説明

無端ベルトの製造方法及び無端ベルトの研磨装置

【課題】無端ベルトが大きく蛇行することがなく、無端ベルトに波打ちが発生することがなく、無端ベルトの表面を均一かつ美麗に研磨することができる無端ベルトの製造方法及び無端ベルトの研磨装置を提供する。
【解決手段】ゴム製の無端ベルトを駆動軸と従動軸の間に張架して、駆動軸により無端ベルトを回転させつつ、駆動軸上の軸方向に平行往復運動する研磨材により無端ベルトの表面を研磨する無端ベルトの製造方法において、従動軸が中央部において直径が一定である円柱形であり、中央部から端部にかけて次第に直径が中心に対して対称的に減少する形状であることを特徴とする無端ベルトの製造方法、並びに、ゴム製の無端ベルトを張架する駆動軸と従動軸及び駆動軸上の軸方向に平行往復運動する研磨材により無端ベルトを研磨する研磨材を有する無端ベルトの研磨装置において従動軸が中央部において直径が一定である円柱形であり、中央部から端部にかけて次第に直径が中心に対して対称的に減少する形状であることを特徴とする無端ベルトの研磨装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端ベルトの製造方法及び無端ベルトの研磨装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、ゴム製の無端ベルトを駆動軸と従動軸の間に張架して、駆動軸により無端ベルトを回転させつつ、駆動軸上を往復運動する研磨材により無端ベルトの表面を研磨するに際して、無端ベルトが大きく蛇行することがなく、かつ無端ベルトに波打ちが発生することがなく、無端ベルトの表面を均一かつ美麗に研磨することができる無端ベルトの製造方法及び無端ベルトの研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の中間転写ベルトや記録紙搬送ベルトなどに使用する半導電性ゴムからなる無端ベルトを製造するために、駆動軸と従動軸の間に無端ベルトを張架し、駆動軸により無端ベルトを回転させつつ、駆動軸上の軸方向に往復運動する研磨材により無端ベルトの表面を研磨すると、無端ベルトが蛇行したり、無端ベルトに波打ちが生ずるなどの現象が起こりやすい。無端ベルトの蛇行が激しくなると、研磨を続けることが困難になる場合がある。また、無端ベルトに波打ちが生ずると、研磨が不均一になって、無端ベルトの研磨面に波状模様やスパイラル模様が形成される場合がある。
蛇行は、回転運動する無端ベルトには常に発生する問題であって、さまざまな無端ベルトについて蛇行の防止が検討されている。例えば、画像形成装置において、蛇行防止部材の接着面に作用する剪断力を軽減し、蛇行防止部材の剥がれを防止し、定着ベルトの寿命向上を図ることができるベルト定着装置として、定着ベルトの蛇行を防止するための蛇行防止部材が内側に突出して設けられ、蛇行防止部材に逆テーパ面が形成され、ベルトローラーに該逆テーパ面に当接するテーパ面が形成されたベルト定着装置が提案されている(特許文献1)。
簡単、安価な方法で、中間転写ベルトや記録紙搬送ベルトなどの無端ベルトの蛇行を防止し、色ズレのない画像を形成できるようにした画像形成装置として、中間転写ベルト又は搬送ベルトなどの無端ベルトと、該無端ベルトを挟んで像担持体に相対して設置された転写ローラと、無端ベルトの端面に設けられた蛇行防止ベルトをガイドし、無端ベルトの蛇行を制限する蛇行防止プーリを設けた駆動ローラ又は従動ローラを備えた画像形成装置において、少なくとも一つの転写ローラを像担持体の軸方向に対して所定角度を持たせ、無端ベルトが一側に寄せられるように配置した画像形成装置が提案されている(特許文献2)。
ベルトの蛇行やスリップを抑えることができ、特に画像形成システムに用いる場合には高画質とすることができ、しかも小型化が可能なベルト駆動装置として、無端ベルトを周方向に回転させるために内周面に配置された複数のローラを備えるベルト駆動装置であって、無端ベルトの幅方向のいずれか一端の近傍の内周面に、周方向に連続する突起状の寄り止めガイドが設けられ、複数のローラの少なくとも1本に、寄り止めガイドの幅方向の移動を規制するガイド溝を備えるガイドプーリ部が設けられたベルト駆動装置が提案されている(特許文献3)。
