説明

無機系構造体の製造方法、及び無機系構造体

【課題】繊維の脱落の可能性が低く、柔軟性に優れ、接着剤からの汚染物質が発生しにくい、無機系極細長繊維からなるか無機系極細長繊維を主体とする無機系不織布を提供する。
【解決手段】前記無機系不織布は、平均繊維径が2μm以下で、無機成分主体の無機系極細長繊維を含む。好ましくは、接点において接着剤を介することなく接着しており、無機系極細長繊維の繊維径のCV値が0.8以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機系細繊維からなるか又は無機系細繊維を主体とする無機系構造体の製造方法に関する。更に、本発明は、前記製造方法によって製造することができ、無機系極細長繊維からなるか又は無機系極細長繊維を主体とする無機系構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、無機系短繊維(例えば、ガラス短繊維)からなる無機系短繊維シートは、濾過性能や分離性能等に優れているため、濾過材や鉛蓄電池用のセパレータなどとして好適に使用されている。
このような無機系短繊維シートは、例えば、無機系短繊維を湿式法によりシート化することにより製造していた。このように製造した無機系短繊維シートは、無機系短繊維シートを構成する無機系短繊維が脱落する恐れがあるため、接着剤により無機系短繊維を接着するのが好ましい。しかしながら、接着剤を使用すると、接着剤が溶出したり、接着剤の種類によって無機系短繊維シートの用途が限定される、という問題があった。
【0003】
無機系短繊維については、例えば、「ゾルーゲル法の科学」(作花済夫著,アグネ承風社,1988年7月5日)に、直径10μmで、長さが最高で20mmの短繊維が得られることが記載されている(第78〜79頁)。しかしながら、このような短繊維から製造された繊維シートの場合、短繊維であるために繊維脱落のおそれがあり、これを防ぐために接着剤を使用すると、接着剤の溶出や、用途が限定されるという問題があった。
例えば、無機系短繊維シートをクリーンルーム用フィルタの濾過材として使用した場合、接着剤からの溶出物がシリコンウエハやガラス基板表面に付着してしまう可能性があったり、無機系短繊維シートを耐熱フィルタの濾過材として使用した場合、接着剤に耐熱性がないため、使用することができない場合があった。
また、このような無機系短繊維は繊維径が大きく、柔軟性がないため、その形状がシート形状又は平板形状に限定され、この点でも用途が限定されるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の課題は、前記従来技術の欠点を解消することを目的とするものであり、具体的には、接着剤を使用することによる弊害を防ぐことのできる無機系構造体の製造方法を提供することにある。更に、本発明の課題は、繊維の脱落の可能性が低く、柔軟性の優れる無機系構造体を提供し、接着剤からの汚染物質が発生しにくい無機系構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題は、本発明により、
(1)無機成分を主体とするゾル溶液を形成する工程(以下、ゾル溶液形成工程と称することがある)、
(2)前記ゾル溶液をノズルから押し出すとともに、押し出したゾル溶液に電界を作用させることにより細くして、無機系ゲル状細繊維を形成し、支持体上に無機系ゲル状細繊維を集積させる工程(以下、集積工程と称することがある)、及び
(3)前記集積させた無機系ゲル状細繊維を乾燥して、無機系乾燥ゲル状細繊維を含む無機系構造体を形成する工程(以下、乾燥工程と称することがある)、及び/又は前記集積させた無機系ゲル状細繊維を焼結して、無機系焼結細繊維を含む無機系構造体を形成する工程(以下、焼結工程と称することがある)
を含むことを特徴とする、無機系構造体の製造方法によって解決することができる。
このような本発明の製造方法によれば、乾燥及び/又は焼結することにより、接着剤を使用することなく無機系構造体を製造することができるため、接着剤を使用することによる弊害を防ぐことができる。
本発明の製造方法の好ましい態様によれば、電界を作用させて細径化された無機系ゲル状細繊維が支持体に集積される前に、前記無機系ゲル状細繊維に対して、有機系繊維、無機系繊維、有機系繊維及び/又は無機系繊維からなる糸、又は粉体を吹き付けることができる。
本発明の製造方法の別の好ましい態様によれば、前記集積工程(2)で用いる支持体が三次元的な立体形状を有する。こうして得られる無機系構造体は、三次元的な立体形状を有するので、各種用途に適合させることができる。
【0006】
更に、本発明は、平均繊維径が2μm以下で、無機成分を主体とする無機系極細長繊維を含んでいることを特徴とする無機系構造体に関する。
本発明の無機系構造体は長繊維からなるため繊維の脱落の可能性が低く、しかも平均繊維径が2μm以下と非常に細く、柔軟性に優れているため、各種形状に変形することができ、各種用途に適用することができるものである。
本発明の無機系構造体の好ましい態様においては、前記無機系極細長繊維が、接点において、接着剤を介することなく接着している。また、本発明の無機系構造体の好ましい態様においては、接着剤を実質的に含んでいない。このような無機系構造体は、接着剤が存在していないため、接着剤からの汚染物質が発生しにくいものである。
本発明の無機系構造体の別の好ましい態様においては、前記無機系極細長繊維の繊維径のCV値(=標準偏差/平均繊維径)が0.8以下である。このような無機系構造体は、性能が均一になるので好ましい。
本発明の無機系構造体の更に別の好ましい態様においては、前記無機系極細長繊維に、有機系繊維、繊維径が2μmを超える繊維径の太い無機系繊維、無機系短繊維、有機系繊維と繊維径が2μmを超える繊維径の太い無機系繊維と無機系短繊維とからなる群から選んだ繊維1種又はそれ以上からなる糸、織物、編物、不織布、ネット、又は粉体が混合又は複合した状態で含まれている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の無機系構造体の製造方法によれば、乾燥及び/又は焼結することにより、接着剤を使用することなく無機系構造体を製造することができるため、接着剤を使用することによる弊害を防ぐことができる。
本発明の無機系構造体は繊維の脱落の可能性が低く、柔軟性に優れているため、各種形状に変形することができ、各種用途に適用することができ、しかも、接着剤からの汚染物質が発生しにくいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の製造方法では、まず、前記のゾル溶液形成工程(1)を実施する。すなわち、無機成分を主体とするゾル溶液を形成する。本明細書において「無機成分を主体とする」とは、無機成分が50質量%以上を占めていることを意味する。前記ゾル溶液の無機成分含有量は、60質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましい。
このゾル溶液は、本発明の製造方法で最終的に得られる無機系構造体を構成する無機系乾燥ゲル状細繊維又は無機系焼結細繊維を構成する元素を含む化合物を含む溶液(原料溶液)を、約100℃以下の温度で加水分解させ、縮重合させることによって得ることができる。前記原料溶液の溶媒は、例えば、有機溶媒(例えばアルコール)又は水である。
【0009】
この化合物を構成する元素は特に限定するものではないが、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、硫黄、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ランタン、ハフニウム、タンタル、タングステン、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、又はルテチウムなどを挙げることができる。
