説明

無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルム

【課題】印刷等の後加工を施してもガスバリア性、水蒸気バリア性、密着性の劣化がなく、環境負荷の少ない無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルムとそれを用いた包装材料を提供すること。
【解決手段】生分解性高分子基材(1)の少なくとも片面に無機酸化物蒸着層(2)を設け、さらにその上にメラミン及び又はその誘導体の混合物を持つ保護層(3)を設けた。生分解性高分子基材(1)と無機酸化物蒸着層(2)の間に下引層(4)を設けた構成としても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や非食品及び医薬品等の包装分野に用いられる包装用の積層体に関するものである。さらに生分解性基材を用いることで環境負荷低減に配慮された包装用の積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材料には種々の機能が要求される。その中でも、内容物保護性は最も重要な機能である。内容物の劣化及び変質は主に酸素、水分、光、熱などの影響により促進される。とりわけ、酸素及び水分の影響が大きい。それらを遮断することが、内容物保護性を考える上で重要であり、すなわち、ガスバリアフィルムの存在が要求される。また、今日のように嗜好性が多様化したり、添加剤が規制されるなどの状況下では外部からの遮断のみならず、不活性ガス充填包装や、風味、香気の退化防止など、内部からの透過も遮断する必要がある。
【0003】
しかしながら、一般的にプラスティックフィルムはガスバリア性に乏しく、単独で用いる場合には一部用途を除いては要求を満たすものがない。そこで、他のガスバリア性に優れた層を積層することによって、ガスバリアフィルムを作成する方法が採られていることが多い。
【0004】
ポリビニルアルコール(PVA)を成分に含む層を有したフィルムは、乾燥状態では樹脂が結晶性に富み酸素バリア性に優れることが知られているが、高湿条件下では結晶性が低下するため、バリア性が著しく低下することが問題である(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0005】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開平7−41685号公報。
【特許文献2】特開平7−33909号公報。
【特許文献3】特開平7−251475号公報。
【0006】
その問題点を改善するために種々の方法が考案されている。非PVA系として、ポリ塩化ビニリデン層を設けたガスバリアフィルム等も実用化されているが、廃棄処理時に有害なダイオキシンを発生する恐れがある(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献4】特開昭55−59961号公報。
【0008】
また、ポリビニルアルコールの耐水性を向上させるために、ポリビニルアルコール中にエチレンユニットを導入したポリ(ビニルアルコール−CO−エチレン)等の効果も知られているが、その湿度依存性に対する耐性は未だ十分であるとはいえない(例えば、特許文献5、6参照)。
【0009】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献5】特開平6−293118号公報。
【特許文献6】特開平11−170430号公報。
【0010】
また、ポリアクリル樹脂塩とポリビニルアルコールの複合被膜も考案されており酸素バリア性に優れることが知られているが、水蒸気バリア性が発現されない(例えば、特許文献7参照)。
【0011】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献7】特開2001−164174号公報。
【0012】
無機酸化物蒸着層を設けたガスバリアフィルムも各社から発売されている(例えば、特許文献8参照)が、用途によってはバリア性が不充分である場合があるばかりか、包装材料用フィルムとして印刷をするとバリア性が劣化するとの報告も一部から出されている。
【0013】
上記先行技術文献を示す。
【特許文献8】特開平6−16848号公報。
【0014】
また、蒸着フィルムのフィルム基材として、ポリエチレンテレフタレートやポリアミドなどが用いられるが、これらはいずれも廃棄された際には焼却以外の処理法が無く、その不当廃棄物は選択的に回収することが困難であるばかりでなく、野生動物や鳥類、魚類等が誤食し消化不良や窒息死したり美観環境を損ねることなどが問題となっている。
【0015】
