説明

無機質成形体およびその製造方法

【課題】 有機結合材および非晶質シリカ粉状体の添加量を増やさず、より一層高い強度を保持でき、経済性や生産性に優れた無機質成形体およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】 有機結合材と平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体とを予め混合して得た混合物を、無機質構成要素に添加,混合して成形し、ついで、加熱,硬化して得られる無機質成形体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質構成要素と、有機結合材と、非晶質シリカ粉状体とを混合,成形し、加熱硬化させて得られる無機質成形体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス繊維等の無機繊維にセメント等の無機結合材を用いて成形,硬化させた無機質成形体があるが、硬くて加工し難く、かつ、重いという欠点があった。一方、無機繊維や無機粉状体に有機結合材を用いた無機質成形体は軽量で加工性に優れるが、所望の強度を確保しようとすると、多量の有機結合材を添加する必要があった。
【0003】
そこで、本出願人は、熱硬化樹脂に微細な非晶質シリカ粉状体を添加したり(特許文献1参照)、あるいは、親水性樹脂に微細な非晶質シリカ粉状体を添加することにより(特許文献2参照)、有機結合材の添加量を増やさず、少量の有機結合材で所望の強度を確保できる無機質成形体およびその製造方法を提案した。
【特許文献1】特開2004−59373号公報
【特許文献2】特開2004−167837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記無機質成形体およびその製造方法では、より一層高い強度を得ようとすると、大量の非晶質シリカ粉状体を添加しなければならず、経済性や生産性が低いという問題点がある。
【0005】
本発明は、有機結合材および非晶質シリカ粉状体の添加量を増やさず、より一層高い強度を保持でき、経済性や生産性に優れた無機質成形体およびその製造方法を、提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意研究の結果、無機質成形体に添加する非晶質シリカ粉状体の添加量が少量であっても、有機結合材との接触確率を高めることによって強度が向上することを知見し、この知見に基づいて完成した。
【0007】
すなわち、本発明にかかる無機質成形体は、無機質構成要素と、有機結合材と、平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体とを必須成分とする混合物を成形し、加熱,硬化させた無機質成形体において、予め混合した前記有機結合材および前記非晶質シリカ粉状体に前記無機質構成要素を添加,混合して得た混合物を成形し、加熱,硬化させた構成としてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、有機結合材と非晶質シリカ粉状体とを予め混合することにより、有機結合材と非晶質シリカ粉状体とが均一に混合され、均一に分布すると考えられる。このため、曲げ強度が向上し、有機結合材および非晶質シリカ粉状体の添加量を節約できる。この結果、有機結合材および非晶質シリカ粉状体の添加量を増やさず、より一層高い強度を保持でき、経済性や生産性に優れた無機質成形体が得られる。
【0009】
本発明にかかる無機質成形体の製造方法は、無機質構成要素と、有機結合材と、平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体とを必須成分とする混合物を成形し、加熱,硬化させる無機質成形体の製造方法において、前記有機結合材と前記非晶質シリカ粉状体とを予め混合した後、前記無機質構成要素を添加,混合して混合物を得、この混合物を成形し、加熱,硬化させる工程からなるものである。
【0010】
本発明によれば、有機結合材と非晶質シリカ粉状体とを予め混合するので、有機結合材と非晶質シリカ粉状体とが均一に混合され、均一に分布すると考えられる。このため、曲げ強度が向上し、有機結合材および非晶質シリカ粉状体の添加量を節約できる。この結果、有機結合材および非晶質シリカ粉状体の添加量を増やさず、より一層高い強度を保持でき、経済性や生産性に優れた無機質成形体が得られる。
