説明

無線基地局装置、故障検出方法及び受信回路

【課題】ベースバンド信号の出力レベルの低下を引き起こす回路故障の検出を行う。
【解決手段】制御部20は、アンテナ10−1が捕捉した無線信号を所定の調整増幅量で増幅し、増幅した無線信号を当該アンテナ10−1に対応する無線部31−1に出力する。次に、受信部30−1の無線部31−1、31−2は、対応するアンテナ10−1、10−2が捕捉した無線信号をベースバンド信号に変換する。次に、検出部33は、無線部31−1が出力するベースバンド信号の出力レベルと、無線部31−2が出力するベースバンド信号の出力レベルとの差を算出し、算出した電力差と調整増幅量との差が所定の閾値より大きい場合に、無線部31−1が故障していると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナのダイバーシティによる受信を行う受信部を備える無線基地局装置、故障検出方法及び受信回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話などの無線通信の通信方式として、CDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多重アクセス)が用いられている。CDMAは、1つの周波数で複数のユーザの信号を搬送することができるため、周波数効率に優れている。CDMAでは、複数のユーザの信号の各々に互いに異なる拡散符号を乗算して多重する制御が行われている。
【0003】
そのため、無線基地局装置が実際に受信する信号の振幅変動は激しく急峻であり、安定した利得を得ることができない。そのため、入力信号が適当な入力レベルを有しない場合、A/D(Analog / Digital)コンバータによる量子化の際に誤差が大きくなってしまうという問題がある。
これに対して、受信電力の利得を自動制御し、安定した利得を得るAGC(Auto Gain Control:自動利得制御)技術が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。これにより、入力信号の入力レベルを一定に補正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−274646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の無線基地局装置は、無線信号のダウンコンバートにより出力されるベースバンド信号の出力レベルが、受信回路の故障により正常時の出力レベルより著しく小さくなっていた場合にも、AGC処理により受信信号のレベル変動が吸収され、所定の入力レベルにまで引き上げられてしまう。このため、A/Dコンバータにおける入力レベルが故障時と正常時とで同じとなり、故障の検出ができず、故障している受信回路を使用し続ける惧れがあった。なお、このとき、AGC処理によりレベルを引き上げられたベースバンド信号は、元のレベルが小さいために、信号対雑音比が大きくなり、ビット誤り率が悪化することとなるため、故障に対する早急な対応が必要である。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ベースバンド信号の出力レベルの低下を引き起こす回路故障の検出を行うことができる無線基地局装置、故障検出方法及び受信回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、複数のアンテナによる受信を行う受信部を備える無線基地局装置であって、前記受信部は、前記複数のアンテナのうち何れか1つのアンテナが捕捉した無線信号を所定の調整増幅量で増幅し、増幅した無線信号を出力する高周波増幅部と、前記複数のアンテナのそれぞれに対応する複数の無線部であって、対応するアンテナが捕捉した無線信号が前記高周波増幅部により増幅されている場合は、前記高周波増幅部が出力した無線信号をベースバンド信号に変換し、対応するアンテナが捕捉した無線信号が前記高周波増幅部により増幅されていない場合は、当該アンテナが捕捉した無線信号をベースバンド信号に変換する無線部と、前記高周波増幅部が増幅した無線信号を入力した無線部が出力するベースバンド信号の出力レベルと、他の無線部が出力するベースバンド信号の出力レベルとの電力差を算出するレベル比較部と、前記レベル比較部が算出した電力差と前記調整増幅量との差が所定の閾値より大きい場合に、前記高周波増幅部が増幅した無線信号を入力した無線部が故障していると判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、複数のアンテナによる受信を行う受信部を備える無線基地局装置を用いた故障検出方法であって、前記受信部の高周波増幅部は、前記複数のアンテナのうち何れか1つのアンテナが捕捉した無線信号を所定の調整増幅量で増幅し、増幅した無線信号を出力し、前記複数のアンテナのそれぞれに対応する前記受信部の複数の無線部は、対応するアンテナが捕捉した無線信号が前記高周波増幅部により増幅されている場合は、前記高周波増幅部が出力した無線信号をベースバンド信号に変換し、対応するアンテナが捕捉した無線信号が前記高周波増幅部により増幅されていない場合は、当該アンテナが捕捉した無線信号をベースバンド信号に変換し、前記受信部のレベル比較部は、前記高周波増幅部が増幅した無線信号を入力した無線部が出力するベースバンド信号の出力レベルと、他の無線部が出力するベースバンド信号の出力レベルとの差を算出し、前記受信部の判定部は、前記レベル比較部が算出した電力差と前記調整増幅量との差が所定の閾値より大きい場合に、前記高周波増幅部が増幅した無線信号を入力した無線部が故障していると判定する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、複数のアンテナによる受信を行う受信回路であって、前記複数のアンテナのうち何れか1つのアンテナが捕捉した無線信号を所定の調整増幅量で増幅し、増幅した無線信号を出力する高周波増幅回路と、前記複数のアンテナのそれぞれに対応する複数の無線回路であって、対応するアンテナが捕捉した無線信号が前記高周波増幅回路により増幅されている場合は、前記高周波増幅回路が出力した無線信号をベースバンド信号に変換し、対応するアンテナが捕捉した無線信号が前記高周波増幅回路により増幅されていない場合は、当該アンテナが捕捉した無線信号をベースバンド信号に変換する無線回路と、前記高周波増幅回路が増幅した無線信号を入力した無線回路が出力するベースバンド信号の出力レベルと、他の無線回路が出力するベースバンド信号の出力レベルとの差を算出するレベル比較回路と、前記レベル比較回路が算出した電力差と前記調整増幅量との差が所定の閾値より大きい場合に、前記高周波増幅回路が増幅した無線信号を入力した無線回路が故障していると判定する判定回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、あるアンテナからの無線信号のレベルを変動させ、当該アンテナに対応する無線部の出力信号のレベルと、他のアンテナに対応する無線部の出力信号のレベルとを比較することにより、ベースバンド信号の出力レベルの低下を引き起こす回路故障の検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による無線基地局装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態によるデータ処理部及び検出部の構成を示す概略ブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による制御部の構成を示す概略ブロック図である。
【図4】無線基地局装置の通常時の動作を示すフローチャートである。
【図5】無線基地局装置の故障検出時の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態による無線基地局装置の構成を示す概略ブロック図である。
無線基地局装置1は、アンテナ10−1〜10−(2n)、制御部20、受信部30−1〜30−n、情報監視部40を備える。但し、nは2以上の整数である。受信部30−1〜30−nは、それぞれ無線部31−1〜31−2、データ処理部32、検出部33を備える。無線基地局装置1は、CDMAによる信号の受信を行う。
【0012】
アンテナ10−1〜10−(2n)は、2本毎に受信ダイバーシティ構成を有する。
制御部20は、アンテナ10−1〜10−(2n)が捕捉した無線信号の出力先、及び無線信号の出力レベルを制御する。
無線部31−1〜31−2は、対応するアンテナ10−1〜10−(2n)が捕捉した無線信号をベースバンド信号に変換する。なお、無線部31−1〜31−2は、アンプ、ミキサ、フィルタ等により構成される。
データ処理部32は、無線部31−1〜31−2が出力するベースバンド信号をAGC機能により所定のレベルに増幅し、A/D変換を行う。データ処理部32は、A/D変換を行った信号を受信データとして情報監視部40に出力する。また、データ処理部32は、無線部31−1〜31−2から入力したベースバンド信号をAGC機能により増幅する。また、データ処理部32は、AGC機能で増幅した増幅量を算出し、当該増幅量を示すレベル調整信号を検出部33に出力する。
検出部33は、データ処理部32から入力した無線部31−1のレベル調整信号が示す増幅量と無線部31−2のレベル調整信号が示す増幅量との差を算出し、当該差が所定の閾値を超える場合に故障検出信号を情報監視部40に出力する。
