説明

無端ベルト、定着ベルト、定着装置、及び画像形成装置

【課題】視認性を有する凸部をめっき層に付与した無端ベルトを提供すること。
【解決手段】基材10Aと、基材10Aの外周面上に設けられためっき層であって、外周面側にその面方向に沿って連続的に延びた凸部を有するめっき層(例えば下地金属層10B)と、を備える無端ベルト(例えば定着ベルト10)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 無端ベルト、定着ベルト、定着装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機やレーザープリンター等の画像形成装置には、感光体表面に形成されたトナー像を用紙表面に定着するための定着ベルトや、トナー像を感光体表面から用紙の表面へと転写する際に、これを媒介する中間転写ベルトのような無端ベルトが利用されている。
【0003】
例えば、インクジェットプリンタを用いてベルト最表面に直接印刷する方法(特許文献1参照)や、さらには、印刷した情報が容易に消えることがないように、ベルト表面に大気中で発生させたプラズマを触れさせることで表面改質を行った後にインクジェットプリンタで情報を印刷する方法が提案されている(特許文献2参照)。
また、別の方法としては、ラベルを使用した表記が広く一般的に行われている。これはラベルにその情報を印刷しておき、手作業や機械でラベルを製品に貼付けたり、各製品に事前に貼付けられたラベルに直接シルク印刷方式等で情報を印刷するものも挙げられる。
また、ベルト情報をベルト最外層の下の層の表面もしくは界面に形成する、又は転写材の通過領域外に形成することが提案されている(特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−238992号公報
【特許文献2】特開2000−103051号公報
【特許文献3】特開2005−189599号公報
【特許文献4】特開2005−326654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、視認性を有する凸部をめっき層に付与した無端ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
基材と、
基材の外周面上に設けられためっき層であって、外周面側にその面方向に沿って連続的に延びた凸部を有するめっき層と、
を備える無端ベルト。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記凸部の内部に、その連続的に延びる方向に沿って繊維状物が埋包されている請求項1に記載の無端ベルト。
【0008】
請求項3に係る発明は、
基材と、
前記基材の外周面上に設けられた無電解めっき層で構成された金属下地層であって、外周面側にその面方向に沿って連続的に延びた凸部を有する金属下地層と、
前記金属下地層の外周面上に設けられた発熱金属層と、
前記発熱金属層の外周面上に設けられた弾性層と、
を備える定着ベルト。
【0009】
請求項4に記載に係る発明は、
前記凸部の内部に、その連続的に延びる方向に沿って繊維状物が埋包されている請求項3に記載の定着ベルト。
【0010】
請求項5に係る発明は、
請求項3又は4に記載の定着ベルトと、
前記定着ベルトの外周面と接触して、加圧する加圧部材と、
前記定着ベルトの発熱金属層を電磁誘導によって発熱させる発熱手段と、
を備える定着装置。
【0011】
請求項6に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段により帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着手段であって、請求項5に記載の定着装置である定着手段と、
を備える画像形成装置。
【0012】
請求項7に係る発明は、
基材の外周面上に、繊維状物を配置する工程と、
前記繊維状物を配置した状態で、前記基材の外周面上に、めっき処理を施し、めっき層を形成する工程と、
を有する無端ベルトの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
請求項1、2に係る発明によれば、視認性を有する凸部をめっき層に付与した無端ベルトが提供できる。
請求項3、4に係る発明によれば、視認性を有する凸部を無電解めっき層に付与した定着ベルトが提供できる。
請求項5に係る発明によれば、視認性を有する凸部を無電解めっき層に付与した定着ベルトを備える定着装置が提供できる。
