説明

点眼用レバミピド結晶の水性懸濁溶液

本発明は、使用時に違和感を生じない程度の透明性があり、ドライアイ患者の角結膜に傷害を与えることのない中性〜弱酸性のpHのレバミピド点眼液を提供する。改善された透明性を有するレバミピド結晶の水性懸濁溶液は、水溶性高分子および界面活性剤から選択される少なくとも1種の化合物を含有する塩酸等の酸水溶液に、水酸化ナトリウム等の塩基によって溶解させたレバミピド水溶液またはレバミピド塩の水溶液を混和することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバミピド[化学名:2−(4−クロルベンゾイルアミノ)−3−(2−キノロン−4−イル)プロピオン酸]を有効成分として含有する、再分散が必要なく、優れた透明性および安定性を示す、眼科用水性懸濁製剤とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の水性懸濁溶液の薬効成分であるレバミピドまたはその塩は、抗潰瘍剤として有用であることが知られている。さらに、眼のゴブレット細胞の増加作用、眼の粘液増加作用、並びに涙液増加作用を有し、ドライアイ、すなわち眼球乾燥症群の治療剤として有用であることも既に知られている(特開平9−301866号)。杉本、平川は、難溶性の酸性化合物と塩基によって得られる水溶性塩を高分子化合物および/または界面活性剤の存在下に酸と中和反応させて、微細な結晶を得る方法を報告している(特開昭50−121414号)。また平川らは、上記方法を用いてオキソリン酸の微細化について詳細に報告している[薬学雑誌 102(10), 951-959 (1982)、薬学雑誌 103(6) 690-695 (1983)、薬学雑誌 103(11) 1215-1218 (1983)、および薬学雑誌 103(11) 1190-1194 (1983)]。一方、平川らは、フェニトインとフェノバルビタールについて上記方法によって、平均粒子径3〜4μmまでしか微細化できなかったことについて報告している[薬学雑誌 104(1) 91-96 (1984)]。佐藤らも、酸または塩基によって溶解する難溶性の化合物を中和することによって、微粒化する方法を報告している(特開昭55−139319)。
Pranab Bagchiらも、医薬品化合物を塩基によって溶解し、表面修飾剤および表面活性剤の存在下に酸で中和反応させて、ナノ粒子を得る方法を報告している(米国特許第5,560,932号、第5,662,883号、第5,665,331号、および第5,716,642号)。
上記のように、酸性化合物と塩基によって得られる水溶性塩を高分子化合物および/または界面活性剤の存在下に酸と中和反応させて、微細な結晶を得る方法は公知技術である。しかし、上記のフェニトインとフェノバルビタールの例に示されるように、微粒子化度は化合物の種類に依存し、それを予測することは困難である。また、これまでレバミピドについての類似の報告は全くなかった。一般的に、たとえサブミクロンレベルまで微粒子化しても、懸濁液は白濁したミルク状の状態を示すので、本特許に示されたような眼科用剤に適した透明性の高い溶液が得られる方法については全く報告がない。また、晶析によって得られる懸濁液のpHを3〜7に調整後、攪拌・分散を行うことによって、驚くほど透明性の高い懸濁液が得られる方法も報告がなかった。さらに、透析工程を加えることによって、透明性が顕著に向上した懸濁液が得られる方法も報告がなかった。また、長径と短径の比が4以上の特異な透過性を示すレバピミドの針状結晶が得られる方法も報告がなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
レバミピドは塩基性の水溶液には溶解するものの、中性における溶解性が極めて低く、高pHの点眼液はドライアイのような角結膜に傷害を有する障害には不適である。その上、塩基性状態においても、溶液中で容易に結晶析出を生じることがあり、レバミピドの眼科用の水溶性製剤を開発するには困難が予想される。
特開平9−301866号には、レバミピドの中性状態の水性懸濁液が報告されているが、この中性状態の水性懸濁液は、長時間放置しておくと沈積層が形成され、再分散させるには、よく振とうさせる必要がある。また、この製剤は白色の眼科用懸濁液であることから、霧視の可能性や、着衣に薬液がこぼれたときの着色等の可能性が考えられる。
そこで、再分散が必要なく、使用時に違和感を生じない程度の透明性があり、ドライアイ患者の角結膜に傷害を与えることのない中性〜弱酸性の眼科用レバミピド製剤の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、水溶性高分子および界面活性剤から選択される少なくとも1種の化合物、酸水溶液、および水溶性レバミピド塩含有水溶液を(超音波)混和することにより、再分散が良好で、意外にも透明性が向上した眼科用レバミピド水性懸濁溶液を製造しうることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、水溶性高分子および界面活性剤から選択される少なくとも1種の化合物、酸水溶液、および水溶性レバミピド塩含有水溶液を混和して得られる点眼液に適したレバミピド結晶の水性懸濁溶液に関する。
本発明は、また、塩基でpHを5〜7に調整した上記レバミピド結晶の水性懸濁溶液;
上記の水性懸濁溶液に、塩基を加えてpHを3〜7にし、分散および/または透析を行った後、pHを5〜7、レバミピドの濃度を0.5〜5%(重量/容積)に調整したレバミピド結晶の眼科用水性懸濁溶液;
上記の水性懸濁溶液に、塩基を加えてpHを3〜7にし、分散および/または透析を行った後、pHを5〜7、レバミピドの濃度を0.5〜5%(重量/容積)に調整し、ろ過滅菌を行った無菌のレバミピド結晶の眼科用水性懸濁溶液;
透析を行うことによって濃縮された懸濁液に精製水を加えレバミピドの濃度を0.5〜5%(重量/容積)に調整した上記レバミピド結晶の眼科用水性懸濁溶液;
レバミピド結晶の水性懸濁液の640nmの透過率が20%以上である上記水性懸濁溶液;および
レバミピド結晶の形状が、長径1000nm未満、短径60nm未満で、長径と短径の比が4以上の均一な針状結晶である上記レバミピド結晶の眼科用水性懸濁溶液にも関する。
【0006】
さらに本発明は、水溶性高分子および界面活性剤から選択される少なくとも1種の化合物、酸水溶液、および水溶性レバミピド塩含有水溶液を混和することを特徴とするレバミピド結晶の水性懸濁溶液の製造方法;
上記の方法で製造された水性懸濁溶液に、塩基を加えてpHを3〜7に調整し、分散および/または透析を行った後、pHを5〜7、レバミピドの濃度を0.5〜5%(重量/容積)に調整することを特徴とするレバミピド結晶の眼科用水性懸濁溶液の製造方法;および
上記の方法で製造された水性懸濁溶液に、塩基を加えてpHを3〜7に調整し、分散および/または透析を行った後、pHを5〜7、レバミピドの濃度を0.5〜5%(重量/容積)に調整し、ろ過滅菌を行こうことを特徴とする無菌のレバミピド結晶の眼科用水性懸濁溶液の製造方法に関する。
その他の発明については以下の記載から明らかである。
【0007】
