説明

炭酸ストロンチウム分散液及びそれから得られる再分散性粉末

本発明は、有機液体中、例えば、アルコール、ケトン又は特に塩化メチレン中の好ましくは変性した炭酸ストロンチウムの分散液を開示する。分散液は、複屈折が減少した又は複屈折を有しない、従って、光学用途に適した、ポリマーの製造に使用し得る。有機液体を除去することによって得られる粉末は、驚くべきことに、少量のエネルギーで分散液に変換され得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、有機液体中の炭酸ストロンチウムの分散液、分散液から得られる粉末及び複屈折が減少した又は複屈折のないポリマーの添加物としての使用に関する。
【0002】
A.Tagaya、H.Ohkita、M.Mukoh、R.Sakaguchi及びY.Koike、Science、Vol.301 (2003), p.812-815で説明されているように、光学ポリマーは、レンズのような光学部材のための使用、又は液晶ディスプレイのための機能膜としての使用がある。しかしながら、ポリマー鎖の整列のために、このようなポリマーは、処理の過程で複屈折を生じる傾向があり、このことにより異方性材料が形成される。その結果、光学的性質は悪化する。
Scienceに引用された文献に更に説明されているように、さまざまな提案が、複屈折を打ち消すために既になされてきた。例えば、ポリマーの混合、異方性分子のランダムな整列又は組込みによる共重合が複屈折のない部材につながると言われている。特にポリマーの混合は既知の方法である。しかしながら、充分均一にポリマーを混合することは難しい。
Tagaya et al.は、ロッド形状に結晶化させた無機材料を混ぜることによって複屈折を打ち消すことを提案している。炭酸ストロンチウムは、ロッド形状で、長さが200nm、厚みが20nmの結晶の形で使われた。これらの結晶は、チタン酸ビス(ジオクチルピロリン酸)オキシ酢酸によって、テトラヒドロフラン中のポリ[チルメタクリレート(MMA)-コ-ベンジルメタクリレート(BzMA)]の溶液に導入された総質量の0.3〜1質量%の量で表面処理された。得られた混合物は、その後、膜に注型され、光学的性質が試験された。
【0003】
本発明の目的は、光学ポリマーにおいて有用で、容易に取り入れられ得る処理された炭酸ストロンチウムを特定することである。この目的は、本発明の分散液及びそれらから得られる再分散性粉末により達成される。
本発明の一態様は、有機液体又は水中に分散された1000nm以下、好ましくは500nm以下、特に200nm以下の長さのロッド形の炭酸ストロンチウム粒子を含み、有機液体中の粒子の分散液は、分散剤を用いて得られる。これらの制限は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に実質的に全粒子に適用される。
“ロッド形の”という用語は、粒子の長さが粒子の厚みを超えることを意味する。厚みに対する長さの比率は、好ましくは少なくとも2である。
【0004】
好ましい連続相は、有機液体である。有用な有機液体は、プロトン性及び非プロトン性有機液体である。酸性のためCO2を除去して炭酸ストロンチウムと反応するプロトンを含む液体はあまり適切でない。簡便で有用な有機液体は、直鎖又は分枝鎖アルコール、例えば、炭素原子1〜6個を有するアルコール、直鎖又は分枝鎖ケトン、例えば、炭素原子3〜10個を有するケトン、シクロペンタノンのような環状ケトン、炭化水素又は特定沸点のスピリッツのような炭化水素混合物、及びハロゲン化炭化水素、例えば、ジクロロメタンのような塩化炭化水素(塩化メチレン)である。例えば、カルボン酸、例えば、炭素原子合計2〜6個を有するカルボン酸と炭素原子1〜4個を有するアルコールのエステルも有用である。炭素原子を好ましくは6個まで有する直鎖脂肪族エーテル又は環状エーテルも溶媒として適切であると仮定される。
【0005】