請求項6に係る発明によれば、視認性を有する凸部を無電解めっき層に付与した定着ベルトを備える画像形成装置が提供できる。
請求項7に係る発明によれば、視認性を有する凸部をめっき層に付与した無端ベルトが得られる無端ベルトの製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る定着ベルトを示す概略側面図である。
【図2】図1のA−A概略断面図である。
【図3】本実施形態に係る定着ベルトの部分断面図である。
【図4】本実施形態に係る定着ベルトの金属下地層(無電解めっき層)を示す概略斜視図である。
【図5】本実施形態に係る定着装置を示す概略構成図である。
【図6】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図7】実施例1で作製した無端ベルトにおける3層のめっき層の表面(電解Niめっき層(保護金属層)の外周面)を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一例である実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
[定着ベルト/無端ベルト]
図1は、本実施形態に係る定着ベルトを示す概略側面図である。図2は、図1のA−A概略断面図である。図3は、本実施形態に係る定着ベルトの部分断面図である。図4は、本実施形態に係る定着ベルトの金属下地層(無電解めっき層)を示す概略斜視図である。
【0017】
本実施形態に係るベルト10は、図1〜図3に示すように、内周面側から外周面側に向けて、基材10Aと、金属下地層10Bと、金属発熱層10Cと、金属保護層10D、弾性層10Eと、離型層10Fと、がこの順に積層されている。
【0018】
以下、本実施形態に係るベルト10の各構成要素について説明する。
【0019】
(基材)
基材10Aは、金属発熱層10Cが発熱した状態でも物性低下が抑制され、強度が維持される管状の層である。
【0020】
基材10Aは、例えば、耐熱性の樹脂を主成分として構成される。なお、「主成分」とは、質量比で50%以上であることを意味し、以下も同義である。
耐熱性の樹脂としては、例えば、ポリイミド、芳香族ポリアミド、サーモトロピック液晶ポリマー、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリサルフォン、及びポリイミドアミドが挙げられる。これらの中でも、ポリイミドがよい。
また、例えば、耐熱性の樹脂は発泡体であってもよく、これにより基材10A断熱効果を向上させてもよい。
【0021】
基材10Aには、例えば、断熱効果のあるフィラーを添加してもよい。
【0022】
基材10Aの弾性率は、定着ベルト10の繰り返しの搬送を実現する剛性と柔軟性とを両立させる観点から、例えば、100kgf/mm以上3000kgf/mm以下の範囲がよく、望ましくは200kgf/mm以上2000kgf/mm以下の範囲である。
【0023】
基材10Aの厚さとしては、定着ベルト10の渡る繰り返しの搬送を実現する剛性と柔軟性とを両立させる観点から、例えば、10μm以上100μm以下の範囲がよく、望ましくは30μm以上80μm以下の範囲である。
【0024】
(金属下地層)
金属下地層10Bは、例えば、基材10Aの外周面に金属発熱層10Cを形成するために設ける層である。金属発熱層10Cは、コスト等の観点から電解めっき法により形成されることが多く、基材10Aに直接電解めっきを行うことは困難であり、金属発熱層10Cを形成するために、金属下地層10Bが必要となる。
【0025】
ここで、金属下地層10Bは、無電解めっき層で構成させる。無電解めっき層としては、例えば、無電解ニッケルめっき層、無電解銅めっき層、無電解錫めっき層、無電解金めっき層、無電解ニッケル-タンタルめっき層が挙げられるが、無電解ニッケルめっき層が好適である。
そして、金属下地層10Bを構成する無電解めっき層の外周面側には、図3及び図4に示すように、その外周面の面方向に沿って連続的に延びた凸部110(つまり、その外周面上に、その面に沿って(例えば面と平行方向に沿って凸部110))を有している。
具体的には、無電解めっき層の外周面は、基材10Aの表面状態(粗面による凹凸)に応じた不規則で不連続な凹凸111を有しており、その中で、その外周面の面方向に沿って連続的に延びた凸部110を有している。つまり、凸部110は、無電解めっき層の外周面上で、その延びる方向に輪郭が湾曲した断面形状を維持しつつ設けられている。
【0026】
無電解めっき層の外周面に有する凸部110は、例えば、無電解めっき層の外周面側から見た形状で、直線に設けられていてもよいし、その他、湾曲、又は屈曲して設けられていてもよい。
