説明

無線基地局及び通信制御方法

【課題】ハンドオーバを適切に実行する。
【解決手段】eNB1−1は、UE2との間の論理通信路であるEPSベアラ5において許容される遅延の大きさを示すQCI情報内の許容遅延時間に応じて、UE2のハンドオーバを実行すべきか否かを判定する。eNB1−1は、この判定においてUE2との間の無線状態と比較されるハンドオーバ閾値を調整する。この際、eNB1−1は、許容遅延時間が小さいほど、換言すれば、許容される遅延の大きさが小さいほど、UE2のハンドオーバを抑制するようにハンドオーバ閾値を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末との間で論理通信路が確立される無線基地局、及び、当該無線基地局における通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(3rd Generation Partnership Project)におけるLTE(Long Term Evolution)は、現在普及しているW−CDMAやCDMA2000といった第3世代携帯電話(3G)の通信方式と将来登場する第4世代携帯電話(4G)の通信方式との間の技術であり、第3.9世代携帯電話(3.9G)の通信方式とも呼ばれる。
【0003】
LTEを採用する無線通信システムでは、無線端末(UE)と無線基地局(eNB)との間で、Radio Bearer(ラジオベアラ)と呼ばれる論理的な通信路が確立される。また、UEとMME(Mobility Managemant Entity)及びSGW(Serving Gateway)を含むEPC(Evolved Packet Core)との間で、eNBを介するEPS(Evoluved Packet System)Bearer(EPSベアラ)と呼ばれる論理的な通信路が確立される。UEのハンドオーバが行われる場合、ハンドオーバ元のeNB(S−eNB)は、UEからのMeasurement Reportメッセージと称される無線情報を受信し、当該Measurement Reportメッセージに基づいて、UEのハンドオーバを実行すべきか否かを決定する。ハンドオーバの実行が決定された場合、S−eNBは、ハンドオーバ先のeNB(T−eNB)に対して、予めUEの受け入れを要求するためのHandover Requestメッセージを送信する。そして、S−eNBは、T−eNBからUEの受け入れ要求に応じることを示すHandover Request Ackメッセージを受信した場合に、UEに対してハンドオーバ指示のメッセージを送信する(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3GPP TS 36.300 V9.2.0,2009年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した無線通信システムにおいては、S−eNBは、UEからのMeasurement Reportメッセージに基づいて、UEのハンドオーバを実行すべきか否かを決定する。しかしながら、要求されるサービス品質であるQoS(Quality of Service)については考慮されていないため、必ずしも適切にハンドオーバが実行されるとは限らなかった。
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明は、ハンドオーバを適切に実行できる無線基地局及び通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、ネットワーク側装置(EPC3)に接続され、且つ、無線端末(UE2−1、UE2−2、UE2−3)と無線接続する無線基地局(eNB1−1)であって、前記無線端末のハンドオーバを制御する制御部(制御部202)を有し、前記制御部は、前記ハンドオーバの実行を決定するために、前記無線基地局と前記無線端末との間の無線状態を示す値を閾値と比較し、前記制御部は、前記無線端末と前記ネットワーク側装置との間に確立された論理通信路(EPSベアラ)において許容される遅延の大きさを示す許容遅延情報(QCI情報)に応じて、前記閾値を調整することを要旨とする。
【0008】
このような無線基地局は、無線端末とネットワーク側装置との間に確立される論理通信路において許容される遅延の大きさを示す許容遅延情報に応じて、閾値を調整する。閾値は、無線端末のハンドオーバの実行を決定する際に無線端末との間の無線状態を示す値と比較される。従って、ハンドオーバの実行の要否決定において、論理通信路において許容される遅延の大きさが考慮されることになり、ハンドオーバを適切に実行できる。
【0009】
本発明の第2の特徴は、前記制御部は、前記許容遅延情報によって示される許容される遅延の大きさが小さいほど、前記ハンドオーバを抑制するように前記閾値を調整することを要旨とする。
【0010】
