説明

無端駆帯走行式の浸漬及び水耕栽培装置

【課題】 無端駆帯式の浸漬つき水耕栽培装置において高価な培養液を節減することを課題とする。
【解決手段】
無端駆帯による上部走行路と、それより反転する下部走行路において、該無端駆帯に連結された植物植設パネルを上記上部及び下部走行路に循環走行させ、
上記上部走行路に、培養液を入れた浅底で長い栽培槽を配置し、
上記下部走行路に、浸漬液を入れた深底で短い1又は複数の浸漬槽を配置した、
無端駆帯式の浸漬つき水耕栽培装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ローラチエン等の無端駆帯により植物を水耕栽培ヤードから浸漬ヤードへ循環走行させる無端駆帯走行式の浸漬及び水耕栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物を植えた定植パネル(植物植設パネル)をローラチエンにより水耕栽培ヤードから浸漬ヤードへ循環走行させるローラチエン走行式浸漬及び水耕栽培装置として、培養液を入れた栽培槽の前後両端部に配置した駆動スプロケットと従動スプロケットに無端ローラチエンを掛け回して、培養液面近くを水平に走行する上部直線走行路と、反転して培養液中を走行する下部直線走行路とを形成し、上記ローラチエンに多数の植物植設パネルを連結して走行させ、上部直線走行路にあるときに水耕栽培を行い、下部直線走行路において害虫駆除用浸漬を行うようにしたものが知られている。
【0003】
しかし、上記の装置では、1つの水耕栽培槽において同時に浸漬を行うものであるため、栽培槽を深底に形成し、該槽内に、植物全体が液没できるように、栽培に必要な量を超えた大量の培養液を入れておく必要があるが、培養液が高価であることから、経済的負担がかさむ難点があった。
【0004】
さらに、ホウレン草、コマツナ、長ネギ等の丈の細長い植物の栽培においては、植物植設パネルは、上部直線走行路を葉茎部を上向きに、根を下向きにした正姿勢で走行するが、スプロケットを回送するとき、葉茎部を横向きに変更しつつ大気中から培養液中に突入していくため、細長い葉茎部が液圧により折損し、商品価値を著しく低下させる欠点もみられた。
【特許文献1】特許第3841156号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願第1、第2、第3発明は、高価な培養液を節減することを課題とする。
【0006】
本願第4発明は、上記課題に加えて、丈の細長い植物の折損を防止することを課題とする。
【0007】
本願第5発明は、上記課題に加え、装置の設置スペースを節減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本願第1発明は、
前部駆帯車及び後部駆帯車に無端駆帯を走行駆動可能に掛け回して、前方へ走行する上部走行路と、それより反転して後方へ逆送する下部走行路とを形成し、上記無端駆帯に、多数本の植物植設パネルを連結して、該植物植設パネルを上記上部走行路及び下部走行路に循環走行させ、
上記上部走行路に、正姿勢で走行する上記植物植設パネルの根を浸漬させるべき培養液を入れた浅底で走行方向に長い栽培槽を配置し、
上記下部走行路に、走行する上記植物植設パネルを液没させるべき浸漬液を入れた深底で走行方向に短い1又は複数の浸漬槽を配設した、
無端駆帯走行式の浸漬つき水耕栽培装置を提案し、
【0009】
本願第2発明は、
上記第1発明における栽培槽が、多数本の浅底栽培樋を走行方向に向けて互に平行に並設したものである、無端駆帯走行式の浸漬つき水耕栽培装置を提案し、
【0010】
本願第3発明は、
前部駆帯車及び後部駆帯車に無端駆帯を走行駆動可能に掛け回して、前方へ走行する上部走行路と、それより反転して後方へ逆送する下部走行路とを形成し、上記無端駆帯に、多数本の植物植設カゴを連結して、該植物植設カゴを上記上部走行路及び下部走行路に循環走行させ、
上記植物植設カゴは、カゴ側壁に定植孔及び多数の通水孔を有し、内部に培養液を吸収保持しうる保水材を収納したカゴについて、植物を上記定植孔に植えつけ、その根を内部の保水材に浸したものであり、