本発明のレバミピド結晶の水性懸濁溶液は、水溶性高分子および界面活性剤から選択される少なくとも1種の化合物、酸水溶液、および水溶性レバミピド塩含有水溶液を混和し、レバミピド結晶を晶析させることにより製造される。さらにpHを5〜7、レバミピドの濃度を0.5〜5%(重量/容積)に調整することによりレバミピド結晶の眼科用水性懸濁溶液を製造することができる。
上記レバミピド結晶を晶析させるには、(i)水溶性高分子および界面活性剤から選択される少なくとも1種類の化合物を含有する酸水溶液と、水溶性レバミピド塩含有水溶液とを混和するか、
(ii)酸水溶液と、水溶性高分子および界面活性剤から選択される少なくとも1種類の化合物を含有する水溶性レバミピド塩含有水溶液とを混和するか、あるいは
(iii)水溶性高分子および界面活性剤から選択される少なくとも1種類の化合物を含有する酸水溶液と、同じ水溶性高分子および界面活性剤から選択される少なくとも1種類の化合物を含有する水溶性レバミピド塩含有水溶液とを混和してもよい。
本発明に係る酸水溶液の酸は、たとえば一般的な酸である、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸、クエン酸等が使用可能であるが、塩酸が好ましく使用される。
本発明に係るレバミピドの塩は、例えば一般的な塩基である、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、トロメタノール(トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン)、メグルミン、ジエタノールアミン等と共に塩を形成し、水可溶性塩であるが、水酸化ナトリウムとの塩が好ましく使用される。レバミピドは上記塩の状態でも遊離酸でも使用可能であり、遊離酸の場合には当量以上の上記塩基と共に用いられる。なお、上記の酸の量は、少なくとも上記の塩基を中和するに必要量用いることが望ましい。上記溶液を混和する方法は特に限定されるものではないが、ディスパーザーやホモミキサー、ホモジナイザーなど、一般的に製剤用途として使用される攪拌、分散装置中で剪断力を与えながら、混和させる方法が好ましく使用される。また、混和時に超音波を照射してもよい。
【0008】
本発明で使用される水溶性高分子または界面活性剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール(マクロゴール)、ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、水溶性キトサン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(たとえば、ポリオキシエチレン[160]ポリオキシプロピレン[30]グリコール、ポリオキシエチレン[196]ポリオキシプロピレン[67]グリコール)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ステアリン酸ポリオキシル40等が挙げられる。
上記例の中でも、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが好ましく、より好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンであり、特に好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0009】
本発明で使用されるヒドロキシプロピルメチルセルロースのメトキシル含量およびヒドロキシプロポキシル含量は、好ましくはそれぞれ、19〜30%、4〜12%であり、より好ましくは28〜30%、7〜12%である。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの粘度グレード(2%(重量/容積)水溶液)は、好ましくは50mm/s未満、より好ましくは15mm/s以下、さらに好ましくは6mm/s以下である。最終的に調製された懸濁溶液中のヒドロキシプロピルメチルセルロースの添加濃度は、好ましくは0.1〜10%(重量/容積)、より好ましくは0.5〜5%(重量/容積)、さらに好ましくは1〜3%(重量/容積)である。レバミピド濃度とヒドロキシプロピルメチルセルロース濃度の比は、好ましくは20:1〜1:20、より好ましくは2:1〜1:6である。
本発明で使用されるポリビニルピロリドンの分子量は、好ましくは20万以下、より好ましくは4万以下のものである。最終的に調製された懸濁溶液中のポリビニルピロリドンの添加濃度は、好ましくは0.1〜10%(重量/容積)、より好ましくは0.3〜5%(重量/容積)、さらに好ましくは0.5〜3%(重量/容積)である。レバミピド濃度とポリビニルピロリドン濃度の比は、好ましくは20:1〜1:20、より好ましくは4:1〜1:6である。
【0010】
本発明で使用されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールには、ポリオキシエチレン[160]ポリオキシプロピレン[30]グリコールやポリオキシエチレン[196]ポリオキシプロピレン[67]グリコールが含まれる。また、最終的に調製された懸濁溶液中のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールやポリソルベート80の添加量は、好ましくは0.001%〜1%(重量/容積)、より好ましくは0.01%〜0.1%(重量/容積)である。
【0011】
また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとポリソルベート80またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとの組合せ、ポリビニルピロリドンとポリソルベート80またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとの組合せも好ましく用いられる。
【0012】
本発明者らは、上記のように晶析調製したレバミピド結晶の水性懸濁溶液に、塩基を加え、pHを3〜7に調節後、撹拌・分散工程を加えることで、さらに再分散と透明性が向上することを見出した。
ここで使用される塩基は前記塩基と同じものが使用される。
撹拌・分散装置としては、ディスパーザーやホモミキサー、ホモジナイザー等など、一般的に医薬用途として使用される撹拌・分散装置が挙げられるが、液中で凝集している粒子を効率的に分散させることができる撹拌・分散装置が好ましい。ロボミックス(登録商標)(特殊機化工業(株))やクレアミックス(登録商標)等の回転式ホモジナイザーの他、湿式ジェットミルや高圧ホモジナイザー等が好ましい例として挙げられる。特に、スクリーンとローターが各々逆方向に高速で回転することにより、強烈な液−液剪断力を有するWモーション型クレアミックス(エム・テクニック(株))を使用することで、上記のように調製したレバミピド結晶の水性懸濁溶液の透明性が顕著に向上する。なかでもヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加剤とするレバミピド結晶の水性懸濁溶液では驚くほど透明性の高い懸濁液が得られる。
【0013】
本発明者らは、上記のように晶析調製したレバミピド結晶の水性懸濁溶液に、透析工程(例えば、限外ろ過工程)を加えることで、透明性がさらに向上することを見出した。
