説明

無線周波数識別装置を有する本人確認用冊子

【課題】無線周波数識別装置を有する、パスポートなどの識別用冊子を提供する。
【解決手段】表表紙(16)および裏表紙(14)とからなる強化紙の表紙と、表表紙の裏面に表見返し(22)、裏表紙に表面に裏見返し(20)をそれぞれ張り合わせた内部頁と、チップ(12)およびチップの端子に接続されたアンテナからなる無線周波数識別装置(RFID)とを含む。アンテナは、表表紙および/または裏表紙の表面に位置し、対応する見返しに張り合わされる第1アンテナ部分(10)を有し、表および/または裏の見返しの表面に位置し、対応する表紙に張り合わされる第2アンテナ部分(18)を有する。見返しを表紙に貼り合わせるときにアンテナを形成するように、第1および第2のアンテナ部分を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスポートなどの本人確認用冊子に関し、特に、無線周波数識別装置を有する本人確認用冊子に関する。
【背景技術】
【0002】
立ち入りを制限された区域を移動する人々や1つの区域から別の区域に移る人々を識別するために、非接触無線周波数識別装置(RFID)の使用が増加している。アンテナとアンテナ端子に接続されたチップとで構成された装置が非接触RFIDである。チップは、通常は通電されておらず、リーダのアンテナとRFIDのアンテナの間の電磁結合によって、エネルギーを受け取り、RFIDとリーダの間で情報を交換する。特に、チップに記憶されている、RFIDを配した物品の持ち主の識別に関する情報やその人が立ち入りを制限された区域に入るための権限に関する情報を交換する。
【0003】
この方式では、パスポートにRFIDを組み込み、パスポートの持ち主の身元を確認することができる。チップのメモリは、パスポートの持ち主の身元や、出身国、国籍、訪問諸国の査証、入国日、移動の制限等といった情報を含む。米国特許第5、528、222および国際特許出願第WO/00/26856では、このようなパスポートについて記述している。ここにあげた文献では、RFIDは、パスポートの表紙の板紙に組み込まれている。通常、強化された表表紙の板紙とパスポート頁の折丁の遊び紙の間に挿入され、その表表紙の板紙の裏面に張り合わされている。
【0004】
残念ながら、不正を働く人物がこのようなパスポートを改竄し、そのパスポートから偽造パスポートを作ることは比較的容易である。不正を働く人物が、遊び紙を取り除いて、RFIDにアクセスし、表紙を別のRFIDを含む新しい表紙と取り替えるか、単にチップを別のチップと取り替えるだけで、RFIDが供給する情報は偽造パスポートに含まれる情報と一致する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、無線周波数識別装置を使用し、本人確認用冊子を改竄しようとする試みが何かなされると、無効となるような方法でアンテナを取り付けたパスポートなどの冊子を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明の対象は、本人確認用冊子、特にパスポートであり、表表紙と裏表紙の板紙で構成された強化紙の表紙と、表表紙の板紙の裏面に表の遊び紙、裏表紙の板紙の表面に裏の遊び紙をそれぞれ張り合わせた内部の折丁と、チップとチップの端子に接続したアンテナで構成した無線周波数識別装置(RFID)とを含み、RFIDの少なくとも一部は、表表紙の板紙と表の遊び紙の間か、裏表紙の板紙と裏の遊び紙の間に挿入されている。アンテナは、対応する遊び紙に貼り合わせるように設計された表表紙および/または裏表紙の板紙の表面に配置されたアンテナの第1部分と、対応する表紙の板紙に貼り合わせるように設計された表および/または裏の遊び紙の表面に配置されたアンテナの第2部分とを含み、アンテナの第1および第2の部分は、遊び紙を表紙の板紙に張り合わせると、接続してアンテナを構成する。
【0007】
本発明の目的、対象、および特徴は、添付図面と併せて下記の記述を読むことでいっそう明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の第1の実施形態によると、チップ12を含むアンテナの第1部分10は、図1Aに示したパスポートなどの本人確認用冊子の表紙14の裏表紙の板紙の裏面にある。表表紙の板紙16の裏面には、アンテナがない。アンテナの第1部分10は、頁に接着した金属片であればよいが、銀などの金属粒子を含んだインクをスクリーン印刷によって厚盛りすることによりアンテナをしっかりと固定することが好ましいことに留意されたい。
【0009】
図1Bに図示したアンテナの第2部分18は、折丁の表遊び紙22がアンテナを含まないとき、上述したスクリーン印刷によって、本人確認用冊子の頁の折丁の裏遊び紙20の裏面(裏面にあるため、図ではアンテナを点線で表している)に固定されるのが好ましい。
【0010】
仮に、この冊子は、本発明が好適に関するパスポートであるとすると、製造方法は、綴じ糸を使用して、折丁の内部頁を互いに結びつけることからなる。その後、表裏の遊び紙を表紙の板紙に貼り合わせる。遊び紙22は、表表紙の板紙16に貼り合わせ、裏遊び紙20は、裏表紙の板紙14に貼り合わせる。
