説明

無摺動型ゲートバルブ

【課題】弁板による開口の開閉時に弁シールと弁シート面との摺動を生じない簡単な構成の無摺動型ゲートバルブを提供する。
【解決手段】エアシリンダ8の駆動ロッド9と弁シャフト7との間に、ガイド溝及びガイドローラ31a,31bからなる平行移動機構と、カム溝30及びカムローラ33からなる垂直移動機構とを介在させ、前記弁シャフト7を、前記平行移動機構で弁シート面10と平行に移動させたあと、前記垂直移動機構で前記弁シート面10に対して垂直に移動させることにより、弁板5の弁シール6を前記弁シート面10に垂直に接離させて前記開口3を開閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体処理装置における真空チャンバに取り付けられ、該真空チャンバに通じる開口の開閉に使用されるゲートバルブに関するものであり、更に詳しくは、前記開口を無摺動で開閉することができる無摺動型ゲートバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体処理装置においては、真空チャンバに通じる開口の開閉にゲートバルブが使用される。このゲートバルブは、一般に、開口を開閉する弁板と、該弁板に連結された弁シャフトと、該弁シャフトに連結されたエアシリンダとを有していて、該エアシリンダで前記弁シャフトを操作することにより、前記弁板の弁シールを前記開口の回りの弁シート面に接離させて該開口を開閉するものである。
【0003】
前記ゲートバルブには、前記弁シャフトを一点を支点として傾動させることにより弁板を開閉操作する方式と、前記弁シャフト及び弁板を弁シート面に対して垂直に移動させることにより該弁板を開閉操作する方式とがある。
【0004】
このうち、弁シャフトを傾けて弁板を開閉操作する方式のゲートバルブにおいては、前記弁シールが弁シート面に接触したあと、所定の押圧力を得るため弁シャフトの傾動を続けると、弁板が弁シート面に対して該シート面に沿う方向に変位するため、前記弁シールと弁シート面との間で擦れが発生したり、弁シールが装着溝内で回転したりし、摩耗粉が発生してバルブのクリーン化の弊害となるおそれがある。
【0005】
これに対し、弁シャフト及び弁板を弁シート面に対して垂直に移動させて該弁板を開閉操作する方式のゲートバルブは、弁シールと弁シート面との間で擦れが発生しないため、摩耗粉が発生する心配がない。特許文献1には、弁シールと弁シート面との間で擦れが生じない無摺動のゲートバルブが開示されている。このゲートバルブは、エアシリンダの駆動ロッド(推進軸)と弁シャフト(弁棒)との間に複数のリンクとカムフォロアとガイド溝とを介在させ、弁板を開放位置から開口に対向する位置まで該開口の回りの弁シート面に対して平行に移動させたあと、該弁シート面に対して垂直に移動させることにより前記開口を閉じるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−351419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記特許文献1に開示されたゲートバルブは、前記弁板を弁シート面に対して垂直に移動させるための機構を、複数のリンクとカムフォロアとガイド溝とを組み合わせて構成しているため、部品数が多くなって構造が複雑化し、動作も複雑であるという難点がある。
【0008】
本発明の目的は、カムを用いた簡単な機構をエアシリンダの駆動ロッドと弁シャフトとの間に介在させるだけで、前記弁シャフト及び弁板を弁シート面に対して垂直に移動させて開口を開閉することができる、無摺動型ゲートバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明によれば、開口を有する弁箱内に収容された弁板と、該弁板に取り付けられた弁シールと、前記弁板に連結された弁シャフトと、該弁シャフトに駆動ロッドが連結されたエアシリンダとを有し、該エアシリンダで前記弁シャフトを移動させることにより、前記弁板が、前記開口と非対向をなす全開位置から、前記開口に対向する対向位置を経て、前記開口の回りの弁シート面に弁シールを押し付けて該開口を閉じる閉鎖位置に移動するように構成されたゲートバルブが提供される。
