説明

無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)をシミュレートし管理するシステム及び方法

一実施形態によると、無線ローカルエリアネットワークのネットワーク構成を模擬するための処理システムで使用されるコンピュータ可読媒体が提供される。この媒体は、無線ローカルエリアネットワークの原特性及び一組のネットワーク構成を処理システムに決定させる特性及びネットワーク構成取得論理手段を有する。同様に、目標に従って一組のネットワーク構成に基づき、処理システムに結果をシミュレートさせるシミュレーション論理手段も有する。別の実施形態では、その目標はユーザにより定義されるものであってもよいし、あるいは、履歴データに基づくものであってもよい。さらに、その結果に基づき、新たな一組のネットワーク構成を処理システムに生成させるネットワーク構成生成論理手段や、処理システムに、新たな一組のネットワーク構成を無線ローカルエリアネットワークに適用させる管理論理手段も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<背景技術>
コンピュータ及び通信ネットワーク、特に無線ネットワークは大形化し、複雑化してきた。これらの要因により、ネットワークデザイナーやオペレータ、ユーザは、模擬ソフトウェアを利用し、ネットワーク構成をシミュレートして、性能を最適化させてきた。従来、ネットワークシミュレーションは、既定のトラフィック条件下でのネットワーク構成の性能評価に使用されてきた。性能には応答時間、情報処理量、通信費用等の客観的基準が含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
近年、ネットワークの動向は無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)に焦点が移っている。WLANの人気が高まる一方、IEEE802.11アクセスポイント(AP)の配置密度及びクライアントステーションの数もまた増加してきた。
【0003】
このIEEE802.11無線通信の普及はIEEE802.11ネットワークの管理者に新たな挑戦をもたらしている。適切なツール無しに、IEEE802.11ネットワークの無線通信環境を管理するのは非常に困難になっている。管理者はIEEE802.11ネットワークの混雑や別の無線電波干渉に直面しており、WLANを効果的に配置してネットワークを管理する問題に悩まされている。
【0004】
WLAN管理者は、最高値の情報処理量で相当の通信範囲を有する信頼性の高いネットワークを提供することを第一に考慮している。これを実現させるため、管理者は今日、費用の嵩む監視ツールと人件費をネットワーク維持に費やし、広範囲に及ぶ実地調査を配置前に行わなければならない。広範囲に及ぶ実地調査を行った後でさえも、管理者は無線ネットワークの探知が遅いという問題や無線ネットワークの補強法や修正法の水準の低さに悩んでいる。
【0005】
基本的に、WLANの最適化は複雑な問題である。WLANは時代遅れの有線ネットワークより数段動的なものである。WLANの性能をタイムリーに最適な状態にするのに必要な時間は非常に短い。
【0006】
管理も最適化もされていないWLAN配置でも基本的な機能を備えているかもしれないが、新たな無線トラフィックの発生により、ユーザの経験は大いに損なわれるだろう。例えば、無線トラフィックは、WLANベースの音声クライアント(WVOIP)の広範な配置により頻繁に発生する。
【0007】
この例では、音声クライアントの可聴音声品質を得るために、ネットワークに必須であるデータトラフィックをWLANが処理できないという問題が生じる恐れがある。反対に、データクライアント用に帯域幅を維持するために、音声クライアントがアクセスを拒否されることもある(例えばビジー信号を受け取る)。
【0008】
音声クライアントがない場合でも、構築の際、データ処理能力を超える場合もある。APの位置の悪さ、新しく設置された周辺AP、ユーザ密度の増加、幅広く使用されている新たな無線アプリケーション等の要因によって別の問題も生じる。
【0009】
多くのパラメータがWLANの性能に影響を及ぼす。例えば、パラメータにはAPの周波数バンド、出力レベル、プロトコル設定の選択及びAP間におけるクライアント社会(client associations)の変動が含まれる。この複雑性ゆえ、従来は、最適解に収束する許容可能なアルゴリズムを正確に決定するのはきわめて難しかった。
【0010】
WLANの高度な動力性はネットワークの最適化をこれまで以上に厳しくしているだけでなく、素早い最適化処理をも要求している。最適化の速度は唯一、最も重要な要件であるだろう。
