説明

点灯装置及びプロジェクター

【課題】構成を簡略化でき、回路基板、回路素子等の構成部品にかかる負荷を低減できる点灯装置及びプロジェクターを提供する。
【解決手段】点灯装置6は、放電灯が有する電極Eに電力を供給して、当該放電灯を点灯させる。点灯装置6は、高電圧パルスを発生させて、当該高電圧パルスを放電灯の電極に印加するパルス生成回路64を備える。パルス生成回路64は、出力端が放電灯の電極Eにリード線を介して接続されるインダクター(トランス642の二次巻線6422)と、出力端に直列に接続され、当該インダクターとともに電極Eに印加される電流に自由振動を生じさせるコンデンサー643,644とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯を点灯させる点灯装置及びプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源と、当該光源から出射された光束を変調して、画像情報に応じた画像を形成する光変調装置と、当該画像を投射する投射光学装置とを備えたプロジェクターが知られている。このような光源として、内部に一対の電極及び放電物質が封入される放電空間が形成された超高圧水銀ランプ等の放電灯が採用されることが多く、この場合には、当該放電灯の点灯を制御する点灯制御装置が採用される。このような点灯制御装置として、放電灯にランプ電力を供給して当該放電灯を点灯させる点灯装置と、当該点灯装置の動作を制御する制御装置(制御回路)とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の点灯制御装置(高圧放電灯点灯装置)は、チョッパー回路、フルブリッジ回路、共振回路及びイグナイター回路を備えた構成とされている。
チョッパー回路は、直流電源部から入力される電圧を降圧して、フルブリッジ回路へ出力する。フルブリッジ回路は、入力される直流電流を交流電流に変換して高圧放電灯に供給する。共振回路は、フルブリッジ回路のスイッチング動作により共振して高電圧を発生させる。イグナイター回路は、共振回路により発生した高電圧を利用して高圧放電灯を始動させるためのパルス電圧を発生させる。
【0004】
ここで、冷暗所に放置された放電灯では、内部に封入された発光物質が活性化されにくいホールド状態となるため、点灯に際して、通常よりも高い点灯開始電圧を印加する方法がある。
これに対し、当該点灯制御装置では、イグナイター回路とともに、共振回路を備えることにより、高電圧を発生させることができるため、冷暗所に放置された放電灯の電極間の絶縁を破壊することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−54365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の特許文献1に記載の点灯制御装置では、共振回路とイグナイター回路とをそれぞれ別に備えるため、点灯装置の構成が複雑になるという問題がある。また、共振回路の下流側には高電圧が発生するため、基板及び回路素子等が劣化しやすいという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、構成を簡略化でき、構成部品にかかる負荷を低減できる点灯装置及びプロジェクターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を達成するために、本発明の点灯装置は、放電灯が有する電極に電力を供給して、当該放電灯を点灯させる点灯装置であって、高電圧パルスを発生させて、当該高電圧パルスを前記電極に印加するパルス生成回路を備え、前記パルス生成回路は、出力端が前記電極にリード線を介して接続されるインダクターと、前記出力端に直列に接続され、前記インダクターとともに前記電極に印加される電流に自由振動を生じさせるコンデンサーとを備えることを特徴とする。
【0009】
このような点灯装置により点灯される放電灯としては、超高圧水銀ランプ等の光源ランプを挙げることができる。
本発明によれば、パルス生成回路のインダクターとコンデンサーにより、電極に印加される電流に高電圧のオーバーシュート(自由振動)を発生させることで、放電灯の電極に印加される電圧を高めることができる。これによれば、当該パルス生成回路とは別に共振回路を設ける必要がなくなる。従って、点灯装置の構成を簡略化することができる。
また、コンデンサーとインダクターの出力端は、リード線を介して放電灯の電極に接続されているので、当該高電圧が、点灯装置の他の構成に印加されることがない。これによれば、点灯装置を構成する回路素子等の構成部品にかかる負担を軽減することができる。
【0010】