【0027】
無電解めっき層の外周面に有する凸部110の長さ(連続して延びている長さ)は、例えば100μm以上1mm以下がよく、望ましくは200μm以上800μm以下、より望ましくは300μm以上500μm以下である。本長さは、付与するベルト情報に応じて選択されるが、短すぎると凸部110の視認性が低下し、長すぎると、ベルトが変形した際、応力集中が生じることがあり、無電解めっき層の割れや、層間剥離の起点となることがあるため、上記範囲がよい。
無電解めっき層の外周面に有する凸部110の高さ(無電解めっき層からの突出量)は、例えば、基材10Aの表面状態(粗面による凹凸)に応じた不規則で不連続な凹凸111の凸部の高さと同等の高さとすることがよい。凸部110が、ベルトが変形した際、応力集中が生じ、無電解めっき層の割れや、層間剥離の起点となることを抑制するためである。
【0028】
無電解めっき層の外周面に有する凸部110は、定着ベルト10(基材10A)の幅方向端部に設けることがよい。無論、定着ベルト10(基材10A)の幅方向中央部に設けてもよい。凸部110は、定着ベルト10を利用した定着に影響を与え難いからである。
【0029】
無電解めっき層の外周面に有する凸部110の内部には、例えば、その連続的に延びる方向に沿って繊維状物112が埋包されている。つまり、例えば、繊維状物112を基材10Aに設けた状態で、無電解めっき層を形成している。これにより、無電解めっき層が形成されると共に、繊維状物112を起点に金属が析出し、凸部110が繊維状物112を内部に埋包して形成されることとなる。なお、無電解めっき層の外周面に凸部110を形成できれば、これに限定されるわけではない。
【0030】
繊維状物112は、例えば、無機繊維、有機繊維のいずれもよい。
無機繊維としては、例えば、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。
有機繊維としては、例えば、セルロース、ナイロン、アクリル、ビニロン、ビニリデン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、アラミドなどの可塑性の樹脂繊維が挙げられる。
これらの中も、ベルトが変形した際、応力集中が生じ、無電解めっき層の割れや、層間剥離の起点となることを抑制する観点から、例えば、有機繊維(可塑性を有する有機繊維、特に絶縁性の有機繊維)であることがよい。
【0031】
繊維状物112は、例えば、その直径が0.5μm以上5μm(望ましくは1μm以上3μm以下、より望ましくは1μm以上2μm以下)、長さが100μm以上1mm以下(望ましくは200μm以上800mm以下、より望ましくは300μm以上500μm以下)であることがよい。繊維状物112を内部に埋包する凸部110が、ベルトが変形した際、応力集中が生じ、無電解めっき層の割れや、層間剥離の起点となることを抑制するためである。
繊維状物112の断面形状は、円形に限らず、不定形でもよく、また、中空であってもよい。
【0032】
金属下地層10Bの厚さは、例えば、ベルト10の柔軟性を損なわない厚さとし、例えば0.1μm以上10μm以下の範囲がよい。
【0033】
(金属発熱層)
金属発熱層10Cは、例えば、磁界により渦電流を発生させることで発熱する機能を有する層であり、電磁誘導作用を生ずる金属で構成される。
電磁誘導作用を生ずる金属としては、例えば、単一金属(ニッケル、鉄、銅、金、銀、アルミニウム、クロム、錫、亜鉛等)、又は2種類以上の金属からなる合金(スチール等)から選択される。
これらの中でも、コスト、発熱性能、及び加工性を考慮すると、金属としては、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄、クロムが適しており、特に、銅又は銅を主成分とする合金が望ましい。
【0034】
金属発熱層10Cの厚さは、その材質によって適切な厚さは異なるが、例えば、銅を金属発熱層10Cに用いる場合には、3μm以上50μmの範囲がよい。
【0035】
(金属保護層)
金属保護層10Dは、金属発熱層10Cの繰り返しの変形による割れや、長時間の繰り返し加熱による酸化劣化等を抑制し、発熱特性を維持するために、発熱層10C上に設ける層である。
なお、金属保護層10Dは、必要に応じて設けられる。
【0036】
金属保護層10Dは、例えば、耐久性及び耐酸化性が高い耐酸化金属層で構成すればよく、具体的には、例えば、薄膜での加工性も考慮し、電解めっき層が、中でも、強度が高い金属層である電解ニッケルめっき層がよい。