【0013】
情報監視部40は、各受信部30−1〜30−nのデータ処理部32が出力する受信データに基づき、各受信部30−1〜30−nからデータの受信を行っているユーザの数を監視する。また、情報監視部40は、当該ユーザ数に基づいて故障判定対象とする受信部30−1〜30−nを決定する。また、情報監視部40は、故障判定対象となる受信部30−1〜30−nを決定すると、当該受信部に対応するアンテナの何れか1つの出力レベルを制御するレベル調整信号を制御部20に出力する。ここで、レベル調整信号は、出力レベルを増幅させるアンテナを示す情報とレベルの増幅量とを示す信号である。
【0014】
また、情報監視部40は、検出部33から故障検出信号を入力した場合に、レベル調整信号によって出力レベルを制御したアンテナに対応する無線部に故障が発生していると判定する。また、情報監視部40は、故障していると判定した場合、故障のレベルによって制御部20にルート切替信号を出力し、故障している受信部に対応するアンテナが捕捉した無線信号の出力先を他の受信部30−1〜10−nに切り替える。
【0015】
図2は、本発明の一実施形態によるデータ処理部及び検出部の構成を示す概略ブロック図である。
データ処理部32は、受信レベル制御部321−1〜321−2、受信レベル算出部322−1〜322−2を備える。また、検出部33は、レベル比較部331、判定部332を備える。
【0016】
受信レベル制御部321−1、321−2は、それぞれ無線部31−1、31−2からベースバンド信号を入力し、受信レベル算出部322−1、322−2から入力するレベル調整信号が示す増幅量でベースバンド信号の増幅を行う。
受信レベル算出部322−1、322−2は、それぞれ受信レベル制御部321−1、321−2が入力したベースバンド信号の入力レベルを取得し、AGC機能による所定の出力レベルとの差を算出し、当該差を示すレベル調整信号を受信レベル制御部321−1、321−2及びレベル比較部331に出力する。また、受信レベル制御部321−1、321−2が増幅を行ったベースバンド信号をA/D変換し、情報監視部40に出力する。
なお、受信レベル制御部321−1、321−2と受信レベル算出部322−1、322−2とは協働してAGC機能を実現する。
【0017】
レベル比較部331は、受信レベル算出部322−1、322−2からレベル調整信号を取得し、両レベル調整信号の差を算出する。
判定部332は、レベル比較部331が算出したレベル調整信号が示す増幅量の差を取得し、情報監視部40が出力したレベル調整信号が示す増幅量と当該差の値とを比較し、差の値と増幅量との差が所定の閾値を超える場合に、故障検出信号を出力する。
【0018】
図3は、本発明の一実施形態による制御部の構成を示す概略ブロック図である。
制御部20は、スイッチ部21、高周波増幅部22−1〜22−(2n)を備える。
スイッチ部21は、アンテナ10−1〜10−(2n)が捕捉する無線信号を対応する高周波増幅部に出力する。また、スイッチ部21は、情報監視部40からルート切替信号を入力した場合、故障した受信部に対応するアンテナが捕捉する無線信号の出力先を他の受信部20−1〜20−nに切り替える。
高周波増幅部22−1〜22−(2n)は、対応するアンテナが捕捉した無線信号を対応する受信部に出力する。また、高周波増幅部22−1〜22−(2n)は、情報監視部40からレベル調整信号を入力した場合、当該レベル調整信号が示す増幅量で無線信号の増幅を行う。
【0019】
そして、高周波増幅部22−1〜22−(2n)は、複数のアンテナ10−1〜10−(2n)のうち何れか1つのアンテナが捕捉した無線信号を所定の調整増幅量で増幅し、増幅した無線信号を出力する。次に、受信部30−1〜30−n内の無線部31−1、31−2は、対応するアンテナが捕捉した無線信号が高周波増幅部22−1〜22−(2n)により増幅されている場合は、高周波増幅部22−1〜22−(2n)が出力した無線信号をベースバンド信号に変換し、対応するアンテナが捕捉した無線信号が高周波増幅部22−1〜22−(2n)により増幅されていない場合は、当該アンテナが捕捉した無線信号をベースバンド信号に変換する。次に、レベル比較部331は、高周波増幅部22−1〜22−(2n)が増幅した無線信号を入力した無線部が出力するベースバンド信号の出力レベルと、他の無線部が出力するベースバンド信号の出力レベルとの差を算出し、判定部332は、レベル比較部331が算出した電力差と調整増幅量との差が所定の閾値より大きい場合に、高周波増幅部22−1〜22−(2n)が増幅した無線信号を入力した無線部が故障していると判定する。
これにより、無線基地局装置1は、ベースバンド信号の出力レベルの低下を引き起こす回路故障の検出を行う。
【0020】
