説明

無線センサーネットワークシステム

【課題】多数分散配置された無線通信子機を有する無線通信システムにおいて、システムが十分に稼動しなくなったときに再起動を容易にする。
【解決手段】無線センサーネットワークシステム400では、無線信号を発信する親機100とセンサーが取り付けられる計測部300との間を、少なくとも一台の中継部200を介して無線通信する。親機100は、無線信号を発信する親機の無線端末150と、この親機の無線端末210の電源をオンオフする電源管理装置140と、親機の無線端末及び電源管理装置を制御する制御装置130とを有する。制御装置が無線センサーネットワークに何らかの異常が生じリセットが必要と判断したら、制御装置を再起動し、親機の無線端末もリセットする。その後、リセット要求を親機の無線端末から子の無線端末に送信し、子の無線端末は受信したリセット要求に基づいて自己をリセットする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線センサーを多数配置してネットワークを構築した無線センサーネットワークシステムに係り、特にマルチホップに情報を伝達するのに好適な無線センサーネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無線通信システムにおけるリセット処理の例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載の移動体通信システムにおいては、ソフトウェア要因で正常運転できなくなった無線基地局に対し、確実に遠隔からシステムリセット制御の実行を試みている。そのため、無線基地局が備えるインターフェース部に上位局から特定のMAC(Media Access Control)アドレスパターンが送信されたとき、自局に対するリセット制御信号と判断し、制御部にこのデータを送る。制御部では、送られたデータに基づきリセット処理している。
【0003】
監視制御装置が有するプロセッサに障害が発生したときの処理方法の例が、特許文献2に記載されている。この公報に記載のシステムでは、制御盤のプロセッサを監視盤が監視しており、監視盤のウォッチドッグタイマがタイムアウトを検出すると、要因レジスタがプロセッサに割り込み信号を送信する。それとともに、タイムアウトフラグがタイムアウト信号でフラグをセットする。このフラグは正常動作になるとクリアされる。タイムアウトフラグのセット状態が所定時間継続すると、リセット回路がプロセッサをリセットして再立上げする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−134839号公報
【特許文献2】特開2004−86520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の無線通信システムにおいては、インターネット等の公衆回線を利用したときに暗号化処理の復号化ができなくなる異常が上位プロトコル層で生じることに着目し、暗号化されない物理レイヤのMACレイヤを利用して、リセット処理を実行している。しかしながら、この特許文献1に記載のシステムは公衆回線を利用することが前提であり、多数の中継局を配置してマルチホップに情報を送受信する、公衆回線を必要としないシステムに関しては考慮されていない。つまりマルチホップに情報を送受信するシステムにおいて、異常現象発生時にいかにシステムを効率的に再起動するかについては、開示がない。
【0006】
また、上記特許文献2に記載の監視システムにおいては、無線通信システムにおいて、機器の稼動状態をウォッチドッグタイマ等で監視する際に、頻繁な停止/再起動を回避するために、プロセッサの異常の有無を監視している。この公報に記載のシステムにおいては、プロセッサの再立ち上げ前に自己復旧の可能性を探ることにより保守要員による復旧の有無を判断するので、遠隔地であっても保守が容易になる。しかしながら、この無線通信システムはマルチホップに情報を送受信するシステムではないので、リセット時の順番に起因する不具合の発生については考慮されていない。
【0007】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は多数分散配置された無線通信子機を有する無線通信システムにおいて、何らかの異常が発生してシステムが十分に稼動しないときに再起動を容易にすることにある。
【0008】
本発明の他の目的は、マルチホップに通信する無線通信システムにおいて、なんらかの異常が発生してシステムが十分に起動しないときに容易に再起動することにある。本発明のさらに他の目的は、親機側も子機側もほぼ同一の通信装置を有することにより機器の標準化を図りながら、何らかの原因でシステムが十分に稼動しないときに、容易に修復可能なマルチホップに通信する無線通信システムを構築することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の特徴は、無線信号を発信する親機とセンサーが取り付けられる計測部との間を、少なくとも一台の中継部を介して無線通信する無線センサーネットワークシステムにおいて、親機は、無線信号を発信する親機の無線端末と、親機の無線端末の電源をオンオフする電源管理装置と、親機の無線端末及び電源管理装置を制御する制御装置とを有し、制御装置は親機の異常時に自己をリセットした後に電源監視装置から親機の無線端末をリセットすることにある。
