説明

無線周波数搬送システム、光ファイバ無線変換器及び無線変換器

【課題】無線ネットワークのアーキテクチャに関し、より詳細には、無線ネットワークの範囲をトランスペアレントに拡大すると共に、ワイヤレス通信デバイス間で「直接通信」できるようにする。
【解決手段】有線によるトランスペアレントRF搬送システムを導入することで、複数の遠隔した通信エリアを、近くにあるかのように接続できるようになる。これらの通信エリアのうちの1つの中にある全てのワイヤレス通信デバイスが、あたかも見通すことができるかのように、これらの通信エリア内の任意の他のワイヤレス通信デバイスと通信することができるようになる。本発明は、有線によるトランスペアレントRF搬送システムの幾つかの実施の形態で用いることができる2インターフェースの変換器にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線ネットワークのアーキテクチャに関し、より詳細には、無線ネットワークの範囲をトランスペアレントに拡大すると共に、ワイヤレス通信デバイス間で「直接通信」できるようにするための、有線によるトランスペアレント無線周波数搬送システム(transparent wired radio frequency conveying system)に関する。
【0002】
これまで、多くの異なる技法及びアーキテクチャを用いて、ワイヤレス通信ネットワークが用いられてきた。無線伝送を用いることは、多数のアーチファクトを受ける通信チャネルを用いることを伴う。受信される信号の電力は、距離と共に急激に減少する。通信は、干渉、フェージング及び移動環境との相互作用を受けるので、結果として、通信エリアにおける無線受信能力は低化する。ワイヤレス通信デバイス間で通信できるようにする通信ネットワークを構築することを目的として、幾つかのアーキテクチャが試されてきた。ワイヤレス通信デバイスは、たとえば、移動電話、ラップトップコンピュータ、携帯情報端末、及び任意の種類のワイヤレスデバイスを含む。
【0003】
これらの解決策のうちの1つは、UWB(超広帯域)の枠組みの中で検討されるネットワークのような、パーベイシブ且つユビキタスなネットワークから成る。これらのネットワークでは、任意の2つの端末間での直接通信を確立できるようにするために、いずれの端末も、他の端末から見通すことができなければならない。これらのネットワークの短所のうちの1つは、その範囲である。典型的には、UWB通信は約10メートルの範囲を有するが、これは、そのようなネットワークが、この約10メートルの通信エリアに限定されることを意味する。このネットワークに属する全ての端末が、このように小さなエリア内に存在しなければならない。
【0004】
現在、最も多く用いられている解決策のうちの1つは、1つのアクセスポイント(WiFiのようなワイヤレスネットワークの場合)又は1つの基地局(GSM、UMTSのようなセルラーネットワークの場合)によって画定されるセルと、そのアクセスポイント(基地局)の周囲にあり、当該アクセスポイント(基地局)で無線伝送が可能な地理的エリアとを基にしており、それらのアクセスポイント(基地局)は、異なるエリアに属すると共に互いに有線で接続される。この解決策の場合、そのエリア内に幾つかの基地局が散在しており、ワイヤレス通信デバイス(移動電話、PDA、ノートブック)は、基地局を介して、互いに通信できなければならない。所与のワイヤレス通信デバイスが、別の遠隔したワイヤレス通信デバイスと通信できるようにするために、幾つかの解決策が提案されてきた。セルラーネットワークでは、第1のワイヤレス通信デバイスによって、最初に、その近くにある基地局との通信が確立される。基地局は、ファイバ又は銅線を通じて無線ネットワークコントローラ(RNC)に送信するために、信号を復調し、その信号を別の形式で変調し直す。RNCは、二地点間接続で、幾つかの基地局を接続し、その信号を正しい基地局にルーティングするためのルーティング機能を有する。こうして、その通信は、宛先のワイヤレス通信デバイスの近くにある第2の基地局に中継される。その後、最後に、第2の基地局と宛先のワイヤレス通信デバイスとの間に通信が確立される。この解決策は複雑な基地局及び無線ネットワークコントローラを必要とし、また、通信を発見し、設定し、且つワイヤレス通信デバイスを追跡するための通信のルーティングの管理も必要とする。