【0011】
リアルタイムでWLAN構成を調整することによりWLANの最適性能に達することは、最適性能に到達するまでに膨大な時間がかかるため非現実的である。さらに、WLAN構成をリアルタイムで調整するのは最適化のプロセスにおいてWLANの性能に悪影響を及ぼすこともある(例えば性能ゼロに陥る)。
【0012】
従来、管理ソフトウェアだけを使用した決定論的手法ではWLAN上の変更の影響を正確に予測することができない。WLAN分野での経験が豊富な人物でもこういった変更による影響を正確に予測することはできない。従って、WLAN管理ツールだけによって、最適化されたWLAN構成のための最適解を提供するのは実現不可能なのである。
【0013】
このように、一定のパラメータの変更が行われる前にその影響を素早く且つ正確に判断するための、あるいは使用履歴や性能データを収集し、このデータを使ってシステムパラメータをより最適化するための、シミュレーションと管理が一体になった方法が必要とされている。
【0014】
つまり、モデルに沿ったシステムを作成する管理ソフトウェアシステムと、WLANシミュレーションツールの機能性を複合するためのシステム及び方法が必要とされているのである。離散事象駆動性MACプロトコルシミュレーションを無線ネットワーク管理状況にリアルタイムで適切に適用し、それにより、管理者がWLANの性能をより最適化できるシステムが必要なのである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一実施形態によると、無線ローカルエリアネットワークのネットワーク構成を模擬するための処理システムにおいて使用されるコンピュータ可読媒体が提供されている。
【0016】
この媒体の一実施形態は、処理システムに、無線ローカルエリアネットワークの一組の原特性を決定させる特性取得論理手段を有する。同様に、目標に従って一組の原特性に基づき、処理システムに結果をシミュレートさせるシミュレーション論理手段も有する。別の実施形態では、その目標はユーザにより設定されるものであってもよいし、あるいは、履歴データに従うものであってもよい。
【0017】
さらに、その結果に基づき、新たな一組のネットワーク構成を処理システムに生成させるネットワーク構成生成論理手段や、処理システムに、新たな一組のネットワーク構成を無線ローカルエリアネットワークに適用させる管理論理手段も媒体に含まれている。
【0018】
別の実施形態では、媒体のシミュレーション論理手段は離散事象シミュレーション論理手段である。あるいは、結果が目標を達成しているかを処理システムに判断させる分析論理手段が提供される。
【0019】
さらに別の実施形態では、シミュレーション論理手段が、取得したネットワーク特性及び一組のネットワーク構成に基づき、離散事象シミュレーションにより、処理システムにWLANをシミュレートさせる、シミュレーション実行論理手段を有する。同様に、予測論理手段は、シミュレーション結果に基づき、無線ローカルエリアネットワークの影響(例えば全情報処理量、雑音抑制、アクセスポイント負荷(access point loading)及び音声/データ配分)を処理システムに予測させる。
【0020】
また別の実施形態によると、処理システムに、目標及びシミュレーション結果に基づき、新たな一組のネットワーク構成を最適化させる、最適化論理手段も提供される。アルゴリズムは、ニュートン法、グラディエントサーチ等の、当技術分野で周知のいかなる検索アルゴリズムでもよい。
【0021】
さらに別の実施形態では、処理システムに結果のグラフ表示をさせる、表示論理手段を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に示すのは明細書を通して使用されている選択された用語の定義である。その定義には、用語の範囲に含まれ、実施のために使用され得る様々な実施形態及び/又は構成要素の形態の例が含まれる。もちろん、そのような例は限定的なものではなく、他の実施形態が実施されてもよい。全用語の単数形、複数形はそれぞれの意味の範囲内のものである。
【0023】
