説明

無外傷性先端を有する注入カテーテル

【課題】閉塞内に流体を注入して、その閉塞を溶解し、そして血管の内側への閉塞の接着を低減させることによって閉塞を処置するための装置および方法の提供。
【解決手段】本発明は、無外傷性先端および閉塞中に流体を注入するように構成される少なくとも1つの送達ポートを有する注入カテーテルを提供することによって血管閉塞を処置するための、装置および方法に関する。注入される流体は、閉塞を希釈し、そして血管壁の脈管内膜への閉塞の接着を低減し、これによってその閉塞を移動させる。この工程において形成された塞栓は、除去のための塞栓除去カテーテルの中へと指向される。閉塞内に注入カテーテルを位置決定しそして固定するのを助けるための中央決めデバイスを利用する血管閉塞を処置するための装置および方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、血管閉塞を処置するための装置および方法に関し、そしてより具体的には、閉塞内に流体を注入しそしてその閉塞を押し出すように構成された、1つの無外傷性先端および少なくとも1つの送達ポートを有する注入カテーテルを提供することによって閉塞を処置するための、装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
介入を必要とする血管内閉塞は、種々の公知の医療技術を使用して処置され得る。これらの技術の各々において、処置部位で逆向性の流動能力を提供することが望ましくあり得る。このことは、処置の間に自由にされた塞栓を近位方向に流動させ、その結果、この塞栓は血管床内により深くには移動せず、そして梗塞形成および/または壊死を生じる、さらなる閉塞性事象を引き起こさない。
【0003】
血管閉塞を処置するための通常の公知技術は、閉塞の部位に溶解性薬剤を送達して、その閉塞を溶解する工程を包含する。このような溶解性薬剤と関連した1つの欠点は、出血を容易にし得ること、および/または血管壁に損傷を生じ得ることである。
【0004】
処置部位にこのような流体を送達するために、これまでに公知の注入ガイドワイヤまたはカテーテルが使用されている。例えば、Walkerらに対する米国特許第6,027,461号(Walker)は、近位末端および遠位末端、ならびにその間に延びる内腔を有する、管状の外側シースを記載し、ここで、このシースは遠位末端近くのシースの壁に配置された複数の注入ポートを備える。一体化した中心ワイヤは、外側シースの内腔の中に配置され、そして外側シースの遠位先端に固定されて、外側シースの押し出し能力を増加させる。外側シースの内壁と、一体化した中心ワイヤとの間に形成される輪は、注入内腔を規定し、これによって流体が注入内腔および外側シースの注入ポートを介して、血管処置部位に送達され得る。
【0005】
Walker特許において記載されるデバイスは、いくつかの欠点を有する。第一に、一体化した中心ワイヤ(これは、外側シースの内腔の中で固定される)は、外側シースの内部で比較的大きなプロフィールを備え、これは次いで注入内腔面積を低減し、そして外側シースの遠位末端への流体の移送を妨げ得る。このデバイスは、処置部位への薬物または溶解薬剤の導入を可能とするように構成されるが、上に注記したように、このような溶解薬剤の使用は出血を容易にし得る。さらに、注入ポートから出る流体は、外側シースに対して直交する方向で閉塞内に注入され、このことは、溶解工程の間に自由にされた塞栓を、その閉塞から下流方向に移動させる原因となり得、これによって患者の血管からこれら塞栓を除去することを困難にする。
【0006】
これまでに公知のシステムのこれらの欠点を見ると、閉塞内に流体を注入してその閉塞を溶解しそして血管の内側への閉塞の接着を低減させることによって閉塞を処置するための装置および方法を提供することが、望ましくあり得る。
【0007】
また、近位方向で閉塞内に流体を注入し、その結果形成される塞栓が近位方向に押し出され(urge)得ることによって閉塞を処置するための装置および方法を提供することが、望ましくあり得る。
【0008】
さらに、閉塞内に注入カテーテルを位置決めしそして固定するのを助けるための中央決めデバイスを利用する、血管閉塞を処置するための装置および方法を提供することが、望ましくあり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
(発明の要旨)
前述に鑑みて、本発明の1つの目的は、閉塞内に流体を注入してその閉塞を希釈しそして血管の内側への閉塞の接着を低減させることによって閉塞を処置するための、装置および方法を提供することである。
【0010】