【0011】
図2に示したように、アンテナの第1部分10およびアンテナの第2部分18は、張り合わせ時に、アンテナの第1部分10の端部24が、アンテナの第2部分18の端部28に接続し、アンテナの第1部分の端部26が、アンテナの第2部分18の端部30に接続するような方法で、裏表紙の板紙14および遊び紙20にそれぞれ配置される。
【0012】
アンテナの第1部分10の端部とアンテナの第2部分18の端部との間の接続は、単にアンテナの端部にある2つの部分を少し重ね合わせることによって行ってよい。このように重ね合わせれば、接触の確保には十分である。接続が主に容量性であれば、部分的な接触であっても十分であり、場合によっては接触がなくても十分である。静電容量値は、あまり関係がなく、アンテナの同調周波数(通常13.56MHz)を妨害することはあり得ないことに留意されたい。
【0013】
接続は、アンテナの第1および第2部分のうち1つ、例えば第1部分、の端部の両方に、接着剤を少量落とし、導電性エポキシ樹脂で作成されたノブを形成することによってなすこともできる。
【0014】
不正を働く人物がパスポートを偽造するために遊び紙を取り除こうとした場合、アンテナの2つの部分を分離しなければならず、スクリーン印刷することによってアンテナの欠けている部分を厚盛りしなければ、表紙と内部の頁の折丁を以後使用することができなくなる。アンテナの欠けている部分を厚盛りすることは容易ではない。
【0015】
図3A、3B、および図4に示した第2の実施形態によれば、アンテナの一部を表表紙と裏表紙の板紙に配置し、両板紙が交わる部分にある折り目に重なるようにする。そうすると、チップ42を備えるアンテナの第1部分40は、裏表紙の板紙44の表面にある部分と表表紙の板紙46の裏面にある部分を含む。
【0016】
アンテナの第2部分は、裏遊び紙50の裏面にはなく、パスポートの頁の折丁の表遊び紙52の表面だけに位置している(そのため図3Bでは点線で表している)。前述した実施形態にあったように、アンテナは、金属片であればよいが、導電性インクをスクリーン印刷により厚盛りして製作することが好ましいことに留意されたい。使用する導電性インクは、銀、金、銅および炭素などの導電性要素を入れたポリマーインクであることが好ましい。アンテナのスクリーン印刷に使用する材料は、導電性ポリマーなど可撓性材料であってもよい。アンテナを可撓性にして壊れないようにするために、銀または導電性要素を入れたエポキシ樹脂などの導電性材料をアンテナに冊子の折り目の位置で添加することによって、アンテナが冊子の折り目と重なる位置に可撓性の接合部を作成することもできる。
【0017】
遊び紙50および52を表紙の板紙44および46に貼り合わせるとき、アンテナの第1部分40の端部54はアンテナの第2部分48の端部58に接続し、アンテナの第1部分40の端部56はアンテナの第2部分48の端部60に接続する。
【0018】
前述の場合と同様、接続は、アンテナの2つの部分のうちの一部と一部を重ね合わせることで生じる簡単な接触によって行ってもよく、導電性エポキシ樹脂を用いて行ってもよい。
【0019】
第2の実施形態は、第1の実施形態にはない不可欠な特徴を提示する。さらに、第1の実施形態においては、アンテナは、パスポートの開閉を問わず平面的であり、よってアンテナとしての役割を常に果たす。第2の実施形態においては、アンテナは、パスポートを閉じると折りたたまれ、この場合は動作しない。従って、パスポートは、閉じた状態では読み取ることができず、開いてリーダの前に提示した場合にのみ読み取ることができる。このように、ポケットか鞄にパスポートがあるときに持ち主に気付かれずにパスポートを読み取られることはあり得ず、確実に安全であるという特徴を表している。
【0020】
しかしながら、第1の実施形態で、本人確認用冊子は、本発明が関するパスポートであるとすると、パスポートの中央の頁を構成する折丁の最後の頁に、パスポートを閉じたときに、アンテナ10および18の2部分とチップ42で構成されたRFIDに対して平らな遮蔽部をスクリーン印刷すると有利である。この遮蔽部は、頁の全面を覆うようにするのが好ましいが、アンテナ10および18の2つの部分によって画定される表面積を含む表面積を有する長方形に限定することもできる。遮蔽部は、導電性インクまたは導電性ポリマーを用いてスクリーン印刷され、均一な層で構成されるか、グリッド状またはチェック状のパターンで構成され、パターンの線と線または正方形の幅は、数ミリメートル程度、好ましくは1ミリメートルに等しい。パスポートを閉じると、アンテナは、平面的であるものの、遮蔽部が磁気シールドの役割を果たすため、磁気がアンテナを流れることはない。アンテナがアンテナとしての役割を果たさないので、チップは、電力を受け取らず、パスポートを閉じた状態でリーダに読み取られることはない。
【0021】
