説明

無機微粒子分散ペースト組成物

【課題】基板に対する密着性が高く、低温かつ低酸素濃度雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物を提供する。
【解決手段】加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル樹脂、沸点が150〜300℃の有機溶剤及び無機微粒子を含有することを特徴とする無機微粒子分散ペースト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対する密着性が高く、低温かつ低酸素濃度雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、導電性粉末、セラミック粉末等の無機微粒子を樹脂バインダーに分散させたペースト組成物が、様々な形状の焼結体を得るために用いられている。特に、微粒子として蛍光体を樹脂バインダーに分散させたペースト組成物は、例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)等に用いられ、近年需要が高まりつつある。
【0003】
例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)の誘電体膜の形成には、誘電体微粒子としてガラス粉末を樹脂バインダー中に分散させたガラスペースト組成物が用いられている。
このようなガラスペースト組成物は、例えば、スクリーン印刷法、ドクターブレード法等を用いた塗布法、シート状に加工するためのキャスティング法、ダイコート法等の塗工法等により所定の形状に加工した後、脱脂及び焼成することで必要な形状の焼結体とすることができる。なかでも、PDPを製造する場合、厚膜を形成可能なダイコート法等の塗工法が好適に用いられている。
【0004】
ガラスペースト組成物を用いた焼結体の製造には、生産性及び作業性に優れたエチルセルロースが用いられている。
しかしながら、エチルセルロースは、熱分解性が悪いために、有機物質が残りやすく、それを防ぐために高温で焼成しなければならず、製造エネルギーや時間がかかるという問題があった。
【0005】
これに対して、例えば、特許文献1には、熱分解性の良好なアクリル樹脂を用いたペースト組成物が開示されている。このようなアクリル樹脂を含有する無機微粒子分散ペースト組成物は、バインダー樹脂の熱分解性が良好なため、低温、短時間で焼成することができる。しかしながら、このようなアクリル樹脂を用いてなるガラスペースト組成物は、エチルセルロースを用いた場合と同様にガラス基板との密着性に劣るという問題があった。
このため、例えば、PDPの製造工程において、バインダー樹脂としてアクリル樹脂やエチルセルロースを含有するガラスペースト組成物をガラス基板に塗工・乾燥することによって成膜した場合、形成された膜が乾燥後にガラス基板から剥離してしまうという問題があった。
【0006】
一方、例えば、特許文献2には、バインダー樹脂としてセルロース系樹脂と水酸基含有アクリル系樹脂とを含有する隔壁形成用ペーストが開示されており、このような隔壁形成用ペーストは、サンドブラスト性、ペーストの泡抜け性が良好で、サンドブラストによる隔壁破壊が起こりにくい等の特性を有している。しかしながら、このような隔壁形成用ペーストを用いた場合でも、乾燥時のガラス基板との密着性については依然として不充分であった。
また、特許文献3には、所定量の低融点ガラス粉末、樹脂、溶剤、カップリング剤を含有する焼成用インキ組成物が開示されており、乾燥時に生じる塗膜表面の風紋(山の尾根が幾筋も曲線状態に連なった形状の凹凸)を解消し、水洗やアルカリ液への浸漬の際に、リブの一部が除かれたり、倒れたりするという課題の解決を目的としている。しかしながら、このような焼成用インキ組成物では、低温分解性について全く考慮されていなかった。
【特許文献1】特開2004−315719号公報
【特許文献2】特開2003−54992号公報
【特許文献3】特開2000−345081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、基板との密着性に優れるとともに、低温かつ低酸素濃度雰囲気下であっても脱脂処理が可能で、基板密着性に優れる無機微粒子分散ペースト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル樹脂、沸点が150〜300℃の有機溶剤及び無機微粒子を含有することを特徴とする無機微粒子分散ペースト組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、無機微粒子としてガラス粉末を含有し、バインダー成分として、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル樹脂を含有するペースト組成物を用いることで、驚くべきことに、印刷中にレベリング性を阻害することなく、基板に対する密着性が大幅に改善されること、及び、低温かつ低酸素濃度雰囲気下であっても脱脂処理が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物(以下、単に本発明のペースト組成物ともいう)は、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル樹脂を含有する。
上記加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル樹脂を含有することで、本発明のペースト組成物と基板との親和性が改善され、密着性が良好となり、乾燥後に塗膜の剥離が発生することを効果的に防止することができる。また、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル樹脂は、高いレベリング性や低温分解性を有するため、高い密着性、レベリング性及び低温分解性を同時に実現することができる。
【0011】
上記加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントと、加水分解性シリル基を有するモノマーに由来するセグメントとからなる共重合体(以下、本発明に係る共重合体ともいう)を用いることが好ましい。
上記本発明に係る共重合体は、本発明のペースト組成物においてバインダー樹脂として働くものである。ここで、本発明のペースト組成物では、上記本発明に係る共重合体と、(メタ)アクリルモノマーの単独重合体とを混合したものを用いてもよい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0012】
上記加水分解性シリル基を有するモノマーに由来するセグメントを含有することで、本発明のペースト組成物と基板との親和性が改善され、密着性が良好となり、乾燥後に塗膜の剥離が発生することを効果的に防止することができる。なお、上記加水分解性シリル基とは、水と反応してシラノールを生成するものであり、例えば、ケイ素に1以上のメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基等のアルコキシ基、塩素等が結合したものをいう。