【0011】
本発明にかかる他の無機質成形体は、無機繊維、無機粉状体および有機結合材を必須成分とするスラリーから湿式抄造して得た湿潤マットを、加熱、硬化させた無機質成形体において、前記有機結合材と前記無機粉状体である平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体とを予め混合し、ついで、前記無機繊維を添加,混合して得たスラリーから湿潤マットを得、この湿潤マットを加熱,硬化させた構成としてある。
本発明によれば、前述の無機質成形体と同様な効果を奏することができる。
【0012】
本発明にかかる他の無機質成形体の製造方法としては、無機繊維、無機粉状体および有機結合材を必須成分とするスラリーから湿式抄造して得た湿潤マットを、加熱、硬化させる無機質成形体の製造方法において、前記有機結合材と前記無機粉状体である平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体とを予め混合した後、前記無機繊維を添加,混合して得たスラリーから湿潤マットを得、この湿潤マットを加熱,硬化させる工程からものである。
本発明によれば、前述の無機質成形体の製造方法と同様の効果を奏することができる。
【0013】
本発明にかかる別の無機質成形体としては、無機繊維、無機粉状体および有機結合材を必須成分とするスラリーから湿式抄造して得た湿潤マットを表裏層とし、無機発泡体、無機粉状体および有機結合材を必須成分とする中層用混合物を前記表裏層用湿潤マット間に配置して中層とし、加熱、圧縮して一体化した無機質成形体において、前記表裏層および中層のうち、少なくともいずれか一層を、前記無機粉状体である平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体と前記有機結合材とを予め混合し、かつ、他の構成要素を添加,混合したもので形成した構成としたものである。
本発明によれば、前述の無機質成形体と同様な効果を奏することができる。
【0014】
本発明にかかる別の無機質成形体の製造方法としては、無機繊維、無機粉状体および有機結合材を必須成分とするスラリーから湿式抄造して少なくとも2枚の表裏層用湿潤マットを得、無機発泡体、無機粉状体および有機結合材を必須成分とする中層用混合物を前記表裏層用湿潤マット間に均一な厚さに堆積させて中層とした後、熱圧工程および乾燥工程を経て一体化する無機質成形体の製造方法において、前記表裏層および中層のうち、少なくともいずれか一層を、前記無機粉状体である平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体と前記有機結合材とを予め混合させた後、他の構成要素を添加,混合したもので形成する工程からなる。
本発明によれば、前述の無機質成形体の製造方法と同様の効果を奏することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を3層構造の無機質成形体に適用した第1実施形態について説明する。
すなわち、無機繊維、無機粉状体および有機結合材を必須成分とするスラリーから湿式抄造して得た湿潤マットを表裏層とし、無機発泡体および有機結合材を必須成分とする中層用混合物を前記表裏層用湿潤マット間に配置して中層とし、加熱、圧縮して一体化した無機質成形体である。特に、前記表裏層および中層のうち、少なくともいずれか一層を、無機粉状体である平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体と有機結合材とを予め混合した後、前記無機繊維等を添加,混合して得たスラリーあるいは混合物で形成する。
【0016】
無機繊維としては、例えば、ロックウール,スラグウール,グラスウール,ミネラルウール,ニッケルウール,および、ガラス繊維等を挙げることができ、これらは単独もしくは2種以上組み合せて使用できる。無機繊維の含有量は、表裏層全体の20〜60重量%とするのが好ましい。20重量%未満であると、所望の曲げ強度が得られないからであり、60重量%を超えると、相対的に無機粉状体の割合が減少するために所望の表面硬度が確保できないからである。
【0017】
なお、必要に応じ、無機繊維だけでなくポリプロピレン、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、麻、亜麻等の植物繊維、および、パルプ等の木質繊維を補助繊維として添加してもよい。
【0018】
