説明

無線ネットワークの接続方法及び装置

【課題】複数の基地局に対しデータ送信の複製を行う必要がなくソフト・ハンドオフの実施を可能とする。
【解決手段】無線端末装置が複数の基地局との接続を同時に維持することを可能にする方法と装置を提供する。各無線端末装置302は、複数の別々のタイミング・ループおよび/または別の制御ループを個々の基地局接続毎にサポートすることが可能であり、それによって接続が独立の、かつ、同時の処理を行うことが可能となる。異なる制御信号および/またはデータが、基地局304、306と確立された個々の接続で送信される。このようにして基地局304、306によって、非同期データ送信を可能にする異なるデータの受信が行われる。基地局304、306により受信されたデータは、該データを有線ネットワークへ出力する前に該受信データの合成を行う必要がなく、このデータを有線非同期ネットワークへ出力することができる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、“無線端末装置にネットワーク接続を設ける方法”という名称の米国仮出願番号第60/312,126号(2001年8月14日出願)の出願日の利益を請求するものであり、上記仮出願は参照により明白に援用されている。
【技術分野】
【0002】
本発明は、通信システムを対象とするものであり、さらに詳細には、モバイル・ノード (mobile node)などの無線端末装置と複数の基地局間での通信をサポートする方法及び装置を対象とするものである。
【背景技術】
【0003】
無線通信システムでは、モバイル・ノードなどの無線端末装置は基地局を介してインターネットなどの有線ネットワークと結合される。基地局は、セルと呼ばれるカバーエリア内のネットワーク接続を提供する。基地局から無線端末装置への通信路は“ダウンリンク”と呼ばれ、一方、無線端末装置から基地局への通信路は“アップリンク”と呼ばれる。
【0004】
無線端末装置は、ネットワーク接続を行うために最低でも1つの基地局との交信を行う。しかし、一般に、セルからセルへ移動する端末装置の可搬性をサポートする際の様々なパフォーマンス上の配慮のために、無線端末装置は、複数の基地局との無線リンク接続を同時に維持するように装備されている場合が多い。例えば、符号分割多元接続(CDMA)システムでは、無線端末装置を“ソフト・ハンドオフ”状態にすることができる。
【0005】
図1は周知のCMDA通信ネットワーク100を示すものであるが、この通信ネットワークには、無線端末装置102、基地局1(104)、基地局2(106)、移動体交換センタ108及び有線ネットワーク110が設けられている。ネットワーク・エレメント間での種々の通信が矢印により表されている。図1にアップリンク通信が示され、図2にダウンリンク通信が示されている。
【0006】
直接拡散CDMA技術においてソフト・ハンドオフを行う現行の方法では、複数のリンク接続の両端にわたって、分割された単一のデータ情報フローが異なる基地局から接続無線端末装置へ個々に転送され、次いで別のデータ・フローが逆に端末装置から複数の基地局へ転送される。この結果生じる特徴は、基地局と端末装置間でのこれら接続のタイトな時間的同期を含み、この特徴によって無線アクセス・ネットワーク・インフラストラクチャで利用できる技術上の選択肢が制約を受けることになる。
【0007】
図1を参照すると、ソフト・ハンドオフ状態で、無線端末装置102は、アップリンクを用いて送信すべき情報を表す信号112、114を送信する。本例では、無線端末装置102は1以上の基地局104、106のカバーエリア内に位置する。したがって、1以上の基地局104、106は同じアップリンク信号112、114を同時に聞くことになる。
【0008】
次いで、無線端末装置102からの信号112、114の受信に応答して、基地局104、106は受信信号を処理する。矢印116と118により表されているように、上記処理結果は、移動体交換センタ108と呼ばれることが多い中央ユニットへ送信され、この移動体交換センタ108は、各基地局104、106からの結果を組み合わせて送信情報を取得する。次いで、移動体交換センタ108はインターネットなどの有線ネットワーク110へ情報を送信する。これは矢印120により表されている。
【0009】
同様に、ダウンリンクに関しても、図2に示すように、移動体交換センタ108は、矢印220により表されるように、無線端末装置102用の有線ネットワーク110から情報を受信する。次いで、移動体交換センタ108は情報の複製を行い、1以上の基地局104、106へ情報を送信する。これは矢印216、218により表されている。基地局104、106は、情報を表す受信信号を無線端末装置102へ同時に送信する。これは矢印212と214を用いて示されている。無線端末装置102は基地局104、106からの受信信号を合成して、有線ネットワーク110から情報を取得する。
【0010】
ソフト・ハンドオフ状態を持つ1つの利点としてマクロ・ダイバーシティの達成がある。さらに、ハンドオフ中、ソフト・ハンドオフ状態によってデータ消失並びに待ち時間も減少する。すなわち無線端末装置が1つの基地局から別の基地局へ切り替えられると、複数の基地局によりデータの送信が行われる。
【0011】
無線端末装置が第1の基地局から受信したデータは、第2の無線端末装置から受信したデータと組み合わせることが可能であり、例えば、第2の基地局のカバーエリアの中へ入ったために第1の基地局との通信が消失した場合でさえ、上記第2の無線端末装置が同じ信号を送信して、完全なメッセージや1組のデータを形成することができる。
【0012】
ソフト・ハンドオフは、その複雑さ、並びに、アップリンク時に合成用ユニットとして、また、ダウンリンク時には複製用ユニットとして移動体交換センタ108を利用するタイミング要件と関連する問題点をかかえている。この特徴に起因してネットワークの動作は制約を受けることになるが、その理由として、上記特徴が、移動体交換センタ108と、複数の基地局104、106と関連して非常に低い遅延ジッタを伴って基地局104、106間を往き来するデータ情報を配信することが可能な同期ネットワーク・トランスポート技術を必要とすることが挙げられる。すなわち、このようなシステムでは、複数の基地局104、106と移動体交換センタ108間を往来する情報の緊密な時間的同期処理を行う必要がある。この同期ネットワーク・トランスポートの特徴は、非同期ネットワーク化トランスポート技術を一般に利用するパケット交換型データ・ネットワークの動作とは際だった対比をなすものである。
【0013】