炭酸ストロンチウムは、例えば、水酸化ストロンチウムとCO2から既知の方法によって調製することができる。このようなプロセスは、国際出願公開第97/15530号に記載されている。水酸化ストロンチウム水溶液が、CO2ガスと反応器内で接触し、反応混合液に剪断力と摩擦力が作用する。所望により、結晶化抑制剤が沈殿内に存在してもよい。本発明において、未変性炭酸ストロンチウムを用いることは可能であるが、結晶化抑制剤を含む炭酸ストロンチウムを用いることが好ましい。結晶化抑制剤の少なくとも一部が脱プロトン化されるときに、例えば、少なくとも部分的に又は完全に、例えばナトリウム塩又はアンモニウム塩のアルカリ金属塩としての結晶化抑制剤を用いることにより、有益であり得る。抑制剤が酸の形で用いることができ、適量の塩基又はアルカリを加えることができることは、当然のことである。
【0006】
用いられる結晶化抑制剤は、例えば、炭素鎖Rとn[A(O)OH]置換基を有する式(I)の化合物又は塩であってもよい。ここで、
Rは、疎水性及び/又は親水性下部構造を有する有機基であり、Rは、任意にヘテロ原子として酸素、窒素、リン又はイオウを含む、低分子量、オリゴマー又はポリマー、分枝鎖、非分枝鎖及び/又は環状炭素鎖であり、及び/又は酸素、窒素、リン又はイオウによってR基に結合されるラジカルで置換され、
Aは、C、P(OH)、 OP(OH)、S(O)又はOS(O)であり、
nは1〜10000である。
モノマー又はオリゴマー化合物である場合、nは好ましくは1〜5である。
このタイプの有用な結晶化抑制剤には、ヒドロキシ置換カルボン酸化合物が挙げられる。例えば、鎖内に炭素原子1〜20個を有する(COO基の炭素原子含めずに算出した)ヒドロキシ置換モノ-及びジカルボン酸、例えば、クエン酸、リンゴ酸(2-ヒドロキシ-1,4-ジブタン酸)、ジヒドロキシコハク酸及び2-ヒドロキシオレイン酸が容易に有用である。結晶化抑制剤としてクエン酸及びポリアクリレートが特に非常に好ましい。
【0007】
また、鎖長が炭素原子1〜10個のアルキル(又はアルキレン)基を有するホスホン酸化合物も非常に容易に有用である。有用な化合物は、1、2又はそれ以上のホスホン酸基を有する化合物である。更に、ヒドロキシル基によって置換されてもよい。非常に有用な例は、1-ヒドロキシエチレンジホスホン酸、1,1-ジホスホノプロパン-2,3-ジカルボン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸酸である。これらの例は、ホスホン酸基及びカルボン酸基双方を有する化合物を用いることも可能であることを示している。
また、窒素原子1〜5個又はそれ以上及びカルボン酸基又はホスホン酸より多くの及び1つ以上、例えば5つまでのカルボキシル酸又はホスホン酸基を含み、任意に更にヒドロキシル基で置換されてもよい化合物も非常に容易に有用である。例としては、エチレンジアミン又はジエチレントリアミン塩基構造とカルボン酸又はホスホン酸置換基を有する化合物が含まれる。容易に有用な化合物は、例えば、ジエチレントリアミンペンタキス(メタンホスホン酸)、イミノジコハク酸、ジエチレントリアミン五酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N,N,N-トリ酢酸である。
【0008】
また、ポリアミノ酸、例えば、ポリアスパラギン酸も非常に簡便で有用である。
また、炭素原子1〜20個(COO基の炭素原子を含めずに算出した)と1つ以上のCOO基を有するイオウ置換カルボン酸、例えば、ビス(2-エチルヘキシル)スルホスクシネート(ジオクチルスルホスクシネート)も非常に容易に有用である。
添加剤の混合物、例えば、また亜リン酸のような更に添加剤とを用いることが可能であることも当然のことである。
【0009】
存在する結晶化抑制剤は、例えば、このために用いられることが既知の物質、例えば、典型的にはナトリウム塩の形の相対的に短鎖或いは比較的長い鎖のポリアクリレート; ポリグリコールエーテルのようなポリエーテル; ナトリウム塩の形のラウリルエーテルスルホネートのようなエーテルスルホネート; フタル酸及びその誘導体のエステル; ポリグリセロールエステル; トリエタノールアミンのようなアミン; 脂肪酸(例えば国際出願公開第01/92157号に明記されるステアリン酸エステルのような脂肪酸のエステルであってもよい。