このゲートバルブは、前記駆動ロッドと弁シャフトとを相対的に変位可能なるように連結する連結機構と、前記弁板及び弁シャフトを前記全開位置から対向位置に向けて前記弁シート面と平行に移動させる平行移動機構と、前記弁板及び弁シャフトを前記対向位置から閉鎖位置に向けて前記弁シート面に対して垂直に移動させる垂直移動機構とを有し、前記連結機構は、前記駆動ロッドに固定されたロッドアームと、前記弁シャフトに固定されたレバー部材と、該レバー部材と前記ロッドアームとの間に介設された圧縮ばねとを有し、前記平行移動機構は、前記ロッドアームに前記レバー部材の左側面と右側面とにそれぞれ対面するように固定された左右一対のカムフレームと、各カムフレームに前記弁シート面と平行に形成されたガイド溝と、前記弁箱が取り付けられたボンネットに固定の左右一対のローラフレームに取り付けられて前記ガイド溝に嵌合するガイドローラとを有し、前記垂直移動機構は、前記一対のカムフレームの各々に前記弁シート面に対して傾斜する向きに形成されたカム溝と、前記レバー部材の左側面と右側面とにそれぞれ取り付けられて前記カム溝に嵌合するカムローラとを有している。
【0010】
本発明において好ましくは、前記一対のカムフレームの各々に1つの前記ガイド溝と2つの前記カム溝とが形成され、前記レバー部材の左側面と右側面とにそれぞれ2つの前記カムローラが取り付けられていることである。
この場合、前記カムフレームの幅方向の一半側に前記ガイド溝が前記弁シャフトの軸線と平行に形成され、前記カムフレームの幅方向の他半側に前記カム溝が前記弁シャフトの軸線に沿って2段に配設されていても、前記カムフレームの前記ローラフレームに対面する外面に前記ガイド溝が前記弁シャフトの軸線と平行に形成され、前記カムフレームの前記レバー部材に対面する内面に前記カム溝が前記弁シャフトの軸線に沿って2段に配設されていても良い。
【0011】
本発明において、前記ガイド溝は一端が開放する溝であり、前記左右のローラフレームの各々に複数の前記ガイドローラが取り付けられ、前記弁板の全開位置で少なくとも1つのガイドローラが前記ガイド溝に嵌合し、前記弁板の対向位置及び閉鎖位置で全てのガイドローラが前記ガイド溝に嵌合することが望ましい。
また、本発明において、前記エアシリンダは、前記ボンネットに固定された状態で前記弁シャフトの左側と右側とに1つずつ設けられ、2つのエアシリンダから延出する2つの前記駆動ロッドに前記ロッドアームが取り付けられ、シリンダハウジングが前記ローラフレームを兼ねていても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゲートバルブは、弁板を弁シート面に対して垂直に移動させて弁シールを該弁シート面に接離させる方式であるため、該弁シールと弁シート面との間で擦れが発生したり、弁シールが装着溝内で回転したりすることがなく、摩耗粉の発生を確実に防止することができる。
しかも、前記弁板の開閉動作を、カムを用いた簡単な機構を駆動ロッドと弁シャフトとの間に介在させることにより、エアシリンダの直進動作だけで実現させているので、操作機構の構造が簡単で部品数も少なくて済み、シール力も大きい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るゲートバルブの第1実施形態を示す図2のI−I線に沿った断面図で、左半部は弁板が開弁位置にある状態を示し、右半部は弁板が対向位置にある状態を示すものである。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1の要部を分解して示す斜視図である。
【図4】図1の左半部側の縦断面図である。
【図5】図1の右半部側の縦断面図である。
【図6】弁板が閉鎖位置にある状態を示す、図1の右半部と同様の断面図である。
【図7】図6の縦断面図である。
【図8】弁板が閉鎖位置にあるときの停止ローラと当接部との位置関係を示す要部の側面図である。
【図9】本発明に係るゲートバルブの第2実施形態を示す図1と同様の断面図で、左半部は弁板が開弁位置にある状態を示し、右半部は弁板が対向位置にある状態を示すものである。
【図10】図9において弁板が閉鎖位置に移動した状態の縦断面図である。
【図11】本発明に係るゲートバルブの第3実施形態を示す図12のXI−XI線に沿った断面図で、左半部は弁板が開弁位置にある状態を示し、右半部は弁板が対向位置にある状態を示すものである。