ここで、前述の特許文献1に記載の点灯制御装置では、共振回路を構成する部品の部品定数のばらつきや駆動周波数の変動等により、共振回路から想定以上の高電圧が出力される可能性がある。このため、所望の電圧が出力されるように、点灯回路全体を調整する必要がある。これに対し、本発明によれば、発生した高電圧は電極にリード線を介して直接印加されるので、点灯装置の構成部品に高電圧が印加されることがなく、当該構成部品にかかる負担を確実に軽減することができる。
更に、コンデンサーの容量は、前述の冷暗所放置によるホールド状態を解除するために必要な程度の電圧を生じさせる程度とすることができる。従って、前述の共振回路を採用した場合に比べ、コンデンサーの容量を小さくすることができる。
【0011】
本発明では、前記パルス生成回路は、一次巻線及び二次巻線を有するトランスを備え、前記インダクターは、前記二次巻線であることが好ましい。
ここで、パルス生成回路には、変圧(昇圧)のためのトランスが設けられる場合がある。これに対し、本発明では、当該トランスの二次巻線をインダクターとして利用することにより、別途インダクターを設ける必要がない。従って、パルス生成回路、ひいては、点灯装置の構成を一層簡略化することができる。
【0012】
本発明のプロジェクターは、前述の点灯装置を備えることを特徴とする。
本発明のプロジェクターでは、前述の本発明の点灯装置と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るプロジェクターの構成を示す模式図。
【図2】前記実施形態における点灯制御装置の構成を示す回路図。
【図3】前記実施形態におけるパルス生成回路の動作前に電極に印加される電圧を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るプロジェクター1の構成を示す模式図である。
本実施形態に係るプロジェクター1は、内部に設けられた光源装置411から出射された光束を変調して、画像情報に応じた画像を形成し、当該画像をスクリーン等の被投射面上に拡大投射するものである。このプロジェクター1は、図1に示すように、外装筐体2、投射光学装置3及び画像形成装置4を備える。この他、プロジェクター1は、当該プロジェクター1内部を冷却する冷却ファン等で構成される冷却ユニット91、プロジェクター1内部の各構成部材に電力を供給する電源ユニット92、及び、プロジェクター1全体を制御する制御ユニット93等を備える。
【0015】
〔外装筐体及び投射光学装置の構成〕
外装筐体2は、合成樹脂又は金属により全体略直方体状に形成された筐体であり、前述の各装置3,4及び各ユニット91〜93等を内部に収納配置する。
投射光学装置3は、後述する画像形成装置4にて形成された画像を被投射面上に結像させるとともに、当該画像を拡大投射する。この投射光学装置3は、図示を省略するが、筒状の鏡筒内に複数のレンズが収納された組レンズとして構成されている。
【0016】
〔画像形成装置の構成〕
画像形成装置4は、前述の制御ユニット93による制御の下、画像情報に応じた画像光を形成する光学装置である。この画像形成装置4は、照明光学装置41、色分離光学装置42、リレー光学装置43及び電気光学装置44と、これらを内部に設定された照明光軸A上の所定位置に収納配置するほか、投射光学装置3を支持する光学部品用筐体45とを備える。
【0017】
照明光学装置41は、光源装置411、一対のレンズアレイ412,413、偏光変換素子414及び重畳レンズ415を備える。
色分離光学装置42は、ダイクロイックミラー421,422及び反射ミラー423を備え、リレー光学装置43は、入射側レンズ431、リレーレンズ433及び反射ミラー432,434を備える。
電気光学装置44は、フィールドレンズ441と、光変調装置としての3つの液晶パネル442(赤色光用、緑色光用及び青色光用の液晶パネルを、それぞれ442R,442G,442Bとする)と、それぞれ3つの入射側偏光板443、視野角補償板444及び出射側偏光板445と、色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム446とを備える。
【0018】
このような画像形成装置4では、照明光学装置41により照明領域内の照度が略均一化された光束が出射され、当該光束は、色分離光学装置42により、赤(R),緑(G),青(B)の3つの色光に分離される。これら分離された各色光は、各液晶パネル442にて画像情報に応じてそれぞれ変調され、色光毎の画像が形成される。そして、当該色光毎の画像は、クロスダイクロイックプリズム446にて合成され、投射光学装置3により被投射面上に拡大投射される。
【0019】
〔光源装置の構成〕
光源装置411は、図1に示すように、放電灯416、主反射鏡417、副反射鏡418及び平行化凹レンズ419と、これらを内部に収納するハウジング(図示省略)と、放電灯416の点灯を制御する点灯制御装置5とを備える。