移動通信システムでは、複数のリンク接続を同時に維持することは切れ目のないハンドオフの保証にとって重要なものである。しかし、無線アクセス・ネットワーク内でデータ・ネットワーク技術のさらに非同期の形態を利用する抗し難い経済的利点が存在する。したがって、無線接続を可能にする改善方法及び装置に対する要望がある。非同期のパケット交換型データ・ネットワークと整合するように基地局が有線ネットワークと交信しながら、少なくとも上記改善方法及び装置のいくつかによって、無線端末装置と複数基地局との同時接続を行うことが可能となる。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、無線端末装置が複数の基地局との接続の同時維持を可能にする方法と装置を対象とするものである。
【0015】
本願で説明する発明は、各基地局から端末装置への各リンクとの接続時に、及び、端末装置から基地局への戻りの各リンクとの接続時に、非同期ネットワークでありながら異なるデータ情報フローおよび/または制御情報フローの送信を行うことが可能な、無線端末装置と複数基地局との同時接続を可能にする発明である。このようにして、無線端末装置と複数の基地局との間で同時でありながら異なる情報フローを行うことが可能となる。端末装置と交信を行う基地局のリンク接続間における時間的同期要件は存在しない。このため、無線アクセス・ネットワーク・インフラストラクチャにおいて、利用可能なより多くの技術上の選択肢が存在する。
【0016】
本発明によれば、複数の同時接続が独立に処理される。接続は、個々にアップリンク、ダウンリンクまたはアップリンクとダウンリンクの双方を含むものであってもよい。物理層では、別々の同期ループが個々に同調され、複数の接続の各接続用としてこの同期ループが利用される。複数基地局との同時通信をサポートする上で利用される独立したタイミング同期ループの同時処理を容易にするため、複数のアップリンクと複数のダウンリンク受信装置及びタイミング同期回路を個々の無線端末装置内に設けるようにしてもよい。
【0017】
上位の通信層では、別個の接続により運ばれるタイミング制御信号と電力制御信号などの制御情報及びデータ情報は異なる情報であってもよく、また、一般にこれらの情報は異なっている。
【0018】
無線端末装置により確立される接続に関して、無線端末装置と基地局には、1組のダウンリンクおよび/またはアップリンクをアクティブ状態にし、残りのリンクをアクティブでない状態に保つように選択することができる。種々の実施形態では、アクティブなダウンリンクやアップリンクに対して、無線端末装置が、データ情報フローおよび/または制御情報フローを当該リンクで運ぶことを選択することができる。
【0019】
上記無線端末装置は複数対の送信回路と受信回路とを装備し、個々の送受信装置の対が特別の接続専用装置として利用される。好ましくは、複数の送受信装置の対が送受信回路などの同じアナログ装置用コンポーネントを共有することが望ましい。例示の実施形態では、異なる接続が個々に同期処理を受け、デジタル・ドメイン内で分離される。
【0020】
本発明に基づいて実現されるメーク・ビフォア・ブレーク・ハンドオフ法 (make-before-break handoff method) は、現在の基地局との接続が落ちる前に、現在の基地局とハンドオフ候補基地局の双方との同時でかつ独立した複数の接続を維持する無線端末装置を必要とするものである。現在の基地局とハンドオフ候補基地局の双方との接続処理は独立に行われる。メーク・ビフォア・ブレーク・ハンドオフが行われている間、複数接続のダウンリンクとアップリンクはアクティブな状態のままにしておいてもよく、また、すべてのリンクが制御フローとデータ・フローの双方を運ぶようにしてもよい。しかしシステム上の制約および/または端末装置上の制約のために、前述のハンドオフの動作が限定される結果、複数接続のほとんどあるいはすべてのダウンリンクがアクティブな状態となり、制御フローとデータ・フローの双方が運ばれるようになる場合もある。1つの例示実施形態では、複数のアップリンクがアクティブな状態で、これらのアップリンクによって所定の装置の制御フローが同時に運ばれている間、単一のアップリンクを用いて、任意の所定時刻に装置のデータ・フローの通信が行われる。
【0021】
本発明の方法及び装置の多くの追加的特徴、利点及び詳細について以下詳細な説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、ソフト・ハンドオフ中などにアップリンク信号の送受信が行われる周知の通信システムを示す。
【図2】図2は、ソフト・ハンドオフ中などにダウンリンク信号の送受信が行われる周知の通信システムを示す。
【図3】図3は、本発明の例示実施形態に基づいて実現される通信システムを示す。
【図4】図4は、本発明に基づく複数のネットワーク接続を維持する実施形態を示す。
【図5】図5は、本発明に基づく複数のネットワーク接続を維持する実施形態を示す。
【図6】図6は、本発明に基づく複数のネットワーク接続を維持する実施形態を示す。
【図7】図7は、複数の別々の同期ループの存在を示し、任意の所定時刻に無線端末装置がリアルタイムで交信を行うことができる個々の相手先基地局について1つのループが用いられる。
【図8】図8は、本発明に基づいて実現される例示の無線端末装置をさらに詳細に示すブロック図である。
【図9】図9は、図8の無線端末装置の送信回路として使用可能な送信回路を示す。
【図10】図10は、図8の無線端末装置の受信回路として使用可能な受信回路を示す。
【図11】図11は、信号の送受信と、本発明に基づいて実行されるメーク・ビフォア・ブレーク処理の一部として確立される接続とを示す。
【図12】図12は、信号の送受信と、本発明に基づいて実行されるメーク・ビフォア・ブレーク処理の一部として確立される接続とを示す。
【図13】図13は、信号の送受信と、本発明に基づいて実行されるメーク・ビフォア・ブレーク処理の一部として確立される接続とを示す。
【図14】図14は、信号の送受信と、本発明に基づいて実行されるメーク・ビフォア・ブレーク処理の一部として確立される接続とを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図3は本発明に基づいて実現される通信システム300を示す。通信システム300は、無線端末装置302、基地局1(304)、基地局2(306)及び有線ネットワーク308を備える。システム300のエレメント間での通信が矢印により表されている。以下この通信について説明する。
【0024】