本発明の1つの目的はまた、近位方向で閉塞内に流体を注入し、その結果形成される塞栓が近位方向に押し出され(urge)得ることによって閉塞を処置するための、装置および方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、閉塞内に注入カテーテルを位置決定しそして固定するのを助けるための中央決めデバイスを利用する血管閉塞を処置するための装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のこれらの目的および他の目的は、閉塞内に流体を注入するように構成される、遠位末端に配置される1つの無外傷性先端、および無外傷性先端から近位に配置される少なくとも1つの送達ポートを有するカテーテルを提供することによって、達成される。注入される流体は、閉塞を希釈および/または断片化し、そして血管壁の脈管内膜への閉塞の接着を低減させる。次いで、これは閉塞が取り除かれることを生じる。この工程において形成された塞栓は、塞栓除去カテーテルによって提供される逆向性流動能力を介した除去のため、塞栓除去カテーテルの中へと指向される。閉塞内に注入される流体を近位方向に指向する送達ポートは、角のついたテーパー形状を備え得る。さらに、閉塞内に注入カテーテルを位置決めしそして固定するために、注入カテーテルと組み合わせて中央決めデバイスが使用され得る。
【0013】
好ましい方法において、塞栓除去カテーテルは、閉塞から近位の患者の血管中に配置され、そして塞栓除去カテーテルの遠位末端に配置された閉塞性要素は展開されて、処置血管内の順向性の流動を閉塞する。次いで、塞栓除去カテーテルの内腔を通って逆向性の流動が、好ましくは、本明細書の以下に記載されるような動脈−静脈シャントを使用して、形成され得る。処置血管において形成された逆向性の流動を用いて、注入カテーテルは塞栓除去カテーテルを通って遠位に進められ、そして注入カテーテルの無外傷性先端は、閉塞を通って進められる。
【0014】
医師は、例えば、注入カテーテル上に配置された少なくとも1つの放射線不透過性マーカーバンドを使用しての蛍光検査法の下で、少なくとも1つの送達ポートが閉塞内に配置されるように注入カテーテルを位置決定する。流体は、注入カテーテルの内腔および送達ポートを介して閉塞中に注入される。注入される流体(これは好ましくは生理食塩水を含む)は閉塞を希釈し、この閉塞は赤血球が捕捉されるフィブリン網を含む。閉塞の希釈は、閉塞の組成を変更し得、そして閉塞と血管との間に潤滑性皮膜を提供し得、このことは、血管壁への閉塞の接着を効率的に低減し、これにより閉塞の除去を生じる。この工程の間に形成された塞栓は、構築された逆向性の流動に起因して、逆向性の様式で塞栓除去カテーテル内へと運ばれる。好ましい実施形態において、送達ポートはテーパー形状を備え、これは、注入された流体を近位方向に指向させ、その結果形成された塞栓は近位方向、すなわち塞栓除去カテーテルの向きに押し出され得る。
【0015】
代替の実施形態において、本発明の原理に従って構築された注入カテーテルは、複数の展開可能なストラットを有する中央決めデバイスと組み合わせて、使用され得る。中央決めデバイスは、収縮した状態で提供され、そして閉塞の近位に配置される。次いで、展開可能なストラットが展開されて中央決めデバイスを繋留し、そして注入カテーテルが中央決めデバイスを介して閉塞の中央位置の中へと導かれる。
【0016】
本発明のさらなる特徴、その本質および種々の利点は、添付の図面および以下の好ましい実施形態の詳細な説明より、さらに明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の原理に従って構築された装置の側面図を提供する。
【図2】図2は、処置血管において逆向性の流動能力を提供するための、好ましい装置の側面図を提供する。
【図3】図3は、血管閉塞を処置するために使用される図1―2の装置の横断面図を提供する。
【図4】図4は、本発明の原理に従って構築された、注入カテーテルの遠位末端の側面図を提供する。
【図5】中央決めデバイスと組み合わせて使用される、本発明の装置の横断面図を提供する。
【図6】図6は、図5の中央決めデバイスの遠位末端の断面図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
本発明は、閉塞内に流体を注入するように構成される、1つの無外傷性先端および少なくとも1つの送達ポートを有するカテーテルを提供することによって血管閉塞を処置するための、装置および方法に関する。注入される流体は閉塞を希釈し、そして血管の内側への閉塞の接着を低減し、これによって閉塞の押し出しを生じる。この工程において形成された塞栓は、安全な除去のための塞栓除去カテーテルの中へと指向される。
【0019】