このうち、放電灯416は、内部に形成された放電空間内に一対の電極E(E1,E2)(図2参照)及び放電物質が封入された略球状を有する発光部4161と、当該発光部4161の両端から互いに離間する方向に延出する一対の封止部4162,4163とを有する。このような放電灯として、例えば、超高圧水銀ランプ等を採用できる。
【0020】
主反射鏡417は、レンズアレイ412から離間する側の封止部4162に接着剤により固定される。この主反射鏡417の内側には、凹曲面状の反射面が形成されており、当該反射面により発光部4161から入射された光を反射させて、照明光軸A上の第2焦点に収束させる。
副反射鏡418は、発光部4161における封止部4163側(主反射鏡417側とは反対側)を覆うガラス製の成形品である。この副反射鏡418は、当該発光部4161の外形に沿う形状を有し、発光部4161と対向する面には、反射面が形成されている。そして、副反射鏡418は、発光部4161から出射された光のうち、主反射鏡417側とは反対側に射出された光を、当該反射面により反射させて、主反射鏡417の反射面に入射させる。これにより、発光部4161から光源装置411の光束出射方向の先端側に直接射出され、かつ、レンズアレイ412に入射しない光の発生を抑えることができる。
平行化凹レンズ419は、主反射鏡417にて反射され収束される光束を照明光軸Aに対して平行化する。
【0021】
〔点灯制御装置の構成〕
図2は、点灯制御装置5の構成を示す図である。
点灯制御装置5は、図2に示すように、前述の電源ユニット92から供給される直流電流を交流電流に変換して放電灯416の電極E(E1,E2)に出力して、当該放電灯416を点灯させる点灯装置6と、前述の制御ユニット93の制御下で点灯装置6を制御する制御装置7とを備える。
【0022】
〔点灯装置の構成〕
点灯装置6は、降圧回路61、変換回路62、コンデンサー63及びパルス生成回路64を備える。
降圧回路61は、ダウンチョッパー回路であり、制御装置7の制御の下、電源ユニット92から入力される直流電流(例えば、略380V)を、放電灯416に適した電圧(例えば、略50V〜150V)に降下させる回路である。この降圧回路61は、詳しい図示を省略するが、例えば、直列接続されるスイッチング素子としてのFET(Field Effect Transistor)及びコイルと、これらの素子から分岐して接続されるダイオード及びコンデンサーとを備える。これらのうち、FETは、制御装置7により印加されるゲート電圧に応じて、入力される直流電流を所望の電圧に降下させる。また、コイル、ダイオード及びコンデンサーは、入力される直流電流の高周波成分の除去、整流及び定電力化を行う。
【0023】
変換回路62は、インバーター回路であり、入力される直流電流を交流電流に変換する。この変換回路62は、一対のFET621及び一対のFET622を備えたブリッジ回路として構成されている。この変換回路62には、降圧回路61を経て整流された直流電流が入力される。そして、後述する制御装置7によりFET621及びFET622にゲート電圧が印加されると、一対のFET621を含む経路と、一対のFET622を含む経路とが交互に短絡して電流が流れ、これにより、交流電流が生成される。この変換回路62は、放電灯416の点灯前では高周波数(例えば10kHz以上)で駆動され、点灯後では低周波数(例えば1kHz以下)で駆動される。
コンデンサー63は、変換回路62とパルス生成回路64とを接続するカップリングコンデンサーである。
【0024】
パルス生成回路64は、イグナイター回路であり、放電灯416の点灯起動時に動作する。具体的に、パルス生成回路64は、電極Eに高電圧パルスを出力して当該電極E間の絶縁破壊を行い、放電灯416の起動を促す。このパルス生成回路64は、変換回路62と放電灯416との間に、当該放電灯416と並列となるように接続されている。このようなパルス生成回路64は、一次回路641と、イグナイタートランス(以下、「トランス」と略す場合がある)642と、コンデンサー643,644とを備える。
【0025】
一次回路641は、抵抗6411、ダイオード6412、コンデンサー6413及びスイッチング素子としてのFET6414を有する。この一次回路641では、変換回路62から入力される電流は、抵抗6411を介してダイオード6412により整流された後、コンデンサー6413に印加され、当該コンデンサー6413に電荷が蓄積される。そして、当該コンデンサー6413に十分な電荷が蓄積された後、制御装置7によりトリガー信号としてのゲート電圧がFET6414に印加されると、FET6414はオン状態(導通状態)となり、コンデンサー6413に蓄えられた電荷が解放される。これにより、FET6414を介して、トランス642の一次巻線6421に大きなパルス電流が流れる。