本発明の第3の特徴は、前記制御部は、前記無線端末が受ける複数の通信サービス毎の前記許容遅延情報によって示される許容される遅延の大きさの平均値に応じて、前記閾値を調整することを要旨とする。
【0011】
本発明の第4の特徴は、前記制御部は、前記論理通信路に音声データが伝送される場合に、前記ハンドオーバを抑制するように前記閾値を調整することを要旨とする。
【0012】
本発明の第5の特徴は、ネットワーク側装置に接続され、且つ、無線端末と無線接続する無線基地局における通信制御方法であって、前記無線端末と前記ネットワーク側装置との間に確立された論理通信路において許容される遅延の大きさを示す許容遅延情報を取得するステップと、前記ハンドオーバの実行を決定するために、前記無線基地局と前記無線端末との間の無線状態を示す値を閾値を調整するステップとを含み、前記閾値を調整するステップでは、取得された前記許容遅延情報に応じて、前記閾値を調整することを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ハンドオーバを適切に実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムの全体概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に無線基地局の構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る無線基地局の第1の動作を示すシーケンス図である。
【図4】本発明の実施形態に係る無線基地局の第2の動作を示すシーケンス図である。
【図5】本発明の実施形態に係る無線基地局の第3の動作を示すシーケンス図である。
【図6】本発明の実施形態に係る無線基地局の第4の動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。具体的には、(1)無線通信システムの構成、(2)無線基地局の動作、(3)作用・効果、(4)その他の実施形態について説明する。以下の実施形態における図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0016】
(1)無線通信システムの構成
まず、本発明の実施形態に係る無線通信システムの構成について、(1.1)無線通信システムの全体概略構成、(1.2)無線基地局の構成の順に説明する。
【0017】
(1.1)無線通信システムの全体概略構成
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システム100の全体概略構成図である。
【0018】
図1に示す無線通信システム100は、LTEの無線通信システムである。この無線通信システム100は、無線基地局としてのLTE基地局(eNB)1−1、eNB1−2、eNB1−3と、無線端末(UE)2−1、UE2−2、UE2−3(以下、UE2−1乃至UE2−3をまとめて、適宜「UE2」と称する)と、ネットワーク側装置としてのEPC(Evolved Packet Core)3とを含む。これらのうち、EPC3は、MME(Mobility Management Entity)10及びSGW(Serving Gateway)20により構成される。
【0019】
図1において、EPC3とUE2−1との間には、eNB1−1を介する論理通信路であるEPS(Evoluved Packet System)Bearer(EPSベアラ)5−1が確立される。EPC3とUE2−2との間には、eNB1−1を介する論理通信路であるEPSベアラ5−2が確立され、EPC3とUE2−3との間には、eNB1−1を介する論理通信路であるEPSEPSベアラ5−3が確立されている(以下、EPSベアラ5−1乃至EPSベアラ5−3をまとめて、適宜「EPSベアラ5」と称する)。
【0020】
UE2は、上り方向の通信において、UE2が受ける通信サービス毎に、当該通信サービスに対応するデータであるSDF(Service Data Flow)をEPSベアラ5に割り当てて、EPC3に対する送信を行う。また、EPC3は、下り方向の通信において、UE2が受ける通信サービス毎に、当該通信サービスに対応するSDFを1つのEPSベアラ5に割り当てて、UE2に対する送信を行う。
【0021】
ここで、UE2が受ける通信サービスとは、音声サービスであるVoIP(Voice over IP)、ファイル転送サービスであるFTP(File Transfer Protocol)、ウェブアクセスのサービスであるHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)、ストリーミング再生のサービス等が挙げられる。
【0022】
また、eNB1−1、eNB1−2及びeNB1−3は、それぞれMME10との間で、S1インタフェースを介して制御データを送信及び受信し、SGW20との間で、S1インタフェースを介してユーザデータを送信及び受信する。また、eNB1−1、eNB1−2及びeNB1−3は、それぞれ他のeNBとの間で、X2インタフェースを介して通信を行う。