【0005】
同様に、互いに離隔している、異なるWiFiサービスエリアを、ルーティング能力を有するゲートウエイ装置を含む、有線リンク又はネットワークによって互いに接続することができる。
【0006】
基地局を簡単にすると共に、光リンク及び光ファイバ無線(Radio over Fiber)技法を用いることによって基地局のサービスエリアを拡大するために、第2の解決策が提案されている。そのような解決策では、基地局の代わりに、簡単な変換器が用いられ、全ての信号処理(変調、復調)が無線ネットワークコントローラにおいて果たされる。別の実施の形態では、従来の基地局に付加的なファイバリンクを追加してアンテナをデポートし、基地局の無線サービスエリアを拡張する。これらの解決策はワイヤレスネットワークの場合にも有効である。問題は、全ての通信が中央ノードの中を進み、1台の装置がこれらの通信を処理して2つのワイヤレス通信デバイスをリンクすることである。
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0346925号明細書(第3欄第35行目〜第4欄第36行目、第5欄第28行目〜第6欄第42行目、第7欄第20行目〜55行目、第8欄第55行目〜第9欄第39行目、第10欄第11行目〜31行目、図3)
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/266452号明細書
【0008】
これらの問題を克服するために、本発明は、有線によるトランスペアレントRF搬送システムを提案し、このシステムによれば、複数の遠隔した通信エリアを、近くにあるかのように接続できるようになる。本発明によれば、これらの通信エリアのうちの1つの中にある全てのワイヤレス通信デバイスが、あたかも見通すことができるかのように、これらの通信エリア内の任意の他のワイヤレス通信デバイスと通信することができる。
【0009】
本発明は、無線周波数搬送システムであって、第1の通信エリア内に備えられ、当該第1の通信エリアにおいて受信される第1の無線周波数信号から光信号を生成するトランスペアレント変換手段と、生成された光信号を第1の通信エリアから少なくとも1つの第2の通信エリアに直接移送する光学受動送信手段と、第2の通信エリア内に備えられ、移送された光信号の第2の無線周波数信号への変換を実行するトランスペアレント変換手段と、第2の通信エリア内で上記第2の無線周波数信号を送信する送信手段とを備える、無線周波数搬送システムに関する。
【0010】
本発明によるシステムは、受動的な光ファイバインフラストラクチャと、能動的なトランスペアレントエア/ワイヤ変換器(air/wire transducer)とを組み合わせることを基にする。無線信号が、エア・トゥ・ワイヤ変換器(air to wire transducer)によって光信号に変換され、有線で1つ又は複数のワイヤ・トゥ・エア変換器に送信されて、周囲に送信される。これらの変換器の間に、能動部品は不要である。そのようなシステムを用いるとき、第1の変換器の近くにあるワイヤレス通信デバイスによって送信される信号は、トランスペアレントに送信され、第2の変換器の近くにある第2のワイヤレス通信デバイスが受信できるようになる。本明細書では、「トランスペアレント」という用語は、エア・トゥ・ワイヤ、又はワイヤ・トゥ・エアのアナログ変換のみが行われ、変換器と端末デバイスとの間のシグナリングも、有線接続ネットワーク内のデジタルRF変調/復調も行われないことを意味する。無線周波数信号は、有線によるトランスペアレントRF搬送システムによって、完全にアナログ形式で送信され、搬送システムのいずれのステージにおいても、変調/復調は不要である。結果として、有線RF搬送技術内で、RF信号から情報を再生することもなければ、媒体アクセス制御(MAC)を処理することもない。この搬送システムによれば、端末デバイスにおいて既存の無線MACプロトコルのみを用いて、異なる無線通信エリアを互いにリンクすることができ、有線搬送システム用の付加的なMACプロトコルは不要である。これは、全てのデバイスが無線範囲内に位置することを検出すると直ちに互いに通信できるべきであるような、一群のワイヤレス通信デバイスから成るパーベイシブ且つユビキタスなシステムにおいて特に当てはまり且つ好都合である。
