説明

炭酸泉の製造方法および製造装置

【課題】高濃度の炭酸ガスを含む炭酸泉を容易かつ安価に製造できる炭酸泉の製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を製造する炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段1と、製造された炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にする酸性移行手段2とを備えている。炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段1は、水を電気分解することによってアルカリ水を製造するアルカリ水製造手段3と、製造されたアルカリ水に炭酸ガスを吹き込むことによって、アルカリ水に炭酸水素イオンを含有させる炭酸水素イオン含有手段4とを備えている。そして、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にするとによって、炭酸ガスが酸性水溶液中に溶解するので、高濃度の炭酸ガスを含む炭酸泉を容易かつ安価に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸泉の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸泉は優れた保温作用があることから、古くから温泉を利用する浴場等で用いられている。炭酸泉の保温作用は、基本的には、含有炭酸ガスの末梢血管拡張作用により身体環境が改善されるためと考えられる。また炭酸ガスの経皮進入によって、毛細血管床の増加及び拡張が起こり、皮膚の血行を改善する。このため退行性病変及び末梢循環障害の治療に効果があるとされている。
【0003】
このような炭酸泉を人工的に製造する製造方法の例として特許文献1や特許文献2に記載の技術が知られている。
特許文献1に記載の技術は、炭酸ガスを水に溶解させて炭酸泉を製造する炭酸泉の製造方法であって、気密タンクに水を供給すると共に加圧した炭酸ガスを供給し、加圧下で気密タンク内の水面上の炭酸ガスを水中に巻込んで攪拌することにより水中に炭酸ガスを溶解させて炭酸泉を生成し、続いて前記気密タンク内部の炭酸ガスを外部に開放した後、気密タンク内に生成した炭酸泉を供給することを特徴とするものである。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術は、温水と炭酸ガスを炭酸ガス溶解器に供給し、溶解器内で炭酸ガスを温水に溶解させる炭酸泉の製造方法において、炭酸ガス溶解器が、中空糸膜の両端を樹脂で固定し、中空糸膜の長手方向中央部に収束部、樹脂固定部に近い位置に中空糸膜外側部に連通した温水導入口、溶解器の中心に対し温水導入口と対称の位置に炭酸泉導出口及び中空糸膜の中空部と連通した一端に炭酸ガス導入口を各設けたことを特徴とするものである。
【特許文献1】特開2007−289492号公報
【特許文献2】特許第3048501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、気密タンク内部の炭酸ガスを外部に開放した後、気密タンク内に生成した炭酸泉を供給するので、この炭酸泉中の炭酸ガスは、大部分が大気中に散逸してしまい、炭酸ガス濃度を1000ppm程度にすることは困難であった。
また、特許文献2に記載の技術では、高価な中空糸膜を使用しているので、炭酸泉の製造コストが高くなるとともに、中空糸膜は目詰まりが生じ易いので、交換が必要となりこの点においても製造コストが高くなる。
また、この技術でも炭酸泉中の炭酸ガス濃度を1000ppm程度にすることは困難であった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、高濃度の炭酸ガスを含む炭酸泉を容易かつ安価に製造できる炭酸泉の製造方法および製造装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る炭酸泉の製造方法は、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にすることによって、炭酸ガスを酸性水溶液中に溶解させて炭酸泉を製造することを特徴とする。
【0008】
一般に炭酸(H2CO3)は水溶液中に存在し、水に炭素ガス(CO2)を溶解することで生じる。
二酸化炭素と炭酸の平衡は、H2O+CO2⇔H2CO3⇔HCO3-+H+ となる。
そして、水溶液がアルカリ側になると(上記式において右側になると)、炭酸は炭酸水素イオン(HCO3-)として存在し、酸性側になると(上記式において左側になると)炭酸ガス(CO2)として溶解する。
【0009】
したがって、本発明によれば、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にすることによって、炭酸ガスが酸性水溶液中に溶解するので、高濃度の炭酸ガスを含む炭酸泉を容易かつ安価に製造できる。
【0010】