無線端末装置302は、並行して、例えば同時に、複数の基地局304、306との複数無線接続を維持するように装備されている。無線接続は基地局1(304)などの特定の基地局と無線端末装置302とをリンクし、この無線接続を用いて無線端末装置302と基地局1(304)間のデータ、ネットワーク・レベル及びより高いリンクおよび/または制御リンクとMAC層及びデータ・フローおよび/または制御フローなどの情報の交換が行われる。本発明によれば、無線端末装置302は基地局1(304)と基地局2(306)などの1以上の基地局との無線接続を確立することができる。別個の同時接続により利用される技術および/またはスペクトルは同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0025】
本発明によれば、任意の所定時刻において、無線端末装置302と基地局304、306との間の別個の同時接続により運ばれる情報の部分は異なるものであってもよく、通常は異なる。したがって、異なる情報を同時に運ぶ接続は独立した接続であり、言い換えれば情報は異なるチャネルで運ばれる。
【0026】
図3は、無線端末装置302が基地局304、306と行う2つの同時でかつ独立した接続を示す。これらの接続は利用可能な同じ帯域幅を用いるが、異なる通信チャネルが使用されるため、接続による相互干渉が生じることはない。矢印310と312は通信チャネルを表す。
【0027】
複数の同時でかつ独立した接続を行う本方法は、少なくとも以下の理由によりソフト・ハンドオフ法とは異なっている。ソフト・ハンドオフでは複数のリンクを介する信号によって情報の同じ部分が運ばれるのに対して、特に、本発明によれば、無線端末装置302と複数の基地局304、306間で交換される信号によって情報の異なる部分が運ばれる。双方のチャネルにより別々の情報が運ばれるため、合成用ユニットおよび/または複製用ユニットとしての移動体交換センタが不要となる。したがって、本発明によれば、基地局304、306は、個々にかつ独立に有線ネットワーク308と直接結合することが可能となる。これは、矢印314と316により図3に表されている。
【0028】
接続やチャネルは一対の別々の通信路と、ダウンリンクと、アップリンクとから構成され、これらの各々により別々の情報フローが運ばれる。ダウンリンク、アップリンクまたはこれら双方のリンクは、任意の所定時刻に接続を行うことができるようにアクティブな状態になる。さらに、ダウンリンクまたはアップリンクがアクティブな状態のとき、接続を介してデータ信号とフローおよび/または制御信号とフローとの送信が行われる。
【0029】
本発明によれば、別個の接続活動を異なるものとすることができるため、アクティブ状態時に、別個の接続を介して送信される情報フローのタイプを異なるものにすることが可能である。所定の無線端末装置302との複数の接続が存在する任意の所定時間中に、無線端末装置302または基地局304、306のいずれかが、1組のダウンリンクおよび/またはアップリンクをアクティブな状態になるように動的にセットする選択を行うことができ、さらに、オプションとして、残りをアクティブでない状態に保つ選択を行う。アクティブなダウンリンクまたはアップリンクの場合、無線端末装置または基地局のいずれかは当該リンク上のデータ・フローおよび/または制御フローを運ぶ選択を行うことができる。接続のための種々の実施形態について以下説明する。
【0030】
図4〜図6は、通信システム300の基地局1(304)と基地局2(306)とによって実現される本発明の3つの実施形態を示す。制御フローは破線により表され、データ・フローは実線により表される。アクティブなダウンリンクまたはアップリンクが適切な方向の矢印により表される。すなわち、これらの矢印は、ダウンリンクの場合、無線端末装置の方を指し、アップリンクの場合、基地局の方を指す。
【0031】
図4に示す第1の実施形態では、無線端末装置302は、第1と第2の基地局304、306との接続410、414をそれぞれ行う。個々の接続410、414には、制御アップリンク408、412と制御ダウンリンク409、413とがそれぞれ含まれる。個々の接続410、414には、データ・アップリンク416、418とデータ・ダウンリンク41、419とがそれぞれ含まれる。したがって、図4の例では、基地局304、306の双方との通信用として双方向の制御通信とデータ通信とがサポートされる。
【0032】
図5に示される本発明の第2の実施形態では、無線端末装置302は、第1と第2の基地局304、306との接続510、514をそれぞれ行う。第1と第2の接続510、514の各々には、制御アップリンク508、512と制御ダウンリンク509、513とがそれぞれ含まれる。第1の接続510にはデータ・アップリンク516とデータ・ダウンリンク517も含まれる。第2の接続514にはデータ・ダウンリンク519は含まれているが、データ・アップリンクは含まれていない。したがって、図4の例では、基地局304、306の双方との2つの接続用として双方向の制御信号がサポートされ、一方の基地局304用として双方向のデータ通信がサポートされているのに対して、第2の基地局306との接続514についてはダウンリンク・データ通信がサポートされている。
【0033】
図5に示すように、基地局1(304)には、制御フローとデータ・フローを運ぶ無線端末装置502とのアップリンク(508、516)接続とダウンリンク(509、517)接続の双方の接続が設けられている。一方、基地局2(306)の場合、制御フロー用のアップリンク512接続とダウンリンク513接続の双方の接続が設けられているが、データ・フロー用についてはダウンリンク接続519だけが設けられる。図5の例では、単一のアップリンクが装置により用いられ、複数のアクティブなアップリンクが存在するにもかかわらず、任意の所定時刻にデータ送信が行われる。これら複数のアクティブなアップリンクのうち任意のアップリンクあるいはすべてのアップリンクを用いて制御情報を通信するようにしてもよい。
【0034】
図6に示す本発明の第3の例では、任意の所定時刻に、無線端末装置の接続610、614の各接続にはアクティブ制御(609、613)ダウンリンクとアクティブ・データ(613、619)ダウンリンクとが設けられるのに対して、無線端末装置の接続610、614のうちの一方の単一接続には、アクティブ制御アップリンク608とアクティブ・データ・アップリンク616の双方が含まれる。このようにして、無線端末装置は、所定時刻に1つの基地局304と完全にリアルタイムで交信しながら、複数の基地局304、306から制御信号とデータ信号との受信を行うことが可能となる。