【0011】
集中管理方式のネットワークでは、光リンク及び変換器を用いて、アンテナが信号処理から分離される。全ての信号処理が中央ノード内に配置されるので、リモートアンテナ及び簡単な基地局が得られる。中央ノードを用いて、幾つかの通信エリアが互いにリンクされる。
【0012】
これに対して、提案される有線RF搬送システムは、2つの遠隔したグループのワイヤレス通信デバイスを直接接続することができる。第1のグループのワイヤレス通信デバイスのいずれかが、第2のグループのワイヤレス通信デバイスのいずれかと通信するために光リンクを用いる。有線RF搬送システムを用いることは、その存在に気が付かないという意味で、ワイヤレス通信デバイスにとって完全にトランスペアレントである。ワイヤレス通信デバイスにとって、その通信は、まさに、ワイヤレス通信デバイスが互いに近くにあるかのように行われる。その搬送システムを用いて、ワイヤレス通信デバイスは互いに見通せるようになる。一方、その有線RF搬送システムによれば、幾つかの通信が、そのシステムを通じて同時に行われるようになる。その搬送システムは、無線ネットワークの範囲をトランスペアレントに拡張する一種の導波路と見なすことができる。従来技術のシステムによれば、第1のグループの各デバイスは、第2のグループの近くに、リモートアンテナを備えていなければならなかった。
【0013】
そのようなシステムによれば、パーベイシブ且つユビキタスなネットワークの範囲を拡張できるようになる。
【0014】
本発明の特定の一実施の形態によれば、変換手段は双方向性である。
【0015】
この属性は、互いに通信することができる一群のワイヤレス通信デバイスから構成されるパーベイシブ且つユビキタスなネットワークにとって非常に有用である。
【0016】
本発明の特定の一実施の形態によれば、受動送信手段は、少なくとも1つの光結合器を含む。
【0017】
本発明の特定の一実施の形態によれば、無線周波数搬送システムは、変換手段であって、無線信号を送受信する少なくとも1つのアンテナと、上記受信される光信号を対応する無線周波数信号に変換する光検出器と、アンテナを用いて変換された無線周波数信号を送信する第1の増幅手段と、アンテナによって受信される無線周波数信号を増幅する第2の増幅手段と、増幅された受信無線信号を、対応する上記光信号に変換する光源と、少なくとも2つのインターフェースを結合する受動光結合手段とを備え、当該インターフェースは1つの光入力ポート及び1つの光出力ポートを備え、上記受動光結合手段は、いずれのインターフェースの入力ポート上において受信される光信号も、上記光検出器に向かって、また全てのインターフェースの出力ポートに送信されるように、且つ光源によって生成される光信号がインターフェースの出力ポートに送信されるように配置される、変換手段を備える。
【0018】
本実施の形態では、上記変換手段の上記インターフェースは、上記生成された光信号を、上記トランスペアレント変換手段から別のトランスペアレント変換手段に移送する上記受動送信手段に接続される。
【0019】
そのような2つのインターフェース変換器を用いることによって、任意の数の変換器から成るトランスペアレント分散有線RF搬送システムを構成できるようになる。そのようなネットワークは、変換器を追加又は除去することによって、容易に変更される。結果として、そのネットワークは、バストポロジネットワークになる。
【0020】
本発明は、無線変換器であって、無線信号を送受信する少なくとも1つのアンテナと、受信される光信号を対応する無線周波数信号に変換する光検出器と、アンテナを用いて変換された無線周波数信号を送信する第1の増幅手段と、アンテナによって受信される無線周波数信号を増幅する第2の増幅手段と、増幅された受信無線信号を、対応する光信号に変換する光源と、少なくとも2つのインターフェースを結合する受動光結合手段とを備え、インターフェースはそれぞれ1つの光入力ポート及び1つの光出力ポートを備え、上記受動光結合手段は、いずれのインターフェースの入力ポートにおいて受信される光信号も、上記光検出器に向かって、また全てのインターフェースの出力ポートに送信されるように、且つ光源からの光信号が全てのインターフェースの出力ポートに送信されるように配置される、無線変換器にも関する。