【0026】
トランス642は、一次巻線6421及び二次巻線6422を有する。これらのうち、一次巻線6421は、前述の一次回路641の出力端に接続される。また、二次巻線6422は、本発明のインダクターとして機能し、当該二次巻線6422の入力端は変換回路62に接続され、出力端は電極E(E1,E2)に接続される。
このようなトランス642は、一次巻線6421に流れる電流に応じて、二次巻線6422に流れる電流を変圧(昇圧)する。このため、一次巻線6421に前述のパルス電流が流れると、二次巻線6422に高電圧パルス(例えば、略6kV)が生じる。
【0027】
コンデンサー643,644は、二次巻線6422の出力端に直列に接続される。換言すると、コンデンサー643とコンデンサー644は互いに直列に接続され、二次巻線6422に対して電極Eと並列に接続される。これらコンデンサー643,644は、前述の高電圧パルスが印加される前に、二次巻線6422とともに、トランス642から出力される交流電流に自由振動(オーバーシュート)を生じさせて降圧し、電極Eに印加する。
なお、2つのコンデンサー643,644を用いることにより、耐高電圧特性を持たせることができるほか、一方が故障した場合でも、これらを動作させることができる。
このようなコンデンサー643,644と二次巻線6422の出力端は、リード線Lを介して放電灯416の電極Eに接続されている。例えば、トランス642及びコンデンサー643,644は回路基板に搭載されて、トランス642及びコンデンサー643,644の出力端がリード線Lを介して電極Eに接続される。
【0028】
〔電極間の絶縁破壊〕
放電灯が冷暗所に放置されていた場合には、前述のように、発光物質が活性化されにくいため、放置されていない場合に電極に印加される高電圧パルスでは、当該電極間の絶縁破壊が生じにくい場合がある。以下、このような状態を、ホールド状態と称する。
このホールド状態を解除するため、すなわち、前述した二次巻線6422から出力される高電圧パルスで絶縁破壊がおきる状態とするために、当該高電圧パルスの印加前に、所定期間(本実施形態では、コンデンサー6413に電荷が蓄積されるまでの期間)高電圧を電極Eに予め印加しておくことが考えられる。
このため、コンデンサー643,644が設けられたことにより、前述した高周波数による変換回路62の駆動時(放電灯416の点灯前であって、パルス生成回路64の動作前)に、トランス642からの出力電圧のピーク値が自由振動によって増加(上昇)される。
【0029】
図3は、パルス生成回路64の動作前における放電灯416への出力電圧の波形の一例を示す図である。
例えば、図3に示すように、二次巻線6422及びコンデンサー643,644により、入力される50kHzの交流矩形波電流に1MHzの自由振動を生じさせることで、点灯前における放電灯416への出力電圧のピーク値を200Vから1.2kVまで高めることができる。このような高電圧パルスを放電灯416の電極Eに印加することで、前述した冷暗所放置によるホールド状態は解除される。
【0030】
また、この自由振動は、共振状態に近づけずに、例えば50kHzの高周波の半周期内で減衰するように設定されている。具体的に、本実施形態では、コンデンサー643,644の容量を比較的小さくし、自由振動の周波数を、例えば1MHzと高く設定することで、二次巻線6422とコンデンサー643,644によって発生する自由振動を早く減衰させている。
【0031】
ここで、この自由振動の周波数は、インダクターとしての二次巻線6422及びコンデンサー643,644の定数によって決定される。そして、この自由振動の周波数に応じて、自由振動によるピーク電圧値(例えば1.2kV)が決定される。
また、ホールド状態の解除に必要な電圧値等の条件は、放電灯416の種類、設置環境等によって異なる。このため、実験によって予め確実に解除できる最適値を計測しておき、当該最適値に合わせて、コンデンサー容量や、駆動周波数等を設定する。
なお、コンデンサー643,644は、二次巻線6422の出力に大きなリンギングを発生させて、前述した冷暗所放置によるホールド状態の解除に必要な電圧が発生すればよいため、比較的容量が小さい(例えば、数10pF)もので構成できる。
【0032】
そして、高電圧が印加された後(ホールド状態が解除された後)、前述の高電圧パルスが電極Eに印加されることにより、電極E1,E2間の絶縁が破壊され、当該電極E1,E2間の電気的導通が確保されて放電灯416が点灯する。
このようにして放電灯416が点灯すると、当該放電灯416は定電圧負荷(例えば略10〜150V)で動作し、制御装置7が検出した降圧回路61の出力電圧及び出力電流に基づいて、定電力制御を行う。
【0033】
〔制御装置の構成〕