また、国際出願公開第97/15530号に明記されるカルボン酸塩又はそれらの遊離酸、例えば、クエン酸又はそのアルカリ金属又はアンモニウム塩も非常に適切である。
好ましい結晶化抑制剤は、少なくとも1つの陰イオン基を有する。結晶化抑制剤は、好ましくは、陰イオン基として、少なくとも1つのスルフェート基、少なくとも1つのスルホネート基、少なくとも2つのホスフェート基、少なくとも2つのホスホネート基、少なくとも2つのカルボキシレート基又は少なくとも1つのヒドロキシル基、少なくとも1つのカルボキシレート基を有する。
【0010】
1つの変形例によれば、結晶化抑制剤を含まず、好ましい変形例においては、結晶化抑制剤を含む発明の分散液に用いられる炭酸ストロンチウムは、分散剤の存在下に更に粉砕される。このことは、例えば、ビーズミルにおいて行われ得る。
分散剤は、更に後述される。
分散剤は、再凝集を防止すると共に溶媒中の炭酸ストロンチウムの分散液を安定にするためのものである。このことは、分散剤が、例えば、負に荷電した置換基によって、粒子表面に加え、その結果再凝集を防止する静電力によって、又は分散剤の立体効果によってもたらされる。分散剤は、好ましくは、炭酸ストロンチウムの表面と相互作用し得る1つ以上の陰イオン基を有する。好ましい基は、カルボキシレート基、ホスフェート基、ホスホネート基、ビスホスホネート基、スルフェート基、スルホネート基である。
【0011】
有用な分散剤は、結晶化抑制作用に加えて、分散作用を有する上述した物質の一部である。このような物質が用いられる場合、結晶化抑制剤と分散剤は同一でもよい。適切な物質は、通常試験によって決定されてもよい。結晶化抑制と分散作用を有するこのような物質は、炭酸ストロンチウムが容易に再分散可能な凝集を形成するという結果を有する。結晶化抑制と同時に分散作用を有するこのような物質が用いられる場合、沈殿に添加することができ、その後、その存在で、例えば、既に上述したビードミルで非凝集が行われ得る。
【0012】
典型的には、結晶化抑制分散作用を有する異なる化合物が用いられる。
非常に有利ことは、静電的に、立体配置的に、又は静電的と立体配置的に凝集を抑制すると共に再凝集を防止する表面を炭酸ストロンチウム粒子に与える分散剤を含む本発明の非凝集炭酸ストロンチウムである。
特に有利な非凝集炭酸ストロンチウムは、分散剤が、炭酸ストロンチウム表面と相互作用し得るカルボキシレート基、ホスフェート基、ビスホホネート基、スルフェート基又はスルホネート基を有すること、及びそれが疎水性及び/又は親水性下部構造を有する1つ以上の有機R1基を有することを特徴とする。
R1は、例えば、ヘテロ原子として窒素、リン又はイオウを任意に含み及び/又は酸素、窒素、リン又はイオウによってR1基に結合される基で置換される低分子量、オリゴマー又はポリマー、非分枝鎖、分枝鎖及び/又は環状炭化水素鎖であり、炭素鎖は、親水基又は疎水基によって任意に置換される。このような置換基の一例は、ポリエーテル基である。好ましいポリエーテル基は、3〜50個、好ましくは3〜40個、特に3〜30個のアルキレンオキシ基を有する。アルキレンオキシ基は、好ましくはメチレンオキシ、エチレンオキシ、プロピレンオキシ及びブチレンオキシ基より選ばれる。
【0013】
有利な本発明の炭酸ストロンチウムは、ポリマーに結合又は組込むための基を有する分散剤を含む。これらは、この結合又は組込みを化学的に生じる基、例えば、OH基又はNH基又はNH2基であってもよい。基は、また、物理的組込み又は結合を生じるものであってもよい。
分散剤は、炭酸ストロンチウムが分散される溶媒に適切に調整される。いくらか疎水性を有する分散剤が、無極又は低極性溶媒の分散の調製に有利に用いられる。
無極性から低極性溶媒中の炭酸ストロンチウム分散液の調製に適している分散剤の一例は、エチレンオキシド単位からポリエーテル部分を有する側鎖を有するリン酸エステルであり、例えば、P(O)基の1つの酸素原子はC3-C10-アルキル又は-アルケニル基で置換され、更にP(O)基の酸素原子はポリエーテル官能基で置換されている。P(O)基の酸性の酸素原子は、更に炭酸ストロンチウム表面と相互作用し得る。このような分散剤は、例えば、商品名Disperbyk(登録商標)102、106、111としてByk Chemieから入手できる。非極性から低極性の溶媒は既に上述した。特に容易に有用な例は、メチルエチルケトンのような直鎖ケトン、例えば、合計の炭素原子2〜6個を有するカルボン酸と炭素原子1〜4個を有するアルコールのエステル、特別蒸留酒(沸点が21〜55℃、55〜100℃、沸点が100℃を超えるもの)のような炭化水素又はその混合物、溶媒ナフサ又はハロゲン炭化水素、特に塩化メチレンである。
