説明

点灯ドット率計算装置、作画装置および作画プログラム

【課題】1ドット間隔でのスクロール表示にも対応できる点灯ドット率計算装置、それを用いた作画装置を提供する。
【解決手段】作画装置の処理部16は、表示装置に表示すべき画像のドット配列を表すドットパターンを記憶するドットパターン記憶部61と、ドットパターンよりも小さなスキャンエリアを設定するスキャンエリア設定部62と、ドットパターン上においてスキャン初期位置からスキャン終了位置まで予め定めるスキャン経路に沿って1ドット間隔ずつずらしてスキャンエリアを適用することにより、スキャン初期位置からスキャン終了位置まで1ドット間隔でずらされた位置に複数の点灯率計算エリアを設定する点灯率計算エリア設定部63と、各点灯率計算エリアについて、当該点灯率計算エリア内の点灯ドット率を計算する点灯ドット率計算部64とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二次元配列された複数のドット光源を有する表示装置のための点灯ドット率計算装置、ならびに前記表示装置に表示すべき画像を作画するための装置およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のドット光源を二次元配列した表示装置の一例は、ドット光源にLED素子(発光ダイオード素子)を適用したLED表示装置である。この種の表示装置では、全ドットの同時点灯が求められることはなく、全ドットの数十%程度を同時点灯できれば実用上十分である。そのため、内蔵される電源部は、全ドットの数十%程度を同時点灯できる電源容量を有する仕様に設計されるのが通常である。
【0003】
一方、LED表示装置に使用者が自由に設定した内容を表示できるようにするために、パーソナルコンピュータ上で動作する作画プログラムが提供される場合がある。作画プログラムを用いて作成されたドットパターンは、LED表示装置内の画像メモリに書き込まれ、LED表示装置は、その画像メモリに格納されたドットパターンを読み出して表示動作を実行する。
【0004】
このような作画プログラムを用いると、表示装置の電源容量を超えたドット数の同時点灯を要求するドットパターンが作成されるおそれがある。そこで、特許文献1に開示されている先行技術は、使用者が作成した文章が表示装置の限界点灯率を超えると、表示手段にメッセージを出力するように構成されている。このメッセージを受けて、使用者は、限界点灯率に収まるように文章を修正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−56530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の先行技術は、LED表示装置の表示幅を超える長さの文章を一文字ずつ右から左へスクロールして表示する場合を想定している。そして、1文字ずつスクロールされたときにLED表示装置にそれぞれ表示される文章について点灯率を求め、その最大値である最大点灯率が限界点灯率を超えると、メッセージを出力する。
しかし、この構成は、1文字ずつのスクロール表示に対応しているに過ぎない。最近のLED表示装置のなかには、スクロールを滑らかにするために、1ドットずつ表示画像をスクロールさせるものもあるから、このようなLED表示装置に特許文献1の先行技術を適用すると、最大点灯率が限界点灯率を超えるおそれがある。より具体的には、文字列で構成された画像を左右に1ドットずつスクロール表示する場合を例にとると、1文字ずつのスクロールではないので、表示画面の端部では、文字が半分だけ表示されるような場合も生じる。このような場合に、特許文献1の先行技術では、最大点灯率が限界点灯率を超えないことを保証できない。したがって、電源部に過大な負荷を与えるおそれがある。これを回避するためには、電源部の電力容量を大きめに設計しておけばよいが、LED表示装置の大型化およびコスト増加は避けられない。
【0007】
そこで、この発明の目的は、1ドット間隔でのスクロール表示にも対応できる点灯ドット率計算装置、およびそれを用いた作画装置を提供することである。また、この発明の他の目的は、1ドット間隔でのスクロール表示にも対応して点灯ドット率の計算や作画を行うことができるコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、個別に点灯制御される複数のドット光源が二次元配列された表示装置のための点灯ドット率計算装置であって、前記表示装置に表示すべき画像のドット配列を表すドットパターンを記憶するドットパターン記憶手段と、前記ドットパターン記憶手段に記憶された前記ドットパターンよりも小さなスキャンエリアを設定するスキャンエリア設定手段と、前記スキャンエリア設定手段によって設定されたスキャンエリアを、前記ドットパターン上において、スキャン初期位置からスキャン終了位置まで、予め定めるスキャン経路に沿って1ドット間隔ずつずらして適用することにより、前記スキャン初期位置から前記スキャン終了位置まで1ドット間隔でずらされた位置に複数の点灯率計算エリアを設定する点灯率計算エリア設定手段と、前記点灯率計算エリア設定手段によって設定された各点灯率計算エリアについて、当該点灯率計算エリア内の点灯ドット率を計算する点灯ドット率計算手段とを含む、点灯ドット率計算装置を提供する。
【0009】
この構成によれば、表示装置に表示すべきドットパターンよりも小さなスキャンエリアが、ドットパターン上において、スキャン初期位置からスキャン終了位置まで、スキャン経路に沿って、1ドットずつずらして適用され、それらの各位置に点灯率計算エリアが設定される。つまり、点灯率計算エリアは、スキャンエリアと同じ大きさおよび形状を有するエリアであって、スキャン経路に沿って、1ドット間隔で複数個設定される。この複数の点灯率計算エリアの各々について、点灯ドット率が計算される。こうして、1ドット間隔でのスクロールにも対応できる。
【0010】
スキャンエリアは、表示装置の表示画面に対応するエリアであってもよい。表示装置が複数の表示ユニットを結合して構成され、各表示ユニットの個別表示画面を結合して、より大きな表示画面が形成される場合もある。このような場合には、表示ユニットごとに電源部が内蔵されるのが通常であるから、スキャンエリアは各表示ユニットの個別表示画面に対応するエリアであることが好ましい。
【0011】