制御装置7は、前述のように、制御ユニット93の制御の下、降圧回路61の出力電圧及び出力電流に基づいて、点灯装置6の動作を制御する。例えば、制御装置7は、前述のように、降圧回路61と接続され、降圧回路61のFETにゲート電圧を印加して、当該降圧回路61から変換回路62に供給される電流を降圧する。
また、制御装置7は、変換回路62を構成する各FET621,622と接続され、当該各FET621,622にゲート電圧を出力して、当該変換回路62により直流電流から交流電流を生じさせる。この際、制御装置7は、変換回路62の駆動周波数を変動させることで、前述の周波数の交流電流を生成し、一次回路641のFET6414にゲート電圧を印加させる。なお、この制御装置7による変換回路62の駆動周波数変動は、一次回路641のコンデンサー6413に十分な電荷が蓄積された後に行われるが、本実施形態では、制御装置7は、当該十分な電荷が蓄積される時点を、点灯装置6の駆動開始時からの経過時間で判断する。
【0034】
以上説明した本実施形態に係るプロジェクター1によれば、以下の効果がある。
パルス生成回路64の二次巻線6422とコンデンサー643,644により、電極Eに印加される電流に自由振動を発生させることで、放電灯416の電極Eに印加される電圧を高めることができる。これによれば、当該パルス生成回路64とは別に共振回路を設ける必要がなくなる。従って、点灯装置6の構成を簡略化することができる。これにより、プロジェクター1等の製品に要求される小型化・コスト低減に対応できる。
【0035】
また、コンデンサー643,644と二次巻線6422の出力端は、リード線を介して放電灯416の電極Eに接続されているので、当該高電圧が、点灯装置6の電源経路以外の他の構成(回路素子等)に印加されることがない。これによれば、点灯装置6を構成する回路素子等の構成部品にかかる負担を軽減することができる。
例えば、変換回路62とパルス生成回路64の間に共振回路を設けた場合には、共振回路の下流に高電圧が発生するため、共振回路の下流の構成部品にかかる負担が大きくなる。これに対し、上記構成では、共振回路を省略できるため、このような負担が生じない。また、高電圧のピーク値に達するのは短時間であるため、高電圧の印加による回路基板、回路素子等の構成部品の劣化を抑制できる。
【0036】
更に、電極間の絶縁破壊に際しては、前述の冷暗所放置によるホールド状態を解除するために必要な程度の電圧を生じさせれば足りるので、前述の共振回路を採用した場合に比べ、コンデンサー643,644の容量を小さくすることができる。
具体的には、コンデンサー643,644の容量は、変換回路62とパルス生成回路64の間で点線Pに示す位置に(コンデンサー63の代わりに)共振回路を設けた場合における当該共振回路を構成するコンデンサーと比較して、1〜2桁低いものを用いることができる。
【0037】
また、パルス生成回路64には、変圧(昇圧)のためのトランス642が必要であるが、トランス642の二次巻線6422をインダクターとして利用するため、自由振動を発生させるために別途インダクターを設ける必要がない。従って、パルス生成回路64、ひいては、点灯装置6の構成を一層簡略化することができる。
【0038】
〔実施形態の変形〕
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、点灯装置6は、降圧回路61、変換回路62、コンデンサー63、パルス生成回路64を備える構成としたが、本発明はこれに限らない。例えば、制御装置7の仕様に応じて、波形成形回路及び保護回路等を付加してもよい。回路構成についても、前述した説明と同様の機能を有するのであれば、前記実施形態の構成に限らない。例えば、自由振動を生じさせるコンデンサーとして、2つのコンデンサー643,644を用いたが、1つのコンデンサーで構成してもよいし、3つ以上のコンデンサーで構成してもよい。
【0039】
前記実施形態では、トランス642の二次巻線6422を、コンデンサー643,644とともに自由振動を発生させるインダクターとして用いたが、本発明はこれに限らない。例えば、二次巻線6422とコンデンサー643,644の間に別個、自由振動のためのインダクターを設ける構成としてもよい。
【0040】
前記実施形態では、パルス生成回路64は、スイッチング素子として、FET6414を有するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、所定の信号入力に応じて、高電圧パルスを電極Eに印加することが可能であれば、他の構成でもよい。また、他のトランジスター及びサイリスター等の他のスイッチング素子を採用してもよいし、放電ギャップを採用してもよい。
【0041】