上記下部走行路に、走行する上記植物植設カゴを液没させるべき培養液を入れた深底で走行方向に短い1又は複数の浸漬兼培養液補給槽を配置した、
無端駆帯走行式の浸漬つき水耕栽培装置を提案する。
【0011】
本願第4発明は、
丈の細長い植物を植えた上記第1又は第2発明における植物植設パネル又は上記第3発明における植物植設カゴを上記浸漬槽又は浸漬兼培養液補給槽に走行させる際、上記植物の細長葉茎部を浸漬液面に対し少くとも垂直に近い向きで液中に進入させるための上記植物植設パネル又は植物植設カゴの向き調整装置を備えた、無端駆帯走行式の浸漬つき水耕栽培装置を提案する。
【0012】
本願第5発明は、
上記下部走行路に、上記1又は複数の浸漬槽のほかに、正姿勢で走行する植物植設パネルの根を浸漬させるべき培養液を入れた浅底で走行方向に長い下部栽培槽をさらに配置すると共に、該下部栽培槽における植物植設パネルに育成光を照射すべき植物育成灯を配置した、無端駆帯走行式の浸漬つき水耕栽培装置を提案する。
【発明の効果】
【0013】
本願第1発明によれば、栽培槽と浸漬槽を別体とし、しかも培養液は浅底の栽培槽に入れその際浸漬槽にも培養液を入れた場合でも、浸漬槽は走行方向に短い槽であるから、全体として高価な培養液を大幅に節減することができるのである。
【0014】
本願第2発明によれば、上記第1発明における栽培槽からさらに不要のスペースを省いた必要最小限の栽培槽となり、それにより培養液をさらに節減できるのである。しかも、各栽培樋においては、植物の根が無制限に横に拡がるのを抑制し、樋内のスペース全体に展延することになるから、樋の一端から他端に流れる培養液が根に隅なく供給され、有効な養分吸収が行われる。
【0015】
本願第3発明によれば、植物植設カゴが植物の根をカゴ内にコンパクトに抱えこんだ状態で浸漬兼培養液補給槽の培養液中に浸漬されるから、従来装置と比べ浸漬槽は浅くてすみ、その分培養液を節減することができるのである。しかもカゴ内にある根は、カゴ側壁の多数の通水孔を介して空気にふれ、十分な酸素の供給が得られるのである。
【0016】
本願第4発明によれば、丈の細長い植物を植えた植物植設パネル又は植物植設カゴが浸漬槽又は浸漬兼培養液補給槽へ走行するとき、該パネル又はカゴの向き調整装置により植物の細長葉茎部を浸漬液面に対し少くとも垂直に近い向きで液中に進入させ、それによりホウレン草、コマツナ、長ネギ等の細長葉茎部が液圧により折損することを防止することができるのである。
【0017】
本願第5発明によれば、下部走行路にも浅底の走行方向に長い栽培槽を配置したから、上下2段の広い栽培槽を備えることとなり、設置スペースの有効利用を実現できるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本願発明における「無端駆帯」とは、ローラチエン、ワイヤロープ、繊維ロープ、布ベルト、ステンレス鋼帯、その他種々のものを含む。又「駆帯車」とは、ローラチエンの場合はスプロケット、ワイヤロープ、繊維ロープ等の場合は溝プーリ、布ベルト、ステンレス鋼帯等の場合はベルト車である。
【0019】
本願第1、第2、第4及び第5発明における植物植設「パネル」には、発泡スチロール板、木板等のフロート型パネル、合成樹脂板、金属板等の沈下型パネルのほか、網、孔あき板、植物を植設すべき環を多数有するバー等が含まれる。
【0020】
又、本願第3、第4発明における植物植設「カゴ」には、合成樹脂製のネット、孔あき板、木製の孔あき板等からなる通水孔つき円筒型、箱型、ツボ型等の各種形状の容器が含まれる。これに入れる「保水材」には、各種の繊維マット、不織布、スポンジ等が使用される。
【0021】
さらに、本願第4発明における「向き調整装置」には、上記植物植設パネル又はカゴを無端駆帯に回転自在に支持連結し、該パネル又はカゴに、常時正姿勢を維持するための砂、石、ガラス等の重錘をつけたもの、無端駆帯に回転自在に支持連結されたパネル又はカゴを所定位置でラック・ピニオン機構、爪車機構等により所要角度回転させるもの、その他種々の機構を利用したものが利用される。
