説明

無機塩回収による全生成物の製造用装置及び方法

【課題】不利な原油を望ましい特性を有する原油生成物に転化するために改良したシステム、方法、及び/又は触媒を提供する。
【解決手段】不利な原油から全生成物を製造すると共に、燃焼ガスから無機塩を回収するシステムであって、該システムは、担持無機塩触媒を原料、水蒸気及び水素源の存在下に流動化して全生成物を製造するように構成した接触帯;該接触帯から担持無機塩触媒の少なくとも一部を受取ると共に、担持無機塩触媒から汚染物の少なくとも一部を除去するように構成した再生帯;及び該再生帯から燃焼ガスを受取ると共に、燃焼ガスから無機塩の少なくとも一部を分離するように構成した回収帯を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般には原料の処理用システム及び方法、並びに例えばこのようなシステム及び方法を用いて製造される組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
経済的に輸送できないか、或いは慣用の設備を用いて経済的に処理できない1つ以上の特性を有する原油は、普通、“不利な原油”と言われている。
【0003】
不利な原油は多くの場合、比較的高レベルの残留物を含有する。このような原油は慣用の設備を用いて輸送及び/又は処理するのが困難で高価になる傾向がある。残留物の多い原油は高温処理してコークスに転化できる。或いは残留物の多い原油は、通常、高温において水で処理して粘度の低い原油及び/又は原油混合物としている。処理中、低粘度原油及び/又は原油混合物から水を除去するには、慣用の手段を用いたのでは困難かも知れない。
【0004】
不利な原油は、水素の不足した炭化水素を含有する可能性がある。水素不足の炭化水素を処理する際は、特に分解プロセスで生じる不飽和物が生成する場合、一般に一定量の水素を添加する必要がある。通常、活性水素化触媒を使用する処理中、水素化は、不飽和物によるコークスの形成を防止するためにも必要かも知れない。水素の製造に使用される改質のような方法は、一般に吸熱性で、通常、別途の加熱を必要とする。水素及び/又は加熱は、生成に費用がかかり、及び/又は処理施設への輸送に費用がかかる。
【0005】
不利な原油の処理中、触媒表面上に急速度でコークスが形成及び/又は堆積する可能性がある。コークスにより汚染された触媒の触媒活性を再生するのは高価になるかも知れない。再生に使用される高温は、触媒の活性を低下させ、及び/又は触媒を劣化させるかも知れない。
【0006】
不利な原油は、原油の全酸価(“TAN”)に関与する酸性成分を含有する可能性がある。比較的高いTANを有する不利な原油は、不利な原油の輸送及び/又は処理中に金属成分の腐食に関与する可能性がある。不利な原油からの酸性成分の除去は、酸性成分を種々の塩基で化学的に中和する工程を含んでよい。或いは輸送機器及び/又は処理機器に耐腐食性金属を使用してもよい。耐腐食性金属を使用すると、多くの場合、著しく高価となり、したがって、現存の機器に耐腐食性金属を使用するのは望ましくないかも知れない。他の腐食防止法は、不利な原油の輸送及び/又は処理前に不利な原油に腐蝕防止剤を添加する工程を含んでよい。腐蝕防止剤を使用すると、原油の処理に使用した機器及び/又は原油から製造した生成物の品質に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0007】
不利な原油は比較的多量の金属汚染物、例えばニッケル、バナジウム、及び/又は鉄を含有してよい。このような原油の処理中に金属汚染物、及び/又は金属汚染物の化合物は、触媒の表面又は触媒の空隙容積に堆積する可能性がある。このような堆積は触媒活性を 低下させる可能性がある。
【0008】
不利な原油は多くの場合、有機結合したヘテロ原子(例えば硫黄、酸素、及び窒素)を含有する。有機結合したヘテロ原子は、幾つかの場合は触媒に悪影響を及ぼす。アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、残留物の脱硫プロセスに使用されている。このような方法は、脱硫効率が低く、油不溶性スラッジを生成し、脱金属効率が低く、殆ど分離不能の塩―油混合物を形成し、大量の水素ガスを使用し、及び/又は水素圧が比較的高い傾向がある。
【0009】
原油の品質改良方法としては、不利な原油に希釈剤を添加して不利な特性に関与する成分の重量%を低下させる方法がある。しかし、希釈剤の添加は、一般に希釈剤のコスト及び/又は不利な原油の取扱いコストの増大により、不利な原油の処理コストを増大させる。幾つかの場合は、不利な原油に希釈剤を添加すると、原油の安定性を低下させる可能性がある。
【0010】
Pastemak等の米国特許3,847,797、King等の米国特許3,948,759、Fukui等の米国特許3,957,620、McCollum等の米国特許3,960,706、McCollum等の米国特許3,960,708、Baird Jr.等の米国特許4,119,528、Baird Jr.等の米国特許4,127,470、Heredy等の米国特許4,437,980、及びMazurek等の米国特許4,665,261(これらの文献はここに援用する)には、原油の処理に使用される各種方法及びシステムが記載されている。Wellington等の米国出願公告20050133405、同20050133406、同20050135997、同20050139512、同20050145536、同20050145537、同20050145538、同20050155906、同20050167321、同20050167322、同20050167323、同20050170952、及び同20050173298(これらの文献はここに援用する)には、原料を触媒の存在下で接触させて原油生成物を製造する方法が記載されている。しかし、これらの特許文献に記載される方法、システム及び触媒は、前述の多くの技術的問題のため、利用可能性が制限されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
要するに、不利な原油は一般に望ましくない特性(残留物が比較的多い、機器を腐蝕する傾向がある、及び/又は処理中、比較的多量の水素を消費する)を有する。他の望ましくない特性は、望ましくない成分を比較的多量に含む(例えばTAN、有機結合へテロ原子、及び/又は金属汚染物が比較的高い又は多い)ことである。これらの特性は、腐蝕の増大、触媒寿命の低下、プロセスの閉塞、処理中の水素の使用増大等、慣用の輸送及び/又は処理設備において問題を起こす傾向がある。したがって、不利な原油を一層望ましい特性を有する原油生成物に転化するために改良されたシステム、方法、及び/又は触媒が極めて経済的かつ技術的に要求される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
ここで説明した発明は、一般に原料を1種以上の触媒と接触させて、原油生成物及び幾つかの実施態様では非凝縮性ガスを含む全生成物を製造するシステム及び方法に関する。また、ここで説明した発明は、一般に新規な成分の組合せを含む組成物に関する。このような組合せは、ここで説明したシステム及び方法を用いて得ることができる。
【0013】
特定の実施態様では本発明は、担持(担持された)無機塩触媒を原料、水蒸気及び水素源の存在下に流動化して全生成物を製造するように構成した接触帯;該接触帯から担持無機塩触媒の少なくとも一部を受取ると共に、担持無機塩触媒から汚染物の少なくとも一部を除去するように構成した再生帯;及び該再生帯から燃焼ガスを受取ると共に、燃焼ガスから無機塩の少なくとも一部を分離するように構成した回収帯;を備えた全生成物の製造システムを提供する。
【0014】
特定の実施態様では本発明は、原料を接触帯に供給する工程;無機塩触媒を該接触帯に供給する工程;該接触帯において無機塩触媒を水素源及び水蒸気の存在下に原料と接触させて全生成物及び使用済み無機塩触媒を製造する工程;該使用済み無機塩触媒を加熱して該触媒から汚染物の少なくとも一部を除去する工程であって、使用済み無機塩触媒の加熱中、再生無機塩触媒及び燃焼ガスが生成する該工程、及び燃焼ガスから無機塩を回収する工程;を含む全生成物の製造方法を提供する。
【0015】
特定の実施態様では本発明は、原料を接触帯に供給する工程;無機塩触媒を該接触帯に供給する工程;該接触帯中で該無機塩触媒が流動化するように、無機塩触媒を水素源及び水蒸気の存在下に原料と接触させる工程;及び全生成物を製造する工程;を含む全生成物の製造方法を提供する。
【0016】
特定の実施態様では本発明は、原料を接触帯に供給する工程;担持された無機塩触を該接触帯に供給する工程;該接触対中で担持無機塩触媒を水素源及び水蒸気の存在下に原料と接触させる工程;及び全生成物を製造する工程;を含む全生成物の製造方法を提供する。
【0017】
特定の実施態様では本発明は、沸点範囲分布が343〜538℃の炭化水素を原料1g当たり合計含有量で0.9g以上含有する原料を接触帯に供給する工程;担持された無機塩触該接触帯中で該担持無機塩触媒が流動化するように、担持無機塩触媒を水素源及び水蒸気の存在下に原料と接触させる工程;及び原油生成物(但し、該原油生成物は沸点範囲分布が204〜343℃の炭化水素を原油生成物1g当たり合計含有量で0.2g以上含有する)を含有する全生成物を製造する工程;を含む全生成物の製造方法を提供する。
【0018】
特定の実施態様では本発明は、原料を1種以上の無機塩触媒及び水蒸気の存在下に水素源と接触させて全生成物を製造する工程;及び原料の炭化水素ガス及び炭化水素液体への転化率が、原料中の炭素のモル量に対し5〜50%となるように、接触条件を制御する工程;を含む全生成物の製造方法を提供する。
【0019】
特定の実施態様では本発明は、原料を1種以上の無機塩触媒及び水蒸気の存在下に軽質炭化水素と接触させて全生成物を製造する工程;軽質炭化水素の50%以上が回収されるように接触条件を制御する工程;及び全生成物中の水素対炭素の原子比(H/C)が原料中の水素対炭素の原子比(H/C)に対し80〜120%である全生成物を製造する工程;を含む全生成物の製造方法を提供する。
【0020】
特定の実施態様では本発明は、原料を接触帯に供給する工程;担持無機塩触媒を該接触帯に供給する工程;該担持無機塩触媒を接触帯中、水素源及び水蒸気の存在下に1000℃以下の温度及び4MPaの全操作圧力で原料と接触させる工程;及び全生成物を製造する工程;を含む全生成物の製造方法を提供する。
【0021】
特定の実施態様では本発明は、原料1g当たり硫黄を0.02g以上含む原料を1種以上の無機塩触媒及び水蒸気の存在下に水素源と連続的に接触させる工程;及びコークス及び原油生成物(但し、該原油生成物は、硫黄含有量が原料の硫黄含有量に対し90%以下であり、かつコークス含有量が原料1g当たり0.2g以下である)を含む全生成物を製造する工程;を含む全生成物の製造方法を提供する。
【0022】
更なる実施態様では、特定の実施態様の特徴を他の実施態様の特徴と組み合わせてよい。例えば或る一連の実施態様のいずれかの特徴を他の一連の実施態様のいずれかの特徴と組み合わせてよい。
【0023】
更なる実施態様では、全生成物は、ここに説明した方法及びシステムのいずれかにより得られる。
更なる実施態様では、ここに説明した特定の実施態様に追加の特徴を加えてよい。
【0024】
図面の簡単な説明
本発明の利点は、以下の詳細な説明により、更に添付の図面を参照して当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】原料を1種以上の触媒の存在下に水素源と接触させて全生成物を製造するための接触システムの一実施態様の概略図である。
【図2】原料を1種以上の触媒の存在下に水素源と接触させて全生成物を製造するための接触システムの他の一実施態様の概略図である。
【0026】
【図3】原料を1種以上の触媒の存在下に水素源と流動的に接触させて全生成物を製造するための接触帯の一実施態様の概略図である。
【図4】原料を1種以上の触媒の存在下に水素源と流動的に接触させて全生成物を製造するための接触帯の他の一実施態様の概略図である。
【0027】
【図5】接触帯に分離帯を組合わせた一実施態様の概略図である。
【図6】接触帯に配合帯を組合わせた一実施態様の概略図である。
【0028】
【図7】分離帯、接触帯及び配合帯の一実施態様の概略図である。
【図8】多数接触帯の一実施態様の概略図である。
【図9】イオン電導度測定システムの一実施態様の概略図である。
【0029】
【図10】TAPで測定した無機塩触媒放出ガスのイオン流対温度の対数プロットグラフである。
【図11】炭酸カリウムの抵抗と比べた場合の無機塩触媒及び無機塩の抵抗対温度の対数プロットグラフである。
【0030】
【図12】炭酸カリウムの抵抗と比べた場合のNACO/KCO/RhCO触媒の抵抗対温度の対数プロットグラフである。
【図13】原料を無機塩触媒と接触させる実施態様で製造した、コークス、液体炭化水素及びガスの重量%対各種水素源のグラフである。
【0031】
【図14】原料を無機塩触媒と接触させる実施態様で製造した原油生成物の重量%対炭素数のグラフである。
【図15】原料を無機塩触媒、金属塩及び炭化珪素と接触させる実施態様で生成した成分の一覧表(表1)である。
【0032】
【図16】生成物選択率対酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム及び炭化珪素のグラフである。
【図17】原料を、担持無機塩触媒及びE−Catと接触させる実施態様で生成した成分の一覧表である。
【図18】原料を、担持無機塩触媒及びE−Catと接触させる実施態様で生成した成分のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、各種改変及び代替形態を受入れできるが、その特定の実施態様を図面を参照してここに詳細に説明する。これらの図面は、縮尺にはならないかも知れない。これらの図面及びその説明は、本発明を開示した特定の形態に限定することを意図するものではなく、逆に本発明の精神及び範囲内のあらゆる改変、均等物及び代替をカバーするものと理解すべきである。
【0034】
発明の詳細な説明
以上の問題は、ここに説明したシステム、方法、及び触媒を用いて対処できる。例えば、原料及び無機塩触媒は接触帯に供給できる。無機触媒と原料との接触は、無機塩触媒が接触帯中で流動化されて、全生成物が製造するように実施できる。
【0035】
本発明の特定の実施態様をここで詳細に説明する。ここで使用する用語は、以下のように定義する。
“アルカリ金属”とは、周期表第1欄の1種以上の金属、周期表第1欄の1種以上の金属の1種以上の化合物、又はそれらの混合物を言う。
【0036】
“アルカリ土類金属”とは、周期表第2欄の1種以上の金属、周期表第2欄の1種以上の金属の1種以上の化合物、又はそれらの混合物を言う。
“AMU”とは原子質量単位を言う。
“ASTM”とは米国材料試験規格(American Standard Testing and Materials)を言う。
【0037】
“アスファルテン”とは、n−ペンタン又はn−ヘプタンのような直鎖炭化水素に不溶の原油中に見られる有機材料を言う。幾つかの実施態様ではアスファルテンとしては、ヘテロ原子を含む芳香族及びナフテン系の環式化合物が挙げられる。
【0038】
原料、原油生成物、ナフサ、ディーゼル、及びVGOの原子水素%及び炭素%は、ASTM法D5291で測定する。
“API比重”とは、15.5℃でのAPI比重を言う。API比重はASTM法D6822で測定する。
【0039】
“ビチュメン”とは、炭化水素の地層で生成した及び/又は乾留(retort)した原油の1種を言う。原料及び/又は全生成物の沸点範囲分布は、特に断らない限り、ASTM法D5307で測定する。炭化水素成分、例えばパラフィン、イソパラフィン、オレフィン、ナフテン、及びナフサ中の芳香族の含有量は、ASTM法D6730で測定する。ディーゼル油及びVGO中の芳香族含有量は、IP法368/90で測定する。ケロシン中の芳香族含有量は、ASTM法D5186で測定する。
【0040】
“ブレンステッド−ローリー酸”とは、他の分子実体(entirety)にプロトンを供与する能力を有する他の分子実体を言う。
“ブレンステッド−ローリー塩基”とは、他の分子実体からプロトンを受入れる能力を有する分子実体を言う。ブレンステッド−ローリー塩基の例としては、ヒドロキシド(OH-)、水(H2O)、カルボキシレート(RCO2-)、ハロゲン化物(Br-、Cl-、F-、I-)、バイサルフェート(HSO4-)、及びサルフェート(HSO42-)が挙げられる。
【0041】
“触媒”とは1種以上の担持触媒、1種以上の担持されていない触媒、又はそれらの混合物を言う。
“炭素数”とは1分子中の炭素原子の総数を言う。
“コークス”とはプロセス条件下で気化しない炭素質固体を含有する固体を言う。コークスの含有量は、物質収支により測定される。コークスの重量は、固体の全重量から入力した触媒の重量を引いたものである。
【0042】
“含有量”とは、基質(例えば、原油、全生成物、又は原油生成物)中の成分の重量を言い、基質の全重量に対する重量分率又は重量%として表す。“wtppm”とは百万重量部当たりの部を言う。
“ディーゼル”とは、0.101MPaにおいて沸点範囲分布が260〜343℃(500〜650°F)の炭化水素を言う。ディーゼル含有量は、ASTM法D2887で測定する。
【0043】
“蒸留物”とは、0.101MPaにおいて沸点範囲分布が204〜343℃(400〜650°F)の炭化水素を言う。蒸留物含有量は、ASTM法D2887で測定する。
“DSC”とは、示差走査熱量測定法を言う。
“原料”とは、ここで説明するように処理すべき、原油、不利な原油、炭化水素の混合物、又はそれらの混合物を言う。
【0044】
“凍結点”とは、液体中に結晶粒子が生じる温度を言う。凍結点はASTM D2386により測定される。
“GC/MS”とは、質量分析法と組み合わせたガスクロマトグラフィーを言う。
“硬質塩基”とは、Journal of American Chemical Society,1963,85,p3533にPearsonが記載したようなアニオンを言う。該文献はここに援用する。
【0045】
“H/C”とは、水素源子対炭素原子の重量比を言う。H/Cは、ASTM法D5291で測定した、水素の重量割合(%)及び炭素の重量割合(%)の測定値から求められる。
“ヘテロ原子”とは、炭化水素の分子構造中に含まれる酸素,窒素、及び/又は硫黄を言う。ヘテロ原子の含有量は、酸素についてはASTM法E385、窒素についてはD5762、及び硫黄についてはD4294により測定される。
【0046】
“水素源”とは、水素、及び/又は原料及び触媒の存在下で反応した時、原料中の1種以上の化合物に水素を与える化合物を言う。水素源としては、限定されるものではないが、炭化水素(例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ナフサのようなC〜C炭化水素)、水、又はそれらの混合物が挙げられる。原料中の1種以上の化合物に与えた水素の量を評価するため、物質収支を行う。
【0047】
“無機塩”とは、金属カチオン及びアニオンで構成される化合物を言う。
“IP”とは、英国ロンドンの石油協会(Institute of Petroleum)、現在のエネルギー協会(Energy Institute of London)を言う。
“イソパラフィン”とは、分岐鎖飽和炭化水素を言う。
【0048】
“ケロシン”とは、0.101MPaにおいて沸点範囲分布が204〜260℃(400〜500°F)の炭化水素を言う。ケロシン含有量は、ASTM法D2887で測定する。
“ルイス酸”とは、他の化合物から1つ以上の電子を受入れる能力を有する化合物又は材料を言う。
【0049】
“ルイス塩基”とは、他の化合物に1つ以上の電子を供与する能力を有する化合物又は材料を言う。
“軽質炭化水素”とは、炭素数が1〜6の範囲の炭化水素を言う。
【0050】
“液体混合物”とは、標準温度及び圧力(25℃、0.101MPa;以下、“STP”と言う)において液体である1種以上の化合物を含む組成物、又はSTPにおいて液体である1種以上の化合物とSTPにおいて固体である1種以上の化合物との組合わせを含む組成物を言う。
“ミクロ炭素残留物”(“MCR”)とは、基質の蒸発及び熱分解後に残存する炭素残留物の量を言う。MCR含有量は、 ASTM法D4530で測定する。
【0051】
“ナフサ”とは、0.101MPaにおいて38℃〜204℃(100〜400°F)の沸点範囲分布を有する炭化水素成分を言う。ナフサ含有量は、ASTM法D2887で測定する。
“Ni/V/Fe”とは、ニッケル、バナジウム、鉄、又はそれらの組合わせを言う。
“Ni/V/Fe含有量”とは、基質中のニッケル、バナジウム、鉄、又はそれらの組合わせの含有量を言う。Ni/V/Fe含有量は、ASTM法D5863で測定する。
【0052】
“Nm/m”とは、原料(原油原料)1m当たりガスの標準mを言う。
“非酸性”とは、ルイス塩基及び/又はブレンステッド−ローリー塩基の特性を言う。
“非凝縮性ガス”とは、標準温度及び圧力(25℃、0.101MPa)(以下、STPと言う)においてガスである成分及び/又は成分の混合物を言う。
【0053】
“n−パラフィン”とは、ノーマル(直鎖)飽和炭化水素を言う。
“オクタン価”とは、標準参照燃料と比較した、自動車燃料のアンチノック性の計算数値表現を言う。ナフサの計算オクタン価は、ASTM法D6730で測定する。
“オレフィン”とは、非芳香族炭素−炭素二重結合を有する化合物を言う。オレフィンの種類としては、限定されるものではないが、シス、トランス、末端、内部、分岐、及び線状が挙げられる。
【0054】
“周期表”とは、International Union of Pure and Applied Chemistry(IUPAC)で2003年11月に規定された周期表を言う。
“多芳香族化合物”とは、2つ以上の芳香族環を有する化合物を言う。多芳香族化合物の例としては、限定されるものではないが、インデン、ナフタレン、アンスラセン、フェナンスレン、ベンゾチオフェン、及びジベンゾチオフェンが挙げられる。
“残留物”とは、ASTM法D5307で測定して、0.101MPaにおいて沸点範囲分布が538℃(1000°F)を超える成分を言う。