次に、本実施形態による無線基地局装置1の動作を説明する。
まず、無線基地局装置1の受信部30−1の通常時における動作の説明を行う。なお、ここでは、受信部30−1の説明を行うが、受信部30−2〜30−nの動作も、受信部30−1の動作と同じである。
図4は、無線基地局装置の通常時の動作を示すフローチャートである。
まず、アンテナ10−1、10−2が無線信号を捕捉すると(ステップS1)、制御部20のスイッチ部21は、アンテナ10−1、10−2が捕捉した無線信号を対応する高周波増幅部22−1〜22−(2n)に出力する(ステップS2)。即ち、アンテナ10−1が捕捉した無線信号を高周波増幅部22−1に出力し、アンテナ10−2が捕捉した無線信号を高周波増幅部22−2に出力する。次に、高周波増幅部22−1、22−2は、入力した無線信号を受信部30−1に出力する(ステップS3)。具体的には、高周波増幅部22−1は、入力した無線信号を受信部30−1の無線部31−1に出力し、高周波増幅部22−2は、入力した無線信号を受信部30−1の無線部31−2に出力する。
【0021】
受信部30−1の無線部31−1、31−2が制御部20から無線信号を入力すると、無線部31−1、31−2は、入力した無線信号をベースバンド信号に変換し、データ処理部32に出力する(ステップS4)。具体的には、無線部31−1は、ベースバンド信号をデータ処理部32の受信レベル制御部321−1に出力し、無線部31−2は、ベースバンド信号をデータ処理部32の受信レベル制御部321−2に出力する。
次に、受信レベル制御部321−1、321−2は、ベースバンド信号から入力レベルを測定し、当該入力レベルを示す入力レベル信号を受信レベル算出部322−1、322−2に出力する(ステップS5)。
【0022】
受信レベル算出部322−1、322−2は、受信レベル制御部321−1、321−2から入力レベル信号を入力すると、入力された入力レベル信号が示す入力レベルと、AGC制御により出力する所定の出力レベルとに基づいて、受信レベル制御部321−1、321−2に増幅させる信号の増幅量を算出し、当該増幅量をレベル調整信号として受信レベル制御部321−1、321−2に出力する(ステップS6)。
次に、受信レベル制御部321−1、321−2は、受信レベル算出部322−1、322−2からレベル調整信号を入力し、当該レベル調整信号に基づいてステップS4で無線部31−1、31−2から入力したベースバンド信号の増幅を行う(ステップS7)。これにより、受信レベル制御部321−1、321−2は、AGC制御により出力する所定の出力レベルのベースバンド信号を出力することができる。
【0023】
受信レベル制御部321−1、321−2が所定の出力レベルのベースバンド信号を出力すると、受信レベル算出部322−1、322−2は、当該ベースバンド信号のA/D変換を行い、受信データとして情報監視部40に出力する(ステップS8)。
受信レベル算出部322−1、322−2が受信データを出力すると、情報監視部40は、当該受信データから当該受信部30−1のユーザ数を算出する(ステップS9)。情報監視部40は、例えば、受信データからCDMAの復号化を行う拡散符号の割り当て数によってユーザ数を特定する。
【0024】
情報監視部40は、受信部30−1を利用するユーザの数が所定の閾値より少ないか否かを判定する(ステップS10)。情報監視部40が、ユーザ数が所定の閾値より少ないと判定した場合(ステップS10:YES)、受信部30−1の故障検出を開始する(ステップS11)。故障検出動作の詳細については、後述する。他方、情報監視部40が、ユーザ数が所定の閾値より多いと判定した場合(ステップS10:NO)、無線基地局装置1は、通常動作を継続する。
【0025】
ここで、ユーザ数が所定の閾値より少ない場合に故障検出動作を実行する理由を説明する。後述する故障検出動作では、無線部31−1、31−2の一方ずつの故障検出を行う。そのため、故障検出中はダイバーシティによる受信を行うことができず、通常時と比較してユーザあたりの受信感度が低下する。そこで、利用ユーザ数が少ないときに受信部30−1に対して故障検出を行うことで、システム全体のスループットの低下を抑えることができる。
【0026】
次に、無線基地局装置1の受信部30−1の故障検出時における動作の説明を行う。なお、ここでは、受信部30−1の説明を行うが、受信部30−2〜30−nの動作も、受信部30−1の動作と同じである。
図5は、無線基地局装置の故障検出時の動作を示すフローチャートである。