【図12】図11のXII−XII線に沿った断面図である。
【図13】図11の左半部側の縦断面図である。
【図14】図11の右半部側の縦断面図である。
【図15】弁板が閉鎖位置にある状態を示す、図11の右半部と同様の断面図である。
【図16】図15の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1−図8は本発明に係る無摺動型ゲートバルブの第1実施形態を示すものである。このゲートバルブ1Aは、半導体処理装置における真空チャンバに取り付けられて該真空チャンバに通じる開口を開閉するもので、前記開口3を有する弁箱2と、該弁箱2内に収容された弁板5と、該弁板5に取り付けられた弁シール6と、前記弁板5に連結された弁シャフト7と、該弁シャフト7に駆動ロッド9が連結されたエアシリンダ8とを有し、該エアシリンダ8で前記弁シャフト7を移動させることにより、前記弁板5が、前記開口3と非対向の位置で該開口3を全開にする全開位置(図1左半部及び図4参照)と、前記開口3に対向するが閉じていない対向位置(図1右半部及び図5参照)と、前記開口3の回りの弁シート面10に弁シール6を押し付けて該開口3を閉じる閉鎖位置(図6及び図7参照)とを占めるように構成されている。
【0015】
前記弁箱2は、図1及び図4から分かるように四角い箱形をしていて、相対する前後の壁2a,2bに横に長い矩形の前記開口3と開口4とが形成され、該弁箱2の内部に、前方の壁2aの開口3を開閉する横に長い矩形の前記弁板5が収容されている。
【0016】
前記前方の壁2aの内面には、前記開口3を取り囲む矩形あるいは長円形の平坦面からなる前記弁シート面10が形成され、前記弁板5の前面には、前記弁シート面10に当接して前記開口3を閉じる矩形あるいは長円形の前記弁シール6が装着されている。
【0017】
前記弁板5の中央部には、円柱状をした前記弁シャフト7の上端が連結され、該弁シャフト7の下端部は、前記弁箱2の底部に気密に固定されたボンネット11の中央の筒部11aを貫通し、前記弁箱2から下向きに延出しており、該下端部に、矩形の断面形状を有するレバー部材12が固定されている。該レバー部材12の下端部は、前記弁シャフト7の下端部より若干下方に突出している。前記弁シャフト7の軸線L1は前記弁シート面10と平行である。
【0018】
前記ボンネット11の筒部11aの端部に該筒部11aの内周側に張り出すように取り付けられた環状の取付部材15と、前記弁シャフト7の外周に前記弁板5に近接する位置で取り付けられた環状の取付部材16とに、前記弁シャフト7の上下動によって伸縮するベローズ17の一端と他端とが気密に連結され、このベローズ17で弁箱2の内部が外部から完全に遮断されている。
【0019】
前記ボンネット11の下面の前記弁シャフト7を挟んで相対する位置には、2つ前記エアシリンダ8が、駆動ロッド9の軸線L2を前記弁シャフト7の軸線L1と平行に向けた姿勢で取り付けられている。前記エアシリンダ8は、外周面の形状が矩形であるシリンダハウジング21と、該シリンダハウジング21の内部に前記軸線L2方向に摺動自在に収容されたピストン22と、該ピストン22に上端を連結された前記駆動ロッド9とを有し、前記シリンダハウジング21の上端が前記ボンネット11に固定され、該シリンダハウジング21の下端に取り付けられた端板23から前記駆動ロッド9が下向きに延出している。
【0020】
前記2つエアシリンダ8から延出する2つの駆動ロッド9,9の下端には、板状をしたロッドアーム24の一端と他端が固定されている。このロッドアーム24は、前記弁シャフト7及びレバー部材12の下端よりも下方の位置に水平に延在し、該ロッドアーム24の中央上面に形成された凹状のばね座24aと、前記レバー部材12の下面中央に形成された凹状のばね座12aとの間に、圧縮ばね25が介設されている。
【0021】
図3も参照して、前記ロッドアーム24の上面には、左右一対のカムフレーム28,28が、前記レバー部材12の左側面及び右側面にそれぞれ対面する配置で前記弁シャフト7の軸線L1と平行に固定され、各カムフレーム28に、1つのガイド溝29と2つのカム溝30,30とが該カムフレーム28を貫通した状態に形成されている。