図1を参照すると、本発明の原理に従って構築された装置の側面図が提供される。本発明の装置8は、好ましくは、近位末端および遠位末端を有する注入カテーテル10、およびその間に延びる内腔11を備える。注入カーテル10はさらに、遠位末端に配置される無外傷性先端12を備える。無外傷性先端12は、好ましくは白金コイルを備え、その結果、医師は、このコイルを使用して患者の脈管構造を位置確認し得、そしてさらに蛍光検査法の下で遠位末端を追跡し得る。
【0020】
注入カテーテル10は、好ましくは、捩れることなしに傷害を横断し得るように、軸方向に十分な押し出し能力を有するように構成され、一方、蛇行性の脈管構造を通って導かれるのに十分に可撓性である。取り外し可能なスタイレット(stylet)19(これは、内腔11の中で長手軸方向に進められるように構成される)は、必要に応じて、注入カテーテル10の挿入の間に内腔11の中に配置されて、押し出し能力を増強させ得る。あるいは、図3に関して本明細書中の以下に記載されるように、注入カテーテル10はまた、マイクロカテーテルと組み合わせて、慣用的なガイドワイヤを使用して処置部位に導かれ得る。
【0021】
注入カテーテル10はさらに、図1に示されるように、無外傷性先端12の近位に配置される、少なくとも1つの送達ポートを備え、そしてより好ましくは、注入カテーテル10の周りの円周に沿って間隔を開けた、4つ以上のポートを備える。送達ポート14は、注入カテーテル10の内腔11と流体連絡されている。図4に関して本明細書の以下に記載されるように、送達ポート14は、流体が近位方向で送達ポート14から出るように、角がつけられ得る。注入セグメント「x」は、本明細書の以下図4に示されるように、複数の放射線不透過性のマーカーバンドによって規定され得、これは、送達ポート14が閉塞内に配置される場所を、医師がより良好に視認するのを可能にする。
【0022】
注入カテーテル10の近位末端は、近位ハブ16に接続され、この近位ハブ16は好ましくは、注入手段(例えば、シリンジ(示さず))と注入カテーテル10の内腔11との間の流体連絡を可能にするルーアー(luer)取り付け部品を備える。あるいは、近位ハブ16は、注入ポンプ17に接続され得、この注入ポンプ17は、チューブ18を介して制御された速度で内腔11の中に流体が送達されることを可能にする。
【0023】
ここで図2を参照して、図1の装置8と組み合わせて使用されて、処置血管において逆向性の流動能力を提供し得、そして塞栓を除去し得る、好ましい装置1が記載される。図2において、塞栓保護装置25は、好ましくは、近位末端および遠位末端およびその間に延びる内腔31を有する塞栓除去カテーテル30、静脈戻りシース26、チューブ36、ならびに必要に応じて血液フィルター38および/または流動制御弁37を、備える。
【0024】
塞栓除去カテーテル30は、遠位閉塞要素32、近位うっ血ポート33(例えば、Touhy−Borstコネクタ)、膨張ポート35、および血液流出ポート34を、備える。チューブ36は、血液流出ポート34を流動制御弁37に接続し、そしてまた流動制御弁37を、フィルター38および静脈戻りシース26の血液流入ポート28に、接続する。塞栓除去カテーテル30のうっ血ポート33および内腔31は、図1の注入カテーテル10の進行を可能にするようなサイズにされる。
【0025】
静脈戻りシース26は、止血(hemostatic)ポート27、血液流入ポート28、ならびにポート27とポート28と先端29とを連絡する内腔を、備える。静脈戻りシース26は、それ自体が静脈誘導物カテーテルについて公知な様式で、構築され得る。チューブ36は、適切な長さの生体適合性物質(例えば、シリコーン)を含む。あるいは、チューブ36は省かれ得、そして塞栓除去カテーテル30の血液流出ポート34および静脈戻りシース26の血液流入ポート28は、フィルター38の末端、流動制御弁37または互いと嵌合するような長さにされ得る。なおさらなる代替の実施形態において、静脈戻りシース26は、完全に省かれ得、そして塞栓除去カテーテル30の近位部分は、患者の静脈の脈管構造の中に直接配置されるのに適合されるような長さにされ得る。なおさらなる代替として、静脈戻りシース26およびフィルター38が省かれ得る。この選択肢は、流体の連続供給が血液希釈を生じるのに十分な速度で装置8を介して提供される場合に、望ましくあり得る。
【0026】
使用において、塞栓除去カテーテル30は、閉塞の近位の位置までガイドワイヤ(示さず)の上を進められる。次いで、閉塞要素32は、好ましくは放射線不透過性の造影剤を使用して、膨張ポート35を介して膨張され、そしてガイドワイヤが取り外され得る。患者の大脳の脈管構造(例えば、中央大脳動脈)に位置する閉塞に対して、閉塞要素32が大脳閉塞の半球上の患者の総頸動脈(CCA)中で展開されることが、好ましい。この筋書において、一旦閉塞要素32がCCA中で展開されると、外頸動脈(ECA)内の流動は反転し、そして内頸動脈(ICA)のより低い血液動態抵抗に起因して、ICAの中へと順向性の流動を提供する。