【0021】
そのような変換器によれば、容易且つ円滑なアップグレードの解決策を提供できるようになり、中央光相互接続ハードウエアを変換器内に分散させることができる。この変換器では、エア・トゥ・ワイヤ(air to wire)、又はワイヤ・トゥ・エアのアナログ変換のみが実施され、デジタルRF変調/復調は実施されない。
【0022】
本発明の特定の一実施の形態によれば、上記受動光結合手段は、1組の2×1基本光結合器を含む。
【0023】
本発明の特定の一実施の形態によれば、上記2×1基本光結合器は非対称である。
【0024】
そのような結合器を用いて、出力間のエネルギーバランスが改善される。
【0025】
本発明の特徴は、一例の実施形態の以下の説明を読むことからさらに明らかになる。その説明は、添付の図面を参照して行われる。
【0026】
ワイヤレスエリアネットワークは、パーベイシブ且つユビキタスなプライベートローカルエリアネットワーク(LAN)を可能にする。本明細書では、「パーベイシブ且つユビキタスな」という用語は、全てのワイヤレス通信デバイスが、そのサービスエリアの全ての点において概ね同じサービス品質で通信ネットワークにアクセスできるようにするネットワークを意味する。そのようなパーベイシブ且つユビキタスなワイヤレスプライベートエリアネットワークは、通常のLANアプリケーションよりも強力な、移動ユーザ中心のアプリケーションを可能にする。しかしながら、高速のデータ速度(100Mビット/秒を超える)が目標とされる一方で、ドア又は壁のような障害物によって遮られるエリアがあることに起因して、ネットワークのユビキタス及びパーベイシブ能力が制限されるので、プライベートエリア全体にわたって十分なサービス品質を保証することはできない。その際、大きな送信電力が必要とされる。一方、プライベートエリア間で電磁スペクトルを公平に分配するために、且つ、たとえば、現時点で又は将来に同じ場所に導入される無線システムを保護するために、電磁送信電力は制御されなければならない。これを果たす方法は、各ワイヤレス通信デバイスの個々の電磁送信電力の上限を定めることにあり、結果として、動作範囲は短くなる。これは典型的には、3.6GHzと10.1GHzとの間の超広帯域規制を考慮しながら、種々の制約を加えて、リンクバジェットが、10メートルを超えるワイヤレスプライベートローカルエリアネットワークのために必要とされるデータ速度を許容しないようにする場合に相当する。これらの制約の下では、二地点間ワイヤレス通信の典型的な範囲は、目標とされる環境に対応するエリアの典型的な大きさよりも小さい。ここで、目標とされる環境とは、たとえば、数十メートル×数十メートルで、対象とされるべき部屋が隣接しないことがある家庭環境及び企業環境である。さらに、そのパーベイシブ且つユビキタスなワイヤレスプライベートエリアネットワークは、低コストで配置すること、及び場合によっては容易に且つ低コストでアップグレードすることを目標とするために、柔軟に配置されなければならない。
【0027】
そのようなネットワークの範囲を拡張するための解決策は、大きく損失することなく、2つの異なる点の間で無線信号を搬送する方法を見つけることである。光ファイバ無線(radio over fiber)(RoF)技法を用いてこの目的を果たすために、光ファイバを用いることができる。RoFは、変調されたRF信号を送信するアナログ光リンクである。RF変調は、大抵の場合にデジタルであり、PSK、QAM、TCM、OFDM等の任意の通常の形をとる。光変調も、原理的には、種々の形式を有することができるが、強度変調が広く用いられる。これらの技法は、基地局にリモートアンテナを導入するために、また幾つかのリモートアンテナとの間で行われる信号処理を集中処理するために用いられてきた。無線周波数(RF)信号を、光ファイバにおいて送信されることになる光信号に変換することができ、大きく損失することなく、長距離にわたって送信できるようになる。
【0028】
図1は、エア・トゥ・ワイヤのトランスペアレント変換器を示す。アンテナ1.1によって受信されるRF信号が増幅器1.2に送信される。増幅されると、電気信号が光源(たとえばレーザダイオード1.3)に送信される。この光源は、光ファイバ1.4に挿入されることになる対応する光信号を送信するための役割を果たす。
【0029】