スキャン経路は、ドットパターンが左右方向にスクロール表示される場合には、ドットパターンの左右方向に沿った直線経路であることが好ましい。また、スキャン経路は、ドットパターンが上下方向にスクロール表示される場合には、ドットパターンの上下方向に沿った直線経路であることが好ましい。さらにまた、スキャン経路は、ドットパターンが斜め方向にスクロール表示される場合には、ドットパターンの斜め方向に沿った直線経路であることが好ましい。また、ドットパターンが、ジグザグの経路や曲線状の経路に沿ってスクロール表示される場合があれば、そのようなスクロール方向に対応したスキャン経路を採用すればよい。すなわち、スキャン経路は、表示装置におけるスクロール経路に整合する経路とすることが好ましい。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記スキャンエリア設定手段が、複数のスキャンエリアを設定するように構成されており、前記点灯率計算エリア設定手段が、前記スキャンエリア設定手段によって設定される各スキャンエリアについて、前記複数の点灯率計算エリアを設定するように構成されている、請求項1に記載の点灯ドット率計算装置である。
たとえば、前述のように、複数の表示ユニットを結合して表示装置が構成される場合において、個々の表示ユニットの個別表示画面の大きさまたは形状が異なることもある。また、個々の表示ユニットの電源部の電力容量が異なる場合もある。さらには、個別表示画面の一部に固定パターンの画像を表示し、残りの部分で画像をスクロールする表示を行う表示態様も考えられる。このような場合に、複数のスキャンエリアが設定され、個々のスキャンエリアについて1ドット間隔で複数の点灯率計算エリアが設定されて、各点灯率計算エリアの点灯率が計算されることにより、あらゆる表示態様に関して必要な点灯率情報を得ることができる。
【0013】
前記複数のスキャンエリアは、大きさおよび形状のうちの少なくとも一方が異なる(すなわち種類が異なる)複数のスキャンエリアを含んでいてもよく、大きさおよび形状がいずれも等しい複数のスキャンエリアを含んでいてもよい。大きさおよび形状がいずれも等しい複数のスキャンエリアは、それらに対応して設定される後述の制限点灯ドット率が互いに異なるものであってもよい。
【0014】
請求項3記載の発明は、前記点灯ドット率計算手段によって計算された点灯ドット率と制限点灯ドット率とを比較する比較手段と、前記点灯ドット率が前記制限点灯ドット率を超えているときに警告を発生する、警告発生手段とをさらに含む、請求項1または2に記載の点灯ドット率計算装置である。この構成によれば、点灯率計算エリア毎に計算された点灯ドット率が制限点灯ドット率を超えると、警告が発生される。これにより、使用者は、ドットパターンの修正が必要であることをただちに認識できる。警告発生手段は、点灯ドット率が制限点灯ドット率を超えた点灯率計算エリアを特定して警告を発生するものであることが好ましい。警告の発生は、メッセージの表示によって行うこともできるし、画像表示によって行うこともできる。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記複数のスキャンエリアにそれぞれ対応する制限点灯ドット率を設定する制限点灯ドット率設定手段をさらに含む、請求項2に係る請求項3に記載の点灯ドット率計算装置である。この構成によれば、複数のスキャンエリアのそれぞれに対して制限点灯ドット率が設定される。これにより、複数の表示ユニットを結合して表示装置が構成される場合や、表示ユニットの個別表示画面の一部を固定表示エリアとするような場合にも対応できる。また、複数の表示ユニットの個別表示画面の形状および大きさが等しく、電力容量が異なる場合には、同形同大のスキャンエリアを複数個設けておき、それぞれのスキャンエリアに対して異なる制限点灯ドット率を設定することができる。こうして、表示ユニットの様々な構成および様々な表示態様に柔軟に対応することができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、個別に点灯制御される複数のドット光源が二次元配列された表示装置に表示すべきドットパターンを作画するための作画装置であって、請求項1〜4のいずれか一項に記載の点灯ドット率計算装置と、表示画面上でドットパターンを編集するために操作者によって操作されるドットパターン編集手段と、前記ドットパターン編集手段によって編集されたドットパターンを前記ドットパターン記憶手段に書き込むドットパターン書き込み手段とを含む、作画装置を提供する。
【0017】
この構成により、使用者は、表示装置に表示させるべきドットパターンを編集し、そのドットパターンをドットパターン記憶手段に書き込むことができる。このドットパターン記憶手段に書き込まれたドットパターンに対して、1ドット間隔で複数の点灯率計算エリアが設定され、各点灯率計算エリアについて点灯率が計算される。
とくに、請求項3の特徴と組み合わされる場合には、作画したドットパターンが制限点灯ドット率による制限に適合しているか否かを知ることができる。これにより、制限点灯ドット率による制限に適合したドットパターンの作画を支援できるから、使用者は、表示装置に表示すべきドットパターンの作画を効率的に行うことができる。
【0018】
請求項6記載の発明は、作画済みドットパターンを保存するための作画済みドットパターン保存手段と、前記ドットパターン記憶手段に記憶されたドットパターンを前記作画済みドットパターン保存手段に書き込む作画済みドットパターン書き込み手段と、いずれかの点灯率計算エリアの点灯ドット率が制限点灯ドット率を超えているときに、前記作画済みドットパターン保存手段への作画済みドットパターンの保存を禁止する保存禁止手段とをさらに含む、請求項5に記載の作画装置である。
【0019】
この構成によれば、いずれかの点灯率計算エリアの点灯ドット率が制限点灯ドット率を超えていると、作画済みドットパターンを保存することができない。これにより、制限点灯ドット率の制限に適合しないドットパターンが作画されることを確実に回避できる。よって、表示装置の電源部に過大な負荷をかけるような作画を回避することができる。
前記警告発生手段は、作画済みドットパターンの保存ができないこと(禁止されたこと)を編集画面上に表示する手段であってもよい。
【0020】
請求項7記載の発明は、作画済みドットパターンの前記作画済みドットパターン保存手段への保存を指示するために操作者によって操作される作画済みドットパターン保存指示手段をさらに含み、前記スキャンエリア設定手段、前記点灯率計算エリア設定手段、前記点灯ドット率計算手段が、前記作画済みドットパターン保存指示手段の操作に応答して動作開始するように構成されている、請求項5または6に記載の作画装置である。
【0021】
この構成によれば、使用者が、ドットパターンの編集を終えて作画済みドットパターン保存指示手段を操作すると、1ドット間隔で複数の点灯率計算エリアが設定され、各点灯率計算エリアの点灯ドット率が計算される。これにより、点灯ドット率の計算が効率的に行われるので、計算負荷を軽減できる。
