説明

無線基地局

【課題】同一IPネットワークシステムにおいて、内線サーバ装置を別途設置することなく内線通話サービスを行うことを目的とする。
【解決手段】本発明の無線基地局は、同一IPネットワーク内に設置された他の無線基地局と内線通話を行う無線基地局である。無線基地局は、上り方向のデータ形式であるUplinkデータを下り方向のデータ形式であるDownlinkデータに変換する機能を有する。さらに、通信相手の無線基地局と同期をとる機能や、ユーザデータの認証処理を行う機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、同一ネットワークの無線通信端末同士が内線通話を行う無線通信システムにおける無線基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
無線基地局(BTS:Base Transceiver Station)は、通信キャリア内の基地局制御装置(RNC:Radio Network Controller)と専用線や公衆IPネットワーク経由で接続して運用される。このような運用を行う無線基地局において構内無線通話サービスを行う場合、すなわち、夫々の無線基地局配下の移動端末間でデータ転送を行う場合、内線サーバ装置が無線基地局間のユーザデータの橋渡しを行う。これにより、ユーザデータを公衆IPネットワーク網へ送出することなく、構内に閉じた内線データ転送により内線通話サービスが実現する。
【0003】
非特許文献1に示す3GPP規格に準拠したWCDMA無線基地局を例にすると、有線区間のデータ構成はFP(フレームプロトコル)データのフォーマットに従い、無線基地局から基地局制御装置へ向かうUplinkデータと、基地局制御装置から無線基地局へ向かうDownlinkデータでは、フレーム構成が異なっている。
【0004】
そのため、例えば無線基地局からのUplinkデータを汎用HUBや汎用ルータでそのまま送信先の無線基地局へ折り返しても、送信先の無線基地局はこれをDownlinkデータとして受信することは出来ないので、UplinkデータをDownlinkデータフォーマットに合うようフレーム構成を変更して転送する必要がある。そこで、特許文献1に記載の構内無線ネットワークシステムでは、上記フレーム構成を変更して転送し、無線基地局間のタイミング調整を行う内線サーバ装置を構内に配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−261798号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3GPP TS 25.427 V8.1.0
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の構内内線通話システムにおいて、無線基地局間で内線通話のデータ転送を行うためにはデータのフレーム構成を変更する必要があり、そのために特許文献1では内線サーバを別途設置していた。これにより、内線通話サービスを構築するために必要なスペースが増大していた。
【0008】
本発明は上述の問題点に鑑み、構内無線ネットワークシステムにおいて、内線サーバ装置を別途設置することなく内線通話サービスを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の無線基地局は、同一IPネットワーク内に設置された他の無線基地局と無線通信を行う無線基地局であって、上り方向のデータ形式であるUplinkデータを下り方向のデータ形式であるDownlinkデータに変換する機能を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の無線基地局は、同一IPネットワーク内に設置された他の無線基地局と無線通信を行う無線基地局であって、上り方向のデータ形式であるUplinkデータを下り方向のデータ形式であるDownlinkデータに変換する機能を有する。これにより、内線サーバを設けることなく無線基地局間の内線通話が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の前提となる構内無線ネットワークシステムの構成図である。
【図2】実施の形態1に係る構内無線ネットワークシステムの構成図である。
【図3】Uplinkデータのフレーム構成を例示した図である。
【図4】Downlinkデータのフレーム構成を例示した図である。
【図5】無線基地局の動作を示す図である。
【図6】実施の形態2に係る構内無線ネットワークシステムの構成図である。
【図7】無線基地局の内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
<前提技術>
図1は、本発明の前提技術となる構内無線ネットワークシステムの構成図である。無線通信システムは、無線基地局105,106、移動端末107,108、汎用ルータ104、公衆IPネットワーク102、基地局制御装置101、さらに上位のネットワーク側装置である上位装置100を備えている。
【0013】