前記ガイド溝29は、前記カムフレーム28の幅方向の一半側に、前記弁シャフト7の軸線L1と平行に形成され、該ガイド溝29の上端は外部に開放している。該ガイド溝29の溝幅は全長にわたり一定である。このガイド溝29は、前記カムフレーム28の前記エアシリンダ8側を向く外面側に、該カムフレーム28を貫通しない状態に形成されていても良い。
【0022】
一方、前記カム溝30は、前記弁シャフト7の軸線L1に対して傾斜する溝で、下方に行くほど次第に前記弁シート面10に近づく方向に傾斜している。そして、2つのカム溝30,30が、前記カムフレーム28の幅方向の他半側に、互いに同じ方向に同じ角度だけ傾斜した姿勢で相互に平行かつ上下2段に配設されている。
【0023】
前記2つのエアシリンダ8,8におけるシリンダハウジング21の、前記弁シャフト7側を向く内側面には、前記ガイド溝29に嵌合する2つの同じ大きさのガイドローラ31a,31bがそれぞれ取り付けられている。該2つのガイドローラ31a,31bは、上下に離れた位置に配置されていて、前記弁板5及び弁シャフト7が前記全開位置にあるときには、下方の第1ガイドローラ31aだけが前記カムフレーム28のガイド溝29に嵌合し、前記弁板5及び弁シャフト7が前記対向位置に向けて移動すると、該対向位置近くで前記第2ガイドローラ31bも前記ガイド溝29に嵌合し、このガイドローラ31a,31bにより、前記弁シャフト7の軸線L1が前記弁シート面10と平行に保たれた状態で、該弁シャフト7及び弁板5が、前記全開位置から前記対向位置まで前記弁シート面10と平行に移動させられるようになっている。
【0024】
従って、前記カムフレーム28とガイド溝29とガイドローラ31a,31bとは、前記弁シャフト7及び弁板5を前記全開位置から対向位置に向けて前記弁シート面10と平行に移動させるための平行移動機構を構成するものである。
なお、前記シリンダハウジング21は、その一部が前記ガイドローラ31a,31bを取り付けるためのローラフレームを兼ねている。従って、以下の説明において、シリンダハウジング21の前記ガイドローラ31a,31bが取り付けられている部分を「ローラフレーム32」と呼ぶこともある。しかし、このローラフレーム32は、前記シリンダハウジング21と別体に形成することもできる。
【0025】
また、前記レバー部材12の左側面及び右側面には、前記カムフレーム28の2つのカム溝30,30に嵌合する2つのカムローラ33,33がそれぞれ取り付けられている。該2つのカムローラ33,33は、上下に離れた位置に配置されていて、前記2つのカム溝30,30に個別に嵌合し、前記全開位置及び対向位置においては前記圧縮ばね25のばね力で各カム溝30の上端に押し付けられている。
【0026】
そして、後述する停止機構により前記弁シャフト7が前記対向位置に停止させられている状態で、前記カムフレーム28が上昇すると、前記カム溝30の上昇により、前記カムローラ33が、傾斜する該カム溝30に押されて前記弁シート面10に近づく方向に該弁シート面10に対して垂直に移動し、それに伴って前記弁シャフト7及び弁板5も同じ方向に移動し、前記弁板5の弁シール6が前記弁シート面10に押し付けられて該弁板5が前記閉鎖位置を占めるようになっている。
従って、前記カム溝30と前記カムローラ33とは、前記弁シャフト7及び弁板5を前記弁シート面10に対して垂直に移動させるための垂直移動機構を構成するものである。
【0027】
前記停止機構は、前記レバー部材12に取り付けられた停止ローラ36と、前記ローラフレーム32に形成された当接部37とで構成されている。
前記停止ローラ36は、上方のカムローラ33の外側に同軸状に取り付けられていて、該カムローラ33より小径に形成されている。しかし、該停止ローラ36は前記カムローラ33と同径であっても良い。
【0028】
前記当接部37は、図8からも分かるように、前記ローラフレーム32の内側面に形成された凹溝38の上端部に形成されていて、該凹溝38内に前記停止ローラ36が嵌合している。前記凹溝38は、前記弁シャフト7の軸線L1と平行に延びていて、前記弁シャフト7が前記全開位置から前記対向位置に移動したとき、前記停止ローラ36が前記当接部37に当接して前記弁シャフト7がその位置に停止するようになっている。
