回収型燃料電池システム1bを示すブロック図。
【図4】炭酸ガス回収型燃料電池システム1cを示すブロック図。
【図5】炭酸ガス回収型燃料電池システム1dを示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、炭酸ガス回収型燃料電池システム1を示すブロック図である。炭酸ガス回収型燃料電池システム1は、主に、脱硫器3、改質器7、CO変成器9、燃料電池セルスタック11、二酸化炭素回収装置27等が、アノードガス供給ライン10、カソードガス供給ライン20、アノード排ガスライン30、燃焼排ガスライン40等で接続されて構成される。なお、本発明の炭酸ガス回収型燃料電池システム1は、主にPAFCに適したシステムである。
【0029】
燃料ガスである都市ガスは脱硫器3に送られる。脱硫器3では、都市ガス中の硫黄分が除去される。脱硫器3を出た燃料ガスは、エゼクタ5で水蒸気と混合され、改質器7に送られる。
【0030】
改質器7では、燃料ガスが水素リッチガスに改質される。本発明では、改質器7において水蒸気改質が行われる。このため、燃焼部21のバーナによる熱を利用して、改質器7内での反応を進める。具体的には、メタンと水とを反応させて、水素と二酸化炭素または一酸化炭素に改質する。なお、図示を省略した熱交換器を用い、水素リッチガスの熱によって脱硫器3に入る前の燃料ガスの予熱を行ってもよい。
【0031】
改質器7を出た水素リッチガスは、さらにCO変成器9に送られる。CO変成器9では、触媒の存在下で、水素リッチガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に変成する。一酸化炭素が混入すると、後述する燃料電池セルスタックにおける電池特性が低下するためである。
【0032】
CO変成器9を経たアノードガスは、一部が燃料ガスと混合されて脱硫器3に戻され、残りは二酸化炭素回収装置27に送られる。二酸化炭素回収装置27は、二酸化炭素濃縮装置29と二酸化炭素液化装置31とからなる。
【0033】
二酸化炭素濃縮装置29は、二酸化炭素を吸収分離、吸着分離、膜分離、膜・吸収ハイブリッド分離、ガスハイドレート分離のいずれかにより濃縮する装置で構成される。吸収分離は、化学吸収と物理吸収のいずれでも良い。
【0034】
化学吸収は、ガスを吸収液に化学反応によって吸収させ、エネルギーを加えることでガスを脱離させて回収するものである。化学吸収はスケールメリットがあり、低濃度ガス成分の分離にも適している。物理吸収は、吸収液に加圧することでガスを物理吸収させ、減圧することでガスを脱離させて回収するものである。物理吸収はスケールメリットがあり、高圧、高濃度ガス成分の分離に適している。
【0035】
吸着分離は、ガスを固体吸着剤に物理的に吸着させ、減圧することでガスを脱着させて回収するものであり、例えばPSA(Pressure Swing Adsorption)が適用可能である。吸着分離は、排ガス量が中小規模のサイトに適し、比較的高濃度ガス成分の分離に適している。膜分離は、膜に対する透過速度の違いを利用してガスを分離回収するものであり、設備がシンプルであり、高圧または、高濃度ガス成分の分離に適している。
【0036】
膜・吸収ハイブリッド分離は、ガスと一緒に吸収液を流し、減圧雰囲気で膜を透過せることでガスを放散させ分離し回収するものであり、膜単体よりも分離性能が向上する。ガスハイドレート分離は、熱力学的安定条件の違いを利用し、選択的にハイドレート化しガスを分離して回収するものであり、高圧、低温のガス成分の分離に適し、冷熱が使えるサイトでの分離に適している。
【0037】
また、二酸化炭素液化装置31は、二酸化炭素濃縮装置29によって二酸化炭素が濃縮されたガスを深冷分離する。深冷分離は、ガスを低温に冷やして液化させ、蒸留あるいは部分凝縮によって分離して回収するものである。深冷分離によれば、二酸化炭素の高純度化が可能であるが、高濃度のガスでないと十分な効率を発揮することができない。
【0038】
本発明では、CO変成器9を経たアノードガス中の二酸化炭素濃度は概ね20%程度(ドライ)である。したがって、このまま深冷分離によって二酸化炭素を高純度で分離することができない。しかし、本発明では、二酸化炭素濃縮装置29と組み合わせることで、二酸化炭素を確実に分離することができる。なお、本発明では、例えば比較的小規模なPAFCに適用可能なように、二酸化炭素濃縮装置29としては、吸着分離である上述したPSAを適用することが望ましい。
【0039】