【実施例】
【0022】
以下本願発明の実施例について図面を参照して詳述する。
第1発明の実施例
図1(イ)、(ロ)において、フレーム(F)の前端上部に左右一対の駆動スプロケット(1)、(1)を、後端上部に左右一対の従動スプロケット(2)、(2)をそれぞれ軸支し、これら駆動及び従動スプロケット(1)(2)、(1)(2)に、それぞれ左右一対の無端ローラチエン(3)、(3)を掛け渡し、この無端ローラチエン(3)、(3)におけるスプロケット(1)(2)、(1)(2)間の上部走行路に、前部案内スプロケット(4)、(4)及び後部案内スプロケット(5)、(5)をそれぞれ係合して該案内スプロケット(4)(5)、(4)(5)間に、水平に延長する長い上部直線走行路(A)を形成し、該直線走行路(A)の下に、培養液(7)を入れた上面開口の走行方向に長い浅底栽培槽(6)を設置してある。
【0023】
一方、上記無端ローラチエン(3)、(3)の下部反転走行路には、前部案内スプロケット(8)、(8)及び後部案内スプロケット(9)、(9)をそれぞれ係合して該案内スプロケット(8)(9)、(8)(9)間に形成される水平に延長する走行方向に短い下部直線走行路(B)を、前後に間隔をあけて連続的に2路(B)、(B)形成し、各下部直線走行路(B)、(B)を囲む位置に、該走行路(B)、(B)が水没進入すべき浸漬用水(11)、(11)をそれぞれ入れた上面開口の走行方向に短い深底浸漬槽(10)、(10)をそれぞれ設置してある。
【0024】
本例に使用される植物植設パネル(12)…は、木製の長方形パネル(13)…の定植孔(14)…に植物(P)…を保持させ、根をパネル下面から延出したもので、この植物植設パネル(12)…を、図2のように互に小間隔をあけた状態で、上記左右の無端ローラチエン(3)、(3)の各リンクから延出されたアーム(15)…にパネル(12)…の各両端部をネジ止めしてある。(3’)、(3’)は、上部直線走行路(A)におけるローラチエン(3)、(3)を摺動自在に支えるレールである。
【0025】
(16)は、上記駆動スプロケット(1)、(1)の軸(17)の一端に固定された大径スプロケットで、これにギヤードモータ(18)の出力軸に固定された小径スプロケット(19)からチエン(20)を介して回転が伝達される。
【0026】
上記栽培槽(6)内の培養液(7)は、上部直線走行路(A)を走行する各パネル(12)…の植物の根が一部大気中に露出した状態で液に浸漬する程度の量でよい。栽培槽(6)の培養液(7)は、槽(6)前端部からポンプ(21)の駆動により管(22)を介して濾過機(23)に送られ、濾過液は管(24)を介して栽培槽(6)後端部内に供給される。
【0027】
上例の作用を操作と共に次に説明する。モータ(18)の始動によりローラチエン(3)、(3)を低速度で走行させれば、まず上部直線走行路(A)において各植物植設パネル(12)…が、その根を培養液(7)に浸して養分を吸収しつつ前進していく。
【0028】
栽培槽(6)を通過した各植物植設パネル(12)…は、ついで駆動スプロケット(1)、(1)の周囲をめぐって次第に根を上に葉茎部を下に向けた逆姿勢に移りつつ第1の浸漬槽(10)の水(11)中に進入し、そして水没状態で逆走行していく。ここで植物(P)…を水中に短時間浸漬して、植物に付着する害虫の一部を水中に沈下させて駆除し、残りの害虫は植物から離脱させて水面に浮遊させる。浮遊害虫は回収して処分する。
【0029】
第1の浸漬槽を通過した各植物植設パネル(12)…は、次に第2の浸漬槽(10)に進み、上記と同様に短時間浸漬を繰返し受け、それにより有効な害虫駆除処理を受けることとなる。
【0030】
第2の浸漬槽(10)を通過したパネル(12)…は、逆姿勢により植物に付着した水を切りながら従動スプロケット(2)、(2)に進み、該従動スプロケット(2)、(2)の周囲をめぐって、根を下に、葉茎部を上に向けた正姿勢に戻り、その姿勢で上部直線走行路(A)に走行して栽培槽(6)の培養液(7)に根を浸した水耕栽培に復帰する。
【0031】
第2発明の実施例