無機粉状体は、防火性を維持しつつ、硬度を高めてネジ止め性能を高めるために添加され、例えば、炭酸カルシウム,水酸化アルミニウム,スラグ等を挙げることができ、これらは単独あるいは2種以上組み合せて使用できる。無機粉状体の含有量は、表裏層全体の40〜70重量%とするのが好ましい。40重量%未満であると、所望の表面硬度が得られず、70重量%を超えると、強度を付与する無機繊維の割合が少なくなり、所望の曲げ強度が得られないからである。
【0019】
有機結合材は、イソシアネート基含有接着剤、熱硬化性樹脂、親水性樹脂、エマルジョン樹脂等を挙げることができ、粉状体であってもよく、液体であってもよい。そして、表裏層あるいは中層における有機結合材の添加量は、表裏層あるいは中層全体の1重量%から20重量%とすることが好ましい。1重量%未満であると十分な強度が得られないからであり、20重量%を超えると、防火性が損なわれるからである。
【0020】
イソシアネート基含有接着剤は、表裏層部に添加された場合は熱圧プレス工程中で熱水と速やかに反応し、ウレアを生成することで湿式抄造された表裏層部を強固に結合させ、短時間の熱圧反応で生産性よく高密度の表裏層を製造することを可能にするものである。
イソシアネート基含有接着剤は粉状体であってもよく、液体であってもよい。そして、表裏層あるいは中層におけるイソシアネート基含有接着剤の添加量は、表裏層あるいは中層全体の1重量%から20重量%とすることが好ましい。1重量%未満であると十分な強度が得られないからであり、20重量%を超えると、防火性が損なわれるからである。
【0021】
イソシアネート基含有接着剤としては、モノメリックMDI、ポリメリックMDI、TDI、XDI、HDI、H12MDI、IPDIおよびそれらの各種ポリオールや二塩基酸、各種エポキシ樹脂、ひまし油、液状ポリブタジエン、ネオプレンなどの活性水素化合物などとの反応物、または、各種変性を加えることや各種界面活性剤との混合により水への分散性を向上させたものや、ポットライフを長くするためにイソシアネート基をブロックしたものを含む各種変性品があげられ、これらを単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。さらに、イソシアネート基含有接着剤の反応を高めて短時間の熱圧反応で強固な結合を可能とするために、水以外のイソシアネート基反応物質を添加し熱圧プレス工程中で反応させ、ウレタン、ウレア、アミド、ビューレット、アシルウレア、アロファネート等を生成することができる。イソシアネート基反応性物質としては、各種ポリオール一般には各種ポリプロピレングリコール、各種ポリエチレングリコール、各種ポバール、ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエステルポリオール、ひまし油系ポリオール、アクリルポリオール等であり、また、2−ヒドロキシエチルアクリレートやアミノ基をもつ化合物や、二塩基酸類、酢酸ビニール類等のカルボキシル基をもつ化合物や、各種エポキシ樹脂化合物、ひまし油、液状ポリブタジエン、ネオプレンなどの活性水素化合物等が挙げられる。また、これらを単独あるいは2種以上組み合わせて使用することが可能であることは勿論である。
【0022】
また、イソシアネート基含有接着剤の反応を促進するため、各種アミン系化合物、オイクチル酸鉛などの有機金属化合物などの反応触媒を適宜添加してもよい。なお、触媒は熱圧プレス工程に入る前の反応を極力抑えるために、常温では活性を発現せず、プレス温度近辺で活性を発現する感温性触媒やプレス工程で効力を発揮する様に圧縮により破壊して内容物を出すマイクロカプセルに包埋した触媒であることが好ましい。
【0023】
熱硬化性樹脂としては、レゾ−ル型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ユリアメラミン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フルフラール樹脂、グリオキザール樹脂などが挙げられる。
【0024】
親水性樹脂としては、いも類、米麦類、コーンやタピオカ類等の澱粉含有物から得た澱粉、変性澱粉等の天然高分子物質、さらにポリビニールアルコール、ポリアクリル酸など水酸機またはカルボキシル基をもったポリマーなどが挙げられる。
【0025】
エマルジョン樹脂としては、アクリル酸エステルコーポリマー樹脂エマルジョンやエチレン・酢酸ビニルコーポリマー樹脂エマルジョンなどの合成樹脂エマルジョン等が挙げられる。