二酸化炭素回収装置27(二酸化炭素液化装置31)で分離された二酸化炭素は液化二酸化炭素として回収される。二酸化炭素回収装置27を通り、二酸化炭素が分離された残りのアノードガスは、燃料電池セルスタック11のアノード13に送られる。なお、本発明では、CO変成器9出口から燃料電池セルスタックのアノード13にガスを供給するラインを、アノードガス供給ライン10とする。すなわち、本実施形態において、二酸化炭素回収装置27はアノード供給ライン10に設けられる。
【0040】
一方、燃料電池セルスタック11のカソード15には、酸素を含む空気などのカソードガスが供給される。なお、本発明では、カソード15にカソードガスを供給するラインをカソードガス供給ライン20とする。
【0041】
燃料電池セルスタック11では、アノードガス中の水素とカソードガス中の酸素とを反応させて発電が行われる。発電された電気は、インバータ17等を介して送電される。
【0042】
なお、カソード15から排出されたカソード排ガスは、凝縮器23に送られる。凝縮器23では、水分が凝縮除去され、ガス成分は排ガスとして排出される。また、分離された水は、ポンプ24で水蒸気分離器25に送られる。水蒸気分離器で発生する水蒸気はエゼクタ5に送られ、前述したように燃料ガスと混合される。なお、水は、冷却水として燃料電池セルスタック11にも送られる。
【0043】
アノード13を出たアノード排ガスは、予熱器19を介して改質器7の燃焼部21に送られる。燃焼部21では、アノード排ガスは、支燃性ガスである空気とともにバーナで燃焼される。また、予熱器19では、燃焼部21で燃焼した燃焼排ガスからの熱が熱交換されて、前述したアノード排ガス及び支燃性ガスを予熱することができる。なお、本発明では、アノード13から燃焼部21までのラインをアノード排ガスライン30とする。
【0044】
燃焼排ガスは、燃焼排ガスライン40を介して凝縮器23に送られて前述のカソード排ガスと同様に水が分離されて、残ガスは排ガスとして排出される。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態によれば、アノードガス供給ライン10に二酸化炭素回収装置27を設けるため、アノードガス中の二酸化炭素を回収することができる。この際、二酸化炭素回収装置27が二酸化炭素濃縮装置29と二酸化炭素液化装置31とからなるため、アノードガス中の二酸化炭素がそれほど高くないような、本システムにおいても、確実に二酸化炭素を回収することができる。
【0046】
また、改質器7における改質が水蒸気改質であるため改質効率が高く、さらに、アノード排ガス中の水素(および炭化水素)を改質器7の燃焼部21の燃料として用いるため、改質効率がよい。また、アノード排ガスを改質器バーナ燃料としてリサイクルするため改質のための熱を別途供給する必要がない。
【0047】
次に、第2の実施の形態について説明する。図2は、炭酸ガス回収型燃料電池システム1aを示すブロック図である。なお、以下の説明において、炭酸ガス回収型燃料電池システム1と同一の機能を奏する構成については、図1と同様の符号を付し、重複する説明を省略する。炭酸ガス回収型燃料電池システム1aは炭酸ガス回収型燃料電池システム1と略同様の構成であるが、二酸化炭素回収装置27の配置が異なる。
【0048】
炭酸ガス回収型燃料電池システム1aでは、二酸化炭素回収装置27は、アノード排ガスライン30に接続される。すなわち、炭酸ガス回収型燃料電池システム1aでは、CO変成器9を出たアノードガスは、直接アノード13に送られる。
【0049】
アノード13から排出されたアノード排ガスは、二酸化炭素回収装置27に送られる。二酸化炭素回収装置27では、アノード排ガス中の二酸化炭素が濃縮・分離される。二酸化炭素回収装置27で二酸化炭素が分離された後のアノード排ガスが予熱器19を介して改質器7の燃焼部21に送られて燃焼される。
【0050】
ここで、炭酸ガス回収型燃料電池システム1aでは、アノードから排出されたアノード排ガス中には約55%程度の二酸化炭素と、約40%程度の水素(いずれもドライにて)を含む。炭酸ガス回収型燃料電池システム1aでは、前述したように、アノード排ガスを改質器7の燃焼部21(バーナ)の燃料としてリサイクルする。したがって、水素が残存していることが必要である。このため、二酸化炭素の濃度は、深冷分離が可能な80%を超えることはない。
【0051】