本例は、栽培槽を、多数本の浅底栽培樋(6a)…により形成したものである。
図3(イ)、(ロ)に示すように、上面を開口した横断面ほぼ逆台形の長い浅底栽培樋(6a)…多数本を走行方向に向けて互に隣接状態でほぼ水平に支持し、これら各栽培樋(6a)…の開口前端のやや下位に、各樋(6a)…前端から流下する培養液を受ける受けタンク(25a)を設置し、該受けタンク(25a)の培養液はポンプ(21a)の駆動により管(22a)を介して濾過機(23a)に送り、濾過液は管(24a)を経て各樋(6a)…の後端部に供給される。
【0032】
本例では、さらに、上記栽培樋(6a)…及び受けタンク(25a)を、温度調整槽(26a)及び受けタンク(27a)内の冷水又は温水等の熱媒体液(28a)に浸して、培養液(7a)を冷却又は加温するようにしてある。
【0033】
上記受けタンク(27a)内の媒体液(28a)は、ポンプ(29a)の駆動により管(30a)を経てヒートポンプ(31a)に送り、冷却又は加温した水は管(32a)を経て温度調整槽(26a)の後端部内に供給する。他の構造は図1、2、3と実質的に同一である。
【0034】
第3発明の実施例
本例は、植物植設パネルに代え、培養液を内部に含む通水性カゴに植物を植えた植物植設カゴ(12b)を使用するものである。
本例のカゴ本体(13b)は、図4(ロ)、(ハ)に示すように合成樹脂製ネットからなる多数の通水孔を有する円筒体の開口両端にキャップ(34b)、(34b)を着脱自在に被着したもので、内部に培養液を吸収する不織布からなる保水材(33b)を収納してあり、その周壁に開設された定植孔(14b)…に植物(Pb)…の基部を保持させると共に、根を上記保水材(33b)に浸してある。
【0035】
上記のような植物植設カゴ(12b)…の各両端キヤップ(34b)、(34b)を、上記左右のローラチエン(3b)、(3b)の各リンクから延出されたアーム(15b)…、(15b)…に、上部直線走行路(A)において植物(Pb)…を上に向けた状態で、補助金具を介してそれぞれネジ止めしてある。
【0036】
本例は、上記各例における栽培槽(6)、栽培樋(6a)に相当するものはなく、又2つの浸漬槽(10)、(10)、(10a)、(10a)に相当する槽は、浸漬兼補給用培養液(11b)をそれぞれ入れた深底の走行方向に短い浸漬兼培養液補給槽(10b)、(10b)としてあり、他の構造は図1、2と実質的に同一である。
【0037】
本例においては、植物植設カゴ(12b)…が上部直線走行路(Ab)を正姿勢で走行する過程で、各植物(Pb)…にカゴ(13b)…内の保水材(33b)…に含まれる培養液から養分を吸収させて水耕栽培を行い、ついで植物植設カゴ(12b)…が逆姿勢で第1の浸漬兼培養液補給槽(10b)ついで第2の浸漬兼培養液補給槽(10b)の各培養液(11b)、(11b)中に繰り返し浸漬されて害虫駆除処理を受けると共に、各カゴ(13b)…の通水孔を通して培養液がカゴ(13b)…内に供給されて保水材(33b)…に吸収補給される。
【0038】
第2の浸漬兼補給槽(10b)を通過した植物植設カゴ(12b)…は、余分な培養液を通水孔から外部へ流出しながら正姿勢で上部直線走行路(Ab)に戻る。
【0039】
なお、上記第1及び第2浸漬兼培養液補給槽(10b)、(10b)間、第2浸漬兼補給槽(10b)と従動スプロケット(2b)の間等、走行する植物植設カゴ(12b)…から培養液が滴下するおそれがある走行路の下に、培養液を受けて上記浸漬兼補給槽(10b)、(10b)に回収するための受け板(35b)…を配置してある。
【0040】
第4発明の実施例
本例は、丈が細長の植物の折損を防止するため上記植物植設カゴの向き調整装置を備えた例である。
【0041】
図5(イ)、(ロ)において、植物植設カゴ(12c)…の各両端キャップ(34c)(34c)…下端側面に重錘(36c)、(36c)をそれぞれ着脱自在に取りつけ、一方両キャップ(34c)(34c)…の各端面上部にヘッドつきピン(37c)(37c)、…を突設すると共に、左右ローラチエン(3c)、(3c)の各リンクから延出されたアーム(15c)(15c)、…に、ピン孔を有する吊り板(38c)(38c)…を固定し、これら吊り板(38c)(38c)、…のピン孔に、カゴ(12c)…の両端のピン(37c)(37c)、…を回転自在に係合して、カゴ(12c)…をそれぞれピン(37c)(37c)、…を中心に回転自在に吊支してある。