図2は、ワイヤ・トゥ・エアの逆トランスペアレント変換器を示す。この変換器は、光ファイバ2.4において光信号を受信する。これらの信号は光検出器(たとえばフォトダイオード2.3)に送信される。この光検出器は、それらの信号を対応するRF信号に変換する。このRF信号は増幅器2.2によって増幅され、アンテナ2.1によって送信される。
【0030】
図3によって示されるように、エア・トゥ・ワイヤの変換器と、ワイヤ・トゥ・エアの変換器とを組み合わせて、双方向のエア/ワイヤ変換器を形成することができる。そのような双方向変換器は、2つのアンテナ3.1及び3.2を用いることができ、2つの光ファイバから成る光ポートを提供する。第1のものは、光信号の受信専用に用いられ、Rxで示される。第2のものは光信号の送出専用に用いられ、Txで示される。そのような双方向変換器を実装するとき、2つのアンテナの実装は注意深く行われなければならない。送信と受信との間の結合は避けなければならない。1つの簡単な解決策は、2つのアンテナを十分に離して配置していかなる結合をも避けることであり、40cmが良好な距離と見なされるであろう。別法では、固有のアンテナを用いることを考えることもできる。
【0031】
簡単な有線によるトランスペアレントRF搬送システムは単に、図3に示されるような、2つの光ファイバによって互いに接続される、2つの双方向トランスペアレント変換器を用いることによって構築することができる。第1の変換器のRx入力が、第2の変換器のTx出力に接続される。第1の変換器のTx出力が、第2の変換器のRx入力に接続される。そのような有線RF搬送システムは、双方向に機能して、変換器のうちの1つの近くにおいて送信される任意のRF信号を、他の変換器の近くにトランスペアレントに移送することができる。第1の変換器の近くにある第1のワイヤレス通信デバイスは、第2の変換器の近くに位置する第2のワイヤレス通信デバイスと通信することができる。この属性は、互いに通信することができる一群のワイヤレス通信デバイスから構成されるパーベイシブ且つユビキタスなネットワークにとって非常に有用である。従来技術では、その際、これらのネットワークは、ある通信範囲までに制限され、その範囲は、たとえば、UWB(超広帯域)ネットワークの場合には非常に短く、たとえば約10メートルになることがある。本発明による有線RF搬送システムによれば、任意の距離だけ離れている2つの別々のネットワークエリアについて、これらを構成する全てのワイヤレス通信デバイスが同じグループ内で近くにあるかのように、これらのネットワークエリアを互いにリンクできるようになる。別法では、入力ポート又は出力ポートのみを提供するために、一方向変換器のみを用いて、一方向の有線トランスペアレントRF搬送システムを構築することができる。そのような場合には、一方向変換器は第1の通信エリアから第2の通信エリアまで一方向においてRF信号を送信するためにのみ用いられることになり、第2の通信エリアから第1の通信エリアへの送信には用いられないであろう。
【0032】
図4に示されるシステムのための光バジェットが計算される。第1のワイヤレス通信デバイス4.1、たとえば、移動電話又はワイヤレスノートブックが、ワイヤレスに、第1の双方向RoF変換器4.3と通信している。UWBシステムを考えると、ワイヤレス通信リンク4.2は、最大で10メートルであると考えられる。エア・トゥ・ワイヤ変換器4.3は、レーザの前段に、2つの増幅器、すなわち第1の低雑音増幅器(LNA)と、それに続く高電力増幅器(HPA)とを用いている。レーザによって生成される光信号は、その後、光ファイバ4.4を介して、ワイヤ・トゥ・エア変換器4.5に送信される。最後のワイヤレス送信4.6が、変換器4.5と第2のワイヤレス通信デバイス4.7との間で行われる。ワイヤレス伝送の損失は、信号の周波数による。
10GHzにおいて10mでは、72dBの損失が生じる。
5GHzにおいて10mでは、66dBの損失が生じる。
3GHzにおいて10mでは、62dBの損失が生じる。
10GHzにおいて5mでは、66dBの損失が生じる。
5GHzにおいて5mでは、60dBの損失が生じる。
3GHzにおいて5mでは、54dBの損失が生じる。
【0033】