ここで使用されている『コンピュータ可読媒体』は、信号、命令及び/又はデータを一つ以上のプロセッサに与え実行させるのに直接的、あるいは間接的に関わっている媒体のことである。このような媒体には多くの形態があり、不揮発性媒体、揮発性媒体、伝送媒体等があるがこれに限定されるものではない。不揮発性媒体には例えば、光ディスクあるいは磁気ディスク等がある。揮発性媒体にはダイナミックメモリ等がある。伝送媒体には同軸ケーブル、銅線及び光ファイバーケーブル等がある。伝送媒体にはまた、音波あるいは光波等の形態をとることもでき、例えば、電波データコミュニケーションや赤外線データ通信中に発生した音波あるいは光波等がある。あるいは一群以上の信号の形態をとることもできる。一般的なコンピュータ可読媒体の形態としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープあるいはその他の磁気媒体、CD−ROM、別の光媒体、パンチカード、紙テープ、その他の穴付き物理媒体、RAM、PROM、EPROM、フラッシュEPROM、その他のメモリーチップもしくはカートリッジ、搬送波/パルス、あるいはその他の媒体であって、そこからコンピュータ、プロセッサもしくは別の電子デバイスが読み取り可能な媒体等がある。命令あるいは別のソフトウェアを、インターネット等のネットワーク上に伝播するために使用される信号もまた、『コンピュータ可読媒体』と考えられる。
【0024】
ここで使用されている『論理手段』には、ファンクションあるいはアクションを実行し、及び/又は別の構成要素からファンクションあるいはアクションを生じさせる、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア及び/又は各々の組み合わせ等があるがこれに限定されるものではない。例えば、所望のアプリケーションあるいはニーズに基づき、論理手段には、ソフトウェア制御プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)といった個別論理手段、プログラム可能な/プログラムされた論理回路、命令を有するメモリデバイス等がある。論理手段はまた、ソフトウェアとしても十分実施され得る。
【0025】
ここで使用されている『信号』には、一つ以上の電気信号、アナログあるいはデジタルシグナル、一つ以上のコンピュータもしくはプロセッサによる命令、メッセージ、ビットもしくはビットストリーム、あるいはその他の方法であって、受信、伝送及び/又は検知される方法等があるがこれに限定されるものではない。
【0026】
ここで使用されている『ソフトウェア』には、コンピュータあるいはその他の電子デバイスにファンクションやアクションを実行させ、及び/又は所望の方法で動作させる一つ以上のコンピュータ可読及び/又は実行可能命令等があるがこれに限定されるものではない。命令は、オブジェクト、ルーチン、アルゴリズム、モジュールあるいは動的にリンクされたライブラリとは別のアプリケーションもしくはコードといったプログラム等、種々の態様で実施され得る。ソフトウェアはまた、単独型プログラム、ファンクションコール、サーブレット、アプレット、メモリに蓄積された命令、オペレーティングシステムの一部あるいは別のタイプの実行可能命令等、種々の態様で実施され得る。ソフトウェアの形態が例えば所望のアプリケーションの要件、動作環境、及び/又は設計者/プログラマー等の要望によるものであることは、当業者には容易に理解できるであろう。
【0027】
ここで使用されている『ユーザ』には、一人以上の人、ソフトウェア、コンピュータもしくはその他のデバイス、あるいはこれらの組み合わせ等があるがこれに限定されるものではない。
【0028】
一実施形態において、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)の性能を調整するための複合シミュレーション/管理模擬システム及び方法が提供される。具体的には、一実施形態において、離散事象駆動(Discrete Event Driven)MACプロトコルシミュレーションが無線ネットワーク管理にリアルタイムで適用されるよう構成され得る複合シミュレーション/管理模擬システム及び方法が提供される。
【0029】
実際のネットワーク環境ではなく擬似環境内でのWLAN最適化が、最適解を得る前にネットワーク性能に悪影響を及ぼすことなく、必要とされる最適化速度を可能にし得ることは、当業者には容易に理解できるであろう。
【0030】
本システム及び方法は、シミュレータと管理ソフトウェアを組み合わせるものである。従って、本システム及び方法は、ユーザあるいは管理者がWLAN環境及びプロトコルについての特別な知識を持つ必要性を除去し得る。
【0031】
ここで議論されているように、本システム及び方法によると、定義された目標がシステムにインプットされると、その目標達成のため、シミュレータ及び管理ツールは人工的にWLANパラメータ及び特性を作りだす。作り出されたWLANパラメータ及び特性は、管理ツールによってWLANに適用され得る。
【0032】