【0042】
上記重錘(36c)(36c)、…は、本例では、丈の細長い植物が成長したときにも正姿勢をとることができる程度の重量に調整してある。しかし、植物の成長に応じて所要の重量のものを付け替えるようにしてもよい。他の構造は図4(イ)、(ロ)、(ハ)と実質的に同一である。
【0043】
本例においては、植物植設カゴ(12c)…は上部直線走行路(Ac)において、重錘(36c)(36c)、…により正姿勢を保って前進し、ついで駆動スプロケット(1c)を回るときは、ピン(37c)、(37c)を中心に揺動して自動的に正姿勢をとりつつ第1浸漬兼補給槽(10c)の培養液(11c)面に対し細長葉茎部を垂直に近い向きで液中に進入していき、それにより細長葉茎部を折損することなく液没させる。
【0044】
培養液(11c)中を植物が水平に移動し、ついで培養液(11c)中から大気中に離脱するときは、植物の折損のおそれはない。第2浸漬兼補給槽(10c)への進入においても同様である。
【0045】
上例の植物植設カゴの向き調整装置を植物植設パネルに実施する場合は、上例に準じた構造を採ればよい。
【0046】
第4発明の他の実施例
本例は、丈の細長い植物の折損防止のための植物植設パネルの向き調整装置の他の例を備えたものである。
【0047】
図6(イ)、(ロ)、(ハ)及び図7において、植物植設パネル(12d)…の各両端面にパネル軸(37d)(37d)、…をそれぞれ突設し、一方左右ローラチエン(3d)、(3d)の各リンクに固定されたアーム(15d)(15d)、…に軸受ブロック(39d)(39d)、…をそれぞれ設置し、該軸受ブロック(39d)(39d)、…に各パネル(12d)…の軸(37d)(37d)、…を回転自在に支持してある。
【0048】
上記植物植設パネル(12d)…の左右両端の軸(37d)(37d)、…及び左右軸受ブロック(39d)(39d)、…のうちの一側の軸(37d)…及びそれを支持する一側の軸受ブロック(39d)…にはストップボール機構が装備されている。
【0049】
図6(ロ)に示すように、軸(37d)の外周面における直径方向の相対する位置、すなわち180度間隔をあけた位置に、2個の半球状ソケット(40d)、(40d)を凹設し、一方ブロック側には、上記ソケット(40d)、(40d)の回転軌道に開通する放射方向のボール孔(41d)を設け、該孔(41d)内に、ストップボール(42d)及び該ボールを常時軸(37d)がわへ弾発するスプリング(43d)を挿入し、セットネジ(44d)で閉止してある。
【0050】
さらに、上記一側の軸(37d)…にスプロケットピニオン(45d)…をそれぞれ固着すると共に、該ピニオン(45d)…とかみ合うべき多数のパーフォレーション(47d)…を有する同図(ハ)のようなラック板(46d)を、本例では、図7に示すように、駆動スプロケット(1d)を回走した後から第1浸漬槽(10d)内へやや斜め下方へ走行する一側のローラチエン(3d)と平行で、上記各ピニオン(45d)…とかみ合うべき位置に敷設してある。
【0051】
この場合、上記ラック板(46d)は、それとかみ合って走行すべきピニオン(45d)…を180度回転させるだけのパーフォレーション(47d)を設けてある。従って本例では、ラック板(46d)とかみ合う直前のピニオン(45d)を有する植物植設パネル(12d)は、図7に示すように植物の細長葉茎部をやや斜め下方へ突出しているから、上記ラック板(46d)の下半部を浸漬用水(11d)中に進入させてあり、それにより上記ピニオン(45d)がラック板(46d)とかみ合いを開始して約90度右回転したとき、そのパネル(12d)の細長葉茎部が浸漬水(11d)面に対し垂直に近い向きをとり、その向きで浸漬水(11d)中に進入することとなる。