そこで、包装材料として加工する際に、クラックやピンホールの発生がなく、外界の酸素や水蒸気から内容物を保護し、かつ環境負荷の小さいガスバリア性材料が要望されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、無機酸化物蒸着層を設けた生分解性高分子基材に関する以上のような問題に鑑みてなされたもので、印刷その他後加工などの各種ストレスを施しても、ガスバリア性、水蒸気バリア性の劣化が少なく、かつ、環境付加の少ない 無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリア性フィルムとそれを用いた包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上記課題を解決するために鋭意研究し、請求項1に記載したように生分解性高分子基材の少なくとも片面に無機酸化物蒸着層を設け、さらにその上にメラミン及びまたはその誘導体の混合物を成分に持つ保護層を設けたことを特徴とする無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルムを見出したものである。
【0018】
さらに好適な態様として請求項2に記載したように、前記生分解性高分子基材が多糖類、ポリペプチド類、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコールのうちから少なくとも1種類以上若しくはその誘導体を成分に持つことを特徴とする無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルムを提供する。
【0019】
さらに好ましい態様として請求項3に記載したように、前記無機酸化物蒸着層が酸化ア
ルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムのうち少なくとも1種類を成分に持つことを特徴とする無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルムを提供する。
【0020】
また望ましい態様として請求項4に記載したように、前記メラミン及びまたはその誘導体が少なくとも1つ以上の水酸基またはアミノ基を有することを特徴とする無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルムを提供する。
【0021】
さらに好適な態様として請求項5に記載したように、前記水酸基またはアミノ基を有するメラミン誘導体がメラミンのアミノ基のうち少なくとも1つからアルキル鎖及びまたはアルキルエーテル鎖を含む部分を介して水酸基またはアミノ基を有するものであることを特徴とする無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルムを提供する。
【0022】
また好ましい態様として請求項6に記載したように、前記保護層がメラミン誘導体、メラミンを順次積層してなることを特徴とする無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルムを提供する。
【0023】
さらに好ましい態様として請求項7に記載したように、前記保護層が真空プロセスにて形成されることを特徴とする無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルムを提供する。
【0024】
さらに望ましい態様として請求項8に記載したように、前記生分解性高分子基材と無機酸化物蒸着層の間に、下引層を設けたことを特徴とする無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルムを提供する。
【0025】
また好ましい態様として請求項9に記載したように、前記下引層がオルガノシランあるいはその加水分解物と、アクリルポリオールおよびイソシアネート化合物との複合物からなる成分に持つことを特徴とする無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルムを提供する。
【0026】
さらに請求項10に記載したように、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルムを用いて作製した包装材料を提供する。
【0027】
さらに請求項11に記載したように、前記包装材料は、前記生分解性ガスバリアフィルムに少なくとも接着層及び又は粘着層を介してヒートシール樹脂が積層してなり、前記ヒートシール樹脂、接着層及び又は粘着層が生分解性物質からなることを特徴とする包装材料を提供する。
【0028】
さらに請求項12に記載したように、前記ヒートシール樹脂、接着層、粘着層を構成する生分解性物質が、多糖類、ポリペプチド(たんぱく質)、ポリビニルアルコールのうち少なくとも1つを成分に持つことを特徴とする無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルムを提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、生分解性高分子基材を使用し、且つ保護層により無機酸化物蒸着層への物理的ストレスを緩和することでバリア性を維持し、かつ密着性に優れた環境負荷の小さい生分解性ガスバリアフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
本発明の無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルムは、例えば、図1に示すように、生分解性高分子基材(1)の少なくとも片面に無機酸化物蒸着層(2)を設け、さらにその上にメラミン及びまたはその誘導体の混合物を成分に持つ保護層(3)を設けたことを特徴としている。