透析装置としては、ペリコン(登録商標)(日本ミリポア(株))、プロスタック(登録商標)(日本ミリポア(株))、ザルトコン(登録商標)(ザルトリウス(株))等一般的に医薬用途として使用される透析装置が挙げられる。透析を行うに際して、レバミピド結晶の水性懸濁溶液のpHが低いと凝集のため透析膜の通過性が悪く、pHが高いとレバミピドが溶解し含量損出が生じるため、その懸濁液のpHは3〜7、好ましくはpH4〜7、より好ましくはpH5〜7で行うことが望ましい。
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加剤とするレバミピド結晶の水性懸濁溶液の場合には、透析装置により脱塩することで、驚くほど高い透明性の懸濁液が得られ、そして高温で保存しても性状に変化のない安定な点眼剤として好適な懸濁液に製剤化することが可能となった。
【0014】
上記の透析工程と分散・撹拌工程は、それぞれ単独で、あるいは両工程を組み合わせて行ってもよく;透析工程を行った後、分散・撹拌工程を行うことも可能であるし;逆に分散・撹拌工程を行った後、透析工程を行うことも可能である。
透析工程により、懸濁液が濃縮されることから、濃縮後に精製水で希釈し、レバミピド濃度が0.1〜10%(重量/容積)、好ましくは0.5〜5%(重量/容積)の任意の濃度のレバミピド結晶の懸濁溶液を調製できる。
【0015】
さらに、本発明者らは上記の方法によってレバミピドの懸濁溶液の結晶形状をコントロールし、得られた懸濁液の性状を改良できることを見出した。
レバミピドの懸濁溶液の結晶の長径が1000nm未満で、短径が60nm未満で、長径と短径の比が4以上のものが好ましく得られる。
例えば、ポリビニルピロリドンを添加剤として用いると長径300nm未満、短径60nm未満、好ましくは長径200nm程度、短径40nm程度で、長径と短径の比が5程度の均一な針状結晶の懸濁液を上記製造方法で得ることができ、その懸濁液は分散性が良く0.2μmフィルターの通過性の高い懸濁液が得られる。さらに、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加剤として用いると、長径1000nm未満、短径30nm未満、好ましくは長径50nm以上1000nm未満、短径5〜20nmで、長径と短径の比が7を超える均一な超針状結晶を上記製造方法で得ることができ、その懸濁液は分散工程および透析工程を組合せることで、非常に透明性が高く、0.2μmフィルターも通過可能な懸濁液が得られる。
【0016】
上記のように調製されたレバミピド結晶の懸濁溶液は、例えば塩酸と水酸化ナトリウムの中和反応により塩化ナトリウムが生成し、浸透圧比が約1の眼科用懸濁液が調製される。透析工程等のために、懸濁液が低張の場合は、涙液と等張にするために、点眼液剤で通常使用される塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、グリセリン、ソルビトール、および/またはブドウ糖が、特に好ましくはグリセリンが使用される。
本製剤はpH調整剤として、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸、クエン酸等の酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、トロメタノール(トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン)、メグルミン、ジエタノールアミン等の塩基を添加することによって、眼刺激の少ないpH5〜7に調整される。
また、本製剤には、点眼剤として一般的に使用される緩衝剤、保存剤(防腐剤)、安定化剤等各種成分をさらに添加することもできる。
【0017】
緩衝剤の例としては、酢酸および酢酸ナトリウム等の酢酸塩、クエン酸およびクエン酸塩、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二カリウム等のリン酸塩、イプシロンアミノカプロン酸、グルタミン酸ナトリウム等のアミノ酸塩、ホウ酸およびその塩が挙げられる。
保存剤の例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の第四アンモニウム塩、グルコン酸クロルヘキシジン等の陽イオン化合物、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル等のパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール化合物、デヒドロ酢酸ナトリウム、チメロサール等が挙げられる。
安定化剤の例としては、アスコルビン酸およびその塩、トコフェロール、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、エデト酸ナトリウム等が挙げられる。
【0018】
本発明の眼科用懸濁液剤は、微生物による汚染の恐れがないユニットドーズ型(保存剤無添加型)の点眼用製剤としても提供できる。
【0019】
従来、再分散が必要なく、透明性に優れた眼科用水性懸濁製剤を調製することは不可能であった。しかし、まず、水溶性高分子および界面活性剤から選択される少なくとも1種の化合物、塩酸等の酸水溶液、および水溶性レバミピド塩含有水溶液を混和することにより、pHが1〜3のレバミピド結晶の懸濁液を得、次にその懸濁液に塩基を加えてpH調整し、次いで撹拌・分散、透析による脱塩を行うことにより、レバミピドを有効成分として含有する、再分散が必要なく、透明性および安定性に優れた中性〜弱酸性の点眼用水性懸濁製剤を調製することが可能となった。本発明の方法によれば、無菌ろ過法により、懸濁液を滅菌することが可能であり、無菌原薬が必要としない点も大きな産業上の利点である。また、本発明の方法によって製造された眼科用レバミピド水性懸濁液は医薬品としての十分な安定性も維持することが可能となった。
本発明の眼科用懸濁液は、霧視や、患者の不快感を避けることが可能であることから、ドライアイ患者の顕著なコンプライアンスの向上が期待され、医療上多大な貢献を与えるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例等で使用した添加剤の略号は以下の通りである。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、信越化学、グレード:TC-5E):HPMC(TC−5E)またはTC−5E。
ポリビニルピロリドン(PVP、BASF、グレード:Kollidon(登録商標)25):PVP(K−25)。
ポリビニルピロリドン(PVP、BASF、グレード:Kollidon(登録商標)17PF):PVP(K−17PF)。
ポリオキシエチレン[160]ポリオキシプロピレン[30]グリコール(プルロニック(登録商標)F68[PF68]、BASF、グレード:Lutrol F68):プルロニック(登録商標)F68またはPF68。
ポリオキシエチレン[196]ポリオキシプロピレン[67]グリコール(プルロニック(登録商標)F127、旭電化):プルロニック(登録商標)F127またはPF127。
【0021】
[実施例1]
2%(重量/容積)レバミピド結晶の水性懸濁溶液を以下の方法で1L調製した。