【0037】
金属保護層10Dの厚さは、その材質によって適切な厚さは異なるが、例えば金属保護層10Dとしてニッケルを用いる場合には、2μm以上20μm以下の範囲がよい。
なお、厚さは、蛍光X線膜厚計((株)フィッシャー・インストルメンツ製)により測定した値である。
【0038】
(弾性層)
弾性層10Eは、記録媒体上のトナー像の凹凸に追従して、定着ベルト10の表面がトナー像に密着する役割を担う層である。
【0039】
弾性層10Eは、例えば、100Paの外力印加により変形させても、もとの形状に復元する材料から構成されることがよい。本材料としては、公知の弾性材料が挙げられ、例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性のゴムが挙げられ、具体的には、例えば、東レダウコーニングシリコーン社製の液状シリコーンゴムSE6744、DuPont Dow elastmers社製のバイトンB−202等が挙げられる。
【0040】
弾性層10Eの厚さは、例えば、0.1mm以上3mm以下の範囲がよく、望ましくは0.15mm以上1mm以下である。
【0041】
(離型層)
離型層10Fは、加熱定着用ベルトとして未定着のトナー像を溶融状態として記録媒体に固着させる際に、溶融状態のトナーが定着ベルト10に固着することを防ぐ役割を担う層である。離型層10Fは、必要に応じて設けられる。
【0042】
離型層10Fは、例えば、フッ素系化合物を主成として構成されることがよい。フッ素系化合物としては、例えば、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂などが挙げられる。
【0043】
離型層10Fの厚さは、例えば、1μm以上100μm以下の範囲がよく、望ましくは10μm以上50μm以下の範囲である。
【0044】
ここで、各層の膜厚の測定は、以下のようにして行われる。即ち、基材10A、弾性層10E、離型層10Fの膜厚は、渦電流式膜厚計((株)フィッシャー・インストルメンツ製)により測定した。また、金属下地層10B、金属発熱層10C、及び金属保護層10Dの膜厚は、蛍光X線膜厚計((株)フィッシャー・インストルメンツ製)により測定した。
【0045】
(定着ベルトの製造方法)
本実施形態に係る定着ベルト10の製造方法について説明する。
まず、基材10Aを準備する。つまり、基材10Aとなる無端状のベルト部材を準備する。
【0046】
次に、基材10Aの外周面上に、繊維状物112を配置する。
繊維状物112を配置する方法としては、例えば、繊維状物112を水系溶媒又は有機溶媒に分散させた分散液を、基材10Aの外周面上に滴下し、溶媒を乾燥させて、繊維状物112を基材10Aの外周面上に配置する方法が挙げられる。
なお、繊維状物112を一本づつ掴んで配置する方法も挙げられるが、適用する繊維状物112の直径や長さを考慮すると、上記方法が好適である。
【0047】
次に、繊維状物112を配置した状態で、周知の方法により、基材10Aの外周面上に、無電解めっき処理を施し、無電解めっき層で構成された下地金属層10Bを形成する。
【0048】
その後、周知の方法により、下地金属層10Bの外周面上に、金属発熱層10C、金属保護金属層10D、弾性層10E、離型層10Fを順次形成する。
【0049】
上記工程を経て、本実施形態に係る定着ベルト10が得られる。
【0050】
以上説明した本実施形態に係る定着ベルト10は、下地金属層10Bを構成する無電解めっき層の外周面側に、その面方向に沿って連続的に延びた凸部110が設けられている。
この凸部110は、無電解めっき層の外周面において、基材10Aの表面状態(粗面による凹凸)に応じた不規則で不連続な凹凸111を有している中で設けられていることから、凹凸111と視覚上識別される形状となっている。
このため、本実施形態に係る定着ベルト10は、例えば、拡大鏡によって、視認性が確保された凸部110を無電解めっき層(下地金属層10B)に付与した定着ベルトとなる。
【0051】
なお、連続的に延びた凸部110を付与した無電解めっき層(下地金属層10B)の外周面上に、例えば、電解めっき処理により、発熱金属層10C、保護金属層10Dが順次積層されていることで、各発熱金属層10C及び保護金属層10Dの外周面側にも、無電解めっき層(下地金属層10B)の凸部110に由来する凸部が形成されており、これが視認性を有する。
つまり、本実施形態に係る定着ベルト10では、積層する金属層(本実施形態では3層めっき層:下地金属層10B、発熱金属層10C、保護金属層10D)の外周面側に、肉眼での視認性を有する凸部が形成されることとなる。