【0026】
非晶質シリカ粉状体は、シリカヒューム,ガラス粉,シラス等の火山性ガラス粉,ホワイトカーボン等が挙げることができ、平均粒径6μm以下が好適である。平均粒径が6μmを越えると、十分な強度が得られないからである。これは有機結合材との接触率が低下するためであると考えられる。そして、表裏層あるいは中層における非晶質シリカ粉状体の添加量は、有機結合材に対して5〜80重量%、かつ、表裏層あるいは中層全体の1重量%から20重量%であることが好ましい。有機結合材に対して5重量%未満であると十分な強度が得られないからであり、80重量%を超えると有機結合材の添加量が相対的に少なくなり、所望の強度が得られないからである。また、表裏層あるいは中層全体の1重量%未満であると十分な強度が得られないからであり、20重量%を超えると無機構成要素等の添加量が相対的に少なくなり、所望の成形体が得られないからである。
【0027】
次に、本発明にかかる無機質板状体の製造方法の一例を説明する。
すなわち、イソシアネート基含有接着剤と非晶質シリカ粉状体とを予め混合させて得た混合物で、表裏層間に中間層を形成する場合である。前記表裏層は、鉱物質繊維、無機質粉状体、有機質繊維、有機シリコーンモノマー等の各種添加剤、および、前記混合物を水中に適宜投入、攪拌する。さらに、所定の手順で凝集剤およびその他の抄造用添加剤を加えて固形分が数%のスラリーを得、これを長網式または丸網式等の抄造機に導いて表裏層となる湿潤マットを得る。
【0028】
一方、無機発泡体、無機繊維、無機粉状体およびイソシアネート基含有接着剤に水を噴霧しながら均一に混合して中層用混合物を得る。そして、これを下層となる前記湿潤マットの片面に散布して一様に堆積させ、その上に上層となる前記湿潤マットを重ねて3層構造の積層体を得る。
【0029】
ついで、前記積層体を80℃〜180℃に加熱された熱圧プレスでプレスした後、100℃〜250℃の熱風ドライヤーで乾燥し、板状無機質成形体を得る。
なお、前記熱圧プレスは80℃〜180℃に加熱されたスチール製ベルトからなる連続プレスで行ってもよい。また、本発明の表裏層は乾式製法で製造してもよく、中層は湿式製法で実施してもよい。
【0030】
本発明にかかる第2実施形態は単層の無機質成形体に適用した場合である。
すなわち、無機質構成要素と、有機結合材と、平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体とを必須成分とする混合物を成形し、加熱,硬化させた無機質成形体である。特に、混合物としては、有機結合材と非晶質シリカ粉状体とを予め混合して得たものを使用する。
【0031】
無機質構成要素としては、前述の第1実施形態で使用される無機繊維、無機粉状体、無機発泡体等が挙げられ、これら単体あるいは2種以上組み合わせて使用できる。
【0032】
有機結合材は、前述の第1実施形態で使用されたものを使用でき、粉状体であってもよく、液体であってもよい。有機結合材の添加量は、全体重量の1重量%から20重量%とすることが好ましい。1重量%未満であると十分な強度が得られないからであり、20重量%を超えると、防火性が損なわれるからである。
【0033】
非晶質シリカ粉状体は、シリカヒューム,ガラス粉,シラス等の火山性ガラス粉,ホワイトカーボン等が挙げることができ、平均粒径6μm以下が好適である。非晶質シリカ粉状体の添加量は、有機結合材に対して5〜80重量%、かつ、全体重量の1重量%から20重量%とすることが好ましい。有機結合材に対して5重量%未満であると十分な強度が得られないからであり、80重量%を超えると有機結合材の添加量が相対的に少なくなり、所望の強度が得られないからである。また、全体の1重量%未満であると十分な強度が得られないからであり、20重量%を超えると無機構成要素等の添加量が相対的に少なくなり、所望の成形体が得られないからである。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
無機繊維(ロックウール)50重量部、無機粉状体(炭酸カルシウム)30重量部、その他結合材(デンプン)10重量部を水中に投入し攪拌してスラリーを得た。そして、前記スラリーに、MDI7重量部と非晶質シリカ粉状体(平均粒経1μm)3重量部とを水を介して予め混合した混合物を添加して攪拌した後、湿式抄造で湿潤マットを得た。ついで、前記湿潤マットを圧縮成形した後、温度180℃で30分乾燥し、厚さ3.0mm、密度0.96g/cm3の試験用サンプルを得、この試験用サンプルの曲げ強度を測定した。測定結果を図1Aに示す。