炭酸ガス回収型燃料電池システム1aでは、アノード排ガス中に水素を残すことで、アノード排ガスを改質器7の燃焼部21(バーナ)の燃料としてリサイクルすることができるとともに、燃料電池セルスタック11における発電効率を高めることができる。燃料電池セルスタック11において、水素が完全に消費するようにアノードガスの流量を調節すれば、燃料電池セルの出口においては、アノードガス中の水素はほとんど発電に寄与することができなくなり、発電効率が低下する。
【0052】
これに対し、炭酸ガス回収型燃料電池システム1aでは、アノード排ガス中の水素が所定量残るため、高い効率で発電を行うことができる。また、低濃度の二酸化炭素であっても、二酸化炭素濃縮装置29を用いることで、確実に二酸化炭素を回収することができる。
【0053】
第2の実施形態にかかる炭酸ガス回収型燃料電池システム1aによれば、炭酸ガス回収型燃料電池システム1と同様の効果を得ることができる。また、アノードガス中に比べて、アノード排ガス中の二酸化炭素の濃度が高いため、例えばPSAなどの二酸化炭素濃縮装置29の負荷を低減することができる。
【0054】
なお、アノード排ガス中から二酸化炭素を除去するため、残ガス中の水素等の濃度が変化する。このため、燃焼部21における空燃比が変わる。しかし、燃焼部21における簡便な空燃比の調整を行うことで、従来のシステムにも適用することが可能である。
【0055】
次に、第3の実施の形態について説明する。図3は、炭酸ガス回収型燃料電池システム1bを示すブロック図である。炭酸ガス回収型燃料電池システム1bは炭酸ガス回収型燃料電池システム1と略同様の構成であるが、二酸化炭素回収装置27の配置が異なる。
【0056】
炭酸ガス回収型燃料電池システム1bでは、二酸化炭素回収装置27は、燃焼排ガスライン40に接続される。すなわち、炭酸ガス回収型燃料電池システム1bでは、アノード13を出たアノード排ガスは、炭酸ガス回収型燃料電池システム1と同様に予熱器19を介して直接改質器7の燃焼部21に送られる。
【0057】
燃焼部21から排出された燃焼排ガスは、予熱器19でアノード排ガス及び空気と熱交換を行った後、二酸化炭素回収装置27に送られる。二酸化炭素回収装置27では、燃焼排ガス中の二酸化炭素が濃縮・分離される。二酸化炭素回収装置27で二酸化炭素が分離された後のアノード排ガスは排ガスとして排出される。
【0058】
ここで、炭酸ガス回収型燃料電池システム1bにおいて、燃焼部21から排出された燃焼排ガス中には約24%程度の二酸化炭素(ドライ)を含む。炭酸ガス回収型燃料電池システム1bでは、燃焼部21は空気で燃焼されるため、多くの窒素を含み、二酸化炭素の濃度が深冷分離可能な80%を超えることはない。
【0059】
よって、炭酸ガス回収型燃料電池システム1bでは、低濃度の二酸化炭素であっても、二酸化炭素濃縮装置29を用いることで確実に二酸化炭素を回収することができる。
【0060】
第3の実施形態にかかる炭酸ガス回収型燃料電池システム1bによれば、炭酸ガス回収型燃料電池システム1と同様の効果を得ることができる。また、アノードガス中に比べて、燃焼排ガス中の二酸化炭素の濃度が高いため、例えばPSAなどの二酸化炭素濃縮装置29の負荷を低減することができる。
【0061】
また、二酸化炭素回収装置27が、燃焼排ガスライン40に配置されるため、二酸化炭素を回収しても、回収後のガスは大気に放出するので、従来のシステムにも容易に適用が可能である。
【0062】
次に、第4の実施の形態について説明する。図4は、炭酸ガス回収型燃料電池システム1cを示すブロック図である。炭酸ガス回収型燃料電池システム1cは炭酸ガス回収型燃料電池システム1bと略同様の構成であるが、燃焼部21に送られる支燃性ガスが異なる。
【0063】
炭酸ガス回収型燃料電池システム1bでは、支燃性ガスとして空気が用いられて、アノード排ガスとともに燃焼部で燃焼される。炭酸ガス回収型燃料電池システム1cでは、支燃性ガスとして、図示を省略した供給装置を用いて酸素が供給される。
【0064】
燃焼部21から排出された燃焼排ガスは、予熱器19でアノード排ガス及び酸素と熱交換を行った後、二酸化炭素回収装置27に送られる。二酸化炭素回収装置27では、燃焼排ガス中の二酸化炭素が濃縮・分離される。二酸化炭素回収装置27で二酸化炭素が分離された後の燃焼排ガスは排ガスとして排出される。
【0065】