【0052】
ここで、定着ベルトは始めとする無端ベルトには、無端ベルトを取り扱う上では、無端ベルトに関する商品コード、製造ロットナンバー、画像形成装置を組み立てる際の無端ベルトの取り付け位置・方向が確認できる情報等、無端ベルトに関係する様々な情報( 以下、「ベルト情報」と称す場合がある) が確認できることが便利である。
例えば、無端ベルトに予め商品コード、製造ロットナンバー等のベルト情報が付されていると、工場で製造後の流通過程や画像形成装置に取り付けられた無端ベルトのトレーサビリティを向上させたり、画像形成装置の修理やメンテナンス時に同一又は互換性のあるタイプの無端ベルトと交換する場合の商品コードや在庫の確認を行う上での利便性が向上する。
【0053】
そして、本実施形態に係る定着ベルト10では、無電解めっき層(下地金属層10B)に付与した連続的に延びる凸部110が、視認して識別され得る上記ベルト情報として機能させられる。
具体的に、無電解めっき層(下地金属層10B)に付与した連続的に延びる凸部110は、例えば、定着ベルト10毎に又はその製造ロッド毎に、凸部110自体の数、複数の凸部110が設けられた領域の数、これらの配置位置、凸部110の形状(平面形状)等を変更することで、ベルト情報としての識別機能を発揮させられる。
なお、基材表面(基材10A表面)を引っ掻く等を行い傷を付けることでも、視認性を有する部位を付与され得るが、傷の断面形状が鋭利で、応力集中の起点となり(所謂エッジ効果)、無電解めっき層(下地金属層10B)自体の割れ等の起点となり、また、無電解めっき層(下地金属層10B)と発熱金属層10Cとの層間剥離の起点となってしまう。
【0054】
また、本実施形態に係る定着ベルト10では、連続的に延びる凸部110は、ベルト内部に配される無電解めっき層(下地金属層10B)に付与していることから、例えば、磨耗等により、消失することがなく、半永久的に利用される利点がある。
【0055】
そして、連続的に延びる凸部110は、無電解めっき層の外周面において、基材10Aの表面状態(粗面による凹凸)に応じた不規則で不連続な凹凸111の凸部高さと同等の高さで形成されるものであり、平面形状としては凹凸111と識別される形状となっているが、断面形状としては凹凸111と識別され難い形状となっている。
このため、無電解めっき層(下地金属層10B)自体の割れ等の起点となり難く、また、無電解めっき層(下地金属層10B)と発熱金属層10Cとの層間剥離の起点となることも抑制される。
【0056】
加えて、視認性を有する凸部110は、無電解めっき層(下地金属層10B)自体の割れ等の起点となり難く、また、無電解めっき層(下地金属層10B)と発熱金属層10Cとの層間剥離の起点となることも抑制されることから、定着ベルト10の幅方向端部のみならず、中央部に設けても、その定着性に影響がない。
【0057】
なお、本実施形態では、定着ベルト10について説明したが、これに限られず、基材と、基材の外周面上に設けられためっき層であって、外周面側にその面方向に沿って連続的に延びた凸部を有するめっき層と、備えた形態であれば、無端ベルト全般に適用され得る。
この場合、基材は樹脂製のみならず金属製のものであってもよいし、連続的に延びた凸部を有するめっき層は無電解めっき層に限られず電解めっき層であってもよく、無端ベルトの用途に応じて選択され、その他機能層を設けてもよい。
【0058】
[定着装置]
図5は、本実施形態に係る定着装置を示す概略構成図である。
本実施形態に係る定着装置100は、例えば、上記本実施形態に係る定着ベルト10を備える電磁誘導方式の定着装置であり、図5に示すように、定着ベルト10の一部を加圧するように加圧ロール(加圧部材)11が配置され、定着ベルト10と加圧ロール11との間に接触領域が形成されている。この接触領域において、定着ベルト10は、加圧ロール11の周面に沿った形に湾曲する。
【0059】
加圧ロール11は、基材11A上にシリコーンゴム等による弾性体層11Bが形成され、さらに弾性体層11B上にフッ素系化合物による離型層11Cが形成されて構成されている。
【0060】
定着ベルト10の内側には、加圧ロール11と対向する位置に押圧部材13が配置されている。押圧部材13は、金属、耐熱樹脂、耐熱ゴム等からなり、定着ベルト10の内周面に接して局所的に圧力を高めるパッド13Bと、パッド13Bを支持する支持体13Aを有している。
【0061】