しかし、画像形成装置の中間転写ベルトや記録紙搬送ベルトなどに使用する半導電性ゴムからなる無端ベルトを製造するために用いる原材料の無端ベルトは、生ゴム配合物の加硫により製造されたばかりの無端ベルトなので、無端ベルトの端部に蛇行防止部材、蛇行防止ベルト、寄り止めガイドなどを設けた場合、それらの蛇行防止用の部品とベルトが変形し、研摩不可能となる。また、画像形成装置においては、色ズレなどの防止のために0.1mm程度の蛇行も問題とされるのに対して、無端ベルトの研磨装置では、2mm以下の蛇行は許容されるなど、蛇行防止に対する要求水準が異なるので、画像形成装置における無端ベルトの蛇行防止技術を、ただちに無端ベルトの研磨における蛇行防止に応用することは困難である。
また、プリンタなどのベルト搬送装置において、適切な蛇行規制を行うことができ、ベルトのたわみ発生を防ぐことができるベルト蛇行防止機構として、ベルトの両側部又は一側部に配置され、ベルトの搬送面と直交する軸回りに回転自在な円筒部材と、この円筒部材の軸を支持する弾性部材とからなり、その弾性部材の弾性力によって円筒部材にベルト側面に向かう力が付与されるベルト蛇行防止機構が提案されている(特許文献4)。
駆動回転される金属製無端ベルトの表面又は上下の無端ベルト間にて連続して被加工物に多様な加工を施す各種のベルトマシーンに好適に適用できる無端ベルト機のベルトの蛇行防止方法として、複数のドラム上に掛け渡されて回動する無端ベルトを有するベルト機にあって、走行する無端ベルトの基準位置からのズレ量をベルトエッジ位置検出手段により検出し、ズレ量に基づく蛇行進行速度を示す蛇行進行度データを制御部に予め記憶させておき、ズレ量に基づく蛇行量進行度を比較演算し、演算結果に基づく蛇行量制御信号に基づき作動するドラム傾動手段をもって、少なくともドラムの一つを所定の移動量で制御傾動させる無端ベルト機のベルト蛇行防止方法が提案されている(特許文献5)。
しかし、この方法は、蛇行を根本から防止するものでなく、発生した蛇行を修正する方法であり、この方法を無端ベルトの研摩に用いた場合には、蛇行の修正の度に、研摩面に模様が発生する欠点がある。
高い蛇行防止効果を発揮しうる二重ベルトコンベヤにおける蛇行防止装置として、エンドレスの2枚のベルトを合わせ、合わされた送り側のベルトの間に被移送物を挟んで搬送し、帰り道を経由して循環する二重ベルトコンベヤにおいて、ベルトの帰り側において、少なくとも2基の蛇行防止機構がベルトの移動方向に離れて設けられ、蛇行防止機構は、帰り側ベルトの両端部を中央部に対し斜めに傾斜させるガイドロールから構成されている二重ベルトコンベヤの蛇行防止装置が提案されている(特許文献6)。
しかし、無端ベルトの研磨装置においては、駆動軸は600rpmのような高速で回転しており、上記のベルト蛇行防止機構、蛇行防止方法又は蛇行防止装置では、このような高速度で移動する無端ベルトの蛇行防止に対して効果を発揮することができない。
【特許文献1】特開2004−109454号公報
【特許文献2】特開2005−242121号公報
【特許文献3】特開2005−126196号公報
【特許文献4】特開2001−63860号公報
【特許文献5】特開2004−359379号公報
【特許文献6】特開2003−72928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ゴム製の無端ベルトを駆動軸と従動軸の間に張架して、駆動軸により無端ベルトを回転させつつ、駆動軸上を往復運動する研磨材により無端ベルトの表面を研磨するに際して、無端ベルトが大きく蛇行することがなく、無端ベルトに波打ちが発生することがなく、無端ベルトの表面を均一かつ美麗に研磨することができる無端ベルトの製造方法及び無端ベルトの研磨装置を提供することを目的としてなされたものである。