【0031】
本発明における生分解性高分子基材(1)は、生分解性樹脂からなるフィルムであり、多糖類、ポリペプチド類、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコール若しくはその誘導体のうちから少なくとも1種類以上を成分に持つことが好ましい。
【0032】
無機酸化物蒸着層の透明性を活かすならば基材も透明であることがより好ましく、その点については、ポリ乳酸か、多糖類のひとつであるセロファンなどが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない
また、この基材の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが使用されていても良く、薄膜との密着性を良くするために、前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理を施すこともできる。さらに、薬品処理、溶剤処理などを施しても良い。
【0033】
基材の厚さは、特に制限を受けるものではないが、他の層を積層する、プライマー層及び無機酸化物蒸着薄膜層、オーバーコート層や他の層を積層する場合の加工性を考慮すると、一般的には5〜100μmの範囲で、実用的には10〜50μmの範囲が好ましい。また、量産性を考慮すれば、連続的に各層を形成できるように長尺フィルムとすることが望ましい。
【0034】
次に、無機酸化物蒸着層(2)とは、ガスバリア性を付与するために設けるもので、扱い易さ、経済性、ガスバリア性能等を考慮して、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化チタンのうちの少なくとも1種類以上を成分に持つことが好ましい。また、これら金属酸化物は、必ずしも酸化飽和している必要は無い。また、要求物性に応じて、各種添加物を混合させても構わない。これらの無機酸化物の組成比、酸化度、添加物などは、用途、コスト、成膜装置特性等を考慮して設定すればよろしい。成膜手段は、真空蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長法(CVD法)などの公知の方法が挙げられ、電子線加熱方式真空蒸着法などが特に有効であるが、これらの例に限定されるものではない。
【0035】
膜厚は限定するものではないが、1nm以上100nm以下が好ましい。これより薄い場合には、均一に成膜することが困難になるためにガスバリア性能が発現されにくく、また、これ以上の場合には、ガスバリア性能は発現されるものの、可橈性が減少し後加工適性や実用性に乏しくなり、また不経済である。
【0036】
メラミンは一般に2,4,6−triamino−1,3,5−triazine(式1)の別名であるが、本発明においては、2,4−diamino−1,3,5−triazine(式2)と2−amino−1,3,5−triazine(式3)を含めることにする。その理由は各個類似の性質を有し、いずれも本発明において有効であるがそれぞれを逐次並列表記することは本明細書において冗長となるためである。また2,4,6−triamino−1,3,5−triazineをメラミンと表記することは、いわゆるメラミン樹脂の原料として一般的であるため、これに統一したものである。
【0037】
【化1】

無機酸化物蒸着層の上に設ける保護層(3)とは、主に無機酸化物蒸着層の保護、印刷適性の向上などを目的として設けるものである。メラミンはそれ自体の高結晶性に起因すると推測されるガスバリア性を有するため、バリア性の向上にも寄与する。
【0038】
これまでの研究からメラミン単体の場合では無機酸化物蒸着層との密着性が不充分であることがあった。そこで本発明ではメラミンの誘導体を併用することを推奨する。密着性向上のためには必ずしもトリアジン骨格を有する必要性はないが、保護層兼ガスバリア層の成分として用いるメラミンとの親和性を保持させるために、メラミンのトリアジン環のπ共役電子雲と相互作用を持ち得る、やはりトリアジン環を有するメラミン誘導体を推奨したい。
【0039】
ここでいうメラミン誘導体はトリアジン環の炭素原子にアミンの窒素原子(トリアジン環の構成窒素では無い)が結合している状態を保持しているものであり、該アミンは級を問わない。ただし、セラミックス蒸着層との密着性保持のために極性の高い水酸基またはアミノ基をアルキル鎖及びまたはアルキルエーテル鎖を介して有するものとする。
【0040】
誘導方法については限定するものではないが、水酸基を末端に有するハロゲン化アルキル化合物とメラミンとの脱塩酸反応や水酸基末端のカルボン酸、カルボン酸塩化物などとアミンの反応が簡便であり、真空プロセスにて成膜するためには分子量をある程度に抑える必要性が生ずるので、巨大分子になりにくい前者は好ましい手法である。アミンの再導入については反応系中で試剤が環化する場合があるために強く推奨しないが、制御された合成で得られた物質は密着性に寄与し得る。エポキシ基やカルボン酸等を末端に導入し様とした場合、その末端自体がメラミンのアミンと反応し得るため容易に高分子化し真空プロセスには不向きである。