【0010】
前記の化合物としては、例えば前記元素の酸化物を挙げることができ、具体的には、SiO、Al、B、TiO、ZrO、CeO、FeO、Fe、Fe、VO、V、SnO、CdO、LiO、WO、Nb、Ta、In、GeO、PbTi、LiNbO、BaTiO、PbZrO、KTaO、Li、NiFe、SrTiOなどを挙げることができる。前記の無機成分は、一成分の酸化物から構成されていても、二成分以上の酸化物から構成されていてもよい。例えば、SiO−Alの二成分から構成することができる。
【0011】
前記のゾル溶液は、前記原料溶液に対して、前記化合物を縮重合させる処理を行うことにより得られ、主として無機成分からなる。すなわち、無機成分が50質量%以上を占めており、好ましくは60質量%以上、より好ましくは75質量%以上を占めている。前記のゾル溶液は、後述する集積工程(2)においてノズルからの紡糸が可能となる粘度を有していることが必要である。その粘度は、紡糸可能な粘度である限り特に限定されるものではないが、好ましくは、0.1〜100ポイズ、より好ましくは0.5〜20ポイズ、特に好ましくは1〜10ポイズ、最も好ましくは1〜5ポイズである。粘度が100ポイズを超えると細繊維化が困難となり、0.1ポイズ未満になると繊維形状が得られなくなる。ノズル先端部分における雰囲気を原料溶液と同様の溶媒ガス雰囲気とする場合には、100ポイズを超えるゾル溶液であっても紡糸可能な場合がある。
本発明方法で用いるゾル溶液は、上述のような無機成分以外に、有機成分を含んでいることができ、この有機成分として、例えば、シランカップリング剤、染料などの有機低分子化合物、ポリメチルメタクリレートなどの有機高分子化合物、などを挙げることができる。より具体的には、前記原料溶液に含まれる化合物がシラン系化合物である場合には、メチル基やエポキシ基などで有機修飾されたシラン系化合物が縮重合したものを含んでいることができる。
【0012】
前記原料溶液は、前記原料溶液に含まれる化合物を安定化する溶媒(例えば、有機溶媒、例えば、エタノールなどのアルコール類、ジメチルホルムアミド、又は水)、前記原料溶液に含まれる化合物を加水分解するための水、及び加水分解反応を円滑に進行させる触媒(例えば、塩酸、硝酸など)を含んでいることができる。また、前記原料溶液に含まれる、例えば、化合物を安定化させるキレート剤、前記化合物の安定化のためのシランカップリング剤、圧電性などの各種機能を付与することができる化合物、接着性改善、柔軟性、硬度(もろさ)調整のための有機化合物(例えば、ポリメチルメタクリレート)、あるいは染料などの添加剤を含んでいることができる。なお、これらの添加剤は、加水分解を行う前、加水分解を行う際、あるいは加水分解後に添加することができる。
テトラエトキシシランの場合、水の量がアルコキシドの4倍(モル比)を超えると曳糸性のゾル溶液を得ることが困難になるため、アルコキシドの4倍以下であるのが好ましい。
触媒として塩基を使用すると、曳糸性のゾル溶液を得ることが困難になるため、塩基を使用しないのが好ましい。
反応温度は使用溶媒の沸点以下であればよいが、低い方が適度に反応速度が遅く、曳糸性のゾル溶液を形成しやすい。あまり低すぎても反応が進行しにくいため、10℃以上であるのが好ましい。
【0013】
本発明の製造方法では、次いで、集積工程(2)を実施する。すなわち、前記工程(1)で得られたゾル溶液をノズルから押し出すとともに、押し出したゾル溶液に電界を作用させることにより細く(細径化)して、無機系ゲル状細繊維を形成し、支持体上に無機系ゲル状細繊維を集積させる。
【0014】
このゾル溶液を押し出すノズルの直径は、目的とする無機系乾燥ゲル状細繊維又は無機系焼結細繊維の繊維径によって変化する。例えば、無機系乾燥ゲル状細繊維又は無機系焼結細繊維の繊維径が2μm以下の場合には、ノズルの直径が、0.1〜3mm程度であるのが好ましい。
また、ノズルは金属製であっても、非金属製であってもよい。ノズルが金属製であればノズルを1つの電極として使用することができ、ノズルが非金属製である場合には、ノズル内に電極を設置することにより、押し出したゾル溶液に電界を作用させることができる。
【0015】
このようなノズルからゾル溶液を押し出した後、押出物に電界を作用させることにより延伸して細径化し、無機系ゲル状細繊維を形成する。この電界は、目的とする無機系乾燥ゲル状細繊維又は無機系焼結細繊維の繊維径、ノズルと支持体との距離、原料溶液の溶媒、ゾル溶液の粘度などによって変化するため、特に限定するものではないが、例えば、無機系乾燥ゲル状細繊維又は無機系焼結細繊維の繊維径を3μm以下程度とする場合には、0.5〜5kV/cmであるのが好ましい。印加する電界が大きければ、その電界値の増加に応じて無機系ゲル状細繊維の繊維径が細くなるが、5kV/cmを超えると、空気の絶縁破壊が生じやすいので好ましくない。また、0.5kV/cm未満になると繊維形状となりにくい。
電界を印加することにより、ゾル溶液に静電荷が蓄積され、支持体側の電極によって電気的に引っ張られて引き伸ばされて細繊維化する。特に電気的に引き伸ばしているため、繊維が支持体に近づくにしたがって電界により繊維の速度が加速され、細繊維化する。また、溶媒の蒸発によって細くなり、ゾル中の静電気密度が高まり、その電気的反発力によって分裂して更に細くなるのではないかと考えている。なお、本発明は前記の推論によって限定されるものではない。
【0016】
このような電界は、例えば、ノズル(金属製ノズルの場合にはノズル自体、非金属製ノズルの場合にはノズル内の電極)と支持体との間に電位差を設けることによって、作用させることができる。例えば、ノズルに電圧を印加するとともに支持体をアースすることによって電位差を設けることができるし、逆に、支持体に電圧を印加するとともにノズルをアースすることによって電位差を設けることもできる。
【0017】
このように電界を作用させ、細径化して形成した無機系ゲル状細繊維を支持体上に集積させる。支持体は、その上に前記無機系ゲル状細繊維を単に載置して集積させる目的に用いる単純載置型担体であるか、あるいは、前記の無機系ゲル状細繊維と複合一体化することにより無機系構造体の一成分となる成分担体であることができる。単純載置型担体としての支持体としては、例えば、多孔ロール又は無孔ロールを挙げることができる。また、単純載置型担体又は成分担体として用いることのできる支持体としては、例えば、多孔シート(例えば、織物、編物、不織布、又は多孔フィルムのシート)、又は無孔シート(例えば、フィルム)を挙げることができる。成分担体としての支持体は、繊維(例えば、有機系繊維又は無機系繊維)、又は糸からなることができる。なお、このような支持体は平面的であってもよいが、三次元的な立体形状を有していることもできる。ここで、三次元的な立体形状を有する支持体とは、平面的なシート状ではないことを意味し、例えば、シート状物を湾曲及び/又は屈曲させて立体的にした成形体であることができ、各種用途に適合させることができる。例えば、蛇腹状に折り加工した支持体であれば、フィルタ用途に好適に使用することができ、円筒状の支持体であれば、液体用のフィルタ用途に好適に使用することができ、お椀状の支持体であれば、マスクとして好適に使用することができる。
【0018】
なお、支持体は、それを電極の1つとして使用する場合には、体積抵抗が10Ω以下の導電性材料(例えば、金属製)からなるのが好ましい。一方、ノズル側から見て、支持体よりも後方に対向電極として導電性材料を配置する場合には、支持体は必ずしも導電性材料である必要はない。後者のように、支持体よりも後方に対向電極を配置する場合、支持体と対向電極とは直接に接触していてもよいし、離間していてもよい。
【0019】