ここで、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液は、例えば、水を電気分解してアルカリ水を得、このアルカリ水に炭酸ガスを吹き込むことによって得てもよいし、水に炭酸塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム等)を溶解させることによって得てもよい。
また、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にするには、例えば、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を電気分解して酸性にしてもよいし、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液に、酸性水を混ぜることによって酸性にしてもよい。
【0011】
また、本発明に係る炭酸泉の製造装置は、例えば図1に示すように、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にすることによって、炭酸ガスを酸性水溶液中に溶解させて炭酸泉を製造する炭酸泉の製造装置であって、
炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を製造する炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段1と、
この炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段1によって製造された炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にする酸性移行手段2とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段1によって、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を製造し、酸性移行手段2によって、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にするとによって、炭酸ガスが酸性水溶液中に溶解するので、高濃度の炭酸ガスを含む炭酸泉を容易かつ安価に製造できる。
【0013】
ここで、炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段1は、例えば、水を電気分解することによってアルカリ水を製造するアルカリ水製造手段3と、
このアルカリ水製造手段3によって製造されたアルカリ水に炭酸ガスを吹き込むことによって、アルカリ水に炭酸水素イオンを含有させる炭酸水素イオン含有手段4とを備えた構成としてもよい。
【0014】
また、酸性移行手段2は、例えば、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を電気分解して酸性にする電気分解手段2aを備えた構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にすることによって、炭酸ガスが酸性水溶液中に溶解するので、高濃度の炭酸ガスを含む炭酸泉を容易かつ安価に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る炭酸泉の製造装置の第1の実施の形態を示す概略構成図である。
炭酸泉の製造装置は、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にすることによって、炭酸ガスを酸性水溶液中に溶解させて炭酸泉を製造する炭酸泉の製造装置であり、炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段1と、酸性移行手段2とを備えている。
【0017】
炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段1は、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を製造する手段であり、アルカリ水製造手段3と、炭酸水素イオン含有手段4とを備えている。
アルカリ水製造手段3は、水を電気分解することによってアルカリ水を製造する手段であり、電解槽5と、この電解槽5の電極5a,5bに接続された電源6とを備えている。電極5aは陽極5aであり、電極5bは陰極5bである。また、電解槽5は、水中のイオン種を通過させ、水そのものの通過は阻害する隔膜により2つに隔てられている。
電解槽5には、原水を流入させる流入管7が接続されており、この流入管7は先端部で2つに分岐し、一方の分岐管7aは陽極5a側の電解槽5に接続され、他方の分岐管7bは陰極5b側の電解槽5に接続されている。
また、流入管7は例えば水道管に接続されており、この流入管7には電解槽5への水の供給量を制御するバルブ8が設けられている。
また、陽極5a側の電解槽5には、排水管9が接続されており、陰極5b側の電解槽5には供給管10が接続されている。