以下の数値は、電力バジェットを計算するために用いられる。これらの値は、市販の部品から得られる。アンテナの利得は7dBである。10GHzにおいて用いられるLNAは、2.5dBの雑音指数の場合に40dBの利得を有し、8dBの最大出力電力を有する。10GHzにおいて用いられるHPAは、2.5dBの雑音指数の場合に30dBの利得を有し、18dBの最大出力電力を有する。それらのRoF部品によれば、−3dBのレーザの最大RF電力で、66dBの雑音指数の場合に6dBの損失がある。
【0034】
測定は、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)、すなわち安価な多モードレーザで実行された。得られた結果は、4.66dBのSNRで、480Mbpsにおいて10-5のビット誤り率が得られることを示す。これは、そのシステムによれば、ワイヤレスで10メートル離れた2つの接続点にわたって送信するときに、10dBの光損失が許容されることを意味する。10dBの損失によって、8×8光結合器を挿入できるようになる。この結合器によって、幾つかのアンテナを接続できるようになり、それゆえ、幾つかの通信エリアを関連付けることができるようになる。ワイヤレス距離が5メートル離れた2つの接続点に短縮される場合には、光損失は概ね12dBにすることができる。
【0035】
分布帰還型(DFB)レーザで、別の測定が行われた。そのレーザは1280nm〜1640nmの範囲内で動作する単一モードレーザであり、高い出力電力(+10dB)を有するが、VCSELよりも高額である。ワイヤレスで10メートル離れた2つの接続点の場合、許容される光損失は、約12dBのVCSELを用いるシステムと全く同じである。しかし、無線の距離が短縮されるとき、許容される光損失は急激に増加する。
【0036】
この光バジェットは、有線RF搬送システムの概念が、3つ以上のグループのワイヤレス通信デバイスを接続する分散有線RF搬送システムに拡張できることを示す。種々のトポロジを考えることができる。第1のトポロジが図5に示される。それは、N×N受動光結合器5.13を基にする。この種の光結合器は市販されており、たとえば、「Laser 2000」社によって提供される「single-mode single-window coupler star and tree」がある。この結合器は、たとえばN=4である場合には、4つの入力5.5、5.6、5.7及び5.8を有する。これらの入力がそれぞれ、4つの出力5.9、5.10、5.11及び5.12に受動的に分割される。各入力/出力対は、光ファイバによって、双方向変換器5.1、5.2、5.3及び5.4に接続される。そのようなアーキテクチャの結果として、任意の選択された数のグループのワイヤレス通信デバイスを相互接続する星形ネットワークが形成され、グループの数は選択された結合器の数Nに制限される。このインフラストラクチャは完全にトランスペアレントであり、変換器のうちの1つの近くにおいて送信される全てのRF信号が、他の全ての変換器にトランスペアレントに送信され、それらの近くにおいて送信される。これらの接続は双方向性であり、ワイヤレス通信デバイスが変換器のうちの1つの近くにあれば、任意の2つのワイヤレス通信デバイス間で無線通信できるようになる。結合器のうちの一方の側は光信号の受信専用であり、他方の側は光信号の送出専用である。信号を送信したインターフェースは、信号を受信もすることに留意されたい。それは、エコーになぞらえることができる。UWB無線通信を用いるとき、UWBは送出と受信との間にガード時間を保持するので、送受信しても困らない。
【0037】
新たな変換器を結合器の空いているブランチに接続することによって、ネットワークに新たな通信エリアを追加することができる。それ以上空いているブランチがない場合には、結合器を入れ替えること、又は主結合器に接続される付加的な結合器を追加することのいずれかによって、分割比を変更することができる。
【0038】