【0023】
(1.2)無線基地局の構成
図2は、eNB1−1の構成図である。なお、eNB1−2及びeNB1−3も同様の構成である。図2に示すeNB1−1は、制御部202、記憶部203、有線通信部204、無線通信部206及びアンテナ208を含む。
【0024】
制御部202は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)によって構成され、eNB1−1が具備する各種機能を制御する。記憶部203は、例えばメモリによって構成され、eNB1−1における制御などに用いられる各種情報を記憶する。
【0025】
有線通信部204は、MME10やSGW20との間で、データの送信及び受信を行う。無線通信部206は、RF回路、ベースバンド回路等を含み、変調及び復調、符号化及び復号等を行い、アンテナ208を介して、UE2との間で、無線信号の送信及び受信を行う。
【0026】
制御部202は、QCI取得部251、閾値調整部252、ハンドオーバ制御部254を含む。
【0027】
QCI取得部251は、自局であるeNB1−1の周辺のUE2毎のEPSベアラ5のぞれぞれにおいて許容される遅延の大きさを示す許容遅延情報としてのQCI(QoS Class Indicator)の情報を受信する。QCI情報は、eNB1−1に接続しているUE2又はMME10から送信される。QCI情報は、UE2が当該UE2とEPC3との間に確立されたEPSベアラ5を使用して通信サービスを受ける場合に、当該通信サービスに対応するQoSのクラスを示す識別子(QoSクラス識別子)、リソースの割り当て及び維持の優先順位を示す優先レベル、当該通信サービスにおいて許容される遅延時間(パケット遅延バジェット)等が含まれている。ここで、QCI取得部251は、UE2が複数の通信サービスを受ける場合には、通信サービス毎に、対応するCQI情報を受信する。
【0028】
ハンドオーバ制御部254は、各UE2によって周期的に送信されるメジャメントレポート(Measurement Report)のメッセージを受信する。Measurement Reportメッセージには、送信元のUE2が周辺のeNBからのリファレンス信号を受信した場合における、当該リファレンス信号の受信電力(RSRP:Reference Signal Received Power)と、周辺のeNBの識別情報としてのセルIDとが対応付けられて含まれる。ハンドオーバ制御部254は、Measurement Reportメッセージに含まれるRSRPを取得する。取得されるRSRPは、無線状態を示す情報(無線状態情報)である。
【0029】
次に、ハンドオーバ制御部254は、自局であるeNB1−1との間の無線状態が悪化しているUE2、換言すれば、ハンドオーバの対象となるUE2が存在するか否かを判定する。
【0030】
具体的には、ハンドオーバ制御部254は、Measurement Reportメッセージに含まれるRSRPのうち、自局のセルIDに対応付けられているRSRPを選択する。ハンドオーバ制御部254は、選択したRSRPが予め定められたハンドオーバ閾値である第1基準値以下であるか否かを判定する。ここで、第1基準値は、記憶部203に記憶されている。選択したRSRPが第1基準値以下である場合には、ハンドオーバ制御部254は、選択したRSRPに対応するUE2がハンドオーバの対象となるUE2であると判定する。
【0031】
ハンドオーバの対象となるUE2(ハンドオーバ対象UE2)が存在する場合、閾値調整部252は、ハンドオーバ対象UE2に対応するQCI情報、換言すれば、ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービス毎のQCI情報を取得する。具体的には、閾値調整部252は、各UE2からのQCI情報のうち、ハンドオーバ対象UE2から送信されたQCI情報を選択する。例えば、閾値調整部252は、自局のセルIDに対応付けられ、且つ、第1基準値以下のRSRPを含んだMeasurement Reportメッセージの送信元のIDを取得する。取得されるIDは、ハンドオーバ対象UE2のIDである。更に、閾値調整部252は、各UE2からのQCI情報のうち、ハンドオーバ対象UE2のIDを送信元のIDとして含むQCI情報を選択する。選択されるQCI情報は、ハンドオーバ対象UE2から送信されたQCI情報である。
【0032】
次に、閾値調整部252は、ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスに、VoIPの通信サービスが含まれているか否かを判定する。上述したように、QCI情報には、UE2がEPSベアラ5を使用して通信サービスを受ける場合に、当該通信サービスと1対1に対応するQoSクラス識別子を含む。従って、閾値調整部252は、QoSクラス識別子に基づいて、ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスに、VoIPの通信サービスが含まれるか否かを判定できる。