無端ベルトの研摩表面を目視で観察して美麗であることは、円滑かつ正確な研摩加工であったことを示すものであり、研摩表面の美麗度は無端ベルトの厚さ及び研摩面の均一性を示唆するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ゴム製の無端ベルトを駆動軸と従動軸の間に張架して、駆動軸により無端ベルトを回転させつつ、駆動軸上の回転軸と平行方向に往復運動する研磨材により無端ベルトの表面を研磨するに際して、駆動軸は円柱形のままとしても、従動軸の形状のみを中央部を直径が一定である円柱形とし中央部から端部にかけて次第に直径が減少する形状とすることにより、駆動軸と従動軸の間を循環回転する無端ベルトの中央部の張力を両端部よりも中心線に対して対称的に大きくすることができ、その結果、無端ベルトの研摩工程の循環回転における蛇行回転を抑制でき、無端ベルトの波打ちの発生を防止して、無端ベルトの表面の均一で美麗な研磨加工を達成できることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)ゴム製の無端ベルトを駆動軸と従動軸の間に張架して、駆動軸により無端ベルトを回転させつつ、駆動軸上の軸方向に平行往復運動する研磨材により無端ベルトの表面を研磨する無端ベルトの製造方法において、従動軸が中央部において直径が一定である円柱形であり、中央部から端部にかけて次第に直径が中心に対して対称的に減少する形状であることを特徴とする無端ベルトの製造方法、
(2)ゴム製の無端ベルトを張架する駆動軸と従動軸及び駆動軸上の軸方向に平行往復運動する研磨材により無端ベルトを研磨する研磨材を有する無端ベルトの研磨装置において従動軸が中央部において直径が一定である円柱形であり、中央部から端部にかけて次第に直径が中心に対して対称的に減少する形状であることを特徴とする無端ベルトの研磨装置、
(3)直径が一定である中央部の長さが、従動軸の有効軸長の0.1〜0.5倍である(2)記載の無端ベルトの研磨装置、及び、
(4)従動軸を中心軸を通る平面で切断したとき、中央部から端部にかけての縮径部分が曲率半径5,000〜50,000mmの略円弧である(2)記載の無端ベルトの研磨装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の無端ベルトの研磨方法及び研磨装置によれば、研磨中に無端ベルトが大きく蛇行することがないので、波状模様やスパイラル模様のない美麗で均一な無端ベルトの研磨作業を継続することができる。また、無端ベルトに波打ちが発生しないので、無端ベルトの研摩面の破損・損傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の無端ベルトの製造方法においては、ゴム製の無端ベルトを駆動軸と従動軸の間に張架して、駆動軸により無端ベルトを回転させつつ、駆動軸上の軸方向に往復運動する研磨材により無端ベルトの表面を研磨する無端ベルトの製造方法において、駆動軸は正確に円柱形であり、従動軸が中央部において直径が一定である円柱形であり、中央部から端部にかけて次第に直径が中心に対して対称的に減少する形状である点に本発明の特徴がある。
本発明の無端ベルトの研磨装置においては、ゴム製の無端ベルトを張架する駆動軸と従動軸及び該駆動軸上の軸方向に往復運動する研磨材により無端ベルトを研磨する無端ベルトの研磨装置において、駆動軸は円柱形であり、従動軸が中央部において直径が一定である円柱形であり、中央部から端部にかけて次第に直径が減少する形状である。
図1は、本発明の無端ベルトの研磨装置の一態様の斜視図である。本態様の無端ベルトの研磨装置1は、駆動軸3と従動軸2を有する。無端ベルト(図示しない)の内側に駆動軸3と従動軸2を挿通し、駆動軸及び従動軸の先端を駆動軸先端支持具及び従動軸先端支持具で回転軸を支持してから、従動軸位置制御装置4により従動軸を図中の手前の方へ引き寄せ、無端ベルトに張力を掛けて駆動軸と従動軸の間に張架する。次いで、駆動装置(図示しない)を始動して駆動軸3を回転させ、無端ベルトを駆動軸3と従動軸2の間で循環回転させる。この状態で、研磨材(図示しない)を駆動軸表面上において駆動軸軸方向に平行に研磨材を往復運動させ、無端ベルトの表面を均一に研磨する。
所定の研磨が終了したとき、駆動装置を停止し、従動軸位置制御装置4により従動軸を図中の奥の方へ移動させ、駆動軸と従動軸の間に張架されていた無端ベルトを緩めて、取り外す。