【0027】
次いで、静脈戻りシース26は、経皮的にかまたは外科手術の静脈切開(cut−down)を介するかのいずれかで、患者の大腿静脈の中に導入される。フィルター38および/または流動制御弁37は、塞栓除去カテーテル30の血液流出ポート34と静脈戻りシース26の血液流入ポート28との間をチューブ36を使用して接続され得、そしてラインから任意の気泡が取り除かれる。一旦この回路が閉じられると、拡張期の間の静脈シースにおける負圧は、カテーテル30の内腔31を通って、静脈戻りシース26を介して患者の静脈までの、低速の血液の連続流動を構築する。
【0028】
この時点において、低いプロフィールのバルーン(示さず)は、例えば、出願人が共通譲渡され、同時係属中の米国特許出願第09/972,225号において記載される装置および方法を使用して、ECA中で膨張されてECAからの流動を妨げて、ICA中へと順向性様式で運搬される。ECA中での低プロフィールバルーンの展開は、拡張期の間の静脈戻りシース26における負圧と組み合わせて、ICAおよび選択された大脳位置において、逆向性流動動態を構築する。
【0029】
静脈圧と動脈圧との間の差異に起因した、ICA中のこの連続性の逆向性流動は、介入工程の全域にわたって継続する。具体的には、血液は塞栓除去カテーテル30の内腔31および血液流出ポート34を通り、生体適合性チューブ36を通って流動制御弁37および/またはフィルター38まで通過し、そして静脈戻りシース26の血液流入ポート28の中へと通り、ここで、血液は遠隔の静脈の中へと再灌流される。フィルター濾過された塞栓はフィルター38に集合し、そして工程の完了の際に研究され得そして特徴付けられ得る。使用の間、スイッチ39(これは、流動制御弁37に接続される)を使用して、塞栓除去カテーテルの内腔31と、静脈戻りシース26の内腔との間の流体連絡を選択的に阻害し得る。
【0030】
図3を参照すると、血管閉塞を処置するために、図1の装置8を使用するための方法が記載される。第一の方法工程において、図2の塞栓除去カテーテル30は、収縮した状態で閉塞要素32と共にガイドワイヤ(示さず)の上に沿って、患者の血管の中に導入され得る。次いで、塞栓除去カテーテル30の遠位末端が、閉塞Sの近位位置に配置され、そして閉塞要素32が展開される。閉塞要素32は、好ましくはバルーンであり、これは、図2の膨張ポート35を介して展開される。閉塞要素32の展開は、血管V内の順行性流動をふさぐのに役立つ。逆行性流動は、好ましくは図2に関して本明細書中で上記した自然吸引技術を使用して、塞栓除去カテーテル30の内腔31を通って提供される。この技術において、静脈戻りシース26は、離れた動脈中に配置され、そして静脈圧と動脈圧との間の差異が、血管V内で連続したレベルの逆行性流動をもたらす。処置血管Vにおける流動の向きは、図3中の矢印によって示され、これは、塞栓除去カテーテル30に向かう。患者の大脳脈管構造(例えば、中大脳動脈)に位置する閉塞Sに対して、閉塞要素32が患者の通常の頸動脈中で展開されることが、好ましい。
【0031】
制御された流動が処置血管V中に提供された状態で、次いで、注入手段(例えば、シリンジ(示さず)または代替的に図1の注入ポンプ17のチューブ18)が近位ハブ16と接続される。この注入手段は、好ましくは、生理食塩水を提供するが、代替的に溶解性薬剤を提供し得る。近位ハブ16に接続された注入手段を用いて、注入カテーテル10は、止血ポート33および塞栓除去カテーテル30の内腔31を通って遠位に進められる。注入カテーテル10は、無外傷性先端12を介して処置部位へと遠位に導かれる。血管V中に構築された逆行性流動を用いて、無外傷性先端12は、図3に示されるように、閉塞Sを通って遠位に進められる。
【0032】
代替的な方法工程において、注入カテーテル10は、ガイドワイヤおよびマイクロカテーテル(示さず)を使用して、閉塞Sを通って導かれ得る。この方法工程において、塞栓除去カテーテル32の閉塞要素32を展開してそして処置血管V中の逆行性流動を構築した後、次いで、慣習的なガイドワイヤ(示さず)が閉塞Sを貫通する。次いで、注入カテーテル10の外径より大きな内径を有するマイクロカテーテル(示さず)が、内腔31を通るガイドワイヤ上に沿って、そして閉塞Sを通って進められる。次いで、このガイドワイヤが、マイクロカテーテル内から取り外され、そして注入カテーテル10がこのマイクロカテーテルを通って閉塞の遠位位置へと遠位に進められる。このマイクロカテーテルは、図3に示されるように位置決めされた注入カテーテルを残して、取り外される。
【0033】