10N塩酸12mL(14.2g、0.12mol)と精製水68mLと表1に示す各種添加剤(懸濁液調製後の添加剤濃度の5倍量)水溶液200mLを混和して、塩酸−添加剤溶液を調製した。水酸化ナトリウム4.4g(0.11mol)に精製水を加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液700mLに、レバミピド20g(0.054mol)を加温溶解し、水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を調製した。
氷冷下の塩酸−添加剤溶液を分散機(ロボミックス、特殊機化工業)で1400rpmの速度で撹拌しながら超音波発生機(TOMY UD201)で超音波を照射した。30−40℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を、塩酸−添加剤溶液中に徐々に添加し、レバミピド結晶を析出させた。結晶析出後、撹拌速度を3000rpmに上げ、20分間撹拌した。晶析終了後の溶液のpHは約1.5であった。溶液を脱泡後、5N水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを6.0−6.5の間に調整した。液容量を1Lに調整することで、添加剤を含む2%(重量/容積)レバミピド結晶の水性懸濁溶液を調製した。この懸濁液には、塩酸と水酸化ナトリウムの中和反応の結果、塩化ナトリウムが約0.7%(重量/容積)(約0.12mol)含まれる。
【0022】
[実施例2]
実施例1において調製した2%(重量/容積)レバミピド結晶の水性懸濁溶液800mLを、分散機(ロボミックス、特殊機化工業)を用いて、10,000rpmで10分間撹拌した。
【0023】
実施例1および2の評価
分散前、分散後の懸濁液の粒子径を、レーザー回折粒度分布測定機(SALD3000J、島津製作所)によって測定した。粒子径は、分散媒が0.2%(重量/容積)HPC−SL溶液中で、超音波を照射し、循環セルで測定した粒子径を一次粒子径、分散媒が精製水溶液中で、超音波を照射せず、回分セルで測定した粒子径を二次粒子径と称して測定を行った。二次粒子径は、一次粒子径と比較して、懸濁液の凝集性をより強く表している。また、サンプルの透明性を評価するために、精製水で2%(重量/容積)懸濁液を10倍希釈し(0.2%(重量/容積)溶液)、分光光度計(島津自記分光光度計、UV-240)を用いて640nmの透過率を測定した。
結果を表1に示す。添加剤無添加の再結晶液の一次粒子径は1μm、二次粒子径は約7μmであった。この再結晶液に1%(重量/容積)HPMC(TC−5E)を後添加し、ロボミックス(登録商標)で分散すると一次粒子径は0.3μm、二次粒子径は0.6μmに低下したことから、再結晶液の粒子は凝集していることが判明した。
水性高分子または界面活性剤を添加した、再結晶したレバミピドを含む懸濁液では、無添加品と比較して、10倍希釈液(0.2%(重量/容積)溶液)の顕著な透過性の向上が確認された。さらに、水性高分子または界面活性剤を添加した懸濁液のロボミックス(登録商標)分散後の一次粒子径は、無添加品よりも小さくなった。
【0024】
【表1】

【0025】
[実施例3]
実施例1の方法で調製した2%(重量/容積)レバミピド水性懸濁溶液800mLを、クレアミックス(登録商標)Wモーション(エム・テクニック(株))を用いて、ローターを約17,000rpm回転、スクリーンを約16,000rpm回転で30分間、分散を行った。分散後の懸濁液の平均粒子径を動的光散乱粒度分布測定機(Microtrac UPAおよび大塚電子ELS-8000)で測定した。精製水で2%(重量/容積)懸濁液を10倍希釈した溶液(0.2%(重量/容積)溶液)、および2%(重量/容積)懸濁液原液の640nmの透過率を、分光光度計(島津自記分光光度計、UV-240)を用いて測定した結果を表2に示す。クレアミックスWモーション(エム・テクニック社)を用いて分散を行うことで、ロボミックスによる10,000rpmの分散と比較して、粒子径の低下と顕著な透過率の増大が認められた。また、分散後の懸濁液は0.2μmのフィルターが通過可能となった。
【0026】
【表2】

【0027】
[実施例4]
実施例1の方法で、1〜4Lの2%(重量/容積)レバミピド水性懸濁溶液を晶析した。各原料の分量は、1L調製時の分量を比例計算して、調製した。晶析時の超音波照射を行わない懸濁液も調製した。得られた2%(重量/容積)レバミピド水性懸濁溶液を、クレアミックスWモーション(エム・テクニック社)を用いて、ローターを約18,000rpm回転、スクリーンを約16,000rpm回転で分散を行った。分散後の懸濁液の平均粒子径(Z-Average size)を動的光散乱粒度分布測定機(Malvern Nano-ZS)で測定した。精製水で2%(重量/容積)懸濁液を10倍希釈した溶液(0.2%(重量/容積)溶液)、および2%(重量/容積)懸濁液原液の640nmの透過率を、分光光度計(島津自記分光光度計、UV-240)を用いて測定した結果を表3および図1に示す。
晶析時にHPMC(TC−5E)を添加した製剤では、晶析時に超音波を照射すると、透過性の増大とろ過性の向上が認められた。また、HPMC(TC−5E)の添加濃度に比例して、1〜3%(重量/容積)の範囲では、640nmの透過率は増大した。
【0028】
【表3】

【0029】
[実施例5]
実施例4の方法で、添加剤を1%(重量/容積)HPMC(TC−5E)とし、クレアミックスで分散し調製したサンプルを、透析装置(ミリポア、ペリコン(登録商標)XL50)で濃縮脱塩を行った。透析後、生じた溶液に精製水を加え、2%(重量/容積)レバミピド懸濁液に再調製した。透析前後の懸濁液について、動的光散乱粒度分布測定機(Malvern Nano-ZS)によって平均粒子径(Z-Average size)を測定し、分光光度計で2%(重量/容積)懸濁液の640nmの透過率を測定し、結果を表4に示す。
透析による脱塩により、粒子径の低下と、意外にも顕著な透過率の増大が認められた。
【0030】
【表4】

【0031】
[実施例6]
10N塩酸12mL(14.2g、0.12mol)と精製水68mLと5%(重量/容積)HPMC(TC−5E)水溶液200mLを混和して、塩酸−HPMC(TC−5E)溶液を調製した。水酸化ナトリウム4.4g(0.11mol)に精製水を加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液700mLに、レバミピド20g(0.054mol)を加温溶解し、水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を調製した。
氷冷下の塩酸−添加剤溶液に、分散機(ロボミックス、特殊機化工業)で1400rpmの速度で撹拌しながら、超音波発生機(TOMY UD201)で超音波を照射した。30−40℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を、その塩酸-添加剤溶液中に徐々に添加し、レバミピド結晶を析出させた。結晶析出後、撹拌速度を3000rpmに上げ、20分間撹拌した。晶析終了後の溶液のpHは約1.5であった。溶液を脱泡後、5N水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを約5.0に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液を、クレアミックスWモーション(エム・テクニック)を用いて、ローターを約18,000rpm回転、スクリーンを約16,000rpm回転で30分間、分散を行った後、この溶液を透析装置(ミリポア、ペリコン2ミニ)で濃縮脱塩を行った。