ここで、炭酸ガス回収型燃料電池システム1cにおいて、燃焼部21から排出された燃焼排ガス中には約75%程度の二酸化炭素(ドライ)を含む。すなわち、炭酸ガス回収型燃料電池システム1cでは、燃焼部21は酸素とともに燃焼されるため、空気中の窒素をほとんど含まない。しかし、炭酸ガス回収型燃料電池システム1cであっても、二酸化炭素の濃度が深冷分離可能な80%を超えることはない。
【0066】
これに対し、炭酸ガス回収型燃料電池システム1cでは、低濃度の二酸化炭素であっても、二酸化炭素濃縮装置29を用いることで、確実に二酸化炭素を回収することができる。
【0067】
第4の実施形態にかかる炭酸ガス回収型燃料電池システム1cによれば、炭酸ガス回収型燃料電池システム1(1b)と同様の効果を得ることができる。また、アノードガス中に比べて、支燃性ガスとして酸素富化ガスを用いたときの燃焼排ガス中の二酸化炭素の濃度が高いため、例えばPSAなどの二酸化炭素濃縮装置29の負荷をさらに低減することができる。
【0068】
次に、第5の実施の形態について説明する。図5は、炭酸ガス回収型燃料電池システム1dを示すブロック図である。炭酸ガス回収型燃料電池システム1dは炭酸ガス回収型燃料電池システム1bと略同様の構成であるが、二酸化炭素回収装置27の他に、窒素回収装置33が設けられる点で異なる。
【0069】
炭酸ガス回収型燃料電池システム1dでは、支燃性ガスとして空気が用いられるため、前述の通り、燃焼排ガス中には二酸化炭素と窒素とが含まれる。燃焼部21から排出された燃焼排ガス中には約24%程度の二酸化炭素と約70%程度の窒素(ドライ)を含む。
【0070】
炭酸ガス回収型燃料電池システム1dでは、炭酸ガス回収型燃料電池システム1bと同様に、燃焼排ガスから二酸化炭素回収装置27によって二酸化炭素が回収される。例えば燃焼排ガス中の二酸化炭素の70%が回収されたとすれば、残ガス中の窒素濃度は約85%となる。
【0071】
したがって、窒素回収装置33としてPSA等を用いて燃焼排ガスから二酸化炭素を分離しても、PSAに大きな負荷を与えることなく分離を行うことができる。この場合、窒素回収装置33を通過した残ガスは、排ガスとして排出される。また、窒素回収装置33を窒素富化ガスの回収装置として用い、二酸化炭素回収装置27から排出されたガスを分離せずにそのまま回収してもよい。
【0072】
第5の実施形態にかかる炭酸ガス回収型燃料電池システム1dによれば、炭酸ガス回収型燃料電池システム1(1b)と同様の効果を得ることができる。また、燃焼排ガス中の窒素を回収することができる。
【実施例】
【0073】
前述した各実施形態において、二酸化炭素排出原単位、二酸化炭素回収装置前のガス組成およびにアノードガス供給ラインから二酸化炭素を回収した場合の補機動力等について比較した。なお、以下の説明において、実施例1は、図1に示す実施例、実施例2は、図2に示す実施例、実施例3は、図3に示す実施例、実施例4は、図4に示す実施例を示す。また、比較例として、二酸化炭素回収装置を有さない例を示した。結果を表1〜表3に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
表1は、それぞれの実施例の二酸化炭素排出量および二酸化炭素排出原単位を示す。なお、発電量は定格発電量から補機動力を引いたものである。また、二酸化炭素排出量は二酸化炭素を回収しない場合の二酸化炭素排出量から二酸化炭素回収量を引いたものである。また、二酸化炭素排出原単位とは1kWhの電気を発電したときの二酸化炭素排出量である。
【0078】
また、表2は、それぞれの実施例における、二酸化炭素回収装置前のガス組成を示す。具体的には、実施例では、アノードガスの組成を示し、実施例2では、アノード排ガスの組成を示し、実施例3、4では、燃焼排ガスの組成を示す。また、表3は、各ラインから二酸化炭素を回収した場合の補機動力を示す。
【0079】
表1に示すように、実施例1では、アノードガス供給ラインから二酸化炭素を回収することにより二酸化炭素排出原単位は0.27kg/kWhとなった。また、実施例2では、アノード排ガスラインから二酸化炭素を回収することにより二酸化炭素排出原単位は0.24kg/kWhとなった。また、実施例3では、燃焼排ガスラインから二酸化炭素を回収することにより二酸化炭素排出原単位は0.21kg/kWhとなった。また、実施例4では、支燃性ガスとして酸素富化ガスを用いたときの燃焼排ガスラインから二酸化炭素を回収することにより二酸化炭素排出原単位は0.19kg/kWhとなった。
【0080】
これに対し、二酸化炭素を回収していない比較例では、0.51kg/kWhであった。すなわち、全ての実施例において、比較例と比較して二酸化炭素排出原単位は低下した。