【0018】
そして、上記のようなアルカリ水製造手段3では、電解槽5に流入管7から水が流入したうえで、この電解槽5で電気分解を行う。
すると、陰極5b側では水酸化イオン(OH)が多くなり、アルカリ水が生成される。また、陽極5a側では水素イオン(H)が多くなり、酸性水が生成される。
陰極5b側で生成されたアルカリ水は、供給管10によって、前記炭酸水素イオン含有手段4に供給される。
【0019】
炭酸水素イオン含有手段4は、アルカリ水に炭酸ガスを吹き込むことによって、アルカリ水に炭酸水素イオンを含有させる手段であり、液化炭酸ガスが充填された炭酸ガスボンベ12と、タンク13とを備えている。炭酸ガスボンベ12とタンク13とは、途中にバルブ14aが介在された接続管14によって接続されており、この接続管14の先端部には炭酸ガスをアルカリ水中に吹き込む吹込み部15が取り付けられている。吹込み部15は多孔質のセラミックスで形成されたもので、炭酸ガスを細かい泡にしてアルカリ水中に吹き込むものである。
また、タンク13は密閉型のものであり、リリーフ弁13aが取り付けられている。
【0020】
そして、上記のような炭酸水素イオン含有手段4では、前記供給管10からタンク13内にアルカリ水が流入して所定量充填されると、炭酸ガスボンベ12から接続管14を通って炭酸ガスが吹込み部15からアルカリ水中に吹き込まれる。
二酸化炭素と炭酸の平衡は、H2O+CO2⇔H2CO3⇔HCO3-+H+ となり、この式において左側が酸性側であり、左側がアルカリ性側である。したがって、アルカリ水に炭酸ガスを吹き込むと、アルカリ水に、炭酸水素イオン(HCO3-)が溶解して含有することになる。これによって、タンク13内のアルカリ水には、炭酸ガスの大部分が炭酸水素イオン(HCO3-)となって含有している。
なお、アルカリ水から放出される若干の炭酸ガスはリリーフ弁13aから外部に放出される。
【0021】
前記タンク13には、接続管16が接続されており、この接続管16の先端部は浴槽17に接続されている。これによって、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液は浴槽17に貯留される。なお、接続管16にはポンプを設け、このポンプによって炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を浴槽17に供給するのが望ましい。
そして、この浴槽17に貯留している炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を、前記酸性移行手段2によって酸性にする。
【0022】
酸性移行手段2は、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を電気分解して酸性にする電気分解手段2aを備えている。
電気分解手段2aは、電解槽20と、この電解槽20の電極20a,20bに接続された電源21とを備えている。電極20aは陽極20aであり、電極20bは陰極20bである。また、電解槽20は、水中のイオン種を通過させ、水そのものの通過は阻害する隔膜により2つに隔てられている。
電解槽20と浴槽17とは流入管22によって接続されており、この流入管22は先端部で2つに分岐し、一方の分岐管22aは陽極20a側の電解槽20に接続され、他方の分岐管22bは陰極20b側の電解槽20に接続されている。なお、分岐管22a,22bにはそれぞれバルブ23a,23bが取り付けられている。
また、流入管22の途中には、流量調整弁24、ポンプ25、PH計26が取り付けられている。
また、陽極20a側の電解槽20と浴槽17とは供給管27によって接続されており、陽極20a側の酸性水溶液が浴槽17に供給されるようになっている。
一方、陰極20b側のアルカリ水溶液は接続管28を通してタンク30に貯留されるようになっている。
さらに、タンク30には、途中にバルブ31aが取り付けられた排出管31が接続されており、この排出管31はタンク32に接続されている。さらに、前記浴槽17とタンク32とは、途中にバルブ33aが取り付けられた排出管33によって接続されている。
【0023】
そして、上記のような酸性移行手段2の電気分解手段2aでは、浴槽17に貯留されている炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液が、ポンプ26によって流入管22を通って電解槽20に供給され、この電解槽20で電気分解が行われる。
すると、陽極20a側では水素イオン(H)が多くなり、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液が酸性へと移行し、酸性水溶液となる。
二酸化炭素と炭酸の平衡は、H2O+CO2⇔H2CO3⇔HCO3-+H+ となるので、この酸性水に炭酸ガスが溶解する。
炭酸ガスが溶解した酸性水溶液は供給管27を通って浴槽17に供給される。
このような工程を繰り返して行うことによって、浴槽17には炭酸ガスが溶解した酸性水溶液が貯留していく。つまり、浴槽17に炭酸泉が貯留されていく。