移動端末107は無線基地局105配下の移動端末であり、移動端末108は無線基地局106配下の移動端末である。無線基地局105,106は例えばIP−BTSであり、汎用ルータ104を介して構内ローカルLAN103を構成している。
【0014】
無線基地局105,106は、汎用ルータ104、公衆IPネットワーク102を経由して基地局制御装置101と接続されており、基地局制御装置101は、無線基地局105,106に対してチャネル制御用メッセージ及び監視制御メッセージを通信キャリア規定するメッセージシーケンスに従って送受信することにより、無線基地局105,106の遠隔制御を行う。
【0015】
内線呼動作を行う場合、基地局制御装置101や上位のネットワーク側装置100から、内線サーバ109と各無線基地局105,106に対して内線呼設定指示のメッセージを経路110で出すことにより、無線基地局105⇔内線サーバ109⇔無線基地局106というユーザデータの導通経路111を形成する設定が行われる。無線基地局105配下の移動端末107が発信側であるとすると、内線サーバ109は無線基地局105からのUplinkデータのフレーム構成をDownlinkデータのフォーマットに合うようにフレーム構成を変更し、無線基地局106に送信している。
【0016】
このような構成の無線通信システムでは、内線サーバ109を設けることによって、構内内線通話サービスを構築するために必要なスペースが増大する。これに対し、本発明の無線通信システムの構成を以下に詳述する。
【0017】
<構成>
図2は、実施の形態1に係る無線通信システムの構成図である。本実施の形態の無線通信システムは、無線基地局205,206、移動端末207,208、汎用ルータ204、公衆IPネットワーク202、基地局制御装置201、さらに上位のネットワーク側装置である上位装置200を備えている。
【0018】
移動端末207は無線基地局205配下の移動端末であり、移動端末208は無線基地局206配下の移動端末である。無線基地局205,206は例えばIP−BTSであり、汎用ルータ204を介して構内ローカルLAN203を構成している。
【0019】
無線基地局205,206は、汎用ルータ204、公衆IPネットワーク202を経由して基地局制御装置201と接続されており、基地局制御装置201は、無線基地局205,206に対してチャネル制御用メッセージ及び監視制御メッセージを通信キャリア規定するメッセージシーケンスに従って送受信することにより、無線基地局205,206を遠隔制御することが出来る。
【0020】
なお、汎用ルータ204として上述の説明を行ったが、汎用HUBや汎用ゲートウェイでも良い。
【0021】
次に、図7に無線基地局205,206の内部構成を示す。無線基地局205,206は、配下の移動端末207,208とそれぞれ無線接続されており、ローカルLANとEthernet(登録商標)接続されている。無線基地局205は、RF部701、ベースバンド(BB)処理部702、IP送受信処理機能部703、制御部704、ユーザデータ処理部705、データ振り分け部706、レイヤ3処理部707を備えている。RF部701は、移動端末207と無線通信を行い、BB処理部702はベースバンド処理を行う。レイヤ3処理部707はネットワーク層のプロトコル処理を行う。ユーザデータ処理部705は、UplinkデータとDownlinkデータのフレーム形式差分の調整処理を行う。制御部704は、送受信データのポート番号や送受信パケットの種別などの情報をデータ振り分け部706やユーザデータ処理部705へ送り、この情報に基づきデータ振り分け部706は、IP送受信処理機能部703がローカルLANから受信したパケットデータを、そのパケット種別に応じてユーザデータ処理部705かBB処理部702に振り分ける。
【0022】
<動作>
移動端末207から移動端末208への発信処理を実施する際、まず、基地局制御装置201からのチャネル制御用メッセージ(例えば、3GPPのRadio Link Setup Request、Radio Link Reconfiguration Prepare等)により、各無線基地局205、206はチャネルリソースの確保を行い、有線および無線のデータ通信路を確保する。このデータ通信路を経由して、移動端末207,208も基地局制御装置201やさらに上位のネットワーク側装置である上位装置200とのメッセージ交換が可能となり、発着信シーケンス、ユーザデータ認証処理が行われる。
【0023】
発着信相手が構内ローカルLAN内の内線呼である場合、移動端末207,208から基地局制御装置201、さらに上位のネットワーク側装置200に対し、発着信の呼種別が内線呼であることを予め通知しておくことにより、システム全体として内線呼であると判別して動作する。
【0024】
図5は、実施の形態1の無線通信システムが内線通話を行う際に、内線呼設定を行う無線基地局205,206の動作を示した図である。無線基地局205が内線呼の発信側であり、無線基地局206が受信側である。以下、図5に沿って無線基地局205,206の動作を説明する。
【0025】