図1に示すのは、本システム及び方法の一実施形態の簡略化した構成図である。具体的に、図1は、WLAN管理ツールコンポーネント110、シミュレーションツール120、及び、管理ツールコンポーネント110がシミュレーションツールコンポーネント120に通信できるよう動作可能に接続されたインタフェースモジュール130を有するシステム100のブロック図を示す。さらに、図1に示すのは、WLAN管理ツールコンポーネント110に動作可能に接続されたWLAN140であり、それにより、WLAN管理ツールコンポーネント110が、シミュレーションツール120によって発生したパラメータに従ってWLAN140を調整するよう適切に構成されている。
【0033】
作動時に、複合シミュレーション/管理システム100は、所望のパラメータの変更(例えば目標)が行われる前に、その影響を素早く正確に決定するよう適切に構成されていてもよい。この決定はWLANシミュレーションツール120を経て行われてもよい。さらに、システム100は使用履歴及び性能データを集め、この収集したデータを用いて、ユーザにより定義された目標に従ってWLAN140のシステムパラメータをより最適化するよう構成されていてもよい。
【0034】
もちろん、その目標は、特定のパラメータあるいは一組のパラメータに合うようあらかじめプログラムされ得ることはいうまでもない。例えば、システム100は、情報処理量を最大化するために、データ速度にかかわらず最大通信範囲を得るようプログラムされていてもよい。
【0035】
さらなる例として、システム100は、管理者がWLAN140の性能を調整し、場合によっては最適化するのに役立つように、シミュレーションツール120を経てリアルタイムで離散事象駆動(DED)MACプロトコルシミュレーションを適用するよう適切になされていてもよい。当技術分野で周知の、適度に優れた管理及びシミュレーションツールが本システムに接続され使用され得ることは、当業者には容易に理解できるであろう。
【0036】
シミュレーションツール120について説明すると、高速シスコDES(離散事象シミュレータ)WLANシミュレーションツールはここで述べられているシステムに従って使用されてもよい。DESはC++と記され、WLAN140をリアルタイムでシミュレートできることは、当業者には容易に理解できるであろう。さらに、DESは工業規格(例えばIEEE802.11プロトコル)を正確にシミュレートするよう構成されていてもよいし、ユーザによる定義の新たな要件に合うよう容易に強化され得る。
【0037】
さらにDESは、膨大な数の特性(例えばWLAN構成)に関して、WLAN140の環境をシミュレートするよう適切に構成されていてもよい。例えば、DESは伝播効果、雑音、送信空中線電力、受信感度、隣接チャネル干渉等の条件等を含む(ただし必ずしもこれらに限定されない)特性やネットワーク構成をシミュレートするよう適切に構成されている。
【0038】
加えて、一実施形態のDESシミュレーションツールがC++を用いて、IEEE802.11MACプロトコルを対象としたシミュレーション環境を提供することはいうまでもない。DESは、物理層の設計や無線デバイスの変更がMAC層の性能に及ぼす影響を識別するよう構成されている。例えば、DESはデータ速度に対するWLANの通信可能範囲を決定することができる。同様に、DESは、チャネル干渉が深刻である場合に、多重チャネルAPの情報処理量に関して、WLANの能力を決定できる。
【0039】
シミュレーション環境は物理層のMAC層への影響を対象にしているが、DESには、MACプロトコル・トレードオフやパワーセーブアルゴリズム分析といった別のエリアにおいて使用される可能性があることはいうまでもない。例えば、IPアプリケーションを通した無線ボイスでは、DESによるシミュレーションは様々なネットワーク構成によるWLAN能力やパケット損失、遅延特性を首尾よく予測することができる。
【0040】
さて、管理ツール110について、DES等の優れたWLANシミュレーションツールを使用することに加え、当技術分野で周知のいかなるWLAN管理ツールも本システムに従って使用され得ることはいうまでもない。例えば、シスコネットワーク管理プログラムが使用されてもよい。WLAN管理ツールやソフトウェアは、WLANのパラメータを作成及び/又は調整するために、管理者やユーザに単一の管理点を提供することにより、WLAN140の管理や制御を簡潔にするよう構成されていることに注目すべきである。
【0041】
従って、シミュレーション速度が極めて速いDESシミュレーションツールとネットワーク管理プログラムは、予測可能なWLANパラメータの調整を行うためのWLAN管理ツールとして使用されてもよい。同様に、ネットワーク管理プログラムは、履歴情報を用いて同様のことを行ったり、場合によっては日々の時間ごとのトラフィック状況及び環境状況に合わせた特定の設定を用いたりするために、DESに接続されて使用されてもよい。