請求項8記載の発明は、コンピュータを請求項1〜4の点灯ドット率計算装置または請求項5〜7の作画装置の各手段として機能させるためのコンピュータプログラムを提供する。このコンピュータプログラムをコンピュータ上で実行させることにより、当該コンピュータを前述の点灯ドット率計算装置または作画装置として機能させることができる。
【0022】
コンピュータプログラムは、記憶媒体の形態で提供されてもよいし、有線または無線の通信回線による伝送によって提供されてもよい。コンピュータプログラムを記憶する記憶媒体は、CD−ROM、DVD−ROM、フラッシュメモリ等のような携帯可能でかつコンピュータによる読取が可能な記憶媒体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、この発明の一実施形態が適用される表示装置の一例であるLED表示装置の構成を説明するための図である。
【図2】図2は、LED表示装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図3】図3は、ドットパターンを作成するための作画装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図4】図4は、作画装置に備えられた処理部の機能的な構成を説明するためのブロック図である。
【図5】図5Aおよび図5Bは、LED表示装置における表示の一例を示す。
【図6】図6は、スクロールエリアにおいて左右にスクロール表示されるスクロール画像全体(ドットパターン)を示す。
【図7】図7は、作画装置の処理部の外部記憶部に格納されたスクロール設定テーブルの一例を示す。
【図8】図8は、スキャンエリアをスクロール経路に沿って1ドットずつずらして複数の点灯率計算エリアを設定する動作を説明するための図である。
【図9A】図9Aは、作画時の操作者の操作および作画装置の動作を説明するためのフローチャートであり、作画処理全体を示す。
【図9B】図9Bは、作画時の操作者の操作および作画装置の動作を説明するためのフローチャートであり、点灯ドット率計算動作を示す。
【図10】図10は、この発明の他の実施形態が適用される表示装置の一例であるLED表示装置の構成を説明するための図である。
【図11】図11は、LED表示装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図12】図12Aおよび図12Bは、LED表示装置における表示の一例を示す。
【図13】図13は、LED表示装置の表示画面において上下にスクロール表示されるスクロール画像全体(ドットパターン)を示す。
【図14】図14は、作画装置の処理部の外部記憶部に格納されたスクロール設定テーブルの一例を示す。
【図15】図15は、スキャンエリアをスクロール経路に沿って1ドットずつずらして複数の点灯率計算エリアを設定する動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態が適用される表示装置の一例であるLED表示装置の構成を説明するための図である。LED表示装置1は、ドット光源としてのLED素子をマトリクス状に二次元配列して構成された表示画面2を有しており、LED素子を個別に点灯制御することによって、ドットパターンからなる画像を表示するように構成されている。表示画面2は、左右方向に長く延びて形成されており、たとえば、横168ドット、縦16ドットで構成されている。各ドットが一つのLED素子で構成されていてもよいし、各ドットが2つ以上のLED素子で構成されていてもよい。たとえば、各ドットを緑色LEDおよび赤色LEDで構成すると、個々のドットで、緑色、赤色およびオレンジ色(緑色および赤色の混色)の3色表示を行うことができる。LED表示装置1に表示すべき画像を表すドットパターンデータは、作画装置6によって作成され、通信ケーブル7を介してLED表示装置1に書き込まれる。
【0025】
図2は、LED表示装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。LED表示装置1は、たとえば、3つの表示ユニット11,12,13を横方向に直列に結合して構成されている。表示ユニット11,12,13は、個別表示画面21,22,23と、電源部31,32,33と、制御部41,42,43と、画像記憶部51,52,53とをそれぞれ有している。
【0026】
個別表示画面21,22,23は、たとえば、いずれも横56ドット、縦16ドットで構成されており、各ドットはLED素子で構成されている。すなわち、個別表示画面21,22,23は、それぞれLED表示モジュール(表示パネル)を構成している。これらの個別表示画面21,22,23を横方向に直列に結合することによって、横168ドット、縦16ドットの表示画面2が構成されている。
【0027】
電源部31,32,33は、個別表示画面21,22,23を構成するLED素子に電源を供給する。電源部31,32,33の電力容量は、一般に、文字表示に対応するように設計されている。すなわち、全ドットの同時点灯に対応する電力容量ではなく、全ドットの半数程度のドットの同時点灯に対応する電力容量に設計されている。これに応じて、個々の表示ユニット11,12,13における上限点灯ドット率が定められている。具体的には、各表示ユニット11,12,13の上限点灯ドット率は、次式によって定まる閾値である。
【0028】
【数1】

【0029】
表示ユニットの最大消費電力とは、表示ユニットが有する全ドットを同時点灯したときに要する電力である。マージンは、余裕である。文字表示に対応するには、各電源部の電力容量を最大消費電力の半分程度に設定すれば十分である。この場合、上限点灯ドット率は、50%程度となる。
制御部41,42,43は、個別表示画面21,22,23を構成するLED素子の点灯を個別に制御する。画像記憶部51,52,53は、個別表示画面21,22,23に表示すべき画像のドット配列を表すドットパターンを記憶する。制御部41,42,43は、互いに連携し、画像記憶部51,52,53に記憶されたドットパターンに基づいてLED素子の点灯制御を実行する。これにより、表示画面2には、全体としてまとまりのある画像が表示されることになる。
【0030】
制御部41,42,43による制御動作によって、ドットパターン画像をドット間隔でスクロールすることができる。たとえば、表示画面2の長手方向である左右方向に沿って、1ドット間隔で画像を滑らかにスクロール表示することができる。これにより、表示画面2内に収まりきらないほど大きな画像の表示を表示することができる。