【0041】
生分解性高分子基材(1)と無機酸化物薄膜層(2)の間に、下引層(4)を設けた構成とすることもできる(図2参照)。
【0042】
下引層(4)は、ポリアミド樹脂からなる基材上に設けられ、生分解性高分子基材(1)と無機酸化物薄膜層(2)との間の密着性を高め、デラミネーションの発生やガスバリア性の劣化等を防止することを目的とする。鋭意検討の結果、上記目的達成の為に下引層として用いることができるのは、3官能オルガノシランあるいはその加水分解物と、アクリルポリオール及びイソシアネート化合物との複合物であることが望ましい。
【0043】
前記3官能オルガノシランは、一般式RSi(OR’)3 (R:置換・未置換のアルキル基、ビニル基等、R’:アルキル基)で表される化合物である。この時、Rの置換基にはエポキシ基あるいはイソシアネート基が含まれていることが好ましい。例えば、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、Rにエポキシ基を含んでいるグリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシトリメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、あるいはRにイソシアネート基を含んでいるγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等があげられる。これらの化合物は単独で用いても、2種以上の混合物で用いても良い。
【0044】
また、本発明において用いられる3官能オルガノシランは、前記化合物等の加水分解物であっても良い。この時R’の置換基にはエポキシ基またはイソシアネート基が含まれていることが好ましい。加水分解物を得る方法は、3官能オルガノシランに直接酸やアルカリ等を添加して加水分解を行う方法など既知の方法を利用できる。
【0045】
前記アクリルポリオールは、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物、もしくは、アクリル酸誘導体モノマーおよびその他のモノマーとを共重合させて得
られる高分子化合物のうち、末端にヒドロキシル基を持つもので、後に加えるイソシアネート化合物のイソシアネート基とを反応させるものである。中でも、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのアクリル酸誘導体モノマーを単独で重合させたものや、スチレン等その他のモノマーを加え共重合させたアクリルポリオールが好ましく用いられる。また、イソシアネート化合物との反応性を考慮するとヒドロキシル価が5〜200(KOHmg/g)の間であることが好ましい。
【0046】
さらに、イソシアネート化合物とは、アクリルポリオールと反応してできるウレタン結合により基材や無機酸化物層との密着性を高めるために添加されるもので、主に架橋剤もしくは硬化剤として作用する。これを達成するためにイソシアネート化合物としては、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシレンジイソシアネート(XDI)やヘキサレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などのモノマー類と、これらの重合体、誘導体が用いられ、これらが単独かまたは混合物として用いられる。
【0047】
下引層(4)に用いるアクリルポリオールとイソシアネート化合物の配合比は特に制限されるものではないが、イソシアネート化合物が少なすぎると硬化不良になる場合があり、また多すぎるとブロッキング等が発生し加工上問題がある。そこでアクリルポリオールとイソシアネート化合物との配合比としては、イソシアネート化合物由来のイソシアネート基(−NCO基)がアクリルポリオール由来の水酸基(−OH基)の50倍以下であることが好ましく、特に好ましいのは−NCO基と−OH基が等量で配合される場合である。混合方法としては、周知の方法が使用可能で特に限定しない。
【0048】
さらに、上記複合物の調液時に、液安定性を向上させるため、金属アルコキシドまたはその加水分解物を加えてもよい。この金属アルコキシドとはテトラエトキシシラン[Si(OC2 5 4 ]、トリプロポキシアルミニウム[Al(OC3 7 3 ]など一般式M(OR)n (M:金属元素、n:金属の酸化数)で表されるもの、あるいはその加水分解物である。中でもテトラエトキシシラン、トリプロポキシアルミニウムあるいはその両者の化合物が、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0049】
また、下引層(4)の複合物中に反応触媒が添加される。反応触媒は、塩化錫、オキシ塩化錫、錫アルコキシド各種有機錫などの錫化合物、ルイス酸をなど用いる。触媒以外にも、さらにプライマー剤には、各種添加剤、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤や、フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の酸化防止剤、レベリング剤、流動調整剤、架橋反応促進剤、充填剤等を添加することも可能である。