【0055】
“半液体”とは、物質の液相及び固相の特性を有する物質の相を言う。半液体無機塩触媒の例としては、例えばタフィー(taffy)、ドウ又は練り歯磨きの稠度を有するスラリー及び/又は相が挙げられる。
“SCFB”とは、原料1バレル当たりガスの標準立方フィートを言う。
“使用済み水素化処理触媒”とは、水素化処理及び/又は水素化分解接触法に使用するにはもはや受入れできないと考えられる触媒を言う。使用済み水素化処理触媒としては、限定されるものではないが、硫化ニッケル、硫化バナジウム及び/又は硫化モリブデンが挙げられる。
【0056】
“超塩基”とは、反応条件下でパラフィン及びオレフィンのような炭化水素を脱プロトンできる材料を言う。
“TAN”とは、サンプル1g当たりKOHのmgとして表した全酸価を言う。TANは、ASTM法D664で測定する。
“TAP”とは、生成物の時間(temporal)分析を言う。
【0057】
“VGO”とは、沸点範囲分布が0.101MPaにおいて343〜538℃(650〜1000°F)の炭化水素を言う。VGO含有量はASTM法D2887で測定する。
“WHSV”とは、触媒の容積で割った原料重量/単位時間で、時間−1で表示される。
【0058】
参照した方法は全てここに援用する。本出願に関連して、組成物の特性について試験して得られた値が試験法の限界値外であれば、試験法を改変及び/又は再較正して、このような特性を試験してよいものと理解すべきである。参照試験法と同等と考えられる他の標準化した試験法を使用してよいことも理解すべきである。
【0059】
原油は、炭化水素含有配合物から製造及び/又は乾留(retort)し、次いで安定化してよい。原油は生原油(crude oil)を含有してよい。原油は、一般に固体、半固体、及び/又は液体である。安定化法としては、限定されるものではないが、原油から非凝縮性ガス、水、塩又はそれらの組合わせを除去して、安定化原油を形成する方法が挙げられる。このような安定化は、多くの場合、製造及び/又は乾留場所又はその近辺で行ってよい。
【0060】
安定化原油は、通常、特定の沸点範囲分布を有する複数の成分(例えばナフサ、蒸留物、VGO、及び/又は潤滑油)を製造するために、処理設備で蒸留又は精留を行っていない。蒸留法としては、限定されるものではないが、常圧蒸留法及び/又は真空蒸留法が挙げられる。未蒸留及び/又は非精留安定化原油は、炭素数が5以上の成分を、原油1g当たり0.5g以上の量で含有してよい。安定化原油の例としては、原油全体、トッピング済み(topped)原油、脱塩原油、トッピング済み脱塩原油、又はそれらの組合わせが挙げられる。“トッピング済み”とは、0.101MPaにおいて35℃未満の沸点を有する複数成分の少なくとも幾つかの成分が除去されるように、処理した原油を言う。通常、トッピング済み原油は、これらの成分を、トッピング済み原油1g当たり0.1g以下、0.05g以下又は0.02g以下含有する。
【0061】
幾つかの安定化原油は、輸送キャリヤー(例えばパイプライン、トラック又は船舶)により従来の処理設備に輸送可能な特性を有する。その他の原油は、不利になる不適当な特性を1つ以上有する。不利な原油は、輸送キャリヤー及び/又は処理設備に受入れ不能かも知れず、したがって、不利な原油に与える経済的価値は低い。この経済的価値は、不利な原油を含むリザーバーが製造、輸送及び/又は処理にコストがかかり過ぎるとみなされるような価値であるかも知れない。
【0062】
不利な原油の特性としては、限定されるものではないが、a)TANが0.5以上、b)粘度が約0.2Pa・s以上、c)API比重が19以下、d)合計Ni/V/Fe含有量が原油1g当たり0.00005g以上又は0.0001g以上、e)合計ヘテロ原子含有量が原油1g当たり0.005g以上、f)残留物含有量が原油1g当たり0.01g以上、g)アスファルテン含有量が原油1g当たり0.04g以上、h)MCR含有量が原油1g当たり0.02g以上、又はi)それらの組合わせが挙げられる。幾つかの実施態様では不利な原油は、該原油1g当たり、残留物を0.2g以上、0.3g以上、0.5g以上又は0.9g以上含有するかも知れない。特定の実施態様では不利な原油は、該原油1g当たり、残留物を0.2〜0.99g、0.3〜0.9g、0.4〜0.7含有するかも知れない。特定の実施態様では不利な原油は、該原油1g当たり、硫黄を0.001g以上、0.005g以上、0.01g以上、0.02g以上、0.03g以上、又は0.04g以上含有してよい。幾つかの実施態様では不利な原油は、該原油1g当たり、窒素を0.001g以上、0.005g以上、0.01g以上、又は0.02g以上含有してよい。
【0063】
不利な原油は、或る沸点範囲にある複数の炭化水素の混合物を含有してよい。不利な原油は、該原油1g当たり、沸点範囲分布が0.101MPaにおいて約200〜約300℃の炭化水素を0.001g以上、0.005g以上又は0.01g以上;沸点範囲分布が0.101MPaにおいて約300〜約400℃の炭化水素を0.001g以上、0.005g以上又は0.01g以上;及び沸点範囲分布が0.101MPaにおいて約400〜約700℃の炭化水素を0.001g以上、0.005g以上又は0.01g以上;又はそれらの組合わせを含有してよい。
【0064】
幾つかの実施態様では不利な原油は、高沸点成分の他に、該原油1g当たり、沸点範囲分布が0.101MPaにおいて200℃以下の炭化水素を0.001g以上、0.005g以上又は0.01g以上含有してよい。通常、不利な原油は、このような炭化水素を、該原油1g当たり0.2g以下、又は0.1g以下含有する。
【0065】
特定の実施態様では不利な原油は、該原油1g当たり、沸点範囲分布が300℃以上の炭化水素を0.9g以下、又は0.99g以下含有してよい。特定の実施態様では不利な原油は、該原油1g当たり、沸点範囲分布が650℃以上の炭化水素を0.001g以上含有してよい。特定の実施態様では不利な原油は、該原油1g当たり、沸点範囲分布が約300〜約1000℃の炭化水素を0.9g以下、又は0.99g以下含有してよい。幾つかの実施態様では不利な原油は、該原油1g当たりアスファルテンを0.5g以上、0.8g以上、又は0.99g以上含有してよい。不利な原油は、該原油1g当たりアスファルテンを約0.01〜約0.99g、約0.1〜約0.9g、又は約0.5〜約0.8g含有してよい。ここで説明した方法で処理できる不利な原油の例としては、限定されるものではないが、以下の国及び地域:カナダのAlberta、ベネゼラのOrinoco、米国の南カリフォルニア、北流域(slope)アラスカ、メキシコCampeche湾、アルゼンチンのSan Jorge流域(basin)、ブラジルのSanos及びCampos流域、中国のBohai湾、イラクのZagros、カザフスタンのCaspian、ナイジェリアの沖合、英国の北海、マダガスカル北西部、及びオランダのSchonebekが挙げられる。
【0066】
不利な原油を処理すると、輸送用及び/又は処理用に受入れできるように、特性を向上する可能性がある。この原料は、ここで説明したようにトッピングしてよい。ここで説明した方法を用いて原料を処理して得られる原油生成物は、輸送及び/又は精製用に好適である。原油生成物の特性は、原料よりもWest Texas Intermediate原油の対応する特性に近いか、或いはBrent原油の対応する特性に近いので、原料に比べて経済的価値が高まる。このような原油生成物は、予備処理を少なくするか、予備処理しないで、精製できるので、精製効率が高まる。予備処理には、原油生成物から不純物を除去するための、脱硫、脱金属及び/又は大気圧蒸留を含んでよい。
【0067】
本発明による原料の接触法をここで説明する。更に、従来法では一般に製造されない各種濃度のナフサ、ケロシン、ディーゼル及び/又はVGOを含む生成物を製造する実施態様を説明する。
【0068】
幾つかの実施態様では、約10〜1200℃の沸点分布(例えばアスファルテン、ケロシン、ディーゼル、ナフサ、又はそれらの混合物)を有する原料は、ここで説明したシステム、方法及び触媒に従って接触させてよい。原料は、初期沸点が538℃を超える沸点分布を有する炭化水素混合物を原料1g当たり0.01g以上、0.1g以上、0.5g以上、又は0.9g以上含有してよい。幾つかの実施態様では、初期沸点が538℃を超える沸点分布を有する炭化水素混合物を原料1g当たり約0.01〜約0.9g、約0.1〜約0.8g、約0.5〜約0.7g含有してよい。
【0069】
炭化水素混合物1g当たり、VGOを0.01g以上、0.1g以上、0.5g以上、0.8g以上、又は0.99g以上含有する炭化水素混合物は、ここで説明したシステム及び方法に従って処理して、各種量のナフサ、ケロシン、ディーゼル、又は蒸留物を製造できる。炭化水素混合物1g当たり、VGOを約0.01〜約0.99g、約0.05〜約0.9g、約0.1〜約0.8g、約0.2〜約0.7g、又は約0.3〜約0.6g含有する炭化水素混合物を処理して、VGOの沸点分布よりも低い沸点分布を有する各種生成物を製造できる。
【0070】
原料は、1つの接触帯及び/又は2つ以上組合わせた接触帯中で1種以上の触媒の存在下に水素源と接触してよい。
幾つかの実施態様では水素源は現場で発生させる。水素源の現場発生には、水素及び/又は軽質炭化水素を形成するため、原料の少なくとも一部と無機塩触媒との約200〜1200℃、約300〜1000℃、約400〜900℃、約500〜800℃の範囲の温度での反応を含んでよい。水素の現場発生には、原料の少なくとも一部と、例えば蟻酸アルカリ金属塩のような無機塩触媒との反応を含んでよい。
【0071】
全生成物は一般に、接触中に生成した、ガス、蒸気、液体又はそれらの混合物を含有する。全生成物は、STPにおいて液体混合物である原油生成物と、幾つかの実施態様では、STPにおいて凝縮性のない炭化水素とを含有する。幾つかの実施態様では全生成物及び/又は原油生成物は、固体(例えば無機固体及び/又はコークス)を含有してよい。特定の実施態様では、これらの固体は、接触中に生成した、液体及び/又は蒸気中に同伴されてもよい。
【0072】
接触帯は、通常、反応器、反応器の一部、反応器の多数部分、又は多数反応器を有する。触媒の存在下、原料を水素源と接触させるために使用できる反応器の例としては、積み重ね床反応器、固定床反応器、連続撹拌槽反応器(CSTR)、噴霧反応器、閉塞流反応器、及び液/液接触器が挙げられる。CSTRの例としては、流動床反応器及び沸騰床反応器がある。
接触条件としては、通常、温度、圧力、原料流、全生成物流、滞留時間、水素源の流れ、又はそれらの組合わせがある。接触条件は、特定の特性を有する原油生成物を製造するため、制御してよい。
【0073】
接触温度は、約300〜1000℃、約400〜900℃、又は約500〜800℃の範囲であってよい。水素源をガス(例えば水素ガス、メタン又はエタン)として供給する実施態様では、ガス対原料の比は、通常、約1〜16,100Nm/m、約2〜8000Nm/m、約3〜4000Nm/m、又は約5〜320Nm/mの範囲である。接触は、通常、約0.1〜20MPa、約1〜16MPa、約2〜10MPa、約4〜8MPaの範囲の圧力で行う。水蒸気を添加する幾つかの実施態様では、水蒸気対原料比は、原料1kg当たり、水蒸気約0.01〜10kg、約0.03〜5kg、又は0.1〜1kgの範囲である。原料の流量は、接触帯の全容積に対し、接触帯中の原料量を10%以上、50%以上又は90%以上維持するのに十分な量であってよい。通常、接触帯中の原料の容積は、接触帯の全容積の約40%、約60%以上又は約80%である。接触帯中のWHSVは、約0.1〜約30h−1、約0.5〜約20h−1、約1〜約10h−1の範囲である。幾つかの実施態様では接触は、別のガス、例えばアルゴン、窒素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、プロペン、ブテン又はそれらの組合わせの存在下で行ってよい。
【0074】
図1は、全生成物を蒸気として製造するのに使用される接触システム100の一実施態様の概略図である。原料は原料供給部101を出て、導管104経由で接触帯102に入る。接触帯での触媒の使用量は、接触帯中の原料100g当たり約1〜1000g、約2〜500g、約3〜200g、約4〜100g、約5〜50g、約6〜80g、約7〜70g、又は約8〜60gの範囲でよい。幾つかの実施態様では接触帯102は、1つ以上の流動床反応器、1つ以上の固定床反応器、又はそれらの組合わせを有する。
【0075】
特定の実施態様では、原料の粘度を低下させるため、原料に希釈剤を添加してよい。幾つかの実施態様では原料は、導管104経由で接触帯102の底部に入る。特定の実施態様では原料は、接触帯102に導入する前、及び/又は導入中、100℃以上又は300℃以上の温度に加熱してよい。通常、原料は約100〜500℃又は約200〜400℃の範囲の温度に加熱してよい。
【0076】
幾つかの実施態様では触媒は、原料と組合わせて、接触帯102に移送してよい。この原料/触媒混合物は、接触帯102に導入する前に、100℃以上又は300℃以上の温度に加熱してよい。通常、原料は約200〜500℃又は約300〜400℃の範囲の温度に加熱してよい。幾つかの実施態様では原料/触媒混合物はスラリーである。特定の実施態様では原料のTANは、原料を接触帯に入れる前に、低下させてもよい。例えば原料を約100〜400℃又は約200〜300℃の範囲の温度に加熱した場合、原料中に酸性成分のアルカリ金属が形成されてもよい。アルカリ金属が形成されると、原料から若干の酸性成分が除去されて、原料のTANを低下できる。
【0077】
幾つかの実施態様では原料は、接触帯102に連続的に添加される。接触帯102での混合は、原料/触媒混合物から触媒が分離するのを防止するのに十分な混合であってよい。特定の実施態様では、触媒の少なくとも一部は、接触帯102から取り出してよく、また幾つかの実施態様では、このような触媒は再生し再利用される。特定の実施態様では新しい触媒を反応工程中、接触帯102に添加してよい。
【0078】
幾つかの実施態様では原料及び/又は原料と無機塩触媒との混合物は、エマルジョンとして接触帯中に導入される。エマルジョンは、無機塩触媒/水混合物を原料/界面活性剤混合物と配合して製造できる。幾つかの実施態様ではエマルジョンに安定剤を添加する。エマルジョンは、2日以上、4日以上、又は7日以上安定のままかも知れない。通常、エマルジョンは、30日間、10日間、5日間、又は3日間安定のままかも知れない。界面活性剤としては、限定されるものではないが、有機ポリカルボン酸(Tenax 2010; Mead Westvaco Specialty Product Group; Charleston, South California, U.S.A.)、C21ジカルボキシ脂肪酸(DIACID 1550; Mead Westvaco Specialty Product Group)、石油スルホネート(Hostapur SAS 30; Clarient Corporation, Charriote, North Carolina, U.S.A.)、Tergital NP-40界面活性剤(Union Carbide; Danbury, Connecticut, U.S,A.)又はそれらの混合物が挙げられる。安定剤としては、限定されるものではないが、ジエチレンアミン(Aldrich Chemical Co.; Milwaukeee, Wisconsin, U.S.A.)及び/又はモノエタノールアミン(J. T. Baker;Phillipsburg. New jersey, U.S.A.)が挙げられる。
【0079】
再循環導管106は、導管108及び導管104に連結してよい。幾つかの実施態様では、再循環導管106は、直接、接触帯102に入れ、及び/又は出してもよい。再循環導管106は、流れ制御バルブ110を備えてよい。流れ制御バルブ110は、導管108からの材料の少なくとも一部を導管104及び/又は接触帯102に再循環させることができる。幾つかの実施態様では、導管102内に凝縮ユニットを配置して、材料の少なくとも一部を凝縮して接触帯102に再循環させてもよい。特定の実施態様では再循環導管106は、ガス再循環ラインであってよい。流れ制御バルブ110、110’を使用して、接触帯102中で液体が一定量維持されるように、接触帯102に出入りする流れを制御してよい。幾つかの実施態様では実質的に選択した量範囲の液体が接触帯102中で維持できる。接触帯102中の原料の容積は、標準の計器を用いてモニターしてよい。ガス入口112は、原料が接触帯102に入る際、原料に水素源及び/又は追加のガスを添加するのに使用してよい。幾つかの実施態様では、水蒸気入口114は、原料に水蒸気を添加するのに使用してよい。特定の実施態様では、水蒸気入口114から水性流が接触帯102中に導入される。
【0080】
幾つかの実施態様では全生成物の少なくとも一部は、接触帯102から蒸気として製造される。特定の実施態様では全生成物は、接触帯102の頂部から蒸気及び/又は少量の液体及び固体を含む蒸気として製造される。蒸気は導管108経由で分離帯116に搬送される。接触帯102中の水素源対原料比及び/又は接触帯中の圧力は、接触帯102の塔頂で生成した蒸気及び/又は液体相を制御するため、変化させてよい。幾つかの実施態様では、接触帯102の頂部で生成した蒸気は、原油生成物を原料1g当たり0.5g以上、0.8g以上、0.9g以上、又は0.97g以上含有する。特定の実施態様では接触帯102の頂部で生成した蒸気は、原油生成物を原料1g当たり0.8〜0.99g、又は0.9〜0.98g含有する。
使用済み触媒及び/又は固体は、接触方法の副生物として接触帯102中に残存してよい。固体及び/又は使用済み触媒は、残存原料及び/又はコークスを含有してよい。
【0081】
分離ユニット116では蒸気は、標準の分離法で冷却、分離されて、原油生成物及びガスが形成される。原油生成物は分離ユニット116を出て、導管118経由で原油生成物受け器119に入る。得られた原油生成物は、輸送用及び/又は処理用に好適かも知れない。原油生成物受け器119は、1つ以上のパイプライン、1つ以上の貯蔵ユニット、1つ以上の輸送容器、又はそれらの組合わせを備える。幾つかの実施態様では分離したガス(例えば水素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、又はメタン)は、他の処理ユニット(例えば燃料電池用又は硫黄回収プラント用)に搬送され、及び/又は導管120経由で接触帯102に再循環される。特定の実施態様では、原油生成物中に同伴する固体及び/又は液体は、標準の物理的分離法(例えば濾過、遠心、又は膜分離)を用いて除去してよい。
【0082】
図2は、原料を1種以上の触媒で処理して、液体、或いはガス又は固体と混合した液体であってよい全生成物を製造するための接触システム122を示す。原料は、導管104経由で、ここで説明した接触帯102に入ってよい。幾つかの実施態様では原料は、原料供給部から受ける。導管104は、ガス入口112を備えてよい。幾つかの実施態様ではガス入口112は、接触帯102に直接入ってよい。特定の実施態様では、水蒸気入口114は、接触帯102に水蒸気を添加するのに使用してよい。原油は全生成物を製造するため、接触帯102中の触媒と接触させてよい。
【0083】
幾つかの実施態様では、導管106は全生成物の少なくとも一部を接触帯102に再循環させる。全生成物及び/又は固体及び/又は未反応原料を含む混合物は、接触帯102を出て、導管108経由で分離帯124に入る。幾つかの実施態様では凝縮ユニットを配置して(例えば導管106内に)、導管中の混合物の少なくとも一部を凝縮し、更に処理するため、接触帯102に再循環してよい。特定の実施態様では再循環導管106は、ガス再循環ラインであってよい。幾つかの実施態様では導管108は全生成物から粒子を除去するためフィルターを備えてよい。
【0084】
分離帯124では、原油生成物の少なくとも一部は全生成物及び/又は触媒から分離してよい。全生成物が固体を含む実施態様では、固体は標準の固体分離技術(例えば遠心、浄過、デカンテーション、膜分離)を用いて全生成物から分離してよい。固体は、例えば触媒、使用済み触媒、及び/又はコークスの組合わせを含む。幾つかの実施態様では全生成物からガスの一部が分離される。幾つかの実施態様では全生成物の少なくとも一部及び/又は固体は導管104、及び/又は幾つかの実施態様では導管126経由で接触帯102に再循環してよい。再循環部分は、例えば原料と組合わせて、更に処理するため、接触帯102に入れてよい。原油生成物は、導管128経由で分離帯124を出てよい。特定の実施態様では、原油生成物は原油生成物受け器に搬送してよい。
【0085】
幾つかの実施態様では、触媒と、ガス及び原料との接触は、流動化条件下で行ってよい。触媒の流動化は、余り厳しくない条件下で行うことを可能にする。例えば触媒の流動化は、全生成物を製造するのに必要な全熱量を減らすことができるので、スラリー又は固定床と比べて低い温度及び圧力で操作できる。例えば流動化触媒接触帯中で担持無機塩触媒を用いた場合、接触分解及び水蒸気改質方法は、1000℃以下、900℃以下、800℃以下、700℃以下、又は600℃以下の温度、及び4MPa以下、3.5MPa以下、又は2MPa以下の圧力で行うことができる。また触媒の流動化は、原料と触媒との接触表面積を増大することができる。接触表面積が増大すると、原料の全生成物への転化を促進する可能性がある。更に、この方法を流動化条件下(例えば温度500℃以上、700℃以上、又は800℃以上)で行った場合、高温でのコークスの生成を最小化できる。幾つかの実施態様では、無機塩触媒は、担持触媒である。担持無機塩触媒は、担持されていない無機塩触媒よりも容易に流動化できる。
【0086】
