説明

無振動型パーツフィーダ

【課題】 従来からパーツフィーダは、ボウルに収納されているワークを振動によって逐次移動させ、ガイドに沿わせ整列させ、個別に摘出する方法が一般的に用いられている。しかし、この様な振動を伴う搬送のものでは、お互いに接触し擦り合うため、ワークの破壊に至り、また長時間の振動にて静電気を誘発するなど、精密な部品の搬送には大きな問題と成って居た。
【解決手段】 ホッパー5に収納されているワークを、上部から吊るした吸着グラブ1で吸着し、回転ステージ12の上に拡散配置する。次にワークをカメラにて撮像し、画像処理技術を用いて位置や傾き等を検出認識し、個別にP&P機構を用いて整列搬送する、無振動型のパーツフィーダである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーツフィーダに関するもので有り、ワーク(水晶ブランク)を逐次整列し送り出す方式を、カメラによる撮像を基に画像処理技術を用いて検出制御する事により、無振動にてワークを整列搬出させるものである。
【背景技術】
【0002】
従来からパーツフィーダは、ボウルに収納されているワークを振動によって逐次移動させ、ガイドに沿わせ整列させ、個別に摘出する方法が一般的に用いられている。この例として、特許文献1や、非特許文献1に開示されているものがある。
【特許文献1】 特許第2808061号
【非特許文献1】 シンフォニアテクノロジー株式会社:製品紹介:パーツフィーダ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のこの様な振動を伴う搬送のものでは、お互いに接触し擦り合うため、ワークの破壊に至り、また長時間の振動にて静電気を誘発するなど、精密な部品の搬送には大きな問題と成って居た。本発明はこの様な不都合を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するための請求項1の発明は、ホッパー内に収納してあるワークを、底部に多孔を備えた吸着ボックス(吸着グラブ)にて吸着し取り出し、其れをステージ上に適度に拡散配置させる事により、ホッパーからステージ上へ適量のワークを取り出すものである。
【0005】
また、請求項2の発明は、吸着グラブがホッパー内に下降しワークを吸着するが、その折に吸着グラブ低部がワークに接触した事を検知するセンサーを設ける事で、吸着グラブの下降動作を停止させ、ワークの破壊を防ぐものである。
【0006】
請求項3の発明は、ワークを載せるステージが回転やX−Y移動の機能を備える事で、ワークを個別に取り出すとき、其れを載せているステージを回転させたりX−Y移動させる事は、強いてはステージ上にあるワークを回転させたり、移動させる事に成り、この原理を用いてワークを整列させる事が可能に成る。
【0007】
請求項4の発明は、ワークを載せる回転ステージが複数存在する事で、ワーク搬出のタクトタイムの短縮を図るものである。ホッパーからワークを取り出し、一方の回転ステージ上にワークを拡散配置する。そしてカメラにてワークを撮像し、画像処理技術を用いて位置や傾き等を認識する。その情報を基に、回転ステージを回転し、X−Y移動させ、P&Pの吸着ピンの下に移動させ、整列搬出させる。この様な動作の中で、回転ステージが複数(今回は2台)存在する事により、一方がワークを搬出して居る間に、他の回転ステージでホッパーから新たにワークを移す作業を為す事が出来る。
【0008】
請求項5の発明は、ホッパーから回転ステージ上にワークを拡散配置させた時、まれにワークが重なってしまう場合がある。この様な時、該当するワークにエアーを吐出照射させ、重なりを排除させるものである。尚、これはカメラにて回転ステージ上のワークを撮像し、画像処理技術を用いて解析する事により、容易にワークの重なりが検出可能である事と、回転ステージが任意の位置や方向に移動する事により、可能に成るものである。
【0009】