【0050】
下引層(4)の形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコートなどの周知の塗布方式を用いることができる。
【0051】
下引層(4)の厚さは、均一に塗膜が形成することができれば特に限定はしないが、一般的に0.01〜2μmの範囲であることが好ましい。厚さが0.01μmより薄いと均一な塗膜が得られにくく密着性が低下する場合があり、2μmを越えると塗膜にフレキシビリティを保持させることができず、外的要因により塗膜に亀裂を生じる恐れがるため好ましくない。0.05〜0.5μmの範囲内にあることが特に好ましい。
【0052】
さらに、保護層(3)上に他の層を積層することも可能である。例えば印刷層(図示せず)、ヒートシール層(図示せず)である。印刷層は目印や文字情報などとして実用的に
用いるために、あるいは装飾用に形成されるものであり、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等の従来から用いられているインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等添加剤などが添加されているインキにより構成される層であり、文字、絵柄等が形成されている。形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコート等の周知の塗布方式を用いることができる。厚さは、0.1〜2.0μmでよい。
【0053】
本発明の生分解性ガスバリアフィルム(10)を包装材料(100)に加工するためには、何らかの接着加工をせねばならない。限定するものではないが、ホットメルトグルー、コールドグルー、感圧タックグルー、各種接着剤(30)による直接ラミネートによるか、ヒートシール性ポリオレフィン層(20)を介して接着する方法が有る。特に後者はドライラミネート法や押し出し法により設けたポリオレフィン層同志を熱封緘するもので、シール強度が高いので好適である。易廃棄性を考慮すれば、これらは充分に薄いことが好ましい。また、これら層自身が生分解性を有すればなおよろしく、膠に代表されるポリペプチド系化合物や、デンプン糊のような多糖類などが例として挙げられる。これらは必要とされる耐用期間や環境に応じて適宜選定することが好ましい(図3、図4参照)。
【実施例】
【0054】
次に実施例を挙げて本発明について言及する。但しここで列挙する例は本発明を限定するものではない。
〈メラミン誘導体の調製〉
2,4,5−トリアミノ−1,3,5−トリアジンと2−クロロエタノール等モル量を炭酸ナトリウム存在下で反応させ、メラミンに水酸基を導入した。メラミン中のアミノ基は互いに等価であるために原則反応性は等しく、すなわち脱離反応は各アミノ基に於いて競争的に進行する。よって得られた誘導体は混合物となった。
〈実施例1〉
生分解性高分子基材(1)である厚さ15μmのポリ乳酸(PLA)の片面に、電子線加熱方式による真空蒸着装置により金属アルミニウムを蒸発させ、そこに酸素ガスを導入し、厚さ15nmの酸化アルミニウムを蒸着して無機酸化物薄膜層(2)を形成した。次いで該誘導体、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジンを順次真空プロセスにて成膜した。メラミン及びその誘導体の積算膜厚は0.5μmである。
〈実施例2〉
メラミン及び誘導体を順次でなく同時に混合物として成膜したこと以外は実施例1に同じ。
〈実施例3〉
生分解性高分子基材(1)と無機酸化物薄膜層(2)の間に下引層(4)として、希釈溶媒(酢酸エチル)中、アクリルポリオールとイソシアネート化合物としてTDIを、アクリルポリオールの−0H基に対し−NCO基が等量となるように加えた混合溶液を任意の濃度に希釈した複合溶液をグラビアコート法により厚さ0.15μm形成したこと以外は実施例1に同じ。
〈実施例4〉
無機酸化物蒸着層(2)を化学的気相蒸着法による珪素酸化物としたこと以外は実施例1に同じ。
〈実施例5〉
保護層(3)をメラミンの誘導体を用いずにメラミン単体としたこと以外は実施例1に同じ。
〈実施例6〉
メラミン及び誘導体の保護層(3)を設けなかったこと以外は実施例1に同じ。
〈実施例7〉
基材(1)にPETフィルムを用いたこと以外は実施例1に同じ。
〈実施例8〉
バリア層となる無機酸化物蒸着層(2)の代わりにアルミニウム箔を用いたこと以外は実施例7に同じ。
【0055】
最後に実施例1〜8の生分解性ガスバリア性フィルムに物理的ストレスを与えるため、グラビア印刷工程にかけた。インキは東洋インキ製造社のNew LPスーパー R631白であり、グラビア版は180線−35μmの彫刻版である。印刷パターンは全面ベタ刷りである。
【0056】
このようにして作製した実施例1〜8のガスバリア性フィルムの印刷前後における酸素透過度、水蒸気透過度、および印刷前の無機酸化物蒸着層と保護層の密着性、使用後の廃棄性を下記の方法により測定、評価した。その結果を表1に示す。
酸素透過度 ‥ 測定装置:OXTRAN 2/20(モダンコントロール社製)、測定条件:30°C−70%RH.