【0042】
シスコDESのような高速のWLANシミュレーションツール120を用いて、WLAN140はオペレーティングネットワーク内よりもむしろ擬似WLAN環境を通してすばやく最適化され得る。このアプローチによって、最適化の最中にWLAN140の性能に悪影響を及ぼすリスクを負うことなく、WLAN140の動的性質によって必要とされる最適化速度が得られることはいうまでもない。もちろん、あらかじめ定められた目標達成のためのシミュレーション処理に十分な速度を持つWLANシミュレータツール120(例えばシスコDES)を本システム100が利用することは、当業者には容易に理解できるであろう。
【0043】
前述の図1に示す例に戻ると、アプローチを実行するため、インタフェースモジュール130は、WLANシミュレータツール120とWLAN管理ツール110を相互に接続するよう使用される。インタフェースモジュール130は、WLAN管理ツール110とWLANシミュレータツール120の間で、ネットワーク構成及び/又は性能統計を送るように、適切に設けられる。ネットワーク構成及び性能統計はユーザにより定義された特性(例えば目標)であってもよいことはいうまでもない。その特性は、例えば、AP負荷(AP loading)統計であってもよいし、及び/又はユーザにより定義された選択あるいはネットワークデータの履歴等に基づいていてもよい。
【0044】
シミュレータツール120は、あらかじめ定義されたネットワーク構成あるいはユーザにより定義された目標に基づき、シミュレーションを通してWLAN140の最適化を行うよう適切に構成されていてもよい。次に、シミュレータツール120は、最適化されたネットワーク構成をインタフェースモジュール130を経て管理ツール110に送り戻すよう構成されていてもよい。その結果、管理ツール110は、取得した新たなネットワーク構成をWLAN140に適用するよう適切に構成されていてもよい。
【0045】
シミュレータツール120は、単独型の構成要素あるいは管理ツール110及び/又はインタフェースモジュール130に複合され得ることはいうまでもない。さらに、シミュレーションツール120は、新たな特性をネットワーク管理ツール110に最終的に転送するよう、インタフェースモジュール130のみに直接、通信するよう構成され得ることはいうまでもない。また、WLANシミュレータツール120及びWLAN管理ツール110が同一の場所に設置されていなくてもよいことはいうまでもない。言い換えれば、管理ツール110及びシミュレータツール120は物理的に異なる場所に設置されていてもよいし、また、インタフェースモジュール130あるいは当技術分野で周知の他の方法(例えばインターネット)を経て互いに通信しあうよう適切に構成され得ることはいうまでもない。
【0046】
一実施形態において、作動時に、ネットワークの特性はインタフェースモジュール130を経て、管理ツール110からシミュレーションツール120に転送されてもよい。次に、WLAN管理ツール110からの、あらかじめ定義された目標に対応するインプットされた特性を用い、WLANシミュレータ120は、新たなパラメータ設定(例えば特性)を選択し、多くの数的指標を参照してWLAN140への影響を予測するために、アルゴリズムを実行するよう適切に構成されていてもよい。例えば、シミュレータ120は全情報処理量、AP負荷及び/又は音声/データ配分等の数的指標を予測するよう有利に構成されていてもよい。
【0047】
WLAN140の性能のための一組の最適化パラメータ(例えば特性)及び/又は最適化目的関数(例えば目標)は、WLAN140のユーザが所望するいかなる条件にも対応するようユーザにより定義され得ることはいうまでもない。同様に、シミュレーションツール120が当技術分野で周知のいかなる適用可能な最適化アルゴリズムをも使用するよう構成され得ることは、当業者には容易に理解できるであろう。例えば、シミュレーションツール120は、ニュートン法、グラディエントサーチ、ニューラルネットワーク、全数検索等の最適化アルゴリズムを使用して最適化されたパラメータを決定するよう構成されていてもよい。
【0048】
もちろん、別の実施形態によれば、ネットワーク構成、目標及びその他のパラメータは当技術分野で周知のいかなるコンピュータ可読媒体を通してでも、維持あるいは保管され得ることはいうまでもない。
【0049】
別の実施形態では、システム100は、ユーザあるいは管理者が、データ速度にかかわらず通信範囲を最大化する、情報処理量を最大化する、あるいは特定のAPの場所を特定するといった、一般的なネットワーク構成の目標を選択することにより、方針をたてられるよう適切に構成されていてもよい。ユーザあるいは管理者が方針を立てると、シミュレーションツール120は収束アルゴリズムに対してその方針目標を適用するよう構成されていてもよい。次に、新たなWLAN設定あるいはネットワーク構成の結果は、その後検証されるかWLAN140に適用されてもよい。