図1に示す態様の装置は、無端ベルトの研磨装置1の附属装置として、無端ベルトの待機装置6を備えている。本態様の無端ベルトの待機装置は、2本の無端ベルトの支持軸7及び支持軸8を備えている。無端ベルトの支持軸7、8は、支持軸位置制御装置9により90度回転して、図に示す水平位置から垂直位置に移動することができる。研磨装置において無端ベルトを研磨している間に、支持軸を垂直位置に移動し、2本の支持軸を無端ベルト(図示しない)の内側に挿通して待機しておく。研磨装置において無端ベルトの研磨が終了し、研摩済み無端ベルトが駆動軸と従動軸から取り外されたとき、支持軸を水平位置まで回転させて、待機装置6に待機していた無端ベルトを2本の支持軸7と8から図中の左方に移動して、無端ベルトの内側に駆動軸と従動軸を挿通する。次いで、2本の支持軸7、8を垂直位置に移動させて待機装置6を後退させ、駆動軸と従動軸の先端を駆動軸支持具及び従動軸支持具のセンターに軸に嵌合させて駆動軸及び従動軸の回転軸を固定する。
また、駆動軸と従動軸を台座ごと研摩位置と無端ベルトの駆動軸と従動軸への装着脱着位置へ平行移動させる装置又は駆動軸のみを装着位置から研摩位置に従動軸の上を越して移動させる装置を使用することができる。この場合は、無端ベルトの待機装置6は、無端ベルトの駆動軸と従動軸への装着脱着位置に対応して設置することができる。
【0007】
本発明の無端ベルトの研磨方法及び研磨装置においては、従動軸が中央部において直径が一定である円柱形であり、中央部から端部にかけて次第に直径が減少する。図2は、本発明に使用する従動軸の一態様の側面図である。本態様の従動軸3は、中央部10が直径が一定の円柱形であり、中央部から端部11にかけて次第に直径が減少する。本態様の従動軸は、従動軸の両端に従動軸基部12と13を備えている。
無端ベルトの研磨装置において、駆動軸及び従動軸が全有効軸長にわたって直径が一定の円柱形であると、駆動軸と従動軸の間に張架した無端ベルトを駆動軸により回転させると、無端ベルトの蛇行が激しくなり、安定して研磨することができない。
さらに、無端ベルトの研磨装置において、従動軸が中央部に直径が一定の円柱形の部分を有せず、一方の端部から中央まで次第に直径が増加し、中央から他方の端部まで次第に直径が減少し、両端間の全有効軸長において直径が変化していると、駆動軸と従動軸の間に張架した無端ベルトを駆動軸により回転させたとき、無端ベルトに波打ちが発生し、均一で美麗な研磨が困難となる。本発明従属項時の中央部の直径が一定の円柱形の部分が無端ベルトの波打ち防止には有効である。
本発明の無端ベルトの研磨装置においては、従動軸の直径が一定である中央部の長さが、従動軸の有効軸長の0.1〜0.5倍であることが好ましく、0.2〜0.3倍であることが特に好ましい。ここに、有効軸長とは、図2において、従動軸の基部を除く軸の両端間の距離である。従動軸の直径が一定である中央部の長さの従動軸の有効軸長に対する比率が小さくなると、無端ベルトに波打ちが発生するおそれが増大する。また、従動軸の直径が一定である中央部の長さの従動軸の有効軸長に対する比率が増加すると、無端ベルトの蛇行が発生する恐れが増大する。
本発明では、駆動軸は有効軸長に亘って直径一定の円柱形状であっても、従動軸が本発明の形状であれば、蛇行防止及び波打ち防止効果があるが、駆動軸も従動軸と同様の形状にすることができる。この場合は、駆動軸表面の研摩材の往復運動の移動装置が複雑になる困難が発生する。
【0008】
本発明の無端ベルトの研磨装置においては、従動軸を中心軸を通る平面で切断したとき、中央部から端部にかけて次第に直径が減少する縮径部分が、曲率半径5,000〜50,000mmの略円弧であることが好ましく、曲率半径10,000〜40,000mmの略円弧であることがより好ましい。縮径部分の曲率半径は、中央部から端部まで一定とすることができ、中央部から端部までの部分をいくつかの異なる曲率半径を有する部分に分けることもでき、あるいは、中央部から端部まで連続的に曲率半径を変化させることもできる。縮径部分の曲率半径が5,000mm未満であると、無端ベルトに波打ちが発生するおそれが生じる。縮径部分の曲率半径が50,000mmを超えると、無端ベルトの蛇行が大きくなるおそれが生じる。