【0052】
(48d)…はラック板(46d)を支えるアームである。
【0053】
本例では、上記植物植設パネル(12d)…が正姿勢で第1及び第2浸漬槽(10d)、(10d)を走行するから、上部走行路(Ad)での正姿勢に備えて、第2浸漬槽(10d)と従動スプロケット(2d)の間の走行路に、ラック板(46d)を同様に配置し、それにより各パネル(12d)…を該走行路で180度回転させるようにしてある。他の構造は、図1、図2と実質的に同一である。
【0054】
今、各植物植設パネル(12d)…が上部走行路(Ad)を走行しているときは、その各軸受ブロック(39d)…において、(ロ)図のようにストップボール(42d)…が一方のソケット(40d)…に係止して各パネル(12d)…を正姿勢に保持している。これらパネル(12d)…が駆動スプロケット(1d)を回走する間に葉茎部をチエン(3d)外側へ斜め下向きに変位させていき、ついで各スプロケットピニオン(45d)…がラック板(46d)とかみ合うことによりパネル(12d)…が右回転力を受け、それにより(ロ)図におけるパネル軸(37d)…がスプリング(43d)…に抗してストップボール(42d)…からソケット(40d)…を離脱させて右回転を開始する。
【0055】
パネル(12d)…が90度右回転したとき、図7のように、葉茎部を浸漬液(11d)面に対し垂直に近い向きに変えて液中に進入し、それにより葉茎部が液圧により折損することなく浸漬する。
【0056】
180度右回転したとき、上記ストップボール(42d)…が他方のソケット(40d)…に係止して、葉茎部をチエン内側で斜め上方へ起立した状態にパネル(12d)…を保持し、ついで下部走行路(Bd)を正姿勢で走行させる。
【0057】
第5発明の実施例
本例は、下部走行路において、前後両端部に浸漬槽(10e)、(10e)を配置し、両浸漬槽の間の下部直線走行路(Ce)に浅底の長い下部栽培槽(49e)を配置した例である。
【0058】
上記下部栽培槽(49e)は、前後の浸漬槽(10e)、(10e)とそれぞれ連通すると共に、これら浸漬槽とともに培養液(50e)を入れてあり、そしてポンプ(51e)により第2浸漬槽(10e)から汲み上げた培養液を管(52e)を経て上部栽培槽(6e)の後端部内に供給し、又上部栽培槽(6e)前端部下位に設けた受けタンク(53e)の培養液を管(54e)を経て第1浸漬槽(10e)内に供給している。
【0059】
上記下部栽培槽(49e)の上には、植物の育成に有効な光を照射する育成灯(55e)…を配置してある。
【0060】
本例の植物植設パネル(12e)…は図1、2と実質的に同一のものを使用している。
【0061】
本例は、レタス栽培のように細長葉茎部折損のおそれのない場合の例として、植物植設パネル(12e)…を下部走行路において正姿勢で走行させるために、図6、7と実質的に同一の向き調整装置を備える。この場合、ラック板(46e)、(46e)は、駆動スプロケット(1e)と第1浸漬槽(10e)の間の適宜位置に、及び従動スプロケット(2e)と第2浸漬槽(10e)の間の適宜位置にそれぞれは配置して各パネル(12e)…を180度づつ回転させるようにしてある。
【0062】
なお、本例の装置は、さらに、暴風時に上部栽培槽(6e)にある植物植設パネル(12e)…をチエン(3e)、(3e)の駆動により下部栽培槽(49e)に退避させる用途に使用することもできる。この場合培養液の濃度を植物の長時間浸漬にも安全な程度に調整しておけば、浸漬槽(10e)、(10e)の培養液(11e)、(11e)中への浸漬退避も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】(イ)本願第1発明の実施例の縦断側面図である。 (ロ)同上一部切欠平面図である。
【図2】パネルとローラチエンの連結部分の一部の拡大平面図である。
【図3】(イ)本願第2発明の実施例の一部省略縦断側面図である。 (ロ)(イ)図のA−A線拡大断面図である。
【図4】(イ)本願第3発明の実施例の一部の縦断側面図である。 (ロ)植物植設カゴの拡大一部省略正面図である。 (ハ)(ロ)図のB−B線拡大断面図である。