定着ベルト10を中心として加圧ロール11(加圧部材の一例)と対向する位置には、電磁誘導コイル(励磁コイル)12aを内蔵した電磁誘導加熱装置12(発熱手段の一例)が設けられている。電磁誘導加熱装置12は、電磁誘導コイルに交流電流を印加することにより、発生する磁場を励磁回路で変化させ、定着ベルト10の金属発熱層10Cに渦電流を発生させる。この渦電流が金属発熱層10Cの電気抵抗によって熱(ジュール熱)に変換され、結果的に定着ベルト10の表面が発熱する。
なお、電磁誘導加熱装置12の位置は図5に示す位置に限定されず、例えば、定着ベルト10の接触領域に対して回転方向Bの上流側に設置されていてもよいし、定着ベルト10の内側に設置されていてもよい。
【0062】
本実施形態に係る定着装置100では、不図示の駆動装置により定着ベルト10の両端に配置されたギアに駆動力が伝達されることで、定着ベルト10が矢印B方向に自己回転し、定着ベルト10の回転に伴って加圧ロール11は逆方向、すなわち矢印C方向にする。
未定着トナー像14が形成された記録材15は、矢印A方向に、定着装置100における定着ベルト10と加圧ロール11との接触領域に通され、未定着トナー像14を溶融状態として圧力で記録材15に定着させる。
【0063】
[画像形成装置]
図6は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置200は、図6に示すように、感光体(像保持体の一例)202、帯電装置(帯電手段の一例)204、レーザー露光装置(静電潜像形成手段の一例)206、ミラー208、現像装置(現像手段の一例)210、中間転写体212、転写ロール(転写手段の一例)214、クリーニング装置216、除電装置218、定着装置(定着手段の一例)100、及び給紙装置(給紙ユニット220、給紙ローラ222、レジストローラ224、及び、記録媒体ガイド226)を備えている。
【0064】
この画像形成装置200で画像形成を行う場合、まず、感光体202に近接して設けられた非接触型の帯電装置204が、感光体202の表面を帯電させる。
【0065】
帯電装置204により帯電した感光体202の表面に各色の画像情報(信号)に応じたレーザー光が、ミラー208を介してレーザー露光装置206より照射されて静電潜像が形成される。
【0066】
現像装置210は、感光体202の表面に形成された潜像にトナーを付与することによりトナー像を形成する。現像装置210は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のトナーをそれぞれ収容した各色の現像器(不図示)を備えており、現像装置210が矢印方向に回転することにより、感光体202の表面に形成されている潜像に各色のトナーを付与し、トナー像が形成される。
【0067】
感光体202の表面に形成された各色のトナー像は、感光体202と中間転写体212との間に印加されたバイアス電圧により、感光体202と中間転写体212との接触部において、各色のトナー像毎に画像情報と一致するように中間転写体212の外周面に重ねて転写される。
【0068】
中間転写体212は、外周面が感光体202の表面に接触し矢印E方向に回転する。
中間転写体212の周囲には、感光体202の他に、転写ロール214が設けられている。
【0069】
カラーのトナー像が転写された中間転写体212は矢印E方向に回転する。中間転写体212上のトナー像は、転写ロール214と中間転写体212との接触部において、給紙装置によって接触部に矢印A方向に搬送されてきた記録媒体15の表面に転写される。
【0070】
なお、中間転写体212と転写ロール214との接触部への給紙は、給紙ユニット220に収納された記録媒体が、給紙ユニット220に内蔵された不図示の記録媒体押し上げ手段により給紙ローラ222に接触する位置まで押し上げられ、その記録媒体15が給紙ローラ222に接触した時点で、給紙ローラ222及びレジストローラ224が回転することにより記録媒体ガイド226に沿って矢印A方向に搬送されることにより行われる。
【0071】
記録媒体15の表面に転写されたトナー像は、矢印A方向に移動し、定着ベルト10と加圧ロール11との接触領域では、トナー像14は溶融状態で記録媒体15の表面に押圧され、記録媒体15の表面に定着される。これにより、記録媒体の表面に定着した画像が形成される。
【0072】
中間転写体212の表面にトナー像を転写した後の感光体202の表面はクリーニング装置216によって清掃される。
感光体202の表面はクリーニング装置216によって清掃された後、除電装置218によって除電される。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実施例)