注入カテーテル10は、好ましくは、従来のガイドワイヤに類似した、軸方向の押し出し能力特性を備えるように構成されるが、除去可能スタイレット19は、必要に応じて、注入カテーテル10の押し出し能力さらに増強するために、内腔11内に配置され得る。除去可能スタイレット19が使用される場合、除去可能スタイレット19が内腔11内から取り外された後、次いで、注入手段(例えば、注入ポンプ17のチューブ18)が近位ハブ16に接続される。
【0034】
次いで、注入カテーテル10の遠位末端は、好ましくは、少なくとも1つの送達ポート14が閉塞S内に配置されるように位置決めされる。近位放射線不透過性マーカー47および遠位放射線不透過性マーカー49(これらは、図4に関して本明細書中の以下に記載される)を使用して、閉塞S内での送達ポート14の位置づけを容易にし得る。この時点で、流体20は、内腔11に接続された注入ポンプ17を介して所望の圧力で送達ポート14に送達され得る。流体20は、図3に示されるように、送達ポート14を通って出てくる。
【0035】
流体20の注入は、赤血球が捕捉されるフィブリン網を代表的に構成する、閉塞Sを希釈および/または断片化する。閉塞Sの希釈は、閉塞Sの組成を変更してこの閉塞と血管壁との間の潤滑性皮膜を提供することが、期待される。このことは、血管Vの最も内側への閉塞Sの付着を低減する。そして結局、閉塞Sを移動させる。この工程の間に形成された塞栓Eは、構築された逆行性流動に起因して、除去のための塞栓除去カテーテル30の方向に向けられる。
【0036】
好ましい実施形態において、送達ポート14は、図3に示されるような近位方向で閉塞Sの中に流体20を注入するため、本明細書中以下の図4に示されるような、角のついたテーパーを含む。さらに、流体20が閉塞Sの中に注入されそして塞栓Eを自由にする工程の間、例えば、塞栓除去カテーテル30の近位末端に接続されたシリンジ(示さず)を使用して、サクション補助された吸引が、内腔31を通って提供されて、内腔31の中に塞栓Eを指向するのを補助し得る。
【0037】
注入カテーテル10は、閉塞Sの中で選択された領域を標的化するため、流体20の注入の間、再び位置決めされ得る。一旦、閉塞Sがうまく移動されたら、注入カテーテル10は、塞栓除去カテーテル30の内腔31の中で近位に向けて収縮され得、そして患者の血管から取り外され得る。塞栓除去カテーテル30は、その後所望の時間の間、依然として血管Vの中で逆行性流動を提供し、全ての塞栓Eが除去されるのを確実にする。この工程の完了の際、閉塞要素32は展開され、そして塞栓除去カテーテル30が患者の血管から取り外される。
【0038】
ここで図4を参照すると、本発明に従って構築された注入カテーテルの遠位末端の側面図が記載される。近位末端および遠位末端およびその間に延びる内腔41を有する注入カテーテル40は、遠位末端に配置された無外傷性先端42を備える。注入カテーテル40は、以下に注記されることを除き、図1の注入カテーテル10に従って構築される。
【0039】
図4において、注入カテーテル40は、無外傷性先端42の近位に配置された、少なくとも1つの送達ポート44を備える。さらに、注入カテーテル40は、閉塞内で送達ポート44を位置決めするのを助けるために、無外傷性先端42の近位に配置された、少なくとも1つの放射線不透過性マーカーを備える。好ましい実施形態において、送達ポート44は、近位放射線不透過性マーカーバンド47と遠位放射線不透過性マーカーバンド49との間に配置される。近位放射線不透過性マーカーバンド47および遠位放射線不透過性マーカーバンド49を使用して、注入セグメント「x」を規定し得、これは、蛍光顕微鏡観察の下で送達ポート14が閉塞内に配置される領域を、医師が視認するのを可能にする。
【0040】
少なくとも1つの送達ポート44は、閉塞の中に注入される流体に、カテーテルの長手軸に対して斜角を形成する軌道を有する射出(jet)を形成するように、注入カテーテルの側壁において配置される。送達ポート44のこの方向決めは、本明細書中以後で「角のついたテーパー」といわれる。この角のついたテーパーは、閉塞の希釈を増強し、そして/または近位方向に塞栓を動かす。好ましい実施形態において、少なくとも1つの送達ポート44は、近位テーパー45を備え、これは、図4に示すように、近位方向で流体50を注入させる。近位方向で閉塞の中に流体50を注入させることによって、閉塞の破壊の間に形成された塞栓は、近位方向に動かされ得る。送達ポート44は図4において環状構造を有するように記載されるが、代替的に、送達ポート44は、流体50の注入特性に影響を与え得る、楕円形状または他の構造を備え得ることが、当業者によって理解される。
【0041】