【0035】
(比較例1)
実施例1と同じ組成で、構成要素を全て同時に水中に投入し、実施例1と同様に処理をして厚さ3.0mm、密度0.96g/cm3の試験用サンプルを得た。そして、この試験用サンプルについて実施例1と同様に曲げ強度を測定した。測定結果を図1Aに示す。
【0036】
(実施例2)
無機繊維(ロックウール)50重量部、無機粉状体(炭酸カルシウム)30重量部、その他結合材(デンプン)5重量部を水中に投入し攪拌してスラリーを得た。そして、前記スラリーに、粉状体フェノール樹脂10重量部と非晶質シリカ粉状体(平均粒経1μm)5重量部とを水を介して予め混合した混合物を添加して攪拌した後、湿式抄造で湿潤マットを得た。ついで、前記湿潤マットを温度90℃で加熱圧締した後、温度180℃で60分乾燥し、厚さ3.7mm、密度0.80g/cm3の試験用サンプルを得た。そして、この試験用サンプルについて実施例1と同様に曲げ強度を測定した。測定結果を図1Aに示す。
【0037】
(比較例2)
実施例2と同じ組成で、構成要素を全て同時に水中に投入し、実施例2と同様に処理をして厚さ3.7mm、密度0.80g/cm3の試験用サンプルを得た。そして、この試験用サンプルについて実施例2と同様に曲げ強度を測定した。測定結果を図1Aに示す。
【0038】
図1Aから明らかなように、同一成分組成であるにもかかわらず、実施例1,2が比較例1,2よりも曲げ強度において約20%大きいことが判った。このため、有機結合材および非晶質シリカ粉状体の添加量を増やさずに、強度を高めることができることを確認できた。
【0039】
(実施例3)
無機発泡体(シラス発泡体:平均粒経250μm)45重量部、無機粉状体(炭酸カルシウム)25重量部、有機繊維(古紙)10重量部、その他結合材(デンプン)10重量部を攪拌した第1混合物に、MDI7重量部と非晶質シリカ粉状体(平均粒経1μm)3重量部とを50重量部の水を介して予め攪拌しておいた第2混合物を添加し、均一に混合、攪拌して第3混合物を得た。そして、前記第3混合物を所定の型枠に入れ、圧縮成形した後、温度180℃で30分乾燥し、厚さ8.3mm、密度0.51g/cm3の試験用サンプルを得た。この試験用サンプルを平面引張り試験用治具に張り合わせ、剥離強度を測定した。測定結果を図1Bに示す。
【0040】
(比較例3)
実施例3と同じ組成で、構成要素を全て同時に混合し、実施例3と同様に処理をして厚さ8.3mm、密度0.51g/cm3の試験用サンプルを得た。そして、この試験用サンプルについて実施例3と同様に剥離強度を測定した。測定結果を図1Bに示す。
【0041】
(実施例4)
無機発泡体(シラス発泡体:平均粒経250μm)45重量部、無機粉状体(炭酸カルシウム)20重量部、有機繊維(古紙)10重量部、その他結合材(デンプン)10重量部を攪拌して第1混合物を得た。ついで、粉状体フェノール樹脂10重量部と非晶質シリカ粉状体(平均粒経1μm)5重量部とを予め攪拌して第2混合物を得た。そして、第1混合物に第2混合物を添加して得た第3混合物100重量部に対して50重量部の水を加えて均一に混合、攪拌した後、所定の型枠に入れ、圧縮成形した。ついで、温度180℃で30分乾燥し、厚さ8.5mm、密度0.50g/cm3の試験用サンプルを得た。そして、この試験用サンプルを平面引張り試験用治具に張り合わせ、剥離強度を測定した。測定結果を図1Bに示す。
【0042】
(比較例4)
実施例4と同じ組成で、構成要素を全て同時に混合し、実施例4と同様に処理をして厚さ8.5mm、密度0.50g/cm3の試験用サンプルを得た。そして、この試験用サンプルについて実施例4と同様に剥離強度を測定した。測定結果を図1Bに示す。
【0043】
図1Bから明らかなように、同一成分組成であるにもかかわらず、実施例3,4が比較例3,4よりも曲げ強度において約30%大きいことが判った。このため、有機結合材および非晶質シリカ粉状体の添加量を増やさずに、強度を高めることができることを確認できた。
【0044】
(実施例5)
無機繊維(ロックウール)50重量部、無機粉状体(炭酸カルシウム)30重量部、その他結合材(デンプン)10重量部を水中に投入し攪拌して得られたスラリーに、MDI7重量部と非晶質シリカ粉状体(平均粒経1μm)3重量部とを水を介して予め混合した混合物を添加し、さらに攪拌して得たスラリーから湿式抄造で湿潤マットを得た。