【0050】
さらに本システムの別の実施形態では、WLAN140の通信範囲のマップが使用される。具体的に、このマップは、グラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)(図示せず)を経て表示されると、WLAN140に従ってネットワーク構成要素(例えばAP)の場所を特定し得る。この実施形態によれば、GUI(図示せず)は、ユーザあるいは管理者が、ネットワーク構成要素(例えばAP)を配置あるいは再配列するのに役立つよう適切に構成されていてもよい。従って、シミュレーションツール120に接続して使用される任意のGUI(図示せず)はWLAN140のネットワーク構成のいかなる変更の影響をも視覚的に示すよう構成されていてもよい。GUI(図示せず)が予測した結果を表示することにより、ユーザが新たなネットワーク構成を確認、あるいはシミュレーション要求をさらに絞り込むことが可能になり得ることは、当業者には容易に理解できるであろう。
【0051】
ユーザあるいは管理者がこのような新たな特徴もしくは特性をより効果的に利用するために、GUI(図示せず)が二次元グラフィック配列の無線ネットワークを提供するよう構成されていてもよいことはいうまでもない。さらに、GUI(図示せず)は、管理ツール110が提供する既存の論理図に加えさらに物理的な図を通して、ユーザがWLAN140を管理できるよう構成されていてもよい。同様に、その物理的な図を用いて、任意のGUI(図示せず)が無線パラメータ、警告概要、性能データ、不正なAP(rogue-AP)の場所等のシステム情報を表示するよう構成されていてもよい。
【0052】
図2に、本システムによるWLANシミュレーション/管理ツールに関する手順200を示す。
【0053】
図示された構成要素は『処理ブロック』を示し、プロセッサ、メカニズムあるいはその他のデバイスにファンクションやアクションを実行させ、及び/又は判断させる命令もしくは一群の命令を表す。あるいは、処理ブロックは、デジタル信号プロセッサ回路、特定用途向け集積回路(ASIC)あるいは別の論理回路等の機能的に同等の回路によって実行されたファンクション及び/又はアクションを表してもよい。
【0054】
この図は特定のプログラム言語の配列を表すものではない。むしろ、この図は、回路の組み立てのため、コンピュータソフトウェアの作成のため、あるいはハードウェアとソフトウェアの組み合わせを用いて図示された処理を実行するために、当業者が使用し得る機能的情報を示す。電子及びソフトウェアアプリケーションが、図示されたブロックがこの図とは別の順序で実行されるよう、及び/又はブロックが組み合わされるか複数の構成要素に分離され得るように、動的で適応性のあるプロセスを含み得ることはいうまでもない。
【0055】
図2を説明すると、手順200は、所定の条件(例えばユーザにより定義された目標)に基づき、WLANをシミュレートし管理する方法に関して説明されている。
【0056】
このプロセスはWLANの目標の認識から開始される(ブロック210)。WLANの目標はユーザにより定義されたパラメータを経て設定され得ることはいうまでもない。同様にWLANの目標は認識可能ないかなるネットワークパラメータであってもよいし、任意な、あるいはネットワークデータの履歴に基づくものであってもよい。例えば、WLANの目標は、情報処理時間(throughput time)を最大化するため、データ速度にかかわらず通信可能範囲の最大化を図るよう定義されていてもよい。
【0057】
次に、ブロック220において、システムは、現在のWLAN特性及びネットワーク構成を取得するよう適切に構成されている。言い換えれば、一実施形態において、現在のWLAN特性及びネットワーク構成及び/又は性能統計は、インタフェースモジュールにより、管理ツールから検索され得る。検索されると、現在のWLAN特性及びネットワーク構成は、管理ツールからインタフェースモジュールを経てシミュレーションツールに転送され得る(ブロック230)。
【0058】
現在のWLAN特性及びネットワーク構成を取得すると、システムは、好ましいWLANシミュレーション技術に基づき新たなWLAN構成を生成するよう構成され得る(ブロック240)。当技術分野で周知のいかなるWLANシミュレーション技術でも、本システム及び/又は手順の精神と範囲に反することなく使用され得ることはいうまでもない。
【0059】