【0033】
次に、閾値調整部252は、以下の第1の処理又は第2の処理を行う。
【0034】
[第1の処理]
ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスにVoIPの通信サービスが含まれる場合、ハンドオーバ対象UE2に頻繁にハンドオーバが発生すると、通信中断時間が多くなるため、VoIPにおいて許容される遅延を超える可能性が高くなる。
【0035】
このため、閾値調整部252は、ハンドオーバ対象UE2におけるハンドオーバを抑制するための処理を行う。具体的には、閾値調整部252は、ハンドオーバ閾値を第1基準値よりも20%低下させる。新たなハンドオーバ閾値は、記憶部203に記憶される。
【0036】
一方、ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスにVoIPの通信サービスが含まれない場合、閾値調整部252は、ハンドオーバ対象UE2に対応するQCI情報に含まれる、許容される遅延時間(許容遅延時間)の平均値を算出する。
【0037】
次に、閾値調整部252は、算出した許容遅延時間の平均値が予め定められた第2基準値未満であるか否かを判定する。ここで、第2基準値は記憶部203に記憶されている。許容遅延時間の平均値が第2基準値未満である場合には、閾値調整部252は、ハンドオーバ閾値が第1基準値である場合よりは、ハンドオーバ対象UE2におけるハンドオーバを抑制するために、ハンドオーバ閾値を第1基準値よりも10%低下させる。新たなハンドオーバ閾値は、記憶部203に記憶される。一方、許容遅延時間の平均値の平均値が第2基準値以上である場合には、閾値調整部252は、ハンドオーバ閾値を第1基準値のままとする。
【0038】
[第2の処理]
ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスにVoIPの通信サービスが含まれる場合場合、閾値調整部252は、VoIPの通信サービスに対応するQCI情報に含まれる許容遅延時間に1より小さい係数αを乗算する。一方、ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスにVoIPの通信サービスが含まれない場合、閾値調整部252は、許容遅延時間に対する係数αの乗算を行わない。
【0039】
許容遅延時間に係数αの乗算を行った場合、又は、行わなかった場合の何れにおいても、次に、閾値調整部252は、ハンドオーバ対象UE2に対応するQCI情報に含まれる許容遅延時間の平均値を算出する。ここでは、VoIPの通信サービスに対応するQCI情報に含まれる許容遅延時間については、係数αが乗算された後の値である。
【0040】
次に、閾値調整部252は、算出した許容遅延時間の平均値が予め定められた第2基準値未満であるか否かを判定する。許容遅延時間の平均値が第2基準値未満である場合には、閾値調整部252は、ハンドオーバ閾値が第1基準値である場合よりは、ハンドオーバ対象UE2におけるハンドオーバを抑制するために、ハンドオーバ閾値を第1基準値よりも10%低下させる。新たなハンドオーバ閾値は、記憶部203に記憶される。一方、許容遅延時間の平均値が第2基準値以上である場合には、閾値調整部252は、ハンドオーバ閾値を第1基準値のままとする。
【0041】
閾値調整部252によってハンドオーバ閾値が調整された後、ハンドオーバ制御部254は、ハンドオーバ対象UE2と自局との間の無線状態がハンドオーバ閾値以下であるか否かを判定する。具体的には、ハンドオーバ制御部254は、ハンドオーバ対象UE2からのMeasurement Reportメッセージに含まれるRSRPのうち、自局のセルIDに対応付けられているRSRPを選択する。更に、ハンドオーバ制御部254は、選択したRSRPが予め定められたハンドオーバ閾値以下であるか否かを判定する。
【0042】
選択したRSRPが予め定められたハンドオーバ閾値以下である場合、ハンドオーバ制御部254は、ハンドオーバ対象UE2の接続先を自局であるeNB1−1から他のeNB(ハンドオーバ先eNB)に切り替えるためのハンドオーバ制御を行う。
【0043】
具体的には、ハンドオーバ制御部254は、ハンドオーバ対象UE2からのMeasurement Reportメッセージに含まれるRSRPのうち、自局のセルID以外のセルIDに対応付けられているRSRPを選択する。更に、ハンドオーバ制御部254は、選択したRSRPのうち、ハンドオーバ閾値よりも所定値以上大きいRSRPに対応付けられているセルIDを選択する。選択されるセルIDは、ハンドオーバ先の候補となるeNB(ハンドオーバ先候補eNB)のセルIDである。次に、ハンドオーバ制御部254は、ハンドオーバ先候補eNBのうち、対応するRSRPが最も大きいeNB(第1ハンドオーバ先候補eNB)に対して、Handover Requestメッセージを送信する。