【0045】
一方、無機発泡体(シラス発泡体:平均粒経250μm)45重量部、無機粉状体(炭酸カルシウム)25重量部、有機繊維(古紙)10重量部、その他結合材(デンプン)10重量部を攪拌した第1混合物に、MDI7重量部と非晶質シリカ粉状体(平均粒経1μm)3重量部とを50重量部の水を介して予め攪拌して得た第2混合物を添加し、均一に混合、攪拌して第3混合物を得た。そして、前記第3混合物を前記湿潤マット間に散布,堆積させ、かつ、上下から挟んで圧縮成形した後、温度180℃で60分乾燥し厚さ8.9mm、密度0.71g/cm3の試験用サンプルを得た。そして、この試験用サンプルの曲げ強度を測定した。測定結果を図1Cに示す。
【0046】
(比較例5)
実施例5と同じ組成で、表裏層用構成要素と芯層用構成要素をそれぞれ全て同時に混合し、実施例5と同様に処理をして厚さ8.9mm、密度0.71g/cm3の試験用サンプルを得た。そして、この試験用サンプルについて実施例5と同様に曲げ強度を測定した。測定結果を図1Cに示す。
【0047】
(実施例6)
無機繊維(ロックウール)80重量部、無機粉状体(炭酸カルシウム)30重量部、その他結合材(デンプン)5重量部を水中に投入し攪拌して得られた第1スラリーに、粉状体フェノール樹脂10重量部と非晶質シリカ粉状体(平均粒経1μm)5重量部とを水を介して予め混合した混合物を添加し、さらに攪拌して得た第2スラリーから湿式抄造で湿潤マットを得た。
【0048】
一方、無機発泡体(シラス発泡体:平均粒経250μm)45重量部、無機粉状体(炭酸カルシウム)20重量部、有機繊維(古紙)10重量部、その他結合材(デンプン)10重量部を攪拌して得た第1混合物に、粉状体フェノール樹脂10重量部と非晶質シリカ粉状体(平均粒経1μm)5重量部とを予め攪拌しておいて得た第2混合物を添加して第3混合物を得た。さらに、前記第3混合物100重量部に対して50重量部の水を加えて均一に混合、攪拌したものを前記湿潤マット間に散布,堆積させ、かつ、上下から挟んで圧縮成形した後、温度180℃で60分乾燥し厚さ9.1mm、密度0.70g/cm3の試験用サンプルを得た。そして、この試験用サンプルの曲げ強度を測定した。測定結果を図1Cに示す。
【0049】
(比較例6)
実施例6と同じ組成で、表裏層用構成要素と芯層用構成要素をそれぞれ全て同時に混合し、実施例6と同様に処理をして厚さ9.1mm、密度0.70g/cm3の試験用サンプルを得た。そして、この試験用サンプルについて実施例7と同様に曲げ強度を測定した。測定結果を図1Cに示す。
【0050】
図1Cから明らかなように、同一成分組成であるにもかかわらず、実施例5,6が比較例5,6よりも曲げ強度が約20%大きいことが判った。このため、有機結合材および非晶質シリカ粉状体の添加量を増やさずに、強度を高めることができることを確認できた。
【0051】
したがって、実施例1ないし6と比較例1ないし6との測定結果から、成分組成が同一でも、有機結合材と非晶質シリカ粉状体とを予め混合するだけで、曲げ強度が向上し、有機結合材および非晶質シリカ粉状体の添加量を節約できることが明かとなった。これは、有機結合材と非晶質シリカ粉状体との接触面積が増大し、均一に混合,分散するためであると考えられる。
【0052】
(実施例7)
無機繊維(ロックウール)50重量部、無機粉状体(炭酸カルシウム)25重量部、その他結合材(デンプン)20重量部を水中に投入し攪拌して得られたスラリーに、MDI3重量部と非晶質シリカ粉状体(平均粒経1μm)2重量部とを水を介して予め混合した混合物を添加し、さらに攪拌して得たスラリーから湿式抄造して湿潤マットを得た。
【0053】
一方、無機発泡体(シラス発泡体:平均粒経250μm)45重量部、無機粉状体(炭酸カルシウム)30重量部、有機繊維(古紙)5重量部、その他結合材(デンプン)15重量部を攪拌した第1混合物に、MDI3重量部と非晶質シリカ粉状体(平均粒経1μm)2重量部とを50重量部の水を介して予め攪拌して得た第2混合物を添加し、均一に混合、攪拌して第3混合物を得た。そして、前記第3混合物を前記湿潤マット間に散布,堆積させ、かつ、上下から挟んで圧縮成形した後、温度180℃で60分乾燥し、厚さ8.9mm、密度0.71g/cm3の試験用サンプルを得た。そして、この試験用サンプルについて曲げ強度を測定した。測定結果を図1Cに示す。
【0054】