【0029】
前記当接部37には、前記弁シート面10に対して垂直な平坦面37aが形成され、前記停止ローラ36が該当接部37に当接したあと前記弁シャフト7が前記対向位置から閉鎖位置に移動するとき、該停止ローラ36が、前記当接部37に対し、前記弁シャフト7と同じ方向に前記平坦面37aに沿って移動できるようになっている。このため、前記凹溝38の上端部には、移動した前記停止ローラ36を受け入れるための横溝部38aが形成されている。
【0030】
ここで、前記ロッドアーム24とレバー部材12との間に介設された前記圧縮ばね25は、前記弁板5と弁シャフト7及びレバー部材12との重量を支え得るばね力を有し、このばね力で前カムローラ33をカム溝30の上端に押し付けることにより、前記弁板5が前記全開位置から対向位置に移動するときには前記弁シャフト7とロッドアーム24とを一体化し、前記弁板5が前記対向位置から前記閉鎖位置に移動する際には圧縮されて前記弁シャフト7とロッドアーム24との相対的な移動を許容するものである。従って、該圧縮ばね25は、前記レバー部材12及び前記ロッドアーム24と共に、前記弁シャフト7と駆動ロッド9とを相対的に変位可能なるように連結するための連結機構を構成するものである。
【0031】
次に、前記構成を有するゲートバルブ1Aの動作について説明する。図1左半部及び図4は、前記弁板5が開口3から離れて弁箱2の下端部に待避した全開位置を占めている状態である。このとき、エアシリンダ8の駆動ロッド9は下向きに完全に伸張し、弁シャフト7及び弁板5は最大限下降した位置を占め、前記圧縮ばね25のばね力で各カムローラ33が各カム溝30の上端に押し付けられることにより、前記駆動ロッド9と弁シャフト7とが、前記ロッドアーム24とカムフレーム28とレバー部材12とを介して一体化した状態にあり、また、2つのガイドローラ31a,31bのうち下方の第1ガイドローラ31aがガイド溝29内に嵌合し、前記停止ローラ36は当接部37から離れて凹溝38の下部に位置している。
【0032】
なお、以下の説明において、相互に固定関係にある前記駆動ロッド9とロッドアーム24とカムフレーム28とを「ロッド側アセンブリ」と呼び、同様に固定関係にある前記レバー部材12と弁シャフト7と弁板5とを「シャフト側アセンブリ」と呼ぶ。
【0033】
前記全開位置の状態から、エアシリンダ8の上部ポート8aを外部に開放すると共に下部ポート8bに圧力エアを供給して前記駆動ロッド9を上昇させると、前記ロッド側アセンブリとシャフト側アセンブリとは互いに一体となって上昇し、図1右半部及び図5に示すように、前記弁板5は開口3に対向するが弁シール6は弁シート面10から離間している前記対向位置に達する。
【0034】
このとき、前記ロッド側アセンブリ及びシャフト側アセンブリの上昇初期においては、図4に示すように、ガイド溝29に嵌合している下方の第1ガイドローラ31aでカムフレーム28がガイドされることにより、前記弁シャフト7の軸線L1が前記弁シート面10と平行に保たれた状態で、前記ロッド側アセンブリ及びシャフト側アセンブリの前記弁シート面10に対する平行移動が行われる。そして、前記ロッド側アセンブリ及びシャフト側アセンブリが前記対向位置に近づくと、図5に示すように、前記第2ガイドローラ31bも前記ガイド溝29に嵌合し、これら2つのガイドローラ31a,31bによって前記ロッド側アセンブリ及びシャフト側アセンブリの平行移動がガイドされる。
【0035】
前記ロッド側アセンブリ及びシャフト側アセンブリが前記対向位置に到達すると、図8にも鎖線で示したように、前記停止ローラ36が前記凹溝38の上端の当接部37に当接することにより、前記シャフト側アセンブリはその位置に停止する。しかし、そのあとも前記ロッド側アセンブリは圧縮ばね25を圧縮して更に上昇を続けるため、前記カムフレーム28に形成されたカム溝30が前記カムローラ33に対して上昇する。このため、該カムローラ33は、傾斜する前記カム溝30の溝壁に押されて前記弁シート面10に近づく方向に該弁シート面10に対して垂直に移動し、該カムローラ33と一緒に前記シャフト側アセンブリも同じ方向に移動するため、図6及び図7に示すように、前記弁板5の弁シール6が前記弁シート面10に押し付けられて前記開口3が閉鎖され、該弁板5は閉鎖位置を占める。