請求項6の発明は、回転ステージ上にワーク(水晶ブランク)を拡散配置した場合、ワークが透明なものでは、上部に配置されているカメラに撮像が困難な場合がある。ワークが水晶ブランクで有る場合には、回転ステージを回転させる事で、上部に載って居るワークを回転させる事に成り、偏光板を通して光を照射する事で、全てのワーク(水晶ブランク)の像を鮮明に撮像する事が可能に成る。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、ワーク(水晶ブランク)を破壊する事無く、また、静電気の発生も寡少で、強いてはシステムの安定動作に繋がり、個別に整列搬送する事が可能に成る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、ワーク(水晶ブランク6)を収納したホッパー5と、ワークを吸着して掴む吸着グラブ1と、ワークを載せる回転ステージ12の関係を示します。ホッパー5にはワークが多量に収納され、その真上方向に吸着グラブ1が配置されて居る。吸着グラブ1の低部には、衝撃緩和機構2が備えられて居る。吸着グラブ1の上部には、吸着したワークを回転ステージ12の上に振い落すため、落下用バイブレータ3が具えて有る。これらを吊るし紐4で吊るし、吸着グラブ1全体を上下させる。回転ステージ12はホッパー5と吸着グラブ1の間に位置し、水平移動にて吸着グラブ1の真下に移動し、また退避を行う。通常の動作は以下に成る。吸着グラブ1が下降し、ホッパー5内のワーク(水晶ブランク6)を吸着する。そして吸着グラブ1を上昇させる。次に、回転ステージ12が吸着グラブ1の真下に移動してくる。その後吸着グラブ1の真空を破壊し、底部に吸引しているワーク(水晶ブランク6)を回転ステージ上に振い落とす。
【0012】
図2は、吸着グラブ1の低部に取り付けてある衝撃緩和機構2と、ワーク(水晶ブランク6)を吸引する吸引穴8の関係を示します。衝撃緩和機構2はスポンジなどの材料に静電気防止の導電性のあるものをコーティングした状態とします。吸引穴8は、その大きさと穴相互の間隔は、対象のワークの大きさに基づき決定されます。吸引穴はワークを一個吸着するものとし、30個ほどの穴を概ね中心部に配置して居ます。
【0013】
図3は、吸着グラブ1が上下移動をする機構と、吸着グラブがワーク(水晶ブランク6)に接触した時に、それを検出する接触センサー10との関係を示します。吸着グラブは吊るし紐4を通して、上下駆動回転機構9を経由し、バランサー11に接続して居ます。バランサーはその重さが概ね吸着グラブと同じにて、上下駆動時のテンションの偏りを緩和するように配慮して居ます。上下駆動回転機構はモータに直結し、吸着グラブの上下運動を可能に致します。接触センサー10は吊るし紐4の途中に位置し、吸着グラブがワークに接触した時に生じる微小な重量の変化を検出し、接触点として規定するものです。
【0014】
図4は、回転ステージ12と、ワーク(水晶ブランク6)と、P&P吸着ピンとの関係を示すものです。ワークを載せた回転ステージ12は、任意に回転と移動を為す事が出来る機構を具えて居ます。回転ステージ上のワークを取り出すとき、P&P吸着ピン14を用いて吸着して摘出するが、既にカメラによる撮像と画像処理にて検出して居る個別ワークの位置や傾きに基づき、回転ステージを回転移動させる事で、整列搬出を可能に致します。
【0015】
図5は、回転ステージ12が2台装備された場合の機構と、その動作に付いて示します。回転ステージは、其々が完全に独立して機能し、移動や回転が可能なように設計されている。一台の回転ステージがホッパー5からワークを取り出して居る時、もう一方の回転ステージはP&P吸着ピンにて、ワークの搬出動作を行う事が出来る。搬出側の回転ステージが空に成ったとき、回転ステージが相互に入れ替わり、其々が次の動作を継続して行う事により、回転ステージ入れ替えに伴う待ち時間を最小とする事が可能に成る。
【0016】
図6は、回転ステージ12の上に載って居るワーク(水晶ブランク6)で、重なって居るものを排除する機構を示すものです。回転ステージ上のワークは、画像処理技術にて、その位置や傾き、重なり具合などが認識されている。その情報に基づき回転ステージを回転、移動させ、エアー吐出ノズル15のエアー照射の効率の良い位置と方向に重なったワークを移動させ、エアーを照射する事により、重なりを排除するものである。尚、この時のエアー吐出の圧力、量などは、重なったワークの大きさ、位置、方向などの情報に、経験や実験に基づき学習し定めるものとする。