【0014】
他の分散剤は、極性又はプロトン性溶媒、例えば、水、アルコール、例えば、イソプロパノール又はn-ブタノール、又はケトン、例えばアセトンにおける炭酸ストロンチウムの良好な分散性をもたらすものである。炭酸ストロンチウムの表面と相互作用しうる陰イオン基、例えば上述した基を有するポリマーは、極性基、例えば、ヒドロキシル基又はアミノ基によって置換される。ヒドロキシル基によって末端に置換されるポリエーテル基が存在することが好ましい。この置換のために、炭酸ストロンチウム粒子は、外部から親水化される。このような発明の炭酸ストロンチウムは、容易に分散可能であり、極性又は非極性溶媒において安定な分散を与える。使用中に更に非凝集であることさえも可能である。例えば特にエポキシ樹脂に、極性基、特にヒドロキシル基やアミノ基は、対応するプラスチックに取付け又は編入に適している反応基を構成する。特に非常に良好な特性は、多数のポリカルボキシレート基及び多数のヒドロキシル基、また更に、立体的に厳しい置換基、例えば、ポリエーテル基を有する分散剤で被覆された炭酸ストロンチウムによって所有される。分散剤の特に非常に好ましい基は、ポリエーテルが末端でヒドロキシル基によって置換されたポリエーテルポリカルボキシレートである。
【0015】
結晶成長抑制剤を含むこのような炭酸ストロンチウム及び立体的に再凝集を防止する特に好ましい分散剤、特に上記の通りに極性基によって置換された分散剤の1つは、それが非常に微細な一次粒子、最悪の場合で、低凝集二次粒子を含み、例えば、ポリマーに容易に組込むことができ且つ再凝集する傾向がなく、更に使用中非凝集でさえあることから非常に容易に有用であるという大きな利点を有する。
炭酸ストロンチウムが好ましくは結晶化抑制剤と用いられることは既に上述してきた。炭酸ストロンチウム、結晶化抑制剤、分散剤(即ち、溶媒を含めずに算出される)の合計が100質量%と等しい場合、結晶化抑制剤と分散剤はいずれの場合においても好ましくは1〜15質量%の量でその中に存在し; 炭酸ストロンチウムは、100質量%まで残りを構成する; 炭酸ストロンチウムは、結晶化抑制剤、分散剤、SrCO3の合計の好ましくは20〜80質量%の量で存在する。
【0016】
本発明の分散液は、結晶化抑制剤及び分散剤を含む、好ましくは20〜70質量%の炭酸ストロンチウム、及び30〜80質量%の溶媒又は溶媒混合物を含有する。分散液は、炭酸ストロンチウム、分散剤及び溶剤、また、好ましくは結晶化抑制剤からなってもよく、添加剤を含んでもよい。
本発明の分散液の調製は、更に以下に記載される。
出発材料は、ロッド形の結晶の形で存在する炭酸ストロンチウムである。例えば、国際出願公開第97/15530号に記載されるように、調製され得る。プロセスは、濃度が0.1〜0.75モル/lのSr(OH)2のSr(OH)2溶液を二酸化炭素と混合して、反応混合液を生成し、約2〜30lの炭酸ガスは溶液1リットルに対して用いられ、反応混合液は、回転子-固定子原理によって高相対速度を有する互いに噛み合っているツールの剪断力と摩擦力が反応混合液に作用する連続混合反応器を通過し、形成された炭酸ストロンチウムは反応器を通過した後に反応混合液から取り出され、乾燥されると想定する。反応器における剪断力と摩擦力は、二酸化炭素が極めて微細に分散形の水酸化ストロンチウム溶液に導入されるという作用を有する。炭酸ガスのリットルは、標準状態に基づく。沈殿に上述べた用に結晶化抑制剤を添加することが好ましい。その後、得られた炭酸ストロンチウムを分散剤を用いて有機液体(例は上で示した)又は水に分散される。分散剤は、上で明記されている。炭酸ストロンチウム粒子の長さが200nm以下まで分散が行われる。
【0017】