【0024】
また、浴槽17から流入管22を通って電解槽20に炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を供給する際に、PH計26でこのアルカリ水溶液のPHを測定する。そして、このPH値が4〜6となるまで、つまり酸性になるまで上記のような工程を繰り返して行う。PHが4〜6で平衡状態となった酸性水溶液には、例えば炭酸ガスが1000ppm程度溶解する。
この炭酸ガスの量はタンク13内のアルカリ水中に吹き込む炭酸ガス量によって調整できる。つまり、タンク13内のアルカリ水中には、吹き込まれた炭酸ガス量に相当する炭酸水素イオン(HCO3-)が溶解しているので、この炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にして炭酸ガスとして溶解させることによって、炭酸ガス量を例えば1000ppmに容易に調整できる。
【0025】
炭酸ガス量が1000ppmに調整された炭酸泉は浴槽17で使用されるが、使用済みの炭酸泉はバルブ33aを明けて排出管33を通って、タンク32に一時貯留する。このとき、炭酸泉は弱酸性となっている。
一方、前記陰極20b側の電解槽20で生成されたアルカリ水溶液は接続管28を通ってタンク30に貯留され、このタンク30からバルブ31aを開けて排出管31を通って、タンク32に一時貯留する。
したがって、タンク30内では、使用済みの炭酸泉が中和されるので、この中和された炭酸泉を排水する。
【0026】
本実施の形態によれば、炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段1によって、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を製造し、酸性移行手段2によって、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にするとによって、炭酸ガスが酸性水溶液中に溶解するので、高濃度の炭酸ガスを含む炭酸泉を容易かつ安価に製造できる。
【0027】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明に係る炭酸泉の製造装置の第2の実施の形態を示す概略構成図である。この図に示す炭酸泉の製造装置が、図1に示す第1の実施の形態の炭酸泉の製造装置と異なる点は、炭酸イオン含有手段4の構成であるので、以下ではこの構成について説明し、図1に示す炭酸泉の製造装置と共通部分には同一符号を付してその説明を簡略化ないし省略する。
【0028】
炭酸イオン含有手段4は、アルカリ水に炭酸ガスを吹き込むことによって、アルカリ水に炭酸水素イオンを含有させる手段であり、液化炭酸ガスが充填された炭酸ガスボンベ12とカーボネータ35とを備えている。
カーボネータ35は加圧した水を容器内に噴射し、容器内で水と炭酸ガスとを混合して炭酸水を生成するものである。カーボネータ35と浴槽17とは接続管16によって接続されているが、この接続管16は、第1の実施の形態の炭酸泉の製造装置における接続管16より長くなっている。このように接続管16を長くすることによって、アルカリ水に炭酸ガスが効果的に溶解する。
【0029】
このような炭酸水素イオン含有手段4では、前記供給管10からカーボネータ35にアルカリ水が供給され、このアルカリ水はカーボネータ35の容器内に噴出する。一方、炭酸ガスボンベ12から接続管14を通って炭酸ガスが前記容器に吹き込まれることで、アルカリ水に炭酸ガスが吹き込まれ、この炭酸ガスがアルカリ水に溶解する。
【0030】
本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる他、第1の実施の形態で使用しているタンク13が必要ないので、その分装置をコンパクトにすることができるという効果が得られる。
【0031】
(第3の実施の形態)
図3は、本発明に係る炭酸泉の製造装置の第3の実施の形態を示す概略構成図である。この図に示す炭酸泉の製造装置が、図1に示す第1の実施の形態の炭酸泉の製造装置と異なる点は、炭酸イオン含有手段4の構成であるので、以下ではこの構成について説明し、図1に示す炭酸泉の製造装置と共通部分には同一符号を付してその説明を簡略化ないし省略する。
【0032】
炭酸イオン含有手段4は、アルカリ水に炭酸ガスを吹き込むことによって、アルカリ水に炭酸水素イオンを含有させる手段であり、液化炭酸ガスが充填された炭酸ガスボンベ12とタンク13と噴水装置36とを備えている。
噴水装置36は、一端部をタンク13内のアルカリ水中に挿入するとともに、他端部をアルカリ水の液面から上方に突出させたパイプ36aと、このパイプ36の途中に設けられたポンプ36bとを備えている。パイプ36aは、その一端部をアルカリ水中に上方から挿入したうえで、タンク13の上部を貫通して外部に配置し、さらに、タンク13の下部を貫通してアルカリ水中に挿入し、他端部をアルカリ水の液面から上方に突出させている。このパイプ13の他端部にはノズルが取り付けられている。