【0044】
その後、第1ハンドオーバ先候補eNBからのハンドオーバを受け入れることを示すHandover Request Ackメッセージを受信した場合、ハンドオーバ制御部254は、第1ハンドオーバ先候補eNBをハンドオーバ先として決定し、ハンドオーバ対象UE2へHandover コマンドを送信する。
【0045】
一方、ハンドオーバ制御部254は、第1ハンドオーバ先候補eNBからのハンドオーバを拒否することを示すHandover Request Nackメッセージを受信した場合、ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスにVoIPの通信サービスが含まれるか否かを判定する。具体的には、ハンドオーバ制御部254は、ハンドオーバ対象UE2に対応するQCI情報に含まれるQoSクラス識別子に基づいて、ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスにVoIPの通信サービスが含まれるか否かを判定できる。
【0046】
次に、ハンドオーバ制御部254は、以下の第3の処理又は第4の処理を行う。
【0047】
[第3の処理]
ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスにVoIPの通信サービスが含まれる場合、ハンドオーバ制御部254は、第2ハンドオーバ先候補eNBに対して、Handover Requestメッセージを送信しないことを決定する。ここで、第2ハンドオーバ先候補eNBとは、ハンドオーバ対象UE2からのMeasurement ReportメッセージにセルIDが含まれ、且つ、自局以外であるeNB(ハンドオーバ先候補eNB)のうち、対応するRSRPが2番目に大きいeNB、あるいは、第1ハンドオーバ先候補eNB以外の全てのeNBを意味する。
【0048】
一方、ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスにVoIPの通信サービスが含まれない場合には、ハンドオーバ制御部254は、ハンドオーバ対象UE2に対応するQCI情報に含まれる許容遅延時間の平均値を算出する。
【0049】
次に、ハンドオーバ制御部254は、算出した許容遅延時間の平均値が予め定められた第4基準値未満であるか否かを判定する。ここで、第4基準値は記憶部203に記憶されている。許容遅延時間の平均値が第4基準値未満である場合には、ハンドオーバ制御部254は、第2ハンドオーバ先候補eNBに対して、Handover Requestメッセージを送信しないことを決定する。
【0050】
一方、許容遅延時間の平均値が予め定められた第4基準値以上である場合、ハンドオーバ制御部254は、第2ハンドオーバ先候補eNBに対して、Handover Requestメッセージを送信することを決定する。更に、ハンドオーバ制御部254は、第2ハンドオーバ先候補eNBに対して、Handover Requestメッセージを送信する。
【0051】
[第4の処理]
ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスにVoIPの通信サービスが含まれる場合、ハンドオーバ制御部254は、VoIPの通信サービスに対応するQCI情報に含まれる許容遅延時間に1より小さい係数βを乗算する。一方、ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスにVoIPの通信サービスが含まれない場合には、ハンドオーバ制御部254は、許容遅延時間に対する係数βの乗算を行わない。
【0052】
許容遅延時間に係数βの乗算を行った場合、又は、行わなかった場合の何れにおいても、次に、ハンドオーバ制御部254は、ハンドオーバ対象UE2に対応するQCI情報に含まれる許容遅延時間の平均値を算出する。ここでは、VoIPの通信サービスに対応するQCI情報に含まれる許容遅延時間については、係数βが乗算された後の値である。
【0053】
次に、ハンドオーバ制御部254は、算出した許容遅延時間の平均値が予め定められた第4基準値未満であるか否かを判定する。許容遅延時間の平均値が第4基準値未満である場合には、ハンドオーバ制御部254は、第2ハンドオーバ先候補eNBに対して、Handover Requestメッセージを送信しないことを決定する。
【0054】
一方、許容遅延時間の平均値が予め定められた第4基準値以上である場合、ハンドオーバ制御部254は、第2ハンドオーバ先候補eNBに対して、Handover Requestメッセージを送信することを決定する。更に、ハンドオーバ制御部254は、第2ハンドオーバ先候補eNBに対して、Handover Requestメッセージを送信する。