分散は、すでに小さい粒子上の粉砕用の通例の装置で行われ得る。非常に適切な例は、ガラス又は他の硬質材料でできているボールを有するビーズミル又は溶解器である。予混合は、例えば、溶解器(ガラスボーを含めない)で可能である。分子が所望のサイズを有するまで粉砕を行うことができ; 例えば、長さは、200nm未満又は150nm未満でさえある。
上記の分散は、プラスチックに分散形に存在する炭酸ストロンチウムを組込むのに非常に適している。最初に調製された分散液の一部の溶媒が除去されることは可能である。その後、溶媒中の炭酸ストロンチウムの濃縮物が得られ、溶媒を添加することによって更に希釈され得る。更にありうる使用、特に溶媒を除去することによる再分散性粉末状炭酸ストロンチウムの調製を後述する。
【0018】
本発明者らは、本発明の分散液が、溶媒(好ましくは有機)を除去した後、粒子微細さに関して最初に調製された分散液に対応する分散液の形成において溶媒に再び再分散し得る粉末状炭酸ストロンチウムを生じることがわかった。分散液は、比較的低エネルギー入力によって調製され得る。再分散のために最初分散液の調製において用いられた同じ溶媒を用いることは決して重要でないが、有利である。最初に調製された分散液から溶媒を除去した後、粉末が得られ、その後、大きなエネルギー入力をせずに同一又は異なる溶媒中の最初の分散液に匹敵する炭酸ストロンチウムの微細な分散物を再び生じることは予測できなかった。溶媒を含まない容易に再分散する粉末の貯蔵と輸送が、分散液の貯蔵と輸送よりも本来簡単であることは利点である。
再分散のために、分散駅の調製においてすでに用いられた溶媒、又は匹敵する極性を有する溶媒を選ぶことが好ましい。通常試験は、再分散が良好な結果を提供するかを示し得る。分散剤と溶媒が相互に適合しなければならないことは、すでに前述した。
【0019】
本発明の炭酸ストロンチウムは、再分散性粉末として又は分散液又は再分散液として、炭酸ストロンチウム又はその分散液が有用である全ての目的に適している。分散液中の炭酸ストロンチウム、又は再分散後の粉末において、好ましくは少なくとも90%の全粒子は、1000nm未満、より好ましくは500nm未満、更により好ましくは300nm未満、特に好ましくは200nm未満の長さを有する。
例えば、上記のようにポリマー添加剤として使用し得る分散液を調製するのに特に適切である。
所望される場合には上記の再分散性粉末を分散することによって得られる、選択された溶媒、好ましくはCH2Cl2又はシクロペンタノン中の炭酸ストロンチウムの分散液がポリマー前駆体又はポリマーと混合される。非常に均一な分配が望ましい。必要な場合には、ポリマー又はポリマー前駆体を溶媒によって溶解するか又は粘度を低下させる。組込まれた後、溶媒が用いられた場合には蒸発させ、必要な場合には、重合が生じる。
炭酸ストロンチウムは、特に有利には上述したポリ[メタクリレート(MMA)-コ-ベンジルメタクリレート(BzMA)]に組込まれる。このことは、有利にはテトラヒドロフランに溶解されている。分散液に組込まれた後、溶媒を蒸発させる。
炭酸ストロンチウム分散液又は再分散された粉末を得られる、ポリマー又はその前駆体は、同様に本発明の内容の一部をなしている。前駆体は、例えば、その後、通例の方法で重合されるモノマー、又は縮合によりポリマーに処理される反応成分である。
以下の実施例は、その範囲を制限せずに本発明を具体的に説明するものである。
【0020】
実施例1: ロッド形の結晶粒子による炭酸ストロンチウムの調製
国際出願公開第97/15530号に記載されるように、炭酸ストロンチウムを、10%Sr(OH)2溶液からCO2と反応させることによって調製した。沈殿において、クエン酸を、約1.5質量%のクエン酸が沈殿し乾燥したSrCO3に存在するような量で用いた。調製された粒子は、ロッド形であった。SrCO3は、32m2/gのBET表面積を有した。
【0021】
実施例2: 塩化メチレン中の実施例1において調製された炭酸ストロンチウムの分散液の調製