【0010】
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、無線信号を発信する親機とセンサーが取り付けられる計測部との間を、少なくとも一台の中継部を介して無線通信する無線センサーネットワークシステムにおいて、親機は、無線信号を発信する親機の無線端末と、親機の無線端末の電源をオンオフする電源管理装置と、親機の無線端末及び電源管理装置を制御する制御装置とを有し、計測部及び中継部はそれぞれ子の無線端末を有し、親機の制御装置が、子の無線端末に異常が生じリセットが必要と判断したときには、自身からの中継段数が小さい子の無線端末の順にリセット要求を親機の無線端末が送信し、子の無線端末は受信したリセット要求に基づいて自己をリセットすることにある。
【0011】
そしてこの特徴において、親機が制御装置を再起動して親機の無線端末がリセットされた後に、子の無線端末の全てが順番にリセットされるよう親機がリセット要求を送信するのがよい。
【0012】
また上記いずれかの特徴において、親機の無線端末及び子の無線端末は、自己に隣り合う無線端末のアドレスを、記憶する手段を有するのがよく、制御装置は、親機の無線端末から計測部が有する子の無線端末および中継部が有する無線端末までの経路を記憶する記憶部を有することが好ましい。また、計測部と中継部とをそれぞれ複数部有し、計測部に取り付けられるセンサーが検出した検出データを中継部を経由してマルチホップに親機に伝送するのが望ましく、親機の無線端末と子の無線端末間、及び子の無線端末間の通信にIEEE802.15.4で規格された通信を用い、それぞれ間の距離を1km以下とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、親機に含まれる制御手段が、親機自身の不具合や子機に起因する通信途絶時などの、無線センサーネットワークに何らかの異常が検知した場合に、子機と親機のリセット順を指定してリセットさせるので、リセット不良による再起動不良を回避できる。また、親機も子機もほぼ同一仕様の通信装置を有するので、機器の標準化および互換性が増し容易に再立ち上げ指令が可能になるとともに、マルチホップに通信する無線通信システムの復旧が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る無線センサーネットワークシステムの模式図である。ブロック図である。
【図2】図1に示した無線センサーネットワークシステムが備える無線端末の一実施例のブロック図である。
【図3】図1に示した無線センサーネットワークシステムが備える監視部の一実施例のブロック図である。
【図4】図1に示した無線センサーネットワークシステムに、中継部または計測部として無線端末を使用するときの無線端末の各種形態を示す図である。
【図5】本発明に係る無線センサーネットワークシステムのリセット動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明に係る無線センサーネットワークシステムの一実施例を、図面を用いて説明する。図1は、無線センサーネットワークシステム400の模式図である。本システムでは、多数分散配置した基本仕様が同一の無線端末210、310を有する中継部200および計測部300を用いて、マルチホップに通信することにより外部機器320の状態を監視している。
【0016】
ここで、監視対象は、たとえば生産工場に設けた電力使用量である。そのため、外部機器320として電力計を使用している。親機である監視部100は、本システム400の動作を制御する汎用PC(Personal Computer)130に、電源管理装置140を介して子機200、300が備える無線端末210、310と基本仕様が同一の無線端末150が接続されている。さらに、汎用PC130には、監視結果を表示したり制御指令を表示するモニター120および図示しない入力手段としてのキーボード等が付設されている。
【0017】
子機である計測部300は、各工場建屋に取り付けられており実質的に分散配置されている。各計測部300から所定範囲内、本実施例では1kmの範囲内には、これも子機である中継部200が配置されている。この中継部200は、計測部300または他の中継部200や親機100の無線端末150から、1kmの範囲内となるように多数配置されている。
【0018】
各計測部300と中継部200間、および中継部200、200相互、中継部200と親機100間は、無線通信190によりデータおよび指令が伝送されている。そして、各計測部300が計測したデータが、マルチホップに通信することにより確実に親機100の無線端末150に伝送されるよう、相互の位置は決定される。
【0019】