本発明方法又は本発明装置により研磨する無端ベルトが、画像形成装置などに用いられる半導電性ゴムからなる無端ベルトである場合は、無端ベルトの両面を研磨することが好ましい。その場合、加硫の際に形成された無端ベルトの製品表面を研磨したのち、同じく加硫の際に形成された製品裏面を研磨することが好ましい。無端ベルトの両面を研磨して、無端ベルトの成形、加硫の際に形成されたスキン構造を削り取ることにより、部分的な導電性のバラツキのない半導電性の無端ベルトを得ることができる。また、無端ベルトの両面を研磨することにより、表面平坦性の良好な無端ベルトを得ることができる。無端ベルトの製品裏面を研磨したのち、製品表面を研磨することにより、製品の研摩表面の平坦性を一層向上することができる。
【実施例】
【0009】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、研磨試験においては、研磨中の無端ベルトの蛇行の幅、無端ベルトの波打ちの発生、研磨後の無端ベルトの表面の美麗性は、無端ベルトの研摩加工面に存在する図3に示す波状模様、図4に示すスパイラル模様及び図5に示すシワ状傷(無端ベルトの走行方向に平行に発生する縦ジワ)の鮮明度によって評価した。
実施例1
クロロプレンゴム[デュポンエラストマー(株)、ネオプレン(登録商標)WRT]100重量部、酸化亜鉛[三井金属鉱業(株)、亜鉛華1号]5重量部、酸化マグネシウム[協和化学工業(株)、キョウワマグ#150]4重量部、カーボンブラック[東海カーボン(株)、シーストSO]22重量部、プロセスオイル[出光興産(株)、NS−24]22重量部、ステアリン酸1重量部、硫黄1重量部、加硫促進剤[川口化学工業(株)、アクセル(登録商標)22]1重量部及び加硫促進剤[大内新興化学工業(株)、ノクセラー(登録商標)TT]0.5重量部からなる配合物を用いて、無端ベルトを作製した。
硫黄と加硫促進剤を除く成分をバンバリーミキサーを用いて混練し、冷却したのち、オープンロールを用いて硫黄と加硫促進剤を混練し、リボン状にして押出機に供給した。
押出機は、スクリュー径75mmのベント付き押出機を用い、これに直径181.5mm、長さ400mmの円筒状金型を連続的に送ることができるクロスヘッドを装着した。シリンダー温度85℃、クロスヘッド温度95℃とし、円筒金型をスクリューと直角方向に1,000mm/minの速度で供給し、ダイホルダー及びニップホルダーにより厚さが0.8mmの未加硫ゴムベルト層を金型周囲に被覆形成した。未加硫ゴムベルト層が形成された金型を、160℃の加硫蒸気缶に入れ、50分加熱して加硫を行った。加硫後、金型から無端ベルトを取り外した。
無端ベルトの研磨には、図1に示す無端ベルト用研磨装置を用いた。駆動軸3と従動軸2の材質は、STS及びS45Cである。従動軸2は、図2に示す形状で基部を除く両端間の距離(有効軸長)を460mmとし、中央部100mmを直径40.0mmの円柱形とし、中央部から両側の端部までの各180mmにおいて次第に直径を減少して端部の直径を38.0mmとし、従動軸を中心軸を通る平面で切断したときの縮径部分の曲率半径を20,000mmとした。駆動軸は、直径58.0mmの円柱形とした。
駆動軸と従動軸の間に無端ベルトを製品表面を外側にして張架し、駆動軸を600rpmで回転することにより、無端ベルトを回転させ、従動軸の表面上で駆動軸上の軸方向に平行に研磨材を150mm/秒で往復運動させ、170秒間研磨を行った。無端ベルトの蛇行幅は2mm未満に減少できた。また、無端ベルトに、波打ちは発生しなかった。研磨面に、波状模様とスパイラル模様が僅かに認められたが美麗な研摩面が得られた。
次いで、無端ベルトの表裏を逆転させ、製品裏面を外側にして駆動軸と従動軸の間に張架して、製品表面と同じ条件で研磨を行った。無端ベルトの蛇行幅は、2mm未満であった。無端ベルトに、波打ちは発生しなかった。目視観察によって、研磨面の一部に、波状模様とスパイラル模様が僅かに認められたが、全体としては美麗な研摩面が得られた。
実施例2
中心軸を通る平面で切断したときの縮径部分の曲率半径を30,000mmとした従動軸を用いた以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトの研磨を行った。
製品表面の研磨において、無端ベルトの蛇行幅は、最大2mmであった。無端ベルトに、波打ちは発生しなかった。研磨面に、波状模様とスパイラル模様が僅かに認められた。製品裏面の研磨において、無端ベルトの蛇行幅は、2mm未満であった。無端ベルトに、波打ちは発生しなかった。研磨面の一部に、波状模様とスパイラル模様が僅かに認められたが美麗な研摩面が得られた。