図3は、原料を1種以上の触媒で処理して、ガス及び/又は液体であってよい全生成物を製造するための接触システム130を示す。接触帯102は、流動化反応器であってよい。原料は導管104経由で接触帯102に入る。原料は、前述のように加熱され、乳化され、及び/又は前述のように触媒と混合される。導管104は、ガス入口112及び水蒸気入口114を備える。水蒸気入口114’、114”は、直接、接触帯102に入ってよい。幾つかの実施態様ではガス入口112は、直接、接触帯102に入ってよい。特定の実施態様では水蒸気入口114’、114”は、必ずしも必要としない。触媒は、導管132経由で接触帯に入ってよい。接触帯での触媒の使用量は、接触帯中の触媒100g当たり約1〜1000g、約2〜500g、約3〜200g、約4〜100g、約5〜50g、約6〜80g、約7〜70g、又は約8〜60gの範囲であってよい。幾つかの実施態様では、触媒は接触帯の種々の高さ(例えば底部高さ、中間高さ、及び/又は上部高さ)で接触帯に入れてよい。導管106は、全生成物/原料混合物の少なくとも一部を再循環させる。
【0087】
触媒は、分配器134及び格子板136により接触帯の断面一杯に分配されたガス及び原料及び/又は再循環の全生成物/原料混合物の上昇により流動化できる。使用済み触媒及び/又は全生成物/原料混合物の一部は、導管138経由で接触帯102を出ることができる。ポンプ140は、内部蒸気/液体分離器142で得られた流動化液の流れを制御する。この流動化床の高さは、当該技術分野で公知の方法を用いて、ポンプ140の速度を変化させて調整される。
【0088】
幾つかの実施態様では、接触中、不純物(例えばコークス、窒素含有化合物、硫黄含有化合物、及び/又はニッケル及び/又はバナジウムのような金属)が生成する。これら不純物の現場での除去は、接触運転の終了及び接触帯からの全触媒の除去と比べて接触運転回数(times)を増加してよい。現場での不純物除去は、触媒の燃焼で行ってもよい。幾つかの実施態様では、触媒上の不純物に燃焼を起こさせるため、接触帯102に酸素源(例えば空気及び/又は酸素)を導入してよい。酸素源は、燃焼前面(front)を形成するのに十分な速度で加えてよいが、形成された燃焼前面は、接触帯102の上部空間(headspace)に入るのが阻止される(例えば7%未満の上部空間で酸素の合計モル%を維持するのに十分な速度で加えてよい)。この燃焼処理による熱は、使用中の接触帯102に加える外部供給源による熱の必要性を低下する可能性がある。
【0089】
原料は、接触帯102中で1種以上の触媒の存在下に水素と流動的に接触して、全生成物を製造できる。全生成物は、導管108経由で接触帯102を出て、分離帯144に入ってよい。分離帯は、前述のように当該技術分野で公知の分離帯と同様か、又は同じであってよい。全生成物は、原油生成物、ガス、水、固体、触媒、又はそれらの組合わせを含有してよい。接触帯102の温度は、約300〜約1000℃、約400〜約900℃、約500〜約800℃、又は約600〜約700℃又は約750℃の範囲であってよい。
【0090】
分離帯144では、全生成物は分離されて、原油生成物及び/又はガスが形成される。原油生成物は導管146経由で分離帯144を出てよい。ガスは導管148経由で分離帯144を出てよい。原油生成物及び/又はガスは、そのまま又は更に処理してよい。幾つかの実施態様では、分離された触媒は、再生してもよいし、或いは接触帯102に入る新たな触媒と組合わせてもよい。
【0091】
1種以上の無機塩触媒の存在下での原料と水素源との流動的接触は、発熱工程であってよい。幾つかの実施態様では、原料と無機金属塩触媒との流動的接触は、従来の流動化接触分解法の発熱の4倍以下であってよい。十分な熱伝達を行うため、外部熱源を使用して、接触帯に熱を供給してよい。外部熱源は燃焼器、触媒再生帯、発電所、又は当該技術分野で公知の熱源であってよい。
【0092】
図4は接触システム150を示す。接触システム150は、流動接触分解システム及び/又は改造流動接触分解システムであってよい。接触システム150は、接触帯102、再生帯152、及び回収帯154を有する。幾つかの実施態様では、接触帯102及び再生帯152は、1つの帯域として組合わされる。接触帯102は、流動化器156及び内部分離器158、158’を有する。原料は、導管104経由で接触帯102に入る。触媒は、入口160経由で接触帯102に入る。接触帯での触媒の使用量は、接触帯中の原料100g当たり約1〜約1000g、約2〜500g、約3〜200g、約4〜100g、約5〜50g、約6〜80g、約7〜70g、又は約8〜60gの範囲でよい。導管104は、触媒入口160、ガス入口112、及び水蒸気入口114を備えてよい。幾つかの実施態様では、水蒸気、ガス、及び/又は水素源は接触帯102に入れる前に原料及び触媒と混合してよい。
【0093】
幾つかの実施態様では接触帯102は、水蒸気入口114’を備えてよい。水蒸気入口114’は、追加の水蒸気又は過熱水蒸気を接触帯に添加できる。水蒸気の熱は、流動化器156の加熱を一層制御できる。流動化器156での原料及び触媒の流動化は、噴霧ノズル、噴射ノズル、ポンプ、及び/又は当該技術分野で公知の他の流動化法を用いて実施できる。幾つかの実施態様では、接触システム130で述べたように、接触帯102には酸素源を加えてよい。
【0094】
内部分離器158、158’は、全生成物/原料混合物から触媒の一部を分離し、全生成物/原料混合物を流動化器156に再循環できる。分離された触媒は、導管162経由で接触帯102を出てよい。分離した触媒は、使用済み触媒、及び/又は使用済み触媒と新たな触媒との混合物と言う.使用済み触媒は、接触帯で原料と接触させた触媒である。
【0095】
分離触媒は、導管166経由で再生帯152に入ってよい。バルブ164は、再生帯152に入る分離触媒の流れを調節できる。酸素源をガス入口168経由で再生帯152に入れてよい。触媒の少なくとも一部は、燃焼により触媒から不純物を除去して再生できる。燃焼中は燃焼ガス(煙道ガス)及び再生触媒が形成される。燃焼工程で発生した熱は、接触帯102に移送してよい。移送熱は、約500〜約1000℃、約600〜約900℃、又は約700〜約800℃の範囲であってよい。
【0096】
再生触媒の少なくとも一部は、導管170経由で再生帯152を出てよい。バルブ172を用いて、導管104への触媒流を調節できる。幾つかの実施態様では、新たな触媒及び/又は使用済み水素化処理触媒が導管174経由で導管170に添加される。新たな触媒及び/又は使用済み水素化処理触媒は、導管170中で再生触媒と配合してよい。幾つかの実施態様では、触媒は噴射器を用いて導管170及び/又は接触帯102に添加される。
【0097】
燃焼ガスは再生帯152を出て、導管178経由で回収帯154に入ってよい。燃焼ガスは、触媒の同伴無機塩を含有してよい。幾つかの実施態様では、燃焼ガスは、触媒粒子を含有してよく、これら粒子は、物理的な分離法を用いて除去できる。再生帯154では、燃焼ガスは触媒及び/又は無機塩から分離される。幾つかの実施態様では燃焼ガスは、触媒の無機塩と配合可能な粒子を有する流動床を含有する。この粒子/無機塩配合物は、燃焼ガスから分離、回収できる。回収された粒子/無機塩は、接触帯102に入る触媒として使用してよい、及び/又は前記触媒と配合してよい。
【0098】
幾つかの実施態様では燃焼ガスは、無機塩水溶液を形成するため、水で処理して燃焼ガスに同伴する無機塩を部分的に溶解してもよい。この無機塩水溶液は、当該技術分野に公知の気液分離法を用いて燃焼ガスから分離してよい。また無機塩水溶液は、無機塩触媒を形成するため、及び/又は無機塩を回収するため(例えばカルシウム、マグネシウム及び/又はカリウム塩を回収する)、加熱して水を除去してもよい。回収された無機塩及び/又は形成された触媒は、接触帯102に入る触媒として使用してよい、及び/又は前記触媒と配合してよい。幾つかの実施態様では、回収無機塩は、接触帯102及び/又は導管174中に噴射してよい。幾つかの実施態様では、回収無機塩は、触媒支持体上に沈着させ、得られた担持無機塩は、接触帯102及び/又は導管174中に噴射してよい。
【0099】
接触システム150における1種以上の無機塩触媒及び水蒸気の存在下での原料と水素源との接触により全生成物が生成する。全生成物は、導管108経由で接触帯の上部から出てよい。全生成物は、分離帯144に入り、原油生成物及び/又はガスに分離される。原油生成物は、導管146経由で分離帯144を出てよい。ガスは導管148経由で分離帯144を出てよい.原油生成物及び/又はガスは、そのまま使用してもよいし、或いは更に処理してもよい。
【0100】
幾つかの実施態様では、全生成物及び/又は原油生成物は、触媒の少なくとも一部を含有してよい。全生成物及び/又は原油生成物に同伴したガスは、標準の物理的分離法、例えばスパ−ジング、膜分離及び減圧を用いて分離できる。幾つかの実施態様では分離されたガスは、他の処理ユニット(例えば燃料電池用、硫黄回収プラント、その他の処理ユニット、又はそれらの組合わせ)に搬送し、及び/又は接触帯に再循環する。
【0101】
幾つかの実施態様では、原料の少なくとも一部の分離は、原料が接触帯に入る前に行われる。図5は、接触システムと組合わせた分離帯の一実施態様の概略図である。接触システム190は、接触システム100、接触システム122、接触システム130、接触システム150、又はそれらの組合わせであってよい(図1〜4に示す)。原料は導管104経由で分離帯192に入る。分離帯192では、原料の少なくとも一部は、標準の分離技術を用いて分離され、分離された原料及び炭化水素を生成する。幾つかの実施態様では、分離された原料は、沸点分布範囲が100℃以上、120℃以上、又は幾つかの実施態様では沸点分布範囲が200℃以上の成分の混合物を含む。通常、分離された原料は、沸点範囲分布が約100〜1000℃、約120〜900℃、又は約200〜800℃の成分の混合物を含む。幾つかの実施態様では、分離された原料は、VGOである。原料から分離された炭化水素は、導管194経由で分離帯192を出て、他の処理ユニット、処理設備、貯蔵設備、又はそれらの組合わせに搬送される。
【0102】
前記分離原料は、分離帯192を出て、導管196経由で接触システム190に入り、更に処理されて、原油生成物を形成し、導管198経由で接触システム130に入る。
幾つかの実施態様では、ここで説明したいずれかの方法で原油から製造された原油生成物は、該原油と同じか又は異なる原油とブレンドされる。例えば原油生成物は、異なる粘度を有する原油と配合し、これにより原油生成物の粘度と原油の粘度との間の粘度を有するブレンド生成物を生成してよい。得られたブレンド生成物は、輸送及び/又は処理に好適かも知れない。
【0103】
図6は、ブレンド帯300と接触システム190とを組合わせた実施態様の概略図である。特定の実施態様では、原油生成物の少なくとも一部は、導管198経由で接触システム190を出て、ブレンド帯200に入る。ブレンド帯200では、原油生成物の少なくとも一部は、ブレンド生成物を製造するため、1つ以上のプロセス流(例えば1種以上の原料の分離で生成した炭化水素流、又はナフサ)、原料又はそれらの混合物と配合される。プロセス流、原料又はそれらの混合物は、ブレンド帯200又は導管202経由でブレンド帯の上流に直接導入される。ブレンド帯200中又は付近に混合システムを配置してよい。ブレンド生成物は、特定の製品規格に適合できる。特定の製品規格としては、限定されるものではないが、API比重、TAN、粘度、又はそれらの組合せ、の範囲又は限界が挙げられる。ブレンド生成物は、導管204経由でブレンド帯200を出て輸送及び/又は処理される。
【0104】
幾つかの実施態様では、触媒を用いる接触工程中、メタノールが発生する。例えば水素と一酸化炭素とを反応させてメタノールを形成できる。回収されたメタノールは、溶解した塩、例えば水酸化カリウムを含有するかも知れない。メタノールを原料と組合わせると、原料の粘度を低下させる傾向がある。メタノール/原料混合物を500℃以下に加熱すると、原料のTANを1未満に低下させる可能性がある。
【0105】
図7は、分離帯を、ブレンド帯と組合わせの接触システムと組合わせた実施態様の概略図である。原料は、導管104経由で分離帯192に入る。原料は、前述のように分離されて、分離原料を形成する。分離原料は導管196経由で接触システム190に入る。原油生成物は、接触システム190を出て、導管198経由でブレンド帯200に入る。ブレンド帯200では、他のプロセス流及び/又は導管202経由で導入された原料は、原油生成物と組合わされて、ブレンド生成物を形成する。このブレンド生成物は、導管204経由でブレンド帯200を出る。
【0106】
図8は、多数接触システム206の概略図である。接触システム208(例えば図1〜4に示す接触システム)は、接触システム210の前に配置してよい。代りの実施態様では、これら接触システムの配置は逆にできる。接触システム208は無機塩触媒を含有する。接触システム210は1種以上の触媒を含有してよい。接触システム210中の触媒は、追加の無機塩触媒及び/又は市販の触媒であってよい。原料は、導管104経由で接触システム208に入り、無機塩触媒の存在下で水素源と接触して、全生成物を生成する。全生成物は、水素、及び幾つかの実施態様では原油生成物を含有する。全生成物は、導管108経由で接触システム208を出てよい。無機塩触媒と原料との接触で発生した水素は、接触システム210用の水素源として使用してよい。発生した水素の少なくとも一部は、導管212経由で接触システム208から接触システム210に移送される。
【0107】
代りの実施態様では、このように発生した水素は、分離及び/又は処理し、次いで導管212経由で接触システム210に移送してよい。特定の実施態様では、接触システム210は、接触システム208の一部であってよく、これにより、発生水素は接触システム208から直接接触システム210に流れる。幾つかの実施態様では、接触システム208で生成した蒸気流は、接触システム210に入る原料と直接混合される。
【0108】
第二の原料は、導管214経由で接触システム210に入る。接触システム210では、原料と、発生水素の少なくとも一部及び触媒とが接触すると、生成物が生成する。この生成物は、幾つかの実施態様では全生成物である。生成物は導管216経由で接触システム210を出る。
特定の実施態様では、図1〜8に示すような接触システム、接触帯、分離帯、及び/又はブレンド帯は、不利な原油を生成する製造用地(site)又はその付近に設けてよい。接触システムで処理後、原料及び/又は原油生成物は、輸送用及び/又は製油所プロセスに使用するのに好適であると考えてよい。
【0109】
幾つかの実施態様では、原油生成物及び/又はブレンド生成物は、製油所及び/又は処理設備に輸送される。原油生成物及び/又はブレンド生成物は、輸送用燃料、暖房用燃料、潤滑油、又は化学薬品のような市販製品(商品)を製造するため、処理してよい。処理は、1種以上の蒸留物フラクションを製造するため、原油生成物及び/又はブレンド生成物の蒸留及び/又は分留を含んでよい。幾つかの実施態様では、原油生成物、ブレンド生成物、及び/又は1種以上の蒸留物フラクションは水素化処理してよい。
【0110】
全生成物は、幾つかの実施態様では、全生成物1g当たりコークスを0.2g以下、0.1g以下、0.05g以下、0.03g以下、又は0.01g以下含有する。特定の実施態様では全生成物は、実質的にコークスを含有しない(即ち、コークスは検出できない)。幾つかの実施態様では原油生成物は、コークスを原油生成物1g当り0.05g以下、0.03g以下、0.01g以下、0.005g以下、又は0.003g以下含有する。特定の実施態様では全生成物のコークス含有量は、原油生成物1g当り0gを超え約0.05g以下、約0.00001〜0.03g、約0.0001〜0.01g、又は約0.001〜0.005gの範囲であるか、検出できない。
【0111】
特定の実施態様では原油生成物のMCR含有量は、原料のMCR含有量の90%以下、80%以下、50%以下、30%以下又は10%以下である。幾つかの実施態様では、原油生成物のMCR含有量は無視できる。幾つかの実施態様ではMCRを、原油生成物1g当り0.05g以下、0.03g以下、0.01g以下又は0.001g以下含有する。通常、原油生成物はMCRを原油生成物1g当り約0gから約0.04g以下、約0.000001〜0.03g、又は約0.00001〜0.01g含有する。
【0112】
幾つかの実施態様では全生成物は非凝縮性ガスを含有する。非凝縮性ガスとしては、限定されるものではないが、通常、二酸化炭素、アンモニア、硫化水素、水素、一酸化炭素、メタン、その他、STPで凝縮性のない炭化水素、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0113】
特定の実施態様では、水素ガス、一酸化炭素、二酸化炭素又はそれらの組合わせは、水蒸気、軽質炭化水素及び原料と、無機塩触媒との接触により現場で形成できる。この種の方法の特定の実施態様は、一般に水蒸気改質と言われる。原料、水蒸気、水素、及び無機塩触媒の反応は、循環流動化条件下で起こる可能性がある。使用される無機塩触媒は、担持された及び担持されない無機塩触媒を含有してよい。
【0114】
幾つかの実施態様では、大部分がガス、又は大部分が原油生成物を製造するには、無機塩触媒は選択してよい。例えば原料からガス及び最小量の原油生成物を製造するには、アルカリ土類金属酸化物の無機塩触媒が選択できる。生成ガスは、多量の(enhanced amount)の炭素酸化物を含有してよい。大部分が原油生成物でガスを最小量で製造する(例えば接触分解法で)には、炭酸塩混合物の無機塩触媒が選択できる。幾つかの実施態様では、担持無機塩触媒は、流動接触分解法で使用できる。
【0115】
一酸化炭素と二酸化炭素との合計生成量は、ガス1g当たり0.1g以上、0.3g以上、0.5g以上、0.8g以上、0.9g以上であってよい。一酸化炭素と二酸化炭素との合計生成量は、ガス1g当たり約0.1〜0.99g、約0.2〜約0.9g、約0.3〜約0.8g、又は約0.4〜約0.7gの範囲であってよい。発生した一酸化炭素対発生した二酸化炭素のモル比は、幾つかの実施態様では0.3以上、0.5以上、0.7以上、1以上、1.5以上、2以上、又は3以上である。幾つかの実施態様では発生した一酸化炭素対発生した二酸化炭素のモル比は、約1:4から、約2:3、約3:2、又は約4:1の範囲である。現場で二酸化炭素に対し優先的に一酸化炭素を発生する能力は、この工程(process)に近い領域又は該工程の上流に配置した他の工程には有益かもしれない。例えば発生した一酸化炭素は、炭化水素地層の処理において還元剤として使用してもよいし、或いは他の方法、例えば合成ガス法に使用してもよい。
【0116】
幾つかの実施態様では、ここで製造された全生成物は、原油生成物、炭化水素ガス、及び炭素酸化物ガス(一酸化炭素及び二酸化炭素)を含有してよい。原料の生成全炭化水素(原油生成物と炭化水素ガスとの組合せ)への転化率は、原料中の炭素のモル量基準で50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、又は1%以下であってよい。原料の生成炭化水素への転化率は、原料中の炭素のモル量基準で0〜約50%、約0.1〜約40%、約1〜約30%、約5〜約20%、又は約3〜約10%の範囲であってよい。
【0117】
原料の生成全炭素酸化物ガス(一酸化炭素と二酸化炭素との組合せ)への転化率は、原料中の炭素のモル量基準で1%以上、10%以上、20%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は95%以上であってよい。原料の生成炭化水素への転化率は、原料中の炭素のモル量基準で0〜約99%、約1〜約90%、約5〜約80%、約10〜約70%、約20〜約60%、又は約30〜約50%の範囲であってよい。
【0118】
幾つかの実施態様では、全生成物中の水素の含有量は、原料中の水素のモル量基準で原料中の水素の含有量より少ない。全生成物中の水素の減少量は、従来の分解、水素化処理、及び/又は水素化加工処理法を用いて製造した生成物とは異なる生成物を生じる。
【0119】
幾つかの実施態様では、ここで生成した全生成物は、沸点範囲分布が約−10℃〜約538℃の化合物の混合物を含有してよい。この混合物は、炭素数が1〜4の範囲の炭化水素を含有してよい。混合物は、C炭化水素を、混合物1g当たり約0.001〜0.8g、約0.003〜0.1g、又は約0.005〜0.01g含有してよい。C炭化水素は、ブタジエンをC炭化水素1g当たり約0.001〜0.8g、約0.003〜0.1g、又は約0.005〜0.01g含有してよい。幾つかの実施態様では、イソパラフィンがn−パラフィンに対する重量比で1.5以下、1.4以下、1.0以下、0.8以下、0.3以下、又は0.1以下生成する。特定の実施態様では、イソパラフィンがn−パラフィンに対する重量比で約0.00001〜1.5、約0.0001〜1.0、又は約0.001〜0.1の範囲で生成する。パラフィンは、イソパラフィン及び/又はn−パラフィンを含有してよい。
【0120】
幾つかの実施態様では、全生成物及び/又は原油生成物は、地層から生成した及び/又は乾留(retort)した原油では一般に見られない比率又は量のオレフィン及び/又はパラフィンを含有してよい。このようなオレフィンは、末端に2重結合を有するオレフィン(“α−オレフィン”)と内部2重結合を有するオレフィンとの混合物を含む。特定の実施態様では、原油生成物のオレフィン含有量は、原料のオレフィン含有量よりも約2、約10、約50、約100、又は少なくとも200のファクター多い。幾つかの実施態様では、原油生成物のオレフィン含有量は、原料のオレフィン含有量よりも1000以下、500以下、300以下、又は250以下のファクター多い。
【0121】
特定の実施態様では、沸点範囲分布が20〜400℃の炭化水素は、オレフィンを、沸点範囲分布が20〜400℃の炭化水素1g当たり約0.00001〜0.1g、約0.0001〜0.05g、又は約0.01〜0.04gの範囲で含有する。
【0122】
幾つかの実施態様では、α−オレフィンを、原油生成物1g当たり0.001g以上、0.005g以上、又は0.01g以上製造できる。特定の実施態様では、原油生成物は、α−オレフィンを、原油生成物1g当たり約0.0001〜0.5g、約0.001〜0.2g、又は約0.01〜0.1g含有する。特定の実施態様では、沸点範囲分布が約20〜400℃の炭化水素は、α−オレフィンを、沸点範囲分布が約20〜400℃の炭化水素1g当たり約0.0001〜0.08g、約0.001〜0.05g、又は約0.01〜0.04g含有する。
【0123】