【0033】
このような炭酸イオン含有手段4では、前記供給管10からタンク13内にアルカリ水が流入して所定量充填されると、ポンプ36bによってアルカリ水を汲み上げて、パイプ36aの他端部のノズルからアルカリ水の液面上から噴出させる。
一方、炭酸ガスボンベ12から接続管14を通って炭酸ガスは、タンク13内の上部に吹き込まれ、この炭酸ガスが前記ノズルから噴出したアルカリ水に吹き込まれ、この炭酸ガスがアルカリ水に溶解する。
【0034】
本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる他、炭酸ガスがノズルから噴出したアルカリ水に吹き込まれるので、炭酸ガスをより効果的にアルカリ水に溶解させることができるという効果が得られる。
【0035】
(第4の実施の形態)
図4は、本発明に係る炭酸泉の製造装置の第4の実施の形態を示す概略構成図である。
この図4に示す炭酸泉の製造装置は、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にすることによって、炭酸ガスを酸性水溶液中に溶解させて炭酸泉を製造する炭酸泉の製造装置であって、炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段41と、酸性移行手段42とを備えている。
【0036】
図4(a)および(b)に示すように、炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段41は、水槽17と、この水槽17中の水に投入される炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩と、この炭酸塩を投入する図示しない投入手段とを備えている。投入手段は炭酸塩が充填された容器と、この容器に形成されて水槽中に炭酸塩を投入する投入口とから構成されている。なお、投入口は蓋により開閉可能となっている。また、水槽17としては例えば浴槽17を使用できる。
【0037】
そして、上記のような炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段41では、水槽(浴槽)17に水を充填したうえで、炭酸水素ナトリウムを投入すると、水槽17には、炭酸水素イオンを含有するアルカリ水溶液が生成される。
【0038】
酸性移行手段42は、電解槽43と、この電解槽43の電極43a,43bに接続された電源44とを備えている。電極43aは陽極43aであり、電極43bは陰極43bである。また、電解槽43は、水中のイオン種を通過させ、水そのものの通過は阻害する隔膜により2つに隔てられている。
電解槽43と水槽17とは流入管45によって接続されており、この流入管45は先端部で2つに分岐し、一方の分岐管45aは陽極43a側の電解槽43に接続され、他方の分岐管45bは陰極43b側の電解槽43に接続されている。なお、分岐管45a,45bにはそれぞれバルブ46a,46bが取り付けられている。また、流入管45の途中には、ポンプ47と図示しないPH計が取り付けられている。
【0039】
また、陽極43a側の電解槽43には供給管50aが接続され、陰極43b側の電解槽43には供給管50bが接続されている。供給管50a,50bの先端部は水槽17内に挿入されている。
供給管50a,50bの途中にはガス溜り部51a,51bが設けられており、このガス溜り部51a,51bには、タンク52a,52bが接続されている。このタンク52a,52bと、前記分岐管45a,45bとは接続管53a,53bによって接続されている。この接続管53a,53bにはバルブ54a,54bが設けられている。
また、ガス溜り部51a,51bにはそれぞれリリーフ弁55が設けられている。また、供給管50a,50bにはバルブ56a,56bが設けられている。
【0040】
そして、上記のような酸性移行手段42では、図4(a)に示すように、浴槽17に貯留されている炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液が、ポンプ47によって流入管45を通って電解槽43に供給され、この電解槽43で電気分解が行われる。
すると、陽極43a側では水素イオン(H)が多くなり、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液が酸性へと移行し、酸性水溶液となる。
二酸化炭素と炭酸の平衡は、H2O+CO2⇔H2CO3⇔HCO3-+H+ となるので、この酸性水に炭酸ガスが溶解する。なお、酸性水溶液から出てくる炭酸ガスはガス溜り部51aに一部溜まったうえで、リリーフ弁55から外部に放出される。
そして、炭酸ガスが溶解した酸性水溶液は供給管50aを通って浴槽17に供給される。
このような工程を繰り返して行うことによって、浴槽17には炭酸ガスが溶解した酸性水溶液が貯留していく。つまり、浴槽17に炭酸泉が貯留されていく。
【0041】