【0035】
例えば、無線端末装置602は、基地局1(304)とのアクティブな制御ダウンリンクとデータ・ダウンリンク(609、617)並びに制御アップリンクとデータ・アップリンク(608、616)を備え、これらのリンクによって制御フローとデータ・フローの双方の接続による双方向通信が可能である。一方、基地局2(306)の場合、無線端末装置302は制御フローとデータ・フロー用のアクティブなダウンリンク613、619をそれぞれ備え、アクティブなアップリンク接続は行われない。
【0036】
確立すべき接続を行うために、無線端末装置302と、端末装置302の接続対象である対応する基地局304、306との相互の同期処理が行われ、その場合、上記同期処理には一般に搬送周波数とシンボル/フレーム・タイミング同期とが含まれる。本発明によれば、基地局304、306自体の同期処理が行われない場合、個々の接続310、312に対する同期処理が独立に実行される。
【0037】
詳細には、無線端末装置302の送信装置と受信装置の双方における搬送周波数パラメータとシンボル/フレーム・タイミング・パラメータとによって、個々の接続310、312に対する独立の設定および/または同調が行われる。図7は、無線送信装置302での別々の同期制御ループ704、706の利用を示し、これらのループの利用により、無線端末装置302が接続されている相手基地局304、306の各々との適切な独立したタイミング同期処理が保証される。
【0038】
図7の例では、無線端末装置302は第1と第2の独立した非同期接続310、312などを備える。第1の接続310は基地局1(304)との接続であり、一方、第2の接続312は基地局2(306)との接続である。基地局304、306は同期されていないため、無線端末装置302により個々の接続用の別々の同期ループ704、706が維持される。同期ループ1(704)は第1の接続1(310)に対するものであり、一方、第2の同期ループ706は第2の接続312に対するものである。同期ループ704と706とは独立に機能するものであるが、これらのループは、接続310、312に対応する信号の受信に使用されるアナログ受信回路などの何らかの共通のハードウェアを共有するものであってもよい。一方、独立したデジタル処理を利用して、同期ループ704の各ループで実行されるタイミング制御のすべてまたは一部を行うようにしてもよい。
【0039】
図8は、前の図よりもさらに詳細に本発明の例示の無線端末装置302を示すものである。この無線端末装置には送信回路754と結合された送信用アンテナ752が設けられている。この無線端末装置には受信回路758と結合された受信装置アンテナ756も設けられている。送信回路754はバス767から送信されるデジタル制御信号とデータ信号とを受信する。受信回路758は、バス767を介して出力される受信信号からデジタル制御信号とデータ信号とを生成する。これら送信回路と受信回路は、タイミング、電力制御、及び、バス767を介して別の端末装置のコンポーネントから受信した別の信号に対して応動する。
【0040】
図8に示すように、無線端末装置の種々のコンポーネントはバス767によって一体に結合されている。一体に結合されたこれらコンポーネントには、入力装置770、出力装置772、送信回路754、受信回路758、CPU774とメモリ760などのプロセッサが含まれる。入力装置はキーパッドおよび/またはマイクなどであってもよい。出力装置772はスピーカおよび/または表示装置を含むものであってもよい。メモリ760には、音声、テキスト、e−メールやその他のタイプのデータなどの、ファイルの形で記憶されたデータ760が含まれ、このデータは受信されたり、送信の対象となったりするものである。このデータはパケットとして記憶されたり、送信前にパケット化されたりしたものであってもよい。またメモリには送信ルーチン764、受信ルーチン766と、維持の対象となる基地局との個々の接続を行うための別々の組のパラメータ777と779も含まれる。プロセッサ774と、種々の送受信処理とにより送信ルーチン764と受信ルーチン766が実行される。送信ルーチン764は、任意の所定時刻に無線端末装置302がサポートされる個々の基地局との接続に実行可能な同期ループ・ルーチンとメイン・デジタル処理用ルーチンとを備えるものであってもよく、これらのルーチンは、上記実行時に、前記同期ループとメイン・デジタル処理用モジュールとを設けるためのものである(図9などを参照)。同様に、受信ルーチン766は、任意の所定時刻に無線端末装置302によりサポートされる個々の基地局接続に実行可能な同期ループ・ルーチンとメイン・デジタル処理用ルーチンとを備えるものであってもよく、これらのルーチンは、上記実行時に、同期ループとメイン・デジタル処理用モジュールとを設けるためのものである(図10などを参照)。
【0041】
送信ルーチン764と受信ルーチン766はプロセッサ774により実行され、種々の送受信処理の制御を行う。ルーチン766、774の制御の下で、プロセッサ回路774を構成して、送受信用同期ループ回路及び送受信用のメイン・デジタル処理用モジュールとしてプロセッサ回路774を作動させるようにしてもよい。上記とは別に、専用ハードウェア回路を用いてこのような回路および/またはモジュールの実現を図るようにしてもよい。
【0042】
上記複数の同期ループを用いる送受信システムについて以下説明する。
【0043】
無線端末装置302は複数の送受信装置の対を装備し、この個々の対は特別の接続専用装置となる。本発明の1実施形態では個々の送受信装置の対は別々の装置のコンポーネントで構成される。例示の送信システム800については図8と関連して説明し、例示の受信システム900については図9と関連して説明する。
【0044】
図9は、本発明に準拠する、基地局への信号送信用無線端末コンポーネント800を示す。無線端末コンポーネント800には、図8に図示のように一体に結合されたアナログ処理用モジュール814、D/A変換器(DAC)812、加算ユニット810、同期ループ806、808とメイン・デジタル処理用モジュール802、804が含まれる。アナログ処理用モジュール814、D/A変換器812及び加算ユニット810は図8に図示の送信回路754の一部であってもよい。プロセッサ774でルーチン764を実行することにより、あるいは、専用のハードウェア回路を用いることにより、同期ループ806、808及びデジタル処理用モジュール802、804の実現を図るようにしてもよい。アナログ処理用モジュール814は無線周波数(RF)フィルタとアナログ・フィルタ、アナログ・ミキサなどのようなエレメントを含むものであってもよい。基地局304と306へ送信される信号はこれら回路の各々により処理される。しかし、基地局304、306の各々へ送信を行うためのこのような回路を複製して、加算ユニット810の実装を不要とし、複数のモジュール814とD/A変換器812の実装を要求することも可能である。