記述してきた実施形態の2つは限定的なものではなく、2枚の遊び紙を表紙の板紙2枚に貼り合わせるとき、アンテナ各部の両方が必ず接続される状態でありさえすれば、アンテナの各部は、表表紙および/または裏表紙の板紙か、表遊び紙および/または裏遊び紙に一部か全体を配置してよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】第1の実施形態におけるアンテナの第1部分が位置する表表紙および裏表紙の板紙からなる本発明による冊子の表紙を示す。
【図1B】第1の実施形態によるアンテナの第2部分が位置する冊子の遊び紙を表す。
【図2】張り合わせ時に、図1Aおよび図1Bに表したアンテナの第1部分および第2部分を並置することによるRFIDのアンテナ形成を示す冊子の斜視図を示す。
【図3A】第2の実施形態におけるアンテナの第1部分が位置する表表紙および裏表紙の板紙からなる本発明による冊子の表紙を示す。
【図3B】第2の実施形態によるアンテナの第2部分が位置する冊子の遊び紙を表す。
【図4】張り合わせ時に、図3Aおよび図3Bに表したアンテナの第1部分および第2部分からのRFIDのアンテナ形成を示す冊子の斜視図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表表紙の板紙(16または46)および裏表紙の板紙(14または44)で構成された強化紙の表紙と、前記表表紙の板紙の裏面に表遊び紙(22または52)、前記裏表紙の板紙の表面に裏遊び紙(20または50)をそれぞれ貼り合わせた内部の折丁と、チップおよびチップの端子に接続したアンテナで構成された無線周波数識別装置(RFID)と、を含み、前記RFIDの少なくとも一部は前記表表紙の板紙と前記表遊び紙の間か、または前記裏表紙の板紙と前記裏遊び紙の間に挿入された本人確認用冊子であって、
前記アンテナは、対応する遊び紙に貼り合わせるように設計された表表紙および/または裏表紙の前記板紙の表面に配置されたアンテナの第1部分(10または40)と、前記対応する表紙の板紙に貼り合わせるように設計された表および/または裏の前記遊び紙の表面に配置されたアンテナの第2部分(18または48)とを含み、前記アンテナの第1部分および第2部分は、前記遊び紙を前記表紙の板紙に貼り合わせる時、接続して前記アンテナを構成することを特徴とする本人確認用冊子。
【請求項2】
前記アンテナの第1部分(10または40)の端部(24,26,または54,56)と前記アンテナの第2部分(18または48)の端部(28,30または58,60)の間の接続は、アンテナの前記部分のうちの小さな2つの部分を端部で重ね合わせによる簡単な接触によってなされることを特徴とする請求項1に記載の本人確認用冊子。
【請求項3】
前記アンテナの第1部分(10または40)の端部(24,26または54,56)と前記アンテナの第2部分(18または48)の端部(28,30または58,60)の間の接続は、アンテナの前記部分の端部に導電性接着剤を少量配置することによってなされることを特徴とする請求項1に記載の本人確認用冊子。
【請求項4】
前記アンテナの第1部分(10)は、前記裏表紙の板紙(14)の表面に全部が位置し、前記アンテナの第2部分(18)は、前記裏遊び紙(20)の裏面に全部が位置することを特徴とする請求項1、2または3に記載の本人確認用冊子。
【請求項5】
前記冊子の中央の頁を構成する折丁の最後の頁に遮蔽部をスクリーン印刷し、この遮蔽部は、本人確認用冊子を閉じる時、アンテナ10および18とチップ42の2つの部分で構成されるRFIDに対して平らになることを特徴とする請求項4に記載の本人確認用冊子。
【請求項6】
前記アンテナの第1部分(40)は、前記裏表紙の板紙(44)の裏面に一部が位置し、前記表表紙の板紙(46)の表面に一部が位置するのに対し、前記アンテナの第2部分(48)は、前記表遊び紙(52)の表面に全部が位置し、前記表紙の板紙に前記遊び紙を張り合わせた後、アンテナの前記部分が並置し構成された前記アンテナは、リーダの前で前記冊子を開いたときにしか動作せず、前記冊子を閉じ、前記アンテナが折りたたまれているときは、前記リーダによって読み取られないことを特徴とする請求項1、2または3に記載の本人確認用冊子。
【請求項7】
前記冊子の折り目の位置で、銀を入れたエポキシ樹脂などの導電性材料を添加した可撓性の接合部をアンテナ上に配置することを特徴とする請求項6に記載の本人確認用冊子。
【請求項8】
前記アンテナの第1(10または40)および第2(18または48)の部分は、導電性インクを用いたスクリーン印刷によって作成することを特徴とする先行請求項のいずれかに記載の本人確認用冊子。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−513420(P2007−513420A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541973(P2006−541973)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/FR2004/003061
【国際公開番号】WO2005/057483
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(506178379)
【氏名又は名称原語表記】ASK S.A.
【Fターム(参考)】