【0036】
このとき、前記ロッド側アセンブリの前記対向位置から閉鎖位置への移動は、2つのガイドローラ31a,31bでカムフレーム28がガイドされることにより、前記弁シート面10と平行に行われ、また、前記弁シール6が弁シート面10に押し付けられるときの反力は、前記カムフレーム28を通じて前記2つのガイドローラ31a,31bにより受け止められる。
【0037】
また、前記停止ローラ36は、図8に実線で示すように、前記当接部37の平坦面37aに沿って前記カムローラ33と同じ方向に移動し、前記横溝部38a内に収容される。
【0038】
なお、前記弁板5が前記閉鎖位置を占めたとき、前記カムローラ33は前記カム溝30の下端に当接する位置まで必ず移動するとは限らず、弁シール6の押付力に応じて該カム溝30の下端より手前の位置で停止することもある。
【0039】
前記ゲートバルブ1Aを開放するときは、前記エアシリンダ8の下部ポート8bを外部に開放すると共に上部ポート8aに圧力エアを供給することにより、前記ゲートバルブ1Aを閉鎖するときと逆の動作が行われる。
このとき、最初は、前記圧縮ばね25のばね力で前記停止ローラ36が当接部37に当接した状態のまま、前記ロッド側アセンブリが下降するのと同時に前記圧縮ばね25が次第に伸張していくため、前記カムフレーム28及びカム溝30が下降して前記カムローラ33が弁シート面10から垂直に離れる方向に移動し、それによって前記弁シール6も該弁シート面10に対して垂直に離間し、前記ロッド側アセンブリは図1右半部及び図5に示す対向位置に移動する。
そしてそのあと、前記駆動ロッド9が更に下降することにより、前記ロッド側アセンブリとシャフト側アセンブリとは、一体となって図1左半部及び図4の全開位置まで移動する。
【0040】
かくして前記ゲートバルブ1Aは、弁板5が弁シート面10に対して垂直に移動して弁シール6を該弁シート面10に垂直に接離させるため、該弁シール6と弁シート面10との間で擦れが発生したり、弁シール6が装着溝内で回転したりすることがなく、摩耗粉の発生が確実に防止される。
しかも、前記弁板5の前記弁シート面10に対する垂直方向の開閉動作を、カム溝30とカムローラ33とを用いた簡単な方向変換機構を駆動ロッド9と弁シャフト7との間に介在させることで、エアシリンダ8の直進動作により実現させているので、開閉操作のための構造が簡単で部品数も少なくて済む。
【0041】
図9及び図10は本発明に係るゲートバルブの第2実施形態を示すもので、この第2実施形態のゲートバルブ1Bが前記第1実施形態のゲートバルブ1Aと相違する点は、停止機構を構成する停止ローラ36及び当接部37のうち、前記停止ローラ36が、レバー部材12に取り付けられた上下2つのカムローラ33,33のうち下方のカムローラ33と同軸に取り付けられ、前記当接部37が、ローラフレーム32の下端の凹段部40により形成されていること、及び、ベローズ17の配置が異なっていることである。
【0042】
即ち、前記凹段部40は、前記ローラフレーム32の内側面下端部の一部を凹状に切り欠き、その一部を前記当接部37及び平坦面37aとしたものである。
また、前記ベローズ17は、その上端が、ボンネット11の内周面に固定された環状の取付部材41に気密に連結され、該ベローズ17の下端は、弁シャフト7と一体のレバー部材12の上端に気密に連結されている。
【0043】
この第2実施形態の前記以外の構成及び動作は前記第1実施形態と実質的に同じであるため、主要な同一構成部分に第1実施形態と同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0044】
図11−図16は本発明に係るゲートバルブの第3実施形態を示すもので、この第3実施形態のゲートバルブ1Cが前記第1実施形態のゲートバルブ1Aと相違する部分は、平行移動機構を構成するガイド溝29及びガイドローラ31a,31bと、垂直移動機構を構成するカム溝30及びカムローラ33と、停止機構を構成する停止ローラ36及び当接部37との構成である。そこで、以下の説明では、これら水平移動機構と垂直移動機構と停止機構とに関連する構成について説明する。
【0045】