また、ノズルから押し出され、電界を作用させて細径化された無機系ゲル状細繊維が支持体に到着する前に、その無機系ゲル状細繊維に対して、有機系繊維、無機系繊維、これら繊維からなる糸、あるいは粉体などをエアガン等によって吹き付けることができ、この方法によれば、これら吹き付けた繊維及び/又は粉体と無機系ゲル状細繊維とが混合した状態で、支持体上に集積することができる。このような繊維や粉体等の吹き付けは、無機系ゲル状細繊維が支持体へ向かう方向に対して任意の方向から実施することができ、例えば、無機系ゲル状細繊維が支持体へ向かう方向に対して直角方向や斜め方向から吹き付けることができる。
この粉体としては、例えば、酸化チタン、二酸化マンガン、酸化銅、二酸化ケイ素、活性炭、白金などの金属などの無機系粉体や、イオン交換樹脂、色素、顔料、薬剤などの有機系粉体を挙げることができる。この粉体の平均粒径は特に限定されるものではないが、好ましくは0.01〜100μmであり、より好ましくは0.05〜10μmである。このような粉体を含んでいることによって、触媒機能、研磨機能、吸着機能、あるいはイオン交換機能などを付与することができる。
【0020】
前記ゾル溶液をノズルから押し出す方向と、細径化された無機系ゲル状細繊維を支持体へ集積させる方向とは、一般的に一致する。また、これらの方向は、特に限定されるものではなく、例えば、上方に配置したノズルから下方に配置した支持体に向かって無機系ゲル状細繊維を移動させることもできるし、逆に、下方に配置したノズルから上方に配置した支持体に向かって無機系ゲル状細繊維を実質的に鉛直方向に移動させることも、あるいは、実質的に水平方向に押し出すこともできる。しかしながら、ゲルの滴下が生じにくいように、ノズルからの押し出し方向と、重力の作用方向とが一致しないのが好ましい。特には、重力の作用方向と反対方向又は重力の作用方向と垂直方向に押し出すのが好ましい。
【0021】
このように無機系ゲル状細繊維と吹き付け繊維及び/又は粉体等とを混合するか、又は無機系ゲル状細繊維と支持体(成分担体)とを複合することによって、強度や成形性などの各種特性に優れる無機系構造体を製造することができる。
【0022】
本発明の製造方法では、前記集積工程(2)に続いて、乾燥工程(3)を実施することができる。すなわち、前記集積工程(2)で集積させた無機系ゲル状細繊維を乾燥して、無機系乾燥ゲル状細繊維を含む無機系構造体を形成する。
あるいは、本発明の製造方法では、前記集積工程(2)に続いて、前記と同様に乾燥工程(3)を実施し、更に続いて焼結工程(4)を実施することができる。すなわち、前記集積工程(2)で集積させた無機系ゲル状細繊維を乾燥して無機系乾燥ゲル状細繊維を含む無機系構造体を形成した後、前記無機系乾燥ゲル状細繊維を含む無機系構造体を焼結して、無機系焼結細繊維を含む無機系構造体を形成することができる。
更に、本発明の製造方法では、前記集積工程(2)に続いて、乾燥工程(3)を実施せずに、焼結工程(4)を実施することができる。すなわち、前記集積工程(2)で集積させた無機系ゲル状細繊維を焼結して、無機系焼結細繊維を含む無機系構造体を形成することができる。
従って、本発明の製造方法によって得られる無機系構造体は、無機系乾燥ゲル状細繊維を含む場合と、無機系焼結細繊維を含む場合の2種類がある。
【0023】
初めに前記乾燥工程(3)について説明する。
前記集積工程(2)で集積させた無機系ゲル状細繊維を乾燥して、無機系乾燥ゲル状細繊維を含む無機系構造体を形成する場合、乾燥温度は無機系ゲル状細繊維を構成する無機成分によって変化するため特に限定されるものではないが、有機成分の分解温度未満の温度、例えば、200℃程度以下の温度で実施するのが好ましい。この乾燥は、オーブンなどで加熱することによって実施することができるし、凍結乾燥あるいは超臨界乾燥によっても実施することができる。
【0024】
乾燥工程においては、各種用途に適用するのに必要な取扱い強度を有するまで乾燥する。また、無機系乾燥ゲル状細繊維は、相互に絡み合うか又は溶媒の揮発による接着によって結合している。
【0025】
この乾燥工程(3)では、無機系ゲル状細繊維を支持体(成分担体)と一体化した状態で乾燥し、無機系乾燥ゲル状細繊維と支持体(成分担体)とが一体化した状態の無機系構造体を得るか、又は、乾燥後に支持体(単純載置型担体)から無機系乾燥ゲル状細繊維を分離して、無機系乾燥ゲル状細繊維からなる無機系構造体を形成する。いずれの場合も、接着剤を使用せずに各構成繊維が相互に結合し、脱落はほとんど起こらない。
【0026】
本発明の製造方法によれば、前記集積工程(2)の後で、前記の乾燥工程(3)を行わずに、焼結工程(4)を実施することができる。この場合、焼結温度は無機系ゲル状細繊維を構成する無機成分によって変化するため、特に限定されるものではないが、例えば、無機成分と有機成分とを含む無機系ゲル状細繊維を、温度約200℃以上、有機成分の分解温度未満で焼結すれば、有機成分が残留した無機系構造体を製造することができ、この無機系構造体は残留した有機成分の機能(例えば、接着性改善、柔軟性、硬さ(もろさ)調整、色素などの光学機能、撥水性)を発揮することができる。このように焼結することによって得られた無機系構造体は、焼結によっても各構成繊維が相互に結合しているので、脱落はほとんど起こらない。また、有機成分の分解温度以上で焼結すれば、無機成分のみからなり、強度及び耐熱性の優れる無機焼結細繊維を含有する無機系構造体を製造することができる。
【0027】
より具体的には、無機系ゲル状細繊維が有機成分を含むシリカ成分からなる場合、200〜400℃程度の温度で焼結すれば、有機成分の残留したシリカ焼結細繊維を含み、接着性改善、柔軟性、硬さ(もろさ)調整、色素などの光学機能、撥水性の機能を有する無機系構造体を製造することができ、800℃以上の温度で焼結すれば、有機成分を含まないシリカ焼結細繊維を含む無機系構造体を製造することができる。
なお、集積させた無機系ゲル状細繊維をいきなり焼結温度で焼結すると、無機系ゲル状細繊維が急激に収縮して損傷する場合があるため、焼結温度まで徐々に昇温して焼結するのが好ましい。
【0028】
本発明の製造方法においては、前記集積工程(2)の後で、前記の乾燥工程(3)を実施し、更に続けて焼結工程(4)を実施することができる。この場合、前段の乾燥工程(3)による無機系乾燥ゲル状細繊維を含む無機系構造体の形成は、前述の単独で実施する乾燥工程(3)における操作と同様に実施することができる。また、後段の焼結工程(4)による無機系焼結細繊維を含む無機系構造体の形成は、前述の単独で実施する焼結工程(4)における操作と同様に実施することができる。なお、乾燥工程(3)後に実施する焼結工程(4)は、既に乾燥した無機系乾燥ゲル状細繊維を含む無機系構造体に対して実施するため、焼結温度まで徐々に昇温させて焼結する必要はない。前記の乾燥工程(3)と焼結工程(4)とを連続して実施することにより、有機成分が残留した無機焼結細繊維含有無機系構造体、あるいは無機成分のみからなり、強度及び耐熱性の優れる無機焼結細繊維を含有する無機系構造体を製造することができる。
【0029】
このようにして本発明の製造方法により製造した無機系乾燥ゲル状細繊維又は無機系焼結細繊維は、その内部に、無機系又は有機系の微粒子を含んでいることができる。このような微粒子は、例えば、前述のような加水分解反応によってゾル溶液を形成する際に発生させたり、ノズルからゾル溶液を押し出す前に混合することによって存在させることができる。
【0030】
無機系微粒子としては、例えば、酸化チタン、二酸化マンガン、酸化銅、二酸化ケイ素、活性炭、又は白金などの金属などを挙げることができ、有機系微粒子としては、例えば、色素、又は顔料などを挙げることができる。また、微粒子の平均粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.001〜1μm、より好ましくは0.002〜0.1μmである。このような粉体を含んでいることによって、光学機能、多孔性、触媒機能、吸着機能、あるいはイオン交換機能などを付与することができる。