まず、情報監視部40は、上述したステップS10により、受信部30−1を利用するユーザの数が所定の閾値より少ないと判定すると、受信部30−1に対応するアンテナの出力レベルを所定の調整増幅量に増幅させるレベル調整信号を、当該アンテナに対応する制御部20の高周波増幅部に出力する(ステップS21)。具体的には、情報監視部40は、アンテナ10−1に対応する高周波増幅部22−1にレベル調整信号を出力する。また、情報監視部40は、さらに当該レベル調整信号を受信部30−1の検出部33に出力する(ステップS22)。
【0027】
次に、アンテナ10−1、10−2が無線信号を捕捉すると(ステップS23)、制御部20のスイッチ部21は、アンテナ10−1、10−2が捕捉した無線信号を対応する高周波増幅部22−1〜22−(2n)に出力する(ステップS24)。即ち、アンテナ10−1が捕捉した無線信号を高周波増幅部22−1に出力し、アンテナ10−2が捕捉した無線信号を高周波増幅部22−2に出力する。
【0028】
次に、高周波増幅部22−1は、入力した無線信号を、情報監視部40から入力したレベル調整信号が示す調整増幅量に増幅する(ステップS25)。例えば、アンテナ10−1が捕捉した無線信号が10dBであり、調整増幅量が20dBを示している場合、高周波増幅部22−1は、無線信号を30dBに増幅させる。次に、高周波増幅部22−1、22−2は、入力した無線信号を受信部30−1に出力する(ステップS26)。具体的には、高周波増幅部22−1は、入力した無線信号を受信部30−1の無線部31−1に出力し、高周波増幅部22−2は、入力した無線信号を受信部30−1の無線部31−2に出力する。
【0029】
受信部30−1の無線部31−1、31−2が制御部20から無線信号を入力すると、無線部31−1、31−2は、入力した無線信号をベースバンド信号に変換し、データ処理部32に出力する(ステップS27)。具体的には、無線部31−1は、ベースバンド信号をデータ処理部32の受信レベル制御部321−1に出力し、無線部31−2は、ベースバンド信号をデータ処理部32の受信レベル制御部321−2に出力する。また、例えば上述したように、アンテナ10−1、10−2が捕捉した無線信号が10dBであり、高周波増幅部22−1が無線信号を30dBに増幅させた場合、無線部31−1は、30dBのベースバンド信号を出力し、無線部31−2は、10dBのベースバンド信号を出力する。
次に、受信レベル制御部321−1、321−2は、ベースバンド信号から入力レベルを測定し、当該入力レベルを示す入力レベル信号を受信レベル算出部322−1、322−2に出力する(ステップS28)。例えば、無線部31−1が30dBのベースバンド信号を出力し、無線部31−2が10dBのベースバンド信号を出力した場合、受信レベル制御部321−1は、入力レベル30dBを示す入力レベル信号を受信レベル算出部322−1に出力する。また、受信レベル制御部321−2は、入力レベル10dBを示す入力レベル信号を受信レベル算出部322−2に出力する。
【0030】
受信レベル算出部322−1、322−2は、受信レベル制御部321−1、321−2から入力レベル信号を入力すると、当該入力レベル信号が示す入力レベルと、AGC制御により増幅する所定の出力レベルとに基づいて、受信レベル制御部321−1、321−2に増幅させる信号の増幅量を算出し、当該増幅量をレベル調整信号として受信レベル制御部321−1、321−2に出力する(ステップS29)。例えば、AGC制御により増幅する所定の出力レベルが50dBである場合において、受信レベル制御部321−1が30dBを示す入力レベル信号を出力し、受信レベル制御部321−1が30dBを示す入力レベル信号を出力したとき、受信レベル算出部322−1は、出力レベル50dBから入力レベル30dBを減じた20dBを示すレベル調整信号を出力する。また、受信レベル算出部322−2は、出力レベル50dBから入力レベル10dBを減じた40dBを示すレベル調整信号を出力する。
【0031】
次に、受信レベル制御部321−1、321−2は、受信レベル算出部322−1、322−2からレベル調整信号を入力し、当該レベル調整信号に基づいて、ステップS4で無線部31−1、31−2から入力したベースバンド信号の増幅を行う(ステップS30)。つまり、上述した例によると、受信レベル制御部321−1は、受信レベル算出部322−1から入力した、20dBを示すレベル調整信号に基づいて、ベースバンド信号を30dBから50dBに増幅させる。また、受信レベル制御部321−2は、受信レベル算出部322−2から入力した、40dBを示すレベル調整信号に基づいて、ベースバンド信号を10dBから50dBに増幅させる。
【0032】
一方、ステップS29で受信レベル算出部322−1、322−2が増幅量を算出すると、当該増幅量をレベル調整信号としてレベル比較部331に出力する(ステップS31)。このとき、受信レベル算出部322−1が算出する増幅量は、受信レベル算出部322−2が算出する増幅量に対して制御部20で無線信号の増幅を行った分だけ差が生じることとなる。