幾つかの実施態様では、沸点範囲分布が20〜204℃の炭化水素は、α−オレフィン対内部2重結合オレフィンの重量比が0.7以上、0.8以上、0.9以上、1.0以上、1.4以上、又は1.5以上である。幾つかの実施態様では、沸点範囲分布が20〜204℃の炭化水素は、α−オレフィン対内部2重結合オレフィンの重量比が約0.7〜10、約0.8〜5、約0.9〜3、又は約1〜2の範囲である。原油生成物及び市販製品のα−オレフィン対内部2重結合オレフィンの重量比は、通常0.5以下である。α−オレフィンの内部2重結合オレフィンへの増産する能力は、原油生成物の市販製品への転化を容易にするかも知れない。
【0124】
幾つかの実施態様では、原料を、無機塩触媒の存在下に水素源と接触させると、線状オレフィンを含む沸点範囲分布が20〜204℃の炭化水素を製造できる。線状オレフィンは、シス及びトランス2重結合を有する。トランス2重結合を有する線状オレフィン対シス2重結合を有する線状オレフィンの重量比は、0.4以下、1.0以下、又は1.4以下である。特定の実施態様では、トランス2重結合を有する線状オレフィン対シス2重結合を有する線状オレフィンの重量比は、約0.001〜1.4、約0.01〜1.0、又は約0.1〜0.4の範囲である。
【0125】
特定の実施態様では、沸点範囲分布が20〜204℃の炭化水素は、n−パラフィン含有量が、沸点範囲分布が20〜204℃の炭化水素1g当たり0.1g以上、0.15g以上、0.20g以上、又は0.3g以上である。このような炭化水素のn−パラフィン含有量は、炭化水素1g当たり約0.001〜0.9g、約0.1〜0.8g、又は約0.2〜0.5gの範囲であってよい。幾つかの実施態様では、このような炭化水素は、イソパラフィン対n−パラフィンの重量比が1.5以下、1.4以下、1.0以下、0.8以下、又は0.3以下である。このような炭化水素のn−パラフィン含有量から、原油生成物のn−パラフィン含有量は、原油生成物1g当たり約0.001〜0.9g、約0.01〜0.8g、又は約0.1〜0.5gの範囲であると推定できる。
【0126】
原油生成物の合計Ni/V/Fe含有量は、原料の合計Ni/V/Fe含有量の90%以下、50%以下、10%以下、5%以下、又は3%以下である。特定の実施態様では原油生成物は、Ni/V/Feを原油生成物1g当たり0.0001g以下、1×10−5g以下、又は1×10−6g以下含有する。特定の実施態様では原油生成物の合計Ni/V/Fe含有量は、原油生成物1g当たり約1×10−7〜5×10−5g、約3×10−7〜2×10−5g、又は約1×10−6〜1×10−5gの範囲である。
【0127】
幾つかの実施態様では原油生成物のTANは、原料のTANに対し90%以下、50%以下、又は10%以下である。特定の実施態様では原油生成物のTANは、1以下、0.5以下、0.1以下、0.05以下であってよい。幾つかの実施態様では原油生成物のTANは、約0.001〜約0.5、約0.01〜約0.2、又は約0.05〜約0.1の範囲であってよい。
特定の実施態様では原油生成物のAPI比重は、原料のAPI比重に比べて10%以上高いか、50%以上高いか、又は90%以上高い。特定の実施態様では原油生成物のAPI比重は、約13〜50、約15〜30、又は約16〜20である。
【0128】
幾つかの実施態様では原油生成物の合計ヘテロ原子含有量は、原料の合計ヘテロ原子含有量に対し70%以下、50%以下、30%以下である。特定の実施態様では原油生成物の合計ヘテロ原子含有量は、原料の合計ヘテロ原子含有量に対し10%以上、40%以上、又は60%以上である。
【0129】
原油生成物の硫黄含有量は、原料の硫黄含有量に対し90%以下、70%以下、又は60%以下である。原油生成物の硫黄含有量は、原油生成物1g当たり0.02g以下、0.008g以下、0.005g以下、0.004g以下、0.003g以下、又は0.001g以下であってよい。特定の実施態様では原油生成物の硫黄含有量は、原油生成物1g当たり約0.0001〜0.02g、又は約0.005〜0.01gの範囲である。
【0130】
特定の実施態様では原油生成物の窒素含有量は、原料の窒素含有量に対し90%以下又は80%以下であってよい。原油生成物の窒素含有量は、原油生成物1g当たり0.004g以下、0.003g以下、又は0.001g以下であってよい。幾つかの実施態様では原油生成物の窒素含有量は、原油生成物1g当たり約0.0001〜0.005g、又は約0.001〜0.003gの範囲である。
【0131】
幾つかの実施態様では原油生成物は、水素を原油生成物1g当たり0.05〜0.2g、又は0.09〜0.15g含有する。原油生成物の原子H/Cは、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、又は1.4以下であってよい。幾つかの実施態様では原油生成物の原子H/Cは、原料の原子H/Cに対し約80〜120%、又は約90〜110%である。他の実施態様では原油生成物の原子H/Cは、原料の原子H/Cに対し約100〜120%である。原料原子H/Cの20%以内の原油生成物原子H/Cは、工程中の水素の吸収及び/又は消費が最小であることを表示する。
【0132】
原油生成物は、或る沸点範囲の成分を含有する。幾つかの実施態様では原油生成物は、それぞれ原油生成物1g当たり、沸点範囲分布が0.101MPaで200℃以下又は204℃以下の炭化水素を0.001g以上、又は約0.001〜約0.5g;沸点範囲分布が0.101Mpaで約200〜約300℃の炭化水素を0.001g以上、又は約0.001〜約0.5g;沸点範囲分布が0.101MPaで約300〜約400℃の炭化水素を0.001g以上、又は約0.001〜約0.5g ;及び沸点範囲分布が0.101MPaで約400〜約538℃の炭化水素を0.001g以上、又は約0.001〜約0.5g含有する。幾つかの実施態様では、原油生成物は、沸点範囲分布が約204〜約343℃の炭化水素を、原油生成物1g当たり約0.001〜約0.9g、約0.005〜約0.8g、約0.01〜約0.7g、又は約0.1〜約0.6g含有する。
【0133】
幾つかの実施態様では原油生成物のナフサ含有量は、原油生成物1g当たり、約0.00001〜0.2g、約0.0001〜0.1g又は約0.001〜0.05gである。特定の実施態様では原油生成物は、ナフサを0.001〜0.2g又は0.01〜0.05g含有する。幾つかの実施態様ではナフサは、オレフィンをナフサ1g当たり0.15g以下、0.1g以下、又は0.05g以下含有する。特定の実施態様ではオレフィンを原油生成物1g当たり0.00001〜0.15g、0.0001〜0.1g又は0.001〜0.05g含有する。幾つかの実施態様ではナフサのベンゼン含有量は、ナフサ1g当たり0.01g以下、0.005g以下、又は0.002g以下である。特定の実施態様ではナフサのベンゼン含有量は、検出不能であるか、或いは約1×10−7〜約1×10−2g、約1×10−6〜約1×10−5g、約5×10−6〜約1×10−4gの範囲である。ベンゼン含有組成物は、取扱い危険と考えられ、したがって、ベンゼン含有量が比較的少ない原油生成物は、特別な取扱いを必要としないかも知れない。
【0134】
特定の実施態様ではナフサは、芳香族化合物を含有してよい。芳香族化合物は、単環式化合物及び/又は多環式化合物を含有してよい。単環式化合物としては、限定されるものではないが、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、1−エチル−3−メチルベンゼン;1−エチル−2−メチルベンゼン;1,2,3−トリメチルベンゼン;1,3,5−トリメチルベンゼン;1−メチル−3−プロピルベンゼン;1−メチル−2−プロピルベンゼン;1,2,3−トリメチルベンゼン;1,3,5−トリメチルベンゼン;2−エチル−1,4−ジメチルベンゼン;2−エチル−2,4−ジメチルベンゼン;1,2,3,4−テトラメチルベンゼン;エチル,ペンチルメチルベンゼン;1,3−ジエチル−2,4,5,6−テトラメチルベンゼン;トリ−イソプロピル−o−キシレン:ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレ、又はそれらの混合物の置換同属体(congener)が挙げられる。単環式芳香族は、各種市販製品に使用され、及び/又は個々の成分として販売されている。ここで説明したようにして製造された原油生成物は、通常、単環式芳香族を多量に含有する。
【0135】
特定の実施態様では原油生成物のトルエン含有量は、原油生成物1g当たり約0.001〜0.2g、約0.05〜0.15g、又は約0.01〜0.1gである。原油生成物のm−キシレン含有量は、原油生成物1g当たり約0.001〜0.1g、約0.005〜0.09g、又は約0.05〜0.08gである。原油生成物のo−キシレン含有量は、原油生成物1g当たり約0.001〜0.2g、約0.005〜0.1g、又は約0.01〜0.05gである。原油生成物のp−キシレン含有量は、原油生成物1g当たり約0.001〜0.09g、約0.005〜0.08g、又は約0.001〜0.06gである。
【0136】
ナフサの芳香族含有量を増加すると、ナフサのオクタン価を増大しやすい。原油は、原油のガソリン潜在性の見積りに基づいて評価できる。ガソリン潜在性としては、限定されるものではないが、原油中のナフサ部分について計算したオクタン価が挙げられる。原油は、通常、計算オクタン価が約35〜60の範囲である。ガソリンのオクタン価は、オクタン価を向上する添加剤の必要性を低下させやすい。特定の実施態様では、原油生成物は、オクタン価が60以上、70以上、80以上、又は90以上のナフサを含有する。通常、ナフサのオクタン価は、約60〜99、約70〜98、又は約80〜95の範囲である。
【0137】
幾つかの実施態様では原油生成物は、沸点範囲分布が204〜500℃の炭化水素(合計の“ナフサ及びケロシン”)では、原料の合計のナフサ及びケロシンに比べて、合計芳香族含有量が5%以上、10%以上、50%以上、又は99%以上多い。通常、原料中の合計ナフサ及びケロシンの合計芳香族含有量は、原油生成物中の合計ナフサ及びケロシンの合計芳香族含有量よりも約8%、約20%、約75%、又は約100%多い。
【0138】
幾つかの実施態様では、ケロシン及びナフサの合計多芳香族化合物含有量は、合計のケロシン及びナフサ1g当たり約0.00001〜0.5g、約0.0001〜0.2g、又は約0.001〜0.1gの範囲であってよい。
原油生成物の蒸留物含有量は、原油生成物1g当たり約0.0001〜0.9g、約0.001〜0.5g、約0.005〜0.3g、又は約0.01〜0.2gの範囲である。幾つかの実施態様では蒸留物中のケロシン対ディーゼルの重量比は、約1:4〜約4:1、約1:3〜約3:1、又は約2:5〜約5:2の範囲である。
【0139】
幾つかの実施態様では原油生成物は、ケロシンを原油生成物1g当たり0.001g以上、又は0gを超え約0.7g以下、約0.001〜0.5g、又は約0.01〜0.1g含有する。特定の実施態様では原油生成物は、ケロシンを約0.001〜0.5g、又は約0.01〜0.3g含有する。幾つかの実施態様ではケロシンの芳香族含有量は、ケロシン1g当たり0.2g以上、0.3g以上、又は0.4g以上である。特定の実施態様ではケロシンの芳香族含有量は、約0.1〜0.5g、又は約0.2〜0.4gの範囲である。
【0140】
特定の実施態様ではケロシンの凍結点は、−30℃未満、−40℃未満、又は−50℃未満であってよい。原油生成物中のケロシン部分の芳香族含有量が増加すると、該ケロシン部分の密度が増大すると共に、凍結点が低下する傾向がある。高密度で低凍結点のケロシン部分を有する原油生成物は、精製して、所望の高密度で低凍結点を有する航空機タービンの燃料を製造してよい。
【0141】
特定の実施態様では原油生成物のディーゼル含有量は、原油生成物1g当たり約0.001〜0.8g又は約0.01〜0.4gの範囲である。特定の実施態様ではディーゼル油の芳香族含有量は、ディーゼル1g当たり0.1g以上、0.3g以上、又は0.5g以上である。幾つかの実施態様ではディーゼルの芳香族含有量は、約0.1〜1g、約0.3〜0.8g、又は約0.2〜0.5gの範囲である。
【0142】
幾つかの実施態様では原油生成物のVGO含有量は、原油生成物1g当たり約0.0001〜0.99g、約0.001〜0.8g、又は約0.1〜0.3gの範囲である。特定の実施態様では原油生成物中のVGO含有量は、原油生成物1g当たり0.4〜0.9g、又は0.6〜0.8gの範囲である。特定の実施態様ではVGOの芳香族含有量は、VGO 1g当たり約0.1〜0.99g、約0.3〜0.8g、又は約0.5〜0.6gの範囲である。
【0143】
幾つかの実施態様では原油生成物の残留物含有量は、原料の70%以下、50%以下、30%以下、10%以下、又は1%以下である。特定の実施態様では、原油生成物の残留物含有量は、原油生成物1g当たり0.1g以下、0.05g以下、0.03g以下、0.02g以下、0.01g以下、0.005g以下、又は0.001g以下である。幾つかの実施態様では原油生成物の残留物含有量は、原油生成物1g当たり約0.000001〜0.1g、約0.00001〜0.05g、約0.001〜0.03g、又は約0.005〜0.04gの範囲である。
【0144】
幾つかの実施態様では原油生成物は、触媒の少なくとも一部を含有してよい。幾つかの実施態様では原油生成物は、触媒を原油生成物1g当たり、0gを超え0.01g未満、又は約0.000001〜0.001g、又は約0.00001〜0.0001g含有する。触媒は、輸送及び/又は処理設備で処理中、原油生成物の安定化を助ける。また触媒は、腐食及び摩擦を防止し、及び/又は原油生成物の水分離能力を向上できる。触媒の少なくとも一部を含有する原油生成物は、潤滑剤及び/又はその他の市販製品を製造するため、更に処理してよい。
【0145】
全生成物を製造するため、水素源の存在下で原油生成物の処理に使用される触媒は、単一触媒でも複数の触媒でもよい。この用途の触媒は、まず、水素、及び/又は硫黄含有原料が触媒前駆体と接触する際、接触帯中で触媒に転化する触媒前駆体でよい。
【0146】
全生成物を製造するため、原油生成物と水素源との接触に使用される触媒は、原料の分子量の低下を助ける可能性がある。特定の理論に束縛されるものではないが、水素源と組合わせた触媒は、触媒中の塩基(ルイス塩基又はブレンステッド−ローリー塩基)及び/又は超塩基成分の作用により、原料中の成分の分子量を低下する可能性がある。ルイス塩基又はブレンステッド−ローリー塩基特性を有する可能性がある触媒の例としては、ここで説明した触媒が挙げられる。
【0147】
幾つかの実施態様では触媒は無機塩触媒である。無機塩触媒のアニオンには、無機化合物、有機化合物又はそれらの混合物を含有してよい。無機塩触媒としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属アミド、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属蓚酸塩、アルカリ金属蟻酸塩、アルカリ金属ピルビン酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ土類金属アミド、アルカリ土類金属硫化物、アルカリ土類金属酢酸塩、アルカリ土類金属蓚酸塩、アルカリ土類金属蟻酸塩、アルカリ土類金属ピルビン酸塩、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0148】
無機塩触媒としては、限定されるものではないが、NaOH/RbOH/CsOH; KOH//RbOH/CsOH; NaOH/KOH/RbOH; NaOH/KOH/CsOH; K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3; Na2O/K2O/K2CO3; NaHCO3/KHCO3/Rb2CO3; LiHCO3/KHCO3/Rb2CO3; K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3の混合物と混合したKOH/RbOH/CsOH; K2CO3/CaCO3; K2CO3/MgCO3; Cs2CO3/CaCO3; Cs2CO3/CaO; Na2CO3/Ca(OH)2; KH/CsCO3; KOCHO/CaO; CsOCHO/CaCO3; CsOCHO/Ca(OCHO)2; NaNH2/K2CO3/Rb2O; K2CO3/CaCO3/Rb2CO3; K2CO3/CaCO3/Cs2CO3; K2CO3/MgCO3/Rb2CO3; K2CO3/MgCO3/Cs2CO3;又は K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3と混合したCa(OH) 2;の混合物が挙げられる。幾つかの実施態様では無機塩触媒は、石灰石(CaCO3)又はドロマイト(白雲石、CaMg(CO3)2)である。
【0149】
幾つかの実施態様では無機塩触媒は、アルカリ土類金属酸化物、又はアルカリ金属酸化物の組合せである。また幾つかの実施態様では無機塩触媒は、アルカリ土類金属酸化物、及び/又は周期表第13欄の金属の酸化物を含む。第13欄の金属としては、限定されるものではないが、ホウ素又はアルミニウムが挙げられる。金属酸化物の非限定的な例としては、酸化リチウム(LiO)、酸化カリウム(KO)、酸化カルシウム(CaO)、又は酸化アルミニウム(Al)が挙げられる。
【0150】
特定の実施態様では無機塩触媒は、原子番号が11以上のアルカリ金属を含む1種以上のアルカリ金属を含有する。無機塩触媒が2種以上のアルカリ金属である場合、幾つかの実施態様では、原子番号11以上のアルカリ金属対原子番号11を超えるアルカリ金属の原子比は、約0.1〜約10、約0.2〜約6、又は約0.3〜約4の範囲である。例えば無機塩触媒は、ナトリウム、カリウム及びルビジウムの塩を、ナトリウム対カリウム比約0.1〜6、ナトリウム対ルビジウム比約0.1〜6、及びカリウム対ルビジウム比約0.1〜6の範囲で含有してよい。他の例では、無機塩触媒は、ナトリウム塩及びカリウム塩を、ナトリウム対カリウム原子比で約0.1〜約4含有する。
【0151】
幾つかの実施態様では無機塩触媒は、周期表第8〜10欄の金属、周期表第8〜10欄の金属の化合物、周期表第6欄の金属、周期表第6欄の金属の化合物、又はそれらの混合物も含有する。周期表第8〜10欄の金属としては、限定されるものではないが、鉄、ルテニウム、コバルト又はニッケルが挙げられる。周期表第6欄の金属としては、限定されるものではないが、クロム、モリブデン、又はタングステンが挙げられる。幾つかの実施態様では無機塩触媒は、ラネーニッケルを無機塩触媒1g当たり約0.1〜0.5g、又は約0.2〜0.4g含有する。
【0152】
幾つかの実施態様では無機塩触媒は、リチウムを無機塩触媒1g当たり、リチウム重量として計算して、0.00001g以下、0.001g以下、又は0.01g以下含有する。幾つかの実施態様では無機塩触媒は、リチウムを無機塩触媒1g当たり、リチウム重量として計算して、約0gから0.01g未満、約0.0000001〜0.001g、又は約0.00001〜0.0001g含有する。
【0153】
特定の実施態様では無機塩触媒は、ルイス酸(例えばBCl、AlCl及びSO)、ブレンステッド−ローリー酸(例えばH、HSO、HCl及びHNO)、ガラス形成性組成(例えばボレート及びシリケート)及びハロゲン化物を含まないか、実質的に含まない。無機塩は、それぞれ無機塩触媒1g当たり、a)ハロゲン化物、b)350℃以上又は1000℃以下の温度でガラスを形成する組成、c)ルイス酸、d)ブレンステッド−ローリー酸、又はe)それらの混合物を約0gから約0.1g、約0.000001〜0.01g、又は約0.00001〜0.005g含有してよい。
【0154】
無機塩触媒は、標準的技術を用いて製造してよい。例えば触媒の各成分を所望量、標準的混合技術(例えば混練及び/又は粉砕)を用いて配合してよい。他の実施態様では、無機組成物を溶剤(水、又は適当な有機溶剤)に溶解して、無機組成物/溶剤混合物を形成する。標準の分離技術を用いて、溶剤を除去し、無機塩触媒を製造できる。
【0155】
幾つかの実施態様では無機塩触媒の無機塩は、支持体中に取込んで、担持無機塩触媒を形成してもよい。支持体は、幾つかの実施態様では、高温において無機塩の塩基性に対し化学耐性を示す。支持体は、熱を吸収する能力(例えば高い熱容量)を持ってよい。無機塩触媒支持体の熱吸収能力は、担持しない無機塩触媒を用いた場合に比べて、接触帯の温度を低下できる。支持体の例としては、限定されるものではないが、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化チタン、ハイドロタルク石、ゲルマニア、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化アンチモン、炭酸カルシウムマグネシウム、アルミノシリケート、石灰石、ドロマイト(白雲石)、活性炭、不揮発性木炭、及びそれらの混合物が挙げられる。幾つかの実施態様では無機塩、第6〜10欄の金属及び/又は第6〜10欄の金属の化合物を支持体に含浸してよい。或いは無機塩は、熱で溶融又は軟化し、金属支持体又は金属酸化物支持体中及び/又は上に押込んで、担持無機塩触媒を形成してもよい。幾つかの実施態様では、使用済み水素化処理触媒は、無機塩触媒支持体と組合わせ、及び/又は無機塩触媒と併用される。幾つかの実施態様では全生成物/原料混合物から回収された金属及び/又は金属化合物は、無機塩触媒支持体と組合わせ、及び/又は無機塩触媒と併用される。
【0156】
幾つかの実施態様では無機塩触媒は、第4欄金属酸化物と混合される。第4欄金属酸化物としては、限定されるものではないが、ZnO及び/又はTiOが挙げられる。無機塩触媒対第4欄金属酸化物のモル比は、約0.01〜約5、約0.5〜約4、又は約1〜約3の範囲であってよい。
【0157】
幾つかの実施態様では担持無機塩触媒は、粒度により特徴化される。担持無機塩触媒の粒度は、約20〜約500μm、約30〜約400μm、約50〜約300μm、約100〜約200μmの範囲であってよい。
【0158】