【0031】
本発明の製造方法を、製造装置の模式的断面図である図1をもとに説明する。
まず、前述のようにして調製されたゾル溶液は、ゾル溶液貯留部1から定量ポンプ等によって、金属製ノズル21〜24へと供給される。このノズル21〜24への供給量は特に限定されるものではないが、例えば、ノズル1本あたり0.01mL/時間〜100mL/時間で変化させることができる。なお、図1においては、4本のノズル21〜24を備えているが、ノズルの数は1本以上であればよく、特に限定されるものではない。
【0032】
このようにノズル21〜24に供給されたゾル溶液は、ノズル21〜24から押し出される。一方、前記4本のノズル21〜24に対して電圧が印加される。具体的には、ノズル21〜24から見て、支持体4の後方に位置する対向電極3はアースされているため、電源30と接続している金属製ノズル21〜24と支持体4との間には電界が形成され、押し出されたゾル溶液は、この電界によって延伸されて細くなり、無機系ゲル状細繊維が形成される。なお、電界強度を0.5〜5kV/cmに調整することができるように、ノズル21〜24の位置を変えて、ノズル21〜24と支持体4との距離を好ましくは10〜500mm程度、より好ましくは50〜300mm程度に変えることができる。また、前記方法とは逆に、ノズル21〜24をアースし、対向電極3に電圧を印加してもよい。
【0033】
なお、図示していないが、ノズル21〜24の先端部分が乾燥すると、ゾル溶液が硬化しやすく、安定して紡糸しにくいため、ノズル21〜24の先端部分における雰囲気を原料溶液と同様の溶媒ガス雰囲気としたり、ゾル溶液中に沸点が100℃以上の高沸点溶媒(例えば、ブタノールなど)を添加して、ノズル21〜24の先端部分における乾燥を防止するのが好ましい。
【0034】
ノズル21〜24から押し出されたゾル溶液を延伸して形成された無機系ゲル状細繊維は、支持体4上に集積される。支持体4は、例えば、ネット状エンドレスベルトであり、ローラ41,42,43がそれぞれ矢印a,b,cの方向に回転するのに伴って、矢印dの方向に移動する。この集積量はネット状ベルトの移動速度、ノズルからの押し出し量、ノズル数などによって、調節することができる。
この支持体4上に集積した無機系ゲル状細繊維は、支持体(単純載置型担体)4の移動によって加熱部、例えばヒーター5へと供給され、ヒーター5の熱によって乾燥され、無機系乾燥ゲル状細繊維を含む無機系構造体(無機系乾燥ゲル状細繊維含有シート)となる。なお、ヒーター5を含む領域は乾燥室8として、他の部分と分離されて区切られているのが好ましい。
次いで、この無機系乾燥ゲル状細繊維を含む無機系構造体(無機系乾燥ゲル状細繊維含有シート)は押えロール6によって厚さを調整された後、支持体(単純載置型担体)4から分離され、ガイドロール10aから巻き取りロール10によって巻き取られる。
上述の製造方法によれば、無機系乾燥ゲル状細繊維のみからなる無機系構造体を得ることができる。
【0035】
一方、上述の製造方法で用いたネット状エンドレスベルト支持体(単純載置型担体)4に代えて、巻き出しロール9から、織物、編物、不織布あるいはネットなどを支持体(成分担体)4としてガイドロール9aを経てローラ43,42,41の軌道に乗せ、ゾル溶液を押し出す領域へ供給することによって、織物、編物、不織布あるいはネット上に無機系乾燥ゲル状細繊維層を有する複合無機系構造体を製造することができる。こうして得られた複合無機系構造体は、押えロール6によって厚さを調整された後、両者が一体となってガイドロール10aから巻き取りロール10によって巻き取られる。
【0036】
また、図示していないが、支持体として三次元的な立体形状を有するもの(例えば、蛇腹状に折り加工した支持体、円筒状の支持体、お椀状の支持体など)を、ゾル溶液を押し出す領域へ供給すれば、立体的な複合無機系構造体を製造することができる。
【0037】
ゾル溶液を押し出す領域は原料溶液中の溶媒が揮発するため、他の部分と分離され、紡糸室7として区切られているのが好ましく、この紡糸室7は溶剤による影響を受けない材料から構成されているのが好ましい。なお、この紡糸室7には、揮発した溶剤を排気することができる排気口71を備えているのが好ましい。
更に、図示していないが、ヒーター5の後に、焼結処理用の電気炉等を設置して、乾燥工程と焼結工程を連続的に実施することもできる。あるいは、ヒーター5に代えて、電気炉等を設置し、乾燥工程を実施せずに、焼結工程を実施することもできる。
【0038】
このような本発明の無機系構造体の製造方法によれば、無機系ゲル状細繊維を乾燥又は焼結、あるいは無機系乾燥ゲル状細繊維を焼結することによって、接着剤を実質的に使用することなく、接合することができるため、接着剤を使用することによる弊害のない無機系構造体を製造することができる。
【0039】
また、本発明の無機系構造体の製造方法によれば、電界強度、ノズルからのゾル溶液の吐出量、ゾル溶液中における溶媒量、あるいは吐出部における雰囲気(ゾル溶液と同様の溶媒ガス雰囲気となっているかどうか)を調節することによって、繊維径が2μm以下の無機系乾燥ゲル状極細繊維又は無機系焼結極細繊維を含む無機系構造体を製造することができ、この無機系構造体は濾過性能、柔軟性、分離性能などの各種特性に優れている。本発明の無機系構造体が繊維径2μm以下の無機系乾燥ゲル状極細繊維又は無機系焼結極細繊維を含んでいる場合、柔軟性に優れているため、屈曲及び/又は湾曲させることによって、様々な形状とすることができる。例えば、中空円筒状や内部充実円筒状に巻回したり、蛇腹状に折り加工することができる。
【0040】
更に、本発明の無機系構造体の製造方法によれば、繊維径と比較して繊維長が長い無機系乾燥ゲル状細繊維又は無機系焼結細繊維、すなわちアスペクト比(繊維長/繊維径)の大きい無機系乾燥ゲル状細長繊維又は無機系焼結細長繊維を含む無機系構造体を製造することができ、この無機系構造体は無機系乾燥ゲル状細長繊維又は無機系焼結細長繊維が脱落しにくいものである。
【0041】
更にまた、本発明の無機系構造体の製造方法によれば、繊維径のCV値(標準偏差/平均繊維径)が0.8以下の無機系乾燥ゲル状細繊維又は無機系焼結細繊維からなる無機系構造体を製造することができる。本明細書において「繊維径」は、繊維横断面形状が円形である場合は、その直径をいい、繊維横断面形状が非円形である場合は、その断面積と同じ面積を有する円の直径を繊維径とみなす。また、「平均繊維径」は繊維100点における繊維径の平均値をいい、「標準偏差」は繊維100点における繊維径から得られる値である。CV値が0.8以下の無機系乾燥ゲル状細繊維又は無機系焼結細繊維は、無機系構造体の性能が均一になる点で好ましい。前記のCV値は、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下であり、最も好ましくは0.4以下である。
【0042】
そのため、本発明の製造方法により製造した無機系構造体は、例えば、HEPAフィルタ用濾過材、ULPAフィルタ用濾過材、クリーンルームフィルタ用濾過材、純水フィルタ用濾過材、耐熱フィルタ用濾過材、排気ガスフィルタ用濾過材、液体フィルタ用濾過材、光触媒担持用基材、電池用セパレータ、プリント基板用基材、触媒シート、電気機械変換素子、微細気泡発生シート、触媒燃焼シート、太陽電池用カバー材、断熱材、又は液晶用スペーサー材などの用途に好適に使用することができる。
【0043】
本発明は、平均繊維径が2μm以下で、無機成分を主体とする無機系極細長繊維を含む無機系構造体にも関する。本発明による無機系極細長繊維含有無機系構造体は、例えば、本発明による前記製造方法によって製造することができる。