等張化剤無配合のサンプル、および等張化剤としてグリセリンを含むサンプルを、濃縮脱塩を行ったサンプルから調製し、それぞれに精製水を加え、2種類の2%(重量/容積)レバミピド懸濁液を調製した。
(1)2%(重量/容積)レバミピド+1%(重量/容積)HPMC(TC−5E)
(2)2%(重量/容積)レバミピド+1%(重量/容積)HPMC(TC−5E)+2.5%グリセリン
これらの各サンプルを3つに分け、4℃、60℃、サイクル条件(4℃12時間、40℃12時間を繰り返す。)に保存し、動的光散乱粒度分布測定機(Malvern Nano-ZS)によって平均粒子径(Z-Average size)を測定し、分光光度計で2%(重量/容積)懸濁液の640nmの透過率を測定し、結果を表5に示す。
透析脱塩することによって、保存後のサンプルの粒子径の増大、透過率の低下を顕著に抑制することができた。また、60℃およびサイクル条件保存によるゲル化も抑制可能になった。
非イオン性等張化剤を加えることにより、粒子径の増大、透過率の低下を抑制する傾向が認められた。
【0032】
【表5】

【0033】
[実施例7]
10N塩酸12mL(14.2g、0.12mol)と精製水68mLと5%(重量/容積)PVPK25水溶液200mLを混和して、塩酸−PVPK25溶液を調製した。水酸化ナトリウム4.4g(0.11mol)に精製水を加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液700mLに、レバミピド20g(0.054mol)を加温溶解し、水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を調製した。
氷冷下の塩酸−添加剤溶液に、分散機(ロボミックス、特殊機化工業)で1400rpmの速度で撹拌しながら、超音波発生機(TOMY UD201)で超音波を照射した。30−40℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を、その塩酸−添加剤溶液中に徐々に添加し、レバミピド結晶を析出させた。結晶析出後、撹拌速度を3000rpmに上げ、20分間撹拌した。晶析終了後の溶液のpHは約1.5であった。溶液を脱泡後、5N水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを約5.0に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液を、クレアミックスWモーション(エム・テクニック社)を用いて、ローターを約18,000rpm回転、スクリーンを約16,000rpm回転で30分間、分散を行った後、この溶液を透析装置(ミリポア、ペリコン2ミニ)で濃縮脱塩を行った。
等張化剤無配合のサンプル、および等張化剤としてグリセリンを含むサンプルを、濃縮脱塩を行ったサンプルから調製し、それぞれに精製水を加え、2種類の2%(重量/容積)レバミピド懸濁液を調製した。
(1)2%(重量/容積)レバミピド+1%(重量/容積)PVPK25
(2)2%(重量/容積)レバミピド+1%(重量/容積)PVPK25+2.4%(重量/容積)グリセリン
【0034】
[実施例8]
10N塩酸12mL(14.2g、0.12mol)と精製水68mLと5%(重量/容積)PVPK25水溶液200mLを混和して、塩酸−PVPK25溶液を調製した。水酸化ナトリウム4.4g(0.11mol)に精製水を加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液700mLに、レバミピド20g(0.054mol)を加温溶解し、水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を調製した。
氷冷下の塩酸−添加剤溶液に、分散機(ロボミックス、特殊機化工業)で1400rpmの速度で撹拌しながら、超音波発生機(TOMY UD201)で超音波を照射した。30−40℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を、その塩酸−添加剤溶液中に徐々に添加し、レバミピド結晶を析出させた。結晶析出後、撹拌速度を3000rpmに上げ、20分間撹拌した。晶析終了後の溶液のpHは約1.5であった。溶液を脱泡後、5N水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを約5.0に調整した。
この溶液を、透析装置(ミリポア、ペリコン2ミニ)で濃縮脱塩を行った。透析後精製水を加え、液容量を約900mLに戻した。このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液を、クレアミックスWモーション(エム・テクニック社)を用いて、ローターを約18,000rpm回転、スクリーンを約16,000rpm回転で30分間、分散を行った。
等張化剤無配合のサンプル、および等張化剤としてグリセリンを含むサンプルを、濃縮脱塩を行ったサンプルから調製し、それぞれに精製水を加え、2種類の2%(重量/容積)レバミピド懸濁液を調製した。
(1)2%(重量/容積)レバミピド+1%(重量/容積)PVPK25
(2)2%(重量/容積)レバミピド+1%(重量/容積)PVPK25+2.4%(重量/容積)グリセリン
調製したサンプルを0.2μmのフィルター(スーポア、日本ポール(株))で無菌ろ過を行った。
【0035】
[実施例9]
10N塩酸24mL(28.4g、0.24mol)と精製水136mLと10%(重量/容積)HPMC(TC−5E)水溶液400mLを混和して、塩酸−HPMC(TC−5E)溶液を調製した。水酸化ナトリウム8.8g(0.22mol)に精製水を加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液1400mLに、レバミピド40g(0.108mol)を加温溶解し、水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を調製した。
氷冷下の塩酸−添加剤溶液に分散機(ロボミックス、特殊機化工業)で1400rpmの速度で撹拌しながら、超音波発生機(TOMY UD201)で超音波を照射した。30−40℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を、その塩酸-添加剤溶液中に徐々に添加し、レバミピド結晶を析出させた。結晶析出後、撹拌速度を3000rpmに上げ、20分間撹拌した。晶析終了後の溶液のpHは約1.5であった。溶液を脱泡後、5N水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを約5.0に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液を、クレアミックスWモーション(エム・テクニック社)を用いて、ローターを約18,000rpm回転、スクリーンを約16,000rpm回転で30分間、分散を行った後、この溶液を透析装置(ミリポア、ペリコン2ミニ)で濃縮脱塩を行った。