【0013】
上記加水分解性シリル基を有するモノマーとしては、シランカップリング剤が好ましい。なお、本明細書において、シランカップリング剤とは、ケイ素を含む親水性の部分構造と、炭素を含む親油性の部分構造との両方を同一分子内に有する化合物のことをいう。
【0014】
上記シランカップリング剤としては、特に限定されないが、メタクリロキシシラン系シランカップリング剤が好ましい。
メタクリロキシシラン系シランカップリング剤を用いることで、(メタ)アクリルモノマーと重合し、容易に加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル樹脂を作成することができる。
上記メタクリロキシシラン系シランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0015】
本発明のペースト組成物において、上記本発明に係る共重合体中のシランカップリング剤に由来するセグメントの含有量の好ましい上限が0.1重量%、好ましい下限が15重量%である。0.1重量%未満であると、シランカップリング剤を添加することによる効果が充分に発揮されず、基板との密着性が不充分となることがあり、15重量%を超えると、共重合体の粘度が高くなりすぎ、ゲル化することがある。好ましい下限は1重量%、好ましい上限は10重量%である。
【0016】
上記(メタ)アクリルモノマーとしては特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられ、なかでも、炭素数が10以下の(メタ)アクリルモノマーを1種又は2種以上用いることが好ましい。また、分解性の優れるメタクリルモノマーが更に好ましい。
【0017】
上記何れも加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル樹脂におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算数平均分子量の範囲は、用いる加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度に依存するが、好ましくは下限が2000、好ましい上限が10万である。ガラス転移温度が室温よりも高い加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル樹脂においては、上限が5万であることが好ましく、さらに好ましい上限は20000である。ポリスチレン換算数平均分子量が上記範囲を外れると、本発明のペースト組成物のレベリング性が不充分となることがある。
また、GPCによりポリスチレン換算数平均分子量を測定する際のカラムとしてはSHOKO社製カラムLF−804等が挙げられる。
【0018】
また、本発明のペースト組成物において、上記加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル樹脂の含有量は、印刷可能な限り少量であることが好ましいが、好ましい下限は1重量%、好ましい上限は15重量%である。1重量%未満であると、本発明のペースト組成物の成形性が劣ることがあり、15重量%を超えると、焼成後の残炭量が増加することで焼成後の品質に影響が出たり、焼成により厳しい環境が必要となったりして好ましくない。
【0019】
上記加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル樹脂の重合方法としては特に限定されず、通常の(メタ)アクリルモノマーの重合に用いられる方法が挙げられ、例えば、フリーラジカル重合法、リビングラジカル重合法、イニファーター重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法等が挙げられる。
【0020】
本発明のペースト組成物は、架橋促進剤を含有することが好ましい。
上記架橋促進剤としては、特に限定されないが、有機金属化合物が好適に用いられる。上記有機金属化合物としては、例えば、ゲルマニウム、錫、鉛、硼素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、チタニウム、ジルコニウム等の金属元素と有機基を置換してなる有機金属化合物が挙げられる。例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド等の錫化合物、テトラ−n−ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート等のチタネート化合物を用いることが好ましい。なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
本発明のペースト組成物において、上記架橋促進剤の含有量の好ましい下限が0.001重量%、好ましい上限が5重量%である。0.01重量%未満であると、架橋促進剤による効果が充分に発揮されず、基板との密着性が不充分となることがあり、5重量%を超えると、架橋促進剤が効きすぎ、ゲル化することがある。より好ましい下限は0.01重量%、より好ましい上限は1重量%である。
【0022】
本発明のペースト組成物は、架橋速度調整剤を含有してもよい。
上記架橋速度調整剤としては、特に限定されないが、ビニルシラン系シランカップリング剤、長鎖アルキルカルボン酸等が好適に用いられる。
上記ビニルシラン系シランカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
上記長鎖アルキルカルボン酸としては、オクチル酸等が挙げられる。
ビニルシラン系カップリング剤や長鎖アルキルカルボン酸を用いることにより、空気中の湿気による反応を抑えることが可能となり、ペーストのポットライフが向上する。
本発明のペースト組成物において、上記架橋速度調整剤の含有量の好ましい下限が0.001重量%、好ましい上限が5重量%である。0.01重量%未満であると、架橋速度調整剤による効果が充分に発揮されず、ポットライフが不充分となることがあり、5重量%を超えると、架橋速度調整剤が効きすぎ、架橋しなくなる。より好ましい下限は0.01重量%、より好ましい上限は1重量%である。
【0023】
本発明のペースト組成物は、密着促進剤を含有してもよい。
上記密着促進剤としては、特に限定されないが、アミノシラン系シランカップリング剤が好適に用いられる。
上記アミノシラン系シランカップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
アミノシラン系シランカップリング剤以外にも、グリシジルシラン系シランカップリング剤である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、その他シランカップリング剤であるジメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等も好適に用いることができ、これらを複数用いても良い。