【0033】
レベル比較部331は、受信レベル算出部322−1、322−2からレベル調整信号を取得し、両レベル調整信号の差を算出することで受信信号の電力差を算出し、当該電力差を判定部332に出力する(ステップS32)。上述した例によると、受信レベル算出部322−1が20dBを示すレベル調整信号を出力し、受信レベル算出部322−2が40dBを示すレベル調整信号を出力するため、レベル比較部331は、電力差20dBを算出する。
【0034】
判定部332は、レベル比較部331が算出した電力差を取得すると、当該電力差と、ステップS22で情報監視部40から入力したレベル調整信号が示す調整増幅量との差を算出する(ステップS33)。上述した例によると、情報監視部40が増幅量20dBを示すレベル調整信号を出力し、レベル比較部331が電力差20dBを算出したので、判定部332は、両者の差0dBを算出する。判定部332は、電力差と調整増幅量との差を算出すると、当該差の値が所定の閾値を超えるか否かを判定する(ステップS34)。判定部332は、電力差と調整増幅量との差が所定の閾値を超えると判定した場合(ステップS34:YES)、無線部31−1が故障していると判定し、故障検出信号を出力する(ステップS35)。他方、判定部332は、電力差と調整増幅量との差が所定の閾値を超えないと判定した場合(ステップS34:NO)、無線部31−1が故障していないと判定し、故障検出信号を出力しない。
【0035】
ここで、受信信号の電力差と調整増幅量との差の値が所定の閾値を超える場合に無線部31−1が故障していると判定する理由を説明する。
無線部31−1は、ステップS25で高周波増幅部22−1が増幅した無線信号を、ステップS27でベースバンド信号に変換する。無線部31−1が正常に動作している場合、無線部31−1が出力するベースバンド信号の出力レベルは、高周波増幅部22−1による無線信号の増幅量に追従する。これにより、上述したステップS32でレベル比較部331が算出する受信信号の電力差は、高周波増幅部22−1が増幅した調整増幅量と等しくなる。そのため、受信感度や振幅の変動等による誤差を考慮し、ステップS34で判定部332は、受信信号の電力差と調整増幅量との差が所定の閾値より小さい場合に、無線部31−1が故障していないと判定している。
【0036】
一方、無線部31−1の故障によりベースバンド信号の出力レベルが正常時の出力レベルより著しく小さくなっていた場合、上述したステップS32でレベル比較部331が算出する受信信号の電力差と、高周波増幅部22−1が増幅した調整増幅量との間に大きく差が生じる。当該差が大きいほど、故障の度合いが大きいことを示す。そのため、ステップS34で判定部332は、受信信号の電力差と調整増幅量との差が所定の閾値より大きい場合に、無線部31−1が故障していると判定している。
【0037】
なお、CDMAの無線部では、使用電力の設定レベルが低い状態では無線部が正常に動作しているが、使用電力の設定レベルが高い状態では無線部が正常に動作しないような場合がある。そのため、情報監視部40は、ステップS21で出力するレベル調整信号に含まれる調整増幅量を段階的に変化させて複数回故障判定を行い、無線部の故障の度合いを判定する。
【0038】
ここで、調整増幅量を段階的に変化させて故障判定を行う例を説明する。
情報監視部40は、調整増幅量を10dB、20dB、30dBと段階的に変化させてレベル調整信号を出力する。次に、受信部30−1の検出部33は、それぞれのレベル調整信号に基づいて故障の有無を判定する。そして、情報監視部40は、検出部33が故障検出信号を出力したときの調整増幅量に応じて故障の度合いを判定する。
【0039】
例えば、情報監視部40は、全ての調整増幅量に対して検出部33が故障検出信号を出力しなかった場合に、受信部30−1に故障がないと判定する。また、情報監視部40は、調整増幅量が30dBのときのみ検出部33が故障検出信号を出力した場合に、受信部30−1が軽度の故障であると判定する。また、情報監視部40は、調整増幅量が20dB以上の場合に検出部33が故障検出信号を出力したとき、受信部30−1が重度の故障であると判定する。つまり、情報監視部40は、調整増幅量が大きい場合にのみ故障検出信号を出力した場合よりも、調整増幅量が小さい場合に故障検出信号を出力した場合のほうが故障の度合いが大きいと判定する。
【0040】
このとき、情報監視部40は、調整増幅量が通常時に用いる増幅量の範囲内である場合において検出部33が故障検出信号を出力したときに、受信部30−1が重度の故障であると判定し、調整増幅量が通常時に用いる増幅量の範囲外にある場合において検出部33が故障検出信号を出力したときに、受信部30−1が軽度の故障であると判定すると良い。