【0045】
例示の送信処理では、異なる基地局接続に対応するデジタル信号がまず生成され、個々の信号は対応する接続で送信される制御情報および/またはデータ情報を表す。これらの信号はプロセッサ774により生成してもよい。本発明によれば、個々の基地局へ送信すべきデジタル信号は、信号が送られる相手基地局向けの信号処理に使用する別々のメイン・デジタル処理用モジュール802、804と同期ループ806、808とにより独立に処理される。図8の例では、異なる接続を介して送信されたデジタル信号に対して、メイン・デジタル処理用モジュール802、804によるチャネル符号化などのさらなるデジタル処理が行われる。
【0046】
基地局は同期処理を受けなくてもよい。したがって、本発明によれば、同期処理を行うために、同期パラメータに基づいて、個々の接続デジタル信号に対するデジタル信号処理を利用する周波数修正とタイミング修正とが独立に実行される。これらの周波数修正とタイミング修正とは、同期ループ806、808により基地局接続毎のベースを基に独立に実行される。
【0047】
次いで、基地局304、306へ送信すべき分離されたデジタル信号が加算ユニット810とDAC812とによりそれぞれ加算され、単一のアナログ信号への変換が行われる。異なる接続に関する情報は、異なる周波数トーンなどを用いて実現されるOFDM通信チャネルなどの別々の通信チャネルで運ばれる。したがって加算ユニットにより、情報の組み合わせを行う際に送信される情報に対して最低限のインタフェースが導入される。変換されたアナログ信号は増幅され、次いで、無線チャネルを介して上記アナログ信号はアナログ処理用モジュール814により送信される。
【0048】
図10は、本発明に基づいて基地局からの信号受信に使用される無線端末コンポーネント900を示す。無線端末コンポーネント900には、図10に図示のように、一体に結合されたアナログ処理用モジュール902、A/D変換器(ADC)904、複製用ユニット906、信号分離回路905、907、同期ループ908、910及びメイン・デジタル処理用モジュール912、914が含まれる。アナログ処理用モジュール902には、無線周波数(RF)フィルタとアナログ・フィルタ、アナログ・ミキサなどのようなエレメントを設けてもよい。アナログ処理用モジュール902、A/D変換器904、複製用ユニット906及び信号分離回路905、907は受信回路758の一部として実装される。プロセッサ774でルーチン766を実行することにより、あるいは、専用ハードウェア回路を用いることにより、同期ループ908、910及びデジタル処理用モジュール912、914を実装するようにしてもよい。
【0049】
例示の受信装置による処理では、アナログ処理用モジュール902により、アナログ信号などの受信信号がまずアナログ・フィルタ、増幅器などのアナログ装置コンポーネントにより処理される。次いで、処理済みの信号はADC904により単一のデジタル信号に変換される。次いで、このデジタル信号は複製用ユニット906により複製され、同じデジタル信号の複数のコピーが形成される。デジタル信号のこれら複数のコピーの各々は基地局との接続毎にさらに処理される。
【0050】
本発明によれば、受信システム900には、その基地局310、312接続を行うための、別々の信号分離回路905、907、同期ループ908、910及びメイン・デジタル処理用モジュール912、914が含まれる。同期処理を行うために、同期パラメータに基づいて、次いで、回路905、907のうちの一方により信号分離を行った後、デジタル信号処理操作を行うことにより、個々の接続デジタル信号に対する周波数修正とタイミング修正とが独立に実行される。本例では、対応する接続の分離はデジタル・ドメインで行われる。
【0051】
信号分離処理、タイミング同期処理及び復号化処理は、個々の基地局接続に対応して、信号分離回路905、907、同期ループ908、910及びメイン・デジタル処理用モジュール912、914により実行される。したがって、異なる基地局に対応する信号はデジタル・ドメインで独立に処理される。
【0052】
モジュール912、914により実行されるメイン・デジタル処理はチャネル復号化処理などを含むものであってもよい。モジュール912、914により実行される復号化の結果、個々の各基地局に対応する送信データ信号および/または制御信号は別々に復号される。復号された制御情報および/またはデータ情報はメモリ810に記憶され、および/または、プロセッサ824によりさらなる処理を受ける対象となる。
【0053】
本発明の種々の実施構成によれば、複数の送受信装置の対は無線周波数(RF)フィルタとアナログ・フィルタなどの同じアナログ装置コンポーネントを共有することができる。
【0054】
無線端末装置302により複数基地局との接続維持が可能となる1つの状況としてハンドオフ処理中の状況がある。本発明によれば、ハンドオフ処理の実施時に、隣接領域の基地局304、306との複数の独立した同時接続が無線端末装置302により維持される。次に、図3の通信システムと関連して例示のハンドオフ処理について解説する。
【0055】
無線端末装置は移動が可能であるため、無線端末装置の送信範囲内で新たな基地局と遭遇することが考えられる。無線端末装置302は、基地局2(306)などの新たな基地局の存在を検知し、新たな基地局306がハンドオフ候補であることを確認すると、この新たな基地局306との新たな接続を確立する。新たな基地局306と直接交信を行うか、装置固有の接続設定情報を新たな基地局306へ出力するかのいずれかにより、および/または、新たな基地局のカバーエリア内の無線端末装置302の存在についての基地局306への通知を現在使用中の基地局304に行わせるなどの新たな基地局との間接交信を行うことにより上記接続の確立が行われる。
【0056】
好ましくは、現在の基地局304との接続が落ちる前に、ハンドオフ処理時に新たな接続を確立し、その結果としてハンドオフ処理のメーク・ビフォア・ブレークの特徴を得ることが望ましい。このメーク・ビフォア・ブレークの特徴によって、データ消失と待ち時間の効果的減少や、別様にハンドオフ中に生じるかもしれないデータ消失と待ち時間の除去が行われることさえある。