等張化剤無配合のサンプル、および等張化剤としてグリセリンを含むサンプルを、濃縮脱塩を行ったサンプルから調製した。水酸化ナトリウム溶液を各サンプルに添加し、その溶液のpHを6.0に調整し、精製水を加え総重量を調整し、2種類の2%(重量/容積)レバミピド懸濁液を調製した。
(1)2%(重量/容積)レバミピド+2%(重量/容積)HPMC[TC−5E]
(2)2%(重量/容積)レバミピド+2%(重量/容積)HPMC[TC−5E]+2.35%(重量/容積)グリセリン
調製したサンプルを0.22μmのフィルター(STERIVEX GP 0.22μmフィルター、日本ミリポア(株))で無菌ろ過を行った。
【0036】
[実施例10]
10N塩酸12mL(14.2g、0.12mol)と精製水68mLと2.5%(重量/容積)PVPK25+2.5%(重量/容積)HPMC(TC−5E)混水溶液200mLを混和して、塩酸−HPMC(TC−5E)−PVPK25溶液を調製した。水酸化ナトリウム4.4g(0.11mol)に精製水を加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液700mLに、レバミピド20g(0.054mol)を加温溶解し、水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を調製した。
氷冷下の塩酸−添加剤溶液に、分散機(ロボミックス、特殊機化工業)で1400rpmの速度で撹拌しながら、超音波発生機(TOMY UD201)で超音波を照射した。30−40℃に維持した水酸化ナトリウム-レバミピド溶液を、その塩酸−添加剤溶液中に徐々に添加し、レバミピド結晶を析出させた。結晶析出後、撹拌速度を3000rpmに上げ、20分間撹拌した。晶析終了後の溶液のpHは約1.5であった。溶液を脱泡後、5N水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを約5.0に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液を、クレアミックスWモーション(エム・テクニック社)を用いて、ローターを約18,000rpm回転、スクリーンを約16,000rpm回転で30分間、分散を行った後、この溶液を透析装置(ミリポア、ペリコン2ミニ)で濃縮脱塩を行った。
等張化剤無配合のサンプル、および等張化剤としてグリセリンを含むサンプルを、濃縮脱塩を行ったサンプルから調製した。それぞれ精製水を加え、2種類の2%(重量/容積)レバミピド懸濁液を調製した。
(1)2%(重量/容積)レバミピド+0.5%(重量/容積)PVPK25+0.5%(重量/容積)HPMC[TC−5E]
(2)2%(重量/容積)レバミピド+0.5%(重量/容積)PVPK25+0.5%(重量/容積)HPMC[TC−5E]+2.4%(重量/容積)グリセリン
調製したサンプルを0.22μmのフィルター(STERIVEX GP 0.22μmフィルター、日本ミリポア(株))で無菌ろ過を行った。
【0037】
[実施例11]
10N塩酸24mL(28.4g、0.24mol)と精製水136mLと3%(重量/容積)HPMC(TC−5E)水溶液400mLを混和して、塩酸−HPMC(TC−5E)溶液を調製した。水酸化ナトリウム8.8g(0.22mol)とHPMC(TC−5E)28gを精製水に加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液1400mLに、レバミピド40g(0.108mol)を加温溶解し、水酸化ナトリウム−レバミピド−HPMC(TC−5E)溶液を調製した。
氷冷下の塩酸−HPMC(TC−5E)溶液を分散機(ロボミックス、特殊機化工業)で1400rpmの速度で撹拌した。30−40℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド−HPMC(TC−5E)溶液を、その塩酸−HPMC(TC−5E)溶液に徐々に添加し、レバミピド結晶を析出させた。結晶析出後、撹拌速度を3000rpmに上げ、20分間撹拌した。晶析終了後の溶液のpHは約1.5であった。溶液を脱泡後、5N水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを約5.5に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液を、クレアミックスWモーション(エム・テクニック社)を用いて、ローターを約18,000rpm回転、スクリーンを約16,000rpm回転で30分間、分散を行った。この溶液を透析装置(ミリポア、ペリコン2ミニ)で濃縮脱塩を行った。
濃縮脱塩を行ったサンプルがほぼ等張になるようにグリセリンを添加した。水酸化ナトリウム溶液を添加し、その溶液のpHを6.0に調整し、精製水を加え、総重量を調整し、2%(重量/容積)レバミピド懸濁液を調製した。
2%(重量/容積)レバミピド+2%(重量/容積)HPMC[TC−5E]+2.35%(重量/容積)グリセリン
調製したサンプルを0.22μmのフィルター(STERIVEX GP 0.22μmフィルター、日本ミリポア(株))で無菌ろ過を行った。
【0038】
[実施例12]
10N塩酸24mL(28.4g、0.24mol)と精製水536mLを混和して、塩酸溶液を調製した。水酸化ナトリウム8.8g(0.22mol)とHPMC(TC−5E)40gを精製水に加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液1400mLに、レバミピド40g(0.108mol)を加温溶解し、水酸化ナトリウム−レバミピド−HPMC(TC−5E)溶液を調製した。
氷冷下の塩酸溶液を分散機(ロボミックス、特殊機化工業)で1400rpmの速度で撹拌した。30−40℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド−HPMC(TC−5E)溶液を、その塩酸溶液に徐々に添加し、レバミピド結晶を析出させた。結晶析出後、撹拌速度を3000rpmに上げ、20分間撹拌した。晶析終了後の溶液のpHは約1.5であった。溶液を脱泡後、5N水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを約6.0に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液を、クレアミックスWモーション(エム・テクニック社)を用いて、ローターを約18,000rpm回転、スクリーンを約16,000rpm回転で30分間、分散を行った。この溶液を透析装置(ミリポア、ペリコン2ミニ)で濃縮脱塩を行った。
濃縮脱塩を行ったサンプルがほぼ等張になるようにグリセリンを添加した。塩酸または水酸化ナトリウム溶液を添加し、その溶液のpHを6.0に調整し、精製水を加え、総重量を調整し、2%(重量/容積)レバミピド懸濁液を調製した。
2%(重量/容積)レバミピド+2%(重量/容積)HPMC[TC−5E]+2.35%(重量/容積)グリセリン
調製したサンプルを0.22μmのフィルター(STERIVEX GP 0.22μmフィルター、日本ミリポア(株))で無菌ろ過を行った。
【0039】
[実施例13]