画像記憶部51,52,53にドットパターンを書き込むために、通信ポート3が設けられている。制御部41,42,43のうちの一つ(たとえば制御部41)は、マスターコントローラとなり、全体の制御を司る。このマスターコントローラは、通信ポート3から入力されたドットパターンデータを画像記憶部51,52,53に展開させ、さらに必要に応じてそれらのスクロール表示のための指令を他の制御部に与える。
【0031】
図3は、ドットパターンを作成するための作画装置6の電気的構成を説明するためのブロック図である。作画装置6は、この実施形態では、コンピュータとしての基本形態を有している。より具体的には、作画装置6は、操作者によって操作される入力部15と、コンピュータ本体である処理部16と、操作者に視覚的なインタフェースを提供する表示部17とを含む。作画装置6は、さらに、CD−ROMやDVD−ROMのような可搬記憶媒体8を装填でき、その読取を行うことができる読取装置18を含む。入力部15、表示部17および読取装置18は、処理部16に接続されている。作画用のコンピュータプログラム(作画プログラム)を記録した記録媒体8を読取装置18に読み取らせ、その作画プログラムを処理部16に実行させることによって、作画装置6としての必要な機能を実行できる。
【0032】
入力部15は、キーボードやポインティングデバイスであってもよい。表示部17は、液晶ディスプレイその他の二次元表示装置である。これらは、作画のための操作者によって操作されるドットパターン編集手段を構成している。
処理部16は、CPU25、ROM26、RAM27および外部記憶部28ならびに必要なインタフェース(I/F)35,36,37,38を含み、これらをバス29で接続して構成されている。外部記憶部28は、ハードディスクドライブや固体メモリであってもよく、作画装置6の電源遮断後にも記憶データを保持できる記憶装置である。この外部記憶部28の記憶領域は、作画装置6によって作画された作画済みドットパターン保存手段として利用される。また、必要に応じて、外部記憶部28の記憶領域は、作画プログラムの一部または全部を記憶するプログラム記憶部として利用される。作画途中のドットパターンを記憶するドットパターン記憶手段としては、RAM27の記憶領域が利用されるか、必要に応じてさらに外部記憶部28の記憶領域が利用されてもよい。
【0033】
図4は、処理部16の機能的な構成を説明するためのブロック図である。処理部16は、作画プログラムを実行することによって、その内部のハードウェア資源を利用して、複数の機能処理部として機能するように構成されている。この複数の機能処理部は、ドットパターン記憶部61、スキャンエリア設定部62、点灯率計算エリア設定部63、点灯ドット率計算部64、点灯ドット率比較部65、警告発生部66、制限点灯ドット率設定部67、ドットパターン書き込み部68、作画済みドットパターン書き込み部69、保存禁止部70などを含む。
【0034】
ドットパターン記憶部61は、LED表示装置1に表示すべき画像のドット配列を表すドットパターンを一時記憶するためのドットパターン記憶手段である。操作者が表示部17を参照しながら入力部15を操作してドットパターンの作画を行うと、その作画されたドットパターンは、ドットパターン書き込み部68によって、ドットパターン記憶部61に書き込まれる。
【0035】
スキャンエリア設定部62は、ドットパターン記憶部61に記憶されたドットパターンよりも小さなスキャンエリアを設定する。より具体的には、表示ユニット11,12,13の表示領域内で可変表示される領域に相当する大きさおよび形状のスキャンエリアを設定する。スキャンエリア設定部62は、表示ユニット11,12,13のそれぞれに対して少なくとも一つのスキャンエリアを設定する。一つの表示ユニットに対して複数のスキャンエリアが設定されてもよい。
【0036】
点灯率計算エリア設定部63は、スキャンエリア設定部62によって設定されたスキャンエリアを、ドットパターン記憶部61に記憶されたドットパターン上において、予め定めるスキャン経路に沿って、1ドット間隔ずつずらして適用する。すなわち、スキャン経路上のスキャン初期位置からスキャン終了位置まで、1ドット間隔ずつずらしてスキャンエリアが適用され、これによって、スキャン初期位置からスキャン終了位置まで1ドット間隔でずらされた位置に複数の点灯率計算エリアが設定される。LED表示装置1で左右方向にスクロール表示させるためのドットパターンが作画される場合には、スキャン経路は、ドットパターンの左右方向に沿う直線状経路である。
【0037】
点灯ドット率計算部64は、点灯率計算エリア設定部63によって設定された各点灯率計算エリアについて、当該点灯率計算エリア内の点灯ドット率を計算する。点灯ドット率とは、次式に示すとおり、点灯率計算エリア内の全ドット数に対する、当該点灯率計算エリア内の点灯ドット数の割合である。
点灯ドット率=点灯ドット数/全ドット数
点灯ドット率比較部65は、点灯ドット率計算部64によって計算された点灯ドット率と制限点灯ドット率とを比較する。制限点灯ドット率設定部67は、スキャンエリア設定部62によって設定される複数のスキャンエリアにそれぞれ対応する制限点灯ドット率を設定する。制限点灯ドット率設定部67は、各表示ユニット11,12,13における上限点灯ドット率を上回ることがないように、各スキャンエリアの制限点灯ドット率を設定する。
【0038】
警告発生部66は、点灯ドット率比較部65による比較の結果、前記点灯ドット率が前記制限点灯ドット率を超えているときに、警告を発生する。警告は、たとえば、表示部17における表示(メッセージ表示または画像表示)によって行われる。
作画済みドットパターン書き込み部69は、入力部15からのドットパターン保存指示操作に応答して、ドットパターン記憶部61に記憶されたドットパターンを、作画済みドットパターン保存手段としての外部記憶部28に書き込む。
【0039】
保存禁止部70は、いずれか点灯率計算エリアの点灯ドット率が、対応するスキャンエリアについて設定された制限点灯ドット率を超えているときに、外部記憶部28への作画済みドットパターンの保存を禁止する。このとき、前記警告発生部66は、作画済みドットパターンを保存できない旨(保存が禁止される旨)のメッセージ等を表示部17に表示してもよい。
【0040】
図5Aおよび図5Bは、LED表示装置1における表示の一例を示す。この例では、表示画面2の左端に固定エリア80が設定され、残りの領域がスクロールエリア81とされている。固定エリア80にはスクロールしない固定画像が表示され、スクロールエリア81には、左右方向(たとえば右から左に向かう方向)にスクロールするスクロール画像が表示される。
【0041】