図5を参照すると、本発明の注入カテーテルと組み合わせて使用され得る、中央決めデバイスの側断面図が提供される。中央決めデバイス60(これは、近位末端および遠位末端およびその間に延びる内腔61を有する)は、図5に示されるように、遠位末端に配置される、複数の展開可能なストラット62を備える。展開可能なストラット62は、好ましくは、近位末端および遠位末端およびその間に延びる内腔を有する外側シース63の中に収縮される場合に、収縮された状態で提供される。展開可能なストラット62は、好ましくは、外側シース63が近位に引き込められる場合に予め決められた形状に展開可能なストラット62を自己展開させる、形状記憶合金(例えば、ニッケル−チタン合金)を含む。図6の横断面図から示されるように、展開可能なストラット62は、好ましくは、中央決めデバイス60の周りに対称性に配置され、そしてさらに、展開された状態で処置血管Vの内壁と嵌合するようにサイズ決めされる。
【0042】
中央決めデバイス60は、好ましくは、塞栓除去カテーテル30および注入カテーテル40と組み合わせて使用される。この実施形態において、外側シース63の外径は、塞栓除去カテーテル30の内腔31の内径より小さく、一方、中央決めデバイス60の内腔61の内径は、注入カテーテル40の外径より大きい。
【0043】
使用において、図2に関して本明細書中で上記したように、塞栓除去カテーテル30は、閉塞に近位の患者の血管の中に配置され、そして逆行性流動が内腔31を通って構築される。次いで、ガイドワイヤ(示さず)が、閉塞Sのすぐ近位位置で位置決めされる。中央決めデバイス60(外側シース63内で収縮した状態で提供される、展開可能ストラット63を有する)は、閉塞Sのすぐ近位の位置へとガイドワイヤの上に沿って遠位に進められる。次いで、図5に示されるように、外側シース63が近位に引き込められて、展開可能ストラット62を自己展開する。この時点で、ガイドワイヤは中央決めデバイス60の内腔61内から取り外される。
【0044】
中央決めデバイス60を閉塞Sのすぐ近位に展開した状態で、次いで、注入カテーテル40が、中央決めデバイス60の内腔61を通って遠位に進められる。無外傷性先端42は、中央決めデバイス60によって導かれ、閉塞Sを貫通し、その結果、これは、図5に示されるように、中央軸に沿って閉塞Sを横切る。図1の取り外し可能なスタイレット19は、必要に応じて、配置の間に注入カテーテル40の押し出し能力を増強するように、内腔41内に配置され得る。近位放射線不透過性マーカーバンド47および遠位放射線不透過性マーカーバンド49を使用して、閉塞S内の所望の位置に送達ポート44を位置決めし得る。
【0045】
この時点で、流体50(これは、好ましくは生理食塩水を含む)は、例えば、注入ポンプ17のチューブ18または代替的にシリンジ(示さず)を使用して、図1の内腔41および近位ハブ16を介して送達ポート44に送達され得る。送達ポート44の角のついたテーパー45は、好ましくは、流体50を近位方向で閉塞Sの中に注入させる。図3に関して本明細書中で上記したように、流体の注入は、閉塞を希釈する。この閉塞の希釈は、閉塞の組成を変更し得、そして閉塞と血管壁との間に潤滑性皮膜を提供し得、これは、血管の最も内側への閉塞の接着を低減し、そしてその閉塞を移動させる。注入工程の間、中央決めデバイス60は、血管Vの中央位置に注入カテーテル40を固定するのに役立つ。流体50が注入される圧力は、例えば図1の圧力制御デバイス17を使用して、医師によって制御され得るかまたはモニタリングされ得る。
【0046】
流体50の注入の間に形成された任意の塞栓Eは、前もって構築された逆行性流動に起因して、塞栓除去カテーテル30へと逆行性様式で指向される。展開可能なストラット62は、図6に示されるように、展開される場合に完全には血管を閉塞しないので、逆行性血流および塞栓Eは、展開可能なストラット62を通って塞栓除去カテーテル30へと指向される。
【0047】
閉塞Sが満足いくように破壊された場合、注入カテーテル40は中央決めデバイス60の内腔61を通って近位に引き込められ得る。造影剤が、例えば内腔61を介して処置部位に送達されて、蛍光顕微鏡観察の下で血管の開放度を確認し得る。開放度が十分に回復される場合、外側シース63は、中央決めデバイス60の上に沿って遠位に進められて、シース63内で展開可能ストラット62を折りたたみ得る。次いで、中央決めデバイス60および外側シース63は、患者の血管から取り外され得、そして引き続いて、塞栓除去カテーテル30が患者の血管から取り外され得る。
【0048】
本発明の好ましい例示の実施形態が上記されるが、種々の変更および改変が本発明から逸脱することなくなされ得ることは、当業者に明らかであろう。添付の特許請求の範囲は、本発明の真なる本質及び範囲の中に帰結する、このような全ての変更および改変を含むことが、意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管壁に接着した血管閉塞を破壊するのに適した装置であって、該装置は、以下:
近位末端および遠位末端ならびにそれらの間に延びる内腔、該遠位末端に配置された無外傷性先端、ならびに該内腔と流体連絡される該無外傷性先端の近位に配置される少なくとも1つの送達ポート、を有する注入カテーテルを備え、
ここで、該注入カテーテルは、該血管壁の脈管内膜への該閉塞の接着を流体が低減するように、該閉塞内に該流体を注入するよう構成される、装置。
【請求項2】
前記無外傷性先端が白金コイルを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
少なくとも1つの送達ポートが、前記注入カテーテルの長手軸に対して斜角を形成する流体射出を送達する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記送達ポートが流体を近位方向で排出させる、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記送達ポートが環状構造を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記注入カテーテルがさらに、前記無外傷性先端の近位に配置された、少なくとも1つの放射線不透過性マーカーバンドを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記送達ポートの近位に第1放射線不透過性マーカーバンドが配置され、そして該送達ポートの遠位に第2放射線不透過性マーカーバンドが配置される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記流体が生理食塩水である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記注入カテーテルの内腔内に長手軸方向に進められるように構成される、取り外し可能なスタイレットをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記注入カテーテルの内腔中に注入される流体の圧力を制御するように構成される注入ポンプをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
請求項1に記載の装置であって、近位末端および遠位末端ならびにそれらの間に延びる内腔を有する塞栓除去カテーテルをさらに備え、そして該遠位末端に配置される閉塞要素をさらに備え、ここで、該塞栓除去カテーテルの内腔が該注入カテーテルの長手軸方向の進行を可能にするようにサイズ決めされる、装置。
【請求項12】
前記塞栓除去カテーテルの内腔が患者の静脈管系と流体連絡される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
請求項11に記載の装置であって、近位末端および遠位末端およびその間に延びる内腔を有する静脈戻りシースをさらに備え、ここで、該静脈戻りシースが、前記塞栓除去カテーテルの内腔と流体連絡されそして患者の血管系中に配置されるように適合される、装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置であって、前記塞栓除去カテーテルと前記静脈戻りシースとの間に配置される弁をさらに備え、ここで、該弁が、該塞栓除去カテーテルの内腔と該静脈戻りシースの内腔との間の流体連絡を選択的に阻害するように構成される、装置。
【請求項15】
前記塞栓除去カテーテルと前記静脈戻りシースとの間に配置されるフィルターをさらに備える、請求項14に記載の装置
【請求項16】
血管壁に接着した閉塞を処置するのに適した装置であって、該装置は、以下:
近位末端および遠位末端ならびにそれらの間に延びる内腔、該遠位末端に配置された無外傷性先端、ならびに該内腔と流体連絡される該無外傷性先端の近位に配置される少なくとも1つの送達ポート、を有する注入カテーテル;ならびに
近位末端および遠位末端およびその間に延びる内腔を有する中央決めデバイスであって、該中央決めデバイスは該遠位末端に配置される複数の展開可能なストラットを備え、該内腔は該注入カテーテルが該内腔を通り抜けることを可能にするように適合される、中央決めデバイス
を備え、
ここで、該注入カテーテルは、該血管壁の脈管内膜への該閉塞の接着を流体が低減するように、該閉塞内に該流体を注入するように構成される、装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置であって、近位末端および遠位末端ならびにそれらの間に延びる内腔を有する外側シースをさらに備え、該外側シースが、該外側シース内に収縮した状態で展開可能なストラットを拘束するように構成される、装置。
【請求項18】
前記展開可能なストラットが展開した状態で前記血管壁に嵌合するようにサイズ決めされる、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記展開可能なストラットがニッケル−チタン合金を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