水蒸気透過度‥ 測定装置:PERMATRAN 3/31(モダンコントロール社製)、測定条件:40°C−90%RH.
密着性 ‥ 各試料に約2mm角の切り込みを10行×10列設け、セロハンテープにて剥離テストを行い、剥離しなかったセルの残数を数えた。基材は代用で50μmのものを用いた。
廃棄性 ‥ 廃棄の際の環境負荷が小さい構成を○印で、また環境負荷の大きい構成を×印で表し、総合的な評価として、優れている(◎で表す)、やや劣る(△印で表す)、劣る(×印で表す)の3段階評価を行った。
【0057】
【表1】

表1の評価結果より、メラミン及び誘導物による保護効果が分かる。また、メラミン単体よりも誘導体混合物を用いたものが、さらに誘導体とメラミンを順次積層させたものが密着性良好であることが判る。また、生分解性の基材を用いた場合の包が環境付加が小さいことは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルムの層構成の一実施例を示す、断面説明図である。
【図2】本発明の無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルムの層構成の別の実施例を示す、断面説明図である。
【図3】本発明の無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルムを用いた包装材料の一実施例を示す、断面説明図である。
【図4】本発明の無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルムを用いた包装材料の別の実施例を示す、断面説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1‥‥生分解性高分子材料
2‥‥無機酸化物蒸着層
3‥‥保護層
4‥‥下引層
10‥‥生分解性ガスバリアフィルム
20‥‥ヒートシール樹脂、ヒートシール性ポリオレフィン層
30‥‥接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性高分子基材の少なくとも片面に、無機酸化物蒸着層を設け、さらにその上にメラミン及びまたはその誘導体の混合物を成分に持つ保護層を設けたことを特徴とする無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルム。
【請求項2】
前記生分解性高分子基材が多糖類、ポリペプチド類、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコールのうちから少なくとも1種類以上若しくはその誘導体を成分に持つことを特徴とする請求項1に記載の無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルム。
【請求項3】
前記無機酸化物蒸着層が酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムの内少なくとも1種類を成分に持つことを特徴とする請求項1又は2に記載の無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルム。
【請求項4】
前記メラミン及びまたはその誘導体が少なくとも1つ以上の水酸基またはアミノ基を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルム。
【請求項5】
前記水酸基またはアミノ基を有するメラミン誘導体がメラミンのアミノ基のうち少なくとも1つからアルキル鎖及びまたはアルキルエーテル鎖を含む部分を介して水酸基またはアミノ基を有するものであることを特徴とする請求項4に記載の無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルム。
【請求項6】
前記保護層が前記メラミン誘導体、メラミンを順次積層してなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルム。
【請求項7】
前記保護層が真空プロセスにて形成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルム。
【請求項8】
前記生分解性高分子基材と無機酸化物蒸着層の間に、下引層を設けたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルム。
【請求項9】
前記下引層がオルガノシランあるいはその加水分解物と、アクリルポリオールおよびイソシアネート化合物との複合物からなる成分を持つことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の生分解性ガスバリアフィルムを用いて作製した包装材料。
【請求項11】
前記包装材料は、前記生分解性ガスバリアフィルムに少なくとも接着層及び又は粘着層を介してヒートシール樹脂が積層してなり、
前記ヒートシール樹脂、接着層及び又は粘着層が生分解性物質からなることを特徴とする請求項10記載に記載の包装材料。
【請求項12】
前記ヒートシール樹脂、接着層、粘着層を構成する生分解性物質が、多糖類、ポリペプチド(たんぱく質)、ポリビニルアルコールのうち少なくとも1つを成分に持つことを特
徴とする請求項10又は11に記載の無機酸化物蒸着層及び保護層を有する生分解性ガスバリアフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−44162(P2006−44162A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231249(P2004−231249)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】