10N塩酸366mL(432g、3.66mol)と7.67%(重量/容積)HPMC(TC−5E)水溶液7.8Lを混和して、塩酸−HPMC(TC−5E)溶液を調製した。水酸化ナトリウム132g(3.3mol)に精製水を加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液21Lに、レバミピド600g(1.62mol)を加温溶解し、水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を調製した。
約10℃に冷却した塩酸−HPMC(TC−5E)溶液は、分散機(クレアミックスSモーション、エム・テクニック社)が組み込まれた350mLの容器中をインライン方式で循環させた。クレアミックスSモーションのローターを1500rmpで回転させながら、40−50℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を350mLの容器中に徐々に注入し、レバミピド結晶を析出させた。晶析終了後のpHは約1.5であった。結晶が析出した溶液に、5N水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを約5.75に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液を1L取り、クレアミックスWモーション(エム・テクニック社)を用いて、ローターを約18,000rpm回転、スクリーンを約16,000rpm回転で30分間、分散を行った後、この溶液を透析装置(ミリポア、ペリコン2ミニ)で濃縮脱塩を行った。
濃縮脱塩を行ったサンプルを精製水で希釈し、2%(重量/容積)レバミピド懸濁液を調製した(2%(重量/容積)レバミピド+2%(重量/容積)HPMC[TC−5E])。
こうして得られた懸濁液の測定波長640nmにおける透過率、および動的光散乱粒度測定機(Malvern Nano-ZS)によって平均粒子径(Z-Average size)を測定した。
【表6】

【0040】
[実施例14]
10N塩酸373mL(440g、3.73mol)と4%(重量/容積)HPMC(TC−5E)水溶液14.8Lを混和して、塩酸−HPMC(TC−5E)溶液を調製した。水酸化ナトリウム134g(3.35mol)に精製水を加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液14Lに、レバミピド600g(1.62mol)を加温溶解し、水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を調製した。
ローターを10000rmpで回転させ分散機(クレアミックスSモーション、エム・テクニック社)が組み込まれた350mLの容器中に、約10℃に冷却した塩酸−HPMC(TC−5E)溶液と50−60℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を、ほぼ同じ速度で注入し、レバミピド結晶懸濁液を得た。晶析終了後のpHは約1.5であった。結晶が析出した溶液に、5N水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを約5.75に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液の3Lを、クレアミックスWモーション(エム・テクニック社)を用いて、ローターを約18,000rpm回転、スクリーンを約16,000rpm回転で60分間分散を行った後、この溶液を透析装置(ミリポア、ProFlux M12)で濃縮脱塩を行った。
濃縮脱塩を行ったサンプルを精製水で希釈し、2%(重量/容積)レバミピド懸濁液を調製した(2%(重量/容積)レバミピド+2%(重量/容積)HPMC[TC−5E])。
こうして得られた懸濁液の測定波長640nmにおける透過率、および動的光散乱粒度測定機(Malvern Nano-ZS)によって平均粒子径(Z-Average size)を測定した。
【表7】

【0041】
[実施例15]
10N塩酸61mL(72g、0.61mol)と7.67%(重量/容積)HPMC(TC−5E)水溶液1.3Lを混和して、塩酸−HPMC(TC−5E)溶液を調製した。水酸化ナトリウム22g(0.55mol)に精製水を加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液3.5Lに、レバミピド100g(0.27mol)を加温溶解し、水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を調製した。
約10℃に冷却した塩酸−HPMC(TC−5E)溶液は、分散機(クレアミックスSモーション、エム・テクニック社)が組み込まれた350mLの容器中をインライン方式で循環させた。クレアミックスSモーションのローターを12000rmpで回転させながら、40−50℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を350mLの容器中に徐々に注入し、レバミピド結晶を析出させた。晶析終了後のpHは約1.5であった。結晶が析出した溶液に、5N水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを約5.75に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液の3Lを、クレアミックスWモーション(エム・テクニック社)を用いて、ローターを約18,000rpm回転、スクリーンを約16,000rpm回転で60分間分散を行った後、この溶液を透析装置(ミリポア、ProFlux M12)で濃縮脱塩を行った。
濃縮脱塩を行ったサンプルを精製水で希釈し、2%(重量/容積)レバミピド懸濁液を調製した(2%(重量/容積)レバミピド+2%(重量/容積)HPMC[TC−5E])。
こうして得られた懸濁液の測定波長640nmにおける透過率、および動的光散乱粒度測定機(Malvern Nano-ZS)によって平均粒子径(Z-Average size)を測定した。
【表8】

【0042】
[実施例16]
10N塩酸183mL(216g、1.83mol)と7.67%(重量/容積)HPMC(TC−5E)水溶液3.9Lを混和して、塩酸−HPMC(TC−5E)溶液を調製した。水酸化ナトリウム66g(1.65mol)に精製水を加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液10.5Lに、レバミピド300g(0.81mol)を加温溶解し、水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を調製した。
約10℃に冷却した塩酸−HPMC(TC−5E)溶液を、L字型にくりぬいたシリコンのブロック内に循環させた。そのブロック内に40−50℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を、徐々に注入し、レバミピド結晶を析出させた。晶析終了後のpHは約1.5であった。結晶が析出した溶液に、5N水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを約5.75に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液の3Lを、クレアミックスWモーション(エム・テクニック社)を用いて、ローターを約18,000rpm回転、スクリーンを約16,000rpm回転で60分間分散を行った後、この溶液を透析装置(ミリポア、ProFlux M12)で濃縮脱塩を行った。