少なくとも1つの送達ポートが、前記注入カテーテルの長手軸に対して斜角を形成する流体射出を送達する、請求項16に記載の装置。
【請求項21】
前記送達ポートが流体を近位方向で排出させる、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記カテーテルが、無外傷性先端の近位に配置された、少なくとも1つの放射線不透過性マーカーバンドをさらに備える、請求項16に記載の装置。
【請求項23】
前記送達ポートの近位に第1放射線不透過性マーカーバンドが配置され、そして該送達ポートの遠位に第2放射線不透過性マーカーバンドが配置される、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
請求項16に記載の装置であって、近位末端および遠位末端ならびにそれらの間に延びる内腔を有する塞栓除去カテーテルをさらに備え、そして該遠位末端に配置される閉塞要素をさらに備え、ここで、該塞栓除去カテーテルの内腔が中央決めデバイスの長手軸方向の進行を可能とするようにサイズ決めされる、装置。
【請求項25】
血管壁に接着した閉塞を処置するための方法であって、該方法は、以下:
近位末端および遠位末端ならびにそれらの間に延びる内腔、該遠位末端に配置された無外傷性先端、ならびに該内腔と流体連絡される、該無外傷性先端の近位に配置される少なくとも1つの送達ポート、を有する注入カテーテルを提供する工程;
該閉塞を通って該無外傷性先端を進める工程;
該閉塞内の所望の位置に該送達ポートを位置決めする工程;ならびに
血管壁の脈管内膜への閉塞の接着を流体が低減するように、該送達ポートを介して該閉塞内に流体を注入する工程、を包含する、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、前記閉塞内の所望の位置に前記送達ポートを位置決めする工程が、以下:
無外傷性先端の近位位置で注入カテーテル上に配置された、少なくとも1つの放射線不透過性マーカーバンドを提供する工程;および
該閉塞内に該送達ポートの位置を決定するために、該放射線不透過性マーカーバンドを使用する工程、を包含する、方法。
【請求項27】
注入ポンプを使用して制御された圧力で前記閉塞内に流体が注入される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
請求項25に記載の方法であって、さらに以下:
近位末端および遠位末端およびその間に延びる内腔を有し、そして該遠位末端に配置される閉塞要素をさらに備える塞栓除去カテーテルを提供する工程であって、ここで、該塞栓除去カテーテルの内腔が該注入カテーテルの長手軸方向の進行を可能とするようにサイズ決めされる、工程;
血管中の順向性流動を閉塞するために、閉塞要素を展開する工程;
処置血管における流動特性に影響を与えるために、該塞栓除去カテーテルの内腔を通して逆向性流動を構築する工程;ならびに
該閉塞の中に流体の注入の間に形成される塞栓を、該塞栓除去カテーテルの中に指向させる工程
を包含する、方法。
【請求項29】
流体が近位方向で前記塞栓中に注入される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
請求項25に記載の方法であって、さらに以下:
近位末端および遠位末端、その間に延びる内腔、ならびに収縮した状態で該遠位末端に配置された展開可能な複数のストラットを有する中央決めデバイスを提供する工程;
前記閉塞の近位位置で該中央決めデバイスを位置決めする工程;
該複数のストラットを展開する工程;ならびに
該中央決めデバイスの内腔を通して前記注入カテーテルを進める工程、
を包含する、方法。
【請求項31】
請求項25に記載の方法であって、ここで、展開可能な複数のストラットを展開する工程が、収縮状態で該展開可能なストラットを拘束するために使用される外側シースを近位に収縮させる工程、を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−19941(P2011−19941A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−222570(P2010−222570)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【分割の表示】特願2003−587456(P2003−587456)の分割
【原出願日】平成15年4月17日(2003.4.17)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】