液体ホーニング装置(不二精機製LH−8TTHiS)を用い、管状のポリイミド(以降、PI)基材(径30mm×幅L400mm、膜厚60μm)の表面を粗面化処理(表面粗さRa=0.5μm以上1.0μm以下)する。
ホーニング条件は砥粒#320、噴射圧0.3MPa、噴射距離100mm、処理時間1.5分で実施した。
そして、粗面化されたPI基材の表面の砥粒をイオン交換水にて洗い流した後、圧縮エアでPI基材表面の水分を除去した。
【0075】
次に、繊維状物(径Φ1μm×長さL500μm、材質:セルロース繊維)をイオン交換水に分散した後、粗面化されたPI基材の表面(基材の幅方向端部の表面)に滴下、そのまま室温(23℃)で乾燥させた。これにより、PI基材の表面に繊維状物を1本付着させた。
【0076】
次に、表面に繊維状物が付着したPI基材を、めっき治具に組み込み、アルカリ浴にて超音波加振しつつ、洗浄した後、無電解Niめっき処理を施し、厚み0.6μmの無電解Niめっき層(下地金属層)を形成した。
形成した無電解Niめっき層(下地金属層)の表面(外周面)をルーペで倍率を約50倍にして観察すると、PI基材表面の粗面に由来する不規則で不連続な凹凸があり、繊維状物を付着させた部位には不規則で不連続な凹凸の中に、層の表面(外周面)の面方向に沿って、つまり繊維状物の形状に沿って、連続的に延びた凸部が形成されており、視認できた。また、それ以外のめっき層の表面は良好な品質であった。
【0077】
次に、無電解Ni処理の後、めっき治具両端に電極をセットし、電解Cu処理、電解Ni処理を順次施し、厚み10μmの電解Cuめっき層(発熱金属層)、厚み9μmの電解Niめっき層(保護金属層)を形成した。
【0078】
ここで、得られた中間工程品である無端めっきベルトは、平均膜厚が80μmであり、3層のめっき層の表面(電解Niめっき層(保護金属層)の外周面)には、先に観察した無電解Niめっき層(下地金属層)の表面(外周面)に比べ2層のめっき層が追加された分、角部がなだらかになっているが、PI基材表面の粗面に由来する不規則で不連続な凹凸があり、繊維状物を付着させた部位には不規則で不連続な凹凸の中に、層の表面(外周面)の面方向に沿って、つまり繊維状物の形状に沿って、連続的に延びた凸部が形成されており、肉眼で視認できた。また、それ以外のめっき層の表面は良好な品質であった。このときの、写真を図7に示す。
【0079】
次に、得られた無端めっきベルトの表面(外周面)に、スパイラルコート装置を用いてシリコンゴムを塗布(膜厚200μm)し、一次加硫(120℃×20min)後、PFAチューブ(膜厚30μm、内面接着層有り)を被覆し、接着焼成(200℃×4h)を実施した。このようにして、無端めっきベルトの表面(外周面)に、弾性層、離型層を順次形成した。
【0080】
以上の工程を経て無端ベルトを作製した。得られた無端ベルトは、外観に突起、傷等は無く、良好な品質であった。
【0081】
得られた無端ベルトを定着ベルトとして、画像形成装置「富士ゼロックス社製 ApeosPortIV C5570」の定着装置に装着し、画像を出力し、定着ベルトの回転を継続しても、定着ベルトに異常は無く、欠陥の無い良好な画質が得られた。
そして、画像出力条件(単色黒ベタ、用紙:J紙(富士ゼロックス製))で、A4用紙 300000枚の画像出力を行った後、画像形成装置から定着ベルトを取り出し、離型層、弾性層を剥離したところ、上記3層のめっき層の表面(電解Niめっき層(保護金属層)の外周面)の形状に変化は無く、連続して延びた凸部を再び視認できた。
【0082】
(実施例2)
繊維状物として、繊維状物(径Φ2μm×長さ500μm、材質:ポリエステル繊維)を用いた以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトを作製し、評価を行った。
その結果、実施例1と同様に、3層のめっき層の表面(電解Niめっき層(保護金属層)の外周面)の形状に変化は無く、連続して延びた凸部を再び確認できた。。
【0083】
(実施例3)
繊維状物として、繊維状物(径Φ1μm×長さ1.5mm、材質:セルロース繊維)を用いた以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトを作製し、評価を行った。
その結果、実施例1と同様に、3層のめっき層の表面(電解Niめっき層(保護金属層)の外周面)の形状に変化は無く、連続して延びた凸部を再び確認できた。。
一方で、3層のめっき層の表面(電解Niめっき層(保護金属層)の外周面)に、連続して延びた凸部の端部および周辺から複数のクラックが発生し、めっき層が割れていることが確認できた。
【0084】
(実施例4)
繊維状物として、繊維状物(径Φ10μm×長さ500μm、材質:セルロース繊維)を用いた以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトを作製し、評価を行った。
その結果、実施例1と同様に、3層のめっき層の表面(電解Niめっき層(保護金属層)の外周面)の形状に変化は無く、連続して延びた凸部を再び確認できた。。
一方で、3層のめっき層の表面(電解Niめっき層(保護金属層)の外周面)に、連続して延びた凸部の端部および周辺から複数のクラックが発生し、めっき層が割れていることが確認できた。
【0085】
(実施例5)
繊維状物として、繊維状物(径Φ2μm×長さ500μm、材質:炭素繊維)を用いた以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトを作製し、評価を行った。
その結果、実施例1と同様に、3層のめっき層の表面(電解Niめっき層(保護金属層)の外周面)の形状に変化は無く、連続して延びた凸部を再び確認できた。。
【0086】
(比較例1)
特開2005−189599に準じて、PI基材の記録媒体の通過領域外に、インクジェットによりバーコードを印刷し、外周表面にフッ素樹脂(PTFE)に導電剤を添加したフッ素樹脂コート層を形成したものを用いて、無端ベルトを得た。
【0087】
得られた無端ベルトを実施例1と同様にして評価したところ、印刷部分(フッ素樹脂コート層部分)からシワが発生していた。また、フッ素樹脂コート層等の一部にはがれも発生した。
これは、PI基材とフッ素樹脂コート層の間にインク層が存在することにより接着力が低下するためで、プライマー種や量、焼成温度などの処理条件調整では回避しきれないためであると考えられる。
【符号の説明】
【0088】
10 定着ベルト
10A基材
10B 金属下地層
10C 金属発熱層
10D 金属保護層
10E 弾性層
10F 離型層
11 加圧ロール
11A 基材
11B 弾性体層
11C 離型層
12 電磁誘導加熱装置
13 押圧部材
13A 支持体
13B パッド
14 トナー像
15 記録媒体
100定着装置
200 画像形成装置
202 感光体
204 帯電装置
206 露光装置
210 現像装置
212 中間転写体
214 転写ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
基材の外周面上に設けられためっき層であって、外周面側にその面方向に沿って連続的に延びた凸部を有するめっき層と、
を備える無端ベルト。
【請求項2】
前記凸部の内部に、その連続的に延びる方向に沿って繊維状物が埋包されている請求項1に記載の無端ベルト。
【請求項3】
基材と、
前記基材の外周面上に設けられた無電解めっき層で構成された金属下地層であって、外周面側にその面方向に沿って連続的に延びた凸部を有する金属下地層と、
前記金属下地層の外周面上に設けられた発熱金属層と、
前記発熱金属層の外周面上に設けられた弾性層と、
を備える定着ベルト。
【請求項4】
前記凸部の内部に、その連続的に延びる方向に沿って繊維状物が埋包されている請求項3に記載の定着ベルト。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の定着ベルトと、
前記定着ベルトの外周面と接触して、加圧する加圧部材と、
前記定着ベルトの発熱金属層を電磁誘導によって発熱させる発熱手段と、
を備える定着装置。
【請求項6】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段により帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着手段であって、請求項5に記載の定着装置である定着手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項7】
基材の外周面上に、繊維状物を配置する工程と、
前記繊維状物を配置した状態で、前記基材の外周面上に、めっき処理を施し、めっき層を形成する工程と、
を有する無端ベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−203398(P2012−203398A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71187(P2011−71187)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】