なお、浴槽17に貯留されている炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液をポンプ47によって流入管45を通して電解槽43に供給する場合、バルブ46aは開いた状態を維持しておくが、バルブ46bは陰極43b側の電解槽43に炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液が充填されるまで開いておき、充填後は閉じる。
また、電気分解を行っている間、バルブ56aは開いておき、バルブ53aは閉じておく。これによって、炭酸ガスが溶解した酸性水溶液は供給管50aを通って浴槽17に供給される。
さらに、電気分解を行っている間、バルブ46bとバルブ56bは閉じておき、バルブ54bは開いておく。
【0042】
また、浴槽17から流入管45を通して電解槽20に炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を供給する際に、PH計でこのアルカリ水溶液のPHを測定する。そして、このPH値が4〜6となるまで、上記のような工程を繰り返して行う。PHが4〜6で平衡状態となった酸性水溶液には炭酸ガスが例えば1000ppm程度溶解する。
この炭酸ガスの量は水槽17に投入する炭酸水素ナトリウムの量によって調整できる。つまり、水槽17の水中には、投入された炭酸水素ナトリウム量に相当する炭酸水素イオン(HCO3-)が溶解して含有しているので、この炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にして炭酸ガスとして溶解させることによって、炭酸ガス量を例えば1000ppmに容易に調整できる。
【0043】
炭酸ガス量が1000ppmに調整された炭酸泉は浴槽17で使用されるが、使用後の炭酸泉は弱酸性となっている。
この状態で図4(b)に示すように、バルブ46aとバルブ56aを閉じるとともに、バルブ46bとバルブ56bを開く。また、バルブ54aを開くとともに、バルブ54bを閉じる。
すると、浴槽17内の使用済みの炭酸泉は、ポンプ47によって流入管45、分岐管45bを通って陰極43b側の電解槽45に流入し、この電解槽45で電気分解される。すると、陰極43b側では水酸化イオン(OH)が多くなっていき、炭酸泉が中和される。このような電気分解の最中、使用済みの炭酸泉は浴槽17から電解槽43へと、この電解槽43から浴槽17へと循環しているが、この際に、PH計で炭酸泉のPHを測定し、このPH値が7となるまで、つまり中和するまで電気分解を行う。PHが7で平衡状態となったら、浴槽17内の炭酸泉を排出する。
【0044】
本実施の形態によれば、炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段41によって、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を製造し、酸性移行手段42によって、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にするとによって、炭酸ガスが酸性水溶液中に溶解するので、高濃度の炭酸ガスを含む炭酸泉を容易かつ安価に製造できる。
【0045】
(第5の実施の形態)
図5は、本発明に係る炭酸泉の製造装置の第5の実施の形態を示す概略構成図である。
この図に示す炭酸泉の製造装置は、図1に示す炭酸泉の製造装置における酸性移行手段2の代わりに、図4に示す炭酸泉の製造装置における酸性移行手段42を設けたものである。
したがって、この実施の形態の炭酸泉の製造装置においては、図1および図2に示すものと共通部分には同一符号を付してその説明を簡略化ないし省略する。
【0046】
本実施の形態の炭酸泉の製造装置では、タンク13と水槽17との間に、PH調整タンク60が設けられている。このPH調整タンク60にはPH計61が取り付けられている。また、PH調整タンク60には、タンク62が接続されており、このタンク62は陽極5a側の電解槽5に接続管63を介して接続されている。この接続管63にはバルブ64が設けられており、タンク62とPH調整タンク60とを接続する接続管にもバルブ65が設けられている。
【0047】
そして、本実施の形態の炭酸泉の製造装置では、供給管10からタンク13内にアルカリ水が流入して所定量充填されると、炭酸ガスボンベ12から接続管14を通って炭酸ガスが吹込み部15からアルカリ水中に吹き込まれ、これによって、アルカリ水に、炭酸水素イオン(HCO3-)が溶解して含有し、このアルカリ水がバルブ66を通ってPH調整タンク60に流入する。
一方、陽極5a側の電解槽5で生成された酸性水は、接続管63を通ってタンク62に貯留される。
そして、この酸性水をバルブ65を開いてPH調整タンク60に流入させることによって、前記アルカリ水のPH値を所望の値(PH4〜6)に調整する。これは、PH調整タンク60内のアルカリ水をPH計61で測定しながら、バルブ65の開閉量を調整して酸性水をPH調整タンク60内流入させることによって行う。
【0048】