図11及び図12に示すように、ロッドアーム24に固定された一対のカムフレーム28の各々には、その外側面と内側面との互いに背中合わせの位置に前記ガイド溝29とカム溝30とが形成されている。即ち、前記カムフレーム28の、ローラフレーム32に対面する外側面に、1つのガイド溝29が弁シャフト7の軸線L1に沿って上下方向に形成され、前記カムフレーム28の、レバー部材12に対面する内側面に、傾斜する2つのカム溝30,30が上下2段に形成されている。前記カム溝30及びガイド溝29の深さは、前記カムフレーム28の厚さの半分より浅い。前記ガイド溝29とカム溝30との位置は、カムフレーム28の幅方向に互いにずれていても構わない。
【0046】
そして、前記ローラフレーム32の内側面に、前記ガイド溝29に嵌合する2つのガイドローラ31a,31bが取り付けられ、前記レバー部材12の外側面に、前記2つのカム溝30,30に個別に嵌合する2つのカムローラ33,33が取り付けられている。
【0047】
前記カムフレーム28は、前記ロッドアーム24の幅方向の一端寄りの位置に偏寄させて固定されており、該カムフレーム28に対応するように前記ガイドローラ31a,31b及びカムローラ33も、前記ローラフレーム32及びレバー部材12の幅方向一端寄りの位置に偏寄させて取り付けられている。
また、前記ローラフレーム32の内側面には、前記カムフレーム28と競合しない位置に停止ローラ36が取り付けられ、前記レバー部材12の左右両側面には、前記停止ローラ36と対応する位置に上面が水平な平坦面37aをなす張出部12bが形成され、この張出部12bによって前記停止ローラ36が当接する当接部37が形成されている。
前記以外の構成は実質的に前記第1実施形態と同じであるので、主要な同一構成部分に第1実施形態と同じ符号を付してその説明は省略する。
【0048】
前記第3実施形態のゲートバルブ1Cの閉弁動作は、前記第1実施形態のゲートバルブ1Aと同様、図11左半部及び図13に示す全開位置の状態から、図11右半部及び図14に示す対向位置の状態を経て、図15及び図16に示す閉鎖位置の状態に至ることにより行われ、開弁動作は、それと逆の経路をたどることにより行われる。
このとき、前記ガイド溝29及びガイドローラ31a,31bにより、ロッド側アセンブリ及びシャフト側アセンブリの弁シート面10に対する平行移動がガイドされ、前記カム溝30及びカムローラ33により、シャフト側アセンブリの弁シート面10に対する垂直移動がガイドされる。この点も前記第1実施形態のゲートバルブ1Aと同じである。
【0049】
一方、停止機構を構成する停止ローラ36及び当接部37について、前記弁シャフト7に固定されたレバー部材12が前記全開位置から対向位置まで上昇すると、該レバー部材12に形成された前記当接部37の上面がローラフレーム32に取り付けられた前記停止ローラ36に当接し、その位置で該レバー部材12は停止する。そして、前記垂直移動機構の作用で弁シャフト7が閉鎖位置に向けて移動すると、前記レバー部材12が前記停止ローラ36に対して前記閉鎖位置の方向に相対的に移動する。
【0050】
なお、前記各実施形態においては、弁板5の開閉操作のために2つのエアシリンダ8が設けられているが、1つのエアシリンダだけを設け、このエアシリンダの駆動ロッドに前記ロッドアーム24を連結しても良い。
また、前記各実施形態においては、左右のローラフレーム32の各々に2つのガイドローラ31a,31bが取り付けられているが、このガイドローラは、各ローラフレーム32に3つ以上取り付け、弁板5の全開位置で一部のガイドローラを除いた少なくとも1つのガイドローラがカムフレーム28のガイド溝29に嵌合し、前記弁板5の対向位置及び閉鎖位置で残りのガイドローラが前記ガイド溝29に嵌合することによって全てのガイドローラが該ガイド溝29に嵌合するように構成することもできる。
【0051】
また、前記第1実施形態のゲートバルブにおけるベローズ17の配置を前記第2実施形態のゲートバルブに適用することもでき、その逆に、前記第2実施形態のゲートバルブにおけるベローズ17の配置を第1実施形態及び第3実施形態のゲートバルブに適用することもできる。
更に、ゲートバルブを真空状態で使用しない場合には、前記ベローズを省略することもできる。
【符号の説明】
【0052】
1A,1B,1C ゲートバルブ
2 弁箱
3 開口
5 弁板
6 弁シール
7 弁シャフト