固定エリア80は、たとえば、表示ユニット11の個別表示画面21の左側半分の領域(横28ドット、縦16ドットの領域)に設定されている。したがって、スクロール画像は、表示ユニット11の個別表示画面21の右側半分の領域、表示ユニット12の個別表示画面22の全領域、および表示ユニット13の個別表示画面23の全領域において、1ドットずつ左右方向(図5の例では左向き)に移動しながらスクロール表示される。このスクロールによって、個別表示画面21では右側半分の領域の点灯ドット率が変動し、個別表示画面22,23ではそれぞれの全領域の点灯ドット率が変動する。
【0042】
図6は、スクロールエリア81において左右にスクロール表示されるスクロール画像全体(ドットパターン)を示す。スクロール画像は、スクロールエリア81よりも左右に長いドットパターンである。このスクロール画像が、ドットパターン記憶部61に格納される。図6の例では、スクロール画像は、「非常口」の文字列と、それに続いて3人が縦列で避難している様子を表す画像とを含む。
【0043】
図7は、処理部16の外部記憶部28に格納されたスクロール設定テーブルの一例を示す。LED表示装置1に備えられた表示ユニット11,12,13の個別表示画面21,22,23(各電源部に対応した表示エリア)にそれぞれ対応する項目「1」「2」「3」に対応して、スクロール方向、スキャンエリアサイズ、固定エリアの点灯ドット率、スキャンエリアの制限点灯ドット率が定められている。
【0044】
個別表示画面21に対応する項目「1」において、スクロール方向は横方向とされ、スキャンエリアサイズは個別表示画面21の半分の大きさである横28ドット、縦16ドットとされ、固定エリアの点灯ドット率が20%とされ、スキャンエリアの制限点灯ドット率が30%とされている。すなわち、表示ユニット11の個別表示画面21の全体での上限点灯ドット率が50%であり、そのうちの20%が固定エリア80によって用いられているので、スキャンエリア(個別表示画面21のうち固定エリア80以外の部分)に対しては、30%までの点灯ドット率が許容される。
【0045】
個別表示画面22に対応する項目「2」において、スクロール方向は横方向とされ、スキャンエリアサイズは個別表示画面22の全体の大きさである横56ドット、縦16ドットとされている。固定エリアは存在せず、スキャンエリアの制限点灯ドット率が50%とされている。すなわち、表示ユニット12の個別表示画面22の全体での上限点灯ドット率が50%であり、それに応じて、スキャンエリア(個別表示画面22の全体)に対して、50%までの点灯ドット率が許容される。
【0046】
同様に、個別表示画面23に対応する項目「3」において、スクロール方向は横方向とされ、スキャンエリアサイズは個別表示画面23の全体の大きさである横56ドット、縦16ドットとされている。固定エリアは存在せず、スキャンエリアの制限点灯ドット率が50%とされている。すなわち、表示ユニット13の個別表示画面23の全体での上限点灯ドット率が50%であり、それに応じて、スキャンエリア(個別表示画面23の全体)に対して、50%までの点灯ドット率が許容される。
【0047】
スキャンエリア設定部62は、このスクロール設定テーブルに従って、全項目「1」「2」「3」のスキャンエリアサイズのスキャンエリアを順次設定する。また、制限点灯ドット率設定部67は、スクロール設定テーブルに従って、各項目「1」「2」「3」に対応するスキャンエリアの制限点灯ドット率を順次設定する。
図8は、スキャンエリアをスクロール経路に沿って1ドットずつずらして複数の点灯率計算エリアを設定する動作を説明するための図であり、点灯率計算エリア設定部63による処理を示す。点灯率計算エリア設定部63は、スクロール画像に対して、スクロール方向下流端にスキャン初期位置を設定して、このスキャン初期位置にスキャンエリアを適用することにより、最初の点灯率計算エリア85を設定する。その後、スクロール方向上流側に向かって1ドットずつずらしてスキャンエリアを順次適用して、1ドット間隔で順次点灯率計算エリア85を設定していく。この動作が、スクロール方向上流端のスキャン終了位置に到達するまで行われる。こうして、スキャンエリアをスクロール経路に沿って1ドット間隔で移動させてスキャン初期位置からスキャン終了位置までスキャンさせ、1ドット間隔で複数の点灯率計算エリア85が設定される。
【0048】
点灯ドット率計算部64は、点灯率計算エリア85が設定されるたびに、その点灯率計算エリア85内の点灯ドット率を計算する。点灯ドット率比較部65は、その計算された点灯ドット率と、スキャンエリアに対応して定められた制限点灯ドット率とを比較する。警告発生部66は、計算された点灯ドット率が制限点灯ドット率を超えると、表示部17の画面上において、その点灯率計算エリア85をハイライト表示85H(図8において斜線を付して示す。)する。これにより、操作者に対して、警告が与えられる。このハイライト表示85Hがされている状態では、操作者は、作画済みドットパターンの保存操作を行うことができない。
【0049】
そこで、ハイライト表示85Hとともに、プログラムは修正モードに入る。この修正モードにおいて、操作者は、ドットパターンの修正を行うことができる。たとえば、図8に示すように、3人が縦列で避難している様子を表す画像を2人が縦列で避難している様子を表す画像に変更し、人画像の間隔を広げる修正を行えば、点灯ドット率を低くすることができる。ドットパターンの修正後に修正モードを終了すると、スキャンエリアのスキャンが停止した位置から、スキャン(点灯率計算エリア85の設定)が再開される。なお、スキャンエリアのスキャンが停止した位置からではなく、再度スクロール方向下流端からスキャンを再開してもよい。
【0050】
以後、同様にして、スキャン終了位置までのスキャンが終了すると、作成されたドットパターンを作画済みドットパターンとして外部記憶部28に保存できる状態となる。
図9Aおよび図9Bは、作画時の操作者の操作および作画装置6の動作を説明するためのフローチャートである。図9Aは作画処理全体を示し、図9Bは点灯ドット率計算動作を示す。
【0051】
操作者は、入力部15を操作して作画プログラムを立ち上げ、作画作業を開始する(ステップS1)。作画は、表示画面上で各ドットの点灯および消灯を指定するようにして行われてもよい。こうして作成されたドットパターンは、ドットパターン記憶部61に一時記憶される。ドットパターンの作画を終えると、操作者は、入力部15を操作することにより、表示部17上に表示されている作画画面保存ボタン88(図1参照)をクリックする(ステップS2)。これにより、点灯ドット率計算処理(ステップS3。詳細は図9B)が開始される。点灯ドット率計算処理が終了すると、処理部16は、作画済みのドットパターンを外部記憶部28に書き込む(ステップS4)。
【0052】