図1Cから明らかなように、実施例5よりも少量のMDIおよび非晶質シリカ粉状体で実施例5と同等の曲げ強度を有する無機質成形板が得られることが判った。これにより、デンプン等の結合剤と、MDIおよび非晶質シリカ粉状体の混合物との配合により、生産コストおよび強度のバランスを図りつつ、最適な無機質成形体を得られることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明にかかる無機質成形体および無機質成形体の製造方法は、例えば、内壁下地材に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】測定結果を示す図表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質構成要素と、有機結合材と、平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体とを必須成分とする混合物を成形し、加熱,硬化させた無機質成形体において、
予め混合した前記有機結合材および前記非晶質シリカ粉状体に前記無機質構成要素を添加,混合して得た混合物を成形し、加熱,硬化させたことを特徴とする無機質成形体。
【請求項2】
無機質構成要素と、有機結合材と、平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体とを必須成分とする混合物を成形し、加熱,硬化させる無機質成形体の製造方法において、
前記有機結合材と前記非晶質シリカ粉状体とを予め混合した後、前記無機質構成要素を添加,混合して混合物を得、この混合物を成形し、加熱,硬化させる工程からなることを特徴とする無機質成形体の製造方法。
【請求項3】
無機繊維、無機粉状体および有機結合材を必須成分とするスラリーから湿式抄造して得た湿潤マットを、加熱、硬化させた無機質成形体において、
前記有機結合材と前記無機粉状体である平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体とを予め混合し、ついで、前記無機繊維を添加,混合して得たスラリーから湿潤マットを得、この湿潤マットを加熱,硬化させたことを特徴とする無機質成形体。
【請求項4】
無機繊維、無機粉状体および有機結合材を必須成分とするスラリーから湿式抄造して得た湿潤マットを、加熱、硬化させる無機質成形体の製造方法において、
前記有機結合材と前記無機粉状体である平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体とを予め混合した後、前記無機繊維を添加,混合して得たスラリーから湿潤マットを得、この湿潤マットを加熱,硬化させる工程からなることを特徴とする無機質成形体の製造方法。
【請求項5】
無機繊維、無機粉状体および有機結合材を必須成分とするスラリーから湿式抄造して得た湿潤マットを表裏層とし、無機発泡体、無機粉状体および有機結合材を必須成分とする中層用混合物を前記表裏層用湿潤マット間に配置して中層とし、加熱、圧縮して一体化した無機質成形体において、
前記表裏層および中層のうち、少なくともいずれか一層を、前記無機粉状体である平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体と前記有機結合材とを予め混合し、かつ、他の構成要素を添加,混合したもので形成したことを特徴とする無機質成形体。
【請求項6】
無機繊維、無機粉状体および有機結合材を必須成分とするスラリーから湿式抄造して少なくとも2枚の表裏層用湿潤マットを得、無機発泡体、無機粉状体および有機結合材を必須成分とする中層用混合物を前記表裏層用湿潤マット間に均一な厚さに堆積させて中層とした後、熱圧工程および乾燥工程を経て一体化する無機質成形体の製造方法において、
前記表裏層および中層のうち、少なくともいずれか一層を、前記無機粉状体である平均粒径6μm以下の非晶質シリカ粉状体と前記有機結合材とを予め混合させた後、他の構成要素を添加,混合したもので形成する工程からなることを特徴とする無機質成形体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−63075(P2007−63075A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252031(P2005−252031)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】