幾つかの実施態様では無機塩の構造は、通常、不均質、浸透性となり、及び/又は触媒構造中に秩序(又は規則)の低下が生じると、特定の温度又は温度範囲で動きやすくなる。無機塩触媒は、殆ど組成変化(例えば塩の分解)なしで無秩序になる。理論に束縛されるものではないが、無機塩触媒の格子中のイオン間距離が拡大すると、無機塩触媒は無秩序(動きやすい)になるものと考えられる。イオン間距離が拡大するのに従って、原料及び/又は水素源は、無機塩触媒の表面を横断する代りに、無機塩に浸透する可能性がある。原料及び/又は水素源が無機塩に浸透すると、無機塩触媒及び/又は原料及び/又は水素源間の接触面積が増大することが多い。無機塩触媒の接触面積及び/又は反応面積が増大すると、原油生成物の収率が向上し、残留物及び/又はコークスの生成が抑制され、及び/又は原料の同じ特性に比べて原油生成物の特性が変化しやすくなることが多いかも知れない。無機塩触媒の無秩序性(例えば不均質性、浸透性、及び/又は易動度)は、DSC法、イオン導電率測定法、TAP法、視覚的検査、X線回折法又はそれらの組合わせを用いて測定してよい。
【0159】
TAPを用いて触媒特性を測定する方法は、Ebner等の米国特許4、626,412、Gleaves等の米国特許5,039,489、Ebner等の米国特許5,264,183に記載されている。TAPシステムは、Mithra Technologies(米国ミズーリ州Foley)から得られる。TAP分析は、約25〜850℃、約50〜500℃又は約60〜400℃の温度範囲、約10〜50℃又は約20〜40℃の加熱速度、及び約1×10−13〜約1×10−8の範囲の減圧で行ってよい。温度は、一定に維持し及び/又は時間の関数として高めてもよい。無機塩触媒の温度上昇と共に、無機塩触媒からのガス放出を測定する。無機塩触媒からの放出ガスの例としては、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水又はそれらの混合物が挙げられる。無機塩触媒からのガス発生で変曲点(鋭い増加)が検出される温度は、無機塩触媒が無秩序となる温度とみなされる。
【0160】
幾つかの実施態様では無機塩触媒からの放出ガスで変曲点は、TAPを用いて測定した温度範囲に亘って検出してよい。この温度又は温度範囲は、“TAP温度”と言う。TAPを用いて測定した温度範囲の初期温度は、“TAP最低温度”と言う。
【0161】
原料との接触に好適な無機塩触媒で示される放出ガス変曲点は、約100〜600℃、約200〜500℃又は約300〜400℃のTAP温度範囲内にある。通常、TAP温度範囲は約300〜500℃の範囲である。幾つかの実施態様では好適な無機塩触媒の異なる組成もガス変曲点を示すが、TAP温度は異なる。
【0162】
放出ガスと関連するイオン化変曲点の大きさは、結晶構造中の粒子の秩序を示す指標であってよい。高秩序の結晶構造ではイオン粒子は、一般に緻密に会合し、結晶構造からのイオン、分子、ガス又はそれらの組合わせの解放には一層のエネルギー(即ち、一層の加熱)を必要とする。無秩序結晶構造ではイオンは、高秩序結晶構造のイオン程、互いに強力に会合していない。このように低いイオン会合により、一般に無秩序結晶構造からイオン、分子及び/又はガスの解放に要するエネルギーは低くて済み、したがって、無秩序結晶構造から解放したイオン及び/又はガスの量は、通常、選択した温度で高秩序結晶構造から解放したイオン及び/又はガスの量よりも多い。
【0163】
幾つかの実施態様では、無機塩触媒の解離熱は、示差走査熱量計で測定して、約10℃の加熱又は冷却速度で約50〜約500℃の範囲に観察されてよい。DSC法ではサンプルは、第一温度に加熱し、室温に冷却し、次いで第二加熱する。一般に、第一加熱中に観察される遷移は、同伴の水及び/又は溶剤を示し、解離熱を示さないかも知れない。例えば容易に観察される湿った又は水和サンプルの乾燥熱は、一般に250℃未満、通常、100〜150℃で生じる可能性がある。冷却サイクル及び第二加熱中に観察される遷移は、サンプルの解離熱に相当する。
【0164】
“加熱遷移(transition)”とは、DSC分析中に温度が低下して、構造中の秩序のある分子及び/又は原子が無秩序になる時に起こるプロセスを言う。“冷却遷移”とは、DSC分析中に温度が低下して、構造中の分子及び/又は原子が一層均質になる時に起こるプロセスを言う。幾つかの実施態様では、無機塩触媒の熱/冷却遷移は、DSCで検出される温度範囲に亘って起こる。無機塩触媒の加熱遷移が第二加熱サイクル中に起こる温度又は温度範囲は、“DSC温度”と言う。第二加熱サイクル中の温度範囲の最低DSC温度は、“最低DSC温度”と言う。無機塩触媒は、約200〜500℃、約250〜450℃、又は約300〜400℃の範囲の加熱遷移を示す。
【0165】
無機塩粒子を比較的均質な混合物として含む無機塩では、第二加熱サイクル中に吸収された熱と関連するピークの形状は、比較的狭いかも知れない。比較的不均質な混合物中に無機塩粒子を含む無機塩触媒では、第二加熱サイクル中に吸収された熱と関連するピークの形状は、比較的広いかも知れない。DSCスペクトルにピークがなければ、塩は、走査温度範囲で熱を吸収又は解放しないことを示す。加熱遷移がなければ、一般にサンプルの構造が加熱によって変化しないことを示す。
【0166】
無機塩混合物の粒子の均質性が向上すると、加熱中、混合物が固体及び/又は半固体のまま残す能力は低下する。無機混合物の均質性は、混合物中のカチオンのイオン半径に関連する可能性がある。イオン半径が小さいカチオンでは、カチオンが電子密度を対応するアニオンと分かち合う能力及び対応するアニオンの酸性度は増大する。同様な電荷を有する一連のイオンでは、アニオンが硬質塩基であれば、小さいイオン半径により、カチオンとアニオン間のイオン間(interionic)引力が高くなりやすい。このような高いイオン間引力により、塩及び/又は塩中の一層均質な粒子混合物についての加熱遷移温度は高くなる(DSC曲線で鋭いピーク及び面積の増大)。イオン半径が小さいカチオンを含有する混合物は、イオン半径が大きいカチオンよりも一層酸性になりやすく、こうして、無機塩混合物の酸性度は、カチオン半径の低下に従って増大する。例えばリチウムカチオン含有無機混合物の存在下で原料と供給源とを接触させると、リチウムよりもイオン半径の大きいカチオンを含有する無機塩触媒の存在下で原料と水素源とを接触させた場合に比べてガス及び/又はコークスの生成量が増大しやすい。ガス及び/又はコークスの発生を防止する能力により、本方法による全液体生成物の収率が向上する。
【0167】
特定の実施態様では、無機塩触媒は、2種以上の無機塩を含有してよい。これら無機塩の各最低DSC温度を測定してもよい。無機塩触媒の最低DSC温度は、無機塩触媒中の無機塩の少なくとも1種の最低DSC温度未満であってよい。例えば無機塩触媒は、炭酸カリウム及び炭酸セシウムを含有してよい。炭酸カリウム及び炭酸セシウムは、500℃を超えるDSC温度を示す。K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒のDSC温度は、約290〜300℃の範囲である。
【0168】
幾つかの実施態様ではTAP温度は、無機塩の少なくとも1種のDSC温度と無機塩触媒のDSC温度との間であってよい。例えば無機塩触媒のTAP温度は、約350〜500℃の範囲であってよい。同じ無機塩触媒のDSC温度は、約200〜300℃の範囲であってよく、また個々の無機塩のDSC温度は、500℃以上又は1000℃以下であってよい。
【0169】
多くの実施態様では、TAP温度及び/又はDSC温度が約150〜500℃、約200〜450℃又は約300〜400℃であり、かつこれらの温度で分解を受けない無機塩触媒は、高分子量及び/又は高粘度組成物(例えば原料)の液体生成物への転化を触媒するのに使用できる。
【0170】
特定の実施態様では無機塩触媒は、約200〜600℃、約300〜500℃又は約350〜450℃の範囲の温度で加熱中、個々の無機塩に比べて、導電率が増大してよい。無機塩触媒のこのような導電率の増大は、一般に無機塩触媒中の粒子が動きやすくなるからと考えられる。幾つかの無機塩触媒のイオン導電率は、該触媒の単独成分のイオン導電率が変化する温度よりも、低い温度で変化する。
【0171】
無機塩触媒のイオン導電率は、オームの法則、即ち、V=IR(但し、Vは電圧、Iは電流、Rは抵抗である)を適用して測定してよい。イオン導電率を測定するには、無機塩触媒を、互いに分離された2本のワイヤー(例えば銅線又は白金線)付き石英容器に入れ、これらのワイヤーを無機塩触媒中に浸漬すればよい。
【0172】
図9は、イオン導電率の測定に使用できるシステムの概略図である。サンプル222を入れた石英容器220を加熱装置に入れ、漸増的に所望温度に加熱する。加熱中、電源224の電圧をワイヤー226に適用する。ワイヤー226、228を通って得られる電流をメーター230で測定する。メーター230は、限定されるものではないが、マルチメーターでもホイーストンブリッジでもよい。サンプル222は、分解を起こすことなく、少し均質化する(一層動きやすい)と、サンプルの抵抗率は低下し、メーター230で観察される電流は増加する。
【0173】
幾つかの実施態様では、加熱し、冷却し、次いで加熱した後、無機塩触媒は、所望の温度で異なるイオン導電率を持っていてよい。イオン導電率の相違は、無機塩触媒の結晶構造が、加熱中、元の形状(第一形態)から異なる形状(第二形態)に変化したことを示す可能性がある。無機塩触媒の形態が加熱中、変化しなければ、イオン導電率は、加熱後、同様か同じであると予想される。
特定の実施態様では無機塩触媒の粒度は、触媒をメッシュ又は篩の通過で測定して、約10〜1000μm、約20〜500μm、又は約50〜100μmの範囲である。
【0174】
無機塩触媒は、50℃を超え500℃未満の温度に加熱すると、軟化する可能性がある。無機塩触媒が軟化すると、液体及び触媒粒子は、無機塩触媒の母材中に共存するかも知れない。幾つかの実施態様では触媒粒子は、重力下、又は0.007MPa以上又は0.101MPa以下の圧力下、300℃以上又は800℃以下の温度に加熱すると、自己変形するかも知れない。その結果、無機塩触媒は、第一形態から第二形態に転位する。無機塩触媒を約20℃に冷却すると、無機塩触媒の第二形態は、無機塩触媒の第一形態に戻ることができない。無機塩が第一形態から第二形態に転位する温度は、“変形”温度と言われている。変形温度は、温度範囲であっても単一温度であってもよい。特定の実施態様では無機塩触媒の粒子は、個々の無機塩のいずれかの変形温度未満の変形温度に加熱すると、自己変型する。幾つかの実施態様では無機塩触媒は、変形温度の異なる2種以上の無機塩を含む。幾つかの実施態様では無機塩触媒の変形温度は、個々の無機金属塩の変形温度とは異なる。
【0175】
特定の実施態様では無機塩触媒は、TAP温度以上、及び/又はDSC温度以上で液体及び/又は半液体である。幾つかの実施態様では無機塩触媒は、最低のTAP温度及び/又はDSC温度で液体及び/又は半液体である。幾つかの実施態様では、最低のTAP温度以上及び/又はDSC温度以上で液体又は半液体の無機塩触媒は、原料と混合すると、原料とは別個の相を形成する。幾つかの実施態様では、このような液体又は半液体の無機塩触媒は、原料への溶解性が低い(例えば原料1g当たり無機塩触媒約0gから約0.5g以下、0.0000001〜0.2g、又は約0.0001〜0.1g)か、或いは最低TAP温度で原料に溶解しない(例えば原料1g当たり無機塩触媒約0gから約0.05g以下、約0.000001〜0.01g、又は約0.00001〜0.001g)。
【0176】
幾つかの実施態様では粉末X線回折法は、無機塩触媒中の原子間間隔を測定するのに使用される。X線スペクトルにおけるD001ピークの形状をモニターし、無機塩粒子の相対秩序を推定できる。 X線回折におけるピークは、無機塩触媒中の異種の化合物を表す。粉末X線回折ではD001ピークをモニターし、原子間間隔を推定できる。高秩序の無機塩原子を有する無機塩触媒では、D001ピークの形状は比較的狭い。無機塩触媒(例えばK2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒)では、D001ピークの形状は比較的広いか、D001ピークは存在しないかも知れない。無機塩原子の無秩序が加熱中、変化するかどうか測定するには、加熱前に無機塩触媒のX線回折スペクトルを取り、加熱後に取ったX線回折スペクトルと比較すればよい。50℃を超える温度で取ったX線回折スペクトル中のD001ピーク(無機塩原子に相当する)は、50℃未満の温度で取ったX線回折スペクトル中に存在しないか、該X線回折スペクトル中のD001ピークよりも広いかも知れない。更に、個々の無機塩のX線回折パターンは、同じ温度で比較的狭いD001ピークを示すかも知れない。
【0177】
副生物の形成を抑制し、及び/又は防止する他、所定の原料について、全生成組成物(したがって、原油生成物)が変化できるように、接触条件は制御してよい。全生成組成物としては、限定されるものではないが、パラフィン、オレフィン、芳香族又はそれらの混合物が挙げられる。これらの化合物は、原油生成物及び非凝縮性炭化水素ガスの組成物を構成する。
【0178】
ここで説明した触媒と組合わせた制御接触条件は、予想されるコークス含有量よりも少ない全生成物を製造できる。各種原油のMCR含有量の比較から、コークスの形成し易さに基づいて、原油を格付けできる。例えばMCR含有量が原油1g当たり約0.1gの原油は、MCR含有量が原油1g当たり約0.001gの原油よりも多くコークスを形成することが予想される。不利な原油は、通常、MCR含有量が不利な原油1g当たり0.05g以上である。
【0179】
幾つかの実施態様では反応期間中、触媒上に沈着する残留物含有量及び/又はコークス含有量は、触媒1g当たり0.2g以下、0.1g以下、0.05g以下、又は0.03g以下である。特定の実施態様では触媒上に沈着する残留物量及び/又はコークス量は、触媒1g当たり約0.0001〜0.1g、約0.001〜0.05g、又は約0.01〜0.03gの範囲である。幾つかの実施態様では使用済み触媒は、残留物及び/又はコークスを実質的に含まない。特定の実施態様では接触条件は、コークスが原油生成物1g当たり0.05g以下、0.015g以下、0.01g以下、0.005g以下、又は0.003g以下生成するように、制御する。原料を、制御した接触条件下で触媒と接触させると、原料を製油所触媒の存在下、又は触媒の不存在下、同じ接触条件で加熱して生成したコークス及び/又は残留物の量に比べて、コークス及び/又は残留物の量が低下する。
【0180】
幾つかの実施態様では接触条件は、原料が原料1g当たり0.5g以上、0.7g以上、0.8g以上、又は0.9g以上、原油生成物に転化するように、制御してよい。原油生成物は、接触中、原料1g当たり約0.5〜0.99g、約0.6〜0.9g、又は約0.7〜0.8g生成する。原料を、残留物及び/又はコークス(あれば)を最低収率で含む原油生成物に転化すると、原油生成物は、製油所で最小量の予備処理で済む市販製品に転化できる。特定の実施態様では原料は、原料1g当たり0.2g以下、0.1g以下、0.05g以下、0.03g以下、又は0.01g以下、非凝縮性炭化水素に転化される。幾つかの実施態様では非凝縮性炭化水素は、原料1g当たり約0〜約0.2g、約0.0001〜0.1g、約0.001〜0.05g、又は約0.01〜0.03g生成する。
【0181】
所望の反応温度を維持するため、接触帯温度、原料の流速、全生成物の流速、触媒の供給速度及び/又は供給量、又はそれらの組合わせを制御してよい。幾つかの実施態様では接触帯の温度制御は、接触帯に通すガス状水素源の流れ及び/又は水素量を希釈するため、及び/又は接触帯からの余分な熱を除去するため、接触帯に通す不活性ガスの流れを変化させて行ってもよい。
【0182】
幾つかの実施態様では接触帯の温度は、所望温度“T”に、或いは該温度よりより高いか低くなるように、制御してよい。特定の実施態様では接触温度は、接触帯の温度が最低TAP温度未満及び/又は最低DSC温度未満になるように制御する。特定の実施態様ではTは、最低TAP温度及び/又は最低DSC温度よりも約30℃、約20℃又は約10℃低い。例えば一実施態様では接触温度は、最低TAP温度及び/又は最低DSC温度が400℃である場合、反応期間中、約370℃、約380℃又は約390℃になるように制御してよい。
【0183】
他の実施態様では接触温度は、触媒TAP温度以上及び/又は触媒DSC温度以上になるように制御する。例えば接触温度は、最低TAP温度及び/又は最低DSC温度が450℃である場合、反応期間中、約450℃、約500℃又は約550℃になるように制御してよい。接触温度を触媒TAP温度基準及び/又は触媒DSC温度基準で制御すると、得られる原油生成物の特性を向上できる。このような制御は、例えばコークスの形成を減少させるか、非凝縮性ガスの形成を減少させるか、或いはそれらの組合わせであってよい。
【0184】
特定の実施態様では無機塩触媒は、原料を添加する前に、状態調節を行ってよい。幾つかの実施態様では状態調節は、原料の存在下で行ってよい。無機塩触媒の状態調節は、該触媒を100℃以上、300℃以上、400℃以上、又は500℃以上の第一温度に加熱する工程、次いでこれを250℃以下、200℃以下、又は100℃以下の第二温度に冷却する工程を含んでよい。特定の実施態様では無機塩触媒は、約150〜700℃、約200〜600℃又は約300〜500℃の範囲の温度に加熱し、次いで約25〜240℃、約30〜200℃、又は約50〜90℃の範囲の第二温度に冷却する。状態調節温度は、異なる温度でイオン導電率を測定して求めてよい。幾つかの実施態様では状態調節温度は、無機塩触媒をDSC中で多数回、加熱、冷却により得られる加熱/冷却遷移からDSC温度を求め、この温度から測定できる。無機塩触媒を状態調節すると、原料の接触を、従来の水素化処理触媒の場合よりも低い反応温度で行うことができる。
【0185】
特定の実施態様では触媒対原料比の変化は、接触中、生成するガス、原油生成物、及び/又はコークスの量に影響を与えるかも知れない。担持無機触媒対原料比は、2〜10又は10を超える範囲であってよい。原料の全生成物への転化率は、50%以上、60%以上、80%以上、90%以上、又は99%以上であってよい。全生成物中のガスの含有量は、原料1g当たり0.1g以上、0.5g以上、0.7g以上、0.9g以上、又は0.95g以上の範囲であってよい。製造された生成物の含有量は、原料1g当たり約0.1〜0.99g、約0.3〜0.9g、又は約0.5〜約0.7gの範囲であってよい。全生成物中の原油生成物の含有量は、原料1g当たり0.1g以上、0.5g以上、0.7g以上、0.9g以上、又は0.95g以上の範囲であってよい。製造された生成物の含有量は、原料1g当たり約0.1〜0.99g、約0.3〜0.9g、又は約0.5〜約0.7gの範囲であってよい。コークスは、原料1g当たり0.2g、0.1g以下、0.05以下形成冴えるかも知れない。
【0186】
幾つかの実施態様では、全生成物中のナフサ、蒸留物、VGO又はそれらの混合物の含有量は、接触帯からの全生成物の取出し速度を変えることにより変化させてよい。例えば全生成物の取出し速度を低下させると、原料と触媒との接触時間を長くしやすい。或いは、初期圧力と比べて圧力を上げると、原油生成物の収率が向上するし、原料又は水素源の所定の質量流量ではガスからの水素の原油生成物への取入れ量が増えるし、或いはこれら効果の組合わせが変更可能となる。原料と触媒との接触時間が長くなると、これより短時間の接触により生成したディーゼル、ケロシン、ナフサ及びVGOの量に比べて、ディーゼル、ケロシン又はナフサは多量に、またVGOは少量生成する可能性がある。また接触帯で全生成物の接触時間が長くなると、原油生成物の平均炭素数が変化可能となる。長い接触時間により、低炭素数の重量割合が増大する(したがって、API比重が高くなる)。
【0187】
幾つかの実施態様では接触条件は、経時により変化させてよい。例えば原料が吸収して原油生成物を製造する水素を増量するため、接触圧力及び/又は接触温度を上げてもよい。原料の他の特性を向上しながら、原料の水素吸収量を変化させる能力により、単一原料から製造可能な原油生成物の種類が多くなる。単一原料から多種の原油生成物を製造する能力により、各種の輸送用及び/又は処理用規格に適合可能となる。
【0188】
軽質炭化水素及び水蒸気の存在下に原料を無機塩触媒と接触させると、現場で水素及び一酸化炭素を発生する。この一酸化炭素は水蒸気と反応して、二酸化炭素及び更に水素を生成する。この水素を塩基性条件下で原料に取込んで新規の生成物を形成してよい。水蒸気の量、接触帯の温度、及び触媒の選択を制御すると、従来の接触法で得られる炭化水素とは異なる原料から炭化水素を製造できる。
【0189】
水素の吸収量は、原料のH/C原子比と原油生成物のH/C原子比との比較により評価してよい。原料のH/C原子比と比較した場合、原油生成物のH/C原子比の増加は、水素源から原油生成物中に水素を取込んだことを示す。原油生成物のH/Cの比較的少ない増加(原料に比べて20%)は、プロセス中の水素ガスの消費が比較的少ないことを示す。最小量の水素消費で得られる原油生成物の特性は、原料の特性に比べて、顕著に向上することが望ましい。
【0190】
全生成物の所望組成に従って、水蒸気量を変化させてよい。液体に比べてガスを多く含む全生成物を製造するため、更に多くの水蒸気を接触帯に加えてよい。水蒸気対原料の重量比は、原料の特性に従って0.001〜100、0.01〜10、0.05〜5.又は1〜3の範囲であってよい。液体又は半液体の原料では、水蒸気対原料比は、0.001以上、0.01以上、0.02以上、又は1以上であってよい。固体及び/又は半固体原料では、水蒸気対原料比は、1以上、2以上、3以上、5以上、又は10以上であってよい。また水蒸気量を変化させると、一酸化炭素対二酸化炭素比が変化する。生成ガス中の一酸化炭素対二酸化炭素比は、接触帯中の水蒸気対原料の重量比を変えれば、0.01〜10、又は0.02〜6、又は0.03〜5、又は1〜4に変化できる。例えば接触帯中の水蒸気対原料比を上げると、一酸化炭素対二酸化炭素比は低下する。
【0191】
水素源対原料比も、原油生成物の特性変化のために、変化させてよい。例えば水素源対原料比を上げると、原油生成物1g当たりのVGO含有量が増加した原油生成物が得られる。