【0017】
図7は、回転ステージ12の上に載せたワーク(水晶ブランク6)が透明な場合、光源装置16から照射する光を偏光板17を経由して行い、回転ステージを回転させながら撮像する事で、ワークの像を鮮明に致すものである。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明に係る無振動型パーツフィーダは、工業的に量産する事が可能であるため、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 ホッパー、ワーク(水晶ブランク)、吸着グラブ、回転ステージの位置関係を示す図面で有る。
【図2】 吸着グラブ低部の衝撃緩和機構と、吸引穴の関係を示す図面で有る。
【図3】 吸着グラブを上下させる機構と、バランサーの関係を示す図面で有る。
【図4】 回転ステージ上にあるワークを整列して取り出す動作をイメージさせた図面で有る。
【図5】 2台の回転ステージを交互に移動させる事を示す図面で有る。
【図6】 ワークの重なりを排除する機構をイメージした図面で有る。
【図7】 回転ステージ上にあるワークを撮像するのに偏光板を用いて居る事を示す図面で有る。
【符号の説明】
【0020】
1 吸着グラブ:ホッパー内にあるワークを吸着して取り出すボックス
2 衝撃緩和機構:吸着グラブの低部に在り、ワークと接触する衝撃を緩和する事で、ワークの破壊を防止する機能
3 落下用バイブレータ:ワークを回転ステージ上に拡散配置する時、軽い振動を与え振い落す機能
4 吊るし紐:吸着グラブを上下させる駆動機構に繋がり、吊るす紐
5 ホッパー:ワークを収納する器
6 水晶ブランク:対象ワーク
7 バキュームチューブ:吸着グラブに繋がり、吸引するエアーを導く
8 吸引穴:ワークを吸引して保持する為のエアー吸引の穴
9 上下駆動回転機構:吸着グラブを上下移動させる動力機能
10 接触センサー:吸着グラブがワークに接触した事を検知するセンサー
11 バランサー:吸着グラブと概ね等しい重量の重しを持たせる事で、駆動機構の負荷を軽減する機能
12 回転ステージ:ワークを載せるもので、本発明の重要な部品
13
14 P&P吸着ピン:ワークを回転ステージ上から取り出す機構
15 エアー吐出ノズル:ワークの重なりを排除する時照射するエアー吐出ノズル
16 照射光源装置:回転ステージ上にあるワークを照射する光源
17 偏光板:光源からの光を直線偏光にする偏光板
18 撮像カメラ:回転ステージ上のワークを撮像する装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパー内のワーク(水晶ブランク)を吸着して掴む機構を保持する無振動型パーツフィーダ
【請求項2】
吸着グラブがホッパー内のワーク(水晶ブランク)に接触した事を検出するセンサー機構を設けた無振動型パーツフィーダ
【請求項3】
水晶ブランクを載せる回転ステージ(載台)で、回転、及びX−Y移動の機構を保持する無振動型パーツフィーダ
【請求項4】
回転ステージを1台、又は複数台保持する無振動型パーツフィーダ
【請求項5】
回転ステージ上に水晶ブランクが重なって在る場合、エアーを吐出照射させ、分離させる機構を備えた無振動型パーツフィーダ
【請求項6】
ワーク(水晶ブランク)をステージ上に載せ、ステージを回転させ、上部に配置したカメラにて撮像し、画像処理技術を用いてワークの位置や方向を検出する事を可能にした、無振動型パーツフィーダ

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−241592(P2010−241592A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105672(P2009−105672)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(709002107)
【Fターム(参考)】