【0044】
この無機系極細長繊維の平均繊維径が2μm以下であると、柔軟性に優れており、また、表面積が広いことによって各種機能(例えば、濾過性能、機能性物質による機能発揮性能など)が優れている。より好ましい平均繊維径は1μm以下であり、更に好ましい平均繊維径は0.5μm以下である。他方、無機系極細長繊維の平均繊維径の下限は特に限定するものではないが、0.01μm程度が適当である。
【0045】
なお、無機系極細長繊維の平均繊維径は2μm以下であるので、無機系極細長繊維が2μmを超える箇所を含んでいてもよいが、無機系極細長繊維は、どの点においても、繊維径が2μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのがより好ましく、0.5μm以下であるのが更に好ましい。
【0046】
本発明の無機系極細長繊維含有無機系構造体は、それを構成する無機系極細長繊維が長繊維であることによって、繊維が脱落しにくい無機系構造体である。
【0047】
本発明の前記無機系構造体に含まれる無機系極細長繊維は、無機成分を主体としている。すなわち、無機成分が50質量%以上を占めており、好ましくは60質量%以上、より好ましくは75質量%以上を占めている。
【0048】
この無機成分を構成する元素は特に限定するものではないが、本発明による前記製造方法のゾル溶液形成工程(1)にて列挙した元素を挙げることができ、前記の元素を含む化合物(すなわち、化合物、特には酸化物)としても、前記ゾル溶液形成工程(1)にて列挙した酸化物を挙げることができる。
【0049】
本発明の前記無機系構造体に含まれる無機系極細長繊維は、上述のような無機成分以外にも、有機成分を含んでいることができる。この有機成分としても、前記の本発明による製造方法において説明した有機成分(例えば、シランカップリング剤、染料などの有機低分子化合物、ポリメチルメタクリレートなどの有機高分子化合物)を挙げることができる。
【0050】
また、前記の無機系極細長繊維は、本発明による前記製造方法で説明したように、繊維内に、無機系又は有機系の微粒子を含んでいてもよい。このような微粒子は、例えば、本発明による前記製造方法で説明した方法で存在させることができる。
【0051】
本発明の無機系極細長繊維含有無機系構造体は、上述のような無機系極細長繊維を含むものであるため、繊維が脱落しにくく、柔軟性にも優れている。本発明の前記無機系構造体に含まれる無機系極細長繊維の含有量は、特に限定されないが、無機系構造体(支持体を除く)の全質量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。なお、本発明による無機系構造体は粉体又は微粒子を含む場合があることに注意されたい。
【0052】
なお、本発明の前記無機系構造体を構成する無機系極細長繊維が、接点において、接着剤を介することなく接着していると、本発明の無機系構造体中には実質的に接着剤が存在していないため、汚染物質の発生を抑えることができる。
【0053】
また、本発明の前記無機系構造体を構成する無機系極細長繊維は、例えば、ゲルを乾燥した状態にあっても、ゲルを不完全に焼結した状態にあっても、あるいはゲルを完全に焼結した状態にあってもよい。
【0054】
更に、本発明の前記無機系構造体は、無機系極細長繊維以外に、有機系繊維、繊維径が2μmを超えるような繊維径の太い無機系繊維、無機系短繊維、これら繊維からなる糸、織物、編物、不織布、ネット、あるいは粉体などと混合又は複合した状態にあってもよい。このように混合又は複合した状態にあることによって、無機系構造体の強度や成形性などの各種特性が向上し、広範な用途に適用することが可能となる。
【0055】
本発明の前記無機系構造体は前述のように柔軟性に優れたものであるため、様々な形状を採ることができる。例えば、シート状、板状、ブロック状、中空円筒状、内部充実円筒状などの形状を採ることができる。
【0056】
本発明の無機系極細長繊維含有無機系構造体は、例えば、本発明による前記製造方法によって製造することができる。但し、平均繊維径を2μm以下とするために、吐出量、粘度(ゾル溶液)、ゾル溶液の溶媒、電界強度、化合物の種類を適宜設定して紡糸することができる。これらの条件は、実験を繰り返すことによって設定することができる。
【0057】
本発明による前記製造方法の乾燥工程(3)で、無機系ゲル状細長繊維を支持体(成分担体)と一体化した状態で乾燥し、無機系ゲル状極細長繊維と支持体(成分担体)とが一体化した状態の無機系構造体を得るか、又は、乾燥後に支持体(単純載置型担体)から無機系ゲル状極細長繊維を分離して、無機系ゲル状極細長繊維からなる無機系構造体を形成することができる。いずれの場合も、接着剤を使用せずに各構成繊維が相互に結合し、脱落はほとんど起こらない。
【0058】
本発明による前記製造方法において、前記集積工程(2)の後で、前記の乾燥工程(3)を行わずに、焼結工程(4)を実施し、例えば、無機成分と有機成分とを含む無機系ゲル状極細長繊維を、温度約200℃以上、有機成分の分解温度未満で焼結すれば、有機成分が残留した無機焼結極細長繊維含有無機系構造体を製造することができ、この無機系構造体は残留した有機成分の機能を発揮することができる。このように焼結することによって得られた無機系構造体は、焼結によっても各構成繊維が相互に結合しているので、脱落はほとんど起こらない。また、有機成分の分解温度以上で焼結すれば、無機成分のみからなり、強度及び耐熱性の優れる無機焼結極細長繊維を含有する無機系構造体を製造することができる。
【0059】
本発明による前記製造方法において、前記集積工程(2)の後で、前記の乾燥工程(3)を実施し、更に続けて焼結工程(4)を実施することにより、有機成分が残留した無機焼結極細長繊維含有無機系構造体、あるいは無機成分のみからなり、強度及び耐熱性の優れる無機焼結極細長繊維を含有する無機系構造体を製造することができる。
【0060】
本発明による無機系極細長繊維の繊維径のCV値が0.8以下であると、無機系構造体の性能が均一になる点で好ましい。前記のCV値は、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下であり、最も好ましくは0.4以下である。
【0061】
本発明の無機系極細長繊維含有無機系構造体は、繊維が脱落しにくく、柔軟性に優れ、表面積が広く、耐熱性に優れ、しかも汚染物質を発生しにくいものであることができるため、例えば、HEPAフィルタ用濾過材、ULPAフィルタ用濾過材、クリーンルームフィルタ用濾過材、純水フィルタ用濾過材、耐熱フィルタ用濾過材、排気ガスフィルタ用濾過材、液体フィルタ用濾過材、光触媒担持用基材、電池用セパレータ、プリント基板用基
材、触媒シート、電気機械変換素子、微細気泡発生シート、触媒燃焼シート、太陽電池用カバー材、断熱材、又は液晶用スペーサー材などの用途に好適に使用することができるものである。
【実施例】
【0062】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
《実施例1》
(1)ゾル溶液形成工程
金属化合物としてテトラエトキシシラン、溶媒としてエタノール、加水分解のための水、及び触媒として1規定の塩酸を、1:5:2:0.03のモル比で混合し、温度78℃で、10時間の還流操作を行い、次いで、溶媒をロータリーエバポレーターにより除去した後、温度50℃に加温して、粘度が約20ポイズのゾル溶液を形成した。
【0063】
(2)集積工程