そうでない場合には、容易且つ円滑なアップグレードの解決策を提供するために、中央光相互接続ハードウエアを変換器内に分散させることができる。それを果たすために、図6に示されるような、2つの二重通信インターフェースを含む2インターフェースの変換器が提案される。この変換器では、アンテナ6.1及び6.2に接続される部分6.3を、図3に示される変換器が占める。したがって、その変換器は、増幅手段と共に、レーザダイオード及びフォトダイオード部品も備える。その変換器は、2つの光インターフェース6.6及び6.7を実装し、各インターフェースは、1つの光入力ポート及び1つの光出力ポートを含む。2つのインターフェース6.6及び6.7と、変換器6.3の入力及び出力との間に、結合器が挿入される。この結合器は、6つの2×1基本結合器から形成される。それらの結合器のうちの3つ6.5は、1つの入力及び2つの出力を有するスプリッタとして用いられる。それらの結合器のうちの3つ6.4は、2つの入力及び1つの出力を有するコンバイナとして用いられる。これらの基本結合器は完全に受動的である。幾つかの実施形態では、出力間のエネルギーバランスを改善するために、非対称な結合器が用いられ、たとえば、20%〜80%又は他の実効値が用いられる。この構成によれば、インターフェース6.6及び6.7のうちの一方のいずれかの入力に達する全ての信号は、変換器6.3に、且つ他方のインターフェースの出力に送信される。変換器6.3のアンテナ6.2によって受信される全てのRF信号は、2つのインターフェース6.6及び6.7の出力上に、対応する光信号として送信される。本明細書では、2つのインターフェースで説明されるが、同じ原理を適用して任意の数のインターフェースを有する変換器を構築するができ、いずれのインターフェースの入力ポート上で受信される光信号も、フォトダイオードに向かって、且つ、全てのインターフェースの出力ポートに送信され、レーザダイオードからの光信号は、全てのインターフェースの出力ポートに送信される。
【0039】
そのような2つのインターフェースの変換器を用いるとき、任意の数の変換器から成るトランスペアレント分散有線RF搬送システムを構築することができる。そのようなネットワークは、変換器を追加又は除去することによって、容易に変更される。それにより、バストポロジネットワークが形成される。3つの変換器を有する、そのようなネットワークが図7に示される。第1、第2及び第3の変換器7.1、7.2及び7.3が、第1のインターフェース及び第2のインターフェースを有する。第1の変換器の第2のインターフェースは、第2の変換器7.2の第1のインターフェースに接続される。第2の変換器の第2のインターフェースは、第3の変換器7.3の第1のインターフェースに接続される。
【0040】
このネットワークでは、任意の変換器の任意のアンテナの近くにおいて送信される任意のRF信号が、他の変換器に光学的に送信され、それらの変換器の近くにおいて送信される。星形アーキテクチャでは、信号を全ての変換器に分割するために用いられる全ての光学部品が、中央結合器内に集中して配置される。対照的に、バスアーキテクチャでは、これらの部品は変換器そのものに分散される。2つの手法は、概ね同じ性能をもたらす。
【0041】
そのようなトランスペアレント分散有線RF搬送システムは、任意の種類のRF信号を搬送することができる。したがって、システムの周波数帯域幅が、用いられる変換器に適合する限り、用いられる実際のネットワークの種類に関係なく、任意のRF通信システムのサービスエリアを改善するために、この手法を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】電気/ファイバトランスペアレント変換器を示す図である。
【図2】ファイバ/電気トランスペアレント変換器を示す図である。
【図3】双方向光ファイバ無線(RoF)トランスペアレント変換器の一実施形態を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態を用いる、2つのワイヤレス通信デバイス間での通信を示す図である。
【図5】有線によるトランスペアレントRF搬送システムのアーキテクチャの一例を示す図である。
【図6】双方向光ファイバ無線(RoF)トランスペアレント変換器の別の実施形態を示す図である。
【図7】有線によるトランスペアレントRF搬送システムのアーキテクチャの別の例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数搬送システムであって、
第1の通信エリア内に備えられ、前記第1の通信エリアにおいて受信される第1の無線周波数信号から光信号を生成するトランスペアレント変換手段と、