【0057】
図11〜図14は本発明のメーク・ビフォア・ブレーク・ハンドオフ処理の一部として確立された接続を示す図である。図11〜図14の例では、双方向の制御リンクとデータ通信リンクとがサポートされる。無線端末装置が通信を行う相手側の各基地局に対するアクティブなアップリンクが無線端末装置により維持される。電力制御やリンク層確認応答のような制御情報を個々の基地局へ送信するためにこれらのアップリンクが使用される。本発明によれば、当該複数の制御情報は異なる基地局について異なるものとすることができる。
【0058】
図11はハンドオフのステップ1を示す。このステップでは、無線端末装置302は第1の基地局304などの基地局と1回の接続を行う。この接続は、アップリンク方向とダウンリンク方向の両方向にリンク1010に関する制御情報とリンク1008に関するデータ情報とを運ぶものである。
【0059】
無線端末装置302が基地局2(306)の方へ近づいていくにつれて、ステップ2で、無線端末装置302はハンドオフ候補として基地局2(306)の追加を決定する。したがって、図12に示すように、無線端末装置302は、2つの接続、すなわち第1の基地局304との一方の接続と、第2の基地局306との他方の接続とを確立し、これらの接続を維持する。
【0060】
本発明によれば上記2つの接続は独立に処理される。この例示の実施形態の場合、ダウンリンク時に、異なるデータ・パケットと制御情報とが第1と第2の基地局304、306の各々から受信される。異なる基地局304、306により受信されたデータ・パケットは、送信されている音声e−メールやテキスト・メッセージなどの同じファイルやメッセージから成る異なる部分であってもよい。アップリンク時に、矢印1010と1112で上向きの矢により表されるように制御情報は基地局304、306の双方へ送信される。基地局は同期処理を受けないようにすることも可能なので、異なる基地局304、306へ送信される制御情報は異なるとすることができる。すなわち、実施形態によっては、個々の基地局304、306が異なるシンボル送信開始時刻を用いて異なる基地局302、304と交換する信号に関して、実行すべき異なるシンボル・タイミングの同期処理を必要とするような実施形態もある。
【0061】
図12に図示の例では、データ・パケットが、無線端末装置から第1の基地局304などの単一基地局へ任意の所定時刻に送信される。無線端末装置302がそのアップリンク・データ・フローを送信する相手側単一基地局は、最適の無線チャネル条件を持つ基地局であることが望ましい。例えば、基地局1(304)が最適の無線チャネル条件を持つと仮定する。この結果、無線端末装置302によって、リンク接続1008を通じて基地局304へデータ・パケットの送信が行われる。
【0062】
次に、第2の基地局306の無線チャネル条件の方が第1の基地局304の無線チャネル条件よりも好適なものになったと仮定する。データ送信を行うために、無線端末装置302により、第2の基地局306への切り替えが行われ、次いで、第1の基地局304との接続の代わりに第2の基地局306との接続を通じてデータ・パケットの送信が行われる。
【0063】
切り替えの際オーバーラップする時間があってもよい。その場合2つの接続が設けられている利点は明らかである。例えば、無線端末装置302は、第1の基地局304へそのデータ・フローを送信し続けて、送信最中のデータ・パケットのサービスを図ることができる一方で、第2の基地局306への新たな異なるデータ・パケットのデータ・フローも開始される。第1と第2の基地局304、306へ送信される異なるデータ・パケットは、同じメッセージまたはファイルの異なる部分を表すIPパケットなどを含むものであってもよい。これら2つの接続は2つの異なる通信チャネルを介して行われるものであるため、2つの基地局304、306へデータの同時送信を行うことが可能となる。上記とは別に、無線端末装置302は、第1の基地局304へ送信しているデータ・パケットのサービスをまず終了させることができ、次いで、第2の基地局2(306)への新しいデータ・パケットのデータ・フローを開始することができる。
【0064】
例えば、第3のステップで、無線端末装置が1つのセルから別のセルへ移動するときなどに、第2の基地局306との接続を行うチャネル条件の方が、第1の基地局304との接続を行うチャネル条件よりも優れていることに起因して、無線端末装置302は、第1の基地局304から第2の基地局306へそのデータ・フローの切り替えを開始する。この結果、図13に示されているような接続フローと信号フローとが生じる。図13で、第1の基地局304と無線端末装置のアップリンク・データ・フローとの接続が終了し、無線端末装置302は第2の基地局306とのアップリンク・データ・フロー接続1210を形成する。したがって、第2の基地局306へのデータ送信の開始と共に、第1の基地局304へのデータのフローは停止することになる。この実施形態では、所定時刻に、単一のアップリンク接続を用いてデータ・フローが運ばれ、その一方で、すべてのアクティブなアップリンク接続により制御フローが運ばれることになる。図13に、接続1209と1211の上向きの矢によってアクティブなアップリンク制御フローが表されている。
【0065】
無線端末装置302が第1の基地局304の範囲外へ移動するにつれて、本発明のハンドオフのステップ4で、対応する接続1208、1209が切断される。その結果、図14に図示のように、無線端末装置302により第2の基地局306との1つの接続1210、1211が形成される。その結果、ハンドオフ処理の終了時にモバイル・ノード302により基地局との単一の接続が形成されることになる。
【0066】
メーク・ビフォア・ブレーク・ハンドオフは、無線端末装置と異なる基地局間での多重同時接続が独立しているという点で、また、異なる制御情報および/またはデータ情報が運ばれるという点でソフト・ハンドオフとは基本的に異なるものである。本発明によれば、現在の基地局と新たな基地局の双方の基地局との接続は独立に処理される。
【0067】
詳細には、物理層において、及び、無線端末装置のメモリ760において、無線端末装置は、異なる接続を形成するための別個の組の送受信装置用同期パラメータ777、779を維持する。さらに、上位層においては、異なる基地局用の接続で運ばれる複数の情報は異なるものとすることができる。ダウンリンク方向では、基地局から無線端末装置へのデータ・フローと制御フローとは異なる複数の情報を含むものであってもよい。例えば、種々の実施形態で、基地局は異なる独立のデータ・パケットを無線端末装置へ同時に送信することが可能である。同様に、アップリンク方向でも、無線端末装置から基地局へのデータ・フローと制御フローとは異なる複数の情報を含むことが可能である。