まず、基地局制御装置201やネットワーク側装置200が、各無線基地局205,206のみに内線呼設定指示のメッセージを経路209(図2参照)で出力する。各無線基地局205,206には互いのIPアドレスと、その発着信呼のチャネルリソースとして動的に確保した有線区間のポート番号の情報が通知される。これにより、各無線基地局205,206は相互のユーザデータの送信宛先を認知するため、同一ローカルLAN内であれば、パソコンで通信するかのごとく相互にデータ送受信できるパス210を確立することが出来る。これにより、内線呼チャネルが設定(500)される。
【0026】
次に、無線基地局205は無線基地局206へ有線同期確立信号501を送信して、内線呼でユーザデータの送信を開始することを通知すると共に、送信タイミング調整を行う。有線同期確立信号501を受信した無線基地局206は、無線基地局205との相互間遅延量を推定して送受信タイミング調整502を行い、その遅延量情報を有線同期確立信号応答503として無線基地局205へ送信する。これを受信した無線基地局205のほうでも送受信タイミング調整504を行うことにより、有線区間の同期が確立し、その後ユーザデータ導通505がなされる。
【0027】
すなわち、実施の形態1の無線基地局は、通信相手の無線基地局と同期をとる機能を有する。これにより、内線サーバを設けることなく無線基地局間の内線通話を行う事が出来る。
【0028】
なお、3GPP無線基地局を例にすると、通常呼のUplinkデータ(BTS→RNC)と通常呼のDownlinkデータ(RNC→BTS)のフレーム構成が異なる場合が多い。図3にUplinkデータのフレーム構成、図4にDownlinkデータのフレーム構成の一例を示す。Uplinkデータは、ヘッダ部、ユーザデータであるデータペイロード部、CRC部、チェックサム部からなる。Downlinkデータは、ヘッダ部、ユーザデータであるデータペイロード部、チェックサム部からなる。
【0029】
そこで、受信側の無線基地局206は、Uplinkデータを受信処理してデータペイロード部を取り出し、図4に示したDownlinkデータのフレーム構成に変換して移動端末208へ送出する。
【0030】
具体的には、図7に示した受信側の無線基地局206において、データ振り分け部706は制御部704から送受信データのポート番号や送受信パケットの種別などの情報を受け、これに基づき、通常呼データフレームと内線呼ユーザデータフレームの棲み分けがなされ、内線呼処理を進める。内線呼ユーザデータについてはユーザデータ処理部705に振り分けられ、ユーザデータ処理部705ではUplinkデータからDownlinkデータへフレーム構成を変換し、レイヤ3処理部707へ送る。受信したUPlinkデータからデータペイロード部を抽出してレイヤ処理部707へ送っても良い。レイヤ3処理部707では、3GPP規格を例にとると、RRC,RLC,MACなどのネットワーク層のプロトコル処理を行うため、上位の基地局制御装置と接続することなく、無線基地局205,206間で直接ユーザデータ送受信が可能になる。その後BB処理部702とデータ受け渡しを行うことで、BB処理部702⇔RF部701⇔移動端末207においては従来の無線基地局での通常呼処理と同様に通信を行う事が出来る。
【0031】
送信側の無線基地局205においてユーザデータ処理部705は、レイヤ3処理部707からのデータをそのままデータ振り分け部706、IP送受信処理機能部703を介してEthernet(登録商標)へ送出する。
【0032】
上記では、受信側の無線基地局206が、UplinkデータをDownlinkデータに変換するものとして説明したが、送信側の無線基地局205がUplinkデータをDownlinkデータのフォーマットに変換した後に無線基地局206に送信しても良い。
【0033】
すなわち、実施の形態1の無線基地局は、同一IPネットワーク内に設置された他の無線基地局と有線通信(IP接続)を行う無線基地局であって、上り方向のデータ形式であるUplinkデータを下り方向のデータ形式であるDownlinkデータに変換する機能を有する。これにより、内線サーバを設けることなく無線基地局間の内線通話を行う事が出来る。
【0034】
Uplinkデータのデータペイロード部(図3参照)は、移動端末207,208のそれぞれにおいて固有の認証鍵により暗号化されている場合がある。その場合は、内線呼チャネル設定の際、基地局制御装置201及びさらに上位のネットワーク側装置200から移動端末207,208の認証鍵情報を事前に通知しておき、無線基地局205,206の内部にて認証鍵の終端処理を行う。
【0035】
つまり、無線基地局205から無線基地局206へ直接送受される移動端末207のユーザデータは移動端末207の認証鍵で暗号化されているが、無線基地局206は移動端末207,208の認証鍵を有しており、移動端末207の認証鍵でユーザデータを復号してから移動端末208の認証鍵で暗号化しなおして、移動端末208へ無線チャネル送信する。以上は移動端末207から移動端末208へユーザデータを送信する際の例であるが、逆方向についても同様の方式でユーザデータ導通を行うことにより、内線呼サービスを実現する。
【0036】