判定ブロック250において、ブロック240のシミュレーションによってWLANの目標が達成されたかどうかを判定する質問が行われる。所望の目標が達成されていない場合、図2に示されているように、システムはシミュレーションを再開し、それにより新たなWLAN構成を生成する(ブロック240)。
【0060】
判定ブロック250において、ブロック240のシミュレーションを経てWLAN目標が達成されたとシステムが判定すると、システムは許容できる新たなWLAN構成を管理ツールに伝送する(ブロック260)。最後に、ブロック270において、新たなネットワーク構成はWLANに適用され、それにより、新たなネットワーク構成に従ったWLANの再構成及び/又は調整を促す。判定ブロック250において、WLANの目標が達成されていないとシステムが判定すると、新たな一組のネットワーク構成が最適化の実行により作り出される(ブロック280)。この新たな一組のネットワーク構成はその後、次のシミュレーションを繰り返すためにブロック240に送られる。
【0061】
図2に示されているように、ブロック240のシミュレーションは実行シミュレーションステップ(ブロック275)及び新たなネットワーク構成のWLANへの影響を予測するステップ(ブロック285)を含むことができることはいうまでもない。もちろん、これらのステップがシミュレーションブロック240内に含まれることは、当業者には容易に理解できるであろう。
【0062】
本発明を当該実施形態の記述により説明し、また、当該実施形態はかなり詳細に記述されているが、発明者には、添付の特許請求事項の範囲をそうした具体例に限定もしくは制限する意図はない。更なる利点や修正も当業者には容易に明らかになるであろう。従って、本発明は、その広義の解釈において、特定の詳細、代表的な装置、図示され説明された実施例に限定されることはない。よって、発明者の一般的な発明内容の精神あるいは範囲から逸脱することなくそのような説明から変更されることもあり得る。
【0063】
当然のことながら、図中に示された構成要素(例えば一個のボックス、一群のボックス、あるいは他の形状)の境界線はその一例を表しているにすぎない。一構成要素が複数の構成要素として記されてもよいし、複数の構成要素が一つの構成要素として記されてもよいことは、当業者には容易に理解できるであろう。ある構成要素の内部コンポーネントとして示されている別の構成要素は、外部コンポーネントとして実施されてもよいし、その反対も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】開示された実施形態によるシステムのブロック図である。
【図2】開示された実施形態による、WLANを調整及び/又は認識するための方法を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ローカルエリアネットワークのネットワーク構成を模擬するための処理システムにおいて使用されるコンピュータ可読媒体であって、
前記処理システムに、前記無線ローカルエリアネットワークの一組の原ネットワーク構成を決定させるネットワーク構成取得論理手段と、
前記処理システムに、目標に従って前記一組の原ネットワーク構成に基づき、結果をシミュレートさせるシミュレーション論理手段と、
前記処理システムに、前記結果に基づき、新たな一組のネットワーク構成を生成させるネットワーク構成生成論理手段と、
前記処理システムに、前記新たな一組のネットワーク構成を前記無線ローカルエリアネットワークに適用させる管理論理手段と、
を有するコンピュータ可読媒体。
【請求項2】
前記シミュレーション論理手段が離散事象シミュレーション論理手段である、請求項1記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項3】
前記処理システムに、前記結果が前記目標を達成しているかを判断させる分析論理手段をさらに有する、請求項1記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項4】
前記目標がユーザにより定義された目標である、請求項1記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項5】
前記目標が履歴に基づく目標である、請求項1記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項6】
前記シミュレーション論理手段が、前記処理システムに、前記新たな一組のネットワーク構成に基づき、無線ローカルエリアネットワークをシミュレートさせるシミュレーション実行論理手段を含む、請求項1記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項7】