次いで、内径が0.5mmのステンレス製ノズルに、ポンプにより1つのノズルあたり、1.2mL/時間で前記ゾル溶液を供給し、ノズルからゾル溶液を押し出すとともに、ノズルに電圧(25kV)を印加し、支持体(単純載置型担体)であるステンレス製無孔ロールをアースして、前記押し出したゾル溶液に電界(2.5kV/cm)を作用させることによって細径化し、無機系ゲル状細長繊維を形成して、回転するステンレス製無孔ロール上に集積させた。なお、ノズルとステンレス製無孔ロールとの距離は10cmとした。
【0064】
(3)乾燥工程
次いで、集積させた無機系ゲル状細長繊維を温度150℃に設定されたヒーターにより乾燥して、平均繊維径が3μm(いずれの点における繊維径も約3μm)の無機系乾燥ゲル状細長繊維(SiOからなる)からなる無機系構造体を製造した。この無機系構造体を構成する無機系乾燥ゲル状細長繊維(SiOからなる)は、接点において、接着剤を介することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機系乾燥ゲル構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
【0065】
(4)焼結工程
次いで、この無機系乾燥ゲル状細長繊維からなる無機系構造体を温度150℃で5時間、温度300℃で5時間、及び温度1000℃で焼結し、完全にガラス化させて、平均繊維径が2μm(いずれの点における繊維径も約2μm)の石英ガラス焼結極細長繊維からなる無機系構造体を製造した。この無機系構造体の石英ガラス焼結極細長繊維は、接点において、接着剤が介在することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機焼結構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
【0066】
《実施例2》
約10ポイズのゾル溶液を使用したこと以外は、実施例1(1)〜(3)と全く同様にして、平均繊維径が1μm(いずれの点における繊維径も約1μm)の無機系乾燥ゲル状極細長繊維(SiOからなる)からなる無機系構造体を製造した。この無機系構造体を構成する無機系乾燥ゲル状極細長繊維(SiOからなる)は、接点において、接着剤を介することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機系乾燥ゲル構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
次いで、この無機系乾燥ゲル極細長繊維からなる無機系構造体を実施例1(4)と同様に焼結し、完全にガラス化させて、平均繊維径が0.8μm(いずれの点における繊維径も約0.8μm)の石英ガラス焼結極細長繊維からなる無機系構造体を製造した。この無機系構造体の石英ガラス焼結極細長繊維は、接点において、接着剤が介在することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機焼結構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
【0067】
《実施例3》
ブタノールを添加することによって粘度を約3.5ポイズとしたゾル溶液を使用したこと、1つのノズルあたりにおけるゾル溶液の供給量を0.8mL/時間としたこと、及びノズルへの印加電圧を20kVとしたこと以外は、実施例1(1)〜(3)と全く同様にして、平均繊維径が0.6μm(いずれの点における繊維径も約0.6μm)の無機系乾燥ゲル状極細長繊維(SiOからなる)からなる無機系構造体を製造した。この無機系乾燥ゲル状極細長繊維は、接点において、接着剤を介することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機系乾燥ゲル構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
次に、この無機系乾燥ゲル状極細長繊維からなる無機系構造体を実施例1(4)と同様に焼結し、完全にガラス化させて、平均繊維径が0.4μm(いずれの点における繊維径も約0.4μm)の石英ガラス焼結極細長繊維からなる無機系構造体を製造した。なお、石英ガラス焼結極細長繊維は、接点において、接着剤が介在することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機系焼結構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
【0068】
《実施例4》
ブタノールを添加することにより粘度を約1.5ポイズとしたゾル溶液を使用したこと、1つのノズルあたりにおけるゾル溶液の供給量を0.6mL/時間としたこと、及びノズルへの印加電圧を20kVとしたこと以外は、実施例1(1)〜(3)と全く同様にして、平均繊維径が0.2μm(いずれの点における繊維径も約0.2μm)の無機系乾燥ゲル極細長繊維(SiOからなる)からなる無機系乾燥ゲル構造体(無機系乾燥ゲル不織布)を製造した。この無機系乾燥ゲル構造体(無機系乾燥ゲル不織布)を構成する無機系乾燥ゲル極細長繊維(SiOからなる)は、接点において、接着剤を介することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機系乾燥ゲル構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
【0069】
更に、この無機系乾燥ゲル構造体(無機系乾燥ゲル不織布)を温度150℃で5時間、温度300℃で5時間、及び温度800℃で焼結し、完全にガラス化させて、平均繊維径が0.15μm(いずれの点における繊維径も約0.15μm)の無機系焼結極細長繊維(石英ガラス極細長繊維)からなる無機系焼結構造体(無機系焼結不織布)を製造した。なお、無機系焼結極細長繊維(石英ガラス極細長繊維)は、接点において、接着剤が介在することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機系焼結構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
【0070】
《実施例5》
(1)ゾル溶液形成工程
金属化合物としてテトラエトキシシラン、溶媒としてエタノール、加水分解のための水、触媒として1規定の塩酸を、1:5:2:0.003のモル比で混合し、温度78℃で、15時間の還流操作を行い、次いで、溶媒をロータリーエバポレーターにより除去した後、温度60℃に加温して、粘度が約2ポイズのゾル溶液を形成した。
【0071】
(2)集積工程
次いで、内径が0.7mmのステンレス製ノズルに、ポンプにより1つのノズルあたり、1mL/時間でゾル溶液を供給し、ノズルからゾル溶液を押し出すとともに、ノズルに電圧(16.5kV)を印加し、支持体(単純載置型担体)であるステンレス製無孔ロールをアースして、前記押し出したゾル溶液に電界(1.65kV/cm)を作用させることによって極細化し、無機系ゲル状極細長繊維を形成して、回転するステンレス製無孔ロール上に集積させた。なお、ノズルとステンレス製無孔ロールとの距離は10cmとした。
【0072】
(3)乾燥工程
次いで、集積させた無機系ゲル状極細長繊維を温度150℃に設定されたヒーターにより1時間乾燥して、無機系乾燥ゲル状極細長繊維(SiOからなる)からなる無機系構造体を製造した。この無機系構造体を構成する無機系乾燥ゲル状極細長繊維(SiOからなる)は、接点において、接着剤を介することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機系構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
【0073】
(4)焼結工程