幾つかの実施態様では、前述のように原料は相当量の硫黄を含有してよい。このような硫黄は、ここで説明したシステム、方法及び/又は触媒を使用して、原料の接触中、硫化水素に転化してよい。原料は、接触前に硫化水素ガスを含有してもよい。有機硫黄又は硫化水素として存在する硫黄は、商用製品を作るため原料の処理加工に使用される触媒の活性を被毒させ及び/又は低下させることが知られている.幾つかの製油所操作では、輸送用燃料のような商用製品を得るため、処理前に原料から硫黄を除去処理している。硫黄の含有量が、硫化水素として測定して、原料1g当たり硫化水素約0.00001〜約0.01g又は約0.0001〜約0.001gで、水素化及び/又は接触分解法に使用される慣用触媒の活性を被毒させ及び/又は低下させる可能性がある。
【0192】
幾つかの実施態様では、無機塩触媒及び硫黄含有化合物の存在下で原料を水素源と接触させると、原油生成物及び/又はガスを含む全生成物を製造できる。幾つかの実施態様では原料は、硫化水素の存在下で無機塩触媒を交換することなく、500時間以上、1000時間以上、又は2000時間以上接触させる。幾つかの実施態様では、原料を硫黄含有化合物の存在下に水素源及び水蒸気と接触させた場合、硫黄の不存在下に同じ条件で接触させた場合に比べて、硫黄の存在により、酸化炭素ガス(例えば二酸化炭素及び一酸化炭素)の製造が増進する可能性がある。幾つかの実施態様では、原料を無機塩触媒及び硫化水素の存在下に水素源と接触させると、酸化炭素ガスを原料1g当たり0.2g以上、0.5g以上、0.8g以上、又は0.9g以上含有する全生成物を生成する。
【0193】
特定の実施態様では、原料を軽質炭化水素及び/又は水蒸気の存在下で無機塩触媒と接触させると、原料を水素及び水蒸気の存在下で無機塩触媒と接触させた場合に比べて、原油生成物中の液体炭化水素が多くなる一方、コークスが少なくなる。原料を無機塩触媒の存在下でメタンと接触させる工程を含む実施態様では、原油生成物の複数成分の少なくとも一部は、これら成分の分子構造中に炭素原子及び水素原子(メタンから)を取込んだ可能性がある。
【0194】
特定の実施態様では、無機塩触媒の存在下に水素源と接触させた原料から製造した原油生成物の容積は、STPにおいて熱プロセスで製造した原油生成物の容積に比べて、5%以上、10%以上、又は15%以上多いか、100%以下大きい。原料と無機塩触媒との接触により製造した原油生成物の全容積は、STPにおける原料の容積の110容量%以上であるかも知れない。容積の増大は、密度低下によるものと考えられる。低密度は、一般に少なくとも部分的には原料の水素化による可能性がある。
【0195】
特定の実施態様では、それぞれ原料1g当たり、硫黄を0.02g以上、0.05g以上、又は0.1g以上、及び/又はNi/V/Feを0.001g以上含有する原料は、無機塩触媒の存在下、触媒活性を低下させることなく、水素源と接触させる。
【0196】
幾つかの実施態様では無機塩触媒は、触媒を汚染する1種以上の成分を除去することにより、少なくとも部分的に再生できる。汚染物としては、限定されるものではないが、金属、硫化物、窒素、コークス又はそれらの混合物が挙げられる。硫化物汚染物は、水蒸気及び二酸化炭素を使用済み無機塩触媒と接触させて硫化水素を生成することにより、使用済み無機塩触媒から除去できる。窒素汚染物は、使用済み無機塩触媒を水蒸気と接触させてアンモニアを生成することにより、除去できる。コークス汚染物は、使用済み無機塩触媒を水蒸気及び/又はメタンと接触させて水素及び一酸化炭素を生成することにより、使用済み無機塩触媒から除去できる。幾つかの実施態様では、使用済み無機塩触媒と残存原料との混合物から1種以上のガスが発生する。
【0197】
特定の実施態様では、無機塩触媒(例えば担持無機塩触媒、ZrO2とCaOとの混合物、ZrO2とMgOとの混合物、K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3;: KOH/Al2O3: Cs2CO3/CaCO3;又はNaOH/KOH/LiOH/ZrO2)、未反応原料及び/又は残留物及び/又はコークスは、水蒸気、水素、二酸化炭素、及び/又は軽質炭化水素の存在下でガス及び/又は液体の生成が最小となるまで、約700〜1000℃又は約800〜900℃の範囲の温度に加熱して、液相及び/又はガスを生成させる。ガスは、反応性ガスに比べて増量した水素及び/又は二酸化炭素を含有してよい。例えばガスは、水素及び/又は二酸化炭素を、反応性ガス1モル当たり約0.1〜99モル又は約0.2〜8モル含有してよい。ガスは、軽質炭化水素及び/又は一酸化炭素を比較的少量含有してよい。例えば軽質炭化水素はガス1g当たり約0.05g未満であり、一酸化炭素はガス1g当たり約0.01g未満である。液相は、水を、例えば液体1g当たり0.5gを超え0.99g以下、又は0.9gを超え0.9g以下含有する。
【0198】
幾つかの実施態様では、接触帯中の使用済みの触媒及び/又は固体は、これらから金属(例えばバナジウム及び/又はニッケル)を回収するため、処理してよい。使用済みの触媒及び/又は固体は、一般に知られている金属分離技術、例えば加熱、化学的処理、及び/又はガス化により処理してよい。
【実施例】
【0199】
以下に触媒の製造、触媒のテスト、及び制御した接触条件を有するシステムの非限定的実施例を示す。
【0200】
例1:K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒及び個々の無機塩のTAPテスト
いずれのTAPテストでも、サンプル300gは、TAPシステムの反応器中で室温(約27℃)から1分当たり50℃の速度で500℃に加熱した。放出された水の蒸気及び二酸化炭素は、TAPシステムの質量分光計を用いてモニターした。
【0201】
アルミナ上に担持したK2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒は、約360℃で無機塩触媒から放出された二酸化炭素の電流変曲点0.2ボルト及び放出された水の電流変曲点0.01ボルトよりも高い電流変曲点を示した。最低TAP温度は約360℃で、イオン電流対温度を自然対数プロットして測定した。図10は、 K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒から放出されたガスのイオン電流(“対数(I)”)を、温度(“T”)について自然対数プロットしたグラフである。曲線232、234は、この無機塩触媒から放出された水及びCOについてのイオン電流の対数値である。この無機塩触媒の放出水及び放出COに対し、シャープな変曲点が約360℃で起こる。
【0202】
K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒とは対照的に、炭酸カリウム及び炭酸セシウムは、放出水、放出二酸化炭素の両方とも、360℃では電流変曲点は検出できなかった。
K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3;触媒で放出ガスがかなり増加したことは、2種以上の異なる無機塩で構成される無機塩触媒が、個々の純粋な無機塩よりも更に無秩序であってよいことを示している。
【0203】
例2:無機塩触媒及び個々の無機塩のDSCテスト
いずれのDSCテストでも、示差走査熱量計(DSC)モデルDSC−7〔Perkin−Elmer(Norwalk,米国コネチカット州)〕を用いて、サンプル10mgを1分当たり10℃の速度で520℃まで加熱し、1分当たり10℃の速度で520℃から0.0℃まで冷却し、次いで1分当たり10℃の速度で0℃から600℃まで加熱した。
【0204】
K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒のDSC分析において、サンプルの第二加熱中、この塩混合物は、219〜260℃の広範囲の熱転移温度を示した。この温度範囲の中点は約250℃であった。熱転移曲線の部分(area)を計算すると、−1.75ジュール/gであった。結晶無秩序化の始まりは、219℃の最低DSC温度で開始することが測定された。これらの結果とは逆に、炭酸セシウムについては、明確な熱転移は観察されなかった。
【0205】
Li2CO3とNa2CO3とK2CO3との混合物のDSC分析では、第二加熱サイクル中、 Li2CO3/Na2CO3/K2CO3混合物は、390〜400℃間でシャープな熱転移を示した。この温度範囲の中点は、約385℃であった。熱転移曲線の部分を計算すると、−182ジュール/gとなった。移動度の始まりは、390℃の最低DSC温度で開始することが測定された。このシャープな熱転移は、ほぼ均質な塩混合物であることを示す。
【0206】
例7:無機塩触媒又は個々の無機塩のイオン導電率のK2CO3との比較テスト
いずれのテストも無機塩触媒又は個々の無機塩3.81cm(1.5インチ)を、互いに離れているが、マッフル炉内のサンプル中に浸漬した白金又は銅ワイヤー付き石英容器に入れて行った。これらのワイヤーを9.55ボルトの乾電池及び220,000オームの電流制限性抵抗器に接続した。マッフル炉を600℃に加熱し、マイクロアンペア計で電流を測定した。
【0207】
図11は、サンプルの抵抗を炭酸カリウムの抵抗(“対数(rK2CO3)”)と比較して、温度(“T”)について対数プロットしたグラフである。曲線240、242、244、246、248は、それぞれK2CO3抵抗、CaO抵抗、K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒抵抗、Li2CO3/K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒抵抗、Na2CO3/K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒抵抗を示す。
【0208】
CaO(曲線242)は、380〜500℃の範囲の温度でK2CO3(曲線240)に比べて、比較的大きな安定した抵抗を示す。安定した抵抗は、秩序のある構造及び/又はイオンが加熱中、互いに離れて移動し難いことを示す。K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒、Li2CO3/K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒及びNa2CO3/K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒(それぞれ曲線244、246、248)は、350〜500℃の範囲の温度でK2CO3に比べて、抵抗がシャープに低下したことを示す。一般に抵抗の低下は、無機塩触媒中に埋封されたワイヤーに電圧を印加中、電流が検出されたことを示す。図11のデータから、無機塩触媒は350〜600℃の範囲の温度で純粋な無機塩よりも更に動き易いことが判る。
【0209】
図12は、Na2CO3/K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒の抵抗をK2CO3の抵抗(“対数(rK2CO3)”)と比較して、温度(“T”)について対数プロットしたグラフである。曲線250は、Na2CO3/K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒の加熱中、 Na2CO3/K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒抵抗対K2CO3抵抗(曲線240)の比を、温度(“T”)についてプロットした曲線である。曲線252は、600℃から25℃に冷却後、Na2CO3/K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒の加熱中、この無機塩触媒の抵抗をK2CO3の抵抗と比較して、温度(“T”)について対数プロットした曲線である。再加熱したNa2CO3/K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒のイオン導電率は、元のNa2CO3/K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒に比べて増大した。
【0210】
第一加熱及び第二加熱中の無機塩触媒のイオン導電率の差から、無機塩触媒は、冷却時に、いずれの加熱前の形態(第一形態)とは同一ではない異なる形態(第二形態)を形成するものと推定してよい。
【0211】
例4:無機塩触媒の流動特性テスト
1〜2cm厚層の粉末K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒を石英皿に入れた。この皿を炉に置き、500℃で約1時間加熱した。触媒の流動特性を測定するため、加熱後、皿をオーブン中、手で傾けた。K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒は流動しなかった。スパチュラで押すと、触媒はタフィー(taffy)の稠度を持っていた。
【0212】
これに対し、個々の炭酸塩は、同じ条件下で自由に流動する粉末であった。
K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒は、皿中、同じ条件下で液体となり、容易に流動した(例えば水と同様)。
【0213】
例5、6:K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒及び水蒸気の存在下での原料と水素源との接触
例5〜23では、変形について説明した他は、以下の装置及び一般的方法を使用した。
反応器:
500℃、作業圧35MPa(5000psi)に負荷した250mlハステロイC Parrオートクレーブ(Parrモデル#4576)に機械撹拌器;オートクレーブを室温から625℃までア5℃で維持できるEurotherm制御器上に設けた800ワットGaumer帯ヒーター;ガス入口;水蒸気入口;出口;及び内部温度記録用熱伝対を取り付けた。加熱する前に、オートクレーブの頂部をガラスクロスで絶縁した。
【0214】
添加容器:
添加容器(250ml、316ステンレス鋼製容器)に制御式加熱システム、適当なガス制御バルブ、圧力解放装置、熱電対、圧力ゲージ、及び熱く粘稠で及び/又は加圧した原料流を0〜500g/分の流速で調節可能な高温制御バルブ(Swagelok Valve #SS-4UW)を取り付けた。供給原料を添加容器に装入した後、高温制御バルブの出口側を反応器の第一入口に取り付けた。使用前に、添加容器ラインは絶縁した。
【0215】
生成物収集:
反応器の出口から出た反応器蒸気を、温度が漸減する一連の冷却トラップ(一連の150ml、360ステンレス鋼製容器に接続した浸漬管)に導入した。蒸気からの液体を冷却トラップで凝縮して、ガス流及び液体凝縮物流を形成した。反応器から出て冷却トラップを通る蒸気の流速は、必要に応じて調節した。冷却トラップを出るガス流の流速及び合計ガス容量を、ウエットテストメーター(Ritterモデル#TG 05ウエットテストメーター)を用いて測定した。ウエットテストメーターを出た後、ガス流を分析用ガス袋(Tedlerガス収集袋)に集めた。ガスはGC/MS(Hewlett−Packardモデル5890、現在Agilentモデル5890、米国イリノイ州Zion製)を用いて分析した。冷却トラップから液体凝縮物流を取り出し、秤量した。液体凝縮物流から原油生成物及び水を分離した。原油生成物は秤量し、分析した。
【0216】
方法:
Cerro Negro原料137.5gを添加容器に装入した。この原料のAPI比重は、6.7である。この原料は、それぞれ原料1g当たり、硫黄含有量が0.042g、窒素含有量が0.001g、及び合計Ni/V含有量が0.009gである。原料を150℃に加熱した。K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒(31.39g)を反応器に装入した。
【0217】
K2CO3 16.44g、Rb2CO3 19.44g及びCs2CO3;22.49gを配合して、K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3;触媒を製造した。K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3;触媒の最低TAP温度は360℃、DSC温度は250℃であった。個々の塩(K2CO3、Rb2CO3、及びCs2CO3;)は、50〜500℃の範囲の温度でDSC温度を示さなかった。このTAP温度は、無機塩触媒のDSC温度より高く、個々の金属炭酸塩のDSC温度よりも低い。
【0218】
触媒をメタンの大気圧流(250cm/分)下で450℃に急速加熱した。所望の反応温度に達した後、水蒸気を速度0.4mL/分、メタンを速度250cm/分で反応器に導入した(metered)。水蒸気及びメタンは、原料の添加中、2.6時間に亘って連続的に反応器に導入した。原料は、1.5MPa(229psi)のCHを用いて、16分間に亘って圧入した。原料の添加終了後、添加容器には残存原料(0.56g)が残った。原料の添加中、370℃に温度低下したことが観察された。
【0219】
触媒/原料混合物を450℃の反応温度に加熱し、この温度で2時間維持した。2時間後、反応器を冷却し、得られた残留物/触媒混合物を秤量して、反応中、生成した及び/又は消費されなかったコークスの割合(%)を求めた。
【0220】
初期の触媒とコークス/触媒混合物との重量差から、コークスは原料1g当たり0.046g、反応器中に残存していた。全生成物は、平均API比重が13の原料0.87g及びガスを含有していた。ガスは、未反応CH、水素、C及びC〜C炭化水素、及びCO(ガス1g当たりCO0.08g)含有していた。
【0221】
原油生成物は、それぞれ原油生成物1g当たり硫黄を0.01g、及び合計Ni及びVを0.000005g含有していた。原油生成物は、更に分析しなかった。
例6での反応方法、条件、原料及び触媒は、例5と同じである。例6の原油生成物を分析して、これらの沸点範囲分布を求めた。この反応生成物は、それぞれ反応生成物1g当たりナフサを0.14g、蒸留物を0.19g、VGOを0.45g、残留物を0.001g含有し、コークスは検出不能であった。
【0222】
例5、6は、原料100g当たり触媒3gの存在下で原料と水素源とを接触させて、STPにおいて液体である原油生成物を含む全生成物を製造する例である。全生成物の残留物含有量は、原料の残留物含有量に対し30%以下であった。原油生成物の硫黄含有量及び合計Ni/V含有量は、原料の硫黄含有量及び合計Ni/V含有量に対し、90%以下であった。
【0223】
この原油生成物は、沸点範囲分布が0.101MPaにおいて200℃以下の炭化水素を0.001g以上、沸点範囲分布が0.101MPaにおいて200〜300℃の炭化水素を0.001g以上、沸点範囲分布が0.101MPaにおいて400〜538℃(1000°F)の炭化水素を0.001g以上含有していた。
【0224】
例7、8:K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒及び水蒸気の存在下での原料と水素源との接触
例7、8での反応方法、条件、及びK2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒は、原料(Cerro Negro)を130g及びK2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒を60g使用した他は、例5と同じである。例7では、メタンは水素源として使用した。例8では、水素ガスは水素源として使用した。非凝縮性ガス、原油生成物及びコークスの量を図13のグラフに示す。バー254、256は、生成したコークスの重量%を表し、バー258、260は、生成した液体炭化水素の重量%を表し、バー262、264は、生成したガスの、原料の重量に対する重量%を表す。
【0225】
例7では、それぞれCerro Negro原料の重量に対し、原油生成物(バー260)が93重量%、ガス(バー264)が3重量%、コークス(バー256)が4重量%生成した。
例8では、それぞれCerro Negro原料の重量に対し、原油生成物(バー258)が84重量%、ガス(バー262)が7重量%、コークス(バー254)が9重量%生成した。
例7、8では、水素源としてメタンを使用した場合と水素源として水素ガスを使用した場合との比較が得られる。メタンは一般に、水素よりも製造及び/又は輸送費用が安く、したがって、メタンを利用する方法が望ましい。例示したように、メタンは、無機塩触媒の存在下で原料を接触させて全生成物を製造する際、少なくとも、水素源としての水素ガスと同様、有効である。
【0226】
例9、10:選択したAPI比重を有する原油生成物の製造
装置、反応方法及び無機塩触媒は、反応圧力を変えた他は、例5と同じである。
例9では、反応器圧力は、接触期間中、0.1MPa(14.7psi)とした。API比重が15.5℃で25の原油生成物が製造された。全生成物は、炭素数分布が5〜32の範囲の炭化水素を含有していた(図14の曲線266)。
【0227】
例10では、反応器圧力は、接触期間中、3.4MPa(514.7psi)とした。API比重が15.5℃で51.6の原油生成物が製造された。全生成物は、炭素数分布が5〜15の範囲の炭化水素を含有していた(図12の曲線268)。
これらの例は、無機塩触媒の存在下、各種圧力で原料を水素と接触させて、選択したAPI比重を有する原油生成物を製造する方法を示す。圧力を変化させることにより、高いAPI比重又は低いAPI比重を有する原油生成物が製造された。
【0228】
例11、12:K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒又は炭化珪素の存在下、外部水素源の不存在下での原料の接触
例11、12では、装置、原料及び反応方法は、原料及び触媒(又は炭化珪素)を直接、同時に反応器に装入した他は、例5と同じである。担体ガスとして二酸化炭素(CO)を使用した。例11では、Cerro Negro原料138gをK2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒(例5と同じ触媒)60.4gと配合した。例12では、Cerro Negro原料132gを炭化珪素(40メッシュ、Stanford Materials;Aliso Viejo,CA)83.13gと配合した。このような炭化珪素は、ここで説明したプロセス条件下では触媒特性(あれば)が低いと考えられる。