前記アルゴリズムがニュートン法である、請求項6記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項8】
前記アルゴリズムがグラディエントサーチである、請求項6記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項9】
前記シミュレーション論理手段が、前記処理システムに、前記目標に基づき、新たな一組のネットワーク構成を最適化させる最適化論理手段を含む、請求項1記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項10】
前記シミュレーション論理手段が、前記処理システムに、前記新たな一組のネットワーク構成に基づき、前記無線ローカルエリアネットワークへの影響を予測させる予測論理手段を含む、請求項1記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項11】
前記影響が、全情報処理量、雑音抑制、アクセスポイント負荷(access point loading)及び音声/データ配分のうちの一つである、請求項10記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項12】
前記処理システムに、前記結果のグラフ表示をさせる表示論理手段をさらに含む、請求項1記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項13】
無線ローカルエリアネットワークをシミュレートし管理するシステムであって、
一組のネットワーク構成を生成するために目標を処理するように適合されたシミュレータ論理手段と、
前記一組のネットワーク構成を処理するように適合された管理論理手段と、
前記一組のネットワーク構成を前記管理論理手段に転送するように適合されたインタフェースモジュールと、
を有するシミュレーションシステム。
【請求項14】
前記シミュレータ論理手段がさらに前記一組のネットワーク構成を生成するために前記目標を処理するように適合された離散事象シミュレータ論理手段をさらに含む、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記目標から前記一組のネットワーク構成を設定するように適合されたネットワーク構成論理手段をさらに有する、請求項13記載のシステム。
【請求項16】
前記一組のネットワーク構成を維持するように適合されたコンピュータ可読媒体を含む、請求項13記載のシステム。
【請求項17】
無線ローカルエリアネットワークのネットワーク構成を調整する方法であって、
所望の条件を表す目標を設定するステップと、
一組の目標ネットワーク構成を生成するステップと、
前記一組の目標ネットワーク構成に基づき、離散事象シミュレーションを経て無線ローカルエリアネットワークをシミュレートするステップと、
前記シミュレーションに基づき、一組の結果ネットワーク構成を確立するステップと、
前記無線ローカルエリアネットワークに前記一組の結果ネットワーク構成を適用するステップと、
を有するネットワーク構成の調整方法。
【請求項18】
前記目標がユーザにより定義された目標である、請求項17記載のネットワーク構成の調整方法。
【請求項19】
前記目標が履歴に基づく目標を基礎とするものである、請求項17記載のネットワーク構成の調整方法。
【請求項20】
シミュレーションアルゴリズムを実行するステップをさらに有する、請求項17記載のネットワーク構成の調整方法。
【請求項21】
前記一組の目標ネットワーク構成に基づき影響を最適化するステップをさらに有する、請求項17記載のネットワーク構成の調整方法。
【請求項22】
前記一組の目標ネットワーク構成に基づき前記無線ローカルエリアネットワークへの影響を表示するステップをさらに有する、請求項17記載のネットワーク構成の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−519341(P2007−519341A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549267(P2006−549267)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/040778
【国際公開番号】WO2005/071993
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(398037284)シスコ テクノロジー インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】