次いで、この無機系乾燥ゲル状極細長繊維からなる無機系構造体を温度800℃で1時間焼結し、完全にガラス化させて、平均繊維径が0.6μm(いずれの点における繊維径も約0.6μm)の石英ガラス焼結極細長繊維からなる無機系構造体を製造した。また、CV値は、0.4であった。この無機系構造体の石英ガラス焼結極細長繊維は、接点において、接着剤が介在することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機系焼結構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
【0074】
《実施例6》
(1)ゾル溶液形成工程
金属化合物としてテトラエトキシシラン、溶媒としてエタノール、加水分解のための水、触媒として1規定の塩酸を、1:5:2.5:0.003のモル比で混合し、温度78℃で、15時間の還流操作を行い、次いで、溶媒をロータリーエバポレーターにより除去した後、温度60℃に加温して、粘度が約2.5ポイズのゾル溶液を形成した。
【0075】
(2)集積工程
次いで、内径が0.7mmのステンレス製ノズルに、ポンプにより1つのノズルあたり、1mL/時間でゾル溶液を供給し、ノズルからゾル溶液を押し出すとともに、ノズルに電圧(17.5kV)を印加し、支持体(単純載置型担体)であるステンレス製無孔ロールをアースして、前記押し出したゾル溶液に電界(1.75kV/cm)を作用させることによって極細化し、無機系ゲル状極細長繊維を形成して、回転するステンレス製無孔ロール上に集積させた。なお、ノズルとステンレス製無孔ロールとの距離は10cmとした。
【0076】
(3)乾燥工程
次いで、集積させた無機系ゲル状極細長繊維を温度150℃に設定されたヒーターにより1時間乾燥して、無機系乾燥ゲル状極細長繊維(SiOからなる)からなる無機系構造体を製造した。この無機系構造体を構成する無機系乾燥ゲル状極細長繊維(SiOからなる)は、接点において、接着剤を介することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機系乾燥ゲル構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
【0077】
(4)焼結工程
次いで、この無機系乾燥ゲル状極細長繊維からなる無機系構造体を温度800℃で1時間焼結し、完全にガラス化させて、平均繊維径が0.5μm(いずれの点における繊維径も約0.5μm)の石英ガラス焼結極細長繊維からなる無機系構造体を製造した。また、CV値は、0.4であった。この無機系構造体の石英ガラス焼結極細長繊維は、接点において、接着剤が介在することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機系焼結構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
【0078】
《実施例7》
(1)ゾル溶液形成工程
金属化合物としてテトラエトキシシラン、溶媒としてエタノール、加水分解のための水、触媒として1規定の塩酸を、1:5:3:0.003のモル比で混合し、温度78℃で、15時間の還流操作を行い、次いで、溶媒をロータリーエバポレーターにより除去した後、温度60℃に加温して、粘度が約3ポイズのゾル溶液を形成した。
【0079】
(2)集積工程
次いで、内径が0.7mmのステンレス製ノズルに、ポンプにより1つのノズルあたり、1mL/時間でゾル溶液を供給し、ノズルからゾル溶液を押し出すとともに、ノズルに電圧(20kV)を印加し、支持体(単純載置型担体)であるステンレス製無孔ロールをアースして、前記押し出したゾル溶液に電界(2kV/cm)を作用させることによって極細化し、無機系ゲル状極細長繊維を形成して、回転するステンレス製無孔ロール上に集積させた。なお、ノズルとステンレス製無孔ロールとの距離は10cmとした。
【0080】
(3)乾燥工程
次いで、集積させた無機系ゲル状極細長繊維を温度150℃に設定されたヒーターにより1時間乾燥して、無機系乾燥ゲル状極細長繊維(SiOからなる)からなる無機系構造体を製造した。この無機系構造体を構成する無機系乾燥ゲル状極細長繊維(SiOからなる)は、接点において、接着剤を介することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機系乾燥ゲル構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
【0081】
(4)焼結工程
次いで、この無機系乾燥ゲル状極細長繊維からなる無機系構造体を温度800℃で1時間焼結し、完全にガラス化させて、平均繊維径が0.6μm(いずれの点における繊維径も約0.6μm)の石英ガラス焼結極細長繊維からなる無機系構造体を製造した。また、CV値は、0.3であった。この無機系構造体の石英ガラス焼結極細長繊維は、接点において、接着剤が介在することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機系焼結構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
【0082】
《実施例8》
(1)ゾル溶液形成工程
金属化合物としてテトラエトキシシラン、溶媒としてエタノール、加水分解のための水、触媒として1規定の塩酸を、1:5:2:0.003のモル比で混合し、温度78℃で、15時間の還流操作を行い、シリカ系原液を調製した。
一方、2−プロピルアルコールと、アルミニウムsec−ブトキシドと、アセト酢酸エチルとを0.4:0.08:0.08のモル比で混合し、温度78℃で、2時間の還流操作を行い、アルミナ系原液を調製した。
次いで、前記シリカ系原液と前記アルミナ系原液とを78℃で2時間混合し、溶媒をロータリーエバポレーターにより除去した後、温度60℃に加温して、粘度が2ポイズのゾル溶液を形成した。
【0083】
(2)集積工程
次いで、内径が0.7mmのステンレス製ノズルに、ポンプにより1つのノズルあたり、1mL/時間でゾル溶液を供給し、ノズルからゾル溶液を押し出すとともに、ノズルに電圧(24kV)を印加し、支持体(単純載置型担体)であるステンレス製無孔ロールをアースして、前記押し出したゾル溶液に電界(2.4kV/cm)を作用させることによって極細化し、無機系ゲル状極細長繊維を形成して、回転するステンレス製無孔ロール上に集積させた。なお、ノズルとステンレス製無孔ロールとの距離は10cmとした。
【0084】
(3)乾燥工程
次いで、集積させた無機系ゲル状極細長繊維を温度150℃に設定されたヒーターにより1時間乾燥して、シリカアルミナ無機系乾燥ゲル状極細長繊維からなる無機系構造体を製造した。この無機系構造体を構成するシリカアルミナ無機系乾燥ゲル状極細長繊維は、接点において、接着剤を介することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機系構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
【0085】
(4)焼結工程
次いで、この無機系乾燥ゲル状極細長繊維からなる無機系構造体を温度1000℃で1時間焼結し、完全にガラス化させて、平均繊維径が0.5μm(いずれの点における繊維径も約0.5μm)のシリカ−アルミナ焼結極細長繊維からなる無機系構造体を製造した。また、CV値は、0.22であった。この無機系構造体のシリカ−アルミナ焼結極細長繊維は、接点において、接着剤が介在することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機系構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
【0086】
《実施例9》
(1)ゾル溶液形成工程
金属化合物としてテトラエトキシシラン、金属化合物としてメチルトリエトキシシラン、溶媒としてエタノール、加水分解のための水、触媒として1規定の塩酸を、0.75:0.25:5:2:0.003のモル比で混合し、温度78℃で、15時間の還流操作を行い、次いで、溶媒をロータリーエバポレーターにより除去した後、温度60℃に加温して、粘度が約2ポイズのゾル溶液を形成した。