すなわち、実施の形態1の無線基地局は、配下の移動端末及び通信相手の無線基地局配下の移動端末の認証情報を有し、前記認証情報を用いて送受信データの認証処理を行う。これにより、ユーザデータが認証鍵で暗号化されている場合でも内線サーバを設けることなく無線基地局間の内線通話を行う事が出来る。
【0037】
<効果>
実施の形態1の無線基地局によれば、既に述べたように以下の効果を奏する。すなわち、実施の形態1の無線基地局は、同一IPネットワーク内に設置された他の無線基地局と有線通信(IP接続)を行う無線基地局であって、上り方向のデータ形式であるUplinkデータを下り方向のデータ形式であるDownlinkデータに変換する機能を有する。これにより、内線サーバを設けることなく無線基地局間の内線通話を行う事が出来る。
【0038】
また、無線基地局は、通信相手の無線基地局と同期をとる機能を有する。これにより、内線サーバを設けることなく無線基地局間の内線通話を行う事が出来る。
【0039】
さらに、無線基地局は、配下の移動端末及び通信相手の無線基地局配下の移動端末の認証情報を有し、前記認証情報を用いて送受信データの認証処理を行う。これにより、ユーザデータが認証鍵で暗号化されている場合でも内線サーバを設けることなく無線基地局間の内線通話を行う事が出来る。
【0040】
(実施の形態2)
<構成>
図6は、実施の形態2の無線通信システムの構成図である。構成要素は実施の形態1の無線通信システムと同一であるが、内線呼の設定において基地局制御装置101と通信を行うことなく、移動端末207,208の内線通話を行う点が実施の形態1とは異なる。
【0041】
<動作>
内線呼チャネル設定動作について説明する。実施の形態1では、基地局制御装置201が経路209により各無線基地局205,206に対して内線呼チャネル設定を指示していたが、実施の形態2では、発信側移動端末207が無線基地局205へ最初に送信するUplinkデータの中に内線呼を示す情報を含める。このUplinkデータは無線基地局205から汎用ルータ204を介して経路209´により無線基地局206に送信され、この情報を得た無線基地局205,206は共に内線呼チャネル設定の状態となる。その後のユーザデータ導通(210)までの動作は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0042】
なお、移動端末207が無線基地局205へ送信したUplinkデータは、無線基地局205がDownlinkデータの形式に変換して無線基地局206に送信しても良いし、あるいはそのまま送信して無線基地局206がDownlinkデータの形式に変換しても良い。
【0043】
すなわち、実施の形態2の無線基地局では、送信側移動端末が直上の無線基地局に送信するUplinkデータに内線呼情報が含まれ、直上の無線基地局及びその通信相手の無線基地局は、内線呼情報によって内線呼設定を行う。これにより、内線サーバを設けることなく無線基地局間の内線通話を行う事が出来る。
【0044】
<効果>
実施の形態2の無線基地局では、既に述べたとおり以下の効果を奏する。すなわち、送信側移動端末が直上の無線基地局に送信するUplinkデータに内線呼情報が含まれ、直上の無線基地局及びその通信相手の無線基地局は、内線呼情報によって内線呼設定を行うことを特徴とする。これにより、内線サーバを設けることなく無線基地局間の内線通話を行う事が出来る。
【符号の説明】
【0045】
200 上位装置、201 基地局制御装置、205,206 無線基地局、207,208 移動端末、701 RF部、702 BB処理部、703 IP送受信処理機能部、704 制御部、705 ユーザデータ処理部、706 データ振り分け部、707 レイヤ3処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一IPネットワーク内に設置された他の無線基地局と有線通信(IP接続)を行う無線基地局であって、
上り方向のデータ形式であるUplinkデータを下り方向のデータ形式であるDownlinkデータに変換する機能を有する無線基地局。
【請求項2】
通信相手の無線基地局と同期をとる機能を有する、請求項1に記載の無線基地局。
【請求項3】
配下の移動端末及び通信相手の無線基地局配下の移動端末の認証情報を有し、前記認証情報を用いて送受信データの認証処理を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の無線基地局。
【請求項4】
送信側移動端末が直上の無線基地局に送信するUplinkデータに内線呼情報が含まれ、
前記直上の無線基地局及びその通信相手の無線基地局は、前記内線呼情報によって内線呼設定を行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の無線基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−30077(P2011−30077A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175445(P2009−175445)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】