前記実施形態では、放電灯416の点灯前での変換回路62を駆動する周波数を一定(例えば50kHz)としたが、本発明はこれに限らない。すなわち、制御装置7によって当該周波数を所望の周波数に変動させることで、パルス生成回路64から放電灯416の電極Eへの出力を、プロジェクター1の設置環境等に応じて所望に調整することができる。
【0042】
前記実施形態では、前述の冷暗所放置によるホールド状態の解除のために、自由振動を発生させたが、本発明はこれに限らない。例えば、他の理由でパルス生成回路64では十分な電圧が得られない場合に、自由振動により昇圧されたピーク電圧を用いることができる。また、自由振動の周波数を1MHzと例示したが、当該周波数はこれに限らない。例えば高周波数(具体的には500kHz〜3MHz程度)で半周期以内に減衰し、かつ高いピーク電圧(具体的には500V〜2kV程度)を発生させるようにしてもよい。
【0043】
前記実施形態では、放電灯が冷暗所に放置された場合、及び、放置されていない状態(通常時)のどちらにおいても、高電圧パルスの印加前に、自由振動により昇圧された高電圧を電極Eに印加するとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、温度センサー等をプロジェクターに設け、所定温度より低い場合には、電極Eに印加する電流に自由振動を生じさせ、また、所定温度より高い場合には、自由振動を生じないようにしてもよい。
【0044】
前記実施形態では、3つの液晶パネル442R,442G,442Bを備えるプロジェクター1を挙げたが、本発明はこれに限らない。すなわち、2つ以下、あるいは、4つ以上の液晶パネルを用いたプロジェクターにも、本発明を適用可能である。
前記実施形態では、画像形成装置4は平面視略L字形状を有した構成を説明したが、これに限らず、例えば、平面視略U字形状を有した構成を採用してもよい。
前記実施形態では、光束入射面と光束射出面とが異なる透過型の液晶パネル442を用いていたが、光入射面と光射出面とが同一となる反射型の液晶パネルを用いてもよい。
【0045】
前記実施形態では、光変調装置として液晶パネル442を備えたプロジェクター1を例示したが、入射光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調装置であれば、他の構成の光変調装置を採用してもよい。例えば、マイクロミラーを用いたデバイスなど、液晶以外の光変調装置を用いたプロジェクターにも、本発明を適用することも可能である。このような光変調装置を用いた場合、光束入射側及び光束射出側の偏光板443,445は省略することができる。
【0046】
前記実施形態では、放電灯416を点灯させる点灯装置6を、プロジェクター1に採用したが、本発明はこれに限らない。すなわち、このような点灯装置6は、スタンド等の照明装置に利用することも可能である。更に、当該点灯装置6を単体で利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、放電灯の点灯装置に利用でき、特にプロジェクターに採用される点灯装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…プロジェクター、6…点灯装置、7…制御装置、416…放電灯、62…変換回路、64…パルス生成回路、642…トランス、643,644…コンデンサー、6421…一次巻線、6422…二次巻線(インダクター)、E(E1,E2)…電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電灯が有する電極に電力を供給して、当該放電灯を点灯させる点灯装置であって、
高電圧パルスを発生させて、当該高電圧パルスを前記電極に印加するパルス生成回路を備え、
前記パルス生成回路は、
出力端が前記電極にリード線を介して接続されるインダクターと、
前記出力端に直列に接続され、前記インダクターとともに前記電極に印加される電流に自由振動を生じさせるコンデンサーとを備える
ことを特徴とする点灯装置。
【請求項2】
請求項1に記載の点灯装置において、
前記パルス生成回路は、一次巻線及び二次巻線を有するトランスを備え、
前記インダクターは、前記二次巻線であることを特徴とする点灯装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の点灯装置を備えることを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−60683(P2011−60683A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211376(P2009−211376)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】