このようにしてPH値が調整された、炭酸水素イオン(HCO3-)が溶解しているアルカリ水溶液をポンプ66によって、浴槽17に供給する。
そして、第4の実施の形態と同様にして、酸性移行手段42によって、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性へと移行して、酸性水溶液とし、この炭酸ガスが溶解した酸性水は浴槽17に供給される。つまり、炭酸泉が浴槽17に供給される。
そして、使用済みの炭酸泉は第4の実施の形態と同様にして中和して浴槽17から排出する。
【0049】
本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果が得られる他、PH調整タンク60でPH値が調整された、炭酸水素イオン(HCO3-)が溶解しているアルカリ水を浴槽17に供給するので、浴槽17の炭酸ガスの濃度を正確に調整することができるという効果が得られる。
【0050】
(第6の実施の形態)
図6は、本発明に係る炭酸泉の製造装置の第6の実施の形態を示す概略構成図である。
この図6に示す炭酸泉の製造装置は、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にすることによって、炭酸ガスを酸性水溶液中に溶解させて炭酸泉を製造する炭酸泉の製造装置であって、炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段71と、酸性移行手段72とを備えている。
【0051】
炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段71は、水槽73と、この水槽73内の水に投入される炭酸水素ナトリウムによって構成されている。水槽73は足が漬かる程度の容量にものである。
そして、炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段71では、水槽73に水を充填したうえで、炭酸水素ナトリウムを投入すると、水槽73には、炭酸水素イオンを含有するアルカリ水溶液が生成される。
【0052】
酸性移行手段72は、第1の実施の形態における電解槽20と同様の電解槽20を備えている。陽極20a側の電解槽20と水槽73とは供給管74aおよび流入管75aによって接続されており、陰極20b側の電解槽20と水槽73とは供給管74bおよび流入管75bによって接続されている。
流入管75a,75bには、ポンプ76a,76b、バルブ77a,77b、バルブ78a,78bが設けられている。
【0053】
そして、上記のような酸性移行手段42では、水槽73に貯留されている炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液が、ポンプ76a,76bによって流入管75a,75bを通って電解槽20に供給され、この電解槽20で電気分解が行われる。
すると、陽極20a側では水素イオン(H)が多くなり、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液が酸性へと移行し、酸性水溶液となる。
二酸化炭素と炭酸の平衡は、H2O+CO2⇔H2CO3⇔HCO3-+H+ となるので、この酸性水に炭酸ガスが溶解する。
そして、炭酸ガスが溶解した酸性水溶液は供給管74aを通って水槽73に供給される。
このような工程を繰り返して行うことによって、水槽73には炭酸ガスが溶解した酸性水溶液が貯留していく。つまり、水槽73に炭酸泉が貯留されていく。
【0054】
なお、水槽73に貯留されている炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液をポンプ76aによって流入管75aを通して電解槽20に供給する場合、バルブ77a,78aは開いた状態を維持しておくが、バルブ77b,78bは陰極20b側の電解槽20に炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液が充填されるまで開いておき、充填後は閉じる。
また、電気分解を行っている間、77a,78aは開いておき、バルブバルブ77b,78bは閉じておく。これによって、炭酸ガスが溶解した酸性水溶液は供給管74aを通って水槽73に供給される。
【0055】
この水槽73を使用する場合、まず、水槽73内の水に炭酸水素ナトリウムを投入した後、水槽73に足を挿入する。水槽73内の水はアルカリ性となっているので、このアルカリ水によって足の角質が除去される。
そして、酸性移行手段42によって水槽73内には炭酸泉が供給されていく。そして使用済みの炭酸泉は弱酸性となっている。
この状態で、バルブ77a,78aを閉じるとともに、バルブ77b,78bを開く。
すると、水槽73内の使用済みの炭酸泉は、ポンプ76bによって流入管75bを通って陰極20b側の電解槽20に流入し、この電解槽20で電気分解される。すると、陰極20b側では水酸化イオン(OH)が多くなっていき、炭酸泉が中和される。このような電気分解の最中、使用済みの炭酸泉は水槽73から電解槽20へと、この電解槽20から水槽73へと循環しているが、この際に炭酸泉がしだいに中和していく。そしてこの中和した水槽73内の炭酸泉を排出する。