【0055】
(2)無線基地局の動作
次に、eNB1−1の動作を説明する。図3は、eNB1−1の第1の動作を示すシーケンス図である。
【0056】
ステップS101において、eNB1−1は、周辺のUE2から、当該UE2毎のEPSベアラ5のQCI情報を受信する。
【0057】
ステップS102において、eNB1−1は、UE2からのMeasurement Reportメッセージを受信する。更に、eNB1−1は、Measurement Reportメッセージに含まれるRSRP(無線状態情報)を取得する。
【0058】
ステップS103において、eNB1−1は、取得した無線状態情報に基づいて、自局との間の無線状態が悪化しているUE2(ハンドオーバ対象UE2)が存在するか否かを判定する。ハンドオーバ対象UE2が存在しない場合には、一連の動作が終了する。
【0059】
一方、ハンドオーバ対象UE2が存在する場合、ステップS104において、eNB1−1は、ハンドオーバ対象UE2に対応するQCI情報を取得する。
【0060】
ステップS105において、eNB1−1は、ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスに、VoIPの通信サービスが含まれるか否かを判定する。
【0061】
ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスに、VoIPの通信サービスが含まれる場合、ステップS106において、eNB1−1は、ハンドオーバ閾値を第1基準値よりも20%低下させる。
【0062】
一方、ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスに、VoIPの通信サービスが含まれない場合、ステップS107において、eNB1−1は、ハンドオーバ対象UE2に対応するQCI情報に含まれる許容遅延時間の平均値を算出する。
【0063】
ステップS108において、eNB1−1は、算出した許容遅延時間の平均値が予め定められた第2基準値未満であるか否かを判定する。
【0064】
許容遅延時間の平均値が第2基準値未満である場合には、ステップS109において、eNB1−1は、ハンドオーバ閾値を第1基準値よりも10%低下させる。
【0065】
ステップS106の後、ステップS109の後、又は、ステップS108において否定判断された後、ステップS110において、eNB1−1は、ハンドオーバ対象UE2と自局との間の無線状態がハンドオーバ閾値以下であるか否かを判定する。ハンドオーバ対象UE2と自局との間の無線状態がハンドオーバ閾値を超える場合には、一連の動作が終了する。一方、ハンドオーバ対象UE2と自局との間の無線状態がハンドオーバ閾値以下である場合には、ステップS111において、eNB1−1は、ハンドオーバ制御を行う。
【0066】
図4は、eNB1−1の第2の動作を示すシーケンス図である。
【0067】
ステップS151において、eNB1−1は、MME10から、周辺のUE2毎のEPSベアラ5のQCI情報を受信する。
【0068】
ステップS152乃至ステップS155の動作は、図3のステップS102乃至ステップS105の動作と同様であるので、その説明は省略する。
【0069】
ステップS155において、ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスに、VoIPの通信サービスが含まれると判定された場合、ステップS156において、eNB1−1は、VoIPの通信サービスに対応するQCI情報に含まれる許容遅延時間に1より小さい係数αを乗算する。
【0070】
ステップS156の後、又は、ステップS155において否定判断された後、ステップS157において、eNB1−1は、ハンドオーバ対象UE2に対応するQCI情報に含まれる許容遅延時間の平均値を算出する。
【0071】
ステップS158において、eNB1−1は、算出した許容遅延時間の平均値が予め定められた第2基準値未満であるか否かを判定する。許容遅延時間の平均値が第2基準値未満である場合には、ステップS159において、eNB1−1は、ハンドオーバ閾値を第1基準値よりも10%低下させる。
【0072】
ステップS159の後、又は、ステップS158において否定判断された後、ステップS160において、eNB1−1は、ハンドオーバ対象UE2と自局との間の無線状態がハンドオーバ閾値以下であるか否かを判定する。ハンドオーバ対象UE2と自局との間の無線状態がハンドオーバ閾値を超える場合には、一連の動作が終了する。一方、ハンドオーバ対象UE2と自局との間の無線状態がハンドオーバ閾値以下である場合には、ステップS161において、eNB1−1は、ハンドオーバ制御を行う。
【0073】
図5は、eNB1−1の第3の動作を示すシーケンス図である。図5に示す動作は、図3のステップS111及び図4のステップS161の動作の一部として行われる。