実施例3
中心軸を通る平面で切断したときの縮径部分の曲率半径を80,000mmとした従動軸を用いた以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトの研磨を行った。
製品表面の研磨において、無端ベルトの蛇行幅は、最大3mmであった。無端ベルトに、僅かに波打ちが発生した。研磨面に、波状模様とスパイラル模様が僅かに認められたが美麗な研摩面が得られた。
【0010】
比較例1
直径が一定である円柱形の中央部がなく、両側の端部の直径が38.0mmであり、中心軸を通る平面で切断したときの曲率半径が20,000mmである従動軸を用いた以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトの研磨を行った。
製品表面の研磨において、無端ベルトの蛇行幅は最大4mmであった。無端ベルトに、波打ちが発生した。研磨面に、波状模様と、スパイラル模様が認められた。製品裏面の研磨において、無端ベルトの蛇行幅の最大値は、4mmであった。無端ベルトに、波打ちが発生した。研磨面に、波状模様と顕著なシワ状傷が認められ、スパイラル模様が認められた。
比較例2
直径が一定である円柱形の中央部がなく、両側の端部の直径が38.0mmであり、中心軸を通る平面で切断したときの曲率半径が30,000mmである従動軸を用いた以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトの研磨を行った。
製品表面の研磨において、無端ベルトの蛇行幅は、3mm以下であった。無端ベルトに、波打ちが発生した。研磨面に、波状模様が認められたが、スパイラル模様は認められなかった。製品裏面の研磨において、無端ベルトの蛇行幅は、最大5mmであった。無端ベルトに、波打ちが発生した。研磨面に、波状模様が認められ、顕著なシワ状傷が認められたが、スパイラル模様は認められなかった。
比較例3
直径が一定である円柱形の中央部がなく、両側の端部の直径が38.0mmであり、中心軸を通る平面で切断したときの曲率半径が40,000mmである従動軸を用いた以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトの研磨を行った。
製品表面の研磨において、無端ベルトの蛇行幅は、最大8mmであった。無端ベルトに、波打ちが発生した。研磨面に、波状模様は認められなかったが、スパイラル模様が認められた。製品裏面の研磨において、無端ベルトの蛇行幅は、最大8mmであった。無端ベルトに、波打ちが発生した。研磨面に、波状模様は認められなかったが、スパイラル模様が認められた。
比較例4
直径が一定である円柱形の中央部がなく、両側の端部の直径が38.0mmであり、中心軸を通る平面で切断したときの曲率半径が50,000mmである従動軸を用いた以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトの研磨を行った。
製品表面の研磨において、無端ベルトの蛇行距離は、12mmであった。無端ベルトに、波打ちは発生しなかった。研磨面に、顕著な波状模様が認められたが、スパイラル模様は認められなかった。製品裏面の研磨において、無端ベルトの蛇行距離は、13mmであった。無端ベルトに、波打ちは発生しなかった。研磨面に、顕著な波状模様が認められたが、スパイラル模様は認められなかった。
比較例5
直径が39.6mmの円柱形である従動軸を用いた以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトの研磨を行った。
無端ベルトは激しい蛇行を続けるとともに、図1に示す図中において右方へ移動し、駆動軸及び従動軸から外れそうになったので、80秒で研磨を中止した。
実施例1〜3及び比較例1〜5の結果を、第1表に示す。
【0011】
【表1】

【0012】