炭酸ストロンチウムを、塩化メチレンとDisperbyk(登録商標)102、Byk Chemieから入手できる分散剤、及びポリエーテル部分がエポキシド単位から形成された側鎖を有するリン酸エステルに基づく酸性基を有するコポリマーと混合する。混合物は、50質量%の炭酸ストロンチウム及び10質量%を分散剤を含有し; 100質量%に対する残りは、塩化メチレンによって形成された。分散の前に、混合物の試料は、粒径を求めるために分析した;結果を“ゼロ”として下記の表1に示す。
その後、混合物をガラスボールによって溶解器に分散した。15分後、合計30分後に、試料について粒径を再び分析した。分散剤を含まないSrCO3と塩化メチレンの1:1の質量比の混合物の溶解器処理(ガラスボールによる)も行い、得られた粒径を決定した。
結果をゼロ試料と共に表1に示す。
【0022】

【0023】
分散されていない“ゼロ”試料において、全粒子の90%は、39.6μm以下の直径を有し; 全粒子の10%だけが2.61μmの直径を有した。処理された試料において、直径は非常に小さく; 全粒子の90%が192nm以下の直径を有した。表1は、また、15分後、顕著な粉砕がすでに達成されたことを示している。溶解器における混合物の処理は、更に、いかなる粉砕もほとんど生じない。
分散剤を含まない溶解器の処理は、対照的に、炭酸ストロンチウムの粒径増大を生じた。
【0024】
実施例3: ビーズミルにおける分散
ガラスボールを含まない溶解器において予備混合した後、実施例2をビーズミルで繰り返し、匹敵する結果を得た。
【0025】
実施例4: シクロペンタノン中の炭酸ストロンチウムの分散液の調製
用いられる分散剤がMelpers(登録商標)0030であり、エーテル基がヒドロキシル基によって末端で置換され、それ故、親水性を有する以外は実施例2を繰り返した。それはSKWから入手できる。用いられる溶媒はシクロペンタノンであった。
分散材料は、実施例2に対応した。
【0026】
実施例5: 塩化メチレン分散液から再分散性粉末状炭酸ストロンチウムの調製
実施例2に記載したように、溶解器、その後ビーズミルで処理して分散液を得た。得られた分散液を、塩化メチレンを除去することによって乾燥し、実施例2で言及した結晶化抑制剤と実施例2で言及した分散剤(BYK102)を含む炭酸ストロンチウムを粉末として得た。
粉末が再分散性か調べるために、塩化メチレンに導入し、溶解器においてガラスボールを含めずに、即ち、高速で回転するディスクによって再分散させた(粉末が容易に再分散することから、例えば、ビーズミルで再分散を行うことは不必要であることがわかった)。ここで溶解器だけを用いて調製される分散液の性質が塩化メチレン中の炭酸ストロンチウムの最初に調製された分散液に対応することがわかった。
用いられる比較は、クエン酸と沈殿したSrCO3であった。それを直接溶解器に添加し、BYK102を添加したガラスボールを含まずに分散液を試みた。分析は、d90%値が26.9μm、d50%値が6.27μm及びd10%値が194μmであることを示した。
【0027】
実施例6: シクロペンタノン分散液から再分散性粉末状炭酸ストロンチウムの調製
実施例5の分散液を、溶剤を蒸発させることによって減圧下で乾燥した。粉末状炭酸ストロンチウムは、実施例2に明記した結晶化抑制剤と実施例5に明記した分散剤を含んだ。
シクロペンタノン分散されたこの粉末もまた、粉末が調製された分散液の特性に性質が対応する分散液を生じることがわかった。従って、この粉末も再分散可能であることが示された。
【0028】
実施例7: プラスチックの製造
上記Tagayaによる文献に記載されるように、テトラヒドロフラン中のポリ[メチルメタクリレート(MMA)-コ-ベンジルメタクリレート(BzMA)]の溶液を得る。シクロペンタノン中に再分散した実施例6で調製された再分散性粉末の分散液が組込まれる。次に、溶媒を蒸発させる。の0.5質量%のSrCO3が残存するプラスチックに存在するように分散液の量を選択する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機液体又は水に分散された、レーザ回折法によって求めた、1000nm以下、好ましくは500nm以下、特に200nm以下の長さのロッド形の炭酸ストロンチウム粒子を含む分散液であって、有機液体又は水中の粒子の分散液が、分散剤を用いられて得られ、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に本質的に全粒子が指定された最大の長さを有する、前記分散液。