なお、ここで示した数値は調整増幅量の一例であり、実際にはこの数値に限られず、例えば、5dBや40dBなど他の調整増幅量を用いても良い。また、故障の度合いを判定する閾値も上述したものに限られず、システム毎に適切な値を設定すると良い。
【0041】
情報監視部40は、受信部30−1が軽度の故障であると判定した場合、モニタなどの表示部(図示せず)に当該故障の発生を表示させるなど、故障を通知する処理を行う。他方、情報監視部40は、受信部30−1が軽度の故障であると判定した場合、故障を通知する処理を行い、更に、制御部20にルート切替信号を出力し、故障している受信部に対応するアンテナが捕捉した無線信号の出力先を他の受信部30−2〜10−nに切り替える処理を行う。当該処理については後述する。
【0042】
無線基地局装置1は、ステップS21からステップS34の処理を完了すると、次に、同様の処理によって無線部31−2の故障検出を行う。
また、ここでは、情報監視部40によって、受信部30−1のユーザ数が所定の閾値より少ないと判定された場合について説明したが、受信部30−2〜30−nのユーザ数が所定の閾値より少ないと判定された場合も同様に、上述した処理により故障検出を行う。
【0043】
次に、上述した故障検出処理によって、受信部30−1が重度の故障であると判定された場合の動作を説明する。
情報監視部40は、受信部30−1が重度の故障であると判定すると、受信部30−1に対応付けられたアンテナ10−1、10−2が捕捉する無線信号の出力先を他の受信部30−2〜30−nに切り替えさせるルート切替信号を、制御部20のスイッチ部21に出力する。このとき、情報監視部40は、切替先の受信部としてユーザ数が最も少ない受信部を選択することが望ましい。
【0044】
スイッチ部21は、ルート切替信号が示すアンテナ10−1、10−2が捕捉する無線信号を、切替先の受信部30−2〜30−nに対応付けられたアンテナが捕捉する無線信号に合成する。例えば、情報監視部40が切替先の受信部として受信部30−2を選択した場合、スイッチ部21は、アンテナ10−1が捕捉する無線信号をアンテナ10−3が捕捉する無線信号に合成し、アンテナ10−2が捕捉する無線信号をアンテナ10−4が捕捉する無線信号に合成する。
これにより、重度の故障が発生した受信部30−1の動作を停止させ、当該受信部30−1に対応するアンテナ10−1、10−2による無線信号の受信を、他の受信部30−2で行うことができる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、あるアンテナからの無線信号のレベルを変動させ、当該アンテナに対応する無線部の出力信号のレベルと、他のアンテナに対応する無線部の出力信号のレベルとを比較する。これにより、ベースバンド信号の出力レベルの低下を引き起こす回路故障の検出を行うことができる。さらに、本実施形態では、ダイバーシティ系のアンテナの片側ずつを検査するため、運用を停止することなく故障の検出を行うことができる。
【0046】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、本実施形態では、1つの受信部がアンテナを2本ずつ備える場合を説明したが、これに限られず、例えば、アンテナを3本以上備える構成としても良い。
【0047】
また、本実施形態では、受信部を複数備える場合を説明したが、これに限られず、例えば受信部を1つだけ備える構成としても良い。但し、この場合、受信部に重度の故障が発見されたときに当該受信部に対応付けられたアンテナが捕捉する無線信号の出力先を他の受信部に切り替えさせることができない。
【0048】
なお、本実施形態では、無線基地局装置1が全ての処理部を備える場合を説明したが、これに限られず、例えば情報監視部40を他の装置に搭載し、無線基地局装置1と当該他の装置とをネットワークを介して接続するようにしても良い。
【0049】
なお、上述の無線基地局装置1は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した情報監視部40の動作は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0050】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0051】
1…無線基地局装置 10−1〜10−(2n)…アンテナ 20…制御部 21…スイッチ部 22−1〜22−(2n)…高周波増幅部 30−1〜30−n…受信部 31−1〜31−2…無線部 32…データ処理部 33…検出部 40…情報監視部 321−1〜321−2…受信レベル制御部 322−1〜322−2…受信レベル算出部 331…レベル比較部 332…判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナによる受信を行う受信部を備える無線基地局装置であって、