点灯ドット率計算処理では、処理部16は、ドットパターン記憶部61からドットパターンを読み込み(ステップS31)、そのドットパターンをドット描画に展開して表示部17に表示する(ステップS32)。これにより、図6に示すようなスクロール画像が表示部17に表示される。
さらに、処理部16(スキャンエリア設定部62)は、スクロールテーブルの一つの項目を読み込み(ステップS33)、スキャンエリアを設定する(ステップS34)。そして、処理部16(点灯率計算エリア設定部63)は、点灯率計算エリアを設定する(ステップS35)。最初は、スキャン初期位置にスキャンエリアを適用して点灯率計算エリアが設定されることになる。処理部16(点灯ドット率計算部64)は、その設定された点灯率計算エリア内の点灯ドット率を計算する(ステップS36)。さらに、処理部16(制限点灯ドット率設定部67)は、当該スキャンエリアに対応してスクロールテーブルで指定された制限点灯ドット率を設定する(ステップS37)。そして、処理部16(点灯ドット率比較部65)は、計算された点灯ドット率と当該設定された制限点灯ドット率とを比較する(ステップS38)。
【0053】
点灯ドット率が制限点灯ドット率を超えているときには(ステップS38:NO)、処理部16(警告発生部66)は、当該点灯率計算エリアをハイライト表示85H(図8参照)するとともに、動作モードを修正モードに変更する(ステップS39)。このとき、同時に、表示部17において、ドットパターンを作画済みドットパターンとして保存できない旨のメッセージが表示されてもよい。修正モードにおいて、操作者は、入力部15を操作することによって、ドットパターンを修正することができる(ステップS40)。修正されたドットパターンは、ドットパターン記憶部61に書き込まれる。ドットパターンの修正を終えると、操作者は、表示部17に表示されている修正モード終了ボタン(図示せず)をクリックする(ステップS41)。これにより、処理部16は、ステップS34に戻り、同じ位置に点灯率計算エリアを設定して、点灯ドット率計算等の動作を繰り返す。
【0054】
点灯ドット率が制限点灯ドット率以下であれば(ステップS38:YES)、処理部16は、現在設定されている点灯率計算エリアがスキャン終了位置にあるかどうかを判断する(ステップS42)。スキャン終了位置でなければ、処理部16(点灯率計算エリア設定部63)は、現在の点灯率計算エリアよりもスクロール方向上流側へ1ドットだけずれた位置にスキャンエリアを適用して(ステップS43)、新たな点灯率計算エリアを設定する(ステップS35)。そして、同様の動作が繰り返される。
【0055】
こうして、点灯率計算エリアがスキャン終了位置に達すると(ステップS42:YES)、処理部16は、スクロールテーブルの全項目についての処理を終えたかどうかを判断し(ステップS44)、未処理の項目があれば、ステップS33からの動作を繰り返す。全項目の処理が終了すると、メインルーチン(図9A)に戻る。
以上のように、この実施形態によれば、LED表示装置1に表示すべきドットパターンよりも小さなスキャンエリアが、ドットパターン上において、スキャン初期位置からスキャン終了位置まで、スキャン経路に沿って、1ドットずつずらして適用され、それらの各位置に点灯率計算エリア85が設定される。つまり、点灯率計算エリア85は、スキャンエリアと同じ大きさおよび形状を有するエリアであって、スキャン経路に沿って、1ドット間隔で複数個設定される。この複数の点灯率計算エリアの各々について、点灯ドット率が計算される。こうして、1ドット間隔でのスクロールに対応して、全ての表示状態におけるドット率を計算できる。
【0056】
スキャンエリアは、表示ユニット11,12,13においてスクロール表示されるエリアに対応するように設定され、スキャンエリアに対応する制限点灯ドット率は、各表示ユニットの電源部31,32,33の上限点灯ドット率に対応している。これにより、いずれの表示ユニットにおいても、電源部31,32,33に過大な負担が生じることのないようにドットパターンを作画できる。
【0057】
また、この実施形態では、点灯率計算エリア毎に計算された点灯ドット率が制限点灯ドット率を超えると、警告が発生される。これにより、使用者は、ドットパターンの修正が必要であることをただちに認識できる。しかも、点灯ドット率が制限点灯ドット率を超えた点灯率計算エリアがハイライト表示されるので、操作者は、修正の必要な箇所をただちに認識して、ドットパターンの修正を適切に行うことができる。
【0058】
このように、制限点灯ドット率による制限に適合したドットパターンの作画を支援できるから、操作者は、LED表示装置1に表示すべきドットパターンの作画を効率的に行うことができる。
また、この実施形態では、いずれかの点灯率計算エリアの点灯ドット率が制限点灯ドット率を超えていると、作画済みドットパターンを保存することができない。これにより、制限点灯ドット率の制限に適合しないドットパターンが作画されることを確実に回避できる。よって、LED表示装置1の電源部31,32,33に過大な負荷をかけるような作画を回避することができる。
【0059】
図10は、この発明の他の実施形態が適用される表示装置の一例であるLED表示装置の構成を説明するための図である。この実施形態の説明において、図1および図2に示された各部の対応部分には同一参照符号を付す。また、以下の説明では、図3および図4を併せて参照する。
LED表示装置91は、ドット光源としてのLED素子をマトリクス状に二次元配列して構成された表示画面92を有しており、LED素子を個別に点灯制御することによって、ドットパターンからなる画像を表示するように構成されている。表示画面92は、左右方向に長く延びて形成されており、たとえば、横112ドット、縦16ドットで構成されている。LED表示装置91に表示すべき画像を表すドットパターンデータは、作画装置6によって作成され、通信ケーブル7を介してLED表示装置91に書き込まれる。
【0060】
図11は、LED表示装置91の電気的構成を説明するためのブロック図である。LED表示装置91は、2つの表示ユニット11,12を横方向に直列に結合して構成されている。表示ユニット11,12は、個別表示画面21,22と、電源部31,32と、制御部41,42と、画像記憶部51,52とをそれぞれ有している。
個別表示画面21,22は、たとえば、いずれも横56ドット、縦16ドットで構成されており、各ドットはLED素子で構成されている。すなわち、個別表示画面21,22は、それぞれLED表示モジュール(表示パネル)を構成している。これらの個別表示画面21,22を横方向に直列に結合することによって、横112ドット、縦16ドットの表示画面2が構成されている。
【0061】