8 エアシリンダ
9 駆動ロッド
10 弁シート面
12 レバー部材
24 ロッドアーム
25 圧縮ばね
28 カムフレーム
29 ガイド溝
30 カム溝
31a,31b ガイドローラ
32 ローラフレーム
33 カムローラ
L1 弁シャフトの軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する弁箱内に収容された弁板と、該弁板に取り付けられた弁シールと、前記弁板に連結された弁シャフトと、該弁シャフトに駆動ロッドが連結されたエアシリンダとを有し、該エアシリンダで前記弁シャフトを移動させることにより、前記弁板が、前記開口と非対向をなす全開位置から、前記開口に対向する対向位置を経て、前記開口の回りの弁シート面に弁シールを押し付けて該開口を閉じる閉鎖位置に移動するように構成されたゲートバルブにおいて、
前記ゲートバルブは、前記駆動ロッドと弁シャフトとを相対的に変位可能なるように連結する連結機構と、前記弁板及び弁シャフトを前記全開位置から対向位置に向けて前記弁シート面と平行に移動させる平行移動機構と、前記弁板及び弁シャフトを前記対向位置から閉鎖位置に向けて前記弁シート面に対して垂直に移動させる垂直移動機構とを有し、
前記連結機構は、前記駆動ロッドに固定されたロッドアームと、前記弁シャフトに固定されたレバー部材と、該レバー部材と前記ロッドアームとの間に介設された圧縮ばねとを有し、
前記平行移動機構は、前記ロッドアームに前記レバー部材の左側面と右側面とにそれぞれ対面するように固定された左右一対のカムフレームと、各カムフレームに前記弁シート面と平行に形成されたガイド溝と、前記弁箱が取り付けられたボンネットに固定の左右一対のローラフレームに取り付けられて前記ガイド溝に嵌合するガイドローラとを有し、
前記垂直移動機構は、前記一対のカムフレームの各々に前記弁シート面に対して傾斜する向きに形成されたカム溝と、前記レバー部材の左側面と右側面とにそれぞれ取り付けられて前記カム溝に嵌合するカムローラとを有する、
ことを特徴とする無摺動型ゲートバルブ。
【請求項2】
前記一対のカムフレームの各々に1つの前記ガイド溝と2つの前記カム溝とが形成され、前記レバー部材の左側面と右側面とにそれぞれ2つの前記カムローラが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のゲートバルブ。
【請求項3】
前記カムフレームの幅方向の一半側に前記ガイド溝が前記弁シャフトの軸線と平行に形成され、前記カムフレームの幅方向の他半側に前記カム溝が前記弁シャフトの軸線に沿って2段に配設されていることを特徴とする請求項2に記載のゲートバルブ。
【請求項4】
前記カムフレームの前記ローラフレームに対面する外面に前記ガイド溝が前記弁シャフトの軸線と平行に形成され、前記カムフレームの前記レバー部材に対面する内面に前記カム溝が前記弁シャフトの軸線に沿って2段に配設されていることを特徴とする請求項2に記載のゲートバルブ。
【請求項5】
前記ガイド溝は一端が開放する溝であり、前記左右のローラフレームの各々に複数の前記ガイドローラが取り付けられ、前記弁板の全開位置で少なくとも1つのガイドローラが前記ガイド溝に嵌合し、前記弁板の対向位置及び閉鎖位置で全てのガイドローラが前記ガイド溝に嵌合することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のゲートバルブ。
【請求項6】
前記エアシリンダは、前記ボンネットに固定された状態で前記弁シャフトの左側と右側とに1つずつ設けられ、2つのエアシリンダから延出する2つの前記駆動ロッドに前記ロッドアームが取り付けられ、シリンダハウジングが前記ローラフレームを兼ねていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のゲートバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−96557(P2013−96557A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242795(P2011−242795)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】