【0024】
本発明のペースト組成物は、無機微粒子を含有する。
上記無機微粒子としては、本発明のペースト組成物を用いて製造する焼結体に合わせて適宜決定され、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、CaO・Al・SiO系無機ガラス、MgO・Al・SiO系無機ガラス、LiO・Al・SiO系無機ガラスの低融点ガラス、種々のカーボンブラック、カーボンナノチューブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、金属錯体、YS:Eu、(SrCaBaMg)(POCl:Eu、LaPO:Ce,Tb、Y:Eu、Ca10(POFCl:Sb,Mn、BaMgAl1017:Eu、ZnSiO:Mn、(Y,Gd)BO:Eu、CaWO、GdS:Tb、(Y,Sr)TaO:Nb等の蛍光体等からなる群より選択される少なくとも1種を原料とするものが好適に用いられる。
なかでも、本発明のペースト組成物は、上述したシランカップリング剤を含有するため、例えば、従来のアクリル樹脂を含有するペースト組成物では使用可能な種類に制限のあったガラス粉末であっても、上記無機微粒子として好適に使用することができる。
上記ガラス粉末としては特に限定されず、例えば、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、CaO・Al・SiO系無機ガラス、MgO・Al・SiO系無機ガラス、LiO・Al・SiO系無機ガラス等の低融点ガラス等が挙げられる。
【0025】
上記無機微粒子の添加量としては特に限定されないが、本発明のペースト組成物のうち加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル樹脂、有機溶剤等の無機微粒子以外の成分からなるバインダー樹脂組成物100重量部に対して好ましい下限が10重量部、好ましい上限が900重量部である。10重量部未満であると、充分な粘度が得られないことがあり、900重量部を超えると、無機微粒子を分散させることが困難となることがある。より好ましい下限は50重量部、より好ましい上限は800重量部である。
また、上記無機微粒子がガラス粉末である場合、該ガラス粉末の本発明のペースト組成物における含有量の好ましい下限は40重量%、好ましい上限は95重量%であり、より好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は85重量%未満である。
【0026】
本発明のペースト組成物に含有される有機溶剤は、1気圧下での沸点の好ましい下限が150℃、好ましい上限が350℃である。上記有機溶剤がこの範囲を満たすことで印刷プロセス時の有機溶剤の揮発が抑制されることで粘度が安定し、最終的に印刷性が向上する。
【0027】
上記沸点の下限が150℃、上限が350℃である有機溶剤としては特に限定されず、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールドデシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールドデシルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノnブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオレエート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノnブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノオレエートアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールジアセタート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノステアレート、トリエチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコール、フェニルプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 、プロピレングリコールジアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコール 、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル 、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートテトラエチレングリコール、テトラエチレングリコールドデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノオクチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル、ヘプタエチレングリコールドデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテルブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオール、ターピネアセテート、ジヒドロターピネオール、テキサノール、ベンジルアセテート、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ベンジルアルコール、クレゾール等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
本発明のペースト組成物は、20℃においてB型粘度計を用いプローブ回転数を5rpmに設定して測定した時の粘度が10Pa・s以上、かつ、200Pa・s未満であることが好ましい。10Pa・s未満であると、ダイコート法等により成膜した後に静置して乾燥させる際に自然流延してしまうことがある。より好ましいのは25Pa・s以上、かつ、200Pa・s未満の範囲である。
【0029】
本発明のペースト組成物の製造方法としては特に限定されず、上述した加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル樹脂、無機微粒子、有機溶剤等を従来公知の攪拌方法、具体的には例えば、3本ロール等で攪拌を行えばよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、基板に対する密着性が高く、低温かつ低酸素濃度雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0032】
(合成例1)