【0056】
本実施の形態によれば、炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段71によって、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を製造し、酸性移行手段73によって、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にするとによって、炭酸ガスが酸性水溶液中に溶解するので、高濃度の炭酸ガスを含む炭酸泉を容易かつ安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施の形態の炭酸泉の製造装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態の炭酸泉の製造装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態の炭酸泉の製造装置を示す概略構成図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態の炭酸泉の製造装置を示す概略構成図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態の炭酸泉の製造装置を示す概略構成図である。
【図6】本発明の第6の実施の形態の炭酸泉の製造装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0058】
1,41,71 炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段
2,42,72 酸性移行手段
2a 電気分解手段
3 アルカリ水製造手段
4 炭酸水素イオン含有手段
5,20,43 電解槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にすることによって、炭酸ガスを酸性水溶液中に溶解させて炭酸泉を製造することを特徴とする炭酸泉の製造方法。
【請求項2】
炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液は、水を電気分解してアルカリ水を得、このアルカリ水に炭酸ガスを吹き込むことによって得られることを特徴とする請求項1に記載の炭酸泉の製造方法。
【請求項3】
炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液は、水に炭酸塩を溶解させることによって得られることを特徴とする請求項1に記載の炭酸泉の製造方法。
【請求項4】
炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を電気分解して酸性にすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭酸泉の製造方法。
【請求項5】
炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にすることによって、炭酸ガスを酸性水溶液中に溶解させて炭酸泉を製造する炭酸泉の製造装置であって、
炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を製造する炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段と、
この炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段によって製造された炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を酸性にする酸性移行手段とを備えることを特徴とする炭酸泉の製造装置。
【請求項6】
前記炭酸水素イオン含有アルカリ水溶液製造手段は、水を電気分解することによってアルカリ水を製造するアルカリ水製造手段と、
このアルカリ水製造手段によって製造されたアルカリ水に炭酸ガスを吹き込むことによって、アルカリ水に炭酸水素イオンを含有させる炭酸水素イオン含有手段とを備えることを特徴とする請求項5に記載の炭酸泉の製造装置。
【請求項7】
前記酸性移行手段は、炭酸水素イオンを含むアルカリ水溶液を電気分解して酸性にする電気分解手段を備えていることを特徴とする請求項5または6に記載の炭酸泉の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−46615(P2010−46615A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213720(P2008−213720)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(504385476)株式会社 オムシー (7)
【Fターム(参考)】