【0081】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0082】
1、1a、1b、1c、1d………炭酸ガス回収型燃焼電池システム
3………脱硫器
5………エゼクタ
7………改質器
9………CO変成器
10………アノードガス供給ライン
11………燃料電池セルスタック
13………アノード
15………カソード
17………インバータ
19………予熱器
20………カソードガス供給ライン
21………燃焼部
23………凝縮器
25………水蒸気分離器
27………二酸化炭素回収装置
29………二酸化炭素濃縮装置
30………アノード排ガスライン
31………二酸化炭素液化装置
33………窒素回収装置
40………燃焼排ガスライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ガス回収型燃料電池システムであって、
燃料ガスと水蒸気とを混合し、混合ガスを改質する改質器と、前記改質器からの水素リッチガス中の一酸化炭素を変性するCO変成器と、燃料電池セルスタックのアノードにアノードガスを供給するアノードガス供給ラインと、
前記燃料電池セルスタックのカソードに空気を供給するカソードガス供給ラインと、
アノード排ガスを支燃性ガスとともに前記改質器の燃焼部に導入するアノード排ガスラインと、
前記燃焼部で燃焼された燃焼排ガスを排出する燃焼排ガスラインと、
を少なくとも具備し、
前記アノードガス、前記アノード排ガス、前記燃焼排ガスの少なくともいずれかに含まれる二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置が設けられていることを特徴とする炭酸ガス回収型燃料電池システム。
【請求項2】
前記二酸化炭素回収装置は、吸収分離、吸着分離、膜分離、膜・吸収ハイブリッド分離、ガスハイドレート分離のいずれかにより濃縮する装置で構成される二酸化炭素濃縮装置が設けられていることを特徴とする請求項1記載の炭酸ガス回収型燃料電池システム。
【請求項3】
前記二酸化炭素濃縮装置で分離され濃縮されたガスから二酸化炭素の深冷分離を行う二酸化炭素液化装置が設けられていることを特徴とする請求項2記載の炭酸ガス回収型燃料電池システム。
【請求項4】
前記二酸化炭素回収装置は、前記燃焼排ガスラインに設けられ、前記燃焼排ガスから二酸化炭素を回収することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の炭酸ガス回収型燃料電池システム。
【請求項5】
前記支燃性ガスは酸素富化ガスであり、前記アノード排ガスラインを流れるアノード排ガスは酸素供給部からの酸素とともに前記燃焼部で燃焼されることを特徴とする請求項4記載の炭酸ガス回収型燃料電池システム。
【請求項6】
前記支燃性ガスは空気であり、前記燃焼排ガスラインには、さらに窒素回収装置が設けられ、前記二酸化炭素回収装置で二酸化炭素が回収された残ガスから窒素を回収することを特徴とする請求項4記載の炭酸ガス回収型燃料電池システム。
【請求項7】
前記二酸化炭素回収装置は、前記アノード排ガスラインに設けられ、前記アノード排ガスから二酸化炭素を回収し、回収後のアノード排ガスが前記燃焼部に送られることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の炭酸ガス回収型燃料電池システム。
【請求項8】
前記二酸化炭素回収装置は、前記アノードガス供給ラインに設けられ、前記アノードガスから二酸化炭素を回収し、回収後のアノードガスが前記アノードに送られることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の炭酸ガス回収型燃料電池システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−45535(P2013−45535A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181138(P2011−181138)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 〔研究集会名〕 2011年都市ガスシンポジウム 〔主催者名〕 一般社団法人日本ガス協会 〔公開日〕 平成23年6月8日
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】