説明

無線センサによる振動監視装置

【課題】複数の増幅器を制御することで振動加速度のデジタル信号の伝送時間を増大させること無く、高精度な振動の計測を可能にする無線センサによる振動監視装置を提供する。
【解決手段】振動加速度センサからのアナログ出力信号を増幅する増幅部の増幅倍率を切り替え可能に構成し、この増幅部からのアナログ出力信号をA/D変換して無線により振動監視部に送信し、振動監視部では、受信したデジタル信号の数値を判定し、連続して同じ値を受信した時には増幅器の増幅倍率を切り替えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の産業プラント等における電動機やブロアなどの回転機械の振動状態を無線通信により遠隔監視する振動監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機をはじめ、ブロアやファン装置など多数の回転機械が使われている産業プラントでは、設備の突発的な故障による操業停止を防止するため、主要な回転機械について振動監視が行われている。
その方法は、定期的に設備の保全マンが巡回し、振動計を持ち運び、振動レベルの傾向管理を行い異常が無いかどうかを判定している。また、大規模なプラントでは、振動の変化をオンラインで常時監視し、コンピュータ等を用い振動データを常時あるいは一定の間隔で収集し、振動レベルの時間的な変化(傾向管理)や周波数分析を行うことで振動の異常診断が行われている。近年、大規模な産業プラントにおいては長距離のケーブル布設を避けるため、無線タグを検出部に設置した異常監視システムなどもある(特許文献1、2参照)。
これらの振動監視に使用される振動センサにおいては、通常、加速度センサの信号を増幅器を用いて増幅し、計測する周波数範囲に応じ、フィルタを用いて必要な周波数領域の信号を選別し、積分回路を用いて振動速度や振動変位に変換している。また、無線タグによるものでは、加速度センサによる加速度信号を増幅したアナログ信号をA/D変換器によりデジタル信号に変換し、無線送受信機によりコンピュータを装備した受信装置に送信し、コンピュータによりそのデジタル信号で周波数分析を行い、振動速度や振動変位に変換し、振動レベルの傾向管理や振動の異常診断を行うことで、回転機の振動監視を行っている。
【特許文献1】特開2005-24441号公報
【特許文献2】特開平10-19655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、これらの振動監視装置では、加速度センサの信号を増幅するために増幅器を用いているが、振動の加速度は回転機械の回転周波数の2乗に比例するため、1つの増幅器では回転数が低い小さな加速度の領域では、増幅後の振動加速度のS/N比は悪くなる。このS/N比を改善する方法として、デジタル信号に変換するときに、A/D変換器のビット数を高くし分解能を上げることはできるが、この場合、データ数がビット数に応じて増大するため、無線で外部に送信する伝送時間が長くなる欠点があった。
また、回転数が高い時は、大きな加速度になり、増幅後の加速度のアナログ信号がA/D変換を行う時に入力電圧の制限を越え飽和するために正確な加速度の計測ができず、計測可能な加速度範囲が制限されるという欠点があった。これを解決する方法として可変ゲインアンプというものを用いて増幅の倍率を自動で制御しS/N比の改善を行っている。ところが、振動センサ部は電池駆動となる無線タグを利用した振動監視には、消費電力が大きくなることやコストが高くなり適用できなかった。
本発明は上記事情を鑑みてなされたもので、複数の増幅器を制御することで振動加速度のデジタル信号の伝送時間を増大させること無く、高精度な振動の計測を可能にする無線センサによる振動監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の無線センサによる振動監視装置は、振動加速度センサ、該振動加速度センサからのアナログ出力信号を増幅する増幅部、増幅された信号をデジタル変換するA/D変換部、A/D変換されたデジタル信号を記憶する記憶部、該記憶部に記憶されたデジタル信号を無線送信する無線送受信部、前記各部への電源供給部を備えた無線センサと、該無線センサの出力信号を受信し振動監視する振動監視部とからなる無線センサによる振動監視装置において、前記増幅部を、増幅倍率が切り替え可能に構成すると共に、前記振動監視部に、前記無線送受信部から受信したデジタル信号の数値を判定し、数値が所定回数連続した場合に前記増幅部の増幅倍率を切り替える制御信号を前記無線センサに発信する判定部を設けることを特徴とする。
また、上記の構成において、前記振動監視部は、前記デジタル信号を用い監視対象周波数範囲における周波数分析や振動速度実効値および所定の周波数における振動変位を演算し、表示および状態判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
この結果、本発明によれば、振動する部位に設置された無線センサに入力される振動加速度の大きさに応じ自動的に増幅器の倍率が切り替えられるため、小さな加速度レベルから大きな加速度レベルまでアナログ信号を飽和させることのない増幅率が得られ、さらに低いビット数のA/D変換器でも高い分解能が得られると共に、振動計測に必要なデジタル信号の伝送時間が低減できる。