電源部31,32は、個別表示画面21,23を構成するLED素子に電源を供給する。電源部31,32の電力容量は、全ドットの半数程度のドットの同時点灯に対応する電力容量に設計されている。これに応じて、個々の表示ユニット11,12における上限点灯ドット率が定められている。
制御部41,42は、個別表示画面21,22,23を構成するLED素子の点灯を個別に制御する。画像記憶部51,52は、個別表示画面21,22に表示すべき画像のドット配列を表すドットパターンを記憶する。制御部41,42は、互いに連携し、画像記憶部51,52に記憶されたドットパターンに基づいてLED素子の点灯制御を実行する。これにより、表示画面92には、全体としてまとまりのある画像が表示されることになる。
【0062】
制御部41,42による制御動作によって、ドットパターン画像をドット間隔でスクロールすることができる。たとえば、表示画面92の短手方向である上下方向に沿って、1ドット間隔で画像を滑らかにスクロール表示することができる。これにより、表示画面92内に収まりきらないほど大きな画像の表示を表示することができる。
画像記憶部51,52にドットパターンを書き込むために、通信ポート3が設けられている。制御部41,42のうちの一つ(たとえば制御部41)は、マスターコントローラとなり、全体の制御を司る。このマスターコントローラは、通信ポート3から入力されたドットパターンデータを画像記憶部51,52に展開させ、さらに必要に応じてそれらのスクロール表示のための指令を他の制御部に与える。
【0063】
図12Aおよび図12Bは、LED表示装置91における表示の一例を示す。この例では、固定エリアは設定されておらず、表示画面92の全体の領域がスクロールエリアとされている。このスクロールエリアには、上下方向(たとえば下から上に向かう方向)にスクロールするスクロール画像が表示される。図12Bは、図12Aの状態から9ドットだけ上方向にスクロールした状態を示す。
【0064】
図13は、表示画面92において上下にスクロール表示されるスクロール画像全体(ドットパターン)を示す。スクロール画像は、表示画面92(スクロールエリア)よりも上下に長いドットパターンである。このスクロール画像が、ドットパターン記憶部61に格納される。図13の例では、スクロール画像は、「非常口」の文字列を上段に有し、下段に2人が縦列で避難している様子を表す画像を有している。
【0065】
図14は、処理部16の外部記憶部28に格納されたスクロール設定テーブルの一例を示す。LED表示装置91に備えられた表示ユニット11,12の個別表示画面21,22(各電源部に対応した表示エリア)にそれぞれ対応する項目「1」「2」に対応して、スクロール方向、スキャンエリアサイズ、固定エリアの点灯ドット率、スキャンエリアの制限点灯ドット率が定められている。
【0066】
個別表示画面21に対応する項目「1」において、スクロール方向は縦方向とされ、スキャンエリアサイズは個別表示画面21の全体の大きさである横56ドット、縦16ドットとされ、固定エリアは存在せず、スキャンエリアの制限点灯ドット率が50%とされている。すなわち、表示ユニット11の個別表示画面21の全体での上限点灯ドット率が50%であり、それに応じて、スキャンエリア(個別表示画面21の全体)に対して、50%までの点灯ドット率が許容される。
【0067】
同様に、個別表示画面22に対応する項目「2」において、スクロール方向は縦方向とされ、スキャンエリアサイズは個別表示画面22の全体の大きさである横56ドット、縦16ドットとされている。固定エリアは存在せず、スキャンエリアの制限点灯ドット率が50%とされている。すなわち、表示ユニット12の個別表示画面22の全体での上限点灯ドット率が50%であり、それに応じて、スキャンエリア(個別表示画面22の全体)に対して、50%までの点灯ドット率が許容される。
【0068】
スキャンエリア設定部62は、このスクロール設定テーブルに従って、全項目「1」「2」のスキャンエリアサイズのスキャンエリアを順次設定する。また、制限点灯ドット率設定部67は、スクロール設定テーブルに従って、各項目「1」「2」に対応するスキャンエリアの制限点灯ドット率を順次設定する。
図15は、スキャンエリアをスクロール経路に沿って1ドットずつずらして複数の点灯率計算エリアを設定する動作を説明するための図であり、点灯率計算エリア設定部63による処理を示す。点灯率計算エリア設定部63は、スクロール画像に対して、スクロール方向下流端(この実施形態では上端)にスキャン初期位置を設定して、このスキャン初期位置にスキャンエリアを適用することにより、最初の点灯率計算エリア95を設定する。その後、スクロール方向上流側に向かって1ドットずつずらしてスキャンエリアを順次適用して、1ドット間隔で順次点灯率計算エリア95を設定していく。この動作が、スクロール方向上流端(この実施形態では下端)のスキャン終了位置に到達するまで行われる。こうして、スキャンエリアをスクロール経路に沿って1ドット間隔で移動させてスキャン初期位置からスキャン終了位置までスキャンさせ、1ドット間隔で複数の点灯率計算エリア95が設定される。
【0069】
この実施形態では、スクロール設定テーブルの項目「1」のスキャンエリアは、左側の表示ユニット11に対応しているので、ドットパターンの左側の半分の領域に対して適用される。また、スクロール設定テーブルの項目「2」のスキャンエリアは、右側の表示ユニット12に対応しているので、ドットパターンの右側半分の領域に対して適用される。
点灯ドット率計算部64は、点灯率計算エリア95が設定されるたびに、その点灯率計算エリア95内の点灯ドット率を計算する。点灯ドット率比較部65は、その計算された点灯ドット率と、スキャンエリアに対応して定められた制限点灯ドット率とを比較する。警告発生部66は、計算された点灯ドット率が制限点灯ドット率を超えると、表示部17の画面上において、その点灯率計算エリア95をハイライト表示(図15では該当箇所なし)する。これにより、操作者に対して、警告が与えられる。このハイライト表示がされている状態では、操作者は、作画済みドットパターンの保存操作を行うことができない。
【0070】
そこで、ハイライト表示とともに、プログラムは修正モードに入る。この修正モードにおいて、操作者は、ドットパターンの修正を行うことができる。ドットパターンの修正後に修正モードを終了すると、スキャンエリアのスキャンが停止した位置から、スキャン(点灯率計算エリアの設定)が再開される。
以後、同様にして、スキャン終了位置までのスキャンが終了すると、作成されたドットパターンを作画済みドットパターンとして外部記憶部28に保存できる状態となる。
【0071】
以上のようにして、縦方向スクロールのためのドットパターンに対しても、点灯率計算エリアをスクロール方向に沿って1ドット間隔で設定し、各点灯率計算エリアの点灯ドット率を計算し、制限点灯ドット率と比較できる。したがって、第1の実施形態と同様の作用効果を達成できる。