前記受信部は、
前記複数のアンテナのうち何れか1つのアンテナが捕捉した無線信号を所定の調整増幅量で増幅し、増幅した無線信号を出力する高周波増幅部と、
前記複数のアンテナのそれぞれに対応する複数の無線部であって、対応するアンテナが捕捉した無線信号が前記高周波増幅部により増幅されている場合は、前記高周波増幅部が出力した無線信号をベースバンド信号に変換し、対応するアンテナが捕捉した無線信号が前記高周波増幅部により増幅されていない場合は、当該アンテナが捕捉した無線信号をベースバンド信号に変換する無線部と、
前記高周波増幅部が増幅した無線信号を入力した無線部が出力するベースバンド信号の出力レベルと、他の無線部が出力するベースバンド信号の出力レベルとの電力差を算出するレベル比較部と、
前記レベル比較部が算出した電力差と前記調整増幅量との差が所定の閾値より大きい場合に、前記高周波増幅部が増幅した無線信号を入力した無線部が故障していると判定する判定部と、
を備えることを特徴とする無線基地局装置。
【請求項2】
前記受信部を複数備え、
前記判定部により故障していると判定された無線部に対応するアンテナが捕捉した無線信号と他の受信部に対応するアンテナが捕捉した無線信号とを合成し、当該他の受信部に前記合成した無線信号を出力するスイッチ部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線基地局装置。
【請求項3】
前記受信部が受信する信号の受信ユーザ数を取得し、当該受信ユーザ数が所定の閾値より少ない場合に、当該受信部の高周波増幅部に、無線信号を増幅させる増幅命令信号を出力する情報監視部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1または請求項2の何れか1項に記載の無線基地局装置。
【請求項4】
複数のアンテナによる受信を行う受信部を備える無線基地局装置を用いた故障検出方法であって、
前記受信部の高周波増幅部は、前記複数のアンテナのうち何れか1つのアンテナが捕捉した無線信号を所定の調整増幅量で増幅し、増幅した無線信号を出力し、
前記複数のアンテナのそれぞれに対応する前記受信部の複数の無線部は、対応するアンテナが捕捉した無線信号が前記高周波増幅部により増幅されている場合は、前記高周波増幅部が出力した無線信号をベースバンド信号に変換し、対応するアンテナが捕捉した無線信号が前記高周波増幅部により増幅されていない場合は、当該アンテナが捕捉した無線信号をベースバンド信号に変換し、
前記受信部のレベル比較部は、前記高周波増幅部が増幅した無線信号を入力した無線部が出力するベースバンド信号の出力レベルと、他の無線部が出力するベースバンド信号の出力レベルとの差を算出し、
前記受信部の判定部は、前記レベル比較部が算出した電力差と前記調整増幅量との差が所定の閾値より大きい場合に、前記高周波増幅部が増幅した無線信号を入力した無線部が故障していると判定する、
ことを特徴とする故障検出方法。
【請求項5】
複数のアンテナによる受信を行う受信回路であって、
前記複数のアンテナのうち何れか1つのアンテナが捕捉した無線信号を所定の調整増幅量で増幅し、増幅した無線信号を出力する高周波増幅回路と、
前記複数のアンテナのそれぞれに対応する複数の無線回路であって、対応するアンテナが捕捉した無線信号が前記高周波増幅回路により増幅されている場合は、前記高周波増幅回路が出力した無線信号をベースバンド信号に変換し、対応するアンテナが捕捉した無線信号が前記高周波増幅回路により増幅されていない場合は、当該アンテナが捕捉した無線信号をベースバンド信号に変換する無線回路と、
前記高周波増幅回路が増幅した無線信号を入力した無線回路が出力するベースバンド信号の出力レベルと、他の無線回路が出力するベースバンド信号の出力レベルとの差を算出するレベル比較回路と、
前記レベル比較回路が算出した電力差と前記調整増幅量との差が所定の閾値より大きい場合に、前記高周波増幅回路が増幅した無線信号を入力した無線回路が故障していると判定する判定回路と、
を備えることを特徴とする受信回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−23970(P2011−23970A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167111(P2009−167111)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】