【0087】
(2)集積工程
次いで、内径が0.7mmのステンレス製ノズルに、ポンプにより1つのノズルあたり、1mL/時間でゾル溶液を供給し、ノズルからゾル溶液を押し出すとともに、ノズルに電圧(17kV)を印加し、支持体(単純載置型担体)であるステンレス製無孔ロールをアースして、前記押し出したゾル溶液に電界(1.7kV/cm)を作用させることによって極細化し、有機系無機系(シリカ)ハイブリッド−ゲル状極細長繊維を形成して、回転するステンレス製無孔ロール上に集積させた。なお、ノズルとステンレス製無孔ロールとの距離は10cmとした。
【0088】
(3)乾燥工程
次いで、集積させた有機系無機系ハイブリッド−ゲル状極細長繊維を温度150℃に設定されたヒーターにより1時間乾燥して、有機系無機系ハイブリッド−乾燥ゲル状極細長繊維からなる無機系構造体を製造した。この無機系構造体を構成する有機系無機系ハイブリッド−乾燥ゲル状極細長繊維は、接点において、接着剤を介することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機系構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
【0089】
(4)焼結工程
次いで、この有機系無機系ハイブリッド−乾燥ゲル状極細長繊維からなる無機系構造体を温度500℃で1時間焼結し、完全にガラス化させて、平均繊維径が0.5μm(いずれの点における繊維径も約0.5μm)の有機系無機系ハイブリッド−焼結極極細長繊維からなる無機系構造体を製造した。また、CV値は、0.4であった。この無機系構造体の有機系無機系ハイブリッド−焼結極細長繊維は、接点において、接着剤が介在することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機系構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
【0090】
《実施例10》
(1)ゾル溶液形成工程
金属化合物としてテトラエトキシシラン、金属化合物としてメチルトリエトキシシラン、溶媒としてエタノール、加水分解のための水、触媒として1規定の塩酸を、0.9:0.1:5:2:0.003のモル比で混合し、温度78℃で、15時間の還流操作を行い、次いで、溶媒をロータリーエバポレーターにより除去した後、温度60℃に加温して、粘度が約2ポイズのゾル溶液を形成した。
【0091】
(2)集積工程
次いで、内径が0.7mmのステンレス製ノズルに、ポンプにより1つのノズルあたり、1mL/時間でゾル溶液を供給し、ノズルからゾル溶液を押し出すとともに、ノズルに電圧(17kV)を印加し、支持体(単純載置型担体)であるステンレス製無孔ロールをアースして、前記押し出したゾル溶液に電界(1.7kV/cm)を作用させることによって極細化し、有機系無機系(シリカ)ハイブリッド−ゲル状極細長繊維を形成して、回転するステンレス製無孔ロール上に集積させた。なお、ノズルとステンレス製無孔ロールとの距離は10cmとした。
【0092】
(3)乾燥工程
次いで、集積させた有機系無機系ハイブリッド−ゲル状極細長繊維を温度150℃に設定されたヒーターにより1時間乾燥して、有機系無機系ハイブリッド−乾燥ゲル状極細長繊維からなる無機系構造体を製造した。この無機系構造体を構成する有機系無機系ハイブリッド−乾燥ゲル状極細長繊維は、接点において、接着剤を介することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機系構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
【0093】
(4)焼結工程
次いで、この有機系無機系ハイブリッド−乾燥ゲル状極細長繊維からなる無機系構造体を温度500℃で1時間焼結し、完全にガラス化させて、平均繊維径が0.8μm(いずれの点における繊維径も約0.8μm)の有機系無機系ハイブリッド−焼結極細長繊維からなる無機系構造体を製造した。また、CV値は、0.29であった。この無機系構造体の有機系無機系ハイブリッド−焼結極細長繊維は、接点において、接着剤が介在することなく接着しており、汚染物質を発生しないものであった。また、この無機系構造体は折り曲げても亀裂が生じず、繊維が脱落しないものであった。
【0094】
《比較例1》
平均繊維径5μm、繊維長13mmのEガラスチョップを用い、湿式法によりウェブ形成されたシートに、アクリルバインダーをスプレー法により添加した後、オーブンで乾燥し、架橋させて、ガラス不織布(目付=10g/m;厚さ=90μm;見掛密度=0.11g/cm;バインダー比率=15重量%;CV値=0.11)を製造した。
このガラス不織布は折り曲げると、折れたガラス繊維が脱落するものであった。
また、このガラス不織布に、400℃で30分間、熱を作用させたところ、加熱後には質量が5%以上減少し、シート形態を保てなくなった。このことから、汚染物質を発生する耐熱性のないものであった。同様に、実施例5の無機系焼結構造体を前記と同様に加熱したが、質量の減少率が0.2%で、シート形態を保つことができ、汚染物質を発生しにくい耐熱性の優れるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の無機系構造体の製造工程を表す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0096】
1・・・ゾル溶液貯留部;21,22,23,24・・・ノズル;
3・・・対向電極;4・・・支持体;5・・・ヒーター;
6・・・押えロール;7・・・紡糸室;71・・・排気口;8・・・乾燥室;
9・・・巻き出しロール;9a,10a・・・ガイドロール;
10・・・巻き取りロール;30・・・電源;41,42,43・・・ローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径が2μm以下で、無機成分を主体とする無機系極細長繊維を含んでいることを特徴とする、無機系不織布
【請求項2】
前記無機系極細長繊維は、接点において、接着剤を介することなく接着していることを特徴とする、請求項に記載の無機系不織布
【請求項3】
前記無機系極細長繊維の繊維径のCV値が0.8以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の無機系不織布
【請求項4】
前記無機系極細長繊維に、有機系繊維、繊維径が2μmを超える繊維径の太い無機系繊維、無機系短繊維、有機系繊維と繊維径が2μmを超える繊維径の太い無機系繊維と無機系短繊維とからなる群から選んだ繊維1種又はそれ以上からなる糸、織物、編物、不織布、ネット、又は粉体が混合又は複合した状態で含まれている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の無機系不織布

【図1】
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【公開番号】特開2007−231505(P2007−231505A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112629(P2007−112629)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【分割の表示】特願2002−168500(P2002−168500)の分割
【原出願日】平成14年6月10日(2002.6.10)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】