以上、この発明の実施形態について説明してきたが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、横方向スクロールおよび縦方向スクロールを例にとったが、スクロール方向は斜め方向であってもよいし、ジグザグ状や曲線状のスクロール表示が行われてもよい。また、前述の実施形態では、横56ドット、縦16ドットの表示ユニットを複数個組み合わせて構成されたLED表示装置を例にとったが、個別表示画面の大きさおよび/または形状が異なる複数の表示ユニットを組み合わせてもよいし、一つの表示ユニットでLED表示装置を構成してもよい。さらに、前述の実施形態では、複数の表示ユニットにおける上限点灯ドット率がいずれも50%の場合を示したが、表示ユニット間で上限点灯ドット率が異なっていてもよく、その場合には、それに応じて異なる制限点灯ドット率を設定すればよい。また、前述の実施形態では、点灯率計算エリアが設定されるたびに点灯ドット率の計算およびその制限点灯ドット率との比較を行っているが、全ての点灯率計算エリアを設定した後に、全ての点灯率計算エリアについての点灯ドット率の計算を行い、その計算済みの全ての点灯ドット率と制限点灯ドット率とを順に比較するようにしてもよい。さらに、前述の実施形態では、ドット光源をLED素子で構成したLED表示装置を例示したが、この発明は、ドット光源をその他の形態の発光素子で構成した表示装置に対しても同様に適用できる。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 LED表示装置
2 表示画面
3 通信ポート
6 作画装置
7 通信ケーブル
8 記憶媒体
11,12,13 表示ユニット
15 入力部
16 処理部
17 表示部
18 読取装置
21,22,23 個別表示画面
25 CPU
26 ROM
27 RAM
28 外部記憶部
31,32,33 電源部
35,36,37,38 インタフェース
41,42,43 制御部
51,52,53 画像記憶部
61 ドットパターン記憶部
62 スキャンエリア設定部
63 点灯率計算エリア設定部
64 点灯ドット率計算部
65 点灯ドット率比較部
66 警告発生部
67 制限点灯ドット率設定部
68 ドットパターン書き込み部
69 作画済みドットパターン書き込み部
70 保存禁止部
80 固定エリア
81 スクロールエリア
85 点灯率計算エリア
85H ハイライト表示
88 作画画面保存ボタン
91 LED表示装置
92 表示画面
95 点灯率計算エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別に点灯制御される複数のドット光源が二次元配列された表示装置のための点灯ドット率計算装置であって、
前記表示装置に表示すべき画像のドット配列を表すドットパターンを記憶するドットパターン記憶手段と、
前記ドットパターン記憶手段に記憶された前記ドットパターンよりも小さなスキャンエリアを設定するスキャンエリア設定手段と、
前記スキャンエリア設定手段によって設定されたスキャンエリアを、前記ドットパターン上において、スキャン初期位置からスキャン終了位置まで、予め定めるスキャン経路に沿って1ドット間隔ずつずらして適用することにより、前記スキャン初期位置から前記スキャン終了位置まで1ドット間隔でずらされた位置に複数の点灯率計算エリアを設定する点灯率計算エリア設定手段と、
前記点灯率計算エリア設定手段によって設定された各点灯率計算エリアについて、当該点灯率計算エリア内の点灯ドット率を計算する点灯ドット率計算手段とを含む、点灯ドット率計算装置。
【請求項2】
前記スキャンエリア設定手段が、複数のスキャンエリアを設定するように構成されており、
前記点灯率計算エリア設定手段が、前記スキャンエリア設定手段によって設定される各スキャンエリアについて、前記複数の点灯率計算エリアを設定するように構成されている、請求項1に記載の点灯ドット率計算装置。
【請求項3】
前記点灯ドット率計算手段によって計算された点灯ドット率と制限点灯ドット率とを比較する比較手段と、
前記点灯ドット率が前記制限点灯ドット率を超えているときに警告を発生する、警告発生手段とをさらに含む、請求項1または2に記載の点灯ドット率計算装置。
【請求項4】
前記複数のスキャンエリアにそれぞれ対応する制限点灯ドット率を設定する制限点灯ドット率設定手段をさらに含む、請求項2に係る請求項3に記載の点灯ドット率計算装置。
【請求項5】
個別に点灯制御される複数のドット光源が二次元配列された表示装置に表示すべきドットパターンを作画するための作画装置であって、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の点灯ドット率計算装置と、
表示画面上でドットパターンを編集するために操作者によって操作されるドットパターン編集手段と、
前記ドットパターン編集手段によって編集されたドットパターンを前記ドットパターン記憶手段に書き込むドットパターン書き込み手段とを含む、作画装置。
【請求項6】
作画済みドットパターンを保存するための作画済みドットパターン保存手段と、
前記ドットパターン記憶手段に記憶されたドットパターンを前記作画済みドットパターン保存手段に書き込む作画済みドットパターン書き込み手段と、
いずれかの点灯率計算エリアの点灯ドット率が制限点灯ドット率を超えているときに、前記作画済みドットパターン保存手段への作画済みドットパターンの保存を禁止する保存禁止手段とをさらに含む、請求項5に記載の作画装置。
【請求項7】
作画済みドットパターンの前記作画済みドットパターン保存手段への保存を指示するために操作者によって操作される作画済みドットパターン保存指示手段をさらに含み、
前記スキャンエリア設定手段、前記点灯率計算エリア設定手段、前記点灯ドット率計算手段が、前記作画済みドットパターン保存指示手段の操作に応答して動作開始するように構成されている、請求項5または6に記載の作画装置。
【請求項8】
コンピュータを請求項1〜4の点灯ドット率計算装置または請求項5〜7の作画装置の各手段として機能させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−73208(P2013−73208A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214454(P2011−214454)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(312001937)株式会社パトライト (15)
【Fターム(参考)】