前記生成された光信号を前記第1の通信エリアから少なくとも1つの第2の通信エリアに直接移送する光学受動送信手段と、
前記第2の通信エリア内に備えられ、前記生成された光信号の第2の無線周波数信号への変換を実行するトランスペアレント変換手段と、
前記第2の通信エリア内で前記第2の無線周波数信号を送信する送信手段と
を備える、無線周波数搬送システム。
【請求項2】
前記変換手段は双方向性であることを特徴とする、請求項1に記載の無線周波数搬送システム。
【請求項3】
前記受動送信手段は、少なくとも1つの光結合器を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の無線周波数搬送システム。
【請求項4】
変換手段であって、
前記無線信号を送受信する少なくとも1つのアンテナと、
前記受信される光信号を対応する無線周波数信号に変換する光検出器と、
前記アンテナを用いて前記変換された無線周波数信号を送信する第1の増幅手段と、
前記アンテナによって受信される無線周波数信号を増幅する第2の増幅手段と、
前記増幅された受信無線信号を、対応する前記光信号に変換する光源と
を有する変換手段を備え、
前記変換手段は、さらに、
少なくとも2つのインターフェースを結合する受動光結合手段をさらに備え、
前記インターフェースは1つの光入力ポート及び1つの光出力ポートを備え、
前記受動光結合手段は、
いずれの前記インターフェースの前記入力ポート上において受信される光信号も、前記光検出器に向かって、また全ての前記インターフェースの前記出力ポートに送信されるように、且つ
前記光源によって生成される前記光信号が前記インターフェースの前記出力ポートに送信されるように
配置される
ことを特徴とし、かつ、
前記トランスペアレント変換手段の前記インターフェースは、前記生成された光信号を、前記トランスペアレント変換手段から別のトランスペアレント変換手段に移送する前記受動送信手段に接続されることを特徴とする、
請求項2に記載の無線周波数搬送システム。
【請求項5】
光ファイバ無線変換器であって、
無線信号を送受信する少なくとも1つのアンテナと、
受信される光信号を対応する無線周波数信号に変換する光検出器と、
前記アンテナを用いて前記変換された無線周波数信号を送信する第1の増幅手段と、
前記アンテナによって受信される無線周波数信号を増幅する第2の増幅手段と、
前記増幅された受信無線信号を、対応する光信号に変換する光源とを備える
光ファイバ無線変換器において、
前記光ファイバ無線変換器は、
少なくとも2つのインターフェースを結合する受動光結合手段をさらに備え、
前記インターフェースはそれぞれ1つの光入力ポート及び1つの光出力ポートを備え、
前記受動光結合手段は、
いずれの前記インターフェースの前記入力ポート上において受信される光信号も、前記光検出器に向かって、また全ての前記インターフェースの前記出力ポートに送信されるように、且つ
前記光源からの前記光信号が全ての前記インターフェースの前記出力ポートに送信されるように
配置される
ことを特徴とする、光ファイバ無線変換器。
【請求項6】
前記受動光結合手段は、1組の2×1基本光結合器を含むことを特徴とする、請求項5に記載の無線変換器。
【請求項7】
前記2×1基本光結合器のうちの幾つかは非対称であることを特徴とする、請求項6に記載の無線変換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−278499(P2008−278499A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−121515(P2008−121515)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(503163527)ミツビシ・エレクトリック・インフォメイション・テクノロジー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ (175)
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC INFORMATION TECHNOLOGY CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
【Fターム(参考)】