【請求項2】
分散液が有機液体を含み、存在する有機液体が1つ以上のプロトン性及び/又は非プロトン性有機液体であることを特徴とする請求項1記載の分散液。
【請求項3】
存在する有機液体が、1つ以上のアルコール、メチルブチルケトンのような直鎖ケトン、シクロペンタノンのような環状ケトン、脂肪族又は芳香族炭化水素、又は特定沸点のスピリッツ又は溶媒ナフサのような炭化水素混合物、又はハロゲン化炭化水素、例えば、ジクロロメタン(塩化メチレン)のような塩化炭化水素を含むことを特徴とする、請求項2記載の分散液。
【請求項4】
炭酸ストロンチウムが結晶化抑制剤を含むことを特徴とする、請求項1記載の分散液。
【請求項5】
炭酸ストロンチウムが、結晶化抑制剤の存在下に、水酸化ストロンチウム水溶液とCO2との反応から得られることを特徴とする、請求項1記載分散液。
【請求項6】
結晶化抑制剤及び分散剤を含む、20〜70質量%の炭酸ストロンチウム、及び30〜80質量%の有機液体又は水の含量を有する、請求項1記載の分散液。
【請求項7】
1000nm以下、好ましくは500nm以下、特に200nm以下の長さのロッド形の炭酸ストロンチウム粒子を含む請求項1〜6記載の分散液の調製方法であって、ロッド形の結晶形に存在する炭酸ストロンチウムから開始し、有機液体又は水にそれを分散させ、有機液体又は水中の粒子の分散液が分散剤を用いられて得られる、請求項1〜6記載の前記方法。
【請求項8】
分散が、例えば、ビーズミルにおいて二次粒子サイズの粉砕により行われることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
出発材料が、結晶化抑制剤の存在下に沈殿した炭酸ストロンチウムであることを特徴とする、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
炭酸ストロンチウム粒子が150nm未満の平均粒径を有するまで分散が行われることを特徴とする、請求項7、8又は9記載の方法。
【請求項11】
1000nm以下、好ましくは500nm以下、特に200nm以下の長さのロッド形の炭酸ストロンチウム粒子の再分散性粉末であって、粒子が分散剤で被覆され、粉末が請求項1記載の分散液から有機液体又は水を除去することによって得ることができる、前記分散性粉末。
【請求項12】
炭酸ストロンチウムが結晶化抑制剤を含むことを特徴とする、請求項11記載の再分散性粉末。
【請求項13】
有機液体中の炭酸ストロンチウムの分散液から液体を蒸発させることによって得られることを特徴とする、請求項11又は12記載の再分散性粉末。
【請求項14】
ポリマーにおける添加剤としての、特にプラスチックの複屈折の特性を妨げるための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の炭酸ストロンチウム分散液又は請求項11〜13のいずれか1項に記載の再分散性粉末の使用。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の分散液又は請求項12〜14のいずれか1項に記載の再分散性粒子を用いて得られる、複屈折が減少したプラスチック。

【公表番号】特表2008−510047(P2008−510047A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526348(P2007−526348)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008617
【国際公開番号】WO2006/018180
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(506192881)ソルヴェイ インフラ バート ヘンニンゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (9)
【Fターム(参考)】