【0074】
ステップS201において、eNB1−1は、第1ハンドオーバ先候補eNBに対して、Handover Requestメッセージを送信する。
【0075】
ステップS202において、eNB1−1は、第1ハンドオーバ先候補eNBからのHandover Request Ackメッセージを受信したか否かを判定する。Handover Request Ackメッセージを受信した場合には、一連の動作が終了する。そして、eNB1−1は、第1ハンドオーバ先候補eNBをハンドオーバ先として決定し、ハンドオーバ対象UE2へHandover コマンドを送信する。
【0076】
一方、Handover Request Ackメッセージを受信していない場合には、eNB1−1は、第1ハンドオーバ先候補eNBからのHandover Request Nackメッセージを受信したか否かを判定する。Handover Request Nackメッセージを受信していない場合には、ステップS202以降の動作が繰り返される。
【0077】
一方、Handover Request Nackメッセージを受信した場合、ステップS204において、eNB1−1は、ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスに、VoIPの通信サービスが含まれるか否かを判定する。
【0078】
ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスに、VoIPの通信サービスが含まれる場合、ステップS205において、eNB1−1は、第2ハンドオーバ先候補eNBに対して、Handover Requestメッセージを送信しないことを決定する。
【0079】
一方、ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスに、VoIPの通信サービスが含まれない場合には、ステップS206において、eNB1−1は、ハンドオーバ対象UE2に対応するQCI情報に含まれる許容遅延時間の平均値を算出する。
【0080】
ステップS207において、eNB1−1は、算出した許容遅延時間の平均値が予め定められた第4基準値未満であるか否かを判定する。
【0081】
許容遅延時間の平均値が第4基準値未満である場合には、ステップS205において、eNB1−1は、第2ハンドオーバ先候補eNBに対して、Handover Requestメッセージを送信しないことを決定する。
【0082】
一方、許容遅延時間の平均値が第4基準値以上である場合には、ステップS208において、eNB1−1は、第2ハンドオーバ先候補eNBに対して、Handover Requestメッセージを送信することを決定する。ステップS209において、eNB1−1は、第2ハンドオーバ先候補eNBに対して、Handover Requestメッセージを送信する。
【0083】
図6は、eNB1−1の第4の動作を示すシーケンス図である。図6に示す動作は、図3のステップS111及び図4のステップS161の動作の一部として行われる。
【0084】
ステップS251乃至ステップS254の動作は、図5のステップS201乃至ステップS204の動作と同様であるので、その説明は省略する。
【0085】
ステップS254において、ハンドオーバ対象UE2が受ける通信サービスに、VoIPの通信サービスが含まれると判定された場合、ステップS255において、eNB1−1は、VoIPの通信サービスに対応するQCI情報に含まれる許容遅延時間に1より小さい係数βを乗算する。
【0086】
ステップS255の後、又は、ステップS254において否定判断された後、eNB1−1は、ハンドオーバ対象UE2に対応するQCI情報に含まれる許容遅延時間の平均値を算出する。
【0087】
ステップS257において、eNB1−1は、算出した許容遅延時間の平均値が予め定められた第4基準値未満であるか否かを判定する。許容遅延時間の平均値が第4基準値未満である場合には、ステップS258において、eNB1−1は、第2ハンドオーバ先候補eNBに対して、Handover Requestメッセージを送信しないことを決定する。
【0088】
一方、許容遅延時間の平均値が予め定められた第4基準値以上である場合には、ステップS259において、eNB1−1は、第2ハンドオーバ先候補eNBに対して、Handover Requestメッセージを送信することを決定する。更に、ステップS260において、eNB1−1は、第2ハンドオーバ先候補eNBに対して、Handover Requestメッセージを送信する。
【0089】
(3)作用・効果