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコに、メチルメタクリレート(MMA)45重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)50重量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学製、KBM−503)5部、連鎖移動剤(DDM)0.5重量部、有機溶剤としてターピネオール50重量部を混合し、モノマー混合液を得た。
得られたモノマー混合液を、窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し攪拌しながらモノマー混合溶液温が95℃に達するまでに昇温した。モノマー混合溶液温が95℃に達した後、重合開始剤を酢酸エチルで希釈した溶液を加えた。また、重合中に重合開始剤を含む酢酸エチル溶液を数回添加した。
重合開始から7時間後、室温まで冷却し重合を終了させた。これにより、(メタ)アクリル樹脂のターピネオール溶液を得た。得られた(メタ)アクリル樹脂について、カラムとしてSHOKO社製カラムLF−804を用い、GPCによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による数平均分子量は5000であった。
【0033】
(合成例2)
MMAの代わりにイソブチルメタクリレート(IBMA)を用いたこと以外は、合成例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂のターピネオール溶液を得た。得られた(メタ)アクリル樹脂について、カラムとしてSHOKO社製カラムLF−804を用い、GPCによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による数平均分子量は5000であった。
【0034】
(合成例3)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの代わりにMMAを用いたこと以外は、合成例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂のターピネオール溶液を得た。得られた(メタ)アクリル樹脂について、カラムとしてSHOKO社製カラムLF−804を用い、GPCによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による数平均分子量は5000であった。
【0035】
(実施例1)
合成例1で得られた(メタ)アクリル樹脂、ターピネオール、架橋促進剤(和光純薬、ジブチル錫ジラウレート)、シリカ粉末(S.C.R.SIBELCO社製、シベライトM6000)を表1に示す組成で配合し、高速撹拌装置を用いて充分混練し、3本ロールミルにてなめらかになるまで処理を行い、無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。
全体の粘度は、良好な印刷性を与えるよう250Pa・sとなるように決定した。なお、粘度はB型粘度計(BROOK FILED社製、DVII+Pro) を利用して、回転数5rpmについて20℃における値として求めた。
【0036】
(実施例2)
合成例2で得られた(メタ)アクリル樹脂に変更した以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。組成等を表1に示した。
【0037】
(実施例3〜4)
硬化速度調整剤、密着促進剤を添加したこと以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。組成等を表1に示した。
【0038】
(比較例1)
エチルセルロース、ターピネオール、シリカ粉末(S.C.R.SIBELCO社製、シベライトM6000)を表1に示す組成で配合した以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。
【0039】
(比較例2)
合成例3で得られた(メタ)アクリル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。組成等を表1に示した。
【0040】
(評価)
実施例1〜4、比較例1〜2で得られた無機微粒子分散ペースト組成物について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0041】
(1)レベリング性(表面平滑化特性)評価
容器に充填したガラスペースト組成物の表面から10mmの深さまで、先端が鋭利な直径2.6mmのステンレスピックを突き刺し、ステンレスピックを垂直に引き上げた。ステンレスピックとともに5mmの高さまで引き上げられたガラスペースト組成物が、容器内のガラスペースト組成物の表面にまで落ち平滑な状態に戻るまでの時間を測定した。以下の基準でレベリング性を評価した。
○:表面が平滑な状態に戻るまでの時間が3秒未満
×:表面が平滑な状態に戻るまでの時間が3秒以上
【0042】
(2)基板密着性
ダイコート法によってガラス基板上に得られた無機微粒子分散ペースト組成物を塗工し、厚みが50μmの無機微粒子分散ペースト組成物からなる塗膜を作製した。塗膜が形成されかガラス基板をアルカリ溶液に1時間浸漬し、以下の基準で基板密着性を評価した。
○:変化無し
×:塗膜がガラス基板から剥離した
【0043】
(3)焼成実験
ダイコート法によってガラス基板上に得られた無機微粒子分散ペースト組成物を塗工し、厚みが50μmの無機微粒子分散ペースト組成物からなる塗膜を作製した後、窒素雰囲気下500℃で30分焼成した。焼成後、残留炭素分を炭素・硫黄分析装置(EMIA−820)で測定し、以下の基準で評価した。
○:残留炭素が300ppm未満
×:残留炭素が300ppm以上
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、基板に対する密着性が高く、低温かつ低酸素濃度雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル樹脂、沸点が150〜300℃の有機溶剤及び無機微粒子を含有することを特徴とする無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項2】
更に、架橋促進剤を含有することを特徴とする請求項1記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項3】
更に、架橋速度調整剤を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項4】
更に、密着促進剤としてアミノシランを含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の無機微粒子分散ペースト組成物。

【公開番号】特開2009−67820(P2009−67820A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234481(P2007−234481)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】