【0068】
本発明の種々の方法ステップは種々の方法で実現可能であり、例えばソフトウェア、ハードウェアまたはソフトウェアとハードウェアとの組み合わせを用いて、個々のステップや前述したステップとの組み合わせを実施することができる。本発明の種々の実施形態には種々の方法ステップの実行手段が含まれる。ソフトウェア、回路などのハードウェア、またはソフトウェアとハードウェアとの組み合わせを用いて個々の手段の実現が可能となる。ソフトウェアを用いる場合、ステップの実行手段はそのソフトウェアを実行するプロセッサなどの回路を備えるものであってもよい。したがって、本発明は、特に、機械制御用ソフトウェアや、前述した1以上のステップや信号処理操作を実行する回路などのようなコンピュータにより実行可能な命令に向けられたものである。
【0069】
本発明のタイミング同期ループは、種々の技術および/または回路を用いて実現されるものであってもよい。“通信システムにおけるシンボル・タイミングの同期方法”という名称の米国特許出願番号第10/090,871号(2002年3月4日出願)と、米国特許出願第09/503、040号(2000年2月11日出願)とに、本発明の無線端末装置で使用するタイミング・ループの実現に利用できるような種々のタイミング同期回路と技術についての記載がある。上記双方の特許は参照により明白に援用されている。しかし別の技術および/または回路の使用も可能である。
【0070】
本発明の範囲から逸脱することなく、上述の方法及び装置に対する多数の変形例が可能であることを理解されたい。例として、2つの基地局との接続を確立する無線端末装置という観点から本発明について説明した。本発明によれば、無線端末装置と任意の数の基地局間での同時接続の確立と維持とを実施することも可能である。さらに、無線端末装置(303)が異なる基地局(304、306)との複数の同時データ・アップリンクと、任意の所定時刻における単一のデータ・ダウンリンクとをサポートする実施形態が想定される。このようなデータ・リンクは、制御リンクに加えて、双方の基地局との双方向制御リンクなどになる。このような実施構成は図5に図示の構成と類似したものとなるが、ダウンリンクの代わりにアップリンクを表す矢印519は逆向きになる。
【0071】
本発明の方法及び装置は直交周波数分割多重化(OFDM)用アプリケーションに適したものではあるが、他の通信技術の場合についても利用可能であり、OFDMシステムに限定されるものではないことも理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる信号タイミングでそれぞれが作動する複数の基地局(304、306)との同時交信を行う移動通信装置(302)であって、
前記複数の基地局(304、306)とのタイミング同期を同時に確立することが可能な複数のタイミング同期ループ(806、808、908、910)を有する、移動通信装置。
【請求項2】
請求項1記載の移動通信装置(302)において、前記複数のタイミング同期ループ(806、808、908、910)はシンボル・タイミング・ループである、移動通信装置。
【請求項3】
請求項1記載の移動通信装置において、前記複数のタイミング同期ループ(806、808、908、910)は、受信装置タイミング同期ループ(908、910)と送信装置タイミング同期ループ(806、808)とを含み、複数の前記送信装置タイミング・ループと複数の受信装置シンボル・タイミング・ループとが同時に使用され、少なくとも1つの受信装置タイミング・ループと1つの送信装置タイミング・ループとが、前記移動通信装置が通信接続を確立する個々の基地局に対して使用される、移動通信装置。
【請求項4】
請求項3記載の移動通信装置において、複数の符号器回路(802、804)をさらに有し、前記複数の符号器回路のうちの1つの異なる回路が前記複数の送信装置タイミング同期ループ(806、808)の各々と結合される、移動通信装置。
【請求項5】
請求項4記載の移動通信装置において、前記複数の符号器(802、804)の各々が異なる基地局(304、306)との接続に対応するデータの符号化を行う、移動通信装置。
【請求項6】
請求項5記載の移動通信装置において、前記複数の同期ループ(806、808)と結合されたデジタル合成装置(810)であって、前記同期ループ(806、808)により処理されたデータを合成し、それによって合成されたデジタル信号を生成するデジタル合成装置をさらに有する移動通信装置。
【請求項7】
請求項6記載の移動通信装置において、前記合成されたデジタル信号をアナログ送信信号へ変換するデジタル/アナログ変換器(812)と、前記アナログ送信信号を送信するアナログ送信回路(814)とをさらに有する、移動通信装置。
【請求項8】
請求項3記載の移動通信装置において、複数の復号器回路(912、914)をさらに有し、前記複数の復号器回路(912、914)のうちの異なる1つの回路が、前記複数の復号器タイミング同期ループ(908、910)の各々と結合される、移動通信装置。
【請求項9】
請求項8記載の移動通信装置において、前記複数の復号器(912、914)の各々は異なる基地局(304、306)との接続に対応するデータを復号化する、移動通信装置。
【請求項10】
請求項3記載の移動通信装置において、複数の信号分離回路(905、907)をさらに有し、異なる信号分離回路は異なる基地局(304、306)に対応する信号を分離するために前記複数の受信装置同期ループ(908、910)の個々のループと結合されて、異なる受信装置同期ループ(908、910)によって異なる基地局に対応する信号を処理する、移動通信装置。
【請求項11】
請求項10記載の移動通信装置において、複数の基地局(304、306)により送信された信号に対応する入力アナログ信号を受信するアナログ受信回路(902)と、前記アナログ受信回路(902)および前記信号分離回路と結合されたアナログ/デジタル変換器(904)とをさらに有する、移動通信装置。
【請求項12】
請求項11記載の移動通信装置において、個々の基地局(104、106)により送信される信号が直交周波数分割多重化信号であり、前記信号分離回路(905、907)は、上記特別の信号分離回路(905、907)を結合する前記受信装置同期ループ(908または910)により処理されない基地局(304または306)に対応するトーンをフィルタして取り除くフィルタである、移動通信装置。
【請求項13】