本発明の実施形態に係る無線通信システム100において、eNB1−1は、UE2とPC3との間に確立され、eNB1−1を介する論理通信路であるEPSベアラ5において、通信サービス毎の許容される遅延の大きさを示すQCI情報内の許容遅延時間に応じて、UE2のハンドオーバを実行すべきか否かを判定する。eNB1−1は、この判定においてUE2との間の無線状態と比較されるハンドオーバ閾値を調整する。具体的には、eNB1−1は、許容遅延時間が小さいほど、換言すれば、許容される遅延の大きさが小さいほど、UE2のハンドオーバを抑制するようにハンドオーバ閾値を調整する。従って、ハンドオーバの実行の要否決定において、UE2との間のEPSベアラ5において許容される遅延が小さいほど、ハンドオーバが抑制される。
【0090】
また、eNB1−1は、第1ハンドオーバ先候補eNBからのハンドオーバを拒否することを示すHandover Request Nackメッセージを受信した場合、許容遅延時間に応じて、第2ハンドオーバ先候補eNBへHandover Requestメッセージを送信する必要があるか否かを判定し、送信する必要があれば、送信し、送信する必要がない場合には、送信しない。具体的には、eNB1−1は、許容遅延時間が小さいほど、換言すれば、許容される遅延の大きさが小さいほど、第2ハンドオーバ先候補eNBへHandover Requestメッセージを送信しにくくなるように制御を行う。従って、ハンドオーバの実行の要否決定において、UE2との間のEPSベアラ5において許容される遅延が小さいほど、ハンドオーバが抑制される。
【0091】
(4)その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0092】
上述した実施形態では、MeNB1−1は、QCI情報に含まれる許容遅延時間に基づいて、ハンドオーバ閾値の調整や、第2ハンドオーバ先候補eNBに対するHandover Requestメッセージの送信要否の判定を行ったが、EPSベアラ5において許容される遅延の大きさを示す情報であれば、当該情報に基づいて、ハンドオーバ閾値の調整や、第2ハンドオーバ先候補eNBに対するHandover Requestメッセージの送信要否の判定を行うことができる。
【0093】
上述した実施形態では、LTEシステムについて説明したが、WiMAX(IEEE 802.16)に基づく無線通信システム等、他の無線通信システムに対して本発明を適用してもよい。
【0094】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0095】
1−1、1−2、1−3…eNB、2−1、2−2、2−3…UE、3…EPC、5−1、5−2、5−3…EPSベアラ、10…MME、20…SGW、100…無線通信システム、202…制御部、203…記憶部、204…有線通信部、206…無線通信部、208…アンテナ、251…QCI取得部、252…閾値調整部、254…ハンドオーバ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク側装置に接続され、且つ、無線端末と無線接続する無線基地局であって、
前記無線端末のハンドオーバを制御する制御部を有し、
前記制御部は、
前記ハンドオーバの実行を決定するために、前記無線基地局と前記無線端末との間の無線状態を示す値を閾値と比較し、
前記制御部は、
前記無線端末と前記ネットワーク側装置との間に確立された論理通信路において許容される遅延の大きさを示す許容遅延情報に応じて、前記閾値を調整する無線基地局。
【請求項2】
前記制御部は、前記許容遅延情報によって示される許容される遅延の大きさが小さいほど、前記ハンドオーバを抑制するように前記閾値を調整する請求項1に記載の無線基地局。
【請求項3】
前記制御部は、前記無線端末が受ける複数の通信サービス毎の前記許容遅延情報によって示される許容される遅延の大きさの平均値に応じて、前記閾値を調整する請求項1又は2に記載の無線基地局。
【請求項4】
前記制御部は、前記論理通信路に音声データが伝送される場合に、前記ハンドオーバを抑制するように前記閾値を調整する請求項1乃至3の何れかに記載の無線基地局。
【請求項5】
ネットワーク側装置に接続され、且つ、無線端末と無線接続する無線基地局における通信制御方法であって、
前記無線端末と前記ネットワーク側装置との間に確立された論理通信路において許容される遅延の大きさを示す許容遅延情報を取得するステップと、
前記ハンドオーバの実行を決定するために、前記無線基地局と前記無線端末との間の無線状態を示す値を閾値を調整するステップと
を含み、
前記閾値を調整するステップでは、
取得された前記許容遅延情報に応じて、前記閾値を調整する通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−10300(P2012−10300A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146979(P2010−146979)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】