濃縮脱塩を行ったサンプルを精製水で希釈し、2%(重量/容積)レバミピド懸濁液を調製した(2%(重量/容積)レバミピド+2%(重量/容積)HPMC[TC−5E])。
こうして得られた懸濁液の測定波長640nmにおける透過率、および動的光散乱粒度測定機(Malvern Nano-ZS)によって平均粒子径(Z-Average size)を測定した。
【表9】

【0043】
[試験例1]
上記実施例6の(1)と実施例7の(1)のサンプルをBeckman L7-Ultracentrifugeで超遠心分離(50,000rpm、60分間、10℃)して、微粒子を沈殿させた。精製水で洗浄し、もう一度同様の操作を行った。上澄み液を除去し、沈殿物を40℃4日間で風乾させた。
微粒子乾燥物のX線回折スペクトル、IRスペクトルおよびDTA-TGスペクトルを測定した。胃潰瘍胃炎用途で販売されている大塚製薬(株)第2工場で製造された原薬のスペクトルと同様のスペクトルが微粒子乾燥物でも得られた。以上の結果から、今回の発明で得られた微粒子の結晶は従来の胃潰瘍胃炎用途の原薬と同一の結晶形であることが示唆される。
【0044】
[試験例2]
上記実施例6の(1)と、実施例7の(1)のサンプルの結晶形状を透過型電子顕微鏡で測定した(図2,図3)。上記実施例6の(1)の2%(重量/容積)レバミピド+1%(重量/容積)HPMC[TC−5E]を透過型電子顕微鏡で観察すると、得られた結晶の形状が、長径300nm以上1000nm未満、短径約15nmの長径と短径の比が20を超える均一な超針状結晶が認められた。このような超針状結晶が得られた場合、透明性の高い懸濁液が得られるものと推定された。
実施例7の(1)の2%(重量/容積)レバミピド+1%(重量/容積)PVPK25を透過型電子顕微鏡で観察した結晶の形状は、長径約200nm、短径約40nmの針状結晶で、長径と短径の比が5程度の均一な針状結晶が得られた。このような超針状結晶が得られた場合、分散性が良く0.2μmのフィルターの透過性の高い懸濁液が得られるものと推定された。
【0045】
[試験例3]
上記実施例13の結晶の形状を透過型電子顕微鏡で測定した(図4)。上記実施例13の2%(重量/容積)レバミピド+2%(重量/容積)HPMC(TC−5E)を透過型電子顕微鏡で観察すると、得られた結晶の形状が、長径50nm以上400nm未満、短径約15nmで、長径と短径の比が8を超える均一な超針状結晶が認められた。このような超針状結晶が得られた場合、透明性が高く、0.2μmフィルターの濾過性のよい懸濁液が得られるものと推定された。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】クレアミックス分散後の各原液の透過率を示す。
【図2】実施例6の(1)の2%(重量/容積)レバミピド+1%(重量/容積)HPMC[TC−5E]の透過型電子顕微鏡観察下のレバミピド結晶の形状を示す。
【図3】実施例7の(1)の2%(重量/容積)レバミピド+1%(重量/容積)PVPK25の透過型電子顕微鏡観察下のレバミピド結晶の形状を示す。
【図4】実施例13の2%(重量/容積)レバミピド+2%(重量/容積)HPMC(TC−5E)の透過型電子顕微鏡観察下のレバミピド結晶の形状を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性高分子および界面活性剤から選択される少なくとも1種の化合物、酸水溶液、および水溶性レバミピド塩含有水溶液の混和物を含む、レバミピド結晶の水性懸濁溶液。
【請求項2】
混和物が超音波照射を受ける、請求項1に記載の水性懸濁溶液。
【請求項3】
水溶性高分子および界面活性剤から選択される化合物がヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールまたはポリソルベート80である請求項1に記載の水性懸濁溶液。
【請求項4】
水溶性高分子および界面活性剤から選択される化合物がヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1に記載の水性懸濁溶液。
【請求項5】
レバミピド結晶の水性懸濁溶液が酸性である、請求項1に記載のレバミピド結晶の水性懸濁溶液。
【請求項6】
pHを塩基で5〜7の範囲に調整した、請求項1または5に記載のレバミピド結晶の水性懸濁溶液。
【請求項7】
請求項1または5に記載の水性懸濁溶液に塩基を加えてpHを3〜7にし、分散および/または透析を行った後、pHを5〜7、レバミピドの濃度を0.5〜5%(重量/容積)に調整したレバミピド結晶の眼科用水性懸濁溶液。
【請求項8】
請求項1または5に記載の水性懸濁溶液に塩基を加えてpHを3〜7にし、分散および/または透析を行った後、pHを5〜7、レバミピドの濃度を0.5〜5%(重量/容積)に調整し、ろ過滅菌を行った無菌のレバミピド結晶の眼科用水性懸濁溶液。
【請求項9】
透析を行って濃縮された懸濁液中のレバミピドの濃度を、精製水で0.5〜5%(重量/容積)に調整した請求項7記載の水性懸濁溶液。
【請求項10】
濃度が0.5〜5%(重量/容積)であるレバミピド結晶の水性懸濁液の640nmにおける透過率が、20%以上である請求項7に記載の水性懸濁溶液。
【請求項11】
得られたレバミピド結晶の形状が、長径1000nm未満、短径60nm未満で、長径と短径の比が4以上の均一な針状結晶である、請求項7に記載の水性懸濁溶液。
【請求項12】
水溶性高分子および界面活性剤から選択される少なくとも1種の化合物、酸水溶液、および水溶性レバミピド塩含有水溶液を混和することを特徴とする、レバミピド結晶の水性懸濁溶液の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法で製造された水性懸濁溶液に塩基を加えてpHを3〜7に調整し、分散および/または透析を行った後、pHを5〜7、レバミピドの濃度を0.5〜5%(重量/容積)に調整することを特徴とする、レバミピド結晶の眼科用水性懸濁溶液の製造方法。
【請求項14】
請求項1または5に記載の水性懸濁溶液に塩基を加えてpHを3〜7に調整し、分散および/または透析を行った後、pHを5〜7、レバミピドの濃度を0.5〜5%(重量/容積)に調整し、ろ過滅菌を行うことを特徴とする、無菌のレバミピド結晶の眼科用水性懸濁溶液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−519759(P2008−519759A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522862(P2007−522862)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【国際出願番号】PCT/JP2005/021178
【国際公開番号】WO2006/052018
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】