また、データ伝送時間の短縮化が図れ、振動の周波数成分や振動レベルの表示や傾向管理・判定を行えるので、無線センサのコスト低減および回路の簡素化による小型化、また電池の長寿命化によるメンテナンス間隔の拡大に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の無線センサの例としてのRFIDタグ1と振動監視部7の内部構成を示すブロック図である。図において、RFIDタグ1は、圧電素子を使用した振動加速度センサ2と、その振動加速度センサ2からのアナログ出力信号を増幅する増幅部3と、増幅部3からのアナログ信号をデジタル信号に変換するためのA/D変換部4と、変換されたデジタル信号を一旦記憶するデータ記憶部5と外部からの指令に基づいて記憶されたデジタル信号を無線伝送するための無線送受信部6とバッテリーによる電源供給部7とで構成されている。
増幅部3は、振動加速度センサ2の電荷出力を電圧に変換するチャージアンプ31と、チャージアンプ31の出力信号に振動監視周波数範囲の上限付近をカットオフ周波数としたローパスフィルタ32と、その出力電圧信号を増幅する電圧増幅器33、34を備えている。
電圧増幅器33はバイパス回路を有しており、増幅器3の増幅倍率を変更する場合にはバイパス回路が有効となる。
ここで、電圧増幅器34から出力されるアナログ信号は、A/D変換部4でデジタル変換され、データ記憶部5に記憶され、振動監視部8に併設された送受信部81からの送信指令信号に基づいて無線送受信部6から伝送され、振動監視部7に取り込まれる。
【0007】
振動監視部8の判定部82は、送受信部81によって取り込んだ加速度のデジタル信号で同じ数値が2回連続している場合、増幅器が飽和していると判定し、増幅器の増幅倍率を変更させる切り替え制御信号をRFIDタグ1に発信する
この制御信号を受信したRFIDタグ1では、増幅倍率を下げるため、ローパスフィルタ32の出力信号を、電圧増幅器33をバイパスさせて電圧増幅器34に入力させる。これにより、増幅倍率が下げられるため、振動監視部8の判定部82では、送受信部81によって取り込んだ加速度のデジタル信号で同じ数値が2回連続していることがなくなる。
このように、RFIDタグ1に入力される振動加速度の大きさに応じ自動的に増幅部3の増幅倍率が切り替えられるため、小さな加速度レベルから大きな加速度レベルまでアナログ信号を飽和させることのない増幅率が得られ、さらに低いビット数のA/D変換器でも高い分解能が得られると共に、振動計測に必要なデジタル信号の伝送時間が低減できる。
また、振動解析部83では、周波数分析部81において取り込んだデジタル信号を、監視対象周波数の上限f0の4倍に設定したサンプリング周波数4foの1/2周波数までの周波数分析を行い、図2に示す分析フローのように、0〜f0Hzの振動速度の実効値を算出するとともに、その実効値の中で回転機の回転周波数成分f1の整数倍f1、2f1、3f1における振動変動を算出し、算出された実効値、振動変動を予めJIS規格などをもとに設定された判定基準値(閾値)と比較して状態判定を表示する。また、算出された実効値、振動変動をメモリに記憶し、図示しないトレンド画面にその数値グラフを表示する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のRFIDタグと振動監視装置の内部機能を示すブロック図。
【図2】本発明の振動監視装置の主要機能を示す解析フロー図。
【符号の説明】
【0009】
1・・・RFIDタグ
2・・・振動加速度センサ
3・・・増幅部
4・・・A/D変換部
5・・・データ記憶部
6・・・無線送受信部
7・・電源供給部
31・・・チャージアンプ
32・・・ローパスフィルタ
33、34・・・電圧増幅器
8・・・振動監視部
81・・・送受信部
82・・・判定部
83・・・振動解析部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動加速度センサ、該振動加速度センサからのアナログ出力信号を増幅する増幅部、増幅された信号をデジタル変換するA/D変換部、A/D変換されたデジタル信号を記憶する記憶部、該記憶部に記憶されたデジタル信号を無線送信する無線送受信部、前記各部への電源供給部を備えた無線センサと、
該無線センサの出力信号を受信し振動監視する振動監視部と
からなる無線センサによる振動監視装置において、
前記増幅部を、増幅倍率が切り替え可能に構成すると共に、
前記振動監視部に、前記無線送受信部から受信したデジタル信号の数値を判定し、数値が所定回数連続した場合に前記増幅部の増幅倍率を切り替える制御信号を前記無線センサに発信する判定部を設けることを特徴とする無線センサによる振動監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振動監視装置において、前記振動監視部は、前記デジタル信号を用い監視対象周波数範囲における周波数分析や振動速度実効値および所定の周波数における振動変位を演算し、表示および状態判定することを特徴とする無線センサ振動監視装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−115538(P2009−115538A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287233(P2007−287233)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】