【0229】
各例では混合物は、2時間に亘って500℃の反応温度に加熱した。COを速度100cm/分で反応器に導入した(metered)。反応器で発生した蒸気は、3.2MPa(479.7psi)の背圧を用いて、冷却トラップ及びガス袋中に収集した。冷却トラップの原油生成物は、固化し、分析した。
【0230】
例11では、二酸化炭素の雰囲気中、原料と無機塩触媒との接触により、API比重が50以上の無色炭化水素液体36.82g(原料の重量に対し26.68重量%)が製造された。
例12では、二酸化炭素の雰囲気中、原料と炭化珪素との接触により、API比重が12の黄色炭化水素液体15.78g(原料の重量に対し11.95重量%)が製造された。
【0231】
例11の収率は低いが、無機塩触媒存在下での水素源の現場発生は、非接触条件下での水素の現場発生よりも多い。例12での原油生成物の収率は、例11での原油生成物の収率の1/2である。例11は、無機塩触媒の存在下、ガス状水素源の不存在下での原料の接触中、水素が発生することも示している。
【0232】
例13〜16:K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒、酸化カルシウム、及び炭化珪素の存在下、大気圧雰囲気条件での原料と水素源との接触
装置、原料、反応方法及び無機塩触媒は、添加容器による添加の代りに、Cerro Negro原料を直接、反応器に添加すると共に、水素源として水素ガスを使用した他は、例5と同じである。反応器圧力は、接触期間中、0.101MPa(14.7psi)とした。水素ガス流速は250cm/分である。反応温度、水蒸気流速、及び生成した原油生成物、ガス、及びコークスの割合(%)を図15の表1に示す。
【0233】
例13、14では、K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒を使用した。例13では、接触温度を375℃とした。例14では、接触温度を500〜600℃の範囲とした。
表1(図15)に示すように、例13、14では温度が375℃から500℃に上昇した際、ガスの生成は、全生成物1g当たり0.02gから0.05gに増加した。しかし、コークスの生成は、高温では原料1g当たり0.17gから0.09gに減少した。原油生成物の硫黄含有量も高温では原油生成物1g当たり0.01gから0.008gに減少した。両原油生成物とも、原子比H/Cは1.8であった。
【0234】
例15では、例14に記載の条件と同様な条件下で原料をCaCO3と接触させた。原油生成物、ガス及びコークスの生成割合(%)を図13の表1に示す。例15ではガスの生成量は、例14のガス生成量に比べて増加した。原料の脱流は、例14と同様、有効ではなかった。例15で製造した原油生成物の原油生成物1g当たりの硫黄含有量は、例14で製造した原油生成物の原油生成物1g当たりの0.008gに比べて、0.01gであった。
【0235】
例16は、例14に対する比較例である。例16では、無機塩触媒の代りに炭化珪素83.13gを反応器に装入した。例16ではガス生成量及びコークス生成量は、例14のガス生成量及びコークス生成量に比べて著しく増加した。これらの非接触条件下では、原油生成物1g当たりコークス0.22g、非凝縮性ガス0.25g、及び原油生成物0.5g生成した。例14で製造された原油生成物の原油生成物1g当たり硫黄0.01gに比べて、例16で製造された原油生成物は、原油生成物1g当たり硫黄を0.036g含有していた。
【0236】
これらの例は、例13、14で使用した触媒が非接触条件及び従来の金属塩よりも向上した結果が得られることを示している。500℃で水素流速250cm/分では、非接触条件下で生成したコークス量及び非凝縮性ガス量に比べて、コークス及び非凝縮性ガスの生成が著しく少なかった。
【0237】
無機塩触媒を用いた例(図15、表1の例13、14参照)では、対照実験中に生成したガス(例えば図15、表1の例16)に比べて、生成ガスの重量割合(%)の低下が観察された。生成ガス中の炭化水素量から、原料の熱分解は、水素源と接触させた原料の全量に対し、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、又は無しと推定される。
【0238】
例17、18:水及びK2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒又は炭化珪素の存在下、原料とガス状水素源との接触
例17、18での装置は、水素源として水素ガスを使用した他は、例5と同じである。例17では、Cerro Negro原料130.4gをK2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒30.88gと配合して、原料混合物を形成した。例18では、Cerro Negro原料139.6gを炭化珪素80.14gと配合して、原料混合物を形成した。
【0239】
原料混合物は直接、反応器に装入した。加熱及び保持期間中、水素ガスを250cm/分で反応器に導入した。原料混合物を1.5時間に亘って300℃に加熱し、この温度で1時間維持した。反応温度を1時間に亘って400℃に上げ、この温度で1時間維持した。反応温度が400℃に達した後、水を、窒素と組合わせて、0.4g/分の速度で反応器に導入した。水及び水素は、残りの加熱及び保持期間中、反応器に装入した。反応混合物を400℃に維持した後、反応温度を500℃に上げ、この温度で約2時間維持した。反応器で発生した蒸気を冷却トラップ及びガス袋に収集した。冷却トラップの液体生成物は、固化し、分析した。
【0240】
例17では、水素雰囲気中、原料とK2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒との接触により、暗赤褐色炭化水素液体(原油生成物)86.17g(原料の重量に対し66.1重量%)及び水97.5gが蒸気として生成した。
【0241】
例18では、水の蒸気及び少量のガスが反応器から生成した。反応器を調べ、暗褐色粘稠の炭化水素液体を反応器から取出した。水素雰囲気中、原料と炭化珪素との接触により、50重量%未満の暗褐色粘稠液体製造された。例18で製造された原油生成物の収率に比べて、例17では、原油生成物の収率が25%向上したことが判った。
【0242】
例17は、ここで説明した方法を用いて製造した原油生成物の特性が、熱水を用いて製造した原油生成物に比べて、向上したことを示す。特に例17の原油生成物は、蒸気として製造できない例18で製造した原油生成物で示されるように、例18で製造した原油生成物よりも沸点が低い。
【0243】
例19、20:非接触条件下で製造した原油生成物量(容量)に比べて、 K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒の存在下、原料と水素源との接触により増量した原油生成物の製造
装置、原料、無機触媒及び反応方法は、原料を直接、反応器に装入すると共に、水素源として水素ガスを使用した他は、例5と同じである。原料(Cerro Negro)のAPI比重は6.7、密度は15.5℃で1.02g/mLである。
例19では、原料102g(102mL)及びK2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒31gを反応器に装入した。API比重が50で、密度が15.5℃で0.7796g/mLの原油生成物87.6g(112mL)が製造された。
【0244】
例20では、原料102g(102mL)及び炭化珪素80gを反応器に装入した。API比重が12で、密度が15.5℃で0.9861g/mLの原油生成物70g(70mL)が製造された。
これらの条件下では、例19で製造した原油生成物の容量は原料の容量よりも約10%多かった。例20で製造した原油生成物の容量は、例19で製造した原油生成物の容量よりも著しく少なかった(約40%少ない)。生成物容量が顕著に増加すると、入力原油の1容量当たりの原油生成物容量を更に増量する製造者の能力が高まる。
【0245】
例21:K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒、硫黄及びコークスの存在下、原料と水素源との接触
装置及び反応方法は、水蒸気を300cm/分で反応器に導入した他は、例5と同じである。K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒は、K2CO3 27.2g、Rb2CO3 32.2g及びCs2CO3;40.6gを配合して製造した。
原料130.35g及びK2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒31.6gを反応器に装入した。Cerro Negro原料は、この原料1g当たり、沸点範囲分布149〜260℃(300〜500°F)の合計芳香族を0.04g、ニッケル及びバナジウムの組合わせを0.000640g、硫黄を0.042g及び残留物を0.56g含有していた。この原料のAPI比重は6.7である。
【0246】
K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒の存在下で原料をメタンと接触させると、原料1g当たり、全生成物0.95g及びコークス0.041gが生成した。
全生成物は、それぞれ全生成物1g当たり、原油生成物を0.91g及び水素ガスを0.028g含有していた。収集した全ガスは、GC/MS測定により、それぞれガス1モル当たり、水素を0.16モル、二酸化炭素を0.045モル、及びC及びC〜C炭化水素を0.025モル含有していた。ガスの残部は、メタン、空気、一酸化炭素、及び痕跡量(0.004モル)の蒸発した原料である。
【0247】
原油生成物は、ガスクロマトグラフィー及び質量分析法で分析した。原油生成物は、沸点範囲が100〜538℃の炭化水素の混合物を含有していた。全液体生成物混合物は、エチルベンゼン(0.101MPaでの沸点が136.2℃の単環式化合物)を混合物1g当たり、0.006g含有していた。この生成物は、原料では検出されなかった。
【0248】
反応器から使用済み触媒(“第一使用済み触媒”)を取出し、秤量し、次いで分析した。第一使用済み触媒は、31.6gから合計重量37.38gに重量増加していた(元のK2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒の重量に対し、18重量%増加)。第一使用済み触媒は、それぞれ使用済み触媒1g当たり、追加のコークスを0.15g、硫黄を0.0035g、Ni/Vを0.0014g、K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3を0.845g含有していた。
【0249】
追加の原料152.71gを第一使用済み触媒36.63gと接触させて、損失後の回収全生成物150gを製造した。この全生成物は、それぞれ全生成物1g当たり、液体原油生成物を0.92g、追加のコークスを0.058g、及びガスを0.017g含有していた。このガスは、それぞれガス1モル当たり、水素を0.18モル、二酸化炭素を0.07g、及びC〜C炭化水素を0.035モル含有していた。ガスの残部は、メタン、窒素、若干の空気、及び痕跡量(<1%モル)の蒸発した油生成物である。
【0250】
原油生成物は、沸点範囲100〜538℃の炭化水素の混合物を含有していた。沸点範囲分布が149℃未満の混合物部分は、それぞれ全液体炭化水素1モル当たり、エチルベンゼンを0.018モル%、トルエンを0.04モル%、m−キシレンを0.03モル%、及びp−キシレンを0.060モル%(0.101MPaでの沸点が149℃未満の単環式化合物)含有していた。これらの生成物は、原料中では検出されなかった。
【0251】
反応器から使用済み触媒(“第二使用済み触媒”)を取出し、秤量し、次いで分析した。第二使用済み触媒は、36.63gから合計重量45.44gに重量増加していた(元のK2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒の重量に対し、43重量%増加)。第二使用済み触媒は、それぞれ第二使用済み触媒1g当たり、コークスを0.32g、硫黄を0.01g、及び0.67g含有していた。
【0252】
追加の原料104gを第二使用済み触媒44.84gと接触させて、原料1g当たり104gの全生成物を製造し、コークス0.114gを収集した。コークスの一部は、移送された原料133gのうち104.1gが原料であったから、添加容器の過熱により添加容器中でコークスが形成されたことに起因する。
【0253】
全生成物は、それぞれ全生成物1g当たり、原油生成物を0.86g、及び炭化水素ガスを0.025g含有していた。この全ガスは、それぞれガス1モル当たり、水素を0.18モル、二酸化炭素を0.052モル、及びC〜C炭化水素を0.03モル含有していた。ガスの残部は、メタン、空気、一酸化炭素、硫化水素及び少痕跡量の蒸発した油である。
【0254】
原油生成物は、沸点範囲100〜538℃の炭化水素の混合物を含有していた。沸点範囲分布が149℃未満の混合物部分は、前述のようにGC/MS測定により、それぞれ炭化水素混合物1g当たり、エチルベンゼンを0.021g、トルエンを0.027g、m−キシレンを0.042g、及びp−キシレンを0.020g含有していた。
【0255】
反応器から使用済み触媒(“第三使用済み触媒”)を取出し、秤量し、次いで分析した。第三使用済み触媒は、44.84gから合計重量56.59gに重量増加していた(元のK2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒の重量に対し、79重量%増加)。第三使用済み触媒について詳細な元素分析を行った。第三使用済み触媒は、それぞれ追加物(matter)1g当たり、炭素を0.90g、水素を0.028g、酸素を0.0025g、硫黄を0.046g、窒素を0.017g、バナジウムを0.0018g、ニッケルを0.0007g、鉄を0.0015g、塩化物を0.00025g含有し、残部は、クロム、チタン及びジルコニウムのような他の遷移金属であった。
【0256】
本例で示したように、無機塩触媒の上及び/又は中に沈着した、コークス、硫黄及び/又は金属は、無機塩触媒の存在下、原料と水素源との接触により製造した原油生成物の全収率に影響を与えない(各実験について80%以上)。この原油生成物の単環式芳香族含有量は、原料に含まれる沸点範囲分布が149℃未満である単環式芳香族含有量の100倍以上である。
【0257】
これら3つの実験では、原油生成物の平均収率(原料の重量に対し)は89.7重量%(標準偏差:2.6%)、コークスの平均収率(原料の重量に対し)は7.5重量%(標準偏差:2.7%)、またガス状分解炭化水素の平均収率(原料の重量に対し)は2.3重量%(標準偏差:0.46%)であった。液体、ガスとも比較的標準偏差が大きいのは、第三実験で添加容器中の原料を過熱して、原料容器の温度制御器が故障したためである。たとえ、そうであっても、触媒システムの活性に対し、ここでテストした大量のコークスでさえ、明確で顕著な悪影響はない。
【0258】
オレフィン対合計C比は0.19であった。Cオレフィン対合計C比は0.4であった。C炭化水素中のα−オレフィン対内部オレフィン比は0.61であった。Cシス/トランスオレフィン比は6.34であった。この比は、推定熱力学Cシス/トランスオレフィン比の0.68よりも実質的に高かった。C炭化水素中のα−オレフィン対内部オレフィン比は0.92であった。この比は、推定熱力学Cα−オレフィン対C内部オレフィン比の0.194よりも大きかった。Cシス/トランスオレフィン比は1.25であった。この比は、この比は、推定熱力学Cシス/トランスオレフィン比の0.9よりも大きかった。
【0259】
例26:K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒の存在下、硫黄を比較的多量に含有する原料と水素源との接触
装置及び反応方法は、原料、メタン及び水蒸気を連続的に反応器に供給した他は、例5と同じである。反応器中の原料の水準を反応器の重量変化を用いてモニターした。メタンガスは、500cm/分で連続的に反応器に導入した。水蒸気は、6g/分で連続的に反応器に導入した(metered)。
【0260】
無機塩触媒は、K2CO3 27.2g、Rb2CO3 32.2g及びCs2CO3 40.6gを配合して製造した。このK2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒59.88gを反応器に装入した。
API比重が9.4で、原料1g当たり硫黄を0.02g、残留物を0.40g含有する原料(ビチューメン、Lloydminster,カナダ)を添加容器中で150℃に加熱した。原料液体の水準を反応器容積の50%維持しようとして、熱ビチューメンを添加容器から10.5g/分で連続的に反応器に導入した(metered)が、この速度では前記水準を維持するには不十分であった。
【0261】
このメタン/水蒸気/原料を平均内部反応器温度456℃で触媒と接触させた。メタン/水蒸気/原料と触媒との接触により、全生成物を製造した(本例では反応器流出蒸気の形態で)。
原料1640gの全量を6時間に亘って処理した。初期の触媒重量と残留物/触媒混合物重量との差から、原料1g当たりコークス0.085gが反応器中に残った。K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒存在下での原料とメタンとの接触により、全生成物が原料1g当たり0.93g製造された。全生成物は、反応に使用したメタン及び水の量を除いて、それぞれ全生成物1g当たり、ガスを0.03g及び原油生成物を0.97g含有していた。
【0262】
ガスは、それぞれガス1g当たり、水素を0.014g、一酸化炭素を0.018g、二酸化炭素を0.08g、硫化水素を0.13g、及び非凝縮性炭化水素を0.68g含有していた。硫化水素の発生量から、原料の硫黄含有量は18重量%減少したものと推定してよい。本例に示すように、水素、一酸化炭素及び二酸化炭素が製造された。一酸化炭素対二酸化炭素のモル比は0.4であった。
【0263】
〜C炭化水素は、それぞれ炭化水素1g当たり、C化合物を0.30g、C化合物を0.32g、C化合物を0.26g、及びC化合物を0.10g含有していた。非凝縮性炭化水素中のイソペンタン対n−ペンタンの重量比は0.3であった。非凝縮性炭化水素中のイソブタン対n−ブタンの重量比は0.189であった。C化合物は、ブタジエン含有量がC化合物1g当たり0.003gであった。α−Cオレフィン対内部Cオレフィンの重量比は0.75であった。α−Cオレフィン対内部Cオレフィンの重量比は1.08であった。
例25のデータから、コークスの存在下で、硫黄を比較的多量に含む原料を同じ触媒で連続的に処理しても、無機塩触媒の活性を低下させず、しかも輸送に好適な原油生成物が製造されることが判る。
【0264】
例23:K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒及びコークスの存在下での原料と水素源との接触
装置及び反応方法は、例22で説明したとおりである。K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒56.5gを反応器に装入した。原料の全量2550gを6時間に亘って処理した。初期の触媒重量と残留物/触媒混合物重量との差から、原料の重量を基準として、原料1g当たりコークス0.114gが反応器中に残った。全生成物が原料1g当たり合計0.89g製造された。全生成物は、反応に使用したメタン及び水の量を除いて、それぞれ全生成物1g当たり、ガスを0.04g及び原油生成物を0.96g含有していた。
【0265】
ガスは、それぞれガス1g当たり、水素を0.021g、一酸化炭素を0.018g、二酸化炭素を0.052g、硫化水素を0.18g、及び非凝縮性炭化水素を0.65g含有していた。硫化水素の生成量から、原料の硫黄含有量は、原料の重量に対し14重量%減少したものと推定してよい。本例に示すように、水素、一酸化炭素及び二酸化炭素が製造された。一酸化炭素対二酸化炭素のモル比は0.6であった。
【0266】
〜C炭化水素は、それぞれC〜C炭化水素1g当たり、C化合物を0.44g、C化合物を0.31g、C化合物を0.19g、及びC化合物を0.068g含有していた。非凝縮性炭化水素中のイソペンタン対n−ペンタンの重量比は0.25であった。非凝縮性炭化水素中のイソブタン対n−ブタンの重量比は0.15であった。C化合物は、ブタジエン含有量がC化合物1g当たり0.003gであった。
本例は、コークスの存在下で、硫黄を比較的多量に含む原料(原料2550g)を同じ触媒(56.5g)で繰り返し処理しても、無機塩触媒の活性を低下させず、しかも輸送に好適な原油生成物が製造されることを示している。
【0267】
例24:CaO/ZrO2触媒の存在下での原料と水素源との接触による全生成物の製造
例24〜27では、以下の反応器及び条件を使用した。
反応器:
500℃、作業圧35MPa(5000psi)に負荷した250mlハステロイC Parrオートクレーブ(Parrモデル#4576)に機械撹拌器;オートクレーブを室温から625℃までア5℃で維持できるEurotherm制御器上に設けた800ワットGaumer帯ヒーター;ガス入口;水蒸気入口;出口;及び内部温度記録用熱伝対を取り付けた。加熱する前に、オートクレーブの頂部をガラスクロスで絶縁した。反応器は、直径16メッシュ未満の開口を有するメッシュを備える。
【0268】
添加容器:
添加容器(250ml、316ステンレス鋼製容器)に制御式加熱システム、適当なガス制御バルブ、圧力解放装置、熱電対、圧力ゲージ、及び熱く粘稠で及び/又は加圧した原料流を0〜500g/分の流速で調節可能な高温制御バルブ(Swagelok Valve #SS-4UW)を取り付けた。原料を添加容器に装入した後、高温制御バルブの出口側を反応器の第一入口に取り付けた。使用前に、添加容器ラインは絶縁した。
【0269】
生成物収集:
反応器の出口から出た反応器蒸気を、温度が漸減する一連の冷却トラップ(一連の150ml、360ステンレス鋼製容器に接続した浸漬管)に導入した。蒸気からの液体を冷却トラップで凝縮して、ガス流及び液体凝縮物流を形成した。反応器から出て冷却トラップを通る蒸気の流速は、必要に応じて調節した。冷却トラップを出るガス流の流速及び合計ガス容量を、ウエットテストメーター(Ritterモデル#TG 05ウエットテストメーター)を用いて測定した。ウエットテストメーターを出た後、ガス流を分析用ガス袋(Tedlerガス収集袋)に集めた。ガスはGC/MS(Hewlett−Packardモデル5890、現在Agilentモデル5890、米国イリノイ州Zion製)を用いて分析した。冷却トラップから液体凝縮物流を取り出し、秤量した。液体凝縮物流から原油生成物及び水を分離した。原油生成物は秤量し、分析した。
【0270】
方法:
ZnO2(8.5g)を反応器のスクリーン上に置いた。反応器を秤量し、初期重量とした。原料(アスファルテン5.01g)を添加容器に装入した。この原料は、重油を脱アスファルトして得た。原料の密度は1.04g/cc、軟化点は200℃である.この原料は、それぞれ原料1g当たり、硫黄含有量が0.0374g、窒素含有量が0.0124gである。
【0271】
原料を150℃に加熱した。CaO(15.03g、0.26モル)とZrO2(20.05g、0.16モル)との混合物を原料に加え、無機塩触媒/触媒支持体/原料混合物を製造した。窒素雰囲気下、原料液体レベルを反応器容積の50%に維持するため、得られた混合物触媒を20分に亘って反応容器に計量した(計算WHSV=0.8h−1)。反応器の内部温度が731℃に達した時、1時間に亘ってメタン及び水(水蒸気として26.06g装入)を反応器に装入した。ガス及び/又は液体生成物が殆ど又は全く生成しなくなるまで反応を行った。反応終了時に反応器を秤量し、最終反応器重量とした。
【0272】
全生成物は、原油生成物を1.06g、ガスを8.152g含有していた。ガスは非凝縮性炭化水素を0.445g、COを4.39g(0.10モル)、COを3.758g(0.13モル)、Hガスを0.627g、HSを0.03g、及びコークスを0.296g含有していた。
炭素含有生成物を反応器に装入したアスファルトの重量で割って、炭素含有生成物の重量を基準とした炭素含有生成物に対する選択率を計算した。例24に記載した方法で5つの実験を行って、炭素含有生成物に対する平均選択率を求めたところ、一酸化炭素と二酸化炭素との組合せに対しては67重量%、非凝縮性炭化水素では7.47重量%、原油生成物では19.88重量%、コークスでは4.94重量%であった。
【0273】
本例は、水素源及び水蒸気の存在下で原料を無機塩触媒/支持体混合物と接触させて、原油生成物及びガス、並びに原料1g当たり0.1g未満のコークスを製造する方法を例示する。CaOの存在下では、原油生成物の生成に比べてガスの生成が一層増大した。CO対COのモル比は1.3と計算された。
【0274】
例25:MgO/ZrO2触媒の存在下での原料と水素源との接触による原油生成物の製造
原料及び装置は例24の場合と同じである。ZrO2(8.59g)を反応器のスクリーン上に置いた。
原料を150℃に加熱した。触媒MgO(19.82g、0.49モル)とZrO2(29.76g、0.24モル)を原料(9.92g)に加え、無機塩触媒/触媒支持体/原料混合物を製造した。窒素雰囲気下、原料液体レベルを反応器容積の50%に維持するため、得られた混合物触媒を0.5時間に亘って反応容器に計量した(計算WHSV=0.75h−1)。反応器の内部温度が731℃に達した時、1時間に亘ってメタン及び水(水蒸気として48.1g装入)を反応器に装入した。ガス及び/又は液体生成物が殆ど又は全く生成しなくなるまで反応を行った。反応終了時に反応器を秤量し、最終反応器重量とした。
【0275】
全生成物は、原油生成物を1.92g、ガスを18.45g含有していた。ガスは非凝縮性炭化水素を1.183g、COを8.66g(0.19モル)、COを7.406g(0.26モル)、Hガスを1.473g、HSを0.125、及びコークスを0.0636g含有していた。CO対COモル比は1.4と計算された。
【0276】
炭素含有生成物を反応器に装入したアスファルトの重量で割って、炭素含有生成物の重量を基準とした炭素含有生成物に対する選択率を計算した。例25に記載した方法で3つの実験を行って、炭素含有生成物に対する平均選択率を求めたところ、一酸化炭素と二酸化炭素との組合せに対しては65.88重量%、非凝縮性炭化水素では11.74重量%、原油生成物では12.35重量%、コークスでは8.78重量%であった。
【0277】
本例は、水素源及び水蒸気の存在下で原料を無機塩触媒/支持体混合物と接触させて、原油生成物及びガス、並びに原料1g当たり0.1g未満のコークスを製造する方法を例示する。MgOの存在下では、例24に比べて原油生成物よりも更に多くのガスが生成した。
【0278】
例26:ZrO2存在下での原料と水素源との接触による原油生成物の製造
原料及び装置は例24の場合と同じである。ZrO2(8.56g)を反応器のスクリーン上に置いた。
原料を150℃に加熱した。ZrO2(24.26g)を原料(5.85g)に加え、ZrO2/原料混合物を製造した。窒素雰囲気下、原料液体レベルを反応器容積の50%に維持するため、得られた混合物触媒を20分に亘って反応容器に計量した(計算WHSV=0.6h−1)。反応器の内部温度が734℃に達した時、1時間に亘ってメタン及び水(水蒸気として24.1g装入)を反応器に装入した。ガス及び/又は液体生成物が殆ど又は全く生成しなくなるまで反応を行った。反応終了時に反応器を秤量し、最終反応器重量とした。
【0279】
全生成物は、原油生成物を0.4g、ガスを5.25g含有していた。ガスは非凝縮性炭化水素を0.881g、COを2.989g(0.19モル)、COを1.832g(0.26モル)、Hガスを0.469g、HSを0.34を含有していた。反応器の初期重量及び最終重量との差からコークスは1.67g形成された。CO対COモル比は1と計算された。
【0280】
炭素含有生成物を反応器に装入したアスファルトの重量で割って、炭素含有生成物の重量を基準とした炭素含有生成物に対する選択率を計算した。例26に記載した方法で2つの実験を行って、炭素含有生成物に対する平均選択率を求めたところ、一酸化炭素と二酸化炭素との組合せに対しては31.37重量%、非凝縮性炭化水素では18.93重量%、原油生成物では10.34重量%、コークスでは39重量%であった。
本例は、水素源及び水蒸気の存在下で原料を触媒支持体と接触させて、最小量の原油生成物、ガス、及びコークスを製造する方法を例示する。
【0281】
例27(比較例):非接触条件下での原料と水素源との接触による原油生成物の製造
原料及び装置は例24の場合と同じである。不活性材料として炭化珪素(13.1g)を反応器のスクリーン上に置いた。
原料を150℃に加熱した。炭化珪素(24.26g)を原料(4.96g)に加え、炭化珪素/原料混合物を製造した。窒素雰囲気下、原料液体レベルを反応器容積の50%に維持するため、得られた混合物を0.5時間に亘って反応容器に計量した(計算WHSV=0.4h−1)。反応器の内部温度が725℃に達した時、0.5時間に亘ってメタン及び水(水蒸気として24.1g装入)を反応器に装入した。ガス及び/又は液体生成物が殆ど又は全く生成しなくなるまで反応を行った。反応終了時に反応器を秤量し、最終反応器重量とした。
【0282】
全生成物は、原油生成物を0.222g、ガスを1.467g含有していた。ガスは非凝縮性炭化水素を0.284g、COを0.61g(0.014モル)、COを0.513g(0.018モル)、Hガスを0.091g含有していた。反応器の初期重量及び最終重量との差からコークスは3.49g形成された。
【0283】
本例は、原料を水素源及び水蒸気と接触させた場合は、原料を、水素源及び水蒸気の存在下で無機塩触媒及び触媒支持体と接触させた場合に比べて、多量のコークスが生成することを例示する。
炭素含有生成物を反応器に装入したアスファルトの重量で割って、炭素含有生成物の重量を基準とした炭素含有生成物に対する選択率を計算した。例27に記載した方法で2つの実験を行って、炭素含有生成物に対する平均選択率を求めたところ、一酸化炭素と二酸化炭素との組合せに対しては11.75重量%、非凝縮性炭化水素では7.99重量%、原油生成物では9.32重量%、コークスでは65.96重量%であった。
【0284】
図16に、例24〜27での炭素含有生成物に対する平均選択率を示す。データ点270は、一酸化炭素及び二酸化炭素の合計生成量を示す。データ点272は非凝縮性炭化水素の生成量を示す。データ点274は原油生成物の生成量を示す。データ点276はコークスの生成量及び/又は未反応アスファルテンの生成量を示す。図16から判るように、一酸化炭素及び二酸化炭素の合計生成量は、原料を無機塩触媒と接触させた場合は、触媒支持体と接触させるか又は熱条件下の場合に比べて増進する。無機塩触媒として酸化カルシウムを用いた場合は、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、又は熱実験に比べて原油生成物が更に多く生成する。したがって、触媒の選択及び1000℃以下の温度での接触条件の制御により、全生成物の組成を調節できる。更に、接触条件を制御すると、原料の全生成物への転化率は、原料中の炭素のモル量基準で50%以下に制限される。
【0285】
例28:担持無機触媒の存在下での原料と水素源との接触
無機塩触媒をゼオライトに担持した。この担持無機塩触媒は、それぞれ担持無機塩触媒1g当たり、カリウムを0.049g、ルビジウムを0.069g、及びセシウムを0.109g含有する。この無機触媒の表面積は、p/p0=0.03で5.3m/g、外表面積は3.7m/g、細孔容積は0.22ml/gである。原料(クエート長鎖(long)残留物、WHSV=1h−1)を、流動化ガスとしてメタンを45Nml/分の速度で用い、水蒸気(水蒸気を作るため、水の流速0.36g/分)の存在下、マイクロ活性テスト(“MAT”)において、450℃、1バール絶対圧(0.1MPa)で担持無機塩触媒(改質平衡(Equilibrium c)触媒と流動的に接触させ、全生成物を製造した。各実験で触媒対原料比を3、4、5、6、7、8と変えて5つの実験を行った。各実験で形成されたガス、原油生成物及びコークスの量を図17(表2)及び図18に示すグラフにまとめた。プロット280はガスの生成量を示す。プロット282は原油生成物の生成量、プロット284は各実験でのコークスの生成量を示す。
【0286】
本例に示すように、原料を担持無機塩触媒と接触させると、水素源及び水蒸気の存在下で全生成物が生成し、コークスは0.2g以下であった。触媒対原料比が4では、それぞれ原料1g当たりガスを0.08g、原油生成物を0.73g、コークスを0.16g含む全生成物が製造された。触媒対原料比が8では、それぞれ原料1g当たりガスを0.09g、原油生成物を0.7g、コークスを0.14g含む全生成物が製造された。図示又は表示のように、触媒対原料比を4〜8に調節すると、接触中に形成されるコークス量は減少した。
【0287】
例29(比較例):E−Catの存在下、各種触媒/原料比での原料と水素源との接触
装置、接触条件、原料及び触媒対原料比は、例28と同じとした。触媒は、市販の平衡流動接触分解用触媒(“E−Cat”,Akzo Nobel Cobra 553)である。このE−Cat触媒は、ニッケルを1541ppmw(重量ppm)、バナジウムを807ppmw、ナトリウムを0.29重量%及び鉄を0.4重量%含有し、p/p0=3での表面積は163m/g、外表面積は26.3m/g、細孔容積は0.37ml/gである。各実験で形成されたガス、原油生成物及びコークスの量を図17(表3)及び図18に示すグラフにまとめた。プロット286はガスの生成量、プロット288は原油生成物の生成量、プロット290は各実験でのコークスの生成量を示す。
【0288】
この比較例に示すように、新しいE−Catを用いて原料から形成されたガス及び原油生成物の量は、種々の触媒対原料比でも変らずに残存した。E−Cat対原料比が4では、それぞれ原料1g当たりガス0.23g、原油生成物0.60g、生成物のコークス0.16gが製造された。E−Cat対原料比が8では、それぞれ原料1g当たり原料0.26g、原油生成物0.43g及びコークス0.21gが製造された。
【0289】
本特許では、特定の米国特許を援用した。しかし、このような米国特許の内容は、ここで説明した他の記載内容及び図面と対立しない程度に援用したにすぎない。対立する場合は、このような米国特許を援用した中で対立する内容は、本特許には具体的には援用しない。
【0290】
本発明の各種局面の更なる改変及び代替実施態様は、当業者ならば、以上の説明から明らかであろう。したがって、以上の説明は単に例示として解釈すべきであり、当業者に本発明を実施する一般的方法を教示することを目的とする。ここで明示し、説明した本発明の形態は実施態様の例とみなすものと解釈すべきである。構成要素及び材料は、ここで例証し、説明したものと取替えでき、部品及び方法は入れ替えでき、また本発明の特定の特徴は、独立に利用できることは、いずれも本発明の説明の利益を得た後、当業者ならば明かでなろう。ここで説明した構成要素は、特許請求の範囲に記載した本発明の範囲を逸脱しない限り、変化させてよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0291】
【特許文献1】米国特許3,847,797
【特許文献2】米国特許3,948,759
【特許文献3】米国特許3,960,708
【特許文献4】米国特許4,119,528
【特許文献5】米国特許4,127,470
【特許文献6】米国特許4,437,980
【特許文献7】米国特許4,665,261
【特許文献8】米国出願公告20050133405
【特許文献9】米国出願公告20050133406
【特許文献10】米国出願公告20050135997
【特許文献11】米国出願公告20050139512
【特許文献12】米国出願公告20050145536
【特許文献13】米国出願公告20050145537
【特許文献14】米国出願公告20050145538
【特許文献15】米国出願公告20050155906
【特許文献16】米国出願公告20050167321
【特許文献17】米国出願公告20050167322
【特許文献18】米国出願公告20050167323
【特許文献19】米国出願公告20050170952
【特許文献20】米国出願公告20050173298
【特許文献21】米国特許4、626,412
【特許文献22】米国特許5,039,489
【特許文献23】米国特許5,264,183
【符号の説明】
【0292】
100 接触システム
101 原料供給部
102 接触帯
116 分離帯
119 原油生成物受け器
122 接触システム
124 分離帯
130 接触システム
142 内部蒸気/液体分離器
144 分離帯
150 接触システム
152 再生帯
154 回収帯
156 流動化器
158 内部分離器
158’ 内部分離器
190 接触システム
192 分離帯
200 ブレンド帯
206 多数接触システム
208 接触システム
210 接触システム
220 イオン導電率測定用システムの容器
222 サンプル
232 無機塩触媒から放出された水についてのイオン電流の対数値
234 無機塩触媒から放出されたCOについてのイオン電流の対数値
240 K2CO3抵抗
242 CaO抵抗
244 K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒抵抗
246 Li2CO3/K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒抵抗
248 Na2CO3/K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒抵抗
250 Na2CO3/K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒抵抗対K2CO3抵抗比と加熱温度との関係曲線
252 Na2CO3/K2CO3/Rb2CO3/Cs2CO3触媒抵抗対K2CO3抵抗比と加熱温度との関係曲線
254 コークスの生成量
256 コークスの生成量
258 液体炭化水素又は原油生成物の生成量
260 液体炭化水素又は原油生成物の生成量
262 ガスの生成量
264 ガスの生成量
266 全生成物(炭素数分布が5〜32の範囲の炭化水素)
268 全生成物(炭素数分布が5〜15の範囲の炭化水素)
270 一酸化炭素及び二酸化炭素の合計生成量
272 非凝縮性炭化水素の生成量
274 原油生成物の生成量
276 コークスの生成量及び/又は未反応アスファルテンの生成量
280 ガスの生成量
282 原油生成物の生成量
284 コークスの生成量
286 ガスの生成量
288 原油生成物の生成量
290 コークスの生成量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担持無機塩触媒を原料、水蒸気及び水素源の存在下に流動化して全生成物を製造するように構成した接触帯;
該接触帯から担持無機塩触媒の少なくとも一部を受取ると共に、担持無機塩触媒から汚染物の少なくとも一部を除去するように構成した再生帯;及び
該再生帯から燃焼ガスを受取ると共に、燃焼ガスから無機塩の少なくとも一部を分離するように構成した回収帯;
を備えた全生成物の製造システム。
【請求項2】
前記接触帯に連結した分離帯を更に備え、該分離帯は接触帯から全生成物を受取ると共に、全生成物から原油生成物とガスとを分離するように構成した請求項0に記載のシステム。
【請求項3】
前記接触帯が、再生帯から再生無機塩触媒を受取るように、再生帯に連結される請求項0又は2に記載のシステム。
【請求項4】
原料を接触帯に供給する工程;
無機塩触媒を該接触帯に供給する工程;
該接触帯において無機塩触媒を水素源及び水蒸気の存在下に原料と接触させて全生成物及び使用済み無機塩触媒を製造する工程;
該使用済み無機塩触媒を加熱して該触媒から汚染物の少なくとも一部を除去する工程であって、使用済み無機塩触媒の加熱中、再生無機塩触媒及び燃焼ガスが生成する該工程、及び
燃焼ガスから無機塩を回収する工程;
を含む全生成物の製造方法。
【請求項5】
前記再生無機塩触媒を接触帯に供給する工程を更に含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記燃焼ガスからの無機塩の回収工程が、
燃焼ガスに水を供給して無機塩の水溶液を形成する工程;
燃焼ガスから無機塩水溶液を分離する工程;及び
無機塩水溶液から無機塩を除去する工程;
を含む請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記燃焼ガスからの無機塩の回収工程が、前記燃焼ガスを1種以上の触媒支持体と接触させる工程であって、接触中、該無機塩は触媒支持体の少なくとも1種と結合する該接触工程を含む請求項4又は5に記載の方法。
【請求項8】
得られた担持無機塩を前記接触帯に供給する工程を更に含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記使用済み無機塩触媒を加熱する工程が熱を生成し、かつ前記方法が、該生成した熱を接触帯に供給する工程を更に含む請求項4〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記無機塩触媒が、1種以上のアルカリ金属、1種以上のアルカリ金属の1種以上の化合物、1種以上のアルカリ土類金属、1種以上のアルカリ土類金属の1種以上の化合物、又はそれらの組合せを含む請求項4〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記無機塩触媒が石灰石及び/又はドロマイトである請求項4〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記無機塩触媒が担持され、該担持用支持体が、石灰石、カーボン、コークス、不揮発性木炭、活性炭、フライアッシュ、ドロマイト、粘土、TiO、ZrO、アルミノシリケート、使用済み水素化処理触媒、全生成物/原料混合物から回収した金属及び/又は該金属の化合物、周期表第5〜10欄の1種以上の金属、周期表第5〜10欄の1種以上の金属の1種以上の化合物、又はそれらの組合せを含む請求項4〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記接触帯に無機塩を噴射する工程を更に含み、該接触帯に噴射される無機塩は、再生無機塩触媒、回収無機塩、又はそれらの組合せよりなる群から選ばれる請求項4〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
支持体上に無機塩を該支持体として噴射する工程を更に含み、該無機塩は、接触帯に供給され、支持体上に噴射される無機塩は、再生無機塩触媒、回収無機塩、又はそれらの組合せよりなる群から選ばれる請求項4〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記原料の合計アスファルテン含有量が、原料1g当たり0.01g以上である請求項4〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記全生成物が原油生成物を含み、前記方法が原油生成物を1種以上の蒸留物ブラクションに分留する工程及び該蒸留物フラクションの少なくとも1種から輸送用燃料を製造する工程を更に含む請求項4〜15のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2009−541538(P2009−541538A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516705(P2009−516705)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/071673
【国際公開番号】WO2007/149922
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】