【図5】(イ)本願第4発明の実施例の一部の縦断側面図である。 (ロ)植物植設カゴの拡大一部省略正面図である。
【図6】(イ)本願第4発明の他の実施例の一部省略横断面図である。 (ロ)(イ)図のC−C線拡大断面図である。 (ハ)ラック板の一部省略拡大斜面図である。
【図7】植物植設パネルの向き調整作用を示す拡大略線図である。
【図8】本願第5発明の実施例の一部省略縦断側面図である。
【符号の説明】
【0064】
1、1c、1d、1e 駆動スプロケット
2、2b、2e 従動スプロケット
3、3a、3b、3c、3d、3e 無端ローラチエン
6、6d、6e 栽培槽
6a 栽培樋
7、7a、7d、7e、 培養液
10、10d、10e 浸漬槽
10b、10c 浸漬兼培養液補給槽
11、11d 浸漬用水
11b、11c 浸漬兼補給用培養液
11e 浸漬用培養液
12、12a、11d、11e 植物植設パネル
12b、12c 植物植設カゴ
A、Aa、Ab、Ac、Ad、Ae 上部直線走行路
B、Bb、Bc、Be、Ce 下部直線走行路
33b、33c 保水材
55e 育成灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部駆帯車及び後部駆帯車に無端駆帯を走行駆動可能に掛け回して、前方へ走行する上部走行路と、それより反転して後方へ逆送する下部走行路とを形成し、上記無端駆帯に、多数本の植物植設パネルを連結して、該植物植設パネルを上記上部走行路及び下部走行路に循環走行させ、
上記上部走行路に、正姿勢で走行する上記植物植設パネルの根を浸漬させるべき培養液を入れた浅底で走行方向に長い栽培槽を配置し、
上記下部走行路に、走行する上記植物植設パネルを液没させるべき浸漬液を入れた深底で走行方向に短い1又は複数の浸漬槽を配設した、
無端駆帯走行式の浸漬つき水耕栽培装置。
【請求項2】
上記栽培槽が、多数本の浅底栽培樋を走行方向に向けて互に平行に並設したものである、請求項1に記載の無端駆帯走行式の浸漬つき水耕栽培装置。
【請求項3】
前部駆帯車及び後部駆帯車に無端駆帯を走行駆動可能に掛け回して、前方へ走行する上部走行路と、それより反転して後方へ逆送する下部走行路とを形成し、上記無端駆帯に、多数本の植物植設カゴを連結して、該植物植設カゴを上記上部走行路及び下部走行路に循環走行させ、
上記植物植設カゴは、カゴ側壁に定植孔及び多数の通水孔を有し、内部に培養液を吸収保持しうる保水材を収納したカゴについて、植物を上記定植孔に植えつけ、その根を内部の保水材に浸したものであり、
上記下部走行路に、走行する上記植物植設カゴを液没させるべき培養液を入れた深底で走行方向に短い1又は複数の浸漬兼培養液補給槽を配置した、
無端駆帯走行式の浸漬つき水耕栽培装置。
【請求項4】
丈の細長い植物を植えた上記植物植設パネル又は植物植設カゴを上記浸漬槽又は浸漬兼培養液補給槽に走行させる際、上記植物の細長葉茎部を浸漬液面に対し少くとも垂直に近い向きで液中に進入させるための上記植物植設パネル又は植物植設カゴの向き調整装置を備えた、請求項1、2、3のいずれかに記載の無端駆帯走行式の浸漬つき水耕栽培装置。
【請求項5】
上記下部走行路に、上記1又は複数の浸漬槽のほかに、正姿勢で走行する植物植設パネルの根を浸漬させるべき培養液を入れた浅底で走行方向に長い下部栽培槽をさらに配置すると共に、該下部栽培槽における植物植設パネルに育成光を照射すべき植物育成灯を配置した、請求項1、2のいずれかに記載の無端駆帯走行式の浸漬つき水耕栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−220199(P2008−220199A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59457(P2007−59457)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(395021239)株式会社生物機能工学研究所 (21)
【Fターム(参考)】