次に、このように配置した無線センサーネットワークシステムに用いる監視装置100および無線端末150、210、310の詳細を図2ないし図4を用いて説明する。図2に、無線端末150、210、310の一例を、ブロック図で示す。図2では、代表的に親機100が備える無線端末150を示している。
【0020】
第1の監視装置100が備える無線端末150は、子機200、300が備える無線端末210、310とほぼ同一の外形および構成となっている。すなわち、無線端末150では、高さ約5.2cm*幅約7.2cm*奥行約3.3cmの直方体のケース内に、各種回路が内蔵されており、このケースの両側面には、入力端子20および外部機器接続端子50が取り付けられている。
【0021】
親機(第1の監視部)100の無線端末150では、上述した電源管理装置140からDC電力が供給されるので、入力端子20はDC電源入力端子になっている。子機が配設されるところでは、DC電源が近くにないのが一般的なので、DC電源入力端子の代わりに、ACアダプタ21が取り付けられている(図4参照)。
【0022】
外部機器接続端子50には、各種センサー情報や第1の監視部100からの指令情報を入出力するためのコネクターが接続される。この外部入力端子50には、デジタル通信のみの場合およびアナログ通信のみの場合、デジタル通信とアナログ通信が混在する場合のいずれにも対応できるコネクターが選択されている。
【0023】
外部機器接続端子50からデジタル信号が入力される場合には、シリアル通信部51を経てCPU40に送られる。同様に、パルス信号もパルスカウンター52で計数されて、CPU40に送られる。シリアル通信部51では、RS232C、RS485、UART、USB、12C、SPI、ETHERNET(登録商標)形式の信号を、処理可能である。一方各種センサー信号のようにアナログ信号が入力された場合には、A/D変換器(アナログ/デジタル変換器)53でデジタル変換された後に、CPU40に送られる。CPU40に送られたデータは必要な処理を施した後、CPU40に付属する記憶部45に記憶される。
【0024】
無線端末150、210、310のCPU40で一次処理されたデータは、無線部30に送られる。無線部30では、IEEE802.15.4の規格に準拠した無線送信可能な信号を発生する。発生された信号は、親機100の要求に応じて、無線部30に接続した棒状のアンテナ31から送信される。なお、入力端子20、21から入力されたDC電力は、この無線端末150、210、300内に設けられた各部30、40、51〜53の要求仕様に応じた電圧に電源回路22で変換されて、各部30、40、51〜53に供給される。
【0025】
図3に、監視装置の一例を示す。無線センサーネットワークシステムが通常備える第1の監視装置100の他に、第2の監視装置170を有する場合を示している。上述した無線端子150の電力入力端子20には、電源管理装置140がコネクター接続されて、電源管理装置140が有する電力発生回路142から、DC電力145が供給144される。
【0026】
電源管理装置140は、詳細を後述するリセット回路141と上述した電力発生回路142とを有している。リセット回路141は、汎用PC130の汎用COMポート131からのリセット要求信号137に従ってリセット信号143を発生し、無線端末150の再起動を制御する。一方、無線端末150の外部機器接続端子50は、汎用PC130の汎用COMポート135とコネクター接続されている。
【0027】
汎用PC130には、各種プログラムがインストールされている。すなわち、電源管理装置の動作を制御する電源管理プログラム132、子機300が取得した情報を汎用COMポート135経由で取得するためのデータ計測プログラム134、汎用PC130に付設されるモニター120にデータ計測プログラム134の演算結果を表示するモニター表示プログラム133、がインストールされている。また、データ計測プログラム134を有効に活用するために、過去の実績データ等が格納されたデータベース(DB)136を有しており、取得したデータをデータベース136に格納可能にするとともに、計測結果の判断に使用される。
【0028】
第2の監視部170は、第2の汎用PC163を有しており、第1の監視部100の汎用PC130とLAN162等で接続されている。第2の監視部は、主として取得データをモニターするためのものであり、電力消費量の計測の場合には、主たる部署に表示することで消費量の意識を喚起するのに用いる。つまり、汎用PC170には、データベースアクセスプログラム164やモニター表示プログラム165がインストールされており、データベース136にアクセスすることにより、過去のデータとの比較結果をモニターに表示可能となり、無駄なエネルギー消費を省く意識を醸成する。
【0029】
子機200、300としての無線端末210、310の働きを、図4を用いて説明する。上述したように、本発明に係る無線端末は汎用性を高めるために、計測部に使用するもの310も中継部に使用するもの210も同一仕様で同一形状である。つまり、同一機種を中継部200と計測部300に使用し、中継部200として使用する場合には、外部機器接続端子50に何も接続せず、計測部300として使用する場合には、シーケンサー60を介して、または直接外部機器320を外部機器接続端子50にコネクター接続する。
図4ではシーケンサー60を介して外部機器320を接続する場合を示しているが、シーケンサー60は必ずしも必要ではない。
【0030】
図4に示したシーケンサー60を介する場合には、シーケンサー60が始めに外部機器320が取得した情報を自身の記録部に記録する。ここで、外部機器320は、たとえば分電盤72に設置した電力計や設備71に取り付けた各種アナログセンサー、デジタル機器である。シーケンサー60を使用すれば、1つの外部機器320が多種類の情報を取得する場合や所定時間間隔で多数の情報を取得する場合に、好都合である。シーケンサー60と無線端末310間で、デジタル通信(シリアル通信、パルス伝送)61が実行される。
【0031】
シーケンサー60を介さない場合には、デジタル通信61のほかにアナログ出力62も可能である。このシーケンサー60を介さない例として、電力計測の例を以下に説明する。電力計測においては、電動機や各種機器ごとに分電盤72が設けられ、分電盤72に電力消費量を示す電力計320が設置されている。そして、電力計320と無線端末310の外部機器接続端子50がコネクター接続される。これにより、無線端末310からは計測要求コマンドが電力計320にシリアル通信で送信され、電力計320から消費電力データが無線端末310にシリアル通信で送信される。なお、電力計320の取得データは、パルス出力であってもよい。
【0032】
シーケンサー60を介さない他の例としては、力、温湿度、振動、騒音、回転速度、歪み、変位等の物理量をアナログ出力センサー320で取得する場合が代表的である。電動機や各種運転機器である設備71には、物理量を計測するためにアナログセンサー320が取り付けられている。これらのアナログセンサー320が取得したデータは、アナログデータ(電圧、電流)として、無線端末310の外部機器接続端子50にコネクター接続された配線を介して、無線端末310のA/D変換器53に送られる。この場合、アナログ出力をそのまま無線端末に入力できるので、最も汎用性が高い計測が可能になる。
【0033】
シーケンサーを介さない他の例として、上記物理量を外部機器320側でデジタル変換する場合が代表として挙げられる。デジタル機器または汎用IOユニット320が設備71に取り付けられる。すでにデジタル化されているので、無線端末310は、外部機器接続端子50にコネクター接続された外部機器320が取得した情報を、シリアル通信で取得できる。また、無線端末310からデジタル機器320へ計測要求コマンド等の各種指令を送信することも可能となる。
【0034】
以上は、無線端末310を計測部300に用いる各種例であるが、無線端末210を中継部300に用いれば、マルチホップ(網目状)のネットワーク形成が可能になる。その例として、IEEE802.15.4で規格された通信を用いたネットワークシステムに用いる場合を説明する。互いの距離が1kmを超えない範囲で、多数の中継部200が配置されている。
【0035】
ところで、各無線端末150、210、310は、通信可能な隣り合う無線端末150、210、310の情報を記憶部45に記憶している。記憶する情報は、各無線端末150、210、310ごとに割り当てられた無線端末識別アドレス、他の無線端末150、210、310から送信された信号の電波強度および通信品質等である。中継部200は、他の無線端末150、210、310から送信された信号を送信する際に、その信号がどの無線端末150、210、310から送信されたデータであるか、その信号の原初はどの無線端末150、210、310であるか、その原初の無線端末150、210、310から何段の無線端末210、210、…を中継して自己の無線端末210に届いたか、自身に届くまでに中継した全ての無線端末150、210、310はどのアドレスのものであるか、の情報をパケットに含ませて、次の無線端末150、210、310に送信する。
【0036】
次にこのように構成した無線センサーネットワークシステムのリセット動作について、説明する。初めに、親機側のリセット動作について説明する。親機である第1の監視部100は自己リセット機能を有している。汎用PC130に搭載した各プログラムが正常に動作しなくなった場合には、汎用PC130は自己リセット機能により、プログラムを再起動する。その際電源管理プログラム132の実行により、リセット要求信号137が電源管理装置140に送信される。電源管理装置140に送られたリセット要求信号137により、電源管理装置140内のリセット回路141は電源発生回路142にリセット信号143を送信する。リセット信号143を受信して、電源発生回路142は電力発生を一時的に停止し、その後再発生する。これにより、無線端末150に供給されているDC電力145が一時的に停止され、無線端末150内のデータがクリアされ、リセットされる。
【0037】
子機側に不具合があった場合のリセット方法を、以下に説明する。各子機の無線端末210、310には、アドレスが設定されている。そして、親機100が備える汎用PC130には、本無線センサーネットワークシステム400の各計測部300および各中継部200から親機の無線端末150までの経路が、子の無線端末210、310のアドレスを用いて記憶されており、親機の無線端末150及び子の無線端末210、310のリセット動作ではこのデータは消失しない。
【0038】
一方、親機の無線端末150および各子機の無線端末210、310には、隣り合う無線端末150、210、310のアドレス情報が記憶される。ただしこのアドレス情報は、無線端末150、210、310をリセットすることにより失われる。そこで、各無線端末150、210、310が再起動したときに、各無線端末150、210、310は隣り合う無線端末からの信号を受信して、隣り合う無線端末150、210、310の存在を認識し、自己の記憶部45にそのアドレスを記憶する。
【0039】
このように設定したシステムにおいて、初めに、親機100から端末の計測部300までの経路および中継部200までの径路が、親機100に設定される。この経路は、システム起動時に、親機100から各子の無線端末210、310にPingコマンド(対象無線端末の接続および到達性を確認するためのコマンド)を送信し、このPingコマンドの送信対象端末から返信されるパケット内の情報に基づいて設定される。ここで、パケット内の情報には、上述のように中継段数や中継した子の無線端末210、310のアドレスが含まれる。
【0040】
次いで、システム400を起動するとこの経路が確認される(ステップS1)。計測動作に入ると、親機100から計測部300へ中継部200を経由してマルチホップにデータ送信指令が送信される(ステップS2)。
【0041】
計測部300では、センサーを用いて予め計測した、または親機100からの送信指令をトリガーとして計測したデータを隣り合う中継部200に送信する。以下、この中継部200から中継部200への伝送を繰り返し、最終的に親機100の無線端末150へデータが送信される(ステップS3)。
【0042】
データ送信が成功した場合(ステップS4)には、予め定めた時間が過ぎる(ステップS5)まで、計測部300は休止状態に入り、計測部300及び中継部200での電力消費の低減を図っている。なお無線端末210、310は、休止状態でも自己のクロックを作動させ続けることにより、親機100からの次の指令に対応できるようになっている。計測を終了する場合には、割り込み処理(ステップS9)で終了する。
【0043】
無線センサーネットワークシステム400に何らかの異常が検知されると、汎用PC130は自己を再起動する。それとともに、電源管理装置140にリセット要求信号137を送信する。電源管理装置140は無線端末150への供給電力を一時的に遮断し、無線端末150がリセット処理される(ステップS6)。
【0044】
この一連のリセット処理により、汎用COMポート135と無線端末150との接続が正常化される。すなわち、汎用PC130の再起動後に、親機100が備える無線端末150をリセットするので、無線端末150を汎用PC135の所定の汎用COM131ポートに割りつかせ、正常に稼動させることができる。
【0045】
親機100が正常にリセットされると、その後、親機100は、予め設定されていた経路情報を元に、子機200、300をリセットする。その際、初めに、親機100の無線端末150からこの無線端末150に隣り合う中継部200、すなわち親機100から最も中継段数の小さい中継部200の無線端末210に、リセット要求コマンドが送信される(ステップS7)。
【0046】
親機100からのリセット要求コマンドを受信した中継部200は、自己の無線端末210が備えるCPUをリセット処理する。具体的には、子の無線端末210がリセット要求コマンドを受信すると、CPU40がソフトウェアを用いてリセット命令を出すことで、自己をリセットする。自己をリセットした後、中継部200は自己に隣り合う無線端末150、210、310のアドレスを記憶部45に記憶する。この各無線端末150、210、310に隣り合うアドレスの記憶は、リセット処理ごとに更新されるので、マルチホップな送信経路が確保される。最後に、中継部200は、親機100へ自身のリセットが正常に終了したことを通知する。
親機100は、中継部200からのリセット正常終了通知を受信すると、その他に存在する子の無線端末210、310の中で、次に中継段数の小さい中継部200、または、計測部300にリセット要求コマンドを送信する。その後は、各中継部200、または、計測部300にて、前記動作が繰り返される(ステップS8)。ここで、直前にリセットした無線端末210と同じ中継段数の無線端末210、310が他にある場合、それらをリセットした後、次に中継段数の小さい無線端末210、310をリセットするものとする。
【0047】
上記実施例では、計測タイミング及び送信タイミングを汎用PCで制御しているが、無線端末310が備えるクロック基準で計測や送信するようにしてもよい。その場合には、データ転送ロスの恐れを低減できる。また、子機の無線端末をAC入力としているが、無線端末が電池を有するようにしてもよい。さらに、DC入力であってもよい。これらの場合には子機の設置自由度が増す。
【符号の説明】
【0048】
20…入力端子(DC用)、21…入力アダプタ(AC用)、22…電源回路、30…無線部、31…アンテナ、40…CPU、45…記憶部、50…外部機器接続端子、51…シリアル通信部、52…パルスカウンター、53…A/D変換器、60…シーケンサー、61…デジタル通信(シリアル通信、パルス伝送)、62…アナログ出力、71…設備、72…分電盤、100…親機(第1の監視部)、120…モニター、121…表示データ、130…汎用PC(制御装置)、131…汎用COMポート、132…電源管理プログラム、133…モニター表示プログラム、134…データ計測プログラム、135…汎用COMポート、136…データベース(DB)、140…電源管理装置、141…リセット回路、142…電力発生回路、143…リセット信号、144…電力供給、145…DC電力、150…無線端末、151…受信データ(シリアル通信)、162…LAN、163…汎用PC、164…データベースアクセスプログラム、165…モニター表示プログラム、170…第2の監視部、180…モニター、181…表示データ、190…無線通信、200…子機(中継装置)、210…子(機)の無線端末、300…子機(計測装置)、310…無線端末、320…外部機器、400…無線センサーネットワークシステム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を発信する親機とセンサーが取り付けられる計測部との間を、少なくとも一台の中継部を介して無線通信する無線センサーネットワークシステムにおいて、
前記親機は、無線信号を発信する親機の無線端末と、この親機の無線端末の電源をオンオフする電源管理装置と、前記親機の無線端末及び電源管理装置を制御する制御装置とを有し、この制御装置は親機の異常時に自己をリセットした後に前記電源監視装置から前記親機の無線端末をリセットすることを特徴とする無線センサーネットワークシステム。
【請求項2】
無線信号を発信する親機とセンサーが取り付けられる計測部との間を、少なくとも一台の中継部を介して無線通信する無線センサーネットワークシステムにおいて、
前記親機は、無線信号を発信する親機の無線端末と、この親機の無線端末の電源をオンオフする電源管理装置と、前記親機の無線端末及び電源管理装置を制御する制御装置とを有し、前記計測部及び中継部はそれぞれ子の無線端末を有し、前記親機の制御装置が子の無線端末に異常が生じリセットが必要と判断したときには、自身からの中継段数が小さい子の無線端末の順にリセット要求を前記親機の無線端末が送信し、前記子の無線端末は受信したリセット要求に基づいて自己をリセットすることを特徴とする無線センサーネットワークシステム。
【請求項3】
前記親機は前記制御装置を再起動した後に、前記親機の無線端末をリセットするよう前記電源管理装置にリセット要求を送信することを特徴とする請求項2に記載の無線センサーネットワークシステム。
【請求項4】
前記親機は、前記制御装置が再起動し親機の無線端末がリセットされた後に、前記子の無線端末全てが順番にリセットされるようリセット要求を送信することを特徴とする請求項3に記載の無線センサーネットワークシステム。
【請求項5】
前記親機の無線端末及び子の無線端末は、自己に隣り合う無線端末のアドレスを記憶する手段を有することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1個に記載の無線センサーネットワークシステム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記親機の無線端末から前記計測部が有する子の無線端末および前記中継部が有する子の無線端末までの経路を記憶する記憶部を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の無線センサーネットワークシステム。
【請求項7】
前記計測部と前記中継部とをそれぞれ複数部有し、前記計測部に取り付けたセンサーが検出した検出データを前記中継部を経由してマルチホップに前記親機に伝送することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の無線センサーネットワークシステム。
【請求項8】
前記親機の無線端末と子の無線端末間、及び子の無線端末同士間の通信にIEEE802.15.4で規格された通信を用い、それぞれ間の距離を1km以下としたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の無線センサーネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−211554(P2011−211554A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78154(P2010−78154)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】