請求項1記載の移動通信装置において、異なる基地局(304、306)へデータ・ファイルの異なる部分の同時送信を制御する制御手段(774)をさらに有する、移動通信装置。
【請求項14】
第1の基地局(304)と第2の基地局(306)とを備えた複数の基地局(304、306)と交信するように無線端末装置を作動させる方法であって、データ信号のタイミングを前記第1の基地局(304)と同期させる第1のタイミング同期動作を実行し、データ信号のタイミングを前記第2の基地局(306)と同期させる第2のタイミング同期動作を実行するとともに、前記第1と第2のタイミング同期動作を独立にかつ同時に実行する、方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法において、第1のタイミング同期動作を実行する前記ステップが、第1の制御リンク(409)を介して前記第1の基地局(304)からタイミング制御信号を受信することを含み、第2のタイミング同期動作を実行する前記ステップが、第2の制御リンク(419)を介して前記第2の基地局(306)からタイミング制御信号を受信することを含む、方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法において、前記第1と第2のタイミング同期動作はシンボル・タイミングの同期動作である、方法。
【請求項17】
請求項15記載の方法において、前記第1の基地局(304)へ第1のデータを送信し、前記第1の基地局(304)へ第2のデータを送信すると同時に、前記第2の基地局(306)へ異なるデータを送信することをさらに有する方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記第1と第2のデータは単一のデータ・ファイルの異なる部分である、方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法において、前記データ・ファイルは、e−メール・ファイルと、画像ファイルと、テキスト・ファイルのうちの1つである、方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法において、第1のデータ・パケットに前記第1のデータを記憶し、第2のデータ・パケットに前記第2のデータを記憶し、さらに、前記第2のデータ・パケットの前記第2の基地局(306)への送信が、前記第1のデータ・パケットの前記第1の基地局(304)への送信中に始まる、方法。
【請求項21】
請求項20記載の方法において、前記第2の基地局(306)へのデータ送信を続けながら、前記第1のデータ・パケットの送信が終了した後、前記第1の基地局(304)へのデータの送信を中止することをさらに有する方法。
【請求項22】
通信システムの基地局間でハンドオフを実行する方法であって、第1の基地局(304)と交信し、第2の基地局(306)と接続を確立し、前記第1と第2の基地局(304、306)へ異なる通信信号を同時に送信することを有する方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法において、前記異なる通信信号が、デジタル・データからなるパケットを表すデータ信号であり、前記第1と第2の基地局(304、306)へ異なるデータを送信する前記ステップが、前記第1の基地局(304)へ第1のデータ・パケットを送信するステップと、前記第2の基地局(306)へ第2のデータ・パケットを送信するステップとを含み、前記第1と第2のデータ・パケットの各々が、送信すべき1組のデータからの異なるデータを含む、方法。
【請求項24】
請求項23記載の方法において、送信すべき前記組のデータが、e−メール・メッセージと、音声メッセージと、テキスト・メッセージとのうちの1つである、方法。
【請求項25】
請求項23記載の方法において、前記第1と第2のデータ・パケットの少なくとも部分を表すシンボルを前記第1の基地局(304)と第2の基地局(306)とへ送信する際に、異なるシンボル送信開始時刻を用いることをさらに有する方法。
【請求項26】
請求項25記載の方法において、前記第1と第2の基地局(304、306)との接続品質をモニタし、低い品質の接続へのデータ送信を中止することをさらに有する方法。
【請求項27】
請求項25記載の方法において、前記第1と第2の基地局(304、306)との接続品質をモニタし、データ送信に用いる接続品質が、データが送信されていなかった基地局とのデータ接続品質よりも悪くなったとき、データが送信される基地局(304、306)を変更することをさらに有する方法。
【請求項28】
通信システムを実現する方法であって、移動通信装置(302)と交信するために複数の基地局(304、306)を設け、有線非同期通信ネットワーク(308)を介する送信を行うために、前記移動通信装置(302)から異なるデータを同時に受信するよう前記複数の基地局において少なくとも第1と第2の基地局(304、306)を作動させ、前記有線非同期ネットワーク(308)へ前記受信データを出力するよう前記第1と第2の基地局(304、306)を作動させる、方法。
【請求項29】
請求項28記載の方法において、前記異なるデータは前記第1の基地局304により送信された第1のデータ・パケットと、前記第2の基地局302により送信された第2のデータ・パケットとの少なくとも一部を含む、方法。
【請求項30】
請求項29記載の方法において、前記第1と第2のデータ・パケットは、前記無線端末装置により送信されるe−メール・メッセージと、音声メッセージと、テキスト・メッセージとのうちの少なくとも1つのメッセージの異なる部分に対応する、方法。
【請求項31】
請求項30記載の方法において、前記移動通信装置との、独立した非同期シンボル・タイミングの同期動作を実行するように前記第1と前記第2の基地局を作動させることをさらに有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−34205(P2013−34205A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−185350(P2012−185350)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【分割の表示】特願2009−170846(P2009−170846)の分割
【原出願日】平成14年8月13日(2002.8.13)
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】