第1表に見られるように、中央部において直径が一定である円柱形であり、中央部から端部にかけて曲率半径20,000mm、30,000mmで直径が減少する縮径部を有する従動軸を用いて研磨した実施例1〜3においては、無端ベルトの蛇行距離が小さく、研磨後の無端ベルトの表面の波状模様、スパイラル模様ともに僅かである。研摩加工において、無端ベルトの研摩循環回転に波打ちがほとんど発生しない。ただし、曲率半径が80,000mmでは、蛇行防止の効果が十分に得られず、波状模様が発生してしまう。
これに対して、直径一定の中央部を有せず、全体が曲率半径20,000mmの従動軸を用いた比較例1では、無端ベルトの波打ちが発生し、研磨後の無端ベルトの表面にシワ状傷が認められる。
すなわち、直径一定の中央部を有せず、全体が曲率半径30,000mmの従動軸を用いた比較例2では、研磨後の無端ベルトの裏面にシワ状傷が認められる。直径一定の中央部を有せず、全体が曲率半径40,000mmの従動軸を用いた比較例3では、無端ベルトの蛇行が大きく、研磨後の無端ベルトの裏面にシワ状傷が認められる。直径一定の中央部を有せず、全体が曲率半径50,000mmの従動軸を用いた比較例4では、研磨後の無端ベルトの表面に顕著な波状模様が認められる。
これらの結果から、従動軸が直径が一定である円柱形の中央部を有しないと、曲率半径を選ぶだけでは、無端ベルトの蛇行、無端ベルトの波打ち、研磨後の製品表面の波状模様、シワ状傷のすべてを満足する研磨を行うことが不可能であることが分かる。
全体の直径が一定である従動軸を用いた比較例5によって、蛇行の修正具を用いないと無端ベルトの蛇行が激しく、研磨を続けることができないことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明の無端ベルトの研磨方法及び研磨装置に波打ちは、研磨中に無端ベルトが大きく蛇行することがないので、安定して研磨作業を継続することができる。また、無端ベルトに波打ちが発生しないので、波状模様やスパイラル模様のない美麗で均一な無端ベルトを研磨により得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の無端ベルトの研磨装置の一態様の斜視図である。
【図2】本発明に使用する従動軸の一態様の側面図である。
【図3】波状模様の説明図である。
【図4】スパイラル模様の説明図である。
【図5】シワ状傷の説明図である。
【符号の説明】
【0015】
1 無端ベルトの研磨装置
2 従動軸
3 駆動軸
4 従動軸位置制御装置
5 駆動装置
6 無端ベルトの待機装置
7 支持軸
8 支持軸
9 支持軸位置制御装置
10 中央部
11 端部
12 従動軸基部
13 従動軸基部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム製の無端ベルトを駆動軸と従動軸の間に張架して、駆動軸により無端ベルトを回転させつつ、駆動軸上の軸方向に平行往復運動する研磨材により無端ベルトの表面を研磨する無端ベルトの製造方法において、従動軸が中央部において直径が一定である円柱形であり、中央部から端部にかけて次第に直径が中心に対して対称的に減少する形状であることを特徴とする無端ベルトの製造方法。
【請求項2】
ゴム製の無端ベルトを張架する駆動軸と従動軸及び駆動軸上の軸方向に平行往復運動する研磨材により無端ベルトを研磨する研磨材を有する無端ベルトの研磨装置において従動軸が中央部において直径が一定である円柱形であり、中央部から端部にかけて次第に直径が中心に対して対称的に減少する形状であることを特徴とする無端ベルトの研磨装置。
【請求項3】
直径が一定である中央部の長さが、従動軸の有効軸長の0.1〜0.5倍である請求項2記載の無端ベルトの研磨装置。
【請求項4】
従動軸を中心軸を通る平面で切断したとき、中央部から端部にかけての縮径部分が、曲率半径5,000〜50,000mmの略円弧である請求項2記載の無端ベルトの研